(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-30
(45)【発行日】2023-06-07
(54)【発明の名称】基礎の施工方法及び基礎
(51)【国際特許分類】
E02D 27/01 20060101AFI20230531BHJP
E04G 11/06 20060101ALI20230531BHJP
E04G 17/06 20060101ALI20230531BHJP
【FI】
E02D27/01 C
E04G11/06 A
E04G17/06 F
(21)【出願番号】P 2019199265
(22)【出願日】2019-10-31
【審査請求日】2022-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【氏名又は名称】小松 靖之
(72)【発明者】
【氏名】山崎 靖典
(72)【発明者】
【氏名】若木 健吾
(72)【発明者】
【氏名】前田 洋介
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-196652(JP,A)
【文献】特開2006-265830(JP,A)
【文献】特開2012-057408(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/01
E04G 11/06
E04G 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
型枠を設置してコンクリートを打設する基礎の施工方法であって、
前記型枠は、互いに並行する2つの基礎立上り部にそれぞれ対応する第1型枠対と第2型枠対とを備え、
前記第1型枠対と前記第2型枠対の上部同士を、前記第1型枠対及び前記第2型枠対に対して直交する連結部材により連結した状態でコンクリートを打設する工程を含み、
前記連結部材は、前記第1型枠対と前記第2型枠対とが他の型枠対により互いに接続されていない位置で前記第1型枠対と前記第2型枠対とを連結
し、
前記型枠には前記型枠に対してアンカーボルトを位置決め可能であると共に互いに共通の形状を有する複数のアンカー定規が設置されており、
前記型枠及び前記アンカー定規にはそれぞれ、ピン部材を差し込むことにより前記アンカー定規を前記第1型枠対及び前記第2型枠対の上部に固定可能な穴が設けられており、
互いに共通の形状を有する複数の前記アンカー定規のうちの一部のアンカー定規は、前記第1型枠対及び前記第2型枠対のそれぞれに対して平行となるように重ねて配置されると共に前記アンカーボルトの位置決めを行うために用いられ、他の一部のアンカー定規は、前記連結部材として用いられることを特徴とする基礎の施工方法。
【請求項2】
前記アンカー定規には基準点が複数設定されており、
前記アンカー定規の前記穴は、前記基準点の周囲に4箇所設けられていると共に前記基準点を中心とした正方形の角部となる位置に配置されており、
前記アンカー定規は、前記アンカー定規の前記穴を通じて、前記第1型枠対及び前記第2型枠対それぞれの一対の型枠構成部それぞれに固定される、請求項1に記載の基礎の施工方法。
【請求項3】
前記型枠は、前記基礎の通り芯が所定のモジュール寸法に対応する間隔となるように配置され、
前記連結部材は、前記所定のモジュール寸法に対応する前記アンカー定規であり、
前記ピン部材を用いて前記連結部材としての前記アンカー定規を前記第1型枠対及び前記第2型枠対の上部に固定した際に、前記第1型枠対と前記第2型枠対とが前記所定のモジュール寸法に対応する間隔で位置決めされるよう構成されている、請求項
1又は2に記載の基礎の施工方法。
【請求項4】
前記基礎はべた基礎であり、
前記コンクリートを打設する工程において、前記べた基礎の基礎スラブと基礎立上り部とを打ち継ぎせずにコンクリートを打設する、請求項
1~3のいずれか一項に記載の基礎の施工方法。
【請求項5】
前記第1型枠対及び前記第2型枠対の少なくとも何れかは、前記べた基礎の外周部に位置する外周立上り部に対応している、請求項
