(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-31
(45)【発行日】2023-06-08
(54)【発明の名称】整形外科用デバイスを製造するためのコンピュータ実施方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 34/10 20160101AFI20230601BHJP
A61F 2/50 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
A61B34/10
A61F2/50
(21)【出願番号】P 2020531753
(86)(22)【出願日】2018-11-16
(86)【国際出願番号】 EP2018081579
(87)【国際公開番号】W WO2019129419
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-10-13
(31)【優先権主張番号】102017131323.0
(32)【優先日】2017-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】520193781
【氏名又は名称】ミクリス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100180781
【氏名又は名称】安達 友和
(72)【発明者】
【氏名】オピッツ,マヌエル
(72)【発明者】
【氏名】ガンドラック,フェリックス
(72)【発明者】
【氏名】シュナウベルト,マックス
(72)【発明者】
【氏名】リース,クレメンス
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0180185(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0246013(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0360578(US,A1)
【文献】特開2009-056083(JP,A)
【文献】登録実用新案第3089376(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/10
A61F 2/50
A61F 5/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
整形外科用デバイスを製造するためのコンピュータ実施方法であって、
(a)患者データ(ScanData)を含む少なくとも1つのデータセットを受信するステップと、
(b)患者モデルを作成するために前記患者データ(ScanData)を処理するステップと、
(c)前記患者モデルを使用して、患者パラメータ(P1、P2)を決定するステップと、
(d)前記患者パラメータ(P1、P2)及びデバイスパラメータ(V1、V2)を使用しながら、前記整形外科用デバイスの仮想表現を生成するステップと、
(e)少なくとも1人のユーザから少なくとも1つの入力を受信するステップと、
(f)前記入力に基づいて、前記患者パラメータ(P1、P2)及び/又は前記デバイスパラメータ(V1、V2)の少なくとも1つを修正するステップと、
(g)前記デバイスパラメータ(V1、V2)、前記患者パラメータ(P1、P2)、及び/又は前記患者パラメータに基づいて生成された前記整形外科用デバイスのモデル(OrthData)を使用して、前記整形外科用デバイスを物理的に作成するステップと、
を含み、
第2のユー
ザから少なくとも1つの第2の入力が受信され、
前記第2のユーザの入力に基づいて、少なくとも1つのデバイスパラメータ(V1、V2)が修正され、
どのデバイスパラメータが前記第2のユーザによって修正可能であるかについて認証データベースにおいて検索がなされ、
前記認証データベースに従って、前記第2のユーザによって修正可能な、修正用のデバイスパラメータ(V1、V2)のみが表示されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記修正するステップ(f)は、少なくとも1つの製造マシン(50)を制御することを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(d1)前記患者モデルの仮想表現が生成されるステップを含み、前記仮想表現を生成するステップ(d)において、前記整形外科用デバイスは、前記患者モデルと共に表示されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
