(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-30
(45)【発行日】2023-06-07
(54)【発明の名称】ゴムウエットマスターバッチの製造方法、およびゴム組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/215 20060101AFI20230531BHJP
C08J 3/22 20060101ALI20230531BHJP
【FI】
C08J3/215 CEQ
C08J3/22
(21)【出願番号】P 2019234673
(22)【出願日】2019-12-25
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近野 優也
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公告第1421012(GB,A)
【文献】特表2014-500378(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00-3/28
C08K
C08L
C08C 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムウエットマスターバッチの製造方法であって、
カーボンブラックが水に分散したカーボンブラック含有スラリー水溶液に、ゴムラテックス溶液を、前記スラリー水溶液が攪拌されていない状態で投入して、未混合水溶液を準備する工程(I)と、
得られた前記未混合水溶液に凝固剤を添加しながら混合して、カーボンブラック含有ゴム凝固物を製造する工程(II)と、
得られたカーボンブラック含有ゴム凝固物を脱水・乾燥してゴムウエットマスターバッチを製造する工程(III)を含み、
前記工程(II)において、前記凝固剤の添加速度が、前記未混合水溶液中に含まれるゴム成分100gに対して、1.5×10
-2(mmol/min)以下であることを特徴とするゴムウエットマスターバッチの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のゴムウエットマスターバッチの製造方法で得られたゴムウエットマスターバッチを用いて、乾式混合する工程(IV)を含むことを特徴とするゴム組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムウエットマスターバッチの製造方法、およびゴム組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ゴム業界においては、カーボンブラックを含有するゴム組成物を製造する際の加工性やカーボンブラックの分散性を向上させるために、ゴムウエットマスターバッチを用いることが知られている。これは、カーボンブラックと分散溶媒とを予め一定の割合で混合し、機械的な力でカーボンブラックを分散溶媒中に分散させたカーボンブラック含有スラリー溶液と、ゴムラテックス溶液を液相で混合し、その後、酸などの凝固剤を加えて凝固させたもの(カーボンブラック含有ゴム凝固物)を回収して乾燥するものである(例えば、特許文献1~3)。
【0003】
ゴムウエットマスターバッチを用いる場合、カーボンブラックとゴムとを固相で混合して得られるゴムドライマスターバッチを用いる場合に比べて、カーボンブラックの分散性に優れ、加工性や補強性などのゴム物性に優れるゴム組成物が得られる。このようなゴム組成物を原料とすることで、例えば、転がり抵抗が低減され、耐疲労性に優れた空気入りタイヤなどのゴム製品(加硫ゴム)を製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-14086号公報
【文献】特開2018-95748号公報
【文献】特開2016-160315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、市場では、ゴム組成物を原料としたタイヤ(加硫ゴム)において、優れた抗張積(引張強度と破断伸びの積)を有するものが求められている。
【0006】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、優れた抗張積を有する加硫ゴムが得られるゴムウエットマスターバッチの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ゴムウエットマスターバッチの製造方法であって、カーボンブラックが水に分散したカーボンブラック含有スラリー水溶液に、ゴムラテックス溶液を、前記スラリー水溶液が攪拌されていない状態で投入して、未混合水溶液を準備する工程(I)と、得られた前記未混合水溶液に凝固剤を添加しながら混合して、カーボンブラック含有ゴム凝固物を製造する工程(II)と、得られたカーボンブラック含有ゴム凝固物を脱水・乾燥してゴムウエットマスターバッチを製造する工程(III)を含み、前記工程(II)において、前記凝固剤の添加速度が、前記未混合水溶液中に含まれるゴム成分100gに対して、1.5×10-2(mmol/min)以下であるゴムウエットマスターバッチの製造方法に関する。
