(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-30
(45)【発行日】2023-06-07
(54)【発明の名称】現役の鋼構造橋梁のUリブの内面隅肉の溶接方法及び溶接システム
(51)【国際特許分類】
E01D 22/00 20060101AFI20230531BHJP
B23K 9/00 20060101ALI20230531BHJP
B23K 9/02 20060101ALI20230531BHJP
【FI】
E01D22/00 B
B23K9/00 501B
B23K9/02 D
(21)【出願番号】P 2023006298
(22)【出願日】2023-01-19
【審査請求日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】202211288035.0
(32)【優先日】2022-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519055814
【氏名又は名称】武漢▲り▼▲しん▼自動化科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】WUHAN LIXINAUTO TECHNOLOGIES CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】No.12,Building 1,Block A,Building 6,Building Headquarters Contemporary International Garden Headquarters,East Lake New Technology Development Zone Wuhan,Hubei 430223 China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】陳 積里
(72)【発明者】
【氏名】何 林
(72)【発明者】
【氏名】王 成林
(72)【発明者】
【氏名】劉 倫艶
(72)【発明者】
【氏名】石 燦
(72)【発明者】
【氏名】呉 巧書
(72)【発明者】
【氏名】管 秀芳
(72)【発明者】
【氏名】曽 祥光
(72)【発明者】
【氏名】高 興
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109024223(CN,A)
【文献】特開2006-009412(JP,A)
【文献】特開2007-197962(JP,A)
【文献】特開2012-016710(JP,A)
【文献】特開2007-154493(JP,A)
【文献】国際公開第2021/015216(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 22/00
B23K 9/00
B23K 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
現役の鋼構造橋梁のUリブの内面隅肉の溶接方法であって、前記Uリブの首尾両端にはそれぞれ隔板が設けられ、前記溶接方法は、以下のステップS1からS5を含み、
S1:溶接施工セグメントを開設し、現役のUリブに溶接のための施工窓を開設し、前記施工窓の開設位置は、前記Uリブの溶接継目の両側にある2つの隔板の間にあり、かつ前記Uリブが溶接された板ユニットの突合せ溶接継目の両側にあり、隣接する2つの前記施工窓の間は1つの溶接施工セグメントとされ、
S2:前記施工窓の両側にある前記隔板を切断し、切断された隔板を取り外し、
S3:1つの溶接施工セグメント内において前記板ユニット及びUリブの切断境界を研磨し、前記溶接施工セグメントに含まれる前記Uリブの内部を清掃し、
S4:ステップS3における前記溶接施工セグメント内のUリブの内面隅肉を上向き溶接し、
S5:ステップS4における前記溶接施工セグメント内の前記Uリブを復元溶接する、ことを特徴とする溶接方法。
【請求項2】
前記施工窓の縦方向の長さは、前記2つの隔板間の垂直距離よりも50~100mm小さく、前記施工窓の上方と前記板ユニットの下面との間の距離は、80mmよりも大きく、前記ステップS1は、以下のステップS1-1及びS1-2を含み、
S1-1:前記施工窓のサイズ及び位置に基づきUリブに線を引き、
S1-2:ステップS1-1で引かれた線に沿って切断し、切断されたUリブ部分を取り外して施工窓を形成する、ことを特徴とする請求項1に記載の溶接方法。
【請求項3】
前記ステップS3において、前記板ユニット及びUリブを研磨することは、以下のステップS3-1からS3-3を含み、
S3-1:取り外された前記隔板と前記板ユニットとの間の切口及び取り外された前記隔板と前記Uリブとの間の切口を研磨し、
S3-2:前記板ユニットの突合せ溶接継目の余盛及び前記Uリブ内の金属バッキングプレートを研磨し、
S3-3:前記Uリブ内の溶接対象領域を研磨する、ことを特徴とする請求項1に記載の溶接方法。
【請求項4】
前記ステップS4は、以下のステップS4-1からS4-5を含み、
S4-1:前記Uリブの内面隅肉を上向き溶接するための上向き溶接車を昇降台に置き、前記昇降台は、前記溶接施工セグメントの一方の施工窓の下方の地面に設けられ、
S4-2:前記溶接施工セグメントの他方の施工窓に仮支持具を設け、
S4-3:前記昇降台を前記上向き溶接車が前記Uリブの内部に安定して入られる高さに上昇させ、
S4-4:前記上向き溶接車が前記Uリブの内部において前記Uリブの縦方向に沿って前記Uリブの内面隅肉を上向き溶接するように、前記上向き溶接車を起動し、
S4-5:溶接終了後、前記上向き溶接車を再度前記昇降台に移動させ、前記昇降台を初期の高さまで下降させ、前記上向き溶接車を取り出す、ことを特徴とする請求項1に記載の溶接方法。
【請求項5】
前記上向き溶接車には、溶接ガンが設けられ、前記溶接ガンは、溶接ガンノズルと、導電性ノズルとを備え、導電性ノズルは、溶接ガンノズルから延出した距離が5~15mmである、ことを特徴とする請求項4に記載の溶接方法。
【請求項6】
前記上向き溶接車の溶接速度及び前記溶接ガンのアーク揺動周波数は、下記の算式を満たし、
である場合の溶接継目幅を示し、wは揺動振り幅を示すことを特徴とする、請求項5に記載の溶接方法。
