(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-30
(45)【発行日】2023-06-07
(54)【発明の名称】エアバッグ用基布及びそれを含むエアバッグ
(51)【国際特許分類】
B60R 21/235 20060101AFI20230531BHJP
B60R 21/232 20110101ALI20230531BHJP
B60R 21/207 20060101ALI20230531BHJP
B60R 21/36 20110101ALI20230531BHJP
B32B 5/02 20060101ALI20230531BHJP
D03D 1/02 20060101ALI20230531BHJP
【FI】
B60R21/235
B60R21/232
B60R21/207
B60R21/36
B32B5/02 Z
D03D1/02
(21)【出願番号】P 2021576200
(86)(22)【出願日】2021-02-05
(86)【国際出願番号】 JP2021004432
(87)【国際公開番号】W WO2021157725
(87)【国際公開日】2021-08-12
【審査請求日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】P 2020019526
(32)【優先日】2020-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祐介
(72)【発明者】
【氏名】伊東 己行
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-150754(JP,A)
【文献】国際公開第2019/065880(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/167820(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0298542(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16-21/33
B32B 5/02
D03D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
織物の少なくとも片面が、接着層を有する多層フィルムで被覆されているエアバッグ用基布であ
って、該基布の滑脱抵抗の経緯の平均値が350N/2.5cm以上で
あり、かつ、該基布の300kPaの高圧通気度が1.0L/cm
2
/min以下である、エアバッグ用基布。
【請求項2】
織物の少なくとも片面が、接着層を有する多層フィルムで被覆されているエアバッグ用基布であ
って、該基布の滑脱抵抗の経緯の平均値が350N/2.5cm以上で
あり、かつ、該エアバッグ用基布を80℃、95%の高温高湿熱条件下、400時間処理した後のスクラブが600回以上である該基布の300kPaの高圧通気度が1.0L/cm
2
/min以下である、エアバッグ用基布。
【請求項3】
織物の少なくとも片面が、接着層を有する多層フィルムで被覆されているエアバッグ用基布であ
って、該基布の滑脱抵抗の経緯の平均値が350N/2.5cm以上で
あり、かつ、該エアバッグ用基布のミシン針を通過させたときの静的通気度の値が0.30L/dm
2
/min以下である、エアバッグ用基布。
【請求項4】
織物の少なくとも片面が、接着層を有する多層フィルムで被覆されているエアバッグ用基布であ
って、該基布の滑脱抵抗の経緯の平均値が350N/2.5cm以上で
あり、かつ、該多層フィルムの目付が5~30g/m
2
である、エアバッグ用基布。
【請求項5】
前記エアバッグ用基布の屈曲部厚みと2枚重ね厚みとの比(屈曲部厚み/2枚重ね厚み)が2.0以下である、請求項1
~4のいずれか1項に記載のエアバッグ用基布。
【請求項6】
前記エアバッグ用基布のカバーファクターが1800以上2400以下である、請求項1~
4のいずれか1項に記載のエアバッグ用基布。
【請求項7】
前記エアバッグ用基布の多層フィルムが被覆されている面において、露出している経糸をその露出部分の経糸方向中央で切断した断面、又は露出している緯糸をその露出部分の緯糸方向中央で切断した断面をSEMにて観察し、経糸又は緯糸の幅方向中央の糸底部から多層フィルム表面までの距離をA、経糸又は緯糸の幅方向端部における多層フィルム表面から幅方向中央の多層フィルム表面高さまでの距離をBとしたとき、基布断面厚み比B/Aが0.2以上0.6以下である、請求項1~
4のいずれか1項に記載のエアバッグ用基布。
【請求項8】
前記多層フィルムの接着層がポリアミド系樹脂を含む、請求項1~
4のいずれか1項に記載のエアバッグ用基布。
【請求項9】
前記ポリアミド系樹脂が共重合ポリアミドである、請求項
8に記載のエアバッグ用基布。
【請求項10】
前記ポリアミド系樹脂の融点が100~160℃である、請求項
8に記載のエアバッグ用基布。
【請求項11】
前記ポリアミド系樹脂のガラス転移温度が0~80℃である、請求項
8に記載のエアバッグ用基布。
【請求項12】
請求項1~
4のいずれか1項に記載のエアバッグ用基布を含むエアバッグ。
【請求項13】
請求項1~
4のいずれか1項に記載のエアバッグ用基布を含むサイドカーテンエアバッグ。
【請求項14】
請求項1~
4のいずれか1項に記載のエアバッグ用基布を含む歩行者エアバッグ。
【請求項15】
請求項1~
4のいずれか1項に記載のエアバッグ用基布を含むファーサイドエアバッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの衝突事故における人体への衝撃緩和のためのエアバッグ装置に用いるエアバッグクッションを構成するエアバッグ用基布に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車など乗り物の衝突事故における人体への衝撃緩和のための装置として、乗り物へのエアバッグ装置の装着が進んできている。衝突の際、ガスにより膨張し、人体の衝撃を吸収緩和するエアバッグ装置として、運転席用および助手席用エアバッグ装置に加えて、カーテンエアバッグやサイドエアバッグ、ニーエアバッグ、リアエアバッグなどの車両中へのエアバッグ装置の装着が、乗員保護のために実用化されてきている。さらには、歩行者保護のために、車両の客室の外側に膨張するようなエアバッグクッションで構成されるエアバッグ装置や自動車シートの設置側とは反対側(ファーサイド)への側面衝突時に、衝突側とは反対方向に着座した乗員が衝突側に移動するのを制限するようなエアバッグクッションで構成されるファーサイドエアバッグ装置などが提案されてきている。
【0003】
これらのエアバッグ装置のエアバッグクッションは、平常時は小さく折り畳まれて収納されている。事故の衝撃をセンサーが検出し、エアバッグクッションが展開膨張する際は、インフレータで発生したガスによって折り畳みが押し拡げられながら、収納箇所のカバー部分を押し破ってエアバッグクッションが飛び出し、充分に膨らんだところで人体を受け止めることになる。
