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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】吹付基盤材
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/20 20060101AFI20230530BHJP
   D04B 21/02 20060101ALI20230530BHJP
   D04B 21/10 20060101ALI20230530BHJP
   D02G 3/36 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
E02D17/20 104B
D04B21/02
D04B21/10
D02G3/36
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022197829
(22)【出願日】2022-12-12
【審査請求日】2022-12-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000201490
【氏名又は名称】前田工繊株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】村上 義則
(72)【発明者】
【氏名】井坂 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】川端 聡史
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-120547(JP,A)
【文献】特開平09-302581(JP,A)
【文献】特開平10-121480(JP,A)
【文献】特開平08-074158(JP,A)
【文献】国際公開第96/035021(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0109657(KR,A)
【文献】特開2021-188144(JP,A)
【文献】特開平03-247815(JP,A)
【文献】特開2010-144376(JP,A)
【文献】特開2000-226852(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/20
J-STAGE
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のストランドをネット状に編成し、ストランドの間に網目を有し、吹付材を吹き付けて構築する層状の覆工層に埋設して使用する繊維製の編地からなる吹付基盤材であって、
前記ストランドは表面に樹脂が被覆されていない溶融温度の異なる複数種類の樹脂繊維からなり、
網目を開いた状態で前記編地が熱処理されており
前記編地を構成するストランドは表面に樹脂が被覆されていない繊維素材からなるストランド本体と、
前記ストランド本体に沿って編み込んだ繊維素材からなる複数のパイル糸とを具備し、
前記ストランド本体に沿って前記パイル糸を編成して編地の面方向と平行に複数の横向きパイルを突設し、
前記ストランド本体が芯糸と、該芯糸の周囲に配置して鎖編みをする編糸とを少なくとも具備し、
前記芯糸が溶融温度の異なる複数種類の樹脂繊維からなり、
前記編糸が熱融着性と熱収縮性を併有した樹脂繊維であることを特徴とする、
吹付基盤材。
【請求項2】
前記編地が単層構造または積層構造のラッセル編地であることを特徴とする、請求項1に記載の吹付基盤材。
【請求項3】
前記パイル糸の融点がストランド本体のフィラメントを構成する樹脂繊維の融点に対して同等以上の関係にあることを特徴とする、請求項に記載の吹付基盤材。
【請求項4】
前記ストランド本体が、モノフィラメント製の芯糸と、該芯糸の周囲に配置して鎖編みをするマルチフィラメント製またはモノフィラメント製の編糸とを少なくとも具備することを特徴とする、請求項に記載の吹付基盤材。
【請求項5】
前記網目が菱形または角目であることを特徴とする、請求項1に記載の吹付基盤材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモルタルや植生基盤材の吹付を伴う法面保護工やトンネル内壁の保護工等で使用する繊維製の吹付基盤材に関する。
