(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-30
(45)【発行日】2023-06-07
(54)【発明の名称】転写フィルム、フィルムコーティングされた物品の製造方法及びフィルムコーティングされた物品
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20230531BHJP
B32B 7/06 20190101ALI20230531BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20230531BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20230531BHJP
B41M 5/00 20060101ALN20230531BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B27/00 L
B32B7/06
B32B27/40
B32B7/12
B41M5/00 700
(21)【出願番号】P 2020509457
(86)(22)【出願日】2018-07-19
(86)【国際出願番号】 EP2018069600
(87)【国際公開番号】W WO2019034361
(87)【国際公開日】2019-02-21
【審査請求日】2021-07-06
(31)【優先権主張番号】102017118904.1
(32)【優先日】2017-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507370644
【氏名又は名称】レオンハード クルツ シュティフトゥング ウント コー. カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クラッツァー アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】デッケルト クラウス
(72)【発明者】
【氏名】ハーン マルティン
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-183297(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0021388(US,A1)
【文献】国際公開第2012/176742(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
B29C39/00-45/84
B41M5/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写フィルム(1)を用いたフィルムコーティングされた物品(2)の製造方法であって、
前記転写フィルム(1)は、キャリアプライ(10,10’)と、前記キャリアプライ(10,10’)に配置され、少なくとも1つの装飾エレメント(4)を含む転写プライ(13,13’,13’’)と、を含み、
前記方法は、
a)前記キャリアプライ(10,10’)の反対側に面する前記転写プライ(13,13’,13’’)の少なくとも1つの面に基材(S)を接合するステップと、
b)前記基材(S)に接合された前記転写プライ(13,13’,13’’)から前記キャリアプライ(10,10’)を取り除くステップと、
c)前記基材(S)の反対側に面する前記転写プライ(13,13’,13’’)の面に少なくとも1つの保護層(20)を適用するステップと、
を含み、
前記キャリアプライ(10,10’)に隣接する前記転写プライ(13,13’,13’’)は、少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化しておらずかつ前記基材(S)の反対側に面する前記転写プライ(13,13’,13’’)の前記面を少なくとも部分的に形成する少なくとも1つの上部層(15)を有し、
前記少なくとも1つの上部層は、少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化しておらず、また遊離のエチレン性不飽和基を含まず、
前記少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層は、光開始剤を含まず、
前記少なくとも1つの装飾エレメントは、前記キャリアプライ(10,10’)の反対側となる、前記転写プライ(13,13’,13’’)の前記少なくとも1つの上部層(15)の側に配置され、
前記c)における、前記転写プライ(13,13’,13’’)の前記面に前記少なくとも1つの保護層(20)を適用するステップは、少なくとも1つのポリウレタン前駆体を含む組成物(2C PUR系)による前記少なくとも1つの上部層(15)の少なくとも部分的なフラッディング及びダウシングの少なくとも一方、及びその後の硬化によって行われ、
前記少なくとも1つの保護層は、DIN EN ISO4624:2016-08に記載された方法に基づいて求めた2.5MPa~10MPaの接着性を有して硬化後の前記少なくとも1つの上部層に付着される、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記キャリアプライ(10,10’)は、ポリエステル、ポリオレフィン又はこれらの組み合わせからなる少なくとも1つのキャリア層(11)である、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記c)における前記転写プライ(13,13’,13’’)の前記面に前記少なくとも1つの保護層(20)を適用するステップは、オープンフラッディング、鋳造金型におけるフラッディング又は2C金型におけるフラッディングにより行われる、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記c)における前記少なくとも1つの保護層(20)の適用前、適用中又は適用後、前記少なくとも1つの保護層(20)は、ステップb)の後、前記少なくとも1つの上部層(15)内又は前記少なくとも1つの上部層(15)上に粒子を配置することにより、及び/又はステップc)における適用中に金型構造の使用により、及び/又は前記少なくとも1つの保護層(20)のレーザー加工、オーバープリント及びオーバスタンプのうち少なくとも1つにより変更され、かつ/又は構造化される、ことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記a)における、前記キャリアプライ(10,10’)の反対側に面する前記転写プライ(13,13’,13’’)の少なくとも1つの面に基材(S)を接合するステップは、紙、プラスチック、木、複合材料、ガラス、金属及びこれらの組み合わせからなる群から選択される基材(S)の少なくとも1つの面に対する接着、ホットスタンピング、ラミネーション又はこれらの組み合わせによって行われる、ことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記a)における、前記キャリアプライ(10,10’)の反対側に面する前記転写プライ(13,13’,13’’)の少なくとも1つの面に基材(S)を接合するステップの間、反対側に面する前記転写プライ(13,13’,13’’)の面は、少なくとも1つのプラスチック射出成形組成物により少なくとも部分的に覆われ、
前記転写フィルム(1)は、少なくとも1つの射出成形金型に配置され、当該少なくとも1つの射出成形金型は、少なくとも1つのプラスチック射出成形組成物で充填され、
前記プラスチック射出成形組成物は、熱可塑性物質、熱硬化性プラスチック又はこれらの混合物を含む、ことを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない前記少なくとも1つの上部層(15)は、0.5μm~15μmの層厚を有する、ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない前記少なくとも1つの上部層(15)は、ポリウレタン樹脂、ポリウレタン分散液、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリ尿素、メラミン樹脂、アミノプラスト、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ビニルエステル樹脂及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのバインダを含むか又は当該少なくとも1つのバインダからなる、ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない前記少なくとも1つの上部層(15)と、前記少なくとも1つの装飾エレメントとの間に第1の接着促進層(17)が配置されおり、
前記第1の接着促進層(17)は、少なくとも1つのアクリル樹脂からなるか又は少なくとも1つのアクリル樹脂を含み、さらに0.1μm~10μmの層厚を有する、ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの装飾エレメントは、各々の場合において、互いに独立して、UVクロスリンクワニス又は熱可塑性可変層を含み、かつ各々の場合において互いに独立して、顔料化されていないか、無着色であるか、着色されているか又は染色された少なくとも1つの装飾層(14)に配置される、ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つの装飾エレメントを含む少なくとも1つの装飾層(14)は、染料及び顔料の少なくとも一方を含む透明のワニス層、着色されたワニス層、着色された透明のワニス層、成形された光学活性表面構造を有する複製層、反射層、光学可変層、光学活性層、干渉多層系、体積ホログラム層、液晶層、導電層、アンテナ層、電極層、磁気層、磁気記憶層、バリア層及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項12】
前記転写フィルム(1)は、0.1nm~50nmの層厚を有する少なくとも1つの剥離層(12)を有し、
前記少なくとも1つの剥離層(12)は、前記キャリア層(11)と前記少なくとも1つの上部層(15)との間に配置され、少なくとも1つのワックスを有するか又は少なくとも1つのワックスからなる、ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項13】
前記転写フィルム(1)は、0.5μm~10μmの層厚を有する少なくとも1つのワニス層(16)を有し、
前記少なくとも1つのワニス層(16)は、前記キャリアプライ(10,10’)の反対側に面する前記転写プライ(13,13’,13’’)の面に配置されており、
前記少なくとも1つのワニス層(16)は、物理的硬化型の接着剤、化学的硬化型の接着剤、粘着剤又はこれらの混合物からなる群から選択された少なくとも1つの接着剤を含むか又は当該接着剤からなる、ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項14】
前記キャリアプライ(10,10’)は、2cN~50cNの接着性を有して前記少なくとも1つの上部層(15)に配置されている、ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写フィルム、フィルムコーティングされた物品の製造方法及びフィルムコーティングされた物品に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルムコーティングされた物品、例えば射出成形品、フィルムコーティングされた物品を製造する方法及びインモールド成形可能な転写フィルム又はIMDフィルム(IMD=インモールド成形)は、当業者で知られている。
【0003】
DE10221482C1は、キャリアプライから剥離可能なキャリアフィルム及び装飾プライを有するスタンピングフィルムでインモールド射出成形によって装飾された、硬化射出成形材からなる成形部品を製造するための装置を開示している。スタンピングフィルムは、開型された射出成形金型に挿入される。スタンピングフィルムの装飾プライは上型に面している。射出成形金型を閉型し、射出チャネルを通して液体射出成形材料を射出成形金型のキャビティ内に射出する。スタンピングフィルムは、射出成形品の目に見える面に付着する。スタンピングフィルムは、装飾プライとともに射出成形材に接合され、射出成形材は、硬化後に射出成形金型から取り出される。装飾プライからキャリアフィルムを剥がすと、装飾された成形品が完成する。このように装飾された射出成形品は、特に、ドアトリム、計器パネルのトリム、ギヤシフトカバー及びセンターコンソールカバーなどの自動車内装部品、A、B及びCピラーにおけるドア衝撃保護ストリップ及びカバーなどの自動車外装部品、オーディオ及びビデオ分野におけるラジオ及びテレビセットのハウジングの装飾トリム、並びに電気通信分野における携帯電話又はナビゲーション装置などのモバイル装置のハウジングなどに使用される。
【0004】
インサート成形(IM)は、ホットスタンピング、真空成形及び鋳造、特に射出成形を組み合わせた方法である。IMD法と比較して、インサート成形は、フィルムをより大きく変形させることができる。これは、例えば、特に輪郭付けられた形状を有する部品が必要な場合に有利である。まず、真空成形可能な薄いホットスタンピングフィルム、例えばABSフィルム(厚さ約200μm~750μm)(ABS=アクリロニトリルブタジエンスチレン)をキャリアに対してホットスタンピング(熱転写)を行う。ホットスタンピング(熱転写)されたキャリアは、加熱下で真空成形される。このように真空成形されたキャリア及びホットスタンピングフィルムのプライは、いわゆる「インサート」を形成し、正確な輪郭を有して切断又は打ち抜かれる。「インサート」は、射出成形金型内に配置され、金型にプラスチックが充填され(「インサート」は逆射出(バックインジェクション)成形され)、その後、装飾された射出成形品が射出成形金型から取り出される。
【0005】
DE10236810A1には、射出成形に適した部分的に構造化された多層フィルムが開示されている。このようなIMD成形可能な多層フィルム又は射出成形品の射出成形用の多層フィルムは、射出成形品に転写される装飾エレメントを含むキャリアフィルムを有する。装飾エレメントが射出成形品本体に適用された後、キャリアフィルムが取り除かれる。装飾エレメントは、剥離層、保護ワニス層、立体構造を有する構造層、中間層、反射層及び接着層を含む。
【0006】