【0004】
近年、エアバッグ装置は広範な衝突条件に対応できるように、エアバッグクッションのサイズが大きくなってきており、収納サイズのコンパクト化や軽量化が求められている。
また、展開ガスの漏れを抑制して、長時間内圧を維持することにより、人体拘束のタイミングを幅広くとって安全性を高める要求も高まっている。ベントホールでガス圧を制御する運転席用や助手席用などのエアバッグ以外に、ベントホールを設けないカーテンエアバッグ、歩行者エアバッグ、ファーサイドエアバッグなどでは、特に展開ガスの漏れを抑制することが重要となる。エアバッグ用基布においては、高圧展開での基布目開きや縫製部からのガス漏れを抑制することが課題となっている。
【0005】
また、近年、エアバッグのガス漏れの抑制を実現するために、織物にシリコーンをコーティングしたシリコーンコーティング基布が一般的に使用されている。しかし、シリコーンをコーティングした基布は塗工むらや、基布の目開きによるシリコーンの破断等により高圧下での内圧保持性が不十分であった。また、この問題を解決するために、多くのシリコーンをコーティングした場合、基布の目付や厚みが増してエアバッグとしての重量や収納性が悪化するという問題がある。
【0006】
他方、以下の特許文献1には、フィルムをラミネートしたエアバッグ用基布が提案されている。連続体であるフィルムが織物を被覆するため、高圧での内圧保持性に優れるが、シリコーンコーティング基布と比較して、フィルム素材自体やラミネートの特性から基布が硬く、エアバッグクッションの収納性が悪いという問題がある。また、柔軟化のためフィルムを薄膜化すると、接着性や耐もみ性が悪化したり、熱ラミネート時の熱や圧力に耐えられずピンホールが生じて、高圧での内圧保持性が悪化する可能性がある。
さらに、シリコーンコーティング基布やフィルムラミネート基布に問わず、エアバッグの展開時には縫製部に高圧が掛かり、縫製糸に基布が引っ張られて目開きが生じ、ガス漏れにより内圧保持性が悪化するという課題があった。また、フィルムをラミネートした基布は縫い針の挿入によりフィルムへの応力が掛かりやすく、フィルムの一部が破壊されて剥がれ、ガス漏れが多くなる傾向にあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記した背景技術の水準に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、柔軟かつ軽量であって収納性良く、耐熱・耐湿熱後での高圧展開性が良好であることを両立したエアバッグクッションを構成するエアバッグ用基布を提供すること、さらには、縫製後のエアバッグの内圧保持性に優れたエアバッグクッションを構成するエアバッグ用基布を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決すべく本発明者らは鋭意研究し実験を重ねた結果、以下の特徴を有するエアバッグ用基布であれば該課題を解決しうることを予想外に見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0010】
すなわち、本発明は以下の通りのものである。
[1]織物の少なくとも片面が、接着層を有する多層フィルムで被覆されているエアバッグ用基布であり、該基布の滑脱抵抗の経緯の平均値が350N/2.5cm以上である、エアバッグ用基布。
[2]前記エアバッグ用基布の屈曲部厚みと2枚重ね厚みとの比(屈曲部厚み/2枚重ね厚み)が2.0以下である、前記[1]に記載のエアバッグ用基布。
[3]前記エアバッグ用基布の300kPaの高圧通気度が1.0L/cm2/min以下である、前記[1]又は[2]に記載のエアバッグ用基布。
[4]前記エアバッグ用基布を80℃、95%の高温高湿熱条件下、400時間処理した後のスクラブが600回以上である、前記[1]~[3]のいずれかに記載のエアバッグ用基布。
[5]前記エアバッグ用基布のカバーファクターが1800以上2400以下である、前記[1]~[4]のいずれかに記載のエアバッグ用基布。
[6]前記エアバッグ用基布のミシン針を通過させたときの静的通気度の値が0.30L/dm2/min以下である、前記[1]~[5]のいずれかに記載のエアバッグ用基布。
[7]前記エアバッグ用基布の多層フィルムが被覆されている面において、露出している経糸をその露出部分の経糸方向中央で切断した断面、又は露出している緯糸をその露出部分の緯糸方向中央で切断した断面をSEMにて観察し、経糸又は緯糸の幅方向中央の糸底部から多層フィルム表面までの距離をA、経糸又は緯糸の幅方向端部における多層フィルム表面から幅方向中央の多層フィルム表面高さまでの距離をBとしたとき、基布断面厚み比B/Aが0.2以上0.6以下である、前記[1]~[6]のいずれかに記載のエアバッグ用基布。
[8]前記多層フィルムの目付が5~30g/m2である、前記[1]~[7]のいずれかに記載のエアバッグ用基布。
[9]前記多層フィルムの接着層が、ポリアミド系樹脂を含む、前記[1]~[8]のいずれかに記載のエアバッグ用基布。
[10]前記ポリアミド系樹脂が共重合ポリアミドである、前記[9]に記載のエアバッグ用基布。
[11]前記ポリアミド系樹脂の融点が100~160℃である、前記[9]又は[10]に記載のエアバッグ用基布。
[12]前記ポリアミド系樹脂のガラス転移温度が0~80℃である、前記[9]又は[10]に記載のエアバッグ用基布。
[13]前記[1]~[12]のいずれかに記載のエアバッグ用基布を含むエアバッグ。
[14]前記[1]~[12]のいずれかに記載のエアバッグ用基布を含むサイドカーテンエアバッグ。
[15]前記[1]~[12]のいずれかに記載のエアバッグ用基布を含む歩行者エアバッグ。
[16]前記[1]~[12]のいずれかに記載のエアバッグ用基布を含むファーサイドエアバッグ。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るエアバッグ用基布でエアバッグクッションを作製すれば、高圧がかかった状態での基布及び縫製部の目開きが抑えられ、気密性及び耐圧性に優れたエアバッグクッションとなり、また、収納性に優れて軽量なエアバッグクッションとなり、とりわけ内圧保持性や収納性が要求されるサイドカーテンエアバッグ、歩行者エアバッグ、ファーサイドエアバッグの用途にも適したエアバッグ用基布となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】ミシン針刺し後の静的通気度を評価する際の試料準備の図である。
【
図3】SEMによる基布断面厚み比を評価する際の基布切断位置を示した図である。
【
図4】SEMによる基布断面厚み比を評価する際に切断した基布の断面図である。
【
