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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】再生プラスチックの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/06 20060101AFI20230530BHJP
   B29B 7/38 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
C08J11/06
B29B7/38 ZAB
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022041395
(22)【出願日】2022-03-16
【審査請求日】2022-11-07
(31)【優先権主張番号】P 2022015844
(32)【優先日】2022-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄也
(72)【発明者】
【氏名】真嶋 佑樹
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-105882(JP,A)
【文献】特開2020-196808(JP,A)
【文献】特開2020-196800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 11/06
B29B 7/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリュー及び吐出部を具備した押出装置を用いて、基材と印刷層との脱離工程を経ていない印刷物又は、基材と印刷層との脱離工程を経ていないラミネート積層体(A)から再生プラスチック(B)を得る、再生プラスチックの製造方法であって、
前記印刷物又は前記ラミネート積層体(A)が、基材層及び印刷層を含み、塩素含有率が、前記印刷物又は前記ラミネート積層体(A)の全質量中0.4質量%以下であり、かつ、ポリオレフィン樹脂を、前記印刷物又は前記ラミネート積層体(A)の全質量中80質量%以上含有し、
前記押出装置中において前記印刷物又は前記ラミネート積層体(A)を、加熱溶融及び混錬して樹脂組成物(a)を得る工程、及び、
前記樹脂組成物(a)が、押出装置の吐出部から圧力18MPa以下で押出される工程を含む、再生プラスチックの製造方法。
【請求項2】
加熱溶融の温度が、120~280℃である、請求項1に記載の再生プラスチックの製造方法。
【請求項3】
印刷物又はラミネート積層体(A)に含まれるポリオレフィン樹脂が、ポリエチレン樹脂及び/又はポリプロピレン樹脂である、請求項1又は2に記載の再生プラスチックの製造方法。
【請求項4】
印刷物又はラミネート積層体(A)が、更にバリア層を含む、請求項1~3いずれか1項に記載の再生プラスチックの製造方法。
【請求項5】
印刷物又はラミネート積層体(A)のバリア層が、蒸着膜を含む蒸着層、バリアコート層、およびバリア接着剤層からなる群より選ばれる1種以上である、請求項4に記載の再生プラスチックの製造方法。
【請求項6】
更に水冷工程を含む、請求項1~5いずれか1項に記載の再生プラスチック製造方法。
【請求項7】
印刷物又はラミネート積層体(A)のメルトマスフローレイトが0.5~15g/10分である、請求項1~6いずれか1項に記載の再生プラスチックの製造方法。
【請求項8】
印刷物又はラミネート積層体(A)の印刷層が、顔料及びバインダー樹脂を含み、前記バインダー樹脂の塩素含有率が、5質量%以下である、請求項1~7いずれか1項に記載の再生プラスチックの製造方法。
【請求項9】
押出装置が具備するスクリューの回転数が、50~1000RPMである、請求項1~8いずれか1項に記載の再生プラスチックの製造方法。
【請求項10】
顔料の含有率が、印刷層の全質量中の30質量%以下である、請求項8に記載の再生プラスチックの製造方法。
【請求項11】
印刷物又はラミネート積層体(A)が、更に接着剤層を含み、前記接着剤層が、ポリイソシアネートとポリオールを含む反応性ウレタン接着剤の反応物である、請求項1~10いずれか1項に記載の再生プラスチックの製造方法。
【請求項12】
請求項1~11いずれか1項に記載の再生プラスチックの製造方法によって製造される、再生プラスチックの成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン樹脂を含む積層体から、マテリアルリサイクルを行う、再生プラスチックの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチックフィルムからなるパッケージ、プラスチックボトル、及びその他のプラスチック製品は、海洋にゴミとして廃棄・投棄され環境汚染問題が生じている。プラスチック製品は海水中で粉砕されてサブミクロンサイズの破片(マイクロプラスチック)となり海水中に浮遊する。マイクロプラスチックは、魚類等の海洋生物に摂取され、その体内中で濃縮される。そのため、海洋生物を食料として摂取する海鳥や人間等の健康への影響が懸念されている。
【0003】
多層構成の食品包装パッケージでは、フィルム基材として、ポリエステル基材、ナイロン基材(NY)、ポリプロピレン基材(PP)、及びポリエチレン基材(PE)など、種々のプラスチック基材が使用されている。多層構成の食品包装パッケージは、例えば、第1のフィルム基材に対して印刷インキにより印刷を施し、印刷層上に、必要に応じて接着剤層を介して、第2のフィルム基材を貼り合わせた後に、カットし、熱融着して、当該パッケージとなる。しかしながら、相溶性、その他の問題があるため、複数の異種材料を含む多層構成の食品包装パッケージは、マテリアルリサイクルが難しい。
【0004】
通常、食品包装パッケージはゴミとして廃棄されるが、リサイクルされる場合もある。パッケージをリサイクルする場合、まず、パッケージに含まれる、不純物を除去、粉砕し、必要に応じてアルカリ処理などを行い(特許文献1)、洗浄したものを原料として溶融し、ペレットにする。そして、得られたペレットを加工して、新たな製品とする。しかしながら、上記リサイクル方法では、パッケージに含まれる印刷層の大半は除去されずに残存するため、得られるペレット等は品質に劣る。
【0005】
最近では、特許文献2及び3のように、プラスチック基材上にプライマー層や、脱離可能な印刷層を設け、印刷柄やラミネートされた包装材を分離・脱離する技術が開示されているが、工程が増えることで、加工完了までの時間や、人が関わる段取作業が増える事に繋がり、生産量が下がる恐れがある。
【0006】
すなわち、印刷層を除去する工程がなく、簡易的な分離、洗浄、脱水のみで、良質な再生プラスチックを製造する方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-19003号公報
【文献】特開2001-031899号公報
【文献】特開2020-196855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、基材と印刷層の脱離工程を行わなくとも、印刷物又はラミネート積層体から、効率的かつ簡便に、マテリアルリサイクルが可能である、成形性に優れた再生プラスチック製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、以下に記載の再生プラスチック製造方法を用いることで上記課題が解決することを見出し、本発明を成すに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、スクリュー及び吐出部を具備した押出装置を用いて、印刷物又はラミネート積層体(A)から再生プラスチック(B)を得る、再生プラスチックの製造方法であって、
印刷物又はラミネート積層体(A)が、基材層及び印刷層を含み、塩素含有率が、印刷物又はラミネート積層体(A)の全質量中0.4質量%以下であり、かつ、ポリオレフィン樹脂を、印刷物又はラミネート積層体(A)の全質量中80質量%以上含有し、
前記押出装置中において前記印刷物又はラミネート積層体(A)を、加熱溶融及び混錬して樹脂組成物(a)を得る工程、及び、
前記樹脂組成物(a)が、押出装置の吐出部から圧力18MPa以下で押出される工程を含む、再生プラスチックの製造方法に関する。
【0011】
また、本発明は、スクリュー及び吐出部を具備した押出装置を用いて、印刷物又はラミネート積層体(A)から再生プラスチック(B)を得る、再生プラスチックの製造方法であって、
印刷物又はラミネート積層体(A)が、基材層及び印刷層を含み、塩素含有率が、印刷物又はラミネート積層体(A)の全質量中0.4質量%以下であり、かつ、ポリオレフィン樹脂を、印刷物又はラミネート積層体(A)の全質量中80質量%以上含有し、
前記押出装置中において前記印刷物又はラミネート積層体(A)を、120~280℃で加熱溶融し、更に混錬して樹脂組成物(a)を得る工程、及び、
前記樹脂組成物(a)が、押出装置の吐出部から押出される工程を含む、再生プラスチックの製造方法に関する。
【0012】
また、本発明は、印刷物又はラミネート積層体(A)に含まれるポリオレフィン樹脂が、ポリエチレン樹脂及び/又はポリプロピレン樹脂である、上記再生プラスチックの製造方法に関する。
【0013】
また、本発明は、印刷物又はラミネート積層体(A)が、更にバリア層を含む、請求項1~3いずれか1項に記載の再生プラスチックの製造方法に関する。
【0014】
また、本発明は、印刷物又はラミネート積層体(A)のバリア層が、蒸着膜を含む蒸着層、バリアコート層、およびバリア接着剤層からなる群より選ばれる1種以上である、請求項4に記載の再生プラスチックの製造方法に関する。
【0015】
また、本発明は、更に水冷工程を含む、上記再生プラスチックの製造方法に関する。
