(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-30
(45)【発行日】2023-06-07
(54)【発明の名称】コンクリート掘削用の切削機及びコンクリート掘削方法
(51)【国際特許分類】
E04G 23/08 20060101AFI20230531BHJP
E01C 23/09 20060101ALI20230531BHJP
E01C 23/12 20060101ALI20230531BHJP
B28D 1/04 20060101ALI20230531BHJP
【FI】
E04G23/08 D
E01C23/09 A
E01C23/12 Z
E04G23/08 B
B28D1/04 B
(21)【出願番号】P 2019079520
(22)【出願日】2019-04-18
【審査請求日】2022-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】591075641
【氏名又は名称】東鉄工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391059414
【氏名又は名称】コンクリートコーリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100200942
【氏名又は名称】岸本 高史
(72)【発明者】
【氏名】笹川 透
(72)【発明者】
【氏名】宇津木 浩行
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-214820(JP,A)
【文献】特開昭58-164809(JP,A)
【文献】特開2001-172910(JP,A)
【文献】特開昭52-098301(JP,A)
【文献】実開昭53-029127(JP,U)
【文献】特開平07-189503(JP,A)
【文献】特開2003-090010(JP,A)
【文献】特開昭61-242262(JP,A)
【文献】特開昭58-146665(JP,A)
【文献】特開平08-060875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/08
E01C 23/09
E01C 23/12
B28D 1/04
E21B 6/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物の床面に掘削用の切削溝を形成するための切削機であって、
前記切削機は、コンクリート構造物の床面上に設置され、機体の外枠を構成する機体フレーム部と、コンクリート構造物の床面を切削する切削部と、前記切削部を移動可能に支持する可動支持部とを備え、
前記可動支持部は、前記機体フレーム部に対し、前記切削部を前後進移動可能とする前後進手段と、垂直方向に昇降可能とする昇降手段とを備え、
前記切削部は、コンクリート構造物の床面を複数条に亘って切削する切削手段を備え、
前記切削手段は、前記切削部に回転可能に設けられた回転軸上に所定間隔で並列して配設された複数の回転刃を備え、
前記複数の回転刃のうち、前記回転軸の両端に配設された
左右の外側回転刃の左右外側面が
、全面に亘って平坦面となるように構成され
、
前記可動支持部は、前記切削部を支持しながら昇降可能に構成された支持フレームを備え、
前記支持フレームは、前記左右の外側回転刃の左右方向における内側に配設されており、
前記左右の外側回転刃は、左右それぞれ、前記回転軸の両端が前記左右の外側回転刃の左右方向における外側に突出しないようにして、頂部が平坦面となっている台形ネジによって前記回転軸に固定されていることを特徴とする切削機。
【請求項2】
前記複数の回転刃は前記回転軸上に等間隔で並列して配設され、
前記回転軸上に配設された前記複数の回転刃の間隔と、前記回転軸から前記複数の回転刃の下端までの寸法とが、1対2以上となるように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の切削機。
【請求項3】
請求項1に記載の切削機を用いてコンクリート構造物の床面を掘削するコンクリート掘削方法であって、
前記コンクリート掘削方法は、コンクリート構造物の床面の掘削予定領域に、
前記複数の回転刃によって複数条の切削溝を形成する切削工程と、
形成された前記複数条の
切削溝のいずれかに、膨張で加圧可能な圧力破砕機を挿入し、前記複数条の切削溝によって形成されたコンクリート構造物の凸形状部であるコンクリートブロックを前記圧力破砕機で加圧して亀裂を発生させてコンクリート構造物から分離する掘削工程とを備えることを特徴とするコンクリート掘削方法。
【請求項4】
前記掘削工程において、
形成された前記複数条の切削溝のいずれかに、膨張で加圧可能な圧力破砕機を挿入した後、両端を除く残りの複数条の切削溝のいずれかに
、剛性の嵌合板
を有するコンクリート掘削用冶具を挿入して、前記圧力破砕機によって前記コンクリートブロックを加圧することを特徴とする請求項3に記載のコンクリート掘削方法。
【請求項5】
前記コンクリート掘削用冶具は、矩形板状の基部の片側又は両側に前記嵌合板を備えたことを特徴とする請求項4に記載のコンクリート掘削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート掘削用の切削機及びコンクリート掘削方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
