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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-31
(45)【発行日】2023-06-08
(54)【発明の名称】ポンプユニットおよびクロマトグラフ
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/26 20060101AFI20230601BHJP
   G01N 30/32 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
G01N30/26 P
G01N30/32 C
G01N30/26 H
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021558279
(86)(22)【出願日】2020-11-05
(86)【国際出願番号】 JP2020041340
(87)【国際公開番号】W WO2021100474
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-04-27
(31)【優先権主張番号】P 2019211764
(32)【優先日】2019-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業 研究成果最適展開支援プログラム「リン酸化生体分子群のためのバイオイナート分離システムの開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】柳林 潤
(72)【発明者】
【氏名】今村 信也
(72)【発明者】
【氏名】保永 研壱
(72)【発明者】
【氏名】石濱 泰
(72)【発明者】
【氏名】今見 考志
(72)【発明者】
【氏名】新苗 智也
(72)【発明者】
【氏名】小森 優美
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/008683(WO,A1)
【文献】特開昭57-184966(JP,A)
【文献】特開2000-171451(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00 - 30/96
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路を通して移動相を圧送するポンプと、
前記流路における前記ポンプの下流に設けられたフィルタ素子を含む金属イオントラップとを備え、
前記ポンプは、移動相と接触する金属部材を含み、
前記フィルタ素子は、前記金属部材と移動相との接触により移動相に溶出する金属イオンと相互作用することにより金属イオンを保持する金属イオン保持構造を含む、ポンプユニット。
【請求項2】
前記金属イオン保持構造は、金属イオンと錯体を形成する官能基を含む、請求項1記載のポンプユニット。
【請求項3】
前記フィルタ素子は、吸着樹脂担体が結合されたメンブレンを含む、請求項1または2記載のポンプユニット。
【請求項4】
前記フィルタ素子は、吸着樹脂担体が充填されたカラム部材を含む、請求項1または2記載のポンプユニット。
【請求項5】
前記金属イオントラップは、
前記流路に設けられ、移動相を導入可能な第1の開口部を有する第1のハウジングと、
前記流路に設けられ、移動相を導出可能な第2の開口部を有する第2のハウジングとをさらに含み、
前記フィルタ素子は、前記第1の開口部から導入された移動相を通過させて前記第2の開口部から導出するように前記第1のハウジングと前記第2のハウジングとの間に取り付けられ、
前記第2のハウジングにおける移動相と接触する部分は非金属材料により形成される、請求項1~4のいずれか一項に記載のポンプユニット。
【請求項6】
前記金属イオントラップは、前記フィルタ素子を取り囲みかつ前記第1のハウジングと前記第2のハウジングとの間をシールするように配置されたシール部材をさらに含む、請求項5記載のポンプユニット。
【請求項7】
前記ポンプは、40MPa以上の圧力で移動相を圧送し、
前記金属イオントラップは、40MPa以上の耐圧を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のポンプユニット。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のポンプユニットと、
前記ポンプユニットの前記ポンプにより圧送される移動相に試料を供給する試料供給部と、
前記試料供給部により供給された試料が通過する分離カラムと、
前記分離カラムを通過した試料を検出する検出器とを備え、
前記ポンプユニットの前記金属イオントラップは、前記ポンプと前記試料供給部との間に設けられ、
前記試料供給部、前記分離カラムおよび前記検出器の各々における移動相と接触する部分は、非金属材料により形成される、クロマトグラフ。
【請求項9】
