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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-30
(45)【発行日】2023-06-07
(54)【発明の名称】タイヤ製造装置及びビードリング
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/02 20060101AFI20230531BHJP
   B29C 35/02 20060101ALI20230531BHJP
   B29L 30/00 20060101ALN20230531BHJP
【FI】
B29C33/02
B29C35/02
B29L30:00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019190163
(22)【出願日】2019-10-17
(65)【公開番号】P2021062590
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】安永 智一
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-52347(JP,A)
【文献】特開2012-51334(JP,A)
【文献】特開2009-23302(JP,A)
【文献】特開2015-20297(JP,A)
【文献】特開昭48-47970(JP,A)
【文献】特開昭61-209112(JP,A)
【文献】特開2003-211452(JP,A)
【文献】特開2016-203593(JP,A)
【文献】特開2011-073252(JP,A)
【文献】特開平6-293029(JP,A)
【文献】特開2016-150540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00-33/76
B29C 35/02
B29L 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤのビード部を成形するためのビードリングを有するタイヤ加硫金型と、
前記タイヤ加硫金型の内部に位置したブラダーと
を備え、
前記ビードリングは、
前記ビード部を成形するビード成形面を有する環状の本体と、
前記ビード成形面から径方向内側に延びた端面に設けられた凹部と、
前記凹部から軸方向に突出及び後退可能なように設けられた可動リングと、
前記本体と前記可動リングとの間に設けられ、前記可動リングを前記凹部から突出する方向に付勢する付勢部材と、
前記本体と前記可動リングとの間に配置された弾性部材と
を備え、
前記本体は、前記凹部の一部を画定し、前記ビード成形面の径方向内側の端辺に連なって設けられ、前記可動リングの移動方向に対して傾斜した第1傾斜面を有し、
前記可動リングは、前記本体の前記第1傾斜面に対向し、前記移動方向に対して傾斜した第2傾斜面を有し、
前記本体の前記第1傾斜面と前記可動リングの前記第2傾斜面とは、前記可動リングが前記凹部に後退するように前記移動方向に沿って移動したときに、互いに近接するように構成されており、
前記弾性部材は、前記本体の前記第1傾斜面と前記可動リングの前記第2傾斜面との間の隙間のうち前記ブラダー側に配置されている、タイヤ製造装置。
【請求項2】
タイヤのビード部を成形するビード成形面を有する環状の本体と、
前記ビード成形面から径方向内側に延びた端面に設けられた凹部と、
前記凹部から軸方向に突出及び後退可能なように設けられた可動リングと、
前記本体と前記可動リングとの間に設けられ、前記可動リングを前記凹部から突出する方向に付勢する付勢部材と、
前記本体と前記可動リングとの間に配置された弾性部材と
を備え、
前記本体は、前記凹部の一部を画定し、前記ビード成形面の径方向内側の端辺に連なって設けられ、前記可動リングの移動方向に対して傾斜した第1傾斜面を有し、
前記可動リングは、前記本体の前記第1傾斜面に対向し、前記移動方向に対して傾斜した第2傾斜面を有し、
前記本体の前記第1傾斜面と前記可動リングの前記第2傾斜面とは、前記可動リングが前記凹部に後退するように前記移動方向に沿って移動したときに、互いに近接するように構成されており、