4に記載の基礎の施工方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の施工方法により施工される基礎。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の基礎の施工方法及び基礎に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の基礎は、地面(地盤)に設置した型枠内にコンクリートを打設することにより構築される。例えば、べた基礎の施工方法としては、地面を覆う基礎スラブ(ベース部)のコンクリートを打設する工程と、当該基礎スラブ上に立設される基礎立上り部のコンクリート打設工程とをそれぞれ別に行う「2度打ち」と呼ばれる施工方法が採用されることが多い。この2度打ちの施工方法を採用する場合、基礎スラブのコンクリートが乾燥して十分に固まるのを待ってから基礎立上り部のコンクリート打設工程を行う必要があるため、工期が長くなってしまうという問題がある。また、2日に分けて生コン車及びポンプ車等を準備する必要があるため、コストも増大し易い。
【0003】
上記のような2度打ちの問題を解決する方法として、基礎スラブと基礎立上り部とを、1度のコンクリート打設工程で同時に形成する「一体打ち」と呼ばれる施工方法が知られている。この一体打ちの場合、基礎の外周部に位置する外周立上り部を形成するために対向配置される一対の型枠のうち、屋外側の外型枠(外側型枠構成部)よりも屋内側の内型枠(内側型枠構成部)を基礎スラブの厚み分だけ高い位置に設置する必要がある。
【0004】
例えば特許文献1には、外型枠よりも高い位置に内型枠を支持した状態で設置するための支持金物と、当該支持金物を用いた一体打ちの施工方法が開示されている。この施工方法によれば、外周立上り部のコンクリートと基礎スラブ(ベース部)のコンクリートとを、一連の作業として同じ工程で効率よく打設することができる。
【0005】
ところで、上記のように外周立上り部の内型枠を外型枠よりも高い位置に設置する場合、内型枠よりも高さ寸法の大きな外型枠には、型枠内に流し込まれたコンクリートが乾燥して固化するまでの間、大きな圧力が加わることとなる。その結果、外型枠が屋外側に膨らむように変位し、基礎立上り部の形状及び位置の精度が低下してしまう虞がある。
【0006】
このような型枠の変位を抑制するために、例えば型枠の上部から設置面にわたって斜めに延在する伸縮可能な支持部材を用いて、型枠を外側から支持する方法が提案されている(例えば特許文献2参照)。そして、コンクリートを打設する際に通り芯を確認しながら支持部材を伸縮させて型枠を押し引きすることで、当該型枠を適切な位置に維持することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第5339832号公報
【文献】特許第5665006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記のように型枠を外側から支持部材で支持しつつ、型枠の位置を調整する方法の場合、職人の技量によって品質にばらつきが生じ易く、また、コンクリートが固まるまで支持部材を操作して型枠の位置を調整し続ける必要があるため、手間が掛かるという問題がある。
【0009】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであり、容易に、且つ、高い精度で、基礎の品質を確保可能な基礎の施工方法及び基礎を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る基礎の施工方法は、型枠を設置してコンクリートを打設する基礎の施工方法であって、
前記型枠は、互いに並行する2つの基礎立上り部にそれぞれ対応する第1型枠対と第2型枠対とを備え、
前記第1型枠対と前記第2型枠対の上部同士を、前記第1型枠対及び前記第2型枠対に対して直交する連結部材により連結した状態でコンクリートを打設する工程を含み、
前記連結部材は、前記第1型枠対と前記第2型枠対とが他の型枠対により互いに接続されていない位置で前記第1型枠対と前記第2型枠対とを連結することを特徴とするものである。
【0011】
なお、本発明の施工方法にあっては、前記連結部材は、前記型枠に対してアンカーボルトを位置決め可能なアンカー定規であることが好ましい。
【0012】
また、本発明の施工方法にあっては、前記型枠に複数の前記アンカー定規が設置されており、複数の前記アンカー定規のうちの一部のアンカー定規は、アンカーボルトの位置決めを行うために用いられ、他の一部のアンカー定規は、前記連結部材として用いられることが好ましい。
【0013】
また、本発明の床構造にあっては、前記型枠は、前記基礎の通り芯が所定のモジュール寸法に対応する間隔となるように配置され、
前記連結部材は、前記所定のモジュール寸法に対応する前記アンカー定規であり、
