(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】ドアハンドル
(51)【国際特許分類】
E05B 85/16 20140101AFI20230530BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
E05B85/16 Z
B60J5/04 H
(21)【出願番号】P 2022574214
(86)(22)【出願日】2022-09-06
(86)【国際出願番号】 JP2022033472
【審査請求日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2021196497
(32)【優先日】2021-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000192914
【氏名又は名称】株式会社神菱
(74)【代理人】
【識別番号】110002295
【氏名又は名称】弁理士法人M&Partners
(72)【発明者】
【氏名】新川 和秀
(72)【発明者】
【氏名】向野 努
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-243148(JP,A)
【文献】特開2008-82018(JP,A)
【文献】実公平1-9892(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 85/16
B60J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カバー部(2)とベース部(3)とを備え、前記ベース部(3)は、前記ベース部(3)の長手方向の端部側にアーム(4)を有すると共に、
長手方向に前記アーム(4)側から順に前記第1の係止部(31)
、前記第4の被係止部(34)、前記第5の被係止部(35)、前記第2の被係止部(32)、前記第3の被係止部(33)が配置され、
前記カバー部(2)は、前記第1の係止部(31)及び前記第2~第5の被係止部(32、33、34、35)とそれぞれ係合する第1の被係止部(21)及び第2~第5の係止部(22、23、24、25)を有し、
前記第1の被係止部(21)と前記第1の係止部(31)との係合、及び前記第2、第3及び第5の係止部(22、23、25)と前記第2、第3及び第5の被係止部(32、33、35)との係合は、いずれも前記ベース部(3)と前記カバー部(2)とを深さ方向に係合し、前記第4の係止部(24)と前記第4の被係止部(34)との係合は、前記ベース部(3)と前記カバー部(2)とを長手方向に係合し、前記第2の係止部(22)と前記第2の被係止部(32)との係合は、前記ベース部(3)と前記カバー部(2)とを幅方向に係合し、
前記第1の係止部(31)
と前記第1の被係止部(21)とにより、
前記カバー部(2)と前記ベース部(3)とが、前記アーム(4)が前記ベース部(3)に取り付けられる部分
より長手方向に端部側で係止されると共に、
前記第2の係止部(22)は第1のガイド面(221)を有し、
前記第2の被係止部(32)は第2のガイド面(321)を有し、
前記第1のガイド面(221)は前記第2のガイド面(321)と接し、組立作業の際に前記カバー部(2)の前記ベース部(3)への相対的な移動をガイドする
ことを特徴とするドアハンドル(1)。
【請求項2】
前記第2の係止部(22)は第3のガイド面(222)を有し、
前記第2の被係止部(32)は第4のガイド面(322)を有し、
前記第3のガイド面(222)は前記第4のガイド面(322)と接し、前記カバー部(2)と前記ベース部(3)との幅方向のアライメントをガイドすることを特徴とする請求項1記載のドアハンドル。
【請求項3】
前記第3の係止部(23)は、前記第3の被係止部(33)の前記カバー部(2)側への移動をガイドする第5のガイド面(230)を有することを特徴とする請求項1又は2記載のドアハンドル。
【請求項4】
前記第4の被係止部(34)は、前記第4の係止部(24)の先端部(241)に接触するヘッド部(341)と、前記ヘッド部(341)を支持するヘッド支持部(342)とを有し、
前記第4の係止部(24)は、前記ヘッド部(341)の移動をガイドする第6のガイド面(240)を有することを特徴とする請求項1
又は2記載のドアハンドル。
【請求項5】
前記カバー部(2)は、内壁側面にベース支持部(26)を有し、
前記ベース支持部(26)は、前記ベース部(3)の外壁側面に接することを特徴とする請求項1
又は2記載のドアハンドル。
【請求項6】
前記第3の被係止部(33)は凹部(331)を有し、
前記第3の係止部(23)は柱部(231)を有し、
