(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-30
(45)【発行日】2023-06-07
(54)【発明の名称】データ処理機能付きケーブル、測定システム及び制御システム
(51)【国際特許分類】
G01N 27/26 20060101AFI20230531BHJP
G01N 27/416 20060101ALI20230531BHJP
【FI】
G01N27/26 381A
G01N27/416 353Z
(21)【出願番号】P 2019046922
(22)【出願日】2019-03-14
【審査請求日】2022-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000219451
【氏名又は名称】東亜ディーケーケー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100106057
【氏名又は名称】柳井 則子
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】根岸 雅人
(72)【発明者】
【氏名】森川 範広
【審査官】小澤 理
(56)【参考文献】
【文献】特許第6311903(JP,B2)
【文献】特開平10-253572(JP,A)
【文献】特開2016-174276(JP,A)
【文献】特開平04-006452(JP,A)
【文献】特開2010-151729(JP,A)
【文献】特開2005-114697(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0324853(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26
G01N 27/416
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触する試料の性状に応じたアナログ検出値を得る検出部と前記検出部に関する固有情報を記憶するメモリとを有する電極と、前記アナログ検出値に基づくアナログ測定値を利用する上位機器とを接続するためのデータ処理機能付きケーブルであって、
ケーブル本体と、前記ケーブル本体の第1の端部に順次設けられたケーブル内基板とケーブル側コネクタとを備え、
前記ケーブル本体には、前記ケーブル内基板からの出力を前記上位機器に伝えるための線が設けられ、
前記ケーブル内基板は、前記検出部から前記アナログ検出値が入力されてデジタル検出値に変換するA/D変換部と、
前記デジタル検出値と前記メモリに記憶された前記固有情報が入力され、前記デジタル検出値をデジタル測定値に変換する演算部と、
前記デジタル測定値をアナログ測定値に変換するD/A変換部と、
前記アナログ測定値を出力するアナログインターフェース部と、
を有し、
前記ケーブル側コネクタは、前記電極に対して着脱自在とされて
おり、前記電極からの信号を受けて前記ケーブル内基板に伝えることを特徴とする、データ処理機能付きケーブル。
【請求項2】
さらに、前記デジタル測定値を出力するデジタルインターフェース部を有する請求項1に記載のデータ処理機能付きケーブル。
【請求項3】
さらに、
前記ケーブル内基板が、前記上位機器から電力を供給される電源部を有する、請求項1
又は2に記載のデータ処理機能付きケーブル。
【請求項4】
請求項1
~3のいずれか一項に記載のデータ処理機能付きケーブルと、前記電極とを備える、測定システム。
【請求項5】
前記電極が、前記アナログ検出値を増幅するプリアンプをさらに有し、
前記A/D変換部に、前記プリアンプにより増幅された前記アナログ検出値が入力される、請求項
4に記載の測定システム。
【請求項6】
前記検出部が、前記アナログ検出値としてpHに応じた電位差を得るpH検出部を含み、前記固有情報が、前記電位差をpHに換算するための検量線情報を含む、請求項
4又は5に記載の測定システム。
【請求項7】
請求項
4~6のいずれか一項に記載の測定システムと、前記アナログ測定値を利用した判断に基づき、他の要素を制御するコントローラとを備える、制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ処理機能付きケーブル、測定システム及び制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、pH計等の測定装置は、電極と、電極の近傍に配置された指示変換装置(装置本体)で基本的に構成されていた。そして、指示変換装置は、電極からの信号を処理して測定値を求め、求めた測定値を表示すると共に、その測定値を、制御室に設けられたコントローラ等に向けて出力する機能を担っていた。
近年、校正作業の負担軽減等を目的として、この指示変換装置の機能の一部を電極等に担わせる技術が種々提案されている。
【0003】
特許文献1には、校正データ等の電極固有の情報を、電極、又は電極から導出されたケーブルやコネクタ内に記憶させる計測装置が開示されている。
