(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-30
(45)【発行日】2023-06-07
(54)【発明の名称】電子機器および電子制御装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20230531BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
(21)【出願番号】P 2019128706
(22)【出願日】2019-07-10
【審査請求日】2022-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000217491
【氏名又は名称】ダイヤゼブラ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】大門 優樹
(72)【発明者】
【氏名】大上 達也
(72)【発明者】
【氏名】中田 裕樹
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-118985(JP,A)
【文献】特開2006-237554(JP,A)
【文献】特開平10-107189(JP,A)
【文献】特開2015-057037(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0264998(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器であって、
互いに隣接しつつ所定の配列方向に一次元配列される複数の発熱性素子と、
前記複数の発熱性素子のそれぞれにおける前記配列方向に対して平行な一方側の面が直接的または間接的に固定される1つのヒートシンクと、
前記複数の発熱性素子のそれぞれにおける前記配列方向に対して平行な他方側の面が直接的または間接的に接触する1つのカバーと、
を有し、
前記カバーは、前記複数の発熱性素子の前記配列方向の両端部の外側において、それぞれ前記ヒートシンクにネジ止めにより固定され、
前記複数の発熱性素子は、前記ヒートシンクと前記カバーとの間に挟まれつつ保持さ
れ、
前記カバーは、
前記複数の発熱性素子の前記他方側において前記配列方向に延びるカバー本体と、
前記カバー本体の前記配列方向の両端部からそれぞれ前記一方側へ拡がるカバー突出部と、
を有し、
前記カバー突出部は、前記ヒートシンクにネジ止めにより固定され、
前記カバー本体は、前記配列方向の中央部へ向かうにつれて前記一方側へ突出する曲面を有し、
前記カバーは、板ばね構造を有し、かつ、前記カバー本体および2つのカバー突出部は、単一部材から形成される、電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器であって、
前記カバーは金属製である、電子機器。
【請求項3】
請求項1に記載の電子機器であって、
前記カバーは樹脂製である、電子機器。
【請求項4】
請求項1に記載の電子機器であって、
前記カバー本体の下端部から前記カバー本体に対して垂直方向に拡がるカバー底面部
をさらに有する、電子機器。
【請求項5】
請求項1に記載の電子機器であって、
前記カバー本体の下端部の上下方向位置は、前記複数の発熱性素子の下端部の上下方向位置よりも上側に位置する、電子機器。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の電子機器であって、
前記カバーは、前記複数の発熱性素子のそれぞれの前記他方側の面に接着剤を介して接触する、電子機器。
【請求項7】
請求項1に記載の電子機器であって、
前記カバー本体は、
互いに前記配列方向に間隙を有する複数箇所からそれぞれ前記一方側へ突出し、かつ、それぞれ1つの前記発熱性素子を前記一方側へ押圧する、複数のカバー押圧部
をさらに有する、電子機器。
【請求項8】
請求項7に記載の電子機器であって、
前記カバーは、
前記カバー本体の前記一方側に連続し、かつ、前記複数のカバー押圧部のそれぞれから前記配列方向または上下方向に延びる複数のリブ
をさらに有する、電子機器。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の電子機器を実装した回路基板と、
前記回路基板を収容するケースと、