前記凹部(331)は前記柱部(231)と係合することを特徴とする請求項1
又は2記載のドアハンドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のドアハンドルに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のドアパネルに設けられるドアハンドルは、カバー部とベース部(本体部)の2つの構成部品を組合わせたものが知られている。例えば、特許文献1及び特許文献2に示されるように、ドアハンドルの2つの樹脂製の構成部品であるカバー部とベース部は、互いに係止部により係止された後に、金属製のネジにより固定される必要がある。ネジをネジ孔に螺合させて2つの構成部品を連結するとともに、2つの構成部品が互いに長手方向等の移動を阻止する構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-324106号公報
【文献】特開2007-177472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ネジにより2つの構成部品を固定する場合、ネジをネジ孔に挿入し、ネジを回転して螺合して締結する作業が必要であり、組立工数及び部品点数が増加するという問題がある。一般にネジを廃して爪等のみで結合すると結合強度が不足するなどの問題も生じやすい。このため、形状に合わせた最適な設計が不可欠となる。
本発明は、十分な強度を確保しつつ、部品点数を削減し、かつ組立作業の負担を軽減することができるドアハンドルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るドアハンドル1は、カバー部2とベース部3とを備え、ベース部は、前記ベース部3の長手方向の端部側にアーム4を有すると共に、長手方向に前記アーム4側から順に第1の係止部31、前記第4の被係止部34、前記第5の被係止部35、前記第2の被係止部32、前記第3の被係止部33が配置され、前記カバー部2は、第1の係止部31と、第2~第5の被係止部35とそれぞれ係合する第1の被係止部21、及び第2~第5の係止部22~25を有し、
第1の被係止部21と第1の係止部31との係合、及び第2、第3及び第5の係止部22、23、25と第2、第3及び第5の被係止部32、33、35との係合は、いずれもベース部3とカバー部3とを深さ方向に係合し、第4の係止部24と第4の被係止部34との係合は、ベース部3とカバー部3とを長手方向に係合し、第2の係止部22と第2の被係止部32との係合は、ベース部3とカバー部2とを幅方向に係合し、
前記第1の係止部31と前記第1の被係止部(21)とにより、
前記カバー部2と前記ベース部3とが、前記アーム4が前記ベース部に取り付けられる部分より長手方向に端部側で係止されると共に、
前記第2の係止部22は第1のガイド面221を有し、
前記第2の被係止部32は第2のガイド面321を有し、
前記第1のガイド面221は前記第2のガイド面321と接し、組立作業の際に前記カバー部2の前記ベース部3への相対的な移動をガイドすることを特徴とする。
【0006】
かかる構成により、ネジが不要となり、組立作業の負担が軽減される。具体的には、長手方向、幅方向、深さ方向の全ての方向に、ドアハンドルの構成部品であるカバー部2とベース部3を固定し、連結することができる。そのため、ドアハンドル1の組立作業の負担が軽減される。
【0007】
上記構成において、前記第2の係止部は第1のガイド面221を有し、前記第2の被係止部は第2のガイド面321を有し、前記第1のガイド面は前記第2のガイド面と接し、前記カバー部の前記ベース部への相対的な移動をガイドするように構成してもよい。
【0008】
上記構成において、前記第2の係止部は第3のガイド面222を有し、
前記第2の被係止部は第4のガイド面322を有し、
前記第3のガイド面は前記第4のガイド面と接し、前記カバー部と前記ベース部との幅方向のアライメントをガイドするように構成してもよい。
【0009】
上記構成において、前記第3の係止部は、前記第3の被係止部の前記カバー部側への移動をガイドする第5のガイド面230を有するように構成してもよい。
【0010】
上記構成において、前記第3の係止部は、前記第3の被係止部の前記カバー部2側への移動をガイドする第5のガイド面230を有するように構成してもよい。
【0011】
上記構成において、前記第4の被係止部は、前記第4の係止部の先端部241に接触するヘッド部341と、前記ヘッド部を支持するヘッド支持部342とを有し、
前記第4の係止部は、前記ヘッド部の移動をガイドする第6のガイド面240を有するように構成してもよい。
