IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ノヴァレッド・アクチエンゲゼルシャフトの特許一覧

特許7287985電子光電子デバイス用の有機材料、および有機材料を含む電子デバイス
<>
  • 特許-電子光電子デバイス用の有機材料、および有機材料を含む電子デバイス 図1
  • 特許-電子光電子デバイス用の有機材料、および有機材料を含む電子デバイス 図2
  • 特許-電子光電子デバイス用の有機材料、および有機材料を含む電子デバイス 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】電子光電子デバイス用の有機材料、および有機材料を含む電子デバイス
(51)【国際特許分類】
   H10K 85/60 20230101AFI20230530BHJP
   H10K 50/16 20230101ALI20230530BHJP
   H10K 50/165 20230101ALI20230530BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20230530BHJP
   C07F 9/6509 20060101ALI20230530BHJP
   C07D 405/14 20060101ALI20230530BHJP
   C07D 405/10 20060101ALI20230530BHJP
   C07D 241/12 20060101ALI20230530BHJP
   C07D 403/10 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
H10K85/60
H10K50/16
H10K50/165
H10K59/10
C07F9/6509 Z CSP
C07D405/14
C07D405/10
C07D241/12
C07D403/10
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020568508
(86)(22)【出願日】2019-06-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-11
(86)【国際出願番号】 EP2019065561
(87)【国際公開番号】W WO2019238858
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2022-03-29
(31)【優先権主張番号】18177827.5
(32)【優先日】2018-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503180100
【氏名又は名称】ノヴァレッド ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ガラン,エレナ
(72)【発明者】
【氏名】シュルツェ,ベンヤミン
【審査官】酒井 康博
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106243091(CN,A)
【文献】特開2005-243266(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03109919(EP,A1)
【文献】特開平08-073443(JP,A)
【文献】特開2007-197426(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 85/60
H10K 50/16
H10K 59/10
H10K 50/10
C07F 9/6509
C07D 405/14
C07D 405/10
C07D 241/12
C07D 403/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの構造部分Aおよび少なくとも1つの構造部分Bを含み、AおよびBが共通の原子を共有しない、エレクトロルミネセンスデバイスのための化合物であって、
前記構造部分Aは、一般式(I)を有する構造部分であり、
【化1】

、G、GおよびGは、1個~3個の芳香環を含む置換または非置換のアリールおよびヘテロアリールから独立して選択され、
前記構造部分Bは、置換または非置換のホスフィンオキシド、ホスフィンスルフィド、ピリミジン、ピリダジン、アントラセン、シンノリン、フタラジン、キナゾリン、トリアジン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ナフトフラン、ナフトチオフェン、ナフトベンゾフラン、ナフトベンゾチオフェン、ジナフトフラン、ジナフトチオフェン、ピリジルおよびニトリルから選択される少なくとも1つの基によって置換されているC~C60アリール、4個または5個の縮合6員芳香環からなるアリール、ならびに、1個、2個または3個の窒素環原子を含む3個、4個または5個の縮合6員芳香環からなるヘテロアリールから選択される構造部分であり、
化合物CAS2210235-93-9、CAS2214206-49-0およびCAS2210235-94-0は除外される、エレクトロルミノセンスデバイスのための化合物。
【請求項2】
前記構造部分Bはナフタレンを含まず、化合物CAS2210235-93-9、CAS2214206-49-0およびCAS2210235-94-0は除外される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
1つの構造部分Aのみを含む、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
1つまたは2つの構造部分Bを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
前記G、G、GおよびGのうちの3つは、フェニルである、請求項1から4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
少なくとも1つの部分Aは、単結合またはフェニレン架橋、ビフェニレン架橋もしくはテルフェニレン架橋を介して、少なくとも1つの部分Bと結合している、請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
、G、GおよびGの少なくとも1つは、少なくとも1つのフルオロ、アルキル、フルオロアルキル、ニトリル、ホスフィンスルフィドおよび/またはホスフィンオキシド基によって置換されている、請求項1から6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
少なくとも1つの部分Bは、少なくとも1つのフルオロ、アルキル、フルオロアルキル、ニトリル、ホスフィンスルフィドおよび/またはホスフィンオキシド基によってさらに置換されている、請求項1~7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
第1の電極と、第2の電極と、当該第1の電極と当該第2の電極との間に配置された、請求項1~8のいずれか1項に記載の化合物を含む層とを含む電子デバイス。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載の化合物を含む層は、正孔ブロッキング層である、請求項9に記載の電子デバイス。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか1項に記載の化合物を含む電子輸送層を含む、請求項9または10に記載の電子デバイス。
【請求項12】
請求項1~8のいずれか1項に記載の化合物を含む層は、電気的ドーパントをさらに含む、請求項9~11のいずれか1項に記載の電子デバイス。
【請求項13】
前記電気的ドーパントは、元素金属、金属錯体および金属塩から選択されるn型ドーパントである、請求項12に記載の電子デバイス。
【請求項14】
前記n型ドーパントは、アルカリ金属、アルカリ土類金属および遷移金属の塩および/または錯体から選択される、請求項13に記載の電子デバイス。
【請求項15】
前記電子デバイスは、エレクトロルミネセンスデバイスである、請求項9~14のいずれか1項に記載の電子デバイス。
【請求項16】
請求項9~15のいずれか1項に記載の電子デバイスを備える、表示デバイス。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
<技術分野>
本発明は、有機材料、および有機材料を含む電子デバイス、特にエレクトロルミネセンスデバイス、特に有機発光ダイオード(OLED)に関し、本発明は、電気デバイスおよび/またはエレクトロルミネセンスデバイスを含むデバイス、特に表示デバイス、特にOLEDを含む表示デバイスにも関する。
【0002】
<背景技術>
自己発光素子である有機発光ダイオード(OLED)は、広い視野角、優れたコントラスト、迅速な応答性、高輝度、優れた駆動電圧特性および色再現性を有している。典型的なOLEDは、アノード、正孔輸送層HTL、発光層EML、電子輸送層ETL、およびカソードを含み、これらは基板上に順次積層される。なお、HTL、EMLおよびETLは、有機化合物からなる薄膜である。
【0003】
アノードおよびカソードに電圧を印加すると、アノードから注入された正孔はHTLを介してEMLに移動し、カソードから注入された電子はETLを介してEMLに移動する。正孔と電子とは、EML内で再結合して励起子を生成する。励起子が励起状態から基底状態に落ちると、光が放出される。輝度/輝度が高く、かつ正孔および電子の注入と流れとが均衡しながらも、作動電圧をできるだけ低くすることを目的とし、上述の構造を有するOLEDが優れた効率および/または長寿命を有するように、改良された材料の開発が引き続き要求されている。
【0004】
低い動作電圧および高い電流密度/輝度を達成するための十分に確立された方法の1つは、電荷注入/電荷輸送層における電気的なパンド/またはn型ドーピング、特に高い電荷キャリア濃度を有するドープ層を生成する酸化還元ドーピングである。
【0005】
Hai-Tao Fengら(Chem Mater.2018、30、1285-1290)はピラジンおよびトリアジン構造部分を含む3つの化合物(CAS2210235-93-9、CAS2214206-49-0およびCAS2210235-94-0)を開示しており、これらの化合物は両親媒性有機ケージにおける研究に役立った。
【0006】
<発明の開示>
本発明の態様は、電子デバイス、特に、発光層および少なくとも2つの電極を含む発光デバイスまたはエレクトロルミネセンスデバイス用の化合物を提供し、外部量子効率EQEなどの効率を高め、特に、上部および/または下部の発光有機発光ダイオード(OLED)において、低い動作電圧および長い寿命を達成する。
【0007】
本発明の別の態様は、電子デバイス、特に本発明の化合物を含むエレクトロルミネセンスデバイスを提供する。本発明のさらに別の態様は、エレクトロルミネセンスデバイスを含む表示デバイスを提供する。
【0008】
本発明の一態様によれば、少なくとも1つの構造部分Aおよび少なくとも1つの構造部分Bを含み、AおよびBが共通の原子を共有しない、エレクトロルミネセンスデバイス用の化合物が提供される。
【0009】
ここで、構造部分Aは、一般式(I)を有する構造部分である。
【0010】
【化1】
【0011】
ここで、G、G、GおよびGは、1個~3個の芳香環を含む、置換または非置換のアリールおよびヘテロアリールから独立して選択される。
【0012】
