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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-30
(45)【発行日】2023-06-07
(54)【発明の名称】酸素化システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/18 20060101AFI20230531BHJP
【FI】
A61M1/18 525
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020545492
(86)(22)【出願日】2019-03-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-17
(86)【国際出願番号】 GB2019050579
(87)【国際公開番号】W WO2019166823
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2021-12-07
(31)【優先権主張番号】1803400.9
(32)【優先日】2018-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1818112.3
(32)【優先日】2018-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】517165302
【氏名又は名称】スペクトラム メディカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】バウアーズ、 スコット
(72)【発明者】
【氏名】ターナー、 スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】タマリ、 ジェレミー
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-079083(JP,A)
【文献】特開2004-160217(JP,A)
【文献】国際公開第2016/181189(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/026672(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/16,1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体外換気システム用の酸素供給器であって、
ガス血液インターフェースを通して酸素化ガスの供給と血液とのガス交換を可能にするように配置されたガス流路及び血液流路を含み、
前記ガス流路は、ガス入口ゾーンから前記ガス血液インターフェースを通ってガス排出ゾーンに通じ、
前記血液流路は、血液入口から前記ガス血液インターフェースを通って血液出口に通じ、
前記酸素供給器は、前記酸素化ガスの供給が前記ガス血液インターフェースの異なるインターフェース領域に対して異なるように調節されることを可能にする供給ガス分配装置を含み、
前記異なるインターフェース領域は、前記ガス血液インターフェースを通して導かれる血液が各インターフェース領域を通過するように血流方向に連続的に配置され、
前記ガス血液インターフェースは、前記血液流路内に均一に分布している、酸素供給器。
【請求項2】
前記供給ガス分配装置は、それぞれが前記ガス入口ゾーンを複数のガス入口セクションに分割する1つ以上の仕切りを含み、各セクションは、前記ガス血液インターフェースの異なる領域との境界を有する、請求項1に記載の酸素供給器。
【請求項3】
前記供給ガス分配装置は、それぞれが前記ガス血液インターフェースを複数のガス血液インターフェース区画に分割する1つ以上の仕切りを含む、請求項1又は2に記載の酸素供給器。
【請求項4】
前記ガス血液インターフェースを通る前記血液流路は円形又は楕円形の輪郭を有し、かつ/又は前記ガス血液インターフェースを通る血液流路は直線状である、請求項2又は3に記載の酸素供給器。
【請求項5】
前記ガス流路は直線的に延び、前記ガス血液インターフェースの構成は、前記ガス入口ゾーンに向かってガス流路開口部を含む中空繊維を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の酸素供給器。
【請求項6】
1つ以上の中空繊維又は1つ以上の中空繊維群の開口部を個別に閉鎖及び/又は開放することを可能にする機構を含む、請求項5に記載の酸素供給器。
【請求項7】
前記供給ガス分配装置は、それぞれが前記ガス入口ゾーンに酸素化ガスを供給するのに適した複数のガス入口ポートを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の酸素供給器。
【請求項8】
ガス入口セクションごとに別個の入口ポートが設けられている、請求項1から7のいずれか一項に記載の酸素供給器。
【請求項9】
流入血液の酸素濃度、流入血液の二酸化炭素濃度、流出血液の酸素濃度、流出血液の二酸化炭素濃度、及び血液温度から成る群から選択される1つ以上の血液値を表す測定値を得るための血液センサー装置を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の酸素供給器。
【請求項10】
酸素化ガス流量、酸素化ガス圧力、排気ガス流量、排気ガス圧力、排気ガス酸素濃度、及び排気ガス二酸化炭素濃度から成る群から選択される1つ以上のガス値を表す測定値を得るためのガスセンサー装置を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の酸素供給器。
【請求項11】
1つ以上の血液値又は1つ以上のガス値を表す1つ以上の測定値を受け取り、測定値に応答して酸素ガス供給ガスの流量及び/又は組成を調節するように構成された供給ガス制御システムを含む、請求項9又は10に記載の酸素供給器。
【請求項12】
前記ガス血液インターフェースを迂回する前記血液入口から前記血液出口への迂回路を提供する静脈動脈シャントを含み、前記静脈動脈シャントは、前記酸素化ガスの供給に曝されることなく、流入血液の一部を前記血液出口へ進路変更することを可能にする、請求項1から11のいずれか一項に記載の酸素供給器。
【請求項13】
前記ガス血液インターフェースを迂回するように進路変更される流入血液の量を制御するためのシャント流量コントローラをさらに含む、請求項12に記載の酸素供給器。
【請求項14】
1つ以上の血液値及び/又はガス値を表す1つ以上の測定値を受け取り、血液値を予め定められた設定値に維持するために前記測定値に応答して前記シャント通路を通して進路変更される血液の流量を調節するべく前記シャント流量コントローラを作動させるように構成される、請求項13に記載の酸素供給器。
【請求項15】
それぞれが前記供給ガス分配装置に接続された1つ以上の酸素化ガス供給ラインを含む体外換気システムに含まれる、請求項1から14のいずれか一項に記載の酸素供給器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス状微小塞栓の気泡(GME)の形成を制限しながらGMEの除去に有利な条件を提供する酸素化システム並びに体外血液酸素化及び二酸化炭素制御のための方法に関する。特に、本発明は、GMEの形成を除去及び/又は低減する条件を提供する酸素化システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
体外灌流は、患者からの血液が患者の体外に循環され、患者に戻される状態になるか又は血液が患者に戻されない体外検査の目的でのみ使用されるように、再酸素化されてその二酸化炭素レベルが調製されるプロセスである。より具体的には、静脈の(酸素が減少した)血液は、流入ラインすなわち静脈ラインを通して酸素供給器に供給され、酸素供給器で、血液は、流出ラインすなわち動脈ラインを通して動脈血として患者に戻すために、酸素供給器内の酸素化ガスへの曝露によって酸素化される。
【0003】
体外潅流は通常、例えば開心術や肺治療などの医療処置の間、心臓と肺の機能の代わりをするために使用される。その場合、体外血液はその後患者に戻すための状態になる。血液調整には、適切な温度、流量、ライン圧力の設定、及び抗凝固剤などの薬剤との混合が含まれる。酸素含有量及び二酸化炭素含有量に関しては、これは酸素供給器で調製され、酸素供給器で血液がガス血液インターフェースを通して酸素化ガスに曝され、ガス血液インターフェースを通して酸素が血液中に拡散して血液に取り込まれる。ガス血液インターフェースは、ガスが中空繊維の内部通路を通過する中空繊維のガス透過性壁と、中空繊維の外側の周囲の血液とによって提供され得る。血液が酸素供給器を出た後、通常、血液が患者に投与される前に血中酸素含有量を増加させる更なる可能性はない。関連する流量の実例を提供するために、成人患者では、血液は、毎分約5リットル(lpm)の典型的な流量で循環され得る。この理由及び他の理由から、酸素供給器を出る血液が適切に酸素化され、二酸化炭素レベルが適切であることを確実にするために、多くのパラメータを制御しなければならない。