【請求項7】
前記ステップS5は、以下のステップS5-1及びS5-2を含み、
S5-1:前記Uリブ内の隔板をシール溶接し、前記施工窓を窓シール溶接し、
S5-2:窓シール溶接部位を後処理することを特徴とする請求項1に記載の溶接方法。
【請求項8】
前記ステップS5-1は、
橋梁のUリブ全体の内面隅肉への溶接操作が完了しないときに、1つの前記溶接施工セグメント内において一方の前記施工窓の両端にある隔板をシール溶接し、この施工窓を窓シール溶接し、他方の前記施工窓に対応するもう1本のUリブの他端に施工窓を新たに開設し、この他方の施工窓及び新たに開設された施工窓を次の溶接施工セグメントとすることをさらに含む、ことを特徴とする請求項7に記載の溶接方法。
【請求項9】
前記
溶接方法は、S6:前記施工窓の窓シール溶接部位の外面を塗布することをさらに含む、ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の
溶接方法。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか1項に記載の溶接方法を実行するための溶接システムであって、
昇降台と、仮支持具と、上向き溶接車とを備え、
前記昇降台は、前記溶接施工セグメントの一方の施工窓の下方の地面上に設けられ、前記施工窓を介して前記上向き溶接車を前記Uリブ内に送り込むためのものであり、
前記仮支持具は、前記上向き溶接車が走行できるように前記上向き溶接車を載置するためのものであり、前記仮支持具は、下方に昇降台が設けられていない前記施工窓に設けられる、ことを特徴とする溶接システム。
【請求項11】
前記仮支持具は取り外し可能な軌道である、ことを特徴とする請求項10に記載の溶接システム。
【請求項12】
請求項9に記載の溶接方法を実行するための溶接システムであって、
昇降台と、仮支持具と、上向き溶接車とを備え、
前記昇降台は、前記溶接施工セグメントの一方の施工窓の下方の地面上に設けられ、前記施工窓を介して前記上向き溶接車を前記Uリブ内に送り込むためのものであり、
前記仮支持具は、前記上向き溶接車が走行できるように前記上向き溶接車を載置するためのものであり、前記仮支持具は、下方に昇降台が設けられていない前記施工窓に設けられる、ことを特徴とする溶接システム。
【請求項13】
前記仮支持具は取り外し可能な軌道である、ことを特徴とする請求項12に記載の溶接システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接技術分野に関し、具体的には、現役の鋼構造橋梁のUリブの内面隅肉の溶接方法及び溶接システムに関する。
【背景技術】
【0002】
縦直交鋼構造橋は現在、大スパンで大型鋼構造溶接橋の主要な構造形式であり、Uリブは従来の直交鋼構造橋の標準部品である。中国で当初に建設された大量の縦Uリブ直交鋼構造橋梁は、当時の理論と技術的条件の制限により、Uリブ板の内面隅肉が溶接されておらず、外面隅肉のみが片側溶接された。その結果、橋梁は、その後の在役中で疲労荷重の作用により内面隅肉部位に亀裂が発生し、現役の橋に安全上のリスクを引き起こした。
【0003】
橋梁のUリブに対する溶接修復の方法では、亀裂はUリブの外側及び橋頂板の表面(即ち、本明細書に記載の板ユニット)に広がって視認可能になったときに清掃及び補修溶接処理が行われるが、Uリブの内面隅肉は溶接されることができず、Uリブ内部の幾何形状及び応力分布形態を根本的に変化させることが不可能ある。このため、現役の橋のメンテナンスは頻繁に行われ、安全上のリスクを根絶することが困難である。Uリブ内の空間が狭くて長いため、現在の技術では現役の橋梁のUリブの内面隅肉を溶接することができない。また、橋梁の在役期間において、橋梁の使用を中止してそれを修復することが困難であり、橋のUリブの内面隅肉の修復には非常に不利である。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、当初にUリブ板の内面隅肉が溶接されていない橋梁のUリブ板の内面隅肉を上向き溶接し、強化させ、メンテナンスすることができる現役の鋼構造橋梁のUリブの内面隅肉の溶接方法及び溶接システムを提供する。
【0005】
本発明の第1態様では、現役の鋼構造橋梁のUリブの内面隅肉の溶接方法であって、前記Uリブの首尾両端にはそれぞれ隔板が設けられ、前記方法は、以下のステップS1からS5を含み、
S1:溶接施工セグメントを開設し、具体的に、現役のUリブに溶接のための施工窓を開設し、前記施工窓の開設位置は、前記Uリブの溶接継目の両側にある2つの隔板の間にあり、かつ前記Uリブが溶接された板ユニットの突合せ溶接継目の両側にあり、隣接する2つの前記施工窓の間は1つの溶接施工セグメントとされ、
S2:前記施工窓の両側にある前記隔板を切断し、切断された隔板を取り外し、
S3:1つの溶接施工セグメント内において前記板ユニット及びUリブの切断境界を研磨し、前記溶接施工セグメントに含まれる前記Uリブの内部を清掃し、
S4:ステップS3における前記溶接施工セグメント内のUリブの内面隅肉を上向き溶接し、
S5:ステップS4における前記溶接施工セグメント内の前記Uリブを復元溶接する方法が提供される。
【0006】
好ましくは、前記施工窓の縦方向の長さは、前記2つの隔板間の垂直距離よりも50~100mm小さく、かつ前記施工窓の上方と前記板ユニットの下面との間の距離は、80mmよりも大きく、前記ステップS1は、以下のステップS1-1及びS1-2を含み、
S1-1:前記施工窓のサイズ及び位置に基づきUリブに線を引き、
S1-2:ステップS1-1で引かれた線に沿って切断し、切断されたUリブ部分を取り外して施工窓を形成する。
【0007】
好ましくは、前記ステップS3において、前記板ユニット及びUリブを研磨することは、以下のステップS3-1からS3-3を含み、
S3-1:取り外された前記隔板と前記板ユニットとの間の切口及び取り外された前記隔板と前記Uリブとの間の切口を研磨し、
S3-2:前記板ユニットの突合せ溶接継目の余盛及び前記Uリブ内の金属バッキングプレートを研磨し、
S3-3:前記Uリブ内の溶接対象領域を研磨する。
【0008】
