IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヒュッテネス−アルベルトゥス ヒェーミッシェ ヴェルケ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

特許7288499コーティング組成物の使用、及びコーティングによる遠心鋳造型の製造のための対応方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-30
(45)【発行日】2023-06-07
(54)【発明の名称】コーティング組成物の使用、及びコーティングによる遠心鋳造型の製造のための対応方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 1/00 20060101AFI20230531BHJP
   B05D 7/14 20060101ALI20230531BHJP
   B05D 7/22 20060101ALI20230531BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20230531BHJP
   B22C 3/00 20060101ALI20230531BHJP
   B22D 13/10 20060101ALI20230531BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20230531BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20230531BHJP
   C09D 7/43 20180101ALI20230531BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20230531BHJP
【FI】
C09D1/00
B05D7/14 K
B05D7/14 P
B05D7/22 G
B05D7/24 301E
B05D7/24 303B
B05D7/24 303H
B22C3/00 B
B22D13/10 502
C09D5/02
C09D7/20
C09D7/43
C09D7/61
【請求項の数】 39
(21)【出願番号】P 2021504515
(86)(22)【出願日】2019-08-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 EP2019071659
(87)【国際公開番号】W WO2020035474
(87)【国際公開日】2020-02-20
【審査請求日】2022-08-12
(31)【優先権主張番号】102018119635.0
(32)【優先日】2018-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102018131811.1
(32)【優先日】2018-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591194322
【氏名又は名称】ヒュッテネス-アルベルトゥス ヒェーミッシェ ヴェルケ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【住所又は居所原語表記】Wiesenstrasse 23,D-40549 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100156982
【弁理士】
【氏名又は名称】秋澤 慈
(72)【発明者】
【氏名】ヘニッヒ スヴェン
(72)【発明者】
【氏名】ヤトケ アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ジーガー クラウス
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-207777(JP,A)
【文献】国際公開第2018/127413(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/044904(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/127415(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00
C09D 5/02
C09D 7/43
C09D 7/20
C09D 7/61
B05D 7/24
B05D 7/14
B05D 7/22
B22D 13/10
B22C 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴霧塗布によって遠心鋳造型の内壁上に耐火性コーティングを製造するための耐火性コーティング組成物であって、
前記コーティング組成物はコーティング組成物の全質量に基づき、69重量%より高い固体分率を有し、
且つ
コーティング組成物の固体分率の全質量に基づき、0.6重量%未満の強熱減量を有し、前記強熱減量は900℃の点火温度を使用して、標準試験方法EN 12879:2000に従って決定され、
前記コーティング組成物が、水相中の耐火材の分散体であり、前記耐火材が、少なくとも、
(a)-前記コーティング組成物の全質量に基づき、全量で4~50重量%の範囲の粒子状非晶質酸化物
(前記粒子状非晶質酸化物は、前記粒子状非晶質酸化物の全量に基づき、85重量%以上の分率の二酸化ケイ素を含み、
前記粒子状非晶質酸化物は、レーザー回折で測定される5μm未満の質量ベースのD95を有し、
前記粒子状非晶質酸化物は、前記粒子状非晶質酸化物の全量に基づき、50%未満の多孔性を有し、且つ
前記粒子状非晶質酸化物の前記粒子の90重量%以上は、二次元顕微鏡画像を評価することによって測定される、0.9より高い真球度を有する)、
又は
-前記コーティング組成物の全質量に基づき、全量で4~50重量%の範囲の粒子状非晶質酸化物としての微小シリカであって前記微小シリカの一次粒子の重量平均径が100nm~150nmの範囲であり、
及び
(b)1つ以上のさらなる耐火材であって、前記耐火材の全質量の98重量%以上が0.75mmのメッシュサイズを有するふるいを通過することができる耐火材
を含む、前記耐火性コーティング組成物。
【請求項2】
構成要素(a)の前記粒子状非晶質酸化物が、構成要素(a)の前記粒子状非晶質酸化物の全量に基づき、0.6重量%未満の強熱減量を有する、
請求項1に記載の耐火性コーティング組成物。
【請求項3】
前記コーティング組成物が、構成要素(a)の前記粒子状非晶質酸化物の調製からの二次構成要素として酸化ジルコニウムを含請求項1又は2のいずれか一項に記載の耐火性コーティング組成物。
【請求項4】
構成要素(a)の前記粒子状非晶質酸化物が、構成要素(a)の前記粒子状非晶質酸化物の全量に基づき、90重量%以上の分率の二酸化ケイ素を含む、
請求項1~3のいずれか一項に記載の耐火性コーティング組成物。
【請求項5】
構成要素(a)の前記粒子状非晶質酸化物の前記粒子の90重量%以上が、二次元顕微鏡画像を評価することによって決定される0.95より高い真球度を有する
請求項1~4のいずれか一項に記載の耐火性コーティング組成物。
【請求項6】
構成要素(a)の前記粒子状非晶質酸化物が、レーザー回折によって測定される3μm未満の質量ベースのD95を有する、
請求項1~のいずれか一項に記載の耐火性コーティング組成物。
【請求項7】
構成要素(a)の前記粒子状非晶質酸化物が、
-二酸化ケイ素融解物を噴霧することによって調製可能である二酸化ケイ素粒子、及び
-微小シリカ
からなる群から選択される1つ以上の構成要素を含む、
請求項1~のいずれか一項に記載の耐火性コーティング組成物。
【請求項8】
構成要素(a)の前記粒子状非晶質酸化物が、構成要素(a)の前記粒子状非晶質酸化物の全量に基づき、85重量%以上の分率の微小シリカを含
請求項1~7のいずれか一項に記載の耐火性コーティング組成物。
【請求項9】
前記微小シリカが、電気アークプロセスの酸化ジルコニウムの製造において二次生成物として得られるジルコニウム含有微小シリカであ
請求項8に記載の耐火性コーティング組成物。
【請求項10】
蒸留水中の構成要素(a)の前記粒子状非晶質酸化物の分散体が、前記分散体の全質量に基づき、10重量%の構成要素(a)の前記粒子状非晶質酸化物の濃度で、7未満のpHを有する
請求項8に記載の耐火性コーティング組成物。
【請求項11】
構成要素(a)の前記粒子状非晶質酸化物の前記粒子がポゾラン活性を有する、
請求項1~10のいずれか一項に記載の耐火性コーティング組成物。
【請求項12】
前記耐火性コーティング組成物が、前記コーティング組成物の全質量に基づき、全量で4~25重量%の範囲の構成要素(a)の粒子状非晶質酸化物を含
請求項1~11のいずれか一項に記載の耐火性コーティング組成物。
【請求項13】
構成要素(a)の粒子状非晶質酸化物の全分率が、前記コーティング組成物中の前記耐火材の全量に基づき、50重量%未満である、
請求項1~12のいずれか一項に記載の耐火性コーティング組成物。
【請求項14】
前記耐火性コーティング組成物が、
アニオン、カチオン及び非イオン気泡形成剤からなる群から選択される1つ以上の気泡形成剤、
を含
請求項1~13のいずれか一項に記載の耐火性コーティング組成物。
【請求項15】
結晶質二酸化ケイ素の分率が、前記コーティング組成物の全質量に基づき、3重量%未満であ
請求項1~14のいずれか一項に記載の耐火性コーティング組成物。
【請求項16】
ケイ酸ジルコニウム及び酸化ジルコニウムの全分率が、前記コーティング組成物の全質量に基づき、7重量%未満であ
請求項1~15のいずれか一項に記載の耐火性コーティング組成物。
【請求項17】
α-アルミナの分率が、前記コーティング組成物の全質量に基づき、5重量%未満であ
請求項1~16のいずれか一項に記載の耐火性コーティング組成物。
【請求項18】
7より高いモース硬度を有する耐火材の分率が、前記コーティング組成物の全質量に基づき、5重量%未満であ
請求項1~17のいずれか一項に記載の耐火性コーティング組成物。
【請求項19】
珪藻土の分率が、構成要素(a)の前記粒子状非晶質酸化物の全量に基づき、10重量%未満である、
請求項1~18のいずれか一項に記載の耐火性コーティング組成物。
【請求項20】
前記耐火性コーティング組成物が、ホスフェート、水ガラス、シリカゾル及びそれらの混合物からなる群から選択される無機バインダーを含
請求項1~19のいずれか一項に記載の耐火性コーティング組成物。
【請求項21】
前記ホスフェートが、オルトホスフェート、ポリホスフェート及びそれらの混合物からなる群から選択され
請求項1~20のいずれか一項に記載の耐火性コーティング組成物。
【請求項22】
前記ホスフェートの重量平均分子量MWが、300g/モルより高
請求項1~21のいずれか一項に記載の耐火性コーティング組成物。
【請求項23】
前記耐火性コーティング組成物が、1つ以上の増粘剤を含
請求項1~22のいずれか一項に記載の耐火性コーティング組成物。
【請求項24】
1つ以上の殺生物剤を含む、
請求項1~23のいずれか一項に記載の耐火性コーティング組成物。
【請求項25】
前記耐火性コーティング組成物が、1つ以上の粘土鉱物を無機増粘剤として含み、
ベントナイト又はスメクタイト又はアタパルジャイト又はモンモリロナイトの分率又は粘土鉱物の全分率が、前記コーティング組成物の固体分率の全質量に基づき、6重量%未満であ
請求項1~24のいずれか一項に記載の耐火性コーティング組成物。
【請求項26】
前記粘土鉱物が、ベントナイト、スメクタイト、アタパルジャイト及びモンモリロナイトからなる群から選択される、
請求項25に記載の耐火性コーティング組成物。
【請求項27】
前記耐火性コーティング組成物が、1つ以上の粘土鉱物を無機増粘剤として含み、
ベントナイト又はスメクタイト又はアタパルジャイト又はモンモリロナイトの分率又は粘土鉱物の全分率が、前記コーティング組成物の固体分率の全質量に基づき、0.5重量%未満の強熱減量を有するように選択される、
請求項1~26のいずれか一項に記載の耐火性コーティング組成物。
【請求項28】
前記粘土鉱物が、ベントナイト、スメクタイト、アタパルジャイト及びモンモリロナイトからなる群から選択される、
請求項27に記載の耐火性コーティング組成物。
【請求項29】
前記耐火性コーティング組成物が、前記水相中に、1013hPaにおいて100℃未満の沸点を有するアルコールを含む、
請求項1~28のいずれか一項に記載の耐火性コーティング組成物。
【請求項30】
構成要素(b)の1つ以上のさらなる耐火材が、
-二次元顕微鏡画像を評価することによって決定される、0.9より高い真球度を有する中空粒子であって、
これらの中空粒子の分率が、前記コーティング組成物の全質量に基づき、0.1~10重量%の範囲である、中空粒子、
-二次元顕微鏡画像を評価することによって決定される、0.9より高い真球度を有するセラミック粒子、を含む、
請求項1~29のいずれか一項に記載の耐火性コーティング組成物。
【請求項31】
前記コーティング組成物の全質量に基づき、69重量%より高い固体分率を有し、
且つ
前記コーティング組成物の固体分率の全質量に基づき、0.6重量%未満の強熱減量を有する、耐火性コーティング組成物であって、
前記コーティング組成物が、水相中の耐火材の分散体であり、前記耐火材が、少なくとも、
(a)-前記コーティング組成物の全質量に基づき、全量で4~50重量%の範囲の粒子状非晶質酸化物
(前記粒子状非晶質酸化物は、前記粒子状非晶質酸化物の全量に基づき、85重量%以上の分率の二酸化ケイ素を含み、
前記粒子状非晶質酸化物は、レーザー回折で測定される5μm未満の質量ベースのD95を有し、
前記粒子状非晶質酸化物は、前記粒子状非晶質酸化物の全量に基づき、50%未満の多孔性を有し、且つ
前記粒子状非晶質酸化物の前記粒子の90重量%以上は、二次元顕微鏡画像を評価することによって測定される、0.9より高い真球度を有する)、