【背景技術】
【0002】
切土斜面や盛土斜面を放置すると、降雨等による表面侵食や斜面崩壊等が生じる。
これらの問題を解消する法面保護工のひとつとして、斜面全面にモルタルを吹き付けて3~30cm程度の厚さのモルタル層で斜面の表面を被覆するモルタル吹付工が知られている(特許文献1)。
モルタル層の定着性と強度を確保するために、予め斜面に金属製の網材を敷設し、金属製の網材が隠れるまでモルタルを吹き付けてモルタル層内に金属製の網材を埋設している(特許文献2)。
一般に金属製の網材には、ラス網と呼ばれる菱形金網を使用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-35232号公報
【文献】実開昭60-146544号公報
【文献】特開2017-214781号公報
【文献】特開2017-222524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の法面保護技術はつぎのいくつかの課題を内包している。
<1>金属製の網材は表面にメッキ加工を施して滑らかに仕上げられているので、モルタルとの付着性が悪いだけでなく、網材を構成する鋼線の剛性が高いため斜面の不陸に追従できずに馴染み難い。
<2>さらに金属製の網材は、重量が重たいため、現場での敷設作業がし難い。特に斜面が急勾配になるほど敷設作業性が悪くなる。
<3>網材が金属製であるため、腐食の問題も抱えている。
<4>金属製の素材に代えて、繊維製ネットの使用が考えられる。
繊維製ネットは、素材が柔らかすぎるため定形性を保ちにくいために、現場での敷設作業がし難い。
<5>繊維製ネットは、素材が柔らかすぎるために、繊維製ネットの網目が閉じ易く、網目が閉じた状態でモルタルを吹き付けると、ネット裏側へのモルタルの回り込みが阻害される。
<6>金属製の素材に代えて、繊維製の織物、編物(ネット)に樹脂被覆したもの、またはジオグリッド等の樹脂製ネットの使用が考えられる(例えば特許文献3,4)。
これらの樹脂製のネットは、ネット素材の表面に樹脂コーテングが施されていて、その表面が平滑に仕上げられているためモルタルとの付着性が悪いうえに、斜面に不陸に対する追従性が悪い、といった課題を有する。
【0005】
本発明は以上の課題を改善できる、繊維製の吹付基盤材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数のストランドをネット状に編成し、ストランドの間に網目を有し、吹付材を吹き付けて構築する層状の覆工層に埋設して使用する繊維製の編地からなる吹付基盤材であって、前記ストランドは表面に樹脂が被覆されていない溶融温度の異なる複数種類の樹脂繊維からなり、網目を開いた状態で前記編地が熱処理されている。
本発明の他の形態において、前記網地を構成するストランドは表面に樹脂が被覆されていない熱融着性の繊維素材からなるストランド本体と、前記ストランド本体に沿って編み込んだ繊維素材からなる複数のパイル糸とを具備し、前記ストランド本体に沿って前記パイル糸を編成して編地の面方向と平行に複数の横向きパイルを突設し、前記複数の横向きパイルが覆工層との付着力を高めるためのジベル機能を具備する。
本発明の他の形態において、前記編地が単層構造または積層構造のラッセル編地である。
本発明の他の形態において、前記パイル糸の融点がストランド本体のフィラメントを構成する樹脂繊維の融点に対して同等以上の関係にある。
本発明の他の形態において、前記ストランド本体が、モノフィラメント製の芯糸と、該芯糸の周囲に配置して鎖編みをするマルチフィラメントまたはモノフィラメント製の編糸とを少なくとも具備する。
本発明の他の形態において、前記芯糸が溶融温度の異なる複数種類の樹脂繊維からなり、前記編糸が熱融着性と熱収縮性を併有した樹脂繊維である。
本発明の他の形態において、前記網目が菱形または角目である。
【発明の効果】
【0007】
本発明は少なくともつぎの一つの効果を奏する。
<1>本発明に係る吹付基盤材は、表面に樹脂の被膜を形成せずに、熱融着性の繊維素材を熱処理することで、網地を構成するストランド表面の凹凸を残したまま、網地に適度の剛性(形態保持性)を付与することができる。
