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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-31
(45)【発行日】2023-06-08
(54)【発明の名称】AD変換器
(51)【国際特許分類】
   H03M 1/46 20060101AFI20230601BHJP
   H03M 1/80 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
H03M1/46
H03M1/80
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018078254
(22)【出願日】2018-04-16
(65)【公開番号】P2019186841
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-02-19
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】399011195
【氏名又は名称】ザインエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100110582
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 昌聰
(74)【代理人】
【識別番号】100223424
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 雄二
(74)【代理人】
【識別番号】100165526
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 寛
(72)【発明者】
【氏名】源代 裕治
【合議体】
【審判長】國分 直樹
【審判官】千葉 輝久
【審判官】渡辺 努
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0027251(US,A1)
【文献】特開2013-21555(JP,A)
【文献】特開2015-186137(JP,A)
【文献】特開2016-21749(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03M1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力アナログデータに応じたデジタルデータを出力する逐次比較型のAD変換器であって、
各々の容量値が互いに等しい複数の容量素子と、制御信号に基づいて設定される複数のスイッチとを含み、前記複数のスイッチのうちの全て又は一部のスイッチの設定により、前記複数の容量素子のうちの該スイッチに対応する容量素子の第1端を第1基準電位、第2基準電位およびオープンの何れかとして、前記複数のスイッチそれぞれの設定に応じたデータを、前記複数の容量素子それぞれの第2端が共通に接続されてなる出力端から出力するDA変換部と、
前記DA変換部から出力されるデータと前記入力アナログデータとを大小比較して、その比較結果を表す比較信号を出力する比較部と、
前記比較信号に基づいて、逐次比較のステップ毎に、前記DA変換部から出力されるデータと前記入力アナログデータとの差が小さくなるように前記制御信号を生成して出力する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記DA変換部の前記複数のスイッチそれぞれの設定を制御する際に、逐次比較の何れかステップにおいて、前記DA変換部の前記複数の容量素子のうち前記比較部による大小比較に必要な個数の容量素子の第1端を第1基準電位または第2基準電位とし他の容量素子の第1端をオープンとするよう指示する制御信号を出力する、
AD変換器。
【請求項2】
入力アナログデータに応じたデジタルデータを出力する逐次比較型のAD変換器であって、
各々の容量値が互いに等しい複数の容量素子と、制御信号に基づいて設定される複数のスイッチとを含み、前記入力アナログデータを前記複数の容量素子によりホールドした後、前記複数のスイッチのうちの全て又は一部のスイッチの設定により、前記複数の容量素子のうちの該スイッチに対応する容量素子の第1端を第1基準電位、第2基準電位およびオープンの何れかとして、前記複数のスイッチそれぞれの設定に応じたデータを、前記複数の容量素子それぞれの第2端が共通に接続されてなる出力端から出力するDA変換部と、
前記DA変換部から出力されるデータと基準レベルとを大小比較して、その比較結果を表す比較信号を出力する比較部と、
前記比較信号に基づいて、逐次比較のステップ毎に、前記DA変換部から出力されるデータと前記基準レベルとの差が小さくなるように前記制御信号を生成して出力する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記DA変換部の前記複数のスイッチそれぞれの設定を制御する際に、逐次比較の何れかステップにおいて、前記DA変換部の前記複数の容量素子のうち前記比較部による大小比較に必要な個数の容量素子の第1端を第1基準電位または第2基準電位とし他の容量素子の第1端をオープンとするよう指示する制御信号を出力する、