図5】実施例で用いたサイドカーテンエアバッグの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明するが、本発明は、これらの実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨及び均等の範囲を逸脱しない範囲で任意に変更可能である。
【0014】
本実施形態のエアバッグ用基布は、織物の少なくとも片面に多層フィルムが被覆されているエアバッグ用基布であり、該基布の滑脱抵抗の経緯の平均値が350N/2.5cm以上であることを特徴とする。
【0015】
エアバッグ用基布を構成する繊維の総繊度は200dtex~600dtexが好ましく、より好ましくは300dtex~500dtexである。200dtex以上の繊度であれば、基布強力が不足するようなことがなく、他方、600dtex以下の繊度であれば、展開速度が遅くなるようなことがなくなる。また、総繊度が低いほど、基布の硬さや目付を低く抑えることができる。
【0016】
エアバッグ用基布を構成する繊維の単糸繊度は2.0dtex~7.0dtexが好ましく、より好ましくは2.0~4.0dtexである。2.0dtex以上であれば、縫製した場合に縫い針によるフィラメントの損傷となるようなことが無く、縫製部(膨張部と非膨張部の境界部)の強力が低下したり、展開時に破壊が起こることがなく、他方、7.0dtex以下であれば通気量が大きくなり展開速度が遅くなるようなことがない。また、単糸繊度が小さいほど基布の硬さを低く抑えることができる。さらに単糸繊度が小さいほど、織物のクリンプが低減され、表面が平坦となり、フィルムとの接着性が向上する。また、織物を平坦化させるために扁平状、三角形や五角形などの多角形状などの断面形状を有した単糸を用いてもよい。
【0017】
エアバッグ用基布のカバーファクター(CF)は機械物性や内圧保持性と硬さの両立の観点から1800~2400が好適であり、より好ましくは1900~2300であり、さらに好ましくは2200以下である。カバーファクターが1800以上であるとエアバッグに必要な基布強力や気密性を得ることができる。他方、カバーファクターが2400以下で小さいほど基布が柔らかくなる。また、カバーファクターが小さいほど基布目付が軽くなるので、2400以下が好ましい。尚、カバーファクター(CF)は下式で表される。
CF=√(d)×(2×W)
{式中、dは構成糸の経緯平均の総繊度(dtex)であり、Wは経緯平均の織密度(本/2.54cm)である。}
尚、エアバッグ用基布のカバーファクターとは、基布を構成する織物のカバーファクターのことである。
【0018】
本実施形態のエアバッグ用基布は、織物を多層フィルムで被覆されたエアバッグ用基布である。フィルムがラミネート加工で被覆されることが好ましい。
織物を被覆する多層フィルムは、少なくとも二つの層より構成され、その内、織物と接着する層を「接着層」と言い、エアバッグ用基布のフィルム面で最表面に露出する層を「外層」と言う。
【0019】
多層フィルムは、接着層と外層とが積層した接着層/外層の2層構成であってもよいし、接着層/中間層/外層の3層構成、接着層/Glue層/中間層/Glue層/外層の5層構成であってもよい。また、上記以外の他の層をさらに含んでいてもよい。以下、多層フィルムについて説明する。
【0020】
(接着層)
接着層は熱ラミネート加工時に加熱ロールからの熱を受けて溶融、軟化し、織物の表面に接着する層である。接着層はブロッキング性、接着性、柔軟性の観点から、ガラス転移温度が0~80℃であり、融点が100~160℃の樹脂(本明細書において、「樹脂A」と称する)を含むことが好ましい。上記接着層は、上記樹脂A以外に、他の樹脂(本明細書において、「樹脂B」と称する)を含んでいてもよい。上記樹脂A及び上記樹脂Bは、それぞれ1種であってもよいし、複数種であってもよい。上記接着層は、樹脂Aのみから構成されていてもよいし、さらに上記樹脂B、後述の添加剤を含んでいてもよい。
上記樹脂Aのガラス転移温度は、0~80℃であることが好ましく、より好ましくは10~70℃、さらに好ましくは20~60℃である。ガラス転移温度が0℃以上では、フィルムの耐ブロッキング性が一層抑制される。また、湿熱環境でのフィルムと織物との接着低下を抑え、エアバッグ用基布の耐スクラブ性の観点でも好ましい。さらに、折り畳みによるセット性が良く、反発が少ないフィルム及びエアバッグ用基布となる。他方、ガラス転移温度を80℃以内にすることでエアバッグ用基布の柔軟性に優れる。尚、上記ガラス転移温度は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
樹脂Aが複数種である場合、各樹脂Aのガラス転移温度は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0021】
上記樹脂Aの融点は、100~160℃であることが好ましく、より好ましくは110~150℃、さらに好ましくは120~140℃である。融点を100℃以上にすることで高温の使用環境下でも基布との接着強度が維持できると共に、ラミネート加工時の温度、圧力、時間等の条件の範囲(プロセスウィンドウとも言う)を広くすることができ、品質の安定した多層フィルムが得られる。一方、160℃以下にすることで、ラミネート加工時に必要な温度が高くなり過ぎず、織物やフィルムに対する熱によるダメージを抑制することができる。
尚、上記融点は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0022】
樹脂Aが複数種である場合、樹脂Aを構成する各樹脂の融点は同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、樹脂Aが複数種含まれ、複数の融解ピークがある場合、樹脂Aの高温側の融解ピーク温度が、100~160℃であることが好ましく、より好ましくは110~150℃、さらに好ましくは120~140℃である。
【0023】
上記樹脂Aとしては、使用環境での温湿度変化に対し、柔軟性、接着性などの特性変化が小さい点で、ポリアミド系樹脂が好ましい。中でも上記ポリアミド系樹脂としては、共重合ポリアミド(a-1)、ダイマー酸系ポリアミド(a-2)、熱可塑性ポリアミドエラストマー(a-3)が好ましく、柔軟性、接着性、高圧での内圧保持性、コストの観点から、共重合ポリアミド(a-1)がより好ましい。
上記共重合ポリアミド(a-1)としては、脂肪族系ポリアミドを構成するモノマー成分として知られるモノマー成分(例えば、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド11、ポリアミド12を構成するモノマー成分)を2種以上用いて共重合した共重合ポリアミドが挙げられ、ポリアミド6/66、ポリアミド6/12、ポリアミド6/11、ポリアミド6/66/11等が挙げられる。
上記ダイマー酸系ポリアミド(a-2)としては、天然植物油の脂肪酸(炭素数18の不飽和脂肪酸(例えば、オレイン酸、リノール酸等))を2量化した原料を用いたものが挙げられる。
