(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-31
(45)【発行日】2023-06-08
(54)【発明の名称】穀稈の刈取作業方法
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20230601BHJP
【FI】
A01B69/00 303M
(21)【出願番号】P 2022011960
(22)【出願日】2022-01-28
【審査請求日】2022-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神▲崎▼ 健豪
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 成祥
(72)【発明者】
【氏名】松澤 宏樹
【審査官】吉原 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-176096(JP,A)
【文献】特開2020-119595(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00 - 69/08
A01B 63/00 - 63/12
G01D 1/00 - 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体フレーム(1)の下側に圃場を走行する走行装置(2)と、該機体フレーム(1)の前側に穀稈を刈取る刈取装置(3)と、該刈取装置(3)の後方に作業者が搭乗する操縦部(5)を設けたコンバインを使用して圃場の穀稈を刈取る穀稈の刈取作業方法であって、
前記コンバインのコントローラ(30)は、前記圃場の穀稈の穀稈条列(47)に沿って第1基準点(42)と、該第1基準点(42)からコンバインの進行方向に所定の距離隔てて第2基準点(43)を設け、
前記コンバインを往復走行させて穀稈を刈取る往復刈りモード(M1)の場合には、前記コントローラ(30)は、前記第1基準点(42)と第2基準点(43)を通る直線状の基準経路(41)に平行な第1設定経路(45)を、該基準経路(41)に直交する方向に所定の間隔を隔てて設定して、前記コンバインを設定経路(45)に沿って自動走行させ、
前記コンバインを反時計方向に周回走行させて穀稈を刈取る回刈りモード(M2)の場合には、前記コントローラ(30)は、前記第1基準点(42)と第2基準点(43)を通る直線状の基準経路(41)を第2基準点(43)からコンバインの進行方向に延在させて第2設定経路(46)を設定して、前記コンバインを第2設定経路(46)に沿って自動走行させることを特徴とする穀稈の刈取作業方法。
【請求項2】
前記往復刈りモード(M1)の場合には、前記第1基準点(42)を穀稈条列(47)の一側の近傍に設けて、前記第2基準点(43)を穀稈条列(47)の他側の近傍に設け、
前記回刈りモード(M2)の場合には、前記第1基準点(42)を穀稈条列(47)の一側の近傍に設けて、前記第2基準点(43)を穀稈条列(47)の中間よりも第1基準点(42)側に偏移して設けた請求項1記載の穀稈の刈取作業方法。
【請求項3】
前記回刈りモード(M2)の場合に、前記コントローラ(30)は、前記操縦部(5)の操作レバー(12)の操作角度が所定角度以下で、前記操縦部(5)の設定スイッチ(11B)が入力操作された場合には、前記第1基準点(42)と新たな第2基準点(43)に基づいて新たな基準経路(41)を設定し、
前記操縦部(5)の操作レバー(12)の操作角度が所定角度超の場合には、前記コンバインの自動走行を停止させて作業者による操縦に切替える請求項1又は2記載の穀稈の刈取作業方法。
【請求項4】
前記コントローラ(30)は、前記走行装置(2)の走行停止が所定時間以上継続した場合には、前記コンバインの自動走行を停止させて作業者による操縦に切替える請求項1~3のいずれか1項に記載の穀稈の刈取作業方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインを自動走行させて穀稈の刈取作業方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の穀稈の刈取作業方法では、圃場に植立された穀稈条列上に第1基準点を設け、穀稈条列上の第1基準点から所定の距離隔てた部位に第2基準点を設け、第1基準点と第2基準点を通る直線状の基準経路に沿ってコンバインを自動走行させる技術が知られている。(特許文献1)
【0003】