前記弾性部材は、前記本体の前記第1傾斜面と前記可動リングの前記第2傾斜面との間の隙間のうち前記ビード成形面の前記端辺の近傍に配置されている、ビードリング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ製造装置及びビードリングに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のビードリングは、グリーンタイヤのビード部のビード底面を成形するためのキャビティ面を有するビード底成形用リング部と、ビード部のビードヒール面を成形するためのキャビティ面を有するビードヒール成形用リング部とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-150540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のビードリングが装着されたタイヤ加硫用金型を用いてタイヤを加硫成形すると、ブラダーとビード底成形用リングとの間にグリーンタイヤの一部が噛み込まれることがあり、タイヤのビード部の径方向内側の端部にピンチが発生することがある。このビード部に発生したピンチは、一般に加硫成形後に切断されるが、切断不良が発生すると、タイヤが不良品となるという問題がある。
【0005】
本発明は、タイヤのビード部におけるピンチの発生を抑制できるタイヤ製造装置及びビードリングを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、タイヤのビード部を成形するためのビードリングを有するタイヤ加硫金型と、前記タイヤ加硫金型の内部に位置したブラダーとを備え、前記ビードリングは、前記ビード部を成形するビード成形面を有する環状の本体と、前記ビード成形面から径方向内側に延びた端面に設けられた凹部と、前記凹部から軸方向に突出及び後退可能なように設けられた可動リングと、前記本体と前記可動リングとの間に設けられ、前記可動リングを前記凹部から突出する方向に付勢する付勢部材と、前記本体と前記可動リングとの間に配置された弾性部材とを備え、前記本体は、前記凹部の一部を画定し、前記ビード成形面の径方向内側の端辺に連なって設けられ、前記可動リングの移動方向に対して傾斜した第1傾斜面を有し、前記可動リングは、前記本体の前記第1傾斜面に対向し、前記移動方向に対して傾斜した第2傾斜面を有し、前記本体の前記第1傾斜面と前記可動リングの前記第2傾斜面とは、前記可動リングが前記凹部に後退するように前記移動方向に沿って移動したときに、互いに近接するように構成されており、前記弾性部材は、前記本体の前記第1傾斜面と前記可動リングの前記第2傾斜面との間の隙間のうち前記ブラダー側に配置されている、タイヤ製造装置を提供する。
【0007】
本発明のタイヤ製造装置によれば、ブラダーが可動リングを押圧することで、可動リングは、移動方向に沿って本体に近づく。このとき、本体の第1傾斜面と可動リングの第2傾斜面とが近接し、第1傾斜面と第2傾斜面との間に配置された弾性部材は、第1傾斜面と第2傾斜面とによって、押圧されて変形する。この変形した弾性部材の一部がブラダー側に突出することで、ブラダーと可動リングとの間でのグリーンタイヤの噛み込みが抑制される。その結果、タイヤのビード部の径方向内側の端部におけるピンチの発生を抑制できる。
【0008】
本発明の他の態様は、タイヤのビード部を成形するビード成形面を有する環状の本体と、前記ビード成形面から径方向内側に延びた端面に設けられた凹部と、前記凹部から軸方向に突出及び後退可能なように設けられた可動リングと、前記本体と前記可動リングとの間に設けられ、前記可動リングを前記凹部から突出する方向に付勢する付勢部材と、前記本体と前記可動リングとの間に配置された弾性部材とを備え、前記本体は、前記凹部の一部を画定し、前記ビード成形面の径方向内側の端辺に連なって設けられ、前記可動リングの移動方向に対して傾斜した第1傾斜面を有し、前記可動リングは、前記本体の前記第1傾斜面に対向し、前記移動方向に対して傾斜した第2傾斜面を有し、前記本体の前記第1傾斜面と前記可動リングの前記第2傾斜面とは、前記可動リングが前記凹部に後退するように前記移動方向に沿って移動したときに、互いに近接するように構成されており、前記弾性部材は、前記本体の前記第1傾斜面と前記可動リングの前記第2傾斜面との間の隙間のうち前記ビード成形面の前記端辺の近傍に配置されている、ビードリングを提供する。
