(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-31
(45)【発行日】2023-06-08
(54)【発明の名称】吊り式振動搬送装置
(51)【国際特許分類】
B65G 27/08 20060101AFI20230601BHJP
B65G 27/10 20060101ALI20230601BHJP
B65G 27/28 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
B65G27/08
B65G27/10
B65G27/28
(21)【出願番号】P 2022085623
(22)【出願日】2022-05-25
【審査請求日】2022-12-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593046267
【氏名又は名称】ゼンウェル・オーダード株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093115
【氏名又は名称】佐渡 昇
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 彌一郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 英晃
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 宗優
(72)【発明者】
【氏名】石川 耕三
(72)【発明者】
【氏名】阿島 旦
(72)【発明者】
【氏名】相羽 祇亮
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-066089(JP,U)
【文献】特開昭59-227618(JP,A)
【文献】特公昭57-059169(JP,B2)
【文献】特許第2730208(JP,B2)
【文献】特表2019-510711(JP,A)
【文献】特開2008-201516(JP,A)
【文献】特開平08-231021(JP,A)
【文献】特公平03-037990(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 27/00-27/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク(18)を搬送するためのワーク搬送トラフ(17)と、
このワーク搬送トラフ(17)の上方に設けられ、このワーク搬送トラフ(17)に振動を付与する振動付与機構(20)と、
この振動付与機構(20)を吊り下げる吊り下げ部(30)とを備え、
この吊り下げ部(30)は、前記ワーク(18)の搬送方向に関する剛性が小さく吊り下げ方向に関する剛性が大きい吊り用板ばね(13(A,B))を前記ワーク(18)の搬送方向に間隔を隔て備えて振動付与機構(20)を吊り下げ
ており、
前記振動付与機構(20)は、
前記吊り下げ部(30)で吊り下げられる第一振動体(M1)と、
この第一振動体(M1)の下方に、前記ワーク(18)の搬送方向に関する剛性が小さく吊り下げ方向に関する剛性が大きい振動体用板ばね(3(A,B))を前記ワーク(18)の搬送方向(X)に間隔を隔て吊り下げられる第二振動体(M2)と、
これら第一第二振動体(M1,M2)との間に振動を発生させる振動発生部(21)と、を備え、
前記第一振動体(M1)の重心(G1)と第二振動体(M2)の重心(G2)とを結ぶ線と、前記振動発生部(21)により発生する駆動力の方向(F)とが平行であり、
前記ワーク(18)の搬送方向に間隔を隔て設けられる振動体用板ばね(3(A,B))のうち少なくとも一つの振動体用板ばねは、前記ワーク(18)の搬送方向に関し、第二振動体(M2)の吊り下げ位置を調整可能となっていることを特徴とする吊り式振動搬送装置。
【請求項2】
ワーク(18)を搬送するためのワーク搬送トラフ(17)と、
このワーク搬送トラフ(17)の上方に設けられ、このワーク搬送トラフ(17)に振動を付与する振動付与機構(20)と、