上記熱可塑性ポリアミドエラストマー(a-3)としては、ソフトセグメント(非晶相)にポリエーテル、ハードセグメント(結晶相)にポリアミド成分を含む熱可塑性ポリアミドエラストマー(ダイマー酸系熱可塑性ポリアミドエラストマーも含む)が挙げられる。
中でも、柔軟性及び接着性、高圧での内圧保持性に特に優れる観点から、ポリアミド6/12が好ましい。
上記接着層に用いられるポリアミド樹脂の粘度数は50~200ml/g、より好ましくは80~180ml/g、更に好ましくは100~150ml/gである。粘度数が50ml/g以上あれば、溶融した樹脂が織物に浸透し過ぎてエアバッグ用基布が硬くなりすぎることがない。他方、粘度数が200ml/g以下であれば、接着層が織物表層の単糸内に浸透して、アンカー効果により十分な接着性を得ることができる。尚、前記の粘度数はISO307に準じて求められる値であり、96%硫酸水溶液にポリアミド系樹脂を0.5質量%溶解した時の粘度数である。
【0024】
上記接着層は、上記樹脂A以外に上記樹脂Bを含んでもよい。この場合に用いる樹脂Bは、好ましくは酸変性ポリオレフィン、アイオノマー、熱可塑性ポリアミドエラストマー等が挙げられる。低温環境下での柔軟性、接着性の観点より、ガラス転移温度が40℃以下が好ましく、より好ましくは30℃以下、更に好ましく20℃以下である。また、融点は80~160℃の範囲であることが好ましい。
また、上記接着層(100質量%)中の上記樹脂Bの質量割合としては、接着性の観点より、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。
【0025】
上記接着層は、アンチブロッキング剤、滑剤、結晶核剤、難燃剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤、充填剤等の各種添加剤を、接着性等の実用特性を損なわない範囲で適宜含んでいてよい。中でも、接着層の耐ブロッキング性が一層向上する観点から、アンチブロッキング剤、結晶核剤、及び/又は滑剤を含むことが好ましく、アンチブロッキング剤及び/又は結晶核剤を含むことがより好ましく、アンチブロッキング剤及び結晶核剤を含むことがさらに好ましい。
上記アンチブロッキング剤としては、架橋ポリスチレン、架橋アクリル(PMMA)樹脂、フッ素(PTFE)粒子等の有機系粒子やシリカ系粒子、カオリン、炭酸カルシウム等の無機系粒子等が挙げられる。
上記結晶核剤としては、タルク、アルミナ、カオリン、高融点ポリアミド(例えば、融点が160℃超のポリアミド)等が挙げられる。
上記滑剤としては、脂肪族系アマイド、金属石鹸等が挙げられる。
【0026】
上記接着層100質量%に対する上記樹脂A(例えば、共重合ポリアミド等)の質量割合は、接着性と耐ブロッキング性の観点から、10質量%以上であることが好ましく、より好ましくは20質量%~100質量%、さらに好ましくは30質量%~100質量%である。
上記接着層(100質量%)中の上記添加剤の質量割合としては、接着性と耐ブロッキング性との観点から、30質量%以下であることが好ましく、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0027】
(外層)
前記外層には、熱ラミネート加工時に溶融することでロールへの貼りつき防止、ピンホールの防止の観点より、接着層よりも高い融点を有する樹脂で構成する必要がある。
上記外層に用いられる樹脂の融点は、上記樹脂Aの融点よりも20℃以上高いことが好ましく、25℃以上高いことがより好ましく、30℃以上高いことがさらに好ましい。上記外層に用いられる上記樹脂の融点は、織物とのラミネート工程で使用する加熱ロールへの融着(貼り付き)のしやすさにより定められ、樹脂Aの融点よりも20℃以上高い融点の樹脂を用いることで熱ロールへの融着が起こり難く、安定したラミネートが達成できる。
尚、接着層中に樹脂Aが複数種含まれる場合、及び/又は外層中に樹脂が複数種含まれる場合、上記融点とは層中に含まれる複数種の樹脂に帰属する融解ピーク温度の内、最も高温側に現れる融解ピーク温度が加工融解ピーク温度である。
また、前記外層は特に織物に積層した時に最外層になるため、外層の柔軟性がラミ基布の柔軟性に影響を及ぼす。よって、柔軟性、折り畳まれた時に発生する応力への耐性、気密性、耐ミシン針刺し性、強度、難燃性、滑り性等の特性に優れる外層が得られる観点から、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂が好ましい。
上記ポリアミド系樹脂としては、上記接着層に含まれる樹脂Aとして例示したポリアミド系樹脂(a-1、a-2、a-3)が挙げられ、単独で用いてもよいし、複数種をブレンドして用いてもよい。
上記ポリエステル系樹脂としては、熱可塑性ポリエステルエラストマーが好ましく、例えばソフトセグメントにポリエーテル成分を用いたタイプ(ポリエーテル-ポリエステル型)、ソフトセグメントにポリエステル成分を用いたタイプ(ポリエステル-ポリエステル型)等が挙げられる。
【0028】
(中間層)
上記中間層としては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、酸変性ポリオレフィン系樹脂、ポリオレフィン共重合樹脂、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、酸変性ポリオレフィン系エラストマー等を単独又は複数をブレンドした組成物からなる層が挙げられ、柔軟性の観点より、ポリオレフィン共重合樹脂又は/及びポリオレフィン系熱可塑性エラストマーを含むことが好ましい。
【0029】
(Glue層)
上記Glue層は、多層フィルムの各層を貼り合わせるための層であり、例えば、酸変性ポリエチレン、酸変性ポリプロピレン等の極性のある官能基を有する酸変性ポリオレフィン系樹脂又は/及びポリオレフィン系熱可塑性エラストマーからなる層等が挙げられ、使用される用途での耐熱性等に対する要求を勘案し、選定することが望ましい。
上記Glue層は、1種の樹脂のみからなる層であってもよいし、複数種の樹脂を含む層であってもよい。
【0030】
(多層フィルム)
多層フィルムは、少なくとも2層以上のフィルムである。多層フィルムの柔軟性がエアバッグの収納性に影響を及ぼし、柔軟性が高いフィルムをラミネートした基布ではエアバッグ収納時のコンパクト性において優れた性能が得られる。
さらに、基布が伸縮変形をする時に発生するフィルムの抗力は、フィルム厚みに応じて大きくなり、それが剥離までの回数に影響を及ぼしていることが推測される。したがって、多層フィルムの厚さは好ましくは5~30μmであり、より好ましくは5~25μm、更に好ましくは5~20μmである。これらの範囲は、強度と柔軟性のバランスにより定められ、厚さ5μm以上ではフィルムの機械特性が十分であり、30μm以下では柔軟性が良好となる。
【0031】
