(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-30
(45)【発行日】2023-06-07
(54)【発明の名称】シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/60 20060101AFI20230531BHJP
A47C 31/11 20060101ALI20230531BHJP
【FI】
B60N2/60
A47C31/11 Z
(21)【出願番号】P 2019126408
(22)【出願日】2019-07-05
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】竹沢 良一郎
(72)【発明者】
【氏名】柴田 章彦
(72)【発明者】
【氏名】大城 竜哉
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 亮
【審査官】杉▲崎▼ 覚
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-116461(JP,A)
【文献】特開2001-299411(JP,A)
【文献】特開2016-097773(JP,A)
【文献】特開2007-111104(JP,A)
【文献】特開2000-070078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/60
A47C 31/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート本体と、
前記シート本体を被覆するベースカバーと、
前記ベースカバーに対して着脱可能なシートカバーと、
を備え、
前記ベースカバーと前記シートカバーには、互いに着脱可能な面ファスナがそれぞれ設けられており、
前記面ファスナには、前記ベースカバーに対する前記シートカバーの装着位置を決めるための、互いに着脱可能な点状の係止具がそれぞれ設けられ
、
シートクッションの前記ベースカバーの前端と後端、及び/又はシートバックの前記ベースカバーの上端と下端に、それぞれ面ファスナが設けられ、
前記シートクッション及び/又は前記シートバックの前記ベースカバーの中央部にも面ファスナが設けられており、
前記ベースカバーの中央部の面ファスナは、前記ベースカバーの前端と後端の面ファスナ、及び/又は前記ベースカバーの上端と下端の面ファスナよりも短いことを特徴とするシート。
【請求項2】
前記係止具は、前記面ファスナに複数設けられていることを特徴とする請求項1に記載のシート。
【請求項3】
前記係止具は、前記面ファスナの両端にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項2に記載のシート。
【請求項4】
前記係止具は、前記シートカバーの外周部分に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のシート。
【請求項5】
前記係止具は、ボタンであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のシート。
【請求項6】
前記面ファスナは、前記ベースカバーの中央部に左右方向に延びるように設けられていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のシート。
【請求項7】
前記シートカバーの前記面ファスナが、前記シートカバーに設けられた2枚重ねの部分のうち裏面側に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項
6のいずれか一項に記載のシート。
【請求項8】
前記シートカバーの外周部分の全部又は一部に線ファスナが設けられていることを特徴とする請求項1から請求項
7のいずれか一項に記載のシート。
【請求項9】
シートクッションの前記ベースカバーのうち、前記シートカバーより外側に位置するサイド部の上端が、前記シートカバーの上端より上方に位置していることを特徴とする請求項1から請求項
8のいずれか一項に記載のシート。
【請求項10】
シートバックの前記ベースカバーのうち、前記シートカバーより外側に位置するサイド部の前端が、前記シートカバーの前端より前側に位置していることを特徴とする請求項1から請求項