好ましくは、前記ステップS4は、以下のステップS4-1からS4-5を含み、
S4-1:前記Uリブの内面隅肉を上向き溶接するための上向き溶接車を昇降台に置き、前記昇降台は、前記溶接施工セグメントの1つの施工窓の下方の地面に設けられ、
S4-2:前記溶接施工セグメントの別の施工窓に仮支持具を設け、
S4-3:前記昇降台を、前記上向き溶接車が前記Uリブの内部に安定して入られる高さに上昇させ、
S4-4:前記上向き溶接車が前記Uリブの内部において前記Uリブの縦方向に沿って前記Uリブの内面隅肉を上向き溶接するように、前記上向き溶接車を起動し、
S4-5:溶接終了後、前記上向き溶接車を再度前記昇降台に移動させ、前記昇降台を初期の高さまで下降させ、前記上向き溶接車を取り出す。
【0009】
好ましくは、前記上向き溶接車には、溶接ガンが設けられ、前記溶接ガンは、溶接ガンノズルと、導電性ノズルとを備え、導電性ノズルは、溶接ガンノズルから延出した距離が5~15mmである。
【0010】
【0011】
好ましくは、前記ステップS5は、以下のステップS5-1及びS5-2を含み、
S5-1:前記Uリブ内の隔板をシール溶接し、前記施工窓を窓シール溶接し、
S5-2:窓シール溶接部位を後処理する。
【0012】
好ましくは、前記ステップS5-1は、
橋梁のUリブ全体の内面隅肉への溶接操作が完了しないときに、1つの前記溶接施工セグメント内において一方の前記施工窓の両端にある隔板をシール溶接し、この施工窓を窓シール溶接し、他方の前記施工窓に対応するもう1本のUリブの他端に施工窓を新たに開設し、この他方の施工窓及び新たに開設された施工窓を次の溶接施工セグメントとすることをさらに含む。
【0013】
好ましくは、前記方法は、S6:前記施工窓の窓シール溶接部位の外面を塗布するステップをさらに含む。
【0014】
本発明の第2態様では、請求項1~9の何れかに記載の現役の鋼構造橋梁のUリブの内面隅肉の溶接方法を実行するための溶接システムであって、
昇降台と、仮支持具と、上向き溶接車とを備え、
前記昇降台は、前記溶接施工セグメントの1つの施工窓の下方の地面上に設けられ、前記施工窓を介して前記上向き溶接車を前記Uリブ内に送り込むためのものであり、
前記仮支持具は、前記上向き溶接車が走行するように前記上向き溶接車を載置するためのものであり、前記仮支持具は、下方に昇降台が設けられていない前記施工窓に設けられる溶接システムが提供される。
【0015】
好ましくは、前記仮支持具は、取り外し可能な軌道である。
【0016】
有益な効果
本発明は、現役のUリブの内面隅肉の溶接方法及び溶接システムを提供する。この方法では、現役のUリブの内面隅肉を溶接し、Uリブに特定の方式で施工窓を開設し、2つの施工窓及び該両施工窓の間のUリブを1つの溶接施工セグメントとし、それぞれの溶接施工セグメントを1つの施工ユニットとして溶接施工を行うことにより、溶接過程の高効率化が保証される。溶接施工のパラメータを制御し、溶接速度及び溶接ガン揺動周波数を制御することにより、溶接により根本的にUリブと板ユニットとの元の片側溶接部位の溶接品質を変化させることで、応力集中の発生が極力に回避され、Uリブと板ユニットとの溶接部位での応力分布状態が効果的に改善され、疲労亀裂によるリスクが効果的に解消される。
【0017】
また、本発明に係る現役のUリブの内面隅肉の溶接方法では、溶接システムによりUリブの内面隅肉を上向き溶接し、昇降台及び仮支持具を合わせて使用することにより、人工操作がより容易になり、作業者に対する危害が回避され、時間と労力が節約され、橋梁の使用を中止する必要がなく、橋梁の通常の使用状態でもUリブを修復することができ、Uリブに対して着脱などの複雑な操作を行う必要がなく、経済的利益の最大化が実現される。上記のように特定して開設された複数の施工窓により、Uリブの内面隅肉溶接の接続操作が実現され、溶接過程中で装置の動作を中止する必要がなく、連続する溶接施工セグメントにおいて継続操作を実現することができる。さらに、複数セットの溶接装置を備える場合、複数の溶接施工セグメントを同時に施工することができ、施工効率が大幅に向上する。橋の通行止めをしない条件下で内面隅肉溶接されていない現役のUリブの内面隅肉に対して補強溶接を行うことができ、顕著な経済的利益及び社会的利益を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る現役のUリブの内面隅肉の溶接方法により溶接施工するときにUリブに施工窓を開設する模式図である。
【
図2】
図1における断面A-Aの断面模式図である。
【
図3】
図1における断面B-Bの断面模式図である。
【
図4】本発明に係る現役のUリブの内面隅肉の溶接方法により溶接施工するときの溶接システムにおける昇降台及び仮支持具の模式図である。
【
図5】本発明に係る現役のUリブの内面隅肉の溶接方法により上向き溶接車がUリブ内において上向き隅肉溶接する模式図である。
【
図6】
図5における断面C-Cの断面模式図である。
【
図7】本発明に係る現役のUリブの内面隅肉の溶接方法により窓シール溶接した後の一部のUリブの模式図である。
【
図9】
図7における断面D-D及び断面E-E、
図8における断面G-Gの断面模式図である。
【
図10】本発明の上向き溶接車が施工するときの溶接位置の模式図である。 理解できるように、図面は必ずしも一定の縮尺で描くものではなく、本発明の基本原理を説明する各特徴を簡素化した表現を示している。例えば、特定の寸法、向き、位置、および形状を含む、本明細書に開示される本発明の特定の設計上の特徴は、特定の用途および使用環境によって部分的に決定される。 図面において、符号は、いくつかの図面を通して、本発明の同一または同等の部分を指す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の各実施形態を詳しく参照し、その実施例を図面により説明する。本発明の例示的な実施形態により本発明を説明するが、本明細書は本発明をそれらの例示的な実施形態に限定することを意図していないことが理解されよう。また、本発明は、本発明の例示的な実施形態のみではなく、様々な代替物、修飾物、同等物及び他の実施形態を含むことを意図している。それらは、添付する特許請求の範囲で限定される本発明の思想及び範囲内に含まれる。
