(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-30
(45)【発行日】2023-06-07
(54)【発明の名称】超音波トランスデューサーアレイ及び超音波フェイズドアレイセンサー
(51)【国際特許分類】
H04R 17/00 20060101AFI20230531BHJP
【FI】
H04R17/00 332B
(21)【出願番号】P 2023515609
(86)(22)【出願日】2022-12-08
(86)【国際出願番号】 JP2022045251
【審査請求日】2023-03-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000175722
【氏名又は名称】サンコール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】弁理士法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】高杉 知
【審査官】佐久 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特許第7023436(JP,B1)
【文献】特開2021-114746(JP,A)
【文献】特開2005-117159(JP,A)
【文献】特開昭57-197995(JP,A)
【文献】特開平11-155863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 1/72-1/82
3/80-3/86
5/18-5/30
7/52-7/64
H04R 1/00-1/44
3/00
7/00
9/00
13/00
15/00
17/00、17/10
19/00
23/00
29/00
31/00
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み方向一方側の第1面及び厚み方向他方側の第2面を有する剛性の支持板であって、第1及び第2面の間を貫通する複数の貫通孔を含む貫通孔群が設けられた支持板と、
前記複数の貫通孔を覆うように前記支持板の第1面に固着された可撓性樹脂膜と、
平面視において中央領域が対応する貫通孔と重合し且つ周縁領域が前記支持板の第1面と重合するように前記可撓性樹脂膜に固着された前記複数の貫通孔と同数の圧電素子とを備え、
前記複数の圧電素子は、所定駆動周波数の駆動電圧信号の印加に応じて超音波を発生する送信用トランスデューサーを形成する複数の送信用圧電素子と、超音波の受信に応じて受信電圧信号を発生する受信用トランスデューサーを形成する一又は複数の受信用圧電素子とを含み、
前記送信用トランスデューサーは前記駆動周波数の駆動電圧信号の印加に応じて共振せずに超音波を発生する非共振型とされる一方で、前記受信用トランスデューサーは前記駆動周波数に応じた周波数の超音波の受信によって共振する共振型とされていることを特徴とする超音波トランスデューサーアレイ。
【請求項2】
前記貫通孔群は、前記支持板のX-Y平面のX方向に所定のX方向配列ピッチで配置されたm個(mは3以上の整数)の前記貫通孔によって形成されるX方向列を有していることを特徴とする請求項1に記載の超音波トランスデューサーアレイ。
【請求項3】
前記貫通孔群は、一の基準X方向列と前記基準X方向列のY方向に所定のY方向配列ピッチで配列された一又は複数の並列X方向列とを有し、
前記一又は複数の受信用圧電素子は、前記基準X方向列を形成する一又は複数の貫通孔を平面視において覆うように配置され、
前記送信用圧電素子のうち、前記受信用圧電素子のY方向に隣接する送信用圧電素子は、他の送信用圧電素子よりも厚さが薄いことを特徴とする請求項2に記載の超音波トランスデューサーアレイ。
【請求項4】
前記並列X方向列は、前記基準X方向列のY方向一方側及び他方側にそれぞれ所定のY方向配列ピッチで隣接された第1隣接X方向列及び第2隣接X方向列を含み、
前記送信用圧電素子のうち、前記受信用圧電素子のY方向一方側及び他方側にそれぞれ隣接する送信用圧電素子は、他の送信用圧電素子よりも厚さが小とされていることを特徴とする請求項3に記載の超音波トランスデューサーアレイ。
【請求項5】
前記X方向配列ピッチ及び前記Y方向配列ピッチは同一間隔とされていることを特徴とする請求項3又は4に記載の超音波トランスデューサーアレイ。
【請求項6】
前記受信用圧電素子は、前記X方向列のX方向に関する中心を基準として対称に配置されていることを特徴とする請求項2から4の何れかに記載の超音波トランスデューサーアレイ。
【請求項7】
前記貫通孔は、前記支持板の第1面に開口された凹部と、前記凹部よりも開口幅が小とされた一端側の第1端部が前記凹部の底面に開口され且つ他端側の第2端部が前記支持板の第2面に開口された導波路とを含んでいることを特徴とする請求項2から4の何れかに記載の超音波トランスデューサーアレイ。
【請求項8】
前記導波路は、前記凹部の底面に開口された前記第1端部を含む筒状部と、前記支持板の第2面に開口された前記第2端部を含むホーン部とを有し、
前記筒状部は、開口幅が前記凹部の開口幅より小で且つ厚み方向全域に亘って同一開口幅とされており、
前記ホーン部は、前記筒状部に連通する基端側から前記支持板の第2面に開口された先端側に近接するに従って、開口幅が大きくなるように構成されていることを特徴とする請求項7に記載の超音波トランスデューサーアレイ。
【請求項9】
前記送信用圧電素子は積層型とされ、前記受信用圧電素子は単層型とされていることを特徴とする請求項2から4の何れかに記載の超音波トランスデューサーアレイ。
【請求項10】
前記受信用圧電素子は前記送信用圧電素子よりも厚さが小とされていることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の超音波トランスデューサーアレイ。
【請求項11】
前記複数の圧電素子をそれぞれ囲む大きさの複数の圧電素子用開口を有し且つ前記送信用圧電素子よりも厚みが大とされた下側封止板であって、平面視において前記複数の圧電素子が対応する前記圧電素子用開口内に位置するように前記可撓性樹脂膜に固着された下側封止板と、
前記下側封止板に固着された配線アッセンブリとを備え、
前記配線アッセンブリは、絶縁性のベース層と、前記ベース層に設けられた送信用配線及び受信用配線を含む導体層と、前記導体層を囲繞する絶縁性のカバー層とを有し、
前記ベース層には、前記送信用配線のうち前記送信用圧電素子の電極との接続領域を露出させる送信用接続開口と、前記受信用配線のうち前記受信用圧電素子の電極との接続領域
となる受信用接続領域を露出させる受信用接続開口とが設けられ、
前記受信用接続領域には前記受信用接続開口を介して外方へ突出されたバンプが設けられていることを特徴とする請求項10に記載の超音波トランスデューサーアレイ。
【請求項12】
厚み方向一方側の第1面及び厚み方向他方側の第2面を有する剛性の支持板であって、第1及び第2面の間を貫通する複数の貫通孔を含む貫通孔群が設けられた支持板、前記複数の貫通孔を覆うように前記支持板の第1面に固着された可撓性樹脂膜、並びに、平面視において中央領域が対応する貫通孔と重合し且つ周縁領域が前記支持板の第1面と重合するように前記可撓性樹脂膜に固着された前記複数の貫通孔と同数の圧電素子を備え、前記貫通孔群は、前記支持板のX-Y平面のX方向に所定のX方向配列ピッチで配置されたm個(mは3以上の整数)の前記貫通孔によって形成されるX方向列を有し、前記複数の圧電素子は、所定駆動周波数の駆動電圧信号の印加に応じて超音波を発生する送信用トランスデューサーを形成する複数の送信用圧電素子と、超音波の受信に応じて受信電圧信号を発生する受信用トランスデューサーを形成する複数の受信用圧電素子とを含んでいる超音波トランスデューサーアレイと、
前記複数の送信用圧電素子に印加する正弦波のバースト波駆動電圧信号であって、前記送信用トランスデューサーの共振周波数よりも低い前記所定駆動周波数の駆動電圧信号を前記複数の送信用圧電素子のそれぞれに対応した遅延時間で発生可能な送信信号発生装置と、
前記複数の受信用圧電素子がそれぞれ発生する受信電圧信号の継続時間に対応する幅の検波信号を生成する複数の検波器と、
前記複数の検波器が生成する検波信号をそれぞれ所定時間遅延可能な複数の遅延回路と、
前記複数の遅延回路の出力信号を加算して加算受信電圧信号を生成する加算回路と、
前記送信信号発生装置及び前記遅延回路の制御を司る制御装置と、
前記制御装置から送られてくる駆動電圧信号に基づく送信タイミング信号及び前記加算回路から送られてくる加算受信電圧信号に基づく受信タイミング信号の時間差並びに前記制御装置から送られてくる方位角情報に基づき、障害物の位置を検出する検知装置とを備え、
前記送信用トランスデューサーは前記駆動周波数の駆動電圧信号の受信に応じて共振せずに超音波を発生する非共振型とされる一方で、前記受信用トランスデューサーは前記駆動周波数に応じた周波数の超音波の受信によって共振する共振型とされていることを特徴とする超音波フェイズドアレイセンサー。
【請求項13】
前記貫通孔群は、一の基準X方向列と前記基準X方向列のY方向に所定のY方向配列ピッチで配列された一又は複数のX方向列とを有し、
前記複数の受信用圧電素子は、前記基準X方向列を形成する複数の貫通孔のうちの対応する貫通孔を平面視において覆うように配置され、
前記送信信号発生装置は、前記送信用圧電素子のうち、Y方向に関し前記受信用圧電素子に隣接する送信用圧電素子に印加する駆動電圧信号の振幅を、他の送信用圧電素子に印加する駆動電圧信号の振幅よりも大きくするように構成されていることを特徴とする請求項12に記載の超音波フェイズドアレイセンサー。
【請求項14】
前記貫通孔群は、前記基準X方向列のY方向一方側及び他方側にそれぞれ所定のY方向配列ピッチで隣接された第1隣接X方向列及び第2隣接X方向列を含み、
前記送信信号発生装置は、前記送信用圧電素子のうち、前記受信用圧電素子のY方向一方側及び他方側にそれぞれ隣接する送信用圧電素子に印加する駆動電圧信号の振幅を、他の送信用圧電素子に印加する駆動電圧信号の振幅よりも大きくするように構成されていることを特徴とする請求項13に記載の超音波フェイズドアレイセンサー。
【請求項15】
前記複数の受信用圧電素子は、前記基準X方向列のX方向一端側及び他端側の貫通孔を平面視において覆うように配置されていることを特徴とする請求項
13又は14に記載の超音波フェイズドアレイセンサー。
【請求項16】
前記貫通孔群は、一の基準X方向列と前記基準X方向列のY方向に所定のY方向配列ピッチで配列された一又は複数のX方向列とを有し、
前記複数の受信用圧電素子は、前記基準X方向列を形成する複数の貫通孔のうちの対応する貫通孔を平面視において覆うように配置され、
前記送信信号発生装置は、前記複数の送信用圧電素子毎に設けられた複数の信号発生手段を有していることを特徴とする請求項12に記載の超音波フェイズドアレイセンサー。
【請求項17】
前記貫通孔群は、一の基準X方向列と前記基準X方向列のY方向に所定のY方向配列ピッチで配列された一又は複数のX方向列とを有し、
前記複数の受信用圧電素子は、前記基準X方向列を形成する複数の貫通孔のうちの対応する貫通孔を平面視において覆うように配置され、
前記送信信号発生装置は、X方向同一位置に配置された送信用圧電素子毎に設けられた複数の信号発生手段を有し、
X方向同一位置に配置された送信用圧電素子は、共通の信号発生手段から駆動電圧信号が供給されることを特徴とする請求項12に記載の超音波フェイズドアレイセンサー。
【請求項18】
厚み方向一方側の第1面及び厚み方向他方側の第2面を有する剛性の支持板であって、第1及び第2面の間を貫通する複数の貫通孔を含む貫通孔群が設けられた支持板、前記複数の貫通孔を覆うように前記支持板の第1面に固着された可撓性樹脂膜、並びに、平面視において中央領域が対応する貫通孔と重合し且つ周縁領域が前記支持板の第1面と重合するように前記可撓性樹脂膜に固着された前記複数の貫通孔と同数の圧電素子を備え、前記貫通孔群は、前記支持板のX-Y平面のX方向に所定のX方向配列ピッチで配置されたm個(mは3以上の整数)の前記貫通孔によって形成されるX方向列を有し、前記複数の圧電素子は、所定駆動周波数の駆動電圧信号の印加に応じて超音波を発生する送信用トランスデューサーを形成する複数の送信用圧電素子と、超音波の受信に応じて受信電圧信号を発生する受信用トランスデューサーを形成する単一の受信用圧電素子とを含んでいる超音波トランスデューサーアレイと、
