(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-30
(45)【発行日】2023-06-07
(54)【発明の名称】多流路質量流量・質量流量比制御システムのための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
G05D 7/06 20060101AFI20230531BHJP
【FI】
G05D7/06 Z
(21)【出願番号】P 2020562694
(86)(22)【出願日】2019-04-24
(86)【国際出願番号】 US2019028904
(87)【国際公開番号】W WO2019217078
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2022-03-09
(32)【優先日】2018-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592053963
【氏名又は名称】エム ケー エス インストルメンツ インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】MKS INSTRUMENTS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【氏名又は名称】中尾 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【氏名又は名称】笹沼 崇
(72)【発明者】
【氏名】ディング・ジュンファ
(72)【発明者】
【氏名】ラバッシ・マイケル
(72)【発明者】
【氏名】コール・ウェイン
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-30636(JP,A)
【文献】特表2004-517396(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0370763(US,A1)
【文献】特表2009-533756(JP,A)
【文献】特表2018-526757(JP,A)
【文献】国際公開第2011/040330(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流量制限体、流量調整弁、および当該流量制限体と当該流量調整弁との間にある流路圧力センサをそれぞれ具備した、複数の流路と、
前記複数の流路から又は前記複数の流路へと流体を運ぶ共有流路であって、当該共有流路と前記流路圧力センサとの間
の各流路の中に前記流量制限体がある、共有流路と、
共有流路圧力を検出するように構成された、前記共有流路における共有圧力センサと、
流路圧力及び前記共有流路圧力に基づいて各流路内の質量流量を求め、各流路内の質量流量を制御するように前記流路の前記流量調整弁を制御するコントローラと、
を備える、流体制御システム
において、前記コントローラが:(1)前記複数の流路について、前記流路圧力センサとは反対側で前記流量制限体に隣接した位置の流路圧力;(2)各流路内の質量流量;および(3)前記共有流路内の総質量流量;を、再帰計算を通じて求める、流体制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の流体制御システムにおいて、前記複数の流路の各流路が、さらに、温度センサを具備している、流体制御システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の流体制御システムにおいて、前記コントローラが、各流路内の質量流量を、当該流路を流れる前記流体の特性、前記流量制限体の特性、および前記流量制限体と前記共有圧力センサとの間の流路特性に基づいて求める、流体制御システム。
【請求項4】
請求項3に記載の流体制御システムにおいて、前記流路特性が、前記流路の、前記流量制限体から前記共有圧力センサまでの容積及び長さである、流体制御システム。
【請求項5】
請求項1から
4のいずれか一項に記載の流体制御システムにおいて、前記コントローラが、前記複数の流路のうちの所与の流路内の質量流量を:(i)当該流路について、流路圧力検出値を提供する前記流路圧力センサとは反対側で前記流量制限体に隣接したところの流路圧力を仮定し;(ii)前記流路圧力センサとは反対側で前記流量制限体に隣接したところの前記流路圧力、および当該流路の前記流路圧力検出値に基づいて、当該流路内の当該質量流量を求めて;(iii)前記複数の流路の各流路内の質量流量に基づいて総質量流量を求めて;(iv)当該流路について、(iii)で求めた前記総質量流量を用いて、前記流路圧力センサとは反対側で前記流量制限体に隣接したところの前記流路圧力を計算し;(ii)~(iv)を繰り返す;ことによって求める、流体制御システム。
【請求項6】
請求項1から
5のいずれか一項に記載の流体制御システムにおいて、前記共有流路が、前記複数の流路の下流側にある、流体制御システム。
【請求項7】
請求項1から
5のいずれか一項に記載の流体制御システムにおいて、前記共有流路が、前記複数の流路の上流側にある、流体制御システム。
【請求項8】
請求項1から
5のいずれか一項に記載の流体制御システムにおいて、さらに、
流量制限体、流量調整弁、および当該流量制限体と当該流量調整弁との間にある流路圧力センサをそれぞれ具備した、第2の複数の流路、
を備え、前記共有流路が、前記複数の流路から前記第2の複数の流路へと流体を運び、前記第2の複数の流路の各流路では、前記流路圧力センサと前記共有流路との間に前記流量制限体があり、前記コントローラが、さらに、前記第2の複数の流路の各流路内の質量流量を流路圧力及び前記共有流路圧力に基づいて求め、各流路内の質量流量を制御するように前記流路の前記流量調整弁を制御する、流体制御システム。
【請求項9】
請求項1から
5、および請求項
8のいずれか一項に記載の流体制御システムにおいて、前記コントローラが、前記共有流路の上流側にあるi番目の流路について、流路圧力センサとは反対側で流量制限体に隣接したところの流路圧力を、式(1):
P
d,i=f
Pd(P
d,Q
t,V
i,L
i) (1)
(式中、f
Pdは、前記共有圧力センサで検出された下流側圧力P
d、前記共有流路内の総流量Q
t、ならびに前記i番目の流路の、制限体から前記共有圧力センサまでの容積V
i及び長さL
iの関数である。)
を用いて計算する、流体制御システム。
【請求項10】
請求項
9に記載の流体制御システムにおいて、f
Pdは、経験則的データおよび/または実験で得られたものである、流体制御システム。
【請求項11】
請求項
9または
10に記載の流体制御システムにおいて、f
Pdは、式(2):
f
Pd(P
d,Q
t,V
i,L
i)=k
i,1×P
d+k
i,2×Q
t+k
i,3×V
i+k
i,4×L
i
(2)
(式中、k
i,1、k
i,2、k
i,3及びk
i,4は、経験則的に又は実験で得られた線形係数である。)
により表される、流体制御システム。
【請求項12】
請求項1から
5および請求項
8から
11のいずれか一項に記載の流体制御システムにおいて、前記コントローラが、j番目の流路について、流路圧力センサとは反対側で流量制限体に隣接したところの流路圧力を、式(6):
P
u,j=f
Pu(P
u,Q
t,V
j,L
j) (6)
(式中、f
Puは、前記共有圧力センサで検出された上流側圧力P
u、前記共有流路内の総流量Q
t、ならびに前記j番目の流路の、制限体から前記共有圧力センサまでの容積V
j及び長さL
jの関数である。)
を用いて計算する、流体制御システム。
【請求項13】
請求項
12に記載の流体制御システムにおいて、f
Puは、経験則的データおよび/または実験で得られたものである、流体制御システム。
【請求項14】
請求項
12または
13に記載の流体制御システムにおいて、f
Puは、式:
f
Pu(P
u,Q
t,V
j,L
j)=k
j,1×P
u+k
j,2×Q
t+k
j,3×V
j+k
j,4×L
j
(7)
(式中、k
j,1、k
j,2、k
j,3及びk
j,4は、経験則的に又は実験で得られた線形係数である。)
により表される、流体制御システム。
【請求項15】
請求項
8または請求項8を引用する場合の請求項9から14のいずれか一項に記載の流体制御システムにおいて、前記第2の複数の流路の各流路が、さらに、温度センサを具備している、流体制御システム。
【請求項16】
請求項1から
15のいずれか一項に記載の流体制御システムにおいて、前記複数の流路が、一体的システムの一部である、流体制御システム。
【請求項17】
請求項
8または請求項8を引用する場合の請求項9から15のいずれか一項に記載の流体制御システムにおいて、前記複数の流路および前記第2の複数の流路が、一体的システムの一部である、流体制御システム。
【請求項18】
請求項
17に記載の流体制御システムにおいて、前記共有圧力センサが、前記一体的システムの一部でない、流体制御システム。
【請求項19】
請求項1から
18のいずれか一項に記載の流体制御システムにおいて、前記流体が、ガスである、流体制御システム。
【請求項20】
流量制限体及び流量調整弁をそれぞれ具備した複数の流路に流体を流す過程と、
前記複数の流路から又は前記複数の流路へと共有流路を通して流体を流す過程と、
前記共有流路における共有流路圧力を検出する過程と、
各流路について、流量調整弁と流量制限体との間で流路圧力を検出する過程と、
前記流路圧力及び前記共有流路圧力に基づいて各流路内の質量流量を求める過程と、
各流路内の質量流量を制御するように前記流路の前記流量調整弁を制御する過程と、
