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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-30
(45)【発行日】2023-06-07
(54)【発明の名称】把持力計測装置及び把持力計測システム
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/00 20060101AFI20230531BHJP
   G01L 5/18 20060101ALI20230531BHJP
   A61B 5/22 20060101ALI20230531BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20230531BHJP
【FI】
G01L5/00 101Z
G01L5/18
G01L5/00 Z
A61B5/22 220
A61B5/11 230
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019177215
(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公開番号】P2021056033
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000242231
【氏名又は名称】北川工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】趙 ▲露▼
(72)【発明者】
【氏名】近藤 康雄
(72)【発明者】
【氏名】山田 一輝
(72)【発明者】
【氏名】寺田 英嗣
(72)【発明者】
【氏名】牧野 浩二
【審査官】松山 紗希
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-118546(JP,A)
【文献】特表2008-523387(JP,A)
【文献】特開2017-127406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 5/00-5/18
A61B 5/22
A61B 5/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、第1被押圧部と、複数の第2被押圧部と、第1検出部と、複数の第2検出部と、を備え、
前記本体部は、当該本体部を被験者が片手で握れる形状に構成され、
前記第1被押圧部は、前記本体部を被験者が片手で握った際に第1指で前記第1被押圧部を押圧可能な位置に配置され、
前記複数の第2被押圧部は、前記本体部を被験者が片手で握った際に前記第1指以外の指で前記第2被押圧部を押圧可能な位置に配置され、
前記第1検出部は、前記第1被押圧部が押圧された際に、前記第1被押圧部に作用する力の大きさとの対応関係が既知の第1出力値を出力するように構成され、
前記複数の第2検出部は、前記複数の第2被押圧部に一対一で対応するように設けられていて、前記複数の第2被押圧部が押圧された際に、前記複数の第2被押圧部に作用する力の比率を算出可能な複数の第2出力値を出力するように構成されており
前記第1検出部は、ロードセルによって構成され、
前記第2検出部は、前記ロードセルよりも小型の感圧センサーによって構成されている、
把持力計測装置。
【請求項2】
請求項に記載の把持力計測装置であって、
前記第1被押圧部及び前記ロードセルを備える第1モジュールと、
それぞれが前記第2被押圧部及び前記感圧センサーを備える複数の第2モジュールと、
を備え、
前記第1モジュール及び前記複数の第2モジュールのうちの少なくとも1つは、前記本体部に対する相対位置を変更して、その変更後の位置で前記本体部に対する相対位置を固定可能に構成されている、
把持力計測装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項に記載の把持力計測装置と、
データ処理装置と、
を備え、
前記データ処理装置は、
前記第1出力値及び前記複数の第2出力値に基づいて、前記第1被押圧部及び前記複数の第2被押圧部それぞれに作用する力の大きさを算出する処理部、
を備える、
把持力計測システム。
【請求項4】
請求項に記載の把持力計測システムであって、
前記処理部は、
前記第1検出部から出力される前記第1出力値に基づいて、前記第1被押圧部に作用する力の大きさを特定する第1特定処理と、
前記第1被押圧部の押圧が開始されてから所定時間が経過した時点で前記第1検出部から出力される前記第1出力値に応じて、前記複数の第2検出部から出力される前記複数の第2出力値の比率を補正して補正済み比率を求める補正処理と、
