(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-30
(45)【発行日】2023-06-07
(54)【発明の名称】排ガス浄化触媒装置
(51)【国際特許分類】
B01J 23/63 20060101AFI20230531BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20230531BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20230531BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20230531BHJP
【FI】
B01J23/63 A ZAB
B01D53/94 222
B01D53/94 241
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/10 A
F01N3/28 301G
F01N3/28 301P
F01N3/28 301Q
(21)【出願番号】P 2019068935
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2022-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000104607
【氏名又は名称】株式会社キャタラー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100170874
【氏名又は名称】塩川 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122404
【氏名又は名称】勝又 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】千葉 智弘
(72)【発明者】
【氏名】村上 恭介
(72)【発明者】
【氏名】滝 健一
(72)【発明者】
【氏名】芳我 俊介
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-019537(JP,A)
【文献】特開2014-097459(JP,A)
【文献】特開2001-062295(JP,A)
【文献】特開2017-192935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 23/63
B01D 53/94
F01N 3/10
F01N 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材上の第1触媒コート層と
、前記第1触媒コート層上の第2触媒コート層とを有し、
前記第1触媒コート層は、排ガス流れ上流側の第1触媒コート層前段部と、排ガス流れ下流側の第1触媒コート層後段部とを有し、
前記第1触媒コート層前段部及び前記第1触媒コート層後段部は、それぞれ、無機酸化物粒子と、前記無機酸化物粒子に担持されているロジウムとを含み、
前記無機酸化物粒子の少なくとも一部は、セリアを含み、
前記第1触媒コート層後段部の単位長さ当たりのセリア量は、前記第1触媒コート層前段部の単位長さ当たりのセリア量よりも多く、
前記第1触媒コート層前段部は、排ガス流れ上流側の端部が排ガス流れに直接接するように配置されて
おり、
前記第2触媒コート層は、無機酸化物粒子と、前記無機酸化物粒子に担持されているロジウム及びパラジウムとを含む、
排ガス浄化触媒装置。
【請求項2】
前記第1触媒コート層の前記セリアが、セリア単体、及びセリアを含む複合酸化物から選択される1種以上の無機酸化物の粒子中に含まれている、請求項1に記載の排ガス浄化触媒装置。
【請求項3】
前記セリアを含む複合酸化物が、セリア-ジルコニア複合酸化物である、請求項2に記載の排ガス浄化触媒装置。
【請求項4】
前記第2触媒コート層中の前記無機酸化物粒子の少なくとも一部は、セリアを含む、
請求項
1~3のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒装置。
【請求項5】
前記第2触媒コート層の前記セリアが、セリア単体、及びセリアを含む複合酸化物から選択される1種以上の無機酸化物の粒子中に含まれている、請求項
4に記載の排ガス浄化触媒装置。
【請求項6】
前記セリアを含む複合酸化物が、セリア-ジルコニア複合酸化物である、請求項
5に記載の排ガス浄化触媒装置。
【請求項7】
前記第2触媒コート層の単位長さ当たりのセリア量が、前記第1触媒コート層後段部の単位長さ当たりのセリア量よりも多い、請求項
4~
6のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒装置。
【請求項8】
前記第2触媒コート層のロジウムが、前記セリア単体、及び前記セリアを含む複合酸化物から選択される1種以上の無機酸化物の粒子に担持されており、
前記第2触媒コート層のパラジウムが、前記セリア単体及び前記セリアを含む複合酸化物以外の無機酸化物の粒子に担持されている、
請求項
5又は
6に記載の排ガス浄化触媒装置。
【請求項9】
前記第2触媒コート層中の前記無機酸化物粒子がアルミナ粒子を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒装置。
【請求項10】
前記第2触媒コート層が、アルカリ土類金属化合物を含む、請求項
1~9のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒装置。
【請求項11】
前記第1触媒コート層が、アルカリ土類金属化合物を実質的に含まない、請求項1~10のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒装置。
【請求項12】
前記第1触媒コート層後段部の単位長さ当たりのロジウム量が、前記第1触媒コート層前段部の単位長さ当たりのロジウム量に対して、モル比で0.8以上1.2以下である、請求項1~11のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒装置。
【請求項13】