を備える、
流体制御方法において、(1)各流路内の質量流量;(2)前記複数の流路について、前記検出した流路圧力の検出位置とは反対側で前記流量制限体に隣接した位置の流路圧力;および(3)前記共有流路内の総質量流量;が再帰的に計算することによって求められる、流体制御方法。
【請求項21】
請求項
20に記載の流体制御方法において、さらに、
各流路について、流量調整弁と流量制限体との間で流路温度を検出する過程、
を備える、流体制御方法。
【請求項22】
請求項
20または
21に記載の流体制御方法において、各流路内の質量流量が、当該流路を流れる前記流体の特性、前記流量制限体の特性、および前記流量制限体と前記共有流路圧力が検出される箇所との間の流路特性に基づいて求められる、流体制御方法。
【請求項23】
請求項
20から
22のいずれか一項に記載の流体制御方法において、前記複数の流路のうちの所与の流路内の質量流量を求める過程が:(i)当該流路について、
前記検出した流路圧力の検出位置とは反対側で前記流量制限体に隣接したところの流路圧力を仮定すること;(ii)
前記検出した流路圧力の検出位置とは反対側で前記流量制限体に隣接したところの前記流路圧力、および当該流路の
前記検出した流路圧力に基づいて、当該流路内の当該質量流量を求めること;(iii)前記複数の流路の各流路内の質量流量に基づいて総質量流量を求めること;(iv)当該流路について、(iii)で求めた前記総質量流量を用いて、前記流路の
前記検出した流路圧力の検出位置とは反対側で前記流量制限体に隣接したところの前記流路圧力を計算すること;ならびに(ii)~(iv)を繰り返すこと;を含む、流体制御方法。
【請求項24】
請求項
20から
23のいずれか一項に記載の流体制御方法において、さらに、
前記複数の流路からの流体を、前記共有流路を通して、流量制限体及び流量調整弁をそれぞれ具備した第2の複数の流路に流す過程と、
前記第2の複数の流路の各流路について、流量調整弁と流量制限体との間で流路圧力及び流路温度を検出する過程と、
前記流路圧力及び前記共有流路圧力に基づいて前記第2の複数の流路の各流路内の質量流量を求める過程と、
を備える、流体制御方法。
【請求項25】
請求項
20から
24のいずれか一項に記載の流体制御方法において、さらに、
前記共有流路の上流側にあるi番目の流路について、
検出した流路圧力の検出位置とは反対側で流量制限体に隣接したところの流路圧力を、式(1):
P
d,i=f
Pd(P
d,Q
t,V
i,L
i) (1)
(式中、f
Pdは、
前記検出した共有流路圧力P
d、前記共有流路内の総流量Q
t、ならびに前記i番目の流路の、制限体から
前記検出した共有流路圧力の検出位置までの容積V
i及び長さL
iの関数である。)
を用いて計算する過程、
を備える、流体制御方法。
【請求項26】
請求項
25に記載の流体制御方法において、f
Pdが、経験則的データおよび/または実験で得られたものである、流体制御方法。
【請求項27】
請求項
25または
26に記載の流体制御方法において、f
Pdは、式(2):
f
Pd(P
d,Q
t,V
i,L
i)=k
i,1×P
d+k
i,2×Q
t+k
i,3×V
i+k
i,4×L
i
(2)
(式中、k
i,1、k
i,2、k
i,3及びk
i,4は、経験則的に又は実験で得られた線形係数である。)
により表される、流体制御方法。
【請求項28】
請求項
20から
27のいずれか一項に記載の流体制御方法において、さらに、
前記共有流路の下流側にあるj番目の流路について、
前記検出した流路圧力の検出位置とは反対側で流量制限体に隣接したところの流路圧力を、式(6):
P
u,j=f
Pu(P
u,Q
t,V
j,L
j) (6)
(式中、f
Pdは、
前記検出した共有流路圧力P
u、前記共有流路内の総流量Q
t、ならびに前記j番目の流路の、制限体から
前記検出した共有流路圧力の検出位置までの容積V
j及び長さL
jの関数である。)
を用いて計算する過程、
を備える、流体制御方法。
【請求項29】
請求項
28に記載の流体制御方法において、f
Puは、経験則的データおよび/または実験で得られたものである、流体制御方法。
【請求項30】
請求項
28または
29に記載の流体制御方法において、f
Puは、式(7):
f
Pu(P
u,Q
t,V
j,L
j)=k
j,1×P
u+k
j,2×Q
t+k
j,3×V
j+k
j,4×L
j
(7)
(式中、k
j,1、k
j,2、k
j,3及びk
j,4は、経験則的に又は実験で得られた線形係数である。)
により表される、流体制御方法。
【請求項31】
請求項
24に記載の流体制御方法において、さらに、
前記第2の複数の流路の各流路について、流量調整弁と流量制限体との間で流路温度を検出する過程、
を備える、流体制御方法。
【請求項32】
請求項
20から
31のいずれか一項に記載の流体制御方法において、前記流体が、ガスである、流体制御方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、2018年5月7日付出願の米国特許出願第15/973,190号の継続出願である。上記出願の全教示内容は、参照をもって本明細書に取り入れたものとする。
【背景技術】
【0002】
多流路質量流量制御システムは、複数の流路内の流体の流量を制御し、当該複数の流路からの流体同士を所望の割合で一つの共有流路へと連結することが可能となるように用いられる。多流路質量流量比制御システムは、一つの共有流路からの流体の流量を複数の流路へと所望の質量流量比で制御するのに用いられる。これらのようなシステムは、例えば、半導体製造システムやその他の材料加工システムで使用される。
【0003】
半導体製造過程には、数種の様々なガスや混合ガスを幾つかの処理工程にわたって様々な量で届けるということが伴い得る。一般的に言って、ガスは、加工施設のタンク内に保管される。そして、当該タンクからガスの量を計量して化学気相成長反応装置、真空スパッタ装置、プラズマエッチング装置などの加工ツールへ届けるのに、ガス計量システムが用いられる。典型的に、ガス計量システム内やガス計量システムから加工ツールまでの流路内には、弁、圧力レギュレータ、質量流量制御システム(MFCS)、質量流量比制御システム(FRCS)などといったコンポーネントが含まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体製造用途などの一部の用途では、典型的にスペースが極めて限られているため、高い柔軟性が上記システムに求められることになる(例えば、既存のMFCSやFRCS内でさらなる流路を追加したり取り除いたり入れ替えたりすることが簡単に出来るのが望ましい)。また、高い精度も要求される。さらに、低コストで且つ複雑でないシステムが一般的に所望される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
多流路質量流量制御システムや多流路質量流量比制御システムや多流路質量流量・質量流量比制御システムを含む流体制御システム、さらには、対応する流体制御方法を提供する。これらのシステムや方法により、既存の対応するシステムよりもスペース効率に優れ、柔軟性が高く、経済的で、かつ、簡単な流体制御が可能となる。
【0006】
流体制御システムの一実施形態は、流量制限体、流量調整弁、および当該流量制限体と当該流量調整弁との間にある流路圧力センサをそれぞれ具備した、複数の流路と、前記複数の流路から又は前記複数の流路へと流体を運ぶ共有流路であって、当該共有流路と前記流路圧力センサとの間に各流路の前記流量制限体がある、共有流路と、共有流路圧力を検出するように構成された、前記共有流路における共有圧力センサと、流路圧力及び前記共有流路圧力に基づいて各流路内の質量流量を求め、各流路内の質量流量を制御するように前記流路の前記流量調整弁を制御するコントローラと、を備える。
【0007】
前記複数の流路の各流路は、温度センサを具備し得る。
【0008】
前記コントローラは、各流路内の質量流量を、当該流路を流れる前記流体の特性、前記流量制限体の特性、および前記流量制限体と前記共有圧力センサとの間の流路特性に基づいて求め得る。前記流路特性は、前記流路の、前記流量制限体から前記共有圧力センサまでの容積及び長さであり得る。
【0009】
前記コントローラは、(1)各流路内の質量流量;(2)前記複数の流路について、前記流路圧力センサとは反対側で前記流量制限体に隣接した位置の流路圧力;および(3)前記共有流路内の総質量流量;を再帰的に求め得る。
【0010】
前記コントローラは、前記複数の流路のうちの所与の流路内の質量流量を:(i)当該流路について、流路圧力検出値を提供する前記流路圧力センサとは反対側で前記流量制限体に隣接したところの流路圧力を仮定し;(ii)前記流路圧力センサとは反対側で前記流量制限体に隣接したところの前記流路圧力、および当該流路の前記流路圧力検出値に基づいて、当該流路内の当該質量流量を求めて;(iii)前記複数の流路の各流路内の質量流量に基づいて総質量流量を求めて;(iv)当該流路について、(iii)で求めた前記総質量流量を用いて、前記流路圧力センサとは反対側で前記流量制限体に隣接したところの前記流路圧力を計算し;(ii)~(iv)を繰り返す;ことによって求め得る。
【0011】
前記共有流路は、前記複数の流路の下流側にあり得る。
【0012】
また、前記共有流路は、前記複数の流路の上流側にあるものであってもよい。
【0013】
