(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-30
(45)【発行日】2023-06-07
(54)【発明の名称】スライディングウォール
(51)【国際特許分類】
E05D 15/00 20060101AFI20230531BHJP
E06B 7/18 20060101ALI20230531BHJP
E06B 3/70 20060101ALI20230531BHJP
【FI】
E05D15/00 A
E05D15/00 F
E06B7/18 A
E06B3/70 D
(21)【出願番号】P 2019101791
(22)【出願日】2019-05-30
【審査請求日】2022-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001351
【氏名又は名称】コクヨ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501433619
【氏名又は名称】中西産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【氏名又は名称】赤澤 一博
(72)【発明者】
【氏名】日下 篤
(72)【発明者】
【氏名】中西 好一
(72)【発明者】
【氏名】下地 学
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 直一
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-197680(JP,A)
【文献】特開2019-035216(JP,A)
【文献】特開2001-082051(JP,A)
【文献】特開2013-147897(JP,A)
【文献】実開昭54-149111(JP,U)
【文献】特開平09-177446(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 15/00-15/58
E06B 7/00- 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井レールに沿って移動可能な間仕切パネルを有するスライディングウォールであって、前記間仕切パネルが、面板の周縁に枠体を配してなるパネル本体と、このパネル本体の上端部及び下端部にそれぞれ設けられた圧接体と、操作部に加えられる操作力により前記圧接体を前記天井レールの下面及び床面にそれぞれ圧接させる圧接体駆動手段とを備えたものであり、前記圧接体駆動手段の全構成部品が前記枠体に沿って配されて
おり、
前記圧接体駆動手段が、前記枠体に設けられた操作部と、前記枠体に設けられ前記操作部に加えられる操作力を利用して前記圧接体を突没動作させる圧接機構部と、前記操作部に加えられる操作力を前記圧接機構部に伝達する伝達ロッドとを備えたものであり、
前記圧接機構部が、圧接動作の途上において、操作力を軽減するためのアシスト機構を備えているスライディングウォール。
【請求項2】
前記面板が、透明なガラス板を主体に構成されたものである請求項1記載のスライディングウォール。
【請求項3】
前記枠体が、左右の起立フレームと、これら起立フレームの下端同士を連結するボトムフレームと、前記起立フレームの上端同士を連結するトップフレームとを備えたものであり、
前記圧接体駆動手段が、前記起立フレームに設けられた操作部と、前記ボトムフレーム及びトップフレームにそれぞれ設けられ前記操作部に加えられる操作力を利用して前記圧接体を突没動作させる圧接機構部と、前記起立フレームに沿って設けられ前記操作部に加えられる操作力を前記各圧接機構部に伝達する伝達ロッドとを備えたものである請求項1又は2記載のスライディングウォール。
【請求項4】
前記圧接機構部が、水平方向に進退する連結バーと、この連結バーの進退動作を対応する圧接体の突没動作に変換する第1リンク機構と、前記伝達ロッドの昇降動作を前記連結バーの進退動作に変換する第2リンク機構とを備えたものであり、前記連結バーには当該連結バーの動きと前記圧接体の動きとのずれを弾性的に吸収するための動作吸収機構が設けられている請求項3記載のスライディングウォール。
【請求項5】
前記アシスト機構が、支点周りに往復回転可能な回転体と、この回転体の作用点の一つを弾性的に牽引する引張ばねとを備え、所定の思案点を境にして、前記引張ばねの前記回転体に対する回転付勢方向が反転するように構成されたものであり、前記回転体が一方の停止位置から前記思案点を超えて他方の停止位置まで回転付勢される際のばね力で、前記連結バーを操作力軽減方向に付勢するようにしている請求項4記載のスライディングウォール。
