(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-30
(45)【発行日】2023-06-07
(54)【発明の名称】直線駆動装置及びロック装置
(51)【国際特許分類】
F16H 25/20 20060101AFI20230531BHJP
B60L 53/16 20190101ALN20230531BHJP
【FI】
F16H25/20 H
B60L53/16
(21)【出願番号】P 2021132939
(22)【出願日】2021-08-17
【審査請求日】2021-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】591038587
【氏名又は名称】株式会社アンセイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】弁理士法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】奥山 雅也
(72)【発明者】
【氏名】藤本 真義
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/073854(WO,A1)
【文献】特開2020-046057(JP,A)
【文献】特開平11-270645(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0002906(US,A1)
【文献】中国実用新案第2832106(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 25/20
B60L 53/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心周りに形成された
螺旋状に延びる溝及び突条よりなる螺旋溝部を有する回動部材と、
前記軸心周りに形成され、前記螺旋溝部と噛み合う
螺旋状に延びる溝及び突条よりなる噛み合い部を有し、
前記螺旋溝部と前記噛み合い部との噛み合いによって、前記回動部材が前記軸心周りの一方向に回動することにより前記軸心方向の一方に向けて直線移動
するとともに、前記回動部材が前記軸心周りの他方向に回動することにより前記軸心方向の他方に向けて直線移動する直動部材と、
前記回動部材を前記軸心周りに回動可能に支持するとともに、前記直動部材を前記軸心周りに回動不能かつ前記軸心方向に往復動可能に支持するハウジングと、を備え、
前記回動部材には第1当接部が形成され、
前記直動部材には、前記回動部材が前記一方向に回動することにより、前記第1当接部と前記軸心周り方向に当接して前記直動部材の前記一方側への移動を規制する第1被当接部が形成された直線駆動装置において、
前記第1当接部は前記軸心方向における前記螺旋溝部の範囲内に設けられ
るとともに、前記螺旋溝部における前記軸心方向の他方側の端部に形成され、
前記第1被当接部は前記軸心方向における前記噛み合い部の範囲内に設けられ
るとともに、前記噛み合い部における前記軸心方向の他方側の端部に形成されていることを特徴とする直線駆動装置。
【請求項2】
前記螺旋溝部及び前記噛み合い部の一方が雄ねじに形成され、
前記螺旋溝部及び前記噛み合い部の他方が雌ねじに形成されている請求項1記載の直線駆動装置。
【請求項3】
前記第1当接部及び前記第1被当接部の一方は前記雄ねじにおける前記軸心方向の最も他方側のねじ山が欠切されてなり、
前記第1当接部及び前記第1被当接部の他方は前記雌ねじにおける前記軸心方向の最も他方側のねじ溝に壁部を画定してなる請求項2記載の直線駆動装置。
【請求項4】
前記第1当接部は前記軸心方向の最も他方側の前記ねじ山が欠切されてなり、
前記第1被当接部は前記軸心方向の最も他方側の前記ねじ溝に前記壁部を画定してなる請求項3記載の直線駆動装置。
【請求項5】
前記回動部材には第2当接部が形成され、
前記直動部材には、前記回動部材が前記他方向に回動することにより、前記第2当接部と前記軸心周り方向に当接して前記直動部材の前記他方側への移動を規制する第2被当接部が形成され、
前記第2当接部は前記軸心方向における前記螺旋溝部の範囲内に設けられ
るとともに、前記螺旋溝部における前記軸心方向の一方側の端部に形成され、
前記第2被当接部は前記軸心方向における前記噛み合い部の範囲内に設けられ
るとともに、前記噛み合い部における前記軸心方向の一方側の端部に形成されている請求項1
乃至4のいずれか1項記載の直線駆動装置。
【請求項6】
前記螺旋溝部及び前記噛み合い部の一方が雄ねじに形成され、
前記螺旋溝部及び前記噛み合い部の他方が雌ねじに形成されている請求項5記載の直線駆動装置。
【請求項7】
前記第2当接部及び前記第2被当接部の一方は前記雄ねじにおける前記軸心方向の最も一方側のねじ山が欠切されてなり、
前記第2当接部及び前記第2被当接部の他方は前記雌ねじにおける前記軸心方向の最も一方側のねじ溝に壁部を画定してなる請求項6記載の直線駆動装置。
【請求項8】
前記第2当接部は前記軸心方向の最も一方側の前記ねじ山が欠切されてなり、
前記第2被当接部は前記軸心方向の最も一方側の前記ねじ溝に前記壁部を画定してなる請求項7記載の直線駆動装置。
【請求項9】
前記ハウジングには第3当接部が形成され、
前記直動部材には、前記回動部材が前記一方向に回動することにより、前記第1当接部と前記第1被当接部とが当接する前に前記第3当接部と前記軸心方向に当接して前記直動部材の前記一方側への移動を規制する第3被当接部が形成されている請求項
5乃至8のいずれか1項記載の直線駆動装置。
【請求項10】
前記ハウジングには第4当接部が形成され、
前記直動部材には、前記回動部材が前記他方向に回動することにより、前記第2当接部と前記第2被当接部とが当接する前に前記第4当接部と前記軸心方向に当接して前記直動部材の前記他方側への移動を規制する第4被当接部が形成されている請求項
5乃至9のいずれか1項記載の直線駆動装置。
【請求項11】
前記ハウジングには第3当接部が形成され、
前記直動部材には、前記回動部材が前記一方向に回動することにより、前記第1当接部と前記第1被当接部とが当接する前に前記第3当接部と前記軸心方向に当接して前記直動部材の前記一方側への移動を規制する第3被当接部が形成されている請求項1
乃至4のいずれか1項記載の直線駆動装置。