を有する、電子制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器と、電子機器が実装された回路基板がケースに収容された電子制御装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車や産業機械等の複雑な構造を有するシステムには、様々な電子制御装置が搭載される。例えば、自動車には、車載用の電源装置として備えられた内部バッテリからの直流電圧を、昇圧しつつ交流電圧に変換して、携帯充電器、照明機器、またはオーディオ等の様々な電気機器に供給することを可能にする、DC-ACインバータ等の電力変換装置が搭載される。
【0003】
また、DC-ACインバータには、FETまたはダイオード等の様々な電気的素子や、ヒートシンクが、実装される。これらの電気的素子は、動作時に多くの電流が流れることによって発熱する、発熱性素子である。ヒートシンクは、これらの発熱性素子から発生する熱を発散させるための放熱部材である。このようなヒートシンクの構成については、例えば、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の電力変換装置(1)に用いられるヒートシンク(60)は、板状の載置部(61)と、載置部(61)の下側に配置される複数の放熱フィン(62)と、載置部(61)の上面から上方へ向かって突出する接触部(63)とを有する。そして、トランス(30)から延びる第1接地部(743)および第2接地部(753)が、ヒートシンク(60)の載置部(61)と一体に形成される接触部(63)に、それぞれねじ止めにより固定される。これにより、トランス(30)の内部のコイル(32)から発生した熱を、第1接地部(743)または第2接地部(753)、接触部(63)、およびヒートシンク(60)を介して外部へ放熱することができる(段落0041,段落0056~段落0058,
図2等)。
【0006】
しかしながら、第1接地部(743)および第2接地部(753)を接触部(63)にねじ止めするためのねじは、トランス(30)からヒートシンク(60)まで熱が伝達される経路上に位置する。このため、当該ねじにより、トランス(30)からヒートシンク(60)までの熱伝導率が低下する虞がある。また、装置の組み立て時に、第1接地部(743)および第2接地部(753)を、それぞれヒートシンク(60)にねじ止めする必要があるため、作業効率が低下する虞がある。
【0007】
本発明の目的は、電子機器に用いられる発熱性素子から発生する熱を、ヒートシンクを介して効率良く放熱でき、さらに、発熱性素子をヒートシンクに容易に接続できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の第1発明は、電子機器であって、互いに隣接しつつ所定の配列方向に一次元配列される複数の発熱性素子と、前記複数の発熱性素子のそれぞれにおける前記配列方向に対して平行な一方側の面が直接的または間接的に固定される1つのヒートシンクと、前記複数の発熱性素子のそれぞれにおける前記配列方向に対して平行な他方側の面が直接的または間接的に接触する1つのカバーと、を有し、前記カバーは、前記複数の発熱性素子の前記配列方向の両端部の外側において、それぞれ前記ヒートシンクにネジ止めにより固定され、前記複数の発熱性素子は、前記ヒートシンクと前記カバーとの間に挟まれつつ保持される。前記カバーは、前記複数の発熱性素子の前記他方側において前記配列方向に延びるカバー本体と、前記カバー本体の前記配列方向の両端部からそれぞれ前記一方側へ拡がるカバー突出部と、を有する。前記カバー突出部は、前記ヒートシンクにネジ止めにより固定される。前記カバー本体は、前記配列方向の中央部へ向かうにつれて前記一方側へ突出する曲面を有する。前記カバーは、板ばね構造を有し、かつ、前記カバー本体および2つのカバー突出部は、単一部材から形成される。
【0010】
本願の第2発明は、第1発明の電子機器であって、前記カバーは金属製である。
【0011】
本願の第3発明は、第1発明の電子機器であって、前記カバーは樹脂製である。
【0012】
本願の第4発明は、第1発明の電子機器であって、前記カバー本体の下端部から前記カバー本体に対して垂直方向に拡がるカバー底面部をさらに有する。
【0013】
本願の第5発明は、第1発明の電子機器であって、前記カバー本体の下端部の上下方向位置は、前記複数の発熱性素子の下端部の上下方向位置よりも上側に位置する。
【0014】
本願の第6発明は、第1発明から第5発明までのいずれか一つの電子機器であって、前記カバーは、前記複数の発熱性素子のそれぞれの前記他方側の面に接着剤を介して接触する。
【0016】