【0009】
本発明のビードリングによれば、このビードリングを用いてタイヤを製造した場合に、タイヤのビード部の径方向内側の端部におけるピンチの発生を抑制できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、タイヤのビード部におけるピンチの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係るタイヤ製造装置の断面図。
図2】実施形態に係るビードリングの断面図。
図3】可動リングが突出位置にあるときのビードリング周辺の模式的な断面図。
図4】可動リングが突出位置と後退位置との間にあるときのビードリング周辺の模式的な断面図。
図5】可動リングが後退位置にあるときのビードリング周辺の模式的な断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0013】
(全体構成)
図1は、本実施形態に係るタイヤ製造装置1の概略構成を示す断面図であり、タイヤ径方向の一方側(図1において右側)のみ示している。なお、図1には、タイヤ製造装置1において加硫成形される空気入りタイヤTが、仮想線(二点鎖線)で併せて示されている。空気入りタイヤTは、グリーンタイヤをタイヤ軸線が上下方向に向くようにタイヤ製造装置1にセットして加硫成形することによって製造される。
【0014】
タイヤ製造装置1は、空気入りタイヤTを加硫成形するためのタイヤ加硫金型2を備える。
【0015】
図1に示すように、タイヤ加硫金型2は、環状のセクターモールド3と、この内径側に位置する上下一対のサイドプレート4,4と、この更に内径側に位置する上下一対のビードリング5,5とを備え、これらの内側に空気入りタイヤTが加硫成形されるキャビティ6が画定されている。タイヤ加硫金型2は、所謂セグメンテッドモールドとして構成されている。
【0016】
セクターモールド3、サイドプレート4,4、及びビードリング5,5のキャビティ6を画定する内壁面はそれぞれ、空気入りタイヤTのトレッド部T1、サイドウォール部T2、及びビード部T3をそれぞれ加硫成形する成形面として構成されている。
【0017】
また、タイヤ製造装置1は、タイヤ加硫金型2の内部に配置されたブラダー7を備える。
【0018】
ブラダー7は、ブチルゴムからなる環状の部材である。また、ブラダー7は、拡縮可能である。ブラダー7は、その内部に高温高圧の加硫媒体が導入されて、タイヤ加硫金型2に向かって膨張することで、グリーンタイヤをタイヤ加硫金型2の成形面に向けて押し付けて加熱及び加圧する。
【0019】
(ビードリング)
図2は、実施形態に係るビードリング5の断面図である。以下、図2を参照して、ビードリング5の構成を説明する。
【0020】
ビードリング5がタイヤ製造装置1(図1に示す)に装着された状態では、ビードリング5の軸方向の一方側(図2において上側)がタイヤ加硫金型2(図1に示す)の内部側に向く。よって、以下の説明において、「軸方向の一方側」は、ビードリング5がタイヤ製造装置1に装着された状態ではタイヤ加硫金型2の内部側を意味する場合がある。すなわち、以下の説明において、「軸方向の一方側」は、ビードリング5がタイヤ製造装置1に装着された状態ではブラダー7(図1に示す)側を意味する場合がある。同様に、「軸方向の他方側」は、ビードリング5がタイヤ製造装置1に装着された状態ではタイヤ加硫金型2の外部側を意味する場合がある。すなわち、「軸方向の他方側」は、ビードリング5がタイヤ製造装置1に装着された状態ではブラダー7と反対側を意味する場合がある。
【0021】
図2を参照すると、本実施形態のビードリング5は、環状の本体10と、本体10に設けられた凹部20と、凹部20から突出及び後退可能に設けられた可動リング30とを備える。また、ビードリング5は、本体10と可動リング30との間に設けられ、可動リング30を付勢する複数のスプリング40と、本体10と可動リング30との間に配置されたOリング50とを備える。
【0022】