前記構造部分Bは、置換または非置換のホスフィンオキシド、ホスフィンスルフィド、ピリミジン、ピリダジン、ナフタレン、アントラセン、シンノリン、フタラジン、キナゾリン、トリアジン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ナフトフラン、ナフトチオフェン、ナフトベンゾフラン、ナフトベンゾチオフェン、ジナフトフラン、ジナフトチオフェン、ピリジルおよびニトリルから選択される少なくとも1つの基によって置換されているC~C60のアリール、3個、4個または5個の縮合6員環芳香環からなる4個または5個の縮合6員環芳香環およびヘテロアリールからなり、1個、2個または3個の窒素環原子を含むアリールから選択される構造部分である。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、構造部分Bはナフタレンを含まない。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、化合物CAS2210235-93-9、CAS2214206-49-0およびCAS2210235-94-0は除外される。
【0015】
本明細書において、定義が与えられていない限り、「置換される」とは、重水素、C~C12のアルキルおよびC~C12のアルコキシによって置換されているものを指す。
【0016】
また一方で、本明細書において、「アリール置換」は、それ自体が1つ以上のアリール基および/またはヘテロアリール基によって置換されていてもよい、1つ以上のアリール基による置換を指す。
【0017】
同様に、本明細書において、「ヘテロアリール置換」は、それ自体が1つ以上のアリール基および/またはヘテロアリール基によって置換されていてもよい、1つ以上のヘテロアリール基による置換を指す。
【0018】
本明細書において、定義が与えられていない限り、「アルキル基」とは、飽和脂肪族ヒドロカルビル基を指す。当該アルキル基は、C~C12のアルキル基であってもよい。より具体的には、アルキル基は、C~C10のアルキル基またはC~Cのアルキル基であってもよい。例えば、C~Cのアルキル基は、アルキル鎖中に1個~4個の炭素を含み、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、およびt-ブチルから選択することができる。
【0019】
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が挙げられる。
【0020】
「シクロアルキル」という用語は、対応するシクロアルカンに含まれる環原子から1つの水素原子を形式的に引き抜くことによって、シクロアルカンから誘導される飽和ヒドロカルビル基を指す。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、アダマンチル基などが挙げられる。
【0021】
「ヘテロ」という用語は、共有結合した炭素原子によって形成され得る構造における少なくとも1つの炭素原子が別の多価原子によって置換される方法であると理解される。好ましくは、ヘテロ原子は、B、Si、N、P、O、Sから選択され、より好ましくは、N、P、O、Sから選択される。
【0022】
本明細書において、「アリール基」は、対応する芳香族炭化水素中の芳香環から1つの水素原子を形式的に引き抜くことによって、生成することができるヒドロカルビル基を指す。芳香族炭化水素は、少なくとも1つの芳香環または芳香環系を含有する炭化水素を指す。芳香環または芳香環系は、共有結合した炭素原子の平面環または環系を指し、平面環または環系は、ヒュッケル則を満たす非局在化電子の共役系を含む。アリール基の例としては、フェニルまたはトリルのような単環式基、ビフェニルのような単結合によって結合したより多くの芳香環を含む多環式基、およびナフチルまたはフルオレン-2-イルのような縮合環を含む多環式基が挙げられる。
【0023】
同様に、ヘテロアリールの下では、少なくとも1つのそのような環を含む化合物中の複素環式芳香環から1つの環水素を形式的に引き抜くことによって誘導される基であると適切に理解される場合が特にある。
【0024】
ヘテロシクロアルキルの下では、少なくとも1つのそのような環を含む化合物中の飽和シクロアルキル環から1つの環水素を形式的に引き抜くことによって誘導される基であると適切に理解される場合が特にある。
【0025】
「縮合アリール環」("fused aryl rings"または"condensed aryl rings")という用語は、2つのアリール環が少なくとも2つの共通sp-混成炭素原子を共有する場合、2つのアリール環が縮合("fused"または"condensed")しているとみなされる状態であると理解されている。
【0026】
本明細書において、単結合は、直接結合を指す。
【0027】
本発明の文脈において、「異なる」とは、化合物が同一の化学構造を有さないことを意味する。
【0028】
「ない」、「含有していない」、「含んでいない」という用語は、蒸着前の化合物に存在する可能性のある不純物を除外するものではない。不純物は、本発明によって達成される目的に関して技術的効果を有さない。
【0029】
「挟まれて接触」という用語は、中間の層が2つの隣接する層と直接接触する3つの層の配置を指す。
【0030】
本明細書において、正孔特性は、電場を印加したときに電子を供与して正孔を形成する能力、および最高被占分子軌道(HOMO)レベルに応じた導電特性により、アノードに形成される正孔が発光層に注入され、発光層に輸送されやすいことを指す。
【0031】
また、電子特性は、電場を印加したときに電子を受け入れる能力を指し、最低非占有分子軌道(LUMO)レベルに応じた導電特性により、カソードに形成される電子が発光層に注入され、発光層中を輸送されやすくなることを指す。
【0032】
<効果>
驚くべきことに、本発明に係る有機材料は、特に寿命に関して、当技術分野において知られている有機エレクトロルミネセンスデバイスよりも優れた様々な態様のデバイスを可能にすることによって、本発明の根底にある問題を解決することが見出された。
【0033】
一実施形態では、置換基G、G、GおよびGのいずれかに含まれる2つまたは3つの芳香環は、互いに縮合され得る。特定の実施では、1つ以上のG、G、GおよびGは、3つの縮合した芳香環からなっていてもよい。
【0034】
本発明のさらなる実施形態によれば、化合物は、1つの構造部分Aのみを含む。
【0035】
さらなる実施形態によれば、化合物は、1つまたは2つの構造部分Bを含む。
【0036】
さらなる実施形態によれば、G、G、GおよびGのうちの3つは、フェニルである。もちろん、1つよりも多い構造部分Aが存在する場合、代表的な置換基G~Gが部分Aのいずれかに対して独立していてもよい。
【0037】
一実施形態では、G、G、GおよびGの1つはフェニレン基であり、他のG、G、GおよびGは、フェニル基である。
【0038】
さらなる実施形態によれば、部分AおよびBの少なくとも1つは、単結合またはフェニレン架橋、ビフェニレン架橋もしくはテルフェニレン架橋を介して互いに結合する。
【0039】
さらなる実施形態によれば、G、G、GおよびGの少なくとも1つは、少なくとも1つのフルオロ、アルキル、フルオロアルキル、ニトリル、置換もしくは非置換のホスフィンオキシドおよび/または置換もしくは非置換のホスフィンスルフィド基によって置換される。
【0040】
さらなる実施形態によれば、部分Bの少なくとも1つは、少なくとも1つのフルオロ、アルキル、フルオロアルキル、ニトリル、置換もしくは非置換ホスフィンオキシドおよび/または置換もしくは非置換ホスフィンスルフィド基によって置換されている。
【0041】
一実施形態では、トリアジン構造部分は、ハロゲン、ヒドロキシおよび/またはアルコキシから選択される基によって直接置換されない。
【0042】
本発明者らは、驚くべきことに、本発明に係る有機材料をオプトエレクトロニクスデバイスの電子輸送層に使用する場合に、特に良好な性能を達成することができることを見出した。
【0043】
加えて、または代わりに、本発明者らは、驚くべきことに、本発明に係る有機材料をオプトエレクトロニクスデバイスの正孔ブロッキング層として使用する場合に、特に良好な性能を達成することができることを見出した。
【0044】
本発明は、さらに、第1の電極と、第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に配置された、本発明に係る有機材料を含む層と、を含む電子デバイスに関する。
【0045】
さらなる実施形態によれば、電子デバイスは、本発明に係る化合物を含む正孔ブロッキング層を含む。
【0046】
さらなる実施形態によれば、電子デバイスは、本発明に係る化合物を含む電子輸送層を含む。さらなる実施形態によれば、電子デバイスは、エレクトロルミネセンスデバイス、好ましくは、有機発光ダイオードである。
【0047】
本発明は、さらに、本発明に係る電子デバイスを備える表示デバイスに関し、好ましくは、表示デバイスは、本発明に係る有機発光ダイオードを備える。
【0048】
好ましいものとして本明細書において言及されている特定の配置は、特に有利であることが見出された。
【0049】
さらに、高効率および/または長寿命を有する有機エレクトロルミネセンスデバイスを実現することができる。
【0050】
以下、本発明の化合物およびそれを含むデバイスをより詳細に説明する。
【0051】
<化合物>
発光層の外側の本発明のデバイスに含まれる他の化合物と同様に、本発明の化合物は、エレクトロルミネセントデバイス、例えばOLEDの動作状態の下では発光しないことがある。
【0052】
特に好ましくは、以下の構造1-1~1-68を有する化合物であってもよい。
【0053】
【化2】
【0054】
【化3】
【0055】
【化4】
【0056】
【化5】
【0057】
【化6】
【0058】
【化7】
【0059】
【化8】
【0060】
【化9】
【0061】
【化10】
【0062】
【化11】
【0063】
【化12】
【0064】
〔電気的n型ドーパント〕
電気的n型ドーパントの下では、化合物が電子輸送マトリックス中に埋め込まれた場合に、同じ物理的状況下の純粋なマトリックスと比較して、形成される有機材料の電子特性を、特に電子の注入および/または電子の伝導率に関して改善すると理解されている。
【0065】
本発明の文脈において、「電子輸送マトリックス中に埋め込まれた」とは、電子輸送マトリックスと均一に混合されたことを意味する。
【0066】
電気的n型ドーパントは、元素金属、金属塩、金属錯体および有機ラジカルから選択することができる。
【0067】
一実施形態では、電気的n型ドーパントは、アルカリ金属塩およびアルカリ金属錯体から選択される。好ましくは、リチウム塩およびリチウム有機錯体から選択される。より好ましくは、ハロゲン化リチウムおよび有機リチウムキレートから選択される。さらにより好ましくは、フッ化リチウム、キノリノラートリチウム、ホウ酸リチウム、フェノラートリチウム、ピリジノラートリチウムから、またはシッフ塩基配位子を有するリチウム錯体から選択される。最も好ましくは、リチウム錯体は、式II、IIIまたはIVを有する。
【0068】
【化13】
【0069】
ここで、
A1~A6は、CH、CR、N、Oから選択される同一の基またはCH、CR、N、Oから独立して選択される基、
Rは、水素、ハロゲン、1個~20個の炭素原子を有するアルキル、アリールもしくはヘテロアリールから選択される同一の基、または、水素、ハロゲン、1個~20個の炭素原子を有するアルキル、アリールもしくはヘテロアリールから独立して選択される基であり、より好ましくは、A1~A6はCHであり、
ホウ酸塩ベースの有機配位子は、テトラ(1H-ピラゾール-1-イル)ホウ酸塩であり、
フェノラートは、2-(ピリジン-2-イル)フェノラート、2-(ジフェニルホスホリル)フェノラート、イミダゾールフェノラート、2-(ピリジン-2-イル)フェノラートまたは2-(1-フェニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)フェノラートであり、
ピリジノラートは、2-(ジフェニルホスホリル)ピリジン-3-オラートであり、
リチウムシッフ塩基は、構造100、101、102または103を有する。
【0070】