自動車内装用の従来のIMフィルムは、要求される300%までの強い歪みのため、高度に熱可塑性の保護ワニス系を有する。しかし、これらの保護ワニス系は、この目的に必要なポリマー成分の架橋度が低いため、汗及び化学物質、例えば日焼け止めクリーム又は皮膚保護クリーム及び防虫剤成分の影響を特に受けやすい。これは、影響を受けたワニス層上における、膨潤、著しい亀裂の生成、ワニスの完全な溶解などの種々のダメージとして現れる。
【0007】
WO2006/021199A1は、装飾された射出成形品に関している。この射出成形品は、少なくとも1つの射出成形されたプラスチック材と、プラスチック材に機械的に接合された少なくとも1つの装飾エレメントと、から形成される。装飾エレメントは、転写フィルムの転写プライにより形成され、射出成形された物品に装飾を提供する。装飾エレメントの双方の側は少なくとも部分的に少なくとも1つの成形プラスチックで覆われている。
【0008】
しかし、第1の装飾エレメントの双方の側に射出成形プラスチック材を適用することは、射出成形時の高温・高圧により、転写フィルムのワニス層に大きな負荷がかかり、特に除去される虞があるという不利益を有する。
【0009】
ホットスタンピングフィルム、IMDフィルム、インサート成形フィルムのための保護層が公知である。これらの保護層の目的は、機械的、任意の物理的及び化学的な作用に対する非常に高度な耐性をもたらすことである。特に、保護層に対する異物の付着を可能な限り低く抑える必要がある。そのため、例えば、さらに保護層を適用することにより付着が抑制される。
【0010】
さらに、ポリウレタン(PU)を用いた物品、例えば射出成形品のフラッディングが周知である。このため、例えば、2つの型半部を有する型内にコーティングされる物品が配置される。第1の型半部は、コーティングされる物品を受容し、第2の型半部は、コーティングされる物品よりもわずかに大きいキャビティを有する。間隙内にPUが導入され、コーティングされる物品がPUでフラッディングされる(浸される)。フラッディング前及び/又はフラッディング中に成分を混合した後、数秒以内に硬化する2成分PUシステム(2C PU)も同様に知られている。金型を開いたときには、PUは既に十分に硬化している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、フラッディングによって製造された、従来技術から知られている保護層は、コーティングされた物品に対して十分な接着性を有していない。
【0012】
従って、本発明の目的は、転写プライを損傷することなく、転写プライからキャリアプライを剥がすことができる、キャリアプライ及び転写プライを有する転写フィルムを提供することである。同時に、基材への適用、転写フィルムの処理、キャリアプライの除去の後、続いて適用される保護層に対する転写プライの粘着性は非常に高く、転写プライを損傷させることなく転写プライやコーティングされた基材から保護層を剥がすことができない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の目的は、請求項1に記載の転写フィルムにより実現する。転写フィルムは、キャリアプライと、キャリアプライ上に配置され、少なくとも1つの装飾エレメントを含む転写プライと、を有する。キャリアプライに隣接する転写プライは、少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層を有する。少なくとも1つの装飾エレメントは、キャリアプライの反対側に面する少なくとも1つの上部層の側に配置されている。キャリアプライは、ポリエステル、ポリオレフィン又はこれらの組合せ、特にPETから形成された少なくとも1つのキャリア層を有する。
【0014】
好ましくは、上部層は、ポリウレタン樹脂、ポリウレタン分散液、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリ尿素、メラミン樹脂、アミノプラスト、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ビニルエステル樹脂及びこれらの混合物、好ましくは、ポリウレタン樹脂、ポリウレタン分散液、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリ尿素、メラミン樹脂、アミノプラスト、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのバインダ(結合剤)を有する。
【0015】
さらに好ましくは、請求項1に記載の転写フィルムは、本発明の請求項12~17のいずれかに記載の方法に用いられる。
【0016】
本発明の転写フィルムの好ましい実施例は、従属項である請求項2~11に記載されている。
【0017】
さらに、本発明の目的は、請求項12に記載のフィルムコーティングされた物品を製造する方法によって実現する。この方法は、好ましくは、請求項1~11のいずれかに記載された転写フィルムを用いる。転写フィルムは、キャリアプライと、キャリアプライに配置され少なくとも1つの装飾エレメントを含む転写プライと、を有する。前記方法は、a)キャリアプライの反対側に面する転写プライの少なくとも1つの面に対して基材を接合するステップと、b)基材に接合された転写プライからキャリアプライを取り除くステップと、c)基材の反対側に位置する転写プライの面に少なくとも1つの保護層を適用するステップと、を含む。キャリアプライに隣接する転写プライは、少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層を有する。少なくとも1つの装飾エレメントは、キャリアプライの反対側に面する少なくとも1つの上部層の側に配置されている。前記c)における、転写プライの少なくとも1つの上部層に少なくとも1つの保護層を適用するステップは、少なくとも1つの溶剤を含む、好ましくは流動性のポリウレタン含む組成物であって、その後硬化する組成物による少なくとも1つの上部層の少なくとも部分的なフラッディング(flooding)及び/又はダウシング(dousing)によって行われる。
【0018】
本発明に係る前記方法の好ましい実施例は、従属項である請求項13~17に記載されている。
【0019】
さらに、本発明の目的は、請求項18に記載のフィルムコーティングされた物品により実現する。好ましくは、請求項12~17のいずれかに記載の方法により、さらに好ましくは請求項1~11のいずれかに記載の転写フィルムを用いて製造されたフィルムコーティングされた物品であって、基材と、少なくとも1つの装飾エレメントを含み、少なくとも部分的に基材の少なくとも1つの面に配置された少なくとも1つの転写プライと、を有する物品によって実現する。基材の反対側に面する転写プライの側は、少なくとも1つの、好ましくは硬化した上部層により形成される。この上部層には、0.2mm~5mmの層厚を有するポリウレタンをベースとした少なくとも1つのプラスチックを含む少なくとも1つの保護層が配置されている。少なくとも1つの保護層は、DIN EN ISO4624:2016-08に記載されている方法に従って、好ましくは、デフェルスコ社(米国ニューヨーク州オグデンズバーグ)製のPosiTest(登録商標)ATシリーズの引張接着試験機により20mmのドリー(dolly)を用いて求めた2.5MPa~5MPa、特に2.5MPa~10MPaの接着性を有して少なくとも1つの上部層に付着する。
【0020】
本発明の物品の好ましい実施例は、従属項である請求項19に記載されている。
【0021】
本発明の転写フィルムは、キャリアプライと、キャリアプライに配置され、少なくとも1つの装飾エレメントを含む転写プライと、を有する。転写プライは、好ましくは、取り外し可能にキャリアプライに配置される。
【0022】
本発明の転写フィルムは、好ましくは、転写プライを物品に転写するために用いられる。物品の少なくとも1つの面は、キャリアプライの反対側に面する転写プライの少なくとも1つの面に少なくとも部分的に接合され、コーティングされた物品が得られる。
【0023】
物品の少なくとも1つの面の少なくとも部分的な領域に転写プライを配置した後、キャリアプライは、転写プライから、好ましくは完全に取り除かれる。その結果、転写プライが、コーティングされた物品の面の少なくとも部分的な領域に配置され、好ましくは少なくとも部分的にコーティングされた物品の面を形成する。
【0024】
転写プライからのキャリアプライの剥離は、キャリアプライと転写プライとの間の層の境界で行われることが望ましい。
【0025】
少なくとも1つの装飾エレメントは、転写プライと共に物品に転写される。転写プライの転写及び転写プライの除去後、少なくとも1つの装飾エレメントは、コーティングされた物品の面の少なくとも部分的な領域に配置され、少なくとも1つの装飾エレメントのデザインに応じて、コーティングされた物品の面の物理的特性、好ましくは触覚的、光学的、電気的及び/又は機械的特性及び/又は化学的特性に影響が及ぶ。
【0026】
例えば、少なくとも1つの装飾エレメントは、例えば、エンボス加工、粗面化、模様形成又は平滑化により、及び/又は、透明、光沢又はマットなどの反射を決定する特性を提供することにより、及び/又は、色を提供することにより、コーティングされた物品の表面の質感及び/又は色彩に影響を与える。
【0027】
例えば、少なくとも1つの装飾エレメントは、例えば、表面の硬さ、弾力性及び/又は面の破壊強度をもたらすことによって、コーティングされた物品の機械的性質に影響を与える。
【0028】
例えば、少なくとも1つの装飾エレメントは、例えば、酸及び/又は塩基の作用に対する表面抵抗を付与することによって、コーティングされた物品の化学的特性に影響を与える。
【0029】
少なくとも1つの装飾エレメントは、好ましくは、モチーフ、装飾、例えば、イメージ(画像)の装飾、エンドレスな装飾、模様又はこれらの組合せとして形成される。
【0030】
例えば、少なくとも1つの装飾エレメントは、光学的に活性化された表面構造又は光学効果を生成する構造として形成される。表面構造は、回折表面構造、特にホログラム、0次回折構造、マット構造、特に等方性マット構造又は異方性マット構造、ブレーズド格子、レンズ構造、マイクロレンズ構造、マイクロプリズム構造、マイクロミラー構造、又はこれらの表面構造の2以上の組み合わせからなる群から選択されることが好ましい。
【0031】
例えば、少なくとも1つの装飾エレメントは、好ましくは、染料、液晶材料、顔料又はこれらの混合物として存在する光学活性及び/又は光学可変の物質として形成され得る。適切な顔料は、例えば、干渉層顔料、液晶顔料、回折顔料、金属顔料、サーモクロミック顔料、フォトクロミック顔料又はこれらの混合物である。物質は、各々の場合において、特に、異なる波長範囲、例えば赤外線範囲、紫外線範囲及び可視範囲において、異なる又は同様の光学的効果を示す。物質は、各々の場合において、特に、異なる照明及び/又は観察角度又は観察方向においても、異なる又は同様の光学的効果を示す。
【0032】
好ましくは、少なくとも1つの装飾エレメントは、少なくとも1つの装飾層に配置されており、さらに好ましくは、各々の場合において、互いに独立して、UVクロスリンクワニス(UV-crosslinked varnish)及び/又は熱可塑性の変形可能な層(熱可塑性可変層)を有し、各々の場合において互いに独立して、顔料化されていないか、無着色であるか、着色されているか又は染色されている。
【0033】
好ましくは、少なくとも1つの装飾層は、少なくとも部分的に配置された金属層、少なくとも部分的に配置されたレリーフ構造を有する層、少なくとも部分的に配置されたカラー層、少なくとも部分的に配置された干渉層又はこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0034】
さらに好ましくは、少なくとも1つの装飾層は、透明及び/又は有色のワニス層、特に一つ又は複数の染料及び/又は顔料を有するワニス層、成形された活性表面構造を有する複製層、反射層、特に不透明な反射層、透明な反射層、メタリック反射層又は誘電反射層、光学可変層、光学活性層、干渉多層系、体積ホログラム層、液晶層、特にコレステリック液晶層、電気伝導層、アンテナ層、電極層、磁気層、磁気貯蔵層、バリア層及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0035】
さらに好ましくは、少なくとも1つの装飾層は、それぞれ互いに独立して、0.1μm~15μm、さらに好ましくは4μm~8μmの層厚を有する。
【0036】
本発明に係る、キャリアプライに隣接した転写フィルムの転写プライは、少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層を有する。好ましくは、前記装飾層の少なくとも1つの層における少なくとも1つの装飾エレメントは、キャリアプライの反対側に面する転写プライの少なくとも1つの上部層の側に配置される。
【0037】
本発明では、少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層に含まれるポリマー又はポリマー混合物、好ましくはバインダ又はバインダ混合物の架橋が可能な官能基のうち、少なくとも90%、好ましくは95%が架橋を有する場合に、層を「未だ完全に硬化していない」と言う。
【0038】
好ましくは、少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層は、30℃~180℃の温度で、対応する反応基を再び遊離させる、遊離の反応基及び/又はキャップされた(capped)反応基を有する。
【0039】
「遊離の反応基」という用語は、好ましくは、重合反応中に共有結合を形成することができる官能基を意味する。
【0040】
好適な反応基は、好ましくは、イソシアネート基(-NCO)及び/又はイソシアネート基に反応する基、好ましくはアミノ基(-NH2)及び/又はヒドロキシル基(-OH)である。
【0041】
好ましくは、ブロックされた反応基とも呼ばれるキャップされた反応基は、30℃~180℃、好ましくは40℃~160℃、さらに好ましくは60℃~140℃の温度で、対応する反応基を再び遊離させる前記反応基及びブロック剤の付加化合物である。
【0042】
キャップされた反応基は、好ましくは、30℃~180℃の温度で、対応する反応基、好ましくはイソシアネート基を再び遊離するキャップされたイソシアネート基である。
【0043】
例えば、少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層は、遊離の反応性イソシアネート基を含む。遊離の反応性イソシアネート基は、水、例えば湿気の存在下で反応して、さらなる重合反応を受けるカルバミン酸を形成する。
【0044】