【請求項12】
軸心周りに形成された螺旋溝部を有する回動部材と、
前記軸心周りに形成され、前記螺旋溝部と噛み合う噛み合い部を有し、前記回動部材が前記軸心周りの一方向に回動することにより前記軸心方向の一方に向けて直線移動し、前記回動部材が前記軸心周りの他方向に回動することにより前記軸心方向の他方に向けて直線移動する直動部材と、
前記回動部材を前記軸心周りに回動可能に支持するとともに、前記直動部材を前記軸心周りに回動不能かつ前記軸心方向に往復動可能に支持するハウジングと、を備え、
前記回動部材には第1当接部が形成され、
前記直動部材には、前記回動部材が前記一方向に回動することにより、前記第1当接部と前記軸心周り方向に当接して前記直動部材の前記一方側への移動を規制する第1被当接部が形成された直線駆動装置において、
前記第1当接部は前記軸心方向における前記螺旋溝部の範囲内に設けられ、前記第1被当接部は前記軸心方向における前記噛み合い部の範囲内に設けられ、
前記回動部材には第2当接部が形成され、
前記直動部材には、前記回動部材が前記他方向に回動することにより、前記第2当接部と前記軸心周り方向に当接して前記直動部材の前記他方側への移動を規制する第2被当接部が形成され、
前記第2当接部は前記軸心方向における前記螺旋溝部の範囲内に設けられ、前記第2被当接部は前記軸心方向における前記噛み合い部の範囲内に設けられ、
前記回動部材は、前記軸心方向に棒状に延び、前記他方側の端部の外周面に前記螺旋溝部が設けられた回動軸を有し、
前記直動部材は、前記軸心方向に筒状に延び、前記一方側の端部の内周面に前記噛み合い部が設けられた直動軸を有し、
前記直動部材は、一端が開口し、前記開口から前記回動軸が挿入されるとともに前記噛み合い部の前記他方側の一部が形成された軸本体と、前記軸本体の前記一方側の端部に取り付けられ、前記噛み合い部の前記一方側の残部が形成されたストッパ部材と、を有し、
前記第1当接部は前記螺旋溝部の前記他方側の端部に設けられるとともに、前記第2当接部は前記螺旋溝部の前記一方側の端部に設けられ、
前記第1被当接部は前記噛み合い部の前記他方側の端部に設けられるとともに、前記第2被当接部は前記噛み合い部の前記一方側の端部に設けられている
ことを特徴とする直線駆動装置。
【請求項13】
前記ハウジング内に設けられ、前記回動部材を前記軸心周りに回動駆動させるモータと、
前記ハウジングから突出し、前記回動部材を前記軸心周りに手動回動可能な操作部材と、をさらに備えている請求項1乃至
12のいずれか1項記載の直線駆動装置。
【請求項14】
車体と、前記車体に装着される装着装置と、前記直動部材が前記他方側へ直線移動することによって前記装着装置を前記車体から離脱不可とする請求項1乃至
13のいずれか1項記載の直線駆動装置と、を備えていることを特徴とするロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は直線駆動装置及びロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の直線駆動装置が開示されている。この直線駆動装置は、ハウジングと、回動部材と、直動部材とを備えている。
【0003】
回動部材は、軸心周りに形成された螺旋溝部を有している。直動部材は、軸心周りに形成され、螺旋溝部と噛み合う噛み合い部を有している。ハウジングは、回動部材を軸心周りに回動可能に支持するとともに、直動部材を軸心周りに回動不能、かつ、軸心方向に往復動可能に支持している。
【0004】
直動部材は、回動部材が軸心周りの一方向に回動することにより軸心方向の一方に向けて直線移動し、回動部材が軸心周りの他方向に回動することにより軸心方向の他方に向けて直線移動する。
【0005】
この直線駆動装置では、直動部材から軸心方向に交差する方向に延びた棒体をハウジングに対して軸心方向に当接させることにより、直動部材の軸心方向の直線移動を規制している。
【0006】
しかし、上記構造では、棒体がハウジングに当接することにより、直動部材の直線移動は直接規制されるが、回動部材の回動自体が規制されるわけではない。このため、棒体がハウジングに当接した後においても回動部材に駆動トルクが付与され続ければ、回動部材は回動し得る。そうすると、直線移動が規制された直動部材に対して回動部材がさらに回動して両部材が相対回転することになるため、螺旋溝部と噛み合い部とのクリアランスが詰まって、噛み合い部が螺旋溝部に食い込んでしまう。かかる食い込みの発生により、回動部材を円滑に回動させることができない、所謂セルフロック状態に陥るおそれがある。
【0007】
そこで、特許文献1に開示の直線駆動装置では、棒体に弾性体を外装することでセルフロック対策を施している。すなわち、弾性力を利用して棒体をハウジングから離隔する方向に戻すことにより、螺旋溝部と噛み合い部との食い込みを抑制させている。しかし、弾性体の劣化により弾性力が低下すれば、その対策も有効でなくなる。
【0008】
特許文献2に他の従来の直線駆動装置が開示されている。この直線駆動装置では、回動部材と直動部材とにそれぞれ設けた凸部同士を軸心周り方向に当接させることで、直動部材の直線移動を規制している。すなわち、軸心周りの回動が不能とされた直動部材の凸部に対して回動部材の凸部が軸心周り方向に当接すれば、回動部材の回動自体が規制され、その結果直動部材の直線移動も規制される。このため、両凸部同士が当接した後に回動部材に駆動トルクが付与され続けたとしても、回動部材がさらに回動して両部材が相対回転することがない。よって、噛み合い部が螺旋溝部に食い込むことがなく、セルフロックを回避することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2016-65605号公報
【文献】特許6422302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献2に開示の上記従来の直線駆動装置では、回動部材の軸心方向の端部に凸部を設けている。この回動部材の凸部を直動部材の凸部に軸心周り方向に当接させることで両部材の相対回転を規制するためには、回動部材の端部から軸心方向の外側に向けて凸部をある程度突出させる必要がある。そうすると、回動部材が軸心方向に大きくなってしまい、装置の大型化を招いてしまう。