【0012】
このような構成のドアハンドル1とすることにより、ドアハンドル1の組立が容易となり、作業者の負担がさらに軽減される。
【0013】
上記構成において、前記カバー部は、内壁側面にベース支持部26を有し、前記ベース支持部は、前記ベース部の外壁側面に接するように構成してもよい。
【0014】
このような構成のドアハンドル1とすることにより、ドアハンドル1の幅方向の固定がさらに強固となる。
【0015】
上記構成において、前記第3の被係止部は凹部331を有し、
前記第3の係止部は、柱部231を有し、
前記凹部は前記柱部と係合するように構成してもよい。
【0016】
このような構成のドアハンドル1とすることにより、カバー部2とベース部3の幅方向の位置合わせを、さらに正確に行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、組立作業の負担を軽減することができるドアハンドルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1(A)は車体のドアパネル100に取り付けられたドアハンドル1を示す斜視図、
図1(B)はドアハンドル1の斜視図、
図1(C)はカバー部2の斜視図、
図1(D)はベース部3の斜視図である。
【
図2】
図2は第1の被係止部21及び第1の係止部31近傍の断面図である。
【
図3】
図3(A)はドアハンドル1の断面を示し、
図3(B)はカバー部2の第2の係止部22近傍の拡大斜視図、
図3(C)はベース部3の第2の被係止部32近傍の拡大斜視図である。
【
図4】
図4(A)はベース部3の第3の被係止部33を示す斜視図であり、
図4(B)及び
図4(C)はベース部3の第3の被係止部33とカバー部2の第3の係止部23とが係合する状態を示す断面図である。
【
図5】
図5(A)はベース部3の第5の被係止部35近傍の拡大斜視図、
図5(B)はカバー部2の第5の係止部25近傍の断面図を示す。
【
図6】
図6(A)はカバー部2とベース部3とが連結された状態での第4の係止部24近傍の拡大断面、
図6(B)、(C)は、カバー部2とベース部3との組立工程において、第4の係止部24と第4の被係止部34とが係合する状況を示す拡大断面図、
図6(D)は、第4の係止部24と第4の被係止部34との係合状態を説明する平面図である。
【
図7】
図7はドアハンドル1のX-Y平面に平行な面における断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は、いずれも本発明の要旨の認定において限定的な解釈を与えるものではない。また、同一又は同種の部材については同じ参照符号を付して、説明を省略することがある。
【0020】
さらに、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件ならびにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
【0021】
(実施形態1)
以下、本発明に係るドアハンドル1の一実施形態について説明する。ドアハンドル1は、車両のドアの開閉装置の一構成部品であり、操作者がドアを開閉する際に使用する操作部である。
図1(A)は車体のドアパネル100に取り付けられたドアハンドル1を示す斜視図、
図1(B)はドアハンドル1の斜視図、
図1(C)はカバー部2の斜視図、
図1(D)はベース部3の斜視図である。
図1において、車両の前後方向(ドアハンドル1の長手方向)をX方向、X方向に垂直な車両の高さ方向をY方向(幅方向)とし、X方向とY方向に垂直で、ドアパネル100の車外から車内への方向(深さ方向)をZ方向とする。
X-Y平面は、ドアハンドル1のドアパネル100の取付箇所において、ドアパネル100と局所的に平行な面である。
図1(A)において、便宜的に左側を車両の前方側、右側を車両の後方側と称することがある。
図1(A)は、ドアハンドル1の後方側にドアパネル100を施錠するために使用する施錠部110が設けられている例を示し、図中X方向は後方から前方に向かう方向となる。なお、ドアハンドル1の取付方向は
図1(A)の例に限定されない。
【0022】
図1(A)に示すように、ドアハンドル1は車両のドアパネル100に取り付けられている。操作者は、ドアハンドル1を把持し、車両のドアの開閉操作を行うことができる。
図1(B)に示すように、ドアハンドル1はカバー部2とベース部3とを備え、カバー部2とベース部3とが連結されている。
ベース部3は車両のドアパネル100側(及びドアパネル100の内部側)に設置され、カバー部2は車両のドアパネル100の外部側に設置される。
