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特許7288129焼却灰の処理方法及び焼却灰の処理装置、並びに製鋼原料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】焼却灰の処理方法及び焼却灰の処理装置、並びに製鋼原料
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/30 20220101AFI20230530BHJP
   B07B 1/22 20060101ALI20230530BHJP
   C22B 1/00 20060101ALI20230530BHJP
   C22B 7/00 20060101ALI20230530BHJP
   B09B 101/30 20220101ALN20230530BHJP
【FI】
B09B3/30
B07B1/22 Z
C22B1/00 601
C22B7/00 Z
B09B101:30
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022171458
(22)【出願日】2022-10-26
【審査請求日】2022-10-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522058888
【氏名又は名称】株式会社潮来工機
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大塚 善啓
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-167208(JP,A)
【文献】特開2018-75542(JP,A)
【文献】特許第7167373(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 3/30
B07B 1/22
C22B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、金属屑含有焼却灰から鉄を含む金属屑を篩い分けることにより焼却灰中の金属屑含有量を低減するための、焼却灰の処理方法:
工程(a):8mm~17mmの篩目を有するメッシュを備える第一トロンメルにより前記金属屑含有焼却灰から鉄を含む金属屑Aを篩い分け、第一処理焼却灰を得る工程、
工程(b-1):第二トロンメルにより前記第一処理焼却灰から鉄を含む金属屑B-1を篩い分け、第二処理焼却灰を得る工程、但し、第二トロンメルは第一トロンメルが有するメッシュよりも小さい篩目のメッシュを有する、
工程(b-2):第三トロンメルにより前記第二処理焼却灰から鉄を含む金属屑B-2を篩い分け、第三処理焼却灰を得る工程、但し、第三トロンメルは第二トロンメルが有するメッシュよりも小さい篩目のメッシュを有する、及び
工程(c):金属屑A及び金属屑B-1を合わせて鉄を含む製鋼原料を得る工程。
【請求項2】
工程(c)において得られた鉄を含む製鋼原料に金属屑B-2をさらに合わせて鉄を含む製鋼原料を得る工程を含む、請求項1に記載の処理方法。
【請求項3】
前記第二トロンメルが6mm~13mmの篩目を有するメッシュを備える、及び前記第三トロンメルが3mm~5mmの篩目を有するメッシュを備える、請求項1に記載の処理方法。
【請求項4】
工程(a)、工程(b-1)及び/又は工程(b-2)において、磁選機を用いて焼却灰又は金属屑から鉄を含む焼却灰又は鉄成分を磁選する工程をさらに含む、請求項1に記載の処理方法。
【請求項5】
前記磁選する工程が、少なくとも第二処理焼却灰に対して行われる、請求項4に記載の処理方法。
【請求項6】
前記磁選する工程が、少なくとも金属屑B-2に対して行われる、請求項4に記載の処理方法。
【請求項7】
金属屑含有焼却灰から鉄を含む金属屑Aと第一処理焼却灰とを篩い分けるための、8mm~17mmの篩目を有するメッシュを備える第一トロンメル、
前記第一処理焼却灰から鉄を含む金属屑B-1と第二処理焼却灰とを篩い分けるための、6mm~13mmの篩目を有するメッシュを備える第二トロンメル、但し、第二トロンメルは第一トロンメルが有するメッシュよりも小さい篩目のメッシュを有する、及び
前記第二処理焼却灰から鉄を含む金属屑B-2と第三処理焼却灰とを篩い分けるための、3mm~5mmの篩目を有するメッシュを備える第三トロンメル、を備える、
請求項1~6のいずれか一項に記載の処理方法を行うための、焼却灰処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼却灰の処理方法及び焼却灰の処理装置、並びに製鋼原料に関する。より具体的には、従来技術に比べ低コスト及び/又は効率的に金属屑を含む焼却灰(金属屑含有焼却灰と称する)を処理することができる新規な焼却灰の処理方法及びその処理装置に関する。また、当該処理方法及び処理装置により得られる製鋼原料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、家庭から排出される可燃ごみ等の一般廃棄物の増加に伴う、一般廃棄物の処理が問題となっている。例えば、国内の年間のごみ総排出量は、約42,000万トンに及ぶ。一般廃棄物の多くは、ごみ焼却施設において焼却処理されているが、この際に生じる焼却灰については埋立処理されている。
【0003】
近年、埋立処理される焼却灰を減らすため、セメント原料への再利用や焼却灰の溶融固化が行われている。しかし、一般廃棄物の焼却灰には空き缶等を由来とする金属屑が含まれているため、溶融固化の際、焼却灰中に含まれる金属屑の除去が課題となる。例えば、特許文献1には、焼却灰から貴金属を回収する方法及び回収装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-140555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このような処理方法においては、処理装置自体の導入や複数の工程を行う必要があることから、コスト及び/又は処理効率の観点から課題があった。
【0006】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、従来技術に比べ低コスト及び/又は効率的に焼却灰を処理することができる新規な焼却灰の処理方法及び新規な処理装置を提供することを目的とする。また、当該処理方法及び処理装置により得られる製鋼原料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、従来用いられることがなかった装置を用いて焼却灰を篩い分けることにより、低コストかつ効率的に焼却灰中の金属屑を取り出すことができる可能性を見出し、さらに研究を重ねた結果、本発明の完成に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、少なくとも以下の各発明に関する:
[1-1]
金属屑含有焼却灰から金属屑を篩い分けることにより焼却灰中の金属屑含有量を低減するための、焼却灰の処理方法であって、
工程(a):第一トロンメルにより前記金属屑含有焼却灰から金属屑Aを篩い分け、第一処理焼却灰を得る工程、及び
工程(b):第二トロンメルにより前記第一処理焼却灰から金属屑Bを篩い分け、最終焼却灰を得る工程、但し、第二トロンメルは第一トロンメルが有するメッシュよりも小さい篩目のメッシュを有する、
を含む、前記処理方法。
[1-2]
工程(c):金属屑A及び金属屑Bを合わせて製鋼原料を得る工程、をさらに含む[1-1]に記載の処理方法。
[1-3]
前記第一トロンメルが8mm~17mmの篩目を有するメッシュを備える、[1-1]又は[1-2]に記載の処理方法。
[1-4]
前記第二トロンメルが6mm~13mmの篩目を有するメッシュを備える、[1-1]~[1-3]のいずれかに記載の処理方法。
[1-5]
焼却灰の処理効率が2.0~5.5t/hである、[1-1]~[1-4]のいずれかに記載の処理方法。
[1-6]
金属屑含有焼却灰から金属屑Aと第一処理焼却灰とを篩い分けるための、8mm~17mmの篩目を有するメッシュを備える第一トロンメル、及び
