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特許7287983量子コンピューティング信号線用の低温マイクロ波減衰器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】量子コンピューティング信号線用の低温マイクロ波減衰器
(51)【国際特許分類】
   H10N 60/80 20230101AFI20230530BHJP
   H01P 1/22 20060101ALI20230530BHJP
   H03H 11/24 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
H10N60/80 A ZAA
H01P1/22
H03H11/24 Z
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2020564065
(86)(22)【出願日】2019-06-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 EP2019065580
(87)【国際公開番号】W WO2020002000
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】16/020,401
(32)【優先日】2018-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】New Orchard Road, Armonk, New York 10504, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【弁理士】
【氏名又は名称】太佐 種一
(72)【発明者】
【氏名】グマン、パトリク
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァデーセ、サルヴァトーレ、ベルナルド
(72)【発明者】
【氏名】マイネル、ロバート
(72)【発明者】
【氏名】スロヴィク、クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ウォッタース、レイモンド
(72)【発明者】
【氏名】チョウ、ジェリー
(72)【発明者】
【氏名】ガンベッタ、ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】マッカイ、デイヴィッド
【審査官】綿引 隆
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0257074(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103697647(CN,A)
【文献】特開平02-171571(JP,A)
【文献】国際公開第2017/115008(WO,A1)
【文献】Jen-Hao et al.,Microwave attenuators for use with quantum devices below 100 mK,Journal of Applied Physics,2017年06月08日,Vol. 121, Issue 22,224501-1~224501-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 60/80
H01P 1/22
H03H 11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイスであって、
ハウジング構成要素およびマイクロ波減衰器チップを備える低温マイクロ波減衰器デバイスであり、前記ハウジング構成要素が、1ケルビンにおいて少なくとも0.1ワット毎メートル-ケルビンの熱伝導率を有する、前記低温マイクロ波減衰器デバイスと、
前記マイクロ波減衰器チップに直接ワイヤ結合された信号導体を備えるマイクロ波コネクタと
を備え
前記マイクロ波コネクタは同軸結合部分に結合され、前記同軸結合部分は前記ハウジング構成要素にプレスばめされている
デバイス。
【請求項2】
前記ハウジング構成要素が銅合金ハウジング材料を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記ハウジング構成要素が、耐酸化性材料でめっきされた、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記耐酸化性材料が金を含む、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記ハウジング構成要素が、1ケルビンにおいて少なくとも0.1ワット毎メートルケルビンの熱伝導率を有する銅材料を含む、請求項1乃至4のいずれかに記載のデバイス。
【請求項6】
前記銅材料は、実質的に無酸素の高伝導率銅材料である、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記ハウジング構成要素が電解銅材料を含む、請求項1乃至6のいずれかに記載のデバイス。
【請求項8】
前記信号導体が、1本または複数本の金ワイヤを介して前記マイクロ波減衰器チップに直接ワイヤ結合されたコネクタ・センタ・ピンを含む、請求項1乃至7のいずれかに記載のデバイス。
【請求項9】
前記低温マイクロ波減衰器デバイスが、アルミニウム金属の超伝導臨界温度よりも高い温度の希釈冷凍機プレートとともに使用され、前記信号導体が、1本または複数本のアルミニウム・ワイヤを介して前記マイクロ波減衰器チップに直接ワイヤ結合されたコネクタ・センタ・ピンを含む、請求項1乃至8のいずれかに記載のデバイス。
【請求項10】
前記マイクロ波コネクタが、前記マイクロ波減衰器チップの入力信号側に結合された第1のマイクロ波コネクタを含み、前記マイクロ波減衰器チップの出力信号側に結合された第2のマイクロ波コネクタをさらに含み、前記第1のマイクロ波コネクタと前記第2のマイクロ波コネクタの雌雄が同じである、請求項1乃至9のいずれかに記載のデバイス。
【請求項11】