【化14】
【0071】
別の実施形態では、電気的n型ドーパントは、酸化還元n型ドーパントである。
【0072】
〔酸化還元n型ドーパント〕
酸化還元n型ドーパントの下では、化合物が電子輸送マトリックス中に埋め込まれた場合に、同じ物理的状態下で純粋なマトリックスと比較して自由電子の濃度を増加させると理解されている。
【0073】
酸化還元n型ドーパントは、エレクトロルミネセントデバイス、例えばOLEDの動作状態の下では発光しないことがある。一実施形態では、酸化還元n型ドーパントは、元素金属、電気的に中性の金属錯体および/または電気的に中性の有機ラジカルから選択される。
【0074】
n型ドーパントの強度の最も実用的な基準は、その酸化還元電位の値である。なお、酸化還元電位の値がどの程度負となり得るかは、特に限定されない。
【0075】
有機半導体に使用される通常の電子輸送マトリックスの還元電位は、フェロセン/フェロセニウム参照酸化還元対に対するサイクリックボルタンメトリーによって測定される場合、おおよそ、約-0.8V~約-3.1Vの範囲であり、このようなマトリックスを効果的にn型ドープすることができるn型ドーパントのための酸化還元電位の実際に適用可能な範囲は、わずかに広い約-0.5V~約-3.3Vの範囲である。
【0076】
酸化還元電位の測定は、同じ化合物の還元型および酸化型からなる、対応する酸化還元対について、実際に行われる。
【0077】
酸化還元n型ドーパントが、電気的中性金属錯体および/または電気的に中性の有機ラジカルである場合、その酸化還元電位の測定は、以下の(i)または(ii)によって形成される酸化還元対について、実際に行われる。
(i)電気的に中性の金属錯体、および電気的に中性の金属錯体から1つの電子を引き抜くことによって形成される、そのカチオンラジカル
(ii)電気的に中性の有機ラジカル、および電気的に中性の有機ラジカルから1つの電子を引き抜くことによって形成される、そのカチオン
好ましくは、電気的に中性の金属錯体および/または電気的に中性の有機ラジカルの酸化還元電位が、以下の(i)または(ii)からなる、対応する酸化還元対に関する、フェロセン/フェロセニウムの参照酸化還元対に対するサイクリックボルタンメトリーによって測定される場合、電気的に中性の有機ラジカルおよび/または電気的に中性の有機ラジカルの酸化還元電位は、-0.5Vよりも負の値を有していてもよい。好ましくは-1.2Vよりも負の値、より好ましくは-1.7Vよりも負の値、さらにより好ましくは-2.1Vよりも負の値、最も好ましくは-2.5Vよりも負の値を有していてもよい。
(i)電気的に中性の金属錯体、および電気的に中性の金属錯体から1つの電子を引き抜くことによって形成される、そのカチオンラジカル
(ii)電気的に中性の有機ラジカル、および電気的に中性の有機ラジカルから1つの電子が引き抜かれることによって形成される、そのカチオン
好ましい実施形態では、n型ドーパントの酸化還元電位は、選択された電子輸送マトリックスの還元電位の値と比べて、約0.5Vよりも正の値と、約0.5Vよりも負の値との間である。
【0078】
酸化還元n型ドーパントとして好適な電気的に中性の金属錯体は、例えば、低酸化状態のいくつかの遷移金属の強い還元錯体であってもよい。特に強力な酸化還元n型ドーパントは、WO2005/086251により詳細に記載されているように、例えば、W(hpp)などのCr(II)、Mo(II)および/またはW(II)グアニジン酸塩錯体から選択することができる。
【0079】
酸化還元n型ドーパントとして好適な電気的に中性の有機ラジカルは、例えば、EP1837926B1、WO2007/107306、またはWO2007/107356により詳細に記載されているように、それらの安定なダイマー、オリゴマーまたはポリマーから追加のエネルギーの供給によって生成される有機ラジカルであってもよい。元素金属の下では、純金属の状態、金属合金の状態、または遊離原子もしくは金属クラスターの状態の金属であると理解される。金属相から、例えば純粋なバルク金属から、真空熱蒸発によって蒸着された金属は、それらの元素の形態において気化することが理解される。
【0080】
気化した元素金属が共有結合マトリックスと共に堆積される場合、金属原子および/またはクラスターは、共有結合マトリックス中に埋め込まれることがさらに理解される。換言すれば、真空熱蒸発によって調製される任意の金属ドープ共有結合材料は、金属を少なくとも部分的にその元素形態で含有することが理解される。
【0081】
家庭用電化製品での使用には、放射性崩壊の非常に長い半減期を有する安定な核種または核種を含有する金属のみが適用可能である可能性がある。許容可能なレベルの原子安定性として、天然カリウムの原子安定性を採用することができる。
【0082】
一実施形態では、n型ドーパントは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、および第一遷移金属Ti、V、CrおよびMnから選択される陽性金属から選択することができる。n型ドーパントは、好ましくは、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、Sm、Eu、Tm、Ybから選択することができる。より好ましくは、Li、Na、K、Rb、Cs、MgおよびYbから選択することができる。さらにより好ましくは、Li、Na、CsおよびYbから選択することができる。最も好ましくは、Li、NaおよびYbから選択することができる。
【0083】
酸化還元ドーパントは、実質的に非発光性であってもよい。
【0084】
本発明の別の態様によれば、第1の電極と、第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に配置された、本発明に係る有機材料を含む層とを含む電子デバイスが提供される。本発明に係る有機材料の層は、電子輸送層および/または正孔ブロッキング層としての役割を果たしてもよい。一実施形態では、電子デバイスは、電子エレクトロルミネセンスデバイスである。好ましくは、エレクトロルミネセンスデバイスは、有機発光ダイオードである。一実施形態では、本発明に係る化合物を含む層は、電気ドーパントをさらに含む。
【0085】
一実施形態では、層に含まれる電気ドーパントは、元素金属、金属錯体および金属塩から選択されるn型ドーパントであってもよい。一実施形態では、n型ドーパントは、アルカリ金属、アルカリ土類金属ならびに遷移金属の塩および/または錯体から選択することができる。好ましくは、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、Fe、Mn、Znの塩および/または錯体から選択することができる。
【0086】
本発明の別の態様によれば、本出願全体にわたって記載される任意の実施形態に係る少なくとも1つのエレクトロルミネセンスデバイスを含む電子デバイスが提供される。好ましくは、電子デバイスは、本出願全体にわたって記載される実施形態のうちの1つにおいて有機発光ダイオードを含む。より好ましくは、電子デバイスは、表示デバイスである。
【0087】
<図面の説明>
前述の構成要素および特許請求される構成要素、ならびに説明される実施形態において本発明に従って使用される構成要素は、それらの大きさ、形状、材料選択、および技術的概念に関して、いかなる特別な例外も受けず、その結果、関連する分野において知られている選択基準を、限定なしに適用することができる。
【0088】
本発明の目的のさらなる詳細、特性、および利点は、それぞれの図面の従属請求項および以下の説明に開示されており、例示的な様式によって、本発明に係る好ましい実施形態を示す。いずれの実施形態も、必ずしも本発明の全範囲を表すものではなく、したがって、本発明の範囲を解釈するために特許請求の範囲および本明細書を参照されたい。前述の概略の説明および以下の詳細な説明の両方は、例示および説明のみであり、特許請求される本発明のさらなる説明を提供することが意図されることが理解されるべきである。
【0089】
図1は、本発明の一実施形態に係る有機発光ダイオードを示す断面図である。
【0090】
図2および図3は、本発明の一実施形態に係る有機発光ダイオードの有機層の一部を具体的に示す断面図である。
【0091】
以下、例を参照して図面をより詳細に説明する。しかしながら、本開示は、以下の図面に限定されない。
【0092】
図1図3は、本発明の一実施形態に係る有機発光ダイオード100、300、400の概略断面図である。以下、図1を参照して、本発明の一実施形態に係る有機発光ダイオードの構造およびその製造方法を説明する。有機発光ダイオード100は、アノード110と、任意の正孔輸送領域を含む有機層の積層体105と、発光層130と、順次積層されるカソード150との構造を有する。
【0093】
基板は、アノード110上またはカソード150の下に配置されてもよい。基板は、通常の有機発光ダイオードに使用される通常の基板から選択することができ、ガラス基板または透明なプラスチック基板であってもよい。
【0094】
アノード110は、基板上にアノード材料を堆積またはスパッタリングすることによって形成されてもよい。アノード材料は、正孔の注入を容易にする高い仕事関数を有する材料から選択することができる。アノード110は、反射電極、透過反射電極、または透過電極であってもよい。負極材としては、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム酸化亜鉛(IZO)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)などを用いてもよい。あるいは、銀(Ag)、金(Au)などの金属、またはこれらの合金であってもよい。
【0095】
アノード110は、単層であってもよいし、2層以上の多層構造であってもよい。
【0096】
本発明の一実施形態に係る有機発光ダイオード100、300、400は、正孔輸送領域と、発光層130と、本発明に係る化合物を含む第1の電子輸送層31とを含んでいてもよい。
【0097】
図2を参照すると、有機層の積層体105の正孔輸送領域は、少なくとも2つの層状正孔輸送層を含んでもよい。この場合、発光層(130)に接触する正孔輸送層は、第2の正孔輸送層135として定義され、アノード(110)に接触する正孔輸送層は、第1の正孔輸送層34として定義される。有機層の積層体105は、2つのさらなる層、すなわち正孔ブロッキング層33および電子輸送層31をさらに含む。積層体105の正孔輸送領域は、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロッキング層、およびバッファ層のうち少なくとも1つをさらに含んでいてもよい。
【0098】
積層体105の正孔輸送領域は、正孔注入層のみ、または正孔輸送層のみを含んでいてもよい。あるいは、正孔輸送領域は、正孔注入層36/正孔輸送層34または正孔注入層36/正孔輸送層34/電子ブロッキング層(135)が順次アノード110から積層された構造を有していてもよい。
【0099】
例えば、正孔注入層36および電子注入層37を追加的に含んでいてもよく、その結果、OLEDは、順次積層されるアノード110/正孔注入層36/第1の正孔輸送層34/電子ブロッキング層135/発光層130/正孔ブロッキング層33/電子輸送層31/電子注入層37/カソード150を含んでいてもよい。
【0100】
本発明の別の態様によれば、有機エレクトロルミネセンスデバイス(400)は、アノード(110)、正孔注入層(36)、第1の正孔輸送層(34)、任意の電子ブロッキング層(135)、発光層(130)、正孔ブロッキング層(33)、電子輸送層(31)、任意の電子注入層(37)、カソード(150)を含み、これらの層はこの順に配置されている。
【0101】