【0008】
また、本発明は、前記ゴムウエットマスターバッチの製造方法で得られたゴムウエットマスターバッチを用いて、乾式混合する工程(IV)を含むゴム組成物の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明にかかるゴムウエットマスターバッチの製造方法における効果の作用メカニズムの詳細は不明な部分があるが、以下のように推定される。但し、本発明は、この作用メカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
【0010】
本発明のゴムウエットマスターバッチの製造方法は、カーボンブラックが水に分散したカーボンブラック含有スラリー水溶液に、ゴムラテックス溶液を、前記スラリー水溶液が攪拌されていない状態で投入して、未混合水溶液を準備する工程(I)と、得られた前記未混合水溶液に凝固剤を添加しながら混合して、カーボンブラック含有ゴム凝固物を製造する工程(II)と、得られたカーボンブラック含有ゴム凝固物を脱水・乾燥してゴムウエットマスターバッチを製造する工程(III)を含み、前記工程(II)において、前記凝固剤の添加速度が、前記未混合水溶液中に含まれるゴム成分100gに対して、1.5×10-2(mmol/min)以下である。上記の特許文献のように、通常、カーボンブラック含有スラリー水溶液とゴムラテックス溶液の混合方法は、いずれか一方の溶液を攪拌しながら、もう一方の溶液を投入(滴下)した後、凝固剤を添加する方法(従前の手法ともいう)が知られている。このような従前の手法では、滴下および混合中に生じるカーボンブラック粒子が付着したゴムラテックス粒子の大きさが不均一になることや、凝固剤の添加速度を調整していないことによる急な凝固などによって、凝固物(凝固クラム)の大きさを制御できない。一方、本発明のゴムウエットマスターバッチの製造方法では、上記のような工程を採用することにより、凝固物(凝固クラム)の生成を少しずつ進行させることができることから、凝固物(凝固クラム)の大きさを一定のサイズに制御できるため、当該ゴム凝固物を脱水・乾燥して得られるゴムウエットマスターバッチを用いた加硫ゴムは、優れた抗張積を有するものと推定される。
【0011】
また、本発明のゴムウエットマスターバッチの製造方法は、上記のような工程を採用することにより、凝固物(凝固クラム)の大きさを、振動スクリーンなどを使用した固液分離工程における、メッシュを備えたフィルターを通過しない程度に制御できるため、結果として、ゴムウエットマスターバッチの収率を高めることができ、さらに、当該フィルターを通過する廃液を処理するための負担を減らすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<ゴムウエットマスターバッチの製造方法>
本発明のゴムウエットマスターバッチの製造方法は、カーボンブラックが水に分散したカーボンブラック含有スラリー水溶液に、ゴムラテックス溶液を、前記スラリー水溶液が攪拌されていない状態で投入して、未混合水溶液を準備する工程(I)と、得られた前記未混合水溶液に凝固剤を添加しながら混合して、カーボンブラック含有ゴム凝固物を製造する工程(II)と、得られたカーボンブラック含有ゴム凝固物を脱水・乾燥してゴムウエットマスターバッチを製造する工程(III)を含む。
【0013】
<工程(I)>
本発明の工程(I)は、カーボンブラックが水に分散したカーボンブラック含有スラリー水溶液に、ゴムラテックス溶液を、前記スラリー水溶液が攪拌されていない状態で投入して、未混合水溶液を準備する。ここで、「攪拌されていない状態」とは、後述する分散機や混合機などによって溶液を人為的に攪拌しないことを意味する。また、前記未混合溶液は、前記スラリー水溶液を、前記ゴムラテックス溶液が攪拌されていない状態で投入して、準備してもよい。
【0014】
<カーボンブラック含有スラリー水溶液>
前記カーボンブラック含有スラリー水溶液は、通常、原料として、カーボンブラックおよび水を混合することによって得られる。
【0015】
前記カーボンブラックとしては、例えば、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPFなど、通常のゴム工業で使用されるカーボンブラックの他、アセチレンブラックやケッチェンブラックなどの導電性カーボンブラックを使用することができる。カーボンブラックは、通常のゴム工業において、そのハンドリング性を考慮して造粒された、造粒カーボンブラックであってもよく、未造粒カーボンブラックであってもよい。カーボンブラックは、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0016】