また、従来の穀稈の刈取作業方法では、コンバインの走行位置が基準経路上から所定寸法以上に離間した場合や、コンバインの進行方向が基準経路の延在方向から所定角度以上離間した場合には、基準経路の再設定を行う技術が知られている。(特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-99224号公報
【文献】特開2020―103094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1,2の穀稈の刈取作業方法では、基準経路の再設定を行う場合には、穀稈条列上に新たに第1基準点と第2基準点を設けるので、作業者の作業負担が増加し、また、コンバインの進行方向が大きく変更されてコンバインの自動運転が不安定になるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、作業者の作業負担を軽減して、コンバインの自動運転の安定性を高めることができる穀稈の刈取作業方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決した本発明は次のとおりである。
すなわち、請求項1記載の発明は、機体フレーム(1)の下側に圃場を走行する走行装置(2)と、該機体フレーム(1)の前側に穀稈を刈取る刈取装置(3)と、該刈取装置(3)の後方に作業者が搭乗する操縦部(5)を設けたコンバインを使用して圃場の穀稈を刈取る穀稈の刈取作業方法であって、
前記コンバインのコントローラ(30)は、前記圃場の穀稈の穀稈条列(47)に沿って第1基準点(42)と、該第1基準点(42)からコンバインの進行方向に所定の距離隔てて第2基準点(43)を設け、前記コンバインを往復走行させて穀稈を刈取る往復刈りモード(M1)の場合には、前記コントローラ(30)は、前記第1基準点(42)と第2基準点(43)を通る直線状の基準経路(41)に平行な第1設定経路(45)を、該基準経路(41)に直交する方向に所定の間隔を隔てて設定して、前記コンバインを設定経路(45)に沿って自動走行させ、前記コンバインを反時計方向に周回走行させて穀稈を刈取る回刈りモード(M2)の場合には、前記コントローラ(30)は、前記第1基準点(42)と第2基準点(43)を通る直線状の基準経路(41)を第2基準点(43)からコンバインの進行方向に延在させて第2設定経路(46)を設定して、前記コンバインを第2設定経路(46)に沿って自動走行させることを特徴とする穀稈の刈取作業方法である。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記往復刈りモード(M1)の場合には、前記第1基準点(42)を穀稈条列(47)の一側の近傍に設けて、前記第2基準点(43)を穀稈条列(47)の他側の近傍に設け、前記回刈りモード(M2)の場合には、前記第1基準点(42)を穀稈条列(47)の一側の近傍に設けて、前記第2基準点(43)を穀稈条列(47)の中間よりも第1基準点(42)側に偏移して設けた請求項1記載の穀稈の刈取作業方法である。
【0009】
請求項3記載の発明は、前記回刈りモード(M2)の場合に、前記コントローラ(30)は、前記操縦部(5)の操作レバー(12)の操作角度が所定角度以下で、前記操縦部(5)の設定スイッチ(11B)が入力操作された場合には、前記第1基準点(42)と新たな第2基準点(43)に基づいて新たな基準経路(41)を設定し、前記操縦部(5)の操作レバー(12)の操作角度が所定角度超の場合には、前記コンバインの自動走行を停止させて作業者による操縦に切替える請求項1又は2記載の穀稈の刈取作業方法である。
【0010】
請求項4記載の発明は、前記コントローラ(30)は、前記走行装置(2)の走行停止が所定時間以上継続した場合には、前記コンバインの自動走行を停止させて作業者による操縦に切替える請求項1~3のいずれか1項に記載の穀稈の刈取作業方法である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、コンバインのコントローラ(30)は、圃場の穀稈の穀稈条列(47)に沿って第1基準点(42)と、第1基準点(42)からコンバインの進行方向に所定の距離隔てて第2基準点(43)を設け、コンバインを往復走行させて穀稈を刈取る往復刈りモード(M1)の場合には、コントローラ(30)は、第1基準点(42)と第2基準点(43)を通る直線状の基準経路(41)に平行な第1設定経路(45)を、基準経路(41)に直交する方向に所定の間隔を隔てて設定して、コンバインを設定経路(45)に沿って自動走行させ、コンバインを反時計方向に周回走行させて穀稈を刈取る回刈りモード(M2)の場合には、コントローラ(30)は、第1基準点(42)と第2基準点(43)を通る直線状の基準経路(41)を第2基準点(43)からコンバインの進行方向に延在させて第2設定経路(46)を設定して、コンバインを第2設定経路(46)に沿って自動走行させるので、穀稈の植立状態に合わせて往復刈りモード(M1)又は回刈りモード(M2)を選択して穀稈を効率良く刈取ることができる。