又は
-前記コーティング組成物の全質量に基づき、全量で4~50重量%の範囲の粒子状非晶質酸化物としての微小シリカ、
及び
(b)1つ以上のさらなる耐火材
を含み、前記コーティング組成物が、
-1つ以上の界面活性物質、
-無機バインダー、及び
-1つ以上の増粘剤
を含む、
請求項1~30のいずれか一項に記載の耐火性コーティング組成物。
【請求項32】
前記耐火性コーティング組成物の固体分率が、前記コーティング組成物の全質量に基づき、69重量%より高く最高80重量%までの範囲である、
請求項1~31のいずれか一項に記載の耐火性コーティング組成物。
【請求項33】
前記耐火性コーティング組成物の固体分率が、前記コーティング組成物の全質量に基づき、69重量%より高く最高75重量%までの範囲である、
請求項1~32のいずれか一項に記載の耐火性コーティング組成物。
【請求項34】
噴霧塗布によって遠心鋳造型の内壁上に耐火性コーティングを製造するための、
請求項1~33のいずれか一項に記載の耐火性コーティング組成物の使用。
【請求項35】
少なくとも前記内壁の領域における前記噴霧塗布が2つ以上のコートでなされ、前記第2のコート又はさらなるコートの少なくとも1つが、以前に塗布された、前記耐火性コーティングのコート上で実行される、
請求項34に記載の使用。
【請求項36】
遠心鋳造プロセスで使用するための耐火性コーティングがその内壁上に提供された遠心鋳造型の製造方法であって、
以下のステップ:
-請求項1~33のいずれか一項に記載の耐火性コーティング組成物を提供するか、又は製造するステップ
-遠心鋳造型の内壁に、前記提供されたか、又は製造されたコーティング組成物の1つ以上のコートを塗布するステップ
を有する方法。
【請求項37】
遠心鋳造プロセスにおいて鋳造物を製造する方法であって、
以下のステップ:
-請求項1~31のいずれか一項に記載の耐火性コーティング組成物を提供するか、又は製造するステップ
-遠心鋳造型の内壁に、前記提供されたか、又は製造されたコーティング組成物の1つ以上のコートを塗布し、耐火性コーティングを製造するステップ
-その内壁がコーティングされた回転遠心鋳造型に鋳造金属を導入するステップ
-前記回転遠心鋳造型中で鋳造物を凝固するステップ
-前記遠心鋳造型から、前記鋳造物を引き離すステップ
を含
前記方法。
【請求項38】
遠心鋳造型の内壁上に耐火性コーティングを有する、遠心鋳造プロセスにおいて使用するための遠心鋳造型であって、
前記耐火性コーティングが、乾燥された請求項1~33のいずれか一項に記載の耐火性コーティング組成物からな遠心鋳造型。
【請求項39】
前記耐火性コーティングが、1013hPa及び105℃において気化できない、請求項1~29のいずれか一項に記載の耐火性コーティング組成物のそれらの構成要素からな
請求項38に記載の、遠心鋳造プロセスにおいて使用するための遠心鋳造型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(コーティング組成物の全質量に基づき)69重量%より高い固体分率を有し、且つ(コーティング組成物の固体分率の全質量に基づき)0.6重量%未満の強熱減量を有する耐火性コーティング組成物の使用に関する。さらに本発明は、その内壁上に耐火性コーティングが提供された、遠心鋳造プロセスで使用するための遠心鋳造型の製造方法、さらには好ましくは構造化表面を有する鋳造物を遠心鋳造プロセスで製造するための方法にも関する。同様に、本発明は、遠心鋳造型の内壁上に耐火性コーティングを有する、遠心鋳造プロセスにおいて使用するための遠心鋳造型に関する。
【0002】
本発明は、添付の特許請求の範囲において定義される。
【背景技術】
【0003】
鋳造部品を取り出すために鋳造後に鋳造型が破壊される砂型鋳造プロセスとは対照的に、例えば鋳鉄又は鋳鋼で製造される永久金属型は、次の鋳造のために再利用可能である。この様式で、非常に多量の製造量も経済的に製造可能である。例えばブロック又はスリーブなどの単純な形状と同様に、型スライダー、インサート及びサンドコアを用いて、永久型鋳造によって複雑な形状も製造可能である。
【0004】
永久型鋳造において、様々な鋳造プロセスが識別される。最も単純であると同時に、最も一般的な永久型鋳造プロセスは、対応する型の中に金属融解物を充填するために重力が使用され、そして凝固及び冷却が実行された後、完成した成形品が、通常、2部又は複数部の型から取り出される重力鋳造である。この種の永久型鋳造プロセスの場合、特に使用される型の組み立ての間に、スプルー及び薄壁部から離れた部分で凝固が開始する前に、型の全ての領域を液体金属が確実に充填されるようにする必要があり、さもなければ、凝固の間に発生する空孔の形態の鋳造欠陥(収縮孔として知られている)が発生するリスクがある。
【0005】
永久型鋳造分野の1つの特定のプロセスは、遠心鋳造である。遠心鋳造プロセスにおいて、金属融解物を、その中心軸の回りを回転する金属型中に、典型的にランナーを介して充填し、そして型壁に対して遠心力によって均一に押圧する(気体を含まない、収縮孔及びスラグ包含が生じない)。遠心力の作用下、液体金属は凝固し、そして非常に純粋であり且つ高密度化された微細構造が発生する。遠心鋳造によって、中心が空孔を生じる必要はない。遠心力への曝露下、供給される金属量によって決定される壁厚を有する中空の円筒形物体(例えば、パイプ、リングなど)が形成される。得られたブランク(中空物体)は、凝固後に型(遠心鋳造型とも呼ばれる)から引き離され、そしてさらなる機械加工が行われる。
【0006】
典型的に、特に鋼及び鉄鋳造の場合、鋳造型の表面、特に鋳造金属と接触するそれらの表面がコーティング(耐火性コーティングとも呼ばれる)されている。ここで、これらの位置における欠陥機構の目標とされる抑制又は冶金効果の利用を含む目的のために、目的のため、耐火性コーティングは型と金属との間で境界層又はバリア層を形成する。一般に、鋳型技術における耐火性コーティングは、当業者に既知の以下の機能を達成することが特に意図される:
-液体金属と型との間の最大限の分離;
-型の構成要素と融解物との間の化学反応の回避、それによって型と鋳造物との間での分離を容易にすること;及び/又は
-鋳造時の表面欠陥の防止。
【0007】
さらに、遠心鋳造プロセスに利用される耐火性コーティングは、本発明に関連して、一般的に以下の特定の必要条件を満たすことが予想される:
-高い断熱効果;
-急速な乾燥速度;
-鋳造操作の間の低レベルの気体発生;
-高い気体吸収性(非換気型遠心鋳造型を使用する場合);
-鋳造操作完了時の鋳造物と遠心鋳造型との間の単純な分離の実現(より良好な引き離し特徴);及び/又は
-鋳造物の表面構造に影響を与えること、若しくは指示すること。
【0008】
鋳造物、特に遠心鋳造プロセスで製造される鋳造物の微細構造の発生及び硬度プロフィールの重要な要因は、耐火性コーティングの断熱効果である。断熱効果が高いことによって、液体金属から遠心鋳造型までの熱の移動が遅くなり、したがって、凝固及び冷却が制御される。望ましい断熱効果に影響する要因としては、耐火性コーティングのコーティング厚さ及びその組成が含まれる。
【0009】
遠心鋳造プロセスに備えるために、典型的に噴霧プロセスで、噴霧ランスを使用して、耐火性コーティング組成物を遠心鋳造型の内壁に塗布する。製造時の低サイクル時間、したがって、高い生産性を実現するために、本発明に関して、得られる耐火性コーティングは急速に乾燥するべきである。
【0010】
遠心鋳造プロセスにおいて、主に非換気型遠心鋳造型が使用される。換気型遠心鋳造型とは対照的に、非換気型遠心鋳造型の型面は、鋳造操作の間に形成される気体がそれを通して逃げることのできるいずれの穴も所有しない。したがって、非換気型遠心鋳造型が気体不浸透性であるため、遠心鋳造プロセスにおける耐火性コーティングは、鋳造操作の間、気体調節に関して重要な機能を有することが多い。気体欠陥を避けるために、本発明に関して、耐火性コーティングは一定の多孔性を有し、且つ発生する分解気体を吸収することができる。同時に、耐火性コーティング自体による気体の放出は極めて低くあるべきであり、強熱減量として測定可能な低い有機分率、さらには低レベルの他種類のガス化可能な構成要素を有利に示唆する。
【0011】
耐火性コーティングの組成物によって、本発明に関して、鋳造物の引き離し特徴に対する良好な影響を及ぼすことが可能である。凝固後に鋳造物を遠心鋳造型から引き離す時、耐火性コーティングはそれに接着して、そして理想的には完全に、鋳造物と一緒に遠心鋳造型から除去される。作業場の清潔さのために、本発明に関して、鋳造物上に、非常にわずかなほこりのみを示すか、又は何も示さない密着コーティングの形態で耐火性コーティングを有することは望ましい。反対に、遠心鋳造型から鋳造物を取り出した後、耐火性コーティングは、好ましくは、例えば、吹き飛ばすことによって、簡単に再び鋳造物から除去されることが可能である必要があった。
【0012】
同様に、それぞれの耐火性コーティングは、最終的な鋳造物の外側表面の構造に影響する。これに関して、耐火性コーティングの組成次第で、平滑且つ構造化表面を製造可能である。構造化表面の製造は、特に構造化鋳造スリーブ、好ましくはシリンダースリーブの製造に関しており、本発明に関しても同様である。構造化鋳造スリーブの外壁は、鋳造手順の間に形成され、且つ理想的にはさらなる機械加工を必要としない粗表面構造を有する。表面構造は、この場合、典型的に、任意選択的に切込み又は他の構造を有する、0.3~1.1mmの深さを有する(例えば、米国特許出願公開第2015/0122118A1号明細書の図2参照)。例えば、アルミニウムエンジンブロックの製造の場合、圧力鋳造プロセスにおいて、構造化スリーブがエンジンブロックへと直接鋳造される。液体金属は構造化表面の周囲を流動し、存在するくぼみ及びいずれの切込みも充填し、そのため、エンジンブロック及びスリーブの両構成要素の材料が極めて強固に結合する。構造化スリーブの表面積の増加は、非構造化スリーブと比較して、エンジンにおいて、燃焼室から水室への熱伝導改善の効果をさらに有する。
【0013】
上記で確認される機能及び必要条件、並びに可能なさらなる機能及び必要条件は、本発明に関して、耐火性コーティング、又は型に適用されるコーティング組成物の正確な組成によって、特定の意図された目的のために調整及び最適化されて、及び/又は適応される。
【0014】
鋳型用途のための耐火性コーティング組成物は、通常以下の成分を含むか、又はそれらから構成される:(i)1つ以上の微粒子状耐火材、すなわち、微粒子状の耐火性から高度に耐火性の無機材料、(ii)1つ以上の化合物(水、アルコールなど)を含むキャリア液、並びに(iii)さらなる構成要素として、例えば1つ以上の耐火性バインダー(以下、省略して「バインダー」とも記載される)及び/又は殺生物剤及び/又は湿潤剤(以下、界面活性物質とも記載される)及び/又は流動学的添加剤(例えば増粘剤)。本発明に関して、これは対応する事例である。したがって、型のコーティング用の耐火性コーティング組成物は、通常、キャリア液、例えば水性(すなわち、含水)キャリア液又は非水性(すなわち、非含水)キャリア液中の微粒子状の耐火性から高度に耐火性の無機材料(耐火材)の分散体である。液体キャリアに関する詳細については下記を参照されたい。
【0015】
耐火性コーティング組成物は、気泡調整剤、顔料及び/又は染料をさらに含み得;これも本発明に関する事例である。顔料の例は、赤色及び黄色酸化鉄、さらには黒鉛である。染料の例は、当業者に既知の市販の染料である。
【0016】
耐火性コーティング組成物を、例えば噴霧又ははけ塗りなどの適切な塗布方法によって鋳造型の内部に塗布し、そして乾燥させて耐火性コーティングを形成する。はけ塗りによるコーティング組成物の塗布は、噴霧と比べると数倍遅い塗布方法である。鋳造型の内部に塗布されるコーティング組成物が粉末形態である場合、慣習的に、前記型を回転させながら、鋳造型の内部上に粉末をつけることによって、対応するコーティング組成物を塗布する。しかしながら、この場合、コーティング組成物の均一な分布を実現することは困難である。さらに、粉末形態のコーティング組成物を使用する場合、構造化表面を有する耐火性コーティング、したがって、構造化表面を有する鋳造物を製造することは一般的に不可能である。したがって、遠心鋳造の場合、コーティング組成物は(すでに上記された通り)、慣習的に、遠心鋳造型の内壁に噴霧塗布によって分散体として塗布される。これは、本発明に関する手順と一致する。
【0017】
本発明に関して、耐火性コーティングは、慣習的に遠心鋳造型からの熱の供給によって乾燥される。この遠心鋳造型は、以前の鋳造操作のために、まだ加熱されているか、又は例えば、コーティング組成物を塗布する前にオーブン中で予熱される。コーティング組成物の塗布開始時の遠心鋳造型の温度は、好ましくは150~450℃である。遠心鋳造型に関するこの種の温度によって、コーティング組成物の急速乾燥が確実となり、そして理想的には、コーティング組成物中に存在する液相、例えば水相の完全な除去が確実となる。
【0018】
「耐火性」という用語は、本明細書中、当業者の慣習的な理解と一致して、鉄融解物、通常、鋳鉄の鋳造及び/又は凝固と関連する温度曝露に、少なくとも短時間、耐えることのできる組成物、材料及び鉱物を指すために使用される。「高度に耐火性」であると記載される組成物、材料及び鉱物は、鋼融解物の鋳造熱に短時間以上耐えることができるものである。鋼融解物を鋳造する間に生じ得る温度は、通常、鉄又は鋳鉄融解物を鋳造する間に生じ得る温度より高い。耐火性組成物、材料及び鉱物(耐火材)並びに高度に耐火性の組成物、材料及び鉱物は、例えば、DIN 51060:2000-06から当業者に既知である。
【0019】
