(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-31
(45)【発行日】2023-06-08
(54)【発明の名称】防護材
(51)【国際特許分類】
F16L 57/00 20060101AFI20230601BHJP
B32B 3/04 20060101ALI20230601BHJP
F16L 1/11 20060101ALN20230601BHJP
【FI】
F16L57/00 A
B32B3/04
F16L1/11
(21)【出願番号】P 2019072200
(22)【出願日】2019-04-04
【審査請求日】2022-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】322003592
【氏名又は名称】西部瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000175021
【氏名又は名称】三井化学産資株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000207311
【氏名又は名称】大東電材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147706
【氏名又は名称】多田 裕司
(72)【発明者】
【氏名】安河内 勇人
(72)【発明者】
【氏名】中島 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】松本 七保子
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏明
(72)【発明者】
【氏名】香川 健太郎
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-050272(JP,U)
【文献】実開平07-032292(JP,U)
【文献】特開2000-146081(JP,A)
【文献】特開2018-179056(JP,A)
【文献】特開2007-132370(JP,A)
【文献】特開2000-046284(JP,A)
【文献】特開2001-004067(JP,A)
【文献】特開2000-249257(JP,A)
【文献】特開平08-072206(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1809675(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 57/00
B32B 3/04
F16L 1/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有するクッション材と、
可撓性を有し、前記クッション材よりも薄く形成されており、前記クッション材の表面に積層されている下側シートと、
可撓性を有し、前記クッション材よりも薄く形成されており、前記下側シートの表面に当接するように配設されている上側シートとを備え
ており、
前記上側シートの中央部は、前記下側シートに対して摺動自在であることを特徴とする
ガス管等の防護材。
【請求項2】
前記上側シートと前記下側シートとは、いずれか一つの端部において、互いに一体的に連結されていることを特徴とする
請求項
1に記載の防護材。
【請求項3】
可撓性を有するクッション材と、
可撓性を有し、前記クッション材よりも薄く形成されており、前記クッション材の表面に当接するように配設されているシートとを備えており、
前記シートの中央部は、前記クッション材に対して摺動自在であることを特徴とする
ガス管等の防護材。
【請求項4】
前記クッション材における前記ガス管等に接する面には、前記ガス管等の表面で滑りにくい素材で構成された滑り止めシートが積層されていることを特徴とする
請求項1から
3のいずれか1項に記載の防護材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、地中に埋設されるプラスチック製のガス管等の耐衝撃性を高めるために当該ガス管等に巻き付けて使用される防護材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液体あるいは気体の輸送配管(例えば、上下水道やガス管、以下、単に「ガス管等」という。)として、プラスチック製のガス管等が普及している。とりわけ、ポリエチレン管は、可撓性を有するとともに、軽量で、かつ、施工が容易であり、さらに、地中に埋設しても腐食しないという利点を有していることから、広く用いられている。
【0003】
しかし、このポリエチレン管には、衝撃に対する強度が低いという難点がある。このため、先にガス管等が埋設されている地面を、掘削機等を用いて掘削する際、当該掘削機等の爪が埋設されたガス管等に当たってしまい、当該ガス管等を損傷させてしまうおそれがある。
【0004】
このようにガス管等を損傷させてしまう可能性を低減するため、当該ガス管等に巻き付けて使用する保護シートが開発されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
特許文献1に開示された保護シートは、比較的厚手のクッション材の表面に、当該クッション材よりも薄手のシートを1枚積層することによって構成されている。
【0006】
