(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】搭載電源網内のエネルギ蓄積器を監視する方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/392 20190101AFI20230530BHJP
G01R 31/367 20190101ALI20230530BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20230530BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20230530BHJP
B60L 58/16 20190101ALI20230530BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20230530BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20230530BHJP
【FI】
G01R31/392
G01R31/367
H01M10/48 P
H01M10/48 301
H02J7/00 P
H02J7/00 X
H02J7/00 Y
B60L58/16
B60L58/12
B60L3/00 S
(21)【出願番号】P 2021530149
(86)(22)【出願日】2019-11-20
(86)【国際出願番号】 EP2019081943
(87)【国際公開番号】W WO2020109108
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】102018220494.2
(32)【優先日】2018-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン モッツ
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー ディーター コラー
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック ハイディンガー
【審査官】小川 浩史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/132332(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102011005711(DE,A1)
【文献】特開2016-90485(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102018201119(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36-31/396
H01M 10/42-10/48
H02J 7/00
B60L 58/00-58/27
B60L 3/00-3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の搭載電源網内のエネルギ蓄積器を監視する方法であって、
前記エネルギ蓄積器の現在の少なくとも1つの動作量を算定して、前記少なくとも1つの動作量を予測モデル(202)へ転送し、
前記予測モデル(202)は、前記少なくとも1つの動作量の現在値から、前記少なくとも1つの動作量の未来値を算定して、前記少なくとも1つの動作量の前記未来値を電圧予測器(204)へ供給し、前記電圧予測器(204)は、自動運転のためのスタート-ストップマヌーバ又はセーフ‐ストップマヌーバを含む所与の機能のための、前記エネルギ蓄積器の期待される最小電圧を計算し、
前記予測モデル(202)は、前記少なくとも1つの動作量の前記未来値を、未来の推定負荷により計算する、方法。
【請求項2】
エネルギ蓄積器としてバッテリ(100)が監視され、動作量として前記バッテリ(100)の
現在のSOHが算定される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
エネルギ蓄積器としてバッテリ(100)が監視され、動作量として前記バッテリ(100)の内部抵抗(102)が算定される、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
エネルギ蓄積器としてバッテリ(100)が監視され、動作量として前記バッテリ(100)の分極が算定される、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記電圧予測器(204)は、前記最小電圧を、前記エネルギ蓄積器の等価回路によって計算する、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記最小電圧を計算する際に、電流、電圧及び温度に対する負荷特性が使用される、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