本体10は、タイヤ軸周りに環状である。本体10は、単一の部品で構成されている。本体10は、空気入りタイヤTのビード部T3(図1に示す)を成形するビード成形面11と、ビード成形面11から径方向内側に延びた端面12とを備える。また、図2において明瞭に示すように、本体10は、ビード成形面11の径方向内側の端辺11a(図2では点で示す)に連なって設けられた第1傾斜面13と、第1傾斜面13の径方向内側の端に連なって設けられた第1底面14と、第1底面14に径方向内側の端に連なって設けられた第1側面15とを備える。
【0023】
本体10のビード成形面11と端面12とは、本体10の軸方向の一方側(図2において上側)に設けられている。
【0024】
第1傾斜面13は、径方向外側から径方向内側に向かって軸方向の他方側(図2において下側)に傾斜している。第1傾斜面13は、ビード成形面11の径方向内側の端辺11aに連なって設けられた第1部分13aと、第1部分13aに連なって設けられた第2部分13bと、第2部分13bに連なって設けられた第3部分13cとを備える。
【0025】
第1傾斜面13の第1部分13aは、その径方向外側の端において、ビード成形面11の径方向内側の端辺11aに連なって設けられている。第1部分13aは、径方向外側から径方向内側に向かって、軸方向の他方側に傾斜している。これにより、第1傾斜面13の第1部分13aは、軸方向に対して傾斜している。
【0026】
第1傾斜面13の第2部分13bは、その径方向外側の端において、第1部分13aの径方向内側の端に連なって設けられている。第2部分13bは、径方向外側から径方向内側に向かって、軸方向の一方側に傾斜している。
【0027】
第1傾斜面13の第3部分13cは、その径方向外側の端において、第2部分13bの径方向内側の端に連なって設けられている。第3部分13cは、径方向外側から径方向内側に向かって、軸方向の他方側に傾斜している。これにより、第1傾斜面13の第3部分13cは、軸方向に対して傾斜している。
【0028】
第1部分13aの径方向に対する傾斜角度は、第3部分13cの径方向に対する傾斜角度よりも大きい。また、本実施形態では、第2部分13bと第3部分13cとは、略直交している。
【0029】
本体10は、第1傾斜面13に凹むように設けられた第1保持部16を有する。第1保持部16は、図2に示す断面において、三角形状の断面形状を有する。本実施形態の第1保持部16は、第1傾斜面13の第1部分13aと第2部分13bとで画定されている。
【0030】
本実施形態の第1底面14は、第1傾斜面13の径方向内側の端から、径方向内側に延びている。
【0031】
本実施形態の第1側面15は、その軸方向の他方側の端において、第1底面14の径方向外側の端に連なって設けられている。第1側面15は、径方向外側から径方向内側に向かって軸方向の一方側に傾斜している。また、第1側面15には、可動リング30に向けて突出した係止片17が設けられている。また、図示しないが、第1傾斜面13の第3部分13cにも係止片17と同様の構成を有する係止片が設けられている。
【0032】
本実施形態の凹部20は、本体10の軸方向の一方側の端面12に設けられている。凹部20は、本体10の第1傾斜面13と、第1底面14と、第1側面15とで画定された溝状である。これにより、凹部20は、本体10の軸方向の一方側の端面12に開口している。また、凹部20は、図2に示す断面において、台形状の断面形状を有する。また、凹部20は、凹部20は、本体10の全周に渡って形成されている。
【0033】
可動リング30は、凹部20の開口から突出及び後退可能なように設けられている。具体的には、可動リング30は、凹部20から突出した突出位置と、凹部20に収容された後退位置との間を移動可能である。本実施形態の可動リング30の移動方向は、軸方向に一致する。
【0034】
可動リング30は、凹部20に対応する形状を有している。言い換えれば、図2に示す断面において、可動リング30は、台形状の断面形状を有している。可動リング30は、径方向外側の端面である第2傾斜面31と、軸方向の他方側の端面である第2底面32と、径方向内側の端面である第2側面33と、軸方向の一方側の端面である上面34とを備える。
【0035】