好ましくは、ポリエステル、ポリオレフィン又はこれらの組み合わせ、特にPETからなる少なくとも1つのキャリア層を有するキャリアプライを、少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層に配置することにより、少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層への水、例えば、湿気の進入が抑制、好ましくは防止される。
【0045】
さらに好ましくは、少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層は、遊離のエチレン性不飽和基を有していない。
【0046】
好ましくは、キャリア層は、無端状の(エンドレス)フィルムとして、あるいは分離したフィルムシートとして形成される。そのようなフィルムシートは、無端状の形態をなすフィルムを分離することによって得られる。
【0047】
好ましくは、少なくとも1つのキャリア層は、10μm~75μm、さらに好ましくは23μm~40μmの層厚を有する。
【0048】
さらに好ましくは、キャリアプライ、好ましくはポリエステル、ポリオレフィン又はこれらの組み合わせ、特にPETから形成された少なくとも1つのキャリア層は、好ましくはツヴィック社製の測定器Z006で求めた、2cN~50cN、好ましくは5cN~35cNの接着性を有して、転写プライの少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層上に配置される。
【0049】
ツヴィック社製の測定器Z006を用いて少なくとも1つの上部層に対するキャリアプライの接着性を測定する際、第1のステップとして、試験基材としてのプラスチック板に幅3.5cmの転写フィルムを、ホットスタンプにより強く接着することにより、コーティングされた試験片を製造することが望ましい。
【0050】
測定中、第2のステップにおいて、好ましくは、水平又は垂直に配置された試験片から、キャリアプライを、100mmの長さに亘って剥離することが好ましい。この過程では、適用されたキャリアフィルムの10mm~90mmの長さの領域に必要な力をツヴィック社(独国ウルム)製の測定器Z006を用いて測定することが望ましい。
【0051】
キャリアプライの接着性を測定するために、前記測定器Z006を、水平方向に延在する基材レシーバと組み合わせることが好ましい。基材レシーバは、好ましくは、可動スライドを有し、この可動スライドに試験基材が取り付けられる。転写フィルムは、好ましくは、特にホットスタンピングによって試験基材に適用される。適用された転写フィルムのキャリアプライは、偏向ローラによって水平から垂直に偏向され、前記測定器に取り付けられることが好ましい。好ましくはキャリアプライに可能な限り均一に作用する力を測定器により測定するとき、試験基材に適用されたキャリアプライを転写プライから剥がすように、試験基材のスライドが移動されるか又は引っ張られる。
【0052】
ポリエステル、ポリオレフィン、又はこれらの組み合わせ、特にポリエチレンテレフタレート(PET)から形成された少なくとも1つのキャリア層のデザインは、転写プライの少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層に対する少なくとも1つのキャリア層の接着性の著しい低下をもたらす。これは、2つの層の化学的構造が著しく異なるためである。
【0053】
前記材料から形成されたキャリア層及び転写プライの少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層との間における分子間の相互作用は極めて弱い。
【0054】
ポリエステル、ポリオレフィン又はこれらの組み合わせ、特にPETから形成されたキャリアプライ、好ましくは、例えば、転写フィルムを基材に適用した後、又は、例えば、ホットスタンピング又は射出成形、例えば、3DHS(3DHS=3Dホットスタンピング)、IMD方法、挿入成形方法、IPDスキン方法などによる転写フィルムの処理の後に、少なくとも1つのキャリア層は、好ましくは転写プライを損なうことなく、転写プライから簡単に剥離され得る。
【0055】
転写フィルムが少なくとも部分的に、1nm~50nm、好ましくは1nm~20nmの層厚を有し、特にワックスからなる剥離層であって、少なくとも1つのキャリア層と、少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層との間に配置された剥離層を有する場合にさらに有利である。そのような剥離層は、吸収層が基材に転写された後、キャリアプライを剥離しやすくする。
【0056】
転写プライからのキャリアプライの剥離は、転写プライの剥離層と、少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層との間における層の境界において行われることが望ましい。有利には、ワックスをベースとした剥離層はキャリアプライに残存する。
【0057】
本発明に係る方法のステップb)におけるキャリアプライの好ましくは完全な除去後、ステップc)において、少なくとも1つの保護層は、少なくとも1つの上部層の少なく少なくとも1つの溶剤を含む、好ましくは流動性のポリウレタンを含む組成物による部分的なフラッディング及び/又はダウシング及び好ましくは25℃~180℃の温度でのその後の硬化によって、好ましくは直接的に、少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層に適用される。
【0058】
好ましくは、少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層及び/又は上部層に適用された保護層は、硬化、好ましくは完全に硬化する。
【0059】
さらに好ましくは、少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層及び上部層に適用された保護層は、硬化、好ましくは完全に硬化する。
【0060】
転写プライの少なくとも所定の範囲において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層に適用された少なくとも1つの溶剤を含む、好ましくは流動性のポリウレタンを含む組成物は、好ましくは、30℃~180℃の温度で、対応する反応基を再び遊離させる遊離の反応基及び/又はキャップされた反応基を有する。
【0061】
転写プライの少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層及び/又は上部層に適用された保護層が硬化、好ましくは完全に硬化する間、例えば、転写プライの上部層に含まれる遊離のイソシアネート基は、少なくとも1つの保護層の形成に使用される溶剤を含む、好ましくは流動性のポリウレタンを含む組成物のイソシアネート基と反応する遊離基と反応する。
【0062】
例えば、転写プライの少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層が、イソシアネート基に反応する遊離基を有する場合、これらは、少なくとも1つの保護層を形成するために使用される、溶剤を含む、好ましくは流動性のポリウレタンを含む組成物の遊離のイソシアネート基と対応して反応する。
【0063】
各々の場合において、転写プライの少なくとも1つの上部層に対する少なくとも1つの保護層の接着は、望ましくは、本発明に係る方法のステップc)における硬化した後に著しく向上する。
【0064】
例えば、少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層が、キャップされた反応基を有する場合、これらは、対応する反応基を本発明に係る方法のステップc)において、好ましくは30℃~180℃の温度で再び遊離することが好ましい。次いで、例えば、転写プライの少なくとも1つの上部層に含まれる遊離されたイソシアネート基は、同様に、少なくとも1つの保護層を形成するために使用される溶剤を含む、好ましくは流動性のポリウレタンを含む組成物のイソシアネート基と反応する遊離基と反応する。
【0065】
転写プライの上部層に対する少なくとも1つの保護層の接着が著しく向上することが望ましい。さらに、本発明に係る転写フィルムの転写プライの少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層における、キャップされた反応基、例えばキャップされたイソシアネート基の存在を介して、本発明に係る転写フィルムの保存安定性を向上させることが望ましい。
【0066】
好ましくは、少なくとも1つの保護層は、DIN EN ISO4624:2016-08に記載されている方法に従って、好ましくは、デフェルスコ社(米国ニューヨーク州オグデンズバーグ)製のPosiTest(登録商標)ATシリーズの引張接着試験機により20mmのドリーを用いて求めた2.5MPa~5MPa、特に2.5MPa~10MPaの接着性を有して少なくとも1つの上部層に付着する。
【0067】
したがって、硬化後、転写プライを損傷させることなく、及び/又は対応する基材から転写プライを剥離することなく、少なくとも1つの保護層を本発明に係るフィルムコーティングされた物品から剥離することはできない。
【0068】
さらに、特に、溶剤を含む、好ましくは流動性のポリウレタンを含む組成物による転写プライの少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層の少なくとも部分的なフラッディング及び/又はダウシングによる本発明に係る方法のステップc)における保護層の適応により少なくとも1つの保護層を形成するための簡単な方法が提供される。
【0069】
フラッディング及び/又はダウシングは、好ましくは、多くの異なる溶剤を含む、好ましくは流動性のポリウレタンを含む組成物の使用を可能にする。前記組成物は、例えば、特に、転写プライの少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層の組成物及び/又は少なくとも1つの保護層によって達成される特性、例えば、光学特性、機械特性及び/又は耐化学性に適合する。
【0070】
前述のように、少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層は、好ましくは、30℃~180℃の温度で、対応する反応基を再び遊離させる遊離の反応基及び/又はキャップされた反応基を有する。
【0071】
プラスチックの製造のための原料における遊離アミノ基、ヒドロキシル基及び/又はイソシアネート基の含有量を決定する方法は、当該技術分野において公知である。
【0072】
遊離ヒドロキシル基の含有量を測定するための好適な方法は、例えば、ASTM E1899-16(「p-トルエンスルホニルイソシアネート(TSI)との反応及び水酸化テトラブチルアンモニウムによる電位差滴定を使用したヒドロキシル基の標準試験方法」("Standard Test Method for Hydroxyl Groups Using Reaction with p-Toluenesulfonyl Isocyanate (TSI) and Potentiometric Titration with Tetrabutylammonium Hydroxide")、米国ペンシルベニア州ウエストコンショホッケン)、ASTM D4273-11(「ポリウレタン原料の標準試験方法:ポリエーテルポリオールの一級ヒドロキシル含有量の決定」(“Standard Test Method for Polyurethane Raw Materials: Determination of Primary Hydroxyl Content of Polyether Polyols”)、2011年、ASTMインターナショナル、米国ペンシルベニア州ウエストコンショホッケン)、DIN53240-3:2016-03("Bindemittel fur Beschichtungsstoffe-Bestimmung der Hydroxylzahl-Teil 3:Schnellverfahren"、発行日:2016年3月(「塗料及びワニスのためのバインダ-ヒドロキシル価の測定-パート3:迅速試験」("Binders for paints and varnishes-Determination of Hydroxyl Value-Part 3:Rapid Test"))、ISO14900:2017-03(「プラスチック-ポリウレタンの製造に使用するポリオール-ヒドロキシル価の決定」("Plastics-Polyols for use in the production of polyurethane-Determination of hydroxyl number")、発行日:2017年3月)、又は、ASTM D4274-16(「ポリウレタン原料を試験するための標準試験方法:ポリオールのヒドロキシル価の決定」("Standard Test Methods for Testing Polyurethane Raw Materials: Determination of Hydroxyl Numbers of Polyols")、2016年、ASTMインターナショナル、米国ペンシルベニア州ウエストコンショホッケン)に記載されている。
【0073】
遊離イソシアネート基の含有量を決定するための好適な方法は、例えば、DIN EN ISO14896:2009-07("Kunststoffe-Polyurethanrohstoffe-Bestimmung des Isocyanatanteils"、発行日2009年7月[「プラスチック-ポリウレタン原料-イソシアネート含有量の決定」"Plastics-Polyurethane raw materials-Determination of isocyanate content"])又はASTM D2572-97(2010)(「ウレタン材料又はプレポリマーのイソシアネート基の標準試験方法」("Standard Test Method for Isocyanate Groups in Urethane Materials or Prepolymers")、2010年、ASTMインターナショナル、米国ペンシルベニア州ウエストコンショホッケン)に開示されている。
【0074】
遊離アミノ基含有量を決定するための好適な方法は、例えば、ASTM D2074-07(2013)(「代替指標法による脂肪酸アミンの総量、一級、二級、三級アミン値の標準試験法」"Standard Test Methods for Total, Primary, Secondary, and Tertiary Amine Values of Fatty Amines by Alternative Indicator Method"、2013年、ASTMインターナショナル、米国ペンシルベニア州ウエストコンショホッケン)に開示されている。