【0016】
また、本発明は、印刷物又はラミネート積層体(A)のメルトマスフローレイトが0.5~15g/10分である、上記再生プラスチックの製造方法に関する。
【0017】
また、本発明は、印刷物又はラミネート積層体(A)の印刷層が、顔料及びバインダー樹脂を含み、前記バインダー樹脂の塩素含有率が、5質量%以下である、上記再生プラスチックの製造方法に関する。
【0018】
また、本発明は、押出装置が具備するスクリューの回転数が、50~1000RPMである、上記再生プラスチックの製造方法に関する。
【0019】
また、本発明は、顔料の含有率が、印刷層の全質量中の30質量%以下である、上記再生プラスチックの製造方法に関する。
【0020】
また、本発明は、印刷物又はラミネート積層体(A)が、更に接着剤層を含み、前記接着剤層が、ポリイソシアネートとポリオールを含む反応性ウレタン接着剤の反応物である、上記再生プラスチックの製造方法に関する。
【0021】
また、本発明は、上記再生プラスチックの製造方法によって製造される、再生プラスチックの成形品の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、基材と印刷層の脱離工程を行わなかったとしても、印刷物又はラミネート積層体から、効率的かつ簡便に、マテリアルリサイクルが可能である、成形性に優れた再生プラスチック製造方法を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、記載する実施形態又は要件の説明は、本発明の実施形態の一例であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
【0024】
本発明において印刷物又はラミネート積層体(A)は、単に「印刷物又は積層体(A)」と略記する場合があるが同義である。
【0025】
(スクリューを具備した押出装置)
本発明に用いる押出装置は、スクリューを具備している。押出装置は一般的に用いられる熱可塑性樹脂等を溶融して成形可能な装置であって、例えば、特開2017-148997号公報に記載された公知の押出装置などを使用することができる。
具体的には、材料を供給する供給口と、前記供給口から供給された熱可塑性樹脂等の材料を溶融、混練する溶融混練部と、前記溶融混練部で溶融、混練された熱可塑性樹脂を吐出する吐出部を有している。
前記溶融混練部はスクリューを具備しており、スクリューの回転、電熱ヒーターなどの加熱源及び上記材料自身から発生する、せん断熱により溶融・混錬される。溶融した材料は前記吐出部のメッシュを通り、吐出される。前記押出装置は、例えば二軸押出機、単軸押出機、及びローター型二軸混練機が挙げられる。
【0026】
(再生プラスチック(B)の製造方法)
本発明の再生プラスチック(B)の製造方法は、例えば以下の実施形態が好ましい。
一実施形態において、印刷物又は積層体(A)は、裁断又は破砕して断片化された形状であることが好ましい。断片化するためには破砕などの方法が用いられる。
また、印刷物又は積層体(A)は洗浄されていることが好ましく、本発明においては洗浄工程を有することが好ましい。その後、印刷物又は積層体(A)を加工して、再生プラスチック(B)を得る。加工は加熱溶融工程や押出工程を含むものであり、以下詳細に記載する。
【0027】
(破砕)
印刷物又は積層体(A)の形状を断片化するためには、破砕が有効である。破砕方法は特に制限されず、例えば、ジョークラッシャー、インパクトクラッシャー、カッターミル、スタンプミル、リングミル、ローラーミル、ジェットミル、又はハンマーミルを用いる方法が挙げられる。印刷物又は積層体(A)の断片のサイズは辺の長さが1mm~40mmであることが好ましく、より好ましくは8mm~20mmである。
【0028】
(洗浄)
印刷物若しくは積層体(A)、又は、断片化された印刷物若しくは積層体(A)は、洗浄されていることが好ましい。洗浄方法はバッチ式あるいは連続式等が挙げられ、水、洗剤、中和剤、アルカリ水溶液を用いてもよい。また、洗浄された印刷物又は積層体(A)は脱水、乾燥されていることが好ましい。脱水の方式としては遠心脱水方式、乾燥方式としては熱風乾燥方式が好適である。
【0029】
(加工)
断片化あるいは洗浄された印刷物又は積層体(A)は、スクリューを具備した押出装置中で加熱溶融、混錬されて樹脂組成物(a)となる。当該樹脂組成物(a)は冷却されて40℃以下になることで再生プラスチック(B)となる。
【0030】
具体的に再生プラスチック(B)を得る工程としては、印刷物又は積層体(A)を供給口から供給する工程と、前記供給口から供給された印刷物又は積層体(A)を溶融、混練して樹脂組成物(a)とする工程と、溶融混練部で溶融混練された樹脂組成物(a)を吐出する工程と、吐出部より吐出された樹脂組成物(a)を冷却して、再生プラスチック(B)とする工程とを含むことが好ましい。再生プラスチック(B)の形状は特に限定されず、棒状、粒子状、立方体、直方体、不定形、等が挙げられる。
【0031】
印刷物又は積層体(A)は120~280℃で加熱溶融され、更に混錬され樹脂組成物(a)となる。この工程における、温度域は、印刷物又は積層体(A)のガラス転移温度や、溶融温度、再生プラスチックの形状、成形工程でかかる圧力を考慮する必要がある。上記溶融温度は、好ましくは160℃~250℃であり、より好ましくは170℃~240℃であり、さらに好ましくは180℃~230℃である。当該温度域により加熱溶融され、混錬されて均一な再生プラスチック(B)となるのである。
また、混錬時の上記スクリューの回転数は、50~1000RPMであることが好ましい。上記範囲内では、樹脂組成物(a)ひいては再生プラスチック(B)の不溶物や焼けの発生を抑制できる。その結果、良好な成形性を維持することができる。
【0032】
樹脂組成物(a)の吐出により再生プラスチック(B)を得る工程における、押出装置の先端排出部の樹脂圧力は、18MPa以下が好ましく、より好ましくは15MPaであり、さらに好ましくは10MPaである。当該圧力により不純物を含みにくくなり、純度の安定した再生プラスチック(B)を連続して得ることができる。
押出装置の吐出部において、成形されるペレットへの異物を取り除くため、スクリーンメッシュ(金属の網)を使用することが好ましい。スクリーンメッシュ(金属の網)の種類は特に制限されず、例えば、平織、綾織、平畳織及び綾畳などの織製織と、パンチングメタルのタイプが挙げられるが、平織が好ましい。
スクリーンメッシュのサイズは吐出部の圧力や、目詰まりを考慮し、好ましくは40メッシュ以上であり、より好ましくは80メッシュ以上、さらに好ましくは120メッシュ以上である。
【0033】
吐出された樹脂組成物(a)を冷却、細断して再生プラスチック(B)とする方法としては例えば、ホットカット方式、ストランドカット方式が挙げられるが特に制限されない。
【0034】
冷却方法としては、例えば空冷、風冷、水冷が挙げられる。本発明においては、水冷工程を含むことが好ましい。20℃~80℃に冷却することが好ましく、30℃~60℃に冷却することがより好ましい。
【0035】
また、上記断片化された積層体(A)に対して、必要に応じて、各種添加剤等を加えてから、押出装置で加工してもよい。上記裁断物又は破砕物と任意成分との混合は、ヘンシェルミキサー、タンブラー、ディスパー等を用いて行うことができる。
【0036】
(再生プラスチック(B)の添加剤等)
本発明の再生プラスチック(B)は、さらに、本発明の効果を損なわない範囲で、公知の添加剤等を含有することができる。添加剤としては、例えば、フェノール系及びリン系からなる群より選ばれる少なくとも1種の酸化防止剤;脂肪酸アミド系、アルキレン脂肪酸アミド系、金属石鹸系、及びエステル系からなる群より選ばれる少なくとも1種の滑剤;ヒンダードアミン系の耐候安定剤;酸価が5mgKOH/g以下のワックス;脂肪酸スルホン酸塩及び脂肪酸エステル系からなる群より選ばれる少なくとも1種の帯電防止剤;が挙げられる。
【0037】
(印刷物又はラミネート積層体(A))
本発明には印刷物又はラミネート積層体(A)を用いる。印刷物又はラミネート積層体(A)は、基材層及び印刷層を含む。
その構成は、具体的には、以下の構成を例示することができるが、これらに限定されない。なお以下(1)から(20)の構成表示においては、「/」は各層の境界を意味する。接着剤層は従来公知の方法であるドライラミネート及びノンソルラミネートで使用される接着剤で構成されるものに限らず、押し出しラミネートにおける、ポリオレフィン樹脂やその他の熱可塑性樹脂である場合も含まれる。
(1)基材/印刷層/接着層/シーラント
(2)基材/印刷層/接着剤層/中間基材/接着剤層/シーラント
(3)基材/印刷層/接着剤層/第1の中間基材/接着剤層/第2の中間基材/接着剤層/シーラント
(4)基材/印刷層/熱可塑性樹脂層
(5)基材/印刷層/(AC剤層)/熱可塑性樹脂層/シーラント
(6)基材/印刷層/(AC剤層)/熱可塑性樹脂層/中間基材/(AC剤層)/熱可塑性樹脂層/シーラント
(7)基材/印刷層/接着剤層/中間基材/(AC剤層)/熱可塑性樹脂層/シーラント
(8)基材/印刷層/(AC剤層)/熱可塑性樹脂層/中間基材/接着剤層/シーラント
(9)印刷層/基材
(10)印刷層/基材/ヒートシール剤層
(11)印刷層/シーラント
(12)印刷層/基材/接着剤層/シーラント
(13)印刷層/基材/接着剤層/中間基材/接着剤層/シーラント
(14)印刷層/基材/(AC剤層)/熱可塑性樹脂層/シーラント
【0038】
上記構成においてAC剤層とは、アンカーコート剤層を表し、()は、任意の構成であることを表す。また、上記構成はそれぞれ、さらにバリア層を含んでいる場合も好ましく、バリア層の好ましい形態としては、蒸着層、バリアコート層、もしくはバリア接着剤層から選ばれる少なくとも一種である。
【0039】
バリア層を含む好ましい形態を以下に示す。