前記型枠及び前記アンカー定規にはそれぞれ、ピン部材を差し込むことにより前記アンカー定規を前記第1型枠対及び前記第2型枠対の上部に固定可能な穴が設けられ、
前記ピン部材を用いて前記連結部材としての前記アンカー定規を前記第1型枠対及び前記第2型枠対の上部に固定した際に、前記第1型枠対と前記第2型枠対とが前記所定のモジュール寸法に対応する間隔で位置決めされるよう構成されていることが好ましい。
【0014】
また、本発明の施工方法にあっては、前記基礎はべた基礎であり、
前記コンクリートを打設する工程において、前記べた基礎の基礎スラブと基礎立上り部とを打ち継ぎせずにコンクリートを打設することが好ましい。
【0015】
また、本発明の施工方法にあっては、前記第1型枠対及び前記第2型枠対の少なくとも何れかは、前記べた基礎の外周部に位置する外周立上り部に対応していることが好ましい。
【0016】
本発明に係る基礎は、型枠を設置してコンクリートを打設することにより形成される基礎であって、
前記型枠は、互いに並行する2つの基礎立上り部にそれぞれ対応する第1型枠対と第2型枠対とを備え、
前記第1型枠対と前記第2型枠対の上部同士を、前記第1型枠対及び前記第2型枠対に対して直交する連結部材により連結した状態でコンクリートが打設され、
前記連結部材は、前記第1型枠対と前記第2型枠対とが他の型枠対により互いに接続されていない位置で前記第1型枠対と前記第2型枠対とを連結することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、容易に、且つ、高い精度で、基礎の品質を確保可能な基礎の施工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態としての基礎の施工方法に用いる型枠及び連結部材を示す、斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態としての基礎の施工方法に用いられるアンカー定規の一例を示す平面図である。
【
図3】
図1に示す型枠及び連結部材としてのアンカー定規の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、各図において共通する構成には同一の符号を付している。
【0020】
ここで、本実施形態の基礎の施工方法を適用可能な建物の一例について説明する。建物は、例えば、鉄骨造の骨組みを有する2階建ての住宅とすることができる。また、建物は、地盤に固定された基礎構造体と、当該基礎構造体上に固定される上部構造体と、で構成される。
【0021】
基礎構造体は、上部構造体の下方に位置し、その骨組みを支持するものであり、例えば、鉄筋コンクリート造の基礎とすることができる。上部構造体は、複数の柱と、柱間に架設された複数の梁とで構成される骨組み(躯体)と、この躯体の外周側に配置される外壁と、躯体を構成する梁上に配置される各階の床及び屋根と、を備える構成とすることができる。なお、骨組みを構成する部材は、予め規格化(標準化)され、予め工場にて製造されたのち建築現場に搬入されて組み立てられるものとすることができる。
【0022】
建物は、予め設定された所定のモジュール寸法(平面モジュール)に基づいて構築される。「モジュール寸法」とは、建築において設計上の基準となる基本寸法を意味し、例えば305mmとすることができる。
【0023】
建物の「通り芯(通り)」は、建物の平面視で互いに直交する2方向に沿ってそれぞれ設定される基準線である。並行する通りの間隔は、モジュール寸法の整数倍となっている。また、基礎の立ち上がり部の幅方向の中心線(基礎の通り芯)は建物の通り芯に一致するように設定される。
【0024】
図1は、住宅等の建物の基礎を構築するための型枠10と、型枠10の上部に固定される複数のアンカー定規30、40、50の設置例(型枠設置構造の一例)を示している。型枠10は、基礎伏図に基づいて設置され、型枠10の内側には鉄筋等を設置することができる。型枠10は、その内部にコンクリートを流し込んで固める(コンクリートを打設する)ことで、基礎を構築するための部材であり、コンクリートが固まった後で取り外される。なお、
図1に示すアンカー定規30、40、50も、コンクリートが固まった後で型枠10と共に取り外される部材である。型枠10及びアンカー定規30、40、50は、予め規格化(標準化)され、予め工場にて製造されたのち建築現場に搬入されて組み立てられるものとすることができる。型枠10及びアンカー定規30、40、50は、例えば鋼製とすることができるが、これに限定されない。