計算された前記最小電圧が、限界値と比較される、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記限界値の下方超過により、使用される前記負荷特性に対応する機能が未来にさらに実行可能であるかどうかが算出される、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記予測モデル(202)は、前記最小電圧が前記限界値に到達した時点又は前記限界値を下方超過した時点から、前記エネルギ蓄積器の残寿命を算出する、
請求項
7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記残寿命に基づいて、メンテナンス間隔及び/又は前記エネルギ蓄積器の交換が調整される、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記残寿命に基づいて、当該残寿命を延長するためのエネルギ管理における措置が講じられる、
請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記措置は、
・前記エネルギ蓄積器の目標動作領域の変更、又は、
・複数のエネルギ蓄積器が設けられている場合の当該複数のエネルギ蓄積器間における負荷の移動、
から選択可能である、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
自動車の搭載電源網内のエネルギ蓄積器を監視する装置であって、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の方法を実施するように構成されている装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の搭載電源網内のエネルギ蓄積器を監視する方法、及び、当該方法を実行する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術
搭載電源網とは、自動車の用途においては、自動車内の全ての電気部品の総体であると理解される。即ち、これには、電気消費装置及び給電源、例えばバッテリの双方が含まれる。この場合、搭載エネルギ網と搭載通信網とが区別されるが、本明細書においては、特に、自動車の各部品へのエネルギの供給を担当する搭載エネルギ網について述べる。搭載電源網を制御するために、通常、制御機能に加えて監視機能をも実行するマイクロコントローラが設けられている。
【0003】
自動車内においては、電気エネルギは、自動車がいつでも始動可能となり、かつ、運転中充分な給電が与えられるように供給され得ることに注意されたい。ただし、停止状態においても、次の始動を損なわずに、電気消費装置が適当な時間範囲にわたってさらに駆動可能でなければならない。
【0004】
搭載電源網は、電気消費装置にエネルギを供給するタスクを有する。今日の車両において、エネルギ供給が搭載電源網内又は搭載電源網部品内におけるエラー又は劣化のために故障すると、重要な機能、例えばパワーステアリングが欠落する。車両の操舵能力が損なわれるわけではなく、鈍重になるだけなので、運転者をフォールバックレベルとみなし得ることから、搭載電源網の故障は、今日生産されている車両においては一般に受容されている。
【0005】
益々進む装置群の電気化及び新たな運転機能の導入によって、自動車内における電気エネルギ供給の安全性及び信頼性への高い要求が生じている。
【0006】
将来の高度自動運転機能、例えば高速走行パイロットでは、制限された範囲において、運転者が運転に関与しない動作が許容される。このため、高度自動運転機能の終了まで、人間の運転者は、センサ的、制御技術的、機械的及びエネルギ的なフォールバックレベルとして、機能を、制限された範囲においてしか知覚することができず、又は、全く知覚することができない。従って、高度自動運転の際の給電部は、センサ的、制御技術的かつアクチュエータ的なフォールバックレベルを保証するため、自動車においてはこれまで知られてこなかった安全重要度を有する。従って、搭載電源網内のエラー又は劣化は、確実に、かつ、製品安全の意味において可能な限り完全に、識別されなければならない。
【0007】
部品の故障を予測可能とするために、車両部品監視の信頼性技術上のアプローチへの取り組みがなされている。このために、搭載電源網部品は運転中監視され、その損傷が算出される。
【0008】
刊行物である独国特許出願公開第102013203661号明細書には、運転中に負荷を掛けられる少なくとも1つの半導体スイッチを含む搭載電源網を備えた自動車を動作させる方法が説明されている。当該方法においては、半導体スイッチの実際負荷状態が、先行の負荷イベントに基づいて算出される。
【0009】
従来技術によるバッテリセンサの使用につき、
図1に即して説明する。バッテリの状態検出方法が、刊行物である独国特許出願公開第102016211898号明細書に説明されている。ここでは、バッテリのSOH(Gesundheitszustand)を記述するための方法が、信頼性判定部によって使用される。ここでは、部品の故障確率についての記述を提供する、いわゆる
負荷-容量モデルが使用されている。