耐火性コーティング組成物中に使用される耐火材は、慣習的に鉱物酸化物、シリケート又は粘土鉱物である。本発明に関して適切である耐火材の例は、ケイ酸アルミニウム、ポリシリケート、橄欖石、タルク、マイカ、黒鉛、コーク、長石、カオリン、焼成カオリン、メタカオリナイト、酸化鉄及びクロム鉄鉱であり、これらは、それぞれ個々に、又は互いにいずれかの所望の組合せで使用することができる。本発明で使用される耐火性コーティング組成物において、使用される結晶質二酸化ケイ素、並びに結晶質酸化アルミニウム、結晶質酸化ジルコニウム及び結晶質ケイ酸ジルコニウムの全量は、使用される粒子状非晶質酸化物の全量に基づき、好ましくは10重量%未満である。耐火性材によって達成される効果としては、鋳造型と液体金属との間の断熱が含まれる。耐火性材は、通常、粉末形態で提供される。(好ましくはISO 13320:2009による光散乱によって測定される)好ましい耐火材の粒径は、0.1~500μmの範囲、好ましくは1~200μmの範囲で、本発明に関して適切である。適切な耐火材は、より特に、使用される特定の金属融解物の温度よりも少なくとも100℃高く、且つ/又は金属融解物とのいずれかの反応を開始しない融点を有する融解物である。
【0020】
耐火性コーティング組成物の製造のための耐火材は、通常、液体キャリア中に分散される。次いで、液体キャリアは、好ましくは標準条件(20℃及び1013.25hPa)において液体形態で存在し、且つ/又は、150°C及び標準圧力(1013.25hPa)で蒸発可能である構成要素又はコーティング組成物の構成要素である。本発明に関しても適切である好ましいキャリア液は、水及び有機キャリア液並びに互いとの及び/又は他の構成要素とのそれらの混合物からなる群から選択される。適切な有機キャリア液は、好ましくはアルコールである。好ましいアルコールは、エタノール、n-プロパノール及びイソプロパノール(2-プロパノール)であり、エタノールが特に好ましい。しかしながら、環境保護及び排出予防の観点から、耐火性コーティング組成物を選択する際、有機キャリア液の使用を可能な限り控えることが好ましい。したがって、本発明に関しては、液体キャリアとして有用である水相中に耐火材を分散する。
【0021】
文献独国特許第60004770T2号明細書は、アルミニウム又はアルミニウム合金で被覆された表面を含む鋳鉄成分を有する、金属被覆鋳造製品を開示する。
【0022】
文献米国特許出願公開第2002/0157571A1号明細書及び米国特許第6,699,314B2号明細書は、それぞれ、バインダー、断熱材、溶媒、及び起泡性品質を有する気泡成分(界面活性物質)を含む、一体的な遠心鋳造型の内部面をコーティングするための遠心鋳造型用の離型剤を開示する。
【0023】
文献欧州特許第1504833B1号明細書は、鋳鉄インサートの周囲で鋳造される他の金属の融解部分と接触するための表面と;表面上に配置され、且つそれぞれが表面から外側の方に向かって徐々に広がった実質的に円錐形の切込みを有する複数の突出部とを含む、その周囲で種々の金属が鋳造される鋳鉄インサートを開示する。
【0024】
文献欧州特許第1902208B1号明細書は、それぞれの突出部がくびれた形状を有する複数の突出部を有する外側周面を含み、金属材料の膜が外側周面上及び突出部の表面上で形成される、シリンダーブロックにおいて使用されるインサート鋳造のためのシリンダースリーブを開示する。
【0025】
文献米国特許出願公開第2015/0122118A1号明細書は、その外側表面上に多数の突出部を含むシリンダースリーブを開示する。
【0026】
文献中国特許第101554643A号明細書は、「シリンダーライナーのための遠心鋳造コーティング及びその調製方法(Centrifugal casting coating for cylinder liners and preparation method thereof)」を開示する(表題の英訳はEspacenet翻訳による)。
【0027】
文献中国特許第103817285A号明細書は、「エンジンシリンダースリーブの遠心鋳造の間にマッシュルーム形バリを形成可能なコーティング(Coating capable of forming mushroom-shaped burrs during centrifugal casting of engine cylinder sleeve)」を開示する(表題の英訳はEspacenet翻訳による)。
【0028】
文献欧州特許第1711291B1号明細書は、それぞれが外側周面上にくぼみ部分を有する複数の突出部を有する、インサート鋳造用のシリンダースリーブを開示する。
【0029】
文献欧州特許出願公開第2422902A2号明細書は、0.3~1.2mmの高さを有する突出部及び切込み部を20~80/cm2の比率で外側周面上に備えており、外側周面はその次に熱的に噴霧される層が塗布される、インサート鋳造用のシリンダースリーブを開示する
【0030】
文献国際公開第2017/184239A1号パンフレットは、キャリア液及び固体セラミックビードを含む耐火性コーティング組成物を開示する。
【0031】
文献米国特許出願公開第2014/0196863A1号明細書は、融解金属と接触させるための活性表面を有する、融解金属用の鋳造型を開示する。この表面は、鋳造型を保護するために熱的バリアを形成する非晶質無孔性断熱コーティングでコーティングされる。コーティングは、懸濁液の質量に基づき、10.0~55.0重量%の耐火性ガラスと、前記量の耐火性ガラスを懸濁するためのキャリア流体との懸濁液を含む。
【0032】
文献欧州特許出願公開第2159208A1号明細書は、シリカ及び/又はシリケートを含む断熱要素を開示する。
【0033】
文献欧州特許出願公開第2281789A1号明細書は、セラミックバインダー、セラミックフィラー及び任意選択的にさらなる添加剤による熱保護層のパッチ又はストリップを製造するためのスリップフォーミュレーション(slip formulation)を開示する。
【0034】
文献欧州特許出願公開第2618338A2号明細書は、少なくとも1つの第1の導体対を含むケーブルであって、第1の導体対の少なくとも1つが、導体を取り囲む複合断熱体の少なくとも1層を有し、前記複合断熱体が断熱材と、断熱材の難燃作用を高め、ケーブルの電気性能を向上させることが可能な微小酸化物粒子とを含むケーブルを開示する。
【0035】
文献欧州特許出願公開第2722863A1号明細書は、真空スイッチと、さらには注入された包埋材料を通しての電気接続とを収容する断熱性ハウジングを有する包埋端子部品であって、注入された包埋材料が二酸化ケイ素充填材料によって充填されている包埋端子部品を開示する。
【0036】
文献独国特許出願公開第10339676A1号明細書は、非晶質多孔性開放気孔SiO2成形品、並びにその製造方法及びその使用方法を開示する。この種のSiO2成形品は、圧力鋳造機の圧力鋳造型中にSiO2粒子を含む分散体をポンプ輸送することによって製造される。圧力鋳造機中で、分散体は内部及び外部多孔性ポリマー膜を通して除湿され、SiO2成形品が形成される。
【0037】
文献独国特許出願公開第102006046619A1号明細書は、分散液及び非晶質SiO2粒子を含み、非晶質SiO2粒子が最大500μmの粒径を有し、最大体積分率が1μm~60μmの範囲の粒径を有するSiO2粒子から構成される、層状石英ガラスを製造するための、はけ塗り可能なSiO2スリップを開示する。
【0038】
文献欧州特許出願公開第0246181A1号明細書は、水性キャリアと、懸濁液の重量に基づき、少なくとも約50重量%の微小シリカと、微小シリカのためのアニオン性分散体と、微小シリカ中の多価カチオン性不純物を錯化することができる錯化剤とを含む微小シリカ懸濁液を開示する。
【0039】
文献国際公開第2017/009216A1号パンフレットは、ZrO2含有金属酸化物ダストを含む精密鋳造用の型を開示する。上記文献は、同様に、精密鋳造用の型を製造するためのZrO2含有及び/又はAl23含有金属酸化物ダスト或いは炉のダストを含む組成物を開示する。
【0040】
文献国際公開第2008/118023A1号パンフレットは、窒化ケイ素粒子、炭素供給源並びに酸化物及び/又はシリコンの粉末を含む、シリコンの誘導された凝固のための鋳造型用のコーティング組成物を開示する。
【0041】
文献独国特許出願公開第1508913A1号明細書は、衝突する融解金属と接触する金属鋳造型の底部部品の表面の腐食を防止するため、及び底部部品への鋳造ブロックの付着を防止するための方法を開示する。この方法においては、バインダー中に懸濁された耐火性物質の懸濁液が、腐食及び付着を防ぐために十分な厚さの被覆を形成するために十分な量で、保護されるべき表面に塗布され、その後、湿潤被覆を乾燥させる。
【0042】
文献独国特許出願公開第102017106458A1号明細書は、要素のインサーション表面がマンデート(mandated)された形状(突出)を有する、インサーションのための要素を開示する。独国特許出願公開第102017106458A1号明細書は、珪藻土を含む型コーティング組成物を使用する、そのようなインサーションのための要素の製造方法も開示する。
【0043】
すでに上記されたように、遠心鋳造プロセスにおいて、耐火性コーティング組成物は、典型的に、噴霧ランスの補助を用いて、噴霧プロセスで遠心鋳造型の内壁に塗布される。サイクル時間を減少するため、及び/又は生産性を増加させるという理由のため、急速にコーティング組成物の所望の量を塗布することが有利である。これは事前に(すなわち、遠心鋳造型への噴霧ランスの導入の間)、又は事後(すなわち、遠心鋳造型からの噴霧ランスの除去の間)に、噴霧塗布によって達成され得る。コーティング組成物は、好ましくは、事前及び事後の両方で塗布される。これによって、コーティング組成物のより均一な塗布が確実となり、且つ操作あたりに必要とされるコーティング組成物の全量及び/又は噴霧圧が減少する。噴霧塗布は、耐火性コーティングの所望の塗布を得るために望ましい頻度で繰り返すことができる。
【0044】
高い複雑さ及び費用を伴って噴霧操作をこの時点で中断させない限り、噴霧方向の逆の領域(典型的に遠心鋳造型の一端)において、短い乾燥時間のみが利用可能であるため、事前及び事後の噴霧塗布では、遠心鋳造型の内壁に塗布された耐火性コーティング組成物の急速乾燥が必要とされる。しかしながら、特に構造鋳造の領域において、従来技術からの既知の耐火性コーティング組成物を使用して、構造鋳造の目的のために(例えば構造化鋳造スリーブを製造するために)満足な表面構造化を有する耐火性コーティングを得ると同時に、塗布されたコーティング組成物の十分に急速な乾燥は実現不可能であることが明らかになっている。
【0045】
したがって、現在、構造鋳造のための遠心鋳造型の内壁上での構造化表面の製造は、多くの時間及び材料の配備によってのみ実現可能である。現在までに従来技術から既知の耐火性コーティング組成物の乾燥速度を増加させることは、おそらく、例えば、既知のコーティング組成物中に含まれる固体材料分率を増加させることによって達成され得る。しかしながら、固体分率を増加させることは、同時に、問題のコーティング組成物の粘度の増加を導き、したがって、当業者の評価によれば、遠心鋳造型の内壁上での噴霧塗布によるそのようなコーティング組成物の塗布は、(噴霧塗布のために許容できる圧力及び適切なノズル開口部を使用して)もはや不可能であろう。
【0046】
したがって、従来技術では、(高い固体分率から生じる、短い乾燥時間後に)遠心鋳造型の内壁上の得られた耐火性コーティングが、構造化表面を有する金属鋳造物を製造するために適切であるネガ構造を有するように、噴霧塗布によって遠心鋳造型に塗布することができる耐火性コーティングを遠心鋳造型の内壁上に製造するためのいずれの満足できる耐火性コーティング組成物も開示されていないと言うことができる。
【0047】
より詳しくは、さらに、従来技術から既知である耐火性コーティング組成物によって、型の内壁の全ての長さにおいて均一に構造化された表面(すなわち、形成される構造の特徴が均一な高さを含む表面)を製造することは不可能であることも注目され得る。
【0048】
構造鋳造のための従来技術から既知の耐火性コーティング組成物のさらなる課題は、それらが例えば(焼成)珪藻土などの珪肺症の原因である結晶質石英ダストを高分率でしばしば含むということである。
【0049】
さらに、構造鋳造のための先行技術から既知の耐火性コーティング組成物は、しばしば、硬質の結晶質耐火材(例えば、酸化ジルコニウム又はαアルミナ)を高分率で有し、そしてそれらの高い研磨特性のため、鋳造物を引き離す時に型の摩耗が促進される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0050】
したがって、従来技術を起点として、噴霧塗布によって遠心鋳造型の内壁上で耐火性コーティングを製造するための耐火性コーティング組成物であって、以下の有利な特性の1つ以上、好ましくは全てを示すか、又はそれを可能にするように意図された組成物が必要とされている。
-それによって低いサイクル時間/高い生産性を確実にすることが可能であるように、遠心鋳造型の内壁への噴霧塗布によって塗布される耐火性コーティング組成物が、産業条件下での高い乾燥速度を可能にすること;
-耐火性コーティング組成物を使用して、遠心鋳造型の内壁上に製造される耐火性コーティングが、(ポジ)構造化表面を有する金属鋳造物を製造するために適切であるネガ構造を有し、ネガ構造を、噴霧塗布によって遠心鋳造型の内壁の全ての長さにおいて形成することができること;
-耐火性コーティング組成物を使用して製造される耐火性コーティングが、遠心鋳造において微細構造品質を制御するために整列断熱効果を有すること;
-遠心鋳造型の内壁上に耐火性コーティングを製造するための耐火性コーティング組成物が、作業場安全性上の理由で、遠心鋳造プロセスのための従来のコーティング組成物と比べると特に低い結晶質石英ダスト分率を含むこと;