さらなる実施形態において、前記流体制御システムは、さらに、流量制限体、流量調整弁、および当該流量制限体と当該流量調整弁との間にある流路圧力センサをそれぞれ具備した、第2の複数の流路、を備え、前記共有流路が、前記複数の流路から前記第2の複数の流路へと流体を運び、前記第2の複数の流路の各流路では、前記流路圧力センサと前記共有流路との間に前記流量制限体があり、前記コントローラが、さらに、前記第2の複数の流路の各流路内の質量流量を流路圧力及び前記共有流路圧力に基づいて求め、各流路内の質量流量を制御するように前記流路の前記流量調整弁を制御する。
【0014】
前記第2の複数の流路の各流路は、さらに、温度センサを具備し得る。
【0015】
前記複数の流路は、一体的システムの一部であり得る。
【0016】
前記複数の流路および前記第2の複数の流路は、一体的システムの一部であり得る。
【0017】
前記共有圧力センサは、前記一体的システムの一部でなくてもよい(すなわち、前記共有圧力センサは、システム外のものであってもよい)。
【0018】
前記流体は、液体またはガスであり得る。ただし、典型的には、前記流体がガスである。
【0019】
他の実施形態は、流体制御方法である。当該流体制御方法は、流量制限体及び流量調整弁をそれぞれ具備した複数の流路に流体を流す過程と、前記複数の流路から又は前記複数の流路へと共有流路を通して流体を流す過程と、前記共有流路における共有流路圧力を検出する過程と、各流路について、流量調整弁と流量制限体との間で流路圧力を検出する過程と、前記流路圧力及び前記共有流路圧力に基づいて各流路内の質量流量を求める過程と、各流路内の質量流量を制御するように前記流路の前記流量調整弁を制御する過程と、を備える。
【0020】
前記流体制御方法は、さらに、各流路について、流量調整弁と流量制限体との間で流路温度を検出する過程、を備え得る。
【0021】
各流路内の前記質量流量は、当該流路を流れる前記流体の特性、前記流量制限体の特性、および前記流量制限体と前記共有流路圧力が検出される箇所との間の流路特性に基づいて求められ得る。
【0022】
各流路内の質量流量;前記複数の流路について、前記流路圧力センサとは反対側で前記流量制限体に隣接した位置の流路圧力;および前記共有流路内の総質量流量;が再帰的に求められ得る。
【0023】
前記複数の流路のうちの所与の流路内の質量流量を求める過程が:(i)当該流路について、前記流路圧力センサとは反対側で前記流量制限体に隣接したところの流路圧力を仮定すること;(ii)前記流路圧力センサとは反対側で前記流量制限体に隣接したところの前記流路圧力、および当該流路の前記流路圧力検出値に基づいて、当該流路内の当該質量流量を求めること;(iii)前記複数の流路の各流路内の質量流量に基づいて総質量流量を求めること;(iv)当該流路について、(iii)で求めた前記総質量流量を用いて、前記流路圧力センサとは反対側で前記流量制限体に隣接したところの前記流路圧力を計算すること;ならびに(ii)~(iv)を繰り返すこと;を含み得る。
【0024】
前記流体制御方法は、さらに、前記複数の流路からの流体を、前記共有流路を通して、流量制限体及び流量調整弁をそれぞれ具備した第2の複数の流路に流す過程と、前記第2の複数の流路の各流路について、流量調整弁と流量制限体との間で流路圧力及び流路温度を検出する過程と、前記流路圧力及び前記共有流路圧力に基づいて前記第2の複数の流路の各流路内の質量流量を求める過程と、を備え得る。
【0025】
前記流体制御方法は、前記第2の複数の流路の各流路について、流量調整弁と流量制限体との間で流路温度を検出する過程、を備え得る。
【0026】
前記流体制御方法で制御される前記流体は、液体でもガスでもよく、典型的にはガスである。
【0027】
前述の内容は、添付の図面に示す本発明の例示的な実施形態についての以下のより詳細な説明から明らかになる。異なる図をとおして、同じ参照符号は同じ構成/構成要素を指すものとする。図面は必ずしも縮尺どおりではなく、むしろ、本発明の実施形態を図示することに重点が置かれている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】従来技術の単流路質量流量制御システムの概略図である。
【
図2】複数の流路が共有する下流側圧力センサをシステム内に備えた、多流路質量流量制御システムの概略図である。
【
図3】複数の流路が共有する下流側圧力センサをシステム外に備えた、多流路質量流量制御システムの概略図である。
【
図4】複数の流路が共有する上流側圧力センサをシステム内に備えた、多流路質量流量比制御システムの概略図である。
【
図5】複数の流路が共有する上流側圧力センサをシステム外に備えた、多流路質量流量比制御システムの概略図である。
【
図6】複数の流路が共有する圧力センサを、当該複数の流路の一部にとって下流側であり且つそれ以外の流路にとって上流側であるところに一つ備えた、多流路質量流量・質量流量比制御の統合型システムの概略図である。
【
図7】質量流量を多流路質量流量制御システムの流量設定点に調整するための、流入弁の制御の様子を示すフロー図である。
【
図8】質量流量を多流路質量流量比制御システムの流量比設定点に調整するための、流出弁の制御の様子を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下では、本発明の例示的な実施形態について説明する。
【0030】
質量流量制御システムや質量流量比制御システムや質量流量・質量流量比制御システムを含む流体制御システム、さらには、対応する流体制御方法が提供される。後述するように、本明細書で提示するシステムは、従来技術のシステムと比べて格別の利点を奏する。
【0031】
図1に、ホストコントローラ105および一体的な質量流量制御システム110を備えた、従来技術の単流路質量流量制御システム100を示す。一体的な質量流量制御システム110は、上流側位置122から下流側位置124までガスを内部に流すことが可能であるように構成された流路120、当該流路内のガスの流量を調整するように構成された弁130、システム内の(すなわち、一体的システムの内部にある)上流側圧力センサ140、流量制限体150、下流側圧力センサ160、および質量流量制御システム(MFCS)コントローラ170を含む。流量制限体150により、圧力が低下する。すなわち、上流側圧力センサ140で検出される圧力は、下流側圧力センサ160で検出される圧力よりも高くなる。MFCSコントローラ170は、ホストコントローラ105と(例えば、質量流量制御の設定点を受け取るために)通信を行う(171)ほか、一体的な質量流量制御システム110内の質量流量180(Q
1)を計算するための基礎となる上流側圧力信号172及び下流側圧力信号174を受け取る。MFCSコントローラ170は、質量流量計算値180と所望の質量流量設定点とに基づいて、質量流量180を所望の質量流量に調整するように弁130を制御する(190)。
【0032】
重要なのは、従来技術の質量流量制御システムの場合、流量制限体150での圧力低下を正確に検出出来るようにするため(したがって、質量流量を正確に測定出来るようにするため)、2つの対応する圧力センサ(すなわち、上流側圧力センサ140と下流側圧力センサ174)を各流路の流量制限体近傍に具備させているという点である。
【0033】
これとは対照的に、本明細書で提示する流体制御システム及び方法では、一方の圧力センサ(すなわち、質量流量制御システムにおける下流側圧力センサ、質量流量比制御システムにおける上流側圧力センサ)を流量制限体から遠ざけることができるだけでなく、単一のMFCSコントローラによる作動が可能となるため、幾つかの格別な利点へと繋がる。圧力センサを遠ざけることが出来るため、これを複数の流路同士で共有することが可能となる。単一のMFCSコントローラの使用および共有圧力センサの使用は、より経済的であるだけでなく、前記流体制御システムのスペース効率を向上させる。後者は、半導体産業などの一部の産業での用途において極めて重要である。また、共有圧力センサが単一のMFCSコントローラと組み合わされることにより、前記流体制御システム内、圧力センサとMFCSコントローラとの間、さらには、MFCSコントローラとホストコントローラとの間での通信の複雑性を大いに簡略化させることができる。さらに、共有圧力センサは、校正が簡略化且つ向上するだけでなく、多流路システムの柔軟性を高めることもできる。しかも、より高精度で且つ広域の圧力センサを共有圧力センサとして使用することが可能になるので、コスト増になることなく前記流体制御システムの全体的精度を上げることができる。
【0034】
図2に、ホストコントローラ215と通信を行う一体的な多流路質量流量制御サブシステム210を備える、多流路質量流量制御システム200を示す。システム200は、複数の流路220を備える(説明を分かり易くするために、1番目、2番目及びN番目の流路のみを図示している)。これらの流路220は、同図に示すように同一のもの(例えば、同じ直径および同じ長さ)であってもよいが、より典型的には相異なるもの(例えば、相異なる長さ)である。流路220同士は、共有流路221を形成するように繋がっている。各流路220は、当該流路の上流側位置222と共有流路221に沿った(下流側圧力が検出される)下流側位置224との間にかけて流体を当該流路内部に流すことが可能であるように構成されている。各流路は、さらに、当該各流路内の流体の流量を調整するように構成された弁230を具備している。当該弁同士は、同一であってもよいし相異なるものであってもよい。各流路220は、さらに、上流側圧力センサ240および流量制限体250を具備している。システム内にある下流側共有圧力センサ260が、共有流路221内の流体圧力を位置224にて検出する。MFCSコントローラ270は、ホストコントローラ215と(例えば、質量流量制御の設定点の一式を受け取るために)通信を行う(271)ほか、上流側圧力センサ240の各々からの上流側圧力信号272および下流側圧力センサ260からの下流側圧力信号274を受け取るように構成されている。本例では、MFCSコントローラ270および下流側圧力センサ260が、いずれも一体的システム210の一部とされている。しかし、代替的な実施形態では、質量流量制御システムコントローラ270および/または下流側圧力センサ260がシステム外のものとされてもよい。また、代替的な実施形態では、システム内および/またはシステム外の2つ以上のMFCSコントローラ270が使用されてもよい。ただし、典型的には、単一のMFCSコントローラ270が使用される。というのも、MFCSコントローラがそれ以上になると、コスト、スペース要件、および前記システム内のコントローラ-センサ間での通信の複雑性が増加するからである。MFCSコントローラ270は、各流路220内の各質量流量280(これにより、共有流路221内の総質量流量285)を制御するように各弁230を個別に制御することが可能な構成とされる。この点に関しては、前記コントローラが、各弁230に弁制御信号290を送信するように構成されている。