特許文献1の計測装置によれば、電極を別の電極に取り替えても、電極固有の情報は、電極等が有しているため、装置本体で、新たに、校正値等を設定し直す必要がない。そのため、1つの装置本体に、種々の電極を交換しながら接続して使用する場合の作業負担を軽減できる。
【0004】
特許文献2には、校正データ等の電極固有の情報を、装置本体に着脱可能なセンサモジュールに記憶させる計測システムが開示されている。
特許文献2の計測システムによれば、危険な現場に設置されている電極を、センサモジュールと共に実験室に配置された装置本体に接続すれば、安全な実験室で校正作業を行うことができるとされている。
【0005】
特許文献3には、変換器(装置本体)の標準化を図るため、校正データ等の液分析センサの固有情報を記憶させたメモリを備え、液分析センサから得られたデータをpH等の測定値(デジタル情報)に変換するインテリジェンス部を、液分析センサとケーブルとの間に設けた液分析用スマートセンサが開示されている(特許文献3の従来技術、
図3)。
【0006】
また、劣化した液分析センサを廃棄する際に、インテリジェンス部を再利用できるよう、インテリジェンス部を、液分析センサとケーブルの双方に対して着脱自在とすることが開示されている(特許文献3の特許請求の範囲に記載された発明、
図1)。
特許文献3の
図1に係る計測システムによれば、液分析センサが劣化して廃棄する際は、インテリジェンス部に記憶させた液分析センサの固有情報を、廃棄した液分析センサのものから、新しい液分析センサのものに書き換えることにより、インテリジェンス部を再利用できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平10-253572号号公報
【文献】特開2010-151729号公報
【文献】特許第6311903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1~3に開示されている技術は、いずれも、電極の近傍に指示変換装置(装置本体)が配置されていることが当然の前提とされていた。
特に特許文献1、2及び特許文献3の従来技術(
図3)では、電極を交換する際は電極から導出されたケーブルを、指示変換装置、ないしは指示変換装置にはめ込まれたセンサモジュールから外すことが必要である。そのため、長い距離にわたって、ケーブルを引き回すことは、全く想定できなかった。
【0009】
これに対して、特許文献3の
図1のスマートセンサは、インテリジェンス部をケーブルから着脱自在とされているので、液分析センサ交換時にケーブルを指示変換装置から外す必要がなく、ケーブルをある程度の距離にわたって引き回すことも可能と考えられる。
しかし、特許文献3では、インテリジェンス部を再利用可能とすることのみが検討されており、電極の近傍に指示変換装置(装置本体)を配置するという基本的な構成を変更することは検討されていない。
【0010】
また、制御室に設けられたコントローラ等は、測定装置からの情報をアナログ信号の形で受信する場合が多いが、特許文献3のインテリジェンス部から出力される測定値はデジタル情報である。
そのため、指示変換装置(装置本体)には、デジタル情報の測定値に基づいて、アナログ信号を出力する役割も担っており、指示変換装置(装置本体)は、必須のものと考えられていた。
【0011】
さらに、特許文献3の
図1のスマートセンサは、インテリジェンス部に記憶された液分析センサの固有情報を、新しい液分析センサの固有情報に書き換える作業が必要である。そのため、例えば導電率センサのセル定数のように、校正作業を行うことなく把握できる固有情報であっても、センサを変更する度に、ユーザーが書き換え作業をしなければならず、煩雑であった。
【0012】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、全体を簡便かつ高い自由度で構築することが可能で、しかも、メンテナンスも容易な制御システム、及びこの制御システムの構築を可能とするデータ処理機能付きケーブル及び、このデータ処理機能付きケーブルを用いた測定システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
[1]接触する試料の性状に応じたアナログ検出値を得る検出部と前記検出部に関する固有情報を記憶するメモリとを有する電極と、前記アナログ検出値に基づくアナログ測定値を利用する上位機器とを接続するためのデータ処理機能付きケーブルであって、
前記検出部から前記アナログ検出値が入力されてデジタル検出値に変換するA/D変換部と、
前記デジタル検出値と前記メモリに記憶された前記固有情報が入力され、前記デジタル検出値をデジタル測定値に変換する演算部と、
前記デジタル測定値をアナログ測定値に変換するD/A変換部と、
を有し、
第一の端部が前記電極に対して着脱自在とされていることを特徴とする、データ処理機能付きケーブル。