前記複数の送信用圧電素子に印加する正弦波のバースト波駆動電圧信号であって、前記送信用トランスデューサーの共振周波数よりも低い前記所定駆動周波数の駆動電圧信号を前記複数の送信用圧電素子のそれぞれに対応した遅延時間で発生可能な送信信号発生装置と、
前記受信用圧電素子が発生する受信電圧信号の継続時間に対応する幅の検波信号を生成する検波器と、
前記送信信号発生装置の制御を司る制御装置と、
前記制御装置から送られてくる駆動電圧信号に基づく送信タイミング信号及び前記検波器から送られてくる検波信号に基づく受信タイミング信号の時間差並びに前記制御装置から送られてくる方位角情報に基づき、障害物の位置を検出する検知装置とを備え、
前記送信用トランスデューサーは前記駆動周波数の駆動電圧信号の受信に応じて共振せずに超音波を発生する非共振型とされる一方で、前記受信用トランスデューサーは前記駆動周波数に応じた周波数の超音波の受信によって共振する共振型とされていることを特徴とする超音波フェイズドアレイセンサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空中超音波トランスデューサーアレイ及び前記アレイを有するフェイズドアレイセンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の送信用トランスデューサーが一定間隔で直線状に配列されてなる送信用トランスデューサー列と、複数の受信用トランスデューサーが一定間隔で直線上に配列されてなる受信用トランスデューサー列とを備え、前記送信用トランスデューサー列及び前記受信用トランスデューサー列が交差することなく且つ互いに対する角度が直角となるように配置されている超音波トランスデューサーアレイが提案されている(下記特許文献1及び2参照)。
【0003】
前記超音波トランスデューサーアレイにおいては、前記複数の送信用トランスデューサーには、所定駆動周波数成分を含む駆動電圧が一定の位相差で順次印加され、前記送信用トランスデューサー列は前記位相差に対応した方位角へ超音波を放射する。
【0004】
一方、前記複数の受信用トランスデューサーは、前記送信用トランスデューサー列から放射されて障害物に反射して戻ってくる超音波(受信音波)を受信して、受信電圧信号を生成する。
前記複数の受信用トランスデューサーがそれぞれ発生する受信電圧信号は順次所定時間ごと遅延されて、加算される。ここで、受信電圧信号に対する遅延時間は、放射音波の方位角と同じ方位角からの受信音波に基づく受信電圧信号を加算するように設定される。
【0005】
しかしながら、斯かる従来の超音波トランスデューサーアレイは下記問題点を有している。
【0006】
即ち、前記送信用トランスデューサーに十分に大きな振幅量の振動を行なわせる為に、前記送信用トランスデューサーを共振振動させることが一般的である。
【0007】
具体的には、前記送信用トランスデューサーには、当該送信用トランスデューサーの共振周波数を主成分とする駆動電圧信号、好ましくは、バースト波駆動電圧信号が印加され、これにより、前記送信用トランスデューサーを共振させて、超音波を放射させる。
【0008】
この場合、駆動電圧信号の印加時には前記送信用トランスデューサーから共振周波数の音波が放射されることになるが、駆動電圧信号(好ましくは、バースト波電圧信号)の印加が終了した後の暫くの期間においては、前記送信用トランスデューサーは、共振周波数での減衰振動を行なうことになる。
【0009】
従って、互いに対して近距離に複数の障害物が位置している場合には、前記受信用トランスデューサーは、最も近い第1の障害物からの反射音波として、駆動電圧信号に応じた前記送信用トランスデューサーの放射音波(以下、正常放射音波という)が第1の障害物に反射して戻ってくる反射音波に加えて、減衰振動に基づく前記送信用トランスデューサーの放射音波(以下、減衰放射音波という)が第1の障害物に反射して戻ってくる反射音波も受信することになる。このような場合、前記正常放射音波が第1の障害物よりも遠い第2の障害物に反射して戻ってくる反射音波と、前記減衰放射音波が第1の障害物に反射して戻ってくる反射音波とが重合された状態で、前記受信用トランスデューサーに受信される事態が生じ得る。斯かる事態は、障害物検知の距離分解能の低下を招く。
【0010】
さらに、前記送信用トランスデューサーの印加電圧に対する振動動作の周波数応答は、当該送信用トランスデューサーの共振周波数近傍において位相が大きく変化する。
【0011】
従って、前記複数の送信用トランスデューサーに印加する駆動電圧の周波数を当該送信用トランスデューサーの共振周波数近傍に設定しつつ、前記複数の送信用トランスデューサーから放射される音波の位相を精密に制御する為には、前記複数の送信用トランスデューサーの共振周波数の「ばらつき」を極限まで抑制する必要があるが、これは非常に難しい。
【0012】
本願出願人は、前述のような共振型超音波トランスデューサーとは異なるタイプの非共振型超音波トランスデューサーに関する発明を出願し、特許権を取得している(下記特許文献3及び4参照)。
【0013】
前記非共振型超音波トランスデューサーは、共振周波数が駆動周波数(例えば、40kHz)よりも高く設定されており、従って、共振周波数の変動の影響を受けることなく駆動周波数での振動の位相を精密に制御できる。
【0014】
しかしながら、前記非共振型超音波トランスデューサーを受信用トランスデューサーとして用いると、反射音波の受信に応じて励起される出力電圧が小さくなり、様々な雑音成分から反射音波に応じた受信電圧信号を正確に分離することは困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】特開平2-102481号公報
【文献】特開平11-248821号公報
【文献】特許第6776481号公報
【文献】特許第7023436号公報
【発明の概要】
【0016】
本発明は、斯かる従来技術に鑑みなされたものであり、複数の送信用トランスデューサー及び一又は複数の受信用トランスデューサーを備え、前記複数の送信用トランスデューサーから放射される音波の位相制御性能を向上させつつ、反射音波の受信に応じて前記受信用トランスデューサーが十分に大きな受信電圧信号を励起可能とされた超音波トランスデューサーアレイの提供を第1の目的とする。
また、本発明は、前記超音波トランスデューサーアレイを備えたフェイズドアレイセンサーの提供を第2の目的とする。
【0017】
前記第1の目的を達成するために、本発明の第1態様は、厚み方向一方側の第1面及び厚み方向他方側の第2面を有する剛性の支持板であって、第1及び第2面の間を貫通する複数の貫通孔を含む貫通孔群が設けられた支持板と、前記複数の貫通孔を覆うように前記支持板の第1面に固着された可撓性樹脂膜と、平面視において中央領域が対応する貫通孔と重合し且つ周縁領域が前記支持板の第1面と重合するように前記可撓性樹脂膜に固着された前記複数の貫通孔と同数の圧電素子とを備え、前記複数の圧電素子は、所定駆動周波数の駆動電圧信号の印加に応じて超音波を発生する送信用トランスデューサーを形成する複数の送信用圧電素子と、超音波の受信に応じて受信電圧信号を発生する受信用トランスデューサーを形成する一又は複数の受信用圧電素子とを含み、前記送信用トランスデューサーは前記駆動周波数の駆動電圧信号の印加に応じて共振せずに超音波を発生する非共振型とされる一方で、前記受信用トランスデューサーは前記駆動周波数に応じた周波数の超音波の受信によって共振する共振型とされている超音波トランスデューサーアレイを提供する。
【0018】
本発明の第1態様に係る超音波トランスデューサーアレイによれば、前記複数の送信用トランスデューサーから放射される音波の位相制御性能を向上させつつ、反射音波の受信に応じて前記受信用トランスデューサーが十分に大きな受信電圧信号を励起することができる。
【0019】
前記第1態様の第1形態においては、前記貫通孔群は、前記支持板のX-Y平面のX方向に所定のX方向配列ピッチで配置されたm個(mは3以上の整数)の前記貫通孔によって形成されるX方向列を有し得る。
【0020】
前記第1形態において、好ましくは、前記貫通孔群は、一の基準X方向列と前記基準X方向列のY方向に所定のY方向配列ピッチで配列された一又は複数の並列X方向列とを有し、前記一又は複数の受信用圧電素子は、前記基準X方向列を形成する一又は複数の貫通孔を平面視において覆うように配置され、前記送信用圧電素子のうち、前記受信用圧電素子のY方向に隣接する送信用圧電素子は、他の送信用圧電素子よりも厚さが小とされる。
【0021】
より好ましくは、前記並列X方向列は、前記基準X方向列のY方向一方側及び他方側にそれぞれ所定のY方向配列ピッチで隣接された第1隣接X方向列及び第2隣接X方向列を含み、前記送信用圧電素子のうち、前記受信用圧電素子のY方向一方側及び他方側にそれぞれ隣接する送信用圧電素子は、他の送信用圧電素子よりも厚さが小とされる。
【0022】
好ましくは、前記X方向配列ピッチ及び前記Y方向配列ピッチは同一間隔とされる。
【0023】
前記種々の構成において、好ましくは、前記受信用圧電素子は、前記X方向列のX方向に関する中心を基準として対称に配置される。
【0024】
前記種々の構成において、好ましくは、前記貫通孔は、前記支持板の第1面に開口された凹部と、前記凹部よりも開口幅が小とされた一端側の第1端部が前記凹部の底面に開口され且つ他端側の第2端部が前記支持板の第2面に開口された導波路とを含み得る。
【0025】
より好ましくは、前記導波路は、前記凹部の底面に開口された前記第1端部を含む筒状部と、前記支持板の第2面に開口された前記第2端部を含むホーン部とを有する。
【0026】
前記筒状部は、開口幅が前記凹部の開口幅より小で且つ厚み方向全域に亘って同一開口幅とされ、前記ホーン部は、前記筒状部に連通する基端側から前記支持板の第2面に開口された先端側に近接するに従って、開口幅が大きくなるように構成される。
【0027】
前記種々の構成において、好ましくは、前記送信用圧電素子は積層型とされ、前記受信用圧電素子は単層型とされる。
【0028】
前記種々の構成において、好ましくは、前記受信用圧電素子は前記送信用圧電素子よりも厚さが小とされる。
【0029】
本発明の第1態様に係る前記超音波トランスデューサーアレイは、前記複数の圧電素子をそれぞれ囲む大きさの複数の圧電素子用開口を有し且つ前記送信用圧電素子よりも厚みが大とされた下側封止板であって、平面視において前記複数の圧電素子が対応する前記圧電素子用開口内に位置するように前記可撓性樹脂膜に固着された下側封止板と、前記下側封止板に固着された配線アッセンブリとを備え得る。
【0030】
前記配線アッセンブリは、絶縁性のベース層と、前記ベース層に設けられた送信用配線及び受信用配線を含む導体層と、前記導体層を囲繞する絶縁性のカバー層とを有するものとされ、前記ベース層には、前記送信用配線のうち前記送信用圧電素子の電極との接続領域を露出させる送信用接続開口と、前記受信用配線のうち前記受信用圧電素子の電極との接続領域となる受信用接続領域を露出させる受信用接続開口とが設けられる。
【0031】
前記受信用圧電素子の厚さが前記送信用圧電素子の厚さよりも薄い構成においては、好ましくは、前記受信用接続領域には前記受信用接続開口を介して外方へ突出されたバンプが設けられる。
【0032】