前記マイクロ波コネクタが、前記マイクロ波減衰器チップの入力信号側に結合された第1の雌型マイクロ波コネクタを含み、前記マイクロ波減衰器チップの出力信号側に結合された第2の雌型マイクロ波コネクタをさらに含む、請求項1乃至10のいずれかに記載のデバイス。
【請求項12】
前記マイクロ波減衰器チップが、1ケルビンにおいて少なくとも1ワット毎メートルケルビンの固着材料熱伝導率を有する固着材料を介して前記ハウジング構成要素に貼着されためっきされた基板を含む、請求項1乃至11のいずれかに記載のデバイス。
【請求項13】
前記固着材料が銀エポキシを含む、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
デバイスであって、
マイクロ波信号減衰器チップを収容したハウジング構成要素であり、1ケルビンにおいて少なくとも1ワット毎メートル-ケルビンの熱伝導率を有する金属を含む、前記ハウジング構成要素と、
前記ハウジング構成要素にプレスばめにより機械的に結合された第1のサブアセンブリであり、前記マイクロ波信号減衰器チップの入力側に電気的に結合された第1のマイクロ波信号導体を有する第1のマイクロ波コネクタを含む、前記第1のサブアセンブリと、
前記ハウジング構成要素にプレスばめにより機械的に結合された第2のサブアセンブリであり、前記マイクロ波信号減衰器チップの出力側に電気的に結合された第2のマイクロ波信号導体を有する第2のマイクロ波コネクタを含む、前記第2のサブアセンブリと
を備えるデバイス。
【請求項15】
前記ハウジング構成要素が、耐酸化性材料でめっきされた銅合金ハウジング構成要素を含む、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
前記第1のマイクロ波信号導体が、1本または複数本のワイヤを介して前記マイクロ波信号減衰器チップの前記入力側に直接ワイヤ結合されたコネクタ・センタ・ピンを含む、請求項14または15に記載のデバイス。
【請求項17】
前記第1のマイクロ波コネクタが雌型マイクロ波コネクタを含み、前記第2のマイクロ波コネクタが別の雌型マイクロ波コネクタを含む、請求項14乃至16のいずれかに記載のデバイス。
【請求項18】
前記ハウジング構成要素が、1ケルビンにおいて少なくとも0.1ワット毎メートルケルビンの固着材料熱伝導率を有する固着材料を介して前記マイクロ波信号減衰器チップのめっきされた基板に結合された、請求項14乃至17のいずれかに記載のデバイス。
【請求項19】
前記ハウジング構成要素が、前記マイクロ波信号減衰器チップが取り付けられた下ハウジング部分と、前記マイクロ波信号減衰器チップを収容するように前記下ハウジング部分に固着した上ハウジング部分とを含む、請求項14乃至18のいずれかに記載のデバイス。
【請求項20】
方法であって、
マイクロ波信号減衰器デバイス用のパッケージ・アセンブリを構築すること
を含み、前記マイクロ波信号減衰器デバイス用の前記パッケージ・アセンブリを前記構築することが、
1ケルビンにおいて少なくとも0.1ワット毎メートル-ケルビンの熱伝導率を有するハウジング構成要素にマイクロ波信号減衰器チップを貼着すること、
前記ハウジング構成要素に第1のマイクロ波コネクタ・サブアセンブリをプレスばめにより結合すること、
前記ハウジング構成要素に第2のマイクロ波コネクタ・サブアセンブリをプレスばめにより結合すること、
前記マイクロ波信号減衰器チップの入力側を第1のマイクロ波コネクタ信号導体にワイヤ・ボンディングすること、および
前記マイクロ波信号減衰器チップの出力側を第2のマイクロ波コネクタ信号導体にワイヤ・ボンディングすること
を含む、方法。
【請求項21】
前記ハウジング構成要素が上ハウジング部分および下ハウジング部分を含み、前記ハウジング構成要素に前記マイクロ波信号減衰器チップを前記貼着することが、前記下ハウジング部分に前記マイクロ波信号減衰器チップを貼着することを含み、前記方法が、前記上ハウジング部分を前記下ハウジング部分に固着することによって前記ハウジング構成要素内に前記マイクロ波信号減衰器チップを収容することをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
デバイスであって、
入力信号導体を備える入力マイクロ波コネクタ構成要素であり、前記入力信号導体がマイクロ波信号減衰器チップの入力に電気的に結合された、前記入力マイクロ波コネクタ構成要素と、
出力信号導体を備える出力マイクロ波コネクタ構成要素であり、前記出力信号導体が前記マイクロ波信号減衰器チップの出力に電気的に結合された、前記出力マイクロ波コネクタ構成要素と、
1ケルビンにおいて少なくとも0.1ワット毎メートル-ケルビンの第1の熱伝導率を有するハウジング構成要素であり、1ケルビンにおいて少なくとも0.1ワット毎メートル-ケルビンの第2の熱伝導率を有する固着材料で前記マイクロ波信号減衰器チップに貼着され、前記入力マイクロ波コネクタ構成要素および前記出力マイクロ波コネクタ構成要素がプレスばめにより機械的に結合された、前記ハウジング構成要素と
を備えるデバイス。
【請求項23】
前記入力マイクロ波コネクタ構成要素、前記出力マイクロ波コネクタ構成要素および前記ハウジング構成要素が、耐酸化性材料でめっきされた、請求項22に記載のデバイス。
【請求項24】
前記ハウジング構成要素が銅合金を含む、請求項22または23に記載のデバイス。
【請求項25】
低温マイクロ波減衰器デバイスであって、
1ケルビンにおいて少なくとも0.1ワット毎メートル-ケルビンの熱伝導率を有するハウジング構成要素であり、前記ハウジング構成要素内に収容されたマイクロ波信号減衰器チップの熱エネルギーを放散させるように結合された、前記ハウジング構成要素と、
前記ハウジング構成要素にプレスばめにより機械的に結合された入力マイクロ波コネクタ構成要素であり、入力信号導体を備え、前記入力信号導体が、前記マイクロ波信号減衰器チップの入力に直接ワイヤ・ボンディングされた、前記入力マイクロ波コネクタ構成要素と、
前記ハウジング構成要素にプレスばめにより機械的に結合された出力マイクロ波コネクタ構成要素であり、出力信号導体を備え、前記出力信号導体が、前記マイクロ波信号減衰器チップの出力に直接ワイヤ・ボンディングされた、前記出力マイクロ波コネクタ構成要素と