カバー部2及びベース部3の材質は限定しないが、例えば樹脂やプラスチックから構成されることができる。
【0023】
ベース部3は、カバー部2と対向する側にアーム4(ハンドル支持部4)と軸受部5を有し、ドアハンドル1は軸受部5の周りに回動可能にアーム4に支持される。ベース部3は、ドアハンドル1を固定するための連結部7を有している。アーム4は前方側の先端部に配置され、連結部7は後方側に設置されている。
【0024】
図1(C)に示すように、カバー部2は、第1の被係止部21、第2の係止部22、第3の係止部23、第4の係止部24、及び第5の係止部25を有している。X方向に第3の係止部23、第2の係止部22、第5の係止部25、第4の係止部24、第1の被係止部21の順に配置されている。第1の被係止部21と第3の係止部23がX方向の両端に位置し、第1の被係止部21は最も前方側、第3の係止部23は最も後方側に位置する。第1の被係止部21は、カバー部2の長手方向の前方端部の先端部に設けられ、第3の係止部23は、カバー部2の長手方向の後方端部の先端近傍に設けられている。
【0025】
第1の被係止部21、第2の係止部22及び第5の係止部25は、カバー部2の長手方向に垂直な方向(Y方向)の両端部にぞれぞれ設けられている。第1の被係止部21及び第2の係止部22は、それぞれカバー部2の長手方向の前方端部側及び後方端部側に設けられている。第5の係止部25はカバー部2の長手方向の中央付近に設けられ、第1の被係止部21及び第2の係止部22の配置箇所の中間に配置されている。
【0026】
第4の係止部24及び第3の係止部23は、カバー部2の長手方向に垂直な方向(Y方向)の中央付近に設けられている。第4の係止部24及び第3の係止部23は、それぞれカバー部2の長手方向の前方側及び後方側に設けられている。
【0027】
カバー部2はアーム受部6(ハンドル支持受部6)を有し、カバー部2とベース部3とが連結された状態において、アーム4とアーム受部6とが接触し、ベース部3のカバー部2に対するX方向の相対的移動を抑制する。
【0028】
図1(D)に示すように、ベース部3は、第1の係止部31、第2の被係止部32、第3の被係止部33、第4の被係止部34及び第5の被係止部35を有しており、これらはX方向に第3の被係止部33、第2の被係止部32、第5の被係止部35、第4の被係止部34、第1の係止部31の順に配置されている。第1の係止部31と第3の被係止部33がX方向の両端に位置する。
【0029】
第1の係止部31、第2の被係止部32及び第5の被係止部35は、ベース部3の長手方向に垂直な方向(Y方向)の両端部にぞれぞれ設けられている。第1の係止部31及び第2の被係止部32は、それぞれ相対的に、ベース部3の長手方向の前方側端部側及び後方端部側に設けられている。第5の被係止部35はベース部3の長手方向の中央付近に設けられ、第1の係止部31及び第2の被係止部32の配置箇所の中間に配置されている。
【0030】
第4の被係止部34及び第3の被係止部33は、ベース部3の長手方向に垂直な方向(Y方向)の中央付近に設けられている。第4の被係止部34及び第3の被係止部33は、それぞれ相対的に、ベース部3の長手方向の前方側及び後方側に設けられている。
【0031】
カバー部2の第1の被係止部21、第2の係止部22、第3の係止部23、第4の係止部24、第5の係止部25は、それぞれベース部3の第1の係止部31、第2の被係止部32、第3の被係止部33、第4の被係止部34、第5の被係止部35と互いに係合し、カバー部2とベース部3とを連結する。
【0032】
ドアハンドル1のカバー部2とベース部3とが組み合わされた状態においては、ベース部3の上壁面300(車外側壁面300)とカバー部3の内壁面200(ドアパネル側壁面200)とが接触し、互いに押圧する。
図1より明らかなように、カバー部2の内壁面200は、カバー部2側からベース部3側に向かう方向にベース部3の上壁面300に接触する。
なお、上壁面300と内壁面200とは、少なくとも部分的に接触する。
【0033】
図2は第1の被係止部21及び第1の係止部31近傍の断面図である。
図2は、第1の被係止部21と第1の係止部31との係合を説明する図である。
図2に示すように、ベース部3の第1の係止部31をカバー部2の内側に挿入し、図中X方向にスライドさせ、第1の係止部31と第1の被係止部21とを係合させる。
第1の係止部31の当接面310(第1の当接面310)と、第1の被係止部21の当接面210(第1の被当接面210)とが接触する。当接面310と当接面210とは互いに平行であり、X-Y平面(Z方向に垂直な面)に平行に設定することができる。
【0034】
