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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-31
(45)【発行日】2023-06-08
(54)【発明の名称】アシストウェア
(51)【国際特許分類】
   B25J 11/00 20060101AFI20230601BHJP
【FI】
B25J11/00 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019171310
(22)【出願日】2019-09-20
(65)【公開番号】P2021045837
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-08-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518385899
【氏名又は名称】AssistMotion株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(72)【発明者】
【氏名】橋本 稔
(72)【発明者】
【氏名】水上 憲明
(72)【発明者】
【氏名】竹内 志津江
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 彩乃
(72)【発明者】
【氏名】鉄矢 美紀雄
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/035706(WO,A1)
【文献】特表2016-525394(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0229055(US,A1)
【文献】特開2013-75078(JP,A)
【文献】特開2013-173190(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ~ 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者が重量物を持ち上げる際の挙上動作をアシストするアシストウェアであって、
前記装着者の側腰部における股関節に対向する部位に配設される第1駆動部と、基端部側が前記第1駆動部に接続されて先端部側で当該第1駆動部の駆動力を大腿部に作用させる第1アームと、前記装着者の膝部の外側部に配設される第2駆動部と、基端部が前記第2駆動部に接続されて先端部側で当該第2駆動部の駆動力を下腿部に作用させる第2アームと、前記第1駆動部および前記第2駆動部を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、第1駆動部によって検出される前記装着者と第1駆動部との間の相互作用トルク、第2駆動部によって検出される前記装着者と第2駆動部との間の相互作用トルクに基づいて神経振動子モデルによる解析を行うことによって前記装着者の上体と大腿部との角度の目標角度、および大腿部と下腿部との角度の目標角度を求め、現在の各角度と各目標角度との差を特定し、相互作用トルクを再度検出して新たに目標角度を設定して再度第1駆動部および第2駆動部を駆動する補正制御を繰り返し行う同調制御としての第1の同調制御を実行して、前記装着者の前記挙上動作に同調して前記駆動力を発生させて当該挙上動作をアシストするアシストウェア。
【請求項2】
前記制御装置は、前記同調制御としての第2の同調制御を実行して、前記装着者の歩行動作に同調して前記駆動力を発生させて当該歩行動作をアシストする請求項1記載のアシストウェア。
【請求項3】
前記制御装置は、前記同調制御としての第3の同調制御を実行して、前記装着者の起立動作に同調して前記駆動力を発生させて当該起立動作をアシストする請求項1または2記載のアシストウェア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装着者が重量物を持ち上げる際の挙上動作をアシストするアシストウェアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の機器として、下記特許文献1,2に開示された機器が知られている。特許文献1に開示されている機器(腰部補助装置)は、圧縮空気で作動する空気圧式アクチュエータを備えて構成され、空気圧式アクチュエータが出力する駆動力(押出力または引張力)を、腰フレームおよび大腿プレート等を介して上体と大腿部との角度が拡大する向きに作用させることで、挙上動作をアシストする。また、特許文献2に開示されている機器(装着式腰部補助装置)は、電動式の駆動モータを備えて構成され、駆動モータが出力する駆動力を、腰フレームおよび連結部等を介して上体と大腿部との角度が拡大する向きに作用させることで、挙上動作をアシストする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-75078号公報