駅改良工事やホームドア工事において、ホームに新たに杭打設や横桁設置などの各種工事をする際、ホーム盛土内に存置され解体や除去しなければならない障害物、例えば、コンクリート板、コンクリート基礎、鋼材などを撤去するため、既設のコンクリート構造物の床面を局所的に掘削する作業が実施される。このようなコンクリート構造物の床面の局所的な掘削作業においては、従来、人力により操作するブレーカや大型の破砕機を用いて床面を破砕することにより掘削が行われる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような人力により操作するブレーカや大型の破砕機によれば、コンクリート破砕時に騒音や振動が生じるという問題が存在しており、特に、駅改良工事等において住宅地周辺で作業が実施される場合、この問題はより深刻なものとなっている。また、周囲への騒音を抑えるため、防音シートの設置や取外作業等の処置が必要となり、その結果、作業負担の増大を招いており、掘削作業の迅速化及び効率化の観点から改善が望まれていた。さらに、閉鎖的な防音シート内での作業は、粉塵等の滞留によって、作業者の作業環境の悪化を招くものとなっている。
【0005】
そこで、本発明は、既設のコンクリート構造物の掘削作業において発生する騒音や振動を抑え、さらに、掘削作業を迅速化及び効率化できるコンクリート掘削用の切削機及びコンクリート掘削方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、コンクリート構造物の床面に掘削用の切削溝を形成するための切削機であって、
前記切削機は、コンクリート構造物の床面上に設置され、機体の外枠を構成する機体フレーム部と、コンクリート構造物の床面を切削する切削部と、前記切削部を移動可能に支持する可動支持部とを備え、
前記可動支持部は、前記機体フレーム部に対し、前記切削部を前後進移動可能とする前後進手段と、垂直方向に昇降可能とする昇降手段とを備え、
前記切削部は、コンクリート構造物の床面を複数条に亘って切削する切削手段を備え、
前記切削手段は、前記切削部に回転可能に設けられた回転軸上に所定間隔で並列して配設された複数の回転刃を備え、
前記複数の回転刃のうち、前記回転軸の両端に配設された外側回転刃の左右外側面が平坦面となるように構成されたことを特徴とする切削機によって達成される。
【0007】
本発明によれば、コンクリート構造物の床面に掘削用の複数条の切削溝を形成し、この切削溝に圧力破砕機を挿入して加圧することでコンクリート構造物を破砕する掘削作業を行うことにより、コンクリート掘削時の騒音や振動を抑え、さらに、掘削作業を迅速化及び効率化できる。
【0008】
本発明の好ましい実施態様においては、前記複数の回転刃は前記回転軸上に等間隔で並列して配設され、前記回転軸上に配設された前記複数の回転刃の間隔と、前記回転軸から前記複数の回転刃の下端までの寸法とが、1対2以上となるように構成されている。
【0009】
本発明のこの好ましい実施態様によれば、掘削用の複数条の切削溝によって形成された破砕対象となるコンクリート構造物の凸形状部が、均等かつ破砕に適した形状となり、より効率的に掘削作業を行うことができる。
【0010】
また、本発明のかかる目的は、コンクリート構造物の床面を掘削するコンクリート掘削方法であって、
前記コンクリート掘削方法は、コンクリート構造物の床面の掘削予定領域に、複数条の切削溝を形成する切削工程と、
前記複数条の切削溝のいずれかに、膨張で加圧可能な圧力破砕機を挿入し、前記複数条の切削溝によって形成されたコンクリート構造物の凸形状部であるコンクリートブロックを前記圧力破砕機で加圧して亀裂を発生させてコンクリート構造物から分離する掘削工程とを備えることを特徴とするコンクリート掘削方法によって達成される。
【0011】
本発明によれば、従来よりもコンクリート掘削時の騒音や振動を格段に抑えることができる。これにより、防音シートの設置や取外作業等による作業負担を削減して掘削作業を迅速化及び能率化することができる。
【0012】
本発明の好ましい実施態様においては、前記掘削工程において、前記複数条の切削溝のいずれかに、膨張で加圧可能な圧力破砕機を挿入した後、両端を除く残りの複数条の切削溝のいずれかに、コンクリート掘削用冶具が備えた剛性の嵌合板を挿入して、前記圧力破砕機によって前記コンクリートブロックを加圧することを特徴とする
【0013】
本発明のこの好ましい実施態様によれば、圧力破砕機による加圧時、嵌合板の作用によって、破砕・除去対象となるコンクリートブロックの側面部分に加えられる面圧を平準化でき、大きな面圧が部分的に発生することを防止できる。その結果、それぞれの切削溝Gの下端から、水平方向に、コンクリートブロックに亀裂を発生させて、好適にコンクリートブロックをコンクリート構造物から分断させることができる。その結果、作業精度が向上する。
【0014】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記コンクリート掘削用冶具は、矩形板状の基部の両側に前記嵌合板を備えている。
【0015】
本発明のこのさらに好ましい実施態様によれば、基部の両側に設けられた嵌合板の作用により、コンクリートブロックの側面部分に加えられる面圧をより良好に平準化できるため、それぞれの切削溝の下端から、水平方向により良好に亀裂を発生させてコンクリートブロックをコンクリート構造物から分断させることができる。その結果、作業精度がさらに向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る切削機の略斜視図である。
【
図7】
図7(a)は、本発明の実施の形態に係るコンクリート掘削用冶具の正面図であり、
図7(b)は、本発明の実施の形態に係るコンクリート掘削用冶具の左側面図である。
【
図8】
図8は、コンクリート掘削用冶具40の使用方法を説明するための説明図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施の形態に係るコンクリート掘削方法のフローチャートである。
【
図10】
図10は、本発明の実施の形態に係るコンクリート掘削方法の説明図である。
