(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-30
(45)【発行日】2023-06-07
(54)【発明の名称】配線基板および配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20230531BHJP
【FI】
H05K3/46 B
H05K3/46 N
(21)【出願番号】P 2019085056
(22)【出願日】2019-04-26
【審査請求日】2022-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川合 康裕
(72)【発明者】
【氏名】西脇 千朗
【審査官】柴垣 宙央
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-103596(JP,A)
【文献】特開2003-332716(JP,A)
【文献】特開2016-143860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/46
H01L 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と前記第1面とは反対側の第2面とを有し、コア絶縁層と第1面側導体層および第2面側導体層とを含むコア基板と、
前記コア基板の第1面上に設けられて第1層間絶縁層と前記第1層間絶縁層上の第1導体層とが交互に積層されてなる第1ビルドアップ層と、
前記コア基板の第2面上に設けられて第2層間絶縁層と前記第2層間絶縁層上の第2導体層とが交互に積層されてなる第2ビルドアップ層と、
を備える配線基板であって、
前記第1導体層および前記第2導体層のうちの前記コア基板から同順位に位置する導体層において、前記第2ビルドアップ層内の導体層の面積が前記第1ビルドアップ層内の導体層の面積より大きく、かつ、前記第2ビルドアップ層内の導体層の厚みが前記第1ビルドアップ層内の導体層の厚みより大き
く、
前記第1ビルドアップ層の最も外側の第1導体層は半導体素子を実装するための複数の接続パッドを含み、前記第2ビルドアップ層の最も外側の第2導体層はマザーボードと接続するための複数の接続パッドを含んでいる。
【請求項2】
請求項1記載の配線基板であって、前記第2面側導体層および前記第2導体層の面積の総和は、前記第1面側導体層および前記第1導体層の面積の総和よりも大きい。
【請求項3】
請求項1記載の配線基板であって、前記第1導体層および前記第2導体層のうちの前記コア基板から同順位に位置する導体層において、前記第2ビルドアップ層内の導体層の前記厚みが、前記第1ビルドアップ層内の導体層の前記厚みの1.25倍以上であって、2.0倍以下である。
【請求項4】
請求項1記載の配線基板であって、前記第1導体層および前記第2導体層のうちの前記コア基板から同順位に位置する全ての導体層において、前記第2ビルドアップ層内の導体層の面積が前記第1ビルドアップ層内の導体層の面積より大きく、かつ、前記第2ビルドアップ層内の導体層の厚みが前記第1ビルドアップ層内の導体層の厚みより大きい。
【請求項5】
請求項1記載の配線基板であって、
前記第1層間絶縁層を貫通し前記第1層間絶縁層の両面の導体層同士を接続する第1ビア導体と、
前記第2層間絶縁層を貫通し前記第2層間絶縁層の両面の導体層同士を接続する第2ビア導体とを有し、
前記第1導体層の前記コア基板と反対側を向く表面の前記第1ビア導体上は、前記コア基板と反対側に向かって前記第1導体層の前記表面から凸状に湾曲し、
前記第2導体層の前記コア基板と反対側を向く表面の前記第2ビア導体上は、前記コア基板と反対側に向かって前記第2導体層の前記表面から凸状に湾曲している。
【請求項6】
請求項5記載の配線基板であって、前記第2導体層の前記凸状の部分の、前記第2導体層の前記表面からの高さは、前記第1導体層の前記凸状の部分の、前記第1導体層の前記表面からの高さと等しいかまたは大きい。
【請求項7】
第1面と前記第1面とは反対側の第2面とを有し、コア絶縁層と第1面側導体層および第2面側導体層とを含むコア基板を設けることと、