前記カーボンブラックは、窒素吸着比表面積が、30m2/g以上250m2/g以下程度であることが好ましく、50m2/g以上200m2/g以下程度であることがより好ましい。
【0017】
前記水は、イオン交換水、蒸留水、工業用水などの水を主成分とする媒体であるが、例えば、有機溶媒を含有する水であってもよい。
【0018】
前記カーボンブラックおよび前記水を混合する方法としては、例えば、高せん断ミキサー、ハイシアーミキサー、ホモミキサー、ボールミル、ビーズミル、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミルなどの一般的な分散機を使用してカーボンブラックを分散させる方法が挙げられる。必要に応じて、混合の際に分散機などの混合系全体を加温してもよい。
【0019】
前記「高せん断ミキサー」とは、ローターとステーターとを備えるミキサーであって、高速回転が可能なローターと、固定されたステーターと、の間に精密なクリアランスを設けた状態でローターが回転することにより、高せん断作用が働くミキサーを意味する。このような高せん断ミキサーは、市販品を使用することができ、例えば、SILVERSON社製「ハイシアーミキサー」、IKA社製「ハイシアーミキサーIKA2000シリーズ」、特殊機化工業(株)製「T.K.ホモミキサー」、みずほ工業(株)製「ウルトラホモミキサー」、エム・テクニック社製「クレアミックス」、太平洋機工(株)製「キャビトロン」などが挙げられる。
【0020】
前記カーボンブラック含有スラリー水溶液中、前記カーボンブラックの割合が、1~20質量%であることが好ましい。前記カーボンブラック含有スラリー水溶液中、前記カーボンブラックの割合は、脱水・乾燥工程における水を除去する作業効率を高める観点から、2質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましい。また、前記カーボンブラック含有スラリー水溶液中、前記カーボンブラックの割合は、カーボンブラック含有スラリー水溶液の粘度を低下させて攪拌効率を高める観点から、15質量%以下であることがより好ましく、12質量%以下であることがさらに好ましい。
【0021】
<ゴムラテックス溶液>
前記ゴムラテックス溶液としては、天然ゴムラテックス溶液および合成ゴムラテックス溶液を使用することができる。
【0022】
前記天然ゴムラテックス溶液は、植物の代謝作用による天然の生産物であり、特に分散溶媒が水である、天然ゴム/水系のものが好ましい。前記天然ゴムラテックス中に含まれる天然ゴムの数平均分子量は、200万以上であることが好ましく、250万以上であることがより好ましい。前記天然ゴムラテックス溶液としては、濃縮ラテックス、フィールドラテックスといわれる新鮮ラテックスなど区別なく使用できる。前記合成ゴムラテックス溶液としては、例えば、スチレン-ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴムを乳化重合により製造したものが挙げられる。前記ゴムラテックス溶液は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0023】
前記ゴムラテックス溶液中、ゴム成分(固形分)の割合が、15~35質量%であることが好ましい。前記ゴムラテックス溶液中、ゴム成分(固形分)の割合は、カーボンブラックとラテックスのゴム分との反応性の観点から、18質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましい。また、前記ゴムラテックス溶液中、ゴム成分(固形分)の割合は、高粘度による攪拌効率の低下を防止する観点から、33質量%以下であることがより好ましく30質量%以下であることがさらに好ましい。
【0024】
前記カーボンブラックは、ゴムラテックス中のゴム成分100質量部に対して、10~120質量部であることが好ましい。前記カーボンブラックは、加硫ゴムの補強性を向上させる観点から、ゴムラテックス中のゴム成分100質量部に対して、20質量部以上であることが好ましく、30質量部以上であることがより好ましく、そして、100質量部以下であることが好ましく、80質量部以下であることがより好ましい。
【0025】
<工程(II)>
本発明の工程(II)は、上記で得られた未混合水溶液に凝固剤を添加しながら混合して、カーボンブラック含有ゴム凝固物を製造する。前記凝固剤としては、ゴムラテックス溶液の凝固用として通常使用される、ギ酸、硫酸などの酸;塩化ナトリウムなどの塩などを使用することができる。
【0026】