【0075】
好ましくは、少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層の遊離の反応基、好ましくは遊離イソシアネート基及び/又はイソシアネート基に反応する遊離基、好ましくはアミノ基及び/又はヒドロキシル基、又は対応するキャップされた類似物は、前記層に含まれるモノマー、プレポリマー及び/又はこれらの混合物に結合される。
【0076】
さらに好ましくは、少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層の有利の反応基、好ましくは遊離イソシアネート基及び/又はイソシアネート基に反応する遊離基、好ましくはアミノ基及び/又はヒドロキシル基、及び/又は対応するキャップされた類似物は、上部層に含まれるバインダ、架橋剤及び/又はこれらの混合物に結合される。
【0077】
好ましくは、少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層は、遊離イソシアネート基及び/又はイソシアネート基に反応する遊離基、好ましくはアミノ基及び/又はヒドロキシル基及び/又はこれらの対応するキャップされた類似物を含む少なくとも1つのバインダを含む。
【0078】
好適なバインダは、好ましくは、ポリウレタン樹脂、ポリウレタン分散液、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリ尿素、メラミン樹脂、アミノプラスト、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂及びこれらの混合物からなる群から選択され、さらに好ましくは、ポリウレタン樹脂、ポリウレタン分散液、フェノール樹脂、ポリ尿素、メラミン樹脂、アミノプラスト、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0079】
さらに好ましくは、少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層は、遊離イソシアネート基及び/又はイソシアネート基に反応する遊離基、好ましくはアミノ基及び/又はヒドロキシル基及び/又はこれらの対応するキャップされた類似物を含む少なくとも1つのバインダを、各々の場合、層の総重量に対して少なくとも15重量%、好ましくは20重量%~90重量%の割合で含む。
【0080】
さらに好ましくは、少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層に含まれる少なくとも1つのバインダは、遊離のエチレン性不飽和基を有していない。
【0081】
好ましい実施例では、少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層は、好ましくはイソシアネート基に反応する遊離基、さらに好ましくはアミノ基及び/又はヒドロキシル基を有する少なくとも1つの水性、未架橋又は架橋ポリウレタン分散液、又は、好ましくはイソシアネート基及び/又はこれのキャップされた類似物又はイソシアネート基に反応する基、さらに好ましくはアミノ基及び/又はヒドロキシル基、及び/又は対応するこれらのキャップされた類似物を有する少なくとも1つの未架橋又は架橋ポリウレタン樹脂からなるか又はこれらを含む。
【0082】
また、キャップされた反応基は、イソシアネート基に反応する前記遊離基のキャップされた類似物、又は前記イソシアネート基のキャップされた類似物と呼ばれる。
【0083】
キャップされた反応基を含む適切な化合物は、当該技術分野において公知であり、例えば、酸性H原子を有する有機化合物、いわゆるブロッキング剤の添加によってブロックされた(キャップされた)イソシアネート基を含む。
【0084】
酸性H原子を有する適切なブロッキング剤は、例えば、各々の場合において互いに同一又は異なり、1~4個の炭素原子を有するアルキル基を含むマロン酸ジアルキルエステル、1~4個の炭素原子を有するアルキル基を含むアセト酢酸アルキルエステル、フェノール誘導体、第二級アミン、ラクタム、ピラゾール、オキシム又はこれらの混合物である。
【0085】
適切なマロン酸ジアルキルエステルの例は、マロン酸ジメチルエステル、マロン酸ジエチルエステル、マロン酸ジイソプロピルエステル、マロン酸ジ-tert-ブチルでエステル及びこれらの混合物である。
【0086】
適切なアセト酢酸アルキルエステルの例は、アセト酢酸メチルエステル、アセト酢酸エチルエステル、アセト酢酸イソプロピルエステル、アセト酢酸tert-ブチルエステル及びこれらの混合物である。
【0087】
適切なフェノール誘導体の例は、フェノール、クレゾール、ノニルフェノール及びこれらの混合物である。
【0088】
適切な第二級アミンの例は、N-イソプロピル-N-メチルアミン、N-イソプロピル-N-エチルアミン、N-tert-ブチル-N-メチルアミン、N-tert-ブチル-N-イソプロピルアミン、N,N-ジイソプロピルアミン、N-tert-ブチル-N-ベンジルアミン(BEBA)、N,N-ジシクロヘキシルアミン及びこれらの混合物である。
【0089】
好適なラクタムの一例は、ε-カプロラクタムである。適切なピラゾールの一例は、3,5-ジメチルピラゾール(DMP)である。
【0090】
適切なオキシムの例は、芳香族アルドキシム、脂肪族、脂環式又は芳香族ケトキシム及びこれらの混合物である。適切な芳香族アルドキシムの例は、ベンズアルドキシム、トリルアルドキシム、テレフタルジアルドキシム、イソフタルジアルドキシム及びこれらの混合物である。適切なケトキシムは、例えば、アセトンオキシム、メチルエチルケトオキシム、メチルプロピルケトオキシム、2-ブタノンオキシム、メチルイソブチルケトオキシム、3-メチル-2-ブタノンオキシム、ジイソブチルケトオキシム、2-ペンタノンオキシム、3-ペンタノンオキシム、4-メチル-2-ペンタノンオキシム、2-ヘプタノンオキシム、3-ヘプタノンオキシム、エチルヘキシルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム、アセトフェノンオキシム、ベンゾフェノンオキシム及びこれらの混合物である。
【0091】
好ましくは、キャップされた反応基を有する前記化合物は、少なくとも1つの触媒と一緒に使用することができる。イソシアネート反応を触媒することができる全ての公知の化合物を触媒として使用することができる。その例は、チタン酸テトラブチル及びチタン酸テトラプロピルなどのチタネート、ジブチルスズジラウレート(DBTL)、ジブチルスズジアセテート、オクトエートスズなどのカルボン酸スズ、ジブチルスズオキシド、ジオクチルスズオキシドなどのスズ酸化物、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムトリエチルアセトアセテートなどの有機アルミニウム化合物、チタンテトラアセチルアセトナートなどのキレート化合物、トリエチレンジアミン、グアニジン、ジフェニルグアニジン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、モルホリン、N-メチルモルホリン、2-エチル-4-メチルイミダゾール及び1,8-ジアザビシクロ-(5,4,0)ウンデセン-7(DBU)、1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、N,N-ジメチルピペラジン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7-エン、ジモルホリノジメチルエーテル、ジモルホリノジエチルエーテル(DMDEE)などのアミン化合物又はこれらの混合物である。前記触媒の1つの存在は、好ましくは、対応するキャップされた類似物から対応する反応基を遊離させるために必要な温度の低下をもたらす。
【0092】
「プレポリマー」という用語は、好ましくは上部層に含まれるバインダ、好ましくはポリウレタンポリマーを形成するように作用する反応性オリゴマーを意味する。プレポリマーは、例えば、少なくとも2つの同一の基、好ましくは少なくとも2つの遊離イソシアネート基及び/又はイソシアネート基に反応する少なくとも2つの遊離基、例えばアミノ基及び/又はヒドロキシル基及び/又はそれぞれの場合に対応するキャップされたその類似物を有することができる。
【0093】
少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層は、2以上のイソシアネート基を有する少なくとも1つの化合物と、例えば、イソシアネート基に反応する2以上の基、例えばヒドロキシル基及び/又はアミノ基を有する少なくとも1つの化合物との反応によって形成される。2以上のイソシアネート基を有する少なくとも1つの化合物又はイソシアネート基と反応する基を2以上有する少なくとも1つの化合物のいずれかが過剰に使用される。
【0094】
2以上のイソシアネート基を有する適切な化合物は公知であり、例えば、2以上のイソシアネート基を有するモノマーイソシアネート、イソシアネート付加物、2以上のイソシアネート基を有するイソシアネートプレポリマー又はこれらの混合物を含む。
【0095】
2以上のイソシアネート基を有するモノマーイソシアネートは、例えば、2以上のイソシアネート基を有する脂肪族イソシアネート、2以上のイソシアネート基を有する脂環式イソシアネート、2以上のイソシアネート基を有する芳香族イソシアネート、これらの付加物、又はこれらの混合物であり、例えば、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、2,4-トルイレンジイソシアネート、2,6-トルイレンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート(NDI)、4,4’-ジイソシアネートジシクロヘキシルメタン(H12MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、これらの付加物又は混合物である。
【0096】
イソシアネート付加物は市販されており、好ましくは、前記脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート又は芳香族ジイソシアネートの1つの二量化又は三量化によって形成される。
【0097】
例えば、HDI-ビウレットとしても知られている1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)の三量体は、コベストロAG(独国、レーバークーゼン)から商品名Desmodur(登録商標)Nとして商業的に入手可能である。
【0098】
2以上のイソシアネート基を有する適切な化合物は、例えば、2以上のイソシアネート基を有するイソシアネートプレポリマーである。
【0099】
イソシアネートプレポリマーは、好ましくは、前記脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、これらの付加物又はこれらの混合物のうちの少なくとも1つを、少なくとも1つのジポリオール又はポリオールと反応させることによって得ることができる。ここで、好ましくは、使用されるジポリオール又はポリオールの遊離OH基の数に対して、使用されるジイソシアネートのモル過剰が使用される。
【0100】
従って、イソシアネートプレポリマーは、好ましくは、ウレタン基ならびに遊離の反応性イソシアネート基(これは、好ましくは、少なくとも部分的にキャップされ得る)をポリマー鎖中に有する。
【0101】
イソシアネートプレポリマーは、さらに、温度を上昇させることによって、アロファネート及び/又はビウレットに部分的に変換され得る。
【0102】
2以上の水酸化物基を有する適切な化合物は、例えば、アルカンジオール、アルカントリオール、アルカントラオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、及びこれらの混合物からなる群から選択される多価アルコールである。
【0103】
好適なポリエステルポリオールは、好ましくは多官能性、好ましくは二官能性アルコール、任意に少量の三官能性アルコールと、多官能性、好ましくは二官能性及び/又は三官能性カルボン酸との反応生成物である。遊離ポリカルボン酸の代わりに、対応するポリカルボン酸無水物又は対応するポリカルボン酸エステルと、好ましくは1~3個のC原子を有するアルコールとを使用してもよい。ポリエステルの製造のためにそれ自体公知のポリオール及びカルボン酸を選択することができる。例えば、このようなポリエステルポリオールの製造に適したジオールは、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ペンタンジオール、異性体ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4-ヒドロキシメチル-シクロヘキサン、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ブタントリオール-1,2,4、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール又はポリブチレングリコールである。芳香族ジオールを使用してもよい。
【0104】
使用されるポリカルボン酸は、脂肪族、脂環式、芳香族もしくは複素環式又はその両方であり得る。それらは、例えば、アルキル基、アルケニル基、エーテル基又はハロゲンにより置換されていてもよい。例えば、ポリカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロ無水フタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水グルタル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸又はこれらのうち2以上の混合物が好適である。例えば、任意に比例して含有させることができるトリカルボン酸としては、クエン酸又はトリメリット酸が好適である。前述した全ての酸は、単独で又はこれらの2以上の混合物として使用することができる。
【0105】
また、オレオケミカル由来のポリエステルポリオールを使用してもよい。このようなポリエステルポリオールは、例えば、少なくとも部分的にオレフィン性不飽和脂肪酸含有脂肪混合物のエポキシ化トリグリセリドを1~12個のC原子を有する1種以上のアルコールと完全に開環し、続いてトリグリセリド誘導体を部分的にエステル交換して、アルキル基中に1~12個のC原子を有するアルキルエステルポリオールを得ることによって製造することができる。