【0004】
特許文献1として公開され、その内容が参照により組み込まれている、本出願人による国際特許出願PCT/GB205/053694は、酸素化ガスに対する排気ガスの流量を制御するための流量制御装置を含む換気システム用の酸素化システムを開示している。特許文献1は、低流量で高精度の酸素含有量を有する酸素化ガスを調合するための混合器も開示している。特許文献1に開示された混合器及び流量制御装置は、高度な混合精度を可能にしながら、かつ排気ガスを低いが酸素化ガスの供給よりも高い適切な流量で引き出すことを可能にしながら、酸素化ガスの低流量を維持するために使用することができる。
【0005】
特許文献1に記載されているように、低流量での制御された排気ガス除去を支援するために真空を使用することができるとしても、酸素供給器ハウジングは、排気側(出口)から酸素化ガス入口への正の圧力勾配を回避するために、酸素供給器の排気側での加圧を回避するべくその排気側に開口部に含むので、酸素供給器内のガス流は大気圧で達成される。出口から入口への著しい圧力勾配は、ガス血液インターフェース(通常、ガス透過性のガス交換繊維で構成される)を横切るガスの総量の導入につながり、その結果血液中に気泡が生じ、血液を患者に戻すのに危険なものにする。
【0006】
特許文献2として公開されている本出願人による英国特許出願GB1705556.7は、過圧に対する安全機構を含む圧力絶縁型の酸素供給器ハウジングを提供することによって、緊急時の圧力逃し要件を満たしながら低圧の(大気圧未満の)圧力状態を維持することができる酸素供給器の設計を開示している。低圧の圧力状態は、血液中の気泡の形成を減少させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2016/087859号
【文献】英国特許出願公開第2561221号明細書
【文献】国際公開第2016/087861号
【文献】英国特許出願公開第2563062号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、体外灌流中の血液酸素化のための更なる選択肢を提供することに関係している。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、請求項1に記載の酸素供給器が提供される。
【0010】
酸素供給器は、体外換気システム用であり、ガス血液インターフェースを介して酸素化ガスの供給と血液とのガス交換を可能にするように配置されたガス流路及び血液流路を含み、ガス流路は、ガス入口ゾーンからガス血液インターフェースを通ってガス排出ゾーンに通じている。血液流路は、血液入口からガス血液インターフェースを通って血液出口に通じている。
【0011】
酸素供給器は、酸素化ガスの供給がガス血液インターフェースの異なるインターフェース領域に対して異なるように調節されることを可能にする供給ガス分配装置を含む。異なるインターフェース領域は、ガス血液インターフェースを通して導かれた血液が各インターフェース領域を通過するように血流方向に連続して配置され、ガス血液インターフェースは、血液流路内に均一に分布される。
【0012】
ガス血液インターフェースは、中空繊維の束などのインターフェース構造がいわゆるポッティングによって一緒に保持される配置の形態で提供され得る。中空繊維は、ガス入口ゾーンからガス血液インターフェースを通ってガス排出ゾーンへのガス流路を提供する。ポッティングは、中空繊維のいずれかの端部に設けられ、血液流路の境界として2つの壁構造を提供する。一方の壁は、ガス入口ゾーンとガス血液インターフェースとの間の繊維の入口に面する側に位置し、他方の壁は、ガス血液インターフェースとガス排出ゾーンとの間の繊維の出口に面する側に位置する。ポッティングの間の領域は、酸素化ガスが中空繊維内を通過する間に血液が中空繊維の周囲を通過し得るインターフェースチャンバとみなすことができる。
【0013】
供給ガスは、「掃引」ガスとも呼ばれる酸素化ガスであると理解される。掃引ガスは、最初にガス入口ゾーンに供給され、そこからガスは、ガス血液インターフェースを構成する中空繊維の多くの異なる開口部に入ることができる。「供給ガス分配装置」とは、供給ガスがガス血液インターフェースの異なる領域に異なるように分配されることを可能にする構造又は機構を意味する。これを実現するための様々な構成は、以下により詳細に説明される。そのような構成は、それぞれがガス入口ゾーン及び/又は物理的分離の異なる領域に供給する複数の供給ガス入口、並びにガス入口区画を提供するための移動可能なセパレータ又はガス流を方向付けるための制御可能なフローダイバータを含み得る。
【0014】
血液流路内のガス血液インターフェースは均一に分布しており、異なるインターフェース領域にわたって実質的に連続的に延びている。これは、あたかも血液流路が単一のインターフェース領域を通り抜けるかのように、血液流路を通過する血液細胞が、異なるインターフェース領域を通過するか又は異なるインターフェース領域間を通過するかにかかわらず、実質的に同じ流れの状態を経験するように、異なるインターフェース領域間に目立った中断又は空隙がないことを意味する。
【0015】
いくつかの実施形態では、供給ガス分配装置は、それぞれがガス入口ゾーンを複数のガス入口セクションに分割する1つ以上の仕切りを含み、各セクションは、ガス血液インターフェースの異なる領域との境界を有する。
【0016】
いくつかの実施形態では、供給ガス分配装置は、それぞれがガス血液インターフェースを複数のガス血液インターフェース区画に分割する1つ以上の仕切りを含む。
【0017】
境界は、ガス入口ゾーンと接触しているポッティングの領域に相当すると考えられる。仕切りは、各セクションが異なる流量及び/又は組成の供給ガスによって供給されることを可能にする。これにより、ガス入口ゾーンとインターフェースチャンバとの間のセクション毎に異なるガス遷移条件が提供される。同様に、仕切りは、ガス血液インターフェースを分離することができる。仕切りは、ガス入口ゾーンからガス血液インターフェースまで延びることができ、ガス血液インターフェースを通って延びることができる。
【0018】
いくつかの実施形態では、ガス血液インターフェースを通る血液流路は円形又は楕円形の輪郭を含み、かつ/又は、ガス血液インターフェースを通る血液流路は直線状である。
【0019】
円形又は楕円形の輪郭は、流れの状態が凝固を促進する可能性のあるコーナー又はデッド領域を減少させ、実質的に回避する。直線的な血液流路は、ガス血液インターフェースを横切る均一な流れの状態を改善する。
【0020】
少なくとも1つの仕切りが、ガス入口セクションとガス血液インターフェースとの間の境界のサイズを調製するために移動可能であり得る。
【0021】
仕切りは、平行移動可能な壁、又はガス流方向転換フラップのような旋回可能な壁であり得る。
【0022】
少なくとも1つの仕切りは、ガス血液インターフェースの外壁と接触していてもよい。
【0023】
例えば、ガス血液インターフェースの外壁は、インターフェースチャンバの境界を構成するポッティング表面によって構成され得る。
【0024】
いくつかの実施形態では、ガス流路は直線的に延びている。
【0025】
これにより、ガス排出ゾーンをガス入口ゾーンの反対側、又は実質的に反対側に配置することができる。
【0026】
いくつかの実施態様では、ガス血液インターフェースの構成は、ガス入口ゾーンに向かうガス流路開口部を含む中空繊維を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、酸素供給器は、1つ以上の中空繊維又は1つ以上の中空繊維群の開口部を個別に閉鎖及び/又は開放することを可能にする機構を含む。
【0028】
これは、中空繊維のガス流路開口部の一部又は全てを塞ぐように構成された蓋機能又はシャッタ機能によって実現することができる。蓋又はシャッタは、ポッティング表面と接触していてもよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、供給ガス分配装置は、流れを方向転換することができるフローダイバータを含む。フローダイバータは制御システムによって制御可能である。制御システムは、ガス血液インターフェースを通る所望の流れ特性を得るためにフローダイバータを調節する閉ループ制御を含み得る。
【0030】
いくつかの実施形態では、供給ガス分配装置は、それぞれがガス入口ゾーンに酸素化ガスを供給するのに適した複数のガス入口ポートを含む。
【0031】
これにより、異なる特性を有する酸素化ガスを、例えば、異なる流量及び/又は異なる組成で提供することができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、ガス入口セクションごとに別個の入口ポートが設けられている。
【0033】