【0011】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、装置の大型化を招くことなくセルフロックを回避することができ、しかも長期にわたってセルフロックを有効に回避することができる直線駆動装置及びロック装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の直線駆動装置は、
軸心周りに形成された螺旋状に延びる溝及び突条よりなる螺旋溝部を有する回動部材と、
前記軸心周りに形成され、前記螺旋溝部と噛み合う螺旋状に延びる溝及び突条よりなる噛み合い部を有し、前記螺旋溝部と前記噛み合い部との噛み合いによって、前記回動部材が前記軸心周りの一方向に回動することにより前記軸心方向の一方に向けて直線移動するとともに、前記回動部材が前記軸心周りの他方向に回動することにより前記軸心方向の他方に向けて直線移動する直動部材と、
前記回動部材を前記軸心周りに回動可能に支持するとともに、前記直動部材を前記軸心周りに回動不能かつ前記軸心方向に往復動可能に支持するハウジングと、を備え、
前記回動部材には第1当接部が形成され、
前記直動部材には、前記回動部材が前記一方向に回動することにより、前記第1当接部と前記軸心周り方向に当接して前記直動部材の前記一方側への移動を規制する第1被当接部が形成された直線駆動装置において、
前記第1当接部は前記軸心方向における前記螺旋溝部の範囲内に設けられるとともに、前記螺旋溝部における前記軸心方向の他方側の端部に形成され、
前記第1被当接部は前記軸心方向における前記噛み合い部の範囲内に設けられるとともに、前記噛み合い部における前記軸心方向の他方側の端部に形成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の直線駆動装置では、回動部材が軸心周りの一方向に回動して直動部材が軸心方向の一方に向けて直線移動した際、第1当接部と第1被当接部とが軸心周り方向に当接することにより、直動部材の軸心方向の一方側への直線移動が規制される。このとき、軸心周りの回動が不能とされた直動部材の第1被当接部に対して回動部材の第1当接部が軸心周り方向に当接して回動部材の回動自体が規制されるので、回動部材がさらに回動して回動部材と直動部材とが相対回転することがない。このため、螺旋溝部と噛み合い部とのクリアランスが詰まることがなく、螺旋溝部が噛み合い部に食い込むことがない。よって、螺旋溝部と噛み合い部との食い込みにより回動部材の円滑な回動が不能になる、所謂セルフロックを、劣化しやすい弾性体を使うことなく回避することができる。
【0014】
また、回動部材の第1当接部は、回動部材に元々形成されている螺旋溝部の範囲内に設けられている。このため、例えば回動部材の端部に軸心方向に第1当接部を突出させる場合のように、第1当接部を設けることによって回動部材が軸心方向に大きくなることがない。
【0015】
したがって、本発明の直線駆動装置では、装置の大型化を招くことなくセルフロックを回避することができ、しかも長期にわたってセルフロックを有効に回避することができる。
【0016】
回動部材には第2当接部が形成され、直動部材には第2被当接部が形成されていることが好ましい。第2当接部は軸心方向における螺旋溝部の範囲内に設けられ、第2被当接部は軸心方向における噛み合い部の範囲内に設けられていることが好ましい。そして、回動部材が他方向に回動することにより、第2当接部と第2被当接部とが軸心周り方向に当接して、直動部材の他方側への移動を規制することが好ましい。
【0017】
この場合、回動部材が軸心周りの他方向に回動して直動部材が軸心方向の他方に向けて直線移動する際、第2当接部と第2被当接部とが軸心周り方向に当接することで、直動部材の軸心方向の他方側への直線移動が規制される。このとき、回動部材の回動自体が規制されるので、回動部材がさらに回動して回動部材と直動部材とが相対回転することがない。このため、螺旋溝部と噛み合い部とのクリアランスが詰まることがなく、螺旋溝部が噛み合い部に食い込むことがない。よって、回動部材に対して直動部材が他方側に移動する際にも、劣化しやすい弾性体を使うことなく、所謂セルフロックを回避することができる。
【0018】
回動部材は、軸心方向に棒状に延び、他方側の端部の外周面に螺旋溝部が設けられた回動軸を有していることが好ましい。直動部材は、軸心方向に筒状に延び、一方側の端部の内周面に噛み合い部が設けられた直動軸を有していることが好ましい。直動部材は、一端が開口し、開口から回動軸が挿入される軸本体と、軸本体の一方側の端部に取り付けられたストッパ部材と、を有していることが好ましい。この場合、軸本体の開口から回動軸を挿入した後に、軸本体にストッパ部材を取り付けることができる。そして、軸本体には噛み合い部の他方側の一部が形成されるとともに、ストッパ部材には噛み合い部の一方側の残部が形成されていることが好ましい。さらに、第1当接部は螺旋溝部の他方側の端部に設けられるとともに、第2当接部は螺旋溝部の一方側の端部に設けられていることが好ましい。また、第1被当接部は噛み合い部の他方側の端部に設けられるとともに、第2被当接部は噛み合い部の一方側の端部に設けられていることが好ましい。
【0019】
ハウジングには第3当接部が形成され、直動部材には第3被当接部が形成されていることが好ましい。そして、回動部材が一方向に回動することにより、第1当接部と第1被当接部とが当接する前に第3当接部と第3被当接部とが軸心方向に当接して、直動部材の一方側への移動を規制することが好ましい。
【0020】
この場合、回動部材が軸心周りの一方向に回動して直動部材が軸心方向の一方に向けて直線移動する際、第3当接部と第3被当接部とが軸心方向に当接してから第1当接部と第1被当接部とが当接する。このため、当接部同士が当接する際の衝撃を分散させることができ、特に、第1当接部及び第1被当接部の変形や摩耗を軽減することができる。
【0021】
ハウジングには第4当接部が形成され、直動部材には第4被当接部が形成されていることが好ましい。そして、回動部材が他方向に回動することにより、第2当接部と第2被当接部とが当接する前に第4当接部と第4被当接部とが軸心方向に当接して、直動部材の他方側への移動を規制することが好ましい。
【0022】