(15)基材/蒸着層/印刷層/接着剤層/シーラント
(16)基材/印刷層/接着剤層/蒸着層/中間基材/接着剤/シーラント
(17)基材/印刷層/接着剤層/蒸着層/シーラント
(18)基材/バリアコート層/印刷層/接着剤層/シーラント
(19)基材/印刷層/バリアコート層/接着剤層/シーラント
(20)基材/印刷層/バリア接着剤層/シーラント
ただし、本発明の形態はこれらに限定されない。
【0040】
印刷物又は積層体(A)は、ポリオレフィン樹脂を、印刷物又は積層体(A)の全質量中80質量%以上含有する。前記含有量は85%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。印刷物又は積層体(A)は、ポリオレフィン樹脂を上記の範囲で含むことにより、分離工程の簡便性及びリサイクル適性が高く、良好な成形性を有し、且つ様々な用途に使用可能な成形用材料を得ることができる。ポリオレフィンはポリプロピレン及び/又はポリエチレンであることが好ましい。当該ポリプロピレンは、エチレン及び/又はブテンとの共重合体であることがなお好ましい。
【0041】
(印刷物又はラミネート積層体(A)の態様)
印刷物又はラミネート積層体(A)の態様としては、構成として、基材、シーラントを有する場合、以下の形態であることがより好ましい。
(1)基材、シーラントすべてにポリプロピレンを含む
この場合、積層体(A)の加熱溶融温度は150~250℃が好ましく、180~230℃がなお好ましく、190~220℃が更に好ましい。
(2)基材がポリプロピレンを含み、シーラントがポリエチレンを含む
この場合、積層体(A)の加熱溶融温度は140~240℃が好ましく、170~220℃がなお好ましく、180~210℃が更に好ましい。
(3)基材、シーラントともにポリエチレンを含む
この場合、積層体(A)の加熱溶融温度は130~230℃が好ましく、160~210℃がなお好ましく、170~200℃が更に好ましい。
【0042】
(蒸着層)
印刷物又はラミネート積層体(A)がバリア層として蒸着層を有する場合、蒸着層は、蒸着膜を含むことが好ましく、蒸着層として、蒸着膜を有する基材、蒸着膜を有する中間基材、蒸着膜を有するシーラントからなる群より選ばれる一種以上を用いることが好ましい。
印刷物又はラミネート積層体(A)が、蒸着膜を含む蒸着層を有することで、印刷物又は積層体(A)が、高いガスバリア性、具体的には、酸素バリア性および水蒸気バリア性を有することに加え、印刷物又は積層体(A)を用いて作製した包装容器は、その内部に充填された内容物の質量の減少を抑制できる。
【0043】
蒸着膜は、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、スズ(Sn)、ナトリウム(Na)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)等の1種又は2種以上の無機物又は無機酸化物の蒸着膜とすることができる。蒸着膜は、2層以上の構成とすることができ、同一の材料によって構成されていても、異なる材料によって構成されていてもよい。
上記した中でも、密着性、およびガスバリア性の観点から、蒸着膜はアルミニウム、酸化アルミニウム(アルミナ)または酸化ケイ素(シリカ)により構成されることが好ましい。
【0044】
また、蒸着膜の厚さは、1nm以上150nm以下であることが好ましく、5nm以上60nm以下であることがより好ましく、10nm以上40nm以下であることがさらに好ましい。
蒸着膜の厚さを1nm以上とすることにより、蒸着層の酸素バリア性および水蒸気バリア性をより向上することができる。
また、蒸着膜の厚さを150nm以下とすることにより、再生プラスチックをモノマテリアル包装容器の作製に好適に使用することができ、さらに、蒸着膜におけるクラックの発生を防止することができる。
【0045】
蒸着膜の形成方法としては、従来公知の方法を採用でき、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理気相成長法(PhysicalVaporDeposition法、PVD法)、あるいは、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(ChemicalVaporDeposition法、CVD法)等を挙げることができる。
【0046】
(バリアコート層)
印刷物又はラミネート積層体(A)がバリア層としてバリアコート層を有する場合、バリアコート層は、バリアコート剤により形成される。バリアコート層は、基材、中間基材、シーラント及び/又は印刷層に隣接していることが好ましい。これにより、酸素バリア性および水蒸気バリア性を向上することができる。
【0047】
バリアコート剤は、例えば、塩化ビニル-塩化ビニリデン共重合体、酢酸ビニル-塩化ビニリデン共重合体、アクリル酸エステル-塩化ビニリデン共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、並びに(メタ)アクリル樹脂などのガスバリア性樹脂を含む、樹脂単体からなるコート剤の他に、下記のような無機層状化合物と樹脂からなるコート剤を用いることができる。
無機層状化合物は、例えば、カオリナイト族、スメクタイト族、およびマイカ族等の粘土鉱物等であって、層状構造を有する結晶性の無機化合物である。これら無機層状化合物の種類、粒径、およびアスペクト比等は、適宜選択され、特に限定されるものでない。この中で、モンモリロナイト、ヘクトライト、およびサポナイト等のスメクタイト族が好適で、無機層状化合物の層間に樹脂を取り込み、複合体を形成し易い。特に、この族の中でも、モンモリロナイトは溶融状態での安定性、塗工性が最も優れている。
【0048】
また、バリアコート剤に使用される樹脂は、前述の無機層状化合物の層間に取り込まれ易いものであれば特に限定されないが、水溶性高分子を用いることが好ましい。水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アクリル樹脂およびアルギン酸ナトリウムなどが挙げられる。特にポリビニルアルコール(PVA)を本発明のガスバリア性積層体のコート剤に用いた場合にガスバリア性が最も優れる。
【0049】
また、バリアコート層は、さらに金属アルコキシドの加水分解・重縮合生成物を含有した組成としてもよい。この金属アルコキシドは、Mを金属、Rをアルキル基、およびnをアルコキシ基の配位数とした場合、下記一般式、M(OR)nで示される化合物である。Mが、Si、Ti、ArおよびZrからなる群より選ばれ、Rが、メチル基、エチル基から選ばれるのが好ましい。特に、テトラエトキシシラン〔Si(OC〕、トリイソプロポキシアルミニウム〔Al(O-2’-C〕などを用いると、アルコキシドの加水分解生成物が、水系の溶媒中で比較的安定に存在するために好ましい。
【0050】
上述した各成分を単独またはいくつかを組み合わせてコート剤に加えることができ、さらにコート剤のバリア性を損なわない範囲で、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、あるいは分散剤、安定化剤、粘度調整剤、着色剤など公知の添加剤を加えることができる。
【0051】
バリアコート層は、上記材料を水または適当な溶剤に、溶解または分散させ、塗布、乾燥することにより形成することができる。また、市販されるバリアコート剤を塗布、乾燥することによってもバリアコート層を形成することができる。
【0052】
バリアコート剤の塗布方法には、通常用いられる、ディッピング法、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法など従来公知の手段が用いられる。
【0053】
バリアコート層の厚さは、0.01μm以上10μm以下であることが好ましく、0.1μm以上5μm以下であることがより好ましく、0.3μm以上3μm以下であることが更に好ましい。
バリアコート層の厚さを0.01μm以上とすることにより、印刷物又は積層体(A)の酸素バリア性および水蒸気バリア性を向上させることができる。バリアコート層の厚さを10μm以下とすることにより、再生プラスチックをモノマテリアル包装容器の作製に好適に使用することができる。
【0054】
(塩素含有率)
印刷物又は積層体(A)に含有されることのあるハロゲン元素によって、ペレット製造時にハロゲンガスや酸性ガスである塩化水素が発生し、設備が損傷する、又は人体の健康が脅かされる恐れがある。そのうえ、ペレット製造時に気泡が発生した場合、製造されたペレットを用いて、成形品を製造する際に、表面に凹凸が発生しやすく、成形品の表面状態が悪化する恐れがある。そのため、印刷物又は積層体(A)において、塩素含有率が、印刷物又は積層体(A)の全質量中、0.4質量%以下であることが必要であり、0.2質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがなお好ましい。
【0055】
(印刷物又は積層体(A)における塩素含有率測定方法)
印刷物又は積層体(A)における塩素含有率は、イオンクロマトグラフィー(IC)や、ICP質量分析装置(ICP-MS)等公知の方法を用いて測定することができる。具体的には、後述の塩素含有量の分析手法等と同様の方法により特定可能である。
【0056】
(印刷物又は積層体(A)のメルトマスフローレイト(MFR))
本発明における印刷物又は積層体(A)のメルトマスフローレイト(MFR)は、辺の長さを5mm~10mmに破砕し、最も含有率の高い試料の条件で実施される。本発明におけるメルトマスフローレイトは、JISK7210に準拠して測定される値である。印刷物又は積層体(A)のMFRとして好ましくは0.5~15g/10分であり、より好ましくは3~12g/10分である。前記範囲の場合、リサイクルの際に再生プラスチック(B)が劣化しにくく、得られる成形品がより優れる。