(d2)前記患者モデルの仮想表現(MeshData)は前記整形外科用デバイスの仮想表現に対してアライメントされるステップを含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記患者パラメータ(P1、P2)は、首の周囲、肩幅を指定するパラメータを含み、且つ/又は、
前記デバイスパラメータ(V1、V2)は、少なくとも1つの設計パラメータ、及び/又は少なくとも1つの機能パラメータ(例えば、材料の厚さ、柔軟性)、及び/又は少なくとも1つの設計パラメータ(例えば、前記整形外科用デバイスの色)を含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
第1のユーザから少なくとも1つの第1の入力が受信され、
前記第1のユーザの入力に基づいて、前記患者モデル及び/又は少なくとも1つの患者パラメータ(P1、P2)が修正されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
(i)第1のユーザの入力を受信する前に、前記第1のユーザが認証され、且つ/又は、
(ii)前記第1のユーザの第2の入力を受信する前に、第2のユーザが認証されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記患者データ(ScanData)は患者の連絡先データを含み、
(i)前記連絡先データを使用して、URLを伴うメッセージを患者に電子的に送信するステップと、
(ii)前記患者が第2のユーザとして少なくとも1つの入力を行うことができるように、前記連絡先データ及び/又は前記患者パラメータを使用して、前記患者を認証するステップと、
を含むことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
命令が少なくとも1つのコンピュータユニットで実行されるときに請求項1から8のいずれか一項に記載の方法を実施するための命令を含むコンピュータ読み取り可能なメモリストア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整形外科用デバイスを製造するためのコンピュータ実施方法及び整形外科用デバイスを製造するための対応するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
整形外科用デバイスは、(矯正及び予防)装具及びプロテーゼ(人工補綴物)(外部プロテーゼ及び内部プロテーゼ)を含む。近年、プロテーゼは通常、モジュールシステムから組み立てられる。様々なベース要素(例えば、プロテーゼソケット、義足又は義手、及びプロテーゼチューブ)が構築され、標準化されたアダプタを使用してねじ留めされる。技術的な構造の周りには、通常、自然な脚又は腕をできるだけ忠実に模倣する補綴デバイスが作成される。これに関して、患者補助器具の外観をできるだけ自然な状況に適合させる必要がある。それにも関わらず、自然な手足との違いを隠すことができないことが多い。したがって、そのような患者補助器具を患者又は装着者の個々の要求又は好みに適合させる試みがなされている。
【0003】
そのような整形外科用デバイスの一例が、ドイツ実用新案公報DE202017000442U1から知られている。
【0004】
近年、内部プロテーゼも1人又はそれ以上の医療専門家によって患者に個別に適用されている。これに関して、審美的適合は、カスタマイズされた形状及び機能ほど重要ではない。パターン化された表面は機能的である可能性が高いため、埋め込み動作を向上させることができる。
【0005】
適切な整形外科用デバイス、特にコンピュータ支援を用いて装具を製造することが知られている。詳細には、現在、装具の最終的な製造には、コンピュータを使用した方法がますます付随している(米国特許出願公開公報US2014/0180185A1を参照)。したがって、患者補助器具を記述するデバイスパラメータが個人の好み及び機能の詳細を含むような、高度に個別の装具を製造することがしばしば可能である。しかし、先行技術では、整形外科患者補助器具のモデルの生成は、患者及び/又は装具の製造を監督する専門スタッフ(例えば、認定補綴士/矯正医、整形外科医又は医師)によって提供されるごく僅かな情報のみ考慮していることが多い。したがって、関連する装具をさらにカスタマイズし、関連する人とシステム間の相互作用を向上させる必要がある。
【0006】