前記コア基板の第1面上および第2面上に、第1層間絶縁層と前記第1層間絶縁層上の第1導体層とが交互に積層されてなる第1ビルドアップ層、および、第2層間絶縁層と前記第2層間絶縁層上の第2導体層とが交互に積層されてなる第2ビルドアップ層をそれぞれ設けることと、
を含む配線基板の製造方法であって、
前記第1ビルドアップ層および前記第2ビルドアップ層を設けることは、
前記第2面側の導体層を、前記第1面側における前記コア基板から同順位の導体層よりも厚く、かつ、大きな面積を有するように形成すること
と、
前記第1ビルドアップ層の最も外側の第1導体層に半導体素子を実装するための複数の接続パッドを形成することと、
前記第2ビルドアップ層の最も外側の第2導体層にマザーボードと接続するための複数の接続パッドを形成することと、
を含んでいる。
【請求項8】
請求項7記載の配線基板の製造方法であって、前記第1ビルドアップ層および前記第2ビルドアップ層を設けることは、前記コア基板の前記第2面側の電流密度が前記第1面側の電流密度よりも高くなるように電圧を印加して電解めっきを行うことを含んでいる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配線基板および配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コア基板の上下面に、第1導体層とICチップを搭載するためのパッドを含む最上の導体層とを含む上側のビルドアップ層、および、第2導体層とマザーボードとを接続するためのパッドを含む最下の導体層とを含む下側のビルドアップ層が形成されているプリント配線基板が開示されている。第1導体層の厚みと最上の導体層の厚みとの和は、第2導体層の厚みと最下の導体層の厚みとの和より大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のプリント配線基板では、プリント配線板の中心線よりICチップに近い側に形成されている導体層の厚みの和が、遠い側に形成されている導体層の厚みの和よりも大きい。ICチップに近い側の導体層をファインピッチで形成することが困難となるおそれがある。また、電力供給が十分でないおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の配線基板は、第1面と前記第1面とは反対側の第2面とを有し、絶縁層と第1面側導体層および第2面側導体層とを含むコア基板と、前記コア基板の第1面上に設けられて第1層間絶縁層と前記第1層間絶縁層上の第1導体層とが交互に積層されてなる第1ビルドアップ層と、前記コア基板の第2面上に設けられて第2層間絶縁層と前記第2層間絶縁層上の第2導体層とが交互に積層されてなる第2ビルドアップ層と、を備えている。そして、前記第1導体層および前記第2導体層のうちの前記コア基板から同順位に位置する導体層において、前記第2ビルドアップ層内の導体層の面積が前記第1ビルドアップ層内の導体層の面積より大きく、かつ、前記第2ビルドアップ層内の導体層の厚みが前記第1ビルドアップ層内の導体層の厚みより大きい。
【0006】
本発明の配線基板の製造方法は、第1面と前記第1面とは反対側の第2面とを有し、絶縁層と第1面側導体層および第2面側導体層とを含むコア基板を設けることと、前記コア基板の第1面上および第2面上に、第1層間絶縁層と前記第1層間絶縁層上の第1導体層とが交互に積層されてなる第1ビルドアップ層および第2層間絶縁層と前記第2層間絶縁層上の第2導体層とが交互に積層されてなる第2ビルドアップ層をそれぞれ設けることと、を含んでいる。そして、前記第1ビルドアップ層および前記第2ビルドアップ層を設けることは、前記第2面側の導体層を、前記第1面側における前記コア基板から同順位の導体層よりも厚く、かつ、大きな面積を有するように形成することを含んでいる。
【0007】
本発明の実施形態によれば、配線基板の電源強化が図れると考えられる。また、電力供給能力の高い配線基板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態の配線基板の一例を示す断面図。
【
図2】本発明の一実施形態の配線基板の他の例を示す断面図。
【
