(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-30
(45)【発行日】2023-06-07
(54)【発明の名称】ファイバヒューズ検出装置、及びこれを用いたレーザ装置
(51)【国際特許分類】
G01M 11/00 20060101AFI20230531BHJP
H01S 3/00 20060101ALI20230531BHJP
H01S 3/067 20060101ALI20230531BHJP
【FI】
G01M11/00 R
H01S3/00 G
H01S3/067
(21)【出願番号】P 2019219166
(22)【出願日】2019-12-03
【審査請求日】2022-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】阪本 真一
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-238709(JP,A)
【文献】特開2012-127903(JP,A)
【文献】特開2011-090050(JP,A)
【文献】特開2003-227776(JP,A)
【文献】特開2015-092611(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 11/00 - G01M 11/08
H01S 3/00 - H01S 3/02
H01S 3/04 - H01S 3/0959
H01S 3/10 - H01S 3/102
H01S 3/105 - H01S 3/131
H01S 3/136 - H01S 3/213
H01S 3/23 - H01S 4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続部を有する複数の光ファイバと、前記接続部を含むそれぞれの前記光ファイバの一部を覆い、遮光性の壁部を有する筐体と、前記筐体の内部空間に配置され、ファイバヒューズの発生により前記光ファイバから発生する光を検出する少なくとも1つの光検出部と、を備えるファイバヒューズ検出装置と、
前記筐体の外部から前記光ファイバのコアに光を出射する
複数の光源と、
を備え
、
前記光ファイバは、前記筐体の外部において前記接続部よりも前記光源側で切断可能で、
前記光源側における切断された前記光ファイバの先端面は、前記筐体の内部に導入可能である
ことを特徴とするレーザ装置。
【請求項2】
制御部を更に備え、
前記制御部は、前記光検出部が前記ファイバヒューズの発生により前記光ファイバから発生する光を検出する場合に前記光源を停止させる
ことを特徴とする請求項
1に記載のレーザ装置。
【請求項3】
いずれかの前記光ファイバの前記コアを伝搬する光のパワーが1kW以上である
ことを特徴とする請求項
1または
2に記載のレーザ装置。
【請求項4】
前記光源から出射される光の波長は赤外光の波長帯域であり、当該光の波長帯域における前記光検出部の検出感度よりも、前記ファイバヒューズによって前記光ファイバから発生する光の波長帯域における前記光検出部の検出感度は高い
ことを特徴とする請求項
1から
3のいずれか1項に記載のレーザ装置。
【請求項5】
光学部品を更に備え、
一部の前記光ファイバは、
複数であり、前記光源から出射される光の進行方向の上流側で前記光学部品に接続され、
他の一部の前記光ファイバは、前記光源から出射される光の進行方向の下流側で前記光学部品に接続され、
前記筐体は、前記上流側の
それぞれの前記光ファイバの前記一部と、前記下流側の少なくとも1つの前記光ファイバの前記一部とを覆い、
前記光検出部は、前記筐体に覆われる前記上流側の前記光ファイバの前記一部において前記ファイバヒューズの発生により当該光ファイバから発生する光、及び、前記筐体に覆われる前記下流側の前記光ファイバの前記一部において前記ファイバヒューズの発生により当該光ファイバから発生する光を検出する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のレーザ装置。
【請求項6】
前記光学部品は、複数の前記光源から出射される光を合波するコンバイナであり、
前記一部の前記光ファイバは、
前記光学部品に前記上流側で接続され、それぞれの前記光源から出射する光を前記コンバイナに伝搬し、
前記他の一部の前記光ファイバは、
前記光学部品に前記下流側で接続され、前記コンバイナから出射する光を伝搬する
ことを特徴とする請求項5に記載のレーザ装置。
【請求項7】
前記内部空間は、閉空間である
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のレーザ装置。
【請求項8】
前記壁部の内壁面の少なくとも一部は、前記ファイバヒューズの発生によって前記光ファイバから発生する光を前記光検出部に向けて反射する光反射性を有する
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項または2に記載のレーザ装置。
【請求項9】
前記壁部は金属から成る
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載のレーザ装置。
【請求項10】
前記光検出部の数は、前記接続部の数よりも少ない
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載のレーザ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファイバヒューズ検出装置、及びこれを用いたレーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば光通信分野において、伝送容量の増加に伴い、光ファイバに伝搬される光の強度(パワー)が増加している。高強度の光が伝搬される光ファイバでは、出力端部の汚れ、光ファイバの製造時における光ファイバ内部への汚れの混入、または光ファイバの設計時に予期していない方法での光ファイバの使用などにより、ファイバヒューズが起こり得る。ファイバヒューズとは、光ファイバのコアが局所的に高温となり、この高温の部分がコアを伝搬する光を吸収することで光が光源側に向かって進行する現象をいう。ファイバヒューズは、光ファイバのみならず、光ファイバに接続された光源をも破壊してしまう可能性がある。このためファイバヒューズの検出が重要となっている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ファイバヒューズの発生を検出するファイバヒューズ検出部品が開示されている。ファイバヒューズ検出部品は、ファイバヒューズ発生時に、光ファイバから発生する可視光を検出する光受光器を備える。ファイバヒューズ検出部品は、可視光を検出する光受光器から出力される電気信号を用いてファイバヒューズの発生を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されるファイバヒューズ検出部品では、光受光器は光ファイバから漏れ出る外光に対して何ら遮光されていない。この外光としては、例えば、光源から出射され光ファイバのコアを伝搬した光を挙げることができる。従って、例えば、当該光の波長帯域は、赤外域である。このため、光受光器は、外光の影響を受けやすく、ファイバヒューズ発生時に光ファイバから発生する本来検出すべき光を高精度に検出できないという懸念がある。ファイバヒューズによる光が高精度に検出されないと、光源の駆動が適切に停止しない場合があり、ファイバヒューズによる損傷が光ファイバにおける広い範囲や光源にまで広がってしまうという懸念がある。