9のいずれか一項に記載のシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートクッション等にシートカバーを着脱可能なシートに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両用のシートを好みのデザインに変える等の目的で、シートのシートクッションやシートバック等のシート本体にシートカバーが装着される場合がある(例えば特許文献1等参照)。
【0003】
そして、汎用のシートカバーとしては、例えば、シートクッションやシートバック等に被せるようにして用いる袋状のシートカバーが知られている。
また、専用のシートカバーとしては、対象のシート本体の凹凸に合わせて凹凸が形成されるなどしたシートカバーが知られており、シート本体に設けた面ファスナに、シートカバーに設けた面ファスナを取り付けるようにして装着するように構成されたものが多い。線ファスナが用いられる場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、面ファスナ同士を取り付けてシート本体にシートカバーを装着する際、面ファスナは、互いの位置が多少ずれても結合してしまうため、シートカバーがシート本体に本来の装着位置から位置ずれした状態で装着されてしまう場合があった。
そして、ユーザがそれを直すために面ファスナを取り付けたり取り外したりしなければならず、装着が面倒になる場合があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、シートカバーを装着位置に、位置ずれすることなく簡単に装着することが可能なシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、シートにおいて、
シート本体と、
前記シート本体を被覆するベースカバーと、
前記ベースカバーに対して着脱可能なシートカバーと、
を備え、
前記ベースカバーと前記シートカバーには、互いに着脱可能な面ファスナがそれぞれ設けられており、
前記面ファスナには、前記ベースカバーに対する前記シートカバーの装着位置を決めるための、互いに着脱可能な点状の係止具がそれぞれ設けられ、
シートクッションの前記ベースカバーの前端と後端、及び/又はシートバックの前記ベースカバーの上端と下端に、それぞれ面ファスナが設けられ、
前記シートクッション及び/又は前記シートバックの前記ベースカバーの中央部にも面ファスナが設けられており、
前記ベースカバーの中央部の面ファスナは、前記ベースカバーの前端と後端の面ファスナ、及び/又は前記ベースカバーの上端と下端の面ファスナよりも短いことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のシートにおいて、前記係止具は、前記面ファスナに複数設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のシートにおいて、前記係止具は、前記面ファスナの両端にそれぞれ設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のシートにおいて、前記係止具は、前記シートカバーの外周部分に設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のシートにおいて、前記係止具は、ボタンであることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のシートにおいて、前記面ファスナは、前記ベースカバーの中央部に左右方向に延びるように設けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のシートにおいて、前記シートカバーの前記面ファスナが、前記シートカバーに設けられた2枚重ねの部分のうち裏面側に設けられていることを特徴とする。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のシートにおいて、前記シートカバーの外周部分の全部又は一部に線ファスナが設けられていることを特徴とする。
【0017】
請求項9に記載の発明は、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のシートにおいて、シートクッションの前記ベースカバーのうち、前記シートカバーより外側に位置するサイド部の上端が、前記シートカバーの上端より上方に位置していることを特徴とする。
【0018】
