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特許7288161新規ジヒドロキナゾリノン系化合物又はその薬理学的に許容される塩、及び細胞増殖阻害剤
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  • 特許-新規ジヒドロキナゾリノン系化合物又はその薬理学的に許容される塩、及び細胞増殖阻害剤 図1A
  • 特許-新規ジヒドロキナゾリノン系化合物又はその薬理学的に許容される塩、及び細胞増殖阻害剤 図1B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-30
(45)【発行日】2023-06-07
(54)【発明の名称】新規ジヒドロキナゾリノン系化合物又はその薬理学的に許容される塩、及び細胞増殖阻害剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/517 20060101AFI20230531BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20230531BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20230531BHJP
   A61K 31/5383 20060101ALI20230531BHJP
   C07D 403/04 20060101ALI20230531BHJP
   C07D 471/04 20060101ALI20230531BHJP
   C07D 401/14 20060101ALI20230531BHJP
   C07D 487/06 20060101ALI20230531BHJP
   C07D 498/06 20060101ALI20230531BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230531BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230531BHJP
   A61P 31/22 20060101ALI20230531BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230531BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230531BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20230531BHJP
【FI】
A61K31/517
A61K31/5377
A61K31/519
A61K31/5383
C07D403/04 CSP
C07D471/04 104Z
C07D401/14
C07D487/06
C07D498/06
A61P43/00 105
A61P35/00
A61P31/22
A61P11/00
A61P25/00
A61P21/04
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019562128
(86)(22)【出願日】2018-12-26
(86)【国際出願番号】 JP2018047944
(87)【国際公開番号】W WO2019131798
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-11-22
(31)【優先権主張番号】P 2017252179
(32)【優先日】2017-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503359821
【氏名又は名称】国立研究開発法人理化学研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000173588
【氏名又は名称】公益財団法人がん研究会
(73)【特許権者】
【識別番号】000006884
【氏名又は名称】株式会社ヤクルト本社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 稔
(72)【発明者】
【氏名】清宮 啓之
(72)【発明者】
【氏名】八代田 陽子
(72)【発明者】
【氏名】鷲塚 健一
(72)【発明者】
【氏名】白井 文幸
(72)【発明者】
【氏名】吉本 暢子
(72)【発明者】
【氏名】風見 純一
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】RN 1311504-77-4 REGISTRY,DATABASE REGISTRY [ONLINE],2011年07月06日
【文献】RN 1252133-21-3 REGISTRY,DATABASE REGISTRY [ONLINE],2010年11月09日
【文献】RN 1223730-46-8 REGISTRY,DATABASE REGISTRY [ONLINE],2010年05月14日
【文献】RN 1186616-13-6 REGISTRY,DATABASE REGISTRY [ONLINE],2009年09月30日
【文献】RN 1011419-04-7 REGISTRY,DATABASE REGISTRY [ONLINE],2008年04月01日
【文献】RN 1006996-95-7 REGISTRY,DATABASE REGISTRY [ONLINE],2008年03月07日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
【化1】
[一般式(1)中、
及びJは、それぞれ、CH又はNを示し、ただし、J及びJがいずれもCHを示すことはなく、
rは、0~4を示し、
101は、rが2以上の場合には互いに同一でも異なっていてもよく、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルキル基、OR111、又は次式:-N(R112a)-R112bで示される基を示し、
111、R112a及びR112bは、それぞれ独立して、水素原子又はC1-6アルキル基であり、
sは、0~5を示し、
102は、sが2以上の場合には互いに同一でも異なっていてもよく、ハロゲン原子、C1-6アルキル基、OR113、次式:-N(R114a)-R114bで示される基、次式:-NH-C(=O)-R115で示される基、次式:-C(=O)-R116で示される基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、ニトロ基、又はシアノ基を示し、
113は、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアリールアルキル基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基であり、
114a及びR114bは、それぞれ独立して、水素原子又はC1-6アルキル基であり、
115は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、又は次式:-NH-R121で示される基であり、
116は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、OR122、又は次式:-N(R123a)-R123bで示される基であり、
121は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基であり、
122は、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基であり、
123a及びR123bは、それぞれ独立して、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、若しくは置換されていてもよいヘテロアリール基であるか、又は、R123a及びR123bが一体となって環状アミンを形成しており、
103は、水素原子、C1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基、又はC3-6シクロアルキルC1-6アルキル基を示し、
101が8位の位置にある場合には当該R101とR103とが一体となって5~7員環のヘテロ環を形成していてもよい。]
で示される化合物又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する細胞増殖阻害剤。
【請求項2】
前記一般式(1)中、
rが0であるか、又は、rが1であり、かつR101が7位若しくは8位の位置にあり、かつ当該R101がハロゲン原子で置換されていてもよいC1-3アルキル基若しくはヒドロキシ基を示すか、又は、rが1であり、かつR101が8位の位置にあり、かつ当該R101とR103とが一体となって5~6員環のヘテロ環を形成している、請求項1に記載の細胞増殖阻害剤。
【請求項3】
前記一般式(1)中、
103が、水素原子、C1-3アルキル基、若しくはC3-6シクロアルキルC1-3アルキル基を示すか、又は、rが1であり、かつR101が8位の位置にあり、かつ当該R101とR103とが一体となって5~6員環のヘテロ環を形成している、請求項1又は2に記載の細胞増殖阻害剤。
【請求項4】
前記一般式(1)中、
sが0であるか、又は、sが1であり、かつR102が、ハロゲン原子、R113が置換されていてもよいC1-3アルキル基であるOR113、若しくは置換されていてもよいアリール基を示す、請求項1~3のうちのいずれか一項に記載の細胞増殖阻害剤。
【請求項5】
前記一般式(1)中、J及びJがいずれもNを示す、請求項1~4のうちのいずれか一項に記載の細胞増殖阻害剤。
【請求項6】
タンキラーゼ阻害剤である、請求項1~5のうちのいずれか一項に記載の細胞増殖阻害剤。
【請求項7】
微小管阻害剤である、請求項1~6のうちのいずれか一項に記載の細胞増殖阻害剤。
【請求項8】
医薬組成物である、請求項1~7のうちのいずれか一項に記載の細胞増殖阻害剤。
【請求項9】
悪性腫瘍、単純ヘルペスウイルス(Herpes simplex virus)感染症、エプスタイン・バーウイルス(Epstein-Barr virus)感染症、肺線維症、多発性硬化症、及び筋委縮性側索硬化症のうちの少なくとも1種の予防又は治療剤である、請求項8に記載の細胞増殖阻害剤。
【請求項10】
下記一般式(1a):
【化2】
[一般式(1a)中、
及びJは、それぞれ、CH又はNを示し、ただし、J及びJがいずれもCHを示すことはなく、
rは、0~4を示し、
101は、rが2以上の場合には互いに同一でも異なっていてもよく、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルキル基、OR111、又は次式:-N(R112a)-R112bで示される基を示し、
111、R112a及びR112bは、それぞれ独立して、水素原子又はC1-6アルキル基であり、
sは、0~5を示し、
102は、sが2以上の場合には互いに同一でも異なっていてもよく、ハロゲン原子、C1-6アルキル基、OR113、次式:-N(R114a)-R114bで示される基、次式:-NH-C(=O)-R115で示される基、次式:-C(=O)-R116で示される基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、ニトロ基、又はシアノ基を示し、
113は、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアリールアルキル基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基であり、
114a及びR114bは、それぞれ独立して、水素原子又はC1-6アルキル基であり、
115は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、又は次式:-NH-R121で示される基であり、
116は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、OR122、又は次式:-N(R123a)-R123bで示される基であり、
121は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基であり、
122は、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基であり、
123a及びR123bは、それぞれ独立して、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、若しくは置換されていてもよいヘテロアリール基であるか、又は、R123a及びR123bが一体となって環状アミンを形成しており、
103は、水素原子、C1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基、又はC3-6シクロアルキルC1-6アルキル基を示し、
101が8位の位置にある場合には当該R101とR103とが一体となって5~7員環のヘテロ環を形成していてもよい。
ただし、JがCHを示し、かつJがNを示し、かつrが0であり、かつR103が水素原子若しくはメチル基であり、かつR102がp位にあり、かつ当該R102がメトキシ基である場合を除く。」
で示される化合物(但し、2-[3-(3-メトキシフェニル)-1H-ピラゾール-4-イル]-2,3-ジヒドロキナゾリン-4-オン、2-[3-(4-メトキシフェニル)-1H-ピラゾール-4-イル]-1-メチル-2,3-ジヒドロキナゾリン-4-オン、2-[3-(4-メトキシフェニル)-1H-ピラゾール-4-イル]-2,3-ジヒドロキナゾリン-4-オン、2-[3-(4-メチルフェニル)-1H-ピラゾール-4-イル]-2,3-ジヒドロキナゾリン-4-オン、2-[3-(4-フルオロフェニル)-1H-ピラゾール-4-イル]-2,3-ジヒドロキナゾリン-4-オン、及び2-[3-(4-クロロフェニル)-1H-ピラゾール-4-イル]-2,3-ジヒドロキナゾリン-4-オンを除く)又はその薬理学的に許容される塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規化合物又はその薬理学的に許容される塩、及び細胞増殖阻害剤に関し、より具体的には、タンキラーゼ阻害活性及び/又は微小管阻害活性を有する、新規なジヒドロキナゾリノン系化合物又はその薬理学的に許容される塩、並びに、ジヒドロキナゾリノン系化合物又はその薬理学的に許容される塩を含有する、タンキラーゼ阻害剤、微小管阻害剤、及び医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ(ADP-リボシル)化は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを基質としてタンパク質のグルタミン酸若しくはアスパラギン酸残基にADP-リボースを連鎖付加する生化学反応である。生成されるポリ(ADP-リボース)鎖は、最長で200個近くのADP-リボースで構成される。ポリ(ADP-リボシル)化反応を触媒する酵素として、ポリ(ADP-リボシル)化酵素(PARP)ファミリーが知られている。
【0003】
PARPファミリーのうち、PARP-5a及びPARP-5bは、それぞれタンキラーゼ-1(tankyrase-1)及びタンキラーゼ-2(tankyrase-2)と呼ばれる。通常は、両者の総称として単にタンキラーゼと呼ばれることが多い。タンキラーゼは、ポリ(ADP-リボシル)化するタンパク質を認識するアンキリン領域、自己多量体化に関わるsterile alpha motif(SAM)領域、ポリ(ADP-リボシル)化反応を司るPARP触媒領域で構成される。
【0004】
タンキラーゼは、分子内のアンキリン領域を介してさまざまなタンパク質と結合し、これらをポリ(ADP-リボシル)化する。タンキラーゼ結合タンパク質としては、TRF1、NuMA、Plk1、Miki、Axin、TNKS1BP1、IRAP、Mcl-1、3BP2などが挙げられる。タンキラーゼはこれらのタンパク質をポリ(ADP-リボシル)化することにより、当該タンパク質の生理機能を調節している。よって、タンキラーゼの阻害は、当該タンパク質の生理機能である細胞増殖、細胞分化、組織形成などの制御に有用であると考えられている。