を備える低温マイクロ波減衰器デバイス。
【請求項26】
前記マイクロ波信号減衰器チップの熱エネルギーを、1ケルビンにおいて少なくとも0.1ワット毎メートル-ケルビンの熱伝導率を有する固着材料を介して放散させるように、前記ハウジング構成要素が結合された、請求項25に記載の低温マイクロ波減衰器デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般にマイクロ波減衰器に関し、より詳細には、量子技術向けの低温マイクロ波減衰器デバイス(cryogenic microwave attenuator device)に関する。
【背景技術】
【0002】
量子コンピュータの基本単位は量子ビット(キュービット(qubit))である。量子ビットは、情報をコード化、記憶および操作することができる量子機械系(quantum mechanical system)である。キュービットの可干渉時間(coherence time,コヒーレンス時間)は、量子ビットにおいて量子状態を維持することができる時間の長さを規定する。
【0003】
超伝導ベースの量子アーキテクチャの性能は、超伝導キュービット/量子プロセッサの質に依存し、超伝導キュービット/量子プロセッサの質は、可干渉時間を測定することによって特徴づけることができる。これらの可干渉時間は多くの因子に依存し、それらの因子の1つは、低温におけるマイクロ波ハードウェア構成要素の性能である。例えば、量子コンピューティング・デバイスでは、希釈冷凍機(dilution refrigerator)(クライオスタット(cryostat))内においてクリーンで低雑音のマイクロ波信号をキュービットに送達するために使用するために、マイクロ波構成要素、特にマイクロ波減衰器(雑音およびマイクロ波信号を伝送し、減衰させるために使用される)が必要である。いくつかの低温マイクロ波減衰器が市販されているが、そのようなデバイスは、極低温(very low temperature)(例えば50ケルビン(K)から1K)およびミリケルビン(mK)の超低温(ultra-low temperature)ではうまく機能しない。例えば、希釈冷凍機内には5つの異なる温度域、すなわち約50K、約4K、0.7K、0.1Kおよびベース温度(base temperature)の温度域がある。ベース温度は通常約10mkである。
【発明の概要】
【0004】
本発明の1つまたは複数の実施形態の基本的理解を提供するため、以下に概要を示す。この概要が、鍵となる要素もしくは決定的に重要な要素を識別すること、または特定の実施形態の範囲もしくは特許請求の範囲を示すことは意図されていない。この概要の唯一の目的は、後に示すより詳細な説明の序文として、発想を、簡略化された形で示すことである。
【0005】
本発明の一態様によれば、デバイスは、ハウジング構成要素およびマイクロ波減衰器チップを備える低温マイクロ波減衰器デバイスを備える。ハウジング構成要素は、1ケルビンにおいて少なくとも約0.1ワット毎メートル-ケルビンの熱伝導率を有する。このデバイスはさらに、マイクロ波減衰器チップに直接ワイヤ結合された信号導体を備えるマイクロ波コネクタを備える。利点は、この低温マイクロ波減衰器デバイスが、より良好でより急速な熱平衡化(thermalization)を提供し、したがってよりクリーンなマイクロ波信号を提供することを含む。ハウジング構成要素は、銅合金ハウジング材料、例えば実質的に無酸素の高熱伝導率銅材料または電解銅材料を含むことができる。ハウジング構成要素の酸化に抵抗するため、ハウジング構成要素は、耐酸化性材料でめっきされたもの、例えば金でめっきされたものとすることができる。信号導体は、1本または複数本の金ワイヤを介してマイクロ波減衰器チップに直接ワイヤ結合されたコネクタ・センタ・ピンを含むことができる。利点は、マイクロ波コネクタがより望ましく熱平衡化される(thermalize)ことを含み、このことは量子プロセッサの機能を向上させる。
【0006】
別の態様によれば、デバイスは、マイクロ波信号減衰器チップを収容したハウジング構成要素であり、1ケルビンにおいて少なくとも約1ワット毎メートル-ケルビンの熱伝導率を有する金属を含む、ハウジング構成要素を備える。このデバイスはさらに、ハウジング構成要素に機械的に結合された第1のサブアセンブリであり、マイクロ波信号減衰器チップの入力側に電気的に結合された第1のマイクロ波信号導体を有する第1のマイクロ波コネクタを含む、第1のサブアセンブリを備える。このデバイスはさらに、ハウジング構成要素に機械的に結合された第2のサブアセンブリであり、マイクロ波信号減衰器チップの出力側に電気的に結合された第2のマイクロ波信号導体を有する第2のマイクロ波コネクタを含む、第2のサブアセンブリを備える。第1のマイクロ波コネクタは雌型マイクロ波コネクタを含むことができ、第2のマイクロ波コネクタも雌型マイクロ波コネクタを含むことができる。雌雄が同じコネクタを有することの利点は、コネクタの数が減ることによって信号反射が低減することを含む。
【0007】
さらに別の態様によれば、方法は、マイクロ波信号減衰器デバイス用のパッケージ・アセンブリを構築することを含み、マイクロ波信号減衰器デバイス用のパッケージ・アセンブリを構築することは、1ケルビンにおいて少なくとも約0.1ワット毎メートル-ケルビンの熱伝導率を有するハウジング構成要素にマイクロ波信号減衰器チップを貼着することを含む。この方法はさらに、ハウジング構成要素に第1のマイクロ波コネクタ・サブアセンブリを結合すること、およびハウジング構成要素に第2のマイクロ波コネクタ・サブアセンブリを結合することを含む。この方法はさらに、マイクロ波信号減衰器チップの入力側を第1のマイクロ波コネクタ信号導体にワイヤ・ボンディングすること、およびマイクロ波信号減衰器チップの出力側を第2のマイクロ波コネクタ信号導体にワイヤ・ボンディングすることを含む。利点は、マイクロ波コネクタ・サブアセンブリがより望ましく熱平衡化されることを含み、このことは量子プロセッサの機能を向上させる。
【0008】