前記フィルタ素子に保持された金属イオンを除去するように前記金属イオントラップに酸溶媒を供給する除去装置をさらに備える、請求項8記載のクロマトグラフ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプユニットおよびクロマトグラフに関する。
【背景技術】
【0002】
試料に含まれる物質を異なる成分ごとに分離する分析装置としてクロマトグラフが知られている。例えば、特許文献1に記載された液体クロマトグラフにおいては、溶媒供給源に貯留された溶媒がポンプにより圧送される。また、分析対象の試料がサンプリングユニットにより溶媒に混合され、分離装置に導入される。分離装置に導入された試料は、化学的性質または組成の違いにより成分ごとに溶離され、検出器により検出される。検出器による検出結果に基づいて、クロマトグラムがデータ処理ユニットにより生成される。
【0003】
ここで、試料にタンパク質、ペプチド、核酸または特定の種類の農薬等の化合物が含まれている場合、これらの化合物は金属と相互作用して錯体を形成する。そのため、液体クロマトグラフにおける配管等の試料と接触する部分が金属により形成されていると、金属と試料とが相互作用することにより接触部分に試料の吸着が発生する。この場合、生成されるクロマトグラムの精度が低下する可能性がある。
【0004】
そこで、特許文献1の液体クロマトグラフにおいては、内管および外管を含む配管のうち、試料と接触する内管はPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)等の非金属材料により形成される。特許文献2~7においても、液体クロマトグラフにおける配管、フィッティングまたはシリンジ等の試料との接触部分が非金属により形成されることが記載されている。
【文献】米国特許第9494563号明細書
【文献】米国特許出願公開第2012/0160754号明細書
【文献】米国特許第8313476号明細書
【文献】米国特許第10018604号明細書
【文献】米国特許第9056264号明細書
【文献】米国特許第9201049号明細書
【文献】米国特許第9316324号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、液体クロマトグラフにおける試料との接触部分を非金属材料により形成することにより、金属と試料との相互作用を防止することが可能である。一方で、近年、液体クロマトグラフにおいては、40MPa以上の高圧で送液を行うことが求められる。しかしながら、本発明者らの検討によると、高圧で送液を行いつつ金属と試料との相互作用を防止することは困難であることが判明した。この場合、試料の分析精度が低下する可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、試料の分析精度を維持しつつ高圧で送液を行うことが可能なポンプユニットおよびクロマトグラフを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、流路を通して移動相を圧送するポンプと、前記流路における前記ポンプの下流に設けられたフィルタ素子を含む金属イオントラップとを備え、前記ポンプは、移動相と接触する金属部材を含み、前記フィルタ素子は、前記金属部材と移動相との接触により移動相に溶出する金属イオンと相互作用することにより金属イオンを保持する金属イオン保持構造を含む、ポンプユニットに関する。
【0008】
本発明の一態様は、上記のポンプユニットと、前記ポンプユニットの前記ポンプにより圧送される移動相に試料を供給する試料供給部と、前記試料供給部により供給された試料が通過する分離カラムと、前記分離カラムを通過した試料を検出する検出器とを備え、前記ポンプユニットの前記金属イオントラップは、前記ポンプと前記試料供給部との間に設けられ、前記試料供給部、前記分離カラムおよび前記検出器の各々における移動相と接触する部分は、非金属材料により形成される、クロマトグラフに関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、金属と試料との相互作用に起因する試料の分析精度の低下を防止しつつ高圧で送液を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は本発明の一実施の形態に係るクロマトグラフの構成を示す図である。
図2図2は金属イオントラップの外観を示す斜視図である。
図3図3は金属イオントラップの縦断面を示す斜視図である。
図4図4は除去装置の一例を示す模式図である。
図5図5は除去装置の一例を示す模式図である。
図6図6は第1の変形例に係るクロマトグラフの構成を示す図である。
図7図7は第2の変形例に係るクロマトグラフの構成を示す図である。
図8図8は第3の変形例に係るクロマトグラフの構成を示す図である。
図9図9は比較例および実施例におけるTiのイオン濃度の測定結果を示すグラフである。
図10図10は比較例および実施例におけるCoのイオン濃度の測定結果を示すグラフである。