前記第1特定処理によって特定された前記第1被押圧部に作用する力の大きさと、前記補正処理によって求められた前記補正済み比率とに基づいて、前記複数の第2被押圧部それぞれに作用する力の大きさを特定する第2特定処理と、
を実行するように構成されている、
把持力計測システム。
【請求項5】
持力計測装置と、
データ処理装置と、
を備え、
前記把持力計測装置は、
本体部と、第1被押圧部と、複数の第2被押圧部と、第1検出部と、複数の第2検出部と、を備え、
前記本体部は、当該本体部を被験者が片手で握れる形状に構成され、
前記第1被押圧部は、前記本体部を被験者が片手で握った際に第1指で前記第1被押圧部を押圧可能な位置に配置され、
前記複数の第2被押圧部は、前記本体部を被験者が片手で握った際に前記第1指以外の指で前記第2被押圧部を押圧可能な位置に配置され、
前記第1検出部は、前記第1被押圧部が押圧された際に、前記第1被押圧部に作用する力の大きさとの対応関係が既知の第1出力値を出力するように構成され、
前記複数の第2検出部は、前記複数の第2被押圧部に一対一で対応するように設けられていて、前記複数の第2被押圧部が押圧された際に、前記複数の第2被押圧部に作用する力の比率を算出可能な複数の第2出力値を出力するように構成されており、
前記データ処理装置は、
前記第1出力値及び前記複数の第2出力値に基づいて、前記第1被押圧部及び前記複数の第2被押圧部それぞれに作用する力の大きさを算出する処理部、
を備え
前記処理部は、
前記第1検出部から出力される前記第1出力値に基づいて、前記第1被押圧部に作用する力の大きさを特定する第1特定処理と、
前記第1被押圧部の押圧が開始されてから所定時間が経過した時点で前記第1検出部から出力される前記第1出力値に応じて、前記複数の第2検出部から出力される前記複数の第2出力値の比率を補正して補正済み比率を求める補正処理と、
前記第1特定処理によって特定された前記第1被押圧部に作用する力の大きさと、前記補正処理によって求められた前記補正済み比率とに基づいて、前記複数の第2被押圧部それぞれに作用する力の大きさを特定する第2特定処理と、
を実行するように構成されている、
把持力計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、把持力計測装置及び把持力計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、指の巧緻性や物体の操作能力を評価することのできる装置として、手によって加えられた多方向の力を測定する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2005-503229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された装置では、いずれの指の力が他の指と比較して弱いか、といった手の力の詳細な情報を取得することが難しかった。
本開示の一局面は、指の力に関する詳細な情報を取得可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一局面における把持力計測装置は、本体部と、第1被押圧部と、複数の第2被押圧部と、第1検出部と、複数の第2検出部と、を備える。本体部は、当該本体部を被験者が片手で握れる形状に構成される。第1被押圧部は、本体部を被験者が片手で握った際に第1指で第1被押圧部を押圧可能な位置に配置される。複数の第2被押圧部は、本体部を被験者が片手で握った際に第1指以外の指で第2被押圧部を押圧可能な位置に配置される。第1検出部は、第1被押圧部が押圧された際に、第1被押圧部に作用する力の大きさとの対応関係が既知の第1出力値を出力するように構成される。複数の第2検出部は、複数の第2被押圧部に一対一で対応するように設けられていて、複数の第2被押圧部が押圧された際に、複数の第2被押圧部に作用する力の比率を算出可能な複数の第2出力値を出力するように構成されている。
【0006】
このように構成された把持力計測装置によれば、本体部を被験者が片手で握った際に、第1指から第1被押圧部に作用した力の大きさとの対応関係が既知の第1出力値が第1検出部から出力される。また、第1指以外の指から複数の第2被押圧部に作用する力の比率を算出可能な複数の第2出力値が第2検出部から出力される。なお、複数の第2被押圧部としては、2以上4以下の第2被押圧部が設けられていればよい。第1指以外の指は、第2指から第5指までの中から選ばれる、複数の第2被押圧部と同数の指であればよい。
【0007】