同じことが予防装具(予防具、保護具)にも当てはまる。ただし、これらは、医療上の理由で、例えばコンタクトスポーツ、エクストリームスポーツタイプの類、モータースポーツなどにおいて怪我から保護するために装着されてもよい。特に、審美的適合(カスタマイズ)は、(購入)決定を行うときに、医学的に重要ではないデバイスの重要な基準となる可能性がある。これらの予防装具は、運動中の怪我又は外力又は過負荷に対して、患者又は装着者に的を絞ったサポートを提供することを意図している。これは、例えば、膝の負傷後のカスタマイズされた予防装具であってもよく、これにより、リハビリテーション中又はスポーツ中に膝に負荷がかかることが可能になる。また、オートバイのライダー又はモーターレーシングドライバーのための保護具として、衝突又は事故における怪我から保護するためのカスタマイズされた頚椎装具も考えられる。さらなる例は、アマチュア及びプロの両方の分野における、サッカー選手、アイスホッケー選手、フットボール選手、ラクロス選手などの多くのコンタクトスポーツの人々のためのカスタマイズされた保護具である。
【発明の概要】
【0007】
この従来技術から進んで、本発明の目的は、整形外科用デバイスを製造するための向上された方法を提供することである。詳細には、高度なカスタマイズされたデバイスを、好ましくは反復プロセスで製造する可能性が提供される。さらに、対応するデバイスの機能及び受容性が、対応する方法の提供を通じて向上される。
【0008】
本発明は、請求項1に記載のコンピュータ実施方法を提供することによりこの目的を達成する。
【0009】
詳細には、この目的は、以下のステップを含む、整形外科用デバイスを製造するためのコンピュータ実施方法によって解決される。
(a)患者データを含む少なくとも1つのデータセットを受信する。
(b)患者モデルを作成するために患者データを処理する。
(c)患者モデルを使用して、患者パラメータを決定する。
(d)患者パラメータ及びデバイスパラメータを使用しながら、整形外科用デバイスの(仮想)表現を生成する。
(e)少なくとも1人のユーザから少なくとも1つの入力を受信する。
(f)該入力に基づいて、患者パラメータ及び/又はデバイスパラメータのうち少なくとも1つを修正する。
(g)デバイスパラメータ、患者パラメータ、及び/又は患者パラメータに基づいて生成された整形外科用デバイスのモデルを使用して、整形外科用デバイスを物理的に作成する。
【0010】
したがって、本発明の1つの概念は、患者モデルを生成するために、例えば断層撮影デバイス又は(光学)スキャナによって供給されるような生データの使用にある。
【0011】
したがって、光学走査方法、例えば、レーザースキャナ、レーザー支援スキャナ、又は構造化光を用いる立体光学スキャナの使用を行うことで、生データを取得してもよい。一実施形態において、カメラ、特に、立体光学カメラ及び/又はレンズが1つのみのシステムを備えるカメラが、一連の画像からのデジタル3D再構成に使用される。非光学的スキャン方法を使用して、生データを取得してもよい。このために、CTスキャン又はMRIスキャンが行われてもよい。
【0012】
追加的又は代替的に、必要な患者データが、例えば、患者に直接測定テープを使用することにより、又は、例えば石膏ネガとして患者の型を測定することにより、手動で取得されてもよい。カリパス、定規、自動触覚測定機などの触覚測定の可能性も考えられる。
【0013】
次に、この患者モデルを使用して、デバイスの最適な機能に最終的に必要な患者パラメータを導出してもよい。
【0014】
本発明のさらなる概念は、デバイスの製造において、認定補綴士/矯正医による入力であろうと患者による入力であろうと、ユーザによる入力を考慮することにある。適切な入力により、機能の向上及び患者補助器具の受容性に非常に貢献できる。
【0015】
整形外科用デバイスの物理的作成は、少なくとも1つの製造マシン、特に3Dプリンタの制御を含んでもよい。一般に、この技術分野では、付加的な方法が好ましく、非常に安定した軽量の患者補助器具が得られる。しかし、本発明によれば、例えば、CNCフライス盤を使用する減法が利用されてもよい。異なるプリンタ及び/又は製造機械を使用する方法を組み合わせることも考えられる。
【0016】
本発明のさらなる概念は、製造プロセスの最適化にある。これは、製造を監督する認定補綴士/矯正医と関係する患者との両方が、製造プロセスに可能な限り密接に関わることを前提とする。したがって、本発明は、患者モデル及び/又はデバイス及び/又はデバイスのモデルの視覚化を提案する。
【0017】
しかし、本発明によれば、追加的又は代替的に、個々の患者パラメータ及び/又はデバイスパラメータが視覚化されてもよい。この目的のために、必要に応じて、ラベル付きの(単純な)図表が使用されてもよい。例えば、この技術分野で知られているように、図解された測定シートが表示されてもよい。