図11図11は比較例および実施例におけるFeのイオン濃度の測定結果を示すグラフである。
図12図12は比較例および実施例におけるVのイオン濃度の測定結果を示すグラフである。
図13図13は比較例および実施例におけるNiのイオン濃度の測定結果を示すグラフである。
図14図14は比較例および実施例におけるCrのイオン濃度の測定結果を示すグラフである。
図15図15は比較例および実施例におけるAlのイオン濃度の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1)クロマトグラフの構成
以下、本発明の実施の形態に係るポンプユニットおよびクロマトグラフについて図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係るクロマトグラフの構成を示す図である。なお、本実施の形態におけるクロマトグラフ100は液体クロマトグラフであるが、超臨界流体クロマトグラフであってもよい。
【0012】
図1に示すように、クロマトグラフ100は、移動相容器10、ポンプ20、金属イオントラップ30、試料供給部40、分離カラム50、検出器60、廃液容器70および処理装置80を備える。ポンプ20および金属イオントラップ30によりポンプユニット1が構成される。移動相容器10は、水溶液または有機溶媒を移動相として貯留する。以下の説明では、クロマトグラフ100における移動相との接触部分を移動相接触部と呼ぶ。
【0013】
例えば、本実施の形態では、ポンプ20はプランジャポンプであり、ポンプヘッド、プランジャ、プランジャシール、吸引チェック弁、吐出チェック弁および圧力センサ等の構成要素を含む。プランジャポンプについてはよく知られているので詳細な構造の説明を省略するが、上記のプランジャポンプの構成要素、および構成要素間を封止する部材が、移動相と接触する移動相接触部となる。
【0014】
ポンプ20の移動相接触部の少なくとも一部は、金属材料により形成された金属部材21を含む。これにより、ポンプ20は、40MPa以上、好ましくは100MPa以上の圧力で送液を行うことができる。ポンプ20は、移動相容器10に貯留された移動相を流路101を通して圧送する。流路101は、例えば継ぎ合わされた複数の配管により構成され、40MPa以上、好ましくは100MPa以上の耐圧を有する。流路101の移動相接触部は、非金属材料により形成されてもよい。
【0015】
金属イオントラップ30は、流路101におけるポンプ20と試料供給部40との間の部分に介挿され、ポンプ20から導出される移動相に溶出した金属イオンをフィルタ素子33により保持する。金属イオントラップ30の詳細については後述する。試料供給部40は、例えばサンプルインジェクタであり、40MPa以上、好ましくは100MPa以上の耐圧を有する。試料供給部40は、金属イオントラップ30を通過した移動相に分析対象の試料を供給する。試料供給部40の移動相接触部は、非金属材料により形成されてもよい。
【0016】
試料供給部40により供給された試料は、移動相に混合され、分離カラム50に導入される。分離カラム50は、40MPa以上、好ましくは100MPa以上の耐圧を有し、試料の各成分と分離カラム50および移動相との親和性に依存して異なる時間だけ試料の成分を保持する。なお、分離カラム50は、図示しないカラム恒温槽の内部に収容され、所定の一定温度に調整される。分離カラム50の移動相接触部は、非金属材料により形成されてもよい。
【0017】
検出器60は、40MPa以上、好ましくは100MPa以上の耐圧を有し、分離カラム50による保持時間の経過後、分離カラム50から溶出される試料の成分を順次検出する。検出器60の移動相接触部は、非金属材料により形成されてもよい。廃液容器70は、検出器60を通過した移動相および試料を廃液として貯留する。処理装置80は、検出器60による検出結果を処理することにより、各成分の保持時間と検出強度との関係を示す液体クロマトグラムを生成する。
【0018】
(2)金属イオントラップの構造
図2は、金属イオントラップ30の外観を示す斜視図である。金属イオントラップ30は、移動相が通過可能に形成され、図2に示すように、移動相が通過する方向に平行に延びる筒状の外形を有する。以下、金属イオントラップ30において移動相が通過する方向に平行な方向を流路方向と呼ぶ。また、流路方向において移動相が流れる方向を下流と定義し、その反対方向を上流と定義する。
【0019】
図3は、金属イオントラップ30の縦断面を示す斜視図である。図3に示すように、金属イオントラップ30は、上流ハウジング31、下流ハウジング32、フィルタ素子33およびシール部材34を含み、40MPa以上、好ましくは100MPa以上の耐圧を有する。上流ハウジング31および下流ハウジング32は、それぞれ第1および第2のハウジングの例である。上流ハウジング31および下流ハウジング32の各々は、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)等の非金属材料により形成される。なお、上流ハウジング31は、金属材料により形成されてもよい。