第2傾斜面31は、その軸方向の一方側の端において、上面34の径方向外側の端に連なって設けられている。第2傾斜面31は、径方向外側から径方向内側に向かって軸方向の他方側(図2において下側)に傾斜している。また、第2傾斜面31は、第1傾斜面13と対向している。
【0036】
第2傾斜面31は、上面34に連なって設けられた第1部分31aと、第1部分31aに連なって設けられた第2部分31bと、第2部分31bに連なって設けられた第3部分31cとを備える。
【0037】
第2傾斜面31の第1部分31aは、上面34の径方向外側の端に連なって設けられている。第1部分31aは、径方向外側から径方向内側に向かって、軸方向の他方側(図2において下側)に傾斜している。これにより、第1部分31aは、軸方向に対して傾斜している。
【0038】
第2傾斜面31の第2部分31bは、第1部分31aの径方向内側の端に連なって設けられている。第2傾斜面31の第2部分31bは、径方向内側から径方向外側に向かって、軸方向の他方側に傾斜している。
【0039】
第2傾斜面31の第3部分31cは、第2部分31bの径方向外側の端に連なって設けられている。第3部分31cは、径方向外側から径方向内側に向かって、軸方向の他方側に傾斜している。これにより、第3部分31cは、軸方向に対して傾斜している。また、第2傾斜面31の第3部分31cは、第1傾斜面13の第3部分13cと平行に延びている。
【0040】
可動リング30は、第2傾斜面31に凹むように設けられた第2保持部35を備える。本実施形態の第2保持部35は、第2傾斜面31の第1部分31aと第2部分31bとで画定されている。
【0041】
第2底面32は、第2傾斜面31の径方向外側の端から径方向内側に延びている。第2底面32には、スプリング40を装着するための装着穴32aが設けられている。装着穴32aは、図2に示す断面において2つ設けられている。
【0042】
第2側面33は、第2底面32の径方向内側の端と、上面34の径方向内側の端とを繋ぐように設けられている。第2側面33は、径方向外側から径方向内側に向かって軸方向の一方側に傾斜している。第2側面33は、本体10に設けられた係止片17が挿入された係止溝36が設けられている。係止溝36は、本体10に設けられた係止片17と係合して可動リング30の軸方向の一方側への移動を規制する第1係止面36aと、本体10に設けられた係止片17と係合して可動リング30の軸方向の他方側への移動を規制する第2係止面36bとを有する。また、係止溝36は、本体10に設けられた係止片17と係合して、可動リング30の径方向内側への移動を規制する第3係止面36cを有する。第3係止面36cは、図2に示す断面において、軸方向に沿って延びている。また、図示しないが、第2傾斜面31の第3部分31cにも、係止溝36と同様の構成を有する係止溝が形成されている。第2傾斜面31の第3部分31cに設けられた係止溝(図示せず)は、第1傾斜面13の第3部分13cに設けられた係止片(図示せず)と係合して、可動リング30の軸方向の一方側及び他方側、並びに径方向外側への移動を規制する。
【0043】
上面34は、可動リング30の軸方向の一方側に設けられている。上面34は、加硫成形時にブラダー7(図1に示す)によって押圧される被押圧面である。上面34は、径方向に延びている。
【0044】
スプリング40は、本体10と可動リング30との間に設けられている。具体的には、スプリング40は、可動リング30の装着穴32aに装着され、本体10の第1底面14と可動リング30の第2底面32との間に縮んだ状態で挟持されている。これにより、スプリング40は、可動リング30を軸方向の一方側に向かって付勢している。本実施形態では、図2に示す断面において、2つのスプリング40が、径方向に並んで設けられている。また、図示しないが、スプリング40は、ビードリング5の周方向の複数箇所に等間隔に設けられている。本実施形態のスプリング40は、本発明に係る付勢部材の一例である。
【0045】