【
図14】
図14は、本発明の別の実施の形態に係る切削機の斜視図である。
【
図15】
図15(a)は、本発明の別の実施の形態に係るコンクリート掘削用冶具の正面図であり、
図15(b)は、本発明の別の実施の形態に係るコンクリート掘削用冶具の左側面図である。
【
図16】
図16は、本発明の別の実施の形態に係るコンクリート掘削用冶具の使用方法を説明するための説明図である。
【
図17】
図17は、偶数条の切削溝に対して本発明の実施の形態に係るコンクリート掘削用冶具を使用する場合の掘削方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面に基づいて、本発明の好ましい実施態様につき、詳細に説明を加える。
図1は、本発明の好ましい実施態様に係る切削機1の略斜視図であり、
図2はその略平面図、
図3はその略背面図である。なお、以下の説明において、矢印Fで示される方向を前方、その反対方向を後方、前方を向いたときに、右側方向を右方、左側方向を左方という。
図1に示されるように、本発明の実施の形態に係るコンクリート掘削用の切削機1は、機体の外枠を構成する機体フレーム部10と、コンクリート構造物の床面を切削する切削部20と、切削部20を機体フレーム部10に対し前後進及び昇降可能に支持する可動支持部30とを備えて構成されている。
【0018】
機体フレーム部10は、金属製の角鋼管からなるフレーム材を略直方体形状に組み付けて枠状に形成された機枠101を備えており、この機枠101は、平面視で、前後方向を長手とし、左右方向を短手とする略矩形の枠形状を成し、より具体的には、前部のフロントフレーム101F、左右のサイドフレーム101L,101R、後部のリアフレーム101Bで枠形状の四辺が構成されている。
【0019】
左右のサイドフレーム101L,101Rは、機枠101から左右に張り出すようにして四つのキャスター取付部102が設けられており、四つのキャスター取付部102に、全方向に回転可能なキャスター103がそれぞれ取り付けられ、四輪の従動輪が構成されている。これにより、切削機1は、機体フレーム部10によって、コンクリート構造物の床面上を全方向に移動できるように構成されている。
【0020】
また、
図1及び
図3に示されるように、キャスター103は高さ調節可能に構成されており、さらに、左右のサイドフレーム101L,101Rの下面には、高さ調節機能を備えた四脚のアジャスタ104が設けられている。これにより、切削機1は、
図3に示されるように、四つのキャスター103及び四脚のアジャスタ104を高さ調節して四脚のアジャスタ104を接地させることで、機体フレーム部10によって、床面上に位置決めできるように構成されている。
【0021】
次に、可動支持部30について、機体フレーム部10に対し、切削部20を水平方向に水平方向に前後進移動可能とする前後進手段31と、切削部20を垂直方向に昇降可能とする昇降手段32の構成について説明する。
【0022】
まず、可動支持部30の前後進手段31について説明する。
可動支持部30は、左右のサイドフレーム101L,101R上を前後に摺動可能な左右のスライドステージ301(301L,301R)と、左右のスライドステージ301(301L,301R)上に垂直に立設された左右のガイドポール302(302L,302R)と、左右のガイドポール302(302L,302R)上に架設された矩形板状の屋根部303とを備えている。また、スライドステージ301(301L,301R)及び屋根部303は、強度を向上するためにアーム部304で連結されており、また、屋根部303には、後述する切削部20の高さ位置を計測するためのスケール305が設けられている。
【0023】
図2及び
図3に示されるように、左右のサイドフレーム101L,101R上には、それぞれ、長手方向に沿って左右のラックレール306(306L,306R)が取り付けられている。さらに、左右のスライドステージ301(301L,301R)は、それぞれ、その下面に、図示しないバッテリを電源として駆動される電動モータ307(
図3参照)によって正逆回転可能な駆動ピニオン(図示省略)を備え、この駆動ピニオンが、歯が付けられた左右のラックレール306(306L,306R)と噛合しながら回転するよう構成されている。
【0024】
また、左右のスライドステージ301(301L,301R)の下面には、左右のスライドステージ301(301L,301R)の前後方向の摺動を案内するガイドローラ308が設けられている。このようにして、電動モータ307の駆動により、左右のスライドステージ301(301L,301R)は、左右のラックレール306(306L,306R)に沿って、左右のサイドフレーム101L,101R上を脱落することなく前後方向に摺動可能となっている。
【0025】
また、駆動ピニオンは、図示しない制御装置及び操作スイッチにより、回転制御されるように構成されており、その結果、左右のスライドステージ301(301L,301R)の前進、後退が制御可能となっている。
【0026】
なお、左右のラックレール306(306L,306R)の前後端には、それぞれ、左右のスライドステージ301(301L,301R)の前後方向の移動範囲を規制するストッパ309が配設されている。このストッパ309によって、可動支持部30に支持された切削部20の前後方向における移動範囲が規制されており、その結果、このストッパ309によって、機体フレーム部10の枠内における切削部20の前後方向の移動範囲が設定可能となっている。このようにして、可動支持部30の前後進手段31が構成されている。
【0027】
次に、可動支持部30の昇降手段32について説明する。