また、コンバインを第1設定経路(45)又は第2設定経路(46)に沿って自動走行させて作業者の作業負担を軽減することができる。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明による効果に加えて、往復刈りモード(M1)の場合には、第1基準点(42)を穀稈条列(47)の一側の近傍に設けて、第2基準点(43)を穀稈条列(47)の他側の近傍に設け、回刈りモード(M2)の場合には、第1基準点(42)を穀稈条列(47)の一側の近傍に設けて、第2基準点(43)を穀稈条列(47)の中間よりも第1基準点(42)側に偏移して設けたので、蛇行走行の影響を抑制して基準経路(41)を設定することができる。また、第2設定経路(46)を長く設定できるので作業者の作業負担をより軽減することができる。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は2記載の発明による効果に加えて、回刈りモード(M2)の場合に、コントローラ(30)は、操縦部(5)の操作レバー(12)の操作角度が所定角度以下で、操縦部(5)の設定スイッチ(11B)が入力操作された場合には、第1基準点(42)と新たな第2基準点(43)に基づいて新たな基準経路(41)を設定し、操縦部(5)の操作レバー(12)の操作角度が所定角度超の場合には、コンバインの自動走行を停止させて作業者による操縦に切替えるので、穀稈条列(47)の近位部に新たな基準経路(41)を設定して未刈穀稈を削減することができる。
【0014】
請求項4記載の発明によれば、請求項1~3のいずれか1項に記載の発明による効果に加えて、コントローラ(30)は、走行装置(2)の走行停止が所定時間以上継続した場合には、コンバインの自動走行を停止させて作業者による操縦に切替えるので、基準経路(41)上に倒木等の障害物があった場合には、コンバインの自動走行を停止して作業者の操縦に速やかに切替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図6】基準経路と設定経路の設定方法の説明図である。
【
図8】コンバインの自動走行の説明図であり、(a)は基準経路と穀稈条列、(b)はコンバインの自動走行状態、(c)はコンバインの自動走行の停止状態、(d)は基準経路の再設定状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1,2に示すように、コンバインは、機体フレーム1の下側に土壌面を走行する左右一対のクローラからなる走行装置2が設けられ、機体フレーム1の前側に圃場の穀稈を刈取る刈取装置3が設けられ、刈取装置3の後方左側に刈取られた穀稈を脱穀・選別処理する脱穀装置4が設けられ、刈取装置3の後方右側に作業者が搭乗する操縦部5が設けられている。
【0017】
操縦部5の下側にエンジンEを搭載するエンジンルーム6が設けられ、操縦部5の後側に脱穀・選別処理された穀粒を貯留するグレンタンク7が設けられ、グレンタンク7の後側に穀粒を外部に排出する上下方向に延在する揚穀部と前後方向に延在する横排出からなる排出オーガ8が設けられている。
【0018】
操縦部5の操縦席の前側のフロントパネルの中央部に走行装置2の走行速度等を表示するモニタ11が設けられ、モニタ11の右側に走行装置2を左右方向に旋回させたり刈取装置3を上下方向の昇降させる操作レバー12が設けられ、モニタ11と操作レバー12の間には、
図5に示すように走行装置2を往復走行させながら穀稈を刈取る往復刈りモードM1と、
図6に示すように走行装置2を反時計方向に周回させながら穀稈を刈取る回刈りモードM2を切替えるモード切替スイッチ13が設けられている。また、操作レバー12の操作状態は、操作レバー12の基部に装着されたポテンションメータ等の角度センサ12Aによって測定されている。
【0019】
操縦部5の操縦席の左側のサイドパネルの前部に走行装置2の走行速度を増減速させる変速レバー15が設けられている。また、変速レバー15の操作状態は、変速レバー15の基部に装着されたポテンションメータ等の角度センサ15Aによって測定されている。