【0018】
視覚化はインタラクティブ又は静的であってもよい。視覚化は、2D又は3Dモデルを使用して行われてもよい。一実施形態において、患者モデル及び/又はデバイスモデルのプリントアウトは、例えば、紙上の2D又は3Dプリンタ上の3Dで行われる。
【0019】
一実施形態において、この視覚化は、可能な最も早い時点で行われるべきである。一実施形態において、患者モデルの仮想表現が生成され、整形外科用デバイスが患者モデルと共に表示される。対応する表現は、ウェブサーバを使用して行われてもよい。したがって、画像又は3Dデータさえも、ウェブブラウザを使用して視覚化されてもよい。別の実施形態において、患者モデル及び/又はデバイスの適切な表現を提供するために、ローカルプログラムがユーザ(認定補綴士/矯正医又は患者)のコンピュータにインストールされてもよい。
【0020】
一実施形態において、視覚化は、医療ユーザ及び/又は患者の両方に対して表示されてもよい。整形外科用デバイスの受容性のレベルを高めるために、詳細には、ユーザが整形外科用デバイスの視覚化を、例えば、ウェブブラウザなどの一般的にアクセス可能なシステムにおいて3Dで、又は、例えば、一般的に読み取り可能なフォーマット(例えば、PDFファイル又はJPG画像など)において2Dで、患者が利用できるようにすると、便利である。
【0021】
プログラム又はウェブブラウザを使用して、ユーザからの入力を取得してもよい。一実施形態において、仮想デバイスの表現は、患者モデルとアライメント(位置合わせ)される。このアライメントプロセスは、自動化された又は部分的に自動化された方法で実行されてもよい。この方法のユーザは、この表現を使用して、患者モデル又は患者パラメータへの必要な適合を導出してもよい。関連する適合は、患者モデルに対して直接、又は患者パラメータに対して間接的に行われてもよい。さらに、デバイスパラメータは、ユーザによって適合され、ユーザは、仮想表現によるユーザの選択においてサポートされてもよい。
【0022】
患者パラメータは、首の周囲、患者の体重、1つ又はそれ以上の角度(例えば、足の角度、肩幅だけでなく、アダプタの位置など)を含んでもよい。デバイスパラメータはまた、少なくとも1つの設計パラメータ、及び/又は少なくとも1つの機能パラメータ、及び/又は少なくとも1つの設計パラメータ(例えば、整形外科用患者補助器具の色、又は使用パターンなど)を含んでもよい。説明したように、少なくとも1人のユーザからの少なくとも1つの入力の受信は、第1のユーザから(例えば、認定補綴士/矯正医から)の少なくとも1つの第1の入力の受信を含んでもよく、一実施形態において、患者モデル及び/又は少なくとも1つの患者パラメータは、第1のユーザの入力に基づいて行われる。したがって、本発明の方法は、第1のユーザ、特に認定補綴士/矯正医との相互作用を可能にする。
【0023】
追加的又は代替的に、受信は、少なくとも1人の第2のユーザ(例えば、患者など)からの少なくとも1つの第2の入力の受信を含んでもよく、好ましくは、少なくとも1つのデバイスパラメータの修正が、第2のユーザの入力に基づいて行われる。詳細には、第1及び第2のユーザが入力を行う構成において、本発明の方法は、この入力の同期を可能にすることができ、全ての修正案が考慮される。
【0024】
一実施形態において、この方法は、第1のユーザ及び/又は第2のユーザの認証を実行し、関連するパラメータの認証されていない又は望ましくない変更を行うことができない。好ましくは、例えば第1のユーザが処理することを許可されている複数のデバイスを第1のユーザに割り当てるような認証データベースが実装される。例えば、この認証は、第1のユーザが最初にデバイスを注文したという事実に基づいてもよい。追加的又は代替的に、認証データベースは、どのパラメータ(特に、どのデバイスパラメータ)が、第2のユーザによって修正可能であるかを指定してもよい。これにより、第2のユーザが患者である場合、機能的に関連するパラメータを第2のユーザが変更することを防止する制限が実施されてもよい。むしろ、第2のユーザは、例えば、患者補助器具の外観を入力するなど、装置パラメータを修正することのみ可能であってもよい。
【0025】
一実施形態において、認証データベースを使用して、特定の認証レベルを同じタイプの特定のユーザ(例えば、認定補綴士/矯正医又は医師など)に割り当ててもよい。したがって、例えば、説明された方法に従って複数の整形外科用デバイスを既に実施した、又は、システムの専門家として示されている認定補綴士/矯正医が、複数のパラメータにアクセス可能であってもよい(エキスパートモード)。