前記第一処理焼却灰から金属屑Bと最終焼却灰とを篩い分けるための、6mm~13mmの篩目を有するメッシュを備える第二トロンメル、但し、第二トロンメルは第一トロンメルが有するメッシュよりも小さい篩目のメッシュを有する、
を備える、焼却灰処理装置。
[1-7]
焼却灰の処理効率が2.0~5.5t/hである、[1-6]に記載の処理装置。
[1-8]
金属屑含有焼却灰から取り出された製鋼原料であって、50~90重量%の金属成分を含む、前記製鋼原料。
[2-1]
以下の工程を含む、金属屑含有焼却灰から鉄を含む金属屑を篩い分けることにより焼却灰中の金属屑含有量を低減するための、焼却灰の処理方法:
工程(a):8mm~17mmの篩目を有するメッシュを備える第一トロンメルにより前記金属屑含有焼却灰から鉄を含む金属屑Aを篩い分け、第一処理焼却灰を得る工程、
工程(b-1):第二トロンメルにより前記第一処理焼却灰から鉄を含む金属屑B-1を篩い分け、第二処理焼却灰を得る工程、但し、第二トロンメルは第一トロンメルが有するメッシュよりも小さい篩目のメッシュを有する、
工程(b-2):第三トロンメルにより前記第二処理焼却灰から鉄を含む金属屑B-2を篩い分け、第三処理焼却灰を得る工程、但し、第三トロンメルは第二トロンメルが有するメッシュよりも小さい篩目のメッシュを有する、及び
工程(c):金属屑A及び金属屑B-1を合わせて鉄を含む製鋼原料を得る工程。
[2-2]
工程(c)において得られた鉄を含む製鋼原料に金属屑B-2をさらに合わせて鉄を含む製鋼原料を得る工程を含む、[2-1]に記載の処理方法。
[2-3]
前記第二トロンメルが6mm~13mmの篩目を有するメッシュを備える、及び前記第三トロンメルが3mm~5mmの篩目を有するメッシュを備える、[2-1]又は[2-2]に記載の処理方法。
[2-4]
工程(a)、工程(b-1)及び/又は工程(b-2)において、磁選機を用いて焼却灰又は金属屑から鉄を含む焼却灰又は鉄成分を磁選する工程をさらに含む、[2-1]~[2-3]のいずれかに記載の処理方法。
[2-5]
前記磁選する工程が、少なくとも第二処理焼却灰に対して行われる、[2-4]に記載の処理方法。
[2-6]
前記磁選する工程が、少なくとも金属屑B-2に対して行われる、[2-4]に記載の処理方法。
[2-7]
金属屑含有焼却灰から鉄を含む金属屑Aと第一処理焼却灰とを篩い分けるための、8mm~17mmの篩目を有するメッシュを備える第一トロンメル、
前記第一処理焼却灰から鉄を含む金属屑B-1と第二処理焼却灰とを篩い分けるための、6mm~13mmの篩目を有するメッシュを備える第二トロンメル、但し、第二トロンメルは第一トロンメルが有するメッシュよりも小さい篩目のメッシュを有する、及び
前記第二処理焼却灰から鉄を含む金属屑B-2と第三処理焼却灰とを篩い分けるための、3mm~5mmの篩目を有するメッシュを備える第三トロンメル、を備える、
[2-1]~[2-6]のいずれかに記載の処理方法を行うための、焼却灰処理装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明の処理方法及び処理装置によれば、従来用いられていた処理装置より簡便な装置を用いることができ、低コストで金属屑含有焼却灰を処理することができる。また、本発明の処理方法においては、金属屑含有焼却灰の処理に必要となる工程が従来の方法に比べ少ないため、短時間で効率的に金属屑含有焼却灰を処理することができる。
さらに、本発明の処理方法によれば、製鋼原料を従来の方法より高い効率で得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の処理方法の一態様を示すフロー図である。工程(a)及び工程(b)により焼却灰を処理する方法である。
図2】本発明の処理方法に用いるトロンメルのメッシュの一部の構造を示す模式図である。(a)は15mmメッシュ(線径6mm、篩目15mmの平織状メッシュ)の構造を示す。(b)は7mmメッシュ(線径4mm、篩目7mmの平織状メッシュ)の構造を示す。なお、本図はトロンメルのメッシュの構造を示す模式図であるため、図中の各部材の寸法同士の比率のうち、実際の比率を反映していない部分がある。
図3】(a)は本発明の一実施形態における処理装置の一部を示す写真である。(b)は本発明の一実施形態における処理装置を用いた焼却灰の処理の様子を示す写真である。(c)は本発明の一実施形態における処理装置に用いられるトロンメルに装着する前のメッシュの写真である。左側の写真(平置きした状態の写真)に示されるメッシュに相当する、やや先細り形状のメッシュの4枚を1セットとし、筒状に一体化して構成することにより、右側の写真(一体化した後の、斜め上方からの写真)に示されるトロンメルが形成される。
図4】本発明の処理方法の一態様を示すフロー図である。工程(a)、工程(b-1)、及び工程(b-2)により焼却灰を処理する方法である。
図5】本発明の処理方法の一態様を示すフロー図である。工程(a)、工程(b-1)、及び工程(b-2)により焼却灰を処理する方法であり、さらに磁選工程により処理する方法である。
図6】本発明の処理方法に用いるトロンメルのメッシュの一部の構造を示す模式図であり、4mmメッシュ(線径2mm、篩目4mmの平織状メッシュ)の構造を示す。なお、本図はトロンメルのメッシュの構造を示す模式図であるため、図中の各部材の寸法同士の比率のうち、実際の比率を反映していない部分がある。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<焼却灰処理方法>
本発明の焼却灰処理方法は、金属屑含有焼却灰から金属屑を篩い分けることにより焼却灰中の金属屑含有量を低減するための、焼却灰の処理方法であって、
工程(a):第一トロンメルにより前記金属屑含有焼却灰から金属屑Aを篩い分け、第一処理焼却灰を得る工程、及び
工程(b):第二トロンメルにより前記第一処理焼却灰から金属屑Bを篩い分け、最終焼却灰を得る工程、但し、第二トロンメルは第一トロンメルが有するメッシュよりも小さい篩目のメッシュを有する、
を含む、前記処理方法である。
すなわち、本発明の処理方法によれば、焼却灰を処理対象として、異なる篩目のメッシュを有する、少なくとも2以上のトロンメルを用いて、工程(a)及び工程(b)を経て、最終的に金属屑A及びB、並びに金属屑含有量の小さい焼却灰を得ることができる。
【0012】
また、本発明のより好ましい態様は、以下の態様である。
以下の工程を含む、金属屑含有焼却灰から鉄を含む金属屑を篩い分けることにより焼却灰中の金属屑含有量を低減するための、焼却灰の処理方法:
工程(a):8mm~17mmの篩目を有するメッシュを備える第一トロンメルにより前記金属屑含有焼却灰から鉄を含む金属屑Aを篩い分け、第一処理焼却灰を得る工程、
工程(b-1):第二トロンメルにより前記第一処理焼却灰から鉄を含む金属屑B-1を篩い分け、第二処理焼却灰を得る工程、但し、第二トロンメルは第一トロンメルが有するメッシュよりも小さい篩目のメッシュを有する、
工程(b-2):第三トロンメルにより前記第二処理焼却灰から鉄を含む金属屑B-2を篩い分け、第三処理焼却灰を得る工程、但し、第三トロンメルは第二トロンメルが有するメッシュよりも小さい篩目のメッシュを有する、及び
工程(c):金属屑A及び金属屑B-1を合わせて鉄を含む製鋼原料を得る工程。
【0013】
本発明の焼却灰処理方法について、以下にさらに詳細に説明する。同発明の工程の概要は、図1又は図4のフローに示されるとおりである。
本明細書において、工程(a)にて得られる焼却灰を「第一処理焼却灰」と、工程(b)にて得られる焼却灰を「最終焼却灰」と称する。また、工程(a)にて得られる金属屑を「金属屑A」と、工程(b)にて得られる金属屑を「金属屑B」と称する。
一態様において、工程(b-1)にて得られる焼却灰を「第二処理焼却灰」と、工程(b-2)にて得られる焼却灰を「第三処理焼却灰」と称する。また、工程(b-1)にて得られる金属屑を「金属屑B-1」と、工程(b-2)にて得られる金属屑を「金属屑B-2」と称する。