【0020】
図3に示すように、RTK-GPS測位方式である測位ユニット20は、測位衛星21と、既知の位置に設けられた基地局22と、コンバインに設けられた移動局26で構成されている。これにより、測位衛星21から移動局26に送信されてくる位置情報と基地局22から移動局26に送信されてくる補正用の位置情報から移動局26の位置、すなわちコンバインの位置を正確に得ることができる。
【0021】
基地局22は、固定用通信機23と、測位衛星21からの位置情報を受信する固定用GPSアンテナ24と、移動局26に補正用の位置情報を送信する固定用データ送信アンテナ25で構成されている。
【0022】
移動局26は、移動用通信機27と、測位衛星21からの位置情報を受信する移動用GPSアンテナ28と、基地局22からの補正用の位置情報を受信する移動用データ送信アンテナ29で構成されている。
【0023】
図4に示すように、コンバインのコントローラ30は、CPU等からなる処理部31と、ROM、RAM、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ等からなる記憶部32と、外部とのデータ通信用の通信部33から形成されている。
【0024】
処理部31は、後述する第1基準点42や第2基準点43の位置の算出、第1基準点42や第2基準点43に基づいて基準経路41や設定経路45の設定等を行う。
【0025】
記憶部32は、処理部31で算出された第1基準点42や第2基準点43の位置、第1基準点42と第2基準点43を通る直線状の基準経路41等の保存を行う。
【0026】
通信部33は、移動用GPSアンテナ28を介して測位衛星21や移動用データ送信アンテナ29を介して基地局22からの位置情報の受信を行う。
【0027】
コントローラ30の入力側には、刈取装置3内の穀稈の有無を検出する穀稈センサ3Aと、刈取装置3が下降した作業姿勢と上昇した退避姿勢を検出する高さセンサ3Bと、第1基準点42の設定を行う第1設定スイッチ11Aと、第2基準点43の設定を行う第2設定スイッチ(請求項の「設定スイッチ」)11Bと、コントローラ30による自動走行等を停止する離脱スイッチ11Cと、操作レバー12の操作状態を測定する角度センサ12Aと、往復刈りモードM1と回刈りモードM2を切替えるモード切替スイッチ13と、変速レバー15の操作状態を測定する角度センサ15Aと、測位衛星21から送信されてくるコンバインの位置情報を受信する移動用GPSアンテナ28と、基地局22から送信されてくるコンバインの補正用の位置情報を受信する移動用データ送信アンテナ29と、第1基準点42と第2基準点43の位置に基づいて基準経路41や設定経路45を設定する基準設定経路スイッチ35と、コンバインを自動走行させる自動運転スイッチ36が所定の入力インターフェース回路を介して接続されている。
【0028】
コントローラ30の出力側には、走行装置2の左側クローラの回動を制動する制動装置38Lと右側クローラの回動を制動する制動装置38Rが所定の出力インターフェース回路を介して接続されている。
【0029】
<往復刈りモード>
図5に示すように、往復刈りモードM1では、作業者がコンバインを操縦して第1基準点42と第2基準点43を設定して、コントローラ30の処理部31が第1基準点42と第2基準点43に基づいて第1基準点42と第2基準点43を通る直線状の基準経路41と、基準経路41から下方に所定の間隔を隔てた位置に基準経路41に平行な複数の設定経路(請求項の「第1設定経路」)45を設定する。なお、所定の間隔は刈取装置3の刈取幅に設定するのが好ましい。
【0030】
作業者は、第1基準点42から第2基準点43までコンバインを操縦した後、基準経路41の左端部から基準経路41の下方に隣接する設定経路45の左端部に向かってコンバインを下方後側に向かって旋回させる。
【0031】
次に、作業者は、設定経路45の左端部で自動運転スイッチ36を入力操作して、設定経路45に沿ってコンバインを設定経路45の左端部から右端部に自動走行させる。
【0032】
次に、作業者は、設定経路45の右端部で離脱スイッチ11Cを入力操作して、設定経路45の右端部から設定経路45の下方に隣接する設定経路45の右端部に向かってコンバインを下方後側に向かって旋回させる。
【0033】
次に、作業者は、設定経路45の右端部で自動運転スイッチ36を入力操作して、設定経路45に沿ってコンバインを設定経路45の右端部から左端部に自動走行させる。
【0034】