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明の例示的な実施形態を説明する。本発明の例示的な実施形態に記載の特定の構造及び機能の説明は、説明の目的を果たすためのみのものである。本発明の思想による実施形態は、様々な形態で実施することができ、それらは例示的な実施形態に示される例示的な実施形態によって制限されると理解すべきではなく、本発明の思想及び範囲に含まれる全ての修飾物、同等物又は代替物を含む。
【0021】
本明細書において使用される専門用語は、各例示的な実施形態を説明するためのものに過ぎず、制限するものではない。さらに、「含む」、「包含」、「有する」などの用語は、例示的な実施形態で使用される場合、示される部品、ステップ、操作又は素子の存在を示すが、1つ又は複数の他の部品、ステップ、操作又は素子の存在又は追加を排除しない。
【0022】
注意すべきことには、本発明で言う「縦方向」及び「横方向」について、特に明記しない限り、「縦方向」とは、Uリブの長さ方向に沿うことを指し、「横方向」とは、Uリブの幅方向に沿うことを指す。また、本発明で使用される方向性用語、例えば、「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」、「内」、「外」、「水平」、「鉛直」、「垂直」及び「交差」などは、特に明記しない限り、図面を参照して説明するものであり、この説明は、制限的なものではなく、説明的なものであることが理解されよう。
【0023】
素子が他の素子に「結合」又は「接続」される場合、この他の素子に直接結合若しくは接続されてもよく、又は両者の間に介在素子が存在してもよいと理解されよう。また、素子が他の素子に「直接結合」又は「直接接続」される場合、介在素子が存在しないと理解されよう。素子間の関係を説明するための他の表現、例えば、「間」、「直接間」、「隣接」又は「直接隣接」などは、上記と同様に理解されるべきである。
【0024】
本明細書において、特に明記しない限り、
図1から
図3に示すように、本明細書で言うUリブは、通常、直交鋼構造橋梁に適用されうるが、特定の場合において、Uリブを標準固定具として使用する必要があるシステム、例えば、大型コンクリート鉄筋プラットフォームにも使用することができる。本明細書で言うUリブは、建造時に外面隅肉溶接により板ユニット10に接続されている(
図3参照)。具体的には、2つの板ユニット10の間は、溶接により接続されるため、突合せ溶接継目11を有する。同様に、接続される2つのUリブ20の間は溶接により接続されるため、溶接継目22を有する。各板ユニット10におけるUリブ20の首尾両端には隔板30があり、かつUリブ20の内面には金属バッキングプレート40(バッキングプレート40が
図9参照)が設けられる。Uリブ20を溶接する(Uリブ20と板ユニットとを接続する内外面隅肉溶接ではなく、隣接する両Uリブ20を接続するために行う溶接)際に、金属バッキングプレート40が設けられた場合、まず金属バッキングプレート40を溶接してUリブ20を固定する必要がある。
【0025】
また、本明細書において、「現役」との用語は、特に断りのない限り、正常の使用段階にある状況を指し、即ち、Uリブは、使用されている橋梁又は他のシステム構造内にある。
【0026】
上記のように、
図1から
図3において、Uリブ20の内面隅肉はまだ溶接されていない。したがって、
図2及び
図3から分かるように、Uリブ20と板ユニット10との間の外面隅肉Wのみが溶接された。
【0027】
本発明の第1態様によれば、複数のセグメントにおいて同時に施工でき、作業効率を向上させることができる現役の鋼構造橋梁のUリブの内面隅肉の溶接方法が提供される。。
【0028】
具体的には、本発明に係る方法は、以下のステップを含む。溶接施工セグメントの開設(S1):現役の鋼構造橋梁のUリブ20に溶接用の施工窓21を開設し、
図1に示すように、施工窓21の開設位置は、Uリブ20の溶接継目22の両側にある2つの隔板30の間に位置し、かつUリブ20が溶接された板ユニット10の突合せ溶接継目11の両側に位置し,言い換えれば、施工窓21は、2つのUリブ20がエンドツーエンドで接続した部位に開設され、即ち、1つのUリブ20の首端と、この首端に接続されたもう一つのUリブ20の尾端との間に開設される。ここで、隣接する2つの施工窓21の間は、1つの溶接施工セグメントPとなる。
図1に示すように、点線で囲まれた部分は、1つの溶接施工セグメントPである。現役の鋼構造橋梁のUリブの内面隅肉の溶接過程において、それぞれの溶接施工セグメントP内のUリブの内面隅肉に溶接を施工する。各溶接施工セグメントPにおいて、前の溶接施工セグメントPの内面隅肉溶接継目と、次の溶接施工セグメントPの内面隅肉溶接継目とは、エンドツーエンドで接続される。
【0029】
ここで、なお、内面隅肉が補修溶接されるべきUリブに前記施工窓21を開設して溶接施工セグメントPを形成するが、施工窓21が多すぎると、橋梁の剛度及び強度に影響を与えるため、同時に開設される施工窓21の数は、実際に補修溶接を必要とする橋梁の力学構造及び施工期限に応じて開設する必要がある。本明細書において、特に明記しない限り、同時に開設される複数の施工窓21について、一般には、いくつかのUリブおきに所定数の施工窓21を開設する。これによって、隣接する溶接施工セグメントにおいて同時に施工することがないため、橋梁の剛度及び強度が保証されることができ、橋梁の使用に影響を与えることがない。
【0030】
前記施工窓21の開設位置は、Uリブ20の溶接継目22の両側にある2つの隔板30の間に位置し、かつUリブ20が溶接された板ユニット10の突合せ溶接継目11の両側に位置する。このような施工窓21を開設することにより、施工窓21から左右両方向のいずれも施工窓21の左右両端のUリブ20内に延在することができ、これによって、その後の溶接過程において、上向き溶接車は、この施工窓21により往復作業することができる。
【0031】
本発明の一実施形態において、施工窓21の縦方向の長さは、前記2つの隔板30間の垂直距離よりも50~100mm小さい。これによって、施工窓21が2つの隔板30の間に位置することが保証され、その後隔板30を順調に切断するとともに隔板30を順調に取り外すことが保証される。また、施工窓21の上方と前記板ユニット10の下面との間の距離は80mmよりも大きい。