本実施形態のOリング50は、ブチルゴムからなる環状の部材である。Oリング50は、本体10の第1傾斜面13と可動リング30の第2傾斜面31との間の隙間のうち、軸方向の一方側に配置されている。言い換えれば、ビードリング5がタイヤ製造装置1(図1に示す)に装着された状態において、Oリング50は、本体10の第1傾斜面13と可動リング30の第2傾斜面31との間の隙間のうち、ブラダー7(図1に示す)側に配置されている。より詳細には、Oリング50は、本体10の第1傾斜面13と可動リング30の第2傾斜面31との間の隙間のうち、ビード成形面11の径方向内側の端辺11aの近傍に配置されている。Oリング50は、本体10の第1保持部16と、可動リング30の第2保持部35とによって保持されている。本実施形態のOリング50は、本発明に係る弾性部材の一例である。
【0046】
(ビードリングの動作)
本実施形態の可動リング30は、本体10の凹部20から突出した突出位置と、凹部20内に退避した後退位置との間で移動可能である。加硫成形時に、可動リング30は、ブラダー7によって押圧されることで、突出位置から後退位置に移動する。以下、図3から図5を参照して、加硫成形時のビードリング5の動作を説明する。
【0047】
図3は、可動リング30が突出位置にあるときのビードリング5周辺の模式的な断面図である。図3を参照すると、突出位置は、可動リング30が、本体10と可動リング30との間に設けられたスプリング40によって軸方向の一方側に押圧されて、凹部20(図2に示す)の開口から突出した位置である。可動リング30が突出位置にあるとき、本体10に設けられた係止片17と、可動リング30に設けられた係止溝36の第1係止面36aとが係合することで、可動リング30は、位置決めされる。
【0048】
また、可動リング30が突出位置にあるとき、本体10と可動リング30とは、離間している。これにより、可動リング30が突出位置にあるとき、本体10の第1傾斜面13と、可動リング30の第2傾斜面31とは離間している。
【0049】
Oリング50は、本体10の第1傾斜面13と、可動リング30の第2傾斜面31との間の隙間に配置されている。また、Oリング50は、本体10に設けられた第1保持部16と、可動リング30に設けられた第2保持部35によって、軸方向の他方側(図3の右側)に落ち込まないように保持されている。一方で、可動リング30が突出位置にあるとき、第1傾斜面13の第1部分13aと第2傾斜面31の第1部分31aとの間の隙間が、軸方向の一方側に向けて狭くなるように構成されているので、Oリング50は、軸方向の一方側に抜け落ち難くなっている。
【0050】
また、可動リング30が突出位置にあるとき、本体10に設けられた係止片17と、可動リング30に設けられた係止溝36の第3係止面36cとが係合することで、可動リング30の径方向内側への移動が規制されている。これにより、本体10の第1傾斜面13と、可動リング30の第2傾斜面31との間の隙間が広がることが抑制されるので、Oリング50が、軸方向の他方側に落ち込まないようになっている。
【0051】
図3に示すように、加硫成形時には、グリーンタイヤGが、タイヤ加硫金型2に装着されている。加硫成形時には、図3に示す可動リング30が突出位置にある状態から、可動リング30の上面34がブラダー7により押圧されることで、可動リング30は、移動方向に沿って本体10に近づくように移動する。
【0052】
図4は、可動リング30が突出位置と後退位置との間にあるときのビードリング5周辺の模式的な断面図である。図4では、可動リング30は、突出位置から後退位置への移動途中である。
【0053】
図4を参照すると、可動リング30は、ブラダー7によって上面34が押圧されると、スプリング40の付勢力に抗して、本体10に近づくように移動方向(軸方向)に沿って移動する。このとき、本体10の第1傾斜面13と可動リング30の第2傾斜面31とが、移動方向に対して傾斜しているので、第1傾斜面13と第2傾斜面31とは、互いに近接する。言い換えれば、第1傾斜面13と第2傾斜面31との間の隙間は、狭くなる。
【0054】
このため、第1傾斜面13と第2傾斜面31との間の隙間に配置されたOリング50は、第1傾斜面13と第2傾斜面31とによって押圧されて弾性変形する。Oリング50は、図4に示す断面において、第1傾斜面13と第2傾斜面31との間の隙間に沿うように変形する。このとき、本体10の第1保持部16がOリング50を保持しており、Oリング50の軸方向の一方側への移動を規制しているので、Oリング50の一部は、ブラダー7側に突出する。具体的には、Oリング50は、ビード成形面11の径方向内側の端辺11aよりもブラダー7側に突出している。