図3】一実施形態の配線基板におけるビア導体上の導体層表面の形状の一例を示す拡大図。
【
図4A】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法の一例を示す図。
【
図4B】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法の一例を示す図。
【
図4C】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法の一例を示す図。
【
図4D】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態の配線基板が図面を参照しながら説明される。
図1には、一実施形態の配線基板の一例である第1面1Fと第1面1Fとは反対側の第2面1Bとを有する配線基板1の断面図が示されている。配線基板1は、
図1に示されるように、第1面10Fと第1面10Fとは反対側の第2面10Bとを有するコア基板10と、コア基板10の第1面10F上の第1ビルドアップ層11と、コア基板10の第2面10B上の第2ビルドアップ層12とを含んでいる。
図1の例では、2つのビルドアップ層(第1ビルドアップ層11および第2ビルドアップ層12)は、互いに同数の導体層を含んでいる。第1ビルドアップ層11は、第1層間絶縁層32と第1層間絶縁層32上の第1導体層31とが交互に積層されて形成されている。
図1の例では、第1ビルドアップ層11は、3つの第1導体層31および3つの第1層間絶縁層32を含んでいる。第2ビルドアップ層12は、第2層間絶縁層42と第2層間絶縁層42上の第2導体層41とが交互に積層されて形成されている。
図1の例では、第2ビルドアップ層12は、3つの第2導体層41および3つの第2層間絶縁層42を含んでいる。なお、第1および第2のビルドアップ層内の導体層および層間絶縁層の数はそれぞれ3つに限定されず、任意の数の、例えば2以下の、または、4もしくはそれ以上の数の導体層および層間絶縁層が設けられてもよい。
【0010】
コア基板10は、コア絶縁層5と、コア絶縁層5の両面上すなわちコア基板10の第1面10F側および第2面10B側にそれぞれ形成されている第1面側導体層3および第2面側導体層4を含んでいる。コア絶縁層5には、コア絶縁層5を貫通するスルーホール用貫通孔55が形成されており、各スルーホール用貫通孔55を導電体で埋めることによって、第1面側導体層3と第2面側導体層4とを接続するスルーホール導体50が形成されている。
【0011】
各導体層(第1面側導体層3、第2面側導体層4、第1導体層31、および第2導体層41)には、それぞれ、所望の導体パターンが形成されている。
図1の例において、第1面側導体層3および第2面側導体層4は、3層で形成されている。第1導体層31および第2導体層41は、2層で形成されている。しかし、各導体層のそれぞれを形成する層の数は
図1の例に限定されず、例えば、第1導体層31や第2導体層41が、3層で形成されていてもよい。第1面側導体層3および第2面側導体層4は、例えば、金属箔層、無電解めっき膜層、および、電解めっき膜層を有し得る。第1導体層31および第2導体層41は、例えば、無電解めっき膜層および電解めっき膜層を有し得る。各導体層は、例えば、銅、ニッケル、銀、パラジウムなどの任意の金属を単独でまたは組み合わせて用いて形成され得る。
【0012】
コア絶縁層5、第1層間絶縁層32、および第2層間絶縁層42は、任意の絶縁性材料を用いて形成される。絶縁性材料としては、エポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BT樹脂)またはフェノール樹脂などの樹脂材料が例示される。これらの樹脂材料を用いて形成される各絶縁層は、ガラス繊維またはアラミド繊維などの補強材、および/または、シリカなどの無機フィラーを含んでいてもよい。
図1の例のように、各ビルドアップ層が複数の層間絶縁層を含んでいる場合、各ビルドアップ層内の各層間絶縁層は、同一の樹脂材料を用いて形成されてもよい。各層間絶縁層間の剥離が防止される場合がある。また、例えば、全ての層間絶縁層、すなわち第1ビルドアップ層11内の第1層間絶縁層32と第2ビルドアップ層12内の第2層間絶縁層42とが、同一の絶縁性の樹脂材料を用いて形成されてもよい。しかし、互いに異なる樹脂材料が用いられてもよい。