図1に示すように、距離aは、施工窓21の縦方向の長さであり、距離bは、施工窓21の上方と板ユニット10の下面との間の距離である。つまり、Uリブ20の側板の高さを少なくとも80mmに保留する必要がある。このようにして、施工窓21が開設された後も橋梁の板ユニット10は必要な剛度を有することが確保されることができる。また、Uリブで保留される側板
は、その後Uリブ内に進入した上向き溶接車の案内をある程度で行うことができるとともに、保留される側板により、施工窓21から取り外した一部のUリブ20を元の位置に溶接する場合の溶接位置と板ユニット10とが離間されることで、橋梁の舗装材料に影響を与えることが回避される。
【0032】
溶接のための施工窓21を開設する具体的な方法は、以下のステップを含む。前記施工窓21のサイズ及び位置に応じてUリブ20に線を引く(S1-1)。線引きの方式は、現在市販の一般的な線引き装置を使用することができ、本発明では特に制限しない。その後、ステップS1-1で引かれた線に沿って切断し、切断されたUリブ部分を取り外すことにより、施工窓21を形成することはステップS1-2とされる。取り外されたUリブ部分は、施工窓板(図示せず)である。内面隅肉の上向き溶接が完了した後、Uリブを復元させる際に、上記の施工窓板をUリブに改めて溶接する必要がある。詳細は後述する。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態において、切断されたUリブ部分を取り外した後、その後で切口が作業者及び設備に擦って傷をつけることを回避するために、Uリブの切口境界を研磨して切断バリを除去する必要がある。
【0034】
前記施工窓21を開設した後、1つの溶接施工セグメントP内でUリブ20内の隔板30を切断し、切断された隔板を取り出す(S2)。切断する際に、隔板30の四隅の溶接継目に沿って切断することができる。なお、切断による切口は、橋梁の板ユニット10、Uリブ20の側面と底面を損傷してはならない。隔板30を切断して取り外すのは、清掃装置及び上向き溶接車51がUリブ20の内部に入って清掃及び溶接を実施することを可能にするためである。
【0035】
隔板30を切断し、切断された隔板30を取り外した後、板ユニット10及びUリブ20の切断境界を研磨し、溶接施工セグメントPに含まれるUリブ20の内部を清掃する(S3)。具体的には、ステップS3において板ユニット10及びUリブ20の切断境界を研磨することは、取り外された隔板30と板ユニット10との間の切口及び取り外された隔板30とUリブ20との間の切口を研磨するステップ(S3-1)を含む。研磨の方式は、好ましくは、カーボンアークガウジング又は砥石、アングルグラインダーを用いる研磨を使用する。切口の突出高さが1mm未満でありかつ凹まないように、隔板30が切断された板ユニット10及びUリブ20における切口部位をガウジング又は研磨して均らす。
【0036】
その後、板ユニット10の突合せ溶接継目11及びUリブ20内の金属バッキングプレート40を研磨する(S3-2)。本発明のいくつかの実施形態において、研磨の方式は、カーボンアークガウジング、砥石又はアングルグラインダーを用いる研磨などをすることができる。研磨後、突合せ溶接継目11の余盛が2mm未満でありかつ凹まない(即ち、突合せ溶接継目11の余盛が板ユニット10の下面から0~2mm突出する)ことを保証する必要がある。これによって、清掃装置及び上向き溶接装置は詰まることがなくスムーズに通ることができる。
【0037】
最後に、Uリブ20内の溶接対象領域を研磨する(S3-3)(即ち、Uリブ20の内面隅肉を研磨する)。本発明のいくつかの実施形態において、内面隅肉に対する研磨は、特殊なワイヤホイール研磨車を使用し、開設された1つの施工窓21から入り、ワイヤホイール研磨具により溶接対象領域の浮き錆を研磨してもよい。この過程は、ステップS3-1及びステップS3-2の研磨過程と異なり、内面隅肉に対する研磨は、主に内面隅肉を研磨することで内面隅肉上の酸化物及び他の異物を除去するためである。これによって、その後の溶接作業をスムーズに実施することができ、はんだが酸化物又は異物に溶接されることで将来の使用中で脱落などの現象が回避される。いくつかの実施形態において、研磨により錆を除去する範囲は、Uリブ20及び板ユニット10の内面隅肉線からの両側の15mmの範囲内である。
【0038】
研磨終了後に、Uリブ20の内部には大量の切断屑、灰塵、錆などの異物が発生し、その後の上向き溶接車51の移動及びメンテナンスには不利である。そのため、溶接施工セグメントPのUリブ20内部を清掃する必要がある。本発明のいくつかの実施形態において、特殊な清掃車(図示せず)を用いて溶接施工セグメントPの一方の施工窓21から入り、Uリブ20内における上向き溶接車51の移動を妨害する異物を全てこの溶接施工セグメントPの他方の施工窓21に押して異物を取り出す。
【0039】
清掃された後、Uリブ20内部にある装置運行を妨害する異物は除去されたため、この場合、Uリブ20の内面隅肉を上向き溶接することができる。本発明のいくつかの実施形態において、
図4及び
図5に示すように、前記ステップS3における溶接施工セグメントP内のUリブの内面隅肉を上向き溶接する(S4)。具体的な溶接ステップは、Uリブの内面隅肉を上向き溶接するための上向き溶接車51を昇降台22に配置し、この昇降台22は溶接施工セグメントの1つの施工窓21の下方の地面に設けられるステップ(S4-1)を含む。
【0040】
いくつかの実施例において、昇降台22は、施工窓21に対応する地面上に設けられる。地面上に架台が設けられ、架台の上方に昇降ロッドが設けられ、昇降台22は昇降ロッドの頂端に位置する。昇降ロッドにより昇降台22は鉛直方向において移動される。この架台の下方には車輪が設けられることにより、架台は地面上を容易に移動し、各施工窓21のそれぞれに移動することができる。昇降台22には、昇降過程において上向き溶接車51が揺れにより落ちることを防止するためにスナップフィット(図示せず)が設けられてもよい。スナップフィットの具体的な形態について、本明細書において上向き溶接車51が昇降過程において落ちないとともに溶接位置に着いたときに上向き溶接車51の移動を妨害しないことを保証できれば、特に制限されない。