【0020】
上流ハウジング31は、雄ねじ部材であり、頭部31Aと、頭部31Aの中央部から下流に向かって突出する軸部31Bとを有する。上流ハウジング31には、頭部31Aを流路方向に貫通して軸部31Bに達する有底の連結孔31aが形成される。連結孔31aには、流路101を構成する配管(以下、上流配管と呼ぶ。)の一端部が連結される。また、上流ハウジング31には、連結孔31aの底面と軸部31Bの下流端面との間を貫通しかつ移動相が通過する通液部31cが形成される。連結孔31aおよび通液部31cが、第1の開口部の例である。軸部31Bにおける流路方向の略中央部の外周面には、ねじ部31dが形成される。
【0021】
下流ハウジング32は、雌ねじ部材である。下流ハウジング32には、下流端面から上流に向かって延びる有底の連結孔32aが形成されるとともに、上流端面から下流に向かって延びる有底の連結孔32bが形成される。連結孔32aには、流路101を構成する他の配管(以下、下流配管と呼ぶ。)の一端部が連結される。また、下流ハウジング32には、連結孔32aの底面と連結孔32bの底面との間を貫通しかつ移動相が通過する通液部32cが形成される。連結孔32aおよび通液部32cが、第2の開口部の例である。連結孔32bの内周面には、軸部31Bのねじ部31dに対応するねじ部32dが形成される。
【0022】
ねじ部31d,32dが互いに螺合するように上流ハウジング31の軸部31Bが下流ハウジング32の連結孔32bに連結される。この場合、通液部31cと通液部32cとが流路方向に重なる。フィルタ素子33は、通液部31c,32c間を交差するように軸部31Bの下流端面と連結孔32bの底面との間に配置される。上流ハウジング31の連結孔31aに連結された配管から流入する移動相は、通液部31cおよびフィルタ素子33を順次通過する。フィルタ素子33を通過した移動相は、下流ハウジング32の連結孔32aに連結された配管から流出する。
【0023】
フィルタ素子33は、金属イオントラップフィルタであり、移動相と接触する表面において、移動相に含まれる金属イオンと相互作用することにより金属イオンを保持する金属イオン保持構造を有する。具体的には、金属保持構造は、金属イオンと錯体を形成する官能基を含む。この場合、フィルタ素子33は、金属イオンと錯体を形成することにより金属イオンを効率よく保持することができる。
【0024】
フィルタ素子33は、ポリテトラフルオロエチレン等の多孔質樹脂に吸着樹脂担体が結合されたメンブレンであってもよい。あるいは、フィルタ素子33は、粒子状の吸着樹脂担体が充填されたカラム部材であってもよい。吸着樹脂担体は、例えば金属イオンと錯体を形成するイミノ二酢酸等の官能基を含むキレート樹脂である。この場合、フィルタ素子33は、キレート樹脂のイミノ二酢酸等の官能基が金属イオンと相互作用することにより金属イオンを保持することができる。
【0025】
シール部材34は、例えば環状のパッキンであり、フィルタ素子33の周囲を取り囲むように軸部31Bの下流端面と連結孔32bの底面との間に配置される。シール部材34は、通液部31cを通過した移動相が連結孔32bから漏れないように上流ハウジング31と下流ハウジング32との間をシールする。
【0026】
上記の構成によれば、上流ハウジング31および下流ハウジング32によりフィルタ素子33を流路101に保持することができる。また、下流ハウジング32における移動相と接触する部分は非金属材料により形成されるので、フィルタ素子33よりも下流で金属イオントラップ30から移動相に金属イオンが溶出することが防止される。
【0027】
(3)除去装置
金属イオントラップ30の金属イオンの保持容量は有限であるため、金属イオントラップ30は、一定量以上の金属イオンを保持することはできない。そこで、クロマトグラフ100は、金属イオントラップ30から保持された金属イオンを除去するための除去装置をさらに備えてもよい。図4および図5は、除去装置の一例を示す模式図である。図4および図5に示すように、除去装置90は、流路切替バルブ91、除去液容器92、ポンプ93およびドレイン94を含む。
【0028】
流路切替バルブ91は、6個のポートP1~P6を有し、第1の流路状態と第2の流路状態との間で切り替え可能である。第1の流路状態においては、ポートP1,P2間が連通し、ポートP3,P4間が連通し、ポートP5,P6間が連通する。第2の流路状態においては、ポートP2,P3間が連通し、ポートP4,P5間が連通し、ポートP6,P1間が連通する。
【0029】
ポートP1は、ポンプ20の出口に接続される。ポートP2は、金属イオントラップ30への上流配管に接続される。ポートP3は、ドレイン94に接続される。ポートP4は、ポンプ93の出口に接続される。ポートP5は、金属イオントラップ30からの下流配管に接続される。ポートP6は、試料供給部40に接続される。
【0030】
除去液容器92は、希硝酸等の酸溶媒を除去液として貯留する。ポンプ93は、除去液容器92に貯留された除去液を流路切替バルブ91に圧送する。ドレイン94は、流路切替バルブ91からの液体をクロマトグラフ100の外部に排出する。