【0013】
各層間絶縁層は、第1ビルドアップ層11および第2ビルドアップ層12においてそれぞれの層間絶縁層の両面に形成されている導体層同士を接続する第1および第2のビア導体51、52を含んでいる。第1層間絶縁層32は、第1ビア導体51を含み、第2層間絶縁層42は、第2ビア導体52を含んでいる。第1および第2のビア導体51、52は、各層間絶縁層それぞれを貫く貫通孔を導電体で埋めることによって形成される所謂フィルドビアである。第1および第2のビア導体51、52は、それぞれの上側(コア基板と反対側)の導体層と一体的に形成されている。従って、第1および第2のビア導体51、52と第1導体層31および第2導体層41とは、同一の、例えば銅またはニッケルなどからなるめっき膜(無電解めっき膜および電解めっき膜)によって形成されている。なお、コア絶縁層5を貫通して形成されているスルーホール導体50も、銅またはニッケルなどからなる無電解めっき膜および電解めっき膜によって形成されている。
【0014】
図1の例の配線基板1は、さらに、第1ビルドアップ層11上に形成されている第1ソルダーレジスト層6、および、第2ビルドアップ層12上に形成されている第2ソルダーレジスト層7を含んでいる。第1ソルダーレジスト層6は最上層の第1導体層31を覆っており、第2ソルダーレジスト層7は最上層の第2導体層41を覆っている。第1および第2のソルダーレジスト層6、7は、例えばエポキシ樹脂またはポリイミド樹脂などを用いて形成される。
【0015】
配線基板1の第1面1F上(すなわち配線基板1の上面側)には、例えば半導体素子などの電子部品(図示せず)が実装され得る。配線基板1の第1ビルドアップ層11の最も外側の第1導体層31は、このような電子部品の端子に電気的に接続されるための複数の接続パッド31aを含んでいる。ソルダーレジスト層6は、接続パッド31aを露出させる開口を有している。一方、配線基板1の第2面1B上(すなわち配線基板1の下面側)には、例えばマザーボードなどの外部の電気回路基板が接続され得る。配線基板1の第2ビルドアップ層12の最も外側の第2導体層41は、このような外部の基板の端子に電気的に接続されるための複数の接続パッド41aを含んでいる。ソルダーレジスト層7は、接続パッド41aを露出させる開口を有している。
【0016】
配線基板1では、コア基板10の第1面10F側の第1ビルドアップ層11内の第1導体層31の面積(ここで、導体層の面積とは、導体層における導体の占有面積を意味する)とコア基板10の第2面10B側の第2ビルドアップ層12内の第2導体層41の面積とが異なる(以下、各導体層の材料が銅に限定されるわけではないが、配線基板1の面積に対する各導体層内の導体パターンの全面積の割合は、残銅率と称される)。
図1に示される例では、コア基板10から同順位に位置する導体層において、第2面10B側の導体層の残銅率、すなわち第2導体層41の残銅率は、第1面10F側の導体層の残銅率、すなわち第1導体層31の残銅率よりも大きい。ここで「コア基板10から同順位に位置する導体層」は、コア基板10から第1面10F側の外側または第2面10B側の外側へ向かって各ビルドアップ層内の導体層に順序をつけた場合にそれぞれ同じ順位となる導体層同士を意味する。
【0017】
図1に示される例では、さらに、コア基板10から同順位に位置する第1導体層31および第2導体層41では、第2導体層41の導体厚さが第1導体層31の導体厚さより厚くなるように形成されている。例えば、第2ビルドアップ層12のうち最もコア基板10側に近接して位置している第2層間絶縁層42上に積層されている第2導体層41の導体厚さは、第1ビルドアップ層11のうち最もコア基板10側に近接して位置している第1層間絶縁層32上に積層されている第1導体層31の導体厚さよりも厚い。また、第2ビルドアップ層12の最も外側の第2導体層41の導体厚さは、第1ビルドアップ層11の最も外側の第1導体層31の導体厚さよりも厚い。従って、配線基板1の第2面1B側における電流許容量が増加され得る。第2面1B側における電源ラインの電圧降下および発熱が抑制され得る。従って、配線基板1の第2面1Bでの電源強化が図られると考えられる。