-遠心鋳造型の内壁上に耐火性コーティングを製造するための耐火性コーティング組成物が、型摩耗減少の利益のため、遠心鋳造プロセスのための従来のコーティング組成物と比べると特に低い硬質の研磨耐火材分率を有すること;
-鋳造操作間の気体の結果として生じる放出及び鋳造欠陥の関連リスクが回避/減少されるように、耐火性コーティング組成物を使用して製造される耐火性コーティングが特に低い強熱減量を有すること。
【課題を解決するための手段】
【0051】
本発明の第1の対象は、上記の特性の1つ以上、或いは全てを有するか、又は可能にする、遠心鋳造型の内壁上に耐火性コーティングを製造するための耐火性コーティング組成物を特定化することであった。
【0052】
本発明のさらなる対象は、遠心鋳造プロセスで使用するための、耐火性コーティングによってその内壁上に提供される、遠心鋳造型を製造するための対応する方法を提供することであった。
【0053】
本発明のさらなる対象は、遠心鋳造プロセスにおいて鋳造物を製造するための対応する方法を提供することであった。
【0054】
本発明のさらなる対象は、さらに、遠心鋳造型の内壁上に対応する耐火性コーティングを有する、遠心鋳造プロセスにおいて使用される遠心鋳造型を特定化することであった。
【0055】
さらなる対象は、以下の説明から、及び特許請求の範囲から明らかである。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明は、本発明の好ましいパラメーター、特性及び構成要素の特に好ましい組合せを含めて、添付の特許請求の範囲において、及び本明細書において、より細かく定義/記載される。本発明の特定の及び/又は好ましい実施形態は、以下、より詳細に記載される。特記されない限り、本発明の好ましい態様又は実施形態を、本発明の他の態様又は実施形態と、特に他の好ましい態様又は実施形態と組み合わせることができる。それぞれの好ましい態様又は実施形態の互いとの組合せは、本発明の好ましい態様又は実施形態を生じる。遠心鋳造型の内壁上に耐火性コーティングを製造するための耐火性コーティング組成物の本発明の使用に関して、本発明に関連して記載されるか、又は好ましいものとして記載される実施形態、態様又は特性は、本発明の方法及び遠心鋳造プロセスに用いられる本発明の遠心鋳造型に対応して、又は類似してそれぞれ有効である。
【0057】
以下、より厳密に定義される実施形態、構成要素又は特徴を「含む(comprise)又は(include)」遠心鋳造型の内壁上に耐火性コーティングを製造するための耐火性コーティング組成物の本発明の使用、本発明の方法、及び遠心鋳造プロセスで使用するための本発明の遠心鋳造型が記載される場合、本開示に関して、それぞれの場合、より狭い範囲において理解されるように、それぞれより厳密に定義されるこれらの実施形態、構成要素又は特徴から「なる」前記使用、方法及び遠心鋳造型の対応する変形も含むように意図される。
【0058】
本発明に従って、第1の対象及び一般的な対象のさらに上記で特定化された態様は、添付の特許請求の範囲において定義される耐火性コーティング組成物の使用によって達成される。
【0059】
さらなる関連した態様に従って、上記対象のいくつか、又は全ては、添付の特許請求の範囲において定義される遠心鋳造プロセスで使用するための、耐火性コーティングがその内壁上に提供された遠心鋳造型を製造する方法によって達成される。
【0060】
さらなる関連した態様に従って、上記対象のいくつか、又は全ては、添付の特許請求の範囲において定義される遠心鋳造プロセスにおいて鋳造物を製造するための方法によって同様に達成される。
【0061】
さらなる対応する態様に従って、本発明は、さらに、添付の特許請求の範囲において定義される遠心鋳造型の内壁上に耐火性コーティングを有する、遠心鋳造プロセスで使用するための遠心鋳造型に関する。
【0062】
本発明による好ましい実施形態は、従属請求項から明らかである。
【0063】
本発明は、第1に、
コーティング組成物の全質量に基づき、69重量%より高い固体分率を有し、
且つ
コーティング組成物の固体分率の全質量に基づき、0.6重量%未満(好ましくは0.5重量%未満)の強熱減量を有する、耐火性コーティング組成物の使用であって、
コーティング組成物が、水相中の耐火材の分散体であり、耐火材が、少なくとも、
(a)-コーティング組成物の全質量に基づき、全量で4~50重量%の範囲の粒子状非晶質酸化物
粒子状非晶質酸化物は、粒子状非晶質酸化物の全量に基づき、85重量%以上の分率の二酸化ケイ素を含み、
粒子状非晶質酸化物は、レーザー回折で測定される5μm未満の質量ベースのD95を有し、
粒子状非晶質酸化物は、粒子状非晶質酸化物の全量に基づき、50%未満の多孔性を有し、且つ
粒子状非晶質酸化物の粒子(好ましくは:下記の通り第一粒子)の90重量%以上は、二次元顕微鏡画像を評価することによって測定される、0.9より高い真球度を有する)、
又は
-コーティング組成物の全質量に基づき、全量で4~50重量%の範囲の粒子状非晶質酸化物としての微小シリカ、
及び
(b)1つ以上のさらなる耐火材であって、耐火材の全質量の98重量%以上が0.75mmのメッシュサイズを有するふるいを通過することができる耐火材
を含む、噴霧塗布によって遠心鋳造型の内壁上に耐火性コーティングを製造するための使用に関する。
【0064】
本発明の耐火性コーティング組成物の固体分率は、本発明の目的に関して、好ましくはDIN EN ISO 3251:2008-06の標準試験法に従って、より好ましくは本発明の実施例1で説明される方法に従って決定される。特記されない限り、固体分率を決定するために本研究において利用される方法は、実施例1による方法であった。「固体分率」という用語は、DIN EN ISO 3251:2008-06において使用される「不揮発性物質含有率」という用語と一致する。DIN EN ISO 3251:2008-06に記載される方法を実施するために特定化された試験条件は、好ましくは150℃の試験温度、30分の試験時間及び2.5gの初期質量である。
【0065】
本発明のコーティング組成物中に存在する、コーティング組成物の全質量に基づき、69重量%より高い固体分率は、前記組成物が噴霧塗布によって遠心鋳造型の内壁に塗布された後のコーティング組成物の急速乾燥をもたらす。
【0066】
本発明の耐火性コーティング組成物の強熱減量は、本発明の目的に関して、好ましくは、(EN 12879:2000に特定化された550℃ではなく)900℃の点火温度を使用して、標準試験方法に従って決定される。強熱減量を決定する際に使用される乾燥質量は、好ましくは、150℃の試験温度、30分の試験時間及び2.5gの初期質量であるように選択される試験条件で、DIN EN ISO 3251:2008-06に従って、本発明のそれぞれのコーティング組成物を乾燥させることによって得られる。
【0067】
EN 12879:2000は、スラッジの乾燥質量が特定の条件下で点火される際に気体として逃げる質量分率として、強熱減量を定義する。遠心鋳造の分野において、特に非換気型遠心鋳造型を使用する場合、液体金属と耐火性コーティングとの接触の間に生じる気体が(例えば鋳型の場合とは対照的に)遠心鋳造型中で外側に逃げることが不可能であるため、コーティング組成物の固体分率の全質量に対して低い強熱減量の存在は鋳造欠陥を避けるため、又は減少させるために重要な条件を表す。したがって、鋳造プロセスの間の気体の大量放出は、鋳造欠陥の形成のリスクを必然的に増加させる。したがって、本発明において定義される、コーティング組成物の固体分率の全質量に基づき、0.6重量%未満の強熱減量は、遠心鋳造プロセスにおいてコーティング組成物が有利に使用されることを可能にする多数の条件の1つを表す。
【0068】
液体キャリアとしての水性(すなわち含水)相の使用は、本発明に関して特に利点を有する。第1に、(すでに上記で説明される通り、)水は、環境保護及び排出防止に関して異議がないとみなされる。第2に、水は、(いくつかの有機キャリア液と異なり、)残渣を生じることのない気化又は蒸発によって特徴づけられる。より特に、気化又は蒸発時に、水は、コーティング組成物の強熱減量の有害な増加の原因となり得る、いずれの有機残渣も残さない。したがって、液体キャリアとしての水相の使用は、コーティング組成物の固体分率の全質量に基づき、0.6重量%未満の本発明の低い強熱減量の達成を確実/可能にする方法の1つである。
【0069】
「粒子状非晶質酸化物」という用語は、本発明に関して、粒子状の合成非晶質酸化物、例えば、そして好ましくは、二酸化ケイ素融解物の噴霧によって製造可能である二酸化ケイ素粒子及び/又は微小シリカを意味する。粒子状酸化物は、本発明に関して、前記酸化物におけるX線回折研究によって、原子の長距離秩序の不在を決定することが可能である場合、非晶質であると言われる。本発明に関して、特に好ましい粒子の非晶質酸化物は、微小シリカである。微小シリカは、CAS番号69012-64-2を使用して示され;Bernd Friede,Per Fidjestol、出版物Nachrichten aus der Chemie,2011,59,956958を参照のこと。他の粒子状非晶質酸化物の使用は、上記及び特許請求の範囲において定義された(最小)特性が存在する場合、技術的に許容できる。そのような他の粒子状非晶質酸化物の例は後述される。
【0070】
コーティング組成物の全質量に基づき、4~50重量%の範囲の粒子状非晶質酸化物の使用は、コーティング組成物の全質量に基づき、69重量%以上の高い固体分率にもかかわらず、本発明で使用されるコーティング組成物が有利な流動学的特性を保持することに寄与し、そして固体分率が増加した場合でさえも、遠心鋳造型の内壁への噴霧塗布による塗布を可能にさせる。
【0071】
すでに上記で説明された通り、使用される粒子状非晶質酸化物は、好ましくは、二酸化ケイ素融解物の噴霧によって製造可能である二酸化ケイ素粒子及び/又は微小シリカの形態の二酸化ケイ素である。これらの形態がコーティング組成物の流動学的特性に対して特に良好な効果を及ぼし、したがって、同時に、高い固体分率を有する本発明で使用されるコーティング組成物の噴霧性への決定的な寄与をするため、本発明で使用されるコーティング組成物中の二酸化ケイ素の上記形態の使用が好ましい。対応して、本発明で使用されるコーティング組成物中に前記全量で存在する粒子状非晶質酸化物は、粒子状非晶質酸化物の全量に基づき、85重量%以上の分率の二酸化ケイ素を含む。
【0072】
本発明で使用されるコーティング組成物中に前記全量で存在する粒子状非晶質酸化物の「質量ベースのD95」は、この粒子状非晶質酸化物の全量の粒子の粒径分布に由来する測定値である。粒径分布は、レーザー回折による従来法で、好ましくはDIN ISO 13320:2009による標準試験法によって決定される。質量平均径分布関数の累積度数分布に関して確認されるD95値は、粒子の95重量%が特定の値(例えば5μm)以下である粒径を有することを示す。粒径分布を決定するための適切な機器は、従来のレーザー回折機器、例えば、Malvern,United Kingdomからの「Mastersizer 3000」型、好ましくはBeckman Coulter,USAからの「Coulter LS 230」型のものであり、好ましくは、「Polarization Intensity Differential Scattering」(「PIDS」)技術によって測定を実行する。上記レーザー回折法によって、散乱光シグナルのそれぞれは、好ましくは、粒子の屈折及び吸収作用も考慮するMie理論によって評価される。
【0073】
粒子状非晶質酸化物の(一次)粒子が複数の粒子の凝集体及び/又は凝結体及び/又はアセンブリの形態となる場合、可能な限り結果のいずれのゆがみも排除するために、これらのアセンブリは、好ましくは、粒子状非晶質酸化物の質量ベースのD95が決定される前に、そして粒子状非晶質酸化物の粒子の真球度が決定される前に、従来の様式で、穏やかに機械的に、又は類似の様式で分離される。
【0074】
「多孔性」という用語は、本発明に関して、開放多孔性を指す。開放気孔は、本明細書中、互いに、さらにそれらの周囲環境と連通する粒子状非晶質酸化物中の空隙であると理解される。したがって、本発明に関して、粒子状非晶質酸化物の多孔性は、全体積に基づく開放気孔体積の百分率として定義される。低多孔性の効果は、粒子状非晶質酸化物が、本発明で使用されるコーティング組成物中に使用される場合、より少量の水相から液体を吸収するか、又はより水相から液体を吸収しないということであり;この結果の1つは、本発明で使用されるコーティング組成物の特に低い強熱減量の実現である。物質の多孔性は、典型的に(本発明に関しても)、水銀ポロシメトリーによって決定される。
【0075】
真球度は、本発明に関して、粒子の実際の投射部で割られた、粒子の円の等価投射部(略してEQPC)として定義される。真球度を決定するために必要である粒子の投射部の測定は、5μm未満の粒径を有する粒子に関して、好ましくはISO 13322-1:2014による標準試験法によって、そして5μmより大きい粒径を有する粒子に関して、好ましくはISO 13322-02:2006による標準試験法によって実行する。
【0076】
最新の市販の電子顕微鏡又は光学顕微鏡システムによって、粒子形態構造のデジタル画像分析、したがって、都合のよい測定が可能である。デジタル画像分析は、真球度の研究のために好ましい。デジタル画像分析は、好ましくは、例えば、Media CyberneticsからのImage-Pro Plusソフトウェアなどの市販の画像分析ソフトウェアによって実行される。デジタル画像分析用の試料の調製の際、粒子のランダムな配置を確実にしなければならない。必要に応じて、薄切を製造することができる。
【0077】
本発明の目的に関して、構成要素(a)の粒子状非晶質酸化物は、構成要素(b)の「さらなる」耐火材とは含まれない。反対に、構成要素(b)のさらなる耐火材は、構成要素(a)の耐火材に設定される基準の全てに適合しない耐火材である。