第1被押圧部及び複数の第2被押圧部を第1指と第1指以外の指との間に挟んで力を加えた場合、第1指以外の指から複数の第2被押圧部それぞれに作用した力の総和は、第1被押圧部に作用した力に一致する。したがって、第1出力値に基づいて第1被押圧面に作用する力の大きさを求め、複数の第2出力値に基づいて複数の第2被押圧部に作用した力の比率を求めれば、それらの値に基づいて複数の第2被押圧部それぞれに作用した力の大きさを算出することができる。
【0008】
このような手法で複数の第2被押圧部それぞれに作用した力の大きさを算出できれば、複数の第2検出部は、複数の第2被押圧部それぞれに作用した力の大きさを検出できなくても、複数の第2被押圧部に作用した力の比率を検出可能に構成されていれば足りる。したがって、第2検出部については、第1検出部よりも簡素な構成にすることが可能となり、第2検出部が第1検出部と同等に構成されている場合に比べ、把持力計測装置の低廉化を図ることができる。また、第2検出部については、第1検出部よりも容易に小型化でき、延いては把持力計測装置の小型化を図ることができる。
【0009】
なお、例えば、第1検出部は、ロードセルによって構成されてもよい。第2検出部は、ロードセルよりも小型の感圧センサーによって構成されていてもよい。
また、例えば、把持力計測装置は、第1モジュールと、複数の第2モジュールと、を備えてもよい。第1モジュールは、第1被押圧部及びロードセルを備える。第2モジュールは、それぞれが第2被押圧部及び感圧センサーを備える。第1モジュール及び複数の第2モジュールのうちの少なくとも1つは、本体部に対する相対位置を変更して、その変更後の位置で本体部に対する相対位置を固定可能に構成されていてもよい。
【0010】
本開示の別の一局面における把持力計測システムは、上述した把持力計測装置と、データ処理装置と、を備える。データ処理装置は、第1出力値及び複数の第2出力値に基づいて、第1被押圧部及び複数の第2被押圧部それぞれに作用する力の大きさを算出する処理部、を備える。
【0011】
このように構成された把持力計測システムによれば、第1出力値及び複数の第2出力値に基づいて、第1被押圧部及び複数の第2被押圧部それぞれに作用した力の大きさを算出することができる。
【0012】
なお、例えば、処理部は、第1特定処理と、補正処理と、第2特定処理と、を実行するように構成されていてもよい。第1特定処理は、第1検出部から出力される第1出力値に基づいて、第1被押圧部に作用する力の大きさを特定する。補正処理は、第1被押圧部の押圧が開始されてから所定時間が経過した時点で第1検出部から出力される第1出力値に応じて、複数の第2検出部から出力される複数の第2出力値の比率を補正して補正済み比率を求める。第2特定処理は、第1特定処理によって特定された第1被押圧部に作用する力の大きさと、補正処理によって求められた補正済み比率とに基づいて、複数の第2被押圧部それぞれに作用する力の大きさを特定する。
【0013】
このように構成された把持力計測システムによれば、第1被押圧部及び複数の第2被押圧部に対する押圧速度に応じて第2検出部の感圧特性にばらつきが生じる場合でも、そのばらつきを補正して、複数の第2被押圧部に作用する力の比率を適切に補正することができる。
【0014】
より詳しくは、第1被押圧部に対する押圧速度が速くなるほど、第1検出部から出力される第1出力値が迅速に増大する。そのため、第1被押圧部に対する押圧に伴って第1出力値が増大することになる期間(以下、出力値増大期間と称する。)を想定し、押圧開始から出力値増大期間の途中に至るまでの時間を上記所定時間として選定すれば、第1被押圧部の押圧が開始されてから所定時間が経過した時点で第1検出部から出力される第1出力値により、上記押圧速度がどの程度なのかを把握することができる。
【0015】
押圧速度がどの程度になると第2検出部の感圧特性がどのような特性になるのかは、事前に複数通りの押圧速度について第2検出部の感圧特性をサンプリングし、対応表や近似式を求めておくことができる。したがって、実際に押圧力を検出する際には、第1被押圧部の押圧が開始されてから所定時間が経過した時点で第1検出部から出力される第1出力値に基づき、その第1出力値に対応する1つの対応表又は近似式を、上記複数通りの押圧速度に対応する対応表又は近似式の中から選択することができる。選択した1つの対応表又は近似式に基づいて複数の第2出力値の比率を求めれば、押圧速度に起因する第2検出部の感圧特性のばらつきを補正して、複数の第2出力値の比率を適切に求めることができる。よって、上述のような押圧速度に起因するばらつきがある第2検出部を採用している場合には、上記構成を採用してもよい。
【0016】
以上のような構成の他には、例えば、第2モジュールは、本体部から取り外し可能に構成されていてもよい。