【0035】
下流側圧力センサ260は、各流量制限体250から離れたところにある。各流路220内の流体流量を正確に測定出来るようになるには、各流量制限体に隣接した両側での流体の流体圧力を明らかにする必要がある。
【0036】
一般的には、所与の流路iに関して、システム内の対応する一方の圧力センサ(例えば、上流側圧力センサ240)で流量制限体に隣接したところの流体圧力を検出することにより、当該所与の流路にとって必要な2種類の圧力値のうちの一方がもたらされる(例えば,i番目の流路の上流側圧力Pu,iがもたらされる)。i番目の流路の、前記制限体に隣接した位置での下流側圧力Pd,iは、次の式:
Pd,i=fPd(Pd,Qt,Vi,Li) (1)
(式中、fPdは、前記共有流路に沿った位置に離設されている前記下流側圧力センサ(例えば、共有流路221に沿った位置224にある圧力センサ260)で検出された下流側共有圧力Pd、装置内の総流量Qt(すなわち、前記共有流路内の流量)、ならびに前記i番目の流路の、前記制限体から前記第2の位置にある共有圧力センサまでの容積Vi及び長さLiの関数である。)により推定することができる。
【0037】
関数fPdは、経験則的データまたは実験で、例えば、一次式:
fPd(Pd,Qt,Vi,Li)=ki,1×Pd+ki,2×Qt+ki,3×Vi+ki,4×Li
(2)
(式中、ki,1、ki,2、ki,3及びki,4は、経験則的に又は実験で得られた線形係数である。)
として得られたものであり得る。
【0038】
当該技術分野で既知のとおり、i番目の流路の前記流量制限体を通過する流量(Qi)は、当該制限体の上流側圧力及び下流側圧力(すなわち、当該制限体直近での圧力同士)(Pu,i,Pd,i)、当該制限体での流路の断面積(Ai)、ならびに比熱比γ、分子量Mなどといったガス特性の関数:
Qi=fQ(Pu,i,Pd,i,Ai,γ,M) (3)
として記述することが可能である。
【0039】
関数fQは、経験則的データまたは実験で得られたものであり得る。
【0040】
フローノズルを流量制限体とする場合、次の式:
【0041】
【0042】
を用いることができる。
(式中、Ciはi番目の流量制限体の流出係数であり、Rは一般気体定数であり、Tはガスの温度である。)
【0043】
管を制限体とする場合、次の式:
【0044】
【0045】
を用いることができる。
(式中、diはi番目の管の直径であり、Liはi番目の管の長さであり、μはガスの粘度である。)
【0046】
上記以外の流量制限体や、上記以外の流量制限体を通過する質量流量を記述した対応する式を使用することも可能であり、これらは当該技術分野で既知のものである。例えば、The American Society of Mechanical Engineers, “ASME MFC-3M-2004 Measurement of Fluid Flow in Pipes Using Orifice, Nozzle, and Venturi”, 2004を参照のこと。
【0047】
装置内の総流量Qtは、個々の流路の流量Qi(i=1,2,…N)を全て合計することによって計算される。Qiの計算値は下流側圧力Pd,iに依存するため、Qi、Pd,i及びQtを求めるには再帰的計算が必要となる。例えば、まずPd,iの開始値を仮定してから、流量Qiの開始値を前述のように求める。次に、Qiを全て合計することによって総流量Qtを求める。そして、総流量Qtを使ってPd,i及びQiを再計算し得る。この再帰的計算は、設定された収束閾値内に数値が収束するまで繰り返される。
【0048】
前記MFCSコントローラは、質量流量計算値Qiに基づき、フィードバック制御手法を用いて各流路の弁を所望の質量流量設定点へと制御し得る。
【0049】
図2に示す多流路質量流量制御システムでは、下流側共有圧力センサ260が、一体的システムの一部としてのシステム内センサとされている。この下流側圧力センサは、
図3に示すようにシステム外のものとされてもよい。
【0050】
図3に、ホストコントローラ315と通信を行う一体的な多流路質量流量制御サブシステム310を備える、多流路質量流量制御システム300を示す。システム300は、複数の流路320を備える(説明を分かり易くするために、1番目、2番目及びN番目の流路のみを図示している)。これらの流路320は、同図に示すように同一のもの(例えば、同じ直径および同じ長さ)であってもよいが、より典型的には相異なるもの(例えば、相異なる長さ)である。流路320同士は、共有流路321を形成するように繋がっている。各流路320は、当該流路の上流側位置322と共有流路321に沿った(下流側圧力が検出される)下流側位置324との間にかけて流体を当該流路内部に流すことが可能であるように構成されている。各流路は、さらに、当該各流路内の流体の流量を調整するように構成された弁330を具備している。当該弁同士は、同一であってもよいし相異なるものであってもよい。各流路320は、さらに、上流側圧力センサ340および流量制限体350を具備している。システム外にある下流側共有圧力センサ360が、共有流路321内の流体圧力を位置324にて検出する。MFCSコントローラ370は、ホストコントローラ315と(例えば、質量流量制御の設定点の一式を受け取るために)通信を行う(371)ほか、上流側圧力センサ340の各々からの上流側圧力信号372および下流側圧力センサ360からの下流側圧力信号374を受け取るように構成されている。本例では、MFCSコントローラ370が、一体的システム310の一部とされている。しかし、代替的な実施形態では、MFCSコントローラ370がシステム外のものとされてもよい。また、代替的な実施形態では、システム内および/またはシステム外の2つ以上のMFCSコントローラ370が使用されてもよい。ただし、典型的には、単一のMFCSコントローラ370が使用される。というのも、MFCSコントローラがそれ以上になると、コスト、スペース要件、および前記システム内のコントローラ-センサ間での通信の複雑性が増加するからである。MFCSコントローラ370は、各流路320内の各質量流量380(これにより、共有流路321内の総質量流量385)を制御するように各弁330を個別に制御することが可能な構成とされる。この点に関しては、前記コントローラが、各弁330に弁制御信号390を送信するように構成されている。前記コントローラは、さらに、i番目の流路について、前記制限体に隣接した位置での下流側圧力P
d,iを、前述の式(1)および/または式(2)を用いて推定するように構成されている。前記MFCSコントローラは、さらに、これらの下流側圧力計算値を基に、前記流路内の質量流量を式(3)および/または式(4)もしくは式(5)に従って推定し得る。
【0051】
図4に、多流路質量流量比制御システム405および当該システム405へ流体入力を供給する多流路質量流量制御システム407を備えた、流体制御システム400を示す。一体的な質量流量比制御システム405は、ホストコントローラ415と通信を行うように構成されているほか、複数の流路420を含んでいる(説明を分かり易くするために、1番目、2番目及びN番目の流路のみを図示している)。これらの流路420は、同図に示すように同一のもの(例えば、同じ直径および同じ長さ)であってもよいが、より典型的には相異なるもの(例えば、相異なる長さ)である。流路420同士は、共有流路421を形成するように繋がっている。各流路420は、当該流路の上流側位置424と共有流路421に沿った(上流側共有圧力が検出される)下流側位置422との間にかけて流体を当該流路内部に流すことが可能であるように構成されている。各流路420は、さらに、当該各流路内の流体の流量を調整するように構成された弁430を具備している。当該弁同士は、同一であってもよいし相異なるものであってもよい。各流路420は、さらに、下流側圧力センサ440および流量制限体450を具備している。システム内にある上流側共有圧力センサ460が、共有流路421内の流体圧力を位置424にて検出する。多流路質量流量比(MCFR)コントローラ470が、ホストコントローラ415と(例えば、質量流量制御の設定点を受け取るために)通信を行う(471)ほか、下流側圧力センサ440の各々からの下流側圧力信号472および上流側共有圧力センサ460からの上流側共有圧力信号474を受け取るように構成されている。本例では、MCFRコントローラ470が、一体的システム405の一部とされている。しかし、代替的な実施形態では、MCFRコントローラ470がシステム外のものとされてもよい。また、代替的な実施形態では、システム内および/またはシステム外の2つ以上のMCFRコントローラ470が使用されてもよい。ただし、典型的には、単一のMCFRコントローラ470が使用される。というのも、MCFRコントローラがそれ以上になると、コスト、スペース要件、および前記システム内のコントローラ-センサ間での通信の複雑性が増加するからである。MCFRコントローラ470は、各流路420内の各質量流量480を制御して既知のフィードバック制御手法(例えば、PID制御手法)により総入力流量485に対する目標流量比設定点を達成するように、各弁430を制御することが可能な構成とされる。この点に関しては、前記コントローラが、各弁430に弁制御信号490を送信するように構成されている。上流側共有圧力センサ460は、各流量制限体450から離れたところにある。各流路420内の流体流量を正確に測定出来るようになるには、各流量制限体450に隣接した両側での流体の流体圧力を明らかにする必要がある。