【請求項6】
天井レールに沿って移動可能な間仕切パネルを有するスライディングウォールであって、前記間仕切パネルが、面板の周縁に枠体を配してなるパネル本体と、このパネル本体の上端部及び下端部にそれぞれ設けられた圧接体と、操作部に加えられる操作力により前記圧接体を前記天井レールの下面及び床面にそれぞれ圧接させる圧接体駆動手段とを備えたものであり、
前記圧接体駆動手段が、前記枠体に設けられた操作部と、前記枠体に設けられ前記操作部に加えられる操作力を利用して前記圧接体を突没動作させる圧接機構部と、前記操作部に加えられる操作力を前記圧接機構部に伝達する伝達ロッドとを備えたものであり、
前記圧接機構部が、圧接動作の途上において、操作力を軽減するためのアシスト機構を備えているスライディングウォール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井レールに沿って移動可能な間仕切パネルを有するスライディングウォールに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のスライディングウォールとして、天井レールに複数枚の間仕切パネルを移動可能に懸吊支持させておき、それらの間仕切パネルを、天井レールに平行に配される使用位置と、所定の待機位置との間でスライド移動させることができるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなスライディングウォールにおいては、使用位置における安全性や遮音性等を確保するために、天井レールに懸吊されたパネル本体の上端部及び下端部にそれぞれ圧接体を突没可能に設けておき、使用位置においてこれらの圧接体を突出させて対向する天井レールの下面及び床面等に圧接させるようにしたものが種々開発されている。
【0004】
ところで、かかる間仕切パネルのパネル本体は、平行な面板の周縁に枠体を配した中空体状のものであるが、その内部空間、すなわち、枠体に囲まれて面板間に形成された内部空間には前述した上下の圧接体を突没動作させるための圧接体駆動手段の構成部品が収容されている。
【0005】
そのため、面板を透明なガラス板にしてパネル本体を透光性のあるものにしたり、面板間に機能性材料を充填して遮音性や吸音性を高めたりしたいという要望があっても、その内部空間に配設された圧接体駆動手段の構成部品が邪魔になり、その要求に応えるのが難しいという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、間仕切パネルの内部空間を有効利用するための可能性が、圧接体駆動手段の構成部品の存在により狭められているという課題を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明に係るスライディングウォールは、天井レールに沿って移動可能な間仕切パネルを有するスライディングウォールであって、前記間仕切パネルが、面板の周縁に枠体を配してなるパネル本体と、このパネル本体の上端部及び下端部にそれぞれ設けられた圧接体と、操作部に加えられる操作力により前記圧接体を前記天井レールの下面及び床面にそれぞれ圧接させる圧接体駆動手段とを備えたものであり、前記圧接体駆動手段の全構成部品が前記枠体に沿って配されており、
前記圧接体駆動手段が、前記枠体に設けられた操作部と、前記枠体に設けられ前記操作部に加えられる操作力を利用して前記圧接体を突没動作させる圧接機構部と、前記操作部に加えられる操作力を前記圧接機構部に伝達する伝達ロッドとを備えたものであり、
前記圧接機構部が、圧接動作の途上において、操作力を軽減するためのアシスト機構を備えている。なお、「アシスト機構」は、操作力を少なくとも一時的に軽減させるものであればよい。
【0009】
請求項2記載の発明に係るスライディングウォールは、請求項1記載のものにおいて、前記面板が、透明なガラス板を主体に構成されたものである。
【0010】
請求項3記載の発明に係るスライディングウォールは、請求項1又は2記載のものにおいて、前記枠体が、左右の起立フレームと、これら起立フレームの下端同士を連結するボトムフレームと、前記起立フレームの上端同士を連結するトップフレームとを備えたものであり、前記圧接体駆動手段が、前記起立フレームに設けられた操作部と、前記ボトムフレーム及びトップフレームにそれぞれ設けられ前記操作部に加えられる操作力を利用して前記圧接体を突没動作させる圧接機構部と、前記起立フレームに沿って設けられ前記操作部に加えられる操作力を前記各圧接機構部に伝達する伝達ロッドとを備えたものである。