当接面210はベース3側(相対的にドアパネル100の内部側)、当接面310はカバー部2側(相対的にドアパネル100の外部側)に位置して互いに接触し、第1の被係止部21は第1の係止部31に、ベース部3側からカバー部2側に向かう方向に接触する。
なお、”ベース部3側からカバー部2側に向かう方向”とは、車両のドアパネル100の内部から外部に向かう方向を意味し、”ベース部3側からカバー部2側に向かう方向に接触する”ことは、ベース部3側からカバー部2側に向かう方向に押圧する効果を有することを意味する。
図2においてベース部3側は下方であり、カバー部2側は上方である。
【0035】
なお、ベース部3をX方向にスライドさせると、アーム4はアーム受部6に当接し、X方向(後方から前方への方向)の移動は停止する。
【0036】
図3(A)はドアハンドル1の断面を示し、
図1(B)のA-A線断面に相当する。
図3(B)はカバー部2の第2の係止部22近傍の拡大斜視図、
図3(C)はベース部3の第2の被係止部32近傍の拡大斜視図である。
【0037】
図3(B)に示すように、第2の係止部22は平坦な当接面220(第2の当接面220)を有している。
図3(C)に示すように、第2の被係止部32は平坦な当接面320(第2の被当接面320)を有している。当接面220と当接面320とは互いに平行であり、X-Y平面に平行に設定することができる。
カバー部2とベース部3とが連結された状態では、当接面220と当接面320とが接触し、互いに押圧する。
当接面220はベース部3側、当接面320はカバー部2側に位置して互いに接触し、第2の係止部22は第2の被係止部32に、ベース部3側からカバー部2側に向かう方向に接触する。
【0038】
カバー部2の第2の係止部22は傾斜面221(第1のガイド面221)を有し、ベース部3の第2の被係止部32は傾斜面321(第2のガイド面321)を有している。傾斜面221及び傾斜面321は、それぞれ当接面220及び当接面320に対して所定の角度θ1で傾斜し、互いに平行である。
カバー部2とベース部3とを組み合わせる工程において、まず傾斜面221と傾斜面321とが接触する。ベース部3をカバー部2に対して相対的にX方向に移動させると、傾斜面221及び傾斜面321は、カバー部2がベース部3に接近する方向、すなわちカバー部2のベース部3への(Z方向の)相対的な移動をガイドする。その後、第2の係止部22が第2の被係止部32上に乗り上げ、当接面220と当接面320とが当接する。
【0039】
また、傾斜面221と傾斜面321により、相対的にベース部3がカバー部2へと移動するため、第3の係止部23と第3の被係止部33との係合及び第5の係止部25と第5の被係止部35との係合をガイドする。
【0040】
さらに、第2の係止部22は側壁面222(第3のガイド面222)を有し、第2の被係止部32は側壁面322(第4のガイド面322)を有している。側壁面222及び側壁面322は、X方向(後方側から前方側に向かって)狭くなる形状を有し、ドアハンドル1の長手方向に対して所定の角度θ4傾斜している(
図1(C)、
図1(D)、
図7参照)。
ベース部3をカバー部2に対して相対的にX方向に移動させると、側壁面222と側壁面322とが接触し、ベース部3のY方向の中央とカバー部2のY方向の中央との位置合わせをガイドする。すなわち、第2の係止部22と第2の被係止部32の係合箇所において、ベース部3はカバー部2の幅方向の中央へと誘導され、ベース部3とカバー部2との幅方向のアライメント(位置合わせ)をガイドする。
側壁面222と側壁面322とが互いに押圧するため、ドアハンドル1を組立後において、ベース部3はカバー部2の中央に押圧される。その結果、ベース部3とカバー部2の幅方向(Y方向及び-Y方向)の移動を抑制する。従って、カバー部2は、側壁面222と側壁面322とを介してベース部3を幅方向(Y方向及び-Y方向)に支持する。
【0041】
なお、”Y方向及び-Y方向”の移動等を、簡単のため”Y方向”の移動等と称することがある。”X方向”、”Z方向”においても同様である。
【0042】
図4(A)はベース部3の第3の被係止部33を示す斜視図であり、
図4(B)及び
図4(C)はベース部3の第3の被係止部33とカバー部2の第3の係止部23とが係合する状態を示す断面図である。ベース部3は第3の被係止部33近傍の断面のみが示されている。
図4(A)において、第3の被係止部33の近傍は点線で示されている。
【0043】
図4(A)に示すように、第3の被係止部33には凹部331が、ベース部3のY方向の中央に設けられている。
図4(B)、(C)及び
図3(B)に示すように第3の係止部23には、柱部231がカバー部2のY方向の中央に設けられている。