可動支持部30は、屋根部303の下方に昇降可能に配された矩形板状の昇降天井部313と、左右のガイドポール302(302L,302R)に沿って摺動可能に設けられた左右の昇降部材310(310L,310R)と、左右の昇降部材310(310L,310R)に固定されて切削部20を支持する支持フレーム311と、昇降天井部313に接続されて切削部20を昇降可能とする昇降機構312とを備えている。
【0028】
昇降天井部313の左右両端にそれぞれ左右の昇降部材310(310L,310R)が固定されており、昇降天井部313及び左右の昇降部材310(310L,310R)に設けられた円筒状のガイド穴に左右のガイドポール302(302L,302R)が貫通されている。これにより、左右のガイドポール302(302L,302R)に沿って、昇降天井部313及び左右の昇降部材310(310L,310R)が垂直方向に摺動自在となっている。また、左右の昇降部材310(310L,310R)と左右のガイドポール302(302L,302R)との間には、所定の摩擦力が作用し、その結果、左右の昇降部材310(310L,310R)は、後述の支持フレーム311及び切削部20の荷重を受け止めながら滑らかに摺動するように構成されている。
【0029】
支持フレーム311は、
図1に示されるように、切削部20を可動支持部30に取り付けるためのフレームであって、
図2に示されるように、鉛直方向に延びる左右の側板311aと、水平方向に延びる底板311bからなる断面略コの字状に形成されており、左右の側板311aが左右の昇降部材310(310L,310R)とそれぞれ連結され、底板311b下面に切削部20が取り付けられて、切削部20を支持するよう構成されている。
【0030】
また、支持フレーム311の下部には、金属製のフレーム材が直方体枠状に形成されたガイドフレーム311cが設けられており、ガイドフレーム311cには、駆動によって切削部20に動力を伝達する油圧モータ201が取り付けられている。なお、油圧モータ201は、図示しない油圧ポンプ、油圧回路、流路切替弁を備え、図示しない制御装置及び操作スイッチにより、出力軸の回転方向が制御可能に構成されている。また、ガイドフレーム311cは、切削部20の上方を覆うようにして設けられているから、油圧モータ201を収納するケースとしての機能を果たすとともに、切削部20と外部との接触を防止する機能を有している。
【0031】
次に、切削部20を昇降させる昇降機構312について説明する。
図3に示されるように、昇降機構312は、電動アクチュエータ312aによって正逆回転可能なスクリューロッド312bを備えている。電動アクチュエータ312aは、屋根部303に配設され、図示しないバッテリによって駆動される。スクリューロッド312bは、屋根部303を貫通して下方へ鉛直方向に伸びている。
図3に示されるように、スクリューロッド312bに設けられた雄ネジ部は、昇降天井部313に設けられた雌ネジ部と螺合しており、これにより、スクリューロッド312bが昇降天井部313を螺合貫通するようにして接続されている。このようにして、電動アクチュエータ312aの駆動によって、スクリューロッド312bが正逆に回転すると、昇降天井部313が左右のガイドポール302(302L,302R)に沿って垂直方向に昇降するように構成されている。また、左右の昇降部材310(310L,310R)及び支持フレーム311についても昇降天井部313と一体として昇降するよう構成されているため、昇降天井部313の昇降に応じて切削部20も昇降するように構成されている。このようにして、可動支持部30の昇降手段32が構成されている、
【0032】
図4は、切削機1の略右側面図であり、切削部20が最上位置に位置している状態を示しており、
図5は、切削機1の略右側面図であり、切削部20が最下位置に位置している状態を示している。
上述のように、切削機1は、電動アクチュエータ312の駆動によりスクリューロッド312bが正方向に回転させ、昇降天井部313を下降させることで、支持フレーム311bを下降させ、これに応じて、切削部20を垂直方向に下降して、切削部20を機体フレーム部10に対して下方へと進行させて、コンクリート構造物の床面の深さ方向へ切削が可能となっている。
【0033】
また、切削部20による切削作業が終了したときに、電動アクチュエータ312の駆動によりスクリューロッド312bを逆方向に回転して、昇降天井部313が上昇させることで、支持フレーム311bを上昇させ、これに応じて、切削部20は垂直方向に上昇させ、切削部20を機体フレーム部10に対して上方へと移動させて、切削部20を上昇させてコンクリート構造物の床面と離間させ、機体フレーム部101が床面上を移動可能な状態とすることができる。
【0034】
なお、
図4に示されるように、左右の昇降部材310(310L,310R)が左右のガイドポール302(302L,302R)の上端に位置するときが、切削部20を上下方向における可動範囲の上限となっており、
図5に示されるように、左右のガイドポール302(302L,302R)の下端に位置するときが、切削部20の上下方向における可動範囲の下限となっている。
【0035】
このように、本実施態様においては、左右のラックレール306(306L,306R)を介して左右のサイドフレーム101L,101R上を前後に摺動可能に構成された左右のスライドステージ301(301L,301R)によって前後進手段31が構成されており、左右のスライドステージ301(301L,301R)上に、左右にそれぞれ、垂直に立設された左右のガイドポール302(302L,302R)と、左右のガイドポール302(302L,302R)に沿って昇降に設けられた昇降天井部313と、昇降天井部313に左右の昇降部材310(310L,310R)を介して固定されて切削部20を支持する支持フレーム311と、昇降天井部313を昇降する昇降機構312とによって、昇降手段32が構成されている。
【0036】
図6は、