【0057】
(基材)
印刷物又は積層体(A)における基材は、原料としてポリオレフィン樹脂を主として含むプラスチック基材であることが好ましい。包装材に用いるために、フィルム又はシート状の形態が好ましい。ポリオレフィン樹脂を主として含む基材は、エステル系基材と比較して、アルカリ性水溶液や、成形過程時の熱に対する耐性が高く、熱分解や加水分解などが起きにくいため、分子量を高く維持することができる。
更に、リサイクル後の回収の容易さの観点から、当該ポリオレフィン基材として例えば、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、無延伸ポリプロピレン(CPP)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン、酸変性ポリエチレン、酸変性ポリプロピレン、共重合ポリプロピレン、及びこれらを積層したフィルム等が好適に挙げられる。基材の厚みは特に限定されず、包装容器への加工性を考慮すると、好ましくは5μm以上150μm以下であり、より好ましくは10μm以上70μm以下である。また、中でもヒートシール性を有するフィルムは好適に用いられ、CPPやヒートシール性OPPなどがそれに該当する。
【0058】
また、基材は、前記のように蒸着層、またはバリアコート層を有するバリア基材である形態も好ましい。
【0059】
ポリオレフィン樹脂を主として含む基材としては、単純にオレフィン基材同士が積層されていてもよいし、接着等を介してオレフィン基材とは異なる基材が積層されていてもよい。「オレフィン基材とは異なる基材」は、異なる性質を有するフィルムが挙げられ、種類を問わない。また、積層された基材である場合は接着層を含む形態であってもよい。プラスチックを積層させる方法は特に限定されず、共押出製法、熱融着、接着層を介した圧着など、従来公知の方法が挙げられる。
【0060】
基材は、帯電防止剤、防曇剤、紫外線防止剤などの添加剤を含む(塗工あるいは混練)形態や、易接着性コート層(例えばポリビニルアルコール及びその誘導体を含む層)を有する形態、基材の表面をコロナ処理あるいは低温プラズマ処理した形態などが好ましい。上記の添加や加工は、印刷インキや、その他コーティング剤の濡れ性を向上させる目的や、フィルムに特定の機能性を持たせる目的でも施され、例えば、湿気による包材の曇りを防止することで内容物の視認性に優れた包材を提供するのにも好適に用いられる。
【0061】
(印刷層)
印刷物又は積層体(A)における印刷層は、装飾又は美感の付与;内容物、賞味期限、及び、製造者又は販売者の表示等を目的とした、任意の絵柄、パターン、文字、及び記号等を表示する層であることができる。印刷層は、絵柄、パターン、文字、及び記号等を有さないベタ印刷層であってもよい。印刷層の形成方法は特に制限されず、公知の着色剤(顔料及び/又は染料)を用いて形成することができるが、顔料及びバインダー樹脂を含む印刷インキを用いて形成することが好ましい。また、印刷層は、単層構成でも複層構成でもよく、表層に印刷してもよい。印刷層の厚みは、好ましくは0.1~10μmであり、より好ましくは0.5~5μmであり、特に好ましくは1~2.5μmである。
【0062】
(顔料)
印刷物又は積層体(A)における印刷層は、顔料を含む印刷インキを用いて形成されることが好ましい。再生プラスチックの着色による品質劣化を考慮し、印刷層全質量中の着色剤の含有率が、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがなお好ましく、23質量%以下であることが更に好ましい。なお、着色剤は顔料であることが好ましく、当該顔料は、有機顔料、無機顔料、体質顔料のいずれでも使用は可能であるが、無機顔料では酸化チタンを含むもの、体質顔料としては、シリカ、硫酸バリウム、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどが好ましい。有機顔料では、有機化合物、有機金属錯体からなるものの使用が好ましい。顔料等の着色剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0063】
(有機顔料)
上記有機顔料としては、以下の例には限定されないが、溶性アゾ系、不溶性アゾ系、アゾ系、フタロシアニン系、ハロゲン化フタロシアニン系、アントラキノン系、アンサンスロン系、ジアンスラキノニル系、アンスラピリミジン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、フラバンスロン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリン系、インダンスロン系、カーボンブラック系などの顔料が挙げられる。また、例えば、カーミン6B、レーキレッドC、パーマネントレッド2B、ジスアゾイエロー、ピラゾロンオレンジ、カーミンFB、クロモフタルイエロー、クロモフタルレッド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ジオキサジンバイオレット、キナクリドンマゼンタ、キナクリドンレッド、インダンスロンブルー、ピリミジンイエロー、チオインジゴボルドー、チオインジゴマゼンタ、ペリレンレッド、ペリノンオレンジ、イソインドリノンイエロー、アニリンブラック、ジケトピロロピロールレッド、昼光蛍光顔料等が挙げられる。
【0064】
有機顔料の色相としては黒色顔料、藍色顔料、緑色顔料、赤色顔料、紫色顔料、黄色顔料、橙色顔料、茶色顔料からなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましい。また更には、黒色顔料、藍色顔料、赤色顔料、黄色顔料、からなる群より選ばれる少なくとも一種又は二種以上が好ましい。有機顔料として具体的な例をカラーインデックス(Colour Index International、略称C.I.)のC.I.ナンバーで示す。好ましくはC.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット37、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントブラック7である。
【0065】
無機顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、シリカ、アルミニウム粒子、マイカ(雲母)、ブロンズ粉、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、群青、紺青、ベンガラ、黄色酸化鉄、鉄黒、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられ、アルミニウムはリーフィングタイプ又はノンリーフィングタイプがあるが、ノンリーフィングタイプが好ましい。
【0066】
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂とは、印刷物又は積層体(A)の印刷層における結着樹脂をいい、後述するように、塩素含有率が全バインダー樹脂中に5質量%以下であることが好ましい。
【0067】
また、上記バインダー樹脂は有機溶剤に可溶な熱可塑性樹脂であることが好ましい。バインダー樹脂はガラス転移温度が-60℃以上40℃未満である樹脂と、ガラス転移温度が40℃以上200℃以下である樹脂とを併用することが好ましい。更に好ましくは、ガラス転移温度が-50℃~0℃である樹脂と、ガラス転移温度が50℃~190℃である樹脂とを併用することである。なお、本明細書においてガラス転移温度とは、示差走査熱量計(DSC)における測定値である。
【0068】
バインダー樹脂の例としては、以下に限定されるものではないが、ウレタン樹脂、セルロース系樹脂、ポリアミド樹脂、ロジン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ダンマル樹脂、スチレン-マレイン酸共重合樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、テルペン樹脂、フェノール変性テルペン樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、ブチラール、ポリアセタール樹脂、石油樹脂、及びこれらの変性樹脂などを挙げることができる。これらの樹脂は、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。上記の中でも、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂以外の樹脂からなる群より選択される一種以上を含有することが好ましく、ウレタン樹脂を含有することがより好ましい。
【0069】
(ウレタン樹脂)
ウレタン樹脂の製造方法は特に制限はなく、公知の方法により適宜製造される。ポリオールとポリイソシアネートからなるウレタン樹脂や、ポリオールとポリイソシアネートからなる末端イソシアネートのウレタンプレポリマーと、ポリアミンとを反応させることにより得られるウレタン樹脂などが好ましい。製造方法としては例えば、特開2013-256551号公報に記載の方法などが挙げられる。
【0070】
(バインダー樹脂の塩素含有率)
上記塩素含有率は、バインダー樹脂の質量を基準とした場合の塩素原子の含有率(質量%)である。本発明におけるバインダー樹脂は、塩素含有率が5質量%以下であることが好ましく、0である場合を含む。
塩素含有率が5質量%以下であると、環境安全性に優れ、且つ、遊離塩素が発生し難くなる。上記塩素含有率は、より好ましくは4質量%以下であり、さらに好ましくは3質量%以下であり、特に好ましくは2質量%以下である。
【0071】