【0005】
タンキラーゼ阻害活性を有するタンキラーゼ阻害化合物としては、例えば、非特許文献1(Huang SM.et al.,Nature,Vol.461,pp.614-620,2009)に記載の化合物XAV939、特許文献1(国際公開第2013/117288号)及び特許文献2(国際公開第2013/182580号)に記載の化合物、非特許文献2(Michael D.Shultz et al.,Journal of Medicinal Chemistry,56,pp.6495-6511,2013)に記載のNVP-TNKS656、非特許文献3(Andrew Voronkov.et al.,Journal of Medicinal Chemistry,56,pp.3012-3023,2013)及び特許文献3(国際公開第2012/076898号)に記載のG007-LK、などが知られている。
【0006】
微小管は、細胞骨格を形成するタンパク質であり、細胞分裂期における紡錘体の形成、細胞形態の形成・維持、細胞内小器官の配置・物質輸送、神経細胞での軸索輸送などに関与している。微小管はαサブユニット及びβサブユニットから構成されるチューブリン二量体からなり、この二量体が集合して微小管が形成される過程を重合、微小管がチューブリンに戻る過程を脱重合という。
【0007】
微小管を阻害する微小管阻害剤としては、前記重合を促進して微小管を安定化・過剰形成させる微小管脱重合阻害剤と、前記重合を阻害する微小管重合阻害剤とが知られており、これらはいずれも、微小管重合の動的平衡状態を破壊することによって細胞周期をM期に停止させて細胞増殖を抑制する。このような微小管阻害剤としては、パクリタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ドセタキセル、カバジタキセル、エリブリンなどが知られており、白血病や悪性リンパ腫、悪性腫瘍に対して抗腫瘍効果を示す薬剤として市販されている。
【0008】
このようなタンキラーゼ阻害剤や微小管阻害剤は、線維肉腫、卵巣がん、グリオブラストーマ、膵臓がん、乳がん、アストロサイトーマ、肺がん、胃がん、肝細胞がん、多発性骨髄腫、大腸がん、膀胱がん、白血病、単純ヘルペスウイルス(Herpes simplex virus)やエプスタイン・バーウイルス(Epstein-Barr virus)等の感染症、肺線維症等の線維症、ケルビズム症、多発性硬化症、筋委縮性側索硬化症、皮膚・軟骨損傷、及び代謝性疾患などの治療や、がんの転移抑制に効果を示す可能性がある。このような疾患については、これらを予防・治療するための新たな医薬品の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2013/117288号
【文献】国際公開第2013/182580号
【文献】国際公開第2012/076898号
【非特許文献】
【0010】
【文献】Huang SM.et al.,Nature,Vol.461,pp.614-620,2009
【文献】Michael D.Shultz et al.,Journal of Medicinal Chemistry,56,pp.6495-6511,2013
【文献】Andrew Voronkov.et al.,Journal of Medicinal Chemistry,56,pp.3012-3023,2013
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、優れたタンキラーゼ阻害活性及び/又は微小管阻害活性を有し、例えば、がんなどの増殖性疾患の治療及び予防に有用であり、その他ヘルペスウイルスや多発性硬化症、糖代謝疾患、皮膚・軟骨損傷、肺線維症などの治療にも有用な新規化合物及びその薬理学的に許容される塩、並びに、優れたタンキラーゼ阻害活性及び/又は微小管阻害活性を有する細胞増殖阻害剤、タンキラーゼ阻害剤、微小管阻害剤、及び医薬組成物を提供することを目的とする。さらには、前記新規化合物及びその薬理学的に許容される塩の製造方法、その製造に有用な中間体化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、特定の構造を有するジヒドロキナゾリノン系化合物及びその薬理学的に許容される塩が、優れたタンキラーゼ阻害活性及び/又は微小管阻害活性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、以下の発明を包含する。
[1]
下記一般式(1):
【化1】
【0014】
[一般式(1)中、
及びJは、それぞれ、CH又はNを示し、ただし、J及びJがいずれもCHを示すことはなく、
rは、0~4を示し、
101は、rが2以上の場合には互いに同一でも異なっていてもよく、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルキル基、OR111、又は次式:-N(R112a)-R112bで示される基を示し、
111、R112a及びR112bは、それぞれ独立して、水素原子又はC1-6アルキル基であり、
sは、0~5を示し、
102は、sが2以上の場合には互いに同一でも異なっていてもよく、ハロゲン原子、C1-6アルキル基、OR113、次式:-N(R114a)-R114bで示される基、次式:-NH-C(=O)-R115で示される基、次式:-C(=O)-R116で示される基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、ニトロ基、又はシアノ基を示し、
113は、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアリールアルキル基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基であり、
114a及びR114bは、それぞれ独立して、水素原子又はC1-6アルキル基であり、
115は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、又は次式:-NH-R121で示される基であり、
116は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、OR122、又は次式:-N(R123a)-R123bで示される基であり、
121は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基であり、
122は、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基であり、
123a及びR123bは、それぞれ独立して、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、若しくは置換されていてもよいヘテロアリール基であるか、又は、R123a及びR123bが一体となって環状アミンを形成しており、
103は、水素原子、C1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基、又はC3-6シクロアルキルC1-6アルキル基を示し、
101が8位の位置にある場合には当該R101とR103とが一体となって5~7員環のヘテロ環を形成していてもよい。]
で示される化合物又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する細胞増殖阻害剤。
[2]
前記一般式(1)中、
rが0であるか、又は、rが1であり、かつR101が7位若しくは8位の位置にあり、かつ当該R101がハロゲン原子で置換されていてもよいC1-3アルキル基若しくはヒドロキシ基を示すか、又は、rが1であり、かつR101が8位の位置にあり、かつ当該R101とR103とが一体となって5~6員環のヘテロ環を形成している、[1]に記載の細胞増殖阻害剤。
[3]
前記一般式(1)中、
103が、水素原子、C1-3アルキル基、若しくはC3-6シクロアルキルC1-3アルキル基を示すか、又は、rが1であり、かつR101が8位の位置にあり、かつ当該R101とR103とが一体となって5~6員環のヘテロ環を形成している、[1]又は[2]に記載の細胞増殖阻害剤。
[4]
前記一般式(1)中、
sが0であるか、又は、sが1であり、かつR102が、ハロゲン原子、R113が置換されていてもよいC1-3アルキル基であるOR113、若しくは置換されていてもよいアリール基を示す、[1]~[3]のうちのいずれか一項に記載の細胞増殖阻害剤。
[5]
前記一般式(1)中、J及びJがいずれもNを示す、[1]~[4]のうちのいずれか一項に記載の細胞増殖阻害剤。
[6]
タンキラーゼ阻害剤である、[1]~[5]のうちのいずれか一項に記載の細胞増殖阻害剤。
[7]
微小管阻害剤である、[1]~[6]のうちのいずれか一項に記載の細胞増殖阻害剤。
[8]
医薬組成物である、[1]~[7]のうちのいずれか一項に記載の細胞増殖阻害剤。
[9]
悪性腫瘍、単純ヘルペスウイルス(Herpes simplex virus)感染症、エプスタイン・バーウイルス(Epstein-Barr virus)感染症、肺線維症、多発性硬化症、及び筋委縮性側索硬化症のうちの少なくとも1種の予防又は治療剤である、[8]に記載の細胞増殖阻害剤。
[10]
下記一般式(1a):
【0015】
【化2】
【0016】
[一般式(1a)中、
及びJは、それぞれ、CH又はNを示し、ただし、J及びJがいずれもCHを示すことはなく、
rは、0~4を示し、
101は、rが2以上の場合には互いに同一でも異なっていてもよく、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルキル基、OR111、又は次式:-N(R112a)-R112bで示される基を示し、
111、R112a及びR112bは、それぞれ独立して、水素原子又はC1-6アルキル基であり、
sは、0~5を示し、
102は、sが2以上の場合には互いに同一でも異なっていてもよく、ハロゲン原子、C1-6アルキル基、OR113、次式:-N(R114a)-R114bで示される基、次式:-NH-C(=O)-R115で示される基、次式:-C(=O)-R116で示される基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、ニトロ基、又はシアノ基を示し、
113は、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアリールアルキル基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基であり、
114a及びR114bは、それぞれ独立して、水素原子又はC1-6アルキル基であり、
115は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、又は次式:-NH-R121で示される基であり、
116は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、OR122、又は次式:-N(R123a)-R123bで示される基であり、
121は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基であり、
122は、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基であり、
123a及びR123bは、それぞれ独立して、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、若しくは置換されていてもよいヘテロアリール基であるか、又は、R123a及びR123bが一体となって環状アミンを形成しており、
103は、水素原子、C1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基、又はC3-6シクロアルキルC1-6アルキル基を示し、
101が8位の位置にある場合には当該R101とR103とが一体となって5~7員環のヘテロ環を形成していてもよい。
【0017】
ただし、JがCHを示し、かつJがNを示し、かつrが0であり、かつR103が水素原子若しくはメチル基であり、かつR102がp位にあり、かつ当該R102がメトキシ基である場合を除く。]
で示される化合物又はその薬理学的に許容される塩。
[11]
前記一般式(1a)中、
rが0であるか、又は、rが1であり、かつR101が7位若しくは8位の位置にあり、かつ当該R101がハロゲン原子で置換されていてもよいC1-3アルキル基若しくはヒドロキシ基を示すか、又は、rが1であり、かつR101が8位の位置にあり、かつ当該R101とR103とが一体となって5~6員環のヘテロ環を形成している、[10]に記載の化合物又はその薬理学的に許容される塩。
[12]
前記一般式(1a)中、
103が、水素原子、C1-3アルキル基、若しくはC3-6シクロアルキルC1-3アルキル基を示すか、又は、rが1であり、かつR101が8位の位置にあり、かつ当該R101とR103とが一体となって5~6員環のヘテロ環を形成している、[10]又は[11]に記載の化合物又はその薬理学的に許容される塩。
[13]
前記一般式(1a)中、
sが0であるか、又は、sが1であり、かつR102が、ハロゲン原子、R113が置換されていてもよいC1-3アルキル基であるOR113、若しくは置換されていてもよいアリール基を示す、[10]~[12]のうちのいずれか一項に記載の化合物又はその薬理学的に許容される塩。
[14]
[10]~[13]のいずれかに記載の化合物又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有するタンキラーゼ阻害剤。
[15]
[10]~[13]のいずれかに記載の化合物又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する微小管阻害剤。
[16]
[10]~[13]のいずれかに記載の化合物又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬組成物。
[17]
前記一般式(1)で示される化合物、前記一般式(1a)で示される化合物、及びそれらの薬理学的に許容される塩のうちの少なくとも1種を有効成分として含有するタンキラーゼ及び/又は微小管に起因する疾患の予防又は治療剤。
[18]
前記一般式(1)で示される化合物、前記一般式(1a)で示される化合物、及びそれらの薬理学的に許容される塩のうちの少なくとも1種、又は[1]に記載の細胞増殖阻害剤を患者に投与するタンキラーゼの阻害方法。
[19]
前記一般式(1)で示される化合物、前記一般式(1a)で示される化合物、及びそれらの薬理学的に許容される塩のうちの少なくとも1種、又は[1]に記載の細胞増殖阻害剤を患者に投与する微小管の阻害方法。
[20]
前記一般式(1)で示される化合物、前記一般式(1a)で示される化合物、及びそれらの薬理学的に許容される塩のうちの少なくとも1種、又は[1]に記載の細胞増殖阻害剤を患者に投与するタンキラーゼ及び/又は微小管に起因する疾患の治療方法。
[21]
タンキラーゼの阻害及び/又は微小管の阻害に使用される、前記一般式(1)で示される化合物又はその薬理学的に許容される塩。
[22]
タンキラーゼ及び/又は微小管に起因する疾患の治療に使用される、前記一般式(1)で示される化合物又はその薬理学的に許容される塩。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、優れたタンキラーゼ阻害活性及び/又は微小管阻害活性を有し、タンキラーゼ及び/又は微小管が関与する疾患に有用な新規化合物及びその薬理学的に許容される塩、並びに、優れたタンキラーゼ阻害活性及び/又は微小管阻害活性を有する細胞増殖阻害剤、タンキラーゼ阻害剤、微小管阻害剤、及び医薬組成物を提供することが可能となる。さらには、前記新規化合物及びその薬理学的に許容される塩の製造方法、その製造に有用な中間体化合物を提供することも可能となる。
【0019】