本明細書において示される数値範囲は、特段の記載がない限り、その両端の上限及び下限の数値を含むものとする。
【0014】
●工程(a)
工程(a)は、金属屑含有焼却灰から第一トロンメルにより金属屑Aを篩い分け、第一処理焼却灰を得る工程である。すなわち、工程(a)は少なくとも、金属屑含有焼却灰を第一トロンメルに投入すること、第一トロンメルを回転させることで、金属屑含有焼却灰から第一処理焼却灰と金属屑Aとを篩い分けること及び第一トロンメル中から得られた金属屑Aを取り出すこと、のいずれかを含む工程である。
【0015】
トロンメル
本発明の処理方法においてはトロンメルを用いて、金属屑含有焼却灰中の金属屑と焼却灰とを篩い分けることができる。従来、トロンメルは砂利、砕石等を篩い分けするために用いられていたところ、トロンメルによって焼却灰等の軽く細かい粒子を篩い分ける場合、金属屑含有焼却灰中の粒子がトロンメルの回転によって意図しない範囲にまで飛散して拡散するおそれがあるため、トロンメルを用いて金属屑含有焼却灰を処理することはなされていなかった。
本発明の処理方法においては、少なくとも第一トロンメル及び第二トロンメルの2以上のトロンメルを用いることにより、金属屑含有焼却灰中の粒子の拡散を抑えつつ、金属屑と焼却灰とを篩い分けることを可能にした。
本発明の処理方法において用いられるトロンメルの例及び該トロンメルに用いられる部材であるメッシュの例は、図3に示すとおりである。
【0016】
本発明の処理方法において、トロンメルの種類及び形状に特に制限はなく、例えば据え置き型や油圧ショベルのアタッチメント型であってよい。また、円形ドラム式や六角ドラム式であってよく、跳ね上げ羽根を有していてもよい。トロンメル自体の大きさに特に制限はないが、設備導入の場所及び/又はコスト等の観点並びに一般的に処理すべき焼却灰の量の観点から、トロンメルの容積は1,000~3,000L程度が好ましい。
【0017】
トロンメルに備え付けられるメッシュの篩目は、金属屑を分離し得る形状であれば特に限定されない。前記篩目としては、略矩形、多角形、略円形等が挙げられる。特に略矩形は好ましい。前記メッシュは金属屑を分離し得る構造であれば特に限定されない。前記メッシュとしては平織状メッシュ、綾織状メッシュ、パンチングメタル等が挙げられる。特に平織状メッシュは好ましい(図2図6)。
【0018】
本発明の処理方法において、前記メッシュの篩目は、工程(a)で用いられるトロンメルと工程(b)で用いられるトロンメルとで異なる。本明細書において、篩目の大きさを示す場合、略矩形又は多角形の篩目1辺の大きさにより示してよく、また、略円形の篩目の直径により示してよい。
【0019】
(1)第一トロンメル
工程(a)で使用される第一トロンメルに用いられるメッシュの篩目は、金属屑含有焼却灰と金属屑との篩い分けを行える篩目であれば限定されない。例えば一実施形態において、第一トロンメルに用いられるメッシュは、8mm~17mmの篩目を有するメッシュを備える。好ましくは、第一トロンメルは9mm~17mmの篩目を有するメッシュを備える。より好ましくは、第一トロンメルは9mm~16mmの篩目を有するメッシュを備える。メッシュの篩目が8mm以上であることで、金属屑含有焼却灰と金属屑Aとを短時間で効率的に篩い分けることができる。また、メッシュの篩目が17mm以下であることで、工程(a)で篩い分けられる焼却灰中における金属屑Aの残存を低減し、その後の工程(b)の処理効率が減少することを防ぐことができる。
【0020】
前記メッシュは平織状メッシュであることは好ましい。前記平織状メッシュは、線径3~7mmの金属線からなるメッシュであることは好ましい。前記平織状メッシュは、線径4~7mmの金属線からなるメッシュであることはより好ましい(図2)。前記金属線としては、通常メッシュとして用いるものであれば特に制限はないが、鋼線、鉄線、及びタングステン線等が挙げられる。
【0021】
前記メッシュの空隙率(空間率。トロンメルの表面積に対する、篩目の面積の割合)は、特に制限はないが、25~80%であることは好ましい。前記空隙率は20~75%であることはより好ましく、20~70%であることは特に好ましい。空隙率が大きくなるほど、焼却灰の篩い分けにかかる時間が短くなり、処理効率は高まる。一方、空隙率を小さくすることは、相対的に細かい金属屑Aを、より確実に残存させる手段になりえる。
【0022】
第一トロンメルの回転速度は、金属屑Aを篩い分け、第一処理焼却灰を得ることができる回転速度であれば限定されないところ、10~20回転/分とすることは好ましい。
第一トロンメルの回転速度は、金属屑含有焼却灰を第一トロンメルに収容後、第一トロンメルの回転を開始し、前記回転速度に達した後、前記回転速度を工程(a)の終了まで維持してもよく、第一トロンメル中に残る金属屑含有焼却灰の量に応じて前記回転速度を調整してもよい。また、第一トロンメルの回転速度は、金属屑含有焼却灰から篩い分けられる対象である金属屑Aにおける鉄成分の割合や、第一トロンメルを駆動(回転)させる時間を考慮して調整してもよい。
第一トロンメルの回転速度を10回転/分以上とすることで、効率的に第一処理焼却灰と金属屑Aとを篩い分けることができる。第一トロンメルの回転速度を20回転/分以下とすることで、篩い分けられた焼却灰の意図しない拡散を防ぐことができる。
【0023】
工程(a)においては、一度に全ての金属屑含有焼却灰をトロンメルに投入し一括で篩い分けしてもよく、工程(a)による篩い分けを複数回行うことで金属屑含有焼却灰を分割して篩い分けしてもよい。通常、家庭ごみの収集及び焼却処理により生じる焼却灰の量を考慮すると、工程(a)による篩い分けを複数回行うことは好ましい。
第一トロンメルに投入される金属屑含有焼却灰の量として、第一トロンメルの容積の15~40%程度であることは好ましい。第一トロンメルに投入される金属屑含有焼却灰を第一トロンメルの容積の15%以上とすることで工程(a)を行う回数を減らすことにより、本発明の処理方法全体の処理効率を高めることができる。また、第一トロンメルに投入される金属屑含有焼却灰を第一トロンメルの容積の40%以下とすることで、篩い分ける効率の向上により工程(a)の処理時間を短くすることができ、第一処理焼却灰と金属屑Aとを一層効率的に篩い分けることができる。
【0024】
工程(a)の処理効率は、例えば1時間当たりに処理された前記金属屑含有焼却灰の重量で表される。この場合、工程(a)の処理効率は2.5t/h以上であることは好ましい。工程(a)の処理効率は4.0t/h以上であることはより好ましい。また、工程(a)が後述する磁選工程を含む場合、当該磁選工程が必ずしも焼却灰の処理に直接寄与するとは限らない。その場合、当該磁選工程を含む処理工程における焼却灰の処理効率は、上記磁選工程を行わない場合と比較して、低下し得る。この場合、処理効率は、1.0t/h以上であってよい。好ましくは、処理効率は、1.5t/h以上であってよい。より好ましくは、1.8t/h以上であってよい。
なお、工程(a)に相当する工程を実施したのちに、金属屑Aが得られない場合、すなわち、篩目が大きすぎて想定される量の金属屑が残存しない場合や篩目が小さすぎて焼却灰と金属屑との分離が十分になされない場合には、それぞれ、篩目がより小さいメッシュを具備するトロンメル及び篩目がより大きいメッシュを具備するトロンメルを用いることにより、所望の効果を奏する工程(a)を行ってよい。
【0025】
●工程(b)
工程(b)は、工程(a)で得られた第一処理焼却灰から第二トロンメルによりさらに金属屑と焼却灰とを篩い分ける工程である。すなわち、工程(b)は少なくとも、第一処理焼却灰を第二トロンメルに投入すること、第二トロンメルを回転させることで、焼却灰と金属屑とを篩い分けること及び第二トロンメル中から得られた金属屑を取り出すこと、のいずれかを含む工程である。
【0026】