【0011】
請求項4記載の発明に係るスライディングウォールは、請求項3記載のものにおいて、前記圧接機構部が、水平方向に進退する連結バーと、この連結バーの進退動作を対応する圧接体の突没動作に変換する第1リンク機構と、前記伝達ロッドの昇降動作を前記連結バーの進退動作に変換する第2リンク機構とを備えたものであり、前記連結バーには当該連結バーの動きと前記圧接体の動きとのずれを弾性的に吸収するための動作吸収機構が設けられている。
【0012】
請求項5の発明に係るスライディングウォールは、請求項4記載のものにおいて、前記アシスト機構が、支点周りに往復回転可能な回転体と、この回転体の作用点の一つを弾性的に牽引する引張ばねとを備え、所定の思案点を境にして、前記引張ばねの前記回転体に対する回転付勢方向が反転するように構成されたものであり、前記回転体が一方の停止位置から前記思案点を超えて他方の停止位置まで回転付勢される際のばね力で、前記連結バーを操作力軽減方向に付勢するようにしている。
【0013】
請求項6の発明に係るスライディングウォールは、天井レールに沿って移動可能な間仕切パネルを有するスライディングウォールであって、前記間仕切パネルが、面板の周縁に枠体を配してなるパネル本体と、このパネル本体の上端部及び下端部にそれぞれ設けられた圧接体と、操作部に加えられる操作力により前記圧接体を前記天井レールの下面及び床面にそれぞれ圧接させる圧接体駆動手段とを備えたものであり、
前記圧接体駆動手段が、前記枠体に設けられた操作部と、前記枠体に設けられ前記操作部に加えられる操作力を利用して前記圧接体を突没動作させる圧接機構部と、前記操作部に加えられる操作力を前記圧接機構部に伝達する伝達ロッドとを備えたものであり、
前記圧接機構部が、圧接動作の途上において、操作力を軽減するためのアシスト機構を備えている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、間仕切パネルの内部空間を有効利用するための可能性を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係るスライディングウォールの使用位置を示す正面図。
【
図2】同実施形態に係るスライディングウォールの使用位置を示す平面図。
【
図3】同実施形態に係るスライディングウォールの収納途中の状態を示す正面図。
【
図4】同実施形態に係るスライディングウォールの収納途中の状態を示す平面図。
【
図5】同実施形態に係るスライディングウォールの待機位置を示す平面図。
【
図7】同実施形態に係る間仕切パネルを示す分解斜視図。
【
図8】同実施形態に係る間仕切パネルの枠体を示す正面図。
【
図9】同実施形態に係る間仕切パネルの枠体を示す中央正断面図。
【
図10】同実施形態に係る間仕切パネルの枠体を示す中央正断面図。
【
図11】同実施形態に係る間仕切パネルの枠体を示す斜視図。
【
図12】同実施形態に係る間仕切パネルのボトムフレームを示す分解斜視図。
【
図13】同実施形態に係る間仕切パネルの圧接体駆動手段の作動説明図。
【
図14】同実施形態に係る間仕切パネルの圧接体駆動手段の作動説明図。
【
図15】同実施形態に係る間仕切パネルの圧接体駆動手段の作動説明図。
【
図16】同実施形態に係る間仕切パネルの圧接体駆動手段の作動説明図。
【
図17】同実施形態に係る間仕切パネルの圧接体駆動手段の作動説明図。
【
図18】同実施形態に係る間仕切パネルの圧接体駆動手段の作動説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を、
図1~
図18を参照して説明する。
【0017】
このスライディングウォールSWは、
図1~
図5に示すように、対面する建築壁W間に形成される空間を開放可能に間仕切るべく設けられたもので、それら建築壁Wにそれぞれ固設された左右の固定フレーム1と、これら固定フレーム1の上端間に配された天井レール2と、この天井レール2に沿って移動可能な複数枚の間仕切パネル3と、例えば正面視右側の固定フレーム1に蝶着されたドアパネル4とを備えたものである。
【0018】
天井レール2は、
図14~
図17に示すように、底壁21に長手方向に連続する溝21aを有した角柱パイプ状のもので、その天壁23の外面には取付け用の突条23aが一体に形成されている。この天井レール2は、突条23aに掛止された図示しない懸吊部材を介して図示しない建築構造物に懸吊されている。天井レール2の両側には天井材Ceが配設されており、これら天井材Ceの下面に相当する天井面Ceaと天井レール2の下面2aとは略面一となっている。
【0019】
各間仕切パネル3は、