請求項10に記載の発明は、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のシートにおいて、シートバックの前記ベースカバーのうち、前記シートカバーより外側に位置するサイド部の前端が、前記シートカバーの前端より前側に位置していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載の発明によれば、シートカバーやシート本体のベースカバー点状の係止具をそれぞれ設け、それらを係止してシートカバーをベースカバーに装着するため、シートカバーを装着位置に位置ずれすることなく簡単に装着することが可能となる。
請求項1に記載の発明によれば、着座者がシートに着座する際に、着座者の身体等がシートカバーの前端等に引っ掛かってシートカバーがめくれることが抑制されるとともに、ベースカバーの面ファスナとシートカバーの面ファスナとをそれぞれ結合させたり外したりしてシートカバーをベースカバーに簡単に着脱させることが可能となる。
請求項1に記載の発明によれば、ベースカバーの前端と後端又は上端と下端の面ファスナよりも中央部の面ファスナを短くすることができるため、コストを抑えることが可能となる。
【0020】
請求項2に記載の発明によれば、点状の係止具を中心としてシートカバーがベースカバーに対して回転する方向に位置ずれを生じることを抑制することが可能となり、シートカバーを本来の装着位置に位置ずれすることなく装着することが可能となる。
【0021】
請求項3に記載の発明によれば、シートカバーを本来の装着位置に位置ずれすることなく装着することが可能となるとともに、シートカバーの装着を簡単に行うことが可能となる。
【0022】
請求項4に記載の発明によれば、着座者がシートに着座する際に、着座者の身体等がシートカバーの外周部分に引っ掛かってシートカバーがめくれることが抑制されるとともに、シートカバーの点状の係止具とベースカバーの点状の係止具とを係止させたり外したりしてシートカバーをベースカバーに簡単に着脱させることが可能となる。
【0023】
請求項5に記載の発明によれば、点状の係止具がボタンであれば、シートカバーの点状の係止具との着脱を簡単に行うことが可能となる。
【0024】
請求項6に記載の発明によれば、シートカバーの装着を簡単に行うことが可能となる。
【0027】
請求項7に記載の発明によれば、シートカバーと面ファスナの縫い目をシートカバーの表面側から見えないようにすることが可能となり、シートカバーのデザイン性を向上させることが可能となる。
【0028】
請求項8に記載の発明によれば、着座者がシートに着座する際に、着座者の身体等がシートカバーの外周部分に引っ掛かってシートカバーがめくれることが抑制されるとともに、線ファスナを閉じたり開いたりしてシートカバーをベースカバーに簡単に着脱させることが可能となる。
【0029】
請求項9に記載の発明によれば、着座者がシートに着座する際に、着座者の身体等がシートカバーの外周部分に引っ掛かることが抑制されるため、着座者がシートに着座する際にシートカバーの外周部分がめくれ上がる等の事態が生じることを抑制することが可能となる。
【0030】
請求項10に記載の発明によれば、着座者がシートに着座する際に、着座者の身体等がシートカバーの外周部分に引っ掛かることが抑制されるため、着座者がシートに着座する際にシートカバーの外周部分がめくれる等の事態が生じることを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本実施形態に係るシートの構成を表す斜視図である。
【
図2】構成例1における(A)シートクッションのサイド部付近及び(B)シートバックのサイド部付近の断面図である。
【
図3】構成例1においてシートカバーをシートクッションのベースカバーに装着した状態を表す図である。
【
図4】構成例2において線ファスナが設けられた部分の拡大図である。
【
図5】構成例2においてシートカバーをシートクッションのベースカバーに装着した状態を表す図である。
【
図6】構成例3においてシートカバーの外周部分に設けられた点状の係止具の例を表す図である。
【
図7】構成例3においてシートカバーをシートクッションのベースカバーに装着した状態を表す図である。
【
図8】構成例4においてベースカバーやシートカバーの前端と後端にそれぞれ面ファスナが設けられた状態を表す図である。
【
図9】構成例4においてシートカバーをシートクッションのベースカバーに装着した状態を表す図である。
【
図10】構成例5においてシートカバーの2枚重ねの部分の裏面側に設けた面ファスナを表す断面図である。
【
図11】構成例6における面ファスナの取り付け位置やシートカバーのベースカバーへの取り付け方等を表す図である。
【
図12】構成例7におけるフック等の構成や取り付け方等を表す図である。
【
図13】構成例7におけるフック等の別の構成や取り付け方等を表す図である。