このような保護シートをガス管等の表面に一重、あるいは、二重以上に巻き付けることにより、掘削機等の爪がガス管等に当たったときに当該ガス管等が損傷する可能性を低減できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された保護シートは、実際にはガス管等に対して一重で使用されることはなく、二重以上に巻き付けて使用されることが通常であり、このためガス管等への施工に手間がかかるという問題があった。
【0009】
特許文献1に開示された保護シートが一重では使用されない主な理由は、掘削機等の爪を地面に差し込むといった鉛直方向動作の後、当該爪を掘削機等の本体に向けて引き戻してくるというような水平方向動作を行う際に、できればガス管等に巻き付けた保護シートの外面側だけがずれたり破れたりするようになって欲しいという施工者の要望によるところが大きい。
【0010】
掘削機等の爪を水平方向動作させる際に保護シートの外面側だけがずれたり破れたりするように動くことにより、施工者は埋設されているガス管等の存在に気づくことができ、当該ガス管等を損傷させないように配慮できるようになるからである。
【0011】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ガス管等に対して一重巻きで使用しても、施工者がガス管等の存在に気づくことができるような「ずれ」や「破れ」を生じさせることができ、これにより、ガス管等への施工が容易なガス管等の防護材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一局面によれば、
可撓性を有するクッション材と、
可撓性を有し、前記クッション材よりも薄く形成されており、前記クッション材の表面に積層されている下側シートと、
可撓性を有し、前記クッション材よりも薄く形成されており、前記下側シートの表面に当接するように配設されている上側シートとを備えており、
前記上側シートの中央部は、前記下側シートに対して摺動自在であることを特徴とする
ガス管等の防護材が提供される。
【0014】
好適には、前記上側シートと前記下側シートとは、いずれか一つの端部において、互いに一体的に連結されている。
【0015】
本発明の他の局面によれば、
可撓性を有するクッション材と、
可撓性を有し、前記クッション材よりも薄く形成されており、前記クッション材の表面に当接するように配設されているシートとを備えており、
前記シートの中央部は、前記クッション材に対して摺動自在であることを特徴とする
ガス管等の防護材が提供される。
【0016】
好適には、前記クッション材における前記ガス管等に接する面には、前記ガス管等の表面で滑りにくい素材で構成された滑り止めシートが積層されている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、クッション材の表面に下側シートが積層され、さらにその上に上側シートが当該下側シートに対して当接するように配設されている。これにより、掘削機等の爪を水平方向動作させる際に、下側シートやクッション材に対して上側シートだけがずれたり破れたりするように動くことになり、施工者は埋設されているガス管等の存在に気づくことができ、爪を鉛直方向動作させる際に当該ガス管等を損傷させないように配慮できるようになる。
【0018】
これにより、一重巻きで使用しても、施工者がガス管等の存在に気づくことができるような「ずれ」や「破れ」を生じさせることができることから、ガス管等への施工が容易なガス管等の防護材を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明が適用された防護材10の断面図である。
【
図2】防護材10を構成する上側シート16および下側シート14の構造を示す斜視図である。
【
図3】防護材10を構成する上側シート16および下側シート14の他の構造を示す斜視図である。
【
図4】防護材10を構成する上側シート16および下側シート14のさらに他の構造を示す斜視図である。
【
図5】ガス管等Xに防護材10を巻き付けた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(防護材10の構成)
図1は、本発明が適用された実施形態に係る防護材10を示している。この防護材10は、クッション材12と、下側シート14と、上側シート16とを備えている。
【0021】
クッション材12は、掘削機等の爪が当たったとき等にその衝撃力を受け止めることによってガス管等Xが損傷するのを防止する役割を有しており、所定の厚みと可撓性とを有する材料で構成されている。
【0022】
クッション材12の材質の具体例としては、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布等の不織布、スポンジ、ゴム、軟質樹脂等を挙げることができるが、1,000g/m2以上の高目付の不織布を用いるのが好適である。また、クッション材12は、ガス管等Xに巻き付けることができなくなるくらいに可撓性が悪くならない範囲の厚みである(例えば、8mm以下)ことが好ましい。もちろん、複数の不織布やスポンジ、ゴム、軟質樹脂等を積層してクッション材12を構成してもよい。
【0023】