そのため、従来の金属製の網材と比べて敷設面の不陸に対する追従性がよくなり、表面が平滑な従来の金属製または樹脂製ネットと比べて吹付材との付着性がよくなる。
<2>ストランド本体に横向きパイルを形成するための複数のパイル糸を編み込んだ場合には、複数の横向きパイルの外周面が覆工層と付着して付着面積を増すだけでなく、ストランド本体と横向きパイルの間に形成した貫通空間内に吹付材が入り込んで編地の表裏両面の吹付材に連続性が付与されるので、ストランドと覆工層との付着力がさらに増大する。
<3>横向きパイルを吹付基盤材の表裏面に突出させずに、吹付基盤材の面方向と平行に突設したので、吹付基盤材の取扱時や敷設作業時に横向きパイルが簡単に押し潰される心配がない。
<4>編地を編成する際に、ストランド本体に沿ってパイル糸を編み込むことで、複数の横向きパイルを簡単に編み込むことができる。
<5>吹付基盤材を繊維製の編地で構成することで、金属製の金網と比べて軽量化が図れるので、吹付基盤材の敷設作業性を改善できると共に、塩害地でも使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る吹付基盤材の説明図
図2】吹付基盤材を構成するストランドの説明図であって、(A)はストランドの拡大図、(B)は(A)におけるB-Bの断面図
図3】吹付基盤材を使用した斜面の覆工方法の説明図であって、(A)は斜面に吹付基盤材を敷設する工程の説明図、(B)は斜面に覆工層を形成する工程の説明図
図4】覆工層の横断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0010】
<1>繊維製の吹付基盤材の概要
図1を参照して本発明に係る吹付基盤材10について説明する。
吹付基盤材10は、所定の間隔を隔てて配列した複数のストランド20をネット状に編成した繊維製の編地である。
隣り合う各ストランド20は一定間隔毎に編糸が交錯して交差部を形成することで、ストランド20の間に網目24を形成している。
【0011】
吹付基盤材10を構成する編地は、シングル構造でもよいし、同一構造の編地を二枚重ねて一体化した積層構造でもよい。
本例では吹付基盤材10を構成する編地がラッセル網である形態について示するが、編地はラッセル編に限定されず公知の編地が適用可能である。
ラッセル編の場合は、ラッセル機またはダブルラッセル機によって、シングル組織構造またはダブルラッセル組織構造の編地(経編ネット地)を得ることかできる。
吹付基盤材10の素材を繊維製の編地としたのは、金属製の金網と比べてモルタルとの付着性をよくするため、斜面30への敷設作業性をよくするため、および吹付基盤材10の軽量化と防錆化を図るためである。
【0012】
吹付基盤材10を構成する編地は、自立形状を維持できるように、編地全体を加熱により硬化させてコシを与える。
吹付基盤材10を構成する編地は、コシがあるだけでなく、折り曲げたときに塑性変形を許容するだけの可塑性も併せ持つ。
【0013】
<2>ストランド
図2に例示したストランド20について説明すると、ストランド20は、熱融着性の繊維素材からなるストランド本体21と、ストランド本体21に沿って編み込んだ繊維素材からなる複数のパイル糸25とを具備する。
ストランド20は、パイル糸25を省略してストランド本体21のみで構成してもよい。
ストランド本体21とパイル糸25の原糸の選定にあたり、耐アルカリ性を有する素材であることを前提とする。
【0014】
<2.1>ストランド本体
ストランド本体21は、モノフィラメント製の芯糸22と、芯糸22の周囲に配置して鎖編みをするマルチフィラメントまたはモノフィラメント製の編糸23とを少なくとも具備する。
必要に応じて、ストランド20に単数または複数の挿入糸を追加して編成する。
【0015】
芯糸22はストランド本体21に剛性を付与するための芯部材であり、モノフィラメントとした。
複数の編糸23はストランド本体21の外周面を被覆するためのマルチフィラメントであり、鎖編を形成することで芯糸22の外周を被覆する。
編糸23を鎖編とするのは、ストランド本体21の外周面を凸凹状に形成して、モルタルとの付着面力を高めるためである。
【0016】
<2.1.1>ストランド本体の素材
芯糸22には、溶融温度の異なる複数種類の樹脂繊維の素材を使用し、編糸23には熱融着性(溶融温度以上の熱処理することによって融着する性質)と熱収縮性を併有した繊維素材を使用する。