図1及び
図7~
図10に示すように、面板8の周縁に枠体9を配してなるパネル本体5と、このパネル本体5の下端部及び上端部にそれぞれ設けられた圧接体6A、6Bと、操作部10に加えられる操作力により圧接体6A、6Bを床面F及び天井レール2の下面2aにそれぞれ圧接させる圧接体駆動手段7とを備えたものであり、圧接体駆動手段7の全構成部品が枠体9に沿って配されている。
【0020】
パネル本体5は、
図6及び
図7に示すように、厚み方向に間隔をあけて配された対をなす面板8と、これら面板8の周縁部間に介設された枠体9とを備えている。
【0021】
各面板8は、
図6及び
図7に示すように、透明なガラス板25を主体に構成されたもので、このガラス板25の周縁に金属製の縁部材27が装着されている。また、この面板8の縁部材27には、当該面板8を枠体9に取り付けるための取付爪29が設けられている。
【0022】
枠体9は、
図8~
図12に示すように、左右の起立フレーム31、33と、これら起立フレーム31、33の下端同士を連結するボトムフレーム35と、前記起立フレーム31、33の上端同士を連結するトップフレーム37とを備えたものである。
【0023】
正面視左の起立フレーム31は、角柱パイプ状のもので、
図6に示すように、外側壁39に突条39aを備えている。
図8~
図12に示すように、この起立フレーム31の下端部は、ブラケット41を介してボトムフレーム35に止着されているとともに、上端部は、ブラケット41を介してトップフレーム37に止着されている。また、
図6~
図10に示すように、内側壁43には、面板8の取付爪29を掛け止めするためのスリット45aを備えた取付部材45が設けられている。
【0024】
正面視右の起立フレーム33は、角柱パイプ状のもので、
図6に示すように、外側壁47に凹陥部47aを備えている。
図8~
図12に示すように、この起立フレーム33の下端部は、ブラケット49を介してボトムフレーム35に止着されているとともに、上端部は、ブラケット49を介してトップフレーム37に止着されている。また、
図6~
図10に示すように、内側壁51には、面板8の取付爪29を掛け止めするためのスリット53aを備えた取付部材53が設けられている。さらに
図8~
図10に示すように、この起立フレーム33の内側壁51には、後述する伝達ロッド12を昇降可能に保持するロッド保持部材55が設けられている。
【0025】
ボトムフレーム35は、
図7~
図12に示すように、ブラケット41、49を介して前述した起立フレーム31、33に連結された上方に開口する内側チャンネル材57と、この内側チャンネル材57の下面に取り付けられた下方に開口する外側チャンネル材59とを備えたもので、この外側チャンネル材59に圧接体6Aを突没可能に収容するとともに、内側チャンネル材57に圧接体駆動手段7の圧接機構部11を収容している。
【0026】
トップフレーム37は、
図7~
図11に示すように、ブラケット41、49を介して前述した起立フレーム31、33に連結された下方に開口する内側チャンネル材61と、この内側チャンネル材61の上面に取り付けられた上方に開口する外側チャンネル材63とを備えたもので、この外側チャンネル材63に圧接体6Bを突没可能に収容するとともに、内側チャンネル材61に圧接体駆動手段7の圧接機構部11を収容している。このトップフレーム37の左右方向中央には、当該間仕切パネル3を天井レール2に懸吊支持させるための単一の懸吊機構13が設けられている。この懸吊機構13は、天井レール2内を移動する走行体65と、この走行体65に上端部を支持させて間仕切パネル3を懸吊する懸吊桿67とを備えたもので、懸吊桿67は下端部をトップフレーム37に止着された棒状ナット67aと、この棒状ナット67aに螺着され上端部を走行体65に支持させた懸吊ボルト67bとを備えたものであり、この懸吊桿67は天井レール2の溝21aに挿通させてある。
【0027】
ボトムフレーム35に収容される下の圧接体6Aは、
図8~
図12に示すように、平行に配設された対をなす起立壁69と、これら両起立壁69の下端近傍部同士を剛結する底壁71とを備えたもので、起立壁69の下端には床面Fに圧接される密接材73が設けられているとともに、起立壁69の上端にはボトムフレーム35の内側面に摺接するシール材75が設けられている。この圧接体6Aの両端には、起立フレーム31、33の外側面に連続しうる形状をなす合成樹脂製のキャップ77が嵌着されている。
【0028】
トップフレーム37に収容される上の圧接体6Bは、
図8~