また、把持力計測装置は、第1検出部から出力される第1出力値と、複数の第2検出部から出力される複数の第2出力値とが含まれる計測データを、データ処理装置へと送信するように構成される送信部、を備えてもよい。データ処理装置は、把持力計測装置から送信される計測データを受信する受信部、を備えてもよい。処理部は、受信部において受信した計測データに含まれる第1出力値及び複数の第2出力値に基づいて、第1被押圧部及び複数の第2被押圧部それぞれに作用する力の大きさを算出するように構成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は把持力計測システムの構成を示すブロック図である。
図2図2Aは第2被押圧部側から見た把持力計測装置の斜視図である。図2Bは第1被押圧部側から見た把持力計測装置の斜視図である。
図3図3Aは把持力計測装置の正面図である。図3B図3A中にIIIB-IIIB線で示した切断箇所の断面図である。図3C図3A中にIIIC-IIIC線で示した切断箇所の断面図である。
図4図4Aは第2モジュールを分解して示す斜視図である。図4Bは第2モジュールを分解して示す正面図である。
図5図5Aは第2被押圧部側から見た支持体等の斜視図である。図2Bは第1被押圧部側から見た支持体等の斜視図である。
図6図6は把持力計測装置において実行される計測処理のフローチャートである。
図7図7Aはデータ処理装置において実行されるデータ受信圧力換算処理のフローチャートである。図7Bはデータ処理装置において実行される圧力値への換算処理のフローチャートである。
図8図8は4つの感圧センサー12にかかる荷重の算出例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、上述の把持力計測装置及び把持力計測システムについて、例示的な実施形態を挙げて説明する。
[把持力計測システム及び把持力計測装置の構成]
図1に示すように、把持力計測システム1は、把持力計測装置2と、データ処理装置3とを備える。把持力計測装置2は、制御・通信モジュール10と、ロードセル11(本開示でいう第1検出部の一例に相当。)と、4つの感圧センサー12(本開示でいう第2検出部の一例に相当。)と、アンプモジュール13と、表示部14と、電池15とを備える。制御・通信モジュール10は、制御部20と、第1取得部21と、第2取得部22と、通信部23と、電源部24とを備える。制御部20は、CPU201と、メモリ202とを備える。データ処理装置3は、パーソナルコンピュータ31(以下、PC31と略称する。)と、ディスプレイ32と、受信モジュール33とを備える。
【0019】
把持力計測装置2は、図2A図2B及び図3Aに示すように、本体部50と、第1モジュール51と、4つの第2モジュール52と、スイッチ53とを備える。また、把持力計測装置2は、図3B及び図3Cに示すように、支持体55を備える。
【0020】
本体部50は、図2A図2B及び図3Aに示すように、筒状体501と、底板502と、天板503と、第1蓋部505と、第2蓋部506とを備える。第1モジュール51は、図3B及び図3Cに示すように、第1被押圧部511と、上述のロードセル11とを備える。第2モジュール52は、第2被押圧部521を備える。第2モジュール52は、図4A及び図4Bに示すように、加圧部522と、上述の感圧センサー12と、第1分割ケース524と、第2分割ケース525とを備える。
【0021】
本体部50は、本実施形態の場合、直径約60mm、高さ約120mmに形成されている。これにより、本体部50は、本体部50を被験者が片手で握れる形状に構成されている。第1被押圧部511が押圧された際、第1被押圧部511に作用する力の大きさは、ロードセル11で検出可能に構成されている。第1被押圧部511は、図2Bに示すように、本体部50を被験者が片手で握った際に第1指で第1被押圧部511を押圧可能な位置に配置されている。
【0022】
4つの第2被押圧部521が押圧された際、4つの第2被押圧部521に作用する力の比は、感圧センサー12で検出可能に構成されている。4つの第2被押圧部521は、図2Aに示すように、本体部50を被験者が片手で握った際に第2指から第5指までの4つの指で第2被押圧部521を押圧可能な位置に配置されている。4つの感圧センサー12は、4つの第2被押圧部521に一対一で対応するように設けられている。
【0023】
感圧センサー12は、加圧されると電極間の抵抗値が低下する抵抗型の感圧センサー12である。第2被押圧部521と加圧部522は、第1ケース部品の開口に通された状態で互いに接続されて一体化される。加圧部522は、感圧センサー12に対向する面が球面の一部に相当する凸面とされている。被験者が第2被押圧部521を押圧した際、感圧センサー12は、加圧部522の凸面で押圧される。これにより、第2被押圧部521が押圧された際に第2被押圧部521及び加圧部522が多少傾いたとしても、加圧部522が球面の一部で感圧センサー12に接触する状態を維持することができる。