往復刈りモードM1では、コンバインを設定経路45の左端部から右端部に自動走行させた後、設定経路45の右端部から左端部に自動走行させながら穀稈の刈取作業を行う。これにより、作業者の作業負担が低減と、コンバインを設定経路45に沿って自動走行させて穀稈を効率良く刈取ることができる。
【0035】
<回刈りモード>
図6に示すように、回刈りモードM2では、作業者がコンバインを操縦して圃場の上部に第1基準点42と第2基準点43を設定して、コントローラ30の処理部31が1基準点42と第2基準点43を通る直線状の基準経路41を第2基準点43から左方向に延在させた設定経路(請求項の「第2設定経路」)46を設定する。次に、作業者がコンバインを操縦して圃場の左部に第1基準点42と第2基準点43を設定して、処理部31が1基準点42と第2基準点43を通る直線状の基準経路41を第2基準点43から下方向に延在させた設定経路46を設定する。次に、作業者がコンバインを操縦して圃場の下部に第1基準点42と第2基準点43を設定して、コントローラ30の処理部31が1基準点42と第2基準点43を通る直線状の基準経路41を第2基準点43から右方向に延在させた設定経路46を設定した後に、作業者がコンバインを操縦して圃場の左部に第1基準点42と第2基準点43を設定して、処理部31が1基準点42と第2基準点43を通る直線状の基準経路41を第2基準点43から上方向に延在させた設定経路46を設定する。
【0036】
作業者は、第1基準点42から第2基準点43までコンバインを操縦した後、第2基準点43の近傍の設定経路46の右端部で自動運転スイッチ36を入力操作して、設定経路46に沿ってコンバインを設定経路46の右端部から左端部に自動走行させ、その後、設定経路46の左端部でコンバインの進行方向が左方から下方に向かうようにα旋回させる。
【0037】
次に、作業者は、第1基準点42から第2基準点43までコンバインを操縦した後、第2基準点43の近傍の設定経路46の上端部で自動運転スイッチ36を入力操作して、設定経路46に沿ってコンバインを設定経路46の上端部から下端部に自動走行させ、その後、設定経路46の下端部でコンバインの進行方向が下方から右方に向かうようにα旋回させる。
【0038】
次に、作業者は、第1基準点42から第2基準点43までコンバインを操縦した後、第2基準点43の近傍の設定経路46の左端部で自動運転スイッチ36を入力操作して、設定経路46に沿ってコンバインを設定経路46の左端部から右端部に自動走行させ、その後、設定経路46の右端部でコンバインの進行方向が右方から上方に向かうようにα旋回させる。
【0039】
次に、作業者は、第1基準点42から第2基準点43までコンバインを操縦した後、第2基準点43の近傍の設定経路46の下端部で自動運転スイッチ36を入力操作して、設定経路46に沿ってコンバインを設定経路46の下端部から上端部に自動走行させ、その後、設定経路46の上端部でコンバインの進行方向が上方から左方に向かうようにα旋回させる。
【0040】
回刈りモードM2では、圃場の上部の左右方向に延在する基準経路41及び設定経路46と、圃場の左部の上下方向に延在する基準経路41及び設定経路46と、圃場の下部の左右方向に延在する基準経路41及び設定経路46と、圃場の右部の上下方向に延在する基準経路41及び設定経路46に沿ってコンバインを自動走行させながら刈取作業を行う。これにより、作業者の作業負担が低減と、コンバインを設定経路46に沿って自動走行させて穀稈を効率良く刈取ることができる。
【0041】
<基準・設定経路の設定方法>
図7に示すように、ステップS1で、コントローラ30の処理部31は、モード切替スイッチ13の切替状態を判断する。モード切替スイッチ13が走行装置2を往復走行させながら穀稈を刈取る往復刈りモードM1に切替えられていると判断した場合にはステップS2に進み、モード切替スイッチ13が走行装置2を反時計方向に周回させながら穀稈を刈取る回刈りモードM2に切替えられていると判断した場合にはステップS9に進む。これにより、穀稈の植立状態に合わせて刈取モードを選択して穀稈を効率良く刈取ることができる。
【0042】
ステップS2で、処理部31は、第1設定スイッチ11Aが入力操作されたか否か判断する。なお、
図5に示すように第1設定スイッチ11Aの入力操作は、圃場40の搬入場所40Aの近傍で行なうのが好ましい。また、第1設定スイッチ11Aの入力操作時には、コンバインは作業者によって操縦されている。
【0043】