【0018】
第1ビルドアップ層11中の各第1導体層31のそれぞれの厚さは、等しくてもよく、また、異なっていてもよい。例えば、第1導体層31のそれぞれの厚さは、5μm以上であって、20μm以下である。また、第2ビルドアップ層12中の各第2導体層41のそれぞれの厚さは、等しくてもよく、また、異なっていてもよい。例えば、第2導体層41それぞれの厚さは、15μm以上であって、30μm以下である。上述したように、本実施形態では、コア基板10から同順位に位置する第1導体層31および第2導体層41において、第2導体層41の厚さは第1導体層31の厚さよりも厚い。
図1に示される例では、コア基板10から同順位に位置する第1導体層31および第2導体層41において、第2導体層41の厚さは、第1導体層31の厚さの約1.25倍以上、約2.0倍以下程度に形成されている。
【0019】
コア基板10の第1面側導体層3および第2面側導体層4それぞれの厚さは、たとえば、5μm以上であって、30μm以下である。
図1の例では、第1面側導体層3の導体厚さと第2面側導体層4の導体厚さとは略等しい。しかしながら、第1面側導体層3と第2面側導体層4との導体厚さは、異なる厚さで形成されてもよい。この場合も、好ましくは、配線基板1におけるコア絶縁層5の第2面10B側の導体層の面積の和、すなわち第2面側導体層4の面積および第2導体層41の面積の総和(第2面10B側の残銅率)は、コア絶縁層5の第1面10F側の導体層の面積の和、すなわち第1面側導体層3の面積および第1導体層31の面積の総和(第1面10F側の残銅率)よりも大きい。例えば、第2面10B側の残銅率は、第1面10F側の残銅率の1.1~1.3倍程度である。第2面10B側での電源強化が良好に図られると考えられる。
【0020】
図1に示されている例では、第1ビルドアップ層11内の第1導体層31および第2ビルドアップ層12内の第2導体層41のそれぞれにおいて、コア基板10から同順位に位置する第1導体層31および第2導体層41で、第2導体層41の導体面積が第1導体層31の導体面積より大きく、かつ、第2導体層41の導体厚さが第1導体層31の導体厚さより厚くなるように、形成されている。しかしながら、全ての第2導体層41の導体面積が、対応する第1導体層31の導体面積のそれぞれより大きく、全ての第2導体層41の導体厚さが、対応する第1導体層31の導体厚さのそれぞれより厚い必要はない。少なくとも1層の第2導体層41の導体面積が、コア基板10から同順位に位置する第1導体層31の導体面積より大きく、かつ、その導体厚さが、対応する第1導体層31の導体厚さより厚くなるように形成されていればよい。このような配線基板の一例が
図2に示されている。
図2の例の配線基板1aでは、第2ビルドアップ層12中の第2導体層41のうち、最もコア基板10側に近接して位置している第2層間絶縁層42上に積層されている第2導体層411の導体面積は、コア基板10から同順位に位置している、すなわち第1ビルドアップ層11中の第1導体層31のうち、最もコア基板10側に近接して位置している第1層間絶縁層32上に積層されている第1導体層311の導体面積よりも大きく形成されている。さらに、第2導体層411の導体厚さは、第1導体層311の導体厚さよりも厚く形成されている。
【0021】
図1および
図2に示される例において、第1ビルドアップ層11および第2ビルドアップ層12内の各層間絶縁層の厚さは、例えば、15μm以上、100μm以下である。第1ビルドアップ層11内の第1層間絶縁層32はそれぞれ、同じ厚さで形成されていてもよく、また異なる厚さで形成されていてもよい。同様に、第2ビルドアップ層12内の第2層間絶縁層42のそれぞれも、同じ厚さで形成されていてもよく、また異なる厚さで形成されていてもよい。例えば、コア基板10から同順位に位置する第1層間絶縁層32および第2層間絶縁層42において、第2層間絶縁層42の厚さが第1層間絶縁層32の厚さより厚くなるように形成されてもよい。コア基板10の第1面10F側および第2面10B側における残銅率の違いから生じ得る反りの発生が抑制される場合がある。なお、ここでコア基板10から同順位に位置する層間絶縁層とは、コア基板10から第1面10F側の外側または第2面10B側の外側へ向かって各ビルドアップ層内の層間絶縁層に順序をつけた場合にそれぞれ同じ順位となる層間絶縁層同士を意味する。