【0024】
第1モジュール51は、図5Bに示すように、支持体55に沿って図中に示すZ1方向及びZ2方向へスライド可能に構成されている。これにより、本体部50を被験者が片手で握った際にちょうど第1指が当たる位置に第1被押圧部511が配置されるように、第1モジュール51の位置を最適化することができる。支持体55には、Z1方向及びZ2方向に沿って延びる溝551(図5B参照。)が形成され、その溝551の内側に第1モジュール51が嵌まり込んでいる。第1蓋部505には、Z1方向及びZ2方向に沿って延びるスリット507(図2B参照。)が形成されている。第1蓋部505は、本体部50の内部において第1モジュール51の一部に接触することにより、第1モジュール51が支持体55から離間する方向へ移動するのを規制している。これにより、第1モジュール51は、溝551及びスリット507に沿って図中に示すZ1方向及びZ2方向へスライド可能、かつZ1方向及びZ2方向以外の方向へは移動不能な状態で保持されている。
【0025】
第1モジュール51と支持体55及び第1蓋部505との間には、第1モジュール51のスライドを抑制する摩擦力が作用するように構成され、その摩擦力を上回る力が加えられた場合に第1モジュール51がZ1方向又はZ2方向へスライドするように構成されている。すなわち、上記摩擦力を上回る力を加えれば、第1モジュール51の本体部50に対する相対位置を変更することができる。また、第1モジュール51の本体部50に対する相対位置を変更した後は、上記摩擦力を上回る力が加えられない限り、変更後の位置で本体部50に対する相対位置を固定することができる。
【0026】
第2モジュール52は、図5Aに示すように、支持体55に沿って図中に示すZ1方向及びZ2方向へスライド可能に構成されている。これにより、本体部50を被験者が片手で握った際にちょうど第2指から第5指までの各指が当たる位置に4つの第2被押圧部521が配置されるように、第2モジュール52の位置を最適化することができる。支持体55には、Z1方向及びZ2方向に沿って延びる溝552(図5A参照。)が形成され、その溝552の内側に第2モジュール52が嵌まり込んでいる。第2蓋部506には、Z1方向及びZ2方向に沿って延びるスリット508(図3A参照。)が形成されている。第2蓋部506は、本体部50の内部において第2モジュール52の一部に接触することにより、第2モジュール52が支持体55から離間する方向へ移動するのを規制している。これにより、第2モジュール52は、溝552及びスリット508に沿って図中に示すZ1方向及びZ2方向へスライド可能、かつZ1方向及びZ2方向以外の方向へは移動不能な状態で保持されている。
【0027】
第2モジュール52と支持体55及び第1蓋部505との間には、第2モジュール52のスライドを抑制する摩擦力が作用するように構成され、その摩擦力を上回る力が加えられた場合に第2モジュール52がZ1方向又はZ2方向へスライドするように構成されている。すなわち、上記摩擦力を上回る力を加えれば、第2モジュール52の本体部50に対する相対位置を変更することができる。また、第2モジュール52の本体部50に対する相対位置を変更した後は、上記摩擦力を上回る力が加えられない限り、変更後の位置で本体部50に対する相対位置を固定することができる。
【0028】
支持体55は、図5A及び図5Bに示すように、ねじ56で底板502及び天板503に固定されている。第1蓋部505及び第2蓋部506は、筒状体501に対して着脱可能に構成されている。第2蓋部506を筒状体501から取り外せば、第2モジュール52を本体部50から取り外すことができる。したがって、感圧センサー12に問題が生じたような場合には、第2モジュール52を本体部50から取り外して、容易に感圧センサー12を交換することができる。
【0029】
ロードセル11からの出力信号は、図1に示すように、アンプモジュール13で増幅されて、第1取得部21経由で制御部20へ入力される。感圧センサー12からの出力信号は、第2取得部22経由で制御部20へ入力される。第2取得部22には分圧回路が含まれ、感圧センサー12の抵抗値が低くなると、制御部20への出力電圧が大きくなるよう構成されている。制御部20は、ロードセル11及び4つの感圧センサー12から出力されるアナログ信号をデジタルデータに変換する。本実施形態の場合、ロードセル11及び4つの感圧センサー12からは、上記アナログ信号として0~3.3Vの電圧が出力される。また、本実施形態の場合、制御部20は、上記0~3.3Vの電圧値を0~1023のデジタルデータに変換する。制御部20は、通信部23を介して上記デジタルデータをデータ処理装置3へ無線伝送する。把持力計測装置2からは、ロードセル11及び4つの感圧センサー12それぞれに対応する5つのデジタルデータが、約0.1秒ごとに繰り返し送信される。なお、以下の説明では、ロードセル11に対応する出力値を第1出力値とも称する。また、4つの感圧センサー12それぞれに対応する出力値を第2出力値とも称する。