タンキラーゼ及び/又は微小管が関与する疾患としては、様々な固形腫瘍や血液腫瘍、例えば、線維肉腫、卵巣がん、グリオブラストーマ、膵臓がん、乳がん、アストロサイトーマ、肺がん、胃がん、肝がん、大腸がん、膀胱がん、白血病などの悪性腫瘍が挙げられ、また、単純ヘルペスウイルス(Herpes simplex virus)やエプスタイン・バーウイルス(Epstein-Barr virus)などの感染症、肺線維症などの線維症、多発性硬化症、筋委縮性側索硬化症などの神経変性疾患、皮膚・軟骨損傷などの様々な形態の炎症疾患などが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1A】実施例65、69及び70で得られた化合物について微小管重合阻害試験(3μM処理時)を実施して得られた結果を示すグラフである。
図1B】実施例65、69及び70で得られた化合物について微小管重合阻害試験(15μM処理時)を実施して得られた結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、下記一般式(1):
【0022】
【化3】
【0023】
[一般式(1)中、
及びJは、それぞれ、CH又はNを示し、ただし、J及びJがいずれもCHを示すことはなく、
rは、0~4を示し、
101は、rが2以上の場合には互いに同一でも異なっていてもよく、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルキル基、OR111、又は次式:-N(R112a)-R112bで示される基を示し、
111、R112a及びR112bは、それぞれ独立して、水素原子又はC1-6アルキル基であり、
sは、0~5を示し、
102は、sが2以上の場合には互いに同一でも異なっていてもよく、ハロゲン原子、C1-6アルキル基、OR113、次式:-N(R114a)-R114bで示される基、次式:-NH-C(=O)-R115で示される基、次式:-C(=O)-R116で示される基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、ニトロ基、又はシアノ基を示し、
113は、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアリールアルキル基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基であり、
114a及びR114bは、それぞれ独立して、水素原子又はC1-6アルキル基であり、
115は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、又は次式:-NH-R121で示される基であり、
116は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、OR122、又は次式:-N(R123a)-R123bで示される基であり、
121は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基であり、
122は、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基であり、
123a及びR123bは、それぞれ独立して、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、若しくは置換されていてもよいヘテロアリール基であるか、又は、R123a及びR123bが一体となって環状アミンを形成しており、
103は、水素原子、C1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基、又はC3-6シクロアルキルC1-6アルキル基を示し、
101が8位の位置にある場合には当該R101とR103とが一体となって5~7員環のヘテロ環を形成していてもよい。]
で示される化合物又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する細胞増殖阻害剤を提供する。本発明はまた、下記一般式(1a):
【0024】
【化4】
【0025】
[一般式(1a)中、J、J、r、R101、s、R102、及びR103は、それぞれ独立して、上記一般式(1)中のJ、J、r、R101、s、R102、及びR103と同義である。ただし、JがCHを示し、かつJがNを示し、かつrが0であり、かつR103が水素原子若しくはメチル基であり、かつR102がp位にあり、かつ当該R102がメトキシ基である場合を除く。]
で示される化合物又はその薬理学的に許容される塩も提供する。
【0026】
本発明において、「ジヒドロキナゾリノン系化合物」とは、キナゾリノンの1位の位置及び2位の位置に水素原子又は置換基が部分添加された化合物又はその塩のことをいう。また、本発明において、一般式(1)及び(1a)中の「位」で示される数字は、特に断りがない場合、前記ジヒドロキナゾリノン系化合物においてR101が置換される位置番号を示し、前記位置番号はキナゾリノンの位置番号をそのまま使用する。さらに、本発明において、一般式(1)及び(1a)中の「位」で示されるアルファベット(o、m、p)は、特に断りがない場合、R102が置換されるベンゼン置換体の位置番号を示す。
【0027】
一般式(1)及び(1a)において、「水素原子」には、重水素原子(D)も含まれる。また、一般式(1)及び(1a)において、「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
【0028】
一般式(1)及び(1a)において、「アルキル基」とは、炭素数が1~8の直鎖状又は分岐鎖状の飽和炭化水素基を表す。前記直鎖状又は分岐鎖状の飽和炭化水素基としては、一般的に、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシルなどの基を含むが、別段これに限定されるものではない。これらの中でも、本発明に係る「アルキル基」としては、炭素数が1~6の「C1-6アルキル基」であることが好ましく、炭素数が1~3の「C1-3アルキル基」であることがより好ましい。
【0029】
一般式(1)及び(1a)において、「アリール基」とは、炭素のみで構成された6員環単環式の芳香族炭化水素基又はそれらが2以上縮合した縮合環式の芳香族炭化水素基を表す。前記アリール基としては、一般的に、フェニル及びナフチルなどの基を含むが、別段これに限定されるものではない。これらの中でも、本発明に係る「アリール基」としては、単環式(フェニル基)であることが好ましい。
【0030】
一般式(1)及び(1a)において、「ヘテロアリール基」とは、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択される1~4個のヘテロ原子を有する5~6員環の単環式芳香族複素環から誘導される基;1~4個のヘテロ原子を有する5~6員環の単環式芳香族複素環と、炭素のみで構成された6員環単環式芳香族環とが縮合した縮合環式芳香族複素環から誘導される基;又は1~4個のヘテロ原子を有する5~6員環の単環式芳香族複素環と、1~4個のヘテロ原子を有する5~6員環の単環式芳香族複素環とが縮合した縮合環式芳香族複素環から誘導される基を表す。前記ヘテロアリール基としては、一般的に、可能な任意の箇所に結合位置を有するピロリル、ピラゾリル、フリル、チエニル、オキサゾリル、イミダゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、1,2,3-オキサジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、1,2,3-チアジアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、テトラゾリル、1,2,4-トリアゾリル、1,2,3-トリアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピラジル、ピリミジル、ベンゾチエニル、ベンゾフリル、インドリル、イソインドリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾピラゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾトリアゾリル、キノリル、イソキノリル、キノキサリニル、キナゾリニル、フタラジニル、イミダゾ[5,1-b]チアゾリル、1H-ピロロ[2,3-b]ピリジニルなどの基を含むが、別段これに限定されるものではない。これらの中でも、本発明に係る「ヘテロアリール基」としては、任意の箇所に結合位置を有するキノリル、イソキノリル、1H-ピロロ[2,3-b]ピリジニルであることが好ましい。
【0031】
一般式(1)及び(1a)において、「シクロアルキル基」とは、炭素数が3~8である環状の飽和炭化水素基(環状炭化水素基)を表し、この環状炭化水素基は、単環であっても、縮環、架橋環又はスピロ環を形成していてもよい。前記環状の飽和炭化水素基としては、一般的に、可能な任意の箇所に結合位置を有するシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロへプチル、シクロオクチル、ビシクロ[3.1.0]ヘキシル、ビシクロ[3.2.0]ヘプチル、ビシクロ[4.1.0]ヘプチル、ビシクロ[4.2.0]オクチル、ビシクロ[3.3.0]オクチル、ビシクロ[1.1.1]ペンチル、ビシクロ[2.1.1]ヘキシル、ビシクロ[3.1.1]ヘプチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[3.2.1]オクチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、スピロ[2.3]ヘキシル、スピロ[2.4]ヘプチル、スピロ[2.5]オクチル、スピロ[3.3]ヘプチル、スピロ[3.4]オクチルなどの基を含むが、別段これに限定されるものではない。これらの中でも、本発明に係る「シクロアルキル基」としては、単環であることが好ましく、炭素数が3~8の「C3-8シクロアルキル基」であることがより好ましく、炭素数が3~6の「C3-6シクロアルキル基」であることがさらに好ましい。
【0032】
一般式(1)及び(1a)において、「ヘテロ環」とは、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択される1~4個のヘテロ原子を有する芳香族環以外の不飽和複素環を表し、5~7員環であることが好ましく、5~6員環であることがより好ましい。この複素環は、単環であっても、架橋環又はスピロ環を形成していてもよい。前記「5~7員環のヘテロ環」としては、可能な任意の箇所に結合位置を有する2,3-ジヒドロ-1H-ピロール、2,3-ジヒドロオキサゾール、2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾール、1,2,3,4-テトラヒドロピリジン、2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-アゼピン、3,4-ジヒドロ-2H-1,4-オキサジン、1,2,3,4-テトラヒドロピラジン、3,4-ジヒドロ-2H-1,4-チアジン、4,5,6,7-テトラヒドロ-1,4-オキサゼピンなどの環を含むが、別段これに限定されるものではない。これらの中でも、本発明に係る「5~7員環のヘテロ環」としては、可能な任意の箇所に結合位置を有する2,3-ジヒドロ-1H-ピロール、1,2,3,4-テトラヒドロピラジン、3,4-ジヒドロ-2H-1,4-オキサジンであることが好ましい。
【0033】
また、本発明において、「ヘテロシクロアルキル基」という場合には、これは、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択される1~4個のヘテロ原子を有する3~7員環の飽和複素環又は芳香族環以外の不飽和複素環を表し、この複素環は、単環であっても、架橋環又はスピロ環を形成していてもよい。前記へテロシクロアルキル基としては、可能な任意の箇所に結合位置を有するオキセタニル、テトラヒドロフリル、ジヒドロフリル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロピラニル、1,3-ジオキサニル、1,4-ジオキサニル、アジリジニル、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、1,1-ジオキシドチオモルホリニル、ジオキソピペラジニル、ジアゼパニル、モルホリニル、1,3-ジオキソラニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピロリニル、オキサチオラニル、ジチオラニル、1,3-ジチアニル、1,4-ジチアニル、オキサチアニル、チオモルホリニル、3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプチル、8-オキサ-3-アザビシクロ[3.2.1]オクチル、3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクチル、3,9-ジアザビシクロ[3.3.1]ノニル、2-オキサ-7-アザスピロ[3.5]ノニルなどの基を含むが、別段これに限定されるものではない。これらの中でも、本発明に係る「ヘテロシクロアルキル基」としては、可能な任意の箇所に結合位置を有するピペラジニル、ピロリジニル、モルホリニルであることが好ましい。
【0034】
一般式(1)及び(1a)において、「アリールアルキル基」、「シクロアルキルアルキル基」及び「ヘテロシクロアルキルアルキル基」とは、それぞれ、本明細書で定義されるアリール基、シクロアルキル基、又はヘテロシクロアルキル基(これらを次式:-Arで示す)の可能な任意の箇所の結合位置と、本明細書で定義されるアルキル基(これを次式:-Akで示す)の可能な任意の箇所とが結合したもの(次式:-Ak1-Arで示される基)を表す。これらの中でも、本発明に係る「アリールアルキル基」としては、前記アルキル基の炭素数が1~6である「アリールC1-6アルキル基(アリールC1-6アルキレン基)」であることが好ましく、炭素数が1~3である「アリールC1-3アルキル基(アリールC1-3アルキレン基)」であることが好ましい。また、本発明に係る「シクロアルキルアルキル基」としては、前記アルキル基の炭素数が1~6である「シクロアルキルC1-6アルキル基(シクロアルキルC1-6アルキレン基)」であることが好ましく、前記アルキル基の炭素数が1~3である「シクロアルキルC1-3アルキル基(シクロアルキルC1-3アルキレン基)」であることがより好ましく、前記シクロアルキル基の炭素数が3~6である「C3-6シクロアルキルC1-6アルキル基(C3-6シクロアルキルC1-6アルキレン基)」又は「C3-6シクロアルキルC1-3アルキル基(C3-6シクロアルキルC1-3アルキレン基)」であることが好ましい。さらに、本発明に係る「ヘテロシクロアルキルアルキル基」としては、前記アルキル基の炭素数が1~6である「ヘテロシクロアルキルC1-6アルキル基(ヘテロシクロアルキルC1-6アルキレン基)」であることが好ましく、前記アルキル基の炭素数が1~3である「ヘテロシクロアルキルC1-3アルキル基(ヘテロシクロアルキルC1-3アルキレン基)」であることがより好ましい。
【0035】
さらに、本発明において、「環状アミン」という場合には、これは、原子数が3~8である含窒素複素環を表し、この含窒素複素環は、単環であっても、縮環、架橋環又はスピロ環を形成していてもよい。前記環状アミンとしては、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、チオモルホリン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、アゼパン、アゾカンなどを含むが、別段これに限定されるものではない。これらの中でも、本発明に係る「環状アミン」としては、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリンであることが好ましい。
【0036】