【0078】
本発明に関して使用される構成要素(b)のさらなる耐火材は、好ましくは、すでに上記された従来技術から既知の慣習的な耐火材である。使用される構成要素(b)の特に好ましいさらなる耐火材は、ケイ酸アルミニウム、ポリシリケート、橄欖石、タルク、マイカ、黒鉛、コーク、長石、カオリン、焼成カオリン、メタカオリナイト、酸化鉄及びクロム鉄鉱からなる群から選択される1つ以上の物質である。
【0079】
構成要素(b)のさらなる耐火材の慣習的な形状及び径に関して、本明細書中で対応して適用可能な、従来技術から既知の慣習的な耐火材の上記の議論が同様に参照され得る。
【0080】
本発明で利用される、噴霧塗布によって耐火性鋳造型の内壁上に耐火性コーティングを製造するための従来の遠心鋳造型及び噴霧技術は、当業者に既知である。好ましくは、本発明の耐火性コーティング組成物は、遠心鋳造型の内壁上へ単一液圧ノズルを通して圧力下で噴霧され、且つ/又は遠心鋳造型の内壁上に霧化される。ノズル構造次第で、液体の噴射又は微細シートがノズル出口において生じる。ノズル出口から特定の距離において、液滴形成が開始する。典型的なノズルは、乱流、フラットジェット、衝撃及び中空円錐圧ノズルである。典型的なノズルの開口部は、円形形態又は卵形形態を有し得る。円形開口部の場合、ノズルの直径は、好ましくは4mm以下である。卵形ノズルの場合、開口部の最小寸法は、好ましくは3.5mm以下である。
【0081】
本発明で使用される耐火性コーティング組成物は、比較的高度に濃縮された形態で(濃縮物として)存在してもよく;次いで、この種類のコーティング組成物(濃縮物)は、慣習的な装置を使用する噴霧塗布を可能にするか、容易にするために、特定の場合、好ましくは希釈される。しかしながら、直接塗布(希釈をしない直接使用)も同様に可能である(噴霧塗布装置の選択に依存する)。
【0082】
固体分率が、コーティング組成物の全質量に基づき、69重量%より高く最高80重量%、好ましくは最高75重量%までの範囲である耐火性コーティング組成物の本発明における使用が好ましい。コーティング組成物の全質量に基づき、75重量%より高い固体分率を有し、好ましくは最高80重量%までの固体分率を有するコーティング組成物を本発明において使用することができるが、一般に、流動学的特性を必要条件に適応させるために、使用前に希釈する必要がある。75重量%未満の固体分率でも、希釈が有利となる可能性がある。特定の場合において、中間的な希釈を行わず、直接的な使用が好ましい。その場合、使用時に望ましい流動学的特性及び必要な固体含有量、例えば69重量%より高く73重量%までの範囲の固体含有量をすでに有するコーティング組成物を調製することは有利である。
【0083】
構成要素(a)の粒子状非晶質酸化物が、構成要素(a)の粒子状非晶質酸化物の全量に基づき、0.6重量%未満の強熱減量、好ましくは0.5重量%未満の強熱減量、より好ましくは0.3重量%未満の強熱減量を有する耐火性コーティング組成物の本発明における使用が好ましい。本発明に関して、低い強熱減量に関する定義、決定及び必要性に関して、本明細書中で対応して適用可能な、強熱減量の上記の議論が参照され得る。
【0084】
したがって、コーティング組成物の固体分率の全質量に基づき、低い強熱減量を実現する方法の1つは、好ましくは、本発明のコーティング組成物中に存在する構成要素(a)の粒子状非晶質酸化物自体が、粒子状非晶質酸化物の全量に基づき、少なくとも0.6重量%未満、好ましくは0.5重量%未満、より好ましくは0.3重量%未満の強熱減量を有するということである。構成要素(a)の粒子状非晶質酸化物の低い強熱減量は、特に、構成要素(a)の粒子状非晶質酸化物が、本発明において分散体として存在する水相の少量のみを吸収するか、本発明において分散体として存在する水相を吸収しないという事実による。構成要素(a)の粒子状非晶質酸化物が水相を吸収しないという傾向、又はわずかのみ吸収するという傾向は、例えば、本発明のコーティング組成物の除去及び/又は乾燥後、粒子状非晶質酸化物のいずれかの細孔中にわずか少量の水相のみが残るか、又は水相が残らないことを確実にする。反対に、粒子状非晶質酸化物のより良好な乾燥特性は、構成要素(a)の粒子状非晶質酸化物の低い強熱減量を導き、それによって、固体分率の全質量の強熱減量が明らかに影響を受ける。
【0085】
本発明において使用可能であり、且つコーティング組成物が、好ましくは構成要素(a)の粒子状非晶質酸化物の調製からの二次構成要素として(i)酸化ジルコニウム、(ii)炭素及び/又は(iii)ルイス酸を含む、耐火性コーティング組成物が好ましい。
【0086】
本発明に関して、「二次構成要素」という用語は、耐火性コーティング組成物が、例えば、粒子状非晶質酸化物上の前の調製及び/又は前の操作からの不純物として、又は接着物として由来し得る、そのような二次構成要素を小量のみ含むことを意味する。規定された二次構成要素は、好ましくは、それぞれの場合において、構成要素(a)の粒子状非晶質酸化物の全量に基づき、15重量%(又は質量分率)以下の量、より好ましくは10重量%以下の量、最も好ましくは5重量%以下の量でコーティング組成物中に存在する。
【0087】
酸化ジルコニウム(ジルコニア、二酸化ジルコニウム又は酸化ジルコニウム(IV)としても識別される)は、元素ジルコニウムの酸化物を指す。それは、わずかな分率の他の金属酸化物を含んでもよい。
【0088】
本発明で使用される耐火性コーティング組成物は、1つ以上のルイス酸及び/又はそれらの混合物を含み得る。本発明に関して、「ルイス酸」は、G.N.Lewisによって提案される概念に従う酸であり、それによって、酸は電子対受容体、すなわち、不完全な希ガス構成を有する分子又はイオンであり、そしてこれはルイス塩基により提供される電子対を受容し、この電子対によって、いわゆるルイス付加物が形成される。ルイス酸は求電子性であり、ルイス塩基は求核性である。したがって、古典的な認識に従う酸でない分子及びイオンが、(ルイス)酸であると解釈され得る。
【0089】
本発明の目的に関連して、本発明において使用される耐火性コーティング組成物のそれらの特性は、前記物質/群(i)~(iii)が存在する場合、それらが不在である場合とは有意に異ならない。したがって、本発明で使用されるコーティング組成物の製造に関して、高純度の出発材料を利用する必要はなく;その代わりに、(それらの典型的な二次構成要素又は不純物;参照(i)、(ii)及び(iii)と一緒に)標準的な市販の出発材料を使用することが可能である。
【0090】
同様に、本発明において使用することができ、且つ構成要素(a)の粒子状非晶質酸化物が、それぞれの場合において、構成要素(a)の粒子状非晶質酸化物の全量に基づき、90重量%以上の分率の二酸化ケイ素、好ましくは95重量%以上の分率の二酸化ケイ素を含む耐火性コーティング組成物が好ましい。
【0091】
構成要素(a)の粒子状非晶質酸化物が、構成要素(a)の粒子状非晶質酸化物の全量に基づき、二酸化ケイ素のそのような高い分率を含むという事実から生じる利点に関して、本明細書中で対応して適用可能な、粒子状非晶質酸化物の上記の議論が参照され得る。
【0092】
さらに、構成要素(a)の粒子状非晶質酸化物の粒子の90重量%以上が、二次元顕微鏡画像を評価することによって決定される0.95より高い真球度を有し、
且つ/又は
構成要素(a)の粒子状非晶質酸化物が、レーザー回折によって測定される3μm未満、好ましくは2μm未満、より好ましくは1μm未満の質量ベースのD95を有する、本発明において使用可能であるか、又は本発明において好ましい耐火性コーティング組成物が好ましい。
【0093】
真球度及び質量ベースのD95の定義及び測定に関して、本明細書中で対応して適用可能な、真球度及び質量ベースのD95の上記の議論が参照され得る。
【0094】
本発明に関して、両特性が耐火性コーティング組成物の流動学的挙動(又は流動挙動)に対して良好な影響を及ぼし、したがって、高い固体分率と組み合わせて、本発明で使用されるコーティング組成物の噴霧性に決定的に寄与するため、構成要素(a)の粒子状非晶質酸化物の特に丸い(すなわち、高い真球度を有する)粒子及び/又は特に小さい粒子状非晶質酸化物(すなわち、低い質量ベースのD95を有する)の使用が好ましい。したがって、微小シリカの使用が特に好ましい。
【0095】
同様に、本発明において使用可能であるか、又は本発明において好ましく、且つ構成要素(a)の粒子状非晶質酸化物が、
-二酸化ケイ素融解物を噴霧することによって製造可能である二酸化ケイ素粒子、及び
-微小シリカ
からなる群から選択される1つ以上の構成要素、好ましくは、それぞれの場合において、構成要素(a)の粒子状非晶質酸化物の全量に基づき、85重量%以上、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上の全分率の1つ以上のこれらの構成要素を含む、耐火性コーティング組成物が好ましい。
【0096】
したがって、構成要素(a)の粒子状非晶質酸化物の製造に関して、それ自体既知であり、且つ本発明に関して好ましい1つの選択肢は、二酸化ケイ素融解物を噴霧することである。二酸化ケイ素融解物を噴霧することによる構成要素(a)の粒子状非晶質酸化物の製造は、同時に高い真球度を有する、小さい(二酸化ケイ素)粒子(すなわち、低い質量ベースのD95の粒子状非晶質酸化物)への接近を提供する利点を有する。この種類の製造プロセスでは、粉砕操作が構成要素(a)の粒子状非晶質酸化物の粒子の高い真球度に対して悪影響を及ぼす可能性があるため、(他の好ましい製造プロセスの場合のように)(噴霧の下流での)粉砕操作の実施を故意に控えることが好ましい。
【0097】
すでに上記されたように、微小シリカ(CAS番号:69012-64-2)は、それ自体既知であり、且つ本発明に関して特に好ましい、構成要素(a)の粒子状非晶質酸化物のさらなる種類である。微小シリカは、典型的に、コーク又は無煙炭によるシリカ砂の還元による電気アーク炉中でのケイ素及びケイ素鉄の工業生産の副産物として形成される。これによって、最初に一酸化ケイ素ガスが形成され、次いで、その後、二酸化ケイ素へとさらに酸化される。その後の冷却時に、形成された二酸化ケイ素を濃縮し、粒子状非晶質微小シリカが形成される。
【0098】
微小シリカは、電子顕微鏡検査研究によって確認されるように、好ましくは非晶質二酸化ケイ素のほぼ完全な球体からなる。本発明に関して好ましい構成要素(a)の他の粒子状非晶質酸化物とは対照的に、さらに、微小シリカ中の粒子は、典型的に一緒に焼結されない。その代わりに、完全に分散可能な凝集体を形成する孤立した球体の形態で存在する。上記の特性の結果として、微小シリカは、本発明で使用される耐火性コーティング組成物の流動学的特性に特に良好に影響を及ぼすことができ、それによって、特にコーティング組成物が、69重量%より高い固体分率にもかかわらず、噴霧可能なままであり、且つ/又は遠心鋳造の内壁への噴霧塗布によって塗布されることができることが確実となる。
【0099】
構成要素(a)の粒子状非晶質酸化物としての微小シリカの使用に関連する好ましい特性のために、本発明の1つの好ましい実施形態は、
コーティング組成物の全質量に基づき、69重量%より高い固体分率を有し、且つ
コーティング組成物の固体分率の全質量に基づき、0.6重量%未満の強熱減量を有する、耐火性コーティング組成物の使用であって、
コーティング組成物が、水相中の耐火材の分散体であり、耐火材が、少なくとも、
(a)コーティング組成物の全質量に基づき、全量で4~50重量%の範囲の粒子状非晶質酸化物としての微小シリカ、
及び
(b)1つ以上のさらなる耐火材であって、
耐火材の全質量の98重量%以上が0.75mmのメッシュサイズを有するふるいを通過することができる耐火材
を含む、噴霧塗布によって遠心鋳造型の内壁上に耐火性コーティングを製造するための使用に関する。
【0100】
構成要素(a)の粒子状非晶質酸化物としての微小シリカの使用に関して、上記は一般に対応して有効である。
【0101】
同様に、本発明において使用可能であるか、又は本発明において好ましく、且つ構成要素(a)の粒子状非晶質酸化物が、それぞれの場合において、構成要素(a)の粒子状非晶質酸化物の全量に基づき、85重量%以上の分率、好ましくは90重量%以上の分率、より好ましくは95重量%以上の分率の微小シリカを含む耐火性コーティング組成物であって、
好ましくは、
-微小シリカが、ジルコニウム含有微小シリカ、好ましくは電気アークプロセスの酸化ジルコニウムの製造において二次生成物として得られるジルコニウム含有微小シリカであり、
且つ/又は
-蒸留水中の構成要素(a)の粒子状非晶質酸化物の分散体が、分散体の全質量に基づき、10重量%の構成要素(a)の粒子状非晶質酸化物の濃度で、7未満、好ましくは6.5未満のpHを有し、
且つ/又は
-微小シリカの一次粒子の重量平均径が100nm~150nmの範囲である、
耐火性コーティング組成物が好ましい。
【0102】
本発明に関して、電気アークプロセスの酸化ジルコニウムの製造における二次生成物として得られる種類の微小シリカの使用が特に好ましい。この特に好ましい微小シリカの製造方法により、対応する耐火性コーティング組成物が二次構成要素として二酸化ジルコニウムを好ましくは含むことが確実となる。
【0103】
型をコーティングするために本発明で使用される耐火性コーティング組成物は、通常、通常、キャリア液、例えば水性(すなわち、含水)キャリア液中の微粒子状の耐火性から高度に耐火性の無機材料(耐火材)の分散体である。そのような分散体は、好ましくは、構成要素(a)の粒子状非晶質酸化物の量を蒸留水中で分散させ、分散体の全質量に基づき、10重量%の分率を有する構成要素(a)の粒子状非晶質酸化物の分散体を形成することによって調製可能である。
【0104】
本発明の目的に関して、耐火性コーティング組成物のpHは、それぞれの場合において、分散体から、好ましくは標準試験法DIN 19260:2012-10に従って決定される。