【0030】
データ処理装置3では、受信モジュール33を介して把持力計測装置2から伝送されてくる情報(すなわち、1つの第1出力値と4つの第2出力値。)を受信し、PC31においてデータ処理を実行する。データ処理の結果は例えばディスプレイ32に表示されればよい。あるいは、データ処理の結果は印刷又はファイルに出力されてもよい。
【0031】
[把持力計測装置2において実行される処理]
次に、把持力計測装置2において実行される処理について、図6に基づいて説明する。この処理は、把持力計測装置2のスイッチ53がオンにされたことを契機として実行される処理である。また、この処理は、把持力計測装置2において、約0.1秒ごとに繰り返し実行される。この処理を開始すると、把持力計測装置2では、第1被押圧部511に加えられた力の大きさをロードセル11によって検出する(S101)。また、S101と並行して、第2被押圧部521に加えられた力を感圧センサー12によって検出する(S103)。ロードセル11からの出力信号は、アンプモジュール13で増幅する(S105)。アンプモジュール13で増幅されたロードセル11からの出力信号と感圧センサー12からの出力信号はA/D変換されて(S107)、そのデータ(すなわち、1つの第1出力値と4つの第2出力値。)がメモリ202内に確保されたバッファに保存される。
【0032】
続いて、把持力計測装置2は、データ処理装置3に対してデータ送信要求を送信し(S111)、受信側の準備が完了したか否かを判断する(S113)。S113ではデータ処理装置3からの応答を待ち、所定時間待っても応答がない場合は(S113:NO)、S111へ戻る。これにより、データ処理装置3からの応答がない場合は、S111-S13を繰り返し実行する。一方、S113においてデータ処理装置3からの応答があった場合は(S113:YES)、バッファに保存されたデータを送信可能なサイズに分割して(S115)、分割したデータを送信して(S117)、計測を終了する。
【0033】
[データ処理装置3において実行される処理]
次に、データ処理装置3において実行される処理について、図7A及び図7Bに基づいて説明する。この処理は、利用者がPC31において所定のアプリケーションを起動して、所定の操作を実行すると開始される処理である。この処理を開始すると、データ処理装置3は、図7Aに示すように、受信の準備をして(S201)、把持力計測装置2からのデータ送信要求を受信したか否かを判断する(S203)。
【0034】
S203では把持力計測装置2からの要求を待ち、所定時間待っても要求がない場合は(S203:NO)、S201へ戻る。これにより、把持力計測装置2からの要求がない場合は、S201-S203を繰り返し実行する。一方、S205においてデータ処理装置3からのデータ送信要求があった場合は(S203:YES)、データを受信して(S205)、分割されたデータを合成する(S207)。
【0035】
続いて、データ処理装置3は、受信したデータに対する圧力値への換算処理を実行する(S209)。S209は、詳しくは図7Bに示すような処理となる。この処理を開始すると、データ処理装置3は、ロードセル11での押圧開始から1秒後の第1出力値を取得する(S211)。より詳しく説明すると、把持力計測装置2は、ロードセル11及び4つの感圧センサー12からの出力信号をデジタルデータ化して、約0.1秒ごとにデータ処理装置3へと送信している。ロードセル11及び4つの感圧センサー12に荷重が作用していない場合、1つの第1出力値と4つの第2出力値は全て0となっている。一方、ロードセル11及び4つの感圧センサー12に荷重が作用した場合、1つの第1出力値と4つの第2出力値は0以外の値を示す。したがって、S211では、第1出力値が0から0以外の値に切り替わった時点を押圧開始に相当する時点と想定し、その押圧開始時点から1秒後の時点における第1出力値を取得する。
【0036】