本願の第7発明は、第1発明の電子機器であって、前記カバー本体は、互いに前記配列方向に間隙を有する複数箇所からそれぞれ前記一方側へ突出し、かつ、それぞれ1つの前記発熱性素子を前記一方側へ押圧する、複数のカバー押圧部をさらに有する。
【0017】
本願の第8発明は、第7発明の電子機器であって、前記カバーは、前記カバー本体の前記一方側に連続し、かつ、前記複数のカバー押圧部のそれぞれから前記配列方向または上下方向に延びる複数のリブをさらに有する。
【0018】
本願の第9発明は、電子制御装置であって、第1発明から第8発明までのいずれか一つの電子機器を実装した回路基板と、前記回路基板を収容するケースと、を有する。
【発明の効果】
【0019】
本願の第1発明~第9発明によれば、カバーを用いてヒートシンクに対して複数の発熱性素子を一括してネジ止め固定することによって、複数の発熱性素子からヒートシンクへ熱が伝達される経路上にネジが位置しない構造を形成することができる。これにより、ネジが障害となることなく、ヒートシンクまで熱が効率良く伝達される。また、発熱性素子を固定する際の部品点数を抑制でき、作業効率が上がることでコスト削減に繋がる。
【0020】
特に、本願の第2発明によれば、カバーを容易に加工し、形成することができる。併せて、カバーからヒートシンクへの熱伝達も見込めるため、電子機器全体の放熱性能をさらに向上できる。
【0021】
特に、本願の第3発明によれば、複数の発熱性素子をより電気的に絶縁することができる。
【0022】
特に、本願の第4発明によれば、カバーの配列方向の剛性を高めることができるので、配列方向に並んだ複数の発熱性素子を均等に押圧することができる。
【0023】
特に、本願の第5発明によれば、カバーの配置スペースを抑制することができる。これにより、スペースが制限された装置内においても、カバーを含む電子機器を十分に配置することができる。
【0024】
特に、本願の第6発明および第7発明によれば、複数の発熱性素子をさらに安定して保持できる。したがって、発熱性素子の抜けおよび落下を防止することができる。また、複数の発熱性素子とヒートシンクとの固定状態がより安定する。したがって、複数の発熱性素子からヒートシンクへ熱をより効率良く伝達させることができる。
【0025】
特に、本願の第8発明によれば、複数の発熱性素子を上下方向に容易に位置決めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】第1実施形態に係る電子制御装置の斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る電子制御装置の部分拡大斜視図である。
【
図3】第1実施形態に係る電子機器の分解斜視図である。
【
図6】第2実施形態に係る電子機器の分解斜視図である。
【
図7】第3実施形態に係る回路基板および電子機器の部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本願では、後述する入力コネクタまたは出力コネクタに対して、外部機器のプラグが挿入される方向(後述する
図1および
図2参照)を前方向とし、その反対を後方向として、各部の形状や位置関係を説明する。
【0028】
<1.第1実施形態>
まず、本発明の電子制御装置の第1実施形態となる電力変換装置1(DC-ACインバータ)の構成について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、第1実施形態に係る電力変換装置1(DC-ACインバータ)の斜視図である。
図2は、第1実施形態に係る電力変換装置1の後述する蓋部50を外した状態における部分拡大斜視図である。
【0029】
本実施形態の電力変換装置1は、例えば、自動車に搭載される。また、自動車には、電源装置としての内部バッテリ(図示省略)が備えられている。内部バッテリは、直流電力を充放電可能な蓄電池である。電力変換装置1は、内部バッテリからの定電圧(例えば、12ボルト)の直流電圧を、100ボルト程度まで昇圧しつつ交流電圧に変換して、携帯充電器、照明機器、またはオーディオ等の様々な電気機器(以下、「外部機器」と称する)に供給することを可能にする装置である。
【0030】
ただし、電力変換装置1は、プラグイン式HEV(Hybrid Electric Vehicle)やプラグイン式EV(Electric Vehicle)等のプラグイン式電気自動車に搭載され、高圧電力系統から入力される直流の入力電圧を、降圧しつつ直流の出力電圧へ変換して低圧電力系統へと出力する、DC/DCコンバータであってもよい。また、電子制御装置は、電力変換以外の制御を行う装置であってもよい。さらに、電子制御装置は、自動車以外の産業機械等に用いられるものであってもよい。