エアバッグ用基布にラミネートされている多層フィルムの目付は5~30g/m2であることが好ましく、より好ましくは5~25g/m2であり、更に好ましくは5~20g/m2であり、特に好ましくは5~15g/m2である。フィルムの目付が5g/m2以上であれば、織物との良好な接着性や高い内圧保持性を得ることができる。他方、フィルムの目付が30g/m2以下であれば、基布が硬くなりすぎることがない。
【0032】
織物にフィルムがラミネートで被覆されていることが好ましいが、織物をフィルムで被覆する前に、織物の表面を平坦化することが重要である。表面が平坦な織物に対してフィルムを接着加工することで、フィルムと織物との接触面積が増え、熱ラミネート時に過剰な熱や圧力を掛けずに十分な接着性を得られるとともに、ピンホールの発生を抑制することができる。ピンホールの発生を抑制できるため、薄いフィルムの適用が容易となり、柔軟性に優れるエアバッグ用基布を得ることができる。また、織物が平坦なことで、熱ラミネート時にフィルムに対して均一に熱と圧力を掛けることができるため、フィルムの樹脂成分が織糸間など、織物内部に深く浸透して充填されることがなく、柔軟、かつ、耐もみ性の良いエアバッグ用基布を得ることができる。さらには、被覆されたフィルムの厚み均一性により、縫い針によるフィルムへの応力が分散されて、フィルムの局所的な破壊や剥離が低減されるとともに、縫製部に応力が掛かった際の縫製目開きも抑制されて、縫製で構成されるエアバッグクッションの内圧保持性が高めることができる。平坦化する方法は限定しないが、カレンダーによる処理が簡便性の点で好ましい。カレンダー時の温度は100℃以上、220℃以下が好ましい。100℃以上あれば、カレンダー後の織物構造を維持させることができ、220℃以下であれば織物が熱劣化することはない。
カレンダー時の線圧は0.5~15kN/cmが好ましい。圧力が0.5kN/cm以上であれば、カレンダー後の織物構造を平坦にして、フィルムとの接着性を向上させることが出来る。他方、カレンダー圧力が15kN/cm以下であれば、織物がペーパーライクとなり硬くなることがない。
【0033】
カレンダーは織物の片側、すなわちラミネートする側に施すのが好ましい。カレンダーを織物の片面に施すことで、フィルムとの接着性に必要な平坦性は維持しつつも、織物がペーパーライクとなり、硬くなることを抑制できる。
織物は、ラミネート加工の熱で平坦化した表面が、加工前の表面状態にほぼ回復することがある。しかし、ラミネート積層されたフィルム層は、織物表面の凹凸なりにほぼ均一な被膜厚みを保って被覆されている。
【0034】
ラミネート加工法は、加熱ロールを用い、Roll to Rollで連続的にラミネートする熱ラミネート法、減圧して単発的にラミネートする真空ラミネート法等が挙げられ、上記多層フィルムの上記接着層と、上記合成繊維織物(基布)とを、例えば、加熱温度が120~160℃の温度範囲で実施することが好ましい。また、ラミネート時の線圧は0.01~1.5kN/cmが好ましい。0.01kN/cm以上あればフィルムと基布との接着力が発現するようになり、他方、1.5kN/cm以下であれば、ラミネート時にフィルムにピンホール発生することを抑えることができる。
織物をカレンダー処理した直後にラミネート加工することが好ましく、それによって、織糸間などにフィルムが織物内に浸透して、基布が硬くなることを低減するため、折りたたみやすくなる。また、織物を被覆するフィルムの厚みが局所的に薄くなることが回避できるため、針刺しなどで局所応力を受けてもフィルム破れで剥離することなどが回避できる。
織物へのカレンダー処理とラミネート加工は前記の範囲で適宜実施して構わないが、ラミネート加工ではフィルムの接着層が溶融、軟化して織物との十分な接着性を得るためにカレンダー処理と比べて高温で加工することが好ましく、フィルムのピンホールを抑制するために、線圧はカレンダー処理と比べて低圧で加工することが好ましい。
【0035】
本実施形態のエアバッグ用基布の目付は140g/m2以上240g/m2以下が好ましい。140g/m2以上あれば基布の機械的強力が不足することが起こりにくく、240g/m2以下であればエアバッグの重量が重くなりすぎることがない。
【0036】
本実施形態のエアバッグ用基布の滑脱抵抗の経緯平均値は350N/2.5cm以上であり、好ましくは、400N/2.5cm以上1000N/2.5cm以下であり、より好ましくは450N/2.5cm以上950N以下/2.5cmである。基布の滑脱抵抗の経緯平均値は350N/2.5cm以上であれば、基布に応力が印加された際の目開き剥離に抵抗できるため、高圧下の低通気に寄与する。前記多層フィルムと織物とで化学的に設計された接着力と、フィルムが織物表面で実質的に接着面積が多くなるような加工方法によって、エアバッグ用基布の滑脱抵抗を調整することができる。接着力を高めるには、多層フィルムの組成設計で共重合ポリアミドを選択し、織物をポリアミド繊維とすることが好ましい。また、フィルムと織物表面との接着面積を多くする加工方法として、織物にカレンダー加工を施して熱ラミネートすることも好ましい。
さらには、エアバッグ用基布の滑脱抵抗が大きければ、縫製したエアバッグが展開して、縫製糸に荷重が掛かった時の基布の目開きを低減することができ、エアバッグの内圧保持性の向上に大きく寄与する。
他方、滑脱抵抗の経緯平均値が1000N/2.5cm以下であれば、極端な目飛びやパッカリングの発生を抑えて、縫製することができる。
【0037】
本実施形態のエアバッグ用基布は高温や高湿下での過酷な環境下に長時間晒されたとしても、折り畳みによる曲げ、長時間の自動車の振動やエアバッグ展開時の擦れなどに耐える必要がある。このため、内圧保持性には耐スクラブ性(耐揉み性)が非常に重要である。耐スクラブ性を向上させるためには、フィルムと織物との接着性が良好なだけでなく、フィルム自体の柔軟性と、織物内部へのフィルムの局所的な染み込みによる膜厚の部分薄化無く均一であることにより、揉みの応力がフィルムと織物との界面に集中しないことが重要である。本実施形態のエアバッグ用基布の耐スクラブ回数は600ストローク(回)以上、好ましくは800ストローク以上、より好ましくは1000ストローク以上である。600ストローク(stroke)未満である場合にはフィルムが剥げる剥離現象問題が発生し、自動車への装着時に、外部力によって容易にフィルム面が剥げるか、またはフィルム面が高温高圧ガスなどによって容易に剥げることがある。これにより、エアバッグ展開時に内圧維持がよくできないため、車両衝突時に乗客を保護する性能に異常を招くこともある。
【0038】
本実施形態のエアバッグ用基布を2枚重ね合わせた時の厚みとエアバッグ用基布を折り曲げた時の屈曲部の厚みの比(屈曲部厚み/2枚重ね厚み)は2.0以下であり、好ましくは1.8以下であり、より好ましくは1.7以下である。エアバッグ用基布を2枚重ね合わせた時の厚みとエアバッグ用基布を折り曲げた時の屈曲部の厚みの比が2.0以下であると、エアバッグクッションを折り畳んだ時の体積を小さくすることができ、収納性に優れるエアバッグとなる。この厚み比は、柔軟な織物構成と、多層フィルムが軽量薄膜であること、多層フィルムの組成設計で柔軟であること、多層フィルムの張り合わせ加工において織糸間などにフィルムが織物内に浸透させず、基布が硬くなることを回避する方法とすることによる結果である。