本発明において、「置換されていてもよい」とは、特に断りがない場合、置換されていてもよいと記された基に結合している任意の水素原子が他の原子又は基からなる群から選択される置換基(原子又は基)で置換されていることを表し、当該置換をされている箇所は1か所であっても2か所以上であってもよく、置換されている箇所が2箇所以上の場合、各置換基は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0037】
本発明において、このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、水酸基、チオール基、ニトロ基、C1-6アルキル基(好ましくはC1-3アルキル基)、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基(好ましくはC3-6シクロアルキル基)、ヘテロシクロアルキル基、アリールアルキル基(好ましくはアリールC1-3アルキル基)、ヘテロアリールアルキル基(好ましくはヘテロアリールC1-3アルキル基)、シクロアルキルアルキル基(好ましくはC3-6シクロアルキルC1-3アルキル基)、ヘテロシクロアルキルアルキル基(好ましくはヘテロシクロアルキルC1-3アルキル基);次式:-N(R133a)-R133b[式中、R133a及びR133bは、それぞれ独立に、水素原子、C1-6アルキル基(好ましくはC1-3アルキル基)、シクロアルキル基(好ましくはC3-6シクロアルキル基)、アリール基、ヘテロアリール基、若しくは次式:-C(=O)-R133c[式中、R133cはC1-6アルキル基(好ましくはC1-3アルキル基)、シクロアルキル基(好ましくはC3-6シクロアルキル基)、アリール基、ヘテロアリール基を示す。]で示される基であるか、又は、R133a及びR133bが一体となって4~7員環の環状アミンを形成している。]で示される基;次式:-R134-C(=O)-R135[式中、R134は、単結合、炭素数1~3のアルキレン基を示し、R135は、水素原子、C1-6アルキル基(好ましくはC1-3アルキル基)、シクロアルキル基(好ましくはC3-6シクロアルキル基)、アリール基、又はヘテロアリール基を示す。]で示される基;次式:-R136-C(=O)-O-R137[式中、R136は、単結合、炭素数1~3のアルキレン基を示し、R137は、水素原子、C1-6アルキル基(好ましくはC1-3アルキル基)、シクロアルキル基(好ましくはC3-6シクロアルキル基)、アリール基、又はヘテロアリール基を示す。]で示される基;次式:-OR138[式中、R138は、C1-6アルキル基(好ましくはC1-3アルキル基)、シクロアルキル基(好ましくはC3-6シクロアルキル基)、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキルアルキル基(好ましくはC3-6シクロアルキルC1-3アルキル基)、ヘテロシクロアルキルアルキル基(好ましくはヘテロシクロアルキルC1-3アルキル基)、アリールアルキル基(好ましくはアリールC1-3アルキル基)、ヘテロアリールアルキル基(好ましくはヘテロアリールC1-3アルキル基)を示す。]で示される基が挙げられる。これらの置換基及び置換基の形成に関与する基のうち、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基及びヘテロシクロアルキル基は、さらに前述の定義のごとく任意の置換基によって置換されていてもよい。
【0038】
これらの中でも、置換される基が、R102が示すアリール基、ヘテロアリール基である場合、前記置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、置換されていてもよいピペラジニル(より好ましくはC1-6アルキル基で置換されていてもよいピペラジニル)、置換されていてもよいピペラジニルメチル等のピペラジニルC1-6アルキル(より好ましくはC1-6アルキル基で置換されてもよいピペラジニルメチル等のピペラジニルC1-6アルキル)、モルホリニル;次式:-N(R133a)-R133b[式中、R133a及びR133bは、それぞれ独立に、水素原子又はC1-3アルキル基を示すことが好ましい。]で示される基;次式:-R136-C(=O)-O-R137[式中、R136は炭素数1~3のアルキレン基を示し、R137は水素原子又はC1-3アルキル基を示すことが好ましい。]で示される基であることが特に好ましい。
【0039】
また、置換される基がR113が示すアリールアルキレン基、R113又はR122が示すアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基である場合、前記置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、C1-3アルキル基;次式:-N(R133a)-R133b[式中、R133a及びR133bは、それぞれ独立に、水素原子又はC1-3アルキル基を示すことが好ましい。]で示される基;次式:-OR138[式中、R138は、C1-3アルキル基を示すことが好ましい。]で示される基であることが特に好ましい。
【0040】
さらに、置換される基がR115又はR116が示すアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基である場合、前記置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、C1-3アルキル基;次式:-N(R133a)-R133b[式中、R133a及びR133bは、それぞれ独立に、水素原子又はC1-3アルキル基を示すことが好ましい。]で示される基;次式:-OR138[式中、R138は、C1-3アルキル基を示すことが好ましい。]で示される基であることが特に好ましい。
【0041】
また、置換される基がR121、R123a、又はR123bが示すアルキル基、アリール基、アリールアルキレン基、ヘテロアリール基である場合、前記置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、C1-3アルキル基;次式:-N(R133a)-R133b[式中、R133a及びR133bは、それぞれ独立に、水素原子又はC1-3アルキル基を示すことが好ましい。]で示される基;次式:-OR138[式中、R138は、C1-3アルキル基を示すことが好ましい。]で示される基であることが特に好ましい。
【0042】
一般式(1)及び(1a)において、rはR101の数を示し、0~4である。rとしては、0(すなわち、R101に相当する4つの基が全て水素原子)であるか、又は、1~2であることが好ましい。また、R101の位置としては、rが1~2である場合、7位又は8位であることが好ましい。
【0043】
一般式(1)及び(1a)において、R101は、rが2以上の場合には互いに同一でも異なっていてもよく、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルキル基、OR111、又は次式:-N(R112a)-R112bで示される基を示す。ここで、R111、R112a及びR112bは、それぞれ独立して、水素原子又はC1-6アルキル基である。
【0044】
このようなR101としては、無置換のC1-6アルキル基;ハロゲン原子で置換されたC1-6アルキル基;R111が水素原子又はC1-3アルキル基であるOR111であることが好ましく、より具体的には、メチル基、エチル基、水酸基、トリフルオロメチル基であることがより好ましい。
【0045】
一般式(1)及び(1a)において、sはR102の数を示し、0~5である。sとしては、0(すなわち、R102に相当する5つの基が全て水素原子)であるか、又は、1~3であることが好ましい。また、R102の位置としては、rが1~3である場合にはm位及び/又はp位であることが好ましく、rが1である場合にはp位であることが好ましい。
【0046】
一般式(1)及び(1a)において、R102は、sが2以上の場合には互いに同一でも異なっていてもよく、ハロゲン原子、OR113、次式:-N(R114a)-R114bで示される基、次式:-NH-C(=O)-R115で示される基、次式:-C(=O)-R116で示される基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、ニトロ基、又はシアノ基を示す。
【0047】
ここで、R113は、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアリールアルキル基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基であり;R114a及びR114bは、それぞれ独立して、水素原子又はC1-6アルキル基であり;R115は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、又は次式:-NH-R121で示される基であり;R116は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、OR122、又は次式:-N(R123a)-R123bで示される基である。
【0048】
さらに、R121は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基であり;R122は、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基であり;R123a及びR123bは、それぞれ独立して、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、若しくは置換されていてもよいヘテロアリール基であるか、又は、R123a及びR123bが一体となって環状アミンを形成する。
【0049】
このようなR102としては、ハロゲン原子;R113が置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいアリールアルキル基であるOR113;R114a及びR114bが、それぞれ独立して、水素原子又はC1-3アルキル基である次式:-N(R114a)-R114bで示される基;R116がOR122である次式:-C(=O)-R116で示される基;置換されていてもよいアリール基;置換されていてもよいヘテロアリール基;ニトロ基;シアノ基であることが好ましく、ハロゲン原子;R113が置換されていてもよいアルキル基であるOR113;置換されていてもよいアリール基;置換されていてもよいヘテロアリール基であることが好ましく、より具体的には、ハロゲン原子;メトキシ基;エトキシ基;水酸基、4-メチルピペラジン-1-イル基、(4-メチルピペラジン-1-イル)メチル基、4-モルホリン-4-イル基、ジメチルアミノ基で置換されていてもよいフェニル基であることがより好ましい。
【0050】
一般式(1)及び(1a)において、R103は、水素原子、C1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基、又はC3-6シクロアルキルC1-6アルキル基を示す。
【0051】
このようなR103としては、水素原子、C1-3アルキル基、C3-6シクロアルキルC1-3アルキル基であることが好ましく、より具体的には、水素原子、メチル基、シクロプロピルメチル基であることがより好ましい。
【0052】
また、一般式(1)及び(1a)において、R101が8位の位置にある場合には当該R101と1位の位置にあるR103とは、一体となって5~7員環のヘテロ環を形成していてもよい。このような5~7員環のヘテロ環としては、ピロリジニル、ピペリジニル、モルホリニルであることが好ましく、ピロリジニル、モルホリニルであることがより好ましい。
【0053】
一般式(1a)においては、上記一般式(1)で示される化合物のうち、JがCHを示し、かつJがNを示し、かつrが0であり、かつR103が水素原子若しくはメチル基であり、かつR102がp位にあり、かつ当該R102がメトキシ基である場合を除く。このような一般式(1a)で示される化合物及びその塩は、新規のジヒドロキナゾリノン系化合物である。
【0054】
本発明の一般式(1)及び(1a)で示される化合物の好ましい態様としては、例えば、以下の(I)~(III)の態様及びこれらの態様のうちの2つ又は3つの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0055】
(I)
前記一般式(1)又は(1a)中、
rが0であるか、又は、rが1であり、かつR101が7位若しくは8位の位置にあり、かつ当該R101がハロゲン原子で置換されていてもよいC1-3アルキル基若しくはヒドロキシ基を示すか、又は、rが1であり、かつR101が8位の位置にあり、かつ当該R101とR103とが一体となって5~6員環のヘテロ環を形成している化合物。
【0056】
(II)
前記一般式(1)又は(1a)中、
103が、水素原子、C1-3アルキル基、若しくはC3-6シクロアルキルC1-3アルキル基を示すか、又は、rが1であり、かつR101が8位の位置にあり、かつ当該R101とR103とが一体となって5~6員環のヘテロ環を形成している化合物。
【0057】
(III)
前記一般式(1)又は(1a)中、
sが0であるか、又は、sが1であり、かつR102が、ハロゲン原子、R113が置換されていてもよいC1-3アルキル基であるOR113、若しくは置換されていてもよいアリール基を示す、化合物。
【0058】
また、本発明の一般式(1)で示される化合物及び(1a)で示される化合物には、微小管阻害活性を示す化合物も含まれる。微小管阻害活性を有する化合物の例には、前記一般式(1)及び(1a)中、J及びJがいずれもNの化合物が含まれる。また、その例として、rが1であり、かつR101が8位の位置にあり、かつR103が水素原子である化合物;及びrが1であり、かつR101が8位の位置にあり、かつ当該R101とR103とが一体となって5~6員環のヘテロ環を形成している化合物が挙げられる。
【0059】
本発明の一般式(1)で示される化合物としては、例えば、下記に示す実施例1~87の化合物が挙げられ、また、本発明の一般式(1a)で示される化合物としては、例えば、下記に示す実施例1~81、及び84~87の化合物が挙げられる。
【0060】
本発明において、「薬理学的に許容される」とは、薬理学的使用に適していることを意味し、本発明に係る薬理学的に許容される塩としては、ナトリウム、カリウム及びカルシウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩;フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸又はヨウ化水素酸などのハロゲン化水素酸塩;硫酸、硝酸、リン酸、過塩素酸、炭酸などの無機酸塩;ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ヒドロキシ酢酸、プロピオン酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、シュウ酸、安息香酸、マンデル酸、酪酸、フマル酸、コハク酸、マレイン酸及びリンゴ酸などの有機カルボン酸塩;アスパラギン酸及びグルタミン酸などの酸性アミノ酸塩;メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸及びトルエンスルホン酸などのスルホン酸塩;並びに水和物及びアルコール和物などの溶媒和物を含むが、別段これに限定されるものではない。
【0061】
前記一般式(1)及び(1a)で示される化合物及びその塩は、置換基などの種類に応じて、1又は2個以上の不斉炭素を有する場合があるが、1又は2個以上の不斉炭素に基づく光学活性体、鏡像異性体、それらの任意の混合物、ラセミ体などはいずれも本発明の範囲に包含される。また、不飽和二重結合を有する基においては、シス-又はトランス-体で存在し得る。さらに、前記一般式(1)及び(1a)で示される化合物及びその塩は、上述する異性体の他、可能な異性体(回転異性体、アトロプ異性体、互変異生体など)のうちの1つの形態を表しており、これらは単一の異性体として存在していてもこれらの混合物として存在していてもよい。本明細書中において、上記の異性体や同位体が存在する化合物であって、その名称において特に断りがない場合、その化合物はこれらの異性体や同位体うちの1種であっても2種以上の混合物であってもラセミ体であってもよい。