前記第1触媒コート層前段部の長さが、前記第1触媒コート層の全長の30%以上70%以下である、請求項1~12のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化触媒装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等から排出される排ガスには、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)等が含まれており、これらは排ガス浄化触媒によって浄化されたうえで、大気中に放出されている。排ガス浄化触媒としては、例えば、ハニカム状のモノリス基体の表面に触媒コート層を有するものが知られている。このような排ガス浄化触媒における触媒コート層には、例えば、担体粒子、及びこの担体粒子に担持された貴金属触媒が含まれている。
【0003】
自動車等は、実際の運転においては、加速及び減速を繰り返しながら走行する。加速時及び減速時には、空燃比(A/F)が急激に増減して、例えばHCの浄化率が影響を受ける。そこで、加減速に伴うA/F値の変動を緩和する目的で、触媒コート層内に酸素貯蔵能を示す材料(OSC材)を配合する技術が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、ハニカム状のモノリスの表面に、下層及び上層を有する排ガス浄化用触媒において、Rh(ロジウム)がOSC材に担持されて成るRh/OSC材を含有する層を下層に配置し、Pdがアルミナに担持されて成るPd/アルミナを含有する層を上層に配置した排ガス浄化用触媒が記載されている。特許文献1では、この構成によって、上層Pdが酸化状態に保たれ易くなり、その結果、HCの低温浄化能が向上すると説明されている。
【0005】
また、特許文献2には、基材上に、Pt又はPdを含有する下層である第1触媒層と、その上のRhを含有する上層である第2触媒層とを有する排ガス浄化用触媒において、第1触媒層が前段部と後段部とを有し、前段部と後段部とのOSC材の比率(前段部/後段部)が1<(前段部/後段部)<9である排ガス浄化用触媒が記載されている。特許文献2では、この構成によって、排ガス流れの上流側で酸素吸蔵反応が促進されて、排ガスのA/F値変動を緩和できるとともに、A/F値の変動が緩和された排ガスを下流側に供給することが可能となるため、高いNOx浄化能が得られると説明されている。
【0006】
更に、特許文献3には、基材上に、パラジウム担持層、低OSC能ロジウム担持層、及び高OSC能ロジウム担持層を有する排ガス浄化用触媒において、パラジウム担持層よりも排ガス流れ下流側に低OSCロジウム担持層が配置され、低OSCロジウム担持層よりも排ガス流れ下流側に高OSCロジウム担持層が配置されている排ガス浄化用触媒が記載されている。特許文献3では、この構成によって、空燃比がストイキ~リッチのときに、パラジウム担持層から発生した水素がロジウム担持層に供給されて、ロジウムの還元を促進すると説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2010-5566号公報
【文献】特開2011-212639号公報
【文献】特開2010-179200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
自動車等から排出される排ガスについての規制は年々厳しくなり、排ガス浄化能の試験として、より実走に近いモードの試験サイクルが採用されている。例えば、欧州議会ではRDE(Real Driving Emissions)規制が採用されており、米国環境保護庁は例えばLA#4等のモードを制定しており、特に、NOx浄化能への要求が高まっている。
【0009】
また、燃費の向上が求められ、停止時に暖機運転が停止する制御がなされた車両が増えている。
【0010】
このような状況の中、エンジン始動時の低温状態におけるHC浄化能、エンジン再始動後の過渡期におけるNOx浄化能、及び空間速度(SV:Space Velocity)が高い領域でのNOx浄化能を向上することが求められている。しかしながら、従来技術で提案された排ガス浄化触媒では、これらの性能は未だ不十分である。
【0011】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、HCの低温浄化能、過渡期及び高SV領域でのNOx浄化能が高い、排ガス浄化触媒装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、以下のとおりである。
【0013】
《態様1》
基材と、上記基材上の第1触媒コート層とを有し、
上記第1触媒コート層は、排ガス流れ上流側の第1触媒コート層前段部と、排ガス流れ下流側の第1触媒コート層後段部とを有し、
上記第1触媒コート層前段部及び上記第1触媒コート層後段部は、それぞれ、無機酸化物粒子と、この無機酸化物粒子に担持されているロジウムとを含み、
上記無機酸化物粒子の少なくとも一部は、セリアを含み、
上記第1触媒コート層後段部の単位長さ当たりのセリア量は、上記第1触媒コート層前段部の単位長さ当たりのセリア量よりも多く、
上記第1触媒コート層前段部は、排ガス流れ上流側の端部が排ガス流れに直接接するように配置されている、
排ガス浄化触媒装置。
《態様2》
上記第1触媒コート層の上記セリアが、セリア単体、及びセリアを含む複合酸化物から選択される1種以上の無機酸化物の粒子中に含まれている、態様1に記載の排ガス浄化触媒装置。
《態様3》
上記セリアを含む複合酸化物が、セリア-ジルコニア複合酸化物である、態様2に記載の排ガス浄化触媒装置。
《態様4》
上記第1触媒コート層上に、第2触媒コート層を更に有する、態様1~3のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒装置。
《態様5》
上記第2触媒コート層は、無機酸化物粒子と、この無機酸化物粒子に担持されているロジウム及びパラジウムとを含み、
上記第2触媒コート層中の上記無機酸化物粒子の少なくとも一部は、セリアを含む、
態様4に記載の排ガス浄化触媒装置。
《態様6》
上記第2触媒コート層の上記セリアが、セリア単体、及びセリアを含む複合酸化物から選択される1種以上の無機酸化物中に含まれている、態様5に記載の排ガス浄化触媒装置。
《態様7》
上記セリアを含む複合酸化物が、セリア-ジルコニア複合酸化物である、態様6に記載の排ガス浄化触媒装置。
《態様8》
上記第2触媒コート層の単位長さ当たりのセリア量が、上記第1触媒コート層後段部の単位長さ当たりのセリア量よりも多い、態様5~7のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒装置。