【0006】
そこで、本発明は、ファイバヒューズ発生時に光ファイバから発生する光を高精度に検出することができるファイバヒューズ検出装置、及びこれを用いたレーザ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明のファイバヒューズ検出装置は、接続部を有する少なくとも1つの光ファイバと、前記接続部を含む前記光ファイバの一部を覆い、遮光性の壁部を有する筐体と、前記筐体の内部空間に配置され、ファイバヒューズの発生により前記光ファイバから発生する光を検出する少なくとも1つの光検出部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
このようなファイバヒューズ検出装置では、筐体は接続部を含む光ファイバの一部を覆い、壁部は筐体の外部における光ファイバの他の一部から漏れ出て筐体の内部空間に進行する外光を遮光する。上記のように、この外光は、例えば、光源から出射され光ファイバのコアを伝搬した光であり、赤外域の波長を有する。本ファイバヒューズ検出装置によれば、筐体の内部空間に配置された光検出部は、光ファイバの他の一部から漏れる外光の検出を抑制された状態で、ファイバヒューズ発生時に筐体の内部空間に配置された光ファイバのいずれかにおける接続部近傍から発生する光を検出する。従って、本ファイバヒューズ検出装置によれば、ファイバヒューズ発生時に光ファイバの接続部近傍から発生する光を高精度に検出することができる。
【0009】
また、前記内部空間は、閉空間であることが好ましい。
【0010】
この場合、光ファイバ及び光検出部が遮光性の壁部で囲われた閉空間内に収納されるため、光検出部への外光の進行が防止され、ファイバヒューズの発生により光ファイバから発生する光のS/N比が高まる。このため、光検出部はファイバヒューズ発生時に光ファイバから発生する光をより高精度に検出し得る。
【0011】
また、前記壁部の内壁面の少なくとも一部は、前記ファイバヒューズの発生によって前記光ファイバから発生する光の一部を前記光検出部に向けて反射する光反射性を有することが好ましい。
【0012】
この場合、ファイバヒューズの発生によって光ファイバから発生する光の一部は、光反射性の内壁面に伝搬して光検出部に向けて反射され、光検出部に伝搬し得る。また、光の他の一部は、光ファイバから光検出部に直接伝搬し得る。このため、より多くの光が光検出部に検出され得る。従って、本ファイバヒューズ検出装置によれば、ファイバヒューズの発生時に光ファイバから発生する光をより高精度に検出することができる。
【0013】
また、前記壁部は金属から成ることが好ましい。
【0014】
この場合、光ファイバから発生する光によって熱が発生する場合に、この熱の少なくも一部は、壁部で拡散し易い。このため、壁部の一部が高温になることを抑制し得る。また、この熱の少なくとも一部は、壁部を介して外部に放出され易くなり得る。従って、筐体の内部空間内における熱の籠りが抑制されて、熱による光ファイバの劣化を抑制し得る。
【0015】
また、前記光ファイバは、複数であり、複数の前記光ファイバのそれぞれの前記一部は、前記筐体の前記内部空間に配置されることが好ましい。
【0016】
複数の光ファイバそれぞれの一部が筐体の内部空間に配置されるため、複数の光ファイバのいずれかにファイバヒューズが発生しても、光検出部はファイバヒューズの発生によって複数の光ファイバのいずれかにおける接続部近傍から発生する光を検出し得る。従って、本ファイバヒューズ検出装置によれば、複数の光ファイバそれぞれにおけるファイバヒューズの発生をまとめて管理することができる。
【0017】
また、前記光検出部の数は、前記接続部の数よりも少ないことが好ましい。
【0018】
この場合であっても、筐体内における複数の光ファイバのいずれかでファイバヒューズが発生しても、光検出部はファイバヒューズの発生によって接続部近傍から発生する光を検出し得る。従って、本ファイバヒューズ検出装置によれば、少ない光検出部により、複数の光ファイバのいずれかにおけるファイバヒューズの発生を検出し得、簡易な構成とし得る。
【0019】
また、本発明のレーザ装置は、上記のいずれか1項に記載のファイバヒューズ検出装置と、前記光ファイバのコアに光を出射する少なくとも1つ光源と、を備えることを特徴とするものである。
【0020】
このレーザ装置では、光検出部が、ファイバヒューズの発生時に筐体の内部空間に配置された光ファイバにおける接続部近傍から発生する光を検出し得、何らかの対策を講じることができる。
【0021】
このレーザ装置は、制御部を更に備え、前記制御部は、前記光検出部が前記ファイバヒューズの発生により前記光ファイバから発生する光を検出する場合に前記光源を停止させることが好ましい。
【0022】
この場合、ファイバヒューズが光ファイバの接続部近傍に到達する際にレーザ装置の動作を停止し得、ファイバヒューズが発生した光ファイバを切り離して、新たな光ファイバに交換し得る。
【0023】
また、前記光ファイバのコアを伝搬する光のパワーは、1kW以上であることが好ましい。
【0024】
光のパワーが1kW以上であると、ファイバヒューズ発生時に当該ファイバヒューズが光ファイバ内を素早く進行する傾向がある。このため、ファイバヒューズ検出装置がレーザ装置等に用いられる場合に、ファイバヒューズの発生時には当該レーザ装置の駆動を素早く停止させる必要があり、それゆえファイバヒューズに対する検出精度が重要となる。本ファイバヒューズ検出装置は、光のパワーが1kW以上であっても、ファイバヒューズ発生時に光ファイバから発生する光を高精度に検出することができるため好ましい。
【0025】
また、前記光源から出射される光の波長は赤外光の波長帯域であり、当該光の波長帯域における前記光検出部の検出感度よりも、前記ファイバヒューズによって前記光ファイバから発生する光の波長帯域における前記光検出部の検出感度は高いことが好ましい。
【0026】
この場合、光ファイバのコアを伝搬する光が接続部等で漏洩する場合であっても、光検出部は、ファイバヒューズにより発生する光を優先的に検出できるため、誤検出を抑制することができる。例えば、ファイバヒューズの発生によって光ファイバから発生する光は、可視光を含むことが多い。従って、光ファイバのコアを伝搬する光である信号光が赤外光である場合、光検出部が可視光を検出し、赤外光の検出が抑制されることで、ファイバヒューズ発生時に光ファイバから発生するファイバヒューズに起因する光をより適切に検出することができる。
【0027】
また、前記光ファイバは、前記筐体の外部において前記接続部よりも前記光源側で切断可能で、前記光源側における切断された前記光ファイバの先端面は、前記筐体の内部に導入可能であることが好ましい。
【0028】