【文献】特開2013-173190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上述した従来のアシストウェアには、解決すべき以下の課題がある。具体的には、上述した各装置では、空気圧式アクチュエータや駆動モータが出力する駆動力を、上体と大腿部との角度が拡大する向きに作用させることだけで挙上動作をアシストしている。一方、重量物を持ち上げる際には、膝を曲げてしゃがみこむ姿勢で重量物を掴み、その姿勢から膝関節を伸展させて重量物を持ち上げる挙上動作(膝の屈伸を伴う挙上動作)をすることがある。しかしながら、上述した各装置では、上体および大腿部が拡大する向きに駆動力を作用させるだけで、大腿部と下腿部との角度が拡大する向きへの駆動力の作用がないため、膝関節の伸展の動作に対するアシストがなく、このような挙上動作に対して十分なアシスト効果を得ることができないという課題がある。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、膝の屈伸を伴う挙上動作に対して十分なアシスト効果を実現し得るアシストウェアを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく請求項1記載のアシストウェアは、装着者が重量物を持ち上げる際の挙上動作をアシストするアシストウェアであって、前記装着者の側腰部における股関節に対向する部位に配設される第1駆動部と、基端部側が前記第1駆動部に接続されて先端部側で当該第1駆動部の駆動力を大腿部に作用させる第1アームと、前記装着者の膝部の外側部に配設される第2駆動部と、基端部が前記第2駆動部に接続されて先端部側で当該第2駆動部の駆動力を下腿部に作用させる第2アームと、前記第1駆動部および前記第2駆動部を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、第1駆動部によって検出される前記装着者と第1駆動部との間の相互作用トルク、第2駆動部によって検出される前記装着者と第2駆動部との間の相互作用トルクに基づいて神経振動子モデルによる解析を行うことによって前記装着者の上体と大腿部との角度の目標角度、および大腿部と下腿部との角度の目標角度を求め、現在の各角度と各目標角度との差を特定し、相互作用トルクを再度検出して新たに目標角度を設定して再度第1駆動部および第2駆動部を駆動する補正制御を繰り返し行う同調制御としての第1の同調制御を実行して、前記装着者の前記挙上動作に同調して前記駆動力を発生させて当該挙上動作をアシストする。
【0007】
また、請求項2記載のアシストウェアは、請求項1記載のアシストウェアにおいて、前記制御装置は、前記同調制御としての第2の同調制御を実行して、前記装着者の歩行動作に同調して前記駆動力を発生させて当該歩行動作をアシストする。
【0008】
また、請求項3記載のアシストウェアは、請求項1または2記載のアシストウェアにおいて、前記制御装置は、前記同調制御としての第3の同調制御を実行して、前記装着者の起立動作に同調して前記駆動力を発生させて当該起立動作をアシストする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載のアシストウェアによれば、装着者の挙上動作に同調して第1駆動部および第2駆動部を制御して挙上動作をアシストする第1の同調制御を制御装置が実行することにより、装着者の挙上動作において、上体と大腿部との角度が拡大する動作のアシストに加えて、大腿部と下腿部との角度が拡大する動作のアシストを行うことができる。このため、このアシストウェアによれば、膝の屈伸を伴う挙上動作に対して十分なアシスト効果を実現することができる。
【0010】
また、請求項2記載のアシストウェアによれば、装着者の歩行動作に同調して第1駆動部および第2駆動部を制御して歩行動作をアシストする第2の同調制御を制御装置が実行することにより、起立動作のアシストに加えて、歩行動作のアシストも行わせることができるため、アシストウェアの利便性が向上し、アシストウェアの活用範囲を広げることができる。