図1の切削部20周辺の正面図である。
切削部20は、コンクリート構造物の床面を切削可能とする切削手段21を備えている。
切削手段21は、
図6に示されるように、支持フレーム311の底板311bに取り付けられたホルダー202に回転自在に軸支された回転軸203の軸上に、所定間隔Wで並列するようにして配設された複数の回転刃204を備えている。ここに、それぞれの回転刃204は、外周に複数のスリットが等間隔で設けられた円盤形状のブレードであり、コンクリートに回転しながら接触することで切削が可能となっている。本実施態様においては、一例として、複数の回転刃204は、回転軸203上に5枚配設されており、これにより、5条の切削が可能となっている。しかしながら、本発明の複数の回転刃204の構成は、これに限られず、2枚以上の任意の数を選択することが可能であり、例えば、3枚~10枚といった数を選択することが可能である。
【0037】
回転軸203の軸上には、回転軸203と一体的に回転するスプロケット205が設けられており、油圧モータ201を回転駆動させると、油圧モータ201の出力軸201a及びスプロケット205に巻回されたチェーン206によって、スプロケット205に回転動力が伝達され、その結果、回転軸203に回転動力が伝達される。これに応じて、複数の回転刃204が回転し、コンクリート構造物の切削が可能となっている。なお、図示しない制御装置によって、油圧モータ201の正逆回転制御が可能に構成されており、複数の回転刃204は正逆回転が可能となっている。
【0038】
ここに、コンクリートの切削時において、図示しない制御装置によって、複数の回転刃204は、切削部20の前後の進行方向に対してアッパー回転するよう制御され、これにより、下側から上に向かってブレードがコンクリートに回転接触するよう構成されている。すなわち、前後進手段31により、切削部20が前進しているとき、複数の回転刃204は、機体の右側から見て反時計回りに自動で回転し、後進しているとき、時計回りに自動で回転するよう構成されている(
図5参照)。
【0039】
このように構成された切削手段21は、一度の切削工程において、(i)回転刃204aを回転させながら昇降手段32によって下降させ、コンクリートの床面に押し当てるようにして深さ方向へ切削を行うことで、コンクリート表面から、最大で左右幅回転軸204から回転刃294の下端までの寸法Dの深さだけ、回転刃204aをコンクリート内部に進入させて、次に、(ii)前後進手段31によって、切削部20を前進または後進させることで、回転刃204aによって、コンクリート構造物の床面に、複数条の切削溝を形成することが可能となっている。なお、このとき形成される複数条の切削溝は、全体の左右幅が回転軸203の両端に配設された外側回転刃204a同士の間隔幅Xと略同一であり、切削深さは最大で回転軸204から回転刃294の下端までの寸法Dとなる。また、切削溝同士の間隔は、回転刃204同士の間隔幅Wと略同一となる。
【0040】
また、後述する本発明に係るコンクリート掘削方法は、一例として、切削機1を用いてコンクリート構造物の床面に複数条の切削溝を形成し(
図10参照)、この複数条の切削溝のいずれかに、膨張により加圧可能な板状の圧力破砕機41を挿入して加圧し、コンクリート構造物に亀裂を発生させることにより掘削するものである(
図11(a)及び
図11(b)参照)。このとき、コンクリート構造物Cに良好に亀裂を発生させるため、複数条の切削溝の切削溝同士の間隔wと、切削溝の深さdは、1対1以上の範囲で構成されることが好ましく、さらには、1対2以上の範囲で構成されることがより好ましい(
図11(a)参照)。このようなことから、コンクリート構造物の床面に複数条の切削溝を形成する切削機1の切削部20は、回転刃204同士の左右幅Wと、回転軸204から回転刃294の下端までの寸法Dとの比が、1対2以上の範囲で構成されることが好ましい。これにより、切削機1を用いて後述するコンクリート掘削方法を実施する際、コンクリート構造物を良好に掘削することが可能となる。
【0041】
なお、本実施態様において、回転刃204同士の間隔幅Wの寸法は、約100mmであり、回転軸204から回転刃294の下端までの寸法Dは約200mmである。
【0042】
また、
図6に示されるように、複数の回転刃204のうち、回転軸203の両端に配設された外側回転刃204aは、それぞれ、台形ネジ204a1によって、回転軸203に固定されており、外側回転刃204aの内側に配設された3枚の内側回転刃204bは、それぞれ、ボルト204b1によって、回転軸203に固定されている。
【0043】
ここに、外側回転刃204aを回転軸203の両端に固定する台形ネジ204a1は、頂部204a2が平坦面となっており、かつ、先端204a4に向かうにつれて、この頭部204a3の外径が小さくなるテーパー形状を有している。さらに、頭部204a3が外側回転刃204aの取付穴に嵌合するようにして外側回転刃204aが回転軸203に固定され、その結果、外側回転刃204aの左右外側面は、平坦面となるように構成されている。
【0044】
なお、後述する切削機1を用いたコンクリート掘削方法は、コンクリート構造物の床面に、全体の左右幅が、外側回転刃204a同士の間隔幅Xと略同一となる掘削溝を形成しながら深さ方向へと切削部20を進行させて掘削作業を行うよう構成されている(
図12参照)。このとき、仮に、外側回転刃204aの左右外側面よりも左右外側に、例えばネジ頭等の部材が配設されていると、切削部20が深さ方向へ進行する際、コンクリート構造物の床面から回転軸204から回転刃294の下端までの寸法Dの深さよりもさらに下方に、切削部20を深さ方向へ進行させようとすると、ネジ頭がコンクリート構造物に引っかかり、深さ方向への進行が阻害されることとなる。これに対し、本実施態様のように、左右の外側回転刃204a同士の間隔幅Xよりも左右外方に部材を配設しないよう切削部20を構成すれば、そのような事態を防止して深さ方向への切削作業を円滑に行うことができる。なお、同様の理由により、スプロケット205は、回転軸204上において、左右の外側回転刃204aの左右内側に配設されている。