工程(b)は、一度に全ての第一処理焼却灰をトロンメルに投入し一括で篩い分けしてもよく、工程(b)による篩い分けを複数回行うことで第一処理焼却灰を分割して篩い分けしてもよい。また、工程(b)による篩い分けを複数回行うことで、一旦工程(b)により篩い分けられた焼却灰を対象として、再度工程(b)より篩い分けを行ってよい。通常、家庭ごみの収集及び焼却処理により生じる焼却灰の量を考慮すると、工程(b)による篩い分けを複数回行うことは好ましい。工程(b)による篩い分けを複数回行う場合、工程(b)における2回目の篩い分けに用いられるトロンメルのメッシュは、工程(b)における最初の篩い分けに用いられるトロンメルのメッシュより小さくすることは好ましい。例えば、工程(b)における最初の篩い分けに用いられるトロンメルのメッシュを約10mm~約15mmとし、工程(b)における2回目の篩い分けに用いられるトロンメルのメッシュを約7mmとすることができる。
第二トロンメルに投入される第一処理焼却灰は第二トロンメルの容積の15~40%程度であることが好ましい。第二トロンメルに投入される第一処理焼却灰が第二トロンメルの容積の15%以上とすることで工程(b)を行う回数を減らすことにより本発明の処理方法全体の処理効率を高めることができる。また、第二トロンメルに投入される第一処理焼却灰が第二トロンメルの容積の40%以下とすることで篩い分ける効率の向上により工程(b)の処理時間を短くすることができ、効率的に焼却灰と金属屑とを篩い分けることができる。
【0027】
以下、工程(b)において、篩目の大きさの異なるメッシュを備えたトロンメルにより篩い分けを複数回行う場合について説明する。
この場合において、発明の理解を簡単にするため、工程(b)を「工程(b-1)」と称し、より小さい篩目を有するメッシュを備えるトロンメルによる篩い分けを「工程(b-2)」と称することで区別する。また、工程(b-1)にて得られる焼却灰を「第二処理焼却灰」と、工程(b-2)にて得られる焼却灰を「第三処理焼却灰」と称する。工程(b-1)にて得られる金属屑を「金属屑B-1」と、工程(b-2)にて得られる金属屑を「金属屑B-2」と称する。
すなわち、上記における「工程(b)」と「工程(b-1)」とは第二トロンメルを用いる点で同一の操作を行う工程である。したがって、「最終焼却灰」と「第二処理焼却灰」とは実質的に同一の焼却灰であり、「金属屑B」と「金属屑B-1」は実質的に同一の金属屑である。本発明の一態様において、工程(b)の後により小さい篩目を有するメッシュを備えるトロンメルを用いる場合を考慮し、「工程(b-1)」と称して、本発明について詳述する。
例えば、工程(b-1)における最初の篩い分けに用いられるトロンメルのメッシュを約10mm~約15mmとし、工程(b-2)における2回目の篩い分けに用いられるトロンメルのメッシュを約7mmとすることができる。また、工程(b-1)における最初の篩い分けに用いられるトロンメルのメッシュを約6mm~約8mmとし、工程(b-2)における2回目の篩い分けに用いられるトロンメルのメッシュを約4mmとすることができる。
【0028】
(2)第二トロンメル
工程(b-1)で使用される第二トロンメルは、第一トロンメルが有するメッシュよりも小さい篩目のメッシュを有する。例えば、第二トロンメルは6mm~13mmの篩目を有するメッシュを備えるが、かかる篩目に限定されるものではない。第二トロンメルは、好ましくは、6mm~12mmの篩目を有するメッシュを備え、より好ましくは6mm~11mmの篩目を有するメッシュを備える。メッシュの篩目が6mm以上であることで、第一処理焼却灰と金属屑B-1とを効率的に篩い分けることができ、メッシュの篩目が13mm以下であることで、工程(b-1)で篩い分けられる焼却灰中に金属屑B-1が多く残存することを防ぎ、金属屑B-1を十分に取り出すことができる。
【0029】
前記メッシュは平織状メッシュであることは好ましい。前記平織状メッシュは、線径3~6mmの金属線からなるメッシュであることは好ましい(図2)。前記金属線としては、通常メッシュとして用いるものであれば特に制限はないが、鋼線、鉄線、及びタングステン線等が挙げられる。
【0030】
前記メッシュの空隙率(空間率)は、特に制限はないが、20~70%であることは好ましい。空隙率が大きくなるほど、焼却灰の篩い分けにかかる時間が短くなり、処理効率は高まる。一方、空隙率を小さくすることは、相対的に細かい金属屑B-1を、より確実に残存させる手段になり得る。
【0031】
第二トロンメルの回転速度は、第一処理焼却灰から金属屑B-1を篩い分けることができる回転速度であれば限定されないところ、10~20回転/分とすることが好ましい。
第二トロンメルの回転速度は、第一処理焼却灰を第二トロンメルに収容後、第二トロンメルの回転を開始し、前記回転速度に達した後、前記回転速度を工程(b-1)の終了まで維持してもよく、第二トロンメル中に残る第一処理焼却灰の量に応じて前記回転速度を調整してもよい。また、第二トロンメルの回転速度は、第一処理焼却灰から篩い分けられる対象である金属屑B-1における鉄成分の割合や、第二トロンメルを駆動(回転)させる時間を考慮して調整してもよい。
第二トロンメルの回転速度を10回転/分以上とすることで、効率的に第二処理焼却灰と金属屑B-1とを篩い分けることができる。第二トロンメルの回転速度を20回転/分以下とすることで、篩い分けられた焼却灰の意図しない拡散をことができる。
【0032】
工程(b-1)の処理効率は、例えば、1時間当たりに処理された前記第一処理焼却灰の重量で表してよい。この場合、工程(b-1)の処理効率は4.0t/h以上であることは好ましい。工程(b-1)の処理効率は4.5t/h以上であることはより好ましい。また、工程(b-1)が後述する磁選工程を含む場合、当該磁選工程が必ずしも焼却灰の処理に直接寄与するとは限らない。その場合、当該磁選工程を含む処理工程における焼却灰の処理効率は、上記磁選工程を行わない場合と比較して、低下し得る。この場合、処理効率は、1.0t/h以上であってよい。好ましくは、処理効率は、1.5t/h以上であってよい。より好ましくは、1.8t/h以上であってよい。
【0033】
●工程(b-2)
工程(b-2)は、工程(b-1)で得られた第二処理焼却灰を第三トロンメルにより金属屑B-2と第三処理焼却灰とに篩い分ける工程である。すなわち、工程(b-2)は少なくとも、第二処理焼却灰を第三トロンメルに投入すること、第三トロンメルを回転させることで、第三処理焼却灰と金属屑B-2とに篩い分けること及び第三トロンメル中から得られた金属屑B-2を取り出すこと、のいずれかを含む工程である。
【0034】
(3)第三トロンメル
工程(b-2)で使用される第三トロンメルは、第二トロンメルが有するメッシュよりも小さい篩目のメッシュを有する。例えば、第三トロンメルは3mm~5mmの篩目を有するメッシュを備えるが、かかる篩目に限定されるものではない。
第三トロンメルは、好ましくは、3mm~4mmの篩目を有するメッシュを備え、より好ましくは4mmの篩目を有するメッシュを備える。メッシュの篩目が3mm以上であることで、焼却灰B-2と金属屑B-2とに効率的に篩い分けることができ、メッシュの篩目が5mm以下であることで、工程(b-2)で篩い分けられる焼却灰中に金属屑B-2が多く残存することを防ぎ、金属屑B-2を十分に取り出すことができる。
【0035】
第二トロンメル及び第三トロンメルが備えるメッシュの篩目の組み合わせは上記の条件を満たすものであれば特に制限はない。好ましいトロンメルの組み合わせとしては、前記第二トロンメルが6mm~13mmの篩目を有するメッシュを備え、前記第三トロンメルが3mm~5mmの篩目を有するメッシュを備えることが挙げられる。より好ましいトロンメルの組み合わせとしては、前記第二トロンメルが6mm~8mmの篩目を有するメッシュを備え、前記第三トロンメルが3mm~5mmの篩目を有するメッシュを備えることが挙げられる。
【0036】
前記メッシュは平織状メッシュであることは好ましい。前記平織状メッシュは、線径1~2mmの金属線からなるメッシュであることは好ましい(図6)。前記金属線としては、通常メッシュとして用いるものであれば特に制限はないが、鋼線、鉄線、及びタングステン線等が挙げられる。
【0037】
前記メッシュの空隙率(空間率)は、特に制限はないが、20~70%であることは好ましい。空隙率が大きくなるほど、焼却灰の篩い分けにかかる時間が短くなり、処理効率は高まる。一方、空隙率を小さくすることは、相対的に細かい金属屑B-2を、より確実に残存させる手段になり得る。