このような構成とされることで、ファイバヒューズが検出された場合、光ファイバが接続部で切断され、ファイバヒューズが発生した光ファイバが新たな光ファイバに交換された後に、光源側における切断された光ファイバの先端面は、筐体の内部に導入されて、交換された新たな光ファイバに接続し得る。接続部よりも光源側における光ファイバにはファイバヒューズが進行しておらず、当該光ファイバはファイバヒューズから保護される。このため、当該光ファイバは再利用され得、ファイバヒューズが発生した光ファイバのみの交換で済み、ファイバヒューズが発生して全ての光ファイバが交換される場合に比べてメンテナンス性の低下を抑制し得る。また、光ファイバの先端面は、ファイバヒューズが発生した光ファイバが接続されていた元の位置にて新たな光ファイバと接続し得る。
【0029】
また、上記レーザ装置は、光学部品を更に備え、前記光ファイバは複数とされ、一部の前記光ファイバは、前記光源から出射される光の進行方向の上流側で前記光学部品に接続され、他の一部の前記光ファイバは、前記光源から出射される光の進行方向の下流側で前記光学部品に接続され、前記筐体は、前記上流側の少なくとも1つの前記光ファイバの前記一部と、前記下流側の少なくとも1つの前記光ファイバの前記一部とを覆い、前記光検出部は、前記筐体に覆われる前記上流側の前記光ファイバの前記一部において前記ファイバヒューズの発生により当該光ファイバから発生する光、及び、前記筐体に覆われる前記下流側の前記光ファイバの前記一部において前記ファイバヒューズの発生により当該光ファイバから発生する光の少なくとも一方を検出することが好ましい。
【0030】
この場合、ファイバヒューズが上流側の光ファイバ及び下流側の光ファイバの少なくとも一方で発生しても、光検出部は、ファイバヒューズの発生によって当該光ファイバの接続部近傍から発生する光を検出し得る。従って、本レーザ装置によれば、上流側の光ファイバ及び下流側の光ファイバにおけるファイバヒューズの発生をまとめて管理することができる。また、ファイバヒューズが上流側の光ファイバの接続部近傍よりも下流で発生する場合であっても、ファイバヒューズが光源に到達する前にレーザ装置の動作が停止することで、光源はファイバヒューズから保護され得る。また、ファイバヒューズが下流側の光ファイバの接続部よりも下流で発生する場合であっても、ファイバヒューズが光学部品に到達する前にレーザ装置の動作が停止することで、光学部品はファイバヒューズから保護され得る。
【0031】
また、前記光源は、複数であり、前記光学部品は、複数の前記光源から出射される光を合波するコンバイナであり、前記一部の前記光ファイバは、複数であるとともに、それぞれの前記光源から出射する光を前記コンバイナに伝搬し、前記他の一部の前記光ファイバは、前記コンバイナから出射する前記光を伝搬し、前記光検出部は、前記光学部品に前記上流側で接続され前記筐体に覆われる少なくとも1つの前記光ファイバの前記一部において前記ファイバヒューズの発生により当該光ファイバから発生する光、及び、前記光学部品に前記下流側で接続され前記筐体に覆われる少なくとも1つの前記光ファイバの前記一部において前記ファイバヒューズの発生により当該光ファイバから発生する光の少なくとも一方を検出することが好ましい。
【0032】
この場合、ファイバヒューズがコンバイナの上流側における光ファイバ及びコンバイナの下流側における光ファイバの少なくとも一方に発生する場合に、光検出部は、ファイバヒューズの発生によって当該光ファイバの接続部近傍から発生する光を検出し得る。従って、本レーザ装置によれば、コンバイナの上流側における光ファイバ及びコンバイナの下流側における光ファイバにおけるファイバヒューズの発生をまとめて管理することができる。また、ファイバヒューズがコンバイナの上流側における光ファイバの接続部近傍よりも下流で発生する場合であっても、ファイバヒューズが光源に到達する前にレーザ装置の動作が停止することで、光源はファイバヒューズから保護され得る。また、ファイバヒューズがコンバイナとコンバイナの下流側における光ファイバの接続部近傍よりも下流で発生する場合であっても、ファイバヒューズがコンバイナに到達する前にレーザ装置の動作が停止することで、コンバイナはファイバヒューズから保護され得る。
【発明の効果】
【0033】
以上のように、本発明によれば、ファイバヒューズ発生時に光ファイバから発生する光を高精度に検出することができるファイバヒューズ検出装置、及びこれを用いたレーザ装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の実施形態におけるレーザ装置を示す図である。
【
図2】
図1のレーザ装置におけるそれぞれの光源を示す図である。
【
図3】
図1のレーザ装置のファイバヒューズ検出装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明に係るレーザ装置の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。以下に例示する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良することができる。なお、理解の容易のため、それぞれの図において一部が誇張して記載される場合等がある。
【0036】
図1は、本発明にかかるレーザ装置を示す図である。
図1に示すように、本実施形態のレーザ装置1は、複数の光源2と、それぞれの光源2から出射する光を伝搬する光ファイバ21と、光ファイバ21からの光が入射するデリバリ光ファイバ10(以下、光ファイバ10と呼ぶことがある)と、光学部品であるコンバイナ25と、デリバリ光ファイバ10からの光が入射する光ファイバ50と、光ファイバ50の端部に設けられる出力端部60と、ファイバヒューズ検出装置3と、制御部100と、を主な構成として備える。
【0037】
図2は、レーザ装置1におけるそれぞれの光源2を示す図である。
図2に示すように、本実施形態では、それぞれの光源2は、励起光を出射する励起光源40と、励起光源40から出射する励起光が入射し、励起光により励起される活性元素が添加される増幅用光ファイバ30と、を主な構成として備える。またそれぞれの光源2は、増幅用光ファイバ30の一端に接続される光ファイバ31と、光ファイバ31に設けられる第1FBG(Fibber Bragg Gratings)33と、光ファイバ31に励起光を入射するためのコンバイナ35と、増幅用光ファイバ30の他端に接続される光ファイバ32と、光ファイバ32に設けられる第2FBG34と、を主な構成としてさらに備える。増幅用光ファイバ30と第1FBG33と第2FBG34とで共振器が形成され、本実施形態の光源2は共振器型のファイバレーザ装置とされる。
【0038】
励起光源40は、複数のレーザダイオード41から構成される。励起光源40は、増幅用光ファイバ30に添加される活性元素を励起する波長の励起光を出射する。励起光源40のそれぞれのレーザダイオード41は、励起光用光ファイバ45に接続される。レーザダイオード41から出射する光は、それぞれのレーザダイオード41に光学的に接続される励起光用光ファイバ45を伝搬する。励起光用光ファイバ45としては、例えば、マルチモードファイバを挙げることができ、この場合、励起光は励起光用光ファイバ45をマルチモード光として伝搬する。本実施形態では、励起光の波長は、例えば915nmとされる。
【0039】