[2]さらに、前記上位機器から電力を供給される電源部を有する、[1]に記載のデータ処理機能付きケーブル。
【0014】
[3][1]又は[2]に記載のデータ処理機能付きケーブルと、前記電極とを備える、測定システム。
[4]前記電極が、前記アナログ検出値を増幅するプリアンプをさらに有し、
前記A/D変換部に、前記プリアンプにより増幅された前記アナログ検出値が入力される、[3]に記載の測定システム。
[5]前記検出部が、前記アナログ検出値としてpHに応じた電位差を得るpH検出部を含み、前記固有情報が、前記電位差をpHに換算するための検量線情報を含む、[3]又は[4]に記載の測定システム。
[6][3]~[5]のいずれか一項に記載の測定システムと、前記アナログ測定値を利用した判断に基づき、他の要素を制御するコントローラとを備える、制御システム。
【発明の効果】
【0015】
本発明のデータ処理機能付きケーブル、測定システム及び制御システムによれば、全体を簡便かつ高い自由度で構築することが可能で、しかも、メンテナンスも容易な制御システムを構築することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】電極とデータ処理機能付きケーブルを分離した状態の、本発明の一実施形態に係る測定システムの構成図である。
【
図2】電極とデータ処理機能付きケーブルを結合した状態の、本発明の一実施形態に係る測定システムの構成図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る測定システムを用いた制御システムの機能図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1、
図2に示すように、本実施形態の測定システム1は、電極10とデータ処理機能付きケーブル20とで構成されている。
電極10は、接触する試料の性状に応じたアナログ検出値を得る検出部11と、検出部11のアナログ検出値を受ける電極内基板12と、電極内基板12からの出力をデータ処理機能付きケーブル20に伝えるための電極側コネクタ13とを有している。
また、電極10は、検出部11、電極内基板12及び電極側コネクタ13を収容する電極ボディ14と、電極10をデータ処理機能付きケーブル20と結合した際に両者を固定する固定ナット15を有している。
【0018】
データ処理機能付きケーブル20は、ケーブル内基板21と、電極10からの信号を受けてケーブル内基板21に伝えるために第一の端部に設けられたケーブル側コネクタ22と、を有している。ケーブル内基板21は、基板収納部23に収容されている。
また、ケーブル内基板21からの信号を上位機器に伝えるためのケーブル本体24を有し、ケーブル本体24の端部(第二の端部)には、コントローラ50等の上位機器に接続するための複数の棒端子25が設けられている。
ケーブル本体24は、例えば、アナログ測定値、又はアナログ測定値とデジタル測定値の双方を出力するための線(2線又は4線)、及び測定システム1に必要な電力を受けるための電源線(2線)等で構成されている。電源線は、アナログ測定値等を出力するための線と共用してもよい。
【0019】
なお、棒端子25に代えて、コネクタを用いてもよい。また、ケーブル本体24の途中には、中継ボックス等が設けられていてもよい。また、ケーブル本体24の端部(第二の端部)は、上位機器に対して着脱自在であることが好ましいが、着脱不能に固定されていてもよい。
【0020】
電極10とデータ処理機能付きケーブル20とは、電極側コネクタ13がケーブル側コネクタ22に挿入され、挿入された状態を固定ナット15で固定することによって
図2に示す結合状態となり、測定に供されるようになっている。
なお、電極側コネクタ13がケーブル側コネクタ22に挿入された状態を固定する手段については、特に限定はない。
【0021】
また、電極側コネクタ13とケーブル側コネクタ22の具体的構成に限定はない。例えば、電極側コネクタ13側に複数のピン端子を有し、ケーブル側コネクタ22に、その複数のピン端子が挿入される複数のピン挿入部を有する構造の物を好適に使用できる。
電極側コネクタ13に複数のピン端子を設ける場合、ピン端子の数は、電極10とデータ処理機能付きケーブル20とでやりとりするデータの数に応じて適宜設定される。
【0022】
検出部11としては、pH検出部、酸化還元電位検出部、イオン濃度検出部、導電率検出部、溶存酸素検出部、残留塩素検出部、濁度検出部、温度検出部、又はこれらの2以上の組み合わせが挙げられる。
pH検出部としては、ガラス電極と比較電極とを組み合わせた複合pH検出部、ガラス電極と内部にガラス電極を有する比較電極とアース電極とを組み合わせた差動複合pH検出部等が挙げられる。
pH検出部は、温度補償等に用いる温度検出部と組み合わされることが好ましい。
【0023】
検出部11によって得られるアナログ検出値は、検出部11がpH検出部、酸化還元電位検出部、又はイオン濃度検出部の場合は電位差である。