【0038】
第三トロンメルの回転速度は、第二処理焼却灰から金属屑B-2を篩い分けることができる回転速度であれば限定されないところ、10~20回転/分とすることが好ましい。
第三トロンメルの回転速度は、第二処理焼却灰を第三トロンメルに収容後、第三トロンメルの回転を開始し、前記回転速度に達した後、前記回転速度を工程(b-2)の終了まで維持してもよく、第三トロンメル中に残る第二処理焼却灰の量に応じて前記回転速度を調整してもよい。また、第三トロンメルの回転速度は、第二処理焼却灰から篩い分けられる対象である金属屑B-2における鉄成分の割合や、第三トロンメルを駆動(回転)させる時間を考慮して調整してもよい。
第三トロンメルの回転速度を10回転/分以上とすることで、効率的に第三処理焼却灰と金属屑B-2とを篩い分けることができる。第三トロンメルの回転速度を20回転/分以下とすることで、篩い分けられた焼却灰の意図しない拡散をことができる。
【0039】
工程(b-2)においては、一度に全ての第二処理焼却灰をトロンメルに投入し一括で篩い分けしてもよく、工程(b-2)による篩い分けを複数回行うことで第二処理焼却灰を分割して篩い分けしてもよい。通常、家庭ごみの収集及び焼却処理により生じる焼却灰の量を考慮すると、工程(b-2)による篩い分けを複数回行うことは好ましい。
第三トロンメルに投入される第二処理焼却灰の量として、第三トロンメルの容積の15~40%程度であることは好ましい。第三トロンメルに投入される第二処理焼却灰を第三トロンメルの容積の15%以上とすることで工程(b-2)を行う回数を減らすことにより、本発明の処理方法全体の処理効率を高めることができる。また、第三トロンメルに投入される第二処理焼却灰を第三トロンメルの容積の40%以下とすることで、篩い分ける効率の向上により工程(b-2)の処理時間を短くすることができ、第三処理焼却灰と金属屑B-2とを一層効率的に篩い分けることができる。
【0040】
工程(b-2)の処理効率は、例えば、1時間当たりに処理された第二処理焼却灰の重量で表してよい。この場合、工程(b-2)の処理効率は2.0t/h以上であることは好ましい。工程(b-2)の処理効率は2.5t/h以上であることはより好ましい。。また、工程(b-2)が後述する磁選工程を含む場合、当該磁選工程が必ずしも焼却灰の処理に直接寄与するとは限らない。その場合、当該磁選工程を含む処理工程における焼却灰の処理効率は、上記磁選工程を行わない場合と比較して、低下し得る。この場合、処理効率は、1.0t/h以上であってよい。好ましくは、処理効率は、1.5t/h以上であってよい。より好ましくは、1.8t/h以上であってよい。
【0041】
●工程(c)
本発明の処理方法は、工程(c)をさらに含む。工程(c)は金属屑A及び金属屑B-1を合わせて製鋼原料を得る工程である。当該製鋼原料は、例えば50~90重量%の金属成分を含み、好ましくは70~90重量%の金属成分を含む。
当該製鋼原料は、より鉄純度の高い製鋼原料と混合して製鋼工程に付してよく、より低コストな製鋼に寄与し得る。当該より鉄純度の高い製鋼原料としては、炭素鋼スクラップ及び銑スクラップが挙げられる。
【0042】
工程(c)においては、第一処理焼却灰を工程(b-1)にて処理した後に、得られた金属屑A及び金属屑B-1を一括して合わせることにより、製鋼原料を得てよい。あるいは、工程(c)においては、工程(b-1)を複数回行う場合には、工程(b-1)を1回行うごとに得られた金属屑B-1を金属屑Aに加えることにより、金属屑Aと金属屑B-1とを合わせて製鋼原料を得てもよい。
【0043】
本発明の一態様においては、工程(c)において得られた鉄を含む製鋼原料に金属屑B-2をさらに合わせて鉄を含む製鋼原料を得る工程を含んでもよい。この場合において、第二処理焼却灰を工程(b-2)にて処理した後に、得られた金属屑B-2と前記製鋼原料とを一括して合わせることにより、製鋼原料を得てよい。あるいは、工程(c)においては、工程(b-2)を複数回行う場合には、工程(b-2)を1回行うごとに得られた金属屑B-2を既に得られた製鋼原料に加えることにより、製鋼原料と金属屑B-2とを合わせて製鋼原料を得てもよい。
【0044】
本発明の処理方法における焼却灰の処理効率は、例えば、1時間当たりに処理される前記金属屑含有焼却灰の重量で表してよい。すなわち、処理前の金属屑含有焼却灰を処理するのに要する全工程の時間から、焼却灰の処理効率を求めることができる。この場合、前記処理効率は、2.0t/h以上であることは好ましい。前記処理効率の上限に制限はないところ、本発明の一態様において、5.5t/h程度であってよい。
また、本発明の処理方法が後述する磁選工程を含む場合、当該磁選工程が必ずしも焼却灰の処理に直接寄与するとは限らない。その場合、当該磁選工程を含む本発明の処理方法における焼却灰の処理効率は、上記磁選工程を行わない場合と比較して、低下し得る。この場合、処理効率は、1.0t/h以上であってよい。好ましくは、処理効率は、1.5t/h以上であってよい。より好ましくは、1.8t/h以上であってよい。
【0045】
本発明の処理対象である焼却灰は、家庭ごみ等の一般廃棄物をごみ焼却施設で焼却処理することで得られる。当該焼却灰中には家庭から排出される空き缶等に由来する金属屑が含まれ得る。前記金属屑が焼却灰に含まれている場合、焼却灰を溶融する際に、前記金属屑に通電することで溶融炉(電気炉抵抗式)の機能が低下してしまうため、溶融固化処理をすることが困難となる。したがって、前記金属屑を除去する必要がある。
【0046】
前記金属屑含有焼却灰は、事前に磁選機等を用いて、含まれている鉄屑等の金属屑の一部を取り除いていてもよい。磁選機を用いて鉄屑等の金属屑を取り除くことで、処理すべき金属屑含有焼却灰を減らすことができるため、その後に本発明の処理方法に供することで、より短時間で金属屑含有焼却灰を処理することができる。
【0047】
本発明の処理方法において、最終的に金属屑含有量の小さい焼却灰(最終焼却灰)を得ることができる。例えば、工程(b-1)で処理方法を完了する場合は、第二処理焼却灰が最終焼却灰に該当し、工程(b-2)で処理方法を完了する場合は、第三処理焼却灰が最終焼却灰に該当する。最終焼却灰は金属屑含有量が小さいため、溶融固化を行い、路盤材等に利用することができる。
【0048】
金属屑
本発明の処理方法により篩い分けられる金属屑は、製鋼原料として再利用することができる。当該金属屑は家庭から排出される空き缶等に由来する。本発明の処理方法により篩い分けられる金属屑は、鉄、銅、アルミニウム等を含む金属屑が挙げられる。前記金属屑は少なくとも鉄屑を含む金属屑であることは好ましい。前記金属屑は50~90重量%の金属成分を含み、好ましくは70~90重量%の金属成分を含む。当該金属成分としては、鉄成分を含むものは好ましく、鉄成分であることはより好ましい。
【0049】
本発明の処理方法により篩い分けられる金属屑には、工程(a)で得られる金属屑A及び工程(b-1)で得られる金属屑B-1がある。さらに、工程(b-2)を行う場合、工程(b-2)で得られる金属屑B-2がある。金属屑Aは金属屑含有焼却灰中に30~50重量%含まれ得る。金属屑B-1は金属屑含有焼却灰中に10~40重量%含まれ得る。金属屑B-2は金属屑含有焼却灰中に5~20重量%含まれ得る。各工程で得られる金属屑の大きさは、各工程で用いられるトロンメルに備え付けられたメッシュの篩目により異なるが、一態様において、金属屑Aは15mm大以上であってよく、10mm大以上であってよい。また、一態様において、金属屑B-1は10mm大以上であってよく、7mm大以上であってよい。さらに、一態様において、金属屑B-2は5mm大以上であってよく、4mm大以上であってよい。
【0050】
金属屑A及び金属屑B-1を合わせることにより、製鋼原料を得ることができる。また、当該製鋼原料に金属屑B-2をさらに合わせて、製鋼原料を得ることもできる。当該製鋼原料は、30~90重量%の金属成分を含み、好ましくは60~90重量%の金属成分を含む。当該金属成分としては、鉄成分を含むものは好ましく、鉄成分であることはより好ましい。