増幅用光ファイバ30は、コアと、コアの外周面を隙間なく囲む内側クラッドと、内側クラッドの外周面を被覆する外側クラッドと、外側クラッドの外周面を被覆する被覆層とから構成されている。本実施形態では、増幅用光ファイバ30のコアは活性元素としてイッテルビウム(Yb)が添加された石英から成り、必要に応じて屈折率を上昇させるゲルマニウム等の元素が添加されている。なお、本実施形態とは異なるが、増幅する光の波長に合わせて、活性元素としてイッテルビウム以外の希土類元素が添加されても良い。このような希土類元素としては、ツリウム(Tm)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、ユーロピウム(Eu)、エルビウム(Er)等が挙げられる。さらに活性元素として、希土類元素の他に、ビスマス(Bi)等が挙げられる。また、増幅用光ファイバ30の内側クラッドを構成する材料としては、例えば、何らドーパントが添加されていない純粋石英が挙げられる。なお、内側クラッドに例えばフッ素等の屈折率を低下させる元素が添加されてもよい。また、増幅用光ファイバ30の外側クラッドを構成する材料としては、例えば、内側クラッドより屈折率の低い樹脂が挙げられ、増幅用光ファイバ30の被覆層を構成する材料としては、例えば、外側クラッドを構成する樹脂とは異なる樹脂が挙げられる。増幅用光ファイバ30は、シングルモードファイバとされるが、パワーの大きな信号光が増幅用光ファイバ30のコアを伝搬可能なように、コアの直径がマルチモードファイバと同様とされつつも、シングルモードの光を伝搬する構成とされても良い。また、増幅用光ファイバ30はマルチモードファイバとされても良い。
【0040】
光ファイバ31は、コアに活性元素が添加されていない点を除き増幅用光ファイバ30と同じ構成とされる。光ファイバ31は、増幅用光ファイバ30の一端に接続されている。従って、増幅用光ファイバ30のコアと光ファイバ31のコアとが光学的に結合し、増幅用光ファイバ30の内側クラッドと光ファイバ31の内側クラッドとが光学的に結合している。
【0041】
第1FBG33は、光ファイバ31のコアに設けられている。第1FBG33は、光ファイバ31の長手方向に沿って一定の周期で屈折率が高くなる部分が繰り返されることで構成されている。この周期が調整されることにより、第1FBG33は、励起状態とされた増幅用光ファイバ30の活性元素が放出する光のうち所定の波長帯域の光を反射する。
【0042】
また、コンバイナ35において、光ファイバ31の内側クラッドに励起光用光ファイバ45のコアが接続されている。こうして、励起光源40と接続される励起光用光ファイバ45と増幅用光ファイバ30の内側クラッドとは、光ファイバ31の内側クラッドを介して、光学的に結合される。
【0043】
また、コンバイナ35において、光ファイバ31に光ファイバ36が接続されている。光ファイバ36は、例えば、光ファイバ31のコアと同じ直径のコアを有する光ファイバとされる。光ファイバ36の一端は光ファイバ31に接続されており、光ファイバ36のコアと光ファイバ31のコアとが光学的に結合している。また、光ファイバ36のコンバイナ35側と反対側には熱変換部Eが接続されている。
【0044】
光ファイバ32は、活性元素が添加されていないことを除いて増幅用光ファイバ30のコアと同様のコアと、当該コアの外周面を隙間なく囲み増幅用光ファイバ30の内側クラッドと同様の構成のクラッドと、クラッドの外周面を被覆する被覆層とから構成されている。光ファイバ32は、増幅用光ファイバ30の他端に接続されており、増幅用光ファイバ30のコアと光ファイバ32のコアとが光学的に結合している。
【0045】
第2FBG34は、光ファイバ32のコアに設けられている。第2FBG34は、光ファイバ32の長手方向に沿って一定の周期で屈折率が高くなる部分が繰り返されることで構成されている。この構成により、第2FBG34は、第1FBG33が反射する光の少なくとも一部の波長の光を第1FBG33よりも低い反射率で反射する。
【0046】
また、光ファイバ32の増幅用光ファイバ30側と反対側には、
図1に示す光ファイバ21が接続部81を介して接続されており、光ファイバ32と光ファイバ21とで1つの光ファイバが形成されている。光ファイバ21の構成は、光ファイバ32と同様とされる。接続部81は、光ファイバ32の端部と光ファイバ21の端部とが接した状態で、光ファイバ32のコアが光ファイバ21のコアに光学的に結合され、光ファイバ32から光ファイバ21に光が伝搬するように構成されればよい。例えば、接続部81は、光ファイバ32の端部と光ファイバ21の端部とが融着された構成とされたり、光ファイバ32の端面と光ファイバ21の端面とが突き合わされた状態で接した構成とされる。
【0047】
それぞれの光ファイバ21のコアは、デリバリ光ファイバ10のコアとコンバイナ25により光学的に結合されている。デリバリ光ファイバ10は、例えばマルチモードの光が伝搬するマルチモードファイバとされる。コンバイナ25は、例えば、テーパ状に加工されたブリッジファイバとされる。この場合、それぞれの光ファイバ21のコアは、コンバイナ25であるブリッジファイバの大口径側の端面に接続され、デリバリ光ファイバ10のコアは、コンバイナ25であるブリッジファイバの小口径側の端面に接続される。こうして、コンバイナ25を介して、それぞれの光ファイバ21のコアとデリバリ光ファイバ10のコアとが光学的に結合される。別言すると、光ファイバ21は、光源2から出射される光の進行方向の上流側で光学部品であるコンバイナ25に接続される。また、デリバリ光ファイバ10は、光源2から出射される光の進行方向の下流側で光学部品であるコンバイナ25に接続される。光ファイバ32,21は、それぞれの光源2から出射する光をコンバイナ25に伝搬し、光ファイバ10,50は、コンバイナ25から出射する光を伝搬する。なお、コンバイナ25は、それぞれの光ファイバ21のコアとデリバリ光ファイバ10のコアとを光学的に結合させるものであれば、上記のブリッジファイバに限らず、例えば、それぞれの光ファイバ21のコアがデリバリ光ファイバ10のコアに直接接続されてもよい。
【0048】
デリバリ光ファイバ10のコンバイナ25側と反対側には、光ファイバ50が接続部83を介して接続されており、デリバリ光ファイバ10と光ファイバ50とで1つの光ファイバが形成されている。光ファイバ50の構成は、デリバリ光ファイバ10と同様とされる。また、接続部83の構成は、デリバリ光ファイバ10のコアと光ファイバ50のコアとを光学的に結合するものであればよく、例えば接続部81と同様の構成とされる。
【0049】
出力端部60は、光ファイバ50から伝搬された光を加工体等に出射する部材であり、例えば光ファイバ50のコアよりも直径の大きなガラスロッドとされる。なお、出力端部60は、光ファイバ50の端部とされてもよいし、光ファイバ50の端部に取り付けられたレンズなどの光学部品とされてもよい。
【0050】
図3は、本実施形態のファイバヒューズ検出装置を示す図である。ファイバヒューズ検出装置3は、光ファイバと、筐体70と、少なくとも1つの光検出部90と、を主な構成として備える。この光ファイバは、接続部81で接続される光ファイバ32と光ファイバ21とから成る光ファイバや、接続部83で接続されるデリバリ光ファイバ10と光ファイバ50とから成る光ファイバである。本実施形態では、1つの光検出部90が配置されている例を示す。