《態様9》
上記第2触媒コート層のロジウムが、上記セリア単体、及び上記セリアを含む複合酸化物から選択される1種以上の無機酸化物の粒子に担持されており、
上記第2触媒コート層のパラジウムが、上記セリア単体及び上記セリアを含む複合酸化物以外の無機酸化物の粒子に担持されている、
態様6又は7に記載の排ガス浄化触媒装置。
《態様10》
上記第2触媒コート層が、アルカリ土類金属化合物を含む、態様4~9のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒装置。
《態様11》
上記第1触媒コート層が、アルカリ土類金属化合物を実質的に含まない、態様1~10のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒装置。
《態様12》
上記第1触媒コート層後段部の単位長さ当たりのロジウム量が、上記第1触媒コート層前段部の単位長さ当たりのロジウム量に対して、モル比で0.8以上1.2以下である、態様1~11のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒装置。
《態様13》
上記第1触媒コート層前段部の長さが、上記第1触媒コート層の全長の30%以上70%以下である、態様1~12のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明の排ガス浄化触媒は、HCの低温浄化能、過渡期及び高SV領域でのNOx浄化能に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の排ガス浄化触媒装置の構造の一例を説明するための概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
《排ガス浄化触媒装置》
本発明の排ガス浄化触媒装置は、
基材と、基材上の第1触媒コート層とを有し、
第1触媒コート層は、排ガス流れ上流側の第1触媒コート層前段部と、排ガス流れ下流側の第1触媒コート層後段部とを有し、
第1触媒コート層前段部及び第1触媒コート層後段部は、それぞれ、無機酸化物粒子と、この無機酸化物粒子に担持されているロジウムとを含み、
この無機酸化物粒子の少なくとも一部は、セリアを含み、
第1触媒コート層後段部の単位長さ当たりのセリア量は、第1触媒コート層前段部の単位長さ当たりのセリア量よりも多く、
第1触媒コート層前段部は、排ガス流れ上流側の端部が排ガス流れに直接接するように配置されている。
【0017】
セリアは、OSC能を示す代表的な材料として、排ガス浄化触媒に配合されることが多い。触媒コート層がセリアを含むと、空燃比の変動が緩和され、安定した排ガス浄化性能を示すことが期待される。しかし、セリア量が過度に多いと、空燃比の変動を緩和する能力には優れることになるものの、ロジウムのメタル化を阻害して、NOxの還元浄化能が損なわれることがある。一方でセリア量が過度に少ないと、空燃比変動の緩和効果が不十分となる他、塩基サイト数の減少によるHCの吸着量が増加して、活性点のHC被毒が懸念される。
【0018】
本発明の排ガス浄化触媒装置では、第1触媒コート層後段部の単位長さ当たりのセリア量が、第1触媒コート層前段部の単位長さ当たりのセリア量よりも多くなるように構成されている。この構成によると、前段部では、必要量の塩基サイトによってHC被毒を回避しつつ、エンジン始動時、再始動時等にはRhのメタル化を促進することができ、一方の後段部では、多量のセリアによって空燃比の変動が十分に緩和されて、高い排ガス浄化能が発揮される。
【0019】
本発明の排ガス浄化触媒装置は、第1触媒コート層上に、第2触媒コート層を更に有していてもよく、この第2触媒コート層は、無機酸化物粒子と、この無機酸化物粒子に担持されているロジウム及びパラジウムとを含んでいてもよく、第2触媒コート層中の無機酸化物粒子の少なくとも一部は、セリアを含んでいてもよい。上層となる第2触媒コート層がロジウム及びパラジウムの双方を含むことにより、排ガスとこれらの貴金属触媒との接触頻度を高い水準で確保することができ、例えば低温時の排ガス浄化能を高い状態に維持することができるのである。
【0020】
図1に、本発明の好ましい実施態様における排ガス浄化触媒装置の概略断面図を示した。
【0021】
図1の排ガス浄化触媒装置(10)は、
基材(3)と、基材(3)上の第1触媒コート層(1)を有し、
第1触媒コート層(1)は、排ガス流れ上流側の第1触媒コート層前段部(1a)と、排ガス流れ下流側の第1触媒コート層後段部(1b)とを有し、
第1触媒コート層前段部(1a)及び第1触媒コート層後段部(1b)は、それぞれ、無機酸化物粒子と、この無機酸化物流に担持されたロジウムとを含み、無機酸化物粒子の少なくとも一部は、セリアを含む。
第1触媒コート層後段部(1b)の単位長さ当たりのセリア量は、第1触媒コート層前段部(1a)の単位長さ当たりのセリア量よりも多く、
第1触媒コート層前段部(1a)は、排ガス流れ上流側の端部が排ガス流れに直接接するように配置されている。
【0022】
図1の排ガス浄化触媒装置(10)は、第1触媒コート層(1)上に、第2触媒コート層(2)を更に有している。この第2触媒コート層(2)は、無機酸化物粒子と、この無機酸化物粒子に担持されたロジウム及びパラジウムとを含んでいてよい。この第2触媒コート層(2)の無機酸化物粒子の少なくとも一部は、セリアを含んでいてよい。
【0023】
以下、本発明の排ガス浄化触媒装置を構成する要素について、順に詳説する。
【0024】
〈基材〉
本発明の排ガス浄化触媒装置における基材としては、排ガス浄化触媒装置の基材として一般に使用されているものを使用することができる。例えば、コージェライト、SiC、ステンレス鋼、無機酸化物粒子等の材料から構成されている、例えばストレートタイプ又はウォールフロータイプのモノリスハニカム基材であってよい。
【0025】
〈第1触媒コート層〉
第1触媒コート層は、排ガス流れ上流側の第1触媒コート層前段部と、排ガス流れ下流側の第1触媒コート層後段部とを有し、
上記第1触媒コート層前段部及び上記第1触媒コート層後段部は、それぞれ、無機酸化物粒子と、前記無機酸化物粒子に担持されているロジウムを含み、
前記無機酸化物粒子の少なくとも一部は、セリアを含み、