前記工程(II)において、前記凝固剤の添加速度が、前記未混合水溶液中に含まれるゴム成分100gに対して、1.5×10-2(mmol/min)以下である。前記凝固剤の添加速度は、架橋ゴムの抗張積を向上させる観点から、前記未混合水溶液中に含まれるゴム成分100gに対して、1.2×10-2(mmol/min)以下であることが好ましく、1.0×10-2(mmol/min)以下であることがより好ましく、そして、架橋ゴムの抗張積を向上させ、また、生産性を高める観点から、前記未混合水溶液中に含まれるゴム成分100gに対して、1.0×10-5(mmol/min)以上であることが好ましく、1.0×10-4(mmol/min)以上であることがより好ましく、1.0×10-3(mmol/min)以上であることがさらに好ましい。
【0027】
前記工程(II)において、混合する方法は特に限定されるものではなく、例えば、高せん断ミキサー、ハイシアーミキサー、ホモミキサー、ボールミル、ビーズミル、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミルなどの一般的な分散機や円筒状容器内でブレードが回転する混合機を使用して混合する方法が挙げられる。必要に応じて、混合の際に分散機などの混合系全体を加温してもよい。
【0028】
前記分散機や前記混合機における混合は、前記未混合水溶液と前記凝固剤が混合できればよく、例えば、攪拌羽根の周速は、架橋ゴムの抗張積を向上させる観点から、20m/s以下であることが好ましく、10m/s以下であることがより好ましい。
【0029】
<工程(III)>
本発明の工程(III)は、上記で得られたカーボンブラック含有ゴム凝固物を脱水・乾燥して、ゴムウエットマスターバッチを製造する。前記脱水・乾燥の方法としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機、オーブン、コンベアー式乾燥機、真空乾燥機、エアードライヤーなどの各種脱水・乾燥装置を使用することができる。なお、工程(III)の前に、必要に応じて、カーボンブラック含有ゴム凝固物が含む水分量を適度に低減するなどの目的として、例えば、遠心分離工程や振動スクリーンを使用した固液分離工程を設けてもよく、あるいは、洗浄を目的として、水洗法などの洗浄工程などを設けてもよい。
【0030】
上記の振動スクリーンを使用した固液分離工程は、粒状に形成されたカーボンブラック含有ゴム凝固物を公知のフィルターを使用して、ろ過することにより分離する工程である。ろ過はバッチ法で行なってもよく、連続法で行なってもよい。連続法としては、例えば、メッシュを備えたフィルターを傾斜して配設し、フィルターを振動させつつ傾斜上部側に凝固工程で得られた水成分を含む凝固物の混合物を供給し、フィルターの傾斜下部側において水が分離された凝固物を取り出す方法が挙げられる。
【0031】
<工程(IV)>
本発明のゴム組成物の製造方法は、上記で得られたゴムウエットマスターバッチを用いて、乾式混合する工程(IV)を含む。
【0032】
前記工程(IV)では、さらに、各種配合剤を用いることができる。使用可能な配合剤としては、例えば、ゴム、硫黄系加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、シリカ、シランカップリング剤、酸化亜鉛、メチレン受容体およびメチレン供与体、ステアリン酸、加硫促進助剤、加硫遅延剤、有機過酸化物、ワックスやオイルなどの軟化剤、加工助剤などの通常ゴム工業で使用される配合剤が挙げられる。なお、各種配合剤は、必要に応じ、上記のゴムウエットマスターバッチを製造する際に使用することもできる。
【0033】
前記ゴムは、前記ゴムウエットマスターバッチ由来のゴム成分とは別に使用されるものである。前記ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)や、イソプレンゴム(IR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)などの合成ジエン系ゴムが挙げられる。ゴムは、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0034】
前記カーボンブラックは、ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して、10~120質量部であることが好ましい。前記カーボンブラックは、加硫ゴムの補強性を向上させる観点から、ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して、20質量部以上であることが好ましく、30質量部以上であることがより好ましく、そして、100質量部以下であることが好ましく、80質量部以下であることがより好ましい。
【0035】
前記硫黄系加硫剤としての硫黄は、通常のゴム用硫黄であればよく、例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などを用いることができる。硫黄系加硫剤は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0036】