【0031】
図1および
図2に示すように、電力変換装置1は、回路基板10と、2つのコネクタ(入力コネクタ20および出力コネクタ30)と、ケース40と、蓋部50とを有する。
【0032】
本実施形態の回路基板10は、DC/AC型インバータ回路基板である。回路基板10は、ケース40の内側に収容される部位と、蓋部50の下面に固定される部位とを含む。回路基板10の表面には、導電性の金属(例えば、銅)からなるパターンが形成されるとともに、種々の電子部品が配置される。入力コネクタ20には、上述の内部バッテリから延びるケーブルのプラグが接続される。出力コネクタ30には、上述の外部機器から延びるケーブルのプラグが接続される。回路基板10と、入力コネクタ20および出力コネクタ30の一部とがケース40の内側に収容され、さらに蓋部50が閉塞された状態において、回路基板10上に実装された電子部品と、入力コネクタ20と、出力コネクタ30とは、回路基板10上のパターンによって互いに電気的に接続される。
【0033】
これにより、所望の機能の有する電気回路が形成される。本実施形態では、電力変換を可能にする回路が形成される。この結果、電力変換装置1は、入力コネクタ20を介して入力される直流の入力電圧を昇圧しつつ交流電圧に変換して、出力コネクタ30を介して外部機器へ出力することができる。
【0034】
回路基板10には、電子機器100が実装される。本願では、回路基板10上に実装される複数の部品からなるユニットを「電子機器」と称する。
図3は、第1実施形態に係る電子機器100の一部を分解した斜視図である。
図3に示すように、電子機器100は、複数(本実施形態では、4つ)の発熱性素子101と、1つのヒートシンク102と、1つのカバー103とを含む。発熱性素子101は、例えば、FETまたはダイオード等であり、動作時に多くの電流が流れることによって発熱する。ただし、電子機器100に含まれる発熱性素子101の数は、2つまたは3つであってもよく、5つ以上であってもよい。
【0035】
ヒートシンク102は、4つの発熱性素子101から発生する熱を発散させるための放熱部材である。ヒートシンク102は、アルミニウム合金またはスチール等の、熱伝導性に優れた金属により形成されている。また、ヒートシンク102は、電気的に接地されている。ヒートシンク102は、板状部71および複数(本実施形態では、3つ)の放熱フィン72を有する。
【0036】
板状部71は、上下方向およびケース40の前後方向に拡がる側面401(
図1および
図2参照)と平行に拡がる板状の部材である。複数の放熱フィン72はそれぞれ、板状部71の下端部から下方へ突出し、上下方向および上述の側面401と平行に拡がる板状の部材である。本実施形態では、複数の放熱フィン72は、板状部71と単一部材から形成される。ただし、複数の放熱フィン72は、板状部71と繋がり、熱的に接続されていれば(すなわち、板状部71との間で熱伝導可能であれば)、板状部71と別体の部材により形成されてもよい。
【0037】
電力変換装置1の製造時には、まず、4つの発熱性素子101は、互いに隣接しつつ所定の配列方向D0に(本実施形態では、ケース40の前後方向に拡がる側面401(
図1および
図2参照)と平行に)一次元配列される。4つの発熱性素子101のそれぞれにおける配列方向D0に対して平行な一方側(
図3参照)の面は、ヒートシンク102の板状部71と対向する。
【0038】
なお、ヒートシンク102の板状部71のうち4つの発熱性素子101と対向する面の端部付近には、2つのネジ孔710が設けられている。また、本実施形態の板状部71のうち4つの発熱性素子101と対向する面には、放熱シート104が装着される。放熱シート104の熱伝導率は、空気の熱伝導率よりも高い。これにより、後述のとおりカバー103がヒートシンク102に固定された後、4つの発熱性素子101とヒートシンク102との間に空気が介在する隙間が生じることが抑制され、4つの発熱性素子101から発生した熱が効率良くヒートシンク102へ伝達される。
【0039】
図4は、第1実施形態に係るカバー103の斜視図である。
図4に示すように、カバー103は、カバー本体61、2つのカバー突出部62、およびカバー底面部63を有する。カバー本体61、2つのカバー突出部62、およびカバー底面部63は、単一部材から形成される。なお、本実施形態のカバー103は、例えばステンレス鋼を用いた金属製である。これにより、カバー103をプレス加工で容易に形成することができる。
【0040】