【0025】
図1に示すように、型枠10は、互いに並行する2つの基礎立上り部62(
図3参照)にそれぞれ対応する第1型枠対11と第2型枠対12とを備える。また、本例の型枠10は、第1型枠対11と第2型枠対12とを接続する第3型枠対13(他の型枠対)を備える。第3型枠対13は、第1型枠対11及び第2型枠対12に直交している。なお、型枠10の各型枠対11、12、13の下端部は鋼製の支持部材(図示省略)等を介して地盤に固定される。
【0026】
本例において、第1型枠対11及び第3型枠対13は、基礎の外周部に位置する外周立上り部62a(
図3参照)に対応しており、第2型枠対12は、外周立上り部62aよりも屋内側に位置する内側立上り部62bに対応している。なお、アンカー定規30等の連結部材により連結される2つの型枠対は、共に外周立上り部に対応するものであってもよいし、共に内側立上り部に対応するものであってもよい。
【0027】
各型枠対11、12は、基礎立上り部62の両側面に対応する位置で対向配置される一対の型枠構成部(11a、11b、12a)を有する。本例の第1型枠対11は、屋外側の外側型枠構成部11aと、屋内側の内側型枠構成部11bとで構成されている。内側型枠構成部11bは、鋼製の支持部材等により、外側型枠構成部11aよりも高い位置(鉛直方向の上方)で支持される(
図3参照)。また、外側型枠構成部11aは、内側型枠構成部11bよりも基礎スラブの厚み分だけ鉛直方向の高さ寸法が大きい。また、第2型枠対12は、共通する一対の内側型枠構成部12aで構成されている。本例の内側型枠構成部12aは、第1型枠対11の内側型枠構成部11bと同一の高さ寸法とすることができる。その場合、内側型枠構成部12aと内側型枠構成部11bとを共通の部材で構成してもよい。
【0028】
各型枠対11、12の上部には、上フランジ15が設けられている。また、上フランジ15には、ピン部材17を差し込み可能な複数の穴16が形成されている。穴16は、上フランジ15を貫通している。各穴16の位置は、予め設定されたモジュール寸法に対応している。
【0029】
連結部材としてのアンカー定規30は、第1型枠対11と第2型枠対12とが第3型枠対13等の他の型枠対により互いに接続されていない位置で、第1型枠対11と第2型枠対12とを互いに連結する連結部材として用いられている。
【0030】
また、アンカーボルトの位置決め部材としてのアンカー定規50は、第1型枠対11と第2型枠対12とが第3型枠対13により互いに接続されている位置で、第1型枠対11と第2型枠対12とを連結している。アンカー定規50は、第3型枠対13の上部に、平面視で第3型枠対13とアンカー定規50とが重なる位置に配置されており、アンカー定規50の幅方向の中心線は、第3型枠対13の通り芯に一致している。第1型枠対11及び第2型枠対12にそれぞれ固定されるアンカー定規40は、各アンカー定規40の幅方向の中心線が、第1型枠対11及び第2型枠対12の通り芯にそれぞれ一致するように配置されている。
【0031】
図1に示す例において、連結部材としてのアンカー定規30は、型枠10に対してアンカーボルトを位置決めするための位置決め部材としてのアンカー定規40、50と共通の形状を有している。
【0032】
ここで、
図2を参照して、アンカー定規30(及びアンカー定規40、50)の一例について説明する。アンカー定規30は、例えば鋼材等からなる長方形の平板状の本体プレート31に、各種の穴32~35を形成したものである。
【0033】
アンカー定規30には、モジュール寸法に対応する基準点P1~P4が設定されている。基準点P1~P4は、アンカー定規30の幅方向の中心線C上に位置している。各基準点P1~P4の間隔は、モジュール寸法の整数倍となっている。
【0034】
また、アンカー定規30は、ピン部材17を用いてアンカー定規30を型枠10に固定するための複数の穴32を有する。すなわち、穴32は、型枠10の上部の穴16に対応し、モジュール寸法に対応する位置に設けられている。また各穴32は、本体プレート31を厚さ方向に貫通している。ピン部材17は、直線状に延在し、先端が徐々に細くなる形状とすることができるが、これに限られず、適宜変更可能である。
【0035】