【0010】
刊行物である独国特許出願公開第19959019号明細書からは、エネルギ蓄積器の状態を識別する方法が公知である。エネルギ蓄積器の実際量は、推定ルーチンと、これから分離されたモデルに基づくパラメータ推定器及びフィルタとに供給可能である。受け取られたパラメータ化量は、エネルギ蓄積器の挙動を補外する予測器に供給される。
【0011】
刊行物である欧州特許出願公開第1231476号明細書には、バッテリの劣化状態を算定する方法が説明されている。当該方法においては、静止電圧、内部抵抗及び内部電圧降下が推定され、モデルの入力量として使用される。当該モデルは、初期化され、続いてシミュレートされる。モデルを用いて劣化状態が推定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】独国特許出願公開第102013203661号明細書
【文献】独国特許出願公開第102016211898号明細書
【文献】独国特許出願公開第19959019号明細書
【文献】欧州特許出願公開第1231476号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
発明の開示
こうした背景から、請求項1に記載の、自動車の搭載電源網内のエネルギ蓄積器、例えばバッテリを監視する方法と、請求項15の特徴を有する、当該方法を実行する装置とが提案される。各実施形態は、従属請求項及び明細書から得られる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
提案の方法は、自動車の搭載電源網内のエネルギ蓄積器を監視するために用いられる。以下においては、特に、搭載電源網内のエネルギ蓄積器としてのバッテリの監視について述べる。ただし、提案の方法は、バッテリの監視のみに限定されるものではなく、他のエネルギ蓄積器、例えばコンデンサ、特に高出力コンデンサにも適用可能である。
【0015】
上記の方法の構成においては、バッテリの少なくとも1つの動作量、例えば、バッテリの内部抵抗、キャパシタンス及び/又は分極が算定され、当該少なくとも1つの動作量が予測モデルへ転送され、当該予測モデルにより、動作量の現在値が計算され、負荷-容量モデルにより、少なくとも1つの動作量の未来値が算定される。少なくとも1つの動作量の未来値は電圧予測器へ供給され、当該電圧予測器は、選択された機能のための、バッテリの期待される最小電圧を計算する。
【0016】
安全に関連する消費装置の機能のためには、それぞれのチャネルにおいて、消費装置におけるクランプ電圧が決定的であることが判明している。こうしたクランプ電圧は、電圧源、例えばバッテリ又は直流電圧変換器を含む伝送チェーン、対応する部分分岐内のケーブルツリー抵抗、及び、個々の部品の負荷電流の組合せから得られる。
【0017】
また、それぞれの動作ケースに必要な最小給電電圧の不足が対応する部品の故障を発生させることが認識されている。このことは、安全性に関連するシナリオにおいては、安全目標の障害をもたらしかねず、又は、自動運転機能の利用可能性を制限しかねない。
【0018】
最小給電電圧のこのような不足は、エネルギ蓄積器、例えばバッテリの劣化によって発生し得る。対抗措置及び可能な限り高い機能利用可能性を達成するには、バッテリのための予測診断機能部が必要であり、当該予測診断機能部に基づいて、予測的メンテナンス(英語:Predictive Maintenance)又は搭載電源網エネルギ管理における措置(英語:Predictive Health Management)のいずれかが行われる。
【0019】
機能及び境界条件に基づく事前の故障予測は、公知の機能に比較して、予測の品質が著しく高い。なぜなら、どのような条件のもとでバッテリが搭載電源網をもはや充分にサポートできなくなったために故障が発生するかを予測することができるからである。
【0020】
説明している方法は、エネルギ蓄積器、例えばバッテリの故障を、適時に対抗措置を導入するために、先行の利用状態及び関連するシステム機能に基づいて予測するものであり、これにより、機能利用可能性が向上する。
【0021】
提案の方法は、少なくともいくつかの実施形態において、次の一連の利点、即ち、
・機能利用可能性の向上、例えば、スタート-ストップ機能及び/又は自動運転機能の向上、
・付加的な故障を発生させることのないメンテナンス支援及びここから得られるメンテナンス間隔の最大化、これによる車両群運営者にとっての車両利用可能性の最大化、
・移動不能状態の回避によるコスト低減、例えば救助費用などの低減、
・不測の事態における移動不能状態の回避による安全性の向上、
を有する。
【0022】
提案の装置は、上記の方法を実行するために用いられ、例えばバッテリセンサに関連して使用することができる。
【0023】
本発明のさらなる利点及び構成は、明細書及び添付の図面から得られる。
【0024】
前述した特徴及び後述する特徴が、本発明の範囲から逸脱することなく、それぞれ提示した組合せにおいてのみならず、他の組合せにおいても又は個別にも使用可能であることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】従来技術によるバッテリセンサを示すブロック図である。