AD変換器。
【請求項3】
前記制御部は、前記DA変換部の前記複数のスイッチそれぞれの設定を制御する際に、逐次比較の少なくとも最初のステップにおいて、前記DA変換部の前記複数の容量素子のうちの何れかの容量素子の第1端をオープンとするよう指示する制御信号を出力する、
請求項1または2に記載のAD変換器。
【請求項4】
前記制御部は、前記DA変換部の前記複数のスイッチそれぞれの設定を制御する際に、逐次比較のステップが進むに従って、前記DA変換部の前記複数の容量素子のうち第1端を第1基準電位または第2基準電位とする容量素子の個数を次第に増加させるよう指示する制御信号を出力する、
請求項1~3の何れか1項に記載のAD変換器。
【請求項5】
第1入力アナログデータと第2入力アナログデータとの差に応じたデジタルデータを出力する逐次比較型のAD変換器であって、
各々の容量値が互いに等しい複数の容量素子と、第1制御信号に基づいて設定される複数のスイッチとを含み、前記第1入力アナログデータを前記複数の容量素子によりホールドした後、前記複数のスイッチのうちの全て又は一部のスイッチの設定により、前記複数の容量素子のうちの該スイッチに対応する容量素子の第1端を第1基準電位、第2基準電位およびオープンの何れかとして、前記複数のスイッチそれぞれの設定に応じた第1データを、前記複数の容量素子それぞれの第2端が共通に接続されてなる出力端から出力する第1DA変換部と、
複数の容量素子と、第2制御信号に基づいて設定される複数のスイッチとを含み、前記第2入力アナログデータを前記複数の容量素子によりホールドした後、前記複数のスイッチのうちの全て又は一部のスイッチの設定により、前記複数の容量素子のうちの該スイッチに対応する容量素子の第1端を第1基準電位、第2基準電位およびオープンの何れかとして、前記複数のスイッチそれぞれの設定に応じた第2データを、前記複数の容量素子それぞれの第2端が共通に接続されてなる出力端から出力する第2DA変換部と、
前記第1データと前記第2データとを大小比較して、その比較結果を表す比較信号を出力する比較部と、
前記比較信号に基づいて、逐次比較のステップ毎に、前記第1データと前記第2データとの差が小さくなるように前記第1制御信号および前記第2制御信号を生成して出力する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記第1DA変換部および前記第2DA変換部それぞれの前記複数のスイッチそれぞれの設定を制御する際に、逐次比較の何れかステップにおいて、前記第1DA変換部および前記第2DA変換部それぞれの前記複数の容量素子のうち前記比較部による大小比較に必要な個数の容量素子の第1端を第1基準電位または第2基準電位とし他の容量素子の第1端をオープンとするよう指示する第1制御信号および第2制御信号を出力する、
AD変換器。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1DA変換部および前記第2DA変換部それぞれの前記複数のスイッチそれぞれの設定を制御する際に、逐次比較の少なくとも最初のステップにおいて、前記第1DA変換部および前記第2DA変換部それぞれの前記複数の容量素子のうちの何れかの容量素子の第1端をオープンとするよう指示する第1制御信号および第2制御信号を出力する、
請求項5に記載のAD変換器。
【請求項7】
前記制御部は、前記第1DA変換部および前記第2DA変換部それぞれの前記複数のスイッチそれぞれの設定を制御する際に、逐次比較のステップが進むに従って、前記第1DA変換部および前記第2DA変換部それぞれの前記複数の容量素子のうち第1端を第1基準電位または第2基準電位とする容量素子の個数を次第に増加させるよう指示する第1制御信号および第2制御信号を出力する、
請求項5または6に記載のAD変換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逐次比較型のAD変換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
AD変換器(ADC、analog-to-digital converter)は、アナログデータを入力して、その入力アナログデータに応じたデジタルデータを出力することができる。そのうちでも、逐次比較型(SAR、successive approximation register)のAD変換器は、主な構成要素として、DA変換部、比較部および制御部を備える。DA変換部は、複数の容量素子および複数のスイッチを含む。逐次比較型のAD変換器は、他のタイプのAD変換器と比較すると、アナログ回路が少なく、静的な電流が抑えられ、低消費電力でプロセス微細化に向く。それ故、逐次比較型のAD変換器は、近年盛んに研究されている。
【0003】