カバー本体61は、4つの発熱性素子101のうち上述の一方側とは反対側(他方側)において、上述の配列方向D0に延びる板状の部位である。2つのカバー突出部62は、カバー本体61の配列方向D0の両端部からそれぞれ一方側へ拡がる部位である。また、2つのカバー突出部62はそれぞれ、配列方向D0に拡がる面である固定面620を有する。さらに、2つの固定面620にはそれぞれ、貫通孔64が設けられている。各貫通孔64は、固定面620を厚み方向に貫通する。
【0041】
2つの固定面620はそれぞれ、金属製のネジ105(
図3参照)を用いて上述の貫通孔64を介してヒートシンク102のネジ孔710にネジ止めされる。これにより、カバー103は、4つの発熱性素子101を覆うように、4つの発熱性素子101の配列方向D0の両端部の外側において、それぞれヒートシンク102にネジ止めにより固定される。この結果、4つの発熱性素子101のそれぞれにおける配列方向D0に対して平行な一方側の面が、放熱シート104を介して、1つのヒートシンク102の板状部71に間接的に固定される。ただし、放熱シート104は、必ずしも用いられなくてもよい。すなわち、4つの発熱性素子101のそれぞれにおける上述の一方側の面は、放熱シート104を介さず、1つのヒートシンク102に直接的に固定されてもよい。なお、本実施形態の4つの発熱性素子101のそれぞれの他方側の面は、カバー本体61に直接的に接触する。そして、4つの発熱性素子101は、ヒートシンク102とカバー103との間に挟まれつつ安定して保持される。
【0042】
回路基板10に電子機器100が実装された後、回路基板10の動作時において、4つの発熱性素子101からそれぞれ発生した熱は、上述の放熱シート104を介して、ヒートシンク102に伝達され、ヒートシンク102の複数の放熱フィン72から外気に放出される。これにより、回路基板10の動作時において、発熱性素子101の温度上昇を抑制することで電力変換装置1内の他の部材に悪影響を及ぼすことを抑制できる。併せて、本実施形態では、ねじ固定では実現できなかった任意の箇所を押圧しつつ、その圧力を調整することを実現できる。
【0043】
上述のとおり、本実施形態では、4つの発熱性素子101は、1つのカバー103および2つのネジ105を用いて、4つの発熱性素子101の配列方向D0の両端部の外側において、ヒートシンク102に対して一括してネジ止め固定される。これにより、4つの発熱性素子101からヒートシンク102へ熱が伝達される経路上にネジ105が位置しない構造が形成される。これにより、ネジ105が障害となることなく、発熱性素子101からヒートシンク102まで熱が効率良く伝達される。この結果、4つの発熱性素子101から発生した熱が、電力変換装置1の外部に効率良く放熱される。また、4つの発熱性素子101をヒートシンク102に固定する際の作業性が向上するとともに、固定する際の部品点数を抑制でき、作業効率が上がることでコスト削減に繋がる。
【0044】
さらに、
図4に示すように、本実施形態のカバー103には、カバー底面部63が設けられている。カバー底面部63は、カバー本体61の下端部からカバー本体61に対して垂直方向かつ上述の一方側へ拡がる。これにより、カバー103の配列方向D0の剛性を高めることができるので、配列方向D0に並んだ4つの発熱性素子101を均等に押圧することができる。なお、カバー底面部63は、2つのカバー突出部62と繋がっていてもよい。これにより、カバー103全体の強度をさらに高めることができる。
【0045】
また、本実施形態のカバー本体61には、複数(本実施形態では、4つ)のカバー押圧部65が設けられている。4つのカバー押圧部65は、カバー本体61のうち4つの発熱性素子101に対向する位置から、それぞれ一方側へ突出する部位である。すなわち、4つのカバー押圧部65は、互いに配列方向D0に間隙を有する複数箇所からそれぞれ一方側へ突出する。カバー103がヒートシンク102に固定されると、4つのカバー押圧部65はそれぞれ、1つの発熱性素子101を一方側へ押圧する。これにより、4つの発熱性素子101をさらに安定して保持できる。その結果、発熱性素子101の抜けおよび落下を防止することができる。
【0046】
なお、変形例として、カバー103は板ばね構造を有していてもよい。例えば、
図5に示すように、カバー本体61は、配列方向D0の中央部へ向かうにつれて一方側へ突出する曲面107を有してもよい。これにより、カバー本体61の板ばねの作用によって、4つの発熱性素子101を、一方側へ押圧することができる。これにより、4つの発熱性素子101をさらに安定して保持できる。その結果、発熱性素子101の抜けおよび落下を、さらに防止することができる。また、4つの発熱性素子101とヒートシンク102との固定状態をより安定して維持できる。したがって、4つの発熱性素子101からヒートシンク102へ、熱をより効率良く伝達させることができる。