いくつかの実施形態では、酸素供給器は、流入血液の酸素濃度、流入血液の二酸化炭素濃度、流出血液の酸素濃度、流出血液の二酸化炭素濃度、及び血液温度から成る群から選択される1つ以上の血液値を表す測定値を得るための血液センサー装置を含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、酸素供給器は、酸素化ガス流量、酸素化ガス圧力、排気ガス流量、排気ガス圧力、排気ガス酸素濃度、及び排気ガス二酸化炭素濃度から成る群から選択される1つ以上のガス値を表す測定値を得るためのガスセンサー装置を含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、酸素供給器は、1つ以上の血液値又は1つ以上のガス値を表す1つ以上の測定値を受け取り、かつ測定値に応答して酸素ガス供給ガスの流量及び/又は組成を調節するように構成された供給ガス制御システムを含む。
【0036】
ガス及び/又は血液の流量及び/又は組成をそれぞれ制御する機構と連結されたセンサーは、PaO2、PaCO2、及び/又は温度などの特定の特性を予め定められた設定値に維持するために、閉ループ制御が供給ガス及び血流を調節することを可能にする。
【0037】
例示的な閉ループ制御機構は、特許文献3として公開された本出願人による国際特許出願PCT/GB2015/053697に記載されており、その内容は参照により組み込まれている。
【0038】
本発明のガス分配装置は、血液特性を設定値に維持するためにガス組成、流量、及び/又は使用されるガス血液インターフェースの領域を調節することができることによって、ガス特性を変更するための別の機構を提供する。特性を「維持する」とは、システムがガスパラメータ(流量、組成、インターフェース面積)を補正するように応答し、それによって一時的な変動を補正することを意味する。
【0039】
いくつかの実施形態では、酸素供給器は、ガス血液インターフェースを迂回する血液入口から血液出口への迂回路を提供する静脈動脈シャントを含み、静脈動脈シャントは、酸素化ガスの供給に曝されることなく、流入血液の一部を血液出口へ進路変更することを可能にする。
【0040】
いくつかの実施形態では、酸素供給器は、ガス血液インターフェースを迂回するように進路変更される流入血液の量を制御するためのシャント流量コントローラを含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、酸素供給器は、1つ以上の血液値及び/又はガス値を表す1つ以上の測定値を受け取り、測定値に応答してシャント通路を通して進路変更される血液の流量を調節するべくシャント流量コントローラを作動させるように構成される。
【0042】
いくつかの実施形態では、酸素供給器は、それぞれが供給ガス分配装置に接続された1つ以上の酸素化ガス供給ラインを含む体外換気システムに含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
次に、図を参照して本発明の例示的な実施形態を説明する。
図1】従来技術の酸素供給器の構成を示す。
図2】酸素供給器の実施形態の概略図である。
図3】一実施形態を含む体外灌流システムの概略図である。
図4】1つの動作モードにおける図2の実施形態の概略図である。
図5】別の動作モードにおける図2の実施形態の概略図である。
図6】1つの動作モードにおける別の実施形態の概略図である。
図7】別の動作モードにおける図6の実施形態の概略図である。
図8図3の装置の一部の概略図である。
図9】別の実施形態の概略図である。
図10】別の実施形態の概略図である。
図11図10の実施形態の概略上面図である。
図12】複数の実施形態で使用されるコンポーネントの概略分解図を示す。
図13図12のコンポーネントの概略アセンブリを示す。
図14図13のアッセンブリを組み込んだ概略コンポーネントを示す。
図15】酸素化方法のシーケンスのステップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1は、体外換気に使用される既知の酸素供給器1に見られると予想される要素を示す。酸素供給器1は、酸素を含むガス供給に酸素が減少した血液、すなわち静脈血を曝し、それにより酸素が豊富な動脈血を提供するために血液を酸素化して二酸化炭素を除去する血液とガス供給との間のガス交換を可能にするために提供される。酸素供給器1は、静脈血が酸素供給器1に供給される血液入口2と、さらなる使用のために、しばしば患者に戻される動脈血としてだけでなく、純粋に体外検査の目的のために流出血液が酸素供給器1を出る血液出口3とを含む血液流路を含む。酸素供給器1はまた、吸気チャンバ5を経てガス血液インターフェース7を通り、排気チャンバ8を経て排気通路9に至る掃引ガス供給部4を含むガス流路を含む。
【0045】
現代のガス血液インターフェースは通常、微孔性、ガス透過性の特性を有する、数千の中空微孔性繊維の束を含む。掃引ガスは繊維の内部の中空空間を通って供給され、血液は繊維の周りを流れ、ガス交換は、血液及びガス中の酸素及び二酸化炭素の濃度間の相対的な拡散勾配によって促進される。中空繊維は、吸気チャンバ5及び排気チャンバ8から血液流路を封鎖するいわゆるポッティング7によってそれらの端部で一緒に保持されている。この設計は、吸気チャンバ5からガス血液インターフェース6を通るガス流の状態、特に流量及び体積が、制御可能である限り、単一の静的なガス供給ポートから予想されるように均一であると予想されるようなものである。動作中、血液が酸素分子を捕捉するにつれて酸素含有量が徐々に減少し、血中二酸化炭素から酸素化ガスへの拡散によって二酸化炭素含有量が徐々に増加しているので、ガス組成及び圧力は、入口向きポッティング7から出口向きポッティング7に向かって中空繊維に沿って変化することが理解されるであろう。しかしながら、吸気チャンバ5から所定の距離については、中空繊維のガス流状態は同様であり、実質的に均一である。
【0046】
このような酸素供給器のタイプの目的は、流出血液中の酸素PaO2の分圧を調節することである。この目的は、流出血液中の二酸化炭素PaCO2の分圧を調節することでもある。PaO2は酸素化ガスの酸素パーセンテージ(すなわち酸素分圧)を調整することによって調節することができ、残りの成分は主に窒素である。PaCO2は、酸素化ガスの流量を調製することによって調節することができる。本出願人の特許文献1及び特許文献3に記載されているような酸素化ガス供給システムを用いて、酸素化ガスの組成と流量の両方を同時に制御することができ、これにより流出血液で予想されるPaO2とPaCO2の両方を同時に調節することができる。
【0047】
図2は、本発明の実施形態による酸素供給器10を示す。酸素供給器10は、酸素供給器10を通る血液流路を提供する血液入口12及び血液出口14を含む。酸素供給器10は、第1の掃引ガス流量コントローラ23を有する第1の掃引ガス供給部22と、第2の掃引ガス流量コントローラ25を有する第2の掃引ガス供給部24とを含む。第1及び第2の掃引ガス供給部22及び24は、ハウジングのガス入口ゾーン28に通じている。ガス入口ゾーン28は、複数の中空繊維34を含むガス血液インターフェース32に流体的に接続されている。このため、酸素供給器10は、膜酸素供給器とも呼ばれる。中空繊維34は、ガス入口端ではガスインターフェースの境界を構成する入口向きポッティング30によって、ガス排出端では出口向きポッティング36によって集められている。ガス流路は、ガス入口ゾーン28から中空繊維34を通ってガス血液インターフェース32の下流の排気ゾーン40に通じ、そこから排気ガスライン42がガスを抽出する。酸素供給器10は、酸素化ガスの汚染を避けるために、ガス入口ゾーン28において気密であるハウジングを含む。他方の端部では、排気ゾーン40に、ハウジングは、ガス血液インターフェース32内での圧力上昇を避けるために、周囲との圧力平衡を可能にするいくつかの開口部44を含む。血液入口12と血液出口14との間の血液流路は、ガス血液インターフェース32によって提供され、入口向きポッティング30と出口向きポッティング36とによって境界され、中空繊維34の外側の体積によって構成される。ポッティング30と36との間の領域は、ガス血液インターフェースチャンバを提供する。
【0048】
ガス入口ゾーン28内で、酸素供給器10は、ガス入口ゾーンを2つの区画、第1のガス入口区画28A及び第2のガス入口区画28Bに少なくとも部分的に分離する仕切り26を含み、各区画はガス入口ゾーンのセクションを構成する。各ガス入口区画28A、28Bは、入口向きポッティング30の異なる部分に隣接しているとみなすことができる。したがって、各ガス入口区画は、ガス血液インターフェース32と異なる境界を有する。いくつかの中空繊維束は、第1のガス入口区画28Aに接続され、第1のガス入口区画28Aからのガスによって供給可能である。これらの中空繊維は、図2に第1の中空繊維群34Aとして示されている。同様に、第2の中空繊維群34Bの組が、第2のガス入口区画28Bに流体的に接続されている。
【0049】