図2に示すように、穴32は、各基準点P1~P4の周囲にそれぞれ4箇所、つまり本例では合計16箇所に形成されている。また、各基準点P1~P4の周囲にそれぞれ設けられた4つの穴32は、各基準点P1~P4を中心とした正方形(二点鎖線S参照)の角部となる位置に配置されている。これにより、アンカー定規30を各型枠対11、12、13に対して平行となるように重ねて配置した状態でも、各型枠対11、12、13に対して直交する位置に配置した状態でも、共通の穴32を使用して、アンカー定規30を各型枠対11、12、13に固定することができる。なお、アンカー定規30を各型枠対11、12、13に固定する場合、何れかの基準点P1~P4に対応する4つの穴32の全てを利用する(つまり4つの穴32にピン部材17を差し込む)ことが固定強度の観点等から好ましいが、当該4つの穴32のうちの3つ以下のみを利用するようにしてもよい。なお、何れかの基準点P1~P4に対応する4つの穴32の全てを利用する場合には、各型枠対11、12を構成する一対の型枠構成部(11a、11b、12a)同士を連結することになるため、さらに基礎の施工制度を高めることが可能となる。すなわち、連結部材で各型枠対11、12を構成する一対の型枠構成部(11a、11b、12a)同士を連結することが、基礎の精度向上の観点から、より望ましい。
【0036】
なお、本例のアンカー定規30には、上記穴32の他に、アンカーボルト(図示省略)を支持するための支持穴33と、図示しない棒形振動機を挿入したり、コンクリートの投入状態やコンクリートの均し状態を確認したりするための確認穴34と、コンクリートを投入するための投入穴35が形成されている。アンカー定規30には、型枠10に固定したアンカー定規30の支持穴33にアンカーボルトを差し込むことで、型枠10に対してアンカーボルトが位置決めされるように構成されている。
【0037】
また、アンカー定規30の形状、各穴32~35の配置、形状、及びその数等は図示例に限定されず、適宜変更可能である。また、連結部材は、型枠10に対してアンカーボルトを位置決め可能なアンカー定規に限定されず、型枠対11、12の上部同士を連結可能な、他の板状又は棒状の部材等であってもよい。連結部材を型枠対に連結する手段もピン部材17を利用したものに限られず、例えばボルト、ナット、クランプ等の締結部材を用いてもよいし、型枠対に引っ掛けることで固定されるフック等を連結部材に設けてもよい。
【0038】
アンカー定規30は、型枠10の穴16の上方にアンカー定規30の穴32が重なるように配置して、重なったアンカー定規30の穴32と型枠10の穴16とを貫通するようにピン部材17等を差し込むことで、型枠10の上部に当該アンカー定規30を固定することができる。より具体的には、例えば、
図1に示すように、アンカー定規30の4つの穴32が第1型枠対11の4つの穴16にそれぞれ重なるようにアンカー定規30を配置した状態で、重なった複数の穴16、32にそれぞれピン部材17を差し込むことにより、第1型枠対11にアンカー定規30を固定することができる。同様に、アンカー定規30の他の4つの穴32が第2型枠対12の4つの穴16にそれぞれ重なるようにアンカー定規30を配置して4つのピン部材17を差し込むことにより、第2型枠対12にアンカー定規30を固定することができる。このようにして、第1型枠対11と第2型枠対12の上部同士をアンカー定規30で連結することができる。なお、連結部材としてのアンカー定規30の支持穴33を用いて、型枠10(第1型枠対11及び第2型枠対12)に対するアンカーボルトの位置決めをしてもよい。
【0039】
図1に示す連結部材としてのアンカー定規30は、第1型枠対11及び第2型枠対12に対して直交する位置で、第1型枠対11及び第2型枠対12の上部に固定されている。
図1に示すアンカー定規30は、アンカー定規30の長手方向の一端部(基準点P1側の端部)が第1型枠対11に固定され、他端部(基準点P4側の端部)が第2型枠対12に固定されている。なお、アンカー定規30の長手方向の中間部を第1型枠対11又は第2型枠対12に固定してもよい。
【0040】
アンカー定規30は、各型枠対11、12、13に対して、当該各型枠対11、12、13の延在方向に平行な位置でも、当該延在方向に直交する位置でも設置することができるように構成されている。
【0041】
図3は、
図1において、ピン部材17が差し込まれたアンカー定規30の穴32の中心を通り、アンカー定規30の延在方向に沿う鉛直平面で切断した型枠10及びアンカー定規30の縦断面図である。
【0042】