別の態様によれば、デバイスは、入力信号導体を備える入力マイクロ波コネクタ構成要素であり、入力信号導体がマイクロ波信号減衰器チップの入力に電気的に結合された、入力マイクロ波コネクタ構成要素を備える。このデバイスはさらに、出力信号導体を備える出力マイクロ波コネクタ構成要素であり、出力信号導体がマイクロ波信号減衰器チップの出力に電気的に結合された、出力マイクロ波コネクタ構成要素を備える。このデバイスはさらに、1ケルビンにおいて少なくとも約0.1ワット毎メートル-ケルビンの第1の熱伝導率を有するハウジング構成要素を備える。このハウジング構成要素は、1ケルビンにおいて少なくとも約0.1ワット毎メートル-ケルビンの第2の熱伝導率を有する固着材料(fastening material)でマイクロ波信号減衰器チップに貼着されている。このハウジング構成要素は、入力マイクロ波コネクタ構成要素および出力マイクロ波コネクタ構成要素に機械的に結合されている。利点は、より良好な熱平衡化を含み、このことは量子プロセッサの機能を向上させる。
【0009】
さらに別の態様によれば、低温マイクロ波減衰器デバイスは、1ケルビンにおいて少なくとも約0.1ワット毎メートル-ケルビンの熱伝導率を有するハウジング構成要素を含む。このハウジング構成要素は、ハウジング構成要素内に収容されたマイクロ波信号減衰器チップの熱エネルギーを放散させるように結合されている。この低温マイクロ波減衰器デバイスはさらに、ハウジング構成要素に機械的に結合された入力マイクロ波コネクタ構成要素を備える。この入力マイクロ波コネクタ構成要素は、マイクロ波信号減衰器チップの入力に直接ワイヤ・ボンディングされた入力信号導体を備える。ハウジング構成要素には、出力マイクロ波コネクタ構成要素が機械的に結合されている。この出力マイクロ波コネクタ構成要素は、マイクロ波信号減衰器チップの出力に直接ワイヤ・ボンディングされた出力信号導体を備える。熱エネルギーを放散させるため、ハウジング構成要素を、1ケルビンにおいて少なくとも約0.1ワット毎メートル-ケルビンの熱伝導率を有する固着材料を介してマイクロ波信号減衰器チップに結合することができる。この低温マイクロ波減衰器デバイスの材料および設計の少なくとも1つの利点は、量子プロセッサの機能が向上することである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の例示的な1つまたは複数の実施形態による、高い熱伝導率を有する低温マイクロ波減衰器を使用して希釈冷凍機内の同軸制御線を通してマイクロ波制御信号を伝送するための例示的な構成要素を示すブロック図である。
図2】本開示の例示的な1つまたは複数の実施形態による、雌雄が同じコネクタを含む高熱伝導率サブアセンブリを備える、分解された状態の低温マイクロ波減衰器デバイスの透視図である。
図3】本開示の例示的な1つまたは複数の実施形態による、雌雄が同じコネクタを含む高熱伝導率サブアセンブリを備える、部分的に組み立てられた状態の低温マイクロ波減衰器デバイスの上面図である。
図4】本開示の例示的な1つまたは複数の実施形態による、低温マイクロ波減衰器デバイスの部分の拡大図である。
図5】本開示の例示的な1つまたは複数の実施形態による、チップが、デバイスの下ハウジング部分に貼着され、同軸コネクタのセンタ・ピンにボンディングされた、低温マイクロ波減衰器デバイスの上面図である。
図6】本開示の例示的な一実施形態による、低温マイクロ波減衰器デバイスの構成要素のブロック図である(倍率は一定ではない)。
図7】本開示の例示的な一実施形態による、低温減衰器デバイスを提供する方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の詳細な説明は例示だけが目的であり、以下の説明が、実施形態または実施形態の用途もしくは使用あるいはその両方を限定することは意図されていない。さらに、上記の項または「発明を実施するための形態」の項に示された明示または暗示の情報によって拘束されることも意図されていない。
【0012】
次に、図面を参照して1つまたは複数の実施形態を説明する。全体を通じて、同じ要素を指すために同じ参照符号が使用される。以下の説明では、説明の目的上、1つまたは複数の実施形態のより完全な理解を提供するために、多数の特定の詳細が示される。しかしながら、さまざまなケースにおいて、これらの特定の詳細なしで1つまたは複数の実施形態を実施することができることは明白である。
【0013】
さらに、本開示は、所与の例示的なアーキテクチャに関して説明されることになることを理解すべきである。しかしながら、他のアーキテクチャ、構造、基板材料およびプロセス特徴およびステップは、本開示の範囲内で変更することができる。
【0014】
層、領域または基板などの要素が別の要素「上」または別の要素「の上に」あると書かれているとき、その要素は、この別の要素上に直接にあることもあり、または介在要素が存在することもあることも理解されるであろう。逆に、1つの要素が別の要素「上に直接にある」または別の要素「の上に直接にある」と書かれている場合に限り、介在要素は存在しない。向きは一般に相対的であることに留意されたい。例えば、「上」または「の上」または「上部」または「下部」は逆向きにすることができ、逆向きにした場合には、たとえ、逆向きに示されたときに、技術的には~の下または~よりも下/~の下方にあると見える場合であっても、それらは不変であると考えることができる。1つの要素が別の要素に「接続」または「結合」されていると書かれているとき、その要素は、この別の要素に直接に接続または結合されていることもあり、または介在要素が存在することもあることも理解されるであろう。逆に、1つの要素が別の要素に「直接に接続」または「直接に結合」されていると書かれている場合に限り、介在要素は存在しない。
【0015】
本明細書において、本発明の原理の「1つの実施形態」または「一実施形態」およびこれらの句の他の変形が使用されているとき、それは、その実施形態に関連して記載された特定の特徴、構造、特性などが、本発明の原理の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書の全体を通じてさまざまな場所に現れる、句「1つの実施形態において」または「一実施形態において」および他の任意の変化の出現は、その全てが、その同じ実施形態に言及しているとは限らない。簡潔にするため、それぞれの実施形態で使用されている同じ要素の繰返しの説明は省く。