【0106】
さらに適当なポリエステルポリは、ポリカーボネートポリオールである。ポリカーボネートは、例えば、プロピレングリコール、ブタンジオール-1,4又はヘキサンジオール-1,6などのジオール類、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのジオール類、又はこれらの混合物又は2種以上と、ジアリルカーボネート、例えばジフェニルカーボネート又はホスゲンとを反応させることにより得ることができる。適切なポリオールのさらなる群は、ポリラクトン、例えばε-カプロラクトンをベースとするポリエステルである。分子鎖中に1以上のウレタン基を含有するポリエステルポリオールも好適である。
【0107】
好適なポリエーテルポリオールは、例えば、低分子多官能アルコールとアルキレンオキシドとの反応生成物である。アルキレン酸化物は、好ましくは、2~4個のC原子を有する。例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド又はこれらの混合物と、脂肪族ジオール、例えばエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、異性体ブタンジオール、ヘキサンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-メチルプロパンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチルヘキサンジオール-1,6、2,2,4-トリメチルヘキサンジオール-1,6、1,4-シクロヘキサンジメタノール、又は芳香族ジオール、例えば4,4’-ジヒドロキシジフェニルプロパン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ピロカテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、又はこれらの2以上の混合物との反応生成物が適している。さらに、多官能性アルコール、例えばグリセロール、トリメチロールエタン又はトリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール又は糖アルコールと、アルキレンオキシドとの反応生成物も好適である。
【0108】
さらなる適切なポリオールは、テトラヒドロフランの重合によって形成される。
【0109】
さらに、前記ポリエーテルポリオール又はポリエステルポリオール、好ましくはポリエーテルポリオールは、アミノ官能化されてもよい。ここで、1以上の水酸化物基は、好ましくは、1以上のアミノ基、第一級アミノ基及び/又は第二級アミノ基によって置換される。
【0110】
例えば、アミノ官能化ポリエーテルポリオールは、アミノ末端ポリエーテルとも呼ばれ、当業者に周知であり、例えばJEFFAMINE(登録商標)の名称でハンツマンコーポレーション(米国テキサス州、ザ・ウッドランズ)から商業的に入手可能である。
【0111】
好ましくは、少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層は、架橋されているか又は架橋されていないイソシアネートプレポリマー、架橋されているか又は架橋されていないキャップされたイソシアネートプレポリマー、又はこれらの混合物からなるか又はこれらを含む。ここで、前記イソシアネートプレポリマー又はキャップされたイソシアネートプレポリマーは、モノマー性ジイソシアネート及び/又はその付加物を、各々の場合に、使用されるプレポリマーの総重量に対して、5重量%未満、好ましくは1重量%未満の割合で含む。
【0112】
イソシアネート基に反応する遊離基、さらに好ましくはアミノ基及び/又はヒドロキシル基を有するプレポリマーは、好ましくは、前記の脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、これらの付加物又はこれらの混合物の少なくともとも1つと、少なくとも1つのジオール、ポリオール及び/又はアミノ官能化ポリエーテルポリオールと反応によって得られる。ここで、使用されるジオール、ポリオール及び/又はアミノ官能化ポリエーテルポリオールのモル過剰が、使用されるジイソシアネートの遊離イソシアネート基の数に対して、好ましくは使用される。
【0113】
したがって、イソシアネート基に反応する遊離基を有するプレポリマーは、好ましくは、ウレタン基、ならびに遊離の反応性ヒドロキシル基及び/又はアミノ基を有し、これらは、好ましくは、ポリマー鎖中に、例えば、イソシアネートの熱可逆的添加によって、少なくとも部分的にキャップされる。
【0114】
代替例では、少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層は、架橋されているか又は架橋されていないイソシアネート基に反応する遊離基を有するプレポリマー、あるいは、架橋されているか又は架橋されていないイソシアネート基に反応するキャップされたプレポリマー、又はこれらの混合物を有するか又はこれらからなる。ここで、前記プレポリマーは、使用されるジオール、ポリオール及び/又はアミノ官能化ポリエーテルを、各々の場合に、使用されるプレポリマーの総重量に対して、5重量%未満の割合で、好ましくは1重量%未満の割合で含む。
【0115】
さらに好ましくは、少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層の前記イソシアネートプレポリマー、キャップされたイソシアネートプレポリマー、イソシアネート基に反応する遊離基を有するプレポリマー及び/又はイソシアネート基に反応するキャップされた基を有するプレポリマーは、好適な架橋剤、例えば多官能性アジリジン(PFA)を用いて架橋され得る。
【0116】
さらに、少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層は、好ましくはアクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ビニルエステル樹脂及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのコバインダを有し、さらに好ましくは遊離のエチレン性不飽和基を有していない。
【0117】
さらに好ましくは、少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層は、層の総重量に対して、各々の場合に、最大30重量%、さらに好ましくは最大25重量%、好ましくは5重量%~20重量%の割合で少なくとも1つのコバインダを有する。
【0118】
さらに、少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層は、好ましくは2以上の遊離イソシアネート基及び/又は少なくとも2つのイソシアネート基に反応する遊離基、例えば、アミノ及び/又はヒドロキシル基を有する少なくとも1つの架橋剤を含む。
【0119】
好適な架橋剤は、公知であり、2以上の遊離反応基を有する有機化合物、例えば、2以上の遊離イソシアネート基を有する脂肪族又は脂環式化合物、2以上の遊離の水酸化物基を有する脂肪族又は脂環式化合物、2以上の遊離アミン基を有する又は脂環式化合物、各々の場合において対応してキャップされたこれらの類似物又はこれらの混合物を含む。
【0120】
さらに好ましくは、少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層は、層の総重量に対して、各々の場合に、最大15重量%、さらに好ましくは最大12重量%、好ましくは1重量%~10重量%の割合で少なくとも1つの架橋剤を有する。
【0121】
好ましくは、少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層は、層の総重量に対して、各々の場合に、最大15重量%、好ましくは0.1重量%~12重量%、さらに好ましくは1重量%~10重量%の割合で少なくとも1つの、好ましくは無機の充填剤を有する。
【0122】
好ましくは、少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層は、層の総重量に対して、各々の場合に、好ましくは最大12重量%、好ましくは0.1重量%~10重量%の割合で、少なくとも1つの、好ましくは有機添加物、例えば少なくとも1つの湿潤剤、少なくとも1つのレベリング剤、少なくとも1つの消泡剤、少なくとも1つのチキソトロピー剤又はこれらの混合物を有する。
【0123】
さらに好ましくは、少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層は、0.5μm~15μm、さらに好ましくは1μm~12μmの層厚を有する。
【0124】
好ましくは、少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層は、光開始剤を有していない。
【0125】
光開始剤は、光の吸収後に光分解反応で分解し、したがって反応、例えば重合を開始することができる反応種を形成する化学化合物である。反応種は、フリーラジカル、アニオン又はカチオンとし得る。
【0126】
さらに好ましくは、少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層は、遊離のエチレン性不飽和基を有するバインダ及び光開始剤を有していない。
【0127】
好ましい実施例では、第1の接着促進層は、好ましくは、0.1μm~10μm、さらに好ましくは1μm~4μmの層厚を有し、転写プライの少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層と、好ましくは少なくとも1つの前記装飾層に配置されるか又は後者を形成する少なくとも1つの装飾エレメントとの間に配置される。
【0128】
好ましくは、第1の接着促進層は、少なくとも1つのアクリル樹脂からなるか又は少なくとも1つのアクリル樹脂を有する。
【0129】
好ましくは、第1の接着促進層は、転写プライの少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層と、好ましくは少なくとも1つの前記装飾層に配置されるか又は後者を形成する少なくとも1つの装飾エレメントとの間の接着を促進する。
【0130】
さらに好ましくは、本発明に係る転写フィルムの転写プライは、少なくとも1つのワニス層を有する。ワニス層は、キャリアプライの反対側に面する転写プライの面に配置され、好ましくは後者を形成する。
【0131】
少なくとも1つのワニス層は、好ましくは0.5μm~10μm、さらに好ましくは1μm~5μmの層厚を有する。
【0132】
少なくとも1つのワニス層は、例えば、アクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマー(略称:ABS)又はポリ塩化ビニル(略称:PVC)をベースとした下塗層として及び/又は接着層として形成される。
【0133】
さらに好ましくは、少なくとも1つのワニス層は、物理的に硬化する接着剤、化学的に硬化する接着剤、感圧接着剤又はこれらの混合物からなる群から選択された少なくとも1つの接着剤からなるか又は当該接着剤を有する。
【0134】
好ましくは、少なくとも1つのワニス層は、好ましくは少なくとも1つの前記装飾層に配置されるか後者を形成する少なくとも1つの装飾エレメントと、転写プライに接合された基材との間の接着を促進する。好ましくは、転写プライの少なくとも1つのワニス層は、転写プライを基材に固着するように機能する。
【0135】
さらに好ましくは、それぞれ互いに独立して、染料が溶解し、かつ/又は顔料、例えば、有色顔料、金属顔料、エフェクト顔料、蛍光顔料、サーモクロミック顔料、又はこれらの混合物が、転写プライの少なくとも1つのワニス層及び/又は第1の接着促進層に配置される。
【0136】
当技術分野で周知の方法、例えば、グラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷又はオフセット印刷などの印刷方法及び/又はスロットキャスティングなどのキャスティング方法により、好ましくは、転写のプライの個々の層を好ましくは全面に亘って又は部分的に、転写プライに連続的に適用することによって、本発明に係る転写フィルムが製造されることが好ましい。
【0137】
さらに、蒸着層及び/又は印刷された金属層及び/又は金属酸化物層を装飾エレメント又は装飾層として好ましくは全面に亘って又は部分的に適用してもよい。蒸着された金属層及び/又は金属酸化物層は、当技術分野で周知の方法、例えば、物理蒸着法(PVD)又は化学蒸着法(CVD)によって適用され得る。
【0138】
さらに好ましくは、光学的に活性化された表層構造を複製層に成形した後、少なくとも1つの装飾層は、好ましくは、各々の場合において、所定の領域において又は全面に亘って複製層上に蒸着される。
【0139】
全面に亘る適用後、周知の方法、例えば、洗浄法又はリフトオフワニス、エッチング法、又はフォトレジスト層を用いたマスク露光法などによって、所定の領域において少なくとも1つの装飾層を取り除いてもよい。
【0140】
好ましくは、転写プライの少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層は、第1に、ポリエステル、ポリオレフィン又はこれらの組合せ、特にPETから形成された少なくとも1つのキャリア層を含む転写プライに配置されるか又は適用される。
【0141】
例えば、少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層は、混合物としてキャリアプライに適用され得る。混合物は、好ましくは、以下のa)~f)から構成されるか又はa)~f)を含む。
a)好ましくは、ポリウレタン樹脂、ポリウレタン分散液、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリ尿素、メラミン樹脂、アミノプラスト、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂及びこれらの混合物からなる群、さらに好ましくは、ポリウレタン樹脂、ポリウレタン分散液、フェノール樹脂、ポリ尿素、メラミン樹脂、アミノプラスト、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのバインダ、
b)任意選択で、好ましくはアクリル樹脂、メタクリル樹脂、ビニルエステル樹脂及びこれらの混合物からなる群から選択され、さらに好ましくは遊離のエチレン性不飽和基を有さないコバインダ、
c)任意選択で、少なくとも1つの前記架橋剤、