【
図3】SOF(State of Function)を算定する際の手法を示す図である。
【
図4】提案の方法の実行を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
発明の実施の形態
本発明を、実施形態に即して図面に概略的に示し、以下に図面を参照しながら詳細に説明する。
【0027】
以下の各実施形態は、バッテリに関連した提案の方法の用途を説明している。提案の方法は、当該用途に限定されるものではなく、適当なあらゆるエネルギ蓄積器に関連して、例えばコンデンサ、特に高出力コンデンサ、例えば、スーパーキャパシタ(英語:supercaps)又はウルトラキャパシタに関連して実行可能である。
【0028】
図1には、全体として参照番号10が付された、従来技術によるバッテリセンサが示されている。ユニット12、特に測定ユニットへの入力量は、温度T14及び電流I16であり、出力量は、電圧U18である。
【0029】
ブロック20においては、パラメータ及び状態の推定が行われる。本明細書においては、フィードバックユニット22、バッテリモデル24及びパラメータの適応化部26が設けられている。ここで、変数
【数1】
28、状態変数
【数2】
30、及び、モデルパラメータ
【数3】
32が出力される。
【0030】
ノード29は、バッテリモデル24をバッテリに適応化するために用いられる。電流I16は直接的に、温度T14は間接的に、バッテリモデル24に入力される。当該バッテリモデル24は、
【数4】
28を計算し、これを実際の電圧U18によって補償する。偏差がある場合、バッテリモデル24は、フィードバックユニット22により補正される。
【0031】
さらに、サブアルゴリズムのためのブロック40が準備されている。当該ブロック40は、バッテリ温度モデル42、静止電圧算定部44、ピーク電流測定部46、アダプティブ始動電流予測部48及びバッテリ量検出部50を含む。
【0032】
その他、ブロック62へ予測量を入力する充電特性60も準備されている。当該充電特性は、充電予測量64、電圧予測量66及び劣化予測量68である。ブロック62からの出力は、SOC70、電流72及び電圧74の波形、並びに、SOH76である。
【0033】
従って、バッテリセンサ10は、バッテリの現在のSOC(State of Charge)70及び現在のSOH76(State of Health,初期状態に対するキャパシタンス損失の比率)を算出する。予測量64,66,68により、バッテリセンサ10は、SOC70及びSOH76を、予め規定された複数の負荷シナリオに従って予測することができる。当該負荷シナリオは、ここで、自動運転又はそれぞれの適用事例に対しても適応化可能である。
【0034】
予測量64,66,68は、さらに、現在のバッテリ状態における機関始動過程をシミュレートして、SOC70、SOH76及びSOF(State of Function)に対するその効果を算出することができる。シミュレーションにおける機関始動によって所定の限界値の下方超過が発生した場合、スタート-ストップ動作が阻止される。
【0035】
図2には、全体として参照番号100が付された、バッテリの等価回路図が示されている。当該等価回路図は、内部抵抗R
i102、第1のキャパシタンスC
D104、第2のキャパシタンスC
k106、当該第2のキャパシタンスC
k106に対して並列に接続された抵抗R
k108、第3のキャパシタンスC
Dp110、当該第3のキャパシタンスC
Dp110に対して並列に接続された抵抗R
Dp112、及び、さらなる抵抗R
Dn114を含む。
【0036】
図3には、SOF(State of Function)算定の動作方式が示されている。横軸152に時間t、縦軸154に電圧u(t)を記した第1のグラフ150には、過去時間160に対する電圧156の波形が記されている。横軸172に時間t、縦軸174に電流i(t)を記した第2のグラフ170には、過去時間160に対する電流176の波形が記されている。未来時間162につき、所定の運転マヌーバに対して特徴的な電流波形182と、予測器によって期待又は予測される電圧波形180とが示されている。さらに、SOFの計算の出力点を表す電圧U190が示されている。U190は、典型的には、
現在の測定可能な動作電圧であるが、これは、ワーストケース予測に利用可能な、理論的に期待され得る最小電圧と見ることもできる。特徴的な電流波形182は、プラットフォーム又は顧客仕様に従った仮想の電流特性i(t)を表し、例えば、ストップ/スタート用途のための機関ウォームスタート中のバッテリ電圧下落を予測するための、機関始動中に生じるバッテリ電流特性である。
【0037】
所定の電流特性i(t)に対する予測最小電圧は、SOF(State of Function;所定の車両機能、例えば、機関のウォームスタートを充足するためのバッテリの出力能力の尺度)として利用され、以下においては、所定の機能の利用可能性についての判定に用いられるものとする。