仕切り26は、図2に固定位置で示されている。仕切り26は、例えば、図11から図14を参照して以下にその実施例を説明する酸素供給器の造形デザインに従って、適切な位置に固定することができる。仕切り26は、様々な位置に再配置可能であり得る。再配置可能な仕切りは、第1のガス入口区画28Aを通して又は第2のガス入口区画28Bを通して供給され得る繊維の数を変更することを可能にする。仕切り26は、ポッティング30を横切って移動可能であり得る。これにより、第2の中空繊維群34Bに対する第1の中空繊維群34Aの数の比、及びそれによってその面積の比を動的に変更することができる。仕切り26は、それぞれの他の領域に(例えば、第1のガス入口区画28Aから第2の中空糸膜34Bへ)浸入する少量のガスが許容できる可能性があるので、必ずしもポッティングに対してシールする必要がない場合がある。また、中空繊維は密に充填されており、仕切り26の縁は中空繊維の直径よりも大きくてもよい。入口向きポッティング30と接触する仕切りの縁は、仕切りで覆われた中空繊維が第1又は第2のガス入口区画のいずれかによって実質的に供給できないように、一定量の中空繊維を覆うことができる。逆に、仕切り26が入口向きポッティング30と密接に接触していない場合、仕切りの直下の中空繊維は両方のガス入口区画によって供給可能であり得る。
【0050】
図2において、仕切り26は、第1の掃引ガス供給部22が第1のガス入口区画28Aに導かれ、第2の掃引ガス供給部24が第2のガス入口区画28Bに導かれるように配置されている。各掃引ガス供給は、それぞれの掃引ガス流量コントローラ23及び25によって別々に制御可能である。ガス入口区画の数に応じて、より多くの掃引ガス供給を提供することができる。各掃引ガス供給は別々に制御可能であり得る。掃引ガスは、ガス血液インターフェースに供給されることが意図される組成を有すると理解される。
【0051】
図3は、酸素供給器10を含む体外灌流システムを示す。図3では、図を簡単にするために、酸素供給器10の内部に中空繊維は示されておらず、いくつかの接続部(血液入口12及び血液出口14)は、異なる位置に配置されているが、図2及び3の酸素供給器10は同一であり得ることが理解されるであろう。同様に、本発明の他の酸素供給器の実施形態を体外灌流システムと共に使用することができる。静脈血は、血液入口12を通って静脈血リザーバ13に流れ込み、そこから血液は、ポンプ15を通って酸素供給器10に向かって圧送される。静脈血12は、血液リザーバ13及びポンプ15を通過するときに状態が変化してもよく、薬剤が提供され得る。本明細書の目的のために、静脈血は、酸素化されてその二酸化炭素含有量を減少させるために、酸素供給器10に供給されることが意図された血液である。酸素供給器10において、血液は酸素化ガスに曝され、血液出口14を通って流出する。ガス供給源20は、第1の掃引ガス供給部22を通して酸素供給器10に向けて酸素化ガスを供給するように構成されている。図3はまた、酸素供給器10に酸素化ガスを供給する第2の掃引ガス供給部24を示す。また、酸素供給器10は、温度制御液18に接続されている。ガス交換後、ガスは、排気ガスライン42を通って酸素供給器10を出る。排気ガスの流れは、低圧源であり得るガス抽出器46によって制御される。低圧源は、ガス入口ゾーン28から排気ゾーン40への流れを促進するのに十分な排気ガス流を生成する。実際上は、酸素供給器のガス血液交換ダイナミクスを評価する場合、流れを誘発する圧力勾配は、通常、無視できると考えられ、多くの場合、酸素供給器10を横切る圧力プロファイルは、実際に達成可能な限り一定であると考えられる。酸素供給器10が作動する圧力は、特に排気側の酸素供給器10のハウジングは補助通気口を提供する開口部44を含むので、大気圧である。酸素供給器10に関する本明細書の目的のために、流入血液は、血液入口12を通って酸素供給器10に向けて供給され、流出血液は、血液出口14を通って酸素供給器から除去される。
【0052】
図3は、任意選択の血液流路、すなわち、シャントオフテイク12Aを介して血液入口12からシャント合流位置14Aを介して血液出口14への直接流体接続を提供し、酸素供給器10を迂回する、静脈動脈シャント16を示す。静脈動脈シャント16が閉じられている場合、あたかもシャント16が設けられていないかのように、血液は酸素供給器10を通過する。静脈動脈シャント16が開いている場合、これにより、静脈血の一部が酸素供給器を迂回して、酸素化された血液と混合されることが可能になる。静脈動脈シャント16には、酸素供給器10を迂回する静脈血の量を制御することを可能にする流量コントローラが設けられている。これにより、酸素供給器で処理された血液と酸素化されていない血液との間の比率を設定することができ、一方、「酸素化されていない」という表現は、所与のサイクルにおいて、ガス血液インターフェースを迂回し、酸素化ガスに曝されなかった静脈血を定義するために本明細書で使用される。静脈動脈シャントの流量コントローラは、ポンプ又は流量制限手段であり得る。静脈動脈シャントは、逆流防止手段を含み得る。静脈動脈シャントの流れは、血流が酸素供給器10を迂回するのを可能にするために静脈動脈シャント16が開いているときに、潅流システムのポンプ15によって行われ得る。シャント流量コントローラは、ポンプ又はクランプのような徐々に作動可能な流量コントローラであってもよい。
【0053】
図4から図9は、酸素供給器10、10A及び11の変形例を示し、これらの酸素供給器の変形例の様々な動作モードを示す。酸素供給器10、10A及び11の同様の要素は図2及び図4から図9において同じ符号で識別され、簡潔にするために対応する部分の説明は全ての図について繰り返さない。
【0054】
図4は、掃引ガスが第1の掃引ガス供給部22のみを通して供給される第1の動作モードを示す。第1の掃引ガス流量コントローラ23は開いている。第2の掃引ガス流量コントローラ25は閉じている。これにより、第1のガス入口区画28Aに流体接続している第1の中空繊維群34Aに掃引ガスが供給される。ガス流が斜線で示されている。斜線は、予想されるガス流のルートを概念的に視覚化するための単なる例示であることが理解される。第2の中空繊維群34Bは、仕切り26が第1のガス入口区画28Aから第2の中空繊維群34Bに向かうガス流を妨げるか、又は構成に応じて遮断するので、掃引ガスによって供給されない。排気ゾーン40では、排気ガスは、抽出器46(図3参照、図4には図示せず)を通して抽出されるので、ガスは、排気端からも第2の中空繊維群34Bから引き出される。仕切り26は、掃引ガス供給制御と組み合わせて、ガス血液インターフェースのためのガス分配装置を提供することが分かる。ガス分配装置によって、ガス入口ゾーンから排気ゾーンへのガス流状態を不均一に提供することができ、すなわち、設計により、ガス流体インターフェースのいくつかの部分には、他の部分とは異なるように調整された酸素化ガス又は異なる酸素化ガス状態が意図的に提供される。これは、酸素化状態が均一である上記の図1の状況とは対照的である。
【0055】
図5は、第1の掃引ガス供給部22と第2の掃引ガス供給部24の両方を通して掃引ガスが供給される第2の動作モードを示す。掃引ガス流量コントローラ23と25の両方が開いている。掃引ガスの流れは斜線で示されており、第2の中空繊維群34Bに掃引ガスが供給されていることが理解できる。掃引ガス流量コントローラ23及び25は、異なる流量に設定することができる。酸素化ガスは、同じ組成を有し得る。例えば、酸素化ガスは同じ供給源から発生していてもよい。第1の掃引ガス供給部22の酸素化ガスは、第2の掃引ガス供給部24の酸素化ガスとは異なる組成のものであり得る。例えば、掃引ガス供給のために異なる供給源が使用され得る。同様に、同じ供給源を使用することができ、1つの掃引ガス供給部は、供給ガス成分のための追加の取入れ口(又は、3つ以上の掃引ガス供給部の場合には、1つ以上)を含む。共通の排気ライン42上の設備は、酸素供給器10を横切る総ガス流の測定及び/又は制御を容易にする。
【0056】
図6は、ガス入口21として示されている、単一のガス入口によって供給される酸素供給器11を示す。ガス入口21は、掃引ガスを、仕切り26によって第1のガス入口区画28A及び更なる区画28Cに分離されているガス入口ゾーン28に供給する。更なる区画28Cは、酸素化ガスによって直接供給されない。図4に示したものと同様に、ガス血液インターフェース32の第1の中空繊維群34Aのみが、第1のガス入口区画28Aと流体接続しており、したがって酸素化ガスによって供給される。ガス血液インターフェース32の残りの中空繊維34Cは、更なる区画28Cと流体接続しており、酸素化ガスによって供給されない。前述したように、仕切り26は、ポッティング30との完全な気密シールを必ずしも提供する必要はない。この場合、一部の酸素化ガスが、実際には、第1のガス入口区画28Aから仕切り26を通過して更なる区画28Cに入り、そこから酸素化ガスは残りの中空繊維34を通って排気ライン40に抽出される。更なる区画28Cに入る酸素化ガスの量は、測定可能であるとしても、無視できると考えられる。
【0057】
図7は、仕切り26を移動させて第1のガス入口区画28Aを増加させた図6の酸素供給器11を示している。これにより、より多くの中空繊維が第1の中空繊維群34Aに含まれるように、第1のガス入口区画28Aと中空繊維との間のポッティング30におけるインターフェース面積が増加する。逆に、仕切り26は、第1のガス入口区画28Aのサイズ及び第1の中空繊維群34Aにおける対応する遷移の数を減少させるように移動可能であることが理解される。