第3の係止部23は当接面232(第3の当接面232)を有し、第3の被係止部33は当接面332(第3の被当接面332)を有している。当接面232及び当接面332は互いに平行であり、X-Y平面に平行に設定することができる。第3の係止部23は傾斜面230(第5のガイド面230)を有しており、傾斜面230は、当接面232に対して所定の角度θ2で傾斜している。
【0044】
図4(B)に示すように、ベース部3をカバー部2に対して相対的にX方向に移動させると、第3の被係止部33の先端当接部330が第3の係止部23の傾斜面230に接触し、その後傾斜面230に案内されて、カバー部2側へとガイドされる。その結果、カバー部2はベース部3に対してZ方向の相対的な移動がガイドされる。
図4(C)に示すように第3の係止部23がX方向に相対的に移動し、第3の係止部23の当接面232と第3の被係止部33の当接面332とが接触し、第3の係止部23と第3の被係止部33とが係合する。
当接面232はベース部3側、当接面332はカバー部2側に位置して互いに接触し、第3の係止部23は第3の被係止部33に、ベース部3側からカバー部2側に向かう方向に接触する。
【0045】
また、第3の係止部23の柱部231が第3の被係止部33の凹部331に嵌合され、第3の被係止部33(特に凹部331)は、第3の係止部23側から第4の係止部24側に向かう方向に、第3の係止部23(特に柱部231)と係合する。
柱部231が凹部331に挾まれるように支持される(峡持される)ため、ベース部3とカバー部2のY方向の中央が、互いに位置合わせ(アライメント)される。ベース部3とカバー部2のX方向の位置合わせがさらに正確に実行され得る。
また、凹部331と柱部231との係合により、柱部231を有するカバー部2が後方に移動することが規制されるよう構成することが可能である。
【0046】
カバー部2とベース部3とが連結された状態では、当接面232と当接面332とが接触し、互いに押圧する。
図4に示す領域において、カバー部2とベース部3とを連結する圧力は、当接面232と当接面332との間、及び当接面220と当接面320との間で分散される。
【0047】
図5(A)はベース部3の第5の被係止部35近傍の拡大斜視図、
図5(B)はカバー部2の第5の係止部25近傍の断面図を示す。
図5(B)は
図1(C)のB-B断面に対応する。
【0048】
図5(A)に示すように、第5の被係止部35はベース部3の壁面から内部に向かって突出する。第5の被係止部35は当接面350(第4の被当接面350)を有している。
図5(B)に示すように、第5の係止部25は断面がL字形状であり、カバー部2の壁面側が開放している。第5の係止部25は当接面250(第4の当接面250)を有している。
ベース部3とカバー部2とを組み合わせ、相対的にベース部3をカバー部2に対してX方向にスライドさせることにより、第5の係止部25と第5の被係止部35とが係合し、当接面350と当接面250とが互いに接触する。カバー部2とベース部3とが連結された状態では、当接面350と当接面250とが接触し、互いに押圧する。
当接面250はベース部3側、当接面350はカバー部2側に位置して互いに接触し、第5の係止部25は第5の被係止部35に、ベース部3側からカバー部2側に向かう方向に接触する。
【0049】
図6(A)はカバー部2とベース部3とが連結された状態での第4の係止部24近傍の拡大断面、
図6(B)、(C)は、カバー部2とベース部3との組立工程において、第4の係止部24と第4の被係止部34とが係合する状況を示す拡大断面図、
図6(D)は、第4の係止部24と第4の被係止部34との係合状態を説明する平面図である。
図6(D)は、X-Y平面に平行な面での断面図に相当する。
【0050】
第4の被係止部34はT字形状をなし、ヘッド部341(ストッパ部341)とヘッド支持部342(ストッパ支持部342)を有する(
図6(D))。
図6(A)に示すように、第4の係止部24は所定の角度θ3で傾斜する傾斜面240(第6のガイド面240)を有している。
【0051】
図6(B)に示すように、カバー部2とベース部3とを互いに合わせた後に、図中相対的にX方向にベース部3を移動させると、第4の係止部24の傾斜面240に沿って、第4の被係止部34が弾性的に変形して屈曲し、ヘッド部341がZ方向に移動する。
さらにベース部3をカバー部2に対してX方向に移動させると、第4の被係止部34のヘッド部341が第4の係止部24を超える。このとき、ベース部3をカバー部2に押圧することにより、ヘッド部341は-Z方向に移動し、第4の被係止部34は弾性変形から解放され元の位置に戻る。
図6(C)の状態においては、ボディー部342は第4の係止部24により挟まれる(