この振動付与機構(20)を吊り下げる吊り下げ部(30)とを備え、
この吊り下げ部(30)は、前記ワーク(18)の搬送方向に関する剛性が小さく吊り下げ方向に関する剛性が大きい吊り用板ばね(13(A,B))を前記ワーク(18)の搬送方向に間隔を隔て備えて振動付与機構(20)を吊り下げ
ており、
前記振動付与機構(20)は、
前記吊り下げ部(30)で吊り下げられる第一振動体(M1)と、
この第一振動体(M1)の下方に、前記ワーク(18)の搬送方向に関する剛性が小さく吊り下げ方向に関する剛性が大きい振動体用板ばね(3(A,B))を前記ワーク(18)の搬送方向に間隔を隔て吊り下げられる第二振動体(M2)と、
これら第一第二振動体(M1、M2)との間に振動を発生させる振動発生部(21)と、を備え、
振動付与機構(20)の重心(G0)が、前記第一振動体(M1)の重心(G1)と第二振動体(M2)の重心(G2)とを結ぶ線上に配置され、
前記ワーク(18)の搬送方向に間隔を隔て設けられる振動体用板ばね(3(A,B))のうち少なくとも一つの振動体用板ばねは、前記ワーク(18)の搬送方向に関し、第二振動体(M2)の吊り下げ位置を調整可能となっていることを特徴とする吊り式振動搬送装置。
【請求項3】
ワーク(18)を搬送するためのワーク搬送トラフ(17)と、
このワーク搬送トラフ(17)の上方に設けられ、このワーク搬送トラフ(17)に振動を付与する振動付与機構(20)と、
この振動付与機構(20)を吊り下げる吊り下げ部(30)とを備え、
この吊り下げ部(30)は、前記ワーク(18)の搬送方向に関する剛性が小さく吊り下げ方向に関する剛性が大きい吊り用板ばね(13(A,B))を前記ワーク(18)の搬送方向に間隔を隔て備えて振動付与機構(20)を吊り下げ
ており、
前記振動付与機構(20)は、
前記吊り下げ部(30)で吊り下げられる第一振動体(M1)と、
この第一振動体(M1)の下方に、前記ワーク(18)の搬送方向に関する剛性が小さく吊り下げ方向に関する剛性が大きい振動体用板ばね(3(A,B))を前記ワーク(18)の搬送方向に間隔を隔て吊り下げられる第二振動体(M2)と、
これら第一第二振動体(M1、M2)との間に振動を発生させる振動発生部(21)と、を備え、
振動付与機構(20)の重心(G0)が、前記第一振動体(M1)の重心(G1)と第二振動体(M2)の重心(G2)とを結ぶ線上に配置され、
前記振動発生部(21)は、前記ワーク(18)の搬送方向に関する取付位置が調整可能となっていることを特徴とする吊り式振動搬送装置。
【請求項4】
請求項
2または3において
、
前記第一振動体(M1)の重心(G1)と第二振動体(M2)の重心(G2)とを結ぶ線と、前記振動発生部(21)により発生する駆動力の方向(F)とが平行であることを特徴とする吊り式振動搬送装置。
【請求項5】
請求項1において
、
前記振動付与機構(20)の重心(G0)が、前記第一振動体(M1)の重心(G1)と第二振動体(M2)の重心(G2)とを結ぶ線上に配置されていることを特徴とする吊り式振動搬送装置。
【請求項6】
請求項
1または2または3において、
前記第一振動体(M1)と第二振動体(M2)はそれぞれカウンタウェイトを備え、これらカウンタウェイトは、それぞれ、ワーク(18)の搬送方向および垂直方向に関し、重心位置が調整可能となっていることを特徴とする吊り式振動搬送装置。
【請求項7】
請求項
1または2または3において、
前記振動体用板ばね(3(A,B))は、いずれも、第二振動体(M2)の吊り下げ方向に向かってワーク(18)の搬送方向に傾斜しており、
前記振動発生部(21)による振動発生方向(F)が前記振動体用板ばね(3(A,B))と直交していることを特徴とする吊り式振動搬送装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記振動発生部(21)による振動発生方向(F)が、