図1、3に示すように、本実施形態の基礎の施工方法では、第1型枠対11と第2型枠対12の上部同士を、第1型枠対11及び第2型枠対12に対して直交するアンカー定規30(連結部材)により連結した状態でコンクリートを打設する工程を含むものである。なお、アンカー定規30は、第1型枠対11と第2型枠対12とが、第3型枠対13等の他の型枠対により互いに接続されていない位置で、第1型枠対11と第2型枠対12とを連結する。なお、コンクリートを打設する工程の前に、鉄筋等と共に型枠10を地盤に設置する工程と、型枠10に連結部材(本例ではアンカー定規30)を設置する工程を含む。
【0043】
図3に示すように、型枠10内へのコンクリート打設によって構築されるべた基礎60は、地盤を覆う基礎スラブ61と、基礎スラブ61から鉛直方向上方に突出する基礎立上り部62とを有する。基礎立上り部62は、第1型枠対11により形成される外周立上り部62aと、第2型枠対12により形成される内側立上り部62bとを有する。
【0044】
以上の通り、本実施形態の基礎の施工方法は、型枠10を設置してコンクリートを打設する基礎の施工方法であって、型枠10は、互いに並行する2つの基礎立上り部62にそれぞれ対応する第1型枠対11と第2型枠対12とを備え、第1型枠対11と第2型枠対12の上部同士を、第1型枠対11及び第2型枠対12に対して直交するアンカー定規30等の連結部材により連結した状態でコンクリートを打設する工程を含み、アンカー定規30は、第1型枠対11と第2型枠対12とが他の型枠対により互いに接続されていない位置で第1型枠対11と第2型枠対12とを連結することを特徴とする。
【0045】
本実施形態の基礎の施工方法にあっては、並行する第1型枠対11と第2型枠対12の上部同士をアンカー定規30等の連結部材で連結するだけの簡易な方法で、コンクリートを打設する工程において、コンクリートが流し込まれてから当該コンクリートが固まるまで、第1型枠対11と第2型枠対12との間隔を適切に保持し続けることができる。これにより、高い精度で基礎60の位置及び形状を確保することができる。また、本実施形態にあっては、型枠10の姿勢を維持するアンカー定規30等の連結部材を、型枠10の最外周よりも屋外側に突出しないように設置することができるため、特に、基礎60が土地境界線に近接する場合に、より有効である。つまり、型枠10の屋外側に設置した支持部材等により屋外側から型枠10を支持する場合に比べて、狭い範囲で型枠10の姿勢を維持させて基礎の品質を確保することができる。
【0046】
以上のように、本実施形態の基礎の施工方法によれば、容易に、且つ高い精度で、基礎の品質を確保することができる。
【0047】
なお、本実施形態の基礎の施工方法にあっては、型枠10に対してアンカーボルトを位置決め可能なアンカー定規30を連結部材として用いている。このような構成とすることで、第1型枠対11と第2型枠対12を連結するための専用の連結部材が不要となるため、施工コストを低減することができる。
【0048】
また、本実施形態の基礎の施工方法にあっては、型枠10に複数のアンカー定規30、40、50が設置されており、複数のアンカー定規30、40、50のうちの一部のアンカー定規40、50は、アンカーボルトの位置決めを行うために用いられ、他の一部のアンカー定規30は、連結部材として用いられている。このように、アンカーボルトの位置決めに使用可能なアンカー定規30を連結部材としても使用することで、連結部材を個別管理する必要がないため作業が複雑化せず、また施工の作業効率も高めることができる。
【0049】
また、本実施形態の基礎の施工方法にあっては、型枠10が、基礎(基礎立上り部62)の通り芯が所定のモジュール寸法に対応する間隔となるように配置され、連結部材が所定のモジュール寸法に対応するアンカー定規30であり、型枠10及びアンカー定規30にはそれぞれ、ピン部材17を差し込むことによりアンカー定規30を第1型枠対11及び第2型枠対12の上部に固定可能な穴16、32が設けられ、ピン部材17を用いてアンカー定規30を第1型枠対11及び第2型枠対12の上部に固定した際に、第1型枠対11と第2型枠対12とが所定のモジュール寸法に対応する間隔で位置決めされるよう構成されている。このような構成により、第1型枠対11と第2型枠対12との位置が安定するため、より高い精度で基礎の品質を確保することができる。また、型枠10に対するアンカー定規30の位置合わせ及び固定作業がより容易となるため、施工効率をさらに高めることができる。
【0050】