【0051】
筐体70は、レーザ装置1の全体を覆う図示しない筐体とは別体となっている。筐体70の容積は、レーザ装置1の全体を覆う筐体の容積よりも小さい。レーザ装置1の全体を覆う筐体は、当該筐体の外部から筐体の内部空間に進行する外光を遮光する遮光性を有する。筐体70は、接続部81によって接続された光ファイバ32の一部及び光ファイバ21の一部と、接続部83によって接続されたデリバリ光ファイバ10の一部及び光ファイバ50の一部と、光検出部90とを覆い、これらを筐体70の内部空間に収納する。
【0052】
筐体70は壁部71を有し、本実施形態では、壁部71は、筐体70の外部に位置する光ファイバ32,21,10,50の他の一部のいずれかから漏れ出て筐体70の内部空間に進行しようとする外光を遮光する遮光性を有する。この外光は、例えば、後述するように光源2から出射され光ファイバ32,21,10,50のコアを伝搬する光が光ファイバ32,21,10,50から漏洩する光であり、赤外域の波長の光である。本実施形態では、筐体70は、光ファイバ32,21,10,50が筐体70の壁部71を貫通する図示しない貫通口を除いて密閉され、内部空間が暗い箱体であることが好ましい。従って、筐体70の内部空間は、光ファイバを伝搬すること以外で光が遮蔽される光学的な閉空間であることが好ましい。壁部71を貫通する光ファイバ32,21,10,50は、例えば、図示しない遮光性の樹脂によって壁部71に固定されることが好ましい。壁部71の図示しない貫通口には、この樹脂が充填されることが好ましい。壁部71は、遮光性のため、例えば、アルミニウムやステンレススチール等の金属から成ることが好ましい。
【0053】
また、本実施形態では、壁部71の内壁面71Sの少なくとも一部は、光ファイバ32,21,10,50から発生する光の少なくとも一部を光検出部90に向けて反射する光反射性を有する。この光ファイバ32,21,10,50から発生する光とは、後述のように光ファイバ32,21,10,50においてファイバヒューズが発生する場合に光ファイバ32,21,10,50から発生する光である。壁部71の内壁面71Sの光ファイバ32,21,10,50から発生する光の反射率は、例えば、略90%以上であることが好ましい。このような壁部71の内壁面71Sの少なくとも一部は、アルミニウムやステンレススチール等の金属から成ることが好ましい。壁部71が上記のようにアルミニウムやステンレススチール等の金属から成れば、必然的に壁部71の内壁面71Sも金属から成るため、壁部71の内壁面71Sを容易に光反射性とし得る。
【0054】
また、筐体70は、筐体70を冷却する水冷板73に載置される。水冷板73は、例えば、アルミニウムやステンレススチール等の金属から成る。なお、当該水冷板73が筐体70の一部とされてもよい。
【0055】
なお、筐体70の内部空間において、例えば、接続部81は接続部83に対して概ね同一直線上に配置されてもよい。
【0056】
本実施形態では、1つの光検出部90が接続部81と接続部83との間に配置されており、光検出部90の数は接続部81,83の数よりも少なくなっている。
【0057】
光検出部90は、筐体70の内部空間に配置された光ファイバ32,21,10,50から発生する光を検出する。この光は、上記のようにファイバヒューズの発生によって光ファイバ32,21,10,50から発生する光である。詳細には、当該光は、光ファイバ32,21,10,50のコアを伝搬するそれぞれの光を光ファイバ32,21,10,50が吸収することによって発熱し、当該発熱によって発生する光である。以下において、光ファイバ32,21,10,50から発生する光とは、筐体70の内部空間に配置された光ファイバ32,21,10,50の少なくとも1つから発生する光をいう。一般的に、ファイバヒューズにより光ファイバ32,21,10,50から発生する光は、可視光の波長帯域を含む波長である。従って、光検出部90は、例えば可視光を検出する。可視光の波長は、例えば、400nmから700nmとされる。また、本実施形態では、光源2から出射され光ファイバ32,21,10,50のコアを伝搬する光は、例えば波長1070nmといった赤外域の波長である。光ファイバ32,21,10,50のコアを伝搬する光は、信号光と呼ばれる場合がある。上記のように光検出部90が可視光を検出するのであれば、光検出部90によって検出される光の波長は、光ファイバ32,21,10,50それぞれのコアを伝搬する光の波長よりも短い。これらの光の波長の差を用いて、光検出部90は、ファイバヒューズによって光ファイバ32,21,10,50から発生する光の検出感度が、光源2から出射されて光ファイバ32,21,10,50のコアを伝搬する光の検出感度よりも高くされることが好ましい。一般的に、ファイバヒューズにより発生する光は可視光領域の波長を含むため、例えば、400nmから700nmの波長帯域に含まれる光における光検出部90の検出感度が、1000nmから1100nmの波長帯域に含まれる波長の光における光検出部90の検出感度よりも高くされることが好ましい。更に、光検出部90は、光ファイバ32,21,10,50から発生する光を検出し、光ファイバ32,21,10,50のコアを伝搬する光と同じ波長の光の検出が抑制されることが好ましい。
【0058】
光検出部90には、例えば、フォトダイオードが用いられる。光検出部90には、可視光領域の画像を撮影するCCDカメラ、可視光領域に感度を持つビューア、温度分布を検出するサーモビューアーなどの撮像素子が用いられてもよい。光ファイバ32,21,10,50のいずれかから発生する光が赤外光であれば、光検出部90として、GaAs系の検出器が用いられてもよい。
【0059】
光検出部90は、ファイバヒューズの発生によって光ファイバ32,21,10,50から発生する光を検出すると、検出した光を基にアナログの電気信号を生成し、アナログの電気信号を図示しないA/D変換器に出力する。A/D変換器は、このアナログの電気信号をデジタルの電気信号に変換し、デジタルの電気信号を制御部100に出力する。
【0060】
なお、本実施形態では、例えば、ファイバヒューズが接続部81,83近傍に到達して、ファイバヒューズの検出によりレーザ装置1が停止した場合、光ファイバ32,10は、筐体70の外部において接続部81,83よりも光源2側で切断可能である。この光ファイバ32,10は、レーザ装置1に配置されるために必要な最低限以上の余分な長さを有している。別言すると、光ファイバ32,10は、レーザ装置1に配置に対して余分な長さ部分である余長部を備える。光源2側における切断された光ファイバ32,10の先端面は、引っ張られると、余分な長さがあるため筐体70の内部に導入可能である。
【0061】
制御部100は、デジタルの電気信号を基に、光源2の励起光源40の駆動を制御する。制御部100は、例えば、マイクロコントローラ、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large-scale Integrated Circuit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの集積回路やNC(Numerical Control)装置を用いることができる。また、制御部100は、NC装置を用いた場合、機械学習器を用いたものであってもよく、機械学習器を用いないものであってもよい。