第1設定スイッチ11Aが入力操作されたと判断した場合には、測位衛星21から送信されてくるコンバインの位置情報と基地局22から送信されてくるコンバインの補正用の位置情報に基づいて第1基準点42の位置を算出し、この第1基準点42の位置を記憶部32に保存してステップS3に進み、第1設定スイッチ11Aが入力操作されていないと判断した場合にはステップS2を繰返す。なお、測位衛星21から送信されてくるコンバインの位置情報は移動用GPSアンテナ28を介してコントローラ30に入力され、基地局22から送信されてくるコンバインの補正用の位置情報は移動用データ送信アンテナ29を介してコントローラ30に入力される。
【0044】
ステップS3で、処理部31は、第2設定スイッチ11Bが入力操作されたか否か判断する。なお、
図5に示すように第2設定スイッチ11Bの入力操作は圃場40における搬入場所40Aと対向する畦の近傍で行うのが好ましい。また、第2設定スイッチ11Bの入力操作時には、コンバインは作業者によって操縦されている。
【0045】
第2設定スイッチ11Bが入力操作されたと判断した場合には、測位衛星21から送信されてくるコンバインの位置情報と基地局22から送信されてくるコンバインの補正用の位置情報に基づいて第2基準点43の位置を算出し、この第2基準点43の位置を記憶部32に保存してステップS4に進み、第2設定スイッチ11Bが入力操作されていないと判断した場合にはステップS3を繰返す。なお、
【0046】
ステップS4で、処理部31は、基準設定経路スイッチ35が入力操作されたか否か判断する。なお、基準設定経路スイッチ35の入力操作時には、コンバインは作業者によって操縦されている。
【0047】
基準設定経路スイッチ35が入力操作されたと判断した場合には、
図5に示すように、第1基準点42と第2基準点43を通る直線状の基準経路41に基づいて、基準経路41から所定の間隔隔てた位置に、基準経路41に平行な複数のコンバインを自動走行させる設定経路45を設定してステップS5に進み、基準設定経路スイッチ35が入力操作されていないと判断した場合にはステップS4を繰返す。これにより、第1基準点42と第1基準点42から十分に離間した第2基準点43に基づいて蛇行走行の影響を抑制して基準経路41を設定することができる。
【0048】
ステップS5で、処理部31は、離脱スイッチ11Cが入力操作されたか否か判断する。なお、離脱スイッチ11Cの入力操作時には、コンバインは作業者によって操縦されている。
【0049】
離脱スイッチ11Cが入力操作されたと判断した場合にはステップS6に進み、離脱スイッチ11Cが入力操作されていないと判断した場合にはステップS5を繰返す。
【0050】
本実施形態では、処理部31は、ステップS3で第2設定スイッチ11Bが入力操作されたか否か判断し、ステップS4で基準設定経路スイッチ35が入力操作されたか否か判断し、ステップS5で離脱スイッチ11Cが入力操作されたか否か判断しているが、ステップS3とステップS4を省略することもできる。その場合には、ステップS5で、離脱スイッチ11Cが入力操作されたと判断した場合には、測位衛星21から送信されてくるコンバインの位置情報と基地局22から送信されてくるコンバインの補正用の位置情報に基づいて第2基準点43の位置を算出し、この第2基準点43の位置を記憶部32に保存して、第1基準点42と第2基準点43を結ぶ直線状の基準経路41に基づいて、基準経路41から所定の間隔隔てた位置に、基準経路41に平行な複数のコンバインを自動走行させる設定経路45を設定してステップS6に進み、離脱スイッチ11Cが入力操作されていないと判断した場合にはステップS5を繰返す。
【0051】
ステップS6で、操縦部5に搭乗した作業者は、操作レバー12を操作してコンバインを旋回させて、
図5に示すように、コンバインを基準経路41の終端部から基準経路41に隣接する設定経路45の始端部に移動させてステップS7に進む。
【0052】
ステップS7で、処理部31は、自動運転スイッチ36が入力操作されたか否か判断する。なお、自動運転スイッチ36の入力操作時には、コンバインは作業者によって操縦されている。
【0053】
自動運転スイッチ36が入力操作されたと判断した場合にはステップS8に進み、自動運転スイッチ36が入力操作されていないと判断した場合にはステップS6に戻る。
【0054】
ステップS8で、処理部31は、走行装置2の左側クローラの回動を制動する制動装置38Lと右側クローラの回動を制動する制動装置38Rを操作して、コンバインを自動操舵し、