【0052】
一般的には、所与の流路jに関して、システム内の対応する一方の圧力センサ(例えば、下流側圧力センサ440)で流量制限体に隣接したところの流体圧力を検出することにより、当該所与の流路にとって必要な2種類の圧力値のうちの一方がもたらされる(例えば,j番目の流路の下流側圧力Pd,jがもたらされる)。j番目の流路の、前記制限体に隣接した位置での上流側圧力Pu,jは、次の式:
Pu,j=fPu(Pu,Qt,Vj,Lj) (6)
(式中、fPuは、前記共有流路に沿った上流側位置に離設されている前記上流側圧力センサ(例えば、共有流路421に沿って流量制限体450の上流側位置424にある圧力センサ460)で検出された上流側共有圧力Pu、装置内の総流量Qt(すなわち、前記共有流路(例えば、流路421)内の流量)、ならびに前記j番目の流路の、前記流量制限体から前記上流側位置にある前記共有圧力センサまでの容積Vj及び長さLjの関数である。)により推定することができる。
【0053】
関数fPuは、経験則的データまたは実験で、例えば、一次式:
fPu(Pu,Qt,Vj,Lj)=kj,1×Pu+kj,2×Qt+kj,3×Vj+kj,4×Lj
(7)
(式中、kj,1、kj,2、kj,3及びkj,4は、経験則的に又は実験で得られた線形係数である。)
として得られたものであり得る。前記MFCSコントローラは、さらに、これらの圧力計算値を基に、前記流路内の質量流量を前述の式(3)および/または式(4)もしくは式(5)に従って推定し得る。
【0054】
さらに、
図4に示すように、一体的な多流路質量流量比制御システム405を従来技術の既知の多流路質量流量制御システム407と併用することも可能である(但し、流体源から流体入力を直接受け取るという構成(同図に図示せず)も可能である)。多流路質量流量制御システム407は、例えば、
図1に示すような従来技術の既知の質量流量制御システム491を複数にしたものからなるものとされてもよい。これらの質量流量制御システム491は、複数の流路492からの流量同士が共有流路421へと組み合わされるよう構成される。各々の質量流量制御システム491は、流体源493から流体を受け取る。
【0055】
図4の一体的な多流路質量流量比制御システム405では、上流側共有圧力センサ460が、当該一体的システムの一部としてのシステム内センサとされている。この上流側圧力センサは、
図5に示すようにシステム外のものとされてもよい。
【0056】
図5に、一体的な多流路質量流量比制御システム505および当該システム505へ流体入力を供給する多流路質量流量制御システム507を備えた、流体制御システム500を示す。一体的な質量流量比制御システム505は、ホストコントローラ515と通信を行うように構成されているほか、複数の流路520を含んでいる(説明を分かり易くするために、1番目、2番目及びN番目の流路のみを図示している)。これらの流路520は、同図に示すように同一のもの(例えば、同じ直径および同じ長さ)であってもよいが、より典型的には相異なるもの(例えば、相異なる長さ)である。流路520同士は、共有入力流路521を形成するように繋がっている。各流路520は、当該流路の上流側位置524と共有流路521に沿った(上流側共有圧力が検出される)下流側位置522との間にかけて流体を当該流路内部に流すことが可能であるように構成されている。各流路520は、さらに、当該各流路内の流体の流量を調整するように構成された弁530を具備している。当該弁同士は、同一であってもよいし相異なるものであってもよい。各流路520は、さらに、下流側圧力センサ540および流量制限体550を具備している。システム外にある上流側共有圧力センサ560が、共有流路521内の流体圧力を位置524にて検出する。MCFRコントローラ570が、ホストコントローラ515と(例えば、質量流量比制御の設定点を受け取るために)通信を行う(571)ほか、下流側圧力センサ540の各々からの下流側圧力信号572および上流側共有圧力センサ560からの上流側共有圧力信号574を受け取るように構成されている。本例では、MCFRコントローラ570が、一体的システム505の一部とされている。しかし、代替的な実施形態では、MCFRコントローラ570がシステム外のものとされてもよい。また、代替的な実施形態では、システム内および/またはシステム外の2つ以上のMCFRコントローラ570が使用されてもよい。ただし、典型的には、単一のMCFRコントローラ570が使用される。というのも、MFCSコントローラがそれ以上になると、コスト、スペース要件、および前記システム内のコントローラ-センサ間での通信の複雑性が増加するからである。MCFRコントローラ570は、各流路520内の各質量流量580を制御して既知のフィードバック制御手法(例えば、PID制御手法)により総入力流量585に対する目標流量比設定点を達成するように、各弁530を制御することが可能な構成とされる。この点に関しては、前記コントローラが、各弁530に弁制御信号590を送信するように構成されている。前記コントローラは、さらに、i番目の流路について、前記制限体に隣接した位置での上流側圧力P
u,iを、前述の式(6)および/または式(7)を用いて推定するように構成されている。前記MCFRコントローラは、さらに、これらの上流側圧力計算値を基に、前記流路内の質量流量を式(3)および/または式(4)もしくは式(5)に従って推定するほか各流路の対応する流量比を計算し得る。
【0057】
さらに、
図5に示すように、一体的な多流路質量流量比制御システム505を従来技術の既知の多流路質量流量制御システム507と併用することも可能である(但し、流体源から流体入力を直接受け取るという構成(同図に図示せず)も可能である)。多流路質量流量制御システム507は、例えば、
図1に示すような従来技術の既知の質量流量制御システム591を複数にしたものからなるものとされてもよい。これらの質量流量制御システム591は、複数の流路592からの流量同士が共有流路521へと組み合わされるよう構成される。各々の質量流量制御システム591は、流体源593から流体を受け取る。
【0058】
本明細書で説明する多流路質量流量制御システム(例えば、
図2のシステム200)と本明細書で説明する多流路質量流量比制御システム(例えば、
図4のシステム405)とを統合することにより、多流路質量流量・質量流量比制御システムを形成することも可能である。統合時のこれらのシステムに必要な共有圧力センサは、前記質量流量制御システムにとっての前記下流側共有圧力センサとして且つ前記質量流量比制御システムにとっての前記上流側共有圧力センサとして機能する一つだけである。さらに、統合時のシステムに必要なコントローラは、前記MCFRコントローラ及びMFCSコントローラの双方として機能する一つだけとなる。
【0059】
図6に、多流路質量流量・質量流量比制御の統合型システム600を示す。一体的な質量流量比制御システム600は、ホストコントローラ615と通信を行うように構成されているほか、複数の流路620を含んでいる(これらの流路620は、質量流量制御側のN個の流路からなる第1のセット(すなわち、第1の複数の流路)と質量流量比制御側のM個の流路からなる第2のセット(すなわち、第2の複数の流路)とに分けられる;説明を分かり易くするために、各側の1番目、2番目およびN番目(又はM番目)の流路のみを図示している)。これらの流路620は、同図に示すように同一のもの(例えば、同じ直径および同じ長さ)であってもよいが、より典型的には相異なるもの(例えば、相異なる長さ)である。流路620同士は、共有流路621を形成するように繋がっている。各流路620は、当該流路の第1の位置622と共有流路621に沿った(共有圧力が検出される)第2の位置624との間にかけて流体を当該流路内部に流すことが可能であるように構成されている。各流路620は、さらに、当該各流路内の流体の流量を調整するように構成された弁(上流側弁630または下流側弁631)を具備している。当該弁同士は、同一であってもよいし相異なるものであってもよい。各流路620は、さらに、圧力センサ(前記システムのうちの前記質量流量制御部分では上流側圧力センサ640、前記システムのうちの前記質量流量比部分では下流側圧力センサ641)および流量制限体650を具備している。システム内にある共有圧力センサ660が、共有流路621内の流体圧力を位置624にて検出する。コントローラ670が、ホストコントローラ615と(例えば、質量流量制御の設定点の一式及び質量流量比制御の設定点の一式を受け取るために)通信を行う(671)ほか、圧力センサ640の各々及び圧力センサ641の各々からの圧力信号672、ならびに共有圧力センサ660からの共有圧力信号674を受け取るように構成されている。本例では、コントローラ670が、一体的システム600の一部とされている。しかし、代替的な実施形態では、コントローラ670がシステム外のものとされてもよい。また、代替的な実施形態では、システム内および/またはシステム外の2つ以上のコントローラ670が使用されてもよい。ただし、典型的には、単一のコントローラ670が使用される。というのも、コントローラがそれ以上になると、コスト、スペース要件、および前記システム内のコントローラ-センサ間での通信の複雑性が増加するからである。コントローラ670は、各流路620内の各質量流量680の制御および各流路622内の各質量流量687の制御(これにより、共有流路621内の総質量流量685の制御)をそれぞれ行うように各弁630,631を個別に制御することが可能な構成とされる。この点に関しては、前記コントローラが、各弁630に弁制御信号690を送信するように構成されている。前記コントローラは、さらに、(前記質量流量制御部分に対応する前記第1のセットの流路のうちの)i番目の流路について、制限体650に隣接した位置での下流側圧力P