続いて、データ処理装置3は、ロードセル11の第1出力値を荷重(以下、ロードセル荷重とも称する。)に変換する(S213)。ロードセル11の場合は、ロードセル11の検出値と荷重の大きさとが精度よく比例する関係にあり、その関係があらかじめ特定されている。そのため、ロードセル11の検出値を荷重に換算することができる。図8に示す例の場合、ロードセル11の検出値が0.9Vであれば、このロードセル11の特性に基づき、ロードセル11に作用した荷重が33.2Nであることを特定できる。
【0037】
続いて、データ処理装置3は、感圧センサー12の第2出力値の比率を感圧センサー12の荷重(以下、感圧センサー荷重とも称する。)の比率に換算する(S215)。S215では、まずS211において取得したロードセル11での押圧開始から1秒後の第1出力値に基づいて、変換表又は変換式を選択する。変換表は、把持力計測装置2において、4つの感圧センサー12にかかる荷重を0から測定上限まで変化させた際に、4つの感圧センサー12からどのような出力値が出力されるのかを事前に測定し、それら荷重と出力値との関係を記憶させた配列データ(ルックアップテーブル)である。変換式は、変換表の場合と同様な荷重と出力値を事前に測定し、それら荷重と出力値との関係から最小二乗法等の手法で求められた近似式である。これら変換表又は変換式は、いずれか一方を用いればよい。
【0038】
ただし、本実施形態の場合、感圧センサー12にかかる荷重の大きさが同じであっても、素早く荷重がかけられた場合とゆっくりと荷重がかけられた場合とで、感圧センサー12の出力特性が変わる。そのため、上記変換表又は変換式としては、押圧速度を複数通りに変えて感圧センサー12の出力特性を実測し、その複数通りの押圧速度に対応する複数の変換表又は変換式があらかじめ用意されている。
【0039】
S211において取得した第1出力値(すなわち、ロードセル11での押圧開始から1秒後の出力値。)は、押圧速度が速い場合ほど大きくなる。そこで、S215では、S211において取得した第1出力値に対応する変換表又は変換式を、上記複数の変換表又は変換式の中から選択する。これにより、押圧速度に対応する変換表又は変換式が選択されることになる。S215では、選択した変換表又は変換式を利用して、4つの第2出力値(電圧値。本実施形態の場合、厳密には電圧値に対応するデジタルデータ。)の比率を、感圧センサー荷重の比率に変換する。
【0040】
図8に示す例の場合、ロードセル11での押圧開始から1秒後の第1出力値は0.3Vとなっている。そのため、S215では、第1出力値0.3Vに対応する変換表又は変換式が選択され、これにより、ロードセル11での押圧開始から1秒後の第1出力値が0.3Vとなるような押圧速度に対応する変換表又は変換式が選択される。その変換表又は変換式を利用して、例えば、4つの第2出力値の比率1.5V:1.0V:0.7V:0.5Vが、感圧センサー荷重の比率17.64x:8.89x:7.71x:4.77xに変換される。
【0041】
続いて、データ処理装置3は、ロードセル荷重と感圧センサー荷重の比率から荷重係数xを算出する(S217)。図8に示す例の場合、4つの感圧センサー荷重の比率は、上述の通り、17.64:8.89:7.71:4.77となる。また、4つの感圧センサー荷重の総和17.64x+8.89x+7.71x+4.77xは、ロードセンサ荷重33.2Nに一致する。したがって、17.64x+8.89x+7.71x+4.77x=33.2という数式が成り立つ。この数式をxについて解くとx=0.85となる。すなわち、本実施形態の場合、荷重係数x=0.85となる。
【0042】
続いて、データ処理装置3は、ロードセンサ荷重と荷重係数xから各感圧センサーにかかる荷重を算出する(S219)。図8に示す例の場合、4つの感圧センサー12にかかる荷重は、17.64×0.85≒15N、8.89×0.85≒7.6N、7.71×0.85≒6.5N、4.77×0.85≒4.1Nとなる。これにより、4つの感圧センサー12にかかった荷重を求めることができる。なお、S217を終えたら図7A及び図7Bに示す処理を終了する。
【0043】
[効果]
以上説明した通り、把持力計測装置2によれば、本体部50を被験者が片手で握った際に、第1指から第1被押圧部511に作用した力の大きさをロードセル11で検出することができる。また、第1指以外の指から複数の第2被押圧部521に作用する力の比率を感圧センサー12で検出することができる。
【0044】
第1被押圧部511及び複数の第2被押圧部521を第1指と第1指以外の指との間に挟んで力を加えた場合、第1指以外の指から複数の第2被押圧部521それぞれに作用した力の総和は、第1被押圧部511に作用した力に一致する。したがって、第1被押圧面に作用する力と複数の第2被押圧部521に作用した力の比率とを検出すれば、これらの検出結果に基づいて、複数の第2被押圧部521それぞれに作用した力の大きさを算出することができる。