【
図14】凸部が設けられたフックや固定部材を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の技術的範囲を以下の実施形態および図示例に限定するものではない。
なお、以下では、前後、左右、上下の各方向については、シートに着座した着座者が向く方向を前方とした場合の各方向を基準として説明する。
【0033】
図1は、本実施形態に係るシートの構成を表す斜視図である。
シート10は、シート本体と、シートカバー18とを備えている。
シート本体は、着座者の臀部や大腿部を支持するシートクッション11と、背もたれとなるシートバック12と、着座者の頭部を支持するヘッドレスト13等で構成されている。なお、この他、ネックレストやアームレスト、フットレスト、オットマン等の補助支持部を備えていてもよい。
【0034】
そして、シート10は、シート本体の骨格となるシートフレーム(不図示)を有し、シートフレーム上に配置されたクッションパッド14(後述する
図2等参照)等を被覆するようにベースカバー15が設けられている。
このようにして、シート本体(シートクッション11やシートバック12等)がベースカバー15により被覆されている。
【0035】
また、シートクッション11のベースカバー15やシートバック12のベースカバー15には、後述するシートカバー18に対向する面にそれぞれ面ファスナ16が設けられており、各ベースカバー15の面ファスナ16には、点状の係止具17がそれぞれ設けられている。
なお、「点状の係止具」とは、点状に配置された係止具を表す。すなわち、面ファスナが面状に配置された係止具であり、後述する線ファスナが線状に配置された係止具であることに対する概念である。
【0036】
また、本実施形態では、点状の係止具17は、スナップボタンのようなボタンである。このように点状の係止具17がボタンであれば、後述するシートカバー18の点状の係止具(ボタン)20との着脱を簡単に行うことが可能となる。
なお、以下では、点状の係止具17をボタン17と記載する場合があるが、点状の係止具17はボタン以外であってもよく、例えば磁石や後述するフック(
図12参照)等であってもよい。また、以上の点は、後述するシートカバー18の点状の係止具20、22やボタン20、22等についても同様である。
【0037】
一方、シート10は、ベースカバー15に対して着脱可能なシートカバー18を有している。
本実施形態では、シートカバー18は、シートクッション11のベースカバー15に装着するものと、シートバック12のベースカバー15に装着するものの2種類用意されているが、いずれか一方のみに取り付ける構成であってもよい。
【0038】
シートカバー18には、ベースカバー15に対向する面にそれぞれ面ファスナ19が設けられており、面ファスナ19にはボタン(点状の係止具)20がそれぞれ設けられている。
そして、ベースカバー15の面ファスナ16やボタン17とシートカバー18の面ファスナ19やボタン20とがそれぞれ互いに着脱可能とされている。
【0039】
そして、本実施形態に係るシート10では、シートカバー18をシートクッション11やシートバック12のベースカバー15に装着した際に、ベースカバー15の面ファスナ16とシートカバー18の面ファスナ19とが結合するが、それとともに、ベースカバー15のボタン17とシートカバー18のボタン20とが係止されることで、ベースカバー15に対するシートカバー18の装着位置が決められるようになっている。
【0040】
すなわち、前述したように、従来のシートカバーは、例えば面ファスナでシート本体のベースカバーに装着されたため、シートカバーがシート本体に本来の装着位置から位置ずれした状態でも面ファスナ同士が結合してしまい、シートカバーが位置ずれした状態で装着されてしまう場合があった。
それに対し、本実施形態では、上記のように、シートカバー18が、シートカバー18のボタン20とベースカバー15のボタン17とが係止されることによってベースカバー15に装着される。そして、その際、シートカバー18のベースカバー15に対する位置がずれているとボタン17、20同士の位置がずれてしまいそれらを係止することができない。シートカバー18がベースカバー15に対して位置ずれしていない場合にのみボタン17、20同士を係止することができる。
【0041】
そのため、本実施形態に係るシート10では、シート本体のベースカバー15やシートカバー18にボタン(点状の係止具)17、20をそれぞれ設け、それらを係止することでシートカバー18をベースカバー15に装着するように構成したため、シートカバー18をシート本体のベースカバー15に装着する際の本来の装着位置に位置ずれすることなく装着することが可能となる。
