(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-30
(45)【発行日】2023-06-07
(54)【発明の名称】二峰性の加熱減量分解特徴を有する亜リン酸アルミニウムベースの複合体並びにその調製及び適用
(51)【国際特許分類】
C09K 21/04 20060101AFI20230531BHJP
C01B 25/163 20060101ALI20230531BHJP
C08K 3/32 20060101ALI20230531BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20230531BHJP
C08L 77/00 20060101ALI20230531BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20230531BHJP
C08L 73/00 20060101ALI20230531BHJP
【FI】
C09K21/04
C01B25/163
C08K3/32
C08L101/00
C08L77/00
C08L67/00
C08L73/00
(21)【出願番号】P 2022526499
(86)(22)【出願日】2021-02-04
(86)【国際出願番号】 CN2021075171
(87)【国際公開番号】W WO2022095294
(87)【国際公開日】2022-05-12
【審査請求日】2022-05-09
(31)【優先権主張番号】202011230652.6
(32)【優先日】2020-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518301235
【氏名又は名称】ジィァンスー リースーデェァ ニュー マテリアル カンパニー リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】505072650
【氏名又は名称】浙江大学
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レイ フア
(72)【発明者】
【氏名】リ ジンヂォン
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-507590(JP,A)
【文献】特表2015-505798(JP,A)
【文献】特表2017-508832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K21/00-21/14
C01B25/00-25/46
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二峰性の加熱減量分解特徴を有する亜リン酸アルミニウムベースの複合体であって、その構造式は、
【化1】
であり、
ここで、xは、0.01~0.5で、(H
2PO
3)
3Alと(HPO
3)
3Al
2とのモル比を表し、
前記二峰性の加熱減量分解特徴は、第1ピークの減量温度が460~490°C、第2ピークの減量温度が550~580°Cであることを特徴とする、二峰性の加熱減量分解特徴を有する亜リン酸アルミニウムベースの複合体。
【請求項2】
pHは3以上、粒径は0.1~1000μm、水中溶解度は0.01~10g/L、かさ密度は80~800g/L、残留水分は0.1重量%~5重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の二峰性の加熱減量分解特徴を有する亜リン酸アルミニウムベースの複合体。
【請求項3】
前記構造式の比率に従って、亜リン酸アルミニウムと亜リン酸水素アルミニウムを均一に混合するステップと、1~10時間で混合物の温度を常温から350℃以下に上昇させ、段階的に温度を上昇させて加熱し、温度上昇速度が5°C/分間以下であり、二峰性の加熱減量分解特徴を有する亜リン酸アルミニウムベースの前記複合体を得るステップとを含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の二峰性の加熱減量分解特徴を有する亜リン酸アルミニウムベースの複合体の調製方法。
【請求項4】
段階的に温度を上昇させて加熱する前記過程では、それぞれが160℃、220℃及び280℃である3つの保温プラットフォームは設置され、保温時間はそれぞれ独立して30~60分間であることを特徴とする、請求項3に記載の調製方法。
【請求項5】
前記複合体は、難燃剤又は難燃剤の相乗剤として使用することも、それを使用して調製することもでき、それは、
ワニス又は発泡コーティングの難燃剤、
木材又はセルロース含有製品の難燃剤、
難燃性ポリマー成形材料、難燃性ポリマーフィルム、難燃性ポリマー繊維の調製に用いられることを特徴とする、請求項1又は2に記載の二峰性の加熱減量分解特徴を有する亜リン酸アルミニウムベースの複合体の適用。
【請求項6】
前記難燃性ポリマー成形材料、難燃性ポリマーフィルム、難燃性ポリマー繊維の総重量は100%である場合、その原料の組成は、
ポリマーマトリックス 55%~99.9%、
二峰性の加熱減量分解特徴を有する亜リン酸アルミニウムベースの複合体 0.1%~45%、
フィラー又は補強材 0~44.9%、
添加剤 0~44.9%であることを特徴とする、請求項5に記載の適用。
【請求項7】
前記難燃性ポリマー成形材料、難燃性ポリマーフィルム、難燃性ポリマー繊維の総重量は100%である場合、その原料の組成は、
ポリマーマトリックス 55%~99.9%、
難燃系 0.1%~45%、
フィラー又は補強材 0~44.9%、
添加剤 0~44.9%であり、
前記難燃系は、
二峰性の加熱減量分解特徴を有する亜リン酸アルミニウムベースの複合体 0.1%~50%、
難燃剤 50%~99.9%であることを特徴とする、請求項5に記載の適用。
【請求項8】
前記難燃剤は、リン酸ジエチルアルミニウムであることを特徴とする、請求項7に記載の適用。
【請求項9】
前記ポリマーマトリックスは、ナイロン、ポリエステル、POKのうち少なくとも1つから選択されることを特徴とする、請求項6~8のいずれか一項に記載の適用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃材料の技術分野に関し、具体的には、二峰性の加熱減量分解特徴を有する亜リン酸アルミニウムベースの複合体並びにその調製及び適用に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱減量のピーク温度は、難燃剤の重要な指標であり、加熱減量(TG)試験では、減量率が最も速い温度を指し、この場合で難燃剤が最も速く分解する。該指標は、難燃剤の難燃性能、加工及び適用などの多くの方面に関連する。
【0003】
難燃剤は難燃作用を果たし、火炎を消す化学成分を放出して燃焼を阻害するために、独自の急速分解が必要であり、従って、難燃剤としては、適切な急速分解温度、つまりピーク分解温度が必要であり、ピーク温度がポリマー材料の着火温度又は燃焼温度に近い場合、難燃性と加工との両方が考慮され、ピーク温度が高すぎる場合、材料を燃焼させる時に難燃剤が急速に分解せずに作用せず、難燃効果を失い、難燃性の観点から見ると、ピーク分解温度が低いほど、材料着火の初期段階でより多くの難燃作用が発生し、難燃性に役立ち、しかし、難燃剤の分解温度が低すぎる場合、材料の加工と成形過程において、難燃剤が高温過程を経て分解し、難燃効果を失う。従って、難燃剤は全て、難燃対象のポリマー材料の着火温度と一致するピーク分解温度を有する。
【0004】
通常、1種の難燃性化合物は1つだけの加熱減量のピーク温度を有する。火事の実際状況と難燃剤の熱分解メカニズムによれば、難燃剤は、複数の加熱減量のピーク温度を有し、複数の段階で作用することが期待され、つまり、複数の温度段階でポリマーに難燃性保護を提供し、難燃性能を効果的に向上させ、難燃剤の量を低下させ、同時により広い加工温度条件に適応することができる。また、いくつかの情況で、消火後も炎がなくてもくすぶりがあり、この時、材料は高温作用を受け、高温での難燃剤の二次難燃性保護効果が必要であり、より低い温度での急速な分解に加えて、難燃剤はより高い温度での急速な分解も必要である。
【0005】
亜リン酸アルミニウムは、リン酸ジエチルアルミニウムとの難燃性の相乗効果が高く、水溶性と酸性度が低いため、現在、難燃剤の相乗剤として広く使用され、ナイロン、ポリエステルなどのガラス繊維強化エンジニアリングプラスチックに使用され、難燃性に優れた。しかし、現在報告された亜リン酸アルミニウムは、その加熱減量曲線が
図1に示され、単峰性の加熱減量温度特徴のみを有し、従って、適用の場合では、難燃性能がやや不足し、UL試験において二回目着火の延燃時間がやや長く、添加量が多い問題がある。それは、該難燃系の適用範囲を制限する。亜リン酸水素アルミニウムの構造は亜リン酸アルミニウムの構造と類似し、難燃作用を果たすが、水溶性で分解温度が低いため、難燃剤としては使用できない。
【0006】
亜リン酸アルミニウムの難燃性能を向上させるため、二峰性の加熱減量分解特徴を有する亜リン酸アルミニウムベースの複合体を開示し、該複合体を調製するための合成方法及びにポリマー材料の難燃化における難燃剤の相乗剤としてのその適用を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記技術的問題及び該技術分野における不足に対して、本発明は、二峰性の加熱減量分解特徴を有する亜リン酸アルミニウムベースの複合体を提供し、該複合体は、二峰性の熱分解温度特徴を有し、着火後の材料の難燃性保護に役立ち、二回目燃焼と直火なしのくすぶりを防止し、また、リン酸ジエチルアルミニウムと相乗作用する難燃剤の相乗剤としても使用でき、難燃性能に優れ、ポリマー材料のハロゲンフリー難燃剤成分、ガラス繊維強化エンジニアリングプラスチックなどの難燃系として使用される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
二峰性の加熱減量分解特徴を有する亜リン酸アルミニウムベースの複合体であって、その構造式は、
【化1】
であり、
ここで、xは、0.01~0.5で、(H
2PO
3)
3Alと(HPO
3)
3Al
2とのモル比を表し、
前記二峰性の加熱減量分解特徴は、第1ピークの減量温度が460~490°C、第2ピークの減量温度が550~580°Cである。
【0009】
加熱減量(TG)の結果から見られるように、本発明の複合体は、二峰性の加熱減量特徴を有する。現在、難燃剤の分野で使用される亜リン酸アルミニウム((HPO
3)
3Al
2)の典型的なTG曲線は
図1に示され、曲線上に単峰性の加熱減量特徴のみがあり、本発明の複合体の第1減量ピークと同様の低温熱分解ピークが存在することを除き、本発明の複合体の高温分解ピークが存在しない。本発明によって得られた亜リン酸アルミニウムと亜リン酸水素アルミニウムとの複合体において、加熱減量曲線の二重ピークは、亜リン酸アルミニウムと亜リン酸水素アルミニウムのそれぞれの熱分解ピークの重ね合わせではなく、亜リン酸水素アルミニウム((H
2PO
3)
3Al)の加熱減量曲線は
図2に示され、それは約316°Cのピーク分解温度しかなく、同時に、亜リン酸アルミニウムと亜リン酸水素アルミニウムを単純に混合し、測定された加熱減量曲線は
図3に示され、それは亜リン酸アルミニウムと亜リン酸水素アルミニウムのそれぞれの加熱減量特徴の重ね合わせを示す。本発明の複合体では、約316℃の低温ピーク温度が消える。明らかに、本発明によって得られる物質は、亜リン酸アルミニウムと亜リン酸水素アルミニウムとの新規な複合体であり、この2つの単純な混合物ではなく、新規な構造を有する。
【0010】
発明者の実験研究から分かるように、加熱減量の二峰性特徴を有する複合体を得るために、亜リン酸アルミニウムと亜リン酸水素アルミニウムとのモル比は1:0.01~0.5であり、亜リン酸アルミニウムの比率が高すぎると、亜リン酸アルミニウムに近い単峰性の加熱減量特徴が得られ、また、亜リン酸アルミニウムの比率が低すぎると、亜リン酸水素アルミニウムに近い単峰性の加熱減量特徴が得られ、又は亜リン酸アルミニウムと亜リン酸水素アルミニウムとの単純な混合物の二峰性の加熱減量特徴を呈し、しかし、本発明の550~580℃の間の高温加熱減量特徴ピークはなく、本発明の二峰性の加熱減量特徴を実現することができない。
【0011】
亜リン酸アルミニウムに近い第1ピーク温度を有することに加えて、本発明の二峰性の熱分解特徴を有する複合体はまた、より高い第2ピーク温度を有するが、より低い亜リン酸水素アルミニウムの特徴ピーク温度がなく、亜リン酸アルミニウムと亜リン酸水素アルミニウムとの単純な混合と異なり、新規な複合体は二峰性の分解温度を有し、難燃剤としての使用に有利である。且つ、複合体は、吸水率やpH値などの性能において、亜リン酸アルミニウム、亜リン酸水素アルミニウム、及びその2つの単純な混合物よりも明らかに優れ、それは、本発明によって得られた物質が、亜リン酸アルミニウムと亜リン酸水素アルミニウムとの混合物ではなく、その2つの新規な複合体であることを示す。適用試験後、二峰性の分解特徴を有する亜リン酸アルミニウム複合体は、依然としてリン酸ジエチルアルミニウムとの相乗的な難燃効果を有し、難燃効率は、亜リン酸アルミニウムと比較してある程度改善される。
【0012】
二峰性の加熱減量分解特徴を有する亜リン酸アルミニウムベースの前記複合体は、pHが3以上、粒径が0.1~1000μm、水中溶解度が0.01~10g/L、かさ密度が80~800g/L、残留水分が0.1重量%~5重量%である。
【0013】
本発明は、二峰性の加熱減量分解特徴を有する亜リン酸アルミニウムベースの複合体の好ましい調製方法を更に提供し、該方法は、前記構造式の比率に従って、亜リン酸アルミニウムと亜リン酸水素アルミニウムを均一に混合するステップと、1~10時間で混合物の温度を常温から350℃以下に上昇させ、段階的に温度を上昇させて加熱し、温度上昇速度が5°C/分間以下であり、二峰性の加熱減量分解特徴を有する亜リン酸アルミニウムベースの前記複合体を得るステップとを含む。
【0014】
本発明の複合体は、一定の比率で、亜リン酸アルミニウムと亜リン酸水素アルミニウムに対して特殊な高温処理プロセスを実行することによって得られる。高温処理後の材料は、更に所望の粒径まで粉砕される。
【0015】
その結果から分かるように、亜リン酸アルミニウムと亜リン酸水素アルミニウムは、高温の作用下で相互に化学作用が発生し得、新規な複合体を形成し、熱分解は複合体に含まれる2つの異なる物質のそれぞれの特徴分解を示す。その原理から分かるように、2つの化合物は、化学反応が発生せず、加熱減量において新しい結果が現れ、2つの物質間におけるいくつかの配位結合と水素結合の形成などの作用により、新規な複合体を形成し、熱分解特徴を変更する。
【0016】
好ましくは、段階的に温度を上昇させて加熱する前記過程では、それぞれが160℃、220℃及び280℃である3つの保温プラットフォームは設置され、保温時間はそれぞれ独立して30~60分間である。
【0017】
本発明は、二峰性の加熱減量分解特徴を有する亜リン酸アルミニウムベースの前記複合体の適用を更に提供する。前記複合体は、ワニス又は発泡コーティングの難燃剤、木材又はセルロース含有製品の難燃剤、ポリマー用の非反応性難燃剤、難燃性ポリマー成形材料の調製、難燃性ポリマー成形品の調製及び/又は含浸によってポリエステルとセルロースの純粋な織物と混合織物に難燃性を付与することに用いられ、更に難燃剤の混合物と難燃剤の相乗剤として使用できる。
【0018】
前記複合体は、難燃剤又は難燃剤の相乗剤として使用することも、それを使用して調製することもでき、それは、
ワニス又は発泡コーティングの難燃剤、
木材又はセルロース含有製品の難燃剤、
難燃性ポリマー成形材料、難燃性ポリマーフィルム、難燃性ポリマー繊維の調製に用いられる。
【0019】
好ましくは、前記難燃性ポリマー成形材料、難燃性ポリマーフィルム、難燃性ポリマー繊維の総重量は100%である場合、その原料の組成は、
ポリマーマトリックス 55%~99.9%、
二峰性の加熱減量分解特徴を有する亜リン酸アルミニウムベースの複合体 0.1%~45%、
フィラー又は補強材 0~44.9%、
添加剤 0~44.9%である。
【0020】
好ましくは、前記難燃性ポリマー成形材料、難燃性ポリマーフィルム、難燃性ポリマー繊維の総重量は100%である場合、その原料の組成は、
ポリマーマトリックス 55%~99.9%、
難燃系 0.1%~45%、
フィラー又は補強材 0~44.9%、
添加剤 0~44.9%であり、
前記難燃系は、
二峰性の加熱減量分解特徴を有する亜リン酸アルミニウムベースの複合体 0.1%~50%、
難燃剤 50%~99.9%である。
【0021】
前記難燃剤は、次亜リン酸ジアルキル及び/又はその塩、メラミンの縮合生成物及び/又はメラミンとリン酸との反応生成物及び/又はメラミンの縮合生成物とポリリン酸の縮合生成物又はその混合物の反応生成物、窒素含有リン酸塩、ベンゾグアナミン、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、アラントイン、アセチレン尿素、メラミン、メラミンシアヌレート、ジシアンジアミド及び/又はグアニジン、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マンガン、酸化スズ、水酸化アルミニウム、ベーム石、ジヒドロタルサイト、ハイドロカルマイト、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化亜鉛、酸化スズ水和物、水酸化マンガン、ホウ酸亜鉛、アルカリ性ケイ酸亜鉛及び/又はスズ酸亜鉛であり得る。
【0022】
前記難燃剤はまた、メラム、メレム、メロン、ピロリン酸ジメラミン、メラミンポリリン酸塩、メラムポリホスフェート、メロンポリホスフェート及び/又はメレムポリホスフェート及び/又はそれらの混合ポリソルト及び/又はアンモニウム水素ホスフェート、リン酸二水素アンモニウム及び/又はポリリン酸アンモニウムであり得る。
【0023】
前記難燃剤はまた、次亜リン酸アルミニウム、次亜リン酸亜鉛、次亜リン酸カルシウム、亜リン酸ナトリウム、モノフェニルホスフィン酸及びその塩、次亜リン酸ジアルキル及びその塩と次亜リン酸モノアルキル及びその塩との混合物、2-カルボキシエチルアルキル次亜リン酸及びその塩、2-カルボキシエチルメチル次亜リン酸及びその塩、2-カルボキシエチルアリール次亜リン酸及びその塩、2-カルボキシエチルフェニル次亜リン酸及びその塩、DOPO及びその塩、並びにp-ベンゾキノン上の付加物であり得る。
【0024】
前記難燃剤は、好ましくは、リン酸ジエチルアルミニウムである。
【0025】
前記ポリマーマトリックスは、ナイロン、ポリエステル、POK(ポリケトン)のうち少なくとも1つから選択される。
【0026】
ガラス繊維強化エンジニアリングプラスチックには複合材とリン酸ジエチルアルミニウムを配合した難燃剤を使用する場合、二軸押出機で高温溶融し、混合して分散させる必要がある。
【0027】
従来技術と比較すると、本発明の主な利点は以下を含む。本発明は、二峰性の加熱減量分解特徴を有する亜リン酸アルミニウムベースの複合体を提供し、調製方法はシンプルであり、該複合体は、二峰性の熱分解温度特徴を有し、無定型の亜リン酸アルミニウムと比較すると、高温減量ピークが1つ多く、より高い熱分解温度を有し、着火後の材料の難燃性保護に役立ち、二回目燃焼と直火なしのくすぶりを防止し、また、リン酸ジエチルアルミニウムと相乗作用する難燃剤の相乗剤としても使用でき、難燃性能に優れ、ポリマー材料のハロゲンフリー難燃剤成分、ガラス繊維強化エンジニアリングプラスチックなどの難燃系として使用される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】亜リン酸アルミニウムの加熱減量曲線図である。
【
図2】亜リン酸水素アルミニウムの加熱減量曲線図である。
【
図3】亜リン酸アルミニウムと亜リン酸水素アルミニウムとの単純な混合物の加熱減量曲線図である。
【
図4】実施例1で調製された二峰性の加熱減量分解特徴を有する亜リン酸アルミニウムベースの複合体の加熱減量曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面及び具体的な実施例を参照しながら、本発明を更に説明する。これらの実施例は、本発明を説明するためにのみ使用され、本発明の範囲を限定するものではないことを理解すべきである。以下の実施例では、具体的な条件の操作方法を明記せず、通常、通常の条件に従い、又は製造業者によって提案された条件に従う。
【0030】
(実施例1)二峰性の加熱減量分解特徴を有する亜リン酸アルミニウムベースの複合体の調製
【0031】
調製過程は以下のとおりである。294g(1mol)の亜リン酸アルミニウムと54g(0.2mol)の亜リン酸水素アルミニウムをそれぞれ量り、るつぼで均一に混合する。るつぼをオーブンに入れ、2°C/分間の速度で160°Cまで加熱し、30分間保持し、次に、温度を1℃/分間で220℃に上昇させ、60分間保持し、続いて、温度を2℃/分間の加熱速度で280℃に上昇させ、60分間保持し、常温まで冷却し、材料を排出し、平均粒径D50が42μmであるまで粉砕し、且つ関連する試験と適用を行う。
【0032】
試験項目及び方法:
(1)複合材料:TGAを試験し、加熱速度が20°C/分間であり、窒素雰囲気を使用する。TGAの微分曲線(DTG)により、減量ピーク温度が得られ、本発明の複合体は、TGA曲線において二峰性を示し、本発明の目的を達成する。
【0033】
(2)複合体の難燃性の適用試験:UL94 V0基準に従って試験済み:5本のサンプルを試験し、1サンプルあたり2回着火し、毎回サンプルに10秒間着火し、次に火炎から離れ、サンプルが火炎を離れてから10秒間以内に消火する必要があり(即ち、残炎時間が10秒間以下)、同時に、5本のサンプルの10回着火の残炎時間の合計は50秒間以下である必要があり、着火過程においてサンプルが焦げたり垂れたりしないことを規定し、サンプルが完全に燃え尽きていない場合、着火が完了した後、30秒間を超えて炎がなくてもくすぶりが発生してはならない。総残炎時間が標準要件を満たすことを前提として、各サンプルの二回目着火の消火時間を比較すると、二回目着火の消火時間が短いほど、難燃剤の高温難燃保護効果が高くなることを示す。
【0034】
(3)吸水率の試験:一定量の材料を量り、湿度85%、温度20°Cの恒温恒湿ボックスに7日間(168時間)置き、材料を取り出して量り、重量増加部分は、吸収された水の重量であり、吸収された水の重量で初期材料の重量を割ると吸水率になる。
【0035】
(4)pHの試験方法:10gの難燃剤粉末を量り、100gの脱イオン水に分散させ、20℃の恒温で2時間撹拌し、粉末を濾過し、pH計で濾液のpH値を測定する。
【0036】
図4は、本実施例において得られた二峰性の加熱減量を有する複合体のTGA結果を示す。加熱減量、吸水率、pH値は表1に示される。
【0037】
(比較例1)
実施例と同様に、亜リン酸水素アルミニウムを使用しないことを除き、他の調製過程は同じであり、材料を得て、TGAを試験し、結果は
図1に示され、単峰性として表示される。吸水率及びpH値を試験し、結果は表1に示される。
【0038】
(比較例2)
実施例と同様に、亜リン酸アルミニウムを使用しないことを除き、他の調製過程は同じであり、材料を得て、TGAを試験し、結果は
図2に示され、単峰性として表示される。吸水率及びpH値を試験し、結果は表1に示される。
【0039】
(比較例3)
実施例と同様に、亜リン酸水素アルミニウムと亜リン酸アルミニウムとのモル比が1:0.6であることを除き、他の調製過程は同じであり、材料を得て、TGAを試験し、結果は二峰性として表示される。吸水率及びpH値を試験し、結果は表1に示される。
【0040】
(比較例4)
実施例1の比率に従って、亜リン酸アルミニウムと亜リン酸水素アルミニウムを混合し、高温後処理を行わず、TGAを直接試験し、結果は
図3に示され、二峰性として表示される。吸水率及びpH値を試験し、結果は表1に示される。
【0041】
【0042】
表1の結果から分かるように、本発明によって得られた複合体は二峰性の加熱減量特徴を有し、亜リン酸アルミニウムと亜リン酸水素アルミニウムの単峰性の加熱減量特徴とは区別され、亜リン酸アルミニウムと亜リン酸水素アルミニウムとの混合に含まれる亜リン酸水素アルミニウムの比率が高い場合、及び亜リン酸アルミニウムと亜リン酸水素アルミニウムの単純なブレンドの場合、二峰性の熱分解特徴も示されるが、2つの混合物の熱分解特徴ピークの重ね合わせを示し、高温熱分解ピーク(即ち、550~580°Cの間の分解ピーク)がない。比較例におけるサンプルと比較すると、複合体は異なる熱分解特徴、より高い熱分解温度、より低い吸水率、より低い酸性度を有し、それは、複合体が新規な構造の複合体であり、それらの特性が難燃剤として使用するための明らかな利点を有することを示す。
【0043】
難燃剤の適用
(実施例2)
50重量%のナイロン66、30重量%のガラス繊維、4重量%の実施例1によって得られた二峰性の熱分解複合体、及び16重量%のリン酸ジエチルアルミニウム(LFR8003、江蘇利思徳新材料有限公司)を使用し、通常の規程に従って、難燃性ガラス繊維強化ナイロン66を調製し、且つサンプルを作製して難燃性能を試験し、試験結果は表2に示される。
【0044】
(実施例3)
52重量%のナイロン66、30重量%のガラス繊維、3.5重量%の実施例1によって得られた二峰性の熱分解複合体、及び14.5重量%のリン酸ジエチルアルミニウム(LFR8003、江蘇利思徳新材料有限公司)を使用し、前記通常の規程に従って、難燃性ガラス繊維強化ナイロン66を調製し、且つサンプルを作製して難燃性能を試験し、試験結果は表2に示される。
【0045】
(比較例5)
50重量%のナイロン66、30重量%のガラス繊維、20重量%のリン酸ジエチルアルミニウム(LFR8003、江蘇利思徳新材料有限公司)を使用し、前記通常の規程に従って、難燃性ガラス繊維強化ナイロン66を調製し、且つサンプルを作製して難燃性能を試験し、試験結果は表2に示される。
【0046】
(比較例6)
50重量%のナイロン66、30重量%のガラス繊維、4重量%の比較例1によって得られた単峰性の熱分解サンプル、及び16重量%のリン酸ジエチルアルミニウム(LFR8003、江蘇利思徳新材料有限公司)を使用し、前記通常の規程に従って、難燃性ガラス繊維強化ナイロン66を調製し、サンプルを作製して難燃性能を試験し、試験結果は表2に示される。
【0047】
(比較例7)
50重量%のナイロン66、30重量%のガラス繊維、4重量%の比較例2によって得られた単峰性の熱分解サンプル、及び16重量%のリン酸ジエチルアルミニウム(LFR8003、江蘇利思徳新材料有限公司)を使用し、前記通常の規程に従って、難燃性ガラス繊維強化ナイロン66を調製し、サンプルを作製して難燃性能を試験し、試験結果は表2に示される。
【0048】
(比較例8)
50重量%のナイロン66、30重量%のガラス繊維、4重量%の比較例3によって得られたサンプル、及び16重量%のリン酸ジエチルアルミニウム(LFR8003、江蘇利思徳新材料有限公司)を使用し、前記通常の規程に従って、難燃性ガラス繊維強化ナイロン66を調製し、且つサンプルを作製して難燃性能を試験し、試験結果は表2に示される。
【0049】
(比較例9)
50重量%のナイロン66、30重量%のガラス繊維、4重量%の比較例4によって得られたサンプル、及び16重量%のリン酸ジエチルアルミニウム(LFR8003、江蘇利思徳新材料有限公司)を使用し、前記通常の規程に従って、難燃性ガラス繊維強化ナイロン66を調製し、且つサンプルを作製して難燃性能を試験し、試験結果は表2に示される。
【0050】
(比較例10)
52重量%のナイロン66、30重量%のガラス繊維、3.5重量%の比較例4によって得られたサンプル、及び14.5重量%のリン酸ジエチルアルミニウム(LFR8003、江蘇利思徳新材料有限公司)を使用し、前記通常の規程に従って、難燃性ガラス繊維強化ナイロン66を調製し、サンプルを作製して難燃性能を試験し、試験結果は表2に示される。
【0051】
【0052】
適用結果から分かるように、本発明の二峰性の熱分解複合体はリン酸ジエチルアルミニウムと相乗作用して難燃効果を改善することができ、混合物と比較すると、難燃剤の量を低減できる。同時に、単峰性の熱分解の単一成分難燃剤及びその単純な混合物と比較すると、リン酸ジエチルアルミニウムと相乗作用すると同時に、同じ量で、V0難燃性グレードを達成することができるが、本発明の二峰性の熱分解複合体は、より短い延燃時間(t1+t2)、特により短い二回目着火の延燃時間(t2)を有し、より優れた難燃効果を有し、二峰性の熱分解複合体の利点を反映する。
【0053】
また、本発明の上記説明を読んだ後、当業者は、本発明に対して様々な変更又は修正を行うことができ、これらの同等の形態もまた、本願の添付の特許請求の範囲によって定義された範囲内に入ることを理解すべきである。