【0011】
また、請求項3記載のアシストウェアによれば、装着者の起立動作に同調して第1駆動部および第2駆動部を制御して起立動作をアシストする第3の同調制御を制御装置が実行することにより、挙上動作のアシストに加えて、起立動作のアシストも行わせることができるため、アシストウェアの利便性が向上し、アシストウェアの活用範囲を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】アシストウェア1の構成を示す構成図である。
図2】装着者200がアシストウェア1を装着した状態を示す装着状態図である。
図3】角度θ1と相互作用トルクT1との関係を示す関係図である。
図4】角度θ2と相互作用トルクT2との関係を示す関係図である。
図5】アシストウェア1の動作を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、アシストウェアの実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0014】
最初に、アシストウェアの一例としての図1,2に示すアシストウェア1の構成について説明する。アシストウェア1は、装着者200が重量物を持ち上げる際の挙上動作をアシストする挙上動作アシスト機能を有すると共に、装着者200の歩行動作をアシストする歩行動作アシスト機能、および装着者200の起立動作をアシストする起立動作アシスト機能を備えている。
【0015】
ここで、重量物を持ち上げる際の代表的な挙上動作には、Squat法とStoop法とがある。Squat法は、膝を曲げてしゃがみこむ姿勢で重量物を掴み、その姿勢から膝関節を伸展させて重量物を持ち上げる方法である。一方、Stoop法は、膝関節を伸展したまま上体を前方に傾斜させて重量物を掴み、その姿勢から股関節を伸展させて重量物を持ち上げる方法である。この場合、Squat法は、Stoop法に比べて腰への負担が少ないため、腰部の故障を防止する観点から重量物を持ち上げる作業において採用することが推奨されている。これを踏まえ、本願のアシストウェア1は、主としてSquat法による挙上動作において高いアシスト効果を発揮するように構成されている。
【0016】
具体的には、アシストウェア1は、図1,2に示すように、ウエストベルト11、一対の股関節ユニット12、一対の膝関節ユニット13、バッテリ14、制御装置15、並びにバッテリ14および制御装置15を収容するコントロールボックス50を備えて構成されている。
【0017】
ウエストベルト11は、一例として、一部に硬質の材料が用いられると共に一部に弾性を有する材料が用いられたベルトと、そのベルトの両端部に配設された連結部材(例えば、面ファスナ)とを備えて、長さの調整が可能に構成されて、図2に示すように、装着者200の腰部に装着される。
【0018】
各股関節ユニット12は、図2に示すように、股関節アクチュエータ21およびアーム22をそれぞれ備えて構成されている。股関節アクチュエータ21は、第1駆動部に相当し、回転軸を回転させて回転力を発生するモータMと、モータMの回転軸の回転数をアシストに適した回転数に減速する減速機Rと、モータMおよび減速機Rを保持する保持部Hとを備えて構成されている。また、各股関節ユニット12は、図2に示すように、装着者200の左右の側腰部における左右の股関節にそれぞれ対向する部位に減速機Rの回転軸が位置するように、保持部Hの先端部側(図2における上端部側)がウエストベルト11に固定されている。
【0019】
アーム22は、第1アームに相当し、図2に示すように、股関節アクチュエータ21における減速機Rの回転軸に基端部(図2における上端部)に接続されている。また、アーム22は、装着者200の大腿部の前側に先端部が当接するように先端部側が湾曲した形状に形成されて、後述する大腿部ベルト30に先端部が固定されている。このアーム22は、股関節アクチュエータ21が発生する回転力を、装着者200の大腿部に当接している先端部を介して大腿部に作用させる。
【0020】
また、股関節アクチュエータ21のモータMには、図外のエンコーダが内蔵されており、このエンコーダからの出力信号に基づいて、装着者200の上体と大腿部との角度(以下、この角度を「角度θ1」ともいう:図2,3参照)が制御装置15によって検出される。また、股関節アクチュエータ21の減速機Rには、トルクセンサとしての図外の歪ゲージが取り付けられており、この歪ゲージからの出力信号に基づいて、股関節アクチュエータ21と装着者200との相互作用によって発生する相互作用トルク(以下、この相互作用トルクを「相互作用トルクT1」ともいう:図3参照)が制御装置15によって検出される。