【0026】
一実施形態において、患者データは、第2のユーザ又は患者の連絡先データをさらに含む。この方法は、患者に入力又は上述の入力を行うことを促すメッセージを患者に電子的に送信することを含んでもよい。一実施形態において、メッセージは、ユーザが対応する入力マスクにアクセスすることを可能にするURLを含む。代替的又は追加的に、ユーザ認識及び/又はパスワードが含められてもよい。追加的又は代替的に、患者データを使用して患者を認証してもよい。好ましくは、患者は、患者が自分自身の認証に成功できた場合にのみ入力可能であってもよい。
【0027】
冒頭で述べた目的は、少なくとも1つのコンピュータユニットで命令が実行されるときに既述の方法の1つを実施するための命令を含むコンピュータ読み取り可能なメモリストアでさらに達成される。
【0028】
この方法に関連して説明されたものと同様の利点が生じる。
【0029】
さらに、この目的は、この方法に関連して説明されたステップの少なくとも一部を好ましくは実行する、整形外科用デバイスを製造するためのシステムによって達成される。
【0030】
一実施形態において、該システムは、以下を備えるシステムである。
以下を備える設計サーバ:
・患者データを含むデータレコードを受信するための少なくとも1つのデジタルインターフェース。
・患者データ及び訓練データに基づいて患者モデルを作成するための、訓練データを含む少なくとも1つのデータベース。
・整形外科用デバイスの3Dデータを生成するための少なくとも1つのコンピュータユニット。
・3Dデータを該デバイスの仮想表現の形で表示し、少なくとも1人のユーザから少なくとも1つの入力を受信するように構成された視覚化装置、特にウェブサーバ。
ここで、コンピュータユニットは該入力を使用して、
(a)デバイスパラメータ及び/又は患者パラメータを修正し、
(b)デバイスパラメータ及び患者パラメータに基づいて、整形外科用デバイスの物理的作成のための製造データを生成する。
【0031】
このシステムはまた、方法に関連して既述のものと類似の又は同一の利点を生じさせる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
次に、図面に示す幾つかの例示的な実施形態を使用して、本発明をより詳細に説明する。図面において、次のとおりである。
【
図1】整形外科用デバイスを製造するためのシステムの個々のコンポーネント
【
図3】整形外科用デバイスを製造するための個々の方法ステップ
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下の説明において、同一の参照符号は、同一及び類似に作用する部分に使用される。
【0034】
図1は、本発明の製造方法の過程で互いに通信する幾つかのコンポーネントを示す。これは、CPOコンピュータ10、患者コンピュータ100、製造サーバ50、及び設計サーバ20を含む。これらのコンポーネントの全てが、説明される例示的な実施形態においてインターネット1を介して互いに接続されたネットワークを介して通信できる。
【0035】
CPOコンピュータ10は、患者の表面構造を取得するための光学スキャナ12を備える。これにより、生データ(ScanData)が得られる。
【0036】
説明される例示的な実施形態において、製造サーバ50は3Dプリンタ52を備え、必要なデータが設計サーバ20によって提供される限り、任意の所望の装具を製造できる。
【0037】
図2を参照して、設計サーバ20の個々のコンポーネントをより詳細に説明する。設計サーバ20は、以下に説明する方法を少なくとも部分的に実施するコンピュータユニット24を備える。さらに、設計サーバインターフェース23が、既述のCPOコンピュータ10及び患者コンピュータ100との通信のために設けられる。好ましい例示的な実施形態において、この通信は、ウェブサーバ40を介して行われ、コンピュータ10、100は、設計サーバ20と通信するための自身の任意のソフトウェアを必要としない。したがって、設計サーバ20によって提供されるサービスは、ウェブブラウザを使用してアクセスされてもよい。
【0038】
さらに、データベース25が設けられる。このデータベース25は、設計サーバ20が装具のモデルを生成できるように、必要なモデルデータを供給してもよい。さらに、個々の患者モデルの作成を可能にするテンプレート又はパラメータが、データベース25に保存されてもよい。データベース25は、設計サーバ20への、特に設計サーバ20によって提供されるサービスへのアクセスを管理するために、認証情報をさらに含んでもよい。