この場合、回動部材が軸心周りの他方向に回動して直動部材が軸心方向の他方に向けて直線移動する際、第4当接部と第4被当接部とが軸心方向に当接してから第2当接部と第2被当接部とが当接する。このため、当接部同士が当接する際の衝撃を分散させることができ、特に、第2当接部及び第2被当接部の変形や摩耗を軽減することができる。
【0023】
本発明の直線駆動装置は、ハウジング内に設けられ、回動部材を軸心周りに回動駆動させるモータと、ハウジングから突出し、回動部材を軸心周りに手動回動可能な操作部材と、をさらに備えていることが好ましい。
【0024】
この場合、モータが故障した時であっても、ユーザが操作部材を手動で操作することにより回動部材を軸心周りに回動させて直動部材を軸心方向に直線移動させることができる。
【0025】
本発明のロック装置は、車体と、車体に装着される装着装置と、直動部材が他方側へ直線移動することによって装着装置を車体から離脱不可とする本発明の直線駆動装置と、を備えていることを特徴とする。
【0026】
本発明のロック装置では、直動部材が他方側へ直線移動することによって装着装置を車体から離脱不可とするロック装置において、装置の大型化を招くことなくセルフロックを回避し、しかも長期にわたってセルフロックを有効に回避することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の直線駆動装置及びその直線駆動装置を備えたロック装置によれば、装置の大型化を招くことなくセルフロックを回避し、しかも長期にわたってセルフロックを有効に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、実施例の直線駆動装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、実施例の直線駆動装置に係り、直線駆動装置から蓋体を外した状態を示す平面図である。
【
図3】
図3は、実施例の直線駆動装置に係り、回動部材及び直動部材の分解斜視図である。
【
図4】
図4は、実施例の直線駆動装置に係り、直動部材を構成する軸本体の内周面形状を部分的に示す軸本体の斜視図である。
【
図5】
図5は、実施例の直線駆動装置に係り、
図2のA-A線で切断したハウジング、回動部材及び直動部材の断面図である。
【
図6】
図6は、実施例の直線駆動装置に係り、直動部材が一方側に移動した引込位置にある状態を示す回動部材及び直動部材の斜視図である。
【
図7】
図7は、実施例の直線駆動装置に係り、直動部材が他方側に移動した突出位置にある状態を示す回動部材及び直動部材の斜視図である。
【
図8】
図8は、実施例の直線駆動装置に係り、直動部材が引込位置にあり、ハウジングの第3当接部と直動部材の第3被当接部とが軸心方向に当接した直後の状態を示す模式部分断面図である。
【
図9】
図9は、実施例の直線駆動装置に係り、
図8のB-B線で切断した回動部材及び直動部材の断面図である。
【
図10】
図10は、実施例の直線駆動装置に係り、直動部材が引込位置にあり、回動部材の第1当接部と直動部材の第1被当接部とが軸心周り方向に当接した状態を示す模式部分断面図である。
【
図11】
図11は、実施例の直線駆動装置に係り、
図10のC-C線で切断した回動部材及び直動部材の断面図である。
【
図12】
図12は、実施例の直線駆動装置に係り、直動部材が突出位置にあり、ハウジングの第4当接部と直動部材の第4被当接部とが軸心方向に当接した直後の状態を示す模式部分断面図である。
【
図13】
図13は、実施例の直線駆動装置に係り、
図12のD-D線で切断した回動部材及び直動部材の断面図である。
【
図14】
図14は、実施例の直線駆動装置に係り、直動部材が突出位置にあり、回動部材の第2当接部と直動部材の第2被当接部とが軸心周り方向に当接した状態を示す模式部分断面図である。
【
図15】
図15は、実施例の直線駆動装置に係り、
図14のE-E線で切断した回動部材及び直動部材の断面図である。
【
図16】
図16は、実施例の直線駆動装置を備えたロック装置が車両に適用された状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。
【0030】
(実施例)
図1及び
図2に示すように、実施例の直線駆動装置1は本発明の直線駆動装置の具体的態様の一例である。また、
図16に示すように、実施例のロック装置3は本発明のロック装置の具体的態様の一例である。ロック装置3は、電気自動車やプラグインハイブリッド自動車等、走行用モータへの供給電力を蓄える蓄電装置を搭載した車両に適用されている。ロック装置3は、車両の右側面側かつ後側において、車体の側面を構成するボディパネル2に開口された充電口2aの車両内側に配置されている。
【0031】
図1に示す前後方向は、車両の前後方向を基準としている。また、
図1に示す上下方向は、車両の上下方向を基準としている。そして、
図1に示す車両内外方向は、車両の車室内に搭乗する者を基準として、車両の右側面側を車両外側とし、その反対側を車両内側、すなわち車室側としている。
図2以降に示す前後方向、上下方向及び車両内外方向は、
図1に対応させて表示している。
【0032】
<ロック装置の構成>
ロック装置3は、車体側コネクタ5と、車体に搭載された図示しない蓄電装置に充電するための充電用ガン7と、充電用ガン7を車体側コネクタ5から離脱不可とする直線駆動装置1とを備えている。車体側コネクタ5は車体の一例であり、充電用ガン7は装着装置の一例である。車体側コネクタ5は充電口2aの車両内側に配置されており、直線駆動装置1は車体側コネクタ5の上面にブラケット4を介して固定されている。
【0033】
充電用ガン7は先端が揺動可能な爪部9を有している。車体側コネクタ5は爪部9が係合する受部11を有している。爪部9が受部11に向かう方向(
図16にP矢印で示す方向)に揺動することで爪部9と受部11とが係合する係合状態(
図16に実線で示す状態)となり、爪部9が受部11から離れる方向(
図16にQ矢印で示す方向)に揺動することでその係合が外れる非係合状態(
図16に二点鎖線で示す状態)となる。爪部9は、充電用ガン7が車体側コネクタ5に接続されることに連動して係合状態になる。
【0034】
直線駆動装置1は、直線駆動装置1から先端が突出し、その突出量が変化する直動部材15を備えている。直線駆動装置1は、図示しない制御装置による電気的制御により、直動部材15が突出した突出位置にある状態(