【0047】
<2.第2実施形態>
続いて、本発明の第2実施形態に係る電力変換装置の構成について説明する。第2実施形態の電力変換装置は、回路基板と、2つのコネクタ(入力コネクタおよび出力コネクタ)と、ケースと、蓋部とを有する。なお、第2実施形態に係る回路基板に実装される電子機器100B以外の部位については、第1実施形態の電子機器100以外の部位と同等の構成であるため、重複説明を省略する。
【0048】
図6は、第2実施形態に係る電子機器100Bの一部を分解した斜視図である。
図6に示すように、電子機器100Bは、複数(本実施形態では、4つ)の発熱性素子101Bと、1つのヒートシンク102Bと、1つのカバー103Bとを含む。ただし、電子機器100Bに含まれる発熱性素子101Bの数は、2つまたは3つであってもよく、5つ以上であってもよい。なお、4つの発熱性素子101Bおよび1つのヒートシンク102Bについては、第1実施形態の4つの発熱性素子101および1つのヒートシンク102と同等の構成であるため、重複説明を省略する。
【0049】
図6に示すように、本実施形態のカバー103Bは、カバー本体61Bおよび2つのカバー突出部62Bを有する。カバー本体61Bおよび2つのカバー突出部62Bは、単一部材から形成される。なお、本実施形態のカバー103Bは金属製である。これにより、カバー103Bをプレス加工で容易に形成することができる。併せて、カバー103Bからヒートシンク102Bへの熱伝達も見込めるため、電子機器100B全体の放熱性能をさらに向上できる。なお、本実施形態のカバー103Bには、第1実施形態のカバー底面部63に相当する部位は設けられていない。
【0050】
カバー本体61Bは、4つの発熱性素子101Bの、第1実施形態と同様に定義される他方側において、4つの発熱性素子101Bの所定の配列方向D0に延びる板状の部位である。2つのカバー突出部62Bは、カバー本体61Bの配列方向D0の両端部からそれぞれ一方側へ拡がる部位である。また、2つのカバー突出部62Bはそれぞれ、配列方向D0に拡がる面である固定面620Bを有する。さらに、2つの固定面620Bにはそれぞれ、貫通孔64Bが設けられている。各貫通孔64Bは、固定面620Bを厚み方向に貫通する。また、カバー103Bがヒートシンク102Bに固定される前段階において、カバー本体61Bの一方側の面および4つの発熱性素子101Bの他方側の面の少なくとも一方には、予め接着剤106Bが塗布されている。
【0051】
図6に示すように、2つの固定面620Bはそれぞれ、金属製のネジ105Bを用いて上述の貫通孔64Bを介してヒートシンク102Bのネジ孔710Bにネジ止めされる。これにより、カバー103Bは、4つの発熱性素子101Bを覆うように、4つの発熱性素子101Bの配列方向D0の両端部の外側において、それぞれヒートシンク102Bにネジ止めにより固定される。この結果、4つの発熱性素子101Bのそれぞれにおける配列方向D0に対して平行な一方側の面が、ヒートシンク102Bに装着された放熱シート104Bを介して、1つのヒートシンク102Bに間接的に固定される。
【0052】
なお、上述のとおり、本実施形態のカバー本体61Bと4つの発熱性素子101Bとの間には、接着剤106Bが介在している。これにより、カバー103Bがヒートシンク102Bに固定されると、カバー103Bは、4つの発熱性素子101Bのそれぞれの他方側の面に、接着剤106Bを介して接触する。すなわち、4つの発熱性素子101Bのそれぞれにおける配列方向D0に対して平行な他方側の面は、接着剤106Bを介してカバー本体61Bに間接的に接触する。この結果、4つの発熱性素子101Bをさらに安定して保持できる。その結果、発熱性素子101Bの抜けおよび落下を防止することができる。
【0053】
第1実施形態と同様に、回路基板の動作時において、4つの発熱性素子101Bからそれぞれ発生した熱は、上述の放熱シート104Bを介して、ヒートシンク102Bに伝達され、ヒートシンク102Bの複数の放熱フィン72B(
図6参照)から外気に放出される。これにより、回路基板の動作時において、発熱性素子101Bの温度上昇を抑制することで電力変換装置内の他の部材に悪影響を及ぼすことを抑制できる。
【0054】