【0039】
図3に示すように、設計サーバ20は、CPOコンピュータ10を使用して認定補綴士/矯正医によって取得された生データを受信する。この生データScanDataは、例えば、DICOMフォーマットで提供されてもよい。前処理ステップ210では、患者の表面ネットワークMeshData及び骨データSkelDataが生データから取得される。表面ネットワークMeshData(Mesh)は、例えばSTL形式の三角ネットワークとして生成されてもよい。表面ネットワークMeshDataを取得するために、生データScanDataから表面ポイントが抽出され、取得されたポイントクラウドが対応するネットワークに埋め込まれる。
【0040】
骨データSkelDataの場合、本発明によれば、三角ネットワークとしてのモデリングも可能である。しかし、好ましくは、関節及び関節接続が、例えば、ベクトルを使用してモデル化され、適切なデータ構造に含まれる。さらに、各関節について、回転運動及び/又は並進運動に関する通常の自由度が保存される。
【0041】
表面ネットワークMeshData及び骨データSkelDataは、後続するデータ検証及び最適化ステップ220で最適化され検証されてもよい。例示的な一実施形態において、ステップ220でデータの表示が行われ、修正が自動的又はコンピュータ支援で行われる。行われた修正に基づいて、修正された表面ネットワークMeshData’が取得される。修正は、事前定義された、場合によっては標準化されたアライメントに従う骨データSkelDataのアライメントを含んでもよく、修正された表面ネットワークMeshData’は、骨データSkelDataのアライメントに従って変形される。
【0042】
修正された表面ネットワークMeshData’及び骨データSkelDataは、患者パラメータ抽出ステップ240で処理される。好ましくは、このステップ240では、データベース25を利用して、患者モデルが取得される。この患者モデルに基づいて、患者パラメータP1、P2が導出される。このような患者パラメータP1、P2は、装具のモデルを生成するために、装具モデル作成ステップ260で使用されてもよい。好ましくは、装具のパラメータを提供する幾つかのデバイスパラメータV1、V2が既に利用可能である。装具モデル及び場合によっては患者モデルも、視覚化ステップ280で視覚化されてもよい。
【0043】
例示的な一実施形態において、視覚化を使用して、幾つかのパラメータ(例えば、デバイスパラメータV1と患者パラメータP2など)を適合させてもよい。対応する適合は、認定補綴士/矯正医によって、又は必要に応じて患者によって実行されてもよい。適合は、1つのステップ又は別個の複数のステップで実行されてもよい。パラメータの変更後、新しい装具モデル作成260では、装具の更新されたモデルが、例えば変更されたデバイスパラメータV1’と変更された患者パラメータP2’とを使用して、作成されてもよい。これにより、装具モデルデータOrthDataが生成され、装具モデルデータOrthDataは、更新された視覚化280の後にユーザの承認が得られた場合、装具製造290を開始するために製造サーバ50に渡される。
【0044】
例示的な一実施形態において、データの検証及び最適化ステップ220は、例えば、特定の標準化された仕様に従うアライメント補正を含む。
【0045】
スキャンの位置を補正するには、表面ネットワークMeshData及び骨データSkelDataが必要である。骨データSkelDataは、説明したように、取得されたオブジェクトの内部、つまり表面ネットワークMeshData内にある単純化された骨構造である。例示的な一実施形態において、骨データSkelDataと表面ネットワークMeshDataとの間の相互作用をモデル化するデータが利用可能である。
【0046】
例えば、ベクトルは、表面ネットワーク内の距離又はサポートサイトを指定してもよい。対応するベクトルが、データベース25に保存されているテンプレートに基づいて取得されてもよい。
【0047】
アラインメント補正のための骨の動きは、モデル化された3Dオブジェクトの変形につながり、補正された表面ネットワークにつながる。
【0048】
本発明によれば、解剖学的状態が考慮されてもよい。例示的な一実施形態において、テンプレートを使用して、骨データSkelDataは、取得された表面ネットワークに適合され、最も現実的な可能な変形をモデル化できるようにするために、さらなるプロセスステップを用いて向上される。結果として得られる、修正された表面ネットワークMeshData’が、患者のパラメータの抽出に使用されてもよい。