【0062】
次にレーザ装置1の動作について説明する。
【0063】
まず、それぞれの光源2において、励起光源40のそれぞれのレーザダイオード41から励起光が出射する。励起光源40から出射した励起光は、励起光用光ファイバ45と光ファイバ31とを介して、増幅用光ファイバ30の内側クラッドに入射する。増幅用光ファイバ30の内側クラッドに入射した励起光は主にこの内側クラッドを伝搬して、増幅用光ファイバ30のコアを通過する際にコアに添加されている活性元素を励起する。励起状態とされた活性元素は自然放出光を放出し、この自然放出光のうち一部の波長の光が第1FBG33により反射され、反射された光のうち第2FBG34が反射する波長の光が第2FBG34で反射される。このため、第1FBG33と第2FBG34との間、すなわち共振器内を光が往復し、増幅用光ファイバ30のコアを伝搬するときの誘導放出により光が増幅され、レーザ発振状態が生じる。このときの光の波長は、例えば1070nmとされる。そして、増幅された光のうち一部の光は、第2FBG34を透過して光ファイバ32から出射する。この光は、光ファイバ21からコンバイナ25を介してデリバリ光ファイバ10のコアに入射する。
【0064】
本実施形態では、デリバリ光ファイバ10がマルチモードファイバであれば、デリバリ光ファイバ10のコアに入射した光は、コアをマルチモードで伝搬する。そして、コアを伝搬する光は、デリバリ光ファイバ10から光ファイバ50に伝搬して、出力端部60から出射する。この出射光は、加工体等に照射される。なお、光ファイバ32,21,10,50それぞれのコアを伝搬する光のパワーは、例えば、1kW以上とされる。
【0065】
上記のように光が光ファイバを伝搬する過程において、例えば、出力端部60の汚れ、光ファイバ32,21,10,50の製造時における光ファイバ32,21,10,50の内部への汚れの混入、または光ファイバ32,21,10,50の設計時に予期していない方法での光ファイバ32,21,10,50の使用などにより、ファイバヒューズが発生することがある。ファイバヒューズは光ファイバのコアを伝搬する光の上流側に向かって進行する。つまり、ファイバヒューズは光源2に向かって進行する。ファイバヒューズが発生すると、ファイバヒューズが筐体70の内部空間に配置された光ファイバ32,21,10,50のいずれかを進行し、ファイバヒューズが進行した光ファイバ32,21,10,50から光が発生する。光の一部は、壁部71に伝搬し、光反射性を有する壁部71の内壁面71Sによって光検出部90に向けて反射され、光検出部90に伝搬する。また、光の他の一部は、光検出部90に直接伝搬する。そして、この光は、筐体70の内部空間に配置された光検出部90によって検出される。なお、光検出部90のファイバヒューズによって光ファイバ32,21,10,50から発生する光の検出感度が、光ファイバ32,21,10,50のコアを伝搬する光と同じ波長の光の検出感度よりも高ければ、光ファイバ32,21,10,50のコアを伝搬する光が接続部81,83等で漏洩する場合であっても、この漏洩する光よりもファイバヒューズによって光ファイバ32,21,10,50で発生する光を優先的に検出するため好ましい。また、筐体70の外部に位置する光ファイバ32,21,10,50の他の一部のいずれかから漏れ出た外光は壁部71によって遮光され、光検出部90への外光の進行が抑制される。
【0066】
光検出部90は、光ファイバ32,21,10,50から発生した光を検出すると、アナログの電気信号を図示しないA/D変換器に出力する。A/D変換器は、アナログの電気信号をデジタルの電気信号に変換し、デジタルの電気信号を制御部100に出力する。制御部100は、デジタルの電気信号を基に光源2を制御して光源2の励起光源40の駆動を停止させる。
【0067】
また、ファイバヒューズが接続部81,83近傍に到達して、ファイバヒューズの検出によりレーザ装置1が停止した場合、光ファイバ32,10は切断されてもよく、この場合、ファイバヒューズが発生した光ファイバ21,50が新たな光ファイバに交換されてもよい。この後に、光源2側における切断された光ファイバ32,10の先端面は、引っ張られて筐体70の内部に導入されて、交換された新たな光ファイバに接続されてもよい。
【0068】
以上説明したように、本実施形態のファイバヒューズ検出装置3は、接続部81,83を有する少なくとも1つの光ファイバ32,21,10,50と、接続部81,83を含む光ファイバ32,21,10,50の一部を覆い、遮光性の壁部71を有する筐体70と、筐体70の内部空間に配置され、ファイバヒューズの発生によって光ファイバ32,21,10,50から発生する光を検出する少なくとも1つの光検出部90と、を備える。
【0069】
筐体70の内部空間に配置された光検出部90は、ファイバヒューズ発生時に筐体70の内部空間に配置された光ファイバ32,21,10,50のいずれかにおける接続部81,83近傍から発生する光を検出する。また、光検出部90へ進行しようとする外光は壁部71によって遮光されるため、光検出部90は、外光の検出を抑制された状態となる。従って、ファイバヒューズ検出装置3は、ファイバヒューズ発生時に光ファイバ32,21,10,50の接続部81,83近傍から発生する本来検出すべき光を高精度に検出することができる。
【0070】
また、本実施形態のレーザ装置1では、ファイバヒューズ検出装置3の光検出部90により光が検出されると、制御部100によって、光源2の励起光源40の駆動が停止される。このため、ファイバヒューズによる損傷が光ファイバ32,21,10,50における広範囲や光源2に広がる前にレーザ装置1を停止し得る。また、ファイバヒューズが光ファイバ32,21の接続部81近傍や、デリバリ光ファイバ10と光ファイバ50との接続部83近傍に到達する際にレーザ装置1の動作を停止し得、ファイバヒューズが発生した光ファイバを切り離して、新たな光ファイバに交換し得る。従って、ファイバヒューズが発生しても、光ファイバ32,21,10,50が交換可能となり、レーザ装置1のメンテナンス性を向上させることができる。
【0071】
また、本実施形態では、筐体70の内部空間は、閉空間である。このため、光検出部90への外光の進行が防止され、ファイバヒューズの発生により光ファイバから発生する光のS/N比が高まる。従って、光検出部90は、ファイバヒューズ発生時に光ファイバ32,21,10,50から発生する光をより適切に検出し得る。また、閉空間内は暗いため、光検出部90はファイバヒューズ発生時に光ファイバ32,21,10,50から発生する光を容易に検出し得る。従って、本実施形態のレーザ装置1によれば、ファイバヒューズ発生時に光ファイバ32,21,10,50から発生する光をより高精度に検出することができる。また、筐体70は、レーザ装置1の全体を覆う図示しない筐体とは別体であるため、外光に対する遮光率が向上し、S/N比が高まる。従って、ファイバヒューズ発生時に光ファイバ32,21,10,50から発生する光をより高精度に検出することができる。なお光が高精度に検出されるのであれば、筐体70が省略され、レーザ装置1の全体を覆う図示しない筐体が筐体70として機能してもよい。