前記第一振動体(M1)の重心(G1)と第二振動体M2の重心(G2)とを結ぶ線上において、当該線と一致していることを特徴とする吊り式振動搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊り式振動搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、
「コンベヤー樋1」(または21)を「振動隔離バネ材2」(または22)で吊り下げた「動的振動吸収装置によって案内されるコンベヤー」
が記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、
「搬送トラフ2」の上面に「振動部3a、3b」を設け、全体を「防振スプリング4a、4b」を介して吊した「電磁フィーダ1」
が記載されている。
【0004】
これら吊り式のコンベヤーないしフィーダによれば、コンベヤーないしフィーダ(以下、フィーダという)の下方の空間を有効に利用することが可能になる。
【0005】
しかし、従来の吊り式フィーダは、コイルスプリングを介して吊り下げる構造であったので、防振性を高めるべくコイルスプリングのバネ定数を小さくして行くと、コンベヤー樋ないし搬送トラフ(以下、トラフという)が上下方向へ振動しやすくなるという難点を有していた。トラフが上下振動すると、搬送対象物(ワーク)の次位の搬送手段への乗り移りがうまく行かなくなる等の問題が生じる。
また振幅を大きくした場合についても上下振動の振幅が大きくなり同様の問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭46-006969号公報
【文献】実開昭59-146312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、下方の空間を有効利用することができるとともに、トラフの上下振動を抑制することができる吊り式振動搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明の吊り式振動搬送装置は、
ワークを搬送するためのワーク搬送トラフと、
このワーク搬送トラフの上方に設けられ、このワーク搬送トラフに振動を付与する振動付与機構と、
この振動付与機構を吊り下げる吊り下げ部とを備え、
この吊り下げ部は、前記ワークの搬送方向に関する剛性が小さく吊り下げ方向に関する剛性が大きい吊り用板ばねを前記ワークの搬送方向に間隔を隔て備えて振動付与機構を吊り下げていることを特徴とする。
【0009】
この吊り式振動搬送装置は、上記の構成となっているので、次のような作用効果が得られる。
吊り下げ部によって振動付与機構とワーク搬送トラフが吊り下げられているので、ワーク搬送トラフの下方の空間を有効利用することが可能である。
そして、吊り下げ部は、前記ワークの搬送方向に関する剛性が小さく吊り下げ方向に関する剛性が大きい吊り用板ばねを前記ワークの搬送方向に間隔を隔て備えて振動付与機構を吊り下げているので、コイルスプリングを介して吊り下げる従来技術とは異なり、防振性を高めるべくバネ定数を小さくしていっても、吊り下げ方向に関する剛性が大きいため、ワーク搬送トラフは上下方向へ振動しにくくなる。また、吊り用板ばねはワークの搬送方向に関する剛性が小さいため、ワーク搬送トラフによるワーク搬送のための振動は妨げない。
以上のように、本発明の吊り式振動搬送装置によれば、下方の空間を有効利用することができるとともに、トラフの上下振動を抑制することができる。
【0010】
この吊り式振動搬送装置においては、
前記振動付与機構は、
前記吊り下げ部で吊り下げられる第一振動体と、
この第一振動体の下方に、前記ワークの搬送方向に関する剛性が小さく吊り下げ方向に関する剛性が大きい振動体用板ばねを前記ワークの搬送方向に間隔を隔て吊り下げられる第二振動体と、
これら第一第二振動体との間に振動を発生させる振動発生部と、を備え、
前記第一振動体の重心と第二振動体の重心とを結ぶ線と、前記振動発生部により発生する振動の方向とが平行である構成とすることができる。
このように構成すると、ワーク搬送トラフのピッチングを抑制することができる。
【0011】
この吊り式振動搬送装置においては、
前記振動付与機構は、
前記吊り下げ部で吊り下げられる第一振動体と、