d)任意選択で、少なくとも1つの前記好ましくは無機の充填剤、
e)任意選択で、少なくとも1つの前記好ましくは有機の添加剤、及び
f)任意選択で、少なくとも1つの溶剤、好ましくは水及び/又は少なくとも1つの有機溶剤。
【0142】
好ましくは、少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層を形成するために使用される混合物は、混合物の重量に対して、それぞれ、
20重量%~90重量%の少なくとも1つの前記バインダと、
5重量%~25重量%の少なくとも1つの前記コバインダと、
0重量%~10重量%の少なくとも1つの前記架橋剤と、
0重量%~10重量%の少なくとも1つの前記充填剤と、
0重量%~10重量%の少なくとも1つの前記添加剤と、
10重量%~50重量%の少なくとも1つの溶剤と、からなるか又はこれらを含む。
【0143】
例えば、少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層は、2以上のイソシアネート基を有する少なくとも1つの前記化合物及びイソシアネート基に反応する2以上の基を有する少なくとも1つの前記化合物の混合物として、前述のようにキャリアプライに適用され得る。好ましくは、2以上のイソシアネート基を有する少なくとも1つの化合物又はイソシアネート基に反応する2以上の基を有する少なくとも1つの化合物のいずれかのモル過剰が用いられる。
【0144】
好ましくは、2以上のイソシアネート基を有する少なくとも1つの化合物及びイソシアネート基に反応する2以上の基を有する少なくとも1つの化合物の反応は、前記混合物の適用前、適用中又は適用後に行われる。
【0145】
さらに好ましくは、少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層の適用は、架橋されているか又は架橋されていない前記イソシアネートプレポリマー、架橋されているか又は架橋されていない前記キャップされたイソシアネートプレポリマー又はこれらの混合物からなるか又はこれらを有する少なくとも1つの流動性の、好ましくは、溶剤を含む、イソシアネート含有組成物の適用により行われる。
【0146】
好ましくは、流動性の、好ましくは溶剤を含む、イソシアネート含有組成物は、好ましくはDIN EN ISO3219:1994-10("Kunststoffe-Polymere/Harze in flussigem, emulgiertem oder dispergiertem der Zustand-Bestimmung der Viskositem mittem m Rotationskosimeter bei definiertem Geschwindigketsefhelle"、発行日1994年10月[「プラスチック-液体状態または乳濁液または分散液としてのポリマー/樹脂-定義された剪断速度の回転粘度計を使用した粘度の測定」(“Plastics - Polymers/resins in the liquid state or as emulsions or dispersions-Determination of viscosity using a rotational viscometer with defined shear rate”))に記載された方法に従って、例えば、HAAKE Viscotester(登録商標)VT550(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、米国マサチューセッツ州ウォルサム)を用いて、さらに好ましくは、円筒形測定装置NV及び測定ビーカNVを用いて求めた、25℃で2mPa・s~1500mPa・s、好ましくは10mPa・s~1000mPa・s、さらに好ましくは10mPa・s~500mPa・sの動粘度を有する。
【0147】
流動性の、好ましくは溶剤を含む、イソシアネート含有組成物は、好ましくは、少なくとも1つの有機溶剤、例えば酢酸エチル、2-ブタノン、アセトン、トルエン、キシレン又はこれらの混合物を含む。
【0148】
さらに好ましくは、前記イソシアネートプレポリマーを含むイソシアネート含有組成物は無水である。一方、前記キャップされたイソシアネートプレポリマーは、水性分散液として存在し得る。
【0149】
代替例では、少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層の適用は、架橋されているか又は架橋されていない、イソシアネート基と反応する遊離基を含む前記プレポリマー、架橋されているか又は架橋されていない、イソシアネート基と反応する前記キャップされた基を含む前記プレポリマー又はこれらの混合物からなるか又はこれらを有するイソシアネート基と反応する、少なくとも1つの流動性の、好ましくは溶剤を含む組成物の適用により行われる。
【0150】
イソシアネート基に反応する流動性の、好ましくは溶剤を含有する組成物は、好ましくはDIN EN ISO3219:1994-10に記載された方法に従って、例えば、HAAKE Viscotester(登録商標)VT550を用いて、さらに好ましくは、円筒形測定装置NV及び測定ビーカNVを用いて求めた、25℃で2mPa・s~1500mPa・s、好ましくは10mPa・s~1000mPa・s、さらに好ましくは10mPa・s~500mPa・sの動粘度を有する。
【0151】
イソシアネート基に反応する流動性の、好ましくは溶剤を含有する組成物は、好ましくは水及び/又は少なくとも1つの有機溶媒、例えば酢酸エチル、2-ブタノン、アセトン、トルエン、キシレン又はこれらの混合物を含む。
【0152】
例えば、イソシアネート基に反応する流動性の、好ましくは溶剤を含有する組成物は、水分散液として存在することができる。
【0153】
代替例では、少なくとも1つの流動性イソシアネート含有組成物及び/又はイソシアネート基に反応する少なくとも1つの流動性の組成物は、チキソトロピック的に安定したペースト(thixotropically stable paste)として形成され得る。このペーストは、好ましくは、攪拌、振とう、へら又はドクターブレードを用いた調整などの機械的作用によって、固体又はペースト状のコンシステンシーから流動性のコンシステンシーに変換され、そして好ましくは、堆積後に再び固体又はペースト状のコンシステンシーを有する。
【0154】
少なくとも、少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層のキャリアプライの反対側に面する側における少なくとも1つの装飾エレメントは、次いで、転写プライの少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層に配置される。
【0155】
例えば、少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層のキャリアプライの反対側に面する側における少なくとも1つの装飾エレメントの配置は、転写プライの少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層に適切な少なくとも1つの装飾エレメントを配置することによって行われる。
【0156】
少なくとも1つの装飾エレメントは、少なくとも1つの装飾層に配置され、例えば溶解及び/又は分散されており、各々の場合において、互いに独立してUVクロスリンクワニス又は熱可塑性可変層を有し、各々の場合において、互いに独立して、無着色であるか又は着色されている。さらに、少なくとも1つの装飾エレメントは、少なくとも1つの装飾層、例えば、好ましくは全面に亘って又は部分的に蒸着及び/又は印刷された金属層及び/又は金属酸化層を形成する。
【0157】
さらに好ましくは、第1の接着促進層は、前述した印刷方法や鋳造方法の少なくとも1つにより、転写プライの少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層と、少なくとも1つの装飾エレメント又は少なくとも1つの装飾プライとの間に配置される。
【0158】
したがって、転写プライの少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層と、少なくとも1つの装飾層との間の接着が向上する。少なくとも1つの装飾層は、透明及び/又は有色のワニス層、特に一つ又は複数の染料及び/又は顔料を有するワニス層、成形された活性表面構造を有する複製層、反射層、特に不透明な反射層、透明な反射層、メタリック反射層又は誘電反射層、光学可変層、光学活性層、干渉多層系、体積ホログラム層、液晶層、特にコレステリック液晶層、電気伝導層、アンテナ層、電極層、磁気層、磁気貯蔵層、バリア層及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0159】
さらに好ましくは、少なくとも1つのワニス層は、最終的に、前述した印刷方法や鋳造方法の少なくとも1つによって、キャリアプライの反対側に面した転写プライの面に配置される。
【0160】
好ましくは請求項1~11のいずれかに記載の転写フィルムを用いてフィルムコーティングされた物品を製造する方法であって、転写フィルムは、キャリアプライと、キャリアプライに配置され、少なくとも1つの装飾エレメントを含む転写プライと、を含む。前記方法は、a)キャリアプライの反対側に面する転写プライの少なくとも1つの面に対して基材を接合するステップと、b)基材に接合された転写プライからキャリアプライを取り除くステップと、c)基材と反対側に面する転写プライの面に少なくとも1つの保護層を適用するステップと、を含む。キャリアプライに隣接する転写プライは、少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層を有する。少なくとも1つの装飾エレメントは、キャリアプライの反対側に面する転写プライの少なくとも1つの上部層の側に配置されている。ステップc)における転写プライの少なくとも1つの上部層に対する少なくとも1つの保護層の適用は、少なくとも1つの溶剤を含む、好ましくは流動性のポリウレタンを含む組成物及びその後、好ましくは25℃~180℃の温度で硬化する組成物による転写プライの少なくとも1つの上部層に対する少なくとも1つの保護層の少なくとも部分的なフラッディング及び/又はダウシングによって行われる。
【0161】
本発明に係る方法によれば、紙、プラスチック、木、複合材、ガラス、金属及これらの組み合わせからなる群から選択される異なる基材に少なくとも1つの保護層を適用することができる。
【0162】
特に、本発明に係る転写フィルムは、少なくとも1つの装飾エレメントを含む転写プライを基材の少なくとも1つの面に転写するとともに、基材に対する少なくとも1つの保護層の接着を向上させる。
【0163】
前述のように、少なくとも1つの装飾エレメントを含む転写プライは、少なくとも1つの装飾エレメントのデザインに応じて、コーティングされた基材の表面の物理的特性、好ましくは、触覚的、光学的、電気的及び/又は機械的特性及び/又は化学的特性に影響を与える。
【0164】
少なくとも1つの装飾エレメントを含む転写プライは、キャリアプライと転写プライとの間に配置された少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層の特有のデザインにより、続いて適用される保護層の接着性をさらに向上させる。
【0165】
まず、本発明に係る方法のステップa)において、基材は、キャリアプライの反対側に面する転写プライの少なくとも1つの面に接合され、好ましくは少なくとも部分的にコーティングされた物品が得られる。
【0166】
好ましくは、ステップa)におけるキャリアプライの反対側に面する転写プライの少なくとも1つの面に対して基材を接合するステップは、a1)紙、プラスチック、木、複合材、ガラス、金属及びこれらの組み合わせからなる群から選択された基材の少なくとも1つの面に対するキャリアプライの反対側に面する転写プライの少なくとも1つの面を接着、ホットスタンピング、ラミネーション(積層)又はこれらの組み合わせにより、又はa2)キャリアプライの反対側に面する転写フィルムの転写プライの少なくとも1つの面を少なくとも1つのプラスチック射出成形組成物で少なくとも部分的に覆うこと、によって行われる。転写フィルムは、少なくとも1つの射出成形金型内に配置され、少なくとも1つの射出成形金型は、少なくとも1つのプラスチック射出成形組成物で充填される。プラスチック射出成形組成物は、熱可塑性物質(プラスチック)、熱硬化性プラスチック又はこれらの混合物を含む。
【0167】
好ましくは、本発明に係る方法のステップa)において、基材は、少なくとも部分的に、好ましくは全表面に亘ってキャリアプライの反対側に面する転写プライの少なくとも1つの面に接合される。
【0168】
好適なプラスチック及び/又はプラスチック射出成形組成物は、好ましくは、アクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマー(略称:ABS)、ポリカーボネート(略称:PC)、ABS及びPCの混合物、ポリオキシメチレン(略称:POM)、ポリメチルメタクリレート(略称:PMMA)、スチレンアクリロニトリルコポリマー(略称:SAN)、アクリロニトリルスチレンアクリレートコポリマー(略称:ASA)、ポリプロピレン(略称:PP)、熱可塑性オレフィン系エラストマー(略称:TPO)、ポリアミド(略称:PA)及び互いに互換性のある前記群のうち少なくとも2つの材料の混合物からなる群から選択される。
【0169】
基材の少なくとも1つの面に対するキャリアプライの反対側に面する転写プライの少なくとも1つの面のラミネーションは、例えば接着剤の存在下で又は接合に用いられる転写フィルム層のガラス移行温度及び適切な圧力下で行われる。
【0170】
さらに好ましくは、キャリアプライの反対側に面する転写プライの少なくとも1つの面に対する基材の接合は、キャリアプライの反対側に面する転写プライの面に配置される少なくとも1つのワニス層を介して行われる。さらに好ましくは、少なくとも1つのワニス層は、物理的に硬化する接着剤、化学的に硬化する接着剤、感圧接着剤又はこれらの混合物からなる群から選択された少なくとも1つの接着剤からなるか又は当該接着剤を有する。
【0171】
本発明に係る方法のステップb)において、キャリアプライは、好ましくは残留物を残すことなく、基材に接着された転写プライから取り除かれる。
【0172】
キャリアプライの除去後、少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層は、少なくとも部分的にコーティングされた物品の外層を少なくとも部分的に形成する。
【0173】