【0058】
区画間のサイズ又は比率は、本明細書の実施例に示したものと異なってもよい。例えば、第1のガス入口区画28Aは、第1の中空繊維群34Aの繊維の数と第2の中空繊維群34Bの繊維の数との比が約1:1、又は約1:2、約1:3、又はその逆の比となるような寸法にすることができる。1:2の構成では、第1の掃引ガス供給部22を介した供給により、中空繊維の約1/3に酸素化ガスが供給される。
【0059】
図4から図7は、ガス入口ゾーンを2つの区画に分離するための1つの仕切り26を示す。異なる数のガス入口区画、例えば、3つ、4つ、5つ又はそれ以上のガス入口区画を設けることができる。区画のそれぞれは、別々の入口ガス供給によって供給することができる。入口ガス供給は、例えば、各入口ガス供給が異なる組成及び異なる流量を有し得るように、供給源ごとに別個であり得る。入口ガス供給は、同一のガス源を使用し、それぞれが個別の流量制御を有する2つ以上の供給分岐を有するマニホールドに分岐し得る。その場合、各分岐は同じ組成の掃引ガスを供給するが、各分岐を通る掃引ガスの各区画への流量は個別に制御することができる。
【0060】
例えば、ガス入口ゾーンは、6つのガス入口区画に分割され得る。掃引ガスは、単一の供給源からチャンバのそれぞれに別個のガス入口を提供するマニホールドを通して供給されてもよく、各ガス入口は別個のガス流量制御を含む。6つの区画の実施例において、各区画が同じサイズのポッティング30との接触領域を有する場合、各区画を使用して中空繊維の1/6を供給することができる。このような構成は、移動可能な仕切りを必要とせずに、中空繊維の総面積の1/6ずつの面積を提供することを可能にする。このタイプの構成は、ガス入口ゾーン内の可動部分を必要とせずに、中空繊維領域全体をいくつかの異なる比率の別々の供給可能な領域に容易に分離することを可能にすることが分かる。例を提供するために、領域は、2:1(異なるサイズの2つの区画)、1:1:1(同じサイズの3つの区画)、2:1:1:2(提供された領域を2つの1/2又は3つの1/3に分割するための4つの区画)などのように、同じサイズ又は異なるサイズのいずれかであり得る。初期計算は、ガス入口ゾーンを1:1又は2:1のいずれかの比で2つの別々に供給可能な領域に分離することにより、十分な程度の酸素化制御が提供されると同時に、2つの別々の掃引ガス供給チャネルを提供するために必要とされる設計労力が軽減されることを示す。
【0061】
酸素供給器10は、酸素化ガスを排気チャンバ40から、したがって排気チャンバ40に合流する全ての中空繊維34から移動させるのに十分な共通の排気ライン42を有する。実施形態は、中空繊維群ごとに別々に制御可能な排気ラインを含み得る。
【0062】
上に示した構成では、血液は、全ての中空繊維が酸素化ガスによって供給されるか否かにかかわらず、血液入口12から両群34A及び34Bからの中空繊維を通って流れる。これにより、異なるインターフェース領域が、繊維群34A及び34Bで構成されるガス血液インターフェースを通って導かれる血液の血流方向に連続的に配置される。図2及び図4図7に示す構成により、ガス血液インターフェースを通して導かれる血液は、異なるインターフェース領域のそれぞれを通過する。図2及び図4図7に示すように、ガス血液インターフェースは、血液流路内で連続的に延びる。誤解を避けるために、血液は、図の読み取り方向において、上から下に流れ、第1の中空繊維群34Aの前に第2の中空繊維群34Bを通過する。このため、ガス交換は、血液と、酸素化ガスが供給されているか否かにかかわらず、第2の中空繊維群34Bを含む中空繊維内の雰囲気との間で起こり得る。
【0063】
酸素化ガスによって供給されない繊維を通過する血液は、それでもなお繊維壁の内部の中空空間内でガスとのガス交換を経験する。しかしながら、酸素化ガスからの酸素又は窒素で飽和された雰囲気が存在しないため、分圧は血液から内部の繊維への窒素ガスの拡散に有利に働く。
【0064】
水が、中空繊維の内部で繊維をふさぐのに十分な量で凝縮する場合がある。このような凝縮液は、ガス流量を短時間増加させること(いわゆる「溜息」)により除去することができる。溜息中に繊維に供給された酸素は、排気ライン42を通して迅速に除去される。実際上は、相対的な流量と通過時間のために、ため息の手順は血液中のガス分圧に影響を与えない。
【0065】
図8及び図9は、酸素供給器10及び酸素供給器10Aの変形例を示す。図9及び図10の酸素供給器の対応する要素は、図2及び図4から図7の同じ符号で識別され、個別には説明しない。
【0066】
図8は、図2の酸素供給器10と、これに関連して、血液入口12と血液出口14との間で酸素供給器10を迂回する図3と同様の静脈動脈シャント16とを示す。静脈動脈シャント16の通路は、酸素供給器10と一体ではない。図3を参照して説明したように、静脈動脈シャント16は、徐々に開いたり閉じたりすることができる。静脈動脈シャント16は、酸素供給器10の流量制御システムと機能的に結合された閉ループ制御を可能にするために、流量コントローラ及び流量感知手段によって操作され得る。したがって、一実施形態は、酸素供給器及び静脈動脈シャントのシステムを提供することができる。静脈動脈シャントを設けることにより、酸素化されていない(ガス血液インターフェースによって処理されていない)静脈血を酸素供給器で処理された血液と混合して混合血液を提供することができる。PaO2、PaCO2などの成分の相対濃度のような混合血液の特性、及び温度などの特性は、酸素供給器で処理された血液及び酸素化されていない血液のそれぞれの特性、並びに酸素化されていない血液に対する酸素供給器で処理された血液の比率に依存することが理解されるであろう。一例として、酸素供給器で処理された血液が高酸素である(酸素含有量が高すぎる)場合、必要量の酸素が少ない静脈血と混合すると、混合血液の酸素含有量が減少する。このように、酸素供給器で処理された血液を酸素化されていない血液と混合することにより、酸素パーセンテージを高酸素状態未満に低下させることができる。
【0067】
図9は、同じ符号で示されるように、多くの態様で図2及び図8の酸素供給器10に対応する酸素供給器10Aを示す。酸素供給器10Aは、酸素供給器10Aと一体の静脈動脈シャント16Aを含む。静脈動脈シャント16Aは、ガス流路から、特にガス血液インターフェース32からガス分離されているので、静脈動脈シャント16Aを通過する血液は、酸素供給器内の酸素化ガス又は他の雰囲気とのガス交換を行わない。酸素供給器10Aを通って分流された静脈血は、酸素化機構を迂回し、酸素化されている酸素供給器で処理された血液と混合するために、酸素化されていない血液として利用可能にすることができる。
【0068】
静脈動脈シャント16Aは、少なくとも部分的又は完全に酸素供給器ハウジングの内側にあるか又は少なくとも部分的又は完全に酸素供給器ハウジングの外側にある経路をたどることができる。静脈動脈シャント16Aは、少なくとも部分的に又は完全にガス血液インターフェース32を通るか又はガス血液インターフェースの周りであるが酸素供給器ハウジング内を通る経路をたどることができる。静脈動脈シャント16Aは、酸素供給器10Aを流入血液ラインに接続するために単一のコネクタが必要であり、酸素供給器10Aを流出血液ラインに接続するために単一のコネクタが必要であり、静脈動脈シャントが内部迂回路を通って供給されるという意味で酸素供給器10Aと一体であり得る。これにより、臨床スタッフが組み立てる接続の数が減少する。酸素供給器10Aは、ガス血液インターフェースの下流に、酸素供給器で処理された血液と酸素供給器で分流された血液との完全な混合が促進される保持チャネル又は混合領域17を含み得る。混合領域17は、酸素供給器ハウジングの内側又は酸素供給器ハウジングの外側にあり得る。酸素供給器内に静脈動脈シャントを設けることにより、酸素化されていない血液の温度制御を酸素供給器に統合することができる。
【0069】
酸素化システムは、酸素供給器の上流、酸素供給器の下流、及び/又は静脈動脈シャント16の上流及び/又は下流、特に血液出口14のシャント合流位置の上流及び下流の位置に、血液酸素及び二酸化炭素などの対象の血液ガスを監視するための血液ガスセンサー装置を含み得る。これにより、酸素供給器の上流の血液ガス値、酸素化されていない血液と混合される前の酸素供給器で処理された血液の血液ガス値、及び酸素供給器で処理された血液及び分流された血液を含む混合血液の血液ガス値を監視することが可能になる。酸素供給器流量コントローラ及びシャント流量コントローラと組み合わせて、血液ガスセンサーは、血液ガス成分が正確な設定値に調節されることを可能にする閉ループ制御が提供されることを可能にする。例えば、設定値はPaO2レベルであり得る。酸素供給器で処理された血液が高酸素である場合、高酸素状態を目標状態に低下させるのに必要な静脈血の量は、静脈血の血液ガス値から導き出すことができる。同様に、感知された血液の血液ガス値は、酸素供給器で処理された血液又は分流された血液の量を増加させるためにフィードバックループを提供することを可能にする。
【0070】