【0038】
図4には、提案の方法の例示的な使用のフローチャートが示されている。第1のステップにおいては、バッテリ状態識別ソフトウェア200において、バッテリの
現在キャパシタンス及び内部抵抗が算定又は測定される。当該
現在キャパシタンス及び内部抵抗は、予測モデル202に転送される。予測モデル202は、代表
負荷集合(RLK;バッテリで期待される未来の
負荷特性)を補助的に使用して、
負荷-容量モデルにより、キャパシタンスの未来値(C_pred(t))及び内部抵抗の未来値(Ri_pred(t))を計算する。
【0039】
予測モデルは、負荷-容量モデル、物理モデル、機械学習に基づくモデル、回帰、又は、スプライン補外を基礎とするものであってよい。
【0040】
上記の各値は、電圧予測器204に転送される。電圧予測器204は、例として
図2に示したような電気的等価回路図により、SOFの動作方式と同様に、所与の機能に対するバッテリの期待される最小電圧を計算する。このために、電流I、始動電圧U及び温度Tについての負荷特性206が使用される。設定された電流特性は、この場合、任意の機能、例えば、自動運転のためのスタート-ストップマヌーバ又はセーフ‐ストップマヌーバに由来し得るものである。
【0041】
次のステップ208においては、予測された最小電圧(U_pred(t))が、下方超過によって搭載電源網が故障することになる限界値と比較される。当該限界値に到達している又はこれが下方超過されている場合、時点tは、バッテリの残寿命に相当する。それ以外の場合、時間ステップtがΔtだけ高められ、未来の負荷モデル210により、新たな代表負荷集合(RLK)が計算される。当該代表負荷集合は、例えば、充電状態、電流、電圧、温度、平均アンペア時間などの変化の形態の、過去のバッテリ負荷に基づいており、期待される未来のバッテリ負荷をシミュレートしている。この場合、例えば、種々の境界条件、例えば日時、運転区間なども区別される。当該代表負荷集合は、次いで予測モデルへ供給され、C_pred(t)及びRi_pred(t)の新たな値が算定される。こうした反復は、予測された最小電圧が限界値に到達することにより残寿命(RUL)が算定されるまで行われる。当該情報は、次のステップにおいて制御ユニット212へ転送され、制御ユニット212が、これらから、例えば、予測的部品交換(Predictive Maintenance)又は寿命を延長するための制御措置(Predictive Health Management)のような措置を導出する。
【0042】
このように、方法は、バッテリの予測モデルの構築を行う。ここでの構成においては、センサにより、少なくとも1つのバッテリ量、例えば、電圧、電流、温度が測定される。当該バッテリ量はバッテリ状態識別ソフトウェア(BSD)200へ送信され、当該BSD200が、バッテリ状態を記述する量を算定する。BSD200は、この場合、物理モデル、統計モデル、又は、AIモデル(AI:artificial intelligence:人工知能)を基礎とするものであってよい。状態を記述する量、例えば、バッテリの内部抵抗、キャパシタンスなどが、予測モデル202へ転送される。
【0043】
他のモデルにおいては、例えば、バッテリの負荷の代表負荷集合を形成するために、バッテリ量が時間に関してクラス分類される。付加的に、代表負荷集合の形成のために、バッテリの他の信号又はシステムからの他の信号を使用することもできる。当該RLKも、予測モデル202へ送信される。
【0044】
予測モデル202は、RLKと、現在の算定されたバッテリの状態を記述する量とに基づいて、バッテリの状態を記述する量の未来波形を予測する。予測モデルは、この場合にも、物理モデル、統計モデル、又は、AIモデルを基礎とするものであってよい。
【0045】
補外された、バッテリの状態を記述する量は、重み付けモデルにおいて、バッテリの故障時点を算定するために使用される。これは、主として、2つの異なる方式により行うことができる。第1の手段は、補外された、バッテリの状態を記述する量と、バッテリがもはや機能しなくなる限界値又は限界値分布とを比較することである。第2の手段は、補外された、バッテリの状態を記述する量を使用して、残寿命(RUL:Remaining Useful Life)をシミュレーションにより特定することである。ここでは、
図3に示したSOF機能の場合と同様に、バッテリの状態を記述する量と、種々の機能に対する負荷特性とに基づいて、バッテリの電圧が閾値を下回って低下するかどうかが特定される。当該閾値の下方超過は、システム故障を発生させる。
【0046】
既に述べたように、方法は、バッテリの残寿命の算出に使用可能である。残寿命に基づいて、メンテナンス間隔及び/又はバッテリの交換を調整することができる。また、残寿命に基づいて、残寿命を延長するためのエネルギ管理の措置を導入することもできる。こうした措置は、バッテリの目標動作領域の変更機能の中止及び/又はグレード低減、又は、エネルギ蓄積器が複数設けられている場合のエネルギ蓄積器間における負荷の移動、から選択可能である。