また、検出部11が導電率検出部である場合は抵抗値、溶存酸素検出部又は残留塩素検出部の場合は電流値、濁度検出部の場合は光量、温度検出部の場合は抵抗値である。
【0024】
図3は、測定システム1にコントローラ50を接続した制御システム全体の機能図である。なお、
図3における実線矢印は情報の流れを、破線矢印は電力の流れを示す。
電極内基板12には、
図3に示すように、プリアンプ31とメモリ32とが設けられている。また、検出部11によって得られたアナログ検出値が、プリアンプ31によって増幅されるようになっている。
プリアンプ31は必須ではないが、検出部11内にプリアンプ31を備えることにより、安定したアナログ検出値を、出力することが可能となる。
【0025】
メモリ32には、検出部11に関する固有情報が記憶されている。
検出部11に関する固有情報は、検出部11がpH検出部の場合は、少なくとも、電位差をpHに換算するための検量線情報(校正情報)を含むことが好ましい。検出部11が導電率検出部である場合は、少なくとも、セル定数を含むことが好ましい。検出部11がイオン濃度検出部である場合は、少なくとも、電位差をイオン濃度に換算するための検量線情報(校正情報)を含むことが好ましい。
メモリ32に記憶させてもよいその他の固有情報としては、例えば、検出部11の種類、製造番号等の識別情報、検出部11の使用有効期限、校正履歴、健全性、応答特性等が挙げられる。
【0026】
ケーブル内基板21には、
図3に示すように、A/D変換部41、演算制御部42(CPU)、電源部45、デジタルインターフェース部46、アナログインターフェース部47が設けられている。演算制御部42は、演算部43とD/A変換部44を有している。演算制御部42は、また、図示を省略するCPU内蔵或いは外付けメモリを有し、メモリには、演算部43が演算し出力するための手順、演算式及びデータなどが記憶されている。
A/D変換部41は、電極内基板12のプリアンプ31から、増幅されたアナログ検出値が入力されて、演算制御部42が受領可能なデジタル検出値に変換するようになっている。
なお、電極内基板12ではなく、ケーブル内基板21の方にアンプを設けて、検出部11のアナログ検出値を増幅してからA/D変換部41に入力することも可能である。
【0027】
演算制御部42の演算部43は、A/D変換部41からデジタル検出値が入力されると共に、電極内基板12のメモリ32から、検出部11に関する固有情報(デジタル情報)が入力され、デジタル検出値を、デジタル測定値に変換するようになっている。デジタル測定値は、デジタル検出値(例えば電位差)に基づいた演算によって求められるデジタル形式の測定値(例えばpH)である。
【0028】
検出部11が導電率検出部である場合は、デジタル検出値が抵抗値、デジタル測定値が導電率である。検出部11が溶存酸素検出部又は残留塩素検出部である場合はデジタル検出値が電流値、デジタル測定値が溶存酸素濃度や残留塩素濃度である。検出部11が濁度検出部である場合はデジタル検出値が光量、デジタル測定値が濁度である。検出部11が温度検出部である場合はデジタル検出値が抵抗値、デジタル測定値が温度である。
【0029】
変換されたデジタル測定値は、そのままの状態で、デジタルインターフェース部46を介して、外部のコントローラ50等に出力されるようになっている。
また、変換されたデジタル測定値は、D/A変換部44でアナログ測定値に変換されて、アナログインターフェース部47を介して、上位機器であるコントローラ50等に出力されるようになっている。
【0030】
なお、コントローラ50に対する出力は、デジタルインターフェース部46を介したアナログ測定値だけであってもよい。アナログ測定値を出力できることにより、デジタル測定値を直接受けられず、アナログ測定値のみを受け取れるコントローラ50にも直接測定システム1を接続することができる。
【0031】
コントローラ50に対する出力が、アナログ測定値とデジタル測定値の双方である場合、各々の測定値は、各々別個の2線を使用して出力されてもよいし、共通の2線を用い、例えば、アナログ測定値にデジタル測定値を重畳して出力してもよい。アナログ測定値にデジタル測定値を重畳して出力する場合、例えば、HART規格を利用できる。
また、アナログ測定値にデジタル測定値を重畳した出力状態と、アナログ測定値のみを出力する状態を、スイッチ手段を用いて選択できるようにしてもよい。
【0032】
電源部45は、コントローラ50等から電力を受けて、
図3の破線矢印に示すように、電極内基板12及びケーブル内基板21の各素子に電力を供給するようになっている。
なお、電源部45に電力はコントローラ50から供給されるのではなく、直接、配電盤、分電盤、コンセント等から供給を受けるようになっていてもよい。また、電源部45は、電池であってもよい。
また、電極内基板12内の素子は、電源部45からではなく、電極10に内蔵された電池で駆動するようにしてもよい。