【0055】
図5は、可動リング30が後退位置にあるときのビードリング5周辺の模式的な断面図である。図5を参照すると、後退位置は、可動リング30が、凹部20(図2に示す)に収容された位置である。このとき、可動リング30の上面34は、本体10の端面12と面一である。可動リング30が突出位置にあるとき、本体10に設けられた係止片17と、可動リング30に設けられた係止溝36の第2係止面36bとが係合することで、可動リング30は、位置決めされている。
【0056】
可動リング30が後退位置にあるとき、本体10の第1傾斜面13の一部と、可動リング30の第2傾斜面31の一部とが当接している。具体的には、第1傾斜面13の第3部分13cと、第2傾斜面31の第3部分31cとは、当接している。一方で、第1傾斜面13の第1部分13aは、第2傾斜面31から離間しており、第2傾斜面31の第1部分31aは、第1傾斜面13から離間している。また、可動リング30が後退位置にあるとき、本体10の第1底面14と、可動リング30の第2底面32とが当接している。可動リング30が後退位置にあるとき、本体10の第1側面15と、可動リング30の第2側面33とが当接している。
【0057】
前述したように、可動リング30が後退位置にあるとき、第1傾斜面13の第1部分13aと第2傾斜面31の第1部分31aとの間に隙間が形成されている。この隙間に、Oリング50が変形した状態で配置されている。Oリング50の一部は、ブラダー7側に突出する。具体的には、Oリング50は、ビード成形面11の径方向内側の端辺11aよりもブラダー7側に突出している。これにより、可動リング30が後退位置にあるとき、Oリング50は、ブラダー7と、本体10と、可動リング30との間を封止している。
【0058】
本実施形態のタイヤ製造装置によれば、ブラダー7が可動リング30を押圧することで、可動リング30は、移動方向に沿って本体10に近づく。このとき、本体10の第1傾斜面13と可動リング30の第2傾斜面31とが近接し、第1傾斜面13と第2傾斜面31との間に配置されたOリング50は、第1傾斜面13と第2傾斜面31とによって、押圧されて変形する。この変形したOリング50の一部がブラダー7側に突出することで、ブラダー7と可動リング30との間でのグリーンタイヤGの噛み込みが抑制される。その結果、空気入りタイヤTのビード部T3の径方向内側の端部におけるピンチの発生を抑制できる。
【0059】
本実施形態のビードリング5によれば、このビードリング5を用いて空気入りタイヤTを製造した場合に、空気入りタイヤTのビード部T3の径方向内側の端部におけるピンチの発生を抑制できる。
【0060】
以上より、本発明の具体的な実施形態について説明したが、本発明は上記形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。
【0061】
例えば、実施形態では、付勢部材は、スプリング40であったが、これに限定されず、ゴム又は板ばねのような他の部材であってもよい。
【0062】
まや、例えば、実施形態では、可動リング30の移動方向は、軸方向に一致していたが、これに限定されず、軸方向の成分を有していればよい。
【符号の説明】
【0063】
1 タイヤ製造装置
2 タイヤ加硫金型
3 セクターモールド
4 サイドプレート
5 ビードリング
6 キャビティ
7 ブラダー
10 本体
11 ビード成形面
11a 端辺
12 端面
13 第1傾斜面
13a 第1部分
13b 第2部分
13c 第3部分
14 第1底面
15 第1側面
16 第1保持部
17 係止片
20 凹部
30 可動リング
31 第2傾斜面
31a 第1部分
31b 第2部分
31c 第3部分
32 第2底面
32a 装着穴
33 第2側面
34 上面
35 第2保持部
36 係止溝
36a 第1係止面
36b 第2係止面
36c 第3係止面
40 スプリング(付勢部材)
50 Oリング(弾性部材)
T 空気入りタイヤ
T1 トレッド部
T2 サイドウォール部
T3 ビード部
図1
図2
図3
図4
図5