この第一振動体の下方に、前記ワークの搬送方向に関する剛性が小さく吊り下げ方向に関する剛性が大きい振動体用板ばねを前記ワークの搬送方向に間隔を隔て吊り下げられる第二振動体と、
これら第一第二振動体との間に振動を発生させる振動発生部と、を備え、
振動付与機構の重心が、前記第一振動体の重心と第二振動体の重心とを結ぶ線上に配置されている構成とすることができる。
このように構成すると、ワーク搬送トラフのピッチングを抑制することができる。
【0012】
この吊り式振動搬送装置においては、
前記ワークの搬送方向に間隔を隔て設けられる振動体用板ばねのうち少なくとも一つの振動体用板ばねは、前記ワークの搬送方向に関し、第二振動体の吊り下げ位置を調整可能となっている構成とすることができる。
このように構成すると、振動付与機構及びワーク搬送トラフの重量バランスを取りやすくなるため、ワーク搬送トラフのピッチングを容易に抑制することが可能となる。
【0013】
この吊り式振動搬送装置においては、
前記振動発生部は、前記ワークの搬送方向に関する取付位置が調整可能となっている構成とすることができる。
このように構成すると、振動付与機構及びワーク搬送トラフの重量バランスを取りやすくなるため、ワーク搬送トラフのピッチングを容易に抑制することが可能となる。
【0014】
この吊り式振動搬送装置においては、
前記第一振動体と第二振動体はそれぞれカウンタウェイトを備え、これらカウンタウェイトは、それぞれ、ワークの搬送方向および垂直方向に関し、重心位置が調整可能となっている構成とすることができる。
このように構成すると、振動付与機構及びワーク搬送トラフの重量バランスを取りやすくなるため、ワーク搬送トラフのピッチングを容易に抑制することが可能となる。
【0015】
この吊り式振動搬送装置においては、
前記振動体用板ばねは、いずれも、第二振動体の吊り下げ方向に向かってワークの搬送方向に傾斜しており、
前記振動発生部による振動発生方向が前記振動体用板ばねと直交している構成とすることができる。
このように構成すると、第一第二振動体を効率よく振動させ、ワーク搬送トラフを効率よく振動させてワークの搬送性を向上させることができる。
【0016】
この吊り式振動搬送装置においては、
前記振動発生部による振動発生方向が、
前記第一振動体の重心と第二振動体の重心とを結ぶ線上において、当該線と一致している構成とすることができる。
このように構成すると、ワーク搬送トラフのピッチングを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る吊り式振動搬送装置の実施の形態を示す図で、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は左側面図。
【
図2】(A)は
図1におけるA-A断面図、(B)は
図1におけるB-B断面図、(C)は
図1におけるC-C断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る吊り式振動搬送装置の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、各図において、同一部分ないし相当する部分には、同一の符号を付してある。
【0019】
図1に示す吊り式振動搬送装置100は、
ワーク18を搬送するためのワーク搬送トラフ17と、
このワーク搬送トラフ17の上方に設けられ、このワーク搬送トラフ17に振動を付与する振動付与機構20と、
この振動付与機構20を吊り下げる吊り下げ部30とを備えている。
【0020】
吊り下げ部30は、ワーク18の搬送方向(
図1(a)において矢印X方向(前方ともいう))に関する剛性が小さく吊り下げ方向(
図1(a)において矢印Y方向)に関する剛性が大きい吊り用板ばね13(A,B)をワーク18の搬送方向に間隔を隔て備えて振動付与機構20を吊り下げている。
【0021】
この吊り式振動搬送装置100は、上記の構成となっているので、次のような作用効果が得られる。
【0022】