【0039】
本実施形態のエアバッグ用基布の、糸を通していないミシン針を通過させて孔をあけたときの静的通気度は0.50L/dm2/min以下であり、好ましくは0.40L/dm2/min以下であり、さらに好ましくは0.30L/dm2/min以下である。針刺し後の静的通気度が0.50L/dm2/min以下であれば、エアバッグ展開時に縫製部からのガス漏れを抑制することができる。これは、多層フィルムが軽量薄膜であること、多層フィルムの組成設計で柔軟であること、多層フィルムの張り合わせ加工において、織物を被覆するフィルムの厚みが局所的に薄くなることが回避できるため、被覆されたフィルムの厚み均一性によって局所剥離が回避される結果である。
【0040】
本実施形態のエアバッグ用基布の、300kPaでの基布の通気度は1.0L/cm2/min以下であり、より好ましくは0.8L/cm2/min以下であり、さらに好ましくは0.7L/cm2/min以下である。300kPaでの基布の通気度が1.0L/cm2/min以下であれば、エアバッグ展開時の基布からの目開きによるガス漏れを抑制することができ、より高圧で展開するエアバッグクッションに有用である。これは、エアバッグ用基布の滑脱抵抗が高いことと耐スクラブ性が高いことによる結果である。被覆で目開きが抑制され、揉みによる局所剥がれが抑制されるという要素が、高圧負荷における被覆剥離通気を抑制している。
【0041】
本実施形態のエアバッグ用基布の経糸又は緯糸の幅方向のSEM断面観察において、経糸又は緯糸の幅方向中央の糸底部から多層フィルム表面までの距離をA、経糸又は緯糸の幅方向端部における多層フィルム表面から幅方向中央の多層フィルム表面高さまでの距離をB、としたときB/Aが0.20以上0.60以下であり、より好ましくは0.25以上0.55以下、さらに好ましくは0.30以上0.50以下である。B/Aが0.20以上であれば、フィルムが基布表面に沿って均一にラミネートされており、接着力や滑脱抵抗が高くなる。また、フィルムがクリンプの溝に局所的に浸透しないことで、柔軟な基布となる。B/Aは織物の構造上0.60が上限である。前記エアバッグ用基布の多層フィルムが被覆されている面において、露出している経糸をその露出部分の経糸方向中央で切断した断面、又は露出している緯糸をその露出部分の緯糸方向中央で切断した断面をSEMにて観察し、
尚、
図3に示すように、SEMで観察する糸が、多層フィルムが被覆された面側に露出している部分のうち、その糸方向中央を、B/Aを評価する際の基布切断位置とする。また、多層フィルム表面までの距離Aは、経糸又は緯糸の幅方向両端(
図4中、12、12’)の中央(13)における、糸の底部から樹脂層表面までの高さとする。経糸又は緯糸の幅方向端部における多層フィルム表面から幅方向中央の多層フィルム表面高さまでの距離Bは、
図4中の12又は12’における距離の平均とする。B/Aは、経糸又は緯糸のそれぞれについて5回測定した数値の平均値のうち、どちらかが上記範囲であればよい。なお、5回の測定箇所は、それぞれで少なくとも10cm以上離れた箇所を測定することが好ましい。測定する基布が小さく、10cm以上離れた測定箇所を確保できない場合は、異なる場所を5回測定した値の平均値とする。
【実施例】
【0042】
以下、本発明の実施例と比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
【0043】
(1)構成糸繊度
エアバッグ用基布から経緯を問わず取り出した糸の見かけ繊度をJIS L 1096:2010の附属書Hに従って5回計測し、その平均値を、構成糸の繊度(dtex)とした。
【0044】
(2)単糸数
エアバッグ用基布の断面を走査型電子顕微鏡(KEYENCE製VE-9800)にて観察し、10本の織糸のフィラメント数を数え、10本中、最も頻度の高いフィラメント数を、単糸数とした。
【0045】
(3)単糸繊度
構成糸繊度をフィラメント数で除して、単糸繊度(dtex)とした。
【0046】
(4)目付
エアバッグ用基布(多層フィルムを含む)、及び多層フィルムの目付をJIS L 1096:2010の8.3.2に準じて計測した単位面積当たりの質量から求めた。
【0047】
(5)織密度
JIS L1096:2010 8.6.1b)B法で附属書FAにより計測した。
【0048】
(6)カバーファクター(CF)
エアバッグ用基布のカバーファクター(CF)は下式:
CF=√(d)×(2×W)
{式中、dは構成糸の経緯平均の総繊度(dtex)であり、Wは経緯平均の織密度(本/2.54cm)である。}
で求めた。
【0049】
(7)滑脱抵抗
エアバッグ用基布を幅25mm、長さ200mmにカットしたサンプル片を使用した以外はASTM D6479に準じて、経緯方向でそれぞれ5回測定し、その10回の平均値を滑脱抵抗とした。
【0050】
(8)高温高湿熱処理後のスクラブ
エアバッグ用基布を80℃、95%の高温高湿条件にて400時間処理した。その後、スクラブテスター(井元製作所製)を用い、ISO5981に準じて試験を経緯ともにそれぞれ5回測定をし、その平均値を高温高湿熱処理後のスクラブとした。基布から積層体が剥離し始めた時の試験回数が1000回未満の場合は数値を記載し、1000回を超えても剥離が無い場合は1000と記載した。
【0051】
(9)エアバッグ用基布の2枚重ね厚みと屈曲部厚みの比
厚み計(尾崎製作所製 FFA-10)を用いてJISL1019に準じてエアバッグ用基布を2枚重ねた時の厚みを測定した。次に、エアバッグ用基布を幅5cm、長さ10cmにカットして、サンプル片を作成した。そのサンプル片のフィルム面又はシリコーン面が内側となるように長さ方向に1回折り、3cm×6cmの金属プレートの下にサンプル片の折り目部を挟み、金属プレートと合わせて合計10kgになるように30秒間おもりを乗せた。その後、同じ厚み計を用いて、
図1に示すように厚み計の測定子の中心線に、屈曲部がくるように測定子をセットし、1分間経過して安定した後の値を計測した。この屈曲部の厚みを基布2枚重ねの厚みで除した値を算出した。この測定を経緯方向でそれぞれ5回ずつ測定し、その平均値を基布2枚重ね厚みと屈曲部厚みの比とした。
【0052】
(10)300kPaでの高圧通気度
Capillary Flow Porometer CFP-1200AEX(Porous Metrials,Inc.製)を用い、エアバッグ用基布の多層フィルム面又はシリコーン面が加圧側になるようにセットし、ガス透過性試験モードで、300KPaでのエアの通気量を測定した。この測定を5回行い、平均値を300kPaでの高圧通気度とした。
【0053】
(11)ミシン針刺し後の静的通気度
セイコーミシン製LSC-8BL-1にオルガン針DPx17(#21)を取り付け、ミシン糸無しでピッチ50針/10cmとなるように直線に針孔を開け、