当該製鋼原料が鉄成分を含む場合、鉄純度は限定されないところ、鉄純度として50~90%は好ましい。鉄成分を含む当該製鋼原料は、より鉄純度の高い製鋼原料と混合することができる。当該より鉄純度の高い製鋼原料としては、炭素鋼スクラップ及び銑スクラップが挙げられる。
【0051】
●磁選工程
本発明の処理方法においては、各工程において、磁選機を用いて焼却灰又は金属屑から鉄を含む焼却灰又は鉄成分を磁選する工程をさらに含んでもよい。
磁選工程における磁選処理では磁選機として、大型マグネット等の通常用いられる磁石を用いてよい。磁石への付着の有無により、対象とした焼却灰又は金属屑が鉄を含むか否かを選別することができる。
磁選工程は前記工程(a)、工程(b-1)、及び工程(b-2)の前後において、得られた焼却灰を対象としてもよく、又は得られた金属屑を対象としてもよい。
磁選機を用いて焼却灰を処理することで、焼却灰中から鉄を含む焼却灰を取り出すことができる。また、磁選機を用いて金属屑を処理することで、金属屑中の鉄成分を取り出すことができ、製鋼原料中の鉄の純度を高めることができる。なお、磁選は、各工程で処理すべき焼却灰をすべて処理した後、篩い分けられた焼却灰又は金属屑を対象として行ってもよい。または、磁選は、各工程においてトロンメルによる篩い分けがされた焼却灰又は金属屑を対象として順次行うことで、トロンメルによる篩い分けと同時並行で行われてもよい。
【0052】
さらに磁選工程を経て得られた鉄を含まない焼却灰、鉄を含む焼却灰、鉄を含まない金属屑、及び鉄を含む金属屑は、いずれもさらにトロンメルにより処理することができる。
【0053】
一態様において、前記磁選をする工程は、少なくとも第二処理焼却灰に対して行われることは好ましい。第二処理焼却灰に対して磁選をすることで、鉄を含む焼却灰を後の工程(b-2)にて篩い分けることで鉄純度の高い金属屑B-2を得ることになり、最終的に得られる製鋼原料の鉄純度を高めることができる。
【0054】
また、一態様において、前記磁選をする工程は、少なくとも金属屑B-2に対して行われることは好ましい(図5)。金属屑B-2に対して磁選をすることで、鉄純度の高い金属屑B-2を得ることができ、最終的に得られる製鋼原料の鉄純度を高めることができる。なお、磁選が金属屑を対象として行われる場合、当該磁選が処理対象としての焼却灰の処理に直接寄与しないところ、当該磁選工程を含む工程及び全体の処理工程における焼却灰の処理効率は、磁選工程を行わない場合と比較して、低下し得る。この場合、処理効率は、1.0t/h以上であってよい。好ましくは、処理効率は、1.5t/h以上であってよい。より好ましくは、1.8t/h以上であってよい。
【0055】
以上、本発明の処理方法を、各処理工程及びその生成物について詳述してきた。本発明の処理方法のさらなる理解のため、工程名、使用トロンメル、処理対象、生成物(焼却灰及び金属屑)、その後の処理の流れ等についての備考を、大きさ等を示した上で具体的に示す。但し、以下に示す具体的な実施形態、特に使用トロンメルにおける篩目の大きさ及び各工程のトロンメルの組み合わせは、特に優れた焼却灰処理効率を有するものを例示するものであり、本発明を以下の実施形態に限定するものではない。

上記のように、各種工程で処理を行うことにより、前の工程よりも小さい焼却灰及び金属屑を得ることができる。得られた各種金属屑は、工程(c)において、そのまま合わせて製鋼原料としてもよいし、磁選工程を行った後、製鋼原料としてもよい。
【0056】
<焼却灰処理装置>
本発明により、金属屑含有焼却灰から金属屑Aと第一処理焼却灰とを篩い分けるための、8mm~17mmの篩目を有するメッシュを備える第一トロンメル、及び前記第一処理焼却灰から金属屑Bと最終焼却灰とを篩い分けるための、6mm~13mmの篩目を有するメッシュを備える第二トロンメル、但し、第二トロンメルは第一トロンメルが有するメッシュよりも小さい篩目のメッシュを有する、を備える、焼却灰処理装置(焼却灰処理システム)が与えられる。
【0057】
本発明の焼却灰処理装置は、前述の第一トロンメル及び第二トロンメルを備えるものであれば、その他の構成は限定されない。
すなわち、第三トロンメルを備えることにより、以下の焼却灰処理装置が与えられる:
金属屑含有焼却灰から鉄を含む金属屑Aと第一処理焼却灰とを篩い分けるための、8mm~17mmの篩目を有するメッシュを備える第一トロンメル、
前記第一処理焼却灰から鉄を含む金属屑B-1と第二処理焼却灰とを篩い分けるための、6mm~13mmの篩目を有するメッシュを備える第二トロンメル、但し、第二トロンメルは第一トロンメルが有するメッシュよりも小さい篩目のメッシュを有する、及び
前記第二処理焼却灰から鉄を含む金属屑B-2と第三処理焼却灰とを篩い分けるための、3mm~5mmの篩目を有するメッシュを備える第三トロンメル、を備える、
前記処理方法を行うための、焼却灰処理装置。
当該処理装置を用いることで、前記処理方法を実施することができる。
【0058】
特に前記処理方法による金属屑含有焼却灰の処理効率の観点から、第一トロンメルは15mmの篩目を有するメッシュを備え、第二トロンメルは10mmの篩目を有するメッシュを備え、第三トロンメルは4mmの篩目を有するメッシュを備えることは好ましい。
前記のトロンメルを組み合わせた処理装置を用いて、本発明の処理方法を行うことにより、効率的に焼却灰と金属屑とを分けることができる。また、得られた焼却灰に含まれる金属屑の量を、溶融固化を行うことが可能な量まで低減することができる。さらに、得られた金属屑は、その大きさ及び純度の観点から製鋼原料として好適である。
【0059】
本発明の処理装置において、トロンメルの種類及び形状に特に制限はなく、例えば据え置き型や油圧ショベルのアタッチメント型であってよい。また、円形ドラム式や六角ドラム式であってよく、跳ね上げ羽根を有していてもよい。トロンメル自体の大きさに特に制限はないが、設備導入の場所及び/又はコスト等の観点並びに一般的に処理すべき焼却灰の量の観点から、トロンメルの容積は1,000~3,000L程度が好ましい。
【0060】
トロンメルに備え付けられるメッシュの篩目は、金属屑を分離し得る形状であれば特に限定されない。前記篩目としては、略矩形、多角形、略円形等が挙げられる。特に略矩形は好ましい。前記メッシュは金属屑を分離し得る構造であれば特に限定されない。前記メッシュとしては平織状メッシュ、綾織状メッシュ、パンチングメタル等が挙げられる。特に平織状メッシュは好ましい。
【0061】
トロンメルが備える前記メッシュは、平織状メッシュであることは好ましい(図2図6)。前記平織状メッシュは、線径1~7mmの金属線からなるメッシュであることは好ましい。前記金属線としては、通常メッシュとして用いるものであれば特に制限はないが、鋼線、鉄線、及びタングステン線等が挙げられる。
【0062】
前記メッシュの空隙率(空間率)は、特に制限はないが、20~80%であることは好ましい。前記空隙率は20~75%であることはより好ましく、20~70%であることは特に好ましい。空隙率が大きくなるほど、焼却灰の篩い分けにかかる時間が短くなり、処理効率は高まる。一方、空隙率を小さくすることは、相対的に細かい金属屑を、より確実に残存させる手段になりえる。
【0063】
本発明の焼却灰処理装置は、従来の焼却灰処理装置に比べ、小型であってよい。そのため、従来の焼却灰処理装置では、装置の設置に必要な場所及びコストを縮小することができる。また、本発明の焼却灰処理装置は、第一トロンメル及び第二トロンメルのみから構成されていてもよいため、必要に応じて金属屑含有焼却灰の集積地へ適宜移動することができる。
また、本発明の焼却灰処理装置は、前述の第三トロンメルを備えてもよく、磁選処理を行うための磁選機を備えてもよい。磁選機としては、大型マグネット等の通常用いられる磁石を用いてもよい。
【0064】
本発明の処理装置の焼却灰の処理効率は、その構成によるところ、各処理工程における処理効率の最低値を上回るものであることが好ましい。例えば、本発明の処理装置による処理において磁選工程を含む場合、本発明の処理装置の焼却灰の処理効率は、1.0以上であることが好ましい。本発明の処理装置による処理において磁選工程を含まない場合、本発明の処理装置の焼却灰の処理効率は、2.0~5.5t/hであることが好ましい。