【0041】
前記上向き溶接車51が通過可能なように、溶接施工セグメントPの他方の施工窓21に仮支持具23を配置する(S4-2)。この仮支持具23は、取り外し可能な軌道、取り外し可能な平台などであってもよく、その作用は、上向き溶接車がこの施工窓21に到達したときに、上向き溶接車51が落ちずにこの施工窓をスムーズに通過可能なように上向き溶接車51を支持することができ、上向き溶接車51が常にUリブ20の縦方向に沿って移動することを保証できることである。最も好ましくは、仮支持具23として、取り外し可能な軌道を使用する。
【0042】
上向き溶接車51、昇降台22及び仮支持具23を配置した後、昇降台22を、上向き溶接車51がUリブ20の内部に安定して入られる高さに上昇させる(S4-3)。上向き溶接車51がUリブ20の内部においてUリブ20の縦方向に沿ってUリブ20の内面隅肉を上向き溶接するように上向き溶接車51を起動する(S4-4)。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態において、上向き溶接車51は、好ましくは、炭酸ガスシールドアーク溶接又はMAG溶接を使用する。また、上向き溶接車51には溶接ガン514が設けられる。
図6に示すように、溶接ガン514の数は2つであってもよい。これらの両溶接ガン514は、それぞれUリブ20の2つの内面隅肉を溶接する。上向き溶接の過程において、溶接ガン514のアークが揺動する。具体的な揺動周波数及び幅は後述する。本発明のいくつかの実施形態において、上向き溶接車51に2つの溶接ガン514が設けられた場合、上向き溶接車51は、施工窓21に入ってから他方の施工窓21へ移動する過程において、最初に溶接せず、そのまま他方の施工窓21の溶接開始点まで移動し、他方の施工窓21の溶接開始点から復路走行の過程においてUリブ20の内面隅肉を溶接する。これによって、溶接により発生したスラグが上向き溶接車51の後方に落ち、つまり、復路溶接により、スラグが上向き溶接車51の走行方向の後方に落ちるため、上向き溶接車51の移動に何らの影響を与えない利点がある。
【0044】
さらに、注意すべきことには、
図10に示すように、前記施工窓21の開設位置により、溶接開始点Sは、他方の施工窓のより前方に位置してもよく、もう1つのUリブ20の内部に入ってもよく、これによって施工窓21が開設されたUリブ20の内面隅肉を溶接する。さらに、溶接終了点Tはこの施工窓21のさらに後方に位置してもよい。この場合、施工窓21の両端の隔板はいずれも切断された状態であるため、上向き溶接車51は、昇降台22を経て左側のUリブ20内に移動して入り、下方に昇降台22が設けられた施工窓21の上方のUリブ20の内面隅肉を溶接することができ、溶接終了点Tでの溶接が終わった後、上向き溶接車51は昇降台22に戻り、その後の操作を行うことができる。
【0045】
つまり、1つの施工窓21の開設により、2つのUリブ20の内部を連通させることができる。溶接過程において、上向き溶接車51は、これらの両Uリブ20内を移動することができる。1つの溶接施工セグメントPには2つの施工窓21が含まれるため、実際には3本のUリブ20が連通される。このようにして、上向き溶接車51は、昇降台22及び仮支持具23の補助下で3本のUリブ20内を移動し、Uリブ20に完全な溶接を行うことができる。しかし、本発明の他の実施形態において、橋梁端部に位置するUリブ20上に施工窓21を開設すると、橋梁の内部方向のUリブ20の内部にのみ延伸できるため、開設された施工窓21の上方のUリブ20の内面隅肉を溶接できない可能性がある。上向き溶接車51が橋梁端部から出ることができないため、この場合、人工補修溶接の手段により橋梁端部にある施工窓21の上方のUリブ20の内面隅肉を補修溶接してもよい。人工補修溶接を必要とするのは橋梁端部のみであるため、施工効率は大幅に向上する。
【0046】
本発明の他の実施形態において、上向き溶接車51に溶接ガン514を設けてもよい。1つの施工窓21から入った後、Uリブ20の縦方向に沿って1つの内面隅肉を溶接し始める。この内面隅肉の溶接が終了した後、上向き溶接車51はUリブ20の施工窓21に入る過程に戻る。上記の溶接ガン514は、もう1つの内面隅肉に向けられ、戻る際にそれを溶接する。これによって、溶接ガン514の可動空間は比較的に大きくなる。
【0047】
さらに、本発明のいくつかの実施形態において、
図5及び
図6に示すように、上向き溶接車51(
図5には点線で囲まれる)は、溶接車511と、管路513を介して溶接車511の後方に接続されるワイヤ送給車512とを備える。ワイヤ送給車512は、溶接車511に溶接ワイヤを送給するために使用される。上向き溶接過程において、溶接車511とワイヤ送給車512は同期移動する。上向き溶接車51の溶接車511の前端には溶接ガン514が設けられる。溶接ガン514は、溶接ガンノズル515と、導電性ノズル516とを備える。この導電性ノズル516は、好ましくは、溶接ガンノズル515から延出した距離が5~15mmである。この距離は、具体的な溶接方式、溶接の規範パラメータ、溶接スパッタの大きさ、Uリブの角度、隅肉のサイズ、及びUリブ20の幅などに応じて調整されることができ、具体的な範囲は5~15mmである。溶接ガンノズル515から延出しかつ延出距離が5~15mmであるように導電性ノズル516を設けることにより、スパッタされた粒子(ガスシールド溶接のときに発生する高温スパッタ粒子)が溶接ガンノズル515に付着し、長期間粘着すると導電性ノズル516が詰まることで短絡及びアーク切れが発生することが回避される。また、溶接後に溶接継目の両側が鋸歯状となることで応力が分散することを防止するために、上向き溶接車51の溶接速度及び溶接ガン514のアーク揺動周波数は、下式を満たす必要がある。