図2に示すような試料を準備した。針孔のラインが静的通気度測定機(東洋精機製Frazier Permeameter FP-2)の測定径の中心であり、かつエアバッグ用基布のフィルム面もしくはシリコーン面が加圧側になるようにセットして、ISO9237に準じて500Paでの通気度を5回測定し、平均値をミシン針刺し後の静的通気度とした。
【0054】
(12)基布断面厚み比(B/A)
図3に示すように、エアバッグ用基布の多層フィルムが被覆されている面において、露出している経糸をその露出部分の経糸方向中央で切断し、その基布断面を走査型電子顕微鏡(KEYENCE製VE-9800)により観測した。この時の基布断面の模式図が
図4である。経糸の幅方向両端(
図4中、12、12’)の中央(13)における、糸底部から多層フィルム表面までの距離をAとし、経糸の幅方向端部(12又は12’)における多層フィルム表面から幅方向中央の多層フィルム表面高さまでの距離をBとし、B/Aを測定した。結果は5回測定した数値の平均値とした。また、5回の測定箇所は、それぞれで少なくとも10cm以上離れた箇所を測定した。尚、経糸の幅方向両端(12又は12’)は、撮影したSEM画像において最も左側にある経糸断面の左側面の位置を12とし、最も右側にある経糸断面の右側面の位置を12’とした。
【0055】
(13)エアバッグの内圧保持性
図5に示す形状で容量24Lのサイドカーテンエアバッグを、縫製糸が1400dtex、運針数が5.0針/cmで4mm幅の2列本縫いで縫製した。
サイドカーテンエアバッグにはインナーチューブを挿入し、展開ガスをリア端のガス供給口からフロント膨張部とリア膨張部へ誘導するようにした。インナーチューブはポリアミド6・6繊維700dtex/105fによる経緯ともに38本/inch(2.54cm)の平織り布を用いた。この布をガス供給口が挿入できるような口径で筒状に縫製糸が1400dtex、運針数が5.0針/cmで4mm幅の2列本縫いで縫製した。インナーチューブの先端は開口であり、さらに、縫製部を上側として、リア膨張部のガス供給の切り欠き口を下側に向けて設けた。
上記サイドカーテンエアバッグの保護部中心部に圧力センサーを取り付けた。その後、畳むことなくカーテン状に保持ラックに設置し、2.0molストアードガスインフレーターをガス供給口にホースバンドで取り付け、展開させた。50msecから200msecまで経過したときの内圧保持率(200msec内圧/50msec時内圧×100)を以下の評価基準で判定した。
<評価基準>
内圧保持率80~100%:○
内圧保持率50~79%:△
内圧保持率0~49%:×
【0056】
(14)フィルム原料の融点
東洋精機製作所製プレス成形機「P2-30T-400」にて150μm厚さのシートを作製し、DSC(パーキングエルマー製「ダイアモンドDSC」)を用い、10℃/分の昇温速度で得られた融解ピーク温度を融点とした。尚、プレス成形条件は以下の条件に従ってサンプルを採取した。
【0057】
(15)フィルム原料のガラス転移温度
東洋精機製作所製プレス成形機「P2-30T-400」にて0.9mm厚さのシートを作製し、動的粘弾性測定機(アントンパール製「MCR301」)にて、以下の条件下、損失正接tanδを測定し、損失正接tanδのピーク温度をガラス転移温度とした。
・測定モード:トーション (測定アタッチメント:SRF10)
・サンプル:厚み=0.9mm 幅=10mm 測定スパン=38mm
・ノーマルフォース:-0.3N
・振り角:0.1%
・周波数:1Hz
・昇温速度:2℃/分
【0058】
[実施例1]
(多層フィルム)
フィルムは層構成(質量%)が「接着層(20%)/Glue層(10%)/中間層(50%)/Glue層(10%)/外層(10%)」よりなる4種5層の多層フィルムである。接着層には、CoPA1(商品名「Ube Nylon 7128B」(宇部興産製)共重合ポリアミド6/12 (Tg=47℃、Tm=128℃))を11質量%、m-PE(商品名「Admer NF587」(三井化学製)酸変性ポリエチレン (Tg=-24℃、Tm=121℃))を49質量%、結晶核剤「ミクロエースP-8」を含むマスターバッチ(ベース樹脂:CoPA1)を10質量%、アンチブロッキング剤「シルトンJC-70」を含むマスターバッチ(ベース樹脂:CoPA1)を30質量%採取し、ドライブレンドした原料を用いた。接着層(100質量%)に含まれるCoPA1は49質量%(ベース樹脂由来を含む)、結晶核剤は0.5質量%、アンチブロッキング剤は1.5質量%であった。中間層に、LLDPEとOBCをそれぞれ50質量%でドライブレンドした原料、Glue層はm-PE、外層にH-TPAEを用いて多層サーキュラーダイより押し出し、インフレーション法により、厚さ10μmの多層フィルムを得た。
繊度が470dtex、単糸数が136本のナイロン66原糸を用いて、ウォータージェット織機により、平織布を製織した後、精練、乾燥を施した。
(カレンダー、ラミネート)
ヒーターロールと樹脂ロールを使用して、温度135℃、線圧2.0kN/cmの条件で織物の片面にカレンダーによる平坦化処理を施した。
引続き、平坦化処理を施した織物側に前記多層フィルムを積層して、ラミネートにより接着した。この時のラミネート条件は以下の通りであった。
・温度:160℃
・ロール速度:15m/分
・線圧:0.5kN/cm
得られた基布の経緯の織密度49本/inchであり、多層フィルムの目付は10g/m2であった。その他の基布物性を以下の表1に示す。
【0059】
[実施例2]
基布の経緯の織密度が46本/inch、多層フィルムの目付が20g/m2であること以外は、実施例1と同様に基布を作製した。得られた基布物性を以下の表1に示す。
【0060】
[実施例3]
多層フィルムの目付が30g/m2であること以外は、実施例1と同様に基布を作製した。得られた基布物性を以下の表1に示す。
【0061】
[実施例4]
基布の経緯の織密度が54本/inchであること以外は実施例1と同様に基布を作製した。得られた基布物性を以下の表1に示す。
【0062】
[実施例5]
原糸の単糸数が72本、基布の経緯の織密度が46本/inch、多層フィルムの目付が20g/m2であること以外は、実施例1と同様に基布を作製した。得られた基布物性を以下の表1に示す。
【0063】
[実施例6]
原糸の繊度が350dtex、基布の経緯の織密度が58本/inch、多層フィルムの目付が20g/m2であること以外は、実施例1と同様に基布を作製した。得られた基布物性を以下の表1に示す。
【0064】
[実施例7]
原糸の繊度が350dtex、基布の経緯の織密度が60本/inch、多層フィルムの目付が30g/m2であること以外は、実施例1と同様に基布を作製した。得られた基布物性を以下の表1に示す。
【0065】
[実施例8]
織物のカレンダー時の線圧0.8kN/cm、基布の経緯の織密度が46本/inchであること以外は、実施例1と同様に基布を作製した。得られた基布物性を以下の表2に示す。