【0105】
本発明に関して、「一次粒子」という用語は、適切な物理的方法(例えば、光学顕微鏡検査又は電子顕微鏡検査)によって個々として認識できる個々の微小シリカ粒子を指す。したがって、一次粒子は、凝集体(例えばファンデルワールス力によって、ゆるく互いに結合した一次粒子の集合)又は凝結体(化学結合によって結合した一次粒子の溶融又は一緒に焼結したアセンブリ)とは明らかに識別される。ヒュームドシリカ及び沈殿シリカなどの他の非晶質酸化物とは対照的に、例えば、微小シリカ中の一次粒子は、凝結体の形態ではなく、完全に分散可能な凝集体の形態を形成する孤立した球体として主に存在する。
【0106】
微小シリカの一次粒子の重量平均径は、好ましくは、光学顕微鏡又は電子顕微鏡画像(粒子状非晶質酸化物粒子の真球度の測定に関する上記の議論を参照のこと)の記録及び分析によって測定される。最新の市販の電子顕微鏡又は光学顕微鏡システムによって、一次微小シリカ粒子のデジタル画像分析、したがって、重量平均径の都合のよい決定が可能である。デジタル画像分析は、一次微小シリカ粒子の重量平均径の研究のために好ましい。デジタル画像分析は、好ましくは、例えば、Media CyberneticsからのImage-Pro Plusソフトウェアなどの市販の画像分析ソフトウェアによって実行される。デジタル画像分析用の試料の調製の際、粒子のランダムな配置が確実にされなければならない。必要に応じて、薄切を製造することができる。
【0107】
一次微小シリカ粒子が、複数の粒子の凝集体及び/又は凝結体及び/又は他の集合の形態をとる場合、それらは好ましくは、可能な限り結果のいずれのゆがみも排除するために、一次粒子の重量平均径が決定される前に、従来の様式で(例えば超音波処理によって)、穏やかに機械的に、又は類似の様式で分離される。
【0108】
それぞれの場合において、構成要素(a)の粒子状非晶質酸化物の全量に基づき、85重量%以上、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上の全分率の構成要素(a)の1つ又は全ての上記好ましい粒子状非晶質酸化物の使用に関連する有利な効果に関して、必要な変更を加えて、本明細書中で対応して適用可能な、高分率の二酸化ケイ素の有利な効果に関する上記の議論が参照され得る。
【0109】
さらなる好ましい実施形態は、本発明において使用可能であるか、又は本発明において好ましく、且つ構成要素(a)の粒子状非晶質酸化物の粒子がポゾラン活性を有する耐火性コーティング組成物である。これは、そのような粒子が水の存在下で水酸化カルシウムと反応することができることを意味する。このポゾラン活性は、鋳造パイプ上の耐火性コーティングの接着力に好ましく影響する。
【0110】
使用されるポゾラン活性を有する構成要素(a)の好ましい粒子状非晶質酸化物は微小シリカであり、これは、その小さい粒径及びその非晶質性のため、高いポゾラン活性を有する。
【0111】
本発明において使用可能であるか、本発明において好ましい耐火性コーティング組成物であって、
コーティング組成物が、コーティング組成物の全質量に基づき、全量4~25重量%の範囲、好ましくは全量4~20重量%の範囲の構成要素(a)の粒子状非晶質酸化物を含み、
且つ/又は
構成要素(a)の粒子状非晶質酸化物の全分率が、コーティング組成物中の耐火材の全量に基づき、50重量%未満、好ましくは25重量%未満である、
耐火性コーティング組成物がさらに好ましい。
【0112】
本発明と関連する有利な特性は、本発明で使用される耐火性コーティング組成物中の粒子状非晶質酸化物の上記の(低い)全量でさえも達成される(以下の本発明の実施例を参照のこと)。
【0113】
同様に、1つ以上の界面活性物質(湿潤剤)、好ましくは1つ以上の気泡形成剤、好ましくはアニオン、カチオン及び非イオン気泡形成剤からなる群から選択される1つ以上の気泡形成剤、
より好ましくは1つ以上のアニオン及び/又は1つ以上のカチオン気泡形成剤
を含む、本発明において使用可能であるか、又は本発明において好ましい耐火性コーティング組成物であって、
好ましくは、アニオン及びカチオン気泡形成剤の全分率は、コーティング組成物の全質量に基づき、0.5重量%未満であり、
より好ましくは、アニオン、カチオン及び非イオン気泡形成剤からなる群から選択される気泡形成剤の全分率は、コーティング組成物の全質量に基づき、0.5重量%未満であり、
非常に好ましくは、気泡形成剤の全分率は、コーティング組成物の全質量に基づき、0.5重量%未満である、
耐火性コーティング組成物が好ましい。
【0114】
界面活性物質(好ましくは気泡形成剤)は、遠心鋳造型の内壁のより良好な湿潤を達成するために有利に使用される。イオン及び非イオン界面活性物質は、当業者に既知である。使用されるイオン界面活性物質の例は、ジオクチルスルホサクシネートであり、使用される非イオン界面活性物質の例は、アルキンジオール又はエトキシル化アルキンジオールであり、これらは本発明に関しても適切である。
【0115】
これらの物質が水相の表面張力を減少するため、本発明で使用される耐火性コーティング組成物におけるそのような界面活性物質の使用は特に有利であり、それによって、遠心鋳造型の内壁上の耐火性コーティングの表面構造の生成のみならず、製造される鋳造されたパイプの引き離し挙動にも明らかに影響を与え得る。
【0116】
同様に、結晶質二酸化ケイ素の分率が、コーティング組成物の全質量に基づき、3重量%未満であり、
且つ/又は
ケイ酸ジルコニウム(ケイ酸ジルコニウム又はジルコンとして記載される)及び酸化ジルコニウムの全分率が、コーティング組成物の全質量に基づき、7重量%未満であり、
且つ/又は
α-アルミナの分率が、コーティング組成物の全質量に基づき、5重量%未満であり、
且つ/又は
7より高いモース硬度を有する耐火材の分率が、コーティング組成物の全質量に基づき、5重量%未満であり、
且つ/又は
珪藻土の分率が、構成要素(a)の粒子状非晶質酸化物の全量に基づき、10重量%未満である、
本発明において使用される耐火性コーティング組成物が好ましい。
【0117】
すでに上記で説明された通り、耐火性コーティング組成物中の硬質耐火材の分率が高い場合、遠心鋳造型から鋳造されたパイプを引き離す間に、内部型壁で重度の摩耗を引き起こすため、耐火性コーティング組成物中の硬質耐火材の過度の分率は、使用される遠心鋳造型の摩耗を促進する。したがって、硬質の研磨耐火材の分率がその量で制限されるコーティング組成物を使用することは、本発明に関して好ましい。したがって、本発明のコーティング組成物中の硬質の研磨耐火材の分率を制限することは、遠心鋳造型を保護する作用があり、それによって同時に遠心鋳造型の使用寿命が延長される。
【0118】
珪藻土(ダイアトマイト又はキーザルガーとも呼ばれる)は、主に化石珪藻(珪質藻類)のシェルからなり、従来技術から既知の慣習的な耐火材を構成する粉末形態の白色物質である。珪藻土の使用がいくつかの不都合と関連するため、本発明において使用される耐火性コーティング組成物中の珪藻土の分率は、構成要素(a)の粒子状非晶質酸化物の全量に基づき、10重量%未満で低い。例えば、(焼成)珪藻土のダストが珪肺症を引き起こす結晶質石英ダストの1つであるため、珪藻土の使用は健康の見地からの問題を含む。さらにまた、本発明の構成要素(a)の粒子状非晶質酸化物と比べて、珪藻土が低い真球度を有するため、珪藻土の使用はコーティング組成物の粘度の不利な増加を導く。さらに、約85%のその多孔性のため、珪藻土は高い吸水性を有し、したがって、珪藻土が使用される場合、コーティング組成物に関して本発明において望ましい低い強熱減量に悪影響を与える。
【0119】
さらに、好ましくは、ホスフェート、水ガラス、シリカゾル及びそれらの混合物からなる群から選択される無機バインダーを含み、水ガラスが、好ましくは、アルカリ金属水ガラスからなる群から選択され、
且つ/又は
ホスフェートが、好ましくは、オルトホスフェート、ポリホスフェート及びそれらの混合物からなる群から、より好ましくは、オルトホスフェート、メタホスフェート及びそれらの混合物からなる群から、非常に好ましくは、リン酸アルミニウム、ポリリン酸アルミニウム及びそれらの混合物からなる群から、最も好ましくはリン酸アルミニウム、メタリン酸アルミニウム及びそれらの混合物からなる群から選択され、
且つ/又は
ホスフェートの重量平均分子量MWが、好ましくは300g/モルより高く、より好ましくは600g/モルより高い、
本発明において使用される耐火性コーティング組成物が好ましい。
【0120】
耐火性コーティングバインダー(バインダー)の第一の目的は、コーティング組成物中に存在する耐火材を遠心鋳造型の内壁上に固定することである。バインダーは有機であり得るが、無機であってもよい。耐火性コーティング組成物に関して可能な限り低い強熱減量を実現するために、本発明では、無機バインダーを使用することが好ましい。
【0121】
シリカゾルは、ポリケイ酸のほぼ球状のコロイド状溶解分子の水性溶液であり、二酸化ケイ素含有量が、シリカゾルの全質量に基づき、典型的に30~60重量%であるものである。シリカゾルは、水性アルカリ金属シリケート溶液(水ガラス)をイオン交換器で処理し、そして水とアルカリ性反応を生じる物質を使用して、その後の安定化を実行することによって調製され得る。
【0122】
アルカリ金属水ガラスは、融解物から凝固されるガラス様(すなわち、非晶質)、水溶性ナトリウム、カリウム及びリチウムシリケート、並びにそれらの混合物及び対応する水性溶液を指す。「水ガラス」という用語は、それらの非晶質、水溶性ナトリウム、カリウム及び/又はリチウムシリケート及び/又は上記シリケートの水溶液及び/又は混合物及び/又はそれらの溶液であって、それぞれの場合において、1.6~4.0の範囲、好ましくは1.8~2.5の範囲のSiO2対M2Oのモル率(モル比)を有するものを意味し、M2Oはリチウム、ナトリウム及びカリウム酸化物の全量を意味する。
【0123】
本発明に関するオルトホスフェートは、リン酸の水素イオンが完全に、又は部分的に金属イオン若しくは有機ラジカルと置き換えられたリン酸の塩及びエステルである。本発明に関するポリホスフェートは、対応して、P-O-P架橋を形成するために、水の分子間除去(縮合)による2つ以上のリン酸水素から典型的に形成されるポリリン酸の塩及びエステルである。ポリホスフェートは直鎖又は分岐鎖又は環式であり得る。環状に縮合されたポリホスフェートは、一般に、本発明に関して、メタホスフェート又はシクロポリホスフェートとして指される。本発明の耐火性コーティング組成物において、メタホスフェート(シクロポリホスフェート)の使用は好ましい。例えば、本発明に関して、リン酸アルミニウムは、オルトリン酸アルミニウム、メタリン酸アルミニウム、リン酸二水素アルミニウム及びポリリン酸アルミニウムなどのアルミニウム含有ホスフェート化合物である。
【0124】
同様に、1つ以上の流動学的添加剤、好ましくは増粘剤、より好ましくは有機増粘剤、好ましくは多糖類、タンパク質及びセルロースエーテルからなる群から選択されるもの、又は無機増粘剤、好ましくはベントナイト、スメクタイト、アタパルジャイト及びモンモリロナイトなどの粘土鉱物からなる群から選択されるものを含む、本発明において使用される耐火性コーティング組成物が好ましい。
【0125】
増粘剤などの流動学的添加剤は、例えば、処理のために望ましい耐火性コーティング組成物の流動性を設定するために使用される。増粘剤は有機又は無機のいずれであってもよいが、本発明に関して、有機増粘剤が好ましい。
【0126】
好ましくは、ベントナイト又はスメクタイト又はアタパルジャイト又はモンモリロナイトの分率、より好ましくはベントナイト、スメクタイト、アタパルジャイト及びモンモリロナイトなどの粘土鉱物の全分率、非常に好ましくは無機増粘剤の全分率、特に好ましくは流動学的添加剤の全分率は、
本発明において使用されるコーティング組成物の固体分率の全質量に基づき、6重量%未満、好ましくは3重量%未満、より好ましくは1.5重量%未満であり、
且つ/又は
この分率が、本発明において使用されるコーティング組成物の固体分率の全質量に基づき、0.5重量%未満の強熱減量、好ましくは0.4重量%未満の強熱減量、より好ましくは0.3重量%未満の強熱減量を有するように選択される。
【0127】
物理的特性次第で、特定の場合、(使用されるそれぞれの粘土鉱物の質量に基づき)約10重量%の範囲であることが可能である(そしてコーティング組成物の固体分率の全質量の強熱減量に悪影響を与える)、ベントナイト、スメクタイト、アタパルジャイト及びモンモリロナイトなどの粘土鉱物の比較的高い強熱減量のため、対応する粘土鉱物の上記の低い分率を有するコーティング組成物が好ましい。
【0128】
その上、1つ以上の殺生物剤、好ましくは1つ以上の殺菌剤を含む、本発明の耐火性コーティング組成物又は本発明の好ましい耐火性コーティング組成物が好ましい。
【0129】
殺生物剤の使用は、本発明に関して、有害生物による耐火性コーティング組成物の侵入を防止することを意図する。殺菌剤の使用は、バクテリアによるコーティング組成物の侵入を防止するのに特に役立つ。本発明に関して適切である殺生物剤の例は、ホルムアルデヒド、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(MIT)、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(CIT)及び1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン(BIT)である。殺生物剤、好ましくは規定された個々の殺生物剤は、それぞれの場合において、コーティング組成物の全質量に基づき、全量10~1000ppmで、好ましくは20~500ppmの量で慣習的に使用される。
【0130】