前記硫黄の含有量は、ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して0.3~6.5質量部であることが好ましい。硫黄の含有量が0.3質量部未満であると、加硫ゴムの架橋密度が不足してゴム強度などが低下し、6.5質量部を超えると、特に耐熱性および耐久性の両方が悪化する。加硫ゴムのゴム強度を良好に確保し、耐熱性と耐久性をより向上するためには、硫黄の含有量がゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して1.0~5.5質量部であることがより好ましい。
【0037】
前記加硫促進剤としては、通常のゴム用加硫促進剤であればよく、スルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤などが挙げられる。加硫促進剤は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0038】
前記加硫促進剤の含有量は、ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して1~5質量部であることが好ましい。
【0039】
前記老化防止剤としては、通常のゴム用老化防止剤であればよく、芳香族アミン系老化防止剤、アミン-ケトン系老化防止剤、モノフェノール系老化防止剤、ビスフェノール系老化防止剤、ポリフェノール系老化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系老化防止剤、チオウレア系老化防止剤などが挙げられる。老化防止剤は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0040】
前記老化防止剤の含有量は、ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して1~5質量部であることが好ましい。
【0041】
前記工程(IV)において、前記ゴムウエットマスターバッチ、および前記各種配合剤の配合(添加)の方法は、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなどの通常のゴム工業において使用される混練機を用いて混練する方法が挙げられる。
【0042】
前記混練する方法は特に限定されないが、例えば、硫黄系加硫剤および加硫促進剤などの加硫系成分以外の成分を、任意の順序で添加し混練する方法、同時に添加して混練する方法、また、全成分を同時に添加して混練する方法などが挙げられる。また、混練する回数は、1回または複数回であってもよい。混練する時間は、使用する混練機の大きさなどによって異なるが、通常、2~5分程度とすればよい。また、混練機の排出温度は、120~170℃とすることが好ましく、120~150℃とすることがより好ましい。なお、混練機の排出温度は、前記加硫系成分を含む場合、80~110℃とすることが好ましく、80~100℃とすることがより好ましい。
【0043】
本発明のゴムウエットマスターバッチの製造方法、あるいはゴム組成物の製造方法によれば、優れた抗張積を有する加硫ゴムが得られる。また、本発明のゴムウエットマスターバッチおよびゴム組成物は、空気入りタイヤに適している。
【実施例】
【0044】
以下に実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例によりなんら限定されるものではない。
【0045】
(使用原料)
a)天然ゴムラテックス溶液:「NRフィールドラテックス」(Golden Hope社製)(DRC=31.2%)
b)カーボンブラック:「シーストKH」(東洋カーボン社製)
c)酸化亜鉛:「酸化亜鉛1号」(三井金属鉱業社製)
d)ステアリン酸:「ルナックS20」(花王社製)
e)老化防止剤:「ノクラック6C」(大内新興化学工業社製)
f)ワックス:「OZOACE0355」(日本精蝋社製)
g)硫黄:「5%油入微粉末硫黄」(鶴見化学工業社製)
h)加硫促進剤:「ノクセラーNS-P」(大内新興化学社製)
【0046】
<実施例1>
<工程(I):未混合水溶液の準備>
天然ゴムラテックス溶液「NRフィールドラテックス」に水を常温下で加え、濃度が25質量%のゴムラテックス溶液を調製した。一方、水にカーボンブラックを添加し、これにSILVERSON社製「ハイシアーミキサー」(条件:9000rpm、30分)を使用してカーボンブラックを分散させることにより、カーボンブラック濃度が6質量%のカーボンブラック含有スラリー水溶液を調製した。次いで、当該カーボンブラック含有スラリー水溶液に、上記のゴムラテックス溶液(25質量%)を、常温下で、当該スラリー水溶液が攪拌されていない状態で、カーボンブラック50質量部に対して、固形分(ゴム成分)が100質量部となるように投入し、未混合水溶液を準備した。
【0047】
<工程(II):カーボンブラック含有ゴム凝固物の製造>