【0016】
一般に、課題は、知られているマイクロ波減衰器の熱的性能およびマイクロ波性能が、極低温(例えば4ケルビンまたは4K)および超低温(mK、例えば0.1K)においては十分には良好ではないことである。本明細書に記載された1つまたは複数の解決策は、希釈冷凍機内で使用される減衰器のより最適な熱平衡化を提供し、したがって改良されたキュービット性能/可干渉時間を提供し、その一方で、減衰器の適当なマイクロ波応答を維持する。理解されるであろうとおり、本明細書に記載されたマイクロ波減衰器技術は、量子応用(quantum application)における希釈冷凍機内のマイクロ波伝送線の熱平衡化の多くの課題を解決する。
【0017】
本明細書に記載された技術は一般に、希釈冷凍機の混合チャンバ(mixing chamber)の超低温(例えば0.01K)での使用を含む、量子コンピューティング技術を用いた低温での使用に適したマイクロ波減衰器デバイスを対象としている。一般に、この技術は高熱伝導率材料の使用に基づく。そのために、一対のマイクロ波制御信号線コネクタ構成要素と減衰器チップを収容したハウジング構成要素とを備える(例えばダイヤモンド、銀または銅合金でできた)高熱伝導率パッケージ・アセンブリを含む、さまざまな高熱伝導率構成要素が提供される。さらに、減衰器チップの抵抗性膜要素をその上に蒸着させた基板は、ハウジング構成要素接地面に、したがって希釈冷凍機プレートに熱エネルギーを放散させるために高い熱伝導率を必要とする。約4Kよりも高い温度ではサファイヤ、石英およびダイヤモンドを基板として使用することができ、その一方で、約4Kよりも低い温度(例えば0.7Kまたは0.01K)ではヒ化ガリウムまたは溶融ケイ素を基板として使用することができる。
【0018】
さらに、市販の減衰器とは違い、これらのマイクロ波制御信号線コネクタ構成要素は、それぞれの端部の雌雄が同じになるように、例えば雌型になるように設計することができる。このことは、減衰器デバイスをマイクロ波制御信号線に接続する1つまたは複数のアダプタの必要性を排除し、したがってマイクロ波接続の量を最小限に抑え、それによって量子プロセッサのマイクロ波制御線の反射点の数を減らす(このことはキュービット制御パルスの忠実度(fidelity)を増大させる)。
【0019】
次に図面を参照する。図中、同じ符号は、同じ要素または同種の要素を表す。図1は、希釈冷凍機内に高熱伝導率低温マイクロ波減衰器デバイス102~104を実装することができる例示的な回路/量子応用100を示す。図1は、一例として3つの減衰器デバイス102~104を示しているが、通常は5つのプレート(50Kプレート、4Kプレート、0.7Kプレート、0.1Kプレート、および一般に10mKと称される約0.01K~0.03Kのベース温度の混合チャンバ・プレート)があること、および、希釈冷凍機内の任意のプレート・レベルに減衰器デバイスを置くことができ、どのプレートにも(信号線毎に1つの)多数の減衰器デバイスを置くことができることが理解される。例示された減衰器デバイス102は一対の同軸コネクタ102aおよび102bを有し、例示された減衰器デバイス103は一対の同軸コネクタ103aおよび103bを有し、例示された減衰器デバイス104は一対の同軸コネクタ104aおよび104bを有することに留意されたい。
【0020】
量子応用は一般に、信号の大きさを小さくし、熱雑音を低減させ、導体を熱平衡化するために、希釈冷凍機の入力/出力制御信号線上にマイクロ波減衰器を必要とする。量子デバイスに入った入力信号は減衰し、同様に、希釈冷凍機から測定デバイスへの出力信号も減衰し得る。知られているとおり、この減衰は、大きな周波数帯にわたって実質的に等しく、したがって、本明細書に記載された技術は、図1の回路/量子応用100においてうまく機能する。したがって、マイクロ波信号は減衰して、温度変化の全体を通じて比較的クリーンな信号を提供し、その一方で、熱エネルギーは、他の金属および高熱伝導率基板を通して放散される。
【0021】
図2は、分解された状態で示された例示的な減衰器デバイス200の透視図を示す。この例示的な実施形態では、遮蔽された(例えば同軸のまたは単純に同軸)マイクロ波コネクタ202aおよび202bがそれぞれ、同軸結合部分220aおよび220bに結合されている。このような固定されたサブアセンブリ結合は、構築/生産時に部品を一緒に溶接、鋳造するなどして、全体として、固定された単一のサブアセンブリ221aまたは222bを形成することにより、製造の一部として達成することができる。マイクロ波コネクタ202aおよび202bは、SMA(例えばSMA-F)、SMP(例えばSMP-F)、もしくは知られている他のマイクロ波コネクタ設計とすることができ、またはカスタム設計とすることもできる。図2に示されているように、減衰器デバイス毎にこのようなサブアセンブリが2つあり、それらのサブアセンブリは、本明細書に記載されているとおり、雌雄が同じもの(例えば両方が雌)とすることができ、減衰器デバイス200の一端に一方のサブアセンブリ221aがあり、反対端にもう一方のサブアセンブリ221bがある。(例えば同軸)マイクロ波コネクタ202aおよび202bの対応するそれぞれのセンタ・ピン222aおよび222bを含む遮蔽信号線の中心導体が、減衰器デバイス200の中心に向かって延びており、中心導体は、理解されるように、(例えば接地された)同軸結合部分220aおよび220bから電気的に絶縁されている。
【0022】
図2にはさらに、上ハウジング部分224Uおよび下ハウジング部分224Lが示されている。ハウジング部分224Uおよび224L(ならびにサブアセンブリ221aおよび221b)は、酸化に抵抗するためにめっき(例えば金めっき)された無酸素高伝導率銅または電解銅でできたものとすることができる。例えば、さまざまな銅合金(例えばC101、C102、C103、C110)を使用することができる。ハウジング構成要素の熱伝導率がマイクロ波減衰器構成要素の熱エネルギーを放散させるように、ハウジング構成要素は、銅合金(または白金、銀、金、黄銅、アルミニウム(アルミニウムは温度が1.3Kよりも高い場合のみ))材料、例えば実質的に無酸素の高伝導率銅材料または電解銅材料を含むことができる。ハウジング構成要素の酸化に抵抗するため、ハウジング構成要素は、耐酸化性材料でめっきされたもの、例えば金でめっきされたものとすることができる。