図16に実線で示す状態)と、直動部材15が突出位置から引込んだ引込位置にある状態(
図16に二点鎖線で示す状態)とに切替可能とされている。直線駆動装置1は、図示しない制御装置による電気的制御により、爪部9が係合状態になり、給電が開始されると、直動部材15が引込位置から突出位置に変位する。突出位置にある状態の直動部材15は、爪部9が受部11から離れる方向(
図16にQ矢印で示す方向)へ揺動することを規制する。
【0035】
<直線駆動装置の構成>
図2に示すように、直線駆動装置1は、回動部材13と、直動部材15と、ハウジング17と、モータ19と、操作部材21とを備えている。回動部材13、直動部材15、ハウジング17及び操作部材21は、いずれも樹脂製部材である。
図5に示すように、ハウジング17は、開口部23を有する箱状の本体25と、開口部23を閉塞する蓋体27とを有している。
【0036】
回動部材13と直動部材15は軸心Lを有している。以下の説明では、軸心L方向の一方側をL1、他方側をL2とし、また、軸心L周りの一方向をR1、他方向をR2とする。なお、
図2等において、車両内側方向を軸心L方向の一方側L1とし、車両外側方向を軸心L方向の他方側L2とする。また、
図2等において、車両内側方向すなわち軸心L方向の一方側L1から車両外側方向すなわち軸心L方向の他方側L2を見て、時計回り方向を軸心L周りの一方向R1とし、反時計回り方向を軸心L周りの他方向R2とする。
【0037】
ハウジング17は、回動部材13を軸心L周りに回動可能に支持している。また、ハウジング17は、後述するように、回動部材13を軸心L方向に所定の若干量だけ直線移動可能に支持している。
【0038】
ハウジング17は、直動部材15を軸心L周りに回動不能、かつ、軸心L方向に往復動可能に支持している。
図8等に示すように、ハウジング17は、直動部材15を収容するための収容部71を有している。
図5に示すように、収容部71内には、軸心L方向に延びる案内凹部73が設けられている。案内凹部73は、直動部材15を軸心L周りに回動不能、かつ、軸心L方向に直線移動可能に案内する。
【0039】
図2に示すように、モータ19の駆動軸には駆動ギヤ29が連結されている。回動部材13は、駆動ギヤ29と噛み合う従動ギヤ31と、軸心L方向に棒状に延びる回動軸33とを有している。従動ギヤ31と回動軸33とは一体に形成されている。
図2及び
図3等において詳細に図示はしていないが、駆動ギヤ29及び従動ギヤ31には互いに噛み合う歯が形成されている。
【0040】
図示しない制御部の制御によりモータ19に給電されると、駆動ギヤ29が正方向及び逆方向に回動し、駆動ギヤ29と従動ギヤ31との噛み合いにより、回動部材13が軸心L周りの一方向R1及び他方向R2に回動する。以下の説明では、モータ19及び駆動ギヤ29が正方向に回動すれば回動部材13が軸心L周りの一方向R1に回動し、モータ19及び駆動ギヤ29が逆方向に回動すれば回動部材13が軸心L周りの他方向R2に回動することとする。
【0041】
図3に示すように、回動軸33は、従動ギヤ31から軸心L方向に沿って断面略円形状に延びている。回動軸33は、軸心L方向の他方側L2の端部の外周面33aに螺旋溝部35を有している。螺旋溝部35は、回動軸33の軸心L周りに螺旋状に延びる溝及び突条よりなる。螺旋溝部35は、回動軸33の外周面33aに雄ねじ
として形成されている。螺旋溝部35におけるねじ山は、回動軸33の外周面33aから径方向外方に突出しつつ、回動軸33の軸心L周りに螺旋状に延びている。螺旋溝部35におけるねじ山は、回動軸33の基端側(従動ギヤ31側)から先端側に向けて(軸心L方向の一方側L1から他方側L2に向けて)、時計回り方向(軸心L周りの一方向R1)に2周分程度だけ螺旋状に延びている。すなわち、螺旋溝部35におけるねじ山は、所謂右ねじ状に延びている。
【0042】
図3、
図8~
図15に示すように、回動軸33は第1当接部39と第2当接部41とを有している。第1当接部39及び第2当接部41は、雄ねじ
に形成された螺旋溝部35の外側面に形成されている。言い換えれば、第1当接部39及び第2当接部41は、軸心L方向における螺旋溝部35の範囲内に形成されている。詳しくは、螺旋溝部35の外側面には、螺旋溝部35のねじ山の部分が軸心Lに沿って平坦状に欠切されてなる平坦部37aが形成されている。この平坦部37aは、螺旋溝部35の基端部のねじ山及び先端部のねじ山の双方を切断しうる切断面に相当する欠切面により構成されている。そして、平坦部37aのうち、螺旋溝部35の先端部である軸心L方向の最も他方側L2のねじ山が欠切された部分が第1当接部39とされ、螺旋溝部35の基端部である軸心L方向の最も一方側L1のねじ山が欠切された部分が第2当接部41とされている。
【0043】
なお、
図3に示すように、平坦部37aは回動軸33の軸心L方向の全体に延びているが、これはねじ山の高さ方向における全体が欠切されるように平坦部37aを型成形や切削加工する際にできたもので、螺旋溝部35の部分以外の平坦部は無くても構わない。また、
図5に示すように、回動軸33は、平坦部37aと回動軸33の径方向に背向しつつ軸心L方向に延び、径方向において平坦部37aと反対側を向く平坦部37bを有しているが、これは回動軸33の軸心L周りのバランスを確保するために平坦部37aと平坦部37bとを軸心対称的に設けたものである。
【0044】
図3に示すように、直動部材15は、軸心L方向の一方側L1に、軸心L方向に筒状に延びる直動軸43を有している。
図3及び
図4に示すように、直動軸43は、軸心L方向の一方側L1の端部の内周面43aに噛み合い部45を有している。噛み合い部45は、直動軸43の軸心L周りに螺旋状に延びる溝及び突条よりなる。噛み合い部45は、直動軸43の内周面43aに雌ねじ
として形成されている。噛み合い部45におけるねじ山は、直動軸43の内周面43aから径方向内方に突出しつつ、直動軸43の軸心L周りに螺旋状に延びている。噛み合い部45は、螺旋溝部35と噛み合うように形成されている。噛み合い部45におけるねじ溝は、直動軸43の軸心L方向の一方側L1から他方側L2に向けて、時計回り方向(軸心L周りの一方向R1)に4.5周分程度だけ螺旋状に延びている。すなわち、噛み合い部45におけるねじ溝は、所謂右ねじ状に延びている。なお、この噛み合い部45の軸心L方向の長さは、直動部材15における所望の突出量(引込位置から突出位置への変位量)に応じて適宜設定可能である。