正孔注入層36は、アノードとしてのITOと正孔輸送層34に使用される有機材料との間の界面特性を改善することができ、非平坦化ITO上に適用されることにより、ITOの表面を平坦化する。例えば、正孔注入層36は、アノードとしてのITOの仕事関数と、第1の正孔輸送層34のHOMOのエネルギーレベルとの間の差を調整するために、アノードとしてのITOの仕事関数と、第1の正孔輸送層34のHOMOのエネルギーレベルとの間の、その最高被占分子軌道(HOMO)のエネルギーレベルの中央値を有する材料を含んでいてもよい。
【0102】
正孔輸送領域が正孔注入層36を含む場合、正孔注入層は、種々の方法、例えば、真空蒸着、スピンコーティング、一体成型、ラングミュア-ブロジェット方法(LB)法などのいずれかによって、アノード110上に形成されてもよい。
【0103】
真空蒸着法を用いて正孔注入層を形成する場合、正孔注入層を形成するために使用される材料、形成する正孔注入層の所望の構成および熱特性によって真空蒸着条件を変えてもよい。例えば、約100℃~約500℃の温度、約10-6Pa~約10-1Paの圧力、および約0.1nm/sec~約10nm/secの蒸着速度において真空蒸着を行ってもよいが、蒸着条件は、これに限定されるものではない。
【0104】
スピンコーティングを用いて正孔注入層を形成する場合、正孔注入層を形成するために使用される材料、および形成される正孔注入層の所望の構造および熱特性によって、塗布条件は変わり得る。例えば、塗布速度は約2000rpm~約5000rpmの範囲であってもよく、塗布後に溶媒を除去するために加熱処理を行う温度は約80℃~約200℃の範囲であってもよいが、塗布条件はこれに限定されない。
【0105】
正孔輸送層および電子ブロッキング層を形成する条件は、正孔注入層について上述した形成条件に基づいて規定してもよい。
【0106】
電荷輸送領域の正孔輸送部の厚さは、約10nm~約1000nm、例えば、約10nm~約100nmとすることができる。電荷輸送領域の正孔輸送部分が正孔注入層および正孔輸送層を含む場合、正孔注入層の厚さは、約10nm~約1000nm、例えば、約10nm~約100nmとすることができ、正孔輸送層の厚さは、約5nm~約200nm、例えば、約10nm~約150nmとすることができる。電荷輸送領域、HIL、およびHTLの正孔輸送部分の厚さがこれらの範囲内にある場合、駆動電圧の大幅な増加なしに十分な正孔輸送特性が得られる可能性がある。
【0107】
正孔輸送領域において使用される正孔輸送マトリックス材料は、特に限定されない。少なくとも6個の非局在化電子の共役系を含む共有結合化合物が好ましい。「共有結合化合物」という用語は、第2の電子輸送マトリックスに関する段落において、以下により詳細に説明される。正孔輸送層に広く使用されている正孔輸送マトリックス材料の典型例は、多環式芳香族炭化水素、トリアリールアミン化合物および複素環式芳香族化合物である。正孔輸送領域の種々の層で有用な正孔輸送行列のフロンティア軌道エネルギー準位の適切な範囲は、よく知られている。酸化還元対HTLマトリックス/HTLマトリックスのカチオンラジカルの酸化還元電位に関して、好ましい値(例えば、参照としてフェロセン/フェロセニウム酸化還元対に対するサイクリックボルタンメトリーによって測定される場合)は、0.0V~1.0Vの範囲、より好ましくは0.2V~0.7Vの範囲、さらにより好ましくは0.3V~0.5Vの範囲であり得る。
【0108】
有機層の積層体の正孔輸送領域は、上述の材料に加えて、導電率を改善するための電荷発生材料をさらに含んでもよい。電荷発生材料は、正孔輸送領域中に均質にまたは不均質に分散していてもよい。
【0109】
電荷発生材料は、例えば、p型ドーパントであってもよい。p型ドーパントは、キノン誘導体、金属酸化物、シアノ基含有化合物のうちの1つであってもよいが、これらに限定されるものではない。pドーパントの非限定的な例は、テトラシアノキノンジメタン(TCNQ)、2,3,5,6-テトラフルオロ-テトラシアノ-1,4-ベンゾキノンジメタン(F4-TCNQ)などのキノン誘導体、酸化タングステン、酸化モリブデンなどの金属酸化物、および以下の化合物HT-D1などのシアノ含有化合物である。
【0110】
【化15】
【0111】
電荷輸送領域の正孔輸送部は、バッファ層をさらに含んでいてもよい。
【0112】
バッファ層は、EMLから放射される光の波長に従って、光の光共鳴距離を補うことにより、効率を高めることができる。
【0113】
発光層(EML)は、真空蒸着、スピンコーティング、一体成型、LB法などを使用することによって、正孔輸送領域上に形成されてもよい。真空蒸着またはスピンコーティングを用いて発光層を形成する場合、蒸着および塗布のための条件は、正孔注入層の形成のための条件と同様であり得るが、蒸着および塗布のための条件は、発光層を形成するために使用される材料によって変わり得る。発光層は、エミッタホスト(EMLホスト)およびエミッタドーパント(さらなるエミッタのみ)を含んでもよい。
【0114】
エミッタは、赤色、緑色、または青色のエミッタであってもよい。
【0115】
一実施形態では、エミッタホストは、下記の式400によって表されるアントラセンマトリックス化合物である。
【0116】
【化16】
【0117】
式400において、Ar111およびAr112は、それぞれ独立して、置換または非置換のC~C60のアリーレン基であってもよい。Ar113~Ar116は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC~C10のアルキル基、または置換または非置換のC~C60のアリール基であってもよい。g、h、i、およびjは、それぞれ独立して、0~4の整数であってもよい。いくつかの実施形態では、式400におけるAr111およびAr112は、それぞれ独立して、フェニレン基、ナフチレン基、フェナントレニレン基およびピレニレン基、ならびにフェニレン基、ナフチレン基、フェナントレニレン基、フルオレニル基およびピレニレン基のうちの1つであり、それぞれ、フェニル基、ナフチル基、およびアントリル基のうちの少なくとも1つによって置換されていてもよい。
【0118】
式400において、g、h、i、およびjは、それぞれ独立して、0、1、または2の整数であってもよい。
【0119】
式400において、Ar113~Ar116は、それぞれ独立して、以下のうちの1つであってもよい。
・フェニル基、ナフチル基またはアントリル基のうちの少なくとも1つによって置換されているC~C10のアルキル基;
・フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基、フェナントレニル基またはフルオレニル基;
・重水素原子、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミジノ基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、カルボキシル基もしくはこれらの塩、スルホン酸基もしくはその塩、リン酸基もしくはその塩、C~C60のアルキル基、C~C60のアルケニル基、C~C60のアルキニル基、C~C60のアルコキシ基、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基、フェナントレニル基またはフルオレニル基のうちの少なくとも1つによってそれぞれ置換されている、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基、フェナントレニル基またはフルオレニル基;あるいは、
・以下の化学式または以下の式(Y2)もしくは(Y3)
【0120】
【化17】
【0121】
【化18】
【0122】
ここで、式(Y2)および(Y3)において、Xは、酸素原子および硫黄原子から選択されるが、本発明の実施形態は、これらに限定されない。
【0123】
式(Y2)において、R11~R14のいずれか1つは、Ar111への結合に使用される。Ar111への結合に使用されないR11~R14およびR15~R20は、R~Rと同じである。
【0124】
式(Y3)において、R21~R24のいずれか1つは、Ar111への結合に使用される。Ar111への結合に使用されないR21~R24およびR25~R30は、R~Rと同じである。
【0125】
好ましくは、EMLホストは、N、OまたはSからなる群から選択される1個~3個のヘテロ原子を含む。より好ましくは、EMLホストは、SまたはOから選択される1個のヘテロ原子を含む。
【0126】
本発明のさらなる態様によれば、エミッタホストは、それぞれ還元電位を有し、テトラヒドロフランにおけるFc/Fcに対するサイクリックボルタンメトリーによって同じ条件下で測定した場合、7-([1,1’-ビフェニル]-4-イル)ジベンゾ[c,h])アクリジンについて得られたそれぞれの値よりも負の値、好ましくは9,9’,10’,10’-テトラフェニル-2,2’-ビアントラセンについてのそれぞれの値よりも負の値、より好ましくは2,9-ジ([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリンについてのそれぞれの値よりも負の値、さらにより好ましくは2,4,7,9-テトラフェニル-1,10-フェナントリンについてのそれぞれの値よりも負の値、さらにより好ましくは9,10-ジ(ナフタレン-2-イル)-2-フェニルアントラセンについてのそれぞれの値よりも負の値、さらにより好ましくは2,9-ビス(2-メトキシフェニル)-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリンの値よりもさらに負であることがより好ましく、最も好ましくは、9,9’-スピロビ[フルオレン]-2,7-ジイルビス(ジフェニルホスフィンオキシド)についてのそれぞれの値よりも負の値を有する。
【0127】
エミッタは、発光させるために少量混合されており、通常、多重励起により発光して三重項以上となる金属錯体などの材料であってもよい。エミッタは、例えば、無機、有機、または有機金属化合物であってもよく、それらの1種類以上が用いられていてもよい。
【0128】
エミッタは、蛍光エミッタ、例えば、テラフルオレンであってもよく、構造を以下に示す。4.4’-ビス(4-ジフェニルアミオスチリル)ビフェニル(DPAVBi)、2,5,8,11-テトラ-ターシャリー-ブチルペリレン(TBPe)および以下の化合物4は、蛍光青色エミッタの例である。
【0129】
【化19】
【0130】
〔化合物4〕
別の態様によれば、本発明に係る化合物を含む有機半導体層は、蛍光青色発光層とカソード電極との間に配置される。
【0131】
エミッタは、燐光エミッタであってもよく、燐光エミッタの例としては、Ir、Pt、Os、Ti、Zr、Hf、Eu、Tb、Tm、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、またはそれらの組み合わせを含む有機金属化合物が挙げられる。燐光エミッタは、例えば、式Zによって表される化合物であってもよいが、これに限定されない。
【0132】
MX・・・(Z)
式Zにおいて、Mは金属であり、LおよびXは同一または異なり、Mと錯化合物を形成するためのリガンドである。
【0133】
Mは、例えば、Ir、Pt、Os、Ti、Zr、Hf、Eu、Tb、Tm、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、または多核錯体における、それらの組み合わせであってもよく、LおよびXは、例えば、ビデン酸リガンドであってもよい。
【0134】
発光層の厚さは、約10nm~約100nm、例えば、約20nm~約60nmとすることができる。発光層の厚さがこれらの範囲内にある場合、発光層は、駆動電圧の大幅な増加なしに、改善された発光特性を有することができる。
【0135】
次に、有機層の積層体105の電子輸送領域が、発光層の上に配置される。
【0136】