【0023】
一般に、本明細書に記載されているとおり、同軸結合部分220aおよび220bは、下ハウジング部分224Lにプレスばめすることができ、または他の手段(例えば締結/ねじ留め、接着、または溶接など)で機械的に固着することができ、ことによると、ある程度、互いに対して固着することができる。下ハウジング部分224Lには、マイクロ波信号減衰器チップ550(図5)が取り付けられており(例えばはんだ付けまたは他の手段で接着されており)、マイクロ波信号減衰器チップ550からは、同軸マイクロ波コネクタ202aおよび202bのセンタ・ピン222aおよび222bにボンディングされたリード線が延びている。図2の例では、プレスばめ接続が示されている。この接続は、下ハウジング部分224Lに向かって延びる同軸結合部分220aおよび220bのアームによって少なくとも部分的に容易にされる。下ハウジング部分224Lは、適度な締りばめでアームを受け入れるように配置されたスロットを有し、このアームはさらに、レセプタクル(receptacle)によって、対応する相手方アームに、ある程度、はまるように延びることができる。
【0024】
上ハウジング部分224Uは下ハウジング部分224Lに固着されている。ねじ226および227は、対応する上ねじレセプタクル228U、229Uおよび下ねじレセプタクル228L、229Lとともに、固着機構を提供するものとして示されており、少なくとも下ねじレセプタクル228Lおよび229Lにはねじが切られている。それにもかかわらず、適当な任意の1つまたは複数の固着機構を使用することができる。
【0025】
図3は、部分的に組み立てられた状態にある、すなわち、この例ではサブアセンブリ221aおよび221bと下ハウジング部分224Lは一緒にプレスばめされているが、上ハウジング部分224Uは減衰器デバイス200の残りの部分に固着されていない、例示的な減衰器デバイス200の上面図を示す。330で示された概ね中心に位置するエリアは、チップが配置されることになる場所、すなわちセンタ・ピン222aと222bとの間である。図4は一般にこのエリア330の拡大図を示す。
【0026】
図5は、固着材料を用いて、マイクロ波信号減衰器チップ550を下ハウジング部分224Lにどのように貼着することができるのかを例示しており、これは例えば、エポキシもしくははんだ付けまたは他の手段により、下ハウジング部分224Lの頂部付近の比較的平らな部分にマイクロ波信号減衰器チップ550の基板を結合することによって達成することができる。エポキシまたははんだ小塊(部分的に示されている)が、この固着材料結合/高熱伝導率固着材料552を表している。なお、アナログ・デバイセズ社(Analog Devices, Inc.)から、適当な1つのチップ、例えばHMC658が市販されている。このチップは、高熱伝導率材料を用いてハウジング構成要素接地面に貼着するための熱結合を容易にするために、金めっきされた基板を有し、これは例えば、例えば銀エポキシ(silver epoxy)または高熱伝導率はんだを介して取り付けられる。
【0027】
入力側チップ・ボンディング・パッド556aおよび出力側チップ・ボンディング・パッド556b、例えば金ボンディング・パッドに、ワイヤ554aおよび554bがボンディングされており、ワイヤの他端はそれぞれ、センタ・ピン222aおよび222bにワイヤ・ボンディングされている。アルミニウム金属の超伝導臨界温度(T)(約1.3K)よりも高い温度ではアルミニウム・ワイヤを使用することができ、すなわち、希釈冷凍機のそれよりも高い温度の1つまたは複数のプレートとともにアルミニウム・ワイヤを使用することができ、それよりも低い温度では、別のワイヤ材料、例えば金ワイヤを使用することができる。したがって、一実施態様では、このボンディングが、マイクロ波コネクタ202aおよび202bのセンタ・ピン222aおよび222bとの金ワイヤ・ボンディングを含む。理解されることだが、図5に示されているように、ワイヤ554aおよび554bはワイヤ対とすることができ、対の一方のワイヤが切れた場合には、接触が劣化しまたはそうでなければ接触が切れる。
【0028】
図6は、本明細書で全体的に説明したような低温マイクロ波減衰器デバイス600の一実施形態の例示的な側面図を示す。図6の例示的な構成要素の倍率は一定ではないことに留意されたい。これは1つには、ある種の構成要素を強調するためである。それらの構成要素には一般に図1図5と同じ符号が付けられている。このようなデバイス600の組立ての一例も図6を参照して説明するが、説明した順序とは異なる組立て順序も可能であることが理解される。
【0029】
図6では、2つのサブアセンブリ221aおよび221b(同軸結合部分220aおよび220b、ならびに対応するそれぞれのセンタ・ピン222aおよび222bを含む結合された対応するそれぞれの同軸コネクタ202aおよび202b)が、下ハウジング部分224Lの対応するそれぞれの側(示されているとおり左側および右側)に固着されている。上述のとおり、適当な任意の固着技法を使用することができるが、プレスばめ固着は、本明細書に記載された適当な1つの技法である。
【0030】
下ハウジング部分224Lには、基板Sを含むマイクロ波信号減衰器チップ550が、高熱伝導率固着材料552、例えば銀エポキシまたは高熱伝導率はんだを介して接着されている。ワイヤ(対)554aおよび554bがそれぞれ、入力側および出力側チップ・ボンディング・パッド556aおよび556bにボンディングされており、さらに、それぞれセンタ・ピン222aおよび222b、例えば少なくとも接点部分が金めっきされたセンタ・ピン222aおよび222bにボンディングされている。
【0031】