【0049】
例えば、患者向けにカスタマイズされた足首装具(AFO)の製造では、下腿スキャンが分析されてもよい。本発明によれば、ステップ220において、スキャン又は関連する生データScanDataを補正された位置にしてもよい。この目的のために、最初のステップで、足の向きが識別され、定義された向きにされる。
【0050】
スキャン中に位置を評価できるようにするために、骨モデルの角度(骨データSkelData)がさらに生体認証軸及び平面と共に調査される。このような角度が選択された測定値から逸脱している場合、骨データSkelDataが適合/アライメントされて、スキャンも変更される(修正された表面ネットワークMeshData’)。
【0051】
本発明によれば、例えば、以下のステップが実行される。
・骨データSkelData及び表面ネットワークMeshDataに基づいて患者モデルを作成する。
・患者モデルにおける足を見つける。
・サポート平面を決定するために既存のデータを使用する。
・サポート平面が仮想ベース面に平行に向けられるまで、骨データSkelDataに基づいてモデルを修正する。例えば、足首を軸とする回転(第1のアライメント補正)。
・膝関節の角度が所定の値になるまでモデルを修正する(第2のアライメント補正)。
・第1のアライメント補正及び第2のアライメント補正に基づいて表面ネットワークMeshDataを修正して、修正された表面ネットワークMeshData’を取得する。
【0052】
説明されたアライメント補正により、患者データの抽出を可能にする、又は、結果を大幅に向上させることができる。
【0053】
例示的な一実施形態において、患者パラメータ抽出ステップ240は、以下のスキームに従う。
【0054】
患者向けにカスタマイズされた足首装具(AFO)の構築には、例えば、足及び下腿の様々な長さ及び周囲の測定値(患者パラメータ)が必要である。これらを生データScanDataから抽出するために、次の手順を行うことが可能である。
【0055】
患者の表面ネットワークMeshDataがアライメントされ、参照システムに取り込まれ、参照システムから、スキャンのどの部分が足を表し、どの部分が脚を表しているかを判断できる。次に、簡略化された足モデルが表面ネットワークMeshDataに配置される。
【0056】
この足モデルは、場合によってはデータベース25に保存され、既知であり、その自由度(例えば、サブコンポーネントの長さ、拡大縮小、回転など)に基づいて補正されてもよい。
【0057】
最適化プロセスでは、MeshDataと足モデルの相関が最適化されるまで(可能な限り最小の偏差で)、足モデルの自由度が表面ネットワークMeshDataに適合される。例示的な実施形態において、このプロセスは、測定値の抽出に使用される有意点モデル(SPM)に従って継続する。
【0058】
SPMは、点及び平面で構成され、その間で測定値が抽出される。SPMからの測定抽出点は、表面ネットワークMeshData又は修正された表面ネットワークMeshData’に投影される。これは、測定タイプに応じて異なる。周囲測定には断面が必要であるが、長さ測定には点のみが必要である。
【0059】
寸法は、このような投影された点の間又は断面に沿って抽出される。寸法は、例えば、測定シートに入力されてもよい。例示的な一実施形態において、視覚化ステップ280は、装具の3D画像の作成を含む。別の例示的な実施形態において、患者データの視覚化のために、
図5に示すものと類似の又は同一の測定シートが表示され且つ/又は印刷される。
【0060】
以上、装具の製造方法及び製造システムについて説明した。本発明の本質的な特徴を使用して、プロテーゼ、例えば
図4に示すような義足を難なく製造できる。
【0061】
同じ方法で内部プロテーゼ又は予防装具(リハビリテーション及びスポーツ用の保護具)を製造することも考えられる。
【符号の説明】
【0062】
1 インターネット
10 CPOコンピュータ
12 スキャナ
20 設計サーバ
23 設計サーバインターフェース
24 コンピュータユニット
25 データベース
40 ウェブサーバ
50 製造サーバ
52 3Dプリンタ
100 患者コンピュータ
210 前処理(例えば、骨データ抽出)
220 データ検証及び最適化
240 患者パラメータ抽出
260 装具モデル作成
280 視覚化
290 装具製造
ScanData 生データ
MeshData 表面ネットワーク
MeshData’ 修正された表面ネットワーク
OrthData 3D装具モデルデータ
SkelData 骨データ
P1,P2,P2’ 患者パラメータ
V1,V2,V1’ 装具パラメータ