有機層の積層体の電子輸送領域は、少なくとも電子輸送層を含む。有機層の積層体の電子輸送領域は、電子注入層および/または正孔ブロッキング層をさらに含んでいてもよい。少なくとも1つの電子輸送層は、その様々な実施形態のうちの1つに係るn型ドープ有機材料を含む。
【0137】
例えば、有機層の積層体の電子輸送領域は、電子輸送層/正孔ブロッキング層/電子注入層の構造を有していてもよいが、これに限定されない。例えば、本発明の一実施形態に係る有機発光ダイオードは、有機層の積層体105の電子輸送領域に少なくとも2つの電子輸送層を含み、この場合、発光層に接触する層は、正孔ブロッキング層33である。
【0138】
電子輸送層は、2つ以上の異なる電子輸送マトリックス化合物を含んでいてもよい。
【0139】
〔第2の電子輸送マトリックス化合物〕
本発明に係るデバイス、例えば、正孔ブロッキング層、電子注入層を含むデバイスにおける電子輸送領域の様々な実施形態は、第2の電子輸送マトリックス化合物を含んでいてもよい。
【0140】
第2の電子輸送マトリックスは、特に限定されない。発光層の外側に含まれる本発明のデバイス内にある他の材料と同様に、第2の電子輸送マトリックスは、光を放出しなくてもよい。
【0141】
一実施形態によれば、第2の電子輸送マトリックスは、有機化合物、有機金属化合物、または金属錯体とすることができる。
【0142】
一実施形態によれば、第2の電子輸送マトリックスは、少なくとも6個の非局在化電子の共役系を含む共有結合化合物であってもよい。可能な限り広い意味での共有結合材料の下では、すべての化学結合の少なくとも50%が共有結合であり、配位結合も共有結合とみなされる材料であると理解してもよい。本出願では、この用語が最も広い意味で、主に有機化合物からだけでなく、例えば、炭素を含まない構造部分を含む化合物、例えば、置換2,4,6-トリボラ-1,3,5トリアジン、または金属錯体、例えば、アルミニウムトリス(8-ヒドロキシキノリノレート)からも選択される全ての通常の電子輸送マトリックスを包含する。
【0143】
分子共有結合材料は、真空熱蒸発(VTE)によって処理可能であるのに十分に安定であることが好ましい低分子量化合物を含んでいてもよい。あるいは、共有結合材料は、高分子共有結合化合物、好ましくは溶媒に可溶であるため、溶液の形態で処理可能な化合物を含んでいてもよい。高分子、実質的に共有結合性の材料は、架橋されて無限の不規則なネットワークを形成し得るが、そのような架橋された高分子、実質的に共有結合性のマトリックス化合物は、依然として、骨格原子および周辺原子の両方を含むと考えられることを理解されたい。共有結合化合物の骨格原子は、少なくとも2つの隣接原子に共有結合している。共有結合化合物の他の原子は、単一の隣接原子と共有結合している周辺原子である。部分的に共有結合を有するが、実質的に、ケイ素、ゲルマニウム、ガリウムヒ素、リン化インジウム、硫化亜鉛、ケイ酸塩ガラスなどのような周辺原子を欠く、無機無限結晶または完全に架橋されたネットワークは、このような完全に架橋された共有結合材料がこのような材料によって形成される相の表面上にのみ周辺原子を含むので、本出願の意味において共有結合マトリックスとはみなされない。カチオンおよびアニオンを含む化合物は、少なくともカチオンまたは少なくともアニオンが少なくとも10個の共有結合した原子を含む場合、依然として共有結合であると考えられる。
【0144】
共有結合した第2の電子輸送マトリックス化合物の好ましい例は、共有結合したC、H、O、N、Sから主になる有機化合物であり、これは、場合により、共有結合したB、P、As、Seも含み得る。一実施形態では、第2の電子輸送マトリックス化合物は、金属原子を欠き、その骨格原子の大部分は、C、O、S、Nから選択される。
【0145】
別の実施形態では、第2の電子輸送マトリックス化合物は、少なくとも6個、より好ましくは少なくとも10個、さらにより好ましくは少なくとも14個の非局在化電子の共役系を含む。
【0146】
非局在化電子の共役系の例は、パイ結合およびシグマ結合が交互した系である。必要に応じて、その原子間にパイ結合を有する1つ以上の2原子構造単位を、少なくとも1つの孤立電子対を有する原子、典型的にはO、S、Se、Teから選択される2価原子、またはN、P、As、Sb、Biから選択される3価原子によって置換することができる。好ましくは、非局在化電子の共役系がヒュッケル則に従う少なくとも1つの芳香環またはヘテロ芳香環を含む。また、好ましくは、第2の電子輸送マトリックス化合物は、共有結合によって連結されるか、または縮合されるかのいずれかによって、少なくとも2つの芳香環またはヘテロ芳香環を含んでいてもよい。
【0147】
特定の実施形態の1つでは、第2の電子輸送マトリックス化合物は、共有結合した原子からなる環を含み、環における少なくとも1つの原子は、リンである。
【0148】
より好ましい態様において、共有結合した原子からなるリン含有環は、ホスフェピン環である。
【0149】
別の好ましい実施形態では、共有結合マトリックス化合物は、ホスフィンオキシド基を含む。また、好ましくは、実質的に共有結合性のマトリックス化合物は、少なくとも1つの窒素原子を含む複素環を含む。本発明のデバイスのための第2の電子輸送マトリックス化合物として特に有利な窒素含有複素環式化合物の例は、単独でまたは組み合わせて、ピリジン構造部分、ジアジン構造部分、トリアジン構造部分、キノリン構造部分、ベンゾキノリン構造部分、キナゾリン構造部分、アクリジン構造部分、ベンズアクリジン構造部分、ジベンズアクリジン構造部分、ジアゾール構造部分およびベンゾジアゾール構造部分を含むマトリックスである。
【0150】
第2のマトリックス化合物は、400g/mol~850g/mol、好ましくは450g/mоl~830g/molの分子量(Mw)を有していてもよい。分子量がこの範囲で選択される場合、良好な長期安定性が観察される温度において、真空中で特に再現性のある蒸発および堆積を達成することができる。
【0151】
好ましくは、第2のマトリックス化合物は、実質的に非発光性であってもよい。
【0152】
別の態様によれば、第2の電子輸送化合物の還元電位は、テトラヒドロフランにおけるFc/Fcに対して-2.2Vよりも負であり、-2.35Vよりも負ではなく、好ましくは-2.25Vよりも負であり、-2.3Vよりも負ではないように選択してもよい。
【0153】
一実施形態によれば、第1および第2のマトリックス化合物は、異なるように選択してもよく、
第2の電子輸送層は、第2のマトリックス化合物からなり、
第1の電子輸送層は、本発明に係る有機材料と、電気的n型ドーパント、好ましくはアルカリ金属塩またはアルカリ金属有機錯体とからなる。
【0154】
好ましくは、第1および第2の電子輸送層は、実質的に非発光性であってもよい。
【0155】
一実施形態によれば、正孔ブロッキング層は、有機材料を含んでいてもよい。
【0156】
別の実施形態によれば、第2の電子輸送層は、発光層と直接接触することができる。
【0157】
別の実施形態によれば、電子輸送層は、正孔ブロッキング層と直接接触することができる。
【0158】
別の実施形態によれば、第2の電子輸送発光層は、発光層と第1の電子輸送層との間に挟まれて接触することができる。
【0159】
別の実施形態によれば、第1の電子輸送層は、電子注入層と直接接触することができる。
【0160】
別の実施形態によれば、第1の電子輸送層は、第2の電子輸送層と電子注入層との間に挟まれて接触することができる。
【0161】
別の実施形態によれば、第1の電子輸送層は、カソード電極と直接接触することができる。
【0162】
別の実施形態によれば、第1の電子輸送層は、第2の電子輸送層とカソード層との間に挟まれて接触することができる。
【0163】
別の実施形態によれば、第2の電子輸送層は、発光層と第1の電子輸送層との間に挟まれて接触することができ、第1の電子輸送層は、第2の電子輸送層と電子注入層との間に挟まれて接触するか、または第2の電子輸送層と正孔ブロッキング層との間に挟まれて接触することができる。
【0164】
別の実施形態によれば、第2の電子輸送層は、本発明に係る化合物から形成されてもよい。
【0165】
有機層の積層体の電子輸送領域の第1の電子輸送層31、正孔ブロッキング層33、電子注入層37の形成状態は、正孔注入層の形成状態を指す。
【0166】
第1の電子輸送層の厚さは、約2nm~約100nm、例えば約3nm~約30nmとすることができる。第1の電子輸送層の厚さがこれらの範囲内にある場合、第1の電子輸送層は、駆動電圧の大幅な増加なしに、改善された電子輸送補助能力を有することができる。
【0167】
第2の電子輸送層の厚さは、約10nm~約100nm、例えば、約15nm~約50nmとすることができる。電子輸送層の厚さがこれらの範囲内にある場合、電子輸送層は、駆動電圧の大幅な増加なしに十分な電子輸送能力を有することができる。
【0168】
本発明の別の態様によれば、有機エレクトロルミネセンスデバイスは、第2の電子輸送層とカソードとの間に電子注入層をさらに備える。
【0169】
電子注入層(EIL)37は、カソード150からの電子の注入を容易にすることができる。
【0170】
本発明の別の態様によれば、電子注入層37は以下の(i)および/または(ii)を含む。
(i)アルカリ金属、アルカリ土類金属および希土類金属から実質的に元素の形態で選択され、好ましくはLi、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、EuおよびYbから選択され、より好ましくはLi、Na、Mg、Ca、SrおよびYbから選択され、さらにより好ましくはLiおよびYbから選択され、最も好ましくはYbから選択される陽性金属;
(ii)アルカリ金属錯体および/またはアルカリ金属塩、好ましくはLi錯体および/または塩、より好ましくはLiキノリノレート、さらにより好ましくはリチウム8-ヒドロキシキノリノレート、最も好ましくは注入層のアルカリ金属塩および/または錯体と本質的である、第2の電子輸送層のアルカリ金属塩および/または錯体。
【0171】
電子注入層膜は、LiF、NaCl、CsF、LiO、およびBaOから選択された少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0172】
EILの厚さは、約0.1nm~約10nm、または約0.3nm~約9nmとすることができる。電子注入層の厚さがこれらの範囲内にある場合、電子注入層は、駆動電圧の大幅な増加なしに十分な電子注入能力を有することができる。
【0173】
カソード150の材料は、仕事関数の小さい金属、合金、導電性化合物、またはそれらの組み合わせであってもよい。カソード150の材料の具体例としては、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、アルミニウム-リチウム(Al-Li)、カルシウム(Ca)、マグネシウム-インジウム(Mg-In)、マグネシウム-銀(Mg-Ag)などが挙げられる。基板上に堆積された反射アノード110を有するトップエミッション型発光デバイスを製造するために、カソード150は、例えば、インジウムスズ酸化物(ITO)またはインジウム亜鉛酸化物(IZO)から透明または半透明の電極として形成されてもよい。
【0174】
一実施形態では、本発明に係る化合物を含む有機半導体層を含む本発明に係る有機電子デバイスは、ラジアレン化合物および/またはキノジメタン化合物を含む層をさらに含んでいてもよい。
【0175】
一実施形態では、ラジアレン化合物および/またはキノジメタン化合物が1つ以上のハロゲン原子および/または1つ以上の電子求引基によって置換されていてもよい。電子求引基は、ニトリル基、ハロゲン化アルキル基から、あるいはハロゲン化アルキル基から、あるいは過フッ素化アルキル基から選択することができる。電子求引基の他の例は、アシル基、スルホニル基またはホスホリル基であってもよい。
【0176】