前記第2の目的を達成するために、本発明の第2態様は、厚み方向一方側の第1面及び厚み方向他方側の第2面を有する剛性の支持板であって、第1及び第2面の間を貫通する複数の貫通孔を含む貫通孔群が設けられた支持板、前記複数の貫通孔を覆うように前記支持板の第1面に固着された可撓性樹脂膜、並びに、平面視において中央領域が対応する貫通孔と重合し且つ周縁領域が前記支持板の第1面と重合するように前記可撓性樹脂膜に固着された前記複数の貫通孔と同数の圧電素子を備え、前記貫通孔群は、前記支持板のX-Y平面のX方向に所定のX方向配列ピッチで配置されたm個(mは3以上の整数)の前記貫通孔によって形成されるX方向列を有し、前記複数の圧電素子は、所定駆動周波数の駆動電圧信号の印加に応じて超音波を発生する送信用トランスデューサーを形成する複数の送信用圧電素子と、超音波の受信に応じて受信電圧信号を発生する受信用トランスデューサーを形成する複数の受信用圧電素子とを含んでいる超音波トランスデューサーアレイと、前記複数の送信用圧電素子に印加する正弦波のバースト波駆動電圧信号であって、前記送信用トランスデューサーの共振周波数よりも低い前記所定駆動周波数の駆動電圧信号を前記複数の送信用圧電素子のそれぞれに対応した遅延時間で発生可能な送信信号発生装置と、前記複数の受信用圧電素子がそれぞれ発生する受信電圧信号の継続時間に対応する幅の検波信号を生成する複数の検波器と、前記複数の検波器が生成する検波信号をそれぞれ所定時間遅延可能な複数の遅延回路と、前記複数の遅延回路の出力信号を加算して加算受信電圧信号を生成する加算回路と、前記送信信号発生装置及び前記遅延回路の制御を司る制御装置と、前記制御装置から送られてくる駆動電圧信号に基づく送信タイミング信号及び前記加算回路から送られてくる加算受信電圧信号に基づく受信タイミング信号の時間差並びに前記制御装置から送られてくる方位角情報に基づき、障害物の位置を検出する検知装置とを備え、前記送信用トランスデューサーは前記駆動周波数の駆動電圧信号の受信に応じて共振せずに超音波を発生する非共振型とされる一方で、前記受信用トランスデューサーは前記駆動周波数に応じた周波数の超音波の受信によって共振する共振型とされている超音波フェイズドアレイセンサーを提供する。
【0033】
前記第2態様の好ましい形態においては、前記貫通孔群は、一の基準X方向列と前記基準X方向列のY方向に所定のY方向配列ピッチで配列された一又は複数のX方向列とを有するものとされ、前記複数の受信用圧電素子は、前記基準X方向列を形成する複数の貫通孔のうちの対応する貫通孔を平面視において覆うように配置され、前記送信信号発生装置は、前記送信用圧電素子のうち、Y方向に関し前記受信用圧電素子に隣接する送信用圧電素子に印加する駆動電圧信号の振幅を、他の送信用圧電素子に印加する駆動電圧信号の振幅よりも大きくするように構成される。
【0034】
より好ましくは、前記貫通孔群は、前記基準X方向列のY方向一方側及び他方側にそれぞれ所定のY方向配列ピッチで隣接された第1隣接X方向列及び第2隣接X方向列を含むものとされ、前記送信信号発生装置は、前記送信用圧電素子のうち、前記受信用圧電素子のY方向一方側及び他方側にそれぞれ隣接する送信用圧電素子に印加する駆動電圧信号の振幅を、他の送信用圧電素子に印加する駆動電圧信号の振幅よりも大きくするように構成される。
【0035】
前記第2態様のうち前記貫通孔群が前記基準X方向列を有する種々の構成において、好ましくは、前記複数の受信用圧電素子は、前記基準X方向列のX方向一端側及び他端側の貫通孔を平面視において覆うように配置される。
【0036】
前記第2態様の種々の構成において、前記貫通孔群は、一の基準X方向列と前記基準X方向列のY方向に所定のY方向配列ピッチで配列された一又は複数のX方向列とを有するものとされ、前記複数の受信用圧電素子は、前記基準X方向列を形成する複数の貫通孔のうちの対応する貫通孔を平面視において覆うように配置される。
【0037】
第1の形態においては、前記送信信号発生装置は、前記複数の送信用圧電素子毎に設けられた複数の信号発生手段を有するものとされる。
第2の形態においては、前記送信信号発生装置は、X方向同一位置に配置された送信用圧電素子毎に設けられた複数の信号発生手段を有するものとされ、X方向同一位置に配置された送信用圧電素子は、共通の信号発生手段から駆動電圧信号が供給されるように構成される。
【0038】
前記第2の目的を達成するために、本発明の第3態様は、厚み方向一方側の第1面及び厚み方向他方側の第2面を有する剛性の支持板であって、第1及び第2面の間を貫通する複数の貫通孔を含む貫通孔群が設けられた支持板、前記複数の貫通孔を覆うように前記支持板の第1面に固着された可撓性樹脂膜、並びに、平面視において中央領域が対応する貫通孔と重合し且つ周縁領域が前記支持板の第1面と重合するように前記可撓性樹脂膜に固着された前記複数の貫通孔と同数の圧電素子を備え、前記貫通孔群は、前記支持板のX-Y平面のX方向に所定のX方向配列ピッチで配置されたm個(mは3以上の整数)の前記貫通孔によって形成されるX方向列を有し、前記複数の圧電素子は、所定駆動周波数の駆動電圧信号の印加に応じて超音波を発生する送信用トランスデューサーを形成する複数の送信用圧電素子と、超音波の受信に応じて受信電圧信号を発生する受信用トランスデューサーを形成する単一の受信用圧電素子とを含んでいる超音波トランスデューサーアレイと、前記複数の送信用圧電素子に印加する正弦波のバースト波駆動電圧信号であって、前記送信用トランスデューサーの共振周波数よりも低い前記所定駆動周波数の駆動電圧信号を前記複数の送信用圧電素子のそれぞれに対応した遅延時間で発生可能な送信信号発生装置と、前記受信用圧電素子が発生する受信電圧信号の継続時間に対応する幅の検波信号を生成する検波器と、前記送信信号発生装置の制御を司る制御装置と、前記制御装置から送られてくる駆動電圧信号に基づく送信タイミング信号及び前記検波器から送られてくる検波信号に基づく受信タイミング信号の時間差並びに前記制御装置から送られてくる方位角情報に基づき、障害物の位置を検出する検知装置とを備え、前記送信用トランスデューサーは前記駆動周波数の駆動電圧信号の受信に応じて共振せずに超音波を発生する非共振型とされる一方で、前記受信用トランスデューサーは前記駆動周波数に応じた周波数の超音波の受信によって共振する共振型とされている超音波フェイズドアレイセンサーを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態1に係る空中超音波トランスデューサーアレイの部分縦断面図である。
【
図2】
図2は、
図1におけるII-II線に沿った前記アレイの部分平面図である。
【
図3】
図3は、前記実施の形態1の第1実施例モデルにおける送信用トランスデューサーの単体模式断面図である。
【
図4】
図4は、前記第1実施例モデルにおける32個の送信用圧電素子の全てに振幅10Vの正弦波の駆動電圧を印加した場合(第1実施例-(1))、前記第1実施例モデルにおける送信用圧電素子のうち走査方向とは直交する方向に関し受信用圧電素子に隣接する2個の送信用圧電素子には振幅15Vの正弦波の増強駆動電圧を印加し且つその他の30個の送信用圧電素子には振幅10Vの正弦波の駆動電圧を印加した場合(第1実施例-(2))、及び、前記第1実施例モデルにおける1個の受信用圧電素子が送信用圧電素子に変更されてなる比較例モデルにおける33個の送信用圧電素子の全てに振幅10Vの正弦波の駆動電圧を印加した場合(比較例)のそれぞれにおいて、駆動電圧の駆動周波数を25~60kHzの範囲で変化させて、駆動電圧の駆動周波数と前記第1実施例モデルが放射する音波の音圧レベルとの関係を有限要素法解析によって算出した結果を示すグラフである。
【
図5】
図5は、駆動電圧の駆動周波数を40kHzとした場合における前記第1実施例-(1)、前記第1実施例1-2及び前記比較例の放射音波の横方向の音圧指向性を有限要素法解析によって算出した結果を示すグラフである。
【
図6】
図6(a)~(c)は、それぞれ、受信感度に関する解析を行った受信用トランスデューサーモデルA~Cの模式断面図である。
【
図7】
図7は、導波路の先端側開口に入射された音圧Pの音波によって前記モデルA~Cを振動させた場合において、前記音波の周波数を25kHz~65kHzに変化させて、前記音波の周波数と受信感度(V/P)との関係を有限要素法解析によって算出した結果を示すグラフである。
【
図8】
図8(a)及び(b)は、それぞれ、前記実施の形態1に係るトランスデューサーアレイに備えられる送信用圧電素子の平面図及び
図8(a)におけるVIII-VIII線に沿った断面図である。
【
図9】
図9は、前記実施の形態1における
図2に対応した、本発明の実施の形態2に係るトランスデューサーアレイの部分平面図である。
【
図10】
図10は、前記第2実施例モデルにおける30個の送信用圧電素子の全てに振幅10Vの正弦波の駆動電圧を印加した場合(第2実施例-(1))、前記第2実施例モデルにおける送信用圧電素子のうち走査方向とは直交する方向に関し3個の受信用圧電素子に隣接する6個の送信用圧電素子には振幅15Vの正弦波の増強駆動電圧を印加し且つその他の24個の送信用圧電素子には振幅10Vの正弦波の駆動電圧を印加した場合(第2実施例-(2))、及び、前記第2実施例モデルにおける3個の受信用圧電素子が送信用圧電素子に変更されてなる比較例モデルにおける30個の送信用圧電素子の全てに振幅10Vの正弦波の駆動電圧を印加した場合(比較例)のそれぞれにおいて、駆動電圧の駆動周波数を25~60kHzの範囲で変化させて、駆動電圧の駆動周波数と前記第2実施例モデルが放射する音波の音圧レベルとの関係を有限要素法解析によって算出した結果を示すグラフである。
【
図11】
図11は、駆動電圧の駆動周波数を40kHzとした場合における前記第2実施例-(1)、前記第2実施例1-2及び前記比較例の放射音波の横方向の音圧指向性を有限要素法解析によって算出した結果を示すグラフである。
【
図12】
図12は、本発明の実施の形態3に係るフェイズドアレイセンサーの模式ブロック図である。
【
図13】
図13は、前記フェイズドアレイセンサーにおける制御装置及び送信側ユニットの模式ブロック図である。
【
図14】
図14は、前記フェイズドアレイセンサーにおける前記制御装置及び受信側ユニットの模式ブロック図である。
【
図15】
図15は、前記送信側ユニットから供給される駆動電圧信号によって、走査方向(X方向)に沿って配列された複数の送信用圧電素子を含むトランスデューサーアレイが超音波を放射する際の模式動作説明図である。
【
図16】
図16は、前記受信側ユニットによって行われる受信電圧信号処理の模式図である。
【
図17】
図17(a)は、
図16に後続する受信電圧信号処理の模式図である。
図17(b)は、前記加算器の出力信号に基づいて生成される受信電圧信号の受信タイミング信号であり、
図17(c)は、前記制御装置から送られてくる信号に基づいて生成される駆動電圧信号の送信タイミング信号である。
【
図18】
図18は、前記実施の形態3の第1変形例に係るフェイズドアレイセンサーの模式ブロック図である。
【
図19】
図19は、前記実施の形態3の第2変形例に係るフェイズドアレイセンサーの模式ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
実施の形態1
以下、本発明に係る空中超音波トランスデューサーアレイの一実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図1に、本実施の形態に係るトランスデューサーアレイ101の部分縦断面図を示す。
また、
図2に、
図1におけるII-II線に沿った前記アレイ101の部分平面図を示す。
【0041】
図1及び
図2に示すように、前記トランスデューサーアレイ101は、
・厚み方向一方側の第1面121及び厚み方向他方側の第2面122を有する剛性の支持板120であって、第1及び第2面121、122の間を貫通する複数の貫通孔125を含む貫通孔群が設けられた支持板120と、
・前記複数の貫通孔125を覆うように前記支持板120の第1面121に固着された可撓性樹脂膜130と、
・平面視において中央領域が対応する貫通孔125と重合し且つ周縁領域が前記支持板120の第1面121と重合するように前記可撓性樹脂膜130に固着された前記複数の貫通孔125と同数の圧電素子と、
を備えている。
【0042】
前記複数の圧電素子及び前記可撓性樹脂膜130の対応する部分が複数のトランスデューサー110を形成している。
【0043】
前記複数の圧電素子は、所定駆動周波数(30kHz~50kHzの範囲内で、例えば40kHz)の駆動電圧信号の印加に応じて超音波を発生する送信用トランスデューサーを形成する複数の送信用圧電素子140と、超音波の受信に応じて受信電圧信号を発生する受信用トランスデューサーを形成する一又は複数の受信用圧電素子141とを含んでいる。