さらに好ましくは、少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層は、基材の反対側に面する転写プライの面を形成している。
【0174】
本発明に係る方法のステップc)において、少なくとも1つの保護層は、転写プライの少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層によって少なくとも部分的に形成された、基材の反対側に面する転写プライの面に適用される。
【0175】
ステップc)における転写プライの少なくとも1つの上部層に対する少なくとも1つの保護層の適用は、少なくとも1つの溶剤を含む、好ましくは流動性のポリウレタンを含む組成物による転写プライの少なくとも1つの上部層に対する少なくとも1つの保護層の少なくとも部分的なフラッディング及び/又はダウシングによって行われる。
【0176】
「流動性ポリウレタンを含む組成物」なる用語は、好ましくはDIN EN ISO3219:1994-10に記載された方法に従って、例えば、HAAKE Viscotester(登録商標)VT550を用いて、さらに好ましくは、円筒形測定装置NV及び測定ビーカNVを用いて求めた、好ましくは25℃で、2mPa・s~1500mPa・s、好ましくは10mPa・s~1000mPa・s、さらに好ましくは10mPa・s~500mPa・sの動粘度を有するポリウレタンを含む組成物を意味する。
【0177】
前述のように、少なくとも1つの溶剤を含む、好ましくは流動性のポリウレタンを含む組成物は、同様に、好ましくは遊離の反応基、好ましくは遊離のイソシアネート基又はイソシアネート基に反応する遊離基及び/又は各々の場合において、30℃~180℃で対応する反応基を再び遊離させる対応するキャップされた反応基を有する。
【0178】
転写プライの少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層及び/又は上部層に適用された保護層が硬化、好ましくは完全に硬化する間、例えば、転写プライの上部層に含まれる遊離のイソシアネート基は、少なくとも1つの保護層の形成に使用される溶剤を含む、好ましくは流動性のポリウレタンを含む組成物のイソシアネート基と反応する遊離基と反応する。
【0179】
各々の場合において、転写プライの少なくとも1つの上部層に対する少なくとも1つの保護層の接着は、望ましくは、本発明に係る方法のステップc)における硬化した後に著しく向上する。
【0180】
さらに好ましくは、少なくとも1つの溶剤を含む、好ましくは流動性のポリウレタンを含む組成物は、ポリウレタン含有分散液、ポリウレタン含有樹脂、ポリウレタン溶液、ポリウレタン前駆体を含む組成物(2C PUR系)及びこれらの混合物からなる群から選択され、これらは、好ましくは同様に遊離の反応基、好ましくはイソシアネート基又はイソシアネート基に反応する基及び/又は各々の場合において、30℃~180℃の温度で対応する反応基を再び遊離させる対応するキャップされた反応基を有する。
【0181】
前述のように、例えば、少なくとも1つの溶剤を含む、好ましくは流動性のポリウレタンを含む組成物は、ポリウレタン前駆体(2C PUR系)を含む組成物として、特に、2以上のイソシアネート基を有する前記化合物の少なくとも1つと、イソシアネート基に対して反応する2以上の基を有する前記化合物の少なくとも1つとの混合物として、転写プライの少なくとも1つの上部層に適用され得る。ここで、好ましくは、2以上のイソシアネート基を有する少なくとも1つの化合物又はイソシアネート基に反応する2以上の基を有する少なくとも1つの化合物のいずれかのモル過剰が用いられる。
【0182】
例えば、ポリウレタン含有散液、ポリウレタン含有樹脂及び/又はポリウレタン溶液は、架橋されているか又は架橋されていないイソシアネート基に反応する遊離基を含む前記プレポリマー、架橋されているか又は架橋されていないイソシアネート基に反応するキャップされた基を含む前記プレポリマー又はこれらの混合物及び/又は架橋されているか又は架橋されていない前記イソシアネートプレポリマー、架橋されているか又は架橋されていない前記キャップされたイソシアネートプレポリマー又はこれらの混合物を有する。
【0183】
さらに好ましくは、少なくとも1つの保護層を形成するために使用される、少なくとも1つの溶剤を含む、好ましくは流動性のポリウレタンを含む組成物は、少なくとも1つの有機溶剤、例えば酢酸エチル、2-ブタノン、アセトン、トルエン、キシレン又はこれらの混合物を有する。
【0184】
さらに好ましくは、前記イソシアネートプレポリマーを含み、少なくとも1つの保護層の形成に使用される、少なくとも1つの溶剤を含む、好ましくは流動性のポリウレタン含有組成物は、無水である。他方、前記キャップされたイソシアネートプレポリマーは、水性分散液として存在し得る。
【0185】
さらに好ましくは、架橋されているか又は架橋されていないイソシアネート基に反応する遊離基を含む前記プレポリマー、架橋されているか又は架橋されていないイソシアネート基に反応するキャップされた基を含む前記プレポリマー又はこれらの混合物を含み、少なくとも1つの保護層を形成するために使用される、少なくとも1つの溶剤を含む、好ましくは流動性のポリウレタンを含む組成物は、水及び/又は少なくとも1つの有機溶剤、例えば、酢酸エチル、2-ブタノン、アセトン、トルエン、キシレン又はこれらの混合物を有する。
【0186】
本発明に係る方法のステップb)における好ましくはキャリアプライの完全な除去後、少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層に対する少なくとも1つの保護層の適用は、ステップc)において、少なくとも1つの溶剤を含む、好ましくは流動性のポリウレタンを含む組成物による1つの上部層の少なくとも部分的なフラッディング及び/又は少なくともダウシング及びその後、好ましくは25℃~180℃の温度での硬化によって好ましくは直接行われる。
【0187】
2C PUR系を使用する場合、ポリウレタン前駆体、例えばポリオール含有成分及びイソシアネート含有成分は、好ましくは、別々に保存され、混合ヘッドにおいて必要な場合にだけ組み合わされる。ポリウレタン前駆体の反応中に生じる反応熱により、好ましくは、60℃~180℃、好ましくは80℃~120℃の加熱が行われる。
【0188】
使用する型の表面又は壁は、40℃~160℃、好ましくは80℃~120℃の温度を有することが好ましい。
【0189】
好ましくは、ステップc)における、少なくとも1つの上部層に少なくとも1つの保護層を適用するステップは、オープンフラッディング(open flooding)、鋳造金型におけるフラッディング又は2C金型におけるフラッディングにより行われる。
【0190】
オープンフラッディングの場合、少なくとも1つの保護層を形成するために使用される少なくとも1つの溶剤を含む、好ましくは流動性のポリウレタンを含む組成物の表面張力は、好ましくは、フラッディングされる構成要素の外縁領域において利用される。保護層は、金型の輪郭を画定する金型を用いることなく、構成要素上にフラッディングされる。好ましくは、フラッディングされた構成要素を、好ましくは2秒~60秒間、20℃~100℃で適切に保存することによって硬化が行われる。
【0191】
鋳造金型におけるフラッディングの場合、フラッディングされる領域をキャビティとして予め定めた閉型された金型内において全プロセスが行われる。
【0192】
少なくとも1つの保護層を形成するために使用される少なくとも1つの溶剤を含む、好ましくは流動性のポリウレタンを含む組成物は、好ましくは、10バール未満の圧力で、混合ヘッドを介して注がれる。
【0193】
第1の硬化段階は、例えば60℃~160℃の温度、好ましくは60秒~600秒間で金型を熱に曝すことによって開始される。
【0194】
鋳造金型から取り出した後、残留硬化のため、構成要素は、さらなる使用の前に、好ましくはさらに約24時間の間保存される。
【0195】
2C金型におけるフラッディングの場合、フラッディングは、射出成形プロセスと組み合わされて行われる。ここで、熱可塑性物質、熱硬化性プラスチック又はこれらの混合物を含む少なくとも1つのプラスチック射出成形組成物によるキャリアプライの反対側に面する転写フィルムの転写プライの少なくとも1つの面の少なくとも部分的な被覆は、2C金型の第1の領域で行われることが好ましい。
【0196】
2C金型の第2の領域では、少なくとも1つの溶剤を含む、好ましくは流動性のポリウレタンを含む組成物による少なくとも1つの上部層の少なくとも部分的なフラッディング及び/又はダウシングは、PUR混合ヘッドにより行われる。
【0197】
2C金型は、好ましくは、各々の位置にもたらされるシフトプレート又は回転機構を有する。
【0198】
少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層及びこれに適用された保護層が硬化、好ましくは完全に硬化する間、例えば、転写プライの上部層に含まれる遊離のイソシアネート基は、少なくとも1つの保護層を形成するために使用される、溶剤を含む、好ましくは流動性のポリウレタンを含む組成物の、イソシアネート基と反応する遊離基と反応する。
【0199】
各層の架橋可能なポリマー成分、好ましくはバインダ、例えば遊離のイソシアネート基及び/又はイソシアネート基に反応する遊離基の95%以上が架橋を有する場合、層は本発明における意味において「硬化」と呼ばれることが好ましい。
【0200】
ステップc)における少なくとも1つの保護層の適用前及び/又は適用中後及び/又は適用後、少なくとも1つの保護層は、好ましくは、転写プライの少なくとも1つの上部層内/上に粒子を配置することにより、ステップb)の後及び/又はステップc)における適用中に金型構造の使用を介して及び/又は少なくとも1つの保護層のレーザー加工、オーバープリント、機械加工及び/又は少なくともオーバスタンプを介して変更(改質)され、かつ/又は構造化される。
【0201】
好ましくは、保護層及び転写プライの少なくとも1つの上部層の変更は、既に転写プライに存在するモチーフ及び/又はデザインの特徴の印象を与えるように、例えば、木目の印象を与える表面構造又はモチーフの印象を与える接触によって知覚される構造によって行なわれる。
【0202】
本発明に係る方法により形成された少なくとも1つの保護層は、好ましくは、透明であるか又は減少させた程度光通過性を有する。
【0203】
「透明」とは、好ましくは、電磁スペクトルの対応する部分の50%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上の可視波長範囲における透過を意味する。
【0204】
好ましくは請求項12~17のいずれかの方法により、さらに好ましくは請求項1~11のいずれか記載の転写フィルムを用いて製造された本発明に係るフィルムコーティングされた物品は、基材と、少なくとも部分的に基材の少なくとも1つの面に配置された少なくとも1つの装飾エレメントを含む少なくとも1つの転写プライと、を有する。基材の反対側に面する転写プライの側は、好ましくは硬化された少なくとも1つの上部層によって形成される。上部層には、ポリウレタンをベースとする少なくとも1つのプラスチックを含み、0.2mm~5mmの層厚を有する少なくとも1つの保護層が配置される。少なくとも1つの保護層は、DIN EN ISO4624:2016-08に記載された方法、好ましくは、20mmのドリーを用いた、デフェルスコ社(米国ニューヨーク州オグデンズバーグ)製のPosiTest(登録商標)ATシリーズの引張り接着試験機により決定された、2.5MPa~5MPa、特に2.5MPa~10MPaの接着性を有して、少なくとも1つの、好ましくは硬化した上層部に接着される。
【0205】
好ましくは、基材は、紙、プラスチック、木、複合材料、特に織布又は不織布繊維複合材料、又は積層体、ガラス、金属及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0206】
以下、例示した添付の図面を参照しつつ複数の実施例について本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0207】
【
図5】
図5は、フィルムコーティングされた物品の概略図である。
【
図6】
図6は、フィルムコーティングされた物品の概略図である。
【
図7】
図7は、フィルムコーティングされた物品の概略図である。
【
図8】
図8は、フィルムコーティングされた物品の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0208】
本願において使用される略語「wt.%」は、含量「重量%」を示す。
【0209】
本発明に係る転写フィルム1は、キャリアプライ10,10’と、キャリアプライ10,10’に対して配置され、少なくとも1つの装飾エレメントを含む転写プライ13,13’,13’’と、を有する。キャリアプライ10,10’に隣接した転写プライ13,13’,13’’は、少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層15を有する。少なくとも1つの装飾エレメントは、キャリアプライ10,10’と反対の側となる少なくとも1つの上部層15の側に配置されている。キャリアプライ10,10’は、ポリエステル、ポリオレフィン又はこれらの組み合わせ、特にPETからなる少なくとも1つのキャリア層11であり、好ましくは10μm~75μm、さらに好ましくは20μm~40μmの層厚を有する。
【0210】
好ましくは、少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層15は、0.5μm~15μm、好ましくは1μm~12μmの層厚を有する。
【0211】
好ましくは、少なくとも1つの装飾エレメントは、少なくとも1つの装飾層14に配置されており、各々の場合において、互いに独立してUVクロスリンクワニス又は熱可塑性可変層を有し、各々の場合において、互いに独立して、無着色であるか、着色されているか又は染色されている。
【0212】
少なくとも1つの装飾層14の層厚は、さらに好ましくは、それぞれ互いに独立して、0.1μm~15μm、さらに好ましくは4μm~8μmである。
【0213】
図1に示す本発明に係る転写フィルム1の好ましい実施例では、少なくとも1つの装飾エレメントは、少なくとも1つの装飾層14に配置される。少なくとも1つの装飾層14は、キャリアプライ10,10’と反対側となる、転写プライ13の少なくとも1つの上部層15の側に配置される。
【0214】