【0045】
ここに、複数の回転刃204によるコンクリート床面の切削作業時に生じる騒音及び振動は、従来のブレーカあるいは大型の破砕機による床面の破砕時と比べて大幅に小さいものである。さらに、切削機1を用いた後述のコンクリート掘削方法によって、複数条の切削溝に圧力破砕機による圧力を加えて破砕・除去することによりコンクリート構造物を掘削すれば、従来よりもコンクリート掘削時の騒音や振動を格段に抑えることができる。また、切削部20は、作業者が図示しない操作スイッチを操作することで、前後進手段31及び昇降手段32によって、切削部20を移動させて切削溝を迅速に形成することができるよう構成されており、その結果、従来よりも掘削作業を格段に迅速化及び効率化でき、作業精度も向上できる。
【0046】
(コンクリート掘削用冶具)
図7(a)は、コンクリート掘削用冶具40の正面図であり、
図7(b)は、コンクリート掘削用冶具40の左側面図である。
【0047】
コンクリート掘削用冶具40は、本発明に係るコンクリート掘削方法において、一例として上記切削機1によって、コンクリート構造物の床面に複数条の切削溝を形成した後、除去対象となるコンクリート掘削面が平坦となるように破砕・除去するために用いる。
【0048】
コンクリート掘削用冶具40は、
図7(a)に示されるように、所定の厚みを有する矩形板状の基部401の片側に、コンクリートの切削溝に嵌合する矩形の形成された剛性の嵌合板402が取り付けられ、
図7(b)に示されるように、基部401上面に作業用の取手403が取り付けられている。なお、上記切削機1を用いる場合において、基部401の幅は、複数の回転刃204同士の間隔幅Wと略同一となるように設けられることが望ましい。加えて、基部401下面から嵌合板402の下端までの寸法は、切削部20による最大の切削深さDと一致するように設けられることが望ましい。
【0049】
図8は、コンクリート掘削用冶具40の使用方法を説明するための説明図である。
図8において、該コンクリート構造物Cの床面には、一例として、上記切削機1によって形成された、切削深さD、全体の左右幅をXとする5条の切削溝Gが所定間隔で形成されている。ここに、切削溝Gによって形成されたコンクリート構造物Cの凸形状部を、破砕・除去対象となるコンクリートブロックC1という。
【0050】
まず、両端の切削溝Gを除く、いずれかの切削溝Gに、膨張で加圧可能な圧力破砕機41を挿入するともに、両端の切削溝Gを除く残りの切削溝Gに、それぞれ、コンクリート掘削用冶具40の嵌合板402を挿入する。ここに、圧力破砕機41としては、例えば、特開2007-8601に示されるような油圧式の板ジャッキを用いることができる。なお、圧力破砕機41としては、水圧式の板ジャッキを用いてもよい。また、圧力破砕機41を挿入する切削溝Gは、それぞれのコンクリートブロックC1に均等に膨張圧を加えるため、両端の切削溝Gの略中央に位置する切削溝Gを選択することが望ましい。
【0051】
次に、圧力破砕機41の膨張圧によってコンクリートブロックC1の側面部分に左右方向の力を加えると、嵌合板402の作用によって、コンクリートブロックC1の側面部分に加えられる面圧を平準化でき、大きな面圧が部分的に発生することを防止できる。その結果、それぞれの切削溝Gの下端から、コンクリートブロックC1に、水平方向に亀裂を発生させて、コンクリートブロックC1を切削溝Gの下端からコンクリート構造物Cと分断できる。その結果、
図11(b)に示されるように、コンクリートブロックC1をその底部から分離して除去することができるとともに、コンクリート掘削面が平坦となるようにして良好に掘削することができる。また、コンクリートブロックC1除去後の掘削面を平坦とできることによって、作業精度を向上できる。
【0052】
なお、コンクリート掘削用冶具40を用いず、圧力破砕機41の膨張圧によって左右方向に力を加えると、除去対象となるコンクリートブロックC1の中途部で亀裂が発生して、切削溝Gの下端よりも上方でコンクリートブロックC1が折れて分断されてしまう事態が生じうる。その結果、除去後の掘削面に凹凸が生じてしまい、作業精度が低下するとともに、掘削作業を継続する場合に支障が生じることとなるが、コンクリート掘削用冶具41を用いることにより、このような事態を好適に防止することができる。
【0053】
(コンクリート掘削方法について)
次に、本発明の実施の形態に係るコンクリート掘削方法について説明する。
図9は、本発明の実施の形態に係るコンクリート掘削方法のフローチャートである。以下では、本発明のコンクリート掘削方法において、一例として、上記切削機1及び上記コンクリート掘削用冶具40を用いる場合について説明する。なお、
図10ないし
図13において、網掛けされた部分がコンクリート構造物の掘削予定領域Tを示している。ここでは、
図10に示されるように、掘削予定領域Tを左右幅X´、コンクリート構造物の床面からの深さD´、前後方向における奥行Yの略直方体形状として掘削を行うものとする。また、切削機1は、説明の便宜上、回転刃204のみ図示している。なお、掘削予定領域Tの左右幅X´は、切削機1の切削部20における左右の外側回転刃204a同士の間隔幅Xと略同一であることが望ましいが、本発明のコンクリート掘削方法はこれに限定されるものではない。また、掘削予定領域Tの形状に関しても、略直方体形状に限定されるものではない。
【0054】
本発明のコンクリート掘削方法は、
図9に示されるように、設置工程(STEP1)と、第1の切削工程(STEP2)と、第1の掘削工程(STEP3)と、第2の切削工程(STEP5)と、第2の掘削工程(STEP6)とを備えている。