逐次比較型のAD変換器は、非特許文献1に解説されているとおり、概ね次のように初期化ステップおよび逐次比較の各ステップの動作を行う。初期化ステップでは、DA変換部は各容量素子の電荷を初期化する。この初期化ステップの後、逐次比較の各ステップが行われる。逐次比較の各ステップにおいて、DA変換部は、制御部から与えられる制御信号に基づいて各スイッチが設定されて、その設定に応じたアナログデータを比較部へ出力する。比較部は、DA変換部から出力されたアナログデータの大きさを入力アナログデータに基づいて評価して、その評価結果を制御部へ出力する。制御部は、比較部から出力された評価結果に基づいて、DA変換部から出力されたアナログデータが入力アナログデータに応じた値に近づくように、逐次比較の次のステップにおいてDA変換部の各スイッチの設定を制御する制御信号を出力する。
【0004】
制御部は、出力すべきデジタルデータの最上位ビット(MSB、most significant bit)の値を最初のステップで判定し、その後の各ステップで順次に下位のビットの値を判定していき、最後のステップで最下位ビット(LSB、least significant bit)の値を判定する。例えば、出力すべきデジタルデータが4ビットデータ[d3,d2,d1,d0]であるとすると、制御部は、最初のステップ1においてMSBのd3の値を判定し、次のステップ2においてビットd2の値を判定し、更に次のステップ3においてビットd1の値を判定し、最後のステップ4においてLSBのd0の値を判定する。
【0005】
このような逐次比較型のAD変換器の動作において、初期化ステップから逐次比較の最初のステップ1に移行する際、および、逐次比較の各ステップから次のステップに移行する際に、DA変換部の複数のスイッチの設定が変化して、DA変換部の各容量素子の電荷の量が変化する。DA変換部の複数の容量素子の電荷量の変化は、キックバックと呼ばれる基準電圧端子経由の電荷移動を引き起こす。このキックバックにより、DA変換部に基準電位を供給する基準電位供給線の電位が変動する。特に、逐次比較の初期のステップでは、キックバックが大きいので、基準電位供給線の電位の変動量も大きい。
【0006】
基準電位供給線からDA変換部に供給される基準電位の変動が大きいタイミングでDA変換部から出力されているアナログデータの大きさを比較部が評価すると、その評価結果を誤り、最終的に得られるデジタルデータが誤りとなる場合がある。したがって、基準電位供給線からDA変換部に供給される基準電位の変動が整定して基準電位が安定した後のタイミングで、DA変換部から出力されているアナログデータの大きさを比較部が評価することが好ましい。この場合、逐次比較の各ステップの期間は、ステップ移行後に基準電位が安定するまでに要する時間より長く設定しなければならない。AD変換器は高速化が求められているが、ステップ移行後に基準電位が安定するまでに要する時間はAD変換器の高速化の妨げとなる。
【0007】
非特許文献2,3には、逐次比較の各ステップの期間の短縮化を図る技術が記載されている。非特許文献2に記載された技術は、基準電位供給線に基準電位を出力するバッファを高速化するとともに、比較部による評価の際のオフセットを調整することで、各ステップの期間の短縮化を図る。
【0008】
非特許文献3に記載されたAD変換器は、小さい容量値を有する複数の容量素子を含む第1DA変換部と、大きい容量値を有する複数の容量素子を含む第2DA変換部と、を備える。このAD変換器は、各ステップにおいて第1DA変換部を用いて逐次比較を行っている間は第2DA変換部を切り離しておき、各ステップで決定された第1DA変換部のスイッチ設定を第2DA変換部のスイッチ設定に反映させる。第1DA変換部を用いて逐次比較を行うことで、キックバックを小さくして、逐次比較の各ステップの期間の短縮化を図る。第2DA変換部は、熱雑音による精度劣化を補償するために用いられる。このAD変換器では、DA変換部の出力端と比較部の入力端との間にアナログスイッチを設けることが必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】Behzad Razavi, “A Tale of TwoADCs: Pipelined Versus SAR,” IEEE Solid-State Circuits Magazine, Volume: 7,Issue: 3, pp. 38-46, 2015.
【文献】Chi-Hang Chan, Yan Zhu, Cheng Li,Wai-Hong Zhang, Iok-Meng Ho, Lai Wei, Seng-Pan U, Rui Paulo Martins, “60-dBSNDR 100-MS/s SAR ADCs With Threshold Reconfigurable Reference ErrorCalibration,” IEEE Journal of Solid-State Circuits, Volume 52, Number 10,pp.2576-2588, October 2017.