上記第1触媒コート層後段部の単位長さ当たりのセリア量は、上記第1触媒コート層前段部の単位長さ当たりのセリア量よりも多く、
上記第1触媒コート層前段部は、排ガス流れ上流側の端部が排ガス流れに直接接するように配置されている。
【0026】
第1触媒コート層は、基材の長さの全部にわたって存在していてもよいし、基材長さ方向の一部の領域にのみ存在していてもよい。しかしながら排ガス浄化触媒装置の単位体積当たりの排ガス浄化効率を高める観点から、第1触媒コート層は、基材長さの80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、又は100%の領域に存在していてよい。
【0027】
第1触媒コート層は、排ガス流れ上流側の第1触媒コート層前段部と、排ガス流れ下流側の第1触媒コート層後段部とを有する。
【0028】
第1触媒コート層前段部の長さは、第1触媒コート層の全長の、例えば、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、又は65%以上であってよく、例えば、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、又は35%以下であってよい。
【0029】
第1触媒コート層後段部の長さは、第1触媒コート層の全長から、第1触媒コート層前段部の長さを減じた長さであってよい。
【0030】
第1触媒コート層前段部及び第1触媒コート層後段部は、それぞれ、無機酸化物粒子を含み、この無機酸化物粒子の少なくとも一部は、セリアを含む。第1触媒コート層中のセリアは、セリア単体、及びセリアを含む複合酸化物から選択される1種以上の無機酸化物の粒子中に含まれていてよい。セリアを含む複合酸化物は、たとえば、セリウムと、アルミニウム、ケイ素、チタニウム、ジルコニウム、希土類元素等から選択される1種又は2種以上の金属元素と、を含む複合酸化物であってよく、セリウム及びジルコニウムを含む複合酸化物であることが好ましく、セリウム及びジルコニウムの複合酸化物(セリア-ジルコニア複合酸化物)であることがより好ましい。
【0031】
セリアを含む複合酸化物中のセリア濃度は、コート層に含有されるセリア濃度の所望値に応じて、適宜に設定されてよいが、例えば、10質量%以上90質量%以下の範囲を例示できる。
【0032】
第1触媒コート層中のセリアは、セリア単体の粒子中に含まれている部分と、セリアを含む複合酸化物の粒子中に含まれている部分とを含んでいてもよい。
【0033】
第1触媒コート層後段部の単位長さ当たりのセリア量(セリア濃度)は、第1触媒コート層前段部の単位長さ当たりのセリア量(セリア濃度)よりも多い。第1触媒コート層後段部のセリア濃度([CeO2]Rr)と、第1触媒コート層前段部のセリア濃度([CeO2]Fr)との比([CeO2]Rr/[CeO2]Fr)は、後段部のセリア濃度を前段部のセリア濃度よりも大きく設定することの有利な点が効果的に発現されるように、例えば、1.1以上、1.2以上、1.4以上、1.7以上、2.0以上、又は2.5以上であってよい。一方で、前段部のセリア濃度を過度に少なくすると、第1触媒コート層前段部において、空燃比変動の緩和効果が不十分となる他、塩基サイト数の減少によるHCの吸着量が増加する不具合が懸念される。これを避ける観点から、第1触媒コート層後段部のセリア濃度と第1触媒コート層前段部のセリア濃度との比([CeO2]Rr/[CeO2]Fr)は、例えば、3.0以下、2.5以下、2.0以下、1.7以下、又は1.4以下であってよい。
【0034】
第1触媒コート層中のセリア量としては、第1触媒コート層前段部及び第1触媒コート層後段部に含まれるセリアの合計質量(g)を、基材容量1L当たりに割り付けた質量割合(g/L)として、例えば、5g/L以上、6g/L以上、7g/L以上、8g/L以上、9g/L以上、又は10g/L以上であってよく、例えば、20g/L以下、18g/L以下、16g/L以下、14g/L以下、又は12g/L以下であってよい。
【0035】
第1触媒コート層中のセリアが、セリアを含む複合酸化物の粒子中に含まれているとき、「セリア量」とは、当該複合酸化物中のセリウム元素をセリア(酸化セリウム(IV)、CeO2)に換算した質量を意味する。
【0036】
第1触媒コート層前段部及び第1触媒コート層後段部は、それぞれ、ロジウムを含む。
【0037】
低温時及び高SV時双方のNOx浄化能を高める観点から、第1触媒コート層後段部の単位長さ当たりのロジウム量(ロジウム濃度)と、第1触媒コート層前段部の単位長さ当たりのロジウム量(ロジウム濃度)とは、同程度であってよい。具体的には、第1触媒コート層後段部のロジウム濃度は、第1触媒コート層前段部のロジウム濃度に対して、モル比で、例えば、0.8以上、0.9以上、又は1.0以上であってよく、例えば、1.2以下、1.1以下、又は1.0以下であってよい。
【0038】
第1触媒コート層中のロジウム量としては、第1触媒コート層前段部及び第1触媒コート層後段部に含まれるロジウムの合計質量(g)を、基材容量1L当たりに割り付けた質量割合(g/L)として、例えば、0.01g/L以上、0.05g/L以上、0.10g/L以上、0.15g/L以上、又は0.20g/L以上であってよく、例えば、0.40g/L以下、0.35g/L以下、0.25g/L以下、又は0.20g/L以下であってよい。
【0039】
第1触媒コート層中のロジウムは、セリア単体、及びセリアを含む複合酸化物、並びに後述の無機酸化物から選択される1種以上の粒子上に、好ましくは微粒子状で担持された状態であってよい。
【0040】
第1触媒コート層は、ロジウム以外の貴金属触媒を含有していてもよいし、含有していなくてもよい。しかしながら第1触媒コート層は、ロジウム以外の貴金属触媒を実質的に含有しないことが好ましい。第1触媒コート層がロジウム以外の貴金属触媒を「実質的に含有しない」とは、第1触媒コート層に含まれる貴金属触媒の全質量に対するロジウム以外の貴金属触媒の質量の割合が、例えば、5質量%以下、3質量%以下、1質量%以下、0.5質量%以下、0.3質量%以下、若しくは0.1質量%以下、又は0質量%であることをいう。
【0041】
第1触媒コート層の無機酸化物粒子は、上述のセリア単体、セリアを含む複合酸化物から選択される1種以上の無機酸化物の粒子以外に、セリア及びセリアを含む複合酸化物以外の無機酸化物の粒子を含んでいてもよい。
【0042】