【0044】
図2に示すように、本実施の形態においては、前記複数の圧電素子は、32個の送信用圧電素子140と1個の受信用圧電素子141とを有している。
なお、前記受信用圧電素子141は、理解容易化の為に、
図2において塗りつぶされている。
【0045】
前記送信用圧電素子140は、前記可撓性樹脂膜130の対応する部分と共働して、当該送信用圧電素子140への前記所定駆動周波数の駆動電圧信号の印加に応じて超音波を発生する前記送信用トランスデューサーを形成する。
【0046】
本実施の形態においては、下記構成を備えることによって、前記送信用トランスデューサーは、最低次の共振モードの周波数が前記駆動周波数よりも高く設定されつつ、当該送信用トランスデューサーの最低次の共振モードの周波数よりも低い前記所定駆動周波数の駆動電圧信号の前記送信用圧電素子への印加に応じて、有効に超音波を発生する非共振型とされている。
【0047】
前記支持板120は、剛性を有する種々の部材によって形成することができ、ステンレス等の金属、好ましくは、金属よりも密度が小さく且つヤング率の高いSiC、Al2O3等のセラミックス材料によって形成することができる。
【0048】
前記複数の貫通孔125は、平面視において前記複数の送信用圧電素子140によってそれぞれ覆われる複数の送信用貫通孔125aと、平面視において前記一又は複数の受信用圧電素子141(本実施の形態においては1個の受信用圧電素子141)によって覆われる一又は複数の受信用貫通孔125b(本実施の形態においては1個の受信用貫通孔125b)とを含んでいる。
【0049】
図1に示すように、前記送信用貫通孔125aは、前記支持板120の第1面121に開口された凹部126aと、前記凹部126aよりも開口幅が小とされた一端側の第1端部が前記凹部126aの底面に開口され且つ他端側の第2端部が前記支持板120の第2面122に開口された導波路127aとを含んでいる。
【0050】
前記導波路127aは、前記凹部126aの底面に開口された前記第1端部を含む筒状部128aと、前記支持板120の第2面122に開口された前記第2端部を含むホーン部129aとを有している。
【0051】
前記筒状部128aは、開口幅が前記凹部126aの開口幅より小で且つ厚み方向全域に亘って同一開口幅とされている。
【0052】
前記ホーン部129aは、前記筒状部128aに連通する基端側から前記支持板120の第2面122に開口された先端側に近接するに従って、開口幅が大きくなるように構成されている。
【0053】
本実施の形態においては、前記受信用貫通孔125bは、前記送信用貫通孔125aと実質的に同一構成を有している。
【0054】
即ち、前記受信用貫通孔125bは、前記支持板120の第1面121に開口された凹部126bと、前記凹部126bよりも開口幅が小とされた一端側の第1端部が前記凹部126bの底面に開口され且つ他端側の第2端部が前記支持板120の第2面122に開口された導波路127bとを含んでいる。
【0055】
前記導波路127bは、前記凹部126bの底面に開口された前記第1端部を含む筒状部128bと、前記支持板120の第2面122に開口された前記第2端部を含むホーン部129bとを有している。
【0056】
前記筒状部128bは、開口幅が前記凹部126bの開口幅より小で且つ厚み方向全域に亘って同一開口幅とされている。
【0057】
前記ホーン部129bは、前記筒状部128bに連通する基端側から前記支持板120の第2面122に開口された先端側に近接するに従って、開口幅が大きくなるように構成されている。
【0058】
なお、前記受信用貫通孔125bを前記送信用貫通孔125aとは異なる構成とすることも可能である。
【0059】
図1に示すように、本実施の形態においては、前記支持板120は、前記複数の凹部126が形成する開口が設けられた上部支持板120(1)と、前記複数の導波路125が形成された下部支持板120(2)とを有し、前記上部支持板120(1)及び前記下部支持板120(2)が固着されてなる積層構造体とされている。
【0060】
当然ながら、これに代えて、前記支持板120を、前記複数の凹部126が形成された部分及び前記複数の導波路125が形成された部分を一体的に備えた単一構造体とすることも可能である。
【0061】
前記可撓性樹脂膜130は、例えば、厚さ20μm~100μmのポリイミド等の絶縁性樹脂によって形成される。
前記可撓性樹脂膜130は、接着剤又は熱圧着等の種々の方法によって前記支持板120に固着される。
【0062】
前記送信用圧電素子140は、平面視において中央領域が対応する凹部126aと重合し且つ周縁領域が前記支持板120の第1面121と重合するように、前記可撓性樹脂膜130の第1面(前記支持板120とは反対側の面)に固着されている。
【0063】
即ち、前記送信用圧電素子140の剛性及び前記送信用圧電素子140と前記支持板120の第1面121との平面視重合幅は、前記送信用トランスデューサーの最低次の共振モードの周波数が前記駆動周波数よりも高くなり、且つ、当該送信用トランスデューサーの最低次の共振モードの周波数よりも低い前記所定駆動周波数の駆動電圧信号の前記送信用圧電素子140への印加に応じて、有効に超音波を発生するように、設定される。
【0064】
例えば、前記駆動周波数が30kHz~50kHzとされる場合には、前記送信用トランスデューサーの共振周波数は、例えば、70kHz~80kHzとなるように設定される。
【0065】
このように、前記送信用トランスデューサーを非共振型とすることにより、以下の効果が奏される。
即ち、前記送信用トランスデューサーを形成する複数の送信用圧電素子140が所定間隔で直線状に配置されているフェイズドアレイによって、数メートル先の物体を検知する為には、前記複数の送信用圧電素子140によって形成される複数の送信用トランスデューサーから放射される音波の位相を精密に制御する必要がある。
【0066】
例えば、ステンレス等の剛性の振動板に直接的に複数の送信用圧電素子が並列配置されている構成のフェイズドアレイにおいては、前記剛性振動板の剛性に抗して前記送信用圧電素子を伸縮させ、それによって前記送信用圧電素子及び前記剛性振動板によって形成される振動体(トランスデューサー)を所定の振幅でたわみ振動させて、発生音圧の大きさを確保する必要がある。
【0067】
その為には、前記送信用圧電素子への印可電圧の周波数(駆動周波数)を、当該送信用圧電素子によって形成される送信用トランスデューサーのたわみ振動の共振周波数の近傍に設定する必要がある。
【0068】
しかしながら、前記送信用圧電素子への印可電圧に対する、当該送信用圧電素子によって形成される送信用トランスデューサーのたわみ振動の周波数応答は、当該トランスデューサーの共振周波数近傍において位相が大きく変化する。
【0069】
従って、フェイズドアレイセンサーとして機能させるべく、前記複数の送信用トランスデューサーが発生する音波の位相を精密に制御する為には、前記複数の送信用トランスデューサー間における共振周波数に関する「ばらつき」を極限まで抑制する必要があるが、これは非常に難しい。
【0070】
この点に関し、前記超音波トランスデューサーアレイ101は、前述の通り、第1面121及び第2面122を貫通する複数の前記送信用貫通孔125aが設けられた前記剛性の支持板120と、前記複数の送信用貫通孔125aを覆うように前記支持板120の第1面121に固着された可撓性樹脂膜130と、平面視において中央領域が対応する前記送信用貫通孔125aと重合し且つ周縁領域が前記支持板120の第1面121と重合するように前記可撓性樹脂膜130の第1面131に固着された前記複数の送信用圧電素子140とを有している。
【0071】
斯かる構成によれば、前記送信用圧電素子140によって形成される送信用トランスデューサーのたわみ振動の共振周波数が、前記送信用圧電素子140に印加する電圧信号の駆動周波数よりも高くなるように設定しても、前記送信用トランスデューサーの放射音波の音圧を十分に確保することができる。
【0072】
しかも、前記送信用トランスデューサーの共振周波数が前記送信用圧電素子140に印加する駆動周波数よりも高い場合には、前記複数の送信用トランスデューサー間において共振周波数の「ばらつき」があったとしても、前記複数の送信用トランスデューサーのたわみ振動の周波数応答の位相に大きな差異は生じない。
従って、前記複数の送信用トランスデューサーが発生する音波の位相を精密に制御することができる。
【0073】
詳しくは、前記超音波トランスデューサーアレイ101によって数メートル先の物体を検知する為には、前記送信用圧電素子140によって形成される送信用トランスデューサーが放射する超音波の周波数を30~50kHz程度の低周波数とする必要がある。
【0074】
前記送信用トランスデューサーの共振周波数を、前記送信用圧電素子140の駆動周波数(30~50kHz)よりも十分に高い共振周波数(例えば、70kHz)とした場合、前記送信用圧電素子140の平面視縦横寸法を大きくした方が、前記送信用トランスデューサーが発生する超音波の音圧を高くすることができる。
【0075】
しかしながら、その一方で、前記トランスデューサーアレイ101におけるように、複数の送信用トランスデューサー(複数の送信用圧電素子140)が所定間隔で直線状に配置されてなる場合においては、前記複数の送信用トランスデューサーから放射される音波においてグレーティングローブの発生を抑制する為に、前記複数の送信用トランスデューサー(複数の送信用圧電素子140)の配列ピッチを当該送信用トランスデューサーが放射する超音波の波長λの1/2以下にする必要がある。
【0076】
温度20℃の空気中の周波数40kHzの超音波の波長λは8.6mmであるから、前記送信用トランスデューサーが放射する超音波の周波数を40kHzとしつつ、グレーティングローブの発生を抑制する為に、前記複数の送信用トランスデューサー(複数の送信用圧電素子140)の配列ピッチde(
図2参照)を8.6mm/2=4.3mm以下にする必要がある。
【0077】
従って、好ましくは、前記送信用圧電素子140の平面視縦横寸法は、音圧の確保の観点では3.0mm以上で、且つ、グレーティングローブの発生を抑制する観点では4.0mm以下とされる。
【0078】
なお、本実施の形態においては、前記送信用圧電素子140は、平面視正方形状とされているが、これに代えて、前記送信用圧電素子140の平面視形状を、平面視縦横寸法の最大値が4.30mm以下の長方形を含む矩形状、直径が4.0mm以下の円形状、又は、長径が4.0mm以下の楕円形状とすることも可能である。
【0079】
前記凹部125aの開口幅は、前記送信用圧電素子140及び前記可撓性樹脂膜130が形成する送信用トランスデューサーのたわみ振動の最低次の共振モードの周波数が当該送信用圧電素子140への印加電圧信号の周波数(駆動周波数)よりも大となるように、設定される。
【0080】
好ましくは、前記凹部125aは、前記送信用圧電素子140の周縁領域と前記支持板120との平面視重合幅が前記送信用圧電素子140の全周に亘って0.05mm~0.1mmとなるように、前記送信用圧電素子140の平面視相似形状とされる。
【0081】
即ち、仮に、前記送信用圧電素子140が一辺4.0mmの平面視正方形状とされている場合には、前記凹部125aは、好ましくは、一辺3.8mm~3.9mmの平面視正方形状とされ、前記送信用圧電素子140が直径4.0mmの平面視円形状とされている場合には、前記凹部125aは、好ましくは、直径3.8mm~3.9mmの平面視円形状とされる。
【0082】
前記送信用トランスデューサーは、最低次の共振モードの周波数が駆動周波数の1.5倍以上となるように構成される。即ち、例えば、駆動周波数が40kHzの場合には、前記送信用トランスデューサーは、最低次の共振モードの周波数が60kHz(=1.5×40Hz)以上となるように構成される。
【0083】