塩素含有率は、イオンクロマトグラフィー(IC)や、ICP質量分析装置(ICP-MS)等公知の方法を用いて測定することができる。測定機器としては、例えば、ICでは島津製作所製LC-20ADsp、ICP-MSではAgilent Technologies製Agilent 7700xが挙げられる。また、印刷層の塩素含有率は、印刷層を構成する各原料の塩素含有率から、以下の式により簡易的に算出することができる。その他各層においても同様である。
式:バインダー樹脂固形分総質量中の塩素含有率(%)=バインダー樹脂固形分総質量中の塩素の質量/バインダー樹脂の固形分総質量(%)
式:印刷層固形分総質量中の塩素含有率(%)=印刷層固形分総質量中の塩素の質量/印刷層の固形分総質量(%)
【0072】
本発明において塩素含有率は、JISK0127(2013)に準拠して測定されることが好ましい。この測定方法では、燃焼法にて前処理を行ったサンプルをイオンクロマトグラフ法で定量する。
【0073】
[バインダー樹脂の硝化度]
硝化度とは、硝酸エステルのエステル化の度合いを窒素含有量(質量%)で表したものであり、例えば、市販のニトロセルロースは通常10~12質量%である。
印刷物又は積層体(A)の印刷層におけるバインダー樹脂は、硝化度が1質量%以下であることが好ましく、0である場合を含む。硝化度が1質量%以下であることで、NOガス発生を抑制でき、より安全性の高い再生プラスチック(B)を提供することができる。
バインダー樹脂の硝化度は、より好ましくは0.6質量%以下であり、更に好ましくは0.4質量%以下であり、特に好ましくは0.2質量%以下である。
なお、上記ウレタン樹脂の硝化度としては、0.3質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以下であることがなお好ましく、0.1質量%以下であることが更に好ましい。また、後述の樹脂(P)の硝化度としては、0.8質量%以下であることが好ましく、0.6質量%であることがなお好ましく、0.4質量%であることが更に好ましい。
【0074】
[樹脂(P)]
印刷物又は積層体(A)の印刷層におけるバインダー樹脂はさらに、ウレタン樹脂及びウレタン樹脂以外の樹脂(P)を含むことが好ましい。
樹脂(P)として好ましくは、環構造を有する樹脂であり、より好ましくは、アセタール環構造、芳香族環構造、脂環族環構造及びピラノース環構造からなる群より選ばれる少なくとも一種の環構造を有する樹脂であり、さらに好ましくは、アセタール環構造を有する樹脂である。これらの環構造は二重結合を有していてもよいし、アルキル基又はその他の置換基を有していてもよい。再生プラスチック(B)との相溶性のためである。
【0075】
樹脂(P)は、環構造を有する構成単位を、樹脂(P)の質量を基準として好ましくは40~95質量%の範囲で含み、より好ましくは50~90質量%の範囲で含む。
樹脂(P)が、環構造を有する構成単位を上記範囲で含むと、印刷インキにおける顔料分散が促進される。また、積層体(A)のラミネート強度に優れ、経時劣化を抑制することができる。さらに、耐ブロッキング性に優れるものとなる。
本明細書において、環構造を有する単量体の質量には、メチル基やニトロ基のような環構造に置換もしくは隣接した基も含む。例えば、樹脂(P)がスチレン-アクリル樹脂であり、α-メチルスチレン由来の構成単位が50質量%、アクリルモノマーとしてブチルメタクリレート由来の構成単位が50質量%である場合、環構造の含有率は50質量%である。
【0076】
環構造を有する構成単位の含有率は、以下の式により算出してもよい。
式:環構造を有する構成単位の含有率(質量%)
=環構造を有する単量体の質量×100/樹脂(P)を構成する全単量体の合計質量
【0077】
環構造を有する樹脂としては、例えば、ポリビニルアセタール樹脂、セルロースエステル樹脂、ロジン樹脂、ポリスチレン樹脂、環構造を有するポリエステル樹脂、環構造を有するアクリル樹脂、及びこれらの共重合樹脂が挙げられ、より好ましくは、ポリビニルアセタール樹脂、セルロースエステル樹脂、及びロジン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有するものである。更に好ましくは、ポリビニルアセタール樹脂を含有するものである。
【0078】
(ポリビニルアセタール樹脂)
ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールをブチルアルデヒド及び/又はホルムアルデヒド等のアルデヒドと反応させてアセタール環化したものであり、ビニルアルコール単位、酢酸ビニル単位及びアセタール環基を含むことが好ましい。ポリビニルアセタール樹脂は、アセタール環を60~90質量%、ビニルアルコール単位を5~30質量%、酢酸ビニル単位を0.5~10質量%含むことが好ましく、より好ましくは、アセタール環としてブチラール環を有するポリビニルブチラール樹脂である。
ポリビニルアセタール樹脂の重量平均分子量は、好ましくは10,000~100,000、より好ましくは10,000~80,000である。ポリビニルアセタール樹脂のガラス転移点は、好ましくは50~80℃であり、より好ましくは60~75℃である。
【0079】
(セルロースエステル樹脂)
セルロースエステル樹脂として好ましくは、セルロースアセテートアルキネート樹脂であり、例えば、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートが好適に用いられる。
セルロースエステル樹脂は、アルキル基を有するものが好ましい。上記アルキル基は、好ましくは炭素数10以下のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が好適に用いられる。アルキル基は置換基を有していてもよい。
セルロースエステル樹脂の重量平均分子量は、好ましくは5,000~200,000であり、より好ましくは10,000~10,000であり、さらに好ましくは15,000~80,000である。セルロースエステル樹脂のガラス転移点は、好ましくは120℃~180℃であり、より好ましくは130~170℃である。
ウレタン樹脂とセルロースエステル樹脂とを併用することで、印刷適性、耐ブロッキング性等が向上する。
【0080】
(ロジン樹脂)
ロジン樹脂とは、ロジン酸(例えば、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、ピマール酸、イソピマール酸、デヒドロアビエチン酸)由来の構造単位を主成分として有するものをいう。ここで、ある構造単位を主成分として有するとは、その構造単位が50質量%以上であることを指す。ロジン酸又はロジン樹脂は水素化されていてもよい。
ロジン樹脂として好ましくは、ロジン変性フェノール樹脂、ロジンエステル樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、及び重合ロジン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種である。
ロジン樹脂の酸価は、好ましくは350mgKOH/g以下であり、より好ましくは250mgKOH/g以下であり、さらに好ましくは150mgKOH/g以下である。
一実施形態として、酸価は100mgKOH/g以下が好ましく、50mgKOH/g以下であることがより好ましい。
ロジン樹脂の軟化点は、好ましくは60~180℃であり、より好ましくは70~150℃である。本明細書において、軟化点とは、環球法による測定値であり、JISK2207に準拠して測定することができる。
【0081】
(ロジンエステル)
ロジン樹脂は、分子量が1,000以下の低分子ポリオールとロジン酸とのエステル縮合樹脂であるロジンエステルが好ましい。低分子ポリオールは、好ましくは、1分子中の
水酸基数が2~4(以下、2~4官能と略記する場合がある)であり、分子量が50~500である。このような低分子ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,10-デカンジオール等の2官能低分子ポリオール;グリセリン、トリメチロールプロパン等の3官能低分子ポリオール;エリスリトール、ペンタエリスリトール等の4官能低分子ポリオール;が好適に用いられる。中でも、3官能及び/又は4官能の低分子ポリオールが好ましい。
ロジンエステルの重量平均分子量は、好ましくは500~2,000であり、より好ましくは500~1,500である。
【0082】
(接着剤層)
印刷物又は積層体(A)は、さらに接着剤層を有していてもよい。
接着剤層は、各層を接着することができれば特に限定されることはなく、オレフィン系接着剤、アクリル系接着剤、エチレン―酢酸ビニル共重合系接着剤、反応性ウレタン接着剤(ドライ接着剤及びノンソル型接着剤を含む)、イミン系アンカーコート剤、その他のアンカーコート剤、押出ラミネートで用いられる熱可塑性樹脂などが好適に挙げられる。なお、接着剤層が、ポリイソシアネートとポリオールからなる反応性ウレタン接着剤の反応物であることが好ましい。
【0083】
各層を接着(ラミネートともいう)させる方法は特に限定されず、押出ラミネート法、ドライラミネート法、ノンソルラミネート法など、従来公知の方法が挙げられる。
接着剤層を形成する反応性ウレタン接着剤としては、主剤であるポリオール及び硬化剤であるポリイソシアネートからなる2液型ウレタン接着剤が好まれる。この場合、接着剤層は、このウレタン接着剤の反応物である。ポリオールは、水酸基を2つ以上有する化合物であればよく、公知のポリオールから選択することができる。ポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、シリコーンポリオール、ヒマシ油系ポリオール、及びフッ素系ポリオールが挙げられる。中でもポリエーテルポリオール及び/又はポリエステルポリオールを含むことが好ましい。ポリオールは、ポリオール中の水酸基の一部が酸変性された酸変性物、又はポリオール中の水酸基の一部にジイソシアネートを反応させてウレタン結合を導入したものであってもよい。ポリイソシアネートは、イソシアネート基を2つ以上有する化合物であればよく、公知のポリイソシアネートから選択することができる。ポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、及びこれらの変性体が挙げられる。ポリオールは、1種を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。ポリイソシアネートについても、同様である。