ストランド本体21の構成材22,23に熱融着性の繊維素材を使用するのは、編地を熱硬化させて吹付基盤材10に適度の硬さを付与するためである。
【0017】
<2.1.2>芯糸の素材例
芯糸22の素材例としては、PEモノフィラメント、PP(ポリプロピレン)モノフィラメント、ナイロン6モノフィラメント等を使用できる。
【0018】
<2.1.3>編糸の素材例
編糸23には、熱融着性と熱収縮性を併有した繊維素材を使用する。
編糸23の素材としては、PPマルチフィラメント、ナイロン6マルチフィラメント、ビニロンマルチフィラメント、PEモノフィラメント、PP(ポリプロピレン)モノフィラメント、ナイロン6モノフィラメント等を使用できる。
【0019】
<2.2>パイル糸
パイル糸25は、ストランド本体21の外周面に沿って複数の横向きパイル26を形成するためのマルチフィラメントである。
横向きパイル26は、モルタル等の覆工層32との付着力(付着強度)を高めるジベル機能を有する。
パイル糸25は挿入糸を兼用してもよいし、別途の専用糸を使用してもよい。
【0020】
<2.2.1>横向きパイル
横向きパイル26は、ストランド本体21の長手方向に沿ってストランド本体21(鎖編みした編糸23)の左右方向(吹付基盤材10の面方向)に向けて交互に突出する。
換言すれば、複数の横向きパイル26は網目24の内側へ向けて突設する。
公知のラッセル機を使用すれば、パイル糸25によりストランド本体21の側面に横向きパイル26を編成することが可能である。
【0021】
各横向きパイル26は、ストランド本体21から略C字形または略コ字形に延出していて、横向きパイル26の内側に貫通空間27を有する。
【0022】
横向きパイル26の露出した全長がモルタルとの付着長となる。
横向きパイル26の全長は、パイル糸25の編成時の繰り出し長さの調整等により適宜選択することが可能である。
【0023】
<2.2.2>横向きパイルの形成方向
複数の横向きパイル26を編地の面方向と平行に突設した。
換言すると、複数の横向きパイル26をストランド本体21の左右両側に向けて突設した。
複数の横向きパイル26の突設方向をこのような特定方向に揃えたのは、編吹付基盤材10の積み重ね時や斜面の敷設時に横向きパイル26の潰れを防止するためである。
例えば、横向きパイル26をストランド本体21の前後両面に設けると、吹付基盤材10の積み重ね時や斜面の敷設時に横向きパイル26が簡単に押し潰されてしまい、横向きパイル26によるモルタル等との付着機能を十分に発揮できなくなるからである。
【0024】
<2.2.3>パイル糸の素材
パイル糸25は、吹付基盤材10の編地を熱処理したときに溶融および熱収縮が生じ難い繊維素材を使用する。
パイル糸25の素材としては、芯糸22および編糸23を構成する樹脂繊維の溶融温度より高い溶融点を有する樹脂繊維が望ましい。
パイル糸25の素材としては、例えばナイロン66、ポリエステル、アラミド系繊維、ビニロン、またはセルロース系繊維、ガラス繊維等を使用できる。
【0025】
<2.2.4>樹脂繊維の融点差
パイル糸25の樹脂繊維の融点は、ストランド本体21(芯糸22および編糸23)の樹脂繊維の融点より高い関係にある。
両フィラメントに融点差を設けたのは、吹付基盤材10の編地を熱処理したときにストランド本体21のみを熱硬化をさせるためである。
【0026】
<2.3>編地の熱処理
本発明では、吹付基盤材10を構成する編地を対象とし、網目を開いた状態で所定の温度で熱処理を行うことで、編地に形態安定性と適度の硬度を付与する。
編地に所定の温度で熱処理することで、ストランド本体21を構成する芯糸22および編糸23の繊維素材が熱融着することで一体化すると共に、編地が硬くなって網目を開いた状態のまま編地の形態が安定する。
【0027】
熱処理の加熱温度は、ストランド本体21を構成する芯糸22および編糸23が熱融着する温度である。
【0028】
<2.3.1>横向きパイルの張出長について
網地を熱処理することで、ストランド本体21収縮変形するので横向きパイル26の張出長が加熱前と比べて長くなる。
【0029】