また、第1実施形態と同様に、4つの発熱性素子101Bは、1つのカバー103Bおよび2つのネジ105Bを用いて、4つの発熱性素子101Bの配列方向D0の両端部の外側において、ヒートシンク102Bに対して一括してネジ止め固定される。これにより、4つの発熱性素子101Bからヒートシンク102Bへ熱が伝達される経路上にネジ105Bが位置しない構造が形成される。これにより、ネジ105Bが障害となることなく、発熱性素子101Bからヒートシンク102Bまで熱が効率良く伝達される。この結果、4つの発熱性素子101Bから発生した熱が、電力変換装置の外部に効率良く放熱される。また、4つの発熱性素子101Bをヒートシンク102Bに固定する際の作業性が向上するとともに、固定する際の部品点数を抑制でき、作業効率が上がることでコスト削減に繋がる。
【0055】
さらに、本実施形態のカバー本体61Bの下端部の上下方向位置は、4つの発熱性素子101Bの下端部の上下方向位置よりも上側に位置する。これにより、カバー103Bの配置スペースを抑制することができる。このため、スペースが制限された電力変換装置内においても、カバー103Bを含む電子機器100Bを回路基板に実装することができる。
【0056】
なお、第1実施形態と同様に、カバー103Bは板ばね構造を有していてもよい。例えば、カバー本体61Bは、配列方向D0の中央部へ向かうにつれて一方側へ突出する曲面107Bを有してもよい。これにより、カバー本体61Bの板ばねの作用によって、4つの発熱性素子101Bを、一方側へ押圧することができる。これにより、4つの発熱性素子101Bをさらに安定して保持できる。その結果、発熱性素子101Bの抜けおよび落下を、さらに防止することができる。また、4つの発熱性素子101Bとヒートシンク102Bとの固定状態をより安定して維持できる。したがって、4つの発熱性素子101Bからヒートシンク102Bへ、熱をより効率良く伝達させることができる。
【0057】
<3.第3実施形態>
続いて、本発明の第3実施形態に係る電力変換装置の構成について説明する。第3実施形態の電力変換装置は、回路基板10Cと、2つのコネクタ(入力コネクタおよび出力コネクタ)と、ケースと、蓋部とを有する。なお、第3実施形態に係る回路基板10Cに実装される電子機器100C以外の部位については、第1実施形態および第2実施形態の電子機器以外の部位と同等の構成であるため、重複説明を省略する。
【0058】
図7は、本実施形態に係る回路基板10Cおよび回路基板10Cに実装された電子機器100Cの部分縦断面図である。
図7に示すように、電子機器100Cは、複数の発熱性素子101Cと、1つのヒートシンク102Cと、1つのカバー103Cとを含む。なお、本実施形態の電子機器100Cには、4つの発熱性素子101Cが含まれる。ただし、電子機器100Cに含まれる発熱性素子101Cの数は、2つまたは3つであってもよく、5つ以上であってもよい。また、4つの発熱性素子101Cおよび1つのヒートシンク102Cについては、第1実施形態および第2実施形態の4つの発熱性素子および1つのヒートシンクと同等の構成であるため、重複説明を省略する。
【0059】
図8は、第3実施形態に係るカバー103Cの斜視図である。本実施形態のカバー103Cは、カバー本体61C、2つのカバー突出部62C、複数(本実施形態では、4つ)のカバー底面部63C、複数(本実施形態では、4つ)のカバー押圧部65C、複数(本実施形態では、3つ)のカバー側面部66C、および複数(本実施形態では、16本)のリブ67Cを有する。カバー本体61C、2つのカバー突出部62C、4つのカバー底面部63C、4つのカバー押圧部65C、3つのカバー側面部66C、および16本のリブ67Cは、単一部材から形成される。なお、本実施形態のカバー103Cは射出成形された樹脂製である。これにより、カバー103Cに接触する4つの発熱性素子101Cをより電気的に絶縁することができる。
【0060】
カバー本体61Cは、4つの発熱性素子101Cの他方側において、4つの発熱性素子101Cの配列方向D0に延びる板状の部位である。2つのカバー突出部62Cは、カバー本体61Cの配列方向D0の両端部からそれぞれ一方側へ拡がる部位である。また、2つのカバー突出部62Cはそれぞれ、配列方向D0に拡がる面である固定面620Cを有する。さらに、2つの固定面620Cにはそれぞれ、貫通孔64Cが設けられている。第1実施形態および第2実施形態と同様に、4つの発熱性素子101Cは、1つのカバー103Cおよび2つのネジ(図示省略)を用いて、4つの発熱性素子101Cの配列方向D0の両端部の外側において、ヒートシンク102Cに対して一括してネジ止め固定される。これにより、4つの発熱性素子101Cからヒートシンク102Cへ熱が伝達される経路上にネジが位置しない構造が形成される。