d,iを、前述の式(1)および/または式(2)を用いて推定するように、かつ、(前記質量流量比制御部分に対応する前記第2のセットの流路のうちの)i番目の流路について、前記制限体に隣接した位置での上流側圧力P
u,iを、前述の式(6)および/または式(7)を用いて推定するように構成されている。前記コントローラは、さらに、これらの下流側圧力計算値及び上流側圧力計算値ならびに上流側圧力検出値及び下流側圧力検出値のそれぞれを基に、前記流路内の質量流量を式(3)および/または式(4)もしくは式(5)に従って推定し得る。
【0060】
共有圧力センサを(例えば、
図6に示すように多流路質量流量・質量流量比制御システムの一部として)一つだけ使用するという構成は、例えば、自己校正や交差検証が可能となり得るので極めて有利である。
【0061】
自己校正方法の一例は、下記のステップを含む:
(1)全ての上流側弁(流入弁)630を閉じて、全ての下流側弁(流出弁)631を開く;
(2)流路内のシステム圧力を(例えば、下流側弁631が開いた1つ又は複数の流路に1つ又は複数のポンプを直接又は間接的に接続することによって)排気するとともに共有圧力センサの読取値を監視する;
(3)前記システム圧力が所定の低圧閾値にまで低下すると、全ての下流側弁631を閉じる;
(4)流入側のi番目の質量流量流路について(例えば、
図6に示す1番目のガス源からの)質量流量設定点を設定し、コントローラでi番目の上流側弁630を開いて質量流量(圧力ベースの流量センサで測定される質量流量Q
m)が当該流量設定点に調整されるよう制御する;
(5)共有圧力センサで前記システム圧力を測定し、かつ、ガスの温度を測定する;
(6)圧力上昇量の手法によって、実際の質量流量Q
aを計算する(すなわち、Q
a=V×Tstp×[d(P/T)/dt](式中、Vは、i番目の上流側弁630と残り全ての下流側弁(なお、残り全ての弁が閉じていることを前提とする)との間にかけての総システム容積である。));
(7)i番目の上流側弁630を閉じるとともに全ての下流側弁を開き、前記システム圧力を排気する;
(8)所与の用途で想定される、i番目の流路の全流量範囲をカバーするように、様々な流量設定点で(3)~(7)を繰返し行う;
(9)実際の流量測定値(Q
a)および流量測定値(Q
m)を、流入側のi番目の流路の校正データとして記憶する;
(10)流入側の次の流路についても(1)~(9)を行い、これを流入側の全ての流路が校正されるまで繰り返す;
(11)全ての上流側弁630及び下流側弁631を閉じる;
(12)j番目の下流側弁(流出弁)631を開く;
(13)流入側のk番目の流路に対して流量設定点を設定し、質量流量を安定化させる;
(14)流入側のk番目の流路の流量測定値Q
aおよび流出側のj番目の流路の流量測定値Q
mの両方を記憶する;
(15)流出側のk番目の流路の全流量範囲がカバーされるように流入側のj番目の流路の流量設定点を様々なものにして、(11)~(14)を繰返し行う;
(16)実際の流量測定値(Q
a)および流量測定値(Q
m)を、流出側のj番目の流路の校正データとして記憶する;
(17)流入側の次の流路についても(11)~(16)を行い、これを流出側の全ての流路が校正されるまで繰り返す。
【0062】
交差検証方法の一例は、下記のステップを含む:
(1)全ての上流側弁630および下流側弁631を閉じる;
(2)流入側のi番目の流路に対して流量設定点を設定するとともにj番目の下流側弁を開く;
(3)流入側のi番目の流量測定値と流出側のj番目の流量測定値との流量差を比べる;
(4)前記流量差が所定の流量誤差閾値を上回る場合、流入側のi番目の流量測定値と流出側のj番目の流量測定値のいずれかが正確でない;
(5)流入側及び流出側の全ての流路について(1)~(4)を繰返し行う。
【0063】
前記流体制御システムは、一体的システムであり得る。すなわち、同システムの構成要素同士が、単一のハウジング又は筐体内に収まっている。典型的には、本明細書で説明する前記流体制御システムのハウジングに、少なくとも流体入力部及び流体出力部が設けられているとともに信号の入出力が可能とされている。これにより、当該一体的システムをより大規模なシステム内に組み込むことが可能となる。
【0064】
複数の流路のうちの各流路が別々の一体的システムの一部とされてもよいし、一部又は全ての流路が同じ一体的システムの一部とされてもよい。典型的には、同じ一体的システムの一部とされる各流路について、その1つの弁、1つの流量制限体、および当該弁と当該流量制限体との間に位置した1つの流体圧力センサも、当該同じ一体的システムの一部とされ、場合によっては、その温度センサも当該同じ一体的システムの一部とされる。
【0065】
一体的な流体制御システムでは、当該一体的システムの1つ又は複数の流路により、当該一体的システムにおける流入部から当該一体的システムにおける流出部まで流体が流れることが可能となっている。
【0066】
前記流体制御システムは、1つ又は複数のコントローラを備え得る。しかしながら、典型的には、前記システムが、例えば
図2~
図6に示したように組み込まれることが可能な単一のコントローラを備えている。当該コントローラは、システム外のものとされてもよい。本明細書で提示した一体的システムを複数制御するのに、システム外のコントローラを使用することが可能である。例えば、1つの弁、1つの流量制限体、および当該弁と当該流量制限体との間にある1つの圧力センサを(場合によっては、1つの温度センサも)それぞれ具備した複数の一体的システムを、システム外のコントローラで制御することが可能である。この総合的な流体制御システム構成により、優れた柔軟性が可能となる。例えば、対象となる場所にシステム外のコントローラ及びシステム外の共有圧力センサを具備し既に存在している流体制御システムについて、これに簡単な変更を加えるだけで、システム全体から所与の一体的システムを追加したり取り外したり入れ替えたりするという構成が可能となる。
【0067】
本明細書で提示する本提示の流体制御システムや流体制御方法では、市販のコントローラを使用することが可能である。ただし、当該コントローラ及び通信システムは、本明細書で提示したような流体制御システムの動作が可能となるように構成する必要がある。
【0068】
また、具体的な用途要件にもよるが、当該技術分野において既知のものである市販の弁、圧力センサ、流路、および通信システムを選択することも可能である。
【0069】
前記流体制御システムは、複数(例えば、2つ以上、5つ以上、8つ以上等)の流路を備える。典型的には、全ての流路同士が、共有流路を形成するように(すなわち、動作のあいだ流体接続可能となるように)繋がっている。全ての流路が単一の共有流路へと繋げられた一体的な流体制御システムは、例えば、
図2(システム200)、
図3(システム300)、
図4(システム405)、
図5(システム505)および
図6(システム600)に描かれている。
【0070】
典型的には、弁と流量制限体との間にある流路圧力センサは、当該流量制限体に最大限近い位置で流路内の流体の圧力を検出するのが望ましい。すなわち、圧力が検出される位置と流量制限体(より具体的には、流体が流量制限体に出入りする位置)との間の距離が実用上可能な限り近いのが望ましい。しかしながら、この距離は長くなってもよい。ただし、流量の測定結果の正確性は低下する。典型的には、この距離は、流体が流れる管の直径未満とされる。本提示の流体制御システムは、さらに、共有流路における流体圧力を当該システムの各流路に対応する流量制限体から離れた位置で検出するように構成された共有圧力センサを備えている。多流路システムでは、この圧力センサが、共有流路に又は共有流路に沿って設置され得る。共有圧力センサを離れたところで使用することにより、例えば
図3や
図5に示すように当該圧力センサを一体的な多流路システムのシステム外とすることができる。しかしながら、流量の測定や制御を正確に行うには、各流路の流量制限体での圧力低下を求める必要がある。典型的には、共有圧力が検出される位置と各流量制限体(より具体的には、流体が流量制限体に出入りする位置)との間の距離が実用上可能な限り近いのが望ましい。本提示の流体制御システムによれば、各流量制限体までのこの距離を、所与の流路についての流路圧力センサと流量制限体との間の距離よりも遥かに大きく取ることが可能となる。例えば、この距離は、流体が流れる管の直径よりも大きく取ることができる。