【0033】
コントローラ50は、アナログ測定値又はデジタル測定値を利用した判断に基づき、他の要素を制御するようになっている。
他の要素としては、原料、試薬、計装エア等を送る各種ポンプ、電動機等の駆動装置、開閉弁、三方弁等の各種弁装置、ヒーター等の加熱・冷却装置等が挙げられる。
なお、測定システム1に接続する上位機器としては、コントローラの他に、シーケンサ、表示器、警報器、受信計、(ハンドヘルド)コミュニケータ、コンピュータ、通信装置(システム)、監視装置(システム)、制御装置(システム)等が挙げられる。
【0034】
本実施形態の測定システム1の動作を検出部11が、pH検出部と温度検出部との組み合わせである場合を例にとって説明する。
電極10のメモリ32には、製造メーカー等によって、予め、電位差をpHに換算するための検量線情報等の固有情報が記憶されている。
【0035】
この電極10を試料液に浸漬すると、検出部11は、アナログ検出値として、pHに応じた電位差と、温度に応じた抵抗値を出力する。この電位差と抵抗値は、プリアンプ31で増幅された後、A/D変換部41でデジタル検出値に変換される。
【0036】
演算制御部42の演算部43には、A/D変換部41からデジタル化された電位差がデジタル検出値として入力されると共に、デジタル化された温度検出部の抵抗値がデジタル検出値として入力される。そして、メモリ32から受領した検出部11に関する固有情報(デジタル情報)、例えば電位差をpHに換算するための検量線情報(固有情報)と温度検出部(デジタル検出値)から得た温度を用いて、電位差(デジタル検出値)をpH値(デジタル測定値)に変換する。
【0037】
変換されたpH値(デジタル測定値)は、そのままの状態で、デジタルインターフェース部46を介して、外部のコントローラ50等に出力される。
また、変換されたpH値(デジタル測定値)は、D/A変換部44でアナログ測定値に変換されて、アナログインターフェース部47を介して、外部のコントローラ50等に出力される。
コントローラ50は、変換されたpH値に基づき判断を行い、例えば、pH調整のための薬液ポンプを駆動させる。
【0038】
メモリ32に記憶させた電位差をpHに換算するための検量線情報等を修正する必要がある場合は、コントローラ50からの指示を受けた演算部43により、メモリ32の内容を書き換えしてもよい。
また、コントローラ50に代えて、USBアダプタ等を用いて測定システム1にパソコンを接続し、パソコンからの指示を受けた演算部43により、メモリ32の内容を書き換えしてもよい。
【0039】
また、ケーブル内基板21と同等の機能を備える変換装置を用い、電極10のみを測定現場から実験室等に運び、実験室等で校正作業等を行うことにより、メモリ32の内容を書き換えしてもよい。
なお、検出部11がpH検出部である場合、通常は、定期的なメモリ32の書き換え(校正作業)を要するが、pH検出部として、差動複合pH検出部のように安定性の高い検出部を用いることにより、メモリ32の書き換え(校正作業)を大幅に省略することも可能である。
【0040】
電極10を、劣化等の理由により交換する際は、データ処理機能付きケーブル20をそのままの配線状態としたまま、電極10のみを交換すればよい。また、交換後、検出部11の固有情報は電極10内のメモリ32に記憶させてあるので、データ処理機能付きケーブル20のケーブル内基板21のデータ書き換え等の作業は不要である。
【0041】
また、電極10を、別の種類の電極に交換する際も、ケーブル内基板21のデータ書き換え等の作業は不要である。そのため、例えば、検出部11がpH検出部である電極10を、検出部11が導電率検出部である電極10に交換し、その後再度検出部11がpH検出部である電極10に戻す場合も、ケーブル内基板21のデータ書き換え等の作業を行うことなく、交換後の電極10を使用することができる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態の測定システム1によれば、特に指示変換装置(装置本体)を設けることなく、電極10をそのままコントローラ50に接続できるため、制御システム全体を、非常に簡易な構成とすることができる。また、汎用性の高いアナログ測定値の出力が可能であるため、制御システム構築の自由度も高い。また、電極交換時にデータ書き換えの作業が不要なため、メンテナンスが容易である。
【符号の説明】
【0043】
1…測定システム、10…電極、11…検出部、12…電極内基板、
13…電極側コネクタ、14…電極ボディ、15…固定ナット、
20…データ処理機能付きケーブル、21…ケーブル内基板、
22…ケーブル側コネクタ、23…基板収納部、24…ケーブル本体、25…棒端子、
31…プリアンプ、32…メモリ、41…A/D変換部、42…演算制御部、
43…演算部、44…D/A変換部、45…電源部、
46…デジタルインターフェース部、47…アナログインターフェース部、
50…コントローラ