吊り下げ部30によって振動付与機構20とワーク搬送トラフ17が吊り下げられているので、ワーク搬送トラフ17の下方の空間を有効利用することが可能である。
例えば従来では困難であったワーク下方を検査する装置などを組み込むことが出来る。
【0023】
そして、吊り下げ部30は、ワーク18の搬送方向(矢印X方向)に関する剛性が小さく吊り下げ方向(矢印Y方向)に関する剛性が大きい吊り用板ばね13(A,B)をワークの搬送方向に間隔を隔て備えて振動付与機構20を吊り下げているので、コイルスプリングを介して吊り下げる従来技術とは異なり、防振性を高めるべく吊り用板ばね13(A,B)のバネ定数を小さくしていっても、吊り下げ方向に関する剛性が大きいため、ワーク搬送トラフ17は上下方向(矢印Y方向)へ振動しにくくなる。また、吊り用板ばね13(A,B)はワークの搬送方向に関する剛性が小さいため、ワーク搬送トラフ17によるワーク搬送のための振動は妨げない。
【0024】
以上のように、この実施の形態の吊り式振動搬送装置1によれば、下方の空間を有効利用することができるとともに、トラフ17の上下振動を抑制することができる。結果として、例えば、搬送対象物(ワーク)17の次位の搬送手段への乗り移りを良好に行うことが可能となる。
【0025】
振動付与機構20は、
吊り下げ部30で吊り下げられる第一振動体M1と、
この第一振動体M1の下方に、ワーク18の搬送方向に関する剛性が小さく吊り下げ方向に関する剛性が大きい振動体用板ばね3(A,B)をワーク18の搬送方向に間隔を隔て吊り下げられる第二振動体M2と、
これら第一第二振動体M1,M2との間に振動を発生させる振動発生部21とを備えている。
【0026】
第一振動体M1の重心G1と第二振動体M2の重心G2とを結ぶ線L1と、振動発生部21により発生する駆動力(F)とは平行となっている(
図4参照)。
【0027】
このように構成すると、ワーク搬送トラフ17のピッチングを抑制することができる。
【0028】
振動付与機構20の重心G0は、第一振動体M1の重心G1と第二振動体M2の重心G2とを結ぶ線L1上に配置されている(
図4参照)。
【0029】
このように構成すると、振動発生部21により発生する振動に起因する、第一第二振動体M1,M2および振動発生部21による偶力の発生が抑制されるため、ワーク搬送トラフ17のピッチングを抑制することができる。
【0030】
ワーク18の搬送方向に間隔を隔て設けられる振動体用板ばね3(A,B)のうち少なくとも一つの振動体用板ばね3は、ワーク18の搬送方向に関し、第二振動体M2の吊り下げ位置を調整可能となっている。
図1に示す実施の形態では、振動体用板ばね3(A)が、
図1(a)に示す位置から
図3に示す位置の範囲で調整可能である。
図1に示す実施の形態では、振動体用板ばね3(A)を位置調整可能としたが、振動体用板ばね3(B)を位置調整可能としても良く,両方の振動体用板ばね3(A,B)を位置調整可能としても良い。
【0031】
以上のように構成すると、振動付与機構20及びワーク搬送トラフ17の重量バランスを取りやすくなるため、ワーク搬送トラフ17のピッチングを容易に抑制することが可能となる。
【0032】
この実施の形態では、振動発生部21は、ワーク18の搬送方向に関する取付位置が調整可能となっている。
【0033】
このように構成すると、振動発生部21により発生する振動に起因する、第一第二振動体M1,M2および振動発生部21による偶力の発生が抑制されるため、ワーク搬送トラフ17のピッチングを抑制することができる。
【0034】
第一振動体M1と第二振動体M2はそれぞれカウンタウェイト9(X,Y),10(X,Y)を備え、これらカウンタウェイト9(X,Y),10(X,Y)は、それぞれ、ワーク18の搬送方向および垂直方向に関し、重心位置が調整可能となっている。
【0035】
このように構成すると、振動付与機構20及びワーク搬送トラフ17の重量バランスを取りやすくなるため、ワーク搬送トラフ17のピッチングを容易に抑制することが可能となる。
【0036】
振動体用板ばね3(A,B)は、いずれも、第二振動体M2の吊り下げ方向(