【0066】
[実施例9]
織物のカレンダー時の線圧5.0kN/cm、多層フィルムの目付が20g/m2であること以外は、実施例1と同様に基布を作製した。得られた基布物性を以下の表2に示す。
【0067】
[実施例10]
多層フィルムの目付が50g/m2であること以外は実施例1と同様に基布を作製した。得られた基布物性を以下の表2に示す。
【0068】
[実施例11]
織物のカレンダー時の線圧が10kN/cm、多層フィルムの目付が20g/m2であること以外は、実施例1と同様に基布を作製した。得られた基布物性を以下の表2に示す。
【0069】
[実施例12]
織物の両面が平坦化するように、温度135℃、線圧2.0kN/cm、15m/minの条件でカレンダーを織物の表と裏にそれぞれ一回ずつ処理したことと、多層フィルムの目付が30g/m2であること以外は、実施例1と同様に基布を作製した。得られた基布物性を以下の表2に示す。
【0070】
[実施例13]
接着層に、L-TPAE1(商品名「UBESTA XPA 9055F1」(宇部興産製)低融点熱可塑性ポリアミドエラストマー (Tg=-4℃、Tm=164℃))を60質量%、結晶核剤「ミクロエースP-8」を含むマスターバッチ(ベース樹脂:L-TPAE1)を10質量%、アンチブロッキング剤「シルトンJC-70」を含むマスターバッチ(ベース樹脂:L-TPAE1)を30質量%採取し、ドライブレンドした原料を用いた以外は、実施例2と同様に基布を作製した。尚、接着層(100質量%)に含まれるL-TPAE1は98質量%(ベース樹脂由来を含む)、結晶核剤は0.5質量%、アンチブロッキング剤は1.5質量%であった。得られた基布物性を以下の表2に示す。
【0071】
[実施例14]
接着層に、L-TPAE2(商品名「UBESTA XPA 9040F1」(宇部興産製)低融点熱可塑性ポリアミドエラストマー (Tg=-43℃、Tm=133℃))を60質量%、結晶核剤「ミクロエースP-8」を含むマスターバッチ(ベース樹脂:L-TPAE2)を10質量%、アンチブロッキング剤「シルトンJC-70」を含むマスターバッチ(ベース樹脂:L-TPAE2)を30質量%採取し、ドライブレンドした原料を用いた以外は、実施例2と同様に基布を作製した。尚、接着層(100質量%)に含まれるL-TPAE2は98質量%(ベース樹脂由来を含む)、結晶核剤は0.5質量%、アンチブロッキング剤は1.5質量%であった。得られた基布物性を以下の表2に示す。
【0072】
[比較例1]
織物にカレンダー処理による平坦化処理を実施せずに、基布の織密度が46本/inch、多層フィルムの目付が20g/m2であること以外は実施例1と同様に基布を作製した。得られた基布物性を以下の表3に示す。
得られた基布は織物と多層フィルムとの接着性が不十分であり、基布や縫製部からのガス漏れが大きく、エアバッグ展開時の内圧保持性が不十分であった。
【0073】
[比較例2]
織物にカレンダー処理による平坦化処理をせず、多層フィルムの目付が10g/m2、ラミネート時の線圧が1.8kN/cmであること以外は実施例1と同様に基布を作製した。得られた基布物性を以下の表3に示す。
比較例2ではラミネートによる線圧が高く、フィルムにピンホールが生じて、エアバッグ展開時の内圧保持性が不十分であった。
【0074】
[比較例3]
織物にカレンダー処理による平坦化処理をせず、多層フィルムの目付が45g/m2であること以外は実施例1と同様に基布を作製した。得られた基布物性を以下の表3に示す。
得られた基布は目付が重く、折り畳み性が悪く、エアバッグ展開時の内圧保持性も不十分であった。
【0075】
[比較例4]
織物のカレンダー時の線圧0.2kN/cm、基布の経緯の織密度が46本/inch、多層フィルムの目付が20g/m2であること以外は、実施例1と同様に基布を作製した。得られた基布物性を以下の表3に示す。
得られた基布はカレンダーの線圧が低く、織物の平坦化が不十分であり、良好なエアバッグの内圧保持性を得られなかった。
【0076】
[比較例5]
繊度が470dtex、単糸数が136本のナイロン66原糸を用いて、ウォータージェット織機により製織、精練、乾燥を施した。その後、シリコーンをナイフによりコーティングし、熱処理にてシリコーンを架橋させてコート基布を作製した。得られた基布の経緯の織密度46本/inchであり、シリコーン樹脂の目付は25g/m2であった。その他の基布物性を以下の表3に示す。
得られた基布は、基布や縫製部の目開きによりガス漏れが大きく、エアバッグ展開時の内圧保持性が不十分であった。
【0077】
[比較例6]
接着層に、m-PE(商品名「Admer NF587」(三井化学製)酸変性ポリエチレン (Tg=-24℃、Tm=121℃))を60質量%、結晶核剤「ミクロエースP-8」を含むマスターバッチ(ベース樹脂:m-PE)を10質量%、アンチブロッキング剤「シルトンJC-70」を含むマスターバッチ(ベース樹脂:m-PE)を30質量%採取し、ドライブレンドした原料を用いた以外は、実施例2と同様に基布を作製した。尚、接着層(100質量%)に含まれるm-PEは98質量%(ベース樹脂由来を含む)、結晶核剤は0.5質量%、アンチブロッキング剤は1.5質量%であった。得られた基布物性を以下の表3に示す。
【0078】
[実施例15]
実施例1と同様に作製した基布に、ミシンで針孔をあけて、静的通気度を測定した結果を以下の表4に示す。
【0079】
[実施例16]
実施例8と同様に作製した基布に、ミシンで針孔をあけて、静的通気度を測定した結果を以下の表4に示す。
【0080】
[比較例7]
比較例3と同様に作製基布に、ミシンで針孔をあけて、静的通気度を測定した結果を以下の表4に示す。
得られた基布はミシン針にて一部フィルムの剥離が生じ、通気度が悪化した。
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明に係るエアバッグ用基布でエアバッグクッションを作製すれば、高圧がかかった状態での基布及び縫製部の目開きが抑えられ、気密性及び耐圧性に優れたエアバッグクッションとなり、また、収納性に優れて軽量なエアバッグクッションとなり、とりわけ内圧保持性や収納性が要求されるサイドカーテンエアバッグ、歩行者エアバッグ、ファーサイドエアバッグの用途にも適したエアバッグ用基布となる。
【符号の説明】
【0086】
#1 ミシン針刺しライン
#2 針孔ライン中心
#3 測定径(通気評価機)
#4 測定子
#5 測定台座
#6 基布
#7 基布屈曲部
1 サイドカーテンエアバッグ
2 縫製部(袋境界部)
3 インフレータ取付部
4 インナーチューブ
5 開口部
6 接合部
7 保護エリアの中心部 多層フィルム
11 糸(経or緯)
12 糸幅方向の端部
12’ 糸幅方向の端部
13 糸幅方向の中央部
A 経糸又は緯糸の幅方向中央の糸底部から多層フィルム表面までの距離
B 経糸又は緯糸の幅方向端部における多層フィルム表面から幅方向中央の多層フィルム表面高さまでの距離