(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-30
(45)【発行日】2023-06-07
(54)【発明の名称】保護フィルム及び保護フィルムを備えた水栓
(51)【国際特許分類】
E03C 1/042 20060101AFI20230531BHJP
【FI】
E03C1/042 B
(21)【出願番号】P 2019044013
(22)【出願日】2019-03-11
【審査請求日】2022-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000242378
【氏名又は名称】株式会社KVK
(72)【発明者】
【氏名】池野 義明
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3031611(JP,U)
【文献】特開2008-202335(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第19710623(DE,A1)
【文献】登録実用新案第3161108(JP,U)
【文献】実開昭63-100568(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/00-1/10
F16K 27/00-27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水栓の外観面に貼着して使用する保護フィルムであって、前記保護フィルムは、フィルム状の部材からなり、表側が装飾面として構成され、裏側が剥離自在な接着剤が塗着された貼着面として構成され
、輪郭が水栓の本体外観面を平面に展開した形状に形成されていることを特徴とする水栓用の保護フィルム。
【請求項2】
請求項
1に記載の保護フィルムが、外観面に貼着されていることを特徴とする水栓。
【請求項3】
前記水栓は、施工状態において、前記保護フィルムが貼着可能に構成されていることを特徴とする請求項
2に記載の水栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水栓用の保護フィルム及び保護フィルムを備えた水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水栓本体の下面中央部に貼着することにより、水栓本体の表面を手指の爪の接触による傷付き等から保護する金属メッキシートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の金属メッキシートは、金属メッキが施されたものであり、通常、金属メッキを施す金属メッキシートの母材となるのは、金属製の板材である。そのような金属メッキシートは、ある程度曲げることはできるが、金属製の板材が許容する範疇での曲げであって、柔軟性に欠けるものであった。そのため、水栓本体に貼着する際、シートの大きさや貼着する箇所が限定されていた。また、このメッキシートは、あくまで水栓本体のメッキ表面を代替的に構成するものであって、元のメッキ表面に対し美観を低下させることはあっても向上させるものではなかった。本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、水栓の外観面に柔軟に貼着可能で、高い美観が得られる水栓用の保護フィルム及び保護フィルムを備えた水栓を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、水栓の外観面に貼着して使用する保護フィルムであって、前記保護フィルムは、フィルム状の部材からなり、表側が装飾面として構成され、裏側が剥離自在な接着剤が塗着された貼着面として構成されていることを特徴とする。
【0006】
上記構成において、前記保護フィルムの輪郭が水栓の本体外観面を平面に展開した形状に形成されていることが好ましい。
【0007】
上記課題を解決する水栓は、前記保護フィルムが、外観面に貼着されている。
【0008】
上記課題を解決する水栓は、施工状態において、前記保護フィルムが貼着可能に構成されている。
【発明の効果】
【0009】
以上のように本発明は、フィルム状の部材からなり、表側が装飾面として構成され、裏側が剥離自在な接着剤が塗着された貼着面として構成されているため、水栓の外観面に柔軟に貼着可能で、高い美観が得られる保護フィルム及び保護フィルムを備えた水栓を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(a)は、保護フィルムを貼着する前の水栓の斜視図。(b)は、保護フィルムが貼着された水栓の斜視図。
【
図2】(a)は、
図1(a)の水栓の本体外観面を示す平面図。(b)は、
図1(a)の水栓の本体外観面を示す正面図。(c)は、
図1(a)の水栓の本体外観面を示す底面図。
【
図3】
図1(a)の水栓の本体外観面を平面に展開した形状を示す平面図。
【
図5】
図4のA方向から見た保護フィルムの拡大側面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
本実施例の保護フィルム50は、水栓10の本体外観面11aに貼着されるものである。
図1(a)は、保護フィルム50を貼着する前の水栓10の斜視図であり、
図1(b)は、保護フィルム50が貼着された水栓10の斜視図である。
図1(b)において保護フィルム50は、クロスハッチングを付した領域として表されている。
【0012】
水栓10について説明する。
水栓10は、湯,水及び湯と水との混合水を吐水することができる浴室用の湯水混合水栓(以下、単に水栓10という)である。