【0062】
本発明の一般式(1)及び(1a)で示される化合物又はその薬理学的に許容される塩(以下、場合により「ジヒドロキナゾリノン系化合物」という)は、以下に例示する方法を以て製造することができるが、本発明のジヒドロキナゾリノン系化合物の製造方法はこれらに限定されるものではなく、本発明の化合物の範囲についても下記の製造方法によって製造された化合物に限定されるものではない。
【0063】
本発明のジヒドロキナゾリノン系化合物の製造方法は、市販の入手可能な、又は当業者によって認知される方法により合成可能な、出発原料、前駆体及び試薬及び溶媒などを用いて、当業者によって認知される幅広い様々な種類の合成法及び必要に応じて当該合成法に改良などを加えた方法などを組み合わせることによって製造することができる。
【0064】
任意の置換基などの導入、修飾又は変換の方法は,原料段階、中間物質の段階、又は最終形態の物質の段階で、目的とする任意の置換基それ自体か又はそれに変換可能な基を、当業者によって認知される幅広い様々な種類の合成法及び必要に応じて当該合成法に改良などを加えた方法を組み合わせることによって導入、修飾又は変換することができ、反応工程の順序などを適宜変えることによって行うこともできる。また、反応の都合上必要に応じて有機合成化学で通常用いられる官能基の保護及び脱保護などの一般的な手段など(例えば、Greene Wuts著,PROTECTIVE GROUPS in ORGANIC SYNTHESIS THIRD EDITION,John Wiley & Sons,Inc.などに記載された方法)を適宜採用して実施することができる。
【0065】
製造する際の反応装置は、通常のガラス製反応容器、グラスライニングを施したものを含む金属製反応槽のほか、フローリアクターなども使用することができる。また、反応を行う際の冷却又は加熱に際しては、空冷、水冷、氷冷又は寒剤と冷媒との組み合わせなどの他、冷凍機によって冷却された冷媒を介した反応容器又は反応液の冷却、温水又は蒸気による加熱、電熱器による直接又は熱媒体を介した反応容器の加熱、及び極超短波の電磁波を照射することによる加熱(いわゆるマイクロ波加熱)などが挙げられ、さらにはペルチェ素子を応用した冷却又は加熱なども利用され得る。
【0066】
本発明のジヒドロキナゾリノン系化合物は、例えば、下記の製造法によって得ることができる。
【0067】
【化5】
【0068】
上記式(2)、(3)中、J、J、r、R101、s、R102、及びR103は、それぞれ独立して、上記一般式(1)又は(1a)中のJ、J、r、R101、s、R102、及びR103と同義である。
【0069】
上記製造法における式(2)で示される化合物(以下、「原料(2)」という)及び式(3)で示される化合物(以下、「原料(3)」という)は、市販の試薬として入手可能であるか、公知の方法若しくはそれに準じた方法により合成することができる。
【0070】
上記の本発明に係る製造法においては、原料(2)及び原料(3)を適切な溶媒に溶解又は懸濁し、酸触媒の存在下又は非存在下において反応させることにより、本発明のジヒドロキナゾリノン系化合物(一般式(1)で示される化合物若しくはその塩、又は一般式(1a)で示される化合物若しくはその塩、以下場合により、それぞれ、「化合物(1)」又は「化合物(1a)」という)を製造することができる。
【0071】
前記製造法において、原料(2)と原料(3)とは、一般に1対1~3のモル比の範囲で用いられ、好ましくは1対1~1.2のモル比の範囲で用いられる。
【0072】
前記製造法において、前記溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、2-プロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール及びtert-ブチルアルコールなどのプロトン性溶媒;石油エーテル、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン及びキシレンなどの炭化水素系溶媒;四塩化炭素、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン及びトリフルオロメチルベンゼンなどのハロゲン系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、メチルシクロペンチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン及びジフェニルエーテルなどのエーテル系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸tert-ブチル、酢酸ベンジル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸n-ブチル、プロピオン酸イソブチル及びプロピオン酸tert-ブチルなどのエステル系溶媒;並びにアセトン、2-ブタノン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトニトリル、プロピオニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド及びN-メチル-2-ピロリドンなどの非プロトン性極性溶媒などを単独で又は2種以上を適宜の比率で混合して用いることができる。これらの中でも、前記溶媒としては、好ましくはメタノール、エタノール、n-プロパノール、N,N-ジメチルホルムアミドのうちの少なくとも1種が用いられる。
【0073】
前記製造法において、前記酸触媒存在下で実施する際の酸としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸及び硝酸などの鉱酸類;ギ酸、酢酸、プロピオン酸及びトリフルオロ酢酸などのカルボン酸類;並びに三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、塩化亜鉛、塩化第二スズ、塩化第二鉄、塩化アルミニウム、四塩化チタン及び四塩化ジルコニウムなどのルイス酸などが用いられる。これらの中でも、前記酸としては、好ましくは塩酸、ギ酸、酢酸及びプロピオン酸のうちの少なくとも1種であり、さらに好ましくは酢酸である。前記酸の使用量は、原料(2)に対して、0.01~20当量の範囲であり、好ましくは0.05~5当量の範囲であり、さらに好ましくは0.1~1当量の範囲である。或いは、0.01~20当量の範囲であり、好ましくは0.1~10当量の範囲であり、さらに好ましくは1~5当量の範囲である。
【0074】
前記製造法において、反応温度は0~250℃の範囲であり、好ましくは30~200℃であり、さらに好ましくは60~160℃である。また、前記製造法において、反応時間は、1分間~2日間の範囲であり、好ましくは5分間~12時間であり、さらに好ましくは10分間~6時間である。
【0075】
前記製造法において、R102において置換されるべき任意の置換基は、原料(3)の段階で目的とする置換基が備わっていてもよく、その場合には、得られた化合物(1)又は化合物(1a)は目的とする置換基を有する。また、当業者によって認知される幅広い様々な種類の合成法を組み合わせて、目的とする置換基の前駆的な基を原料(3)に導入、修飾又は変換することによって、目的とする置換基を有する化合物(1)又は化合物(1a)を製造することができる。なお、これらの合成法の組み合わせについては任意に組み合わせることができ、必要に応じて適宜保護及び脱保護などを実施してもよい。
【0076】
本発明の製造法に係る原料(3)は、例えば、以下に示すスキーム1~2に示す方法などにより製造することができる。
【0077】
【化6】
【0078】
上記式(4)、(5)、及び(3-1)中、s及びR102は、それぞれ独立して、上記一般式(1)又は(1a)中のs及びR102と同義である。
【0079】
スキーム1における式(4)で示される化合物(以下、「原料(4)」という)は、市販の試薬として入手可能であるか、公知の方法若しくはそれに準じた方法により合成することができる。
【0080】
スキーム1において、式(3-1)で示される化合物(以下、「原料(3-1)」という)は、原料(3)の1種である。原料(3-1)は、原料(4)とセミカルバジド塩酸塩とによる縮合反応により合成することができる式(5)で示される化合物(化合物(5))を、Synthesis,1998,10,1140.に記載の方法など既知の方法を利用することにより製造することができる。これら一連の全ての合成法は、有機化学の一般的な成書などに幅広く記載されている方法論であり、記載された方法そのまま又は改良を加えた方法などにより実施が可能である。
【0081】
【化7】
【0082】
上記式(6)、(7)、(8)、(9)、及び(3-2)中、s及びR102は、それぞれ独立して、上記一般式(1)又は(1a)中のs及びR102と同義である。
【0083】
スキーム2における式(6)で示される化合物(以下、「原料(6)」という)及び式(9)で示される化合物(以下、「原料(9)」という)は、市販の試薬として入手可能であるか、公知の方法若しくはそれに準じた方法により合成することができる。
【0084】
スキーム2において、式(3-2)で示される化合物(以下、「原料(3-2)」という)は、原料(3)の1種である。原料(3-2)は、式(8)で示される化合物(化合物(8))にアジ化ナトリウムを付加させて合成することができ(stepC:Tetrahedron Letters,2001,42,9117.)、化合物(8)は、原料(6)から2工程(step A及びstep B)で、或いは原料(9)から1工程(step D)で、合成することができる(stepA及びB:Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2008,184932.に記載の方法など;stepD:Tetrahedron Letters,2001,42,9117.に記載の方法など)。これら一連の全ての合成法は、有機化学の一般的な成書などに幅広く記載されている方法論であり、記載された方法そのまま又は改良を加えた方法などにより実施が可能である。
【0085】
上記の製造法で合成される本発明のジヒドロキナゾリノン系化合物、中間体、並びに原料などは、反応溶液の状態又は粗生成物の状態で次工程に用いても、当業者が認知する通常の精製方法によって単離してから用いてもよい。単離にかかる精製方法については、例えば、各種クロマトグラフィー(カラム又は薄層、並びに、順相系又は逆相系クロマトグラフィー;ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)など)、蒸留、昇華、沈殿化、結晶化、及び遠心分離などを適宜選択又は組み合わせた方法が挙げられる。
【0086】
本発明のジヒドロキナゾリノン系化合物、その互変異性体及び立体異性体、並びにこれらの化合物のあらゆる比率での混合物は、優れたタンキラーゼ阻害作用及び/又は微小管阻害作用を有する。そのため、タンキラーゼ及び/又は微小管、或いは、これらが関与する細胞内分子反応に起因する疾患としての様々な固形腫瘍や血液腫瘍(例えば、線維肉腫、卵巣がん、グリオブラストーマ、膵臓がん、乳がん、アストロサイトーマ、肺がん、胃がん、肝がん、大腸がん、膀胱がん、白血病など);単純ヘルペスウイルス(Herpes simplex virus)やエプスタイン・バーウイルス(Epstein-Barr virus)などの感染症;肺線維症などの線維症;ケルビズム症、多発性硬化症、筋委縮性側索硬化症などの神経変性疾患;皮膚・軟骨損傷などの様々な形態の炎症疾患;肥満などの代謝性疾患などの疾患の治療において、単独で、又は、従来の手術、放射線療法及び抗がん剤治療を含む従来公知の治療方法のうちの少なくとも1種と組み合わせて投与することができる。
【0087】
本発明の細胞増殖阻害剤は、本発明のジヒドロキナゾリノン系化合物を有効成分として含有する。したがって、本発明の細胞増殖阻害剤は、タンキラーゼ阻害剤、微小管阻害剤(好ましくは微小管重合阻害剤及び微小管脱重合阻害剤、より好ましくは微小管重合阻害剤)、医薬組成物(より具体的には、タンキラーゼ及び/又は微小管に起因する疾患の予防又は治療剤など)として用いることができ、これらは、前記固形腫瘍や血液腫瘍の増殖抑制剤、予防又は治療剤;前記感染症、肺線維症、多発性硬化症、又は筋委縮性側索硬化症の予防又は治療剤として用いることができる。
【0088】
なお、本発明において、細胞増殖阻害剤とは、前記固形腫瘍や血液腫瘍などの直接的な細胞増殖抑制、細胞の浸潤・転移の抑制、腫瘍血管新生の抑制といった広義の意味での細胞増殖阻害剤を含み、細胞の増殖及び転移を抑制、予防、又は遅延させるための剤を示す。
【0089】
本発明の細胞増殖阻害剤としては、本発明のジヒドロキナゾリノン系化合物以外の他の治療剤をさらに含有していてもよく、また、その他の治療剤を同時又は異時に組み合わせて用いてもよい。前記他の治療剤としては、例えば、他の抗がん剤(抗細胞増殖、抗悪性腫瘍、DNA損傷剤、及びこれらの組み合わせ、より具体的には、アルキル化剤(テモゾロミド、メルファランなど)、代謝拮抗剤(ゲムシタビン、シタラビン(Ara-C)、フルオロウラシル(5-FU)、ペメトレキセド、メルカプトプリン、メトトレキサートなど)、植物アルカロイド(イリノテカン(SN-38)、エトポシド(VP-16)など)、抗がん性抗生物質(アクチノマイシンD、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、ミトキサントロンなど)、プラチナ製剤(オキサリプラチン、カルボプラチン、シスプラチンなど);他の微小管阻害剤(パクリタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ドセタキセル、カバジタキセル、エリブリン、及びこれらの薬理学的に許容される塩など);有糸分裂阻害薬;トポイソメラーゼ阻害薬;細胞分裂阻害薬、EGFR抗体などの成長因子機能阻害薬;VEGFR抗体などの血管伸長阻害作用薬;メタロプロテアーゼインヒビターなどのがん細胞転移抑制作用薬;Rasアンチセンスなどのアンチセンス療法薬;抗PD-1抗体、T細胞などによる免疫療法薬などが挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0090】
本発明の細胞増殖阻害剤としては、吸入投与、点鼻投与、点眼投与、皮下投与、静注投与、筋注投与、直腸投与及び経皮投与など、経口及び非経口のいずれの投与経路で投与されるものであってよく、ヒト又はヒト以外の動物に投与することができる。したがって、本発明の細胞増殖阻害剤は、投与経路に応じた適当な剤型とすることができる。
【0091】
本発明の細胞増殖阻害剤の剤型の例としては、具体的には、錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、細粒剤、トローチ錠、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤などの経口剤;吸入剤、点鼻液、点眼液などの外用液剤;静注、筋注などの注射剤;直腸投与剤、坐剤、ローション剤、スプレー剤、軟膏剤、クリーム剤、貼付剤などの非経口剤が挙げられる。
【0092】
本発明の細胞増殖阻害剤は、前記剤型に応じて、薬学の分野において通常用いられている賦形剤、増量剤、湿潤化剤、表面活性剤、崩壊剤、結合剤、潤滑剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、防腐剤、矯味矯臭剤、無痛化剤、安定化剤、滑沢剤、着色剤などの添加剤をさらに含有していてもよく、これらを用いて常法により製造することができる。前記添加剤としては、例えば、乳糖、果糖、ブドウ糖、でん粉、ゼラチン、炭酸マグネシウム、合成ケイ酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース又はその塩、アラビアゴム、オリーブ油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、シロップ、ワセリン、グリセリン、エタノール、クエン酸、塩化ナトリウム、亜硫酸ソーダ、リン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0093】