【0084】
(バリア接着剤層)
印刷物又は積層体(A)は、バリア層として、バリア接着剤層を有していてもよい。バリア接着剤層は、例えば、市販されるバリア接着剤を塗布、乾燥することによって形成することができる。バリア接着剤としては例えば、TM-9310(東洋モートン社製)、マクシーブ(三菱ガス社製)、PASLIM(DIC社製)などのガスバリア接着剤が好適に用いられる。接着剤層の厚みは、好ましくは0.1~10μmであり、より好ましくは0.5~5μmであり、特に好ましくは1.0~2.5μmである。
【0085】
(中間基材層)
印刷物又は積層体(A)は、さらに中間基材層を有していてもよい。中間基材層の具体例としては、基材層同様、原料としてポリオレフィン樹脂を主として含むプラスチック基材であることが好ましい。例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、プロピレン単独重合体、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂等が挙げられ、前記、蒸着層、バリアコート層を有するガスバリア基材である形態が好ましい。また、共押出製法による複合基材であってもよい。
【0086】
(シーラント)
印刷物又は積層体(A)は、さらにシーラントを有していてもよい。シーラントは、内層側の面が被包装物と直接接触し、被包装物を保護する役割を担う。積層体を袋状とするためにシーラントは最内層がヒートシール性を有していることが好ましい。シーラントを構成する材料としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、プロピレン単独重合体、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上の樹脂を用いることができる。シーラントは、単層で構成されても、2層以上の多層で構成されてもよい。なお、シーラントは、ヒートシールの際の収縮を抑制するために、上記した樹脂からなる無延伸のフィルムであることが好ましい。
【0087】
シーラントの厚みは、特に限定されるものではなく、積層体の用途及び被包装物の種類や性質等に応じて適宜設定されるが、通常、10~200μmであることが好ましい。また、パウチ(特にレトルトパウチ)の場合、シーラントの厚みは、20~150μm、さらには25~130μmであることが好ましい。
【0088】
シーラントは、前記、蒸着層、またはバリアコート層を有するシーラントであることが好ましい。また、顔料等の混錬された乳白基材や共押出製法による複合基材であってもよい。
【0089】
(再生プラスチック(B)のメルトマスフローレイト(MFR))
再生プラスチック(B)のメルトマスフローレイト(MFR)は、成形時の温度、冷却スピードなどの、熱履歴に大きな影響を受ける。軟包装体の構成及びリサイクル方法等によるが、好ましくは0.5~20g/10分であり、より好ましくは3~15g/10分である。メルトマスフローレイトが上記の範囲内にあることにより、様々な成形に適した材料を提供することができる。
本発明においては、熱履歴を変更することにより、再生プラスチック(B)のメルトマスフローレイト(MFR)を調整する工程を含むことも好ましい。
【0090】
(成形品)
本発明により得られた再生プラスチック(B)を成形することで、成形品を得ることができる。成形方法は特に制限されず、例えば、射出成形、押出成形、ブロー成形、及び圧縮成形が挙げられる。成形品は、家電製品、文房具、自動車部品、おもちゃ、スポーツ用品、医療用品、及び建築・建設資材等、様々な用途に用いることができる。
【実施例
【0091】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本発明における部及び%は、特に注釈の無い場合、質量部及び質量%を表す。
【0092】
(水酸基価)
水酸基価は、試料1gをアセチル化させたとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数であり、JIS K 0070に記載された方法で測定した。
【0093】
(酸価)
酸価は、試料1g中に含有する遊離脂肪酸、樹脂酸等を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数であり、JIS K 0070に記載された方法で測定した。
【0094】
(アミン価)
アミン価は、試料1g中に含有するアミノ基を中和するのに必要とする塩酸の当量と同量の水酸化カリウムのmg数であり、JIS K 0070に準拠して測定した。即ち、試料を0.5~2g精秤した(試料固形分:Sg)。精秤した試料にメタノール/メチルエチルケトン=60/40(質量比)の混合溶液50mLを加え溶解させた。得られた溶液に指示薬としてブロモフェノールブルーを加え、得られた溶液を0.2mol/Lエタノール性塩酸溶液(力価:f)で滴定を行なった。溶液の色が緑から黄に変化した点を終点とし、この時の滴定量(AmL)を用い、下記式によりアミン価を求めた。
(式)アミン価=(A×f×0.2×56.108)/S[mgKOH/g]
【0095】
(重量平均分子量)
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置(東ソー株式会社製HLC-8220)を用いて分子量分布を測定し、ポリスチレンを標準物質に用いた換算分子量として求めた。下記に測定条件を示す。
カラム:下記カラムを直列に連結して使用した。
東ソー株式会社製TSKgelSuperAW2500
東ソー株式会社製TSKgelSuperAW3000
東ソー株式会社製TSKgelSuperAW4000
東ソー株式会社製TSKgelguardcolumnSuperAWH
検出器:RI(示差屈折計)
測定条件:カラム温度40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
【0096】
(ガラス転移点(Tg))
ガラス転移点は、示差走査熱量測定測定(DSC)により求めた。測定は、株式会社リガク製DSC8231を使用し、測定温度範囲-70~250℃、昇温速度10℃/分の条件で行った。DSC曲線におけるガラス転移に基づくベースラインシフトの中点(変曲点)をガラス転移点とした。
【0097】
(塩素含有率)
塩素含有率は、JIS K0127(2013)に準拠して測定した。即
ち、透明基板上に、インキ又はバインダー樹脂をそれぞれ2.0μmになるように塗布し塗膜を形成した。80℃で乾燥させ、0.5g削り取った。削り取った塗膜を燃焼法にて前処理を行い、得られたサンプルの塩素含有量を、イオンクロマトグラフィーで定量し、塩素含有率を求めた。
【0098】
(メルトマスフローレイト(MFR)の測定)
MFRは、K 7210-1:2014に記載された方法で測定した。積層体(A)の測定については、辺の長さが5mm~10mmに破砕し、実施した。温度等の測定条件については、最も含有率の高い試料の条件で実施した。
【0099】
(ウレタン樹脂の合成)
(合成例1)ウレタン樹脂PU1
3-メチル1,5ペンタンジオール(MPD)とセバシン酸(SA)の縮合物である、数平均分子量2,000のポリエステルポリオール(以下「MPD/SA」)100部、1,4-ブタンジオール(以下「1,4-BD」)1部、イソホロンジイソシアネート(以下「IPDI」)28.5部及び酢酸エチル32.1部を混合して、窒素雰囲気下で90℃、5時間反応させて、末端イソシアネートのウレタンプレポリマーを得た。
次いで、イソホロンジアミン(以下「IPDA」)11.0部、N-(2-アミノエチル)エタノールアミン(以下「AEA」)1.0部、ジブチルアミン(以下「DBA」)1.0部及び混合溶剤1(酢酸エチル/イソプロパノール=70/30(質量比))298.1部を攪拌混合し、得られた末端イソシアネートのウレタンプレポリマーを40℃で徐々に添加した。
80℃で1時間反応させ、固形分30質量%、アミン価6.5mgKOH/g、水酸基価3.8mgKOH/g、重量平均分子量50,000のウレタン樹脂PU1の溶液を得た。ウレタン樹脂PU1の塩素含有率は0質量%である。
【0100】
下記インキ調整例において、以下のものを用いた。
・PVB溶液:ビニルアルコール単位、酢酸ビニル単位及びビニルブチラール単位を有し、ブチラール環基を73質量%含むポリビニルブチラール樹脂(ガラス転移点70℃、重量平均分子量50,000、塩素含有率0質量%、硝化度0質量%)の酢酸エチル/イソプロパノール=1/1混合溶剤による固形分30%溶液
・塩化ビニル-酢酸ビニル溶液:塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂(日信化学社製 ソ
ルバインTA3、塩素含有率47.1質量%、硝化度0質量%)の固形分30%酢酸エチル溶液
【0101】
(インキの調製)
[グラビアインキ調製例1]グラビアインキX1