セリア及びセリアを含む複合酸化物以外の無機酸化物の粒子は、例えば、アルミニウム、ケイ素、チタニウム、ジルコニウム、希土類元素等から選択される1種以上の酸化物の粒子であってよい。無機酸化物粒子として、好ましくは、アルミナ、シリカ、シリカアルミナ、ゼオライト、チタニア、ジルコニア、セリア、及びセリア以外の希土類元素の酸化物から選択される1種以上の無機酸化物の粒子である。無機酸化物粒子として、好ましくは金属酸化物粒子を含む場合であり、特に好ましくは、アルミナ粒子を含む場合である。
【0043】
第1触媒コート層は、上述の無機酸化物粒子、及びこの無機酸化物に担持されているロジウム以外に、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分は、例えば、アルカリ土類金属化合物、バインダー等であってよい。
【0044】
第1触媒コート層は、アルカリ土類金属化合物を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。第1触媒コート層は、アルカリ土類金属化合物を実質的に含んでいないことが好ましい。第1触媒コート層がこれらの元素の化合物を「実質的に含んでいない」とは、第1触媒コート層の全質量に対するこれらの元素の化合物の合計質量の割合が、例えば、5質量%以下、3質量%以下、1質量%以下、0.5質量%以下、0.3質量%以下、若しくは0.1質量%以下、又は0質量%であることをいう。
【0045】
第1触媒コート層は、バインダーを含んでいてよい。バインダーとしては、例えば、アルミナゾル、ジルコニアゾル、シリカゾル、チタニアゾル等が挙げられる。
【0046】
第1触媒コート層前段部は、排ガス流れ上流側の端部が排ガス流れに直接接するように配置されている。本発明の排ガス浄化触媒装置は、このような構成を有することにより、低温時に、必要量の塩基サイトによってHC被毒を回避しつつ、Rhのメタル化を促進することができるとの本発明の利点を効果的に享受することができる。
【0047】
なお、第1触媒コート層前段部が「排ガス流れ上流側の端部が排ガス流れに直接接するように配置されている」との要件は、本発明の排ガス浄化触媒装置が、第1触媒コート層上に第2触媒コート層を更に有する場合に、特に有意義である。
【0048】
〈第2触媒コート層〉
本発明の排ガス浄化触媒装置は、第1触媒コート層上に、第2触媒コート層を更に有していてもよい。
【0049】
第2触媒コート層は、基材の長さの全部にわたって存在していてもよいし、基材長さ方向の一部の領域にのみ存在していてもよい。しかしながら排ガス浄化触媒装置の単位体積当たりの排ガス浄化効率を高める観点から、第2触媒コート層は、基材長さの80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、又は100%の領域に存在していてよい。ただし、本発明の排ガス浄化触媒装置では、第1触媒コート層の排ガス流れ上流側の端部が、排ガス流れに直接接するように配置されることを要するため、排ガス浄化触媒装置のうちの少なくとも排ガス流れ上流側端部の付近では、第2触媒コート層が第1触媒コート層を介さず、直接基材上に配置されている領域を有さないことが好ましい。
【0050】
第2触媒コート層は、無機酸化物粒子と、この無機酸化物粒子に担持されているロジウム及びパラジウムとを含んでいてよい。第2触媒コート層は、これら以外に、アルカリ土類金属化合物を更に含んでいてよい。
【0051】
第2触媒コート層は、無機酸化物粒子を含んでいてよく、この無機酸化物粒子の少なくとも一部は、セリアを含んでいてよい。第2触媒コート層中のセリアは、セリア単体、及びセリアを含む複合酸化物から選択される1種以上の無機酸化物粒子中に含まれていてよい。セリアを含む複合酸化物については、第1触媒コート層における複合酸化物の説明を、そのまま採用してよい。したがって、第2触媒コート層におけるセリアを含む複合酸化物は、セリア-ジルコニア複合酸化物であることが好ましく、粒子状であってよい。
【0052】
第2触媒コート層の無機酸化物粒子は、上述のセリア単体、セリアを含む複合酸化物から選択される1種以上の無機酸化物の粒子以外に、セリア及びセリアを含む複合酸化物以外の無機酸化物の粒子を含んでいてもよい。このセリア及びセリアを含む複合酸化物以外の無機酸化物の粒子については、第1触媒コート層における無機酸化物の説明を、そのまま採用してよい。したがって、第2触媒コート層におけるセリア及びセリアを含む複合酸化物以外の無機酸化物の粒子は、金属酸化物粒子を含んでいてよく、特に、アルミナ粒子を含んでいてよい。
【0053】
第2触媒コート層の単位長さ当たりのセリア量(セリア濃度)は、第1触媒コート層後段部の単位長さ当たりのセリア量(セリア濃度)よりも多くてよい。排ガスと直接接する上層である第2触媒倍コート層においてセリアのOSC能を効果的に発現させる観点から、第1触媒コート層後段部のセリア濃度([CeO2]Rr)に対する第2触媒コート層のセリア濃度([CeO2]Up)の比([CeO2]Up/[CeO2]Rr)は、例えば、1.1以上、1.2以上、1.3以上、1.4以上、又は1.5以上であってよい。一方で、第2触媒コート層中のロジウムのメタル化を阻害しないとの観点から、第1触媒コート層後段部のセリア濃度に対する第2触媒コート層のセリア濃度の比([CeO2]Up/[CeO2]Rr)は、例えば、2.0以下、1.9以下、1.8以下、1.7以下、又は1.6以下であってよい。
【0054】
同様の観点から、第1触媒コート層前段部のセリア濃度([CeO2]Fr)に対する第2触媒コート層のセリア濃度([CeO2]Up)の比([CeO2]Up/[CeO2]Fr)は、例えば、1.5以上、1.8以上、2.0以上、2.3以上、又は2.5以上であってよく、例えば、5.0以下、4.5以下、4.0以下、3.5以下、3.0以下、又は2.5以下であってよい。
【0055】
第2触媒コート層中のセリア量としては、第2触媒コート層に含まれるセリアの質量(g)を、基材容量1L当たりに割り付けた質量割合(g/L)として、例えば、10g/L以上、12g/L以上、14g/L以上、16g/L以上、又は18g/L以上であってよく、例えば、30g/L以下、28g/L以下、26g/L以下、24g/L以下、22g/L以下、又は20g/L以下であってよい。
【0056】
第2触媒コート層は、ロジウムを含んでいてよい。
【0057】