図2(a)において下方)に向かってワークの搬送方向(X方向)に傾斜しており、
振動発生部21による振動発生方向(F)が振動体用板ばね3(A,B)と直交している(
図4参照)。
【0037】
このように構成すると、第一第二振動体M1,M2を効率よく振動させ、ワーク搬送トラフ17を効率よく振動させてワーク18の搬送性を向上させることができる。
【0038】
振動発生部21による振動発生方向(F)は、第一振動体M1の重心G1と第二振動体M2の重心G2とを結ぶ線L1上において、当該線L1と一致している(
図4参照)。
【0039】
このように構成すると、ワーク搬送トラフ17のピッチングを抑制することができる。
【0040】
上記実施の形態の吊り式振動搬送装置100についてさらに詳しく説明する。
ワーク搬送トラフ17は、
図1(c)および
図2(A)等に示すように、ワーク18を搬送するための溝17Sを有している。図示のワーク18は、頭部18hを有する長手のボルト又はピンである。
このように、吊り式振動搬送装置は、長ボルト等を垂直姿勢で搬送するのに適している。
【0041】
振動付与機構20の第一振動体M1は、平板状のベース部1bと、このベース部1bの下面に設けられた断面台形状のガイドレール部1r(
図2(B))と、ガイドレール部1rの前方(
図1(a)において左方)において下方に垂下して設けられた、板ばね3Bとの連結部1dと、さらに前方に設けられたカウンタウェイト取付部1fとを有している。
【0042】
ガイドレール部1rに、板ばね3Aとの第1連結部材7がスライド可能に設けられ、カウンタウェイト取付部1fに、第1カウンタウェイト9Xと第1サブウェイト9Yとが設けられている。第1カウンタウェイト9XはX方向に位置調整可能であり、第1サブウェイト9YはY方向に位置調整可能である。
【0043】
振動付与機構20の第二振動体M2は、平板状のベース部2bと、このベース部2bの上面に設けられた断面逆台形状のガイドレール部2r(
図2(B))と、ガイドレール部2rの前方(
図1(a)において左方)において上方に立ち上げて設けられた、板ばね3Bとの連結部2dとを有している。
【0044】
ガイドレール部2rに、板ばね3Aとの第2連結部材8がスライド可能に設けられ、その後方において、第2カウンタウェイト10Xと第2サブウェイト10Yとが設けられている(
図2(C))。第2カウンタウェイト10XはX方向に位置調整可能であり、第2サブウェイト10Yは第2カウンタウェイト10Xに対して軸10jで回動可能に取り付けられていることで、XY方向に位置調整可能である。
【0045】
第一振動体M1の第1連結部材7と第二振動体M2の第2連結部材8とが板ばね3Aで連結され、第一振動体M1の連結部1dと第二振動体M2の連結部2dとが板ばね3Bで連結されることで、第二振動体M2は板ばね3A,3Bによって第一振動体M1から吊り下げられる。
【0046】
振動体用板ばね3(A,B)はワーク18の搬送方向に関して薄手となっており、ワーク18の搬送方向に関する剛性が小さく、吊り下げ方向に関する剛性が大きい状態となっている。
【0047】
振動発生部21は、電磁石4と、この電磁石4によって駆動される可動鉄心6とを備えている。
電磁石4は電磁石ホルダ5に取り付けられており、電磁石ホルダ5は第一振動体M1のガイドレール部1rにスライド可能に取り付けられている(
図2(A))。可動鉄心6は可動鉄心ホルダ6Aに取り付けられており、可動鉄心ホルダ6Aは第二振動体M2のガイドレール部2rにスライド可能に取り付けられている。
これによって、可動鉄心6の運動方向(振動方向F)は板ばね3と直交するように調整される。
【0048】
吊り下げ部30は、天井等に固定される固定側防振板11と、この固定側防振板11から吊り用板ばね13(A,B)で吊られる可動側防振板12とを備え、この可動側防振板12にボルト12bで振動付与機構20の第一振動体M1が固定されることで、振動付与機構20を吊り下げている。
【0049】
吊り用板ばね13(A,B)はワーク18の搬送方向に関して薄手となっており、ワーク18の搬送方向に関する剛性が小さく、吊り下げ方向に関する剛性が大きい状態となっている。