上ハウジング部分224Uは、例えばねじ226および227を介して下ハウジング部分224Lに固着されており、一緒に固着されているとき、2つのハウジング部分224Uおよび224Lは、ひとまとめにしてハウジング構成要素224とみなすことができる。示されてはいないが、これらの構成要素、特に銅合金でできた構成要素はいずれも、耐酸化性材料、特に金でめっきされたものとすることができるが、その代わりに、適切な長さの耐用デバイス寿命の間、酸化に抵抗し得る銀などの任意の適当な材料を使用することもできる。金めっきされた高伝導率銅の円板などに、アセンブリ全体を完全に埋め込むことも可能である。
【0032】
理解できるとおり、無酸素高伝導率銅または電解銅ハウジング構成要素を、減衰器チップとマイクロ波コネクタとの間の直接ワイヤ・ボンディングとともに使用することにより、マイクロ波減衰器の効率的な熱平衡化が促進される。これは、マイクロ波構成要素、特にマイクロ波減衰器のより良好でより急速な熱平衡化を提供し、これは、よりクリーンなマイクロ波信号を提供する。さらに、それぞれの端のコネクタの雌雄を同じにすることによりマイクロ波コネクタを減らすことによって、より小さな反射を有するよりクリーンなマイクロ波信号が提供される。
【0033】
本技術は、マイクロ波制御線(同軸ケーブル)のより良好な熱平衡化、したがってより長い可干渉時間を提供し、このことは最終的に、量子コンピュータ/プロセッサのより良好な全体性能につながる。(例えば50オームにおいて常にインピーダンス整合しているわけではない)不必要なマイクロ波接続を排除することにより反射点の量を減らすことによって、よりクリーンなマイクロ波制御パルスが存在する。このことは、熱光子のより効率的な排出によるより良好な熱平衡化に起因する、キュービットのより速い回復時間に対応する。
【0034】
さらに、本明細書に記載された技術は、ある温度においてある種の材料を使用することができるため、経済的な考慮対象を提供する。例えば、アルミニウム金属の超伝導臨界温度よりも高い温度ではアルミニウム・ワイヤを使用することができ、より低い温度では別の(例えば金)ワイヤを使用することができ、異なる温度では異なるハウジング構成要素およびコネクタ材料を使用することができる、などである。したがって、希釈冷凍機内の異なる温度での使用に対応する、本明細書に記載されたアセンブリ・パッケージの異なるモデルが存在し得る。
【0035】
図7は、さまざまな操作として示されるものなどの方法を例示する。この方法は、マイクロ波信号減衰器デバイス用のパッケージ・アセンブリを構築すること(操作702)を含むことができ、マイクロ波信号減衰器デバイス用のパッケージ・アセンブリを構築することは、例えば1Kにおいて少なくとも約0.1ワット毎メートル-ケルビンの高い熱伝導率を有するハウジング構成要素224にマイクロ波信号減衰器チップ550を貼着すること(操作704)を含むことができる。操作706は、ハウジング構成要素224に第1のマイクロ波コネクタ・サブアセンブリ221aを結合することを表す。操作708は、ハウジング構成要素224に第2のマイクロ波コネクタ・サブアセンブリ221bを結合することを表す。操作710は、マイクロ波信号減衰器チップ550の入力側チップ・ボンディング・パッド556aを、第1のマイクロ波コネクタ信号導体(例えばセンタ・ピン222a)にワイヤ・ボンディングすることを表し、操作712は、マイクロ波信号減衰器チップの出力側を、第2のマイクロ波コネクタ信号導体(例えばセンタ・ピン222b)にワイヤ・ボンディングすることを表す。
【0036】
ハウジング構成要素224は、上ハウジング部分224Uおよび下ハウジング部分224Lを含むことができ、ハウジング構成要素にマイクロ波信号減衰器チップ550を貼着することは、下ハウジング部分224Lにマイクロ波信号減衰器チップ550を貼着することを含むことができる。諸態様は、上ハウジング部分224Uを下ハウジング部分224Lに固着することによってハウジング構成要素224内にマイクロ波信号減衰器チップ550を収容することを含むことができる。
【0037】
1つまたは複数の態様はデバイス600を含み、このデバイスは、ハウジング構成要素224(図2)を備える低温マイクロ波減衰器構成要素を備える。ハウジング構成要素224は、マイクロ波減衰器(例えばマイクロ波信号減衰器チップ550)を備えることができ、ハウジング構成要素224は、1Kにおいて少なくとも約0.1ワット毎メートル-ケルビンの熱伝導率を有することができる。デバイス600はさらにマイクロ波コネクタ202aを備えることができ、マイクロ波コネクタ202aは、マイクロ波減衰器(例えばマイクロ波信号減衰器チップ550)に直接ワイヤ結合された信号導体(例えばセンタ・ピン222a)を備える。
【0038】
ハウジング構成要素は銅合金材料を含むことができる。ハウジング構成要素は、耐酸化性材料でめっきされたものとすることができる。耐酸化性材料は金を含むことができる。ハウジング構成要素は、実質的に無酸素の高伝導率銅材料を含むことができる。ハウジング構成要素は電解銅材料を含むことができる。
【0039】
信号導体は、1本または複数本の金ワイヤを介してマイクロ波減衰器チップに直接ワイヤ結合されたコネクタ・センタ・ピンを含むことができる。低温マイクロ波減衰器デバイスは、アルミニウム金属の超伝導臨界温度よりも高い温度の希釈冷凍機プレートとともに使用することができ、このような1つまたは複数の希釈冷凍機プレートに関して、信号導体は、1本または複数本のアルミニウム・ワイヤを介してマイクロ波減衰器チップに直接ワイヤ結合されたコネクタ・センタ・ピンを含むことができる。
【0040】
マイクロ波コネクタは、マイクロ波減衰器チップの入力信号側に結合された第1のマイクロ波コネクタを含むことができ、デバイスはさらに、マイクロ波減衰器チップの出力信号側に結合された第2のマイクロ波コネクタを含むことができ、第1のマイクロ波コネクタと第2のマイクロ波コネクタの雌雄は同じとすることができる。マイクロ波コネクタは、マイクロ波減衰器チップの入力信号側に結合された第1の雌型マイクロ波コネクタを含むことができ、デバイスはさらに、マイクロ波減衰器チップの出力信号側に結合された第2の雌型マイクロ波コネクタを含むことができる。
【0041】