【0072】
本実施形態では、壁部71の内壁面71Sの少なくとも一部は、ファイバヒューズの発生によって光ファイバ32,21,10,50から発生する光の少なくとも一部を光検出部90に向けて反射する光反射性を有する。
【0073】
ファイバヒューズの発生によって光ファイバ32,21,10,50から発生する光の一部は、光反射性の内壁面71Sに伝搬し、内壁面71Sによって光検出部90に向けて反射され、光検出部90に伝搬し得る。また光の残りの一部は、光ファイバ32,21,10,50から光検出部90に直接伝搬し得る。このため、より多くの光が光検出部90によって検出され得る。従って、本実施形態のファイバヒューズ検出装置3によれば、ファイバヒューズ発生時に光ファイバ32,21,10,50から発生する光をより高精度に検出することができる。
【0074】
また、本実施形態では、壁部71が金属から成れば、光ファイバ32,21,10,50から発生する光によって熱が発生する場合において、この熱の少なくとも一部が壁部71で拡散し易く、壁部の一部が高温になることを抑制し得る。また、この熱の少なくも一部が金属から成る壁部71を介して外部に放出され易くなり得る。従って、筐体70の内部空間内における熱の籠りが抑制されて、熱による光ファイバ32,21,10,50の劣化を抑制することができる。また、壁部71が金属から成ることで、容易に壁部71の内壁面71Sを上記の光反射性にし得る。
【0075】
また、本実施形態では、本実施形態のファイバヒューズ検出装置3は、複数の光ファイバ32,21,10,50を有し、複数の光ファイバ32,21,10,50のそれぞれの一部は、筐体70の内部空間に配置される。光ファイバ32,21,10,50のいずれかにファイバヒューズが発生しても、光検出部90はファイバヒューズの発生によって光ファイバ32,21,10,50のいずれかにおける接続部81,83近傍から発生する光を検出し得る。従って、本実施形態のレーザ装置1によれば、複数の光ファイバそれぞれにおいて発生するファイバヒューズをまとめて管理することができる。また、光検出部90は、接続部81,83のそれぞれに対して設けられる必要がない。このため、光検出部90及び光検出部90が配置される周辺回路が削減され、ファイバヒューズ検出装置3のコストダウンが可能となる。
【0076】
また、本実施形態では、光検出部90の数は、接続部81,83の数よりも少ない。このような構成であっても、複数の光ファイバ32,21,10,50のいずれかでファイバヒューズが発生しても、光検出部90はファイバヒューズの発生によって接続部81,83近傍から発生する光を検出し得る。従って、本実施形態のファイバヒューズ検出装置3によれば、少ない光検出部90により、複数の光ファイバ32,21,10,50のいずれかにおけるファイバヒューズの発生を検出し得、光ファイバ32,21,10,50の数と光検出部90の数とが同じ場合と比べて簡易な構成とし得る。
【0077】
また、レーザ装置1は、上記に記載のファイバヒューズ検出装置3と、光ファイバ32,21,10,50のコアに光を出射する少なくとも1つ光源2と、を備える。
【0078】
このレーザ装置1では、光検出部90が、ファイバヒューズの発生時に筐体70の内部空間に配置された光ファイバ32,21,10,50における接続部81,83近傍から発生する光を検出し得、何らかの対策を講じることができる。
【0079】
レーザ装置1は、制御部100を更に備え、制御部100は、光検出部90がファイバヒューズの発生により光ファイバ32,21,10,50から発生する光を検出する場合に光源2を停止させる。
【0080】
この場合、ファイバヒューズが光ファイバ32,21,10,50の接続部81,83近傍に到達する際にレーザ装置1の動作が停止され得、ファイバヒューズが発生した光ファイバ32,21,10,50を切り離して、新たな光ファイバに交換し得る。
【0081】
また、本実施形態では、光ファイバ32,21,10,50のコアを伝搬する光のパワーは、1kW以上である。光のパワーが1kW以上であると、ファイバヒューズ発生時に当該ファイバヒューズが光ファイバ32,21,10,50の内部を素早く進行する傾向があり、ファイバヒューズによる損傷が光ファイバ32,21,10,50における広範囲及び光源2に広がることにつながる。このため、ファイバヒューズの発生時にはレーザ装置1の光源2の励起光源40の駆動を素早く停止させる必要があり、それゆえファイバヒューズに対する検出精度が重要となる。本実施形態のレーザ装置1によれば、光のパワーが1kW以上であっても、ファイバヒューズ発生時に光ファイバ32,21,10,50から発生する光をより高精度に検出することができる。
【0082】
また、本実施形態では、光源2から出射される光の波長は赤外光の波長帯域であり、当該光の波長帯域における光検出部90の検出感度よりも、ファイバヒューズによって光ファイバ32,21,10,50から発生する光の波長帯域における光検出部90の検出感度は高い。光ファイバ32,21,10,50のコアを伝搬する光が接続部81,83等で漏洩する場合であっても、光検出部90は、ファイバヒューズにより発生する光を優先的に検出できるため、誤検出を抑制することができる。一般的に、ファイバヒューズの発生によって光ファイバ32,21,10,50から発生する光は、可視光を含む。従って、光ファイバ32,21,10,50のコアを伝搬する光である信号光が赤外光である場合、光検出部90が可視光を検出し、赤外光の検出が抑制されることで、ファイバヒューズ発生時に光ファイバ32,21,10,50から発生するファイバヒューズに起因する光をより適切に検出することができる。
【0083】
また、本実施形態では、光ファイバ32,10は、筐体70の外部において接続部81,83よりも光源2側で切断可能で、光源2側における切断された光ファイバ32,10の先端面は、筐体70の内部に導入可能である。
【0084】
ファイバヒューズが検出された場合、光ファイバ32,10は切断され、ファイバヒューズが発生した光ファイバ21,50が新たな光ファイバに交換された後に、光源2側における切断された光ファイバ32,10の先端面は、筐体70の内部に導入されて、交換された新たな光ファイバに接続し得る。接続部81,83よりも光源2側における光ファイバ32,10にはファイバヒューズが進行しておらず、当該光ファイバ32,10はファイバヒューズから保護される。このため、当該光ファイバ32,10は再利用され得、ファイバヒューズが発生した光ファイバ10,50のみの交換で済み、ファイバヒューズが発生して全ての光ファイバ32,21,10,50が交換される場合に比べてメンテナンス性の低下を抑制し得る。また、光ファイバ32,10の先端面は、ファイバヒューズが発生した光ファイバ21,50と接続されていた接続部81,83の位置にて新たな光ファイバと接続し得る。
【0085】