【0031】
図4に示すように、試料の分析時には、流路切替バルブ91が第1の流路状態になる。この場合、ポンプ20からの移動相は、ポートP1,P2を通して金属イオントラップ30に導かれる。金属イオントラップ30を通過した移動相は、ポートP5,P6を通して試料供給部40に導かれる。一方、試料の分析時には、ポンプ93は動作しない。
【0032】
図5に示すように、金属イオンの除去時には、流路切替バルブ91が第2の流路状態になる。この場合、ポンプ93からの除去液は、ポートP4,P5を通して金属イオントラップ30に導かれる。金属イオントラップ30を通過した除去液は、ポートP2,P3を通してドレイン94に導かれる。一方、金属イオンの除去時には、ポンプ20は動作しない。
【0033】
この構成によれば、金属イオントラップ30に保持された金属イオンが除去液により遊離され、除去液とともにドレイン94から排出される。これにより、金属イオントラップ30を交換することなくクロマトグラフ100を連続的に使用することができる。
【0034】
なお、金属イオンの除去後、流路101に残存する除去液を排出するように流路101にポンプ93から純水等の洗浄液が供給されてもよい。また、図4および図5の例では、除去液は移動相が流れる向きとは逆向きに金属イオントラップ30に導かれるが、実施の形態はこれに限定されない。除去液は、移動相が流れる向きとは同じ向きに金属イオントラップ30に導かれてもよい。
【0035】
(4)効果
本実施の形態に係るクロマトグラフ100においては、ポンプ20により流路101を通して移動相が圧送される。ポンプ20は移動相と接触する金属部材21を含むので、金属部材21は十分に高い機械的強度を有する。したがって、ポンプ20は、高い圧力で送液を行うことが可能である。また、金属イオントラップ30のフィルタ素子33が、ポンプ20により圧送される移動相の流路101に設けられる。フィルタ素子33は、移動相に含まれる金属イオンと相互作用することにより金属イオンを保持する金属イオン保持構造を含む。
【0036】
この構成によれば、ポンプ20の金属部材21から移動相に金属イオンが溶出した場合でも、金属イオンは金属イオントラップ30により保持される。また、金属イオントラップ30より下流における試料供給部40、分離カラム50および検出器60の各々における移動相接触部は、非金属材料により形成される。そのため、金属イオントラップ30よりも下流においては、金属イオンが流路101の材料と相互作用することはほとんどない。
【0037】
これにより、金属イオンの吸着、クロマトグラムのピークテーリング、分離カラム50の保持特性の変化または検出器60の検出特性の変化等の分析精度を低下させ得る現象が発生することが抑制される。これらの結果、試料の分析精度の低下を防止しつつ高圧で送液を行うことができる。
【0038】
(5)変形例
以下、変形例に係る種々のクロマトグラフ100について、図1のクロマトグラフ100と異なる点を説明する。図6は、第1の変形例に係るクロマトグラフ100の構成を示す図である。図6に示すように、本例のクロマトグラフ100は、高圧グラジエント分析に用いられ、混合部110をさらに備える。また、本例のクロマトグラフ100には、2個の移動相容器10および2個のポンプ20が設けられる。2個の移動相容器10をそれぞれ移動相容器10A,10Bと呼び、2個のポンプ20をそれぞれポンプ20A,20Bと呼ぶ。
【0039】
移動相容器10Aは、例えば有機溶媒を移動相として貯留する。移動相容器10Bは、例えば水溶液を移動相として貯留する。ポンプ20Aは、移動相容器10Aに貯留された移動相を圧送する。ポンプ20Bは、移動相容器10Bに貯留された移動相を圧送する。混合部110は、例えばミキサであり、ポンプ20A,20Bにより圧送された移動相を高圧で混合する。混合部110の移動相接触部は、金属材料により形成されてもよい。
【0040】
金属イオントラップ30は、混合部110と試料供給部40との間に配置され、混合部110により混合された移動相に溶出した金属イオンを保持する。本例では、ポンプ20A,20Bおよび金属イオントラップ30によりポンプユニット1が構成される。金属イオントラップ30を通過した移動相は、試料供給部40に導かれる。
【0041】
図7は、第2の変形例に係るクロマトグラフ100の構成を示す図である。図7に示すように、本例のクロマトグラフ100には、2個の金属イオントラップ30が設けられるとともに、第1の変形例と同様の2個の移動相容器10A,10B、2個のポンプ20A,20Bおよび混合部110が設けられる。2個の金属イオントラップ30をそれぞれ金属イオントラップ30A,30Bと呼ぶ。
【0042】