また、本実施形態の基礎の施工方法にあっては、基礎がべた基礎60であり、コンクリートを打設する工程において、べた基礎60の基礎スラブ61と基礎立上り部62とを打ち継ぎせずにコンクリートを打設する(一体打ち)とすることが好ましい。このような構成とすることで、2度打ちの場合に比べて、コスト工期の短縮が可能となり、コストも低減することができる。
【0051】
また、本例の第1型枠対11のように、連結部材により連結される型枠対の少なくとも何れかが、べた基礎60の外周立上り部62aに対応する場合には、特に、屋外側の外側型枠構成部11aに大きな圧力が加わって変位が生じ易くなるため、本実施形態のように連結部材で型枠対の上部同士を連結する基礎の施工方法が有効である。なお、その場合、第1型枠対11を構成する一対の型枠構成部11a、11bのうち、少なくとも屋外側の外側型枠構成部11aに連結部材を固定することが好ましい。このような構成とすることで、より高い精度で、基礎の品質を確保することができる。さらに好ましくは、
図1、3に示すように、第1型枠対11の一対の型枠構成部11a、11bの両方に連結部材を固定することが望ましい。このような構成とすることで、一対の型枠構成部11a、11b同士の間隔も維持され易くなるため、さらに高い精度で、基礎の品質を確保することができる。同様の観点から、第2型枠対12の一対の型枠構成部12a、12aの両方に連結部材を固定することが望ましい。なお、各型枠対11、12を構成する一対の型枠構成部(11a、11b、12a)の一方の型枠構成部のみに連結部材を固定してもよい。
【0052】
本発明は、上述した実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲で記載された内容を逸脱しない範囲で、様々な構成により実現することが可能である。例えば、上記実施形態では連結部材としてのアンカー定規30と第1型枠対11との間に、アンカーボルトの位置決め部材としてのアンカー定規40が配置されているが、これに限られず、アンカー定規40をアンカー定規30の上方に配置してもよい。あるいは、アンカー定規40をアンカー定規30と重ならないように配置してもよいし、アンカー定規40を省略してもよい。同様に、アンカー定規30と第2型枠対12との間に位置するアンカー定規40の位置も適宜変更可能であり、省略することも可能である。さらに、第3型枠対13の上方に重ねて配置されるアンカー定規50の位置も変更可能であり、
図1に示すようにアンカー定規40の上方に配置してもよいし、アンカー定規40の下方に配置してもよい。また、アンカー定規50を省略してもよい。
【0053】
また、例えば
図1に示す連結部材としてのアンカー定規30の下方には、第1型枠対11と第2型枠対12とを接続しない他の型枠対が配置されていてもよい。また、上記実施形態では、並行する2つの型枠対11、12を連結部材で連結しているが、並行する3つ以上の型枠対を、アンカー定規30等の連結部材でまとめて連結するようにしてもよい。また、本例では、連結部材としてのアンカー定規30が1つのみ図示されているが、第1型枠対11と第2型枠対12とを連結する複数の連結部材を、第1型枠対11及び第2型枠対12の延在方向に沿って相互に間隔を空けて配置してもよい。
【0054】
また、コンクリート打設工程における型枠10の変位をより確実に抑制するために、例えば、型枠10の上部から設置面にわたって斜めに延在する伸縮可能な支持部材等を用いて型枠10を屋外側から支持してもよい。同様に、型枠10の外周部を取り囲むように配置した直線状のパイプ部材等を型枠10の外周部に固定することで、型枠10の変位抑制効果を高めるようにしてもよい。
【0055】
また、本発明の基礎の施工方法は、べた基礎60の施工に対して特に有効であるが、これに限られず、例えば布基礎の施工にも適用可能である。また、本発明の基礎の施工方法は、べた基礎60の基礎スラブ61と基礎立上り部62とを打ち継ぎせずにコンクリートを打設する一体打ちの場合に特に有効であるが、これに限られず、例えば基礎スラブ61のコンクリート打設工程と基礎立上り部62のコンクリート打設工程とを別々に行う2度打ちの場合にも適用可能である。
【符号の説明】
【0056】
10:型枠
11:第1型枠対
11a:外側型枠構成部
11b:内側型枠構成部
12:第2型枠対
12a:内側型枠構成部
13:第3型枠対(他の型枠対)
15:上フランジ
16:穴
17:ピン部材
30:アンカー定規(連結部材)
31:本体プレート
32:穴
33:支持穴
34:確認穴
35:投入穴
40、50:アンカー定規(アンカーボルトの位置決め部材)
60:基礎
61:基礎スラブ
62:基礎立上り部