また、シートカバー18をベースカバー15に装着する際に、ボタン(点状の係止具)17、20同士を係止させ面ファスナ16、19同士を結合させるだけでシートカバー18を装着位置に装着することができるため、シートカバー18を非常に簡単に装着位置に装着することが可能となる。
【0042】
なお、ベースカバー15の面ファスナ16にボタン(点状の係止具)17を1つだけ設けるように構成しても、それにシートカバー18のボタン(点状の係止具)20を係止させることでシートカバー18を装着位置に位置ずれすることなく簡単に装着することができるが、この場合、係止されたボタン17、20を中心としてシートカバー18がベースカバー15に対して回転する方向に位置ずれを生じ得る場合がある。
そのため、
図1に示したように、ボタン(点状の係止具)17、20を面ファスナ16、19にそれぞれ複数設けるように構成すれば、ボタン(点状の係止具)17、20を中心としてシートカバー18がベースカバー15に対して回転する方向に位置ずれを生じることを抑制することが可能となり、シートカバー18を本来の装着位置に位置ずれすることなく装着することが可能となる。
【0043】
また、その際、ボタン(点状の係止具)17、20を面ファスナ16、19の両端にそれぞれ設けるように構成すれば、シートカバー18を本来の装着位置に位置ずれすることなく装着することが可能となるとともに、ユーザがボタンをとめる動作を2回行うだけでよくなるため、シートカバー18の装着を簡単に行うことが可能となる。
また、
図1に示したように、面ファスナ16が、シートクッション11やシートバック12のベースカバー15の中央部に左右方向に延びるように設けられていれば、シートカバー18の中央部に設けられた面ファスナ19をベースカバー15の中央部に設けられた面ファスナ16に結合させてシートカバー18を装着することが可能となるため、シートカバー18の装着を簡単に行うことが可能となる。
【0044】
ところで、
図1に示したシート10では、シートカバー18の中央部に設けられた面ファスナ19やボタン20がベースカバー15に取り付けられるだけであるため、シートカバー18を装着位置に位置ずれすることなく簡単に装着することは可能になるが、シートカバー18の外周部分はベースカバー15に固定されていないため、着座者がシート10に着座する際にシートカバー18の外周部分がめくれ上がる等の事態が生じる可能性がある。
そこで、このような事態が生じることを抑制するための構成について、いくつかの構成例を挙げて説明する。
【0045】
[構成例1]
例えば、
図2(A)に示すように、シートクッション11のベースカバー15のうち、装着したシートカバー18より外側に位置するサイド部11Aの上端αが、シートカバー18の上端βより上方に位置するように構成することが可能である。
このように構成すれば、シートクッション11のベースカバー15のサイド部11Aの方がシートクッション18より高いため、着座者がシート10に着座する際に、着座者の身体等がシートカバー18の外周部分に引っ掛かることが抑制される。そのため、着座者がシート10に着座する際にシートカバー18の外周部分がめくれ上がる等の事態が生じることを抑制することが可能となる。
【0046】
また、シートバック12においては、
図2(B)に示すように、シートバック12のベースカバー15のうち、シートカバー18より外側に位置するサイド部12Aの前端γが、シートカバー18の前端δより前側に位置するように構成することが可能である。
このように構成すれば、上記のシートクッション11の場合と同様に、着座者がシート10に着座する際に、着座者の身体等がシートカバー18の外周部分に引っ掛かることが抑制される。そのため、着座者がシート10に着座する際にシートカバー18の外周部分がめくれる等の事態が生じることを抑制することが可能となる。
【0047】
この構成例1において、シートカバー18をシートクッション11のベースカバー15に装着した状態を
図3に示す。
なお、以下では、シートカバー18をシートクッション11のベースカバー15に装着する場合について説明し、シートバック12に装着する場合については説明を省略する場合があるが、シートカバー18をシートバック12に装着する場合についても同様に説明される。
【0048】
この場合、
図3に示すように、シートカバー18は、シートクッション11の左右のサイド部11Aの間でいわば埋もれるような状態になるため、着座者がシート10に着座する際に、着座者の身体等がシートカバー18の外周部分に引っ掛かることが抑制される。