同様に、酸素化システムは、酸素供給器の上流、酸素供給器の下流、静脈動脈シャント16の上流及び/又は下流、並びに血液出口14のシャント合流位置の上流及び/又は下流の位置に、血液の温度を監視するための温度センサー装置を含み得る。これにより、混合血液の温度制御がより良好になる。例えば、混合血液の温度制御なしに、酸素化されていない血液が所望よりも高く、酸素供給器で処理された血液が必要な温度(温度制御液18で設定される、図3参照)を有する場合、混合血液の温度は、それに応じて酸素供給器で処理された血液の設定値よりも高い可能性がある。その例では、閉ループ制御は、混合血液が意図された温度を有するように、酸素化されていない血液との混合を考慮するように温度制御液を調節することを可能にする機構を提供する。
【0071】
静脈動脈シャントにより、酸素供給器は、さもなければ多くの酸素を含み過ぎて高酸素状態を回避できないであろう掃引ガス量で供給されることが可能になる。これは、その結果、流出血液の二酸化炭素含有量を調節するために掃引ガス流量を調節する機会を提供する。さらに、静脈血の二酸化炭素濃度、及び酸素化された血液に対する酸素化されていない(分流された)血液の比率又は量を知ることにより、掃引ガス流量を調節して、流出血液の所望の含有量を達成することができる。非常に単純化された例として、掃引ガス流量を調節して、酸素供給器で処理された血液では低すぎるが、酸素供給器で処理された血液を分流された血液と混合した後は所望の設定値に近い二酸化炭素濃度を設定することができる。
【0072】
これにより、シャント16及びシャント16Aは、酸素供給器から供給される血液が高酸素であるリスクを低減する機構を提供する。
【0073】
酸素供給器10は、通常使用されるよりも高濃度の酸素を含む酸素化ガスを提供することを可能にする。従来の掃引ガスは、空気の組成と同様に、約21%の酸素と、約79%の窒素とで構成されている。動脈血中の酸素分圧の所望のレベルに達するために必要とされ得る範囲でのみ、膜型酸素供給器においてより高い酸素パーセンテージが使用される。掃引ガス中の酸素パーセンテージが、動脈血中の所望の酸素分圧を達成するために必要とされる酸素パーセンテージを超える場合、これは、患者に供給される血液の酸素含有量が必要以上に高い状態である高酸素状態を引き起こすリスクがあり、これは、潜在的に患者に有害である可能性がある。
【0074】
一方、掃引ガス中のより高い酸素パーセンテージは、より低い窒素のパーセンテージを可能にし、さもなければ、必要な全ガス圧を達成するために、より高い窒素のパーセンテージが必要とされるであろう。しかしながら、窒素ガスは、血液中に生じて残るガス状微小塞栓(GME)、すなわち気泡の主な発生源である。これは、酸素化ガスに含まれる窒素が、酸素供給器で処理された血液からの窒素ガスの除去を妨げるためである。これは、酸素化ガス中の窒素分圧が血漿中に溶解した窒素分圧に対して類似しており、実質的に等しいので、拡散勾配がないためである。
【0075】
これに関連して、特許文献2として公開された本出願人による英国特許出願GB1705556.7は、低圧又は大気圧未満の圧力下で酸素化を行うことを可能にする酸素化システムを開示している。これにより、低圧条件下での全酸素化ガス圧は高酸素症を引き起こすほど高くないので、21%より高い酸素パーセンテージ、さらには100%に近い酸素パーセンテージすなわち実質的に純粋な酸素さえも酸素化ガスに供給することができる。同時に、相対圧力は血液からの窒素ガスの除去を促進する。しかしながら、低圧条件下で酸素供給器を安全に作動させることは困難であり、信頼できる安全な低圧酸素化条件を提供するための解決策は、特許文献2及び特許文献4として公開されている、本出願人による英国特許出願GB1705556.7及びGB1708810.5に記載されている。
【0076】
本明細書に記載の酸素供給器の構成は、通常の大気圧条件下で、21%より高い酸素化ガス中の酸素含有量、さらには100%に近い酸素含有量すなわち実質的に純粋な酸素さえも使用することを可能にし、同時に高酸素症の発生を低減し、実際的に回避する機構を提供する。
【0077】
本発明は、窒素含有量のない又はより低い酸素化ガスの使用が、制御された酸素化及び二酸化炭素の除去を依然として可能にしながら、血液からの窒素の除去に有利に働くという認識に基づく。
【0078】
これは、最大100%の酸素であり得る酸素化ガスを中空繊維の一部のみに通すことによって達成される。この配置の実際的な効果は、ガス血液インターフェースの掃引ガス曝露領域が、酸素供給器の動作中に調節可能なことである。血液は、酸素化された中空繊維(例えば、図4に示す第1の繊維群34A)を通過する前に、酸素化されていない中空繊維(例えば、第2の繊維群34B)を通って実質的に連続的な流れで通過する。例えば、図4に記載されるような装置及び動作モードを使用して、図4において、血液は、第1の中空繊維群34Aを通過する前、及び血液出口14を通って出る前に、酸素供給器10の上部から第2の中空繊維群34Bを通過して、実質的に連続的に酸素供給器に流れることができる。仕切り26は、第1のガス入口区画28Aと第2のガス入口区画28Bを1:1の比率で(図4に示すように)又は1:2などの他の任意の比率で分割するように配置され得る。1:2の構成では、第1のガス入口区画28Aは、中空繊維34の総数の約1/3の通気を可能にする。第2のガス入口区画28Bは、残りの2/3の中空繊維34Bの通気を可能にする。通気されているか否かにかかわらず、これらの繊維の2つの領域を通過する血液は、ガス交換が行われる場所である。第1及び第2の中空繊維群34A及び34Bに対して異なる流量を使用すること及び/又は異なる酸素化ガス組成を使用することにより、異なる酸素勾配及び総ガス勾配を達成することができる。第1及び第2の中空繊維群34A及び34Bを通る流量は、二酸化炭素除去率に影響を与える。
【0079】
図示の実施例では、能動的に空気を通される中空繊維の総面積を制限することにより、血液の酸素化の取り込みに影響を与えることができ、流量は二酸化炭素除去率の制御を提供する。
【0080】
既知の酸素供給器の設計では、酸素化速度は、酸素化ガスの組成、主に酸素と窒素との比を調節することによって制御され、潜在的に有害であると考えられる点まで高酸素症を誘発しないように注意しなければならない。例えば、従来の酸素供給器の設計において時間をかけて純酸素を連続的に供給すると、有害なレベルで高酸素症を引き起こす可能性が非常に高い。本明細書に記載の構成では、より高い酸素含有量、さらには100%の酸素さえも使用しながら、酸素化速度に影響を与えることができる。また、二酸化炭素又はカルボゲンガス混合物を加えることにより酸素化ガス組成を調節する選択肢もあるが、酸素化ガス中の酸素分圧をより低くするために酸素化ガス中に窒素を使用する必要はない。このように、供給されるガスの窒素分圧が低い場合、又はガス血液インターフェースに供給される窒素の量が無視できる程度である場合、時間の経過と共に血液からの溶存窒素のより良好な除去率を達成することが可能である。
【0081】
推定酸素移動速度は、患者のサイズ、代謝要求、及び血流量を含むが必ずしもこれらに限定されない要因に基づいて計算することができる。推定酸素移動速度が、第1の掃引ガス供給部を介した純酸素の最大ガス流によって達成できる最大酸素移動速度よりも大きい場合、酸素供給器10は、追加のガスが第2の中空繊維群34Bに方向付け/進路変更されることを可能にする。第1及び第2の掃引ガス供給部22のガス流量は、所望の二酸化炭素除去率を達成するように調節することができる。
【0082】
例えば、第2の中空繊維群34Bには酸素化ガスは供給されないが、酸素分圧が低いために血液中のガスの総分圧が最も低い静脈血は、第2の中空繊維群34Bの中空繊維と相互作用することができる。一実施例では、第2の中空繊維膜34Bを通って流れるガスがないか、又は実質的に存在しない場合、静脈血中に存在するガス状微小塞栓(GME)は、その除去を促進する圧力勾配状態を経験する。GMEの除去は、GMEと中空繊維の内側との間の勾配、及びGME気泡が中空繊維の表面を通過する際に血液によってGME気泡に加えられる物理的圧力によって起こる。したがって、血液は、第2の中空繊維群34Bを通過した後、第1の中空繊維群34Aに到達する前に、著しく減少した数のGMEを含み得る。血液が第1の中空繊維群34Aを通過するとき、中空繊維は高い又は純粋な酸素含有量で供給されるので、血液はより急な酸素分圧勾配で酸素化される。同時に、酸素化ガスは、血液より高い窒素分圧を含まない限りは、GMEの形成を促進しない。
【0083】
記載した構成の例示的な使用では、血液を酸素化するための有利な状況は、第1の中空繊維群34Aを通過する血液に限定される1つの動作モードにある。結果として得られる血液酸素圧が十分に高くない場合、本構成は、追加の酸素化ガスを第2の中空繊維群34Bに供給することを可能にする。ガス供給量は、徐々に増加させることができる。同様に、二酸化炭素を除去するための有利な状況は、総ガス流量の関数である。記載した実施例では、第1の中空繊維群34Aを通る最大ガス流にもかかわらず二酸化炭素除去率が不十分である場合、本構成は、第2の中空繊維群34Bに追加の酸素化ガスを供給することを可能にする。第2の掃引ガス供給の組成及び/又は流量は、第1の掃引ガス供給の組成及び/又は流量と異なり得る。