【0071】
本提示の流体制御システムでは、従来技術からの既知のものである市販の流量制限体を使用することが可能である。好適な流量制限体には、ノズル、オリフィス、層流素子および多孔質体が含まれるが、これらに限定されない。
【0072】
前記流体制御システムの流路は、温度センサを具備し得る。典型的には、各流路が、当該流路のうちの弁と流量制限体との間の位置で流体温度を検出する温度センサを具備している。これは、複数の各流路を流れる流体(典型的には、ガス)同士が別々の温度とされる用途において極めて重要となる。しかしながら、前記複数の流路(及び/又は第2の複数の流路)のうちの一部又は全ての流路が同じ温度とされる場合には、必要となる温度センサの数が減らされてもよい。例えば、ガスが流れている最中の流路を含め、一部又は全ての流路を同じ温度に維持する場合、これらの流路(あるいは、一体的システム全体)の維持目標となる温度を測定する1つ又は複数の(但し、各流路につき1つ未満の)温度センサが使用され得る。
【0073】
さらなる実施形態では、流体制御方法が提供される。当該流体制御方法では、本明細書で説明した任意の流体制御システムが使用され得る。
【0074】
さらなる実施形態では、前記多流路質量流量制御システム(例えば、
図2、
図3等に示したもの)、および対応する流体制御方法により、前記複数の流路の各流路内の質量流量を質量流量設定点に調整するよう流入弁(例えば、弁230、弁330等)を個別に制御することが可能である。
図7は、このような制御を可能にする方法の例示的なフロー図である。当該方法は、ステップ710にて、ホストコントローラ(典型的には、全流路で共有するホストコントローラ;例えば、215、315等)から流量設定点を(典型的には、前記複数の流路の各流路ごとに)受け取るか又は当該流量設定点の更新を受けることを含む。前記方法は、さらに、ステップ720にて、(例えば、圧力センサ240、340等による)全ての上流側圧力、(例えば、共有圧力センサ260、360等による位置224、324等での)下流側共有圧力、および(前記複数の流路の各流路が別々の温度とされる場合に)全ての温度を測定することを含む(典型的には各流路が温度センサを具備しており、通常、当該温度センサは流路の弁と流量制限体との間で流体温度を検出する;反対に、一部の流路同士が同じ温度にされる場合には、必要となる流路が減らされてもよい;実施形態によっては、温度センサがシステム外のものとされてもよい)。ステップ720にて測定された情報を基に、各流路の質量流量が前述のようにして計算され得る。さらに、これらの質量流量計算値を基に、全ての下流側圧力が計算され得る(ステップ740を参照のこと)。ステップ730及びステップ740は、設定された収束閾値に収束するまで繰り返される(750を参照のこと)。典型的には、ステップ730およびステップ740(したがって、750)は、コントローラ(例えば、215、315等)が測定情報を受け取り詳細に既述した内容の計算を実行することによって行われる。ステップ760にて、これらの流量測定結果が前記コントローラに供給されることで全ての流入弁制御信号が生成され、ステップ770にて、流量を設定点に調整するように前記コントローラがこれらの流入弁制御信号に基づいて前記流入弁を制御する。
【0075】
さらなる実施形態では、前記多流路質量流量比制御システム(例えば、
図4、
図5等に示したもの)、および対応する流体制御方法により、前記複数の流路の各流路内の質量流量を質量流量設定点に調整するよう流出弁(例えば、弁430、弁530等)を個別に制御することが可能である。
図8は、このような制御を可能にする方法の例示的なフロー図である。当該方法は、ステップ810にて、ホストコントローラ(典型的には、全流路で共有するホストコントローラ;例えば、405、505等)から流量比設定点を(典型的には、前記複数の流路の各流路ごとに)受け取るか又は当該流量比設定点の更新を受けることを含む。前記方法は、さらに、ステップ820にて、(例えば、圧力センサ440、540等による)全ての下流側圧力、(例えば、共有圧力センサ460、560等による位置424、524等での)上流側共有圧力、および(前記複数の流路の各流路が別々の温度とされる場合に)全ての温度を測定することを含む(典型的には各流路が温度センサを具備しており、通常、当該温度センサは流路の弁と流量制限体との間で流体温度を検出する;反対に、一部の流路同士が同じ温度にされる場合には、必要となる流路が減らされてもよい;実施形態によっては(例えば、一体的システム全体が所与の温度に維持される場合)、温度センサがシステム外のものとされてもよい)。ステップ820にて測定された情報を基に、各流路の質量流量が前述のようにして計算され得る。さらに、これらの質量流量計算値を基に、全ての上流側圧力が計算され得る(ステップ840を参照のこと)。ステップ830及びステップ840は、設定された収束閾値に収束するまで繰り返される(850を参照のこと)。典型的には、ステップ830およびステップ840(したがって、850)は、コントローラ(例えば、405、505等)が測定情報を受け取り詳細に既述した内容の計算を実行することによって行われる。ステップ860にて、これらの流量測定結果が前記コントローラに供給されることで全ての流出弁制御信号が生成され、ステップ870にて、流量を目標の流量比設定点に調整するように前記コントローラがこれらの流出弁制御信号に基づいて前記流出弁を制御する。
【0076】
さらなる実施形態では、前記多流路質量流量・質量流量比制御システム(例えば、
図6に示したもの)、および対応する流体制御方法により、前記複数の流路の各流路内の質量流量を質量流量設定点に調整するよう流入弁(例えば、弁630)及び流出弁(例えば、弁631)を個別に制御することが可能である。前記システムのうちの質量流量制御部分は
図7のフロー図に示した方法を用い得て、前記システムのうちの質量流量比制御部分は
図8のフロー図に示した方法を用い得る。当該システムでは、前記共有圧力が、前記質量流量制御部分にとっての前記下流側圧力となり且つ前記質量流量制御システムにとっての前記上流側圧力となる。
【0077】
本願の流体制御システムは単純にハードウェアであってもよいが、一般的には、データプロセッサ、対応するメモリ、および入出力装置を備えたハードウェアシステム上のソフトウェアにより(典型的には、前記コントローラに実装されたソフトウェアとして)、本願の流体制御方法が実現される。プロセッサルーチン(例えば、本明細書で説明した計算や方法工程に対応するルーチンを含む、本明細書で説明したコントローラのプロセッサルーチン)及びデータは、コンピュータプログラムプロダクトとしての非過渡的なコンピュータ読取り可能媒体に記憶されたものであり得る。
【0078】
本明細書で引用した全ての特許、特許出願公開公報および刊行物の全教示内容は、参照をもって取り入れたものとする。
【0079】
例示的な実施形態を参照しながら本発明を具体的に図示・説明したが、当業者であれば、添付の特許請求の範囲に包含された本発明の範囲を逸脱しない範疇で形態や細部に様々な変更が施されてもよいことを理解するであろう。
なお、本発明は、実施の態様として以下の内容を含む。
〔態様1〕
流量制限体、流量調整弁、および当該流量制限体と当該流量調整弁との間にある流路圧力センサをそれぞれ具備した、複数の流路と、
前記複数の流路から又は前記複数の流路へと流体を運ぶ共有流路であって、当該共有流路と前記流路圧力センサとの間に各流路の前記流量制限体がある、共有流路と、
共有流路圧力を検出するように構成された、前記共有流路における共有圧力センサと、
流路圧力及び前記共有流路圧力に基づいて各流路内の質量流量を求め、各流路内の質量流量を制御するように前記流路の前記流量調整弁を制御するコントローラと、
を備える、流体制御システム。
〔態様2〕
態様1に記載の流体制御システムにおいて、前記複数の流路の各流路が、さらに、温度センサを具備している、流体制御システム。
〔態様3〕
態様1または2に記載の流体制御システムにおいて、前記コントローラが、各流路内の質量流量を、当該流路を流れる前記流体の特性、前記流量制限体の特性、および前記流量制限体と前記共有圧力センサとの間の流路特性に基づいて求める、流体制御システム。
〔態様4〕
態様3に記載の流体制御システムにおいて、前記流路特性が、前記流路の、前記流量制限体から前記共有圧力センサまでの容積及び長さである、流体制御システム。
〔態様5〕
態様1から4のいずれか一態様に記載の流体制御システムにおいて、前記コントローラが:(1)前記複数の流路について、前記流路圧力センサとは反対側で前記流量制限体に隣接した位置の流路圧力;(2)各流路内の質量流量;および(3)前記共有流路内の総質量流量;を再帰的に求める、流体制御システム。
〔態様6〕
態様1から5のいずれか一態様に記載の流体制御システムにおいて、前記コントローラが、前記複数の流路のうちの所与の流路内の質量流量を:(i)当該流路について、流路圧力検出値を提供する前記流路圧力センサとは反対側で前記流量制限体に隣接したところの流路圧力を仮定し;(ii)前記流路圧力センサとは反対側で前記流量制限体に隣接したところの前記流路圧力、および当該流路の前記流路圧力検出値に基づいて、当該流路内の当該質量流量を求めて;(iii)前記複数の流路の各流路内の質量流量に基づいて総質量流量を求めて;(iv)当該流路について、(iii)で求めた前記総質量流量を用いて、前記流路圧力センサとは反対側で前記流量制限体に隣接したところの前記流路圧力を計算し;(ii)~(iv)を繰り返す;ことによって求める、流体制御システム。
〔態様7〕