ウレタン樹脂PU1溶液40部、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)溶液15部、C.I.ピグメントブルー15:3(トーヨーカラー社製、製品名:LIONOL BLUE FG-7330、塩素含有率0質量%、硝化度0質量%)5部、シリカ粒子(親水性シリカ、平均粒子径3.0μm、比表面積300m/g)0.8部、混合溶剤2(n-プロピルアセテート/イソプロパノール=70/30(質量比))36部を混合し、ビーズミルで20分間分散して顔料分散体を得た。得られた顔料分散体に、塩素化ポリプロピレン溶液0.8部、プロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点121.0℃)3.5部、及び水1.5部を攪拌混合し、有機溶剤系グラビアインキX1を得た。
【0102】
[グラビアインキ調製例2]グラビアインキX2
ウレタン樹脂PU1溶液40部、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)溶液10部、C.I.ピグメントブルー15:3(トーヨーカラー社製、製品名:LIONOL BLUE FG-7330、塩素含有率0質量%、硝化度0質量%)10部、シリカ粒子(親水性シリカ、平均粒子径3.0μm、比表面積300m/g)0.8部、混合溶剤2(n-プロピルアセテート/イソプロパノール=70/30(質量比))36部を混合し、ビーズミルで20分間分散して顔料分散体を得た。得られた顔料分散体に、塩素化ポリプロピレン溶液0.8部、プロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点121.0℃)3.5部、及び水1.5部を攪拌混合し、有機溶剤系グラビアインキX2を得た。
【0103】
[グラビアインキ調製例3]グラビアインキX3
ウレタン樹脂PU1溶液40部、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)溶液8部、塩化ビニル-酢酸ビニル溶液(PVC)溶液2部、C.I.ピグメントイエロー14(塩素含有率10.8質量%、硝化度0質量%)10部、シリカ粒子(親水性シリカ、平均粒子径3.0μm、比表面積300m/g)0.8部、混合溶剤2(n-プロピルアセテート/イソプロパノール=70/30(質量比))36部を混合し、ビーズミルで20分間分散して顔料分散体を得た。得られた顔料分散体に、塩素化ポリプロピレン溶液0.8部、プロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点121.0℃)3.5部、及び水1.5部を攪拌混合し、有機溶剤系グラビアインキX3を得た。
【0104】
[グラビアインキ調製例4]グラビアインキY1
ウレタン樹脂PU1溶液35部、塩化ビニル-酢酸ビニル溶液(PVC)溶液20部、C.I.ピグメントブルー15:3(トーヨーカラー社製、製品名:LIONOL BLU
E FG-7330、塩素含有率0質量%、硝化度0質量%)5部、シリカ粒子(親水性シリカ、平均粒子径3.0μm、比表面積300m/g)0.8部、混合溶剤2(n-プロピルアセテート/イソプロパノール=70/30(質量比))36部を混合し、ビーズミルで20分間分散して顔料分散体を得た。得られた顔料分散体に、塩素化ポリプロピレン溶液0.8部、プロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点121.0℃)3.5部、及び水1.5部を攪拌混合し、有機溶剤系グラビアインキY1を得た。
【0105】
<バリアコート剤の調製>
けん化度98モル%、4%水溶液粘度が30 mPa・sのポリビニルアルコール8部、モンモリロナイト2部、水90部となるよう混合し、90℃で加熱撹拌にて溶解し、ガスバリア性水性樹脂組成物であるバリアコート剤を得た。
【0106】
<印刷物又は積層体(A)の製造>
(積層体(A)の製造1)積層体A1
グラビアインキX1を、酢酸エチル/イソプロピルアルコール混合溶剤(質量比70/30)で、ザーンカップ#3(離合社製)15秒(25℃)になるように希釈した。その後、コロナ処理二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(厚み20μm)に対し、版深35μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機にてこの順で印刷し、50℃にて乾燥し、OPP/印刷層を得た。次いで、ドライラミネート機を用いて、この積層体の印刷層上に、接着剤(東洋モートン社製「TM-340V/CAT-29B」)を塗工し、オーブンにて溶剤を乾燥後、この上に、ライン速度40m/分にて、無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム(厚み30μm)を貼り合わせ、40℃で1日間保温し、OPP/印刷層/接着剤層/CPP構成である積層体A1を得た。印刷層、接着剤層の乾燥後塗布量はそれぞれ2.5g/mとした。MFR値は表1に記載する。
【0107】
(積層体(A)の製造2)積層体A2
グラビアインキX1をグラビアインキX2に変更した以外は、積層体A1の製造工程と同様にして、OPP/印刷層/接着剤層/CPP構成の積層体A2を得た。印刷層、接着剤層の乾燥後塗布量はそれぞれ2.5g/mとした。
【0108】
(積層体(A)の製造3)積層体A3
シーラントをアルミニウム蒸着無延伸ポリプロピレン(VMCPP)フィルム(厚み30μm)に変更した以外は、積層体A1の製造工程と同様にして、OPP/印刷層/接着剤層/VMCPP構成の積層体A3を得た。印刷層、接着剤層の乾燥後塗布量はそれぞれ2.5g/mとした。
【0109】
(積層体(A)の製造4)積層体A4
基材をポリビニルアルコールコートOPP(AOPP)フィルム(厚み20μm)に変更した以外は、積層体A1の製造工程と同様にして、AOPP/印刷層/接着剤層/CPP構成の積層体A4を得た。印刷層、接着剤層の乾燥後塗布量はそれぞれ2.5g/mとした。
【0110】
(積層体(A)の製造5)積層体A5
積層体A1の製造工程中の印刷工程と同様の手順にて、OPP/印刷層を得た。次いで、ノンソルラミネート機を用いて、この積層体の印刷層上に、接着剤(東洋モートン社製「EA-N373 A/B」)を塗工し、この上に、ライン速度40m/分にて、無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム(厚み30μm)を貼り合わせ、40℃で1日間保温し、OPP/印刷層/接着剤層/CPP構成である積層体A5を得た。印刷層の乾燥後塗布量は2.5g/m、接着剤層の塗布量は2.0g/mとした。
【0111】
(積層体(A)の製造6)積層体A6
積層体A1の製造工程中の印刷工程と同様の手順にて、OPP/印刷層を得た。次いで、押し出しラミネート機を用いて、この積層体の印刷層上に、ポリエチレンイミン系アンカーコート剤(東洋モートン社製EL-420)をメタノール:水=70:30(質量比)からなる溶剤で希釈した固形分1%(重量比、メタノール/水=70/30)の溶液を塗工し、オーブンにて溶剤を乾燥後、塗工面に330℃にて溶融したポリプロピレン樹脂(ノバテックFL02A、日本ポリプロ社製、接着機能を有する)(厚み15μm)を重ねると同時に、更に無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム(厚み30μm)を貼り合わせることで、OPP/印刷層/AC剤/PP樹脂層/CPP構成である積層体A6を得た。印刷層の乾燥後塗布量は2.5g/mとした。
【0112】
(積層体(A)の製造7、8)積層体A7、8
基材を高密度ポリエチレンフィルム(HDPE)フィルム(厚み20μ)、シーラントをリニア低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム(厚み40μm/積層体A7、150μm/積層体A8)に変更した以外は、積層体A1の製造工程と同様にして、HDPE/印刷層/接着剤層/LLDPE構成の積層体A7、A8をそれぞれ得た。印刷層、接着剤層の乾燥後塗布量はそれぞれ2.5g/mとした。
【0113】
(積層体(A)の製造9)積層体A9
基材を高密度ポリエチレンフィルム(HDPE)フィルム(厚み20μ)、溶融樹脂を低密度ポリエチレン(ノバテックLC600、日本ポリケム社製)、シーラントをリニア低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム(厚み40μm)に変更した以外は、積層体A6の製造工程と同様にして、HDPE/印刷層/AC剤/PE層/LLDPE構成の積層体A9を得た。印刷層の乾燥後塗布量はそれぞれ2.5g/mとした。
【0114】
(積層体(A)の製造10、11)積層体A10、A11
シーラントをリニア低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム(厚み40μm/積層体A10、厚み25μm/積層体A11)に変更した以外は、積層体A1の製造工程と同様にして、OPP/印刷層/接着剤層/LLDPE構成の積層体A10、A11をそれぞれ得た。印刷層、接着剤層の乾燥後塗布量はそれぞれ2.5g/mとした。
【0115】
(積層体(A)の製造12)積層体A12
溶融樹脂を低密度ポリエチレン(ノバテックLC600、日本ポリケム社製)、シーラントをリニア低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム(厚み40μm)に変更した以外は、積層体A6の製造工程と同様にして、OPP/印刷層/AC剤/PE樹脂層/LLDPE構成の積層体A12を得た。印刷層、接着剤層の乾燥後塗布量はそれぞれ2.5g/mとした。
【0116】
(積層体(A)の製造13)積層体A13
積層体A1の製造工程中の印刷工程と同様の手順にて、OPP/印刷層を得た。次いで、ドライラミネート機を用いて、この積層体のOPP面に、接着剤(東洋モートン社製「TM-340V/CAT-29B」)を塗工し、オーブンにて溶剤を乾燥後、この上に、ライン速度40m/分にて、無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム(厚み30μm)を貼り合わせ、40℃で1日間保温し、印刷層/OPP/接着剤層/CPP構成である積層体A13を得た。印刷層、接着剤層の乾燥後塗布量はそれぞれ2.5g/mとした。