減衰器チップは、1Kにおいて少なくとも約1ワット毎メートル-ケルビンの熱伝導率を有する材料を介してハウジング構成要素に貼着されためっきされた基板を含むことができる。熱伝導率材料は銀エポキシを含むことができる。
【0042】
1つまたは複数の態様はデバイス600を含み、デバイス600は、マイクロ波信号減衰器チップ550を収容したハウジング構成要素224を備え、ハウジング構成要素224は、1Kにおいて少なくとも約0.1ワット毎メートル-ケルビンの熱伝導率を有する金属を含む。諸態様は、ハウジング構成要素224に機械的に結合されたものとすることができる第1のサブアセンブリ221aを備えることができ、第1のサブアセンブリ221aは、マイクロ波信号減衰器チップの入力側(例えば入力側チップ・ボンディング・パッド556a)に電気的に結合された第1のマイクロ波信号導体(例えばセンタ・ピン222a)を有する第1のマイクロ波コネクタ202aを含むことができる。ハウジング構成要素224に第2のサブアセンブリ221bを機械的に結合することができ、第2のサブアセンブリ221bは、マイクロ波信号減衰器チップの出力側(例えば出力側チップ・ボンディング・パッド556b)に電気的に結合された第2のマイクロ波信号導体(例えばセンタ・ピン222b)を有する第2のマイクロ波コネクタ202bを含むことができる。
【0043】
ハウジング構成要素は、耐酸化性材料でめっきされた銅合金ハウジング構成要素を含むことができる。
【0044】
第1の信号導体は、1本または複数本のワイヤを介してマイクロ波減衰器チップの入力側に直接ワイヤ結合されたコネクタ・センタ・ピンを含むことができる。第1のマイクロ波コネクタは雌型マイクロ波コネクタを含むことができ、第2のマイクロ波コネクタは雌型マイクロ波コネクタを含むことができる。
【0045】
ハウジング構成要素は、1Kにおいて少なくとも約0.1ワット毎メートル-ケルビンの熱伝導率を有する材料を介してマイクロ波信号減衰器チップのめっきされた基板に結合されたものとすることができる。ハウジング構成要素は、マイクロ波信号減衰器チップが取り付けられた下ハウジング部分と、マイクロ波信号減衰器チップを収容するように下ハウジング部分に固着した上ハウジング部分とを含むことができる。
【0046】
デバイス600は、入力信号導体(例えばセンタ・ピン222a)を備える入力マイクロ波コネクタ202aであり、入力信号導体がマイクロ波信号減衰器の入力(例えばマイクロ波信号減衰器チップ550の入力側チップ・ボンディング・パッド556a)に電気的に結合された、入力マイクロ波コネクタ202aを備えることができる。デバイスはさらに、出力信号導体(例えばセンタ・ピン222b)を備えることができる出力マイクロ波コネクタ202bであり、出力信号導体がマイクロ波信号減衰器の出力(例えばマイクロ波信号減衰器チップ550の出力側チップ・ボンディング・パッド556b)に電気的に結合された、出力マイクロ波コネクタ202bを備えることができる。デバイスはさらに、1Kにおいて少なくとも約0.1Kワット毎メートル-ケルビンの熱伝導率を有するハウジング構成要素224であり、1Kにおいて少なくとも約1ワット毎メートル-ケルビンの熱伝導率を有する材料でマイクロ波信号減衰器チップ550に貼着され、入力マイクロ波コネクタ202aおよび出力マイクロ波コネクタ202bに機械的に結合された、ハウジング構成要素224を備えることができる。
【0047】
入力マイクロ波コネクタ構成要素、出力マイクロ波コネクタ構成要素およびハウジング構成要素は、耐酸化性材料でめっきされたものとすることができる。ハウジング構成要素は銅合金を含むことができる。
【0048】
諸態様は、低温マイクロ波減衰器デバイス600を含むことができ、低温マイクロ波減衰器デバイス600は、1Kにおいて少なくとも約1ワット毎メートル-ケルビンの熱伝導率を有するハウジング構成要素224であって、ハウジング構成要素224内に収容されたマイクロ波信号減衰器(例えばマイクロ波信号減衰器チップ550)の熱エネルギーを放散させるように結合された、ハウジング構成要素224を備える。ハウジング構成要素224に入力マイクロ波コネクタ202aを機械的に結合することができ、入力マイクロ波コネクタ構成要素は、入力信号導体(例えばセンタ・ピン222a)を備えることができ、入力信号導体は、マイクロ波信号減衰器チップ550の入力に直接ワイヤ・ボンディングされている。ハウジング構成要素224に出力マイクロ波コネクタ202bを機械的に結合することができ、出力マイクロ波コネクタ202bは、出力信号導体(例えばセンタ・ピン222b)を備えることができ、出力信号導体は、マイクロ波信号減衰器チップ550の出力に直接ワイヤ・ボンディングされている。ハウジング構成要素224は、マイクロ波信号減衰器チップ550の熱エネルギーを、1Kにおいて少なくとも約1ワット毎メートル-ケルビンの熱伝導率を有する高熱伝導率固着材料552を介して放散させるように、結合することができる。
【0049】
上で説明したことは単なる例を含む。当然ながら、本開示を説明するために、構成要素、または材料などの考え得るあらゆる組合せを記載することは不可能だが、本開示の他の多くの組合せおよび置換が可能であることを当業者は理解することができる。さらに、発明を実施するための形態、特許請求の範囲、付録および図面において用語「含む」、「有する」、および「所有する」などが使用される範囲で、このような用語は、用語「備える」が、請求項中で転換語(transitional word)として使用されているときに解釈されるのと同様に、包括的であることが意図されている。
【0050】
さまざまな実施形態の説明は例示のために提示されたものであり、それらの説明が網羅的であること、または開示された実施形態に限定されることは意図されていない。当業者には、記載された実施形態の範囲および趣旨を逸脱しない多くの変更および変形が明白になるであろう。本明細書で使用されている用語は、実施形態の原理、実際的用途、もしくは市場に出ている技術には見られない技術的改良を最もうまく説明するように、または本明細書に開示された実施形態を他の当業者が理解することができるように選択した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7