【0065】
<製鋼原料>
本発明の処理方法により、金属屑含有焼却灰から取り出された製鋼原料であって、30~90重量%の金属成分を含む、前記製鋼原料も提供される。
【0066】
本発明の製鋼原料は、前述の金属屑A及び金属屑B-1を合わせることで得られる。また、金属屑B-2をさらに合わせることでも得られる。なお、各種金属屑を合わせて製鋼原料又は製鋼原料の原料を得る工程において用いられる方法や器具・容器は限定されない。かかる工程は、例えば、合わせる対象である各種金属屑を、順次収容容器に収容して行ってよい。前記製鋼原料は50~90重量%の金属成分を含み、好ましくは70~90重量%の金属成分を含む。当該金属成分としては、鉄成分であることは好ましい。当該製鋼原料が鉄成分を含む場合、鉄純度は限定されないところ、鉄純度として50~90%は好ましい。
本発明の製鋼原料を用いる場合、より鉄純度の高い製鋼原料と混合して用いることができる。当該より鉄純度の高い製鋼原料としては、炭素鋼スクラップ及び銑スクラップが挙げられる。
【0067】
また、前記製鋼原料中の鉄成分の割合を増やすため、鉄以外の成分を含むごみ等を前記製鋼原料から除去してもよい。前記ごみとしては、銅線を含むモーター等が挙げられる。前記除去方法は、特に制限はなく、通常用いられる方法により行われてよい。
【0068】
本発明の処理方法及び処理装置によれば、従来技術に比べ、低コスト及び/又は高効率で金属屑含有焼却灰を処理することができる。また、本発明の処理方法又は処理装置により篩い分けられた金属屑は、製鋼原料として再利用可能であり、本発明の処理方法又は処理装置により篩い分けられ、最終的に得られた焼却灰は、金属成分の含有量が小さいため、溶融固化後に路盤材等に利用可能である。したがって、本発明は近年増加する一般廃棄物の処理問題といった環境問題の解決に貢献し得る。
【実施例
【0069】
以下の実施例により本発明をさらに詳述するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0070】
各評価又は測定中の実施例及び比較例において、以下の平織状メッシュ(オカダアイヨン株式会社製)を備えるトロンメルを用いた。メッシュには金属線として鋼線(SS材)を用いた。メッシュの縦線間の距離と横線間の距離は同じ距離とした。
25mmメッシュ
線径6mm、篩目25mmの平織状メッシュ
15mmメッシュ
線径6mm、篩目15mmの平織状メッシュ
10mmメッシュ
線径5mm、篩目10mmの平織状メッシュ
7mmメッシュ
線径4mm、篩目7mmの平織状メッシュ
使用したトロンメルの大きさは内径1,200mm、長さ1,300mm(容積:約1,500L)であった。
【0071】
1.メッシュ篩い分け評価
1-1.工程(a)評価
金属屑含有焼却灰をトロンメル内に投入し、トロンメルを回転させ、金属屑含有焼却灰を篩い分けた。篩い分けが完了した後、トロンメル内に残る残留物とトロンメル外に篩い分けられた焼却灰とを目視により観察し、トロンメルに装着されたメッシュについて、工程(a)の適否を判断した。
【0072】
1-2.工程(b)評価
前記工程(a)評価においてトロンメル外に篩い分けられた焼却灰を、トロンメル内に投入し、トロンメルを回転させてさらに篩い分けた。篩い分けが完了した後、トロンメル内に残る残留物とトロンメル外に篩い分けられた焼却灰とを目視により観察し、トロンメルに装着されたメッシュについて、工程(b)の適否を判断した。
【0073】
●試験例1
工程(a):トロンメルに15mmメッシュを装着した。トロンメルにトロンメルの容積の20%の金属屑含有焼却灰を投入し、トロンメルを16回転/分で回転させ、金属屑含有焼却灰を篩い分けた。4分後、トロンメル外に篩い分けられる焼却灰が確認されなくなった時点でトロンメルの回転を止め、トロンメル内の残留物を目視により観察した。トロンメル内に15mm大以上の金属屑が確認された(比較例1)。
工程(b):次いで、トロンメルに7mmメッシュを装着した。トロンメル内に上記15mmメッシュを装着したトロンメルにより篩い分けられた焼却灰を全て投入し、トロンメルを16回転/分で回転させ、焼却灰を篩い分けた。4分後、トロンメル外に篩い分けられる焼却灰が確認されなくなった時点でトロンメルの回転を止め、トロンメル内の残留物を目視により観察した。トロンメル内に7mm大以上の金属屑が確認された。目視によりトロンメル外のメッシュを通過した焼却灰を確認した。前記焼却灰中には金属屑が含まれていなかった(実施例1)。
【0074】
●試験例2
工程(a):トロンメルに15mmメッシュを装着した。トロンメルにトロンメルの容積の20%の金属屑含有焼却灰を投入し、トロンメルを16回転/分で回転させ、金属屑含有焼却灰を篩い分けた。4分後、トロンメル外に篩い分けられる焼却灰が確認されなくなった時点でトロンメルの回転を止め、トロンメル内の残留物を目視により観察した。トロンメル内に15mm大以上の金属屑が確認された(比較例2)。
工程(b):次いで、トロンメルに10mmメッシュを装着した。トロンメル内に上記15mmメッシュを装着したトロンメルにより篩い分けられた焼却灰を全て投入し、トロンメルを16回転/分で回転させ、焼却灰を篩い分けた。4分後、トロンメル外に篩い分けられる焼却灰が確認されなくなった時点でトロンメルの回転を止め、トロンメル内の残留物を目視により観察した。トロンメル内に10mm大以上の金属屑が確認された。目視によりトロンメル外のメッシュを通過した焼却灰を確認した。前記焼却灰中の金属屑含有量は低減されていた(実施例2)。
【0075】
●試験例3
工程(a):トロンメルに15mmメッシュを装着した。トロンメルにトロンメルの容積の20%の金属屑含有焼却灰を投入し、トロンメルを16回転/分で回転させ、金属屑含有焼却灰を篩い分けた。4分後、トロンメル外に篩い分けられる焼却灰が確認されなくなった時点でトロンメルの回転を止め、トロンメル内の残留物を目視により観察した。トロンメル内に15mm大以上の金属屑が確認された(比較例3)。
工程(b):次いで、トロンメルに10mmメッシュを装着した。トロンメル内に上記15mmメッシュを装着したトロンメルにより篩い分けられた焼却灰を全て投入し、トロンメルを16回転/分で回転させ、焼却灰を篩い分けた。4分後、トロンメル外に篩い分けられる焼却灰が確認されなくなった時点でトロンメルの回転を止めた。さらに、トロンメルに7mmメッシュを装着したトロンメル内に、上記10mmメッシュを装着したトロンメルにより篩い分けられた焼却灰を全て投入し、トロンメルを16回転/分で回転させ、焼却灰を篩い分けることにより、実施例1と同様に、金属屑が含まれない焼却灰が得られた(実施例3)。
【0076】
●試験例4
工程(a):トロンメルに10mmメッシュを装着する。トロンメルにトロンメルの容積の20%の金属屑含有焼却灰を投入し、トロンメルを16回転/分で回転させ、金属屑含有焼却灰を篩い分けた。6分後、トロンメル外に篩い分けられる焼却灰が確認されなくなった時点でトロンメルの回転を止め、トロンメル内の残留物を目視により観察した(比較例4)。
工程(b):次いで、トロンメルに7mmメッシュを装着した。トロンメル内に上記10mmメッシュを装着したトロンメルにより篩い分けられた焼却灰を全て投入し、トロンメルを16回転/分で回転させ、焼却灰を篩い分けた。4分後、トロンメル外に篩い分けられる焼却灰が確認されなくなった時点でトロンメルの回転を止め、トロンメル内の残留物を目視により観察した。トロンメル内に7mm大以上の金属屑が確認され、目視によりトロンメル外のメッシュを通過した焼却灰が確認された。前記焼却灰中には金属屑は含まれていなかった(実施例4)。
【0077】
●参考試験例1