下側シート14は、可撓性を有しているとともに、クッション材12よりも薄く形成された部材であり、例えば、押し出し成形で得られるポリプロピレンフィルムを延伸かつ解繊して得られた解繊糸を13本/インチの密度で織成した厚さ約1mmのシート状に構成されている。なお、解繊糸は、2000デニール以上で、引張強度が80N/本以上あるものが好適である。また、複数枚のシートを互いに一体に積層したものを下側シート14として使用してもよい。
【0024】
また、この下側シート14は、例えば熱圧着、接着剤、あるいはニードルパンチ等の手段によってクッション材12の表面に積層して固定されている。
【0025】
上側シート16は、可撓性を有しているとともに、クッション材12よりも薄く形成された部材であり、下側シート14の表面(クッション材12に対して積層された面とは反対側の面)に当接するように配置されている。本実施形態では、上側シート16は、上述した下側シート14と同じ材料で構成されているが、これに限定されるものではなく、上側シート16を下側シート14とは異なる材料で構成してもよい。なお、防護材10は、工事施工中、ガス管等Xに巻き付けられた状態で1年程度埋められない状態で屋外放置される場合もあるので、上側シート16や下側シート14を構成する糸に耐候性(例えば紫外線耐性)を付与させておくのが好適である。
【0026】
また、本実施形態では、
図2に示すように、上側シート16と下側シート14とは、2枚のシートを重ねて両端同士を互いに熱圧着、溶着、あるいは接着等の手段で互いに固定することによって形成された1つの部材で構成されている。このように、上側シート16と下側シート14とは、
図1における幅方向の両端でそれぞれ互いに固定されているので、上側シート16の中央部は、下側シート14に対して摺動自在になっている。また、上述した、上側シート16および下側シート14の溶着等による固定は、端部の全体で行ってもよいし(
図2における左端を参照)、一部分であってもよい(
図2における右端を参照)。
【0027】
なお、上側シート16および下側シート14の構成はこれに限定されるものではなく、例えば、
図3に示すように、1枚のシート材を折り曲げることによって二重にして、シート材の両端同士を熱圧着、溶着、あるいは接着等の手段で互いに固定することにより、上側シート16および下側シート14を構成してもよい。
【0028】
さらに、
図4に示すように、上側シート16と下側シート14とを筒状に形成された1つの部材で構成してもよい。
【0029】
このように上側シート16および下側シート14を、1枚のシート材を折り曲げて二重にしたり、筒状に形成された1つの部材から構成したりすることによって、少なくともいずれか一つの端部において互いに一体的に連結して構成することにより、上側シート16および下側シート14の端における溶着等の作業を減らすことができ、防護材10の製作が容易になる。
【0030】
(防護材10の特徴)
本実施形態に係る防護材10は、クッション材12の表面に下側シート14が積層され、さらにその上に上側シート16が当該下側シート14に対して当接するように配置されている。これにより、掘削機等の爪を水平方向動作させる際に、下側シート14やクッション材12に対して上側シート16だけがずれたり破れたりするように動くことになり、施工者は埋設されているガス管等Xの存在に気づくことができ、爪を鉛直方向動作させる際に当該ガス管等Xを損傷させないように配慮できるようになる。
【0031】
これにより、
図5に示すように、例えばインシュロックYを用いて、ガス管等Xに対して一重巻きで使用しても、施工者がガス管等Xの存在に気づくことができるような「ずれ」や「破れ」を生じさせることができることから、ガス管等Xへの施工が容易なガス管等Xの防護材10を提供することができる。
【0032】
さらに、上側シート16の中央部が下側シート14に対して摺動自在であることから、上側シート16だけが下側シート14やクッション材12から独立して動くことが容易になり、上側シート16だけに「ずれ」や「破れ」を容易に生じやすくさせることができる。
【0033】
(変形例1)
ここまでの実施形態では、下側シート14を熱圧着等の手段によってクッション材12の表面に積層して固定し、その上に上側シート16を下側シート14に対して摺動可能に配設していたが、これに代えて、
図6に示すように、上側シート16を設けることなく、下側シート(シート)14の中央部がクッション材12に対して摺動自在となるように当該下側シート(シート)14の端部のみをクッション材12に取り付けてもよい。
【0034】
これにより、下側シート(シート)14がクッション材12から独立して動くことが容易になり、下側シート(シート)14だけに「ずれ」や「破れ」を容易に生じさせることができる。
【0035】
(変形例2)
図7に示すように、上述した実施形態に係る防護材10のクッション材12における下側シート14が積層された面とは反対側の面(つまり、クッション材12におけるガス管等Xに接する面)に、ガス管等Xの表面で滑りにくい素材で構成された滑り止めシート20を積層してもよい。
【0036】
これにより、ガス管等Xに防護材10を巻き付ける際、防護材10がガス管等Xの表面で不所望に滑りにくくなり、防護材10の巻き付け作業をより容易に実施できるようになる。
【0037】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0038】
10…防護材、12…クッション材、14…下側シート、16…上側シート、20…滑り止めシート
X…ガス管等、Y…インシュロック