第2触媒コート層中のロジウム量は、第2触媒コート層に含まれるロジウムの質量(g)を、基材容量1L当たりに割り付けた質量割合(g/L)として、例えば、0.10g/L以上、0.15g/L以上、0.20g/L以上、0.25g/L以上、又は0.30g/L以上であってよく、例えば、0.50g/L以下、0.45g/L以下、0.40g/L以下、0.35g/L以下、又は0.30g/L以下であってよい。
【0058】
第2触媒コート層中のロジウム量を基材容量1L当たりに割り付けた質量割合は、第1触媒コート層前段部及び第1触媒コート層後段部に含まれるロジウムの合計質量を、基材容量1L当たりに割り付けた質量割合(g/L)に対して、1.0倍超、1.1倍以上、1.2倍以上、1.3倍以上、1.4倍以上、又は1.5倍以上であってよく、2.0倍以下、1.9倍以下、1.8倍以下、1.7倍以下、1.6倍以下、又は1.5倍以下であってよい。
【0059】
第2触媒コート層は、パラジウムを含んでいてよい。
【0060】
第2触媒コート層中のパラジウム量は、第2触媒コート層に含まれるパラジウムの質量(g)を、基材容量1L当たりに割り付けた質量割合(g/L)として、例えば、0.1g/L以上、0.3g/L以上、0.5g/L以上、0.6g/L以上、又は0.7g/L以上であってよく、例えば、1.5g/L以下、1.4g/L以下、1.3g/L以下、1.2g/L以下、1.1g/L以下、又は1.0g/L以下であってよい。
【0061】
第2触媒コート層中のロジウム及びパラジウムは、それぞれ、上述の無機酸化物粒子から選択される1種以上に、好ましくは微粒子状で担持された状態であってよい。
【0062】
本発明の排ガス浄化触媒装置では、ロジウムが、パラジウムと合金化して触媒活性が劣化することを抑制する観点から、第2触媒コート層中のロジウムとパラジウムとは、それぞれ別個の無機酸化物上に担持されていることが好ましい。
【0063】
この観点から、第2触媒コート層では、
ロジウムが、セリア単体、及びセリアを含む複合酸化物から選択される1種以上の無機酸化物の粒子上に、好ましくは微粒子状で担持された状態であり、かつ、
パラジウムが、セリア単体及びセリアを含む複合酸化物以外の無機酸化物から選択される1種以上の無機酸化物の粒子上に、好ましくは微粒子状で担持された状態であってよい。
【0064】
第2触媒コート層は、ロジウム及びパラジウム以外の貴金属触媒を含有していてもよいし、含有していなくてもよい。しかしながら第2触媒コート層は、ロジウム及びパラジウム以外の貴金属触媒を実質的に含有しないことが好ましい。第2触媒コート層がロジウム及びパラジウム以外の貴金属触媒を「実質的に含有しない」とは、第2触媒コート層に含まれる貴金属触媒の全質量に対するロジウム及びパラジウム以外の貴金属触媒の質量の割合が、例えば、5質量%以下、3質量%以下、1質量%以下、0.5質量%以下、0.3質量%以下、若しくは0.1質量%以下、又は0質量%であることをいう。
【0065】
第2触媒コート層は、アルカリ土類金属化合物を更に含んでいてよい。
【0066】
第2触媒コート層に含まれるアルカリ土類金属化合物としては、例えば、カルシウム化合物、バリウム化合物、ストロンチウム化合物等が挙げられ、これらの硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、オキソ酸塩、酸化物等を使用してよい。好ましくはバリウム化合物及びストロンチウム化合物から選択される1種以上であり、より好ましくは硫酸バリウム及び硫酸ストロンチウムである。
【0067】
第2触媒コート層は、上述の無機酸化物粒子、ロジウム、及びパラジウム、並びに任意成分としてのアルカリ土類金属化合物以外に、その他の成分を更に含んでいてもよい。その他の成分は、例えば、バインダー等であってよい。バインダーについては、第1触媒コート層における説明を、そのまま採用してよい。
【0068】
《排ガス浄化触媒装置の製造方法》
本発明の排ガス浄化触媒装置は、任意の方法によって製造されてよい。
【0069】
本発明の排ガス浄化触媒装置は、例えば、
基材上に、第1の触媒コート層(前段部及び後段部)、並びに第2の触媒コート層を順次に形成する方法
によって製造されてよい。
【0070】
〈基材〉
基材として、排ガス浄化触媒装置が有すべき所望の基材を選択して用いてよい。例えば上述したような、コージェライト、SiC、ステンレス鋼、無機酸化物粒子等から構成されている、ストレートタイプ又はウォールフロータイプのモノリスハニカム基材である。
【0071】
〈第1触媒コート層の形成〉
このような基材上に、第1の触媒コート層の前段部及び後段部を形成する。
【0072】
第1触媒コート層前段部は、例えば、第1触媒コート層前段部形成用塗工液を、基材の排ガス流れ上流側端部から基材全長のうちの所定の範囲までコートした後、乾燥及び焼成することによって形成されてよい。第1触媒コート層後段部は、例えば、第1触媒コート層後段部形成用塗工液を、基材の排ガス流れ下流側端部から基材全長のうちの所定の範囲までコートした後、乾燥及び焼成することによって形成されてよい。第1触媒コート層の前段部及び後段部の形成順は任意であってよい。
【0073】
或いは別法として、第1触媒コート層前段部形成用塗工液を、基材の排ガス流れ上流側端部から基材全長のうちの所定の範囲までコートした後、乾燥し、次いで、第1触媒コート層後段部形成用塗工液を、基材の排ガス流れ下流側端部から基材全長のうちの所定の範囲までコートした後、乾燥し、然る後に前段部及び後段部をまとめて焼成する方法によってもよい。前段部形成用塗工液及び後段部形成用塗工液のコート順は、上記と逆であってもよい。
【0074】
第1触媒コート層前段部形成用塗工液及び第1触媒コート層後段部形成用塗工液は、それぞれ、第1触媒コート層前段部及び後段部に含まれる所望の成分が、適当な溶媒(例えば水)中に、溶解又は分散されて成る液状物であってよい。第1触媒コート層中のロジウムは、予め無機酸化物粒子上に担持されたロジウム担持無機酸化物粒子として、塗工液中に含有されることが好ましい。
【0075】
ロジウム担持無機酸化物粒子は、例えば、適当な溶媒(例えば水)中に、ロジウム前駆体及び無機酸化物粒子を投入し、乾燥及び焼成することにより、得ることができる。ロジウム前駆体は、例えば、硝酸ロジウム、塩化ロジウム、塩化ロジウムナトリウム、塩化ロジウム五アミン、カルボニルアセチルロジウム等であってよい。
【0076】