金属イオントラップ30Aは、ポンプ20Aと混合部110との間に配置され、ポンプ20Aから導出される移動相に溶出した金属イオンを保持する。金属イオントラップ30Bは、ポンプ20Bと混合部110との間に配置され、ポンプ20Bから導出される移動相に溶出した金属イオンを保持する。本例では、ポンプ20Aおよび金属イオントラップ30Aにより一組のポンプユニット1Aが構成され、ポンプ20Bおよび金属イオントラップ30Bにより一組のポンプユニット1Bが構成される。
【0043】
混合部110は、金属イオントラップ30A,30Bを通過した移動相を高圧で混合する。混合部110の移動相接触部は、非金属材料により形成される。混合部110により混合された移動相は、試料供給部40に導かれる。本例では、金属イオントラップ30A,30Bにそれぞれ対応する2つの除去装置90(図4および図5参照)が設けられてもよい。
【0044】
図8は、第3の変形例に係るクロマトグラフ100の構成を示す図である。図8に示すように、本例のクロマトグラフ100は、低圧グラジエント分析に用いられ、混合部120をさらに備える。また、本例のクロマトグラフ100には、4個の移動相容器10が設けられる。4個の移動相容器10をそれぞれ移動相容器10A~10Dと呼ぶ。
【0045】
移動相容器10A~10Dは、それぞれ異なる移動相を貯留する。混合部120は、例えば比例混合バルブであり、移動相容器10A~10Dに貯留された移動相を選択的に吸引して低圧で混合する。混合部120の移動相接触部は、金属材料により形成されてもよい。ポンプ20は、混合部120により混合された移動相を圧送する。金属イオントラップ30は、ポンプ20と試料供給部40との間に配置され、ポンプ20から導出される移動相に溶出した金属イオンを保持する。金属イオントラップ30を通過した移動相は、試料供給部40に導かれる。
【0046】
このように、第1~第3の変形例においても、金属イオントラップ30よりも上流にあるポンプ20等の移動相接触部は、金属材料により形成されてもよい。一方、金属イオントラップ30よりも上流にある試料供給部40、分離カラム50および検出器60等の移動相接触部は、金属材料により形成される。そのため、金属イオントラップ30を通過した移動相には金属イオンがほとんど含まれない。したがって、試料に含まれる化合物が、金属イオンと相互作用することが抑制される。
【0047】
(6)比較例および実施例
以下の比較例および実施例では、移動相接触部がα+β型Ti合金、Co-Ni合金およびステンレス合金により形成されたポンプ20を準備した。また、濃度0.5%の酢酸水を移動相として準備した。そして、比較例において、ポンプ20の下流に金属イオントラップ30を設けることなく、ポンプ20により移動相を2.5μL/minの流量で圧送した。また、ポンプ20から導出された移動相をサンプルとして3mL以上捕集することを連続で3回行った。
【0048】
その後、実施例において、ポンプ20の下流に金属イオントラップ30を設けた状態で、ポンプ20により移動相を2.5μL/minの流量で圧送した。また、ポンプ20から導出された移動相をサンプルとして3mL以上捕集することを連続で3回行った。なお、金属イオントラップ30のフィルタ素子33は、3M(登録商標)社製エムポア(登録商標)ディスクキレートを直径φ3.2mmの円形に形成することにより作成した。また、メタノール、希硝酸および純水により事前にフィルタ素子33を洗浄した。
【0049】
比較例および実施例で捕集されたサンプルを1mL採取して10倍に希釈した後、ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析装置、株式会社島津製作所製ICPMS-2030)を用いてサンプルに含まれる金属イオンの濃度を測定した。その結果、主として、Ti(チタン)、Co(コバルト)、Fe(鉄)、V(バナジウム)、Ni(ニッケル)、Cr(クロム)およびAl(アルミニウム)の各イオンが検出された。ここで、Ti、VおよびAlは、α+β型Ti合金に由来する。Coは、Co-Ni合金に由来する。FeおよびCrは、ステンレス合金に由来する。Niは、Co-Ni合金とステンレス合金との両方に由来する。
【0050】
図9は、比較例および実施例におけるTiのイオン濃度の測定結果を示すグラフである。図9に示すように、比較例の第1回目、第2回目および第3回目におけるTiのイオン濃度は、それぞれ106.4μg/L、64.7μg/Lおよび54.1μg/Lとなった。実施例の第1回目、第2回目および第3回目におけるTiのイオン濃度は、それぞれ0.9μg/L、5.4μg/Lおよび10.5μg/Lとなった。ICP-MSによるTiのイオン濃度の定量下限は0.7μg/Lである。
【0051】
図10は、比較例および実施例におけるCoのイオン濃度の測定結果を示すグラフである。図10に示すように、比較例の第1回目、第2回目および第3回目におけるCoのイオン濃度は、それぞれ2.74μg/L、0.72μg/Lおよび0.63μg/Lとなった。実施例の第1回目、第2回目および第3回目におけるCoのイオン濃度は、それぞれ0.42μg/L、0.45μg/Lおよび0.39μg/Lとなった。ICP-MSによるCoのイオン濃度の定量下限は0.0037μg/Lである。
【0052】