さらに、前記超音波トランスデューサーアレイ101においては、前記送信用貫通孔125aは、前記支持板120の第1面121に開口された凹部126aと、前記凹部126aよりも開口幅が小とされた一端側の第1端部が前記凹部126aの底面に開口され且つ他端側の第2端部が前記支持板120の第2面122に開口された導波路127aとを含んでおり、前記導波路127aは、前記凹部126aの底面に開口された前記第1端部を含む筒状部128aと、前記支持板120の第2面122に開口された前記第2端部を含むホーン部129aとを有している。
斯かる構成によって、前記送信用トランスデューサーの放射音波の音圧のさらなる確保を図っている。
【0084】
図2に示すように、本実施の形態においては、前記送信用貫通孔125a及び前記受信用貫通孔125bを含む前記貫通孔群は、前記支持板120のX-Y平面のX方向に所定のX方向配列ピッチdeで配置されたm個(mは3以上の整数、本実施の形態においては11個)の前記貫通孔125によって形成されるX方向列を有している。
【0085】
前記貫通孔群は、単一の前記X方向列を有することもできるし、X-Y方向のY方向に所定のY方向配列ピッチPyで配列された複数の前記X方向列を有することも可能である。
【0086】
本実施の形態においては、
図2に示すように、前記貫通孔群は、一の基準X方向列110Aと、前記基準X方向列110AのY方向一方側及び他方側にそれぞれY方向配列ピッチPyで配列された第1隣接X方向列110(1)及び第2隣接X方向列110(2)とを含む3つのX方向列を有している。
【0087】
前記基準X方向列110Aを形成するm個(本実施の形態においては11個)の前記貫通孔125のうちの一つが前記受信用貫通孔125bとされ、残りの前記貫通孔125が前記送信用貫通孔125aとされている。
【0088】
そして、前記送信用圧電素子140及び前記受信用圧電素子141が、それぞれ、対応する前記送信用貫通孔125a及び前記受信用貫通孔125bを平面視で覆うように配置されている。
【0089】
なお、
図1及び
図2中の符号140、141の後に付記されているカッコ内の数字は、XY座標位置(X方向位置及びY方向位置)を示している。
即ち、カッコ内の前側の数字は前記圧電素子140、141のX方向位置(X方向一端(
図2において左端)を第1番目とした場合のX方向位置)を示し、後側の数字は前記圧電素子140、141のY方向位置(Y方向一端(
図2において上端)を第1番目とした場合のY方向位置)を示している。
【0090】
具体的には、例えば、(1,1)は、X方向一端側から第1番目で且つY方向一端側から第1番目の位置を意味し、(2,3)は、X方向一端側から第2番目で且つY方向一端側から第3番目の位置を意味している。
【0091】
図2に示すように、本実施の形態においては、前記受信用圧電素子141は、(6,2)で表示される位置(即ち、X方向中央(図示の構成においてはX方向一端側から第6番目)で且つY方向中央(図示の構成においてはY方向一端側から第2番目)の位置)に配置されている。
【0092】
ここで、
図2に示すように、前記受信用圧電素子141を挟んでX方向に隣接される前記送信用圧電素子141(図示の構成においては、送信用圧電素子140(5,2)及び送信用圧電素子140(7,2))の間のX方向配列ピッチは、所定配列ピッチdeではなく、2×deとなる。
【0093】
このように、前記アレイ101のうちの一部において送信用圧電素子のX方向配列ピッチが所定のX方向配列ピッチdeよりも大きくなる構成においては、前記複数の送信用トランスデューサーから放射される音波が所望の音圧レベルに達しない恐れがある。
【0094】
この点に関し、本願発明者は、
図2に示す本実施の形態に係る超音波トランスデューサーアレイ101と同一配列のモデル、即ち、Y方向に関し中央に位置する基準X方向列110AのX方向中央に前記受信用圧電素子141が配置され、その他の32個の圧電素子が前記送信用圧電素子140とされたモデル(以下、第1実施例モデルという)を用いて、放射音波の音圧レベル(Sound Pressure Level、以下、SPLと称する)に関し有限要素法解析(以下、FEM解析と称する)を行った。
【0095】
図3に、前記第1実施例モデルにおいて用いた送信用トランスデューサーの単体模式断面図を示す。
【0096】
前記第1実施例モデルの形状・寸法は以下の通りである。
・送信用圧電素子140
チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)
密度7.97×103kg/m3
一層の厚さが0.13mmの2層積層型(合計厚さ0.26mm)
一辺の長さ3.4mmの平面視正方形状
・可撓性樹脂膜130
厚さ0.05mmのポリイミドフィルム
・上部支持板120(1)
厚さ0.1mmのSUS304
・凹部126a(上部支持板120(1)に形成された開口)
一辺の長さ3.3mmの平面視正方形状
・下部支持板120(2)
厚さ3.25mmのアルミナ(Al2O3)
・下部支持板120(2)に形成された導波路127a
前記導波路127aは、直径1.5mm且つ長さ0.5mmの筒状部128aと、先端側の開口直径が3.7mmとされた長さ2.75mmのホーン部129aとを有している。
【0097】
前記第1実施例モデルにおける送信用圧電素子140の全て(32個)に振幅10Vの正弦波の電圧を印加した場合を第1実施例-(1)とし、駆動電圧の駆動周波数を当該送信用圧電素子140が形成する送信用トランスデューサーの共振周波数(約80kHz)よりも低い周波数の範囲(25~60kHz)で変化させて、FEM解析によって駆動周波数毎のSPLを算出した。
第1実施例-(1)の解析結果を
図4に示す。
【0098】
また、前記第1実施例モデルにおける送信用圧電素子140の全て(32個)のうち、前記受信用圧電素子141のY方向一方側及び他方側にそれぞれ隣接された第1及び第2隣接送信用圧電素子(
図2における送信用圧電素子140(6,1)及び送信用圧電素子(6,3))には振幅を15Vに増強した正弦波の増強駆動電圧を印加し、その他の30個の送信用圧電素子140には振幅10Vの正弦波の駆動電圧を印加した場合を第1実施例-(2)とし、駆動電圧の駆動周波数を同様に変化させて、FEM解析によって駆動周波数毎のSPLを算出した。
第1実施例-(2)の解析結果を
図4に併せて示す。
【0099】
この第1実施例-(2)は、前記受信用圧電素子141を配置させた為に、位置(6,2)に配置できなくなった送信用圧電素子の放射音波を、増強された駆動電圧が印加される第1及び第2隣接送信用圧電素子(
図2における送信用圧電素子140(6,1)及び送信用圧電素子(6,3))によってカバーすることを意図したものである。
【0100】
さらに、前記第1実施例モデルにおける受信用圧電素子141を送信用圧電素子140に変更した構成、即ち、11×3個の圧電素子の全てが送信用圧電素子140とされた構成(比較例モデル)において、全て(33個)の送信用圧電素子140に振幅10Vの正弦波の電圧を印加した場合を比較例とし、駆動電圧の駆動周波数を同様の範囲(10~70kHz)で変化させて、FEM解析によって駆動周波数毎のSPLを算出した。
その結果を比較例として
図4に併せて示す。
【0101】
図4に示すように、前記第1実施例-(1)では比較例より若干音圧レベルは低下するが、前記第1実施例-(2)では駆動周波数の変化範囲の全域に亘って前記比較例と同程度の音圧レベルを有していることが確認された。
【0102】
また、駆動電圧の駆動周波数が40kHzとされた場合における前記第1実施例-(1)、前記第1実施例1-2及び前記比較例の放射音波の横方向の音圧指向性をFEM解析によって算出した。
その結果を
図5に示す。
【0103】
図5に示すように、音圧指向性に関しても、前記第1実施例-(1)及び前記第1実施例1-2共に、前記比較例に対して遜色ないことが確認された。
【0104】
なお、前記第1実施例においては、前記送信用圧電素子140の全てを同一構成としつつ、前記第1及び第2隣接送信用圧電素子に印加する駆動電圧信号の振幅を、他の送信用圧電素子に印加する駆動電圧信号の振幅よりも大とすることによって、前記第1及び第2隣接送信用圧電素子の振幅を他の送信用圧電素子の振幅よりも大とし、これにより、前記受信用圧電素子141を備えたことによる、放射音波の音圧レベルの低下を防止乃至は低減しているが、これに代えて、下記構成によって前記放射音波の音圧レベルの低下の防止乃至は低減を図ることも可能である。ただし、この場合は共振周波数が駆動周波数より高い領域に維持できるように圧電素子厚を決めることが必要となる。
【0105】
即ち、前記第1及び第2隣接送信用圧電素子として他の送信用圧電素子よりも厚さ小の圧電素子を用いることによって、同一振幅の駆動電圧信号が印加された場合において、前記第1及び第2隣接送信用圧電素子の振動変位を他の送信用圧電素子の振動変位よりも大きくすることができ、これによって、前記放射音波の音圧レベルの低下の防止乃至は低減を図ることができる。
【0106】
好ましくは、
図1に示すように、前記受信用圧電素子141は、X方向列のX方向中心を基準にして対称に配置され、これにより、有効に反射音波を受信し得るようになっている。
本実施の形態に係る前記トランスデューサーアレイ101は、単一の前記受信用圧電素子141(6,2)を有している。この場合、前記受信用圧電素子141(6,2)は、X方向列のX方向中央に配置される。
【0107】
次に、前記受信用圧電素子141及び前記可撓性樹脂膜130の対応する部分によって形成される前記受信用トランスデューサーについて説明する。
【0108】
本実施の形態においては、前記受信用トランスデューサーは、前記駆動周波数に応じた周波数の超音波の受信によって共振する共振型とされている。
【0109】
即ち、前記受信用トランスデューサーは、最低次の共振モードの周波数が前記所定駆動周波数と同一又は近傍になるように構成されている。
【0110】
詳しくは、前記受信用トランスデューサーは、最低次の共振モードの周波数が駆動周波数の0.8倍~1.2倍の範囲内となるように構成される。即ち、例えば、駆動周波数が40kHzの場合には、前記受信用トランスデューサーは、最低次の共振モードの周波数が32kHz(=0.8×40Hz)~48kHz×(=1.2×40Hz)となるように構成される。
【0111】
ここで、前記受信用貫通孔125bの形状に関し、本願発明者が行なった解析について説明する。
【0112】
図6(a)~(c)に、本解析で用いた受信用トランスデューサーモデルA~Cの模式断面図を示す。
【0113】
モデルA~Cの構成は以下の通りである。
モデルA
・受信用圧電素子141
チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)
密度7.97×103kg/m3
厚さ0.08mm、一辺の長さ3.4mmの平面視正方形状
・可撓性樹脂膜130
厚さ0.05mmのポリイミドフィルム
・上部支持板120(1)
厚さ0.1mmのSUS304
・凹部126b(上部支持板120(1)に形成された開口)
一辺の長さ3.3mmの平面視正方形状
・下部支持板120(2)
厚さ3.25mmのアルミナ(Al2O3)
・下部支持板120(2)に形成された導波路127b
下部支持板120(2)の厚さ方向全域に亘って形成された直径3.7mmの筒状部128b
【0114】
前記モデルB及びCは、前記モデルAに比して、前記導波路127bのみ変更されている。
即ち、前記モデルBにおける導波路127bは、直径2.5mm且つ長さ1.75mmの筒状部128bと、先端側の開口直径が3.7mmとされた長さ1.5mmのホーン部129bとを有している。
【0115】
前記モデルCにおける導波路127bは、直径1.5mm且つ長さ0.5mmの筒状部128bと、先端側の開口直径が3.7mmとされた長さ2.75mmのホーン部129bとを有している。
なお、前記モデルCは、前記送信用圧電素子141が前記受信用圧電素子140に変更されている点を除き、前記第1実施例モデルと同一構成である。
【0116】