【0050】
なお、以上のような吊り式振動搬送装置100は、
図1(a)において二点鎖線を用いて領域を示すように、搬送構造体16と中間構造体15と防振構造体14とで構成されていて、搬送構造体16が中間構造体15と板ばね3(A,B)を介してボルトで連結されている装置であるというとらえ方もできる。
【0051】
ここで、吊り式振動搬送装置の優位性について、例えば
図10に示すような通常の床置き式の振動搬送装置との対比で説明する。
【0052】
ここでは簡単なモデルとして、
図5(a)(b)、
図6(a)(b)を用い、例として板ばね長L=50mm 水平方向振幅X=3mmとして比較する。
【0053】
図5(a)(b)に示すように、
始動ばね角度θ=15゜、水平方向振幅X=3mmとした場合
通常の床置き式の板ばね(
図5(b))では、
終動ばね角度δ=11.47゜
垂直方向振幅Y=0.71mm
となる。
これに対し、
吊り式の板ばね(
図5(a))では、
終動ばね角度δ=18.59゜
垂直方向振幅Y=0.91mm
となる。
同一周波数で振動を加えた時、垂直方向振幅Yが大きい方が加速度Gが大きくなりその分ワーク搬送能力が増加するので、吊り式の板ばね(
図5(a))の方が有利であることが分かる。
【0054】
また
図6(a)(b)に示すように、
水平方向振幅X=3mm、垂直方向振幅Y=0.71mmとした場合
通常の床置き式の板ばね(
図6(b))では、
始動ばね角度θ=15゜
終動ばね角度δ=11.47゜
となる。
これに対し、
吊り式の板ばね(
図6(a))では、
始動ばね角度θ=11.5゜
終動ばね角度δ=15.03゜
となる。
同一周波数で振動を加えた時、加速度Gが増加しながらばね角度が大きくなる方がワークを押さえつける力が増し搬送能力が増加するので、吊り式の板ばね(
図6(a))の方が有利であることが分かる。
【0055】
図7は、吊り式振動搬送装置を、例えば
図11に示すように通常の床置き式の振動搬送装置のように設置して、同条件の基に搬送速度データを比較した一例を示す表とグラフである。なお、吊り用板ばね(防振サスペンション)13については通常の床置き式の振動搬送装置のばね定数と合わせて比較実験を行った。
この図からも分かるように、吊り式振動搬送装置の方が、通常の床置き式の振動搬送装置に比べて、共振点及び共振点を超えた帯域において搬送能力が約20%上昇する。
【0056】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において適宜変形実施可能である。
例えば、
【0057】
図8(a)(b)、
図9(a)(b)に示すように、第1カウンタウェイト9Xおよび第1サブウェイト9Y以外の部位は位置調整不能としてもよい。
【符号の説明】
【0058】
M1:第一振動体(質量)
M2:第二振動体(質量)
G0:振動体全体重心
G1:第一振動体M1重心
G2:第二振動体M2重心
F:駆動力
1:第1振動体ベース
2:第2振動体ベース
3:振動部板ばね
4:電磁石
5:電磁石ホルダ
6:可動鉄心
6A:可動鉄心ホルダ
7:板ばね第1ホルダ
8:板ばね第2ホルダ
9X:第1カウンタウェイト
9Y:第1サブウェイト
10X:第2カウンタウェイト
10Y:第2サブウェイト
11:固定側防振板
12:可動側防振板
13:防振サスペンション
14:防振構造体
15:中間構造体
16:搬送構造体
17:ワーク搬送トラフ
18:ワーク
【要約】
【課題】下方の空間を有効利用することができるとともに、トラフの上下振動を抑制することができる吊り式振動搬送装置を提供する。
【解決手段】ワーク18を搬送するためのワーク搬送トラフ17と、ワーク搬送トラフ17の上方に設けられ、ワーク搬送トラフ17に振動を付与する振動付与機構20と、振動付与機構20を吊り下げる吊り下げ部30とを備え、吊り下げ部30は、ワーク18の搬送方向に関する剛性が小さく吊り下げ方向に関する剛性が大きい吊り用板ばね13(A,B)をワーク18の搬送方向に間隔を隔て備えて振動付与機構20を吊り下げている。
【選択図】
図1