図11に示すように、平行に配設された対をなす起立壁79と、これら両起立壁79の上端近傍部同士を剛結する天壁81とを備えたもので、起立壁79の上端には天井レール2の下面2aに圧接される密接材83が設けられているとともに、起立壁79の下端にはトップフレーム37の内側面に摺接するシール材85が設けられている。この上の圧接体6Bの天壁81には、前述した懸吊桿67を貫通させるための貫通孔81aが形成されている。この圧接体6Bの両端には、起立フレーム31、33の外側面に連続しうる形状をなす合成樹脂製のキャッ87プが嵌着されている。
【0029】
圧接体駆動手段7は、
図8~
図10、
図14及び
図16に示すように、右の起立フレーム33に設けられた操作部10と、ボトムフレーム35及びトップフレーム37にそれぞれ設けられ操作部10に加えられる操作力を利用して圧接体6A、6Bを突没動作させる圧接機構部11と、起立フレーム33に沿って設けられ操作部10に加えられる操作力を各圧接機構部11に伝達する伝達ロッド12とを備えたものである。
【0030】
操作部10は、いわゆるフランス落としと称される構成のもので、
図13に示すように、右の起立フレーム33の外側壁47に設けられた取付窓47bに外側から嵌着されている。この操作部10は、外方に開口するハウジング89と、このハウジング89の開口部に設けられた操作レバー91と、この操作レバー91の回動に応じて上下方向に接離動作する一対の出力端93とを備えたもので、操作レバー91を
図13の(a)に示すように没入位置に保持している場合には両出力端93が最も接近した退避位置に停止しており、操作レバーを
図13の(b)に示す突出位置まで回動させると、両出力端93が相反する方向に突出し、最も離間した付勢位置に達するようになっている。この操作体は、通常のものであるため、詳細な説明は省略する。なお、両出力端93には、伝達ロッド12の基端部12aがそれぞれ接続されている。
【0031】
各伝達ロッド12は、角柱パイプ状のもので、右の起立フレーム33に沿って配設されている。すなわち、各伝達ロッド12は、
図8~
図10、
図14及び
図16に示すように、右の起立フレーム33の内側面に設けられたロッド保持部材55に昇降可能に保持されており、下の伝達ロッド12の先端12bはボトムフレーム35まで延出しているともに、上の伝達ロッド12の先端12bはトップフレーム37まで延出している。
【0032】
ボトムフレーム35に収容されている下の圧接機構部11は、下の圧接体6Aを突没動作させるためのもので、
図9~
図12、
図14及び
図16に示すように、水平方向に進退する連結バー14と、この連結バー14の進退動作を対応する圧接体6Aの突没動作に変換する第1リンク機構15と、伝達ロッド12の昇降動作を連結バー14の進退動作に変換する第2リンク機構16とを備えたものである。連結バー14には当該連結バー14の動きと前記圧接体6Aの動きとのずれを弾性的に吸収するための動作吸収機構95が設けられている。
【0033】
連結バー14は、
図9~
図12、
図15及び
図17に示すように、下方に解放されたチャンネル状のバー本体97と、このバー本体97内に固設されたスプリングリテーナ99と、このスプリングリテーナ99に対向させてバー本体97に長手方向に進退可能に設けられたスライダ101と、このスライダ101とスプリングリテーナ99との間に介設された圧縮ばね103とを備えたもので、前記スライダ101に付勢ピン105が固設されている。動作吸収機構95は、前述したスプリングリテーナ99と、スライダ101と、圧縮ばね103とにより構成されている。なお、動作吸収機構95は、バー本体97の長手方向に離間した2カ所に設けられている。
【0034】
第1リンク機構15は、前述した2つの動作吸収機構95に対応する部位にそれぞれ設けられたもので、各第1リンク機構15は、
図9~
図12、
図14及び
図16に示すように、ボトムフレーム35に固設され連結バー14を進退可能に保持する第1リンクベース107と、この第1リンクベース107に支軸111を介して枢着された第1リンクメンバ109と、この第1リンクメンバ109の一方の回動端に接続された前述した付勢ピン105と、第1リンクメンバの他方の回動端に接続ピン115を介して接続され圧接体6Aとともに突没動作を行う連結ベース113とを備えている。第1リンクベース107には、接続ピン115が上下方向にのみ動作するように規制する長孔117が形成されている。そのため、第1リンクメンバ109と付勢ピン105との間及び第1リンクメンバ109と接続ピン115との間には、それぞれ一定の遊動代が設定されている。具体的には、第1リンクメンバ109の回動端側に付勢ピン105及び接続ピン115の微少遊動を許容する長孔119を設けている。