【0022】
コア基板10から同順位に位置する第1導体層31および第2導体層41は、めっき膜(無電解めっき膜および電解めっき膜)によって、同時に形成される。第1導体層31よりも導体厚さの厚い第2導体層41を形成するために、本実施形態では、第1導体層31および第2導体層41の形成のために無電解めっき膜上に電解めっき膜を形成するときに、コア基板10の第2面10B側の電流密度が、第1面10F側の電流密度より高くなるように電圧が印加される。これにより、第2面10B側の電解めっき膜の厚みが第1面10F側の電解めっき膜の厚みより厚く形成され得る。上述のように、第1ビア導体51は、その上側(コア基板と反対側)の導体層である第1導体層31と同時かつ一体的に形成されている。また、第2ビア導体52は、その上側(コア基板と反対側)の導体層である第2導体層41と同時かつ一体的に形成されている。貫通孔内を電解めっき膜で充填する速度と平坦な層間絶縁層上の無電解めっき膜に電解めっき膜を積層する速度は、電解めっきの条件やめっき液の成分の選択によって制御することができる。従って、各導体層のコア基板10と反対側を向く表面を、コア基板10と反対側に向かって凸状に湾曲させることができる。導体層がこのような凸状部分を含む実施形態の凸状部分が、拡大されて
図3に示されている。電解めっき膜の膜厚を厚くするために電流密度を増大させると、貫通孔内および平坦な層間絶縁層上の無電解めっき膜上、それぞれにおいてめっき膜の形成速度を高めることができる。従って、導体層の表面の凸状部分の突出量がより大きくなり得る。なお、
図3では、導体層の凸状部分を説明することを目的としているため、
図1の配線基板1に含まれている、導体層の凸状部分上のビア導体の図示は省略されている。
【0023】
図3の例において、導体層600は、無電解めっき膜601および電解めっき膜602から形成されている。無電解めっき膜601上の電解めっき膜602は、層間絶縁層700に形成されている貫通孔700a内を埋めて、無電解めっき膜601とビア導体800を形成するとともに層間絶縁層700のコア基板と反対側(
図3における上方)を向く表面上に形成されている。電解めっき膜602は、ビア導体800上において、導体層600の表面600S(導体層600における層間絶縁層700上の部分の表面)から上方向に凸状に湾曲する凸状部分を含んでいる。凸状部分の表面600sからの高さhは、上述のように、電解めっき膜602の厚さ、すなわち導体層600の厚さを厚くすることによって高くすることができる。従って、導体厚さの厚い導体層と導体厚さのより薄い導体層とを同時に形成すると、大きな電流密度が適用される導体厚さの厚い導体層において高さhが高くなる。すなわち、電解めっき膜602を含む導体層600の導体厚さDが厚くなるほど、凸状部分の導体層600の表面600Sからの高さhが大きくなり得る。従って、
図1に示されるような、コア基板10の第2面10B側の第2導体層41の導体厚さの方が第1面10F側の第1導体層31よりも厚く形成されている配線基板では、より厚い第2導体層41における凸状部分の高さhは、より薄い第1導体層31における凸状部分の高さhと等しいかまたは大きい。
【0024】
図3に示されるような凸状部分は、配線基板1の厚さ方向Zに沿って形成され得る。しかしながら、凸状部分の断面形状は、
図3に示される形状に限定されず、貫通孔をめっきで充填する際の電解めっきの条件や貫通孔の形状または大きさ等に応じて任意の形状を取り得る。
【0025】