横向きパイル26の全長は、パイル糸25の編成時の繰り出し長さの調整等により適宜選択可能であるが、熱処理を利用することで、横向きパイル26の張出長をより長く設定することができる。
【0030】
<2.3.2>パイル糸の熱収縮性について
既述したようにパイル糸25の樹脂繊維の融点は、ストランド本体21(芯糸22および編糸23)の樹脂繊維の融点より高い関係にある。
そのため、編地を熱処理しても、パイル糸25はほとんど熱収縮をしないので、パイル26の張出長が短くなる心配がない。
【0031】
<3>網目
網目24の形状はひし形状または角形状(角目)の何れでもよい。
網目24の寸法は適宜の寸法を選択できるが、実用上は50mm前後が望ましい。
【0032】
[法面の覆工方法]
図3,4を参照しながら吹付基盤材10を使用した斜面30の覆工方法について説明する。
【0033】
<1>吹付基盤材の敷設工
既述したロール状に巻き取った吹付基盤材10を現場へ搬入し、吹付基盤材10を展開して斜面30に敷設する。
吹付基盤材10の敷設にあたり、アンカーピン、アンカーバー等を打ち込んで吹付基盤材10を斜面30に固定する。
【0034】
横向きパイル26が吹付基盤材10の表裏面に突出していないので、吹付基盤材10の敷設作業時に横向きパイル26が簡単に押し潰される心配がない。
さらに、吹付基盤材10は塑性変形が可能な硬さ(形態保持性)を有することから、特に斜面30に多少の起伏があっても、斜面の不陸に追従させて吹付基盤材10を敷設することができる。
【0035】
<2>吹付工
斜面30に向け、吹付基盤材10が隠れるまでモルタル等のセメント系の吹付材31を吹付けて覆工層32を形成する。
本例では吹付材31にモルタル等のセメント系吹付材を使用する形態について説明するが、吹付材31は客土等の緑化用植生基盤材であってもよい。
【0036】
本例における吹付材31の吹付工は、コンプレッサを備えた公知の吹付装置を使用できる。
図外の吹付機から延びるホースの先端に吹付ノズル33を設け、吹付ノズル33を通じて吹付材31を吹付ける。
覆工層32の厚さは10~20cm程度が好ましい。
【0037】
<2.1>ストランド本体とモルタルの付着力
吹付基盤材10に吹き付けたモルタル等の吹付材31は網目を通じて吹付基盤材10の裏面側の隅々まで入り込み、吹付基盤材10が覆工層32の補強部材として機能する。
【0038】
ストランド本体21の表面に凹凸が形成してあるので、繊維製の吹付基盤材10では、表面が滑らかな金属製の金網と比べて覆工層32との付着力が格段に高くなる。
【0039】
<2.2>横向きパイルと覆工層の付着力
特に、図4に拡大して示すように、横向きパイル26の外周面が覆工層32と付着して付着面積を増すだけでなく、ストランド本体21の外周面と横向きパイル26の間に形成した貫通空間27内に吹付材31が入り込んで編地の表裏両面の吹付材31に連続性が付与されるので、ストランド20と覆工層32との付着力(結合力)がさらに増大する。
【0040】
[他の実施例]
繊維製の吹付基盤材10は法面保護工だけでなく、トンネル内壁の保護工にも適用が可能である。
既設のトンネル内壁に沿って吹付基盤材10を取り付けた後、吹付基盤材10が隠れるまでコンクリートを打設してトンネル内壁に覆工層を形成する。
本例にあっては、既設のトンネル内壁に形成した覆工層が保護層として機能するので、トンネル内壁の剥落を防止できるとともに、覆工層の表層のひび割れを抑制することができる。
【符号の説明】
【0041】
10・・・・吹付基盤材
20・・・・ストランド
21・・・・ストランド本体
22・・・・芯糸
23・・・・編糸
25・・・・パイル糸
26・・・・横向きパイル
27・・・・貫通空間
30・・・・斜面
31・・・・吹付材
32・・・・覆工層
33・・・・吹付ノズル
【要約】
【課題】簡易な構造により、覆工層との付着力が増大する、金属製の金網に代替可能な吹付基盤材を提供すること。
【解決手段】斜面に吹付材を吹き付けて構築する層状の覆工層32に埋設して使用する繊維製の編地からなる吹付基盤材10であって、編地を構成するストランド20は表面に樹脂が被覆されていない溶融温度の異なる複数種類の樹脂繊維の素材からなり、網目を開いた状態で前記編地が熱処理されている。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4