本発明の細胞増殖阻害剤において、本発明のジヒドロキナゾリノン系化合物の含有量(ジヒドロキナゾリノン系化合物が、前記一般式(1)又は(1a)で示される化合物、その薬理学的に許容される塩、これらの互変異性体、及び立体異性体などの混合物である場合にはそれらの合計含有量)は、その剤型に応じて適宜調整されるものであるため一概にはいえないが、通常、細胞増殖阻害剤の全質量を基準として、フリー体換算で、0.01~70質量%、好ましくは0.05~50質量%である。また、本発明のジヒドロキナゾリノン系化合物の投与量(ジヒドロキナゾリノン系化合物が、前記一般式(1)又は(1a)で示される化合物、その薬理学的に許容される塩、これらの互変異性体、及び立体異性体などの混合物である場合にはそれらの合計量)は、用法、患者の年齢、体重、性別、疾患の相違、症状の程度などを考慮して、個々の場合に応じて適宜調整されるものであるため一概にはいえないが、通常、成人1日当り、フリー体換算で、0.1~2000mg、好ましくは1~1000mgであり、これを1日1回又は数回に分けて投与する。
【実施例
【0094】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、当該実施例によって本発明の範囲が制限されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない範囲で種々の応用、変形及び修正などが可能である。また、実施例で使用した中間体及び原料などの製造法を参考例として説明するが、これらも本発明の実施について具体的に説明するための例示であって、当該例示によって本発明の範囲が制限されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない範囲で種々の応用、変形及び修正などが可能である。
【0095】
以下、実施例及び参考例において使用される略語は、下記の意味で用いられる。
M:mol/L
H-NMR:プロトン核磁気共鳴スペクトル(270MHz又は500MHz)
MS(ESI):質量スペクトル(電子スプレーイオン化法)
DMSO:ジメチルスルホキシド
Bn:ベンジル
TFA:トリフルオロ酢酸。
【0096】
(参考例1)
4-(4-ホルミル-1H-ピラゾール-3-イル)安息香酸メチル
【0097】
【化8】
【0098】
<工程1>
4-アセチル安息香酸メチル(2.08g)をメタノール(40mL)に懸濁し、これに酢酸ナトリウム(1.24g)とセミカルバジド塩酸塩(1.43g)の水溶液(40mL)を加え、5時間加熱還流した。室温まで放冷後、水(20mL)を加え、数分間攪拌した。析出した固体を濾取し、100mLの水で水洗後、風乾することにより(E)-4-(1-2-カルバモイルヒドラゾノ)エチル安息香酸メチル(2.66g)を白色固体として得た。
MS(ESI)m/z:236.12[M+H]
【0099】
<工程2>
(E)-4-(1-2-カルバモイルヒドラゾノ)エチル安息香酸メチル(5.05g)をN,N-ジメチルホルムアミド(50mL)に溶解し、氷浴で冷却した。内温が5~10℃を維持するようにしながらオキシ塩化リン(17.5mL)を滴下し、さらに5℃で30分間攪拌した。次いで、内温が65℃になるように加熱し、4.5時間攪拌した。室温まで冷却後、反応混合物を氷水(200mL)に少しずつ加えて反応を終了させた。25%水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、pHを7.0に調整した。析出した固体を濾取し、水洗(30mL×3)後、減圧加熱乾燥(50℃)を行い、標題化合物(3.80g)を淡褐色固体として得た。
H-NMR(270MHz,DMSO-d)δ:3.89(s,3H),8.05(brs,4H),8.66(brs,1H),9.95(s,1H),13.88(brs,1H).
MS(ESI)m/z:231.12[M+H]
【0100】
(参考例2)
5-(4-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)フェニル)-2H-1,2,3-トリアゾール-4-カルバルデヒド
【0101】
【化9】
【0102】
<工程1>
四臭化炭素(6.5g)をジクロロメタン(35mL)に溶解し、-20℃に冷却した。これにトリフェニルホスフィン(5.14g)のジクロロメタン(35mL)溶液を-20℃で滴下した。1時間攪拌後、4-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)ベンズアルデヒド(2.00g)とトリエチルアミン(1.37mL)をジクロロメタン(20mL)に溶解した溶液を-20℃で滴下した。室温に昇温し4時間攪拌した後、石油エーテル(100mL)を滴下した。不溶物を濾別し、ジクロロメタン/石油エーテル混合溶媒(1/1)で洗浄した。濾液を濃縮して得られた褐色オイルをシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=100/0~90/10)で精製し、1-(2,2-ジブロモビニル)-4-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)ベンゼン(2.21g)を無色透明オイルとして得た。
H-NMR(270MHz,CDCl)δ:4.36(q,J=7.9Hz,2H),6.89-6.98(m,2H),7.42(s,1H),7.49-7.58(m,2H)。
【0103】
<工程2>
1-(2,2-ジブロモビニル)-4-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)ベンゼン(2.05g)をテトラヒドロフラン(40mL)に溶解し、-78℃に冷却した。n-ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.6M溶液、7.47mL)を-78℃で滴下し、同温で2時間攪拌した。次いでN,N-ジメチルホルムアミド(661μL)を-78℃で滴下後、室温に昇温し2.5時間攪拌した。10%リン酸二水素カリウム水溶液(40mL)とメチルtert-ブチルエーテル(40mL)の混合溶液に上記反応液を滴下して反応を終了させた。有機層を分離し、水洗(80mL×2)、飽和食塩水(80mL)洗浄を行い、硫酸マグネシウムで乾燥させた。濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=100/0~70/30)で精製し、3-(4-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)フェニル)プロピオールアルデヒド(283mg)を黄色結晶性固体として得た。
H-NMR(270MHz,DMSO-d)δ:4.40(q,J=7.9Hz,2H),6.94-7.01(m,2H),7.57-7.64(m,2H),9.41(s,1H)。
【0104】
<工程3>
アジ化ナトリウム(86.2mg)のジメチルスルホキシド(2.6mL)溶液に3-(4-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)フェニル)プロピオールアルデヒド(275mg)のジメチルスルホキシド(1mL)溶液を室温で滴下し、反応混合物を1時間室温で攪拌した。15%リン酸二水素カリウム水溶液(10mL)とメチルtert-ブチルエーテル(10mL)の混合溶液に上記反応液を滴下して反応を終了させた。有機層を分離し、水洗(10mL×2)、飽和食塩水(10mL)洗浄を行い、硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を濃縮して標題化合物(315mg)を淡黄色固体として得た。
H-NMR(270MHz,DMSO-d)δ:4.87(q,J=8.9Hz,2H),7.20-7.27(m,2H),7.96-8.03(m,2H),10.17(s,1H).
MS(ESI)m/z:272.13[M+H]
【0105】
(参考例3)
5-(4-プロポキシフェニル)-2H-1,2,3-トリアゾール-4-カルバルデヒド
【0106】
【化10】
【0107】
<工程1>
1-エチニル-4-プロポキシベンゼン(5.00g)をテトラヒドロフラン(35mL)に溶解し、-40℃に冷却した。n-ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.6M溶液、23.4mL)を-40℃で滴下し、同温で20分間攪拌した。次いでN,N-ジメチルホルムアミド(4.83mL)を-40℃で滴下後、室温に昇温し1時間攪拌した。10%リン酸二水素カリウム水溶液(200mL)とメチルtert-ブチルエーテル(200mL)の混合溶液に上記反応液を滴下して反応を終了させた。有機層を分離し、水洗(100mL×2)、飽和食塩水(100mL)洗浄を行い、硫酸マグネシウムで乾燥させた。濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=100/0~90/10)で精製し、3-(4-プロポキシフェニル)プロピオールアルデヒド(4.60g)を黄色結晶性固体として得た。
H-NMR(270MHz,CDCl)δ:1.04(t,J=7.4Hz,3H),1.74-1.90(m,2H),3.96(t,J=6.9Hz,2H),6.85-6.93(m,2H),7.49-7.59(m,2H),9.40(brs,1H)。
【0108】
<工程2>
参考例2の<工程3>と同様にして、3-(4-プロポキシフェニル)プロピオールアルデヒド(4.30g)から標題化合物(5.12g)を得た。
H-NMR(270MHz,DMSO-d)δ:1.00(t,J=7.4Hz,3 H),1.68-1.84(m,2H),4.01(t,J=6.6Hz,2H),7.06-7.13(m,2H),7.92-7.99(m,2H),10.16(s,1H).
MS(ESI)m/z:232.14[M+H]
【0109】
(参考例4)
5-(4-(2,2-ジフルオロエトキシ)フェニル)-2H-1,2,3-トリアゾール-4-カルバルデヒド
【0110】
【化11】
【0111】
<工程1>
参考例2の<工程3>と同様にして、3-(4-ベンジロキシ)フェニルプロピオールアルデヒド(1.00g)から5-(4-(ベンジロキシ)フェニル)-2H-1,2,3-トリアゾール-4-カルバルデヒド(1.16g)を得た。
H-NMR(270MHz,DMSO-d)δ:5.20(s,2H),7.15-7.22(m,2H),7.31-7.52(m,5H),7.92-7.99(m,2H),10.16(s,1H).
MS(ESI)m/z:280.19[M+H]
【0112】
<工程2>
5-(4-(ベンジロキシ)フェニル)-2H-1,2,3-トリアゾール-4-カルバルデヒド(200mg)をテトラヒドロフラン(2mL)に溶解し、3,4-ジヒドロ-2H-ピラン(196μL)とp-トルエンスルホン酸一水和物(13.6mg)を加えて室温で2.5時間攪拌した。反応液を酢酸エチル(10mL)で希釈して飽和重曹水(10mL)、次いで飽和食塩水(10mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=92/8~71/29)で精製し、5-(4-(ベンジロキシ)フェニル)-2-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-2H-1,2,3-トリアゾール-4-カルバルデヒド(261mg)を白色固体として得た。
H-NMR(270MHz,CDCl)δ:1.67-1.84(m,3H),2.09-2.21(m,2H),2.39-2.54(m,1H),3.74-3.89(m,1H),4.03-4.13(m,1H),5.13(s,2H),5.81(dd,J=8.6,2.6Hz,1H),7.03-7.09(m,2H),7.30-7.48(m,5H),8.02-8.12(m,2H),10.24(s,1H)。
【0113】
<工程3>
5-(4-(ベンジロキシ)フェニル)-2-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-2H-1,2,3-トリアゾール-4-カルバルデヒド(244mg)をテトラヒドロフラン(5mL)に溶解し、20%水酸化パラジウム炭素(約50%含水、50mg)を加えて、水素雰囲気下、室温で80分間激しく攪拌した。クロロホルム/メタノール(9/1)混合溶媒(10mL)を加えてセライト濾過し、濾液を濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=80/20~50/50)で精製し、5-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-2H-1,2,3-トリアゾール-4-カルバルデヒド(147mg)を白色固体として得た。
H-NMR(270MHz,CDCl)δ:1.65-1.86(m,3H),2.07-2.22(m,2H),2.39-2.57(m,1H),3.75-3.87(m,1H),4.03-4.16(m,1H),5.22(brs,1H),5.82(dd,J=8.6,2.6Hz,1H),6.87-6.97(m,2H),7.99-8.07(m,2H),10.24(s,1H)。
【0114】
<工程4>
5-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-2H-1,2,3-トリアゾール-4-カルバルデヒド(61.6mg)をN,N-ジメチルホルムアミド(2mL)に溶解し、炭酸セシウム(147mg)を加えて室温で5分間攪拌した。これに1,1-ジフルオロ-2-ヨードエタン(29.8μL)を加えて50℃で3時間攪拌した。室温まで冷却後、水(10mL)、酢酸エチル(10mL)を加えて分液した。水層を酢酸エチル(5mL)で抽出した。有機層をまとめて、水洗(10mL×2)、飽和食塩水(10mL)洗浄を行い、硫酸マグネシウムで乾燥させた。濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=90/10~70/30)で精製し、5-(4-(2,2-ジフルオロエトキシ)フェニル)-2-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-2H-1,2,3-トリアゾール-4-カルバルデヒド(71.5mg)を無色透明オイルとして得た。
H-NMR(270MHz,CDCl)δ:1.66-1.85(m,3H),2.08-2.23(m,2H),2.39-2.55(m,1H),3.74-3.87(m,1H),4.06-4.17(m,1H),4.24(td,J=13.0,4.0Hz,2H),5.82(dd,J=8.6,2.6Hz,1H),6.12(tt,J=55.1,4.1Hz,1H),6.97-7.04(m,2H),8.07-8.14(m,2H),10.24(s,1H)。
【0115】
<工程5>
5-(4-(2,2-ジフルオロエトキシ)フェニル)-2-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-2H-1,2,3-トリアゾール-4-カルバルデヒド(64.1mg)を1,4-ジオキサン(1mL)に溶解し、4M塩化水素/1,4-ジオキサン溶液(1mL)を室温で加えて攪拌した。1時間後にメタノール(1mL)及び4M塩化水素/1,4-ジオキサン溶液(1mL)を加えて、さらに1時間攪拌した。溶媒を濃縮し、残渣を酢酸エチル(5mL)で希釈し、飽和重曹水(5mL)で洗浄した。水層を酢酸エチル(5mL)で抽出した。有機層をまとめて飽和食塩水(10mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を濃縮して標題化合物(31.2mg)を白色固体として得た。
H-NMR(270MHz,DMSO-d)δ:4.33-4.50(m,2H),6.43(tt,J=54.4,3.6Hz,1H),7.14-7.24(m,2H),7.94-8.03(m,2H),10.16(s,1H).