なお、
図3では、シートカバー18の表面上にボタン20が見えるようにデザインされている場合が示されているが、例えば後述する
図5に示すようにボタン20をシートカバー18の裏面側に隠すようにデザインすることも可能である。
【0049】
[構成例2]
また、
図4に示すように、シートカバー18の外周部分の全部又は一部に線ファスナ21を設けるように構成することも可能である。線ファスナ21を閉じたり開いたりして、シートカバー18をベースカバー15に簡単に着脱させることが可能となる。
なお、
図4では、シートカバー18をベースカバー15に装着した状態で線ファスナ21を視認できる状態とされている場合が示されているが、線ファスナ21を視認されないようにするために線ファスナ21の上側に図示しないカバーを設けるように構成することも可能である。
【0050】
この場合、
図5に示すように、シートカバー18は、外周部分の全部又は一部が線ファスナ21でベースカバー15に固定されてベースカバー15に装着される。
そのため、着座者がシート10に着座する際に、着座者の身体等がシートカバー18の外周部分に引っ掛かってシートカバー18がめくれることが抑制される。
【0051】
[構成例3]
また、
図6に示すように、シートカバー18の外周部分に点状の係止具22を設けるように構成することも可能である。この場合、上記と同様に点状の係止具22をボタンで構成することが可能であるが、磁石やフック等であってもよい。また、ベースカバー15の対応する位置にも点状の係止具が設けられる。
そして、シートカバー18の点状の係止具22とベースカバー15の点状の係止具とを係止させたり外したりして、シートカバー18をベースカバー15に簡単に着脱させることが可能となる。
【0052】
この場合、
図7に示すように、シートカバー18は、外周部分の点状の係止具22がそれぞれベースカバー15の点状の係止具23と係止されてシートクッション11に装着される。
そのため、着座者がシート10に着座する際に、着座者の身体等がシートカバー18の外周部分に引っ掛かってシートカバー18がめくれることが抑制される。
【0053】
[構成例4]
また、
図8に示すように、シートクッション11のベースカバー15の前端と後端にそれぞれ面ファスナ24、25を設けるように構成することも可能である。なお、図示を省略するが、シートバック12(
図1参照)の場合には、シートバック12のベースカバー15の上端と下端にそれぞれ面ファスナを設けることも可能である。シートカバー18の対応する位置(すなわち前端と後端等)にも面ファスナ26、27が設けられる。
そして、ベースカバー15の面ファスナ24、25とシートカバー18の面ファスナ26、27とをそれぞれ結合させたり外したりして、シートカバー18をベースカバー15に簡単に着脱させることが可能となる。
【0054】
この場合、
図9に示すように、シートカバー18は、前端と後端の面ファスナ26、27がそれぞれベースカバー15の面ファスナ24、25と結合されてシートクッション11に装着される。
そのため、着座者がシート10に着座する際に、着座者の身体等がシートカバー18の前端等に引っ掛かってシートカバー18がめくれることが抑制される。
【0055】
なお、この構成例4において、
図9に示したように、ベースカバー15の中央部の面ファスナ16を、ベースカバー15の前端と後端の面ファスナ24、25(シートバック12の場合にはベースカバー15の上端と下端の面ファスナ)よりも短くすることが可能である。
このように構成すれば、ベースカバー15の前端と後端(又は上端と下端)の面ファスナ24、25が長いため、ベースカバー15の中央部の面ファスナ16が短くてもシートカバー18を確実にベースカバー15に装着することができる。そして、ベースカバー15の中央部の面ファスナ16を短くすることができるため、その分、コストを抑えることが可能となる。
【0056】
[構成例5]
上記の構成例4では、シートカバー15の前端と後端(又は上端と下端)にそれぞれ面ファスナ26、27を設ける場合について説明したが、シートカバー18の左端と右端(及びそれらに対応するベースカバー15の各位置)にそれぞれ面ファスナを設けるように構成することも可能である。
また、シートカバー18の前端と後端(又は上端と下端)に面ファスナ26、27を設ける場合も同様であるが、シートカバー18の左端と右端にそれぞれ面ファスナ28を設ける場合、