【0117】
(積層体(A)の製造14)積層体A14
グラビアインキX1をグラビアインキX3に変更した以外は、積層体A1の製造工程と同様にして、OPP/印刷層/接着剤層/CPP構成の積層体A14を得た。印刷層、接着剤層の乾燥後塗布量はそれぞれ2.5g/mとした。
【0118】
(積層体(A)の製造15)積層体A15
シーラントを片面ヒートシール性二軸延伸ポリプロピレン(ヒートシールOPP)フィルム(厚み30μm)に変更した以外は、積層体A1の製造工程と同様にして、OPP/印刷層/接着剤層/ヒートシールOPP構成の積層体A15を得た。印刷層、接着剤層の乾燥後塗布量はそれぞれ2.5g/mとした。
【0119】
(積層体(A)の製造16)積層体A16
基材、シーラントをリニア低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム(厚み40μm)に変更した以外は、積層体A1の製造工程と同様にして、LLDPE/印刷層/接着剤層/LLDPE構成の積層体A16を得た。印刷層、接着剤層の乾燥後塗布量はそれぞれ2.5g/mとした。
【0120】
(積層体(A)の製造17)積層体A17
中密度ポリエチレン(MDPE)をインフレーション法により単層押出製膜した後、延伸装置により、縦方向(MD方向)に5倍延伸して、基材(厚み20μm)を作製した。
【0121】
エチレンビニルアルコール共重合体と、無水マレイン酸変性ポリエチレン、直鎖状密度ポリエチレンを、Tダイ法により共押出製膜し、シーラント(厚み50μm)を得た。得られたシーラントにおいて、エチレンビニルアルコール共重合体により構成される層の厚みは2μm、無水マレイン酸変性ポリエチレンにより構成される層の厚みは3μm、直鎖状低密度ポリエチレンにより構成される層の厚みは45μmであった。
上記シーラントのエチレンビニルアルコール共重合体表面に、PVD法により、厚さ30nmのアルミニウム蒸着膜を形成した。
【0122】
基材、シーラントを上記に変更した以外は、積層体A1の製造工程と同様にして、MDPE/印刷層/接着剤層/共押出多層フィルム構成の積層体A17を得た。印刷層、接着剤層の乾燥後塗布量は2.5g/mとした。
【0123】
(積層体(A)の製造18)積層体A18
中密度ポリエチレン(MDPE)をインフレーション法により単層押出製膜した後、延伸装置により、縦方向(MD方向)に5倍延伸して、基材(厚み20μm)を作製した。
エチレンビニルアルコール共重合体、無水マレイン酸変性ポリエチレン、中密度ポリエチレン樹脂をインフレーション成形法により共押出製膜した後、延伸装置により、縦方向(MD方向)に5倍延伸した。得られた中間基材において、エチレンビニルアルコール共重合体により構成される層の厚みは2μm、無水マレイン酸変性ポリエチレン層の厚さは3μm、中密度ポリエチレン樹脂により構成される層の厚みは20μmであった。
【0124】
その後、エチレンビニルアルコール共重合体層の表面に、PVD法により、厚さ30nmの酸化アルミニウム蒸着膜を形成し、蒸着層を含む中間基材を得た。
【0125】
積層体A1の製造工程中の印刷工程と同様の手順にて、上記にて作製したMDPE基材に印刷を行い、MDPE/印刷層を得た。次いで、ドライラミネート機を用いて、この積層体の印刷面に、接着剤(東洋モートン社製「TM-340V/CAT-29B」)を塗工し、オーブンにて溶剤を乾燥後、この上に、ライン速度40m/分にて、上記で得た中間基材(厚み25μm)の蒸着面を貼り合わせた。その後、この積層体の中間基材の非蒸着面に、同様に接着剤を塗工し、リニア低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム(厚み40μm)を張り合わせた。40℃で1日間保温し、MDPE/印刷層/接着剤層/共押出多層フィルム/接着剤層/LLDPEである積層体A18を得た。印刷層、接着剤層の乾燥後塗布量はそれぞれ2.5g/mとした。
【0126】
(積層体(A)の製造19)積層体A19
コロナ処理二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(厚み20μm)に対し、グラビア版を備えたグラビア印刷機にて、バリアコート剤を塗工、オーブンにて溶剤を乾燥し、OPP/バリアコート層を得た。
その後、積層体A1の製造工程と同様にして、OPP/バリアコート層/印刷層/接着剤層/CPP構成の積層体A19を得た。印刷層、接着剤層の乾燥後塗布量はそれぞれ2.5g/m、バリアコート層の乾燥後塗布量はそれぞれ2.0g/mとした。
【0127】
(積層体(A)の製造20)積層体A20
接着剤をバリア接着剤(東洋モートン社製「TM―9310/CAT―1980」)に変更した以外は、積層体A1の製造工程と同様にして、OPP/印刷層/バリア接着剤層/CPP構成の積層体A20を得た。印刷層、接着剤層の乾燥後塗布量はそれぞれ2.5g/m2とした。
【0128】
(積層体(A)の製造21)積層体A21
基材を片面ヒートシール性二軸延伸ポリプロピレン(ヒートシールOPP)
フィルム(厚み50μm)に変更した以外は、積層体A1の印刷工程と同様にして、印刷層/ヒートシールOPPの積層体A21を得た。印刷層の乾燥後塗布量は2.5g/mとした。
【0129】
(積層体(A)の製造22)積層体S1
グラビアインキX1をグラビアインキY1に変更した以外は、積層体A1の製造工程と同様にして、OPP/印刷層/接着剤層/CPP構成の積層体S1を得た。印刷層、接着剤層の乾燥後塗布量はそれぞれ2.5g/mとした。
【0130】
(積層体(A)の製造23)積層体S2
基材をナイロン(NY)フィルム(厚み15μm)に変更した以外は、積層体A1の製造工程と同様にして、NY/印刷層/接着剤層/CPP構成の積層体S2を得た。印刷層、接着剤層の乾燥後塗布量はそれぞれ2.5g/mとした。
【0131】
<再生プラスチック(B)の製造>
(実施例1)再生プラスチックB1
積層体A1を4cm×4cmのサイズに裁断し、水洗及び乾燥した。OPP基材片を単軸押出機に投入し、スクリュー回転数250rpm、220℃で溶融、混錬し、150メッシュのフィルターを使用し、押出装置の吐出部から、圧力4MPaで押し出した。その後、直ぐにペレタイザーでカットし、冷水に浸水させて冷却した。このようにして、積層体A1からリサイクルされた再生プラスチック(B)であるペレットB1を得た。
【0132】
(実施例2~25)再生プラスチックB2~B25
表1の条件に従い、再生プラスチックB1の製造工程にて、積層体からリサイクルされた再生プラスチックであるペレットB2~B25をそれぞれ得た。
【0133】
(比較例1~4)再生プラスチックB26~B29
表1の条件に従い、再生プラスチックB1の製造工程にて、積層体からリサイクルされた再生プラスチックであるペレットB26~B29をそれぞれ得た。
【0134】
<フィルム成形体の評価>
再生プラスチックB1~B29のペレットを、それぞれTダイ押出機を用いて、220℃で押出成形し、厚み50μmのフィルム状の成形体を作製した。得られたフィルムについて、0.5mあたりの目視で判別可能な異物の個数をカウントし、以下の基準で評価した。なお、評価結果を表1に示す。
A(良):異物の数が50個未満、
B(可)::異物の数が50個以上100個未満、
C(可)::異物の数が100個以上200個未満、
D(不良):異物の数が200個以上。
【0135】
<ボトル状成形体の評価>
再生プラスチックB1~B29のペレットを、それぞれブロー成形機を用いて220℃でブロー成形し、厚み1mmのボトル状の成形体をそれぞれ作製した。各実施例で得られたボトルについて、50本あたりの目視で判別可能な発泡が見られたボトルの数をカウントした。
なお、評価結果を表1に示す。
A(良):発泡が見られたボトルが50本中、1本以下、
B(可):発泡が見られたボトルが50本中、2~3本、
C(可):発泡が見られたボトルが50本中、4~5本、
D(不良):発泡が見られたボトルが50本中、6本以上。
【0136】
【表1】
【0137】
【表1】
【0138】
上記結果から、本発明の製造方法により得られた、再生プラスチックを用いた成形体は、異物及び発泡のない又は少ない高品質なリサイクル品を提供できることが分かった。積層体中の塩素含有率が、0.4質量%以下であることで、再生プラスチックのペレット内の気泡量が抑制され、ペレット冷却後の水分含有量を低下させたと推察される。これにより、成形体を製造する際の表面性状を良化させたと考えられる。また、印刷物又は積層体(A)の基材の種類の選定や、加熱溶融温度、押出装置の先端排出部の樹脂圧力を制御することで、不溶物、焼け及び炭化物などの異物の発生が抑制されたと推察される。
【要約】      (修正有)
【課題】本発明の課題は、基材と印刷層の脱離工程を行わなくとも、印刷物又はラミネート積層体から、効率的かつ簡便に、マテリアルリサイクルが可能である、成形性に優れた再生プラスチック製造方法を提供することである。
【解決手段】スクリュー及び吐出部を具備した押出装置を用いて、印刷物又はラミネート積層体(A)から再生プラスチック(B)を得る、再生プラスチックの製造方法であって、印刷物又はラミネート積層体(A)が、基材層及び印刷層を含み、塩素含有率が0.4質量%以下であり、かつ、ポリオレフィン樹脂を、80質量%以上含有し、前記押出装置中において前記印刷物又はラミネート積層体(A)を、加熱溶融及び混錬して樹脂組成物(a)を得る工程、及び、前記樹脂組成物(a)が、押出装置の吐出部から圧力18MPa以下で押出される工程を含む、再生プラスチックの製造方法。
【選択図】なし