MS(ESI)m/z:254.11[M+H]
【0116】
(参考例5)
3,4-ジヒドロ-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-5-カルボキサミド
【0117】
【化12】
【0118】
3,4-ジヒドロ-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-5-カルボン酸(150mg)と1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(170mg)をN,N-ジメチルホルムアミド(1mL)に溶解し、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(241mg)を加えて5分間攪拌した。反応混合物を氷冷し、アンモニア水(28%、1mL)を滴下後、1時間攪拌した。これに水(4mL)を加えて攪拌し、析出した固体を濾取した。水洗後、減圧加熱乾燥し、標題化合物(98.6mg)を白色固体として得た。
H-NMR(270MHz,CDCl)δ:3.51(td,J=4.5,2.6Hz,2H),4.22(t,J=4.0Hz,2H),5.72(brs,2H),6.50(t,J=7.6Hz,1H),6.84-6.90(m,1H),6.98(dd,J=7.9,1.3Hz,1H),7.64(brs,1H).
MS(ESI)m/z:179.06[M+H]
【0119】
上記参考例1~5の方法及びその応用による方法、並びに、文献既知の方法及びその応用による方法を利用して、以下の表1~2に示す参考例6~19の化合物を得た。
【0120】
【表1】
【0121】
【表2】
【0122】
(実施例1)
4-[4-(1-メチル-4-オキソ-2,3-ジヒドロキナゾリン-2-イル)-1H-ピラゾール-5-イル]安息香酸メチル
【0123】
【化13】
【0124】
4-(4-ホルミル-1H-ピラゾール-3-イル)安息香酸メチル(920mg)のエタノール(20mL)溶液に2-(メチルアミノ)ベンズアミド(500mg)と酢酸(50μL)を加え、19時間加熱還流した。室温まで冷却後、溶媒を濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=99/1~95/5)で精製し、標題化合物(1.34g)を白色固体として得た。
H-NMR(270MHz,DMSO-d)δ:3.87(s,3H),5.84(brs,1H),6.71(d,J=8.2Hz,1H),6.84(t,J=7.4Hz,1H),7.24-7.50(m,1H),7.57(brs,1H),7.72-7.77(m,1H),7.78-7.94(m,2H),7.94-8.10(m,2H),8.32(s,1H),8.53(brs,1H).
MS(ESI)m/z:363.24[M+H]
【0125】
(実施例2)
4-[4-(1-メチル-4-オキソ-2,3-ジヒドロキナゾリン-2-イル)-1H-ピラゾール-5-イル]安息香酸
【0126】
【化14】
【0127】
4-[4-(1-メチル-4-オキソ-2,3-ジヒドロキナゾリン-2-イル)-1H-ピラゾール-5-イル]安息香酸メチル(200mg)のメタノール(4mL)溶液に1M水酸化カリウム溶液(828μL)を室温で加えて一晩攪拌し、さらに60℃に加熱して5時間攪拌した。室温まで冷却後、1M塩酸(828μL)を滴下して中和した。水(4mL)を加えて10分間攪拌後、析出した固体を濾取し、水洗後、減圧加熱乾燥して標題化合物(140mg)を白色固体として得た。
H-NMR(270MHz,DMSO-d)δ:5.81(brs,1H),6.71(brd,J=8.2Hz,1H),6.84(t,J=7.4Hz,1H),7.32-7.49(m,2H),7.72-7.86(m,3H),7.94-8.07(m,2H),8.54(brs,1H),13.12(brs,2H).
MS(ESI)m/z:349.22[M+H]
【0128】
(実施例3)
2-[3-(4-アミノフェニル)-1H-ピラゾール-4-イル]-1-メチル-2,3-ジヒドロキナゾリン-4-オン
【0129】
【化15】
【0130】
1-メチル-2-[3-(4-ニトロフェニル)-1H-ピラゾール-4-イル]-2,3-ジヒドロキナゾリン-4-オン(100mg)、エタノール(20mL)、水(7mL)、及びテトラヒドロフラン(5mL)の混合物に、塩化アンモニウム(61mg)及び鉄粉(144mg)を加えて3時間加熱還流した。室温まで冷却後、不溶物をセライトにより濾別しエタノールで洗浄した。濾液を濃縮して得られた固体をクロロホルム/メタノール(9/1)混合溶媒(30mL)に溶解し、飽和食塩水(10mL)で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を濃縮して得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=98/2~90/10)で精製し、標題化合物(73.7mg)を黄色固体として得た。
H-NMR(270MHz,DMSO-d)δ:2.46(s,3H),5.37(brs,2H),5.60(brs,1H),6.57-6.73(m,3H),6.83(t,J=7.4Hz,1H),7.12(brs,1H),7.19-7.32(m,2H),7.39(brt,J=7.1Hz,1H),7.75(brd,J=6.3Hz,1H),8.46(brs,1H),12.82(brs,1H).
MS(ESI)m/z:320.29[M+H]
【0131】
(実施例4)
N-[4-[4-(1-メチル-4-オキソ-2,3-ジヒドロキナゾリン-2-イル)-1H-ピラゾール-3-イル]フェニル]ベンズアミド
【0132】
【化16】
【0133】
2-[3-(4-アミノフェニル)-1H-ピラゾール-4-イル]-1-メチル-2,3-ジヒドロキナゾリン-4-オン(20.0mg)と安息香酸(9.18mg)をDMF(0.5mL)に溶解し、4-(4,6-ジメトキシー1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(20.8mg)を加えて室温で終夜攪拌した。溶媒を濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=100/0~90/10)で精製し、標題化合物(21.6mg)を白色固体として得た。
H-NMR(270MHz,DMSO-d)δ:5.74(brs,1H),6.71(d,J=8.2Hz,1H),6.85(t,J=7.3Hz,1H),7.23-7.68(m,7H),7.76(dd,J=7.6,1.6Hz,1H),7.84-8.02(m,4H),8.44-8.59(m,1H),10.38(s,1H).
MS(ESI)m/z:424.41[M+H]
【0134】
(実施例5)
1-[3-[4-(1-メチル-4-オキソ-2,3-ジヒドロキナゾリン-2-イル)-1H-ピラゾール-3-イル]フェニル]-3-フェニルウレア
【0135】
【化17】
【0136】
2-[3-(3-アミノフェニル)-1H-ピラゾール-4-イル]-1-メチル-2,3-ジヒドロキナゾリン-4-オン(30mg)をテトラヒドロフラン(1mL)に溶解し、トリエチルアミン(17.1μL)を加えて氷冷した。この溶液にイソシアン酸フェニル(11.2μL)を加えて0℃で3時間攪拌した。反応液にクロロホルム/メタノール(9/1)混合溶媒(10mL)及び5%食塩水(10mL)を加えて攪拌し、不溶物を濾別した。濾液を濃縮し、残渣をアミノシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=100/0~95/5)で精製し、標題化合物(12.5mg)を白色固体として得た。
H-NMR(270MHz,CDCl)δ:2.73(s,3H),5.83(d,J=3.3Hz,1H),6.68(d,J=8.2Hz,1H),6.72-6.81(m,1H),6.85-7.03(m,3H),7.11-7.26(m,2H),7.31-7.47(m,5H),7.54-7.62(m,2H),7.93(dd,J=7.7,1.5Hz,1H),8.09(s,1H),9.11(s,1H).
MS(ESI)m/z:439.45[M+H]
【0137】
(実施例6)
1-メチル-2-[5-[4-[4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル]フェニル]-1H-ピラゾール-4-イル]-2,3-ジヒドロキナゾリン-4-オン
【0138】
【化18】
【0139】
2-[3-(4-ヨードフェニル)-1H-ピラゾール]-4-イル]-1-メチル-2,3-ジヒドロキナゾリン-4-オン(50.0mg)、4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニルボロン酸 ピナコールエステル(45.7mg)、及び[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド ジクロロメタン付加物(4.8mg)をエタノール(1.6mL)とトルエン(0.4mL)との混合溶媒に懸濁し、2M炭酸ナトリウム水溶液(87μL)を加えて、マイクロウェーブ反応装置で125℃に加熱し、3時間反応させた。溶媒を濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=99/1~92/8)で精製し、標題化合物(42.1mg)を褐色固体として得た。
H-NMR(270MHz,DMSO-d)δ:2.25(s,3H),3.16-3.25(m,4H),5.60-5.90(m,1H),6.61-6.90(m,2H),7.03(brd,J=8.9Hz,2H),7.15-7.33(m,1H),7.36-7.46(m,1H),7.55-7.80(m,7H),8.54(brs,1H),13.20(brs,1H).
MS(ESI)m/z:479.66[M+H]
【0140】
(実施例7)
1-メチル-2-[4-[4-(4-モルホリン-4-イルフェニル)フェニル]-2H-1,2,3-トリアゾール-5-イル]-2,3-ジヒドロキナゾリン-4-オン
【0141】
【化19】
【0142】
<工程1>
2-[4-(4-ブロモフェニル)-2H-1,2,3-トリアゾール]-5-イル]-1-メチル-2,3-ジヒドロキナゾリン-4-オン(200mg)をテトラヒドロフラン(4mL)に溶解し、トリエチルアミン(145μL)を加えて氷冷した。この溶液にトリチルクロリド(218mg)を加えた後、室温に昇温し、6時間攪拌した。水(20mL)を加えて酢酸エチル(20mL)で抽出し、有機層を飽和食塩水(20mL)で洗浄した。水層をまとめて酢酸エチル(10mL)で抽出し、有機層を飽和食塩水(10mL)で洗浄した。次いで、有機層をまとめて硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=70/30~50/50)で精製し、2-[4-(4-ブロモフェニル)-2-トリチル―2H-1,2,3-トリアゾール]-5-イル]-1-メチル-2,3-ジヒドロキナゾリン-4-オン(203mg)を白色固体として得た。
H-NMR(270MHz,CDCl)δ:2.63(s,3H),6.02(d,J=2.3Hz,1H),6.36(d,J=2.0Hz,1H),6.66(d,J=8.2Hz,1H),6.92(t,J=7.5Hz,1H),7.03-7.12(m,5H),7.22-7.33(m,10H),7.33-7.40(m,1H),7.41-7.48(m,2H),7.56-7.65(m,2H),7.88(dd,J=7.6,1.6Hz,1H).