【0021】
各膝関節ユニット13は、図2に示すように、大腿部ベルト30、膝関節アクチュエータ31、アーム32および下腿部ベルト33をそれぞれ備えて構成されている。大腿部ベルト30は、一例として、ウエストベルト11と同様に、一部に硬質の材料が用いられると共に一部に弾性を有する材料が用いられたベルトと、そのベルトの両端部に配設された例えば面ファスナ等の連結部材とを備えて、長さの調整が可能に構成されて、図2に示すように、装着者200の大腿部(膝の近傍)に装着される。
【0022】
膝関節アクチュエータ31は、第2駆動部に相当し、回転軸を回転させて回転力を発生するモータMと、モータMの回転軸の回転数をアシストに適した回転数に減速する減速機Rと、モータMおよび減速機Rを保持する保持部Hとを備えて構成されている。また、膝関節ユニット13は、図2に示すように、装着者200の膝部の外側部に減速機Rの回転軸が位置するように、保持部Hの先端部側(図2における上端部側)が大腿部ベルト30に固定されている。なお、以下の説明において、股関節アクチュエータ21および膝関節アクチュエータ31を合わせて「アクチュエータ21,31」もいう。
【0023】
アーム32は、第2アームに相当し、図2に示すように、膝関節アクチュエータ31における減速機Rの回転軸に基端部(図2における上端部)に接続されている。また、アーム32は、装着者200の下腿部(すねの下部)の前側に先端部が当接するように先端部側が湾曲した形状に形成されて、先端部が下腿部ベルト33に固定されている。このアーム32は、膝関節アクチュエータ31が発生する回転力を、装着者200の下腿部に当接している先端部を介して大腿部に作用させる。
【0024】
下腿部ベルト33は、一例として、ウエストベルト11と同様に、一部に硬質の材料が用いられると共に一部に弾性を有する材料が用いられたベルトと、そのベルトの両端部に配設された例えば面ファスナ等の連結部材とを備えて、長さの調整が可能に構成されて、図2に示すように、装着者200の下腿部(すねの下部)に装着される。
【0025】
また、膝関節アクチュエータ31のモータMには、上述した股関節アクチュエータ21のモータMと同様にエンコーダが内蔵されており、このエンコーダからの出力信号に基づいて、装着者200の大腿部と下腿部との角度(以下、この角度を「角度θ2」ともいう:図2,4参照)が制御装置15によって検出される。また、膝関節アクチュエータ31の減速機Rには、股関節アクチュエータ21の減速機Rと同様に歪ゲージが取り付けられており、この歪ゲージからの出力信号に基づいて、膝関節アクチュエータ31と装着者200との相互作用によって発生する相互作用トルク(以下、この相互作用トルクを「相互作用トルクT2」ともいう:図4参照)が制御装置15によって検出される。
【0026】
バッテリ14は、股関節アクチュエータ21、膝関節アクチュエータ31および制御装置15の駆動用の電力を出力する。また、バッテリ14は、図2に示すように、ウエストベルト11に取り付けられたコントロールボックス50内に制御装置15と共に収容されている。
【0027】
制御装置15は、股関節アクチュエータ21および膝関節アクチュエータ31を制御する。具体的には、制御装置15は、装着者200の挙上動作に同調して、装着者200の上体と大腿部との角度θ1が拡大する向きの回転力を発生させるように股関節アクチュエータ21を制御すると共に、大腿部と下腿部との角度θ2が拡大する向きの回転力を発生させるように膝関節アクチュエータ31を制御して装着者200の挙上動作をアシストする第1の同調制御を実行する。
【0028】
また、制御装置15は、一例として、制御用PC、アンプ、AD変換器、I/Oインターフェース、D/A変換器およびモータドライバを備えて構成されている。この制御装置15では、制御用PCが、第1の同調制御用プログラム(挙上動作アシスト用プログラム)を実行することにより、第1の同調制御のためのゲイン調整部、解析部およびPID制御部として機能して、アシストウェア1の各アクチュエータ21,31に対して神経振動子を用いた第1の同調制御を行う。
【0029】