【0035】
第2リンク機構16は、伝達ロッド12と連結バー14との間に設けられたもので、この第2リンク機構16は、
図9~
図12、
図14及び
図16に示すように、ボトムフレーム35に固設された第2リンクベース121と、この第2リンクベース121に支軸125を介して枢着された第2リンクメンバ123と、第2リンクメンバ123の一方の回動端に駆動ピン129を介して接続されたロッド側リンクアーム127と、第2リンクメンバ123の他方の回動端に連結ピン133を介して基端側が接続されるとともに先端側が連結バー14に接続されたバー側リンクアーム131とを備えている。第2リンクベース121には、連結ピン133が左右方向にのみ動作するように規制する長孔135が形成されている。そのため、第2リンクメンバ123と駆動ピン129との間及び第2リンクメンバ123と連結ピン133との間には、それぞれ一定の遊動代が設定されている。具体的には、第2リンクメンバ123の回動端側に駆動ピン129及び連結ピン133の微少遊動を許容する長孔137を設けている。
【0036】
そして、下の圧接機構部11は、圧接動作の途上において、操作力を一時的に軽減するためのアシスト機構17を備えている。
【0037】
このアシスト機構17は、
図9~
図12及び
図14~
図18に示すように、支点143周りに往復回転可能な回転体139と、この回転体139の作用点の一つ(以下、作用点145と称する)を弾性的に牽引する引張ばね141とを備え、引張ばね141の牽引軸線L0が支点143と前述した一つの作用点145の両方に合致する所定の思案点(Q)を境にして、引張ばね141の回転体139に対する回転付勢方向が反転するように構成されたものであり、回転体139が一方の停止位置(P)(
図18(a))から思案点(Q)(
図18(b))を超えて他方の停止位置(R)(
図18(c))まで回転付勢される際のばね力で、連結バー14を操作力軽減方向に付勢するようにしている。
【0038】
詳述すれば、このアシスト機構17は、ボトムフレーム35に固設されたアシストベース147と、このアシストベース147に支軸149を介して枢着された前述の回転体139と、この回転体139の一方の回動端に設けられた入力ピン151及びアシストベース147に固設されたばね掛けピン153の間に張設された前述の引張ばね141と、回転体139の他方の回動端に設けられたカム溝157に係合するジョイントピン159を備えたジョイント部材155とを具備してなるもので、ジョイント部材155は連結バー14に一体動作可能に連設されている。しかして、支軸149の軸心が前述した支点143に相当し、入力ピン151の軸心が前述した一つの作用点145に相当する。
【0039】
トップフレーム37に収容されている上の圧接機構部11は、上の圧接体6Bを突没動作させるためのもので、以上説明した下の圧接機構部11を上下反転させた構成をなしている。そのため、この上の圧接機構部11については、下の圧接機構部11と同一又は対応する部分に同一の符号を付して説明を省略する。
【0040】
以上説明した各間仕切パネル3は、パネル本体5が天井レール2に対して平行をなしていない交差姿勢(
図3~
図5)で上の圧接体6Bが天井面Ceaに向けて上動した際に天井レール2の下面2aに優先的に当接して圧接体6Bの天井面Ceaへの接触を禁止する上動禁止要素18と、ボトムフレーム35の長手方向中央を挟んだ2箇所に設けられた接地体19とを備えている。
【0041】
上動禁止要素18は、
図15及び
図17に示すように、上の圧接体6Bにおける懸吊桿の両側に天井レール2の溝21aの幅よりも小幅で上端を上の圧接体6Bの上端よりも上方に位置させた突起161を設けたものである。具体的には、上の圧接体6Bの天壁81には、前述したように懸吊桿67を貫通させるための貫通孔81aが形成されているが、これらの突起161はこの貫通孔81aを挟むようにして天壁81に止着されている。両突起161の離間距離は、上の圧接体6Bが上動した際に天井レール2の下面2aのみに当接し得る値に設定されている。
【0042】
両接地体19は、
図9、
図10、
図12及び
図14~
図17に示すように、ボトムフレーム35にそれぞれ取り付けられたもので、その下端は、床面Fよりも高く且つ没入状態における下側の圧接体6Aの下端よりも低くなるように位置付けられている。下の圧接体6Aの底壁71には、これら接地体19を通過させるための通過窓71aが形成されている。
【0043】
ドアパネル4は、
図1~
図4及び