塗工液のコート、並びにコート後の乾燥及び焼成は、それぞれ、公知の方法に準じて行われてよい。
【0077】
〈第2触媒コート層の形成〉
第1触媒コート層が形成された基材上に、次いで、第2触媒コート層を形成する。
【0078】
第2触媒コート層は、例えば、第2触媒コート層形成用塗工液を、第1触媒コート層が形成された基材にコートした後、乾燥及び焼成することによって形成されてよい。
【0079】
第2触媒コート層形成用塗工液は、第2触媒コート層に含まれる所望の成分が、適当な溶媒(例えば水)中に、溶解又は分散されて成る液状物であってよい。第2触媒コート層中のロジウム及びパラジウムは、それぞれ、予め無機酸化物粒子上に担持されたロジウム担持無機酸化物粒子及びパラジウム担持無機酸化物粒子として、塗工液中に含有されることが好ましい。
【0080】
ロジウム担持無機酸化物粒子は、第1触媒コート層形成用塗工液について説明したのと同様の方法によって得ることができる。
【0081】
パラジウム担持無機酸化物粒子は、例えば、適当な溶媒(例えば水)中に、パラジウム前駆体及び無機酸化物粒子を投入し、乾燥及び焼成することにより、得ることができる。パラジウム前駆体は、例えば、硝酸パラジウム、硫酸パラジウム、塩化パラジウム等であってよい。
【0082】
塗工液のコート、並びにコート後の乾燥及び焼成は、それぞれ、公知の方法に準じて行われてよい。
【0083】
以上の方法により、本発明の排ガス浄化触媒装置を製造することができる。しかしながら上記に説明した方法は、本発明の排ガス浄化触媒装置の製造方法の一例にすぎず、本発明の排ガス浄化触媒装置は、上記以外の任意の方法によって製造されてもよい。
【実施例】
【0084】
I.単層触媒の検討
《実施例1》
〈排ガス浄化触媒装置の製造〉
(第1触媒コート層前段部形成用塗工液の調製)
純水中に、Rh金属換算0.10g相当量の硝酸ロジウム、及びセリア-ジルコニア複合酸化物粒子(セリア含量20質量%)11g(セリア2.30g相当)を投入し、撹拌した後に、乾燥及び焼成して、ロジウム担持セリア-ジルコニア複合酸化物粒子11.1gを得た。純水中に、得られたロジウム担持セリア-ジルコニア複合酸化物粒子の全量、アルミナ粒子25g、及びバインダーとしてアルミナゾルを投入し、撹拌することにより、第1触媒コート層前段部形成用塗工液を調製した。
【0085】
(第1触媒コート層後段部形成用塗工液の調製)
セリア-ジルコニア複合酸化物の粒子として、セリア含量20質量%のものを28g(セリア5.70g相当)用いた他は、上記の「第1触媒コート層前段部形成用塗工液の調製」と同様にして、第1触媒コート層前段部形成用塗工液を調製した。
【0086】
(コート層の形成)
直径108m、長さ76mm(容量700mL)のコージェライト製ハニカム基材の排ガス流れ上流側から38mmの範囲(基材全長の50%)に、第1触媒コート層前段部形成用塗工液をコートし、乾燥後、焼成して、第1触媒コート層前段部を形成した。この第1触媒コート層前段部(長さ38mm)におけるセリア濃度(単位長さ当たりのセリア質量)は、0.060g/mm-前段部であった。
【0087】
次いで、第1触媒コート層前段部が形成されたハニカム基材の排ガス流れ下流側から38mmの範囲(基材全長の50%)に、第1触媒コート層後段部形成用塗工液をコートし、乾燥後、焼成して、第1触媒コート層後段部を形成することにより、実施例1の排ガス浄化触媒装置を製造した。この排ガス浄化触媒装置の第1触媒コート層後段部(長さ38mm)におけるセリア濃度(単位長さ当たりのセリア質量)は0.150g/mm-前段部であった。
【0088】
したがって、実施例1の排ガス浄化触媒装置では、第1触媒コート層後段部のセリア濃度([CeO2]Rr)と第1触媒コート層前段部のセリア濃度([CeO2]Fr)との比([CeO2]Rr/[CeO2]Fr)は、2.50であった。
【0089】
〈排ガス浄化性能の評価〉
得られた排ガス浄化触媒装置について、排気量4.0Lの触媒耐久用エンジンに装着して、100時間の定常耐久を行った後、排気量1.0Lの実車両に装着し、LA#4モードの走行パターンにて排ガス浄化性能の評価を行い、NOx排出量を測定した。コールド時及びホット時のNOx排出量を表1に示す。
【0090】
《実施例2及び3、並びに比較例1~3》
第1触媒コート層前段部形成用塗工液及び第1触媒コート層後段部形成用塗工液を調製する際、各塗工液に得含まれるセリア-ジルコニア複合酸化物のセリア含量を変更して、各塗工液中のセリア量を、それぞれ表1に記載のとおりにした他は、実施例1と同様にして各塗工液を調製し、排ガス浄化触媒装置を製造した。比較例3では、第1触媒コート層前段部の長さを76mm(基材全長の100%)として、コート層後段部を設けなかった。
【0091】
得られた排ガス浄化触媒装置を用いて、実施例1と同様にして排ガス浄化性能の評価を行った。結果は、第1触媒コート層後段部のセリア濃度と第1触媒コート層前段部のセリア濃度との比とともに、表1に示す。
【0092】
【0093】
表1を参照すると、基材上に、ロジウム及びセリアを含む第1触媒コート層を有する排ガス浄化触媒装置において、
第1触媒コート層が前段部と後段部とに分割されているが、後段部のセリア濃度が前段部のセリア濃度と同じである比較例1、
第1触媒コート層が前段部と後段部とに分割されているが、後段部のセリア濃度が前段部のセリア濃度よりも小さい比較例2、及び
第1触媒コート層が前段部と後段部とに分割されていない比較例3
と比較して、
第1触媒コート層が前段部と後段部とに分割されており、かつ、後段部のセリア濃度が前段部のセリア濃度よりも大きい実施例1~3の排ガス浄化触媒装置では、コールド時及びホット時の双方において、NOx排出量が少なくなることが理解される。
【0094】
II.2層触媒の検討(1):セリア濃度比の影響
《実施例4》
〈排ガス浄化触媒装置の製造〉
(第1触媒コート層前段部形成用塗工液及び第1触媒コート層後段部形成用塗工液の調製)
実施例1におけるのと同様にして、第1触媒コート層前段部形成用塗工液及び第1触媒コート層後段部形成用塗工液を、それぞれ調製した。
【0095】
(第2触媒コート層形成用塗工液の調製)
純水中に、Pd金属換算0.60g相当量の硝酸パラジウム、及びアルミナ粒子60gを投入し、撹拌した後に、乾燥及び焼成して、パラジウム担持アルミナ粒子60.6gを得た。
【0096】