であるときの溶接継目幅を示す。この算式中、wは揺動振り幅を示し、揺動振り幅の値は隅肉サイズの要求に応じて確定される。本発明の好ましい実施形態において、前記揺動周波数fは好ましくは0.5Hz~4Hzであり、揺動振り幅wは好ましくは0.5mm~3mmであり、溶接速度は好ましくは200mm/min~600mm/minである。他のパラメータについて、好ましくは、溶接ワイヤの直径は0.8mm、1.0mm又は1.2mmであり、溶接ワイヤの延出長さは15mm~25mmであり、シールドガスの流量は20~25L/minであり、溶接ガン514と板ユニット10とのなす角θは38°~50°であり(
図6参照)、溶接電流は80~220Aであり、アーク電圧は18~28Vである。前記パラメータに従って上向き溶接車51を設定し、上向き溶接車51はUリブ20内を移動してUリブ20両側の内面隅肉を上向き溶接する。
【0048】
前記ステップS4-1からステップS4-4の溶接操作が完了した後、溶接は終了するようになる。上向き溶接車51を再度前記昇降台22に移動させ、昇降台22を初期高さまで下降させ、上向き溶接車51を取り出す(S4-5)。上記のように、上向き溶接車51は、1つの溶接施工セグメントPにおける次の施工窓21から、上向き溶接車51が入った施工窓21へ戻って走行する際に、Uリブ20の内面隅肉を溶接する。溶接が完了したときに、上向き溶接車51は通常Uリブ20の内部、即ち、隔板30の内部に位置するため、リモコンを用いて上向き溶接車51を引き続き昇降台22上に移動させて上向き溶接車51を取り出す必要がある。
【0049】
さらに、上向き溶接車51は、仮支持具23が敷設された施工窓21に走行したときに、この施工窓21の上方にあるUリブ20の内面隅肉を上向き溶接することができる。仮支持具23の支持により、上向き溶接車51は落ちることはない。また、施工窓21を開設するときに、高さ方向においてUリブの一部が保留され、上方に保留されたUリブの部分は、上向き溶接車51の移動方向に対してある程度のガイド作用を有するため、上向き溶接車51は、走行方向から外れることはない。
【0050】
上記の実施形態において、1つの溶接施工セグメントPを例として説明した。この場合、昇降台22は、この溶接施工セグメントPの一方の施工窓21の下方に設けられ、仮支持具23は、同一の溶接施工セグメントPの他方の施工窓21の下方に設けられることで1つの溶接施工セグメントPを溶接する。溶接終了後、直ちに他の溶接施工セグメントPを溶接する。
【0051】
さらに、1つの溶接施工セグメントPのUリブ20の内面隅肉に対する上向き溶接が完了した後、ステップS4における前記溶接施工セグメントP内のUリブ20を溶接により復元させる必要がある((復元溶接)S5)。具体的には、
図7から
図9に示すように、ステップS5は、以下のS5-1~S5-3を含む。Uリブ20内の隔板30をシール溶接し、施工窓21を窓シール溶接する(S5-1)。即ち、施工窓21の両側の隔板30をシール溶接する。溶接する際に、シール溶接用の溶接ガンが施工窓21から入って片側隅肉溶接を行い、溶接サイズは6mmよりも大きい。その後、1つの施工窓21を窓シール溶接する。即ち、この施工窓21での修復溶接を行う。具体的には、窓シール溶接では、炭酸ガスを用いて鋼ライナーをシールドして片面溶接する。溶接継目は「2層3本」の形態とれ、具体的には、1本の溶接継目61を含むベース層と、2本の溶接継目(それぞれ溶接継目62、63)を含むカバー層とがある。
図9に示すように、本発明のいくつかの実施形態において、窓シール溶接は、溶接開先の準備、金属バッキングプレートのスポット溶接固定、施工窓21のスポット溶接固定、及び施工窓21でのUリブ20の溶接継目22の溶接を含んでもよい。ここで、施工窓21のスポット溶接固定及び施工窓21でのUリブ20の溶接継目22の溶接は、実際には、いずれも施工窓21を開設する際に引き線に沿ってUリブ20を切断した後、切断されたUリブ部分を復元させることを指す。つまり、施工窓21を開設する際に切断されたUリブの部分を改めて元の位置に溶接する必要がある。前記隔板30及び施工窓21を復元溶接した後、施工窓21を復元した後切断されたUリブ部分とUリブの保留部分とが突合せて突合せ継目が形成されるため、窓シール溶接部位を後処理する必要がある(S5-2)。この後処理は、窓シール溶接部位(即ち、突合せ継目)の表面研磨又は応力解消処理であってもよい。これによって、突合せ継目に応力集中が発生することで施工窓21におけるUリブ20が不強固で脱落する現象が回避されることができる。
【0052】
本明細書において、注意すべきことには、前記ステップS5-1は、実際に、橋梁のUリブ全体の内面隅肉溶接操作が完了しないときに、1つの溶接施工セグメント内(即ち、施工が完了した溶接施工セグメント内)において一方の前記施工窓21の両端にある隔板30をシール溶接してこの施工窓21を窓シール溶接するとともに、他方の前記施工窓21に対応するもう1本のUリブ20の他端に施工窓21を新たに開設し、他方の施工窓21及び新たに開設した施工窓21を次の溶接施工セグメントとする。
【0053】
つまり、橋梁のUリブの内面隅肉の補修溶接施工が完全に完了しない場合、施工が完了した溶接施工セグメントに隣接する溶接施工セグメントを施工操作する必要があるときに、施工が完了した溶接施工セグメントにおける施工対象の溶接施工セグメントから遠い施工窓の両端の隔板をシール溶接するとともに、この施工窓を溶接するだけでよい。このようにして、施工が完了した溶接施工セグメントにおける施工対象の溶接施工セグメントに近い施工窓は、この施工対象の溶接施工セグメントの1つの施工窓として使用されることができ、他方側にもう1つの施工窓をさらに開設すればよい。これによって、施工効率は極めて高くなる。全ての施工操作が完了した後、シールされていない施工窓を全てまとめて窓シール溶接することができ、Uリブを完全に復元することができる。
【0054】
さらに、本発明に係るUリブ及び隔板の切断では、火炎切断、プラズマアーク切断またはレーザー切断により切断してもよい。
【0055】
さらに、本発明のいくつかの実施形態において、前記施工窓の窓シール溶接及び溶接継目処理が完了した後、本発明の方法は、施工窓21の窓シール溶接部位の外面を塗布すること(S6)をさらに含む。即ち、溶接継目処理の後、窓シール溶接部位のはんだが露出されるため、はんだ及びその周囲材料が酸化されて脱落しやすくなる。そのため、突合せ継目に、例えば、酸化防止剤などの材料を塗布することではんだの酸化を回避してもよい。