図10に示すように、シートカバー18の左端と右端にそれぞれ2枚重ねの部分Aを設けておき、面ファスナ28をシートカバー18の2枚重ねの部分のうち裏面側に設けるように構成することが可能である。
【0057】
なお、
図10では、シートカバー18の左端に面ファスナ28を設ける場合が示されており、ベースカバー15(不図示)は図中の下側にある。
このように構成すれば、面ファスナ28は、シートカバー18の2枚重ねの部分Aの裏面側にのみ縫い付けられ、表面側には縫い付けられないため、シートカバー18と面ファスナ28の縫い目をシートカバー18の表面側から見えないようにすることが可能となり、シートカバー18のデザイン性を向上させることが可能となる。
【0058】
[構成例6]
また、上記の構成例4、5では、シートカバー18の面ファスナをベースカバー15の面ファスナに結合させて装着する場合について説明したが、ベースカバー15には面ファスナを設けず、シートカバー18だけに設けるように構成することも可能である。
具体的には、例えば
図11に示すように、シートカバー18の例えば2枚重ねの部分Aの裏面側に面ファスナ28を設けるとともに、シートカバー18の裏面側の別の位置に、帯状に形成された面ファスナ29の一端側を取り付ける。
【0059】
そして、面ファスナ29の他端側を、ベースカバー15の裂け目に挿入し、クッションパッド14中に埋設されているインサートワイヤ30の下側を通して、ベースカバー15の上方に引き出す。そして、この面ファスナ29の他端側を、シートカバー18の裏面側に設けた面ファスナ28と結合させることで、シートカバー18をベースカバー15に装着することができる。
なお、上記の面ファスナ28、29を1つの面ファスナで形成することも可能である。
【0060】
[構成例7]
また、上記の各構成例では、シートカバー18を面ファスナや点状の係止具でベースカバー15に装着する場合について説明したが、例えばフックで装着するように構成することも可能である。
この場合、例えば
図12に示すように、シートカバー18の吊り込み部の吊り布31の下端にフック32を取り付けておく。また、ベースカバー15の裂け目の部分のクッションパッド14に凹部を設け、上面にコ字状やU字状のフック取付部材34が形成された固定部材33を凹部内に配置しておく。
【0061】
シートカバー18を装着する際には、シートカバー18の吊り布31を下方に引っ張ってベースカバー15の裂け目に挿入し、フック32をフック取付部材34に引っ掛けて取り付けることで、シートカバー18をベースカバー15に装着することができる。
なお、図示を省略するが、固定部材33は、例えば凹部の下側のクッションパッド14内に設けられている固定下地にアンカーで接続した状態で凹部内に配置される。
【0062】
また、フックによる装着を以下のようにして行うことも可能である。
すなわち、
図13に示すように、シートカバー18の吊り布31の下端に略円柱状の被係合部35を設けておく。また、被係合部35を包囲するようにして係合可能な係合部37を上面側に備え、下面にはフック32を有するフック部36を用意しておく。さらに、ベースカバー15の裂け目の部分のクッションパッド14の凹部に設けた固定部材33には開口部38を設けておく。
【0063】
シートカバー18を装着する際には、まず、フック部36の係合部37をシートカバー18の被係合部35に被せるようにして係合させて、フック部36をシートカバー18の吊り布31に取り付ける。
そして、その状態でシートカバー18の吊り布31を下方に引っ張ってベースカバー15の裂け目に挿入し、フック32を固定部材33の開口部38に挿入し引っ掛けて取り付けることで、シートカバー18をベースカバー15に装着することができる。
【0064】
なお、この場合、フック32を固定部材33の開口部38に引っ掛けるだけでは比較的容易に外れてしまう可能性がある。
そのため、例えば
図14に示すように、フック32や固定部材33に凸部39、40等を設けるなどして容易には外れないようにすることも可能である。
【0065】
なお、上記の構成例1~7を組み合わせてもよい。
また、本発明は上記の実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0066】
10 シート
11 シートクッション(シート本体)
11A サイド部
12 シートバック(シート本体)
12A サイド部
15 ベースカバー
18 シートカバー
19 面ファスナ
20 ボタン(点状の係止具、ボタン)
21 線ファスナ
22 係止具
24、25 面ファスナ
A 2枚重ねの部分
α サイド部の上端
β シートカバーの上端
γ サイド部の前端
δ シートカバーの前端