態様1から6のいずれか一態様に記載の流体制御システムにおいて、前記共有流路が、前記複数の流路の下流側にある、流体制御システム。
〔態様8〕
態様1から6のいずれか一態様に記載の流体制御システムにおいて、前記共有流路が、前記複数の流路の上流側にある、流体制御システム。
〔態様9〕
態様1から6のいずれか一態様に記載の流体制御システムにおいて、さらに、
流量制限体、流量調整弁、および当該流量制限体と当該流量調整弁との間にある流路圧力センサをそれぞれ具備した、第2の複数の流路、
を備え、前記共有流路が、前記複数の流路から前記第2の複数の流路へと流体を運び、前記第2の複数の流路の各流路では、前記流路圧力センサと前記共有流路との間に前記流量制限体があり、前記コントローラが、さらに、前記第2の複数の流路の各流路内の質量流量を流路圧力及び前記共有流路圧力に基づいて求め、各流路内の質量流量を制御するように前記流路の前記流量調整弁を制御する、流体制御システム。
〔態様10〕
態様1から6、および態様9のいずれか一態様に記載の流体制御システムにおいて、前記コントローラが、前記共有流路の上流側にあるi番目の流路について、流路圧力センサとは反対側で流量制限体に隣接したところの流路圧力を、式(1):
Pd,i=fPd(Pd,Qt,Vi,Li) (1)
(式中、f
Pd
は、前記共有圧力センサで検出された下流側圧力P
d
、前記共有流路内の総流量Q
t
、ならびに前記i番目の流路の、制限体から前記共有圧力センサまでの容積V
i
及び長さL
i
の関数である。)
を用いて計算する、流体制御システム。
〔態様11〕
態様10に記載の流体制御システムにおいて、f
Pd
は、経験則的データおよび/または実験で得られたものである、流体制御システム。
〔態様12〕
態様10または11に記載の流体制御システムにおいて、f
Pd
は、式(2):
f
Pd
(P
d
,Q
t
,V
i
,L
i
)=k
i,1
×P
d
+k
i,2
×Q
t
+k
i,3
×V
i
+k
i,4
×L
i
(2)
(式中、k
i,1
、k
i,2
、k
i,3
及びk
i,4
は、経験則的に又は実験で得られた線形係数である。)
により表される、流体制御システム。
〔態様13〕
態様1から6および態様9から12のいずれか一態様に記載の流体制御システムにおいて、前記コントローラが、j番目の流路について、流路圧力センサとは反対側で流量制限体に隣接したところの流路圧力を、式(6):
P
u,j
=f
Pu
(P
u
,Q
t
,V
j
,L
j
) (6)
(式中、f
Pu
は、前記共有圧力センサで検出された上流側圧力P
u
、前記共有流路内の総流量Q
t
、ならびに前記j番目の流路の、制限体から前記共有圧力センサまでの容積V
j
及び長さL
j
の関数である。)
を用いて計算する、流体制御システム。
〔態様14〕
態様13に記載の流体制御システムにおいて、f
Pu
は、経験則的データおよび/または実験で得られたものである、流体制御システム。
〔態様15〕
態様13または14に記載の流体制御システムにおいて、f
Pu
は、式:
f
Pu
(P
u
,Q
t
,V
j
,L
j
)=k
j,1
×P
u
+k
j,2
×Q
t
+k
j,3
×V
j
+k
j,4
×L
j
(7)
(式中、k
j,1
、k
j,2
、k
j,3
及びk
j,4
は、経験則的に又は実験で得られた線形係数である。)
により表される、流体制御システム。
〔態様16〕
態様9から15のいずれか一態様に記載の流体制御システムにおいて、前記第2の複数の流路の各流路が、さらに、温度センサを具備している、流体制御システム。
〔態様17〕
態様1から16のいずれか一態様に記載の流体制御システムにおいて、前記複数の流路が、一体的システムの一部である、流体制御システム。
〔態様18〕
態様9から16のいずれか一態様に記載の流体制御システムにおいて、前記複数の流路および前記第2の複数の流路が、一体的システムの一部である、流体制御システム。
〔態様19〕
態様18に記載の流体制御システムにおいて、前記共有圧力センサが、前記一体的システムの一部でない、流体制御システム。
〔態様20〕
態様1から19のいずれか一態様に記載の流体制御システムにおいて、前記流体が、ガスである、流体制御システム。
〔態様21〕
流量制限体及び流量調整弁をそれぞれ具備した複数の流路に流体を流す過程と、
前記複数の流路から又は前記複数の流路へと共有流路を通して流体を流す過程と、
前記共有流路における共有流路圧力を検出する過程と、
各流路について、流量調整弁と流量制限体との間で流路圧力を検出する過程と、
前記流路圧力及び前記共有流路圧力に基づいて各流路内の質量流量を求める過程と、
各流路内の質量流量を制御するように前記流路の前記流量調整弁を制御する過程と、
を備える、流体制御方法。
〔態様22〕
態様21に記載の流体制御方法において、さらに、
各流路について、流量調整弁と流量制限体との間で流路温度を検出する過程、
を備える、流体制御方法。
〔態様23〕
態様21または22に記載の流体制御方法において、各流路内の質量流量が、当該流路を流れる前記流体の特性、前記流量制限体の特性、および前記流量制限体と前記共有流路圧力が検出される箇所との間の流路特性に基づいて求められる、流体制御方法。
〔態様24〕
態様21または22に記載の流体制御方法において、(1)各流路内の質量流量;(2)前記複数の流路について、前記流路圧力センサとは反対側で前記流量制限体に隣接した位置の流路圧力;および(3)前記共有流路内の総質量流量;が再帰的に求められる、流体制御方法。
〔態様25〕
態様21から24のいずれか一態様に記載の流体制御方法において、前記複数の流路のうちの所与の流路内の質量流量を求める過程が:(i)当該流路について、前記流路圧力センサとは反対側で前記流量制限体に隣接したところの流路圧力を仮定すること;(ii)前記流路圧力センサとは反対側で前記流量制限体に隣接したところの前記流路圧力、および当該流路の前記流路圧力検出値に基づいて、当該流路内の当該質量流量を求めること;(iii)前記複数の流路の各流路内の質量流量に基づいて総質量流量を求めること;(iv)当該流路について、(iii)で求めた前記総質量流量を用いて、前記流路圧力センサとは反対側で前記流量制限体に隣接したところの前記流路圧力を計算すること;ならびに(ii)~(iv)を繰り返すこと;を含む、流体制御方法。
〔態様26〕
態様21から25のいずれか一態様に記載の流体制御方法において、さらに、
前記複数の流路からの流体を、前記共有流路を通して、流量制限体及び流量調整弁をそれぞれ具備した第2の複数の流路に流す過程と、
前記第2の複数の流路の各流路について、流量調整弁と流量制限体との間で流路圧力及び流路温度を検出する過程と、
前記流路圧力及び前記共有流路圧力に基づいて前記第2の複数の流路の各流路内の質量流量を求める過程と、
を備える、流体制御方法。
〔態様27〕
態様21から26のいずれか一態様に記載の流体制御方法において、さらに、
前記共有流路の上流側にあるi番目の流路について、流路圧力センサとは反対側で流量制限体に隣接したところの流路圧力を、式(1):
P
d,i
=f
Pd
(P
d
,Q
t
,V
i
,L
i
) (1)
(式中、f
Pd
は、前記共有圧力センサで検出された下流側圧力P
d
、前記共有流路内の総流量Q
t
、ならびに前記i番目の流路の、制限体から前記共有圧力センサまでの容積V
i
及び長さL
i
の関数である。)
を用いて計算する過程、
を備える、流体制御方法。
〔態様28〕
態様27に記載の流体制御システムにおいて、f
Pd
が、経験則的データおよび/または実験で得られたものである、流体制御システム。
〔態様29〕
態様27または28に記載の流体制御システムにおいて、f
Pd
は、式(2):
f
Pd
(P
d
,Q
t
,V
i
,L
i
)=k
i,1
×P
d
+k
i,2
×Q
t
+k
i,3
×V
i
+k
i,4
×L
i
(2)
(式中、k
i,1
、k
i,2
、k
i,3
及びk
i,4
は、経験則的に又は実験で得られた線形係数である。)
により表される、流体制御システム。
〔態様30〕
態様21から29のいずれか一態様に記載の流体制御方法において、さらに、
前記共有流路の下流側にあるj番目の流路について、流路圧力センサとは反対側で流量制限体に隣接したところの流路圧力を、式(6):
P
u,j
=f
Pu
(P
u
,Q
t
,V
j
,L
j
) (6)
(式中、f
Pd
は、前記共有圧力センサで検出された上流側圧力P
u
、前記共有流路内の総流量Q
t
、ならびに前記j番目の流路の、制限体から前記共有圧力センサまでの容積V
j
及び長さL
j
の関数である。)
を用いて計算する過程、
を備える、流体制御方法。
〔態様31〕
態様30に記載の流体制御システムにおいて、f
Pu
は、経験則的データおよび/または実験で得られたものである、流体制御システム。
〔態様32〕
態様30または31に記載の流体制御システムにおいて、f
Pu
は、式(7):
f
Pu
(P
u
,Q
t
,V
j
,L
j
)=k
j,1
×P
u
+k
j,2
×Q
t
+k
j,3
×V
j
+k
j,4
×L
j
(7)
(式中、k
j,1
、k
j,2
、k
j,3
及びk
j,4
は、経験則的に又は実験で得られた線形係数である。)
により表される、流体制御システム。
〔態様33〕
態様26に記載の流体制御方法において、さらに、
前記第2の複数の流路の各流路について、流量調整弁と流量制限体との間で流路温度を検出する過程、
を備える、流体制御方法。
〔態様34〕
態様21から33のいずれか一態様に記載の流体制御方法において、前記流体が、ガスである、流体制御方法。