前記モデルA~Cに対して、前記導波路127bの先端側開口に入射された音圧Pの音波が前記導波路127b及び前記凹部126b内を伝播して前記受信用トランスデューサーを振動させ、この振動によって前記受信用圧電素子141が発生する受信電圧信号の電圧Vを有限要素解析によって求め、V/Pを受信感度として算出した。
前記音波の周波数を25kHz~65kHzに変化させて、それぞれの周波数の音波に対してV/Pを算出した。
【0117】
この解析結果を
図7に示す。
なお、
図7の縦軸に示す感度はデシベル表記であり、0dB=10V/P としている。
【0118】
図7に示されるように、想定される駆動電圧の駆動周波数の範囲(30kHz~50kHz)においては、前記モデルCが最も良好であることが確認された。
【0119】
斯かる解析に基づき、本実施の形態においては、
図1に示すように、前記受信用貫通孔125bは前記送信用貫通孔125aと同一形状とされている。
【0120】
次に、前記圧電素子140、141の詳細構成について説明する。
図8(a)、前記送信用圧電素子140の平面図を示す。
また、
図8(b)に、
図8(a)におけるVIII-VIII線に沿った断面図を示す。
【0121】
図1及び
図8(b)に示すように、本実施の形態においては、前記送信用圧電素子140は積層型とされている。
積層型圧電素子は、単層型圧電素子に比して、同一電圧印可時に電界強度を高めることができ、印可電圧当たりの伸縮変位を大きくすることができる。
【0122】
詳しくは、前記送信用圧電素子140として用いられる積層型圧電素子は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電材によって形成される前記圧電素子本体142と、前記圧電素子本体142を厚み方向に関し上方側の第1圧電部位142a及び下方側の第2圧電部位142bに区画する内側電極144と、前記第1圧電部位142aの上面の一部に固着された上面電極146と、前記第2圧電部位142bの下面に固着された下面電極147と、一端部が前記内側電極144に電気的に接続され且つ他端部が前記上面電極146とは絶縁状態で前記第1圧電部位142aの上面においてアクセス可能な内側電極端子144Tを形成する内側電極用接続部材145と、一端部が前記下面電極147に電気的に接続され且つ他端部が前記上面電極146及び前記内側電極34とは絶縁状態で前記第1圧電部位32aの上面においてアクセス可能な下面電極端子147Tを形成する下面電極用接続部材148とを有している。
【0123】
この場合、前記上面電極146及び前記下面電極147によって形成される外側電極が第1及び第2電極の一方として作用し、前記内側電極144が第1及び第2電極の他方として作用する。
【0124】
前記積層型圧電素子140においては、前記第1及び第2圧電部位142a、142bは、分極方向が厚み方向に関し同一とされており、これにより、前記外側電極及び前記内側電極144の間に所定の電圧を所定周波数で印可することによって、前記第1及び第2圧電部位142a、142bには互いに対して逆方向の電界が加わるようになっている。
【0125】
前述の通り、前記上面電極146及び前記下面電極147は互いに対して絶縁されており、従って、前記圧電素子140を作成する際には、前記上面電極146及び前記下面電極147の間に電圧を印可することによって、前記第1及び第2圧電部位142a、142bの分極方向を同一とすることができる。
【0126】
一方、
図1に示すように、前記受信用圧電素子141は、前記送信用圧電素子140よりも薄い単層型とされている。
【0127】
斯かる構成によれば、前記受信用圧電素子141の剛性を前記送信用圧電素子140の剛性よりも弱めて、これにより、前記受信用圧電素子141が形成する前記受信用トランスデューサーの共振周波数を駆動周波数と同一又は近傍としつつ、前記送信用圧電素子140が形成する前記送信用トランスデューサーの共振周波数を駆動周波数よりも有効に高めることができる。
【0128】
図1に示すように、本実施の形態に係る前記トランスデューサーアレイ101は、さらに、下側封止板150及び配線アッセンブリ180を有している。
【0129】
前記下側封止板150は、前記複数の圧電素子をそれぞれ囲む大きさの複数の圧電素子用開口を有しており、平面視において前記複数の圧電素子が前記複数の圧電素子用開口内に位置するように前記可撓性樹脂膜130の第1面に接着剤又は熱圧着等によって固着されている。
【0130】
図1に示すように、前記下側封止板150の厚さは、前記送信用圧電素子140の厚さよりも大とされており、前記可撓性樹脂膜130の第1面に固着された状態において前記下側封止板150の第1面が、前記送信用圧電素子140における前記上面電極146、前記下面電極端子147T及び前記内側電極端子144T(
図8参照)よりも前記可撓性樹脂膜130から離間されている。
【0131】
前記下側封止板150は、ステンレス等の金属や炭素繊維強化プラスチック及びセラミックス等の剛性部材によって形成される。
前記下側封止板150は、前記複数の圧電素子を含む圧電素子群の側方を封止するとともに、前記配線アッセンブリ180が固着される基台として作用する。
【0132】
前記配線アッセンブリ180は、下記送信側ユニットから供給される駆動電圧信号を前記複数の送信用圧電素子140に伝達し、且つ、前記受信用電圧素子141が発生する受信電圧信号を下記受信側ユニット300へ伝達する為の信号伝達経路を形成する。
【0133】
図1に示すように、前記配線アッセンブリ180は、前記下側封止板150に接着剤等によって固着される絶縁性ベース層182と、前記ベース層182に固着された導体層185と、前記導体層185を囲繞する絶縁性のカバー層187とを有している。
【0134】
前記ベース層182及び前記カバー層187は、例えば、ポリイミド等の絶縁性樹脂によって形成される。
前記導体層185は、例えば、Cu等の導電性金属によって形成される。
好ましくは、前記導体層185を形成するCuの露出部分にNi/Auメッキを施すことができる。
【0135】
前記導体層185は、前記複数の送信用圧電素子140にそれぞれ接続される複数の送信用配線と、前記一又は複数の受信用圧電素子141(本実施の形態においては、単一の受信用圧電素子)に接続される一又は複数の受信用配線とを有している。
【0136】
前記送信用配線は、対応する前記送信用圧電素子140の第1電極(本実施の形態においては外側電極146、147)及び第2電極(本実施の形態においては内側電極144)にそれぞれ接続される送信用第1電極配線185a及び送信用第2電極配線185bを含んでいる。
【0137】
同様に、前記受信用配線は、対応する前記受信用圧電素子141の第1電極(例えば下面電極)及び第2電極(例えば上面電極)にそれぞれ受信用第1電極配線186a及び受信用第2電極配線186bを含んでいる。
【0138】
前記ベース層182には、前記送信用第1電極配線185a及び前記送信用第2電極配線185bのうち前記送信用圧電素子140の対応する電極との接続領域を露出させる送信用第1電極接続開口及び送信用第2電極接続開口と、前記受信用第1電極配線186a及び前記受信用第2電極配線186bのうち前記受信用圧電素子141の対応する電極との接続領域を露出させる受信用第1電極接続開口及び受信用第2電極接続開口とが設けられている。
【0139】
前記送信用第1電極配線185a及び前記送信用第2電極配線186bのうち前記送信用第1電極接続開口及び前記送信用第2電極接続開口を介して露出される接続領域は、例えば、導電性接着剤又ははんだによって対応する前記送信用圧電素子の電極に直接的に電気的に接続される。
【0140】
一方、前述のように、前記受信用圧電素子141は前記送信用圧電素子140よりも薄い為、前記受信用第1電極配線186a及び前記受信用第2電極配線186bと前記受信用圧電素子141との間の離間距離は、比較的大きくなる。
【0141】
この点を踏まえて、
図2に示すように、本実施の形態においては、前記受信用第1電極配線186a及び前記受信用第2電極配線186bのうち前記受信用第1電極接続開口及び前記受信用第2電極接続開口を介して露出される接続領域には、Cu等の導電性材料からなるバンプ189が設けられている。
【0142】
そして、前記受信用第1電極配線186a及び前記受信用第2電極配線186bは、それぞれ、前記バンプ189を介して、例えば、導電性接着剤又ははんだによって対応する前記受信用圧電素子141の電極に電気的に接続される。
【0143】
かかる構成によれば、厚みの小さい前記受信用圧電素子141と対応する前記受信用配線186a、186bとの間の電気接続を、厚みの大きい前記送信用圧電素子140と対応する前記送信用配線185a、185bとの間を電気接続する導電性接着材又ははんだと同程度の量(高さ)の導電性接着材又ははんだによって行うことができ、安定した電気接合を得ることができる。
【0144】
なお、前記バンプ189の表面には、酸化及び/又は腐食等を防止する為のNi/Au層を設けることができる。
前記Ni/Au層は、厚さ数ミクロン以下とされ、好ましくは、前記配線アッセンブリ180を製造する際に、前記受信用配線186a、186bの接続領域に形成される。
【0145】
図1に示すように、前記トランスデューサーアレイ101は、さらに、前記下側封止板150及び前記配線アッセンブリ180の上面に柔軟性樹脂155を介して固着された上側封止板160を有している。
前記上側封止板160は、前記複数の圧電素子のそれぞれに対応した位置に開口部162を有している。
【0146】
前記上側封止板160を備えることにより、前記トランスデューサーの振動動作への影響を可及的に防止しつつ、前記配線アッセンブリ180の支持安定化を図ることができる。
【0147】
前記上側封止板160は、例えば、厚さ0.1mm~0.3mmのステンレス等の金属や炭素繊維強化プラスチック及びセラミックス等によって形成される。
【0148】
前記トランスデューサーアレイ101は、さらに、前記上側封止板160の複数の開口部162を覆うように前記上側封止板160の上面に接着等によって固着された吸音材165を備えている。
【0149】
前記吸音材165は、例えば、厚さ0.3mm~1.5mm程度のシリコーン樹脂又は他の発泡性樹脂によって形成される。
【0150】
前記吸音材165を備えることにより、前記トランスデューサーによって生成される超音波が放射されるべき側(
図1において下側)とは反対側へ放射されることを有効に抑制することができる。
【0151】
前記トランスデューサーアレイ101は、さらに、前記吸音材165の上面に接着等によって固着された補強板170を備えている。
【0152】
前記補強板170は、例えば、厚さ0.2mm~0.5mm程度のステンレス等の金属や炭素繊維強化プラスチック及びセラミックス等によって形成される。
【0153】
前記補強板170を備えることにより、外力が前記基板120及び前記圧電素子140に影響を与えることを可及的に防止することができる。
【0154】
実施の形態2
以下、本発明に係る空中超音波トランスデューサーアレイの他の実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図9に、前記実施の形態1における
図2に対応した、本実施の形態に係るトランスデューサーアレイ102の部分平面図を示す。
なお、図中、前記実施の形態1におけると同一部材には同一符号を付して、その詳細な説明を適宜省略する。
【0155】
本実施の形態に係るトランスデューサーアレイ102は、複数の前記受信用圧電素子141を備えている点において、単一の前記受信用圧電素子141を備えている前記実施の形態1に係るトランスデューサーアレイ101と相違している。
【0156】
図9に示すように、前記トランスデューサーアレイ102は、3個の受信用圧電素子141(1,2)、141(6,2)、141(11,2)を有している。
【0157】
詳しくは、第1の受信用圧電素子141(1,2)は基準X方向列110AのX方向一端側最外方(
図9において最も左側)に配置され、第2の受信用圧電素子141(6,2)は基準X方向列110AのX方向中央に配置され、且つ、第3の受信用圧電素子141(11,2)は基準X方向列110AのX方向他端側最外方(