これとは別に、純水中に、Rh金属換算0.20g相当量の硝酸ロジウム、及びセリア-ジルコニア複合酸化物粒子(セリア含量20質量%)40g(セリア8g相当)を投入し、撹拌した後に、乾燥及び焼成して、ロジウム担持セリア-ジルコニア複合酸化物粒子40.2gを得た。
【0097】
純水中に、上記で得られたパラジウム担持アルミナ粒子及びロジウム担持セリア-ジルコニア複合酸化物粒子の各全量、及びセリア-ジルコニア複合酸化物粒子(セリア含量30質量%)17g(セリア5g相当)及びバインダーとしてアルミナゾルを投入し、撹拌することにより、第2触媒コート層形成用塗工液を調製した。得られた第2触媒コート層形成用塗工液中のセリア量は、合計で13.0gであった。
【0098】
(コート層の形成)
直径108m、長さ76mm(容量700mL)のコージェライト製ハニカム基材の排ガス流れ上流側から38mmの範囲(基材全長の50%)に、第1触媒コート層前段部形成用塗工液をコートし、乾燥後、焼成して、第1触媒コート層前段部を形成した。この第1触媒コート層前段部(長さ38mm)におけるセリア濃度(単位長さ当たりのセリア質量)は、0.060g/mm-前段部であった。
【0099】
次いで、第1触媒コート層前段部が形成されたハニカム基材の排ガス流れ下流側から38mmの範囲(基材全長の50%)に、第1触媒コート層後段部形成用塗工液をコートし、乾燥後、焼成して、第1触媒コート層後段部を形成した。この排ガス浄化触媒装置の第1触媒コート層後段部(長さ38mm)におけるセリア濃度(単位長さ当たりのセリア質量)は0.150g/mm-前段部であった。
【0100】
更に、第1触媒コート層前段部及び後段部が形成されたハニカム基材の全長にわたって、第2触媒コート層形成用塗工液をコートし、乾燥後、焼成して、第2触媒コート層を形成することにより、実施例4の排ガス浄化触媒装置を製造した。この排ガス浄化触媒装置の第2触媒コート層(長さ76mm)におけるセリア濃度(単位長さ当たりのセリア質量)は0.171g/mm-前段部であった。
【0101】
したがって、実施例4の排ガス浄化触媒装置では、第1触媒コート層後段部のセリア濃度([CeO2]Rr)と第1触媒コート層前段部のセリア濃度([CeO2]Fr)との比([CeO2]Rr/[CeO2]Fr)は、2.50であり、第2触媒コート層のセリア濃度([CeO2]Up)と第1触媒コート層後段部のセリア濃度([CeO2]Rr)との比([CeO2]Up/[CeO2]Rr)は、1.14であった。
【0102】
〈排ガス浄化性能の評価〉
得られた排ガス浄化触媒装置を用いて、実施例1と同様にして排ガス浄化性能の評価を行った。コールド時の炭化水素(HC)排出量、並びにコールド時及びホット時のNOx排出量を表3に示す。
【0103】
《実施例5及び6、並びに比較例4~6》
各触媒コート層形成用塗工液を調製する際、各塗工液に得含まれるセリア-ジルコニア複合酸化物粒子のセリア含量を変更して、塗工液中のセリア量を、それぞれ表2に記載のとおりにした他は、実施例4と同様にして各塗工液を調製し、排ガス浄化触媒装置を製造した。比較例6では、第1触媒コート層前段部の長さを76mm(基材全長の100%)として、第1コート層後段部を設けなかった。
【0104】
得られた排ガス浄化触媒装置を用いて、実施例4と同様にして排ガス浄化性能の評価を行った。結果は、第1触媒コート層前段部、第1触媒コート層後段部、及び第2触媒コート層のセリア濃度比とともに、表3に示す。
【0105】
【0106】
【0107】
表2及び3を参照すると、基材上に、ロジウム及びセリアを含む第1触媒コート層と、第1コート層上に、パラジウム、ロジウム、及びセリアを含む第2触媒コート層を更に有する排ガス浄化触媒装置において、
第1触媒コート層が前段部と後段部とに分割されており、第2触媒コート層のセリア濃度が第1触媒コート層前端部及び後段部よりも大きいが、第1触媒コート層後段部のセリア濃度が前段部のセリア濃度と同じである比較例4、
第1触媒コート層が前段部と後段部とに分割されており、第2触媒コート層のセリア濃度が第1触媒コート層前端部及び後段部よりも大きいが、第1触媒コート層後段部のセリア濃度が前段部のセリア濃度よりも小さい比較例2、及び
第1触媒コート層が前段部と後段部とに分割されていない比較例3
と比較して、
第1触媒コート層が前段部と後段部とに分割されており、第1触媒コート層後段部のセリア濃度が前段部のセリア濃度よりも大きく、かつ、第2触媒コート層のセリア濃度が第1触媒コート層後段部のセリア濃度よりも大きい、実施例1~3の排ガス浄化触媒装置では、コールド時のHC排出量、並びにコールド時及びホット時のNOx排出量が少なくなることが理解される。
【0108】
III.2層触媒の検討(2):第1触媒コート層前段部及び後段部の長さ比の検討
《実施例7及び8》
各触媒コート層を形成する際、各コート層の長さを、それぞれ表4に記載のとおりにした他は、実施例4と同様にして排ガス浄化触媒装置を製造した。
【0109】
得られた排ガス浄化触媒装置を用いて、実施例4と同様にして排ガス浄化性能の評価を行った。結果は、第1触媒コート層後段部のセリア濃度([CeO2]Rr)と第1触媒コート層前段部のセリア濃度([CeO2]Fr)との比([CeO2]Rr/[CeO2]Fr)、及び第2触媒コート層のセリア濃度([CeO2]Up)と第1触媒コート層後段部のセリア濃度([CeO2]Rr)との比([CeO2]Up/[CeO2]Rr)とともに、表5に示す。表4及び表5には、実施例4で製造した排ガス浄化触媒装置の層構成及び評価結果も合わせて示した。
【0110】
【0111】
【0112】
表4及び5を参照すると、基材上に、ロジウム及びセリアを含む第1触媒コート層と、第1コート層上に、パラジウム、ロジウム、及びセリアを含む第2触媒コート層を更に有する排ガス浄化触媒装置において、
第1触媒コート層が前段部と後段部とに分割されており、第1触媒コート層後段部のセリア濃度が前段部のセリア濃度よりも大きく、かつ、第2触媒コート層のセリア濃度が第1触媒コート層後段部のセリア濃度よりも大きい場合に、
第1触媒コート層前段部と後段部との長さ比が、少なくとの30:70~70:30の広い範囲で、コールド時のHC排出量、並びにコールド時及びホット時のNOx排出量が少なくなることが理解される。
【符号の説明】
【0113】
1 第1触媒コート層
1a 第1触媒コート層前段部
1b 第1触媒コート層後段部
2 第2触媒コート層
3 基材
10 排ガス浄化触媒装置