具体的には、アクチュエータ21,31のトルクセンサによって検出される装着者200とアクチュエータ21,31との間の相互作用トルクT1,T2が、アンプを介して増幅され、AD変換器によってデジタル信号に変換された後に、I/Oインターフェースを介して制御用PCに取り込まれる。取り込まれた相互作用トルクT1,T2は、装着者200とアシストウェア1との同調の度合いを調整するゲイン調整部を介して、解析部に入力される。解析部では、神経振動子モデルにより解析して、装着者200の上体と大腿部との角度θ1の目標角、および大腿部と下腿部との角度θ2の目標角度を求め、現在の角度θ1,θ2と目標角度との差をPID制御部に出力する。
【0030】
PID制御部は、モータMを駆動した結果得られる相互作用トルクT1,T2をトルクセンサによって再度検出し、解析部によって新たに目標角度を設定して、再度モータMを駆動制御する。このようなモータMの駆動を補正制御(PID制御)する操作を繰り返し行うことにより、第1の同調制御が行われる。また、制御用PCは、PID制御部から出力される指令電圧をD/A変換器を介してモータドライバに供給し、指令電圧に基づきモータドライバによりアクチュエータ21,31のモータMを駆動する。
【0031】
なお、第1の同調制御における角度θ1と相互作用トルクT1との関係を図3に示し、第1の同調制御における角度θ2と相互作用トルクT2との関を図4に示す。この場合、図3,4では、装着者200が図2に示す直立状態(初期状態)のときの角度θ1,θ2を基準角度(180°)として、その基準角度との差分値(差分値の絶対値)の変化を示している。また、図3,4では、角度θ1,θ2が拡大する向きの相互作用トルクT1,T2を負の値で示している。
【0032】
次に、アシストウェア1の使用方法、およびその際のアシストウェア1の動作について図面を参照して説明する。一例として、図5に示すように、アシストウェア1を装着した装着者200がSquat法で重量物300を持ち上げる(挙上動作を行う)際のアシストウェア1の動作について説明する。
【0033】
まず、バッテリ14の電源を投入する。この際に、制御装置15に電源が供給され制御装置15が作動する。次いで、制御装置15は、挙上動作アシスト用プログラムに従って第1の同調制御を開始する。
【0034】
次いで、装着者200が重量物300を掴むために、図5(a)に示す直立状態(初期状態)から図5(b),(c)に示すように膝を曲げたときには、装着者200の上体と大腿部との角度θ1が縮小すると共に、装着者200の大腿部と下腿部との角度θ2が縮小する。次いで、図5(d)~(f)に示すように、装着者200が重量物300を掴んで、挙上動作を行ったときには、上述した角度θ1が拡大すると共に、角度θ2が拡大する。
【0035】
一方、アシストウェア1側では、制御装置15が、図3,4に示すように、装着者200の上体と大腿部との角度θ1に対応する股関節アクチュエータ21の保持部Hとアーム22との角度をモータMのエンコーダからの出力信号に基づいて検出すると共に、装着者200の大腿部と下腿部との角度θ2に対応する膝関節アクチュエータ31の保持部Hとアーム32との角度をモータMのエンコーダからの出力信号に基づいて検出する。また、制御装置15は、図3,4に示すように、アクチュエータ21,31のトルクセンサからの出力信号に基づいてアクチュエータ21,31と装着者200との間の相互作用トルクT1,T2を検出する。
【0036】
また、制御装置15は、角度θ1,θ2の経時変化から角度θ1,θ2の目標角を求め、現在の角度θ1,θ2と目標角度との差を算出して、差に応じた指令電圧を出力する。次いで、制御装置15は、指令電圧をD/A変換器を介してモータドライバに供給することによってアクチュエータ21,31のモータMを駆動制御する。
【0037】
また、制御装置15は、相互作用トルクT1,T2をトルクセンサによって再度検出すると共に、新たに目標角度を設定して、再度アクチュエータ21,31のモータMを駆動制御する。制御装置15は、このようなモータMの駆動を補正制御(PID制御)する操作を繰り返し行うことにより、第1の同調制御を行い、これにより、装着者200の挙上動作がアシストされる。この場合、このアシストウェア1では、上述したように、装着者200の挙上動作において、上体と大腿部との角度θ1が拡縮する動作のアシストに加えて、大腿部と下腿部との角度θ2が拡縮する動作のアシストが行われるため、膝の屈伸を伴うSquat法による挙上動作に対して十分なアシスト効果が実現される。
【0038】