図9において最も右側)に配置されており、これにより、前記複数(3個)の前記第1~第3の受信用圧電素子141(1,2)、141(6,2)、141(11,2)が、X方向列のX方向に関する中心を基準として対称に配置されている。
【0158】
このように、本実施の形態に係るトランスデューサーアレイ102は、全て(33個)の圧電素子のうちの3個の圧電素子が前記受信用圧電素子141とされ、残りの30個の圧電素子だけが前記送信用圧電素子140とされている。
【0159】
ここで、
図9に示す本実施の形態に係る超音波トランスデューサーアレイ102と同一構成のモデル、即ち、基準X方向列110AのX方向一端側最外方、X方向中央及びX方向他端側最外方の圧電素子が前記受信用圧電素子141とされ、その他の30個の圧電素子は送信用圧電素子140とされたモデル(以下、第2実施例モデルという)に対して行なった、SPLに関するFEM解析について説明する。
【0160】
前記第2実施例モデルにおける送信用トランスデューサー及び受信用トランスデューサーは、それぞれ、前記第1実施例モデルにおける送信用トランスデューサー(
図3参照)及び前記受信用トランスデューサーモデルC(
図6(c)参照)と同一とした。
【0161】
前記第2実施例モデルにおける送信用圧電素子140の全て(30個)に振幅10Vの正弦波の電圧を印加した場合を第2実施例-(1)とし、駆動電圧の駆動周波数を当該送信用圧電素子141が形成する送信用トランスデューサーの共振周波数(約80kHz)よりも相当に低い周波数の範囲(10~70kHz)で変化させて、FEM解析によって駆動周波数毎のSPLを算出した。
第2実施例-(1)の解析結果を
図10に示す。
【0162】
また、前記第2実施例モデルにおける送信用圧電素子140の全て(30個)のうち、前記第1~第3受信用圧電素子のY方向一方側及び他方側にそれぞれ隣接された6個の送信用圧電素子140(1,1)、140(1,3)、140(6,1)、140(6,3)、140(11,1)、140(11,3)には振幅を15Vに増強した正弦波の増強電圧を印加し、その他の24個の送信用圧電素子140には振幅10Vの正弦波の電圧を印加した場合を第2実施例-(2)とし、駆動電圧の駆動周波数を同様に変化させて、FEM解析によって駆動周波数毎のSPLを算出した。
第2実施例-(2)の解析結果を
図10に併せて示す。
なお、
図10には、前記比較例の結果を併せて示している。
【0163】
図10に示すように、前記第2実施例-(1)は、前記比較例に比して若干音圧レベルの低下がみられるものの、その低下は1%程度であり、十分な大きさの音圧が得られていることが確認された。
【0164】
前記第2実施例-(2)は、駆動周波数の変化範囲の全域に亘って前記比較例と同程度の音圧レベルを有していることが確認された。
【0165】
また、駆動電圧の駆動周波数が40kHzとされた場合における前記第2実施例-(1)、前記第2実施例-(2)及び前記比較例の放射音波の横方向の音圧指向性をFEM解析によって算出した。
その結果を
図11に示す。
【0166】
図11に示すように、音圧指向性に関しても、前記第2実施例-(1)及び前記第2実施例1-2共に、前記比較例に対して遜色ないことが確認された。
【0167】
実施の形態3
以下、本発明に係るフェイズドアレイセンサーの一実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図12に、本実施の形態に係るフェイズドアレイセンサー1の模式ブロック図を示す。
【0168】
図12に示すように、前記フェイズドアレイセンサー1は、前記空中超音波トランスデューサーアレイ102と、送信側ユニット200と、受信側ユニット300と、制御装置500と、検知装置600とを備えている。
【0169】
図13に前記制御装置500及び前記送信側ユニット200の模式ブロック図を、
図14に前記制御装置500及び前記受信側ユニット300の模式ブロック図を、それぞれ示す。
【0170】
まず、前記制御装置500及び前記送信側ユニット200について説明する。
図15に、前記送信側ユニット200から供給される駆動電圧信号によって、走査方向(例えば、X方向)に沿って配列された複数の前記送信用圧電素子140を含む前記トランスデューサーアレイ102が超音波を放射する際の模式動作説明図を示す。
【0171】
なお、
図15中のτeは、一の送信用圧電素子(例えば送信用圧電素子140(1、1))に印加するバースト波駆動電圧信号と、隣接する送信用圧電素子(例えば送信用圧電素子140(2、1))に印加するバースト波駆動電圧信号との遅延時間であり、
τe=(de×sinθ)/c
によって算出される。
ここで、θは前記トランスデューサーアレイ101から放射される超音波の方位角、deは隣接する前記送信用圧電素子の配列間隔、cは音速である。
【0172】
なお、前記配列間隔deは、前述の通り、グレーティングローブの発生を抑制する為には、前記送信用圧電素子140が形成する前記送信用トランスデューサーが放射する超音波の波長λの1/2以下に設定される。
温度20℃の空気中の周波数40kHzの超音波の波長λは8.6mmであるから、前記配列間隔deは、8.6mm/2=4.3mm以下に設定される。
【0173】
図13に示すように、前記制御装置500は、
・デジタル回路の動作タイミングを決める為の例えば0.1μsec周期のクロック信号を発生するクロック信号発生回路510と、
・前記クロック信号発生回路510で発生されたクロック信号の周波数を、バースト波周期を設定する為に適切な時間刻み、例えば0.1msec周期に低下させる時間単位設定カウンター回路520と、
・X方向に沿って配列された複数の送信用圧電素子140に送信するバースト波駆動電圧信号の発生タイミングの間隔でパルスを発生するバースト間隔カウンター回路530と、
・前記時間単位設定カウンター回路520及び前記バースト間隔カウンター回路530からの信号に基づき、発生させるべきバースト波駆動電圧信号の全体時間幅に対応した時間幅のアクティブパルス信号を出力するアクティブカウンター回路540と、
・前記トランスデューサーアレイ102が放射する超音波の方位角θを示す方位角信号を出力する方位角制御部550とを有している。
【0174】
図12及び
図13に示すように、前記送信側ユニット200は、前記複数(本実施の形態においては30個)の送信用圧電素子140のそれぞれに対する駆動電圧信号を発生する複数(図示においては30個)の信号発生手段220を含む送信信号発生装置210と、前記方位角制御部550から送られてくる方位角信号に基づき遅延時間τeを算出し、前記複数の信号発生手段210に対応する遅延制御信号を出力する送信側遅延時間制御部560と、前記複数の信号発生手段210によって発生された駆動電圧信号をそれぞれ前記複数の送信用圧電素子140に伝達する複数の送信側チャンネル250とを有している。
【0175】
好ましくは、前記送信信号発生装置210は、前記複数の送信用圧電素子140のうち、走査方向(図示の形態においてはX方向)とは直交するY方向に関し前記受信用圧電素子141と隣接する送信用圧電素子140(1,1)、140(1,3)には、他の送信用圧電素子140に印加する駆動電圧信号の振幅(例えば10V)よりも大きい振幅(例えば15V)の駆動電圧信号を印加するように構成される。
【0176】
斯かる好ましい構成によれば、複数の圧電素子の一部(本実施の形態においては、33個の圧電素子のうちの3個の圧電素子)を受信用圧電素子141としたことによる、音波放射特性の劣化を有効に防止乃至は低減することができる。
【0177】
図13に示すように、前記信号発生手段220は、分周器222と、遅延時間カウンター回路224と、波数カウンター回路226とを有している。
【0178】
前記分周器222は、前記クロック信号発生回路510からのクロック信号を分周して、所定周波数の矩形波のバースト波駆動電圧信号を生成する。
【0179】
前記遅延時間カウンター回路224は、前記アクティブカウンター回路540からのアクティブパルス信号によってアクティブとされると、前記送信側遅延時間制御部560からの遅延制御信号によって指定された遅延時間に応じて前記分周器222にスタート信号パルスを送り、これにより、前記分周器222が矩形波のバースト波駆動電圧信号の出力を開始する。
【0180】
前記波数カウンター回路226は、前記分周器222から出力される矩形波のバースト波駆動電圧信号の波数が所定波数に到達すると前記分周器222にストップ信号パルスを送る。
【0181】
図12及び
図13に示すように、本実施の形態においては、前記送信側ユニット200は、さらに、前記複数の送信側チャンネル250にそれぞれ介挿された複数の送信側フィルタ260を有している。
【0182】
前記送信側フィルタ260は、駆動周波数成分の通過を許容しつつ少なくとも前記送信用トランスデューサーの共振周波数成分を除去するように構成されている。
【0183】
前記送信側フィルタ260は、駆動周波数成分の通過を許容しつつ前記送信用トランスデューサーの共振周波数成分を除去するように構成されたローパスフィルタ又はバンドパスフィルタ、若しくは、前記トランスデューサー110の共振周波数成分のみをピンポイントで除去する帯域阻止フィルタとされ得る。
【0184】
前記送信側フィルタ260がバンドパスフィルタとされた構成においては、好ましくは、前記バンドパスフィルタは、駆動周波数の±10%の周波数成分のみを通過させるように構成される。
【0185】
斯かる構成によれば、数メートル先の物体を検知する為に必要とされる駆動周波数(30~50kHz)を有効に通過させつつ、非共振型の前記送信用トランスデューサーの共振周波数(例えば、70kHz)の成分を有効に除去乃至は低減することができる。
【0186】
例えば、本実施の形態に係る超音波フェイズドアレイセンサー1をサービスロボット等の障害物に対する最大相対速度差vが10km/h(=2.78m/sec)程度の装置に装着される場合には、
△f/f≒±v/c=±0.00808(=±0.808%)
となる。
ここで、fは超音波の周波数、△fはドップラー効果による周波数変動、及び、cは音速である。
【0187】
従って、前記送信側フィルタ260として用いられるバンドパスフィルタが駆動周波数の±1%の周波数成分のみを通過させるように構成すれば、ドップラー効果による受信音波の周波数変動を検知することにより障害物の速度をある程度の精度で検出することが可能となる。
【0188】
前記送信側フィルタ260を通過させることによって、矩形波のバースト波駆動電圧信号から、基本周波数は同一の正弦波のバースト波駆動電圧信号(
図15参照)に変換される。
【0189】
本実施の形態においては、
図12及び
図13に示すように、前記送信側ユニット200は、前記送信側フィルタ260より信号伝達方向下流側において前記送信側チャンネル250に介挿された電力増幅回路270を有している。
前記電力増幅回路270は、バッファ回路272及び増幅回路274を有している。
【0190】
次に、前記受信側ユニット300について説明する。
図12及び
図14に示すように、前記受信側ユニット300は、
前記複数(本実施の形態においては3個)の受信用圧電素子141が発生する受信電圧信号をそれぞれ受信可能な複数(本実施の形態においては3個)の受信側チャンネル310と、前記複数の受信側チャンネル310にそれぞれ介挿された複数(本実施の形態においては3個)の包絡線検波器320とを有している。
【0191】
前記包絡線検波器320は、対応する前記受信用圧電素子141から前記受信側チャンネル310を介して伝達された受信電圧信号の継続時間(信号全体の時間幅)に応じた幅を有する包絡線検波信号を生成する。
前記包絡線検波器320は、包絡線検波信号をパルス波形に変換する回路を含む。
【0192】
本実施の形態においては、
図12、14及び16に示すように、前記受信側ユニット300は、さらに、前記複数の包絡線検波器330より信号伝達方向上流側において前記複数の受信側チャンネル310にそれぞれ介挿された複数(本実施の形態においては3個)の低雑音増幅回路315を有している。
【0193】