【0055】
設置工程(STEP1)は、コンクリート構造物の床面に、切削機1を位置決めして設置する工程である。設置工程(STEP1)は、具体的には、切削機1を掘削予定領域T上まで移動させ、切削機1をアジャスタ104の高さ調節してコンクリート構造物の床面上に固定する作業を行う。
【0056】
第1の切削工程(STEP2)は、コンクリート構造物の床面の掘削予定領域Tに、複数条の切削溝Gを形成する工程である。なお、本実施形態では、5条の切削溝Gを形成するものとする。また、5条の切削溝Gの溝同士の幅wは、切削機1の回転刃204同士の間隔幅Wと略同一となっている。
【0057】
第1の切削工程(STEP2)は、具体的には、掘削予定領域Tの後端(位置S)において、切削機1の切削部20の複数の回転刃204を回転させながら、昇降手段32によって下降させ、所定の切削深さdとなるまで、コンクリート構造物の床面を切削し(STEP2-1)、次に、複数の回転刃204を、掘削予定領域Tの後端(位置S)から前端(位置E)まで前進させて、掘削予定領域Tに切削深さdの5条の切削溝Gを形成する(STEP2-2)。
【0058】
なお、所定の切削深さdは、掘削予定領域Tの深さD´に応じて、切削部20の回転軸204から回転刃294の下端までの寸法D以下の範囲で、作業者が任意に定めることができる。本実施形態においては、所定の切削深さdは、切削機1が一度に切削できる最大の切削深さである寸法Dと略同一としているが、本発明のコンクリート掘削方法はこれに限定されるものではなく、掘削予定領域Tの深さD´に応じて、最大の切削深さD以下の切削深さとしてもよい。なお、ここでは、一例として、切削深さdは、深さD´の2分の1としている。
【0059】
また、図示されていないが、切削を開始する位置Sにおいて、複数の回転刃204は、切削機1のリアフレーム101B側に位置しており、切削を終了する位置Eにおいて、フロントフレーム101F側に位置している。
【0060】
第1の掘削工程(STEP3)は、第1の切削工程(STEP2)の後、5条の切削溝Gによって形成されたコンクリート構造物Cの凸形状部であるコンクリートブロックC1を破砕・除去することによりコンクリート構造物の床面を掘削する工程である。
【0061】
具体的には、
図11(a)に示されるように、両端の切削溝Gを除くいずれかの切削溝Gに、圧力破砕機41を挿入するともに、両端の切削溝Gを除く残りの切削溝Gに、それぞれ、コンクリート掘削用冶具40の嵌合板402を挿入する。なお、圧力破砕機41を挿入する切削溝Gは、それぞれのコンクリートブロックC1に均等に膨張圧を加えるため、両端の切削溝G1の略中央に位置する切削溝G1が選択されることが望ましく、本実施形態においては、中央の切削溝G1が選択されている。
【0062】
次に、圧力破砕機41の膨張圧によってコンクリートブロックC1の側面部分に左右方向の力を加え、それぞれの切削溝Gの下端から、水平方向に、コンクリートブロックC1に亀裂を発生させ、コンクリート構造物Cから分断する(STEP3-1)。なお、切削溝G1によって形成されるコンクリートブロックC1の幅寸法wと高さ寸法dの比は、1対2以上の範囲であることが、コンクリートブロックC1の底部に亀裂を水平方向に発生させて分断するために好ましい。
【0063】
次に、
図11(b)に示されるように、コンクリート構造物CからコンクリートブロックC1を分離・除去する(STEP3-2)。これにより、コンクリート構造物の床面の掘削予定領域Tにおける切削深さdの掘削が完了する。すなわち、コンクリート構造物Cの床面からの深さd、左右の幅X´、前後方向における奥行Yの略直方体形状の掘削溝の形成が完了する。
【0064】
第2の切削工程(STEP3)の後、コンクリート構造物の床面の掘削予定領域Tの下端まで掘削が完了した場合は、掘削作業が終了となり(STEP4でYES)、掘削が完了していない場合は、第2の切削工程(STEP5)に進む(STEP4でNO)。
【0065】
第2の切削工程(STEP5)は、具体的には、掘削予定領域Tの前端(位置E)において、切削機1の切削部30の複数の回転刃204を回転させながら、昇降手段32によって下降させ、第1の掘削工程によって形成された掘削面からさらに所定の切削深さdとなるまで、コンクリートブロックC1除去後の掘削面を切削する(STEP5-1)。このとき、所定の切削深さdは、第1の切削工程(STEP2)と同様に、掘削予定領域Tの深さD´に応じて、切削部20の回転軸204から回転刃294の下端までの寸法D以下の範囲で、作業者が任意に定めることができる。次に、複数の回転刃204を、掘削予定領域Tの前端(位置E)から前端(位置S)まで後進させて、掘削予定領域Tに5条の切削溝G2を形成する(STEP5-2)。なお、第1の切削工程(STEP2)との相違は、第1の切削工程(STEP2)と前後方向における反対方向に複数の回転刃204が進行する点にあり、これにより、切削機1の回転刃204は、掘削予定領域Tの後端(位置S)に戻るため、掘削作業をさらに継続する場合において(STEP7でNO)、迅速かつ効率的に掘削作業を実施できる。なお、第2の切削工程(STEP5)における切削深さdは、第1の切削工程(STEP2)における切削深さdと必ずしも一致している必要はなく、掘削予定領域Tにおいて残存するコンクリートの深さに合わせて、任意に調節可能である。
【0066】
第2の掘削工程(STEP6)は、第1の切削工程S2の後、5条の切削溝G2によって形成されたコンクリート構造物Cの凸形状部であるコンクリートブロックC2を破砕・除去することによりコンクリート構造物Cの床面を掘削する工程である。
【0067】
第2の掘削工程(STEP6)は、具体的には、