あるいは、アシル基、スルホニル基および/またはホスホリル基は、ハロゲン化および/または過ハロゲン化ヒドロカルビルを含んでいてもよい。一実施形態では、過ハロゲン化ヒドロカルビルは、過フッ素化ヒドロカルビルであってもよい。ペルフルオロ化ヒドロカルビルの例としては、ペルフルオロメチル、ペルフルオロエチル、ペルフルオロプロピル、ペルフルオロイソプロピル、ペルフルオロブチル、ペルフルオロフェニル、ペルフルオロトリルが挙げられる。ハロゲン化ヒドロカルビルを含むスルホニル基の例としては、トリフルオロメチルスルホニル、ペンタフルオロエチルスルホニル、ペンタフルオロフェニルスルホニル、ヘプタフルオロプロピルスルホニル、ノナフルオロブチルスルホニルなどが挙げられる。
【0177】
一実施形態では、ラジアレンおよび/またはキノジメタン化合物は、正孔注入層、正孔輸送層および/または正孔生成層に含まれてもよく、後者は、電荷生成層またはp-n接合部において正孔を生成する機能を有する。
【0178】
一実施形態では、ラジアレン化合物は、式(XX)を有しており、かつ/または、キノジメタン化合物は、式(XXIa)または(XXIb)を有していてもよい。
【0179】
【化20】
【0180】
ここで、R、R、R、R、R、R、R、R、R11、R12、R15、R16、R20、R21は、上述の電子求引基から独立して選択され、R、R10、R13、R14、R17、R18、R19、R22、R23およびR24は、H、ハロゲンおよび上述の電子求引基から独立して選択される。
【0181】
以下、実施例を参照して実施形態をより詳細に説明する。ただし、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
【0182】
<詳細な説明>
本発明は、以下の実施例によってさらに説明されるが、これらの実施例は単に例示的なものであり、限定的なものではない。
【0183】
<構造部分の調製>
〔A.2,3,5-トリフェニル-6-(4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル)ピラジン〕
【0184】
【化21】
【0185】
フラスコを、窒素で洗い流し、2-(4-ブロモフェニル)-3,5,6-トリフェニルピラジン(15.0g、32.4mmol)、ビス(ピナコラト)ジボロン(9.04g、35.6mmol)、Pd(dppf)Cl(0.71g、0.97mmol)、および酢酸カリウム(9.5g、97.2mmol)で充填した。乾燥および脱気したDMF(90mL)を添加し、窒素雰囲気下で一晩、100℃まで反応混合物を加熱した。その後、全ての揮発性成分を真空中で除去し、水(400mL)およびジクロロメタン(1L)を添加し、水(3×400mL)で有機相を洗浄した。MgSO上で乾燥した後、有機相をシリカゲルのパッドを通して濾過した。追加のジクロロメタン(1L)ですすいだ後、減圧下で最小体積まで濾液を濃縮した。メタノール(350mL)を添加し、懸濁液を室温で一晩撹拌した。吸引濾過により固体を集め、乾燥後に白色固体15.9g(96%)を得た。
【0186】
〔B.2,3,5-トリフェニル-6-(3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル)ピラジン〕
【0187】
【化22】
【0188】
〔Ba)2-(3-ブロモフェニル)-3,5,6-トリフェニルピラジン〕
1-(3-ブロモフェニル)-2-フェニルエタン-1,2-ジオン(36.6g、126.5mmol)、1,2-ジフェニルエタン-1,2-ジアミン(38.7g、182.1mmol)、および酢酸(320)mLでフラスコを充填した。24時間、75℃まで混合物を加熱した。続いて、減圧下で約100mLまで反応混合物を濃縮し、次いで、慎重に飽和状態のKCO水溶液(700mL)に注いだ。ジクロロメタンで3回抽出した後、塩水で混合有機相を洗浄し、MgSO上で乾燥させ、減圧濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカ、n-ヘキサン/ジクロロメタン8:2)により精製し、n-ヘキサンで粉砕して、乾燥後に38.8g(66%)の黄色固体を得た。
【0189】
〔Bb)2,3,5-トリフェニル-6-(3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル)ピラジン〕
2-(3-ブロモフェニル)-3,5,6-トリフェニルピラジン(25g、54mmol)を用いて、2,3,5-トリフェニル-6-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル)ピラジンについて、上述した手順に従い、22.5g(82%)の白色固体を得た。
【0190】
<本発明に係る化合物の調製>
〔2-(ジベンゾ[b,d]フラン-3-イル)-4-フェニル-6-(4-(3,5,6-トリフェニルピラジン-2-イル)フェニル)-1,3,5-トリアジン(1-1)〕
フラスコを、窒素で洗い流し、(4-(3,5,6-トリフェニルピラジン-2-イル)フェニル)ボロン酸(13.9g、26.8mmol)、2-クロロ-4-(ジベンゾ[b,d]フラン-3-イル)-6-フェニル-1,3,5-トリアジン(9.6g、26.8mmol)、Pd(PPh(1.5g、1.3mmol)、およびKCO(9.2g、66.9mmol)で充填した。脱気した1,4-ジオキサン/水(5.7:1、235mL)の混合物を添加し、窒素雰囲気下で2時間、85℃まで反応混合物を加熱した。DCM/水中で混合物を抽出し、塩水で混合有機相を洗浄し、MgSO上で乾燥させた。溶媒を部分的に除去し、アセトン(300mL)を添加した。得られた懸濁液を室温で一晩撹拌し、吸引濾過により沈殿物を収集した。ジクロロメタンから、さらなる再結晶によって、粗生成物をさらに精製して、乾燥後に14.9g(79%)の白色固体を得た。昇華によって最終精製を達成した。HPLC:99.8%、HPLC/ESI-MSm/z=706([M+H])。
【0191】
〔2-(ジベンゾ[b,d]フラン-3-イル)-4-フェニル-6-(3-(3,5,6-トリフェニルピラジン-2-イル)フェニル)-1,3,5-トリアジン(1-2)〕
フラスコを、窒素で洗い流し、2,3,5-トリフェニル-6-(3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル)ピラジン(5.0g、9.8mmol)、2-クロロ-4-(ジベンゾ[b,d]フラン-3-イル)-6-フェニル-1,3,5-トリアジン(3.19g、8.91mmol)、Pd(PPh(0.2g、0.18mmol)およびKCO(2.46g、17.8mmol)で充填した。脱気したTHF/水(4:1、100mL)の混合物を添加し、窒素雰囲気下で一晩、75℃まで反応混合物を加熱した。周囲温度まで冷却した後、得られた析出物を吸引濾過によって単離し、THFで洗浄した。次いで、粗生成物を熱クロロホルムに溶解し、シリカゲルのパッドを通して濾過した。追加の熱クロロホルムですすいだ後、減圧下で最小体積まで濾液を濃縮し、n-ヘキサンを添加した。得られた析出物を吸引濾過により集め、n-ヘキサンで洗浄した。トルエンから再結晶によって、粗生成物をさらに精製して、乾燥後に5.3g(84%)の白色固体を得た。昇華によって最終精製を達成した。HPLC/ESI-MS:100%、m/z=706([M+H])。
【0192】
〔2,4-ジフェニル-6-(4-(3,5,6-トリフェニルピラジン-2-イル)フェニル)-1,3,5-トリアジン(1-3)〕
フラスコを、窒素で洗い流し、2,3,5-トリフェニル-6-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボラン-2-イル)ピラジン(4.0g、7.8mmol),2-クロロ-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(1.9g、7.1mmol)、Pd(PPh(0.16g、0.14mmol)およびKCO(2.0g、14.0mmol)で充填した。脱気したTHF/水(4:1、30mL)の混合物を添加し、窒素雰囲気下で一晩、75℃まで反応混合物を加熱した。5℃まで冷却した後、得られた析出物を吸引濾過によって単離し、THF(1×5mL)およびn-ヘキサン(3×5mL)で洗浄した。次いで、粗生成物をジクロロメタン(1L)に溶解し、有機相を水(3×400mL)で洗浄した。MgSO上で乾燥した後、シリカゲルのパッドを通して有機相を濾過した。追加のジクロロメタン(600mL)ですすいだ後、減圧下で最小体積まで濾液を濃縮し、n-ヘキサン(200mL)を添加した。得られた懸濁液を室温で45分間撹拌し、吸引濾過により沈殿物を収集した。カラムクロマトグラフィー(シリカ、n-ヘキサン/ジクロロメタン2:1~n-ヘキサン/メタノール99:1)により、粗生成物をさらに精製し、クロロベンゼンから再結晶して、乾燥後に3.4g(78%)の白色固体を得た。昇華によって最終精製を達成した。HPLC/ESI-MS:100%、m/z=616([M+H])。
【0193】
〔2,4-ジフェニル-6-(4-(3,5,6-トリフェニルピラジン-2-イル)フェニル)ピリミジン(1-4)〕
フラスコを、窒素で洗浄し、2,3,5-トリフェニル-6-(4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル)ピラジン(11.5g、22.5mmol)、4-クロロ-2,6-ジフェニルピリミジン(6.0g、22.5mmol)、Pd(PPh(0.5g、0.5mmol)、およびKCO(6.2g、45.0mmol)で充填した。脱気したTHF/水(4:1、100mL)の混合物を添加し、窒素雰囲気下で一晩、75℃まで反応混合物を加熱した。室温まで冷却した後、得られた析出物を吸引濾過によって単離し、THF(2×10mL)およびn-ヘキサン(3×15mL)で洗浄した。次いで、粗生成物をジクロロメタン(500mL)に溶解し、有機相を水(3×300mL)で洗浄した。MgSO上で乾燥した後、フロリジルパッドを通して有機相を濾過した。追加のジクロロメタン(500mL)ですすいだ後、減圧下で最小体積まで濾液を濃縮し、n-ヘキサン(500mL)を添加した。室温で30分間、得られた懸濁液を撹拌した。吸引濾過により沈殿物を回収し、トルエンから再結晶によりさらに精製して、乾燥後に9.2g(67%)の白色固体を得た。昇華によって最終精製を達成した。HPLC/ESI-MS:99.7%、m/z=615([M+H])。
【0194】
〔ジメチル(4”-(3,5,6-トリフェニルピラジン-2-イル)-[1,1’:4’,1”-テルフェニル]-4-イル)ホスフィンオキシド(1-28)〕
〔(4’-ブロモ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)ジメチルホスフィンオキシド〕
【0195】
【化23】
【0196】
窒素でフラスコを洗浄し、4-ブロモ-4’-ヨード-1,1’-ビフェニル(15g、41.8mmol)、ジメチルホスフィンオキシド(5.22g、66.8mmol)、Pd(dba)(0.38g、0.42mmol)、およびキサントフォス(0.48g、0.84mmol)を充填した。乾燥および脱気したジオキサン(220mL)およびトリエチルアミン(7mL)を添加し、反応混合物を周囲温度で48時間撹拌した。続いて、生成した析出物を吸引濾過により単離し、ジオキサンで洗浄した。アセトニトリルから再結晶し、乾燥後、2.15g(17%)のオフホワイト色の固体が得られた。
【0197】
〔ジメチル(4”-(3,5,6-トリフェニルピラジン-2-イル)-[1,1’:4’,1”-テルフェニル]-4-イル)ホスフィンオキシド(1-28)〕
【0198】
【化24】
【0199】