また、レーザ装置1は、光学部品を備え、光ファイバ21,10は、複数である。一部の光ファイバ21は、光源2から出射される光の進行方向の上流側で光学部品に接続される。他の一部の光ファイバ10は、光源2から出射される光の進行方向の下流側で光学部品に接続され、筐体70は、上流側の光ファイバ21の一部と、下流の光ファイバ10の一部とを覆う。そして、光検出部90は、筐体70に覆われる上流側の光ファイバ21の一部においてファイバヒューズの発生により当該光ファイバから発生する光、及び、筐体70に覆われる下流側の光ファイバ10の一部においてファイバヒューズの発生により当該光ファイバから発生する光を検出する。
【0086】
この場合、ファイバヒューズが上流側の光ファイバ21及び下流側の光ファイバ10の少なくとも一方で発生する場合であっても、光検出部90は、ファイバヒューズの発生によって当該光ファイバの接続部近傍から発生する光を検出し得る。従って、本レーザ装置1によれば、上流側の光ファイバ21及び下流側の光ファイバ10におけるファイバヒューズの発生をまとめて管理することができる。また、ファイバヒューズが上流側の光ファイバ32,21の接続部81近傍よりも下流で発生する場合、ファイバヒューズが光源2に到達する前にレーザ装置1の動作が停止することで、光源2はファイバヒューズから保護され得る。また、ファイバヒューズが下流側の光ファイバ10,50の接続部83よりも下流側でレーザ装置1の動作が停止することで、光学部品はファイバヒューズから保護され得る。なお、筐体は、光ファイバ21に対して少なくとも1つの光ファイバ21の一部を覆えばよい。また、筐体は、下流側の光ファイバが複数であれば、少なくとも1つの当該光ファイバの一部を覆えばよい。光検出部90は、光ファイバ21の一部においてファイバヒューズの発生により当該光ファイバから発生する光、及び、筐体70に覆われる下流側の光ファイバ10の一部においてファイバヒューズの発生により当該光ファイバから発生する光の少なくとも一方を検出すればよい。
【0087】
また、本実施形態では、光源2が複数であり、光学部品は、複数の光源2から出射される光を合波するコンバイナ25であり、一部の光ファイバ32,21は、複数であるとともに、それぞれの光源2から出射する光をコンバイナ25に伝搬し、他の一部の光ファイバ10,50は、コンバイナ25から出射する光を伝搬する。光検出部90は、光学部品に上流側で接続され筐体70に覆われる光ファイバ32,21の一部においてファイバヒューズの発生により当該光ファイバから発生する光、及び、光学部品に下流側で接続され筐体70に覆われる光ファイバ10,50の一部においてファイバヒューズの発生により当該光ファイバから発生する光を検出する。なお、光検出部90は、少なくとも1つの光ファイバ32,21の一部においてファイバヒューズの発生により当該光ファイバから発生する光、及び、少なくとも1つの光ファイバ10,50の一部においてファイバヒューズの発生により当該光ファイバから発生する光の少なくとも一方を検出すればよい。
【0088】
この場合、ファイバヒューズがコンバイナ25の上流側における光ファイバ32,21及びコンバイナ25の下流側における光ファイバ10,50の少なくとも一方に発生する場合に、光検出部90は、ファイバヒューズの発生によって当該光ファイバの接続部近傍から発生する光を検出し得る。従って、本レーザ装置1によれば、コンバイナ25の上流側における光ファイバ32,21及びコンバイナ25の下流側における光ファイバ10,50におけるファイバヒューズの発生をまとめて管理することができる。また、ファイバヒューズがコンバイナ25の上流側における光ファイバ32,21の接続部81近傍よりも下流で発生する場合であっても、ファイバヒューズが光源2に到達する前にレーザ装置1の動作が停止することで、光源2はファイバヒューズから保護され得る。また、ファイバヒューズがコンバイナ25の下流側における光ファイバ10,50の接続部83近傍よりも下流する場合であっても、ファイバヒューズがコンバイナ25に到達する前にレーザ装置1の動作が停止することで、コンバイナ25はファイバヒューズから保護され得る。
【0089】
以上、本発明について、上記実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、適宜変更することが可能である。
【0090】
例えば筐体70は、光ファイバ32,21,10,50の長手軸の軸周りに光ファイバ32,21,10,50を巻回する周壁と光ファイバ32,21,10,50が挿通する挿通口とを有する筒体であってもよい。この場合、筐体70内の内部空間は閉空間ではない。挿通口は、例えば、光ファイバ32,21,10,50の長手軸に対して直交して形成される。また、筐体70は、Cリング形状の横断面を有する筒体であってもよい。
【0091】
また、複数の筐体70が配置されていてもよく、一方の筐体70は接続部81によって接続された光ファイバ32の一部及び光ファイバ21の一部を覆い、他方の筐体70は接続部83によって接続されたデリバリ光ファイバ10の一部及び光ファイバ50の一部を覆ってもよい。また、複数の光ファイバ32の一部及び光ファイバ21の一部をそれぞれ個別に覆う、複数の筐体70が配置されてもよい。これらの場合、光検出部90は、筐体70それぞれの内部空間に配置されていればよい。
【0092】
また、筐体70は、接続部83及びデリバリ光ファイバ10の一部と光ファイバ50の一部とを覆い、他の接続部や他の光ファイバを覆わなくてもよい。この場合であっても、例えば、デリバリ光ファイバ10や光ファイバ50を進行するファイバヒューズを検出することができる。或いは、筐体70は、接続部81及び光ファイバ21の一部と光ファイバ32の一部とを覆い、他の接続部や他の光ファイバを覆わなくてもよい。この場合であっても、例えば、光ファイバ21や光ファイバ32を進行するファイバヒューズを検出することができる。
【0093】
光検出部90の数は、接続部81の数と同じであってもよいし、接続部83の数と同じであってもよい。光検出部90の数は、接続部81の数よりも多くてもよいし、接続部83の数よりも多くてもよい。また、光検出部90は、隣り合う接続部81の間と接続部81,83の間との少なくとも1つに配置されてもよい。光検出部90が隣り合う接続部81の間に配置される場合、光検出部90は、隣り合う接続部81の間の少なくとも1つに配置されればよい。
【0094】
また、光学部品としてコンバイナ25を挙げているが、これに限定される必要はない。光学部品は、例えば、光検出部90は、または光ファイバ32,21,10,50に設けられるクラッドモードストリッパ等であってもよい。
【0095】
また、上記実施形態では、光源2がファイバレーザ装置から成る場合について説明をしたが、光源2が固体レーザ装置やガスレーザ装置であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明によれば、ファイバヒューズ発生時に光ファイバから発生する光を高精度に検出することができるファイバヒューズ検出装置、及びこれを用いたレーザ装置が提供され、レーザ加工分野、医療分野等の様々な産業において利用可能である。
【符号の説明】
【0097】
1・・・レーザ装置
2・・・光源
3・・・ファイバヒューズ検出装置
10・・・デリバリ光ファイバ
21,32,50・・・光ファイバ
81,83・・・接続部
70・・・筐体
71・・・壁部
90・・・光検出部