図6に示すように、厚み方向に間隔をあけて配された対をなすガラス板163と、これらガラス板163の周縁部間に介設された枠体165と、この枠体165と前記ガラス板163の周縁部を包持する周縁部材167とを備えている。
【0044】
枠体165は、左右の起立フレーム169、171と、これら起立フレーム169、171の下端同士を連結するボトムフレーム173と、前記起立フレーム169、171の上端同士を連結するトップフレーム175とを備えたものであり、右の起立フレーム171が蝶番177を介して右の固定フレーム1に蝶着されている。また、左の起立フレーム169には、取っ手181を備えたドアロック機構179が保持されている。なお、最も右側に配される間仕切パネル3の右縁には、ドアパネル4の回動端を受けるためのドア枠183が取り付けられている。
【0045】
次いで、このスライディングウォールの作動について説明する。
【0046】
図1及び
図2は、全ての間仕切パネル3を天井レール2に平行に配して密に隣接させるとともにドアパネル4を閉めた状態を示している。この状態では、最も左の間仕切パネル3の左の起立フレーム31に設けられた突条39aが左の固定フレーム1に設けられた凹陥部1xに嵌合するとともに、隣接する間仕切パネル3の突条39aと凹陥部47aとがそれぞれ嵌合している。また、各間仕切パネル3の圧接体6A、6Bは、突出して天井レール2の下面2a及び床面Fに圧接させられている。そのため、建築壁W間に形成された空間は大部分がガラス板25により構成された透明なスライディングウォールSWによって間仕切られている。なお、この状態でも、ドアパネル4は開閉が可能であるため、仕切られた空間間の出入りが自在に行いうる。
【0047】
このスライディングウォールSWを
図3及び
図4に示す開放状態にする場合には、まず、ドアパネル4を開くとともに、最も右に位置する間仕切パネル3の操作部10を操作して当該間仕切パネル3の圧接体6A、6Bを没入させる。それにより、当該間仕切パネル3が単一の懸吊桿67を軸にして水平に旋回可能となり、例えば天井レール2に直交する交差姿勢にすることができる。しかる後に、次の間仕切パネル3の右の起立フレーム33に設けられた操作部10を操作して当該間仕切パネル3の圧接体6A、6Bを没入させると、この間仕切パネル3も交差姿勢にすることができる。この操作を繰り返すことにより、全ての間仕切パネル3が天井レール2に直交する交差姿勢となる開放状態を実現することができる。開放状態で各間仕切パネル3を固定したい場合には、各間仕切パネル3を操作して圧接体6A、6Bを突出させればよい。一方、開放状態からさらに間仕切パネル3を厚み方向に移動させて建築壁の近傍に片付けたい場合には、圧接体6A、6Bを没入させたままで各間仕切パネル3を移動させればよい。
図5は、各間仕切パネル3を片付けた退避状態を示している。
【0048】
次いで、各間仕切パネル3における圧接体6A、6Bの突没動作について説明する。
【0049】
図7、
図11、
図13の(a)、
図14及び
図15は、圧接体6A、6Bがボトムフレーム35及びトップフレーム37にそれぞれ没入した状態を示している。この没入状態では、操作部10の操作レバー91が
図13の(a)に示す没入位置に保持されており、各圧接体6A、6Bは天井レール2の下面2a及び床面Fから離間している。この没入状態から操作レバー91を
図13の(b)に示すように突出位置まで回動させると、上下の伝達ロッド12が相反する方向に移動し、その伝達ロッド12の動きが圧接機構部11に伝えられ、圧接機構部11の働きにより対応する圧接体6A、6Bが突出動作する。ここで、下の圧接機構部11の作動を説明すれば、次の通りである。操作レバー91を没入位置から突出位置に回動操作すると、伝達ロッド12が下方に移動し、この伝達ロッド12の動きが第2リンク機構16により連結バー14の左方への移動に変換される。連結バー14が左方に移動すると、この連結バー14の動きが第1リンク機構15により圧接体6Aの下方への突出動作に変換されることになり、その圧接体6Aの下端に設けられた密接材73が床面Fに押しつけられる。この際、連結バー14は所定の初期位置(S)から所定の終点位置(T)まで移動するが、圧接体6Aは連結バー14が終点位置(T)に達する前に床面Fに当接して係止される。そのため、圧接体6Aが床面Fに圧接された後の連結バー14の移動分は動作吸収機構95の圧縮ばね103が圧縮されることにより吸収される。換言すれば、圧接体6Aはこの圧縮ばね103の反発力により床面Fに弾性的に圧接される。
図10、
図16及び
図17は、圧接体6Aが床面Fに圧接された状態である。
【0050】