図16に、前記受信側ユニット300によって行われる受信電圧信号処理の模式図を示す。
図17(a)に、
図16に後続する受信電圧信号処理の模式図を示す。
【0194】
本実施の形態におけるように、前記トランスデューサーアレイ102が複数の前記受信用トランスデューサーを有している場合には、
図12、14、16及び17(a)に示すように、前記受信側ユニット300は、さらに、前記複数の検波器320より信号伝達方向下流側において前記複数の受信側チャンネル310にそれぞれ介挿され、受信電圧信号をそれぞれ対応する所定時間遅延可能な複数(図示においては3個)の遅延回路330と、前記複数の遅延回路330の出力信号を加算する加算回路340とを有している。
【0195】
前記複数の遅延回路330の遅延時間は、対応する前記受信用圧電素子141の超音波の受信に応じて前記複数の受信用トランスデューサーが発生する受信電圧信号のうち、前記送信用トランスデューサーが超音波を放射した際の方位角θに存在する障害物に反射して戻ってきた方位角θの戻り超音波による受信電圧信号のみを時間軸に対して一致させるように、設定される。
【0196】
具体的には、前記複数の遅延回路330は、前記受信側ユニット300に備えられる受信側遅延時間制御部562から送られてくる遅延制御信号によって、対応する遅延時間だけそれぞれの受信電圧信号を遅延させる。
【0197】
なお、受信側遅延時間制御部562は、前記方位角制御部550から送られてくる方位角信号に基づき、前記複数の受信側チャンネル310毎に対応する遅延時間τrを算出し、前記複数の受信側チャンネル310毎の遅延制御信号に基づく遅延時間だけ、それぞれの受信電圧信号を遅延させる。
【0198】
図16に示す例においては、第3の受信用圧電素子141(11,1)からの受信電圧信号を遅延させる第3の遅延回路330-3の遅延時間はゼロに設定され、第2の受信用圧電素子141(6,2)からの受信電圧信号を遅延させる第2の遅延回路330-2の遅延時間τrは、第3の受信用圧電素子141(11,1)からの受信電圧信号を基準にして、隣接する第3の受信用圧電素子141(11,1)との配列間隔dr(本実施の形態においては、dr=5×de)、方位角θ及び音速cに基づいて、
τr=(dr×sinθ)/c
によって算出される。
【0199】
そして、第1の受信用圧電素子141(1,2)からの受信電圧信号を遅延させる第1の遅延回路330-1の遅延時間は、隣接する第2の受信用圧電素子141(6,2)からの受信電圧信号に対して時間τr、即ち、第3の受信用圧電素子141(11,1)からの受信電圧信号を基準にすると時間2τrに設定されている。
【0200】
図17(a)に示すように、前記加算回路370は、前記複数の遅延回路330によって時間軸が一致された状態の前記複数の受信側チャンネル310の受信電圧信号を加算する。
【0201】
斯かる構成によれば、超音波が放射される方位角θ以外の方向の存在物を、方位角θに存在する障害物であるとして虚像検知することを有効に回避することができる。
【0202】
前述の通り、本実施の形態に係るフェイズドアレイセンサー1は、前記複数の受信側圧電素子141を含む前記実施の形態2に係るトランスデューサーアレイ102を有しているが、これに代えて、単一の受信側圧電素子140を含む前記実施の形態1に係るトランスデューサーアレイ101を有することも可能である。
【0203】
図18に、前記実施の形態1に係るトランスデューサーアレイ101を備えた、本実施の形態の第1変形例に係るフェイズドアレイセンサー2の模式ブロック図を示す。
【0204】
図18に示すように、前記フェイズドアレイセンサー2は、本実施の形態に係るフェイズドアレイセンサー1に比して、前記トランスデューサーアレイ102に代えて前記トランスデューサーアレイ101を有し、且つ、前記受信側ユニット300に代えて受信側ユニット302を有している。
【0205】
前記受信側ユニット302は、前記受信側ユニット300に比して、前記遅延回路330、前記受信側遅延時間制御部562及び前記加算回路340が削除されている。
【0206】
前記第1変形例に係るフェイズドアレイセンサー2においては、戻り超音波を受信する受信用トランスデューサーが単一である為に、方位角θの戻り超音波に基づく障害物の検知に加えて、前記障害物に反射した反射超音波が他の方向に存在する他の障害物に反射して戻ってくる多重反射超音波に基づく虚像を検知する可能性がある。
【0207】
この点に関し、複数の前記受信用トランスデューサーを備えた本実施の形態に係るフェイズドアレイセンサー1によれば、方位角θに向けて放射され、方位角θに存在する障害物に反射して戻ってきた方位角θの戻り超音波による受信電圧信号のみを時間軸に対して一致させることができ、虚像の検知を有効に回避することができる。
【0208】
前記検波器320は、包絡線検波を行う回路の前段に可変ゲイン増幅器(図示せず)と対数増幅器(図示せず)とを含むことができる。
【0209】
前記可変ゲイン増幅器は、前記送信側ユニット200からの駆動電圧信号による前記トランスデューサーアレイ102(101)の超音波の放射タイミングから、前記トランスデューサーアレイ102(101)による戻り超音波の受信タイミングまでの時間差が大きくなるに従って増幅ゲインが大きくなるように、構成されている。
【0210】
前記可変ゲイン増幅器は、遠方の障害物からの戻り超音波ほど音波減衰が大きくなり、受信電圧信号の振幅が小さくなることを考慮して備えられる。
【0211】
前記対数増幅器は、振幅の小さい信号に対してはゲインを大きく且つ振幅の大きい信号に対してゲインを小さくすることができるように構成されている。
【0212】
即ち、受信電圧信号中の振幅の小さい信号を増幅する為にはゲインを大きく設定する必要があるが、受信電圧信号の全てに対して設定ゲインが単一であるとすると、大振幅の信号が飽和して、歪みが生じることになる。
前記対数増幅器は、斯かる不都合を防止して、増幅できる信号の振幅範囲を拡げることができ、前記検波器の出力信号の歪みを有効に抑制することができる。
【0213】
図12~
図14及び
図18に示すように、前記検知装置600は、時間差検出部610と、方位検出部620と、位置検知部630とを有している。
【0214】
前記時間差検出部610は、前記制御装置500から送られてくる駆動電圧信号に基づく送信タイミング信号(
図17(b))及び前記受信側ユニット300(302)から送られてくる受信電圧信号に基づく受信タイミング信号(
図17(a))の時間差td(
図17(a)及び(b))の例においては、td=t1-t0を検出するように構成されている。なお、前記受信タイミング信号の発生タイミングt1は、前記検波器320からの受信電圧信号が所定閾値を越えた時点とされる。
【0215】
前記方位検出部620は、前記制御装置500から送られてくる方位角情報に基づき、前記トランスデューサーアレイ102(101)が超音波を放射した方位角θを認識するように構成されている。
【0216】
前記位置検知部630は、前記時間差検出部610の検出結果に基づき算出される障害物までの距離と前記方位検出部620によって認識された障害物の方位角とに基づき、障害物の位置を特定する。
【0217】
図12~
図14及び
図18に示すように、前記フェイズドアレイセンサー1(2)は、さらに、前記検知装置600によって特定された障害物の位置情報を表示する表示装置700を有している。
【0218】
前述の通り、本実施の形態においては、前記受信側チャンネル310における受信信号の遅延処理及び加算処理は全て包絡線検波後の信号に対して行なわれている為、受信感度の方位角分布におけるグレーティングローブの発生はなく、受信用トランスデューサを形成する受信用圧電素子141が共振型であっても、その共振周波数のばらつきの影響を受けることがない。このため、受信用トランスデューサ(受信用圧電素子141)の配列間隔drは任意に設定可能であり、方位角分解能を高めるためには drを広く設定する方が有利である。
【0219】
この点を考慮して、本実施の形態においては、3個の受信用圧電素子141のうちの第1の受信用圧電素子141(1,2)を走査方向(X方向)一端側に配置させ、第2の受信用圧電素子141(6,2)を走査方向(X方向)中央に配置させ、第3の受信用圧電素子141(11,2)を走査方向(X方向)他端側に配置させている。
【0220】
なお、本実施の形態(
図12及び
図13参照)及び第1変形例においては、前記送信側ユニット200は、前記複数の送信用圧電素子140の個数に対応した個数の前記信号発生手段220を有しており、前記複数の送信用圧電素子140にはそれぞれに専用の前記信号発生手段220から駆動電圧信号が供給されるようになっている。
【0221】
これに代えて、前記複数の送信用圧電素子140のうち走査方向(X方向)に関し同一位置に配置された送信用圧電素子には、共通の信号発生手段220から駆動電圧信号が供給されるように変形することも可能である。
【0222】
図19に、斯かる変形構成を備えた第2変形例に係るフェイズドアレイセンサー3の模式ブロック図を示す。
【0223】
図19に示すように、前記第2変形例に係るセンサー3は、本実施の形態に係るセンサー1に比して、前記送信側ユニット200に代えて送信側ユニット202を有している。
【0224】
前記送信側ユニット202は、共働するトランスデューサーアレイ(図示の構成においては、前記トランスデューサーアレイ102)における送信用圧電素子140のうち、走査方向(X方向)に関し同一位置に配置された一又は複数の送信用圧電素子毎に設けられた複数の信号発生手段220を有している。
【0225】
図19に示す前記センサー3は、前記実施の形態1に係る前記トランスデューサーアレイ101を有しており、前記アレイ101は、前記複数の送信用圧電素子140の配置に関し、第1~第11の11個の走査方向(X方向)位置を有している。
【0226】
従って、前記送信側ユニットは、第1~第11の11個の前記信号発生手段220-1~220-11を含む送信信号発生装置212と、前記第1~第11信号発生手段220-1~220-11で発生された駆動電圧信号をそれぞれ対応する走査方向(X方向)位置の送信用圧電素子140に伝達する第1~第11の送信側チャンネル250-1~250-11とを有している。
【0227】
前記送信側ユニットにおけると同様に、前記第1~第11の送信側チャンネル250-1~250-11には、それぞれ、前記送信側フィルタ260及び前記電力増幅回路270が直列に介挿されている。
【符号の説明】
【0228】
1~3 フェイズドアレイセンサー
101、102 トランスデューサーアレイ
110A 基準X方向列
110(1)、(2) 第1、第2隣接X方向列
120 支持板
121 支持板の第1面
122 支持板の第2面
125a 送信用貫通孔
125b 受信用貫通孔
126a、b 凹部
127a、b 導波路
128a、b 筒状部
129a、b ホーン部
130 可撓性樹脂膜
140 送信用圧電素子
141 受信用圧電素子
150 下側封止板
180 配線アッセンブリ
182 絶縁性ベース層
185 導体層
185a、b 送信用第1及び第2電極配線
186a、b 受信用第1及び第2電極配線
189 バンプ
210 送信信号発生装置
320 検波器
330 遅延回路
340 加算器
500 制御装置
600 検知装置
【要約】
本発明に係る超音波トランスデューサーアレイは、複数の貫通孔を含む貫通孔群が設けられた剛性の支持板と、複数の貫通孔を覆うように支持板に固着された可撓性樹脂膜と、中央領域が貫通孔と重合し且つ周縁領域が支持板と重合するように可撓性樹脂膜に固着された複数の圧電素子とを備え、前記複数の圧電素子は、所定駆動周波数の駆動電圧信号の印加に応じて超音波を発生する送信用トランスデューサーを形成する複数の送信用圧電素子と、超音波の受信に応じて受信電圧信号を発生する受信用トランスデューサーを形成する一又は複数の受信用圧電素子とを含み、送信用トランスデューサーは駆動周波数の駆動電圧信号の印加に応じて共振せずに超音波を発生する非共振型とされる一方で、受信用トランスデューサーは駆動周波数に応じた周波数の超音波の受信によって共振する共振型とされている。