トロンメルに25mmメッシュを装着した。トロンメルにトロンメルの容積の20%の金属屑含有焼却灰を投入し、トロンメルを16回転/分で回転させ、金属屑含有焼却灰を篩い分けた。3分後、トロンメル外に篩い分けられる焼却灰が確認されなくなった時点でトロンメルの回転を止め、トロンメル内の残留物及び篩い分けられた焼却灰を目視により観察した。前記金属屑含有焼却灰はメッシュを通過し、トロンメル内にはほとんど金属屑は残らなかった。すなわち、金属屑Aに相当する金属屑は得られなかった。金属屑Aに相当する金属屑が得られなかったため、工程(b)に相当するさらなる篩分け工程は実施できなかった。
【0078】
●参考試験例2
工程(a):トロンメルに7mmメッシュを装着した。トロンメルにトロンメルの容積の20%の金属屑含有焼却灰を投入し、トロンメルを16回転/分で回転させ、金属屑含有焼却灰を篩い分けた。10分経過後、トロンメル外に篩い分けられる焼却灰がトロンメル内からなくならないため、トロンメルの回転を止め、トロンメル内の残留物を目視により観察した。トロンメル内に金属屑及び焼却灰が確認された。メッシュが目詰まりを起こし、篩い分けが困難な状態となっていた。すなわち、金属屑含有焼却灰に対する篩分け処理自体を実施することができず、処理前の金属屑含有焼却灰がほぼそのまま残った。
【0079】
試験例1~4(実施例1~4及び比較例1~4)の結果をまとめると以下のとおりである:

これらの結果から、本発明の処理方法においては、金属屑含有焼却灰を処理して、焼却灰と金属屑とを簡便に分離し、製鋼原料を得ることができることが明らかになった。また、本発明の処理装置により、焼却灰と金属屑とを簡便に分離し、製鋼原料を得ることができることも明らかになった。
【0080】
2.処理効率測定
工程(a)、工程(b)、及び全工程に要する時間(作業時間)を以下のように測定した。
工程(a):15mmメッシュ又は10mmメッシュを備えたトロンメルを用いて、焼却灰を篩い分けるのに要する時間(作業時間)を計測した。
工程(b):7mmメッシュを備えたトロンメルを用いて、上記工程(a)で篩い分けられた焼却灰をさらに篩い分けるのに要する時間(作業時間)を計測した。
全工程:上記工程(a)及び工程(b)に要した時間を合算し求めた。
工程(a)に15mmメッシュを用いた場合の結果を表1に示す。工程(a)に10mmメッシュを用いた場合の結果を表2に示す。
【0081】
【表1】

【表2】
【0082】
表1及び表2に示すように、本発明の処理方法及び処理装置によれば、2.0t/h以上の処理効率で、金属屑含有焼却灰を処理し、製鋼原料を得ることができることが確認された。かかる処理効率は、従来技術を上回るものである。
【0083】
3.工程(b-2)評価(4mmメッシュ篩い分け評価試験)
4mmメッシュとして、線径2mm、篩目4mmの平織状メッシュ(オカダアイヨン株式会社製)を備えるトロンメルを用いた。メッシュには金属線として鋼線(SS材)を用いた。メッシュの縦線間の距離と横線間の距離は同じ距離とした。
【0084】
●実施例5
別途、実施例1と同様に、工程(a)として15mmメッシュ、工程(b-1)(上記工程(b))として7mmメッシュを用いて金属含有焼却灰を篩い分けた。篩い分けられた焼却灰をさらに以下の工程(b-2)により処理した。
【0085】
工程(b-2)
トロンメルに4mmメッシュを装着した。トロンメル内に7mmメッシュを装着したトロンメルにより篩い分けられた焼却灰117,620kgをトロンメルの容積の約20%まで投入し、トロンメルを16回転/分で回転させ、焼却灰を篩い分けた。4分後、トロンメル外に篩い分けられる焼却灰が確認されなくなった時点でトロンメルの回転を止め、トロンメル内の残留物を、メッシュを通過した焼却灰とは別に取りまとめることで、焼却灰と金属屑とを篩い分けた。前記117,620kgの焼却灰の残りの焼却灰についても順次繰り返し行い、焼却灰と金属屑を篩い分けた。トロンメル内の残留物としてまとめられた金属屑を目視により観察したところ、4mm大以上の金属屑が確認された。目視によりトロンメル外のメッシュを通過した焼却灰を確認した。前記焼却灰中の金属屑含有量は低減されていた。
【0086】
実施例5の処理結果を表3に示す。
【表3】
【0087】
4.磁選処理評価
磁選処理に用いる磁選機として、大型マグネット(コベルコ建機社マグネットアタッチメント:直径1,350mm、吸着質量1,070kg)を用いた。
【0088】
●実施例6
実施例5において、得られた4mm大以上の金属屑32,900kgに対して、大型マグネットにより磁選処理を行った。新たに大型マグネットに付着するものが確認されなくなった時点を磁選処理の終了とし、磁選処理終了後に、大型マグネットに付着した金属屑及び大型マグネットに付着しなかった金属屑をそれぞれ目視により確認した。大型マグネットに付着した金属屑は、鉄やステンレスといった、磁選により焼却灰から分離される金属から実質的になるものであり、製鋼原料としての利用価値が高いものであった。
【0089】
4mmメッシュを用いた篩い分け(工程(b-2))及び実施例6の磁選処理の処理結果を表4に示す。なお、表4中の全行程の作業時間は、工程(b-2)及び磁選処理に要した時間を合算して求めた。
【表4】
【0090】
●実施例7
実施例1と同様に、15mmメッシュ、7mmメッシュを用いて金属含有焼却灰を篩い分けた。篩い分けられた焼却灰111,300kgを大型マグネットにより磁選処理を行った。新たに大型マグネットに付着するものが確認されなくなった時点を磁選処理の終了とし、磁選処理終了後に、大型マグネットに付着した焼却灰を、4mmメッシュを備えたトロンメルを用いて実施例5と同様にして篩い分けた。トロンメル外のメッシュを通過した焼却灰及びトロンメル内の残留物を目視により観察した。前記焼却灰中の金属屑含有量は低減されていた。トロンメル内の残留物は大型マグネットに付着したものであるから、鉄やステンレスといった、磁選により焼却灰から分離される金属から実質的になるものであり、製鋼原料としての利用価値が高いものであった。
【0091】
実施例7の処理結果を表5に示す。なお、表5中の全行程の作業時間は、磁選処理及び工程(b-2)に要した時間を合算して求めた。
【表5】
【0092】
表3~5に示すように、本発明の処理方法によれば、1.8t/h以上の処理効率で、金属屑含有焼却灰を処理し、製鋼原料を得ることができることが確認された。かかる処理効率は、従来技術と同程度かそれを上回るものである。本発明の処理方法によれば、金属屑含有焼却灰から微細な金属屑を除去することが確認された。また、実施例6及び7で得られた製鋼原料は鉄純度が高いものであった。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明によれば、従来用いられていた処理装置より簡便な装置を用いることができ、低コストで金属屑含有焼却灰を処理することができるばかりでなく、製鋼原料を従来の方法より高い効率で得ることができる。また、本発明により処理された焼却灰は金属屑含有量が低減されており、溶融固化後に路盤材等に活用できる。
したがって、本発明は、廃棄物処理産業、製鋼原料製造産業、及び土木事業産業、ならびにこれらに関連する産業の発展に寄与するところ大である。
【要約】
【課題】 本発明は、従来技術に比べ低コスト及び/又は効率的に焼却灰を処理することができる新規な焼却灰の処理方法及び新規な処理装置を提供することを課題とする。また、製鋼原料を提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明によれば、金属屑含有焼却灰から鉄を含む金属屑を篩い分けることにより焼却灰中の金属屑含有量を低減するための、焼却灰の処理方法であって、第一トロンメルにより金属屑含有焼却灰から鉄を含む金属屑Aを篩い分け、第一処理焼却灰を得る工程、第二トロンメルにより第一処理焼却灰から鉄を含む金属屑B-2を篩い分け、第二処理焼却灰を得る工程、第三トロンメルにより第二処理焼却灰から鉄を含む金属屑B-2を篩い分け、第三処理焼却灰を得る工程、及び金属屑A及び金属屑B-1を合わせて鉄を含む製鋼原料を得る工程、を含む、前記処理方法が提供される。また、前記処理方法を行うための焼却灰処理装置が提供される。
【選択図】 図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6