【0045】
直動部材15は、軸本体47と、ストッパ部材49とからなる。
図4に示すように、軸本体47の一方側の部分、すなわち軸心L方向の一方側L1の部分は筒状部75をなし、一方側L1の一端が開口している。軸本体47の他方側の部分、すなわち軸心L方向の他方側L2の部分は棒状部77をなしている。軸本体47の軸心L方向の一方側L1の端部にストッパ部材49が取り付けられている。直動部材15及び回動部材13の組付けの際は、軸本体47の開口から回動軸33を挿入した後に、軸本体47にストッパ部材49を取り付ける。軸本体47の筒状部75とストッパ部材49とにより、直動軸43が構成されている。直動軸43の内周面43aは、筒状部75の内周面75aと、ストッパ部材49の後述する部分筒状部87の内周面87aとにより構成されている。
【0046】
棒状部77の軸心L方向の他方側L2の端部は、ハウジング17から外部に突出している。直動部材15は、引込位置から軸心L方向の他方側L2に移動して突出した突出位置と、突出位置から軸心L方向の一方側L1に移動して引込んだ引込位置との間で変位する。なお、
図8、
図10及び
図16においては、引込位置にある直動部材15の先端がハウジング17から外部に突出している例が示されているが、これに限定されず、引込位置にある直動部材15の先端はハウジング17内に収められてもよい。
【0047】
図3に示すように、軸本体47の軸心L方向の一方側L1の端部には、軸心L方向に延びた上下一対の角状片部79、79が形成されている。各角状片部79には係合突起81がそれぞれ設けられている。また、各角状片部79の軸心L方向の他方側L2の端部には、軸心L方向に直交する方向に面状に延びる壁部83がそれぞれ設けられている。さらに、軸本体47の軸心L方向の一方側L1の端部には、その端面から軸心L方向に延びるスリット85が設けられている。
【0048】
ストッパ部材49は、軸心L周り方向の一部が開口した部分筒状部87と、部分筒状部87の上部及び下部からそれぞれ軸心L方向に延びる角柱部89、89とを有している。この角柱部89が収容部71の案内凹部73に摺接可能に収容されることで、直動部材15がハウジング17内で軸心L周りに回動不能、かつ、軸心L方向に往復動可能に案内される。
【0049】
図13及び
図15に示すように、ストッパ部材49は、各角状片部79が嵌まり込む嵌合凹部91と、スリット85に挿入可能な位置決め突起93とを有している。また、
図2及び
図3に示すように、ストッパ部材49は、各係合突起81とスナップ係合可能な被係合部99を有している。
【0050】
軸本体47とストッパ部材49とは、軸本体47の係合突起81とストッパ部材49に設けられた被係合部99とのスナップ係合により固定され、軸本体47からストッパ部材49が軸心L方向に外れることが規制される。このとき、スリット85に位置決め突起93を挿入することで、軸本体47に対してストッパ部材49を軸心L周り方向において正しい位置関係で組み付けることができる。また、各角状片部79と各嵌合凹部91とが嵌合することで、軸本体47とストッパ部材49との相対回転が規制される。
【0051】
直動軸43の内周面43aに設けられた噛み合い部45のうち、軸心L方向の他方側L2の一部が軸本体47に形成され、軸心L方向の一方側L1の残部がストッパ部材49に形成されている。
図4に示すように、軸本体47の筒状部75の内周面75aに噛み合い部45の一部が形成されている。
図3に示すように、ストッパ部材49の部分筒状部87の内周面87aのうち、軸心L方向の他方側の端部の内周面87aに噛み合い部45の残部が形成されている。
【0052】
図4、
図9及び
図11に示すように、直動部材15は、第1当接部39と軸心L周り方向に当接可能な第1被当接部51を有している。回動部材13が一方向R1に回動することにより、第1当接部39と第1被当接部51とが軸心L周り方向に当接して、直動部材15の軸心L方向の一方側L1への直線移動が規制される。また、
図3、
図13及び
図15に示すように、直動部材15は、第2当接部41と軸心L周り方向に当接可能な第2被当接部53を有している。回動部材13が他方向R2に回動することにより、第2当接部41と第2被当接部53とが軸心L周り方向に当接して、直動部材15の軸心L方向の他方側L2への直線移動が規制される。
【0053】
第1被当接部51及び第2被当接部53は、雌ねじ
に形成された噛み合い部45の内側面に形成されている。言い換えれば、第1被当接部51及び第2被当接部53は、軸心L方向における噛み合い部45の範囲内に形成されている。第1被当接部51は、噛み合い部45のうち軸心L方向の他方側L2の端部の内側面に設けられている。すなわち、
図4に示すように、第1被当接部51は、筒状部75の内周面75aに形成された噛み合い部45のうち軸心L方向の他方側L2の端部の内側面に設けられている。具体的には、筒状部75に
雌ねじとして形成された噛み合い部45におけるねじ溝の軸心L方向の他方側L2の端部であって、ねじ溝の軸心L周り方向の端部を画定する壁部が第1被当接部51とされている。第1当接部39と第1被当接部51とは面同士の接触により当接する。また、第2被当接部53は、噛み合い部45のうち軸心L方向の一方側L1の端部の内側面に設けられている。すなわち、
図3に示すように、第2被当接部53は、部分筒状部87の内周面87aに形成された噛み合い部45のうち軸心L方向の一方側L1の端部の内側面に設けられている。具体的には、部分筒状部87に
雌ねじとして形成された噛み合い部45におけるねじ溝の軸心L方向の一方側L1の端部であって、ねじ溝の軸心L周り方向の端部を画定する壁部が第2被当接部53とされている。第2当接部41と第2被当接部53とは面同士の接触により当接する。
【0054】
図8等に示すように、ハウジング17は第3当接部55及び第4当接部57を有している。第3当接部55及び第4当接部57は収容部71に形成されている。第3当接部55は収容部71のうち軸心L方向の一方側L1の端部に設けられており、第4当接部57は収容部71のうち軸心L方向の他方側L2に設けられている。第3当接部55及び第4当接部57は、軸心L方向に直交する当接面を有している。