さらに、コーティング組成物が1013hPaにおいて100℃未満の沸点を有するアルコールを水相に含み、好ましくはエタノールを水相に含む、本発明において使用される耐火性コーティング組成物が好ましい。
【0131】
水相中のアルコールの分率は、耐火性コーティング組成物の全質量に基づき、好ましくは5重量%未満、より好ましくは3重量%未満、非常に好ましくは2~3重量%である。1013hPaにおいて100℃未満の沸点を有するアルコールを水相中に使用することは、コーティング組成物の乾燥速度を増加させるように作用する。液体キャリアとしてのアルコールの使用に関して、本明細書中で対応して適用可能なキャリア液に関する上記の議論が参照され得る。
【0132】
同様に、本発明において使用可能であるか、又は本発明において好ましく、且つ構成要素(b)の1つ以上のさらなる耐火材が、
-二次元顕微鏡画像を評価することによって決定される、0.9より高い真球度を有する中空粒子、好ましくは(i)結晶質分率を有し、且つ好ましくは(ii)二酸化ケイ素又はシリケートを含み、
これらの中空粒子の分率が、コーティング組成物の全質量に基づき、0.1~10重量%の範囲、好ましくは0.5~6重量%の範囲である、中空粒子、
-二次元顕微鏡画像を評価することによって決定される、0.9より高い真球度を有するセラミック粒子、好ましくは(i)結晶質分率を有し、且つ/又は(ii)好ましくは酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化ジルコニウム及び酸化カルシウムからなる群から選択される1つ以上の酸化物を含むセラミック粒子、
より好ましくは固体粒子及び/又は中空球、非常に好ましくはセノスフェア
からなる群から選択される1つ以上の構成要素を含む、耐火性コーティング組成物が好ましい。
【0133】
本発明において使用される耐火性コーティング組成物の1つの好ましい実施形態において、構成要素(b)中に好ましく存在する中空粒子及び/又はセラミック粒子、好ましくはセラミック中空粒子は、そのような包含のために必要とされる特性の全てを有さないため、定義上、上記で定義された構成要素(a)の粒子状非晶質酸化物には含まれない。(原子の少なくとも部分的な長期配列を意味する)中空粒子及び/又はセラミック粒子中に好ましく存在する結晶質分率は、X線回折研究によって検出可能である。
【0134】
真球度の定義及び測定に関して、本明細書中で対応して適用可能な真球度に関する上記の議論が参照され得る。
【0135】
0.9より高い真球度を有する中空粒子は、粒子の体積の15%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは70%以上を占める空孔を内部に有する、球面であるか、又はほとんど球面である粒子を指す。この空孔は、中空球体の場合、無機材料のシェルで完全に取り囲まれていてもよく、又は不完全に取り囲まれていてもよい。
【0136】
中空球体又はセラミック中空球体は、本発明に関する中空粒子及びセラミック粒子の好ましい実施形態を構成する。
【0137】
セノスフェア(CAS番号:93924-19-7)は、フライアッシュの一部として、発電所で石炭の燃焼の間に形成される好ましい中空球体であり、且つ燃焼ガス流から堆積される。セノスフェアの特性は、好ましくは以下の通りである。
-10~150μmの範囲の外径
-中空球体の全体積の70%以上を占める空孔
-1200℃~1450℃の軟化点
-5~6のモース硬度、及び
-25MPa以上の圧縮強度
【0138】
セラミック粒子の別の好ましい実施形態を表す固体セラミック粒子は、本質的に、固体粒子がわずかな空孔のみを有するか、又は空孔を有さず、したがって、中空球体と比べると固体粒子は実質的により密集した形状が与えられるという点で、中空セラミック粒子及び特に中空球とは異なる。
【0139】
コーティング組成物の全質量に基づき、69重量%以上の固体分率を有し、
且つ
コーティング組成物の固体分率の全質量に基づき、0.6重量%未満、好ましくは0.5重量%未満、より好ましくは0.3重量%未満の強熱減量を有する、耐火性コーティング組成物が使用され、
コーティング組成物が、水相中の耐火材の分散体であり、耐火材が、少なくとも、
(a)-コーティング組成物の全質量に基づき、全量で4~50重量%の範囲の粒子状非晶質酸化物
(粒子状非晶質酸化物は、粒子状非晶質酸化物の全量に基づき、85重量%以上の分率の二酸化ケイ素、好ましくは微小シリカを含み、
粒子状非晶質酸化物は、レーザー回折で測定される5μm未満、好ましくは3μm未満、より好ましくは2μm未満、非常に好ましくは1μm未満の質量ベースのD95を有し、
粒子状非晶質酸化物は、粒子状非晶質酸化物の全量に基づき、50%未満、好ましくは25%未満、より好ましくは10%未満の多孔性を有し、且つ
粒子状非晶質酸化物の粒子の90重量%以上は、二次元顕微鏡画像を評価することによって測定される、0.9より高い、好ましくは0.95より高い真球度を有する)、
又は/及び/又は
-コーティング組成物の全質量に基づき、全量で4~50重量%の範囲の粒子状非晶質酸化物としての微小シリカ、
及び
(b)1つ以上のさらなる耐火材
を含み、コーティング組成物が、
-1つ以上の界面活性物質、
-無機バインダー、及び
-1つ以上の流動学的添加剤
を含む、耐火性コーティング組成物の使用も好ましい。
【0140】
使用される界面活性物質は、好ましくは、上記された界面活性物質である。好ましく使用される無機バインダーは、上記された無機バインダーを含む。使用される流動学的添加剤は、好ましくは、上記された流動学的添加剤である。
【0141】
本発明において使用される耐火性コーティング組成物は、好ましくは、構成要素の添加又は除去をせずに、直接的に遠心鋳造型に塗布されるように意図又は構成される。或いは、本発明において使用されるコーティング組成物は、特に水又は有機キャリア液の添加によって、遠心鋳造型への塗布の前に任意選択的に希釈される、濃縮物の形態をとってもよい。(希釈をしない)濃縮物の直接的な使用も同様に可能であるが、特定の場合において賢明(sensible)である。他に示されるか、又は特定化されない限り、これは本発明の全ての実施形態に適用される。
【0142】
本発明のさらなる対象は、構造化表面を有する金属鋳造物を製造するための、より特に、遠心鋳造型の内壁上のネガ構造に対して相補的であるポジ構造を有する金属鋳造物を製造するための、遠心鋳造型の内壁上の耐火性コーティングがネガ構造を有する、噴霧塗布による(例えば、非換気型)遠心鋳造型の内壁上への耐火性コーティングの製造のための、好ましいとして記載されたその実施形態を含む本発明の上記の耐火性コーティング組成物の使用である。
【0143】
少なくとも内壁の領域における噴霧塗布が2つ以上のコートで実施され、第2又は少なくとも1つのさらなるコートの塗布が、以前に塗布された、好ましくは完全に乾燥していない耐火性コーティングのコーティング上に実施される、本発明の使用の実施形態が好ましい。
【0144】
すでに上記で説明された通り、コーティングの望ましい量を塗布することに関して、遠心鋳造型の内壁に、本発明において使用可能である/本発明において好ましい耐火性コーティング組成物の2つ以上のコートを塗布することが可能であり、2つ以上のコートの塗布において、コーティング組成物は、好ましくは遠心鋳造型の内壁に事前及び事後の両方で塗布される。特に、2コート又はマルチコート噴霧塗布を実行することによって、噴霧塗布によって遠心鋳造型の内壁上に製造された耐火性コーティングのコート厚を変えることが可能となり、それによって、例えば、耐火性コーティングの断熱性及び表面構造に有利な影響を及ぼすことが可能となる。
【0145】
本発明の別の対象は、以下のステップ:
-上記及び/又は特許請求の範囲に開示される、本発明において使用される及び/又は本発明において好ましい耐火性コーティング組成物を提供するか、又は製造するステップ
-(例えば、非換気型)遠心鋳造型の内壁に、提供されたか、又は製造されたコーティング組成物の1つ以上のコートを塗布するステップ
を有する、遠心鋳造プロセスで使用するための耐火性コーティングがその内壁上に提供された遠心鋳造型の製造方法であって、好ましくは、遠心鋳造型が回転及び/又は加熱され、好ましくは、少なくとも乾燥後に得られる耐火性コーティングが、構造化表面を有する鋳造物を製造するため、又はそれぞれのネガ構造に対して相補的であるポジ構造を有する鋳造物を製造するためのネガ構造を有する、方法である。
【0146】
本発明の方法の第1のステップにおいて提供又は製造される耐火性コーティング組成物、並びに本発明の使用に関して使用される耐火性コーティング組成物は、好ましくは、以下の通りに製造される。
-水相の量を提供すること、
-(本発明の使用及び本発明の方法に関して上記及び特許請求の範囲において開示されるように)耐火材(a)及び耐火材(b)の量を提供すること、
-好ましくは撹拌しながら、提供された耐火材(a)、耐火材(b)及び水相から分散体を製造し、好ましくは1つ以上の耐火材(a)及び/又は1つ以上の耐火材(b)の凝集体及び/又は凝結体が水相との接触の前、間及び/又は後に分解され、好ましくは一次粒子に分離されること、
-好ましくは、1つ以上のさらなる構成要素(例えば、流動学的添加剤、無機バインダー、殺生物剤、界面活性物質、気泡調整剤、顔料、染料など)を、水素の量及び/又は製造された分散体に、より好ましくは撹拌しながら添加すること、
-より好ましくは撹拌しながら、製造された分散体に水相及び/又はアルコール相の量を好ましくは添加し、耐火性コーティング組成物を得ること。
【0147】
本発明において使用される耐火性コーティング組成物を製造するために、例えば、水を適切な量で導入することができ、次いで、高剪断撹拌器、例えば、歯車撹拌器又は溶解槽撹拌器などの適切な撹拌器を使用して撹拌しながら、コーティング組成物を製造するためのさらなる構成要素を、この初期装填物に、それらの望ましい量でそれぞれ添加することができる。必要な場合、構成要素は添加の前又は間に従来の様式でダイジェスト(digest)されてもよい。したがって、例えば、1つ以上の流動学的添加剤は、必要に応じて、高剪断撹拌器を使用して、初期の水装填物への添加の前又は後に、個々に、又は耐火材と一緒にダイジェストされてもよい。耐火材が、いずれの追加の添加流動学的添加剤と一緒にダイジェストされない場合、それらは個々にダイジェストされて、初期の水装填物に添加されてもよい。次いで、その後、例えば、いずれかの順番で、且つ好ましくは撹拌しながら、好ましくは高剪断撹拌器を使用して、コーティング組成物のさらなる構成要素、例えば、いずれかの無機のバインダー、いずれかの1つ以上の殺生物剤、いずれかの1つ以上の界面活性物質、いずれかの1つ以上の気泡調整剤、いずれかの1つ以上の顔料及び/又はいずれかの1つ以上の染料を、必要に応じて流動学的添加剤及び/又は耐火材を含む初期の水装填物に添加することができる。
【0148】
本発明の方法の第1のステップにおいて提供されるか、又は製造される耐火性コーティング組成物は、好ましくは、噴霧塗布によって遠心鋳造型の内壁上に耐火性コーティングを製造するために直接的に使用されることが意図される。或いは、コーティング組成物は、後でのみ、例えばコーティング組成物の本発明の使用の直前までではなく、意図された使用及び/又はあらかじめ決定された塗布技術に適切である濃度(噴霧による塗布に関して適切な粘度を有する濃度)まで、例えば水又は有機キャリア液のさらなる追加によって希釈される濃縮物として、最初に従来の様式で製造されてもよい。前記濃度は、耐火性コーティングを製造するための遠心鋳造型の内壁への塗布に関して直接的に、それぞれの意図された使用及び/又はあらかじめ決定された塗布技術に適切となる。本発明に関して、量又は割合が、本発明において使用されるコーティング組成物に関して特定化される場合、これらの量又は割合は、それぞれの場合において、明示的に他に記載されない限り、噴霧塗布による遠心鋳造型の内壁への直接的な塗布に関して意図されるコーティング組成物に基づく。一般に、遠心鋳造型上での意図されたコーティング手順の直前に、本発明で使用するためのコーティング組成物の個々の構成要素を互いに混合することは必要とされないが;その代わりに、有利であることに、本発明において使用されるコーティング組成物の貯蔵安定性が高いため、混合は非常に早期に実行されてよい。
【0149】
(噴霧塗布によって)遠心鋳造型の内壁へと第1のステップにおいて提供又は製造された耐火性コーティング組成物の1つ以上のコートを塗布することに関して、及び塗布されたコーティング組成物を乾燥させることに関して、本明細書中で対応して適用可能な噴霧塗布によって塗布されたコーティング組成物の塗布及び乾燥に関する上記の観察が参照されてよい。
【0150】
本発明の別の対象は、以下のステップ:
-上記及び/又は特許請求の範囲に開示される、本発明において使用される及び/又は本発明において好ましく使用される耐火性コーティング組成物を提供するか、又は製造するステップ
-(例えば、非換気型)遠心鋳造型の内壁に、提供されたか、又は製造されたコーティング組成物の1つ以上のコートを塗布し、耐火性コーティングを製造するステップ(この時点まで、実行される方法ステップは、遠心鋳造プロセスにおいて使用するための、耐火性コーティングがその内壁上に提供される遠心鋳造型を製造するための発明の方法のものと一致する)
-その内壁がコーティングされた回転遠心鋳造型に鋳造金属を導入するステップ
-回転遠心鋳造型中で鋳造物を凝固するステップ
-遠心鋳造型から、好ましくは耐火性コーティングと一緒に、又は耐火性コーティングの一部分と一緒に鋳造物を引き離すステップであって、耐火性コーティングが、好ましくは、遠心鋳造型に接着して残らず、且つ/又は機械的に引き離されなければならないが、代わりに、好ましくは90重量%の範囲まで、より好ましくは98重量%の範囲まで鋳造物と一緒に引き離されるステップ
を含む、遠心鋳造プロセスにおいて鋳造物を製造する方法であって、