図11は、比較例および実施例におけるFeのイオン濃度の測定結果を示すグラフである。図11に示すように、比較例の第1回目、第2回目および第3回目におけるFeのイオン濃度は、それぞれ175.5μg/L、39.4μg/Lおよび31.2μg/Lとなった。実施例の第1回目、第2回目および第3回目におけるFeのイオン濃度は、それぞれ0.7μg/L、4.8μg/Lおよび4.2μg/Lとなった。ICP-MSによるFeのイオン濃度の定量下限は0.43μg/Lである。
【0053】
図12は、比較例および実施例におけるVのイオン濃度の測定結果を示すグラフである。図12に示すように、比較例の第1回目、第2回目および第3回目におけるVのイオン濃度は、それぞれ1322μg/L、881μg/Lおよび749μg/Lとなった。実施例の第1回目、第2回目および第3回目におけるVのイオン濃度は、それぞれ6.28μg/L、149μg/Lおよび268μg/Lとなった。ICP-MSによるVのイオン濃度の定量下限は0.09μg/Lである。
【0054】
図13は、比較例および実施例におけるNiのイオン濃度の測定結果を示すグラフである。図13に示すように、比較例の第1回目、第2回目および第3回目におけるNiのイオン濃度は、それぞれ170.9μg/L、56.6μg/Lおよび53.9μg/Lとなった。実施例の第1回目、第2回目および第3回目におけるNiのイオン濃度は、それぞれ28.9μg/L、61.9μg/Lおよび42.7μg/Lとなった。ICP-MSによるNiのイオン濃度の定量下限は0.17μg/Lである。
【0055】
図14は、比較例および実施例におけるCrのイオン濃度の測定結果を示すグラフである。図14に示すように、比較例の第1回目、第2回目および第3回目におけるCrのイオン濃度は、それぞれ10.71μg/L、4.26μg/Lおよび3.68μg/Lとなった。実施例の第1回目、第2回目および第3回目におけるCrのイオン濃度は、それぞれ0.43μg/L、0.56μg/Lおよび0.49μg/Lとなった。ICP-MSによるCrのイオン濃度の定量下限は0.08μg/Lである。
【0056】
図15は、比較例および実施例におけるAlのイオン濃度の測定結果を示すグラフである。図15に示すように、比較例の第1回目、第2回目および第3回目におけるAlのイオン濃度は、それぞれ180.7μg/L、119.8μg/Lおよび106.5μg/Lとなった。実施例の第1回目、第2回目および第3回目におけるAlのイオン濃度は、それぞれ10.0μg/L、39.8μg/Lおよび48.5μg/Lとなった。ICP-MSによるAlのイオン濃度の定量下限は14μg/Lである。
【0057】
比較例と実施例との比較結果から、ポンプ20の下流に金属イオントラップ30を設けることにより、ポンプ20から導出される移動相中の金属イオンの濃度が低下する傾向にあることが確認された。
【0058】
(7)態様
ポンプにおける送液対象の液体と接触する部材には、高い機械的強度が要求される。そのため、部材を非金属材料で形成すると、部材の機械的強度の不足により、高い圧力で送液を行うことができない。部材を金属材料で形成すると、部材が十分な機械的強度を有するので、高い圧力で送液を行うことが可能である。しかしながら、部材を金属材料で形成すると、金属材料から液体に金属イオンが溶出することがある。この場合、液体中の金属イオンが下流で試料の化合物と相互作用することにより、吸着、分離カラムの保持特性の変化または検出器の検出特性の変化等が起こり、試料の分析精度が低下する可能性がある。
【0059】
これらの知見に基づいて、本発明者らは、試料の分析精度を維持しつつ高圧で送液を行うことを可能とする構成を見出し、以下の本発明に想到した。上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0060】
(第1項)一態様に係るポンプユニットは、
流路を通して移動相を圧送するポンプと、
前記ポンプにより圧送される移動相の前記流路に設けられたフィルタ素子を含む金属イオントラップとを備え、
前記ポンプは、移動相と接触する金属部材を含み、
前記フィルタ素子は、移動相に含まれる金属イオンと相互作用することにより金属イオンを保持する金属イオン保持構造を含んでもよい。
【0061】
このポンプユニットにおいては、ポンプにより流路を通して移動相が圧送される。ポンプは移動相と接触する金属部材を含むので、金属部材は十分に高い機械的強度を有する。したがって、ポンプは、高い圧力で送液を行うことが可能である。また、金属イオントラップのフィルタ素子が、ポンプにより圧送される移動相の流路に設けられる。フィルタ素子は、移動相に含まれる金属イオンと相互作用することにより金属イオンを保持する金属イオン保持構造を含む。
【0062】
この構成によれば、ポンプの金属部材から移動相に金属イオンが溶出した場合でも、金属イオンは金属イオントラップにより保持される。そのため、金属イオントラップよりも下流においては、金属イオンが流路の材料と相互作用することはほとんどない。これにより、金属イオンが流路に吸着する等の分析精度を低下させ得る現象が発生することが抑制される。これらの結果、試料の分析精度の低下を防止しつつ高圧で送液を行うことができる。