【0055】
直動部材15は第3被当接部59及び第4被当接部61を有している。ストッパ部材49の角柱部89の軸心L方向の一方側L1の端面が第3被当接部59とされている。軸本体47の壁部83の軸心L方向の他方側L2の端面が第4被当接部61とされている。
【0056】
回動部材13が一方向R1に回動することにより、第1当接部39と第1被当接部51とが軸心L周り方向に当接する直前に第3当接部55と第3被当接部59とが軸心L方向に当接するように構成されている。第3当接部55と第3被当接部59とは面同士の接触により当接する。また、回動部材13が他方向R2に回動することにより、第2当接部41と第2被当接部53とが軸心L周り方向に当接する直前に第4当接部57と第4被当接部61とが軸心L方向に当接するように構成されている。第4当接部57と第4被当接部61とは面同士の接触により当接する。
【0057】
図2に示すように、操作部材21は、ハウジング17から外部に突出している操作部95と、回動部材13の従動ギヤ31と噛み合うギヤ部97とを有している。操作部材21は、所謂エマージェンシレバーとして機能し、モータ19の故障時等に、ユーザが手動により操作部95を操作することで、回動部材13を軸心L周りに回動させることができるようになっている。操作部材21は、車両内側、例えばトランクルーム等の車室側からユーザが操作可能となっている。
【0058】
<直線駆動装置及びロック装置の作動>
以上のように構成された直線駆動装置1及びロック装置3は、以下のように作動する。
例えば、
図6等に示すように、直線駆動装置1の直動部材15が軸心L方向の一方側L1に移動した引込位置にある状態で、車体側コネクタ5に充電用ガン7が接続され、給電が開始されると、図示しない制御部によりモータ19が逆方向に回動駆動される。モータ19が逆方向に回動駆動されれば、駆動ギヤ29と従動ギヤ31との噛み合いにより、回動部材13が軸心L周りの他方向R2に回動する。回動部材13が回動すれば、螺旋溝部35と噛み合い部45との噛み合いにより、直動部材15は回動部材13に対して軸心L方向に直線移動する。これにより、直動部材15は、引込位置から突出位置に向かって、すなわち軸心L方向の他方側L2に向かって直線移動する。
【0059】
そして、
図12に示すように、直動部材15が突出位置まで移動すると、第4当接部57と第4被当接部61とが軸心L方向に当接する。このとき、
図13に示すように、第2当接部41と第2被当接部53とは軸心L周り方向に未だ当接していない。第4当接部57と第4被当接部61との軸心L方向の当接により、直動部材15の軸心L方向の他方側L2への直線移動が規制される。
【0060】
その後も続けてモータ19が逆方向に回動駆動されれば、回動部材13は軸心L周りの他方向R2にさらに回動する。このとき、第4当接部57と第4被当接部61との当接により直動部材15の直線移動が規制されているので、直動部材15が軸心L方向の他方側L2に移動することはない。このため、
図14に示すように、回動部材13は軸心L周りの他方向R2に回動しながら軸心L方向の一方側L1へ若干量だけ直線移動する。なお、ハウジング17と回動部材13との間には、このときの回動部材13の直線移動を許容するだけのクリアランスが軸心L方向に設けられている。これにより、
図15に示すように、第2当接部41と第2被当接部53とが軸心L周り方向に当接し、回動部材13の軸心L周りの他方向R2への回動が規制される。
【0061】
こうして、直線駆動装置1の直動部材15は突出位置に変位する。このとき、棒状部77は、車体側コネクタ5の受部11に係合した充電用ガン7の爪部9の上方まで延びており、爪部9が受部11から離れる方向(
図16にQ矢印で示す方向)へ揺動することを棒状部77が規制する。
【0062】
車体側コネクタ5から充電用ガン7を外す際には、図示しない制御部によりモータ19を正方向に回転駆動させる。モータ19が正方向に回動駆動されれば、駆動ギヤ29と従動ギヤ31との噛み合いにより、回動部材13が軸心L周りの一方向R1に回動する。回動部材13が回動すれば、螺旋溝部35と噛み合い部45との噛み合いにより、直動部材15は回動部材13に対して軸心L方向に直線移動する。これにより、直動部材15は、突出位置から引込位置に向かって、すなわち軸心L方向の一方側L1に向かって直線移動する。
【0063】
そして、
図8に示すように、直動部材15が引込位置まで移動すると、第3当接部55と第3被当接部59とが軸心L方向に当接する。このとき、
図9に示すように、第1当接部39と第1被当接部51とは軸心L周り方向に未だ当接していない。第3当接部55と第3被当接部59との軸心L方向の当接により、直動部材15の軸心L方向の一方側L1への直線移動が規制される。
【0064】
その後も続けてモータ19が正方向に回動駆動されれば、回動部材13は軸心L周りの一方向R1にさらに回動する。このとき、第3当接部55と第3被当接部59との当接により直動部材15の直線移動が規制されているので、直動部材15が軸心L方向の一方側L1に移動することはない。このため、
図10に示すように、回動部材13は軸心L周りの一方向R1に回動しながら軸心L方向の他方側L2へ若干量だけ直線移動する。なお、ハウジング17と回動部材13との間には、このときの回動部材13の直線移動を許容するだけのクリアランスが軸心L方向に設けられている。これにより、
図11に示すように、第1当接部39と第1被当接部51とが軸心L周り方向に当接し、回動部材13の軸心L周りの一方向R1への回動が規制される。
【0065】
こうして、直線駆動装置1の直動部材15は引込位置に変位する。このとき、棒状部77は、車体側コネクタ5の受部11に係合した充電用ガン7の爪部9の上方から退避しており、爪部9は受部11から離れる方向(
図16にQ矢印で示す方向)へ揺動することが可能になる。
【0066】
<作用効果>