図5に示すように、コンバインを設定経路45に沿って自動走行させてステップS5に戻る。なお、制動装置38L,38RはエンジンEの出力回転速度を増減速するトランスミッション(図示省略)内に設けられている。これにより、作業者の作業負担が低減と、コンバインを設定経路45に沿って自動走行させて穀稈を効率良く刈取ることができる。また、コンバインの自動走行時にはモニタ11に自動走行中等の表示がされる。これにより、作業者への注意喚起が図られコンバインの自動走行を安全に行うことができる。
【0055】
ステップS9で、処理部31は、第1設定スイッチ11Aが入力操作されたか否か判断する。なお、
図6に示すように第1設定スイッチ11Aの入力操作は、圃場40の搬入場所40Aの近傍で行なうのが好ましい。第1設定スイッチ11Aの入力操作時には、コンバインは作業者によって操縦されている。
【0056】
第1設定スイッチ11Aが入力操作されたと判断した場合には、測位衛星21から送信されてくるコンバインの位置情報と基地局22から送信されてくるコンバインの補正用の位置情報に基づいて第1基準点42の位置を算出し、この第1基準点42の位置を記憶部32に保存してステップS10に進み、第1設定スイッチ11Aが入力操作されていないと判断した場合にはステップS9を繰返す。なお、測位衛星21から送信されてくるコンバインの位置情報は移動用GPSアンテナ28を介してコントローラ30に入力され、基地局22から送信されてくるコンバインの補正用の位置情報は移動用データ送信アンテナ29を介してコントローラ30に入力される。
【0057】
ステップS10で、処理部31は、第2設定スイッチ11Bが入力操作されたか否か判断する。なお、
図6に示すように第2設定スイッチ11Bの入力操作は、第1設定スイッチ11Aの入力操作位置から所定の距離隔てた近位部で行うのが好ましい。また、第2設定スイッチ11Bの入力操作時には、コンバインは作業者によって操縦されている。
【0058】
第2設定スイッチ11Bが入力操作されたと判断した場合には、測位衛星21から送信されてくるコンバインの位置情報と基地局22から送信されてくるコンバインの補正用の位置情報に基づいて第2基準点43の位置を算出し、この第2基準点43の位置を記憶部32に保存してステップS11に進み、第2設定スイッチ11Bが入力操作されていないと判断した場合にはステップS10を繰返す。
【0059】
ステップS11で、処理部31は、基準設定経路スイッチ35が入力操作されたか否か判断する。なお、基準設定経路スイッチ35の入力操作時には、コンバインは作業者によって操縦されている。
【0060】
基準設定経路スイッチ35が入力操作されたと判断した場合には、
図8(a)に示すように、第1基準点42と第2基準点43を通る直線状の基準経路41を第2基準点43からコンバインの進行方向に延在させた設定経路46を設定してステップS12に進み、基準設定経路スイッチ35が入力操作されていないと判断した場合にはステップS11を繰返す。これにより、第2基準点43から進行方向に向かって長い設定経路46を設定することができる。
【0061】
ステップS12で、処理部31は、自動運転スイッチ36が入力操作されたか否か判断する。なお、自動運転スイッチ36の入力操作時には、コンバインは作業者によって操縦されている。
【0062】
自動運転スイッチ36が入力操作されたと判断した場合にはステップS13に進み、自動運転スイッチ36が入力操作されていないと判断した場合にはステップS12を繰返す。
【0063】
ステップS13で、処理部31は、走行装置2の左側クローラの回動を制動する制動装置38Lと右側クローラの回動を制動する制動装置38Rを操作して、コンバインを自動操舵し、
図6に示すように、コンバインを設定経路45に沿って自動走行させてステップS14に進む。これにより、作業者の作業負担が低減と、コンバインを設定経路45に沿って自動走行させて穀稈を効率良く刈取ることができる。また、コンバインの自動走行時にはモニタ11に自動走行中等の表示がされる。これにより、作業者への注意喚起が図られコンバインの自動走行を安全に行うことができる。
【0064】
ステップS14で、処理部31は、走行装置2が走行しているか否か判断する。走行装置2が走行していると判断した場合にはステップS15に進み、走行装置2の走行が停止していると判断した場合にはステップS19に進む。なお、本実施形態では、走行装置2が走行しているか否かの判断は、角度センサ15Aの測定値に基づいて行われ、角度センサ15Aの測定値が、変速レバー15の前側傾斜姿勢を示す場合には走行していると判断し、角度センサ15Aの測定値が変速レバー15の中立傾斜姿勢を示す場合には走行が停止している判断している。角度センサ15Aの測定値に替えて、走行装置2に設けられた走行装置2の走行速度を測定する速度センサ(図示省略)の測定値に基づいて判断することもできる。