【0063】
(第2項)第1項に記載のポンプユニットにおいて、
前記金属イオン保持構造は、金属イオンと錯体を形成する官能基を含んでもよい。
【0064】
この場合、フィルタ素子は、金属イオンと錯体を形成することにより金属イオンを効率よく保持することができる。
【0065】
(第3項)第1項または第2項に記載のポンプユニットにおいて、
前記フィルタ素子は、吸着樹脂担体が結合されたメンブレンを含んでもよい。
【0066】
この場合、フィルタ素子は、金属イオンと相互作用して錯体を形成することにより金属イオンを効率よく保持することができる。
【0067】
(第4項)第1項または第2項に記載のポンプユニットにおいて、
前記フィルタ素子は、吸着樹脂担体が充填されたカラム部材を含んでもよい。
【0068】
この場合、フィルタ素子は、金属イオンと相互作用して錯体を形成することにより金属イオンを効率よく保持することができる。
【0069】
(第5項)第1項~第4項のいずれか一項に記載のポンプユニットにおいて、
前記金属イオントラップは、
前記流路に設けられ、移動相を導入可能な第1の開口部を有する第1のハウジングと、
前記流路に設けられ、移動相を導出可能な第2の開口部を有する第2のハウジングとをさらに含み、
前記フィルタ素子は、前記第1の開口部から導入された移動相を通過させて前記第2の開口部から導出するように前記第1のハウジングと前記第2のハウジングとの間に取り付けられ、
前記第2のハウジングにおける移動相と接触する部分は非金属材料により形成されてもよい。
【0070】
この場合、第1および第2のハウジングによりフィルタ素子を流路に保持することができる。また、第2のハウジングにおける移動相と接触する部分は非金属材料により形成されるので、フィルタ素子よりも下流で金属イオントラップから移動相に金属イオンが溶出することが防止される。
【0071】
(第6項)第5項に記載のポンプユニットにおいて、
前記金属イオントラップは、前記フィルタ素子を取り囲みかつ前記第1のハウジングと前記第2のハウジングとの間をシールするように配置されたシール部材をさらに含んでもよい。
【0072】
この場合、第1のハウジングと第2のハウジングとの間から移動相が漏れることが防止される。
【0073】
(第7項)第1項~第6項のいずれか一項に記載のポンプユニットにおいて、
前記ポンプは、40MPa以上の圧力で移動相を圧送し、
前記金属イオントラップは、40MPa以上の耐圧を有してもよい。
【0074】
この場合、比較的高い圧力で移動相を圧送することができる。
【0075】
(第8項)他の態様に係るクロマトグラフは、
第1項~第7項のいずれか一項に記載のポンプユニットと、
前記ポンプユニットの前記ポンプにより圧送される移動相に試料を供給する試料供給部と、
前記試料供給部により供給された試料が通過する分離カラムと、
前記分離カラムを通過した試料を検出する検出器とを備え、
前記ポンプユニットの前記金属イオントラップは、前記ポンプと前記試料供給部との間に設けられ、
前記試料供給部、前記分離カラムおよび前記検出器の各々における移動相と接触する部分は、非金属材料により形成されてもよい。
【0076】
このクロマトグラフにおいては、上記のポンプユニットのポンプにより圧送される移動相に試料が試料供給部により供給される。したがって、上記のポンプにより高い圧力で送液を行うことが可能である。試料供給部により供給された試料が分離カラムにより通過される。分離カラムを通過した試料が検出器により検出される。ポンプユニットの金属イオントラップは、ポンプと試料供給部との間に設けられる。
【0077】
この構成によれば、ポンプの金属部材から移動相に金属イオンが溶出した場合でも、金属イオンは金属イオントラップにより保持される。また、金属イオントラップより下流における試料供給部、分離カラムおよび検出器の各々における移動相と接触する部分は、非金属材料により形成される。そのため、金属イオントラップよりも下流においては、金属イオンが流路の材料と相互作用することはほとんどない。これにより、金属イオンの吸着、クロマトグラムのピークテーリング、分離カラムの保持特性の変化または検出器の検出特性の変化等の分析精度を低下させ得る現象が発生することが抑制される。これらの結果、試料の分析精度の低下を防止しつつ高圧で送液を行うことができる。
【0078】
(第9項)第8項に記載のクロマトグラフにおいて、
前記クロマトグラフは、前記フィルタ素子に保持された金属イオンを除去するように前記金属イオントラップに酸溶媒を供給する除去装置をさらに備えてもよい。
【0079】
この場合、フィルタ素子に保持された金属イオンが除去される。これにより、金属イオントラップを交換することなくクロマトグラフを連続的に使用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15