【0084】
高い酸素含有量又は純粋な酸素が両方の中空繊維群に使用される場合、及び二酸化炭素除去要求が両方の膜を通る高い流量を必要とする場合、これは理想的な酸素目標値よりも高い酸素化値をもたらす可能性がある。しかしながら、高すぎる酸素化値が生成されたとしても、これは一時的な問題である。本構成は、酸素供給器全体の酸素化ガスとして100%の酸素を使用した場合よりも高酸素状態の発生を少なくしながら、窒素分圧を回避することを可能にする。
【0085】
このような状況では、静脈血のための静脈動脈シャント16又は同様のシャント経路を設けることは、酸素供給器で処理された血液を酸素化されていない血液と混合してより低い酸素含有量を有する混合血液を提供することにより、流出血液の酸素含有量を減少させることを可能にする。
【0086】
図10は、本発明の実施形態による酸素供給器10Bを示す。図10において、同様のコンポーネントについては、特定の説明を繰り返すことなく、図2図4及び図5と同じ符号を使用する。図2に示す酸素供給器10と同様に、酸素供給器10Bは、第1の掃引ガス流量コントローラ23を有する第1の掃引ガス供給部22と、第2の掃引ガス流量コントローラ25を有する第2の掃引ガス供給部24とを含む。第1及び第2の掃引ガス供給部22及び24は、ハウジングのガス入口ゾーン28に通じている。ガス入口ゾーン28は、ガス交換インターフェースを提供する複数の中空繊維34を含むガス血液インターフェース32に流体的に接続されている。中空繊維34は、ガス入口端ではガスインターフェースの境界を構成する入口向きポッティング30によって、ガス排出端では出口向きポッティング36によって集められている。ガス流路は、ガス入口ゾーン28から中空繊維34を通ってガス血液インターフェース32の下流の2つの排気区画40A、40Bを含む排気ゾーンに通じ、そこから複数の(ここでは2つの)排気ガスライン42A、42Bがガスを抽出する。酸素供給器10Bは、酸素化ガスの汚染を避けるために、ガス入口ゾーン28において気密であるハウジングを含む。排気ゾーン40に、ハウジングは、ガス血液インターフェース32内での圧力上昇を避けるために、周囲との圧力平衡を可能にするいくつかの開口部44A、44Bを含む。血液入口12と血液出口14との間の血液流路は、ガス血液インターフェース32によって提供され、入口向きポッティング30と出口向きポッティング36とによって境界され、中空繊維34の外側の体積によって構成される。入口向きポッティング30と出口向きポッティング39との間の領域は、ガス血液インターフェースチャンバ32を提供する。
【0087】
ガス入口ゾーン28内で、酸素供給器10Bは、ガス入口ゾーンを2つの区画、第1のガス入口区画28A及び第2のガス入口区画28Bに少なくとも部分的に分離する仕切り26Aを含み、各区画はガス入口ゾーンのセクションを構成する。仕切り26Aは、入口向きポッティング30を通って、ガス血液インターフェース32の中空繊維束を通って、出口向きポッティング36を通って、排気ゾーン40内に延び、排気ゾーン40を2つの排気区画40A及び40Bに少なくとも部分的に分離する。各ガス入口区画28A、28Bは、入口向きポッティング30の異なる部分に隣接しているとみなすことができる。同様に、各排気区画40A、40Bは、出口向きポッティング36の異なる部分に隣接しているとみなすことができる。したがって、各ガス入口区画28A、28B及び各排気区画40A、40Bは、ガス血液インターフェース32と異なる境界を有する。各排気ガスライン42A、42Bは、それぞれ区画40A、40Bのうちの1つからガスを抽出するように構成されている。排気ガスライン42A及び42Bは、共通の排気ガス流量制御システムに合流することができる。
【0088】
連続的に延びる仕切り26Aによって、個々の繊維チャネルは、それぞれの入口区画及び排気区画のみを接続し、すなわち、第1のガス入口区画28Aから供給される繊維チャネルは第1の排気区画40Aに通じ、第2のガス入口区画28Bから供給される繊維チャネルは第2の排気区画40Bに通じる。これにより、ある入口区画から供給される繊維チャネルが異なる排気区画に接続すること、又は異なる入口区画から供給される繊維チャネルが同じ排気区画に接続することを回避することができる。中空繊維束群は、第1のガス入口区画28Aに接続し、第1のガス入口区画28Aからのガスによって供給可能である。これらの中空繊維は、図10に第1の中空繊維群34Aとして示されている。同様に、第2の中空繊維群34Bが、第2のガス入口区画28Bに流体的に接続されている。
【0089】
図11は、酸素供給器10Bの図10の図の概略上面図を示す。図11の読取り方向において左から右に、図11は、ガス入口ゾーンに供給する第1の掃引ガス供給部22の上の第2の掃引ガス供給部24を示し、図11には、ガス入口ゾーンのうちの第2のガス入口区画28Bのみが見えている(第1のガス入口区画は、図11の図では、第2のガス入口区画28Bの下にあると理解される)。ガス流路は、入口向きポッティング30を通って、そのうちの第2の中空繊維群34Bのみが図11に示すガス血液インターフェースを通って、出口向きポッティング36を通って第2の排気区画40Bに通じる。2つの排気ガスライン42A及び42Bは、それぞれの排気ガス区画40A及び40Bから排気ガスを引き出すために設けられている。第2の中空繊維群34Bの下には、ガス入口ゾーン28から入口向きポッティング30、ガス血液インターフェース、出口向きポッティング36及び排気ゾーン40を通って延びる連続した仕切り26Aが図示されている。連続した仕切り26Aによって、2つの異なる別々に供給可能なガス交換インターフェース領域が提供される。第1の入口区画28A、第1の中空繊維群34A及び排気ガス区画40Aから成る、仕切り26Aの下のガス流路は、図11には示されていないことが理解されるであろう。
【0090】
仕切りによる中空繊維群の分離をよりよく示すために、図12は、ガス血液インターフェース32のコンポーネントの分解図を概略的に示す。中空繊維は、いわゆる「マット」の形態で束ねられた形で設けられている。図12は、4つのこのようなマット(2つのマット34B及び2つのマット34A)を示しているが、実際には、数十個のこのようなマット、典型的には50から100個のマットが酸素供給器アセンブリに使用され得る。各マット34A、34Bは、特定の繊維に属する端部を識別することが実際には不可能であるように、ある程度絡み合っている多数の中空繊維を含む。複数のこのようなマットが、共通のガス血液インターフェースを提供するために積み重ねられている。図10及び図11に示すように、区画化されたガス流路を提供するために、仕切り26Aが、2組のマットの間に配置されている。概念的には、図12において、仕切り26Aより上のマット34Bは第2の中空繊維群34Bを形成し、仕切り26Aより下のマット34Aは第1の中空繊維群34Aを形成する。
【0091】
仕切り26Aは、概ね楕円形で示されている中央開口27を含む。仕切りの材料は、繊維膜よりもガス透過性が低く、実際の考慮事項のために、仕切りの材料は、第1の中空繊維群34Aと第2の中空繊維群34Bとを気密に分離するように、ガス不透過性である。仕切り26Aは、ポリカーボネートのような好適な材料から作ることができる。仕切り26Aは、酸素供給器ハウジング又は酸素供給器ハウジングのコンポーネントと一体であり得る。中央開口27の縁には、血液活性の特性を有するコーティングなどの表面処理を施すことができる。例えば、縁は、抗凝固特性を提供する表面処理を有することができる。実施形態では、仕切りは、血液との接触を避けるように配置され得る(図14に関する記載を参照)。
【0092】
図12はさらに、その中にマット34A及び34B並びに仕切り26Aを積み重ねた形で配置する、ガス血液インターフェース容器32Aを示す。
【0093】
図13は、仕切り26Aによって複数(ここでは2つ)の中空繊維群34B及び34Aに分離された複数(ここでは4つ)のマットが設けられている、ガス血液インターフェース容器32Aを含むアセンブリを概略的に示す。仕切り26Aは、仕切り26Aの一部がマットの入口端を越えて及び/又はマットの出口端を越えて延びるように、少なくとも1つの寸法が繊維マットよりも長い。仕切り26Aは、マット群に対して無視できるほど薄いので、マット群の間には実質的に空隙がない。仕切り26Aの真上及び真下のマットは、開口27を通して互いに接触している。
【0094】
以下の構成は、仕切りコンポーネントとの接触を回避する血液流路を画定するためにポッティング材料がどのように提供され得るかを説明する。ガス血液インターフェース容器32Aは、ポッティングを繊維間で遠心力によって画定される円筒形に凝固させるのに十分な程度にガス血液インターフェース容器を回転させながら(矢印38で示す)ポッティング材料を注入又は注射することによってポッティング材料を提供され得る。言い換えれば、ガス血液インターフェース容器32Aが回転軸を中心に回転している場合、ポッティング材料は、流動可能であるが、ガス血液インターフェース容器32Aの軸周囲の壁及び隅に集まり、ポッティング材料のない円筒形の穴が回転軸に沿って残る。ガス血液インターフェース容器は、ポッティング材料が固まる前にポッティング材料が入っている一時的又は恒久的な容器要素を備えていてもよいことが理解されるであろう。ポッティング材料は個々の繊維間の間隙で固まり得るので、円筒形の穴は、繊維を横切る血液流路を提供し、繊維の内部の中空空間は、一方の繊維端から他方の(ここでは反対側の)繊維端へのガス流路を提供する。