【0056】
上記のようにして、現役の鋼構造橋梁のUリブの内面隅肉の溶接操作が完了した。前記Uリブの施工窓は、溶接施工セグメントに応じて2つを1群として開設してもよい。ここで、隣接する2つの溶接施工セグメントは、両者の間の施工窓を共用することができる。この施工窓は、上向き溶接車がUリブに入るための窓として使用される場合があり、異物を排出するための窓として使用される場合もあり、その上に仮支持具を設けてもよい。Uリブに複数開設されてもよい。これによって、内面隅肉溶接を必要とする複数のUリブを同時に溶接することができ、溶接効率が大幅に向上する。以下、実施例1により本発明の方法を説明する。
【0057】
実施例1
中国におけるある直交鋼構造橋梁のUリブの内面隅肉を溶接する。そのステップは下記の通りである。
1)施工窓の長さを950mmに設定し、施工窓の上方と板ユニットの下面との間の距離を120mmに設定し、施工窓のサイズ及び位置に基づきUリブに線を引き、プラズマアーク切断法により引き線に沿って切断し、切断されたUリブ部分を取り外すことにより、この直交鋼構造橋梁のUリブに溶接のための施工窓が開設される。
2)Uリブ内の隔板を切断し、切断された隔板を取り出す。
3)取り外された前記隔板と前記板ユニットとの間の切口及び取り外された前記隔板と前記Uリブとの間の切口を研磨する。前記板ユニットの突合せ溶接継目及び前記Uリブ内の金属バッキングプレートを研磨する。前記Uリブ内の溶接対象領域を研磨する。清掃車を用いてUリブの内部を清掃する。
4)上向き溶接車を昇降台に置き、仮支持具を同一の溶接施工セグメントの他方の施工窓に設け、昇降台を上向き溶接車がUリブの内部に安定して入られる高さに上昇させ、上向き溶接車を起動させることで、上向き溶接車は、内面隅肉溶接対象のUリブの縦方向に沿って溶接開始点まで走行し、その後、溶接プロセスをスタートすることで、上向き溶接車は戻る過程においてUリブの内部においてUリブの縦方向に沿ってUリブの内面隅肉を上向き溶接する。溶接終了後、上向き溶接車を再度昇降台上に走行させ、昇降台を初期の高さに下降させ、上向き溶接車を取り出す。MAG溶接により内面隅肉を上向き溶接する。溶接材料及びパラメータについて、溶接ワイヤ型番がH08Mn2SiAであり、溶接ワイヤの直径が1.2mmであり、シールドガスが80%Ar+20%O2であり、ガス流量が25L/minであり、溶接電流が220A±10Aであり、アーク電圧が21V±1Vであり、溶接速度が220mm/minであり、アーク揺動振り幅が2.5mmであり、揺動周波数が1.3Hzである。
5)Uリブ内の隔板をシール溶接し、前記Uリブに開設された前記施工窓を窓シール溶接し、窓シール溶接部位を後処理する。
6)施工窓の窓シール溶接部位の外面を塗布する。
【0058】
本発明の第2態様では、溶接システムがさらに提供される。この溶接システムは、上記の態様に記載の現役の鋼構造橋梁Uリブの内面隅肉の溶接方法を実施するために使用される。前記溶接システムは、昇降台と、仮支持具と、上向き溶接車とを備える。昇降台は、前記施工窓を介して前記上向き溶接車を前記Uリブ内に送り込むために使用される。仮支持具は、前記上向き溶接車が走行するように前記上向き溶接車を載置するために使用される。仮支持具は、下方に昇降台が設けられていない施工窓に設けられる。仮支持具は、両端にはフックなどの装置が設けられてもよく、使用時に落ちないように施工窓の縁部に掛かることができる。上向き溶接車は、第1態様において詳しく説明されたため、ここで説明を省略する。本発明のいくつかの実施形態において、仮支持具は、取り外し可能な軌道であってもよい。この軌道は、施工窓を開設したときに上方に保留されたUリブ部分と合わせて上向き溶接車の移動方向をさらにガイドすることができ、これによって、上向き溶接車は安定して走行することができる。
【0059】
さらに、溶接システムは、金属切断装置と、シール溶接装置と、塗布装置とを備えてもよい。ここで、金属切断装置は、Uリブ及び隔板を切断することで施工窓を開設し、隔板を取り除くために使用される。シール溶接装置は、取り出された隔板とUリブとを溶接することでUリブの構造を復元するために使用される。塗布装置は、溶接施工が完了した後に施工窓の窓シール溶接部位を塗布するために使用される。
【0060】
以上、説明及び記述の目的で本発明の特定の例示的な実施形態を示したが、本発明を排除し又は開示された正確な形態に限定することが意図されていない。明らかに、上記の教示に照らして、多くの修正および変形が可能である。本発明の原理のいくつかとそれらの実際の適用を説明するために例示的な実施形態を選択し、説明することにより、当業者は本発明の様々な例示的な実施形態、およびその様々な代替物および修飾物を作成および使用できるようにする。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲およびそれらの同等物によって定義されることが意図されている。
【0061】
理解できるように、以上の実施形態は、本発明の原理を説明するために使用される例示的な実施形態に過ぎない。本発明は、それらに限定されない。本発明の趣旨及び実質から逸脱しない限り、当業者は様々な変形及び改良をすることができ、これらの変形及び改良も本発明の保護範囲に含まれる。
【要約】 (修正有)
【課題】現役の鋼構造橋梁のUリブの内面隅肉の溶接方法を提供する。
【解決手段】方法は、Uリブの首尾両端にはそれぞれ隔板が設けられ、前記溶接方法は、溶接施工セグメントを開設し、具体的に、現役のUリブに溶接のための施工窓を開設し、前記施工窓の開設位置は、前記Uリブの溶接継目の両側にある2つの隔板の間にあり、かつ前記Uリブが溶接された板ユニットの突合せ溶接継目の両側にあり、隣接する2つの前記施工窓の間は1つの溶接施工セグメントであるS1と、前記施工窓の両側にある前記隔板を切断し、切断された隔板を取り外すS2と、1つの溶接施工セグメント内において前記板ユニット及びUリブの切断境界を研磨し、前記溶接施工セグメントに含まれる前記Uリブの内部を清掃するS3と、ステップS3における前記溶接施工セグメント内のUリブの内面隅肉を上向き溶接するS4と、その後の復元溶接とを含む。
【選択図】
図1