凸状部分の高さhは、例えば3μm以下程度である。例えば、配線基板1の第1導体層31が凸状部分を含む場合、第1導体層31の凸状部分の高さh(h1)は、1.5μm以下程度、すなわち、第1導体層31の導体厚さDの1/10程度以下である。第2導体層41が凸状部分を含む場合、第2導体層41の凸状部分の高さh(h2)は、2.5μm以下程度、すなわち、第2導体層41の導体厚さDの1/10程度以下である。導体層の凸状部分の高さhが3μm程度より高くされると、形成された導体層上への次の層間絶縁層および導体層の積層に問題が生じ得る。製造途中の配線板に厚みの不均衡やゆがみが生じるおそれがある。また、その上に積層される導体層のパターニングの精度などに問題が生じるおそれもある。このような問題は、導体厚さDがより厚い第2導体層41が形成される第2面10B側において顕著に現れ得ると考えられる。好ましくは、より厚い厚さDを有する第2導体層41における凸状部分の高さh2は、より薄い厚さDを有する第1導体層31における凸状部分の高さh1より大きいが、高さh2は高さh1の約1.7倍程度以下である。しかしながら、第1ビア導体51上の第1導体層31に、あるいは、第1ビア導体51上の第1導体層31および第2ビア導体52上の第2導体層41のどちらにも、凸状部分が形成されず、第1導体層31のコア基板と反対側を向く表面全体あるいは第1導体層31および第2導体層41のコア基板と反対側を向く表面全体が略平坦に形成されていてもよい。
【0026】
つぎに、
図1に示される配線基板1を例に、一実施形態の配線基板の製造方法が、
図4A~
図4Dを参照して以下に説明される。
【0027】
図4Aに示されるように、コア基板10を構成するコア絶縁層5、およびコア絶縁層5の両面に設けられた金属箔3eを有する積層板が用意される。例えば、銅からなる金属箔3eを有する両面銅張積層板が用意される。
【0028】
図4Bに示されるように、貫通孔55が、炭酸ガスレーザー光の照射などによって形成され、例えばサブトラクティブ法を用いて、銅箔、銅の無電解めっき膜、および電解めっき膜を含んでいて所望の導体パターンを有する第1面側導体層3および第2面側導体層4がそれぞれコア基板10の第1面10F側および第2面10B側に形成される。また、この無電解めっき膜および電解めっき膜により貫通孔55が充填されることによってスルーホール導体50が形成される。
【0029】
図4Cに示されるように、第1層間絶縁層32および第2層間絶縁層42が形成される。また、第1導体層31が第1層間絶縁層32上に形成される。第1導体層31の形成と共に、第2導体層41が第2層間絶縁層42上に形成される。第1導体層31の形成において、第1ビア導体51が第1層間絶縁層32内に形成される。また、第2導体層41の形成において、第2層間絶縁層42内に第2ビア導体52が形成される。
【0030】
第1および第2の層間絶縁層32、42は、例えば、半硬化状態のエポキシ樹脂およびガラス繊維などの補強材を含むプリプレグ、または、フィルム状のエポキシ樹脂をコア基板10の両面に積層し、熱圧着することによって形成される。プリプレグの積層の際に、例えば銅からなる金属箔がプリプレグ上に重ねられ、プリプレグと共に圧着されてもよい。その後、例えば炭酸ガスレーザー光の照射によって、第1ビア導体51を形成するための貫通孔32aが、第1層間絶縁層32に形成される。同様に、第2ビア導体52を形成するための貫通孔42aが、第2層間絶縁層42に形成される。
【0031】
そして、例えば、セミアディティブ法を用いて、無電解銅めっきなどによる金属膜およびこの金属膜をシード層として用いて金属膜上に電解めっき膜が形成されて、所望の導体パターンを有する第1および第2の導体層31、41、ならびに、第1ビア導体51および第2ビア導体52が形成される。
図1の例の配線基板1では、第2導体層41は、第1導体層31よりも厚い導体厚さを有している。従って、第2面10B側の電解めっき膜の厚みが、第1面10F側の電解めっき膜の厚みより厚くなるように、電解めっき膜が形成される時、コア基板10の第2面10B側の電流密度が、第1面10F側の電流密度より高くなるように電圧が印加される。第2ビア導体52と一体的に形成される第2導体層41の導体層の厚みは、第1ビア導体51と一体的に形成される第1導体層31の導体層の厚みの約1.25倍程度以上、約2.0倍程度以下である。
【0032】
例えばセミアディティブ法を用いる一般的なビルドアップ配線板の製造方法を適用することにより、