フラスコを、窒素で洗浄し、2,3,5-トリフェニル-6-(4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル)ピラジン(3.2g、6.2mmol)、(4’-ブロモ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)ジメチルホスフィンオキシド(1.9g、6.2mmol)、Pd(PPh(0.14g、0.12mmol)、およびKCO(1.7g、12.4mmol)で充填した。脱気したTHF/水(4:1、30mL)の混合物を添加し、窒素雰囲気下で一晩、75℃まで反応混合物を加熱した。5℃まで冷却した後、得られた析出物を吸引濾過によって単離し、THF(2×5mL)およびn-ヘキサン(3×5mL)で洗浄した。次に、粗生成物をジクロロメタン(500mL)に溶解し、ジエチルカルバモジチオ酸ナトリウム水溶液(3%、250mL)を添加した。30分間混合物を激しく撹拌し、続いて有機相を除去し、さらに水で洗浄した。MgSO上で乾燥した後、有機相を減圧下で最小体積まで濃縮し、n-ヘキサン(200ml)を添加した。室温で1時間、得られた懸濁液を撹拌した。吸引濾過によって沈殿物を回収し、カラムクロマトグラフィー(シリカ、ジクロロメタン/メタノール99:1~ジクロロメタン/メタノール97:3)によってさらに精製した。純粋な留分を混合し、減圧下で溶媒を除去して、乾燥後に2.5g(66%)の白色固体を得た。昇華によって最終精製を達成した。HPLC/ESI-MS:100%、m/z=613([M+H])。
【0200】
〔4”-(3,5,6-トリフェニルピラジン-2-イル)-[1,1’:4’,1”-テルフェニル]-4-カルボニトリル(1-30)〕
フラスコを、窒素で洗浄し、2-(4-ブロモフェニル)-3,5,6-トリフェニルピラジン(5.8g、12.5mmol)、4’-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-[1,1’-ビフェニル]-4-カルボニトリル(5.0g、12.5mmol)、Pd(PPh(0.3g、0.25mmol)、およびKCO(3.4g、24.9mmol)で充填した。脱気した1,4-THF/水(4:1、137.5mL)の混合物を添加し、窒素雰囲気下で一晩、75℃まで反応混合物を加熱した。(4-(3,5,6-トリフェニルピラジン-2-イル)フェニル)ボロン酸(1.2g、2.3mmol)を添加し、窒素雰囲気下で一晩、75℃まで反応混合物を加熱した。DCM/水中で混合物を抽出し、塩水で混合有機相を洗浄した。MgSO上で乾燥した後、シリカゲルのパッドを通して有機相を濾過した。追加のジクロロメタン(500mL)ですすいだ後、濾液を濃縮し(80mL)、ヘキサン(1000mL)を添加した。室温で1時間、得られた懸濁液を撹拌し、吸引濾過により沈殿物を回収した。ジメチルホルムアミド(3×25mL)から、さらなる再結晶によって、粗生成物をさらに精製して、乾燥後に5.1g(73%)の白色固体を得た。昇華により最終精製を達成した。高速液体クロマトグラフィー:100%、HPLC/ESI-MS:m/z=562([M+H])。
【0201】
〔2,4-ジフェニル-6-(3”-(3,5,6-トリフェニルピラジン-2-イル)-[1,1’:3’ ,1”-テルフェニル]-3-イル)-1,3,5-トリアジン(1-39)〕
【0202】
【化25】
【0203】
フラスコを、窒素で洗浄し、2-(3-ブロモフェニル)-3,5,6-トリフェニルピラジン(4.76g、10.26mmol)、2,4-ジフェニル-6-(3’-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)-1,3,5-トリアジン(5.0g、9.78mmol)、Pd(dppf)Cl2(0.14g、0.2mmol)、およびKCO(2.7g、19.6mmol)で充填した。脱気したTHF/水(5:1、60mL)の混合物を添加し、窒素雰囲気下で一晩、75℃まで反応混合物を加熱した。周囲温度まで冷却した後、得られた析出物を吸引濾過によって単離し、n-ヘキサンで洗浄した。次いで、クロロホルムに粗生成物を溶解し、水で3回、有機相を洗浄した。減圧下で最小体積まで有機相を濃縮し、n-ヘキサンを添加した。得られた析出物を吸引濾過により集め、n-ヘキサンで洗浄した。クロロホルム/n-ヘキサン1:5、カラムクロマトグラフィー(シリカ、ジクロロメタン/n-ヘキサン1:1)での粉砕、およびエタノールでの粉砕によって、粗生成物をさらに精製し、乾燥後に4.17g(56%)の白色固体を得た。昇華によって最終精製を達成した。HPLC/ESI-MS:100%、m/z=768([M+H])。
【0204】
〔2-(4-(ジベンゾ[b,d]フラン-3-イル)フェニル)-3,5,6-トリフェニルピラジン(1-47)〕
フラスコを、窒素で洗浄し、2-(4-ブロモフェニル)-3,5,6-トリフェニルピラジン(4.0g、8.6mmol)、ジベンゾ[b,d]フラン-3-イルボロン酸(2.0g、9.5mmol)、Pd(PPh(0.2g、0.17mmol)、およびKCO(2.4g、17.3mmol)で充填した。脱気したTHF/水(4:1、30mL)の混合物を添加し、窒素雰囲気下で一晩、75℃まで反応混合物を加熱した。5℃まで冷却した後、得られた析出物を吸引濾過によって単離し、THF(2×4mL)およびn-ヘキサン(3×5mL)で洗浄した。次いで、ジクロロメタン(1L)に粗生成物を溶解し、水(3×400mL)で有機相を洗浄した。MgSO上で乾燥した後、シリカゲルのパッドを通して有機相を濾過した。追加のジクロロメタン(400mL)ですすいだ後、減圧下で最小体積まで濾液を濃縮し、n-ヘキサン(25mL)を添加した。室温で10分間、得られた懸濁液を撹拌し、吸引濾過により、沈殿物を収集した。トルエンから粗生成物を再結晶して、乾燥後に3.6g(76%)の白色固体を得た。昇華によって最終精製を達成した。HPLC/ESI-MS:100%、m/z=551([M+H])。
【0205】
〔2-([1,1’-ビフェニル]-2-イル)-4-フェニル-6-(4-(3,5,6-トリフェニルピラジン-2-イル)フェニル)-1,3,5-トリアジン(1-48)〕
フラスコを、窒素で洗浄し、2,3,5-トリフェニル-6-(4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル)ピラジン(5.0g、9.8mmol)、2-([1,1’-ビフェニル]-2-イル)-4-クロロ-6-フェニル-1,3,5-トリアジン(3.4g、9.8mmol)、Pd(PPh(0.23g、0.2mmol)、およびKCO(2.7g、19.6mmol)で充填した。脱気した1,4-THF/水(4:1、110mL)の混合物を添加し、窒素雰囲気下で一晩、75℃まで反応混合物を加熱した。DCM/水中で混合物を抽出し、塩水で混合有機相を洗浄した。MgSO上で乾燥した後、シリカゲルのパッドを通して有機相を濾過した。追加のジクロロメタンですすいだ後、減圧下で溶媒を除去し、得られた固体をトルエン(2×500mL)中で再結晶した。クロロベンゼン(125mL)から、さらなる再結晶によって、粗生成物をさらに精製して、乾燥後に5.5g(81%)の白色固体を得た。昇華によって最終精製を達成した。HPLC:99.9%、HPLC/ESI-MSm/z=692([M+H])。
【0206】
〔4'''-(3,5,6-トリフェニルピラジン-2-イル)-[1,1’:4’,1”:4”,1'''-クアテルフェニル]-4-カルボニトリル(1-49)〕
2-(4-ブロモフェニル)-3,5,6-トリフェニルピラジン(7g、15.1mmmol)および4”-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-[1,1’:4’,1”-テルフェニル]-4-カルボニトリル(6g、15.7mmmol)のTHF(90mL)懸濁液およびKCO(4.35g、31.5mmmol)の水溶液(15mL)を、窒素で30分間脱気した。混合物を合わせ、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(105mg、0.14mmol)を添加し、窒素雰囲気下で142時間にわたって、65℃まで反応混合物を加熱した。室温まで冷却した後、減圧下で溶液を濃縮し、DCM(250mL)を添加し、水(3×100mL)で混合物を洗浄した。MgSO上で乾燥させた後、溶液を濃縮し、n-ヘキサンを添加した。得られた灰色がかった析出物を吸引濾過により単離し、熱トルエン(500mL)に溶解し、シリカゲルの小さなパッドを通して濾過した。追加の熱トルエン(750mL)ですすいだ後、100mLの体積まで溶媒を除去し、n-ヘキサンを添加した。得られた析出物を吸引濾過によって単離し、n-ヘキサンで洗浄し、トルエンで再結晶することによってさらに精製して、3.93g(41%)の黄色がかった固体を得た。昇華によって最終精製を達成した。HPLC/ESI-MS:m/z=638.2([M+H])。
【0207】
〔2,4-ジフェニル-6-(4’-(3,5,6-トリフェニルピラジン-2-イル)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-1,3,5-トリアジン(1-50)〕
2-(4-ブロモフェニル)-3,5,6-トリフェニルピラジン(8g、17.3mmol)および2,4-ジフェニル-6-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル)-1,3,5-トリアジン(7.5g、17.3mmol)のTHF(70mL)溶液およびKCO(4.77g、35mmol)の水溶液(17mL)を30分かけて脱気した。溶液を混合し、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(63.2mg、0.09mmol)を添加し、窒素雰囲気下で70時間かけて、65℃まで反応混合物を加熱した。室温まで冷却した後、得られた固体を吸引濾過によって単離し、THF、水およびメタノールで洗浄した。DCM(500mL)に粗生成物を溶解し、シリカゲルの小さなパッドを通して濾過した。追加の熱DCM(500mL)ですすいだ後、200mLの体積まで溶液を濃縮し、n-ヘキサンを添加した。得られた析出物を吸引濾過により単離し、n-ヘキサンで洗浄して、9.63g(81%)の無色固体を得た。昇華によって最終精製を達成した。HPLC/ESI-MS:m/z=692.2([M+H])。
【0208】
〔2-(ジベンゾ[b,d]フラン-1-イル)-4-フェニル-6-(4-(3,5,6-トリフェニルピラジン-2-イル)フェニル)-1,3,5-トリアジン(1-51)〕
2,3,5-トリフェニル-6-(4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル)ピラジン(9g、17.6mmol)および2-クロロ-4-(ジベンゾ[b,d]フラン-1-イル)-6-フェニル-1,3,5-トリアジン(5.72g、16mmol)のTHF(65ml)溶液およびKCO(4.42g、32mmol)の水溶液(16mol)を30分間にわたり窒素を用いて脱気した。溶液を混合し、Pd(PPh(370mg、0.32mmmol)を添加し、窒素雰囲気下で一晩、65℃まで加熱した。室温まで冷却した後、減圧下で溶媒を除去した。DCM(250mL)に粗生成物を溶解し、水(4×200mL)で洗浄し、MgSO上で乾燥させ、シリカゲルの小さなパッドを通して濾過した。追加のDCM(700mL)ですすいだ後、30mLの体積に溶液を濃縮し、n-ヘキサン(500mL)を添加し、懸濁液を室温で30分間撹拌した。得られた析出物を吸引濾過によって単離し、DMF(100mL)で再結晶することによってさらに精製して、7.96g(71%)の無色固体を得た。昇華によって最終精製を達成した。HPLC/ESI-MS:m/z=706.2([M+H])。
【0209】
〔3-(10-(4-(3,5,6-トリフェニルピラジン-2-イル)フェニル)アントラセン-9-イル)ベンゾニトリル(1-52)〕