次いで、上記の工程(I)で準備した未混合水溶液(90℃)に、凝固剤として、ギ酸(10%溶液)を、前記未混合水溶液中に含まれるゴム成分100gに対して、9.1×10-4(mmol/min)の添加速度で溶液全体がpH4となるまで添加しながら、攪拌羽根の周速が10m/sの条件にて攪拌し、カーボンブラック含有ゴム凝固物と凝固液を含む混合物を製造した。なお、前記凝固剤の添加速度は、ギ酸(100%)として算出される値である。得られたカーボンブラック含有ゴム凝固物の大きさについて、以下の式にて算出したところ、2mmであった。
式:カーボンブラック含有ゴム凝固物の大きさ(mm)=(R1×V1+R2×V2+・・・+Rk×Vk)[Rkは各カーボンブラック含有ゴム凝固物の円相当径(mm);Vkは各サイズのカーボンブラック含有ゴム凝固物の体積割合(%);を示す。]
例えば、円相当径が5mmで割合が20vol%、円相当径が15mmで割合が30vol%、円相当径が25mmで割合が40vol%、円相当径が35mmで割合が10vol%であるカーボンブラック含有ゴム凝固物が採取された場合、19(mm){=(5×20+15×30+25×40+35×10)/100)}となる。
【0048】
<工程(III):ゴムウエットマスターバッチの製造>
上記の工程(II)で製造したカーボンブラック含有ゴム凝固物と凝固液を含む混合物を、混合機から40meshのフィルターに排出することで固液分離処理をした後、スクイザー式1軸押出脱水機(スエヒロEPM社製、スクリュープレスV-02型)で脱水および乾燥することにより、ゴムウエットマスターバッチを製造した。また、ゴムウエットマスターバッチの収率(%)について、以下の式にて算出したところ、97%であった。式:ゴムウエットマスターバッチの収率(%)=ゴムウエットマスターバッチの回収質量/固体の仕込み質量。
【0049】
<工程(IV):ゴム組成物および未加硫ゴム組成物の製造>
上記で得られたゴムウエットマスターバッチと、表1に記載の各原料(硫黄と加硫促進剤を除く成分)を、バンバリーミキサーを用いて乾式混合(混練時間:3分、排出温度:150℃)することにより、ゴム組成物を製造した。次いで、得られたゴム組成物に、表1に記載の硫黄、および加硫促進剤を加え、バンバリーミキサーを用いて乾式混合(混練時間:1分、排出温度:90℃)することにより、未加硫ゴム組成物を製造した。なお、表1中の配合比率は、ゴム組成物に含まれるゴム成分の全量を100質量部としたときの質量部(phr)で示す。
【0050】
<実施例2~8、比較例3~4>
実施例1の<工程(II):カーボンブラック含有ゴム凝固物の製造>において、凝固剤の添加速度(mmol/min)および攪拌羽根の周速(m/s)を表1に示す値に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により、実施例2~8のゴムウエットマスターバッチ、ゴム組成物および未加硫ゴム組成物を製造した。各実施例におけるカーボンブラック含有ゴム凝固物の大きさ(mm)およびゴムウエットマスターバッチの収率(%)についての結果は表1に示す。
【0051】
<比較例1>
実施例1の<工程(II):カーボンブラック含有ゴム凝固物の製造>において、未混合水溶液を一定時間混合した後、凝固剤として、ギ酸(10%溶液)を一定速度で添加せずに、一括投入したこと以外は、実施例1と同様の方法により、比較例1のゴムウエットマスターバッチ、ゴム組成物および未加硫ゴム組成物を製造した。カーボンブラック含有ゴム凝固物の大きさ(mm)およびゴムウエットマスターバッチの収率(%)についての結果は表1に示す。
【0052】
<比較例2>
実施例1の<工程(II):カーボンブラック含有ゴム凝固物の製造>において、未混合水溶液を一定時間混合した後、凝固剤として、ギ酸(10%溶液)を一定速度で添加せずに、一括投入し、攪拌羽根の周速(m/s)を表1に示す値に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により、比較例2のゴムウエットマスターバッチ、ゴム組成物および未加硫ゴム組成物を製造した。カーボンブラック含有ゴム凝固物の大きさ(mm)およびゴムウエットマスターバッチの収率(%)についての結果は表1に示す。
【0053】
上記の実施例及び比較例で得られた未加硫ゴム組成物を、150℃、30分間の条件で加硫することにより、加硫ゴムを製造した。得られた加硫ゴムについて以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0054】
<抗張積の評価>
抗張積の評価は、得られた加硫ゴムをダンベル状3号形で打ち抜いたサンプルを、JIS K6251に準拠した引張試験を行い、破断特性としての抗張積(TB(引張強さ)×EB(破断時伸び))を求め、比較例1の値を100として指数で表示した。数値が大きいほど、抗張積に優れることを示す。
【0055】