【0095】
図14は、ポッティング材料が上記の方法で導入されて固まった後の、ポッティング材料のない円筒形チャネルを残した、中空繊維が血液に曝露可能なガス血液インターフェース容器32Aを概略的に示す。中空繊維は、ポッティング材料内で適切な位置に保持される。異なるマットの中空繊維は、実質的に均質なガス血液インターフェース32として提供される。ポッティング材料は、単一のコンポーネントとして固まっていてもよく、それにもかかわらず、ポッティング材料の一部分は、入口向きポッティング30を構成する。ポッティング材料の別の部分は、出口向きポッティング36を構成する。ポッティング材料の量は、円筒形チャネルの断面が仕切り26Aの開口27よりも小さく、仕切り26Aの材料が円筒形チャネル内に突出しないように選択することができる。その結果として、このような構成は、酸素供給器の動作中に血液の仕切り26Aとの接触を回避する。したがって、仕切り及び開口は、ガス血液インターフェースの異なる群を分離した状態に保つのに適している限り、他の任意の形状又は構成を有し得ることが理解されるであろう。
【0096】
酸素供給器ハウジング内に組み立てられると、仕切り26Aの突出部分は、それぞれガス入口ゾーン及び/又はガス排出ゾーンの仕切りを提供する。したがって、1つ以上の仕切り構造が存在するが、これらは、密に充填された中空繊維の間の入口ゾーン及び/又は出口ゾーンに仕切りを配置するための位置合わせ構造として理解され得る。図示のように、仕切りは、血液流路を妨げないように配置することができる。したがって、血液流路内では、ガス血液インターフェースは均一に分布しており、単一の連続的なガス血液インターフェースの構成と性能が実質的に区別できない。
【0097】
血液流路は他の形状を有していてもよいが、円筒状の流路又は楕円形断面の通路のような角のない通路は、流れパターンの導入を回避し、血液凝固が起こりやすいチャンネル形状を回避する。図示の構成は、ガス入口の反対側の排気端を可能にする直線的に延びるガス流路と、デッドゾーンのない直線的な血液流路とを組み合わせている。
【0098】
図14に示すガス血液インターフェース32は、図10及び図11に示す酸素供給器10Bなどの酸素供給器のコンポーネントとして使用されることが理解されるであろう。
【0099】
中央開口27が血液流路の輪郭よりも大きいので、中央開口は連続した血液流路を提供し、血液が中空繊維束の周りを血液入口12からガス血液インターフェース32を通って血液出口14(図11には図示せず)へと通過することを可能にする。中央開口27によって、隣接するマットの繊維束が非常に近接しているので、血液流路内のガス血液インターフェースは第2の中空繊維群34Bから第1の中空繊維群34Aへ均一に分布する。均一に分布することは、血液流路を通過する血液細胞に対して、様々な中空繊維群が、同じ繊維群(34B又は34A)のマット間を通過する血液細胞に、開口27を通過する血液細胞と実質的に同じ流れ条件を提供することを意味する。これにより、血液流路は連続的な繊維インターフェース領域として構成される。血液流路を通過する血液細胞は、血液細胞を均一なレベルの剪断応力に曝す繊維膜の実質的に均一な環境に遭遇する。
【0100】
血液流路及びガス血液インターフェースは同じハウジングに入っているが、異なるように制御可能な複数のガス血液インターフェースは仕切り26Aによって分離されている。図12から図14は、ガス血液インターフェースをほぼ半分に分離する単一の仕切り26Aのみを示しているが、実施形態は、複数の仕切りを含むことができ、かつ/又は、例えば提供されるガス血液インターフェースを分離するために、異なる分離を含むことができる。仕切り26Aは、酸素供給器10Bの製造中に各ガス流路が分離したままであることを保証できる場合、必ずしも単一である必要はない。例えば、仕切り26Aは、ブラケット又は楔形のプレート又はシートなどの複数の要素によって提供され得る。形状は、多部品の仕切りを画定するために組み合わせることができる、開口の一部を構成する切り欠きを含み得る。仕切りの機能は、複数のコンポーネント、例えば2つの中空繊維群の間(例えば2つのマットの間)の入口端及び出口端のみに配置された細片によって提供され得る。したがって、仕切り26Aは、ガス入口ゾーン及び/又はガス排出ゾーンの仕切りが2つのガス流路を明確に分離する位置に保持されることを可能にする保持構造として理解することができる。仕切り26Aは、ガス入口ゾーンから排気ゾーンまでのガス流路の厳密な分離を容易にする。ポッティングを通って延びる単一の仕切りコンポーネントを設けることは、積み重ねた配置の組み立てを容易にするが、図12から、複数の要素が使用され得ることが理解されるであろう。図12から図14の実施例は、第1のガス入口区画28から第2の中空繊維群34Bに向かうガス流(及びその逆)を遮断する構成を提供する。これにより、酸素化特性とGME除去効果をより正確に制御することができる。
【0101】
図に示すように、ガス血液インターフェース32は、直線的に延びる中空繊維から成る。ガス流路の明確な分離は、ガス入口が反対ではなく並んだ構成でガス出口の隣にあるように配置されたファイバーループなどの他の構成で達成することができる、1つ以上の仕切り構造が2つの繊維群を分離する。中空繊維は異なるように配置され、例えば巻かれ得るが、排気が実質的にガス入口の反対側にある直線状のガス血液インターフェースを設けることが、閉ループフィードバック機構を用いた血液ガス値の正確な制御を容易にすることは出願人によって見出された。
【0102】
中空繊維は、PMP及びポリプロピレンなどの任意の好適な材料で作ることができる。中空繊維に関連して説明したが、本発明は、ガス流路を提供する平面又は波形シート又はウェビングなどの異なるガス血液インターフェースの設計を含み得る。
【0103】
図10から図14を参照して説明した酸素供給器10Bは、図8及び図9に関して説明したように静脈動脈シャント16又は16Aを含むことができ、図3に関して説明したように体外灌流システムで使用することができる。
【0104】
図15は、酸素化方法50のステップを示す。方法は、掃引ガスによって別々に供給可能な領域に分離された酸素供給器のガス血液インターフェースを提供するステップ52を含む。ガス血液インターフェースは、ガス入口ゾーン内の仕切りのような上述の構成によって、及び/又は異なるガス入口を設けることによって、そのような領域に分離することができる。ステップ54において、領域の少なくとも1つに掃引ガスを供給する。この領域は、図4を参照して上述した方法で供給することができる。任意選択のステップ56において、掃引ガスの供給を領域ごとに異なるように調節する。例えば、図4及び図5を参照して説明したように、ガス供給部22及び24は、第1及び第2の中空繊維群34A及び34Bに対して異なるように調節される。任意選択のステップ58において、ガス血液インターフェース領域の面積を調節することによって掃引ガスの供給を調節する。例えば、図6及び図7を参照して説明したように、仕切り26は、第1の中空繊維群34Aのガス血液インターフェースに利用可能な面積を変更(増加及び減少)することを可能にする。ステップ56及び58の両方を同時に行うことができる。任意選択のステップ60において、流出血液のPaO2及び/又はPaCO2を監視する。任意選択のステップ62において、総ガス流量を調節する。ステップ56から62は、PaO2、PaCO2若しくは血液温度などの血液値、又はこれらのうちの2つ以上が予め定められた設定値に達するまで繰り返され得る。特に、ステップ56から62は、血液値が予め定められた設定値に維持されることを可能にする閉ループで提供され得る。
【0105】
任意選択のステップ64において、静脈血の一部がガス血液インターフェースを迂回することを可能にするために静脈動脈シャントを提供する。これは、図3図8及び図9に示す実施形態の形態で提供することができる。任意選択のステップ66において、静脈血(酸素化されていない血液)を酸素供給器で処理された血液と混合して混合血液を提供する。静脈動脈シャントに関して上述したように、方法は、血液値及び/又はガス値を測定すること、酸素供給器で処置された血液と混合される静脈血の量を調節するためにこれらの値を制御ループで使用することとを含み得る。
【0106】
酸素化システムは、コントローラ及びプロセッサによって実施されるソフトウェア命令を含みかつ/又はコントローラ及びソフトウェア命令に接続され得る。いずれの方法ステップも、コントローラによって実行され得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15