一方、このアシストウェア1には、装着者200の歩行動作をアシストする歩行動作アシスト機能が備えられている。この機能を利用するときには、図外の操作部を用いて歩行動作アシスト機能を有効とする操作を行う。この状態において、装着者200が歩行動作を開始したときには、御装置15が、角度θ1,θ2の経時変化から装着者200が歩行動作に移行したことを判別し、装着者200の歩行動作をアシストする第2の同調制御を実行する。この第2の同調制御では、制御装置15は、上述した第1の同調制御と同様に、角度θ1,θ2をモータMのエンコーダからの出力信号に基づいて検出すると共に、アクチュエータ21,31のトルクセンサからの出力信号に基づいてアクチュエータ21,31と装着者200との間の相互作用トルクT1,T2を検出する。また、制御装置15は、角度θ1,θ2および相互作用トルクT1,T2に基づいて補正制御(PID制御)を行いつつ指令電圧を供給することによってアクチュエータ21,31のモータMを駆動制御する。これにより、装着者200の歩行動作がアシストされる。
【0039】
また、このアシストウェア1には、装着者200の起立動作(着座姿勢から起立する動作)をアシストする起立動作アシスト機能が備えられている。この機能を利用するときには、図外の操作部を用いて起立動作アシストを有効とする操作を行う。この状態において、装着者200が着座姿勢から起立動作に移行したときには、御装置15が、角度θ1,θ2の経時変化から装着者200が起立動作に移行したことを判別し、装着者200の起立動作をアシストする第3の同調制御を実行する。この第3の同調制御では、制御装置15は、上述した第1の同調制御と同様に、角度θ1,θ2をモータMのエンコーダからの出力信号に基づいて検出すると共に、アクチュエータ21,31のトルクセンサからの出力信号に基づいて装着者200とアクチュエータ21,31との間の相互作用トルクT1,T2を検出する。また、制御装置15は、角度θ1,θ2および相互作用トルクT1,T2に基づいて補正制御(PID制御)を行いつつ指令電圧を供給することによってアクチュエータ21,31のモータMを駆動制御する。これにより、装着者200の起立動作がアシストされる。
【0040】
このように、本願のアシストウェア1によれば、装着者200の挙上動作に同調して股関節アクチュエータ21および膝関節アクチュエータ31を制御して装着者200の挙上動作をアシストする第1の同調制御を制御装置15が実行することにより、装着者200の挙上動作において、上体と大腿部との角度θ1が拡大する動作のアシストに加えて、大腿部と下腿部との角度θ2が拡大する動作のアシストを行うことができる。このため、このアシストウェア1によれば、膝の屈伸を伴う挙上動作に対して十分なアシスト効果を実現することができる。
【0041】
また、本願のアシストウェア1によれば、装着者200の歩行動作に同調して股関節アクチュエータ21および膝関節アクチュエータ31を制御して歩行動作をアシストする第2の同調制御を制御装置15が実行することにより、起立動作のアシストに加えて、歩行動作のアシストも行わせることができるため、アシストウェア1の利便性が向上し、アシストウェア1の活用範囲を広げることができる。
【0042】
また、本願のアシストウェア1によれば、装着者200の起立動作に同調して股関節アクチュエータ21および膝関節アクチュエータ31を制御して起立動作をアシストする第3の同調制御を制御装置15が実行することにより、挙上動作のアシストに加えて、起立動作のアシストも行わせることができるため、アシストウェア1の利便性が向上し、アシストウェア1の活用範囲を広げることができる。
【0043】
なお、上述したアシストウェア1の構成は、本願のアシストウェアの一例であって、適宜変更した構成を採用することができる。例えば、上述したアシストウェア1では、第1~第3の3種類の同調制御を備えた構成を採用しているが、3種類の同調制御のうちの第1の同調制御を含む2種類の同調制御だけを備えた構成を採用することもできる。
【0044】
また、上述したアシストウェア1では、制御装置15をコントロールボックス50内に収容してアシストウェア1と一体とした構成を採用しているが、制御装置15の制御用PCをアシストウェア1とは別体とし、制御用PCが有線通信または無線通信によってアシストウェア1を制御する構成を採用することもできる。
【0045】
また、第1の同調制御だけを実行する(つまり、挙上動作アシスト機能に特化した)構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0046】
1 アシストウェア
15 制御装置
21 股関節アクチュエータ
22 アーム
31 膝関節アクチュエータ
32 アーム
200 装着者
300 重量物
図1
図2
図3
図4
図5