フラスコを、窒素で洗浄し、3-(10-ブロモアントラセン-9-イル)ベンゾニトリル(7.6g、19.6mmol)、2,3,5-トリフェニル-6-(4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル)ピラジン(10g、19.6mmol)およびKCO(5.42g、39.18mmol)で充填した。[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(143mg、0.2mmol)および脱気したTHF/水の混合物(4:1、100mL)を添加し、窒素雰囲気下で一晩、66℃まで反応混合物を加熱した。室温まで冷却した後、得られた析出物を吸引濾過によって単離し、水(5×200mL)で洗浄した。乾燥後、シリカに粗生成物を吸着させ、分別カラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:DCM-4:1、500mL)、(n-ヘキサン:DCM-7:3、500mL)、(n-ヘキサン:DCM-3:2、2.5L)、クロロホルム(3L)を用いて精製した。減圧下で300mLの体積までクロロホルムの留分を減らし、n-ヘキサン(200mL)を添加し、室温で懸濁液を撹拌した。得られた淡黄色沈殿を吸引濾過により単離し、n-ヘキサン(50mL)で洗浄した。クロロホルムおよびクロロベンゼン中で、再結晶によって淡黄色の固体をさらに精製して、4.21(32%)のほとんど無色の固体を得た。昇華によって最終精製を達成した。HPLC/ESI-MS:m/z=662.2([M+H])。
【0210】
〔2,4-ジフェニル-6-(4’-(3,5,6-トリフェニルピラジン-2-イル)-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)-1,3,5-トリアジン(1-53)〕
2-(4-ブロモフェニル)-3,5,6-トリフェニルピラジン(10g、21.6mmol)、2,4-ジフェニル-6-(3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル)-1,3,5-トリアジン(9.4g、21.9mmol)、KCO(5.96g、43.2mmol)のトルエン/エタノール/水(4:1:1、130ml)混合物溶液を、30分間、窒素を用いて脱気した。Pd(PPh(499mg、0.43mmmol)を添加し、一晩、76℃まで加熱した。室温まで冷却した後、得られた析出物を吸引濾過により単離し、水、トルエンおよびメタノールで洗浄した。熱クロロホルム(1.5L)に粗生成物を溶解し、表面にNaSOの小層を有するフロリジルパッドを通して濾過した。追加の熱クロロホルム(2×100mL)ですすいだ後、溶媒を減圧下で除去した。n-ヘキサン(250mL)および熱トルエン(900mL)で残渣を粉砕して、10.45g(70%)の無色固体を得た。昇華によって最終精製を達成した。HPLC/ESI-MS:m/z=692.2([M+H])。
【0211】
〔2-([1,1’-ビフェニル]-2-イル)-4-フェニル-6-(3-(3,5,6-トリフェニルピラジン-2-イル)フェニル)-1,3,5-トリアジン(1-58)〕
2,3,5-トリフェニル-6-(3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル)ピラジン(8g、15.7mmmol)および2-([1,1’-ビフェニル]-2-イル)-4-クロロ-6-フェニル-1,3,5-トリアジン(5.93g、17.2mmmol)のTHF(64mL)溶液およびKCO(4.33g、31mmmol)の水溶液(16mL)を、30分間かけて窒素を用いて脱気した。溶液を混合し、Pd(PPh(362mg、0.31mmmol)を添加し、窒素雰囲気下で一晩、65℃まで加熱した。室温まで冷却した後、得られた析出物を吸引濾過によって単離し、THF、水およびメタノールで洗浄し、真空下で乾燥させた。DCM(200mL)に粗生成物を溶解し、シリカゲルの小さなパッドを通して濾過した。追加のDCM(700mL)ですすいだ後、減圧下で30mLの体積まで溶液を濃縮し、n-ヘキサンを添加した。得られた析出物を吸引濾過によって単離し、DMFを用いて再結晶することによってさらに精製して、8.85g(82%)の無色固体を得た。昇華によって最終精製を達成した。HPLC/ESI-MS:m/z=692.2([M+H])。
【0212】
〔3-(3-(3-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル)-5,6-ジフェニルピラジン-2-イル)ベンゾニトリル(1-62)〕
3-(3-クロロ-5,6-ジフェニルピラジン-2-イル)ベンゾニトリル(3.4g、9.2mmol)および2,4-ジフェニル-6-(3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル)-1,3,5-トリアジン(4.23g、9.7mmol)のTHF(36mL)溶液およびKCO(2.55g、18.4mmol)の水溶液(9mL)を、30分かけて脱気した。溶液を混合し、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(169mg、0.23mmol)を添加し、窒素雰囲気下で90時間かけて、65℃まで反応混合物を加熱した。室温まで冷却した後、減圧下で溶媒を除去した。DCM(300mL)に粗生成物を溶解し、水(6×100mL)で洗浄し、MgSO上で乾燥させ、シリカゲルの小さなパッドを通して濾過した。追加のDCM(1L)ですすいだ後、溶液を50mLの体積まで濃縮し、n-ヘキサン(150mL)を添加した。得られた析出物を吸引濾過により単離し、分別カラムクロマトグラフィー(DCM:n-ヘキサン-1:1)、DCMおよび(トルエン:n-ヘキサン-3:1)、トルエンにより精製した。減圧下で溶液を濃縮し、n-ヘキサンを添加した。得られた析出物を吸引濾過によって単離し、n-ヘキサンで洗浄して、4.15g(70%)の無色固体を得た。昇華によって最終精製を達成した。HPLC/ESI-MS:m/z=641.2([M+H])。
【0213】
〔デバイス例1(トップエミッション型青色OLED)〕
ガラス基板を50mm×50mm×0.7mmの大きさに切断し、イソプロピルアルコールで5分間、次いで純水で5分間超音波洗浄し、UVオゾンで30分間再度洗浄し、第1の電極を調製した。10-5mbar~10-7mbarの圧で、100nmの銀をアノードとして堆積させ、アノードを形成した。
【0214】
次に、8体積%の補助化合物PD1(2,2’,2”-(シクロプロパン-1,2,3-トリイリデン)トリス(2-(p-シアノテトラフルオロフェニル)アセトニトリル))を含む、92体積%の補助化合物F1(ビフェニル-4-イル(9,9-ジフェニル-9H-フルオレン-2-イル)-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-アミン、CAS1242056-42-3)をITO電極上に真空蒸着し、10nmの厚さを有するHILを形成した。次に、HIL上に純F1を真空蒸着し、厚さ118nmのHTLを形成した。
【0215】
次に、F2(N,N-ビス(4-(ジベンゾ[b,d]フラン-4-イル)フェニル)-[1,1’:4’,1”-テルフェニル]-4-アミン、CAS1198399-61-9)をHTL上に真空蒸着し、5nmの厚さを有する電子ブロッキング層(EBL)を形成した。
【0216】
その後、97体積%の青色エミッタホストH09を堆積させ、20nmの厚さを有する青色発光EMLを形成するために、EBL上に3体積%の蛍光青色エミッタBD200を堆積させた(両方の化合物とも韓国のSun Fine Chemicalsから市販されている)。次に、本発明に係る選択された化合物を、リチウムキノレート(LiQ)と重量%比1:1で共蒸着することにより、正孔ブロッキング層上に電子輸送層を31nmの厚さで形成した。
【0217】
そして、電子輸送層の上に、厚さ2nmのYbを真空蒸着することによって、電子注入層を形成した。
【0218】
Agを、10-7mbarで0.01Å/s~1Å/sの速度で蒸発させ、イッテルビウムEILの上に堆積させて、11nmの厚さを有するカソードを形成した。
【0219】
75nmの厚さでカソード上にF1のキャップ層を形成した。
【0220】
<デバイス製造に使用される補助材料の配合>
【0221】
【化26】
【0222】
完成したOLED積層体は、ガラススライドを用いてデバイスを封入することによって、周囲条件から保護される。これにより、さらなる保護のためのゲッタ材料を含むキャビティが形成される。
【0223】
<手段および方法>
〔ガラス転移温度〕
ガラス転移温度(Tg)は、DIN EN ISO 11357(2010年3月発行)に記載されているように、窒素下で、Mettler Toledo DSC 822e示差走査熱量計において10K/分の加熱速度を用いて測定した。
【0224】
〔デバイスの試験手順〕
発明の実施例の性能を既存の技術と比較して評価するために、周囲条件(20℃)下で、トップエミッション型OLEDの光出力を測定した。Keithley2400ソースメータを用いて電流電圧測定を行い、トップエミッション型デバイスのために10mA/cmでのVを記録し、Deutsche Akkreditierungsstelle(DAkkS)によって較正済のInstrument Systems製の分光計CAS140CTをCIE座標および輝度(カンデラ)の測定に使用した。10mA/cm(cd/A)で電流効率Ceffを測定した。
【0225】
トップエミッション型デバイスでは、発光は、前方に向けられ、非均等拡散であり、微小共振器にも高度に依存する。したがって、外部量子効率(EQE)および電力効率(lm/W)は、ボトムエミッション型デバイスに比べて高くなる。
【0226】
<発明の技術的効果>
本発明の化合物の有用性を調べるために、上述のように調製されたトップエミッション型青色OLEDにおいて、6つの好ましい材料を試験した。以下の表1に結果を示す。
【0227】
【表1】
〔表1:いくつかの本発明の材料およびそのような材料を含むOLEDの特性〕
結果は、最新の参考文献と比較して、本発明に係る化合物が非常にわずかな効率低下のみを犠牲にして、著しく長いデバイス寿命を可能にすることを示している。
【0228】
上述の詳細な実施形態における要素および特徴の特定の組合せは、例示的なものに過ぎず、これらの教示と、これに含まれる他の教示との交換および置換、ならびに参考として援用される特許/出願もまた、明示的に組み込まれる。当業者は、本明細書に記載されるものの変形、修正、および他の実装形態が、特許請求される本発明の思想および範囲から逸脱することなく、当業者に想起され得ることを理解するであろう。したがって、前述の説明は単なる例であり、限定することを意図していない。特許請求の範囲において、単語「含む」は他の要素またはステップを排除するものではなく、不定冠詞「a」または「an」は複数を排除するものではない。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用されることができないことを示すものではない。本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲およびその均等物において定義される。さらに、説明および特許請求の範囲で使用される参照符号は、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0229】
図1】本発明の一実施形態に係る有機発光ダイオードを示す断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る有機発光ダイオードの有機層の一部を具体的に示す断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る有機発光ダイオードの有機層の一部を具体的に示す断面図である。
図1
図2
図3