図4Cの第1導体層31上および第2導体層41上に、さらに、第1層間絶縁層32および第1導体層31、ならびに第2層間絶縁層42および第2導体層41が形成されて、コア基板10の第1面10F上および第2面10B上に第1ビルドアップ層11および第2ビルドアップ層12がそれぞれ形成される(
図4D)。積層された第1層間絶縁層32には、第1ビア導体51が形成されている。また、積層された第2層間絶縁層42には、第2ビア導体52が形成されている。
【0033】
図4Dでは、それぞれ3層の層間絶縁層および導体層からなる第1および第2のビルドアップ層11、12がコア基板10の第1面10F側および第2面10B側に形成されている。しかしながら、ビルドアップ層11、12内の層間絶縁層および導体層それぞれの層数は、この例に限られるわけではなく、上述のビルドアッププロセスを繰り返すことにより、より多くの層数を含むビルドアップ層が形成されてもよい。しかし、コア基板10の両側に積層される層間絶縁層および導体層の層数にかかわらず、導体層の形成は、製造途中の配線基板においてコア基板10の第2面10B側の電流密度が、第1面10F側の電流密度より高くなるように電圧が印加されることを含む。従って、コア基板10から同順位に位置する少なくとも1組の導体層(第1導体層31および第2導体層41)において、コア基板10の第2面10B側に形成される第2導体層41の厚みは、第1面10F側に形成される第1導体層31の厚みよりも大きくなるよう形成されている。
図4Dでは、第1および第2の導体層の形成時に、コア基板10の第2面10B側の電流密度が、第1面10F側の電流密度より高くなるように電圧が印加されている。従って、第1導体層31および第2導体層41のうちのコア基板10から同順位に位置する導体層においては、コア基板10の第2面10B側に形成される第2導体層41の厚みが、第1面10F側に形成される第1導体層31の厚みよりも大きくなるよう形成されている。
【0034】
その後、第1ビルドアップ層11上にソルダーレジスト層6が形成され、第2ビルドアップ層12上にソルダーレジスト層7が形成される。ソルダーレジスト層6、7は、例えば、感光性のエポキシ樹脂またはポリイミド樹脂などを含む樹脂層の形成と、適切なパターンを有するマスクを用いた露光、および現像とによって形成される。
【0035】
ソルダーレジスト層6、7の開口にそれぞれ露出する接続パッド31a、41aには、必要に応じて、無電解めっき、半田レベラ、またはスプレーコーティングなどによって、Au、Ni/Au、Ni/Pd/Au、はんだ、または耐熱性プリフラックスなどからなる表面保護膜(図示せず)が形成されてもよい。以上の工程を経ることによって、
図1の例の配線基板1が完成する。
【0036】
実施形態の配線基板は、各図面に例示される構造、ならびに、本明細書において例示された構造、形状、および材料を備えるものに限定されない。例えば、第1および第2のビア導体51、52などは、コア基板10側に向って縮径する形状を有していなくてもよい。また、ソルダーレジスト層6、7が設けられなくてもよい。
【0037】
また、実施形態の配線基板の製造方法は、各図面を参照して先に説明された方法に限定されない。例えば、コア基板10は、銅箔を用いるセミアディティブ法を用いて形成されてもよい。第1および第2のビルドアップ層11、12内の各導体層は、サブトラクティブ法を用いて形成されてもよい。先に説明された製造方法の条件や順序などは適宜変更され得る。現に製造される配線基板の構造に応じて、一部の工程が省略されてもよく、別の工程が追加されてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 配線基板
1a 配線基板
1F 配線基板の第1面
1B 配線基板の第2面
5 コア絶縁層
10 コア基板
10F コア基板の第1面
10B コア基板の第2面
11 第1ビルドアップ層
12 第2ビルドアップ層
3 第1面側導体層
4 第2面側導体層
31 第1導体層
32 第1層間絶縁層
41 第2導体層
42 第2層間絶縁層
50 スルーホール導体
51 第1ビア導体
52 第2ビア導体
6、7 ソルダーレジスト層