なお、以上説明した圧接機構部11には、アシスト機構17が組み込まれており、操作部10の操作レバー91の操作力を軽減しうるようになっている。具体的に説明すれば、操作レバー91が没入位置にある場合には、連結バー14が初期位置(S)に停止しており、アシスト機構17の回転体139は
図18の(a)に示す状態に保持されている。すなわち、引張ばね141の牽引軸線L0が支点143よりも上方に位置しており、回転体139は引張ばね141の牽引力により一方の停止位置(P)に係止されており、引張ばね141の牽引力は連結バー14に影響を及ぼさない状態にある。この状態から操作レバー91を突出位置に向けて回動させると、まず、連結バー14が左方に移動してジョイントピン159が回転体139を時計回り方向に押圧することになる。回転体139は一方の停止位置(P)から時計回り方向に回転を始め、引張ばね141の牽引軸線0が
図18の(b)に示す思案点(Q)を通過すると、引張ばね141の牽引力が回転体139を積極的に時計回り方向に回動させる力として作用することになる。そのため、引張ばね141の牽引力により積極回動する回転体139によりジョイントピン159が
図18中左方向に付勢され、連結バー14が左方に牽引される。その結果、操作レバー91に加える操作力が軽減されることになる。
図18の(c)は、連結バー14が終点位置(T)まで左へ移動した状態を示しており、この状態では図示しないストッパにより回転体139の回転が係止されて引張ばね141の牽引力が連結バー14に作用しないようになっている。
【0051】
上の圧接機構部11の作動は、以上説明した下の圧接機構部11の作動に準じたものである。
【0052】
以上説明したスライディングウォールの構成によれば、圧接体駆動手段7の全構成部品が前記枠体9に沿って配されているので、間仕切パネル3の内部空間を有効利用することができる。すなわち、この実施形態では、面板8を透明なガラス板25を主体に構成し、間仕切パネル3を透光性のあるものにしているが、圧接体駆動手段7の構成部品を前述のように配すれば、ガラス板25の領域を無理なく広げることができる。
【0053】
また、構成部品の多い圧接機構部11をボトムフレーム35及びトップフレーム37内に収め、一方の起立フレーム(右の起立フレーム33)に設けた操作部10を当該起立フレーム33に添接させた伝達ロッド12により各圧接機構部11に伝達するようにしているので、枠体9内の空間を無理なく開放することができる。
【0054】
圧接機構部11がアシスト機構17を備えているので、大きな操作力を要することなしに圧接体6A、6Bを確実に床面F及び天井レール2の下面2aに圧接させることが可能となり、作業性を向上させることができる。
【0055】
そして、アシスト機構17は、回転体139と引張ばね141との相対位置を工夫することにより、操作途中においてのみ引張ばね141の牽引力を連結バー14に作用させるようにしているので、簡単な構成により明確な操作力軽減効果を得ることができる。
【0056】
なお、本発明は以上に述べた実施形態に限らない。
【0057】
例えば、面板は、上述した実施形態のような透明なガラス板を主体に構成されたものに限らない。面板が不透明な板材を主体に構成されたものである場合に本発明を適用した場合、面板間の空間を広くとることができるので、当該空間に機能性材料を充填し、遮音性や吸音性といった性能を付加することが容易に可能になる。
【0058】
前記実施形態では、起立フレームの内側面に沿って伝達ロッドを配し、その伝達ロッドを面板側に設けた縁部材により隠すようにしているが、伝達ロッドを起立フレーム内に収容するようにしてもよい。
【0059】
圧接機構部の構成も、上述した実施形態に係るものに限られないのはもちろんであり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
【0060】
また、請求項1記載の発明は、アシスト機構を備えないものを含む。アシスト機構を設ける場合、その構成は上述した実施形態に係るものに限られないのはもちろんである。
【0061】
加えて、ドアパネルの有無や、間仕切パネルの枚数も、上述した実施形態に係るものに限られないのはもちろんであり、任意に設定してよい。
【0062】
その他、本発明の趣旨を損ねない範囲で種々変形してよい。
【符号の説明】
【0063】
SW…スライディングウォール
2…天井レール
2a…天井レールの下面
3…間仕切パネル
5…パネル本体
6A、6B…圧接体
7…圧接体駆動手段
8…面板
9…枠体
10…操作部
F…床面
(Q)…思案点
(P)…一方の停止位置
(R)…他方の停止位置