【0045】
このような手法で複数の第2被押圧部521それぞれに作用した力の大きさを算出しているので、複数の感圧センサー12は、複数の第2被押圧部521それぞれに作用した力の大きさを検出できなくても、複数の第2被押圧部521に作用した力の比率を検出可能に構成されていれば足りる。したがって、感圧センサー12については、ロードセル11よりも簡素な構成にすることが可能となり、感圧センサー12がロードセル11と同等に構成されている場合に比べ、把持力計測装置2の低廉化を図ることができる。また、感圧センサー12については、ロードセル11よりも容易に小型化でき、延いては把持力計測装置2の小型化を図ることができる。
【0046】
[他の実施形態]
以上、本開示について、例示的な実施形態を挙げて説明したが、上述の実施形態は本開示の一態様として例示されるものにすぎない。すなわち、本開示は、上述の例示的な実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲内において、様々な形態で実施することができる。
【0047】
例えば、上記実施形態では、S115及びS117によってデータを分割して送信し、S205及びS207によって分割されたデータを合成するように構成されていたが、データ量が少ない場合、又は大容量データの送受信が可能な場合には、データを分割しないまま送受信を実施してもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、把持力計測装置2とデータ処理装置3とは、別体の装置として構成されていたが、データ処理装置3を小型化することができる場合には、データ処理装置3を把持力計測装置2に組み込んでもよい。すなわち、本開示の把持力計測システムが、単一の筐体内に組み込まれた構造となっていてもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、把持力計測装置2とデータ処理装置3とは、無線通信をするように構成されていたが、有線通信をするように構成されてもよい。特に、上述のようにデータ処理装置3を把持力計測装置2に組み込む場合には、把持力計測装置2とデータ処理装置3が有線通信をするように構成されていれば十分である。
【0050】
また、上記実施形態では、PC31を利用してデータ処理装置3が構成されていたが、PC31と同程度の処理能力がある機器であれば、PC31以外の機器(例えば、スマートフォンなど。)を利用してデータ処理装置3を構成してもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、4つの第2被押圧部521及び4つの感圧センサー12を設けることにより、第2指から第5指までに対応した計測ができるように構成されていたが、これに限定されない。例えば、第2指から第3指までに対応した計測ができれば足りる場合は、2つの第2被押圧部521及び2つの感圧センサー12が設けられているだけでもよい。また、例えば、第2指から第4指までに対応した計測ができれば足りる場合は、3つの第2被押圧部521及び3つの感圧センサー12が設けられているだけでもよい。これらの場合であっても、上記実施形態と同様の手法で、2つ又は3つの第2被押圧部521に作用した荷重を算出することができる。
【0052】
また、上記実施形態では、第1モジュール51及び4つの第2モジュール52の全てがスライド可能に構成されていたが、第1モジュール51及び4つの第2モジュール52のうちの幾つかがスライド不能に構成されていてもよいし、第1モジュール51及び4つの第2モジュール52の全てがスライド不能に構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…把持力計測システム、2…把持力計測装置、3…データ処理装置、10…制御・通信モジュール、11…ロードセル、12…感圧センサー、13…アンプモジュール、14…表示部、15…電池、20…制御部、21…第1取得部、22…第2取得部、23…通信部、24…電源部、31…パーソナルコンピュータ(PC)、32…ディスプレイ、33…受信モジュール、50…本体部、51…第1モジュール、52…第2モジュール、53…スイッチ、55…支持体、56…ねじ、201…CPU、202…メモリ、501…筒状体、502…底板、503…天板、505…第1蓋部、506…第2蓋部、507,508…スリット、511…第1被押圧部、521…第2被押圧部、522…加圧部、524…第1分割ケース、525…第2分割ケース、551,552…溝。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8