直線駆動装置1では、回動部材13の軸心L周りの一方向R1への回動により直動部材15が軸心L方向の一方側L1に向けて直線移動して、第1当接部39と第1被当接部51とが軸心L周り方向に当接することにより、直動部材15の軸心L方向の一方側L1への直線移動が規制される。このとき、軸心L周りの回動が不能とされた直動部材15の第1被当接部51に対して回動部材13の第1当接部39が軸心L周り方向に当接して回動部材13の回動自体が規制されるので、回動部材13がさらに回動して回動部材13と直動部材15とが相対回転することがない。このため、螺旋溝部35と噛み合い部45とのクリアランスが詰まることがなく、螺旋溝部35が噛み合い部45に食い込むことがない。よって、螺旋溝部35と噛み合い部45との食い込みにより回動部材13の円滑な回動が不能になる、所謂セルフロックを、劣化しやすい弾性体を使うことなく回避することができる。
【0067】
また、この直線駆動装置1では、回動部材13には第2当接部41が形成され、直動部材15には第2被当接部53が形成されている。このため、回動部材13が軸心L周りの他方向R2に回動して直動部材15が軸心L方向の他方側L2に向けて直線移動する際も、同様に、所謂セルフロックを回避することができる。
【0068】
そして、回動部材13の第1当接部39は、回動部材13に元々形成されている螺旋溝部35の範囲内に設けられている。このため、例えば回動部材13の端部に軸心L方向に第1当接部39を突出させる場合のように、第1当接部39を設けることによって回動部材13が軸心L方向に大きくなることがない。
【0069】
したがって、直線駆動装置1及びこの直線駆動装置1を備えたロック装置3では、装置の大型化を招くことなくセルフロックを回避することができ、しかも長期にわたってセルフロックを有効に回避することができる。
【0070】
また、この直線駆動装置1では、第1当接部39と第1被当接部51とが当接する直前に第3当接部55と第3被当接部59とが軸心L方向に当接し、かつ、その当接後に回動部材13のさらなる回動を可能にすべく回動部材13の軸心L方向の移動を許容する構成となっている。このため、当接部同士が当接する際の衝撃を分散させることができ、特に、第1当接部39及び第1被当接部51の変形や摩耗を軽減することができる。
【0071】
同様に、第2当接部41と第2被当接部53とが当接する直前に第4当接部57と第4被当接部61とが軸心L方向に当接し、かつ、その当接後に回動部材13のさらなる回動を可能にすべく回動部材13の軸心L方向の移動を許容する構成となっている。このため、当接部同士が当接する際の衝撃を分散させることができ、特に、第2当接部41及び第2被当接部53の変形や摩耗を軽減することができる。
【0072】
また、この直線駆動装置1では、所謂エマージェンシレバーとして機能する操作部材21を有している。このため、モータ19の故障時等に、ユーザが手動により操作部材21を操作することで、回動部材13を軸心L周りに回動させることができるようになっている。よって、例えば直線駆動装置1の直動部材15が突出位置にある状態でモータ19が故障したとしても、ユーザは操作部材21を手動操作することにより直動部材15を突出位置から引込位置に変位させることができ、車体側コネクタ5から充電用ガン7を取り外すことが可能になる。
【0073】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0074】
実施例では、回動部材13が軸心L周りの一方向R1に回動して直動部材15が軸心L方向の一方側L1に直線移動することで、直動部材15が突出位置から引込位置に変位するが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、回動部材13が軸心L周りの一方向に回動して直動部材15が軸心L方向の一方側に直線移動することで、直動部材15が引込位置から突出位置に変位してもよい
【0075】
実施例では、直動部材15を軸本体47とストッパ部材49とから構成し、軸本体47内に回動軸33をセットしてから軸本体47とストッパ部材49とを結合したが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、直動部材15を軸心L方向に沿って分割して第1分割体及び第2分割体とし、第1分割体内に回動軸33をセットしてから第1分割体と第2分割体とを結合させてもよい。
【0076】
実施例では、第1当接部39及び第1被当接部51に加えて第2当接部41及び第2被当接部53を設けるとともに、第3当接部55及び第3被当接部59に加えて第4当接部57及び第4被当接部61を設けているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、第2当接部41及び第2被当接部53を省くとともに、第4当接部57及び第4被当接部61を省いてもよい。また、第3当接部55及び第3被当接部59を省くとともに、第4当接部57及び第4被当接部61を省いてもよい。
【0077】
実施例では、回動部材13の回動軸33を棒状にして螺旋溝部35を雄ねじに形成するとともに、直動部材15の直動軸43を筒状にして噛み合い部45を雌ねじに形成したが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、回動部材13の回動軸33を筒状にして螺旋溝部35を雌ねじに形成するとともに、直動部材15の直動軸43を棒状にして噛み合い部45を雄ねじに形成してもよい。
【0078】
実施例では、ロック装置3は車両の右側面側かつ後側に配置されているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、充電口の位置に対応させて、車両の前方、後方や側面のあらゆる位置にロック装置3を配置させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は例えば、走行用モータに給電するための蓄電装置を搭載した車両や、産業機械等に利用可能である。
【符号の説明】
【0080】
1…直線駆動装置
3…ロック装置
5…車体側コネクタ(車体)
7…充電用ガン(装着装置)
13…回動部材
15…直動部材
17…ハウジング
19…モータ
21…操作部材
33…回動軸
33a…外周面
35…螺旋溝部
39…第1当接部
41…第2当接部
43…直動軸
43a…内周面
45…噛み合い部
47…軸本体
49…ストッパ部材
51…第1被当接部
53…第2被当接部
55…第3当接部
57…第4当接部
59…第3被当接部
61…第4被当接部