図13(a)に示されるように、両端の切削溝G2を除く何れかの切削溝G2に、圧力破砕機41を挿入するともに、両端の切削溝G2を除く残りの切削溝G2に、それぞれ、コンクリート掘削用冶具40の嵌合板402を挿入する。なお、第1の掘削工程(STEP3)と同様、圧力破砕機41を挿入する切削溝G2は、それぞれのコンクリートブロックC2に均等に膨張圧を加えるため、両端の切削溝G2の略中央に位置する切削溝G2が選択されることが望ましく、本実施形態においては、中央の切削溝G2が選択されている。また、コンクリートブロックC2の好ましい幅寸法wと高さ寸法dの比についても、第1の掘削工程(STEP3)と同様である。
【0068】
次に、圧力破砕機41の膨張圧によってコンクリートブロックC2の側面部分に左右方向の力を加え、それぞれの切削溝G2の下端から、水平方向に、コンクリートブロックC2に亀裂を発生させ、コンクリート構造物Cから分断する(STEP6-2)。これにより、コンクリート構造物の床面の掘削予定領域Tにおける切削深さD´の掘削が完了する。すなわち、コンクリート構造物Cの床面からの深さD´(2d)、左右の幅X´、前後方向における奥行Yの略直方体形状の掘削溝の形成が完了する。
【0069】
第2の掘削工程(STEP6)の後、コンクリート構造物の床面の掘削予定領域Tの下端まで掘削が完了した場合は、掘削作業が終了となり(STEP7でYes)、掘削予定領域Tが残存し、掘削が完了していない場合は、第1の切削工程STEP2に戻る(STEP7でNo)。
【0070】
このように構成された本発明のコンクリート掘削方法によれば、複数の回転刃204によるコンクリート床面の切削作業時及び圧力破砕機41によるコンクリート構造物Cの破砕・除去時に生じる騒音及び振動は、従来のブレーカによる床面の破砕、あるいは大型の破砕機による床面の破砕時と比べて大幅に小さいものであるから、従来よりもコンクリート掘削時の騒音や振動を格段に抑えることができる。これにより、防音シートの設置や取外作業等による作業負担を削減して掘削作業を迅速化及び能率化することができる。さらに切削機1によって複数の切削溝Gを形成した上で、圧力破砕機41を用いて掘削作業を行うことにより、従来よりも作業精度を向上できる。
【0071】
本発明は、以上の実施態様に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0072】
図14は、本発明の別の実施の形態に係る切削機の斜視図である。
図1において、切削機1は、5条の切削溝の形成が可能な5条の回転刃204を備えているが、5条以外の条数(例えば、7条、9条など)を備えた切削機1を構成することも可能である。
図14においては、7条の切削溝の回転刃204´を備えた切削機1が図示されている。なお、奇数枚の回転刃204´を備えた切削機1によれば、中央の切削溝に圧力破砕機41を挿入して好適に掘削できるが、偶数枚(例えば、6条、8条、10条など)の回転刃204を備えるように切削機1を構成しても良い。また、
図1において、切削機1の昇降機構312は、電動アクチュエータ312aを備えて構成されているが、
図14に示されるように、手動のクランク312´によって、スクリューロッド312b´を回転する構成としてもよい。これにより、部品点数の削減が図られ、省エネ効果が得られる。また、
図6において、切削部20は、回転軸203の軸上に、所定間隔Wの等間隔で複数の回転刃204を配設するよう構成したが、必ずしも複数の回転刃204は等間隔で配設される必要はなく、それぞれの間隔が異なるようにして配設することも可能である。
【0073】
図15(a)は、本発明の別の実施の形態に係るコンクリート掘削用冶具40´の正面図であり、
図15(b)は、本発明の別の実施の形態に係るコンクリート掘削用冶具40´の左側面図である。
【0074】
図7において、コンクリート掘削用冶具40の基部401の片側に嵌合板402を備えるように構成されているが、
図15に示されたコンクリート掘削用冶具40´のように、基部401´の両側に、コンクリートの切削溝に嵌合する剛性の嵌合板402´が取り付けて構成してもよい。
【0075】
このように構成されたコンクリート掘削用冶具40´は、
図16に7条の切削溝Gが形成されたコンクリ-ト構造物Cにおける使用例を示すように、破砕・除去対象となるコンクリートブロックC1の両側面を挟むようにして固定し、圧力破砕機41による膨張圧によってコンクリートブロックC1の側面部分に加えられる面圧をより良好に平準化できるため、それぞれの切削溝Gの下端から、水平方向に、より良好に亀裂を発生させてコンクリートブロックC1をコンクリート構造物Cから分断させることができる。
【0076】
図17は、偶数条の切削溝Gに対して本発明の実施の形態に係るコンクリート掘削用冶具40,40´を使用する場合の掘削方法の説明図である。
図17に示されるように、複数の切削溝Gに、基部401の片側に嵌合板402を備えたコンクリート掘削用冶具40と、基部401の両側に嵌合板402を備えたコンクリート掘削用冶具40´を組み合わせて使用することも可能であり、本発明のコンクリート掘削方法を、偶数条の切削溝Gに対して使用する場合に、特に好適に掘削を行うことが可能となる。なお、
図17においては、コンクリート構造物Cに、6条の切削溝Gを形成した場合が示されている。
【符号の説明】
【0077】
1 切削機
20 切削部
30 可動支持部
31 前後進手段
32 昇降手段
41 圧力破砕機
40 コンクリート掘削用冶具
101 機体フレーム部
104 アジャスタ
401 基部
402 嵌合板
201 油圧モータ
202 ホルダー
203 回転軸
204 回転刃
204a1 台形ネジ
206 チェーン
302 ガイドポール
303 屋根部
310 昇降部材
311 支持フレーム
312 昇降機構
312a 電動アクチュエータ
313 昇降天井部