【0061】
4つのカバー底面部63Cは、カバー本体61Cの下端部における互いに配列方向D0に間隙を有する4箇所から、それぞれカバー本体61Cに対して垂直方向かつ一方側へ拡がる。カバー103Cがヒートシンク102Cに固定される際、4つのカバー底面部63Cのそれぞれの上面には、1つの発熱性素子101Cが配置される。
【0062】
4つのカバー押圧部65Cは、カバー本体61Cのうち4つの発熱性素子101Cに対向する位置(上述のカバー底面部63Cの上方)から、それぞれ一方側へ突出する部位である。すなわち、4つのカバー押圧部65Cは、互いに配列方向D0に間隙を有する4つの箇所からそれぞれ一方側へ突出する。カバー103Cがヒートシンク102Cに固定される前段階において、各カバー押圧部65Cの一方側の先端部および4つの発熱性素子101Cの他方側の面の少なくとも一方には、予め接着剤106Cが塗布されている。
【0063】
カバー103Cがヒートシンク102Cに固定されると、4つのカバー押圧部65Cはそれぞれ、1つの発熱性素子101Cを一方側へ押圧する。また、カバー103Cは、4つの発熱性素子101Cのそれぞれの他方側の面に、接着剤106Cを介して接触する。すなわち、4つの発熱性素子101Cのそれぞれにおける配列方向D0に対して平行な他方側の面は、接着剤106Cを介してカバー本体61Cに間接的に接触する。この結果、4つの発熱性素子101Cをさらに安定して保持できる。その結果、発熱性素子101Cの抜けおよび落下をさらに防止することができる。
【0064】
3つのカバー側面部66Cはそれぞれ、カバー本体61Cのうち、4つの発熱性素子101Cの互いの境界部分に対向する位置から、それぞれ一方側へ突出する。3つのカバー側面部66Cはそれぞれ、カバー本体61Cの一方側に連続し、上下方向および一方側に拡がる板状の部位である。
【0065】
リブ67Cは、カバー本体61Cの一方側に連続し、かつ、上述の4つのカバー押圧部65Cから、それぞれ配列方向D0または上下方向に延びる部位である。配列方向D0に延びるリブ67Cは、1つのカバー押圧部65Cと1つのカバー側面部66Cとを繋ぐ(配列方向D0の端部に位置するリブ67Cは、1つのカバー押圧部65Cと1つのカバー突出部62Cとを繋ぐ)。なお、本実施形態では、16本のリブ67Cが設けられている。しかしながら、リブ67Cの数は、これに限定されない。
【0066】
特に、本実施形態では、カバー底面部63C、カバー押圧部65C、カバー側面部66C、およびリブ67Cを有することにより、カバー103Cをヒートシンク102Cに固定する際、各発熱性素子101Cを上下方向および配列方向D0により正確に位置決めすることができる。より具体的には、カバー103Cをヒートシンク102Cに固定する際、各カバー押圧部65Cが発熱性素子101Cの上下方向および配列方向D0の中央付近に接触するように各発熱性素子101Cを配置することにより、4つの発熱性素子101Cをそれぞれ、カバー底面部63Cの上面、かつ、互いに隣接する2つのカバー側面部66Cの配列方向D0の間、または互いに隣接するカバー側面部66Cとカバー突出部62Cとの間に配置することができる。
【0067】
<4.変形例>
以上、本発明の例示的な実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されない。電子制御装置の細部の形状や構造は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜に変更してもよい。
【0068】
また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 電力変換装置
10,10C 回路基板
20 入力コネクタ
30 出力コネクタ
40 ケース
50 蓋部
61,61B,61C カバー本体
62,62B,62C カバー突出部
63,63C カバー底面部
64,64B,64C 貫通孔
65,65C カバー押圧部
66C カバー側面部
67C リブ
71 板状部
72,72B 放熱フィン
100,100B,100C 電子機器
101,101B,101C 発熱性素子
102,102B,102C ヒートシンク
103,103B,103C カバー
104,104B 放熱シート
105,105B ネジ
106B,106C 接着剤
107B 曲面
401 側面
620,620B,620C 固定面
710,710B ネジ孔