塗布が、好ましくは、遠心鋳造型が回転及び/又は加熱されている状態で実行され、
且つ
好ましくは、少なくとも乾燥後の耐火性コーティングが、構造化表面を有する鋳造物を製造するため、又はそれぞれのネガ構造に対して相補的であるポジ構造を有する鋳造物を製造するためのネガ構造を有し、且つ鋳造物が対応する構造化表面又はポジ構造を有する、方法である。
【0151】
選択される遠心鋳造型に従い、望ましい様式の耐火性コーティングの引き離しは、本発明において使用される耐火性コーティング組成物の対応する選択によって影響を受けるか、又は確実にされる。
【0152】
本発明のさらなる対象は、遠心鋳造型の内壁上に耐火性コーティングを有する、遠心鋳造プロセスにおいて使用される遠心鋳造型であって、
耐火性コーティングは、(乾燥されていない)コーティング組成物が上記及び/又は特許請求の範囲において定義されている、乾燥された耐火性コーティング組成物からなり、
好ましくは、耐火性コーティングは、1013hPa及び105℃、好ましくは200℃において気化できない、(上記で開示された通り)本発明において使用される及び/又は本発明において好ましく使用されるコーティング組成物のそれらの構成要素からなり、
且つ/又は
好ましくは、耐火性コーティングは、構造化表面を有する鋳造物を製造するためのネガ構造を有し、
且つ/又は
上記及び/又は特許請求の範囲において開示されるように、(その内壁上に耐火性コーティングを有する)遠心鋳造型が、遠心鋳造プロセスにおいて使用される、耐火性コーティングがその内壁に提供された遠心鋳造型を製造するための本発明の方法によって製造可能であり、
且つ/又は
上記及び/又は特許請求の範囲において開示されるように、(その内壁上に耐火性コーティングを有する)遠心鋳造型が、噴霧塗布によって遠心鋳造型の内壁上に耐火性コーティングを製造するための耐火性コーティング組成物の本発明の使用及び/又は好ましい本発明の使用に従って製造可能である、
遠心鋳造型である。
【実施例
【0153】
以下に特定される実施例は、その範囲を制限することなく、本発明をさらに詳細に説明し、記載するように意図される。
【0154】
実施例1:噴霧塗布によって遠心鋳造型の内壁上に耐火性コーティングを製造するための、本発明において使用される、及び本発明において使用されない耐火性コーティング組成物の製造。
【0155】
噴霧塗布によって遠心鋳造型の内壁上に耐火性コーティングを製造するための、表1に特定される本発明において使用される耐火性コーティング組成物SZ1~SZ3、及び同様に表1に特定される本発明において使用されない耐火性コーティング組成物SS1を、それぞれの場合において特定される成分を混合することによって、従来の様式で製造した。
この目的に関して、必要量の水を適切なバケツ(それぞれの場合において約5kgのコーティング組成物のバッチサイズ)に入れ、増粘剤(多糖類、スメクタイト)及び耐火材(ムライト、微小シリカ、非晶質石英ガラス、セノスフェア)を添加し、そしてこれらの成分を3分間、高剪断溶解槽撹拌器を使用して、従来の様式でダイジェストした。次に、表1で示される割合で、無機バインダー(ホスフェート及びポリホスフェートの混合物)及び殺生物剤(2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2.5%強度w/w水溶液)を添加し、そして高剪断溶解槽撹拌器を使用して、さらに2分間、混合物を撹拌した。最後に、界面活性物質(気泡形成剤)を添加し、そしてプロペラ撹拌器を使用して慎重に分散体中に組み込み、均一に分布させた。これによって、濃縮物の形態で、表1に特定されるそれぞれのコーティング組成物が得られた。
【0156】
任意選択的に、本発明の使用の前に、すなわち、噴霧塗布の前に、得られた混合物を、例えば、好ましくは追加量の水、水性分散体媒体、アルコール又はアルコール含有分散体媒体と混合することによって、意図された使用及び/又はあらかじめ決定された塗布技術に適切な濃度まで希釈する。しかしながら、(希釈をしない)直接的な塗布も同様に可能であり、そして特定の場合に賢明である。
【0157】
【表1】
【0158】
表1の「DIN粉砕」に関する数値は、(DIN ISO 3310-1:2001-09による;表1に特定された分析用ふるいの公称メッシュサイズを参照のこと)μmの単位の公称メッシュサイズを有する分析用ふるいを用いた、この構成要素の試料のふるいがけ後、コーティング組成物のそれぞれ示された構成要素が粉砕された状態で存在することを意味する。それぞれの場合において、残渣は、使用された試料の量に基づき、1~10重量%の範囲である。
【0159】
本発明において使用されないコーティング組成物SS1は、微小シリカを含まない。SS1は、SZ2との直接的な比較のために意図され、組成物は、微小シリカの有無に関してのみ、性質的に異なる。構成要素(a)及び(b)の全質量は、SZ2及びSS1は一定であり、他の構成要素の質量は個々である。
【0160】
表1に特定されるコーティング組成物(濃縮物)SZ1、SZ2、SZ3及びSS1の特性(固体分率;流動時間)を表2に報告する。
【0161】
実際の使用の前に、表1に特定されるコーティング組成物(濃縮物)SZ1、SZ2及びSS1を、エタノールの添加によって、又はエタノール及び水の添加によって、噴霧ランスを使用する噴霧塗布のために適切な粘度まで希釈し、その後、均質化した。それぞれの場合において希釈のために使用されるエタノール及び水の量、並びに希釈後に得られ、且つ噴霧塗布によって遠心鋳造型の内壁上に耐火性コーティングを製造するための本発明において使用されるコーティング組成物の特性を同様に表2に報告する。
【0162】
【表2】
【0163】
表2において特定されたコーティング組成物SZ1、SZ2及びSZ3(濃縮物として;SZ1及びSZ2は希釈された形態も;SZ3は希釈されずに直接的に使用可能である)は、上記及び特許請求の範囲において定義される本発明において使用されるコーティング組成物と一致する。反対に、同様に表2に特定されるコーティング組成物SS1(濃縮された形態、及び希釈された形態)は、微小シリカが存在しないため、本発明において使用されないコーティング組成物を表す。表中、本発明において使用されるコーティング組成物の特性の全てが繰り返されているわけではないが、その代わりに、選択された特性のみが報告される。
【0164】
表2中で報告される固体分率(不揮発性分率の含有量)は、標準試験法DIN EN ISO 3251:2008-06に従って測定された。EN ISO 3251:2008-06に記載される方法の実施のために、この場合、150℃の試験温度、30分の試験時間及び2.5gの初期質量が特定された。
【0165】
表2中に報告される流動時間は、ERICHSEN GmbH & Co.KGからの流出ノズルを有するカップ、D 58675 Hemer、モデル243/II6mm中で標準試験法DIN 53211と同様に決定された。測定の前にコーティング組成物を5分間撹拌した。
【0166】
表2に報告される強熱減量は、(EN 12879:2000において特定された550℃の代わりに)900℃の点火温度を使用して、標準試験法EN 12879:2000に従って測定した。強熱減量を決定する際に使用された乾燥質量、すなわち、コーティング組成物の固体分率は、150℃の試験温度、30分の試験時間及び2.5gの初期質量を選択して、DIN EN ISO 3251:2008-06に従って、それぞれのコーティング組成物を乾燥させることによって得られた。
【0167】
それぞれの場合における69重量%より高い固体分率にもかかわらず、コーティング組成物SZ1(特に希釈されたもの、表2参照)、SZ2(特に希釈されたもの、表2参照)及びSZ3は、噴霧塗布による遠心鋳造型の内壁上での耐火性コーティングの製造に関して非常に適切である。表2に報告される低い強熱減量の結果として、及びそれと関連して、鋳造手順の間の分解気体のわずかに明白な形成の結果として、さらに、コーティング組成物SZ1、SZ2及びSZ3は、(非換気型)遠心鋳造型における本発明の使用のために適切である。
【0168】
濃縮物の形態の高粘度コーティング組成物SS1は、エタノール及び水(表2参照)による実質的な希釈の後のみ、噴霧塗布によって塗布可能であり;実際に、この実質的な希釈の後のみ、SZ3(希釈されていない)並びにSZ1及びSZ2(エタノールのみによって希釈された)の場合において存在する種類の噴霧性に関して十分に低い粘度が達成される。しかしながら、実質的な希釈剤のために、コーティング組成物SS1の固体分率は、わずか66.4重量%である。(希釈された)コーティング組成物SS1に関するこの低い固体分率は、不都合に長い乾燥時間をもたらす。さらに、(希釈された)コーティング組成物SS1によって、構造化表面を有する鋳造物を製造するために必要とされる種類の(均一な)ネガ構造を有する耐火性コーティングを製造することは不可能である。
【0169】
実施例2:噴霧塗布によって遠心鋳造型の内壁上に耐火性コーティングを製造するため、したがって、本発明の遠心鋳造型を製造するための、実施例1に記載された本発明において使用されるコーティング組成物SZ2及びSZ3の使用
実施例1に記載されるコーティング組成物SZ2(希釈されたもの、表2参照)及びSZ3(希釈されていないもの)を使用して、従来の様式で、シリンダースリーブを製造するために遠心鋳造型の内壁上への噴霧塗布によって、耐火性コーティングを製造した。この型は、約80mmの内径及び約2mの全長を有した。
【0170】
125mmの型の長さに関して、約110gの量の(希釈された)コーティング組成物SZ2を、噴霧ランスを使用して、約360℃の温度の回転遠心鋳造型の内壁に塗布した。これによって、十分な断熱効果が生じた。
【0171】
約360℃の温度を有する同一寸法の回転遠心鋳造型に同様に塗布された(希釈されていない)コーティング組成物SZ3を使用する場合、十分に高い断熱効果を有する耐火性コーティングを得るために十分なコーティングの量は、SZ2と比較して約10%低かった(125mmの型の長さに対して約100g)。
【0172】
コーティング組成物SZ2及びSZ3を塗布するための噴霧時間は、2メートルの型の長さをコーティングするために、それぞれの場合において、25秒であった。塗布されたコーティング組成物の乾燥時間は、それぞれの場合において、十分に短く、したがって、それぞれのコーティング組成物のそれぞれの塗布の開始から、それぞれの鋳造操作の開始までの測定された時間は、それぞれの場合において、35秒のみであった。それぞれのコーティング組成物を乾燥させた後に得られる耐火性コーティングは、遠心鋳造型の全ての長さにおいて均一なネガ構造を有した。これらの構造は、構造化表面を有する鋳造物の製造のために非常に適切である。
【0173】
この様式で製造され、且つ耐火性コーティングがそれらの内壁上に提供された、遠心鋳造プロセスにおいて使用するための遠心鋳造型は、上記及び特許請求の範囲において定義された遠心鋳造型の内壁上に耐火性コーティングを有する、遠心鋳造プロセスにおいて使用するための本発明の遠心鋳造型である。また本実施例は、上記及び特許請求の範囲において定義された、遠心鋳造プロセスにおいて使用するための耐火性コーティングがそれらの内壁上に提供された遠心鋳造型を製造するための本発明の方法の一実施例でもある。
【0174】
実施例3:遠心鋳造型の内壁上に耐火性コーティングを有する本発明の遠心鋳造型を使用する遠心鋳造プロセスにおける鋳造物の製造
コーティング組成物SZ2を使用して製造される、内壁上に耐火性コーティングを有する実施例2に従って製造される本発明の遠心鋳造型を使用して、遠心鋳造プロセスを使用して、構造化表面を有する鋳造物、特にパイプを製造した。さらなる操作ステップにおいてこの鋳造物を使用し、シリンダースリーブを製造した。パイプの製造のために、従来の様式で、その内壁がコーティングされた回転遠心鋳造型中に鋳造金属を導入した。回転遠心鋳造型中での鋳造物の凝固の後、得られたパイプを大部分の耐火性コーティングと一緒に遠心鋳造型から引き離した。
【0175】
したがって、鋳造物は、その全体において、上記及び特許請求の範囲において定義された遠心鋳造プロセスにおける鋳造物の製造のための本発明の方法に従って、実施例2及び3に従って製造された。
【0176】
製造された鋳造物の研究によると、コーティング組成物SZ2に基づく耐火性コーティングの除去後、切込みを有する有利な構造及び有利な深さを有するパイプ上でポジ構造が製造されたことが示された。パイプ上で製造された構造化表面(ポジ構造)は、耐火性コーティングのネガ構造に対して相補的である。
【0177】
構造化表面を有する鋳造物の上記の製造を一連の試験において35回繰り返した。鋳造物の引き離しの間に遠心鋳造型中に残る耐火性コーティングのそれぞれの分率は非常に低く、例えば圧縮空気を遠心鋳造型に吹き込むことによって、又は刷毛を用いて容易に除去された。ごく少量のダストがこの手順で生じるが、吸引によって容易に除去された。
【0178】
それ自体既知であり、且つ切込みを有する構造化表面を爆破するために適切である爆破剤を使用して製造されたパイプの爆破後、及びその後、パイプを切片へと切断した後、一連の試験において、極めて少量の耐火性コーティングのみが切片の構造化表面上に残った。測定によって、耐火性コーティングの粒子が切片の表面の約6~8面積%のみ、まだ検出可能であることが示された。上記測定値を確認するために、反射光学顕微鏡を使用して、明るい面積(耐火性コーティングの残渣によって占有されているもの)及び暗い(すなわち、クリーニングされた)鋳造表面の間の比較によって、切片の構造化表面を調査した。
【0179】
それらが鋳造物に強く接着しなかったため、爆破後に残った(切片の表面上の)耐火性コーティングの量は、その後の仕上げステップにおいて容易に完全に除去することができた。
【0180】
一連の試験において製造された全ての鋳造物の硬度のみならず、微細構造性質も仕様に従った。