図6(D)参照)。従って、ボディー部342の両側の開放部343に、第4の係止部24が収容される。
第4の被係止部34のヘッド部341は、前方側から第4の係止部24の前方側の先端部241と接触し、第4の係止部24のX方向に対するストッパとして機能する。
第4の被係止部34は、前方から後方に向かう方向(第4の係止部24側から第3の係止部23側に向かう方向)に第4の係止部24と係合する。従って、ヘッド部341と先端部241との係合により、カバー部2のベース部3に対するX方向、特に後方から前方に向かう方向への相対的移動が抑制される。
【0052】
図7はドアハンドル1のX-Y平面に平行な面における一断面を示す。
図7においてカバー部2の第1の被係止部21、第2の係止部22、第3の係止部23、第4の係止部24及び第5の係止部25、並びにベース部3の第1の係止部31、第2の被係止部32、第3の被係止部33、第4の被係止部34及び第5の被係止部35の配置を示す。
なお、第1の被係止部21、第1の係止部31、第2の係止部22、第2の被係止部32及び第3の被係止部33は点線で示す。
【0053】
カバー部2の第1の被係止部21、第2の係止部22、第3の係止部23、第4の係止部24、及び第5の係止部25は、カバー部2の長手方向に垂直な方向の中心を通り、長手方向に延びる中心線(C-C線)に対して対称に配置されている。
また、ベース部3の第1の係止部31、第2の被係止部32、第3の被係止部33、第4の被係止部34及び第5の被係止部35も中心線(C-C線)に対して対称に配置されている。
【0054】
カバー部2の第3の係止部23とベース部3の第3の被係止部33との係合により、ベース部3のカバー部2に対するX方向(後方から前方へ向かう方向)の相対移動が抑制される。一方、カバー部2の第4の係止部24とベース部3の第4の被係止部34との係合により、ベース部3のカバー部2に対する-X方向(前方から後方へ向かう方向)の相対移動が抑制される。
その結果、ベース部3のカバー部2に対するX方向及び-X方向の移動(変位)が抑制され、ベース部3とカバー部2とがX方向に固定される。
なお、第5の係止部25と第5の被係止部35との係合によっても、ベース部3のカバー部2に対するX方向の相対移動が抑制されるよう構成することも可能である。
また、上述のように、アーム4とアーム受部6とによっても、ベース部3のカバー部2に対するX方向の相対的移動が抑制され得る。
【0055】
第2の係止部22と第2の被係止部32との係合は、カバー部2とベース部3とのY方向の相対的移動を抑制し、カバー部2とベース部3とがY方向に固定される。
さらにカバー部2は、その内壁側面に凸部26(ベース支持部26)を有している。
凸部26はベース部3の外壁側面に接することにより、ベース部3のY方向の位置を確定することができる。ベース部3のカバー部2内のY方向(及び-Y方向)の移動(変位)を抑制することができ、さらにY方向の連結が強固となる。
【0056】
ベース部3の上壁面300とカバー部3の内壁上面200との接触により(
図1(C)、(D)参照)、ベース部3のカバー部2に対する-Z方向(車内から車外に向かう方向)の移動が抑制される。
一方、第1の被係止部21と第1の係止部31との係合、第2の係止部22と第2の被係止部32との係合、第3の係止部23と第3の被係止部33との係合及び第5の係止部25と第5の被係止部35との係合により、ベース部3のカバー部2に対するZ方向(ベース部3をカバー部3に押圧する方向)の移動が抑制され、ベース部3とカバー部2との離隔を防止し、密着させる機能を有する。
従って、ベース部3のカバー部2内のZ方向(及び-Z方向)の移動(変位)が抑制され、ベース部3とカバー部2とがZ方向に固定される。
【0057】
このように、複数の箇所において、ベース部3とカバー部2とが、X方向、Y方向、及びZ方向に連結(係合)されて、相対的な移動(変位)が抑制され、ベース部3とカバー部2とが全方向に対して固定される。
【0058】
また、第1の被係止部21と第1の係止部31との係合箇所、第4の係止部24と第4の被係止部34との係合箇所、第5の係止部25と第5の被係止部35との係合箇所と、第3の係止部23と第3の被係止部33との係合箇所と、係合箇所をX方向に互いに間隔(L1、L2、L3)を置いて配置し、係合箇所の応力を分散することにより、応力に対する耐性を確保することができる。
【0059】
以上のように、ネジを用いることなくX方向、Y方向、Z方向に対して、カバー部2とベース部3との相対的移動(変位)を抑制し、ガタを防止して、カバー部2とベース部3とを連結固定することができる。
【0060】
(ドアハンドルの組立手順)
以下、ドアハンドル1の組立手順について説明する。