【文献】Yong Lim and Michael P. Flynn, “A 1 mW 71.5 dB SNDR 50 MS/s 13 bit fully differential ring amplifierbased SAR-assisted pipeline ADC,” IEEE Journal of Solid-State Circuits, Volume50, Number 12, pp.2901-2911, December 2015.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
非特許文献2に記載された技術は、バッファの高速化により消費電力の増加を招くので好ましくない。非特許文献3に記載された技術は、2つのDA変換部を設けることにより、DA変換部の出力端と比較部の入力端との間にアナログスイッチを設ける必要がある点で好ましくない。
【0011】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、逐次比較の各ステップの期間を短縮することができ高速動作が容易なAD変換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1態様のAD変換器は、入力アナログデータに応じたデジタルデータを出力する逐次比較型のAD変換器であって、(1) 複数の容量素子と、制御信号に基づいて設定される複数のスイッチとを含み、複数のスイッチのうちの全て又は一部のスイッチの設定により、複数の容量素子のうちの該スイッチに対応する容量素子の第1端を第1基準電位、第2基準電位およびオープンの何れかとして、複数のスイッチそれぞれの設定に応じたデータを、複数の容量素子それぞれの第2端が共通に接続されてなる出力端から出力するDA変換部と、(2) DA変換部から出力されるデータと入力アナログデータとを大小比較して、その比較結果を表す比較信号を出力する比較部と、(3) 比較信号に基づいて、逐次比較のステップ毎に、DA変換部から出力されるデータと入力アナログデータとの差が小さくなるように制御信号を生成して出力する制御部と、を備える。
【0013】
本発明の第2態様のAD変換器は、入力アナログデータに応じたデジタルデータを出力する逐次比較型のAD変換器であって、(1) 複数の容量素子と、制御信号に基づいて設定される複数のスイッチとを含み、入力アナログデータを複数の容量素子によりホールドした後、複数のスイッチのうちの全て又は一部のスイッチの設定により、複数の容量素子のうちの該スイッチに対応する容量素子の第1端を第1基準電位、第2基準電位およびオープンの何れかとして、複数のスイッチそれぞれの設定に応じたデータを、複数の容量素子それぞれの第2端が共通に接続されてなる出力端から出力するDA変換部と、(2) DA変換部から出力されるデータと基準レベルとを大小比較して、その比較結果を表す比較信号を出力する比較部と、(3) 比較信号に基づいて、逐次比較のステップ毎に、DA変換部から出力されるデータと基準レベルとの差が小さくなるように制御信号を生成して出力する制御部と、を備える。
【0014】
本発明の第1態様または第2態様において、制御部は、DA変換部の複数のスイッチそれぞれの設定を制御する際に、逐次比較の何れかステップにおいて、DA変換部の複数の容量素子のうちの何れかの容量素子の第1端をオープンとするよう指示する制御信号を出力する。
【0015】
本発明の第1態様または第2態様において、制御部は、DA変換部の複数のスイッチそれぞれの設定を制御する際に、逐次比較の少なくとも最初のステップにおいて、DA変換部の複数の容量素子のうちの何れかの容量素子の第1端をオープンとするよう指示する制御信号を出力するのが好適である。
【0016】
また、本発明の第1態様または第2態様において、制御部は、DA変換部の複数のスイッチそれぞれの設定を制御する際に、逐次比較のステップが進むに従って、DA変換部の複数の容量素子のうち第1端を第1基準電位または第2基準電位とする容量素子の容量値の総和を次第に増加させるよう指示する制御信号を出力するのが好適である。
【0017】
本発明の第3態様のAD変換器は、第1入力アナログデータと第2入力アナログデータとの差に応じたデジタルデータを出力する逐次比較型のAD変換器であって、(1) 複数の容量素子と、第1制御信号に基づいて設定される複数のスイッチとを含み、第1入力アナログデータを複数の容量素子によりホールドした後、複数のスイッチのうちの全て又は一部のスイッチの設定により、複数の容量素子のうちの該スイッチに対応する容量素子の第1端を第1基準電位、第2基準電位およびオープンの何れかとして、複数のスイッチそれぞれの設定に応じた第1データを、複数の容量素子それぞれの第2端が共通に接続されてなる出力端から出力する第1DA変換部と、(2) 複数の容量素子と、第2制御信号に基づいて設定される複数のスイッチとを含み、第2入力アナログデータを複数の容量素子によりホールドした後、複数のスイッチのうちの全て又は一部のスイッチの設定により、複数の容量素子のうちの該スイッチに対応する容量素子の第1端を第1基準電位、第2基準電位およびオープンの何れかとして、複数のスイッチそれぞれの設定に応じた第2データを、複数の容量素子それぞれの第2端が共通に接続されてなる出力端から出力する第2DA変換部と、(3) 第1データと第2データとを大小比較して、その比較結果を表す比較信号を出力する比較部と、(4) 比較信号に基づいて、逐次比較のステップ毎に、第1データと第2データとの差が小さくなるように第1制御信号および第2制御信号を生成して出力する制御部と、を備える。
【0018】
本発明の第3態様において、制御部は、第1DA変換部および第2DA変換部それぞれの複数のスイッチそれぞれの設定を制御する際に、逐次比較の何れかステップにおいて、第1DA変換部および第2DA変換部それぞれの複数の容量素子のうちの何れかの容量素子の第1端をオープンとするよう指示する第1制御信号および第2制御信号を出力する。
【0019】
本発明