少なくとも1つの装飾層14は、1つの転写プライ13,13’,13’’の全面に亘って又は部分的に配置された一つ又は複数の層を有する。当該一つ又は複数の層は、一つの透明及び/又は着色ワニス層、特に一つ又は複数の染料及び/又は顔料を含むワニス層、成形された光学活性表面構造を有する複製層、反射層、特に不透明な反射層、透明な反射層、金属反射層又は誘電反射層、光学可変層、接着促進層、接着層、ホットメルト接着層、ヒートシール転写プライ、低温接着層、干渉多層系、体積ホログラム層、液晶層、特にコレステリック液晶層、導電層、アンテナ層、電極層、磁気層、磁気記憶層、バリア層、及び/又は前記の層のうちの2以上の組み合わせからなる群から選択される。
【0215】
例えば、好ましくは0.5μm~10μm、さらに好ましくは1μm~5μmの層厚を有する少なくとも1つのワニス層16は、キャリアプライ10,10’の反対側に面する転写プライ13,13’,13’’の面に配置される。
【0216】
図2に示す本発明に係る転写フィルム1の好ましい実施例では、少なくとも1つのワニス層16は、キャリアプライ10と反対側に面する転写プライ13の面に配置されている。
【0217】
図2に示す好ましい実施例では、少なくとも1つの装飾層14は、転写プライ13’の少なくとも1つの上部層15と少なくとも1つのワニス層16との間に配置されている。
【0218】
好ましくは、少なくとも1つのワニス層16は、物理的に硬化する接着剤、化学的に硬化する接着剤、感圧接着剤又はこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの接着剤を含むか又は少なくとも1つの接着剤からなる。
【0219】
好ましくは、第1の接着促進層17は、好ましくは0.1μm~10μm、さらに好ましくは1μm~4μmの層厚を有し、少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層15と少なくとも1つの装飾層14との間に配置される。
【0220】
好ましくは、第1の接着促進層は、少なくとも1つのアクリル樹脂を含むか又は少なくとも1つのアクリル樹脂からなる。
【0221】
図3に示す本発明に係る転写フィルム1の好ましい実施例では、第1の接着促進層17は、少なくとも所定の領域において未だ完全に硬化していない少なくとも1つの上部層15と、少なくとも1つの装飾層14との間に配置されている。さらに、少なくとも1つのワニス層16は、キャリアプライ10と反対側に面する転写プライ13’’の面に配置される。
【0222】
好ましくは、転写フィルム1は、少なくとも1つの剥離層12を有する。剥離層12は、好ましくは0.1nm~50nm、より好ましくは1nm~20nmの層厚を有し、キャリア層11と少なくとも1つの上部層15との間に配置される。
【0223】
さらに好ましくは、少なくとも1つの剥離層12は、少なくとも1つのワックスを含むか又は少なくとも1つのワックスからなる。
【0224】
図4に示す本発明に係る転写フィルム1の好ましい実施例では、キャリアプライ10’は、少なくとも1つのキャリア層11と、キャリア層11に配置された少なくとも1つの剥離層12と、から形成されている。キャリアプライ10’に配置された転写プライ13は、好ましくは、剥離層12に配置された少なくとも1つの上部層15と、上部層15に配置された少なくとも1つの装飾層14と、から形成される。
【0225】
好ましくは、キャリアプライ10,10’は、少なくとも1つの上部層15に配置され、好ましくはツヴィック社製の測定器であるZ006を用いて測定したときに2cN~50cN、好ましくは5cN~35cNとなる接着性を有する。
【0226】
ツヴィック社製の測定器Z006を用いた少なくとも1つの上部層15に対するキャリアプライ10,10’の接着性の測定中、第1のステップでは、ホットスタンピングによって幅3.5cmの転写フィルムをプラスチックプレートに強力に適用することによって、コーティングされた試験片を形成することが好ましい。
【0227】
測定中、第2ステップにおいて、キャリアプライを100mmの長さに亘って垂直に試験片から剥離することが好ましい。適用されたキャリアフィルムの10mm~90mmの長さ領域に要求される力は、ツヴィック社(独国ウルム)製の測定器Z006で測定することが好ましい。
【0228】
接着性を測定するために、前記測定器Z006を、水平方向に延在する基材レシーバと組み合わせることが好ましい。基材レシーバは可動スライドを有し、試験基材が取り付けられている。転写フィルム1は、特にホットスタンピングによって試験基材に適用される。適用された転写フィルム1のキャリアプライ10,10’は、偏向ローラによって水平方向から垂直方向に偏向され、前記測定器に取り付けられることが好ましい。キャリアプライ10,10’に可能な限り均一に作用する力を測定器により測定するとき、試験基材に適用されたキャリアプライ10,10’を転写プライ13,13’,13’’から剥がすように、試験基材のスライドが移動されるか、引っ張られる。
【0229】
請求項1~11のいずれかに記載の転写フィルム1を用いて、請求項12~17のいずれかに記載の方法により製造された本発明に係るフィルムコーティングされた物品2は、基材Sと、基材Sの少なくとも一方の面に少なくとも部分的に配置された少なくとも1つの装飾エレメントを含む少なくとも1つの転写プライ13,13’,13’’と、を有する。基材Sの反対側に位置する転写プライ13,13’,13’’の側は、少なくとも1つの、好ましくは硬化した上部層15によって形成される。この上部層15上に、0.2mm~5mmの層厚を有するポリウレタンベースの少なくとも1つのプラスチックを含む少なくとも1つの保護層20が配置される。少なくとも1つの保護層20は、DIN EN ISO4624:2016-08に記載されている方法に従って、好ましくは、デフェルスコ社(米国ニューヨーク州オグデンズバーグ)製のPosiTest(登録商標)ATシリーズの引張接着試験機により20mmのドリーを用いて求めた2.5MPa~5MPa、特に2.5MPa~10MPaの接着性を有して少なくとも1つの上部層15に付着する。
【0230】
DIN EN ISO4624:2016-08("Beschichtungsstoffe-Abreisversuch zur Bestimmung der Haftfestigkeit"、発行日:2016年8月[塗料及びワニス-接着の引き離し試験("Paints and varnishes-Pull-off test for adhesion")])及びDIN EN ISO16276-1:2007-08("Korrosionsschutz von Stahlbauten durch Beschichtungssysteme-Beurteilung der Adhasion/Kohasion (Haftfestigkeit) einer Beschichtung und Kriterien fur deren Annahme-Teil 1: Abreisversuch"、発行日:2007年8月[保護塗装システムによる鋼構造物の腐食保護-コーティングの付着力/凝集力(破壊強度)の評価と許容基準-パート1:引き離し試験("Corrosion protection of steel structures by protective paint systems-Assessment of, and acceptance for, the adhesion/cohesion (fracture strength) of a coating-Part 1: Pull-off testing")])に記載された方法、例えば、油圧により、好ましくは、コーティングの特定の試験領域を基材から取り外すのに必要な力を測定するデフェルスコ社(米国ニューヨーク州オグデンズバーグ)製のPosiTest(登録商標)AT接着試験機を使用して接着性が決定される。
【0231】
好ましくは、基材Sは、紙、プラスチック、木材、複合材、ガラス、金属及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0232】
図5に示す本発明に係るフィルムコーティングされた物品2の好ましい実施例では、転写プライ13は、硬化した上部層15と、基材Sの少なくとも1つの面に部分的に配置された少なくとも1つの装飾層14と、を有する。基材Sの反対側となる転写プライ13の側は、少なくとも1つの、好ましくは硬化した上部層15によって形成される。この上部層15上に、0.2mm~5mmの層厚を有するポリウレタンをベースとした少なくとも1つのプラスチックを含む少なくとも1つの保護層20が配置されている。
【0233】
さらに、保護層20は基材Sに配置される。
【0234】
転写プライ13は、
図1又は
図4に示す転写フィルム1の部分的なホットスタンピングによってプラスチックを含む基材Sに接合されている。接合後、それぞれのキャリアプライ10又は10’は、基材Sに配置された転写プライ13から取り除かれる。
【0235】
次いで、転写プライ13の少なくとも1つの上部層15に対する少なくとも1つの保護層20の適用は、少なくとも1つの溶剤を含み、好ましくは流動性のポリウレタン含み、その後、好ましくは60℃~160℃の温度で硬化する組成物による転写プライ13の少なくとも1つの上部層15のフラッディング及び/又はダウシングによって行われる。
【0236】
図6に示す本発明に係るフィルムコーティングされた物品2の好ましい実施例では、転写プライ13は、硬化した上部層15と、少なくとも1つの装飾層14と、を有する。装飾層14は、全面に亘って基材Sの少なくとも1つの面に配置されている。基材Sの反対側となる転写プライ13の側は、少なくとも1つの、好ましくは硬化した上部層15によって形成される。上部層15の上に、ポリウレタンをベースとした少なくとも1つのプラスチックを含む、0.2mm~5mmの層厚を有する少なくとも1つの保護層20が配置される。
【0237】
保護層20は、転写プライ13だけに配置されている。
【0238】
転写プライ13は、
図1又は
図4に示す転写フィルム1の全面に亘って、ホットスタンピングによりプラスチックを含む基材Sに接合されている。接合後、各々のキャリアプライ10又は10’は、基材Sに配置された転写プライ13から取り除かれる。
【0239】
その後、転写プライ13の少なくとも1つの上部層15に対する少なくとも1つの保護層20の適用は、少なくとも1つの溶剤を含み、好ましくは流動性のポリウレタン含み、その後、好ましくは60℃~160℃の温度で硬化する組成物による転写プライ13の少なくとも1つの上部層15のフラッディング及び/又はダウシングによって行われる。
【0240】
図7に示す本発明によるフィルムコーティングされた物品2の好ましい実施例では、転写プライ13は少なくとも1つの硬化した上部層15と、全面に亘って基材Sの少なくとも1つの面に配置された少なくとも1つの装飾層14と、を有している。基材Sの反対側となる転写プライ13の側は、少なくとも1つの、好ましくは硬化した上部層15によって形成される。上部層15の上には、0.2mm~5mmの層厚のポリウレタンをベースとした少なくとも1つのプラスチックを含む少なくとも1つの保護層20が配置されている。
【0241】
上部層15は、0.5μm~15μm、好ましくは1μm~12μmの層厚を有する。
【0242】
キャリアプライの反対側に面する、転写フィルムの転写プライ13の少なくとも1つの面に対する基材Sの接合は、
図1又は
図4に示す、装飾層14により形成された、転写フィルム1の転写プライ13の全面を熱可塑性プラスチック、熱硬化性プラスチック又はこれらの混合物からなる少なくとも1つのプラスチック射出成形組成物で覆うことによって行われる。
【0243】
結合後、それぞれのキャリアプライ10又は10’は基材Sに配置された転写プライ13から取り除かれる。
【0244】
次いで、転写プライ13の少なくとも1つの上部層15に対する少なくとも1つの保護層20の適用は、少なくとも1つの溶剤を含み、好ましくは流動性のポリウレタン含み、その後、好ましくは60℃~160℃の温度で硬化する組成物による転写プライ13の少なくとも1つの上部層15のフラッディング及び/又はダウシングによって行われる。
【0245】
図8に示す本発明に係るフィルムコーティングされた物品2の好ましい実施例では、転写プライ13’は、少なくとも1つの硬化した上部層15と、少なくとも1つの装飾層14と、全面に亘って基材Sの少なくとも1つの面に配置された少なくとも1つのワニス層16と、を有する。基材Sの反対側となる転写プライ13の側は、少なくとも1つの、好ましくは硬化した上部層15によって形成されている。上部層15には、0.2mm~5mmの層厚を有するポリウレタンをベースとした少なくとも1つのプラスチックを含む少なくとも1つの保護層20が配置されている。
【0246】
上部層15は、0.5μm~15μm、好ましくは1μm~12μmの層厚を有する。
【0247】
キャリアプライの反対側に面する転写フィルム1の転写プライ13’の少なくとも1つの面に対する基材Sの接合は、
図2に示す、ワニス層16により形成された、転写フィルム1の転写プライ13’の面を全面に亘って基材Sの少なくとも1つの面に積層することによって行われる。
【0248】
その後、転写プライ13の少なくとも1つの上部層15に対する少なくとも1つの保護層20の適用は、少なくとも1つの溶剤を含み、好ましくは流動性のポリウレタン含み、その後、好ましくは60℃~160℃の温度で硬化する組成物による転写プライ13の少なくとも1つの上部層15のフラッディング及び/又はダウシングによって行われる。
【0249】
図8に示す本発明の好ましい実施例に係るフィルムコーティングされた物品2は、アンダーカットを有する。
【0250】
本発明に係る方法では、装飾的なアンダーカットは、少なくとも1つの装飾により単純な方法でコーティングされ、次いで、少なくとも1つの保護層で簡単な方法でコーティングされ得る。
【0251】
図1~4に示す転写フィルム1の上部層15を製造するため、例えば、以下の樹脂の組成物を用いることができる。各々の場合、樹脂組成物の総重量に対して、
20重量%~90重量%の少なくとも1つのバインダ、例えばポリウレタン、
5重量%~25重量%の少なくとも1つのコバインダ、例えばアクリレートコポリマー、
1重量%~10重量%の少なくとも1つの前記架橋剤、
0重量%~10重量%の少なくとも1つの充填剤、例えばエアロジル、
0重量%~10重量%の少なくとも1つの前記添加剤、
10重量%~50重量%の少なくとも1つの溶剤、例えば水。
【符号の説明】
【0252】
1 転写フィルム
2 フィルムコーティングされた物品
S 基材
10,10’ キャリアプライ
11 キャリア層
12 剥離層
13,13’,13’’ 転写プライ
14 装飾層
15 上部層
16 ワニス層
17 第1の接着促進層
20 保護層