まず、ベース部3の第1の係止部31をカバー部2の第1の被係止部21の内側に挿入する。
その後、ベース部3をカバー部2に対して相対的にX方向に移動させ第1の係止部31と第1の被係止部21とを係合させるとともに、第2の係止部22と第2の被係止部32とを係合させる。第2の係止部22の傾斜面221と第2の被係止部32の傾斜面321との作用により、ベース部3のカバー部2側への移動がガイドされる。このとき、第2の係止部22の側壁面222と第2の被係止部32の側壁面322により、ベース部3とカバー部2とのY方向の位置合わせを容易にする。
さらにベース部3をカバー部2に対して相対的にX方向に移動させ、第3の係止部23と第3の被係止部33とを係合させるとともに、第5の係止部25と第5の被係止部35とを係合させる。
なお、第2の係止部22と第2の被係止部32との係合、第3の係止部23と第3の被係止部33との係合、第5の係止部25と第5の被係止部35との係合(嵌合)は同時に行うことができる。
ベース部3をカバー部2に対して相対的にX方向に移動させることにより、第4の被係止部34は、第4の係止部24の傾斜面240に沿って弾性的に変位し、第4の被係止部34のヘッド部341が第4の係止部24を通過した時点で、ベース部3、特に第4の被係止部34をカバー部2に対して相対的に押圧し、第4の被係止部34と第4の係止部24とを係合させる。
以上の組立手順によって、カバー部2とベース部3との連結固定が完了し、ドアハンドル1の組立が完了する。
【0061】
ネジを用いることなくカバー部2とベース部3との連結固定が可能であり、さらにY方向及びZ方向の位置合わせをガイドする複数のガイド面を有しているため、組立作業が容易であり、作業者の作業負担を軽減することができ生産性を向上させることができる。また、ロボットによる自動化も可能である。
カバー部2とベース部3にネジを受けるための金属部品を圧入等により設ける必要がなく、カバー部2とベース部3自体の製造も容易となる。
また、金属製のネジを用いることなくカバー部2及びベース部3とを連結固定するため、カバー部2及びベース部3とを同一材料で構成することにより、材料のリサイクルに寄与することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明によれば、十分な強度を確保しつつ、部品点数を削減し、かつ組立作業の負担を軽減することができるドアハンドルを提供することができ、ドアハンドルの生産性を向上させることが可能となる点で、産業上の利用可能性は大きい。
【符号の説明】
【0063】
1 ドアハンドル
2 カバー部
200 内壁上面(ドアパネル側壁面)
21 第1の被係止部
210 当接面(第1の被当接面)
220 当接面(第2の当接面)
22 第2の係止部
221 傾斜面(第1のガイド面)
222 側壁面(第3のガイド面)
23 第3の係止部
230 傾斜面(第5のガイド面)
231 柱部
232 当接面(第3の当接面)
24 第4の係止部
240 傾斜面(第6のガイド面)
241 先端部
25 第5の係止部
250 当接面(第4の当接面)
3 ベース部
300 上壁面(車外側壁面)
31 第1の係止部
310 当接面(第1の当接面)
32 第2の被係止部
320 当接面(第2の被当接面)
321 傾斜面(第2のガイド面)
322 側壁面(第4のガイド面)
33 第3の被係止部
330 先端当接部
331 凹部
332 当接面(第3の被当接面)
34 第4の被係止部
341 ヘッド部(ストッパ部)
342 ヘッド支持部(ストッパ支持部)
343 開放部
35 第5の被係止部
350 当接面(第4の被当接面)
4 アーム(ハンドル支持部)
5 軸受部
6 アーム受部(ハンドル支持受部)
7 連結部
100 ドアパネル
110 施錠部
【要約】
【課題】ネジが不要で組立作業の負担を軽減できるドアハンドルを提供する。
【解決手段】
ドアハンドル1は、カバー部2とベース部3とを備える。ベース部は、アーム4を有すると共に、長手方向に前記アーム4側から順に第1の係止部31及び第2から第5の被係止部32~35が配置され、前記カバー部2は、第1の係止部31及び第2~第5の被係止部35とそれぞれ係合する、第1の被係止部21、及び第2~第5の係止部25を有する。第1の被係止部21と第1の係止部31との係合、及び第2、第3及び第5の係止部22~25と第2、第3及び第5の被係止部32~35との係合は、いずれもベース部3とカバー部3とを深さ方向に係合し、第4の係止部24と第4の被係止部34との係合は、ベース部3とカバー部2とを長手方向に係合し、第2の係止部22と第2の被係止部32との係合は、ベース部3とカバー部2とを幅方向に係合する。
【選択図】
図1