【0065】
ステップS15で、処理部31は、作業者が操作する操作レバー12の操作量が所定の範囲以内であるか否か判断する。作業者が操作する操作レバー12の操作量が所定の範囲以内である場合にはステップS16に進み、作業者が操作する操作レバー12の操作量が所定の範囲を超えている場合にはステップS18に進む。これにより、
図8(b)に示すように、設定経路46が穀稈条列47と一致しない、すなわち、設定経路46と穀稈条列47が平行でない場合や設定経路46と穀稈条列47は平行であるが所定の距離隔たっている場合には、操作レバー12を操作してコンバインを穀稈条列47に近づけて未刈穀稈の発生を抑制することができる。また、
図8(c)に示すように、設定経路46が穀稈条列47と大きく離間している場合には、コンバインの自動走行を停止して、自動走行が不安定になって蛇行走行するのを防止することができる。なお、符号48はコンバインが走行した走行経路を示している。
【0066】
ステップS16で、処理部31は、第2設定スイッチ11Bが入力操作されていないか否か判断する。第2設定スイッチ11Bが入力操作されていないと判断した場合にはステップS17に進み、第2設定スイッチ11Bが入力操作されたと判断した場合にはステップS20に進む。これにより、作業者が、コンバインが自動走行する設定経路46が穀稈条列47と大きく離間していると判断した場合、新たに第2基準点43を算出して、第1基準点42と新たに第2基準点43を通る新たな直線状の設定経路46を設定して、未刈穀稈の発生を抑制することができる。
【0067】
ステップS17で、処理部31は、離脱スイッチ11Cが入力操作されたか否か判断する。離脱スイッチ11Cが入力操作されたと判断した場合にはステップS18に進み、離脱スイッチ11Cが入力操作されていないと判断した場合にはステップS14に戻る。
【0068】
ステップS18で、操縦部5に搭乗した作業者は、操作レバー12を操作してコンバインを旋回させて、
図6に示すように、コンバインを設定経路46の終端部からいわゆるα旋回させてコンバインの進行方向を時計方向に270度旋回させてステップS9に戻る。これにより、作業者が、次の基準経路41の第1基準点42を設定して未刈穀稈を低減することができる。
【0069】
ステップS19で、処理部31は、走行装置2の走行停止時間が所定の時間以内であるか否か判断する。走行装置2の走行停止時間が所定の時間以内であると判断した場合にはステップS13に戻り、走行装置2の走行停止時間が所定の時間よりも長いと判断した場合にはステップS18に進む。
【0070】
ステップS20で、処理部31は、設定経路46の設定を取消して、測位衛星21から送信されてくるコンバインの位置情報と基地局22から送信されてくるコンバインの補正用の位置情報に基づいて第2基準点43の位置を算出し、この第2基準点43の位置を記憶部32に保存してステップS11に進む。これにより、
図8(d)に示すように、新たに設定された設定経路46を穀稈条列47の近位部に設定して未刈穀稈の発生を抑制することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 機体フレーム
2 走行装置
3 刈取装置
5 操縦部
11B 第2設定スイッチ(設定スイッチ)
12 操作レバー
30 コントローラ
41 基準経路
42 第1基準点
43 第2基準点
45 設定経路(第1設定経路)
46 設定経路(第2設定経路)
47 穀稈条列
M1 往復刈りモード
M2 回刈りモード
【要約】 (修正有)
【課題】作業者の作業負担を軽減して、コンバインの自動運転の安定性を高める穀稈の刈取作業方法を提供する。
【解決手段】コンバインのコントローラは、圃場の穀稈の穀稈条列に沿って第1基準点42と、第1基準点42からコンバインの進行方向に所定の距離隔てて第2基準点43を設け、コンバインを往復走行させて穀稈を刈取る往復刈りモードM1の場合には、第1基準点42と第2基準点43を通る直線状の基準経路41に平行な第1設定経路45を、基準経路41に直交する方向に所定の間隔を隔てて設定して、コンバインを設定経路に沿って自動走行させ、コンバインを反時計方向に周回走行させて穀稈を刈取る回刈りモードM2の場合には、第1基準点42と第2基準点43を通る直線状の基準経路41を第2基準点43からコンバインの進行方向に延在させて第2設定経路46を設定して、コンバインを第2設定経路46に沿って自動走行させる。
【選択図】
図6