MS(ESI)m/z:626.29,628.42[M+H]
【0143】
<工程2>
実施例6と同様にして、2-[4-(4-ブロモフェニル)-2-トリチル―2H-1,2,3-トリアゾール]-5-イル]-1-メチル-2,3-ジヒドロキナゾリン-4-オン(100mg)から1-メチル-2-[4-[4-(4-モルホリン-4-イルフェニル)フェニル]-2-トリチル―2H-1,2,3-トリアゾール-5-イル]-2,3-ジヒドロキナゾリン-4-オン(61.9mg)を得た。
MS(ESI)m/z:709.86[M+H]
【0144】
<工程3>
1-メチル-2-[4-[4-(4-モルホリン-4-イルフェニル)フェニル]-2-トリチル―2H-1,2,3-トリアゾール-5-イル]-2,3-ジヒドロキナゾリン-4-オン(61.2mg)をジクロロメタン(1mL)に懸濁し、トリフルオロ酢酸(0.5mL)を室温で加えて一晩攪拌した。反応混合物を酢酸エチル(20mL)で希釈し、飽和重曹水(20mL)と飽和食塩水(20mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=100/0~92/8)で精製し、標題化合物(17.1mg)を白色固体として得た。
H-NMR(270MHz,DMSO-d)δ:2.54-2.60(m,3H),3.13-3.22(m,4H),3.71-3.81(m,4H),6.06(d,J=3.0Hz,1H),6.70(d,J=8.6Hz,1H),6.81(t,J=7.4Hz,1H),7.05(d,J=8.9Hz,2H),7.32-7.41(m,1H),7.63(d,J=8.9Hz,2H),7.68-7.81(m,5H),8.54(d,J=3.0Hz,1H).
MS(ESI)m/z:467.46[M+H]
【0145】
(実施例8)
(2R)-2-[5-(4-エトキシフェニル)-2H-1,2,3-トリアゾール-4-イル]-8-メチル-2,3-ジヒドロ-1H-キナゾリン-4-オン
【0146】
【化20】
【0147】
2-[5-(4-エトキシフェニル)-2H-1,2,3-トリアゾール-4-イル]-8-メチル-2,3-ジヒドロ-1H-キナゾリン-4-オン(136mg)をキラルカラム(CHIRALPAC-IC,DAICEL)を用いた高速液体クロマトグラフィー(メタノール/TFA=100/0.05)により光学分割し、標題化合物(59.4mg、白色固体)とエナンチオマー体である(2S)-2-[5-(4-エトキシフェニル)-2H-1,2,3-トリアゾール-4-イル]-8-メチル-2,3-ジヒドロ-1H-キナゾリン-4-オン(60.1mg、白色固体)を得た。
H-NMR(270MHz,DMSO-d)δ:1.33(brt,J=6.9Hz,3H),2.03(brs,3H),3.96-4.16(m,2H),6.07(brs,1H),6.32(brs,1H),6.68(brs,1H),7.01(brd,J=7.3Hz,2H),7.15(brd,J=6.9Hz,1H),7.56(brd,J=6.9Hz,1H),7.62-7.86(m,2H),8.20(brs,1H),14.84(brs,1H).
MS(ESI)m/z:350.26[M+H]
[α] 24=-148°(C=0.1,MeOH)。
【0148】
上記実施例1~8の方法及びその応用による方法、並びに、文献既知の方法及びその応用による方法を利用して、以下の表3~18に示す実施例9~81の化合物を得た。
【0149】
【表3】
【0150】
【表4】
【0151】
【表5】
【0152】
【表6】
【0153】
【表7】
【0154】
【表8】
【0155】
【表9】
【0156】
【表10】
【0157】
【表11】
【0158】
【表12】
【0159】
【表13】
【0160】
【表14】
【0161】
【表15】
【0162】
【表16】
【0163】
【表17】
【0164】
【表18】
【0165】
(実施例82)
2-[5-(4-メトキシフェニル)-1H-ピラゾール-4-イル]-2,3-ジヒドロ-1H-キナゾリン-4-オン(CAS No.1223730-46-8)
【0166】
【化21】
【0167】
標題化合物を上記実施例1の方法を利用して得た。
【0168】
(実施例83)
2-[5-(4-メトキシフェニル)-1H-ピラゾール-4-イル]-1-メチル-2,3-ジヒドロキナゾリン-4-オン(CAS No.1252133-21-3)
【0169】
【化22】
【0170】
標題化合物を上記実施例1の方法を利用して得た。
【0171】
上記実施例1~8の方法及びその応用による方法、並びに、文献既知の方法及びその応用による方法を利用して、以下の表19に示す実施例84~87の化合物を得た。
【0172】
【表19】
【0173】
(試験例1) タンキラーゼ阻害活性試験
タンキラーゼ1の酵素活性及びタンキラーゼ2の酵素活性を、自己ポリADPリボシル化を指標にELISA法で測定することにより、各実施例で得られた化合物(被験化合物)のタンキラーゼ阻害活性(タンキラーゼ1に対する阻害活性(TNKS1)及びタンキラーゼ2に対する阻害活性(TNKS2))を評価した。先ず、Flagタグ融合型タンキラーゼ1(1,024-1,327aa、SAM+PARP)及びタンキラーゼ2(613-1,116aa、ANK5+SAM+PARP)を無細胞タンパク質合成システムにより合成し、Tris緩衝液(50mMTris-HCl(pH8.0)、150mMNaCl、10%glycerol)で希釈した。希釈した50μLのタンキラーゼ1或いはタンキラーゼ2を抗FLAGM2モノクローナル抗体を固相化したプレート(Anti-FLAG高感度M2コートプレート)(Sigma社)に添加し、4℃にて一晩静置した。その後、プレートを0.1%TritonX-100を含むPBS(PBST)バッファーで4回洗浄した。なお、実施例84については、上記Anti-FLAG高感度M2コートプレートをイムノプレート(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)に代え、タンキラーゼ1或いはタンキラーゼ2を固相化後にブロッキングワン(ナカライテスク社)にてブロッキングを行ってからPBS(PBST)バッファーで洗浄したものを下記のプレートとして用いた。この置換によって評価結果に影響がないことは、コントロールにより確認した。
【0174】
次いで、アッセイバッファー(50mMTris-HCl(pH8.0)、4mMMgCl、0.2mMDTT)で希釈した被験化合物(コントロールとしてDMSOを用いた)を前記プレートの各ウェルに加え、室温にて10分間静置した。その後、ビオチン標識したNAD溶液(225μMNAD、25μM6-Biotin-17-NAD(Trevigen社))をドナー基質として加えて混和させ、30℃にて45分間反応させた。ブランク用のウェルにはビオチン標識したNAD溶液ではなく、蒸留水を添加した。反応後、プレートをPBSTバッファーで4回洗浄した。その後、HRP(horseradish peroxidase)標識したストレプトアビジン(Trevigen社)をPBSバッファーで1,000倍希釈して各ウェルに添加し、室温にて20分間反応させた。プレートをPBSTバッファーで4回洗浄した後、化学発光基質溶液TACS-Sapphire(Trevigen社)を各ウェルに添加し、室温にて20分間反応させ、化学発光強度を化学発光測定装置を用いて測定した。なお、実施例84については、上記ストレプトアビジンの希釈を5,000倍希釈とし、また、化学発光基質溶液TACS-Sapphireを、ELISA POD基質TMB溶液easy(ナカライテスク社)に代えて、室温にて30分間反応させ、化学発光強度を化学発光測定装置を用いて測定した。この置換によって評価結果に影響がないことは、コントロールにより確認した。
【0175】
被験化合物存在下での残存酵素活性を以下の式で求めた。被験化合物の複数濃度での残存酵素活性をもとに、データ分析ソフトウェアOrigin(LightStone社)を用いて酵素阻害活性を50%阻害濃度(IC50値)として算出した。
残存活性(%)={(被験化合物添加時の化学発光強度)-(ブランクの化学発光強度)}/{(コントロールの化学発光強度)-(ブランクの化学発光強度)}
当該方法にて測定した各被験化合物のタンキラーゼ1に対する阻害活性(TNKS1)及びタンキラーゼ2に対する阻害活性(TNKS2)について、IC50値が5nM未満を評価“A”、5nM以上20nM未満を評価“B”、及び20nM以上50nM未満を評価“C”とした。結果を以下の表20~23に示す。
【0176】
(試験例2) 細胞増殖抑制活性試験
各実施例で得られた化合物のヒト大腸がん細胞株COLO-320DMに対する細胞増殖抑制活性をCelltiter-Glo Luminescent Cell Viability Assay(Promega社、G7573)により評価した。COLO-320DM細胞は10%ウシ胎児血清、グルタミン2mMを含むRPMI-1640培地(和光純薬、189-02025)で培養した。培養細胞をPBSで洗浄後、トリプシン/EDTAで剥離させ、3×10cells/mLになるように細胞液を調製した。
【0177】
次いで、細胞液を96穴マイクロプレート(Thermo/Nunc社、136101)に70μL/wellずつ播種し、37℃、5%CO条件下で一晩培養した。翌日、被験化合物(DMSO溶液)を細胞培養用培地で希釈した被験化合物溶液(DMSO終濃度を1%とした)10μL/wellを添加し、37℃、5%CO条件下で96時間反応させた(コントロールとして1%DMSO溶液を用いた)。その後、Celltiter-Glo Luminescent Cell Viability Assay試薬(Promega社、G7573)を80μL/wellずつ添加し、アルミホイルで遮光しながらシェイカーで2分間攪拌した後、室温で10分間静置反応させた。
【0178】
その後、発光シグナルをルミノメーター(Biotech社、Synergy)にて測定した。細胞増殖抑制活性は被験化合物溶液を添加しないコントロール群の細胞増殖量を100%としたときに各化合物添加群の細胞増殖量の割合を求め、残存細胞量をコントロールの50%に抑制するのに必要な化合物濃度(GI50)値を算出した。当該方法にて測定した各被験化合物のCOLO-320DMに対する細胞増殖抑制活性(COLO-320DM)について、GI50値が1μM未満を評価“A”、1μM以上10μM未満を評価“B”、10μM以上を評価“C”とした。また、未評価の被験化合物については”NT”とした。結果をタンキラーゼ阻害活性試験の結果と合わせて以下の表20~23に示す。
【0179】
【表20】
【0180】
【表21】
【0181】
【表22】
【0182】
【表23】
【0183】
表20~23に示すように、実施例1~87で得られた化合物はいずれも、十分なタンキラーゼ阻害活性を有することが確認された。
【0184】
(試験例3) 微小管重合阻害試験
各実施例で得られた化合物(被験化合物)の微小管重合阻害活性を、微小管重合反応測定キット(Cytoskeleton Inc.、BK011P)を用いてその標準プロトコルにより評価した。被験化合物はDMSOに溶解し、30μM及び150μM濃度に調製し、これを被験化合物溶液とした(終濃度3μM及び15μM)。また、陰性コントロール溶液としてDMSOを、陽性コントロール溶液としてビンクリスチン(終濃度3μM)を、それぞれ用いた。
【0185】
37℃に温めた96well plate(Corning Costar社、#3686)に、5μLの被験化合物溶液又は各コントロール溶液と、微小管を含む50μLのReaction mixture(1×Buffer1、1mM GTP、15%グリセロール、2mg/mLチューブリン)を加え、反応溶液の蛍光の変化を1時間かけて測定した。なお、蛍光強度が高いほど微小管の重合が進展していることを意味する。Buffer1の組成と、分析に使用した蛍光測定の条件を以下に示す。
<1×Buffer1(pH6.9)>
80mM Piperazine-N,N’-bis[2-ethanesulfonic acid] sequisodium salt;2.0mM Magnesium chloride;0.5mM Ethylene glycol-bis(β-amino-ethyl ether)N,N,N’,N’-tetra-acetic acid;10μM fluorescent reporter
<蛍光測定の条件>
測定波長 励起波長:360nm、発光波長:450nm、
測定時間 60min(1cycle/min)
使用機器 マイクロプレートリーダー SpectraMax M2(Molecular Devices社)。
【0186】
実施例65、69及び70で得られた化合物(ラセミ体)について微小管重合阻害試験を実施して得られた結果を図1A及び図1Bに示す(図1Aは3μM処理時、図1Bは15μM処理時)。図1A及び図1Bにおいて、横軸は反応時間(分)を、縦軸は蛍光強度を、それぞれ示す。図1A及び図1Bに示すように、従来から微小管重合阻害剤として公知のビンクリスチンと同様に、実施例65、69及び70で得られた各化合物(ラセミ体)は、Reaction mixtureと混合後の蛍光強度の上昇がDMSOコントロールと比較して遅れており、強い微小管重合阻害活性があることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0187】
以上説明したように、本発明によれば、優れたタンキラーゼ阻害活性を有し、タンキラーゼ及び/又は微小管が関与する疾患に有用な新規化合物及びその薬理学的に許容される塩、並びに、優れたタンキラーゼ阻害活性及び/又は微小管阻害活性を有する細胞増殖阻害剤、タンキラーゼ阻害剤、微小管阻害剤、及び医薬組成物を提供することが可能となる。さらには、前記新規化合物及びその薬理学的に許容される塩の製造方法、その製造に有用な中間体化合物を提供することも可能となる。
図1A
図1B