図1(a)に示すように、水栓10における水栓本体11の後部の給水口及び給湯口(図示しない)には、湯側ソケット30及び水側ソケット31がそれぞれ接続され、それらの湯側ソケット30及び水側ソケット31は、給湯源及び給水源から壁20の裏へ延びる湯側配管及び水側配管(図示しない)にそれぞれ連結される。それにより水栓10は、壁20に取り付けられた状態となる。そして、水栓本体11の後部のシャワー吐出口32には、シャワーホース33が接続され、そのシャワーホース33の先端にはシャワーヘッド(図示しない)が接続されている。
図1(a)に示すように、水栓本体11の下部のカラン吐出口34には、吐水パイプ35が回動自在に接続されている。
【0013】
図1(a)に示すように、水栓本体11の右端には、吐止水切換ハンドル40が設けられ、水栓本体11と吐止水切換ハンドル40の間には円筒状の切換カラー41が設けられている。また、水栓本体11の左端には温度調節ハンドル42が設けられ、水栓本体11と温度調節ハンドル42の間には円筒状の温調カラー43が設けられている。水栓10は、吐止水切換ハンドル40を回転操作することにより、止水,シャワー側吐水,カラン側吐水の切換えをすることができ、さらにそれぞれの流量を調節することができる。そして、温度調節ハンドル42を回転操作することにより、吐水する湯水の温度を調節することができる。
【0014】
水栓10の本体外観面11aについて説明する。
図1(a)に示すように、水栓10において、水栓表面全体のうち使用者の視界に入りやすい箇所を水栓10の外観面10aとする。そして、水栓10の外観面10aにおいて、水栓本体11が占める部分を水栓10の本体外観面11aとする。水栓10の本体外観面11aは、保護フィルム50を貼着する前の水栓10の平面図である
図2(a)、同じく正面図である
図2(b)及び、同じく底面図である
図2(c)において平行斜め線のハッチングを付した領域にて構成されている。そして、水栓10の本体外観面11aを平面に展開すると、
図3のように表される。
【0015】
保護フィルム50について説明する。
保護フィルム50は、厚さ0.1mmのポリエチレン系フィルムにて形成されている。そのため、保護フィルム50は、金属製の板材等と比べ、非常に柔軟性を有している。保護フィルム50の表側は、
図5に示すように、装飾面51として構成されており、
図4においてクロスハッチングを付した領域として表されている。装飾面51には、使用者の好みの模様等が印刷されていることが好ましい。
図5に示すように、保護フィルム50の裏側は、貼着面52として構成されており、水栓10の本体外観面11aに対して剥離自在な接着剤53が塗着されている。また、貼着面52には離型紙(図示しない)が設けられ、離型紙は保護フィルム50が水栓に貼着されるまでの間、接着剤53を保護している。
また、保護フィルム50はその輪郭が、
図3に示される水栓10の本体外観面11aを平面に展開した形状と略同形状に形成されている。
【0016】
保護フィルム50の貼着について説明する。
まず、保護フィルム50との干渉を避けるため、吐水パイプ35を壁20側へ回転移動させる。そして、離型紙を剥がし、保護フィルム50が水栓10の本体外観面11aと合致するように貼着する。
この際、保護フィルム50の動線上に干渉するものは存在せず、施工状態のまま、すなわち水栓10や水栓10の部品を取り外すことなく、保護フィルム50の貼着ができる状態となっている。
【0017】
本実施形態においては、以下の効果がある。
(1)保護フィルム50は、柔軟なフィルム状の部材からなり、表側が装飾面51として構成されているため、曲面を含んだ水栓10の外観面10aに柔軟に貼着可能で、高い美観を得ることができる。また、保護フィルム50は、様々なバリエーションの装飾面51を用意することができるため、使用者は装飾面51を選択して積極的に美観を楽しむことができる。
【0018】
(2)保護フィルム50は、輪郭が水栓10の本体外観面11aを平面に展開した形状に形成されているため、一度の作業だけで簡単に貼着することできる。また、水栓10の外観面10aの大部分を占める水栓10の本体外観面11aを、切れ間なく一体的に装飾することができるため、効果的に水栓10の美観を向上させる。
【0019】
(3)保護フィルム50及び水栓10は、水栓10の施工状態、すなわち通水可能に壁20に取り付けられた状態において、水栓10や水栓10の部品を取り外すことなく保護フィルム50が貼着可能な構成であるため、施工業者等に依頼することなく使用者が簡単に保護フィルム50を貼り替えることができる。
【0020】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・保護フィルム50を貼着する水栓10の部位は、水栓10の本体外観面11aに限定されない。例えば、ハンドルの外観面や吐水パイプの外観面であってもよい。
・保護フィルム50は、一枚のフィルムとして貼着することができるものであれば、何層構造であってもよい。例えば、模様等が印刷された印刷層の上に透明なコーティング層を設けた2層構造とすると、経年使用で模様等が磨耗するのを抑制することができる。また、保護フィルム50は何枚か重ねて貼着してもよい。
【0021】
・保護フィルム50の大きさや厚さ、材質、表面処理を使用者の用途に合わせて変更してもよい。
・保護フィルム50の装飾面51に表されるのは模様に限定されない。写真やイラストであってもよいし、単色塗りや金属メッキ調であってもよい。また美観を保てる範囲で、保護フィルム50を全面透明としてもよい。
【符号の説明】
【0022】
10…水栓、11…水栓本体、11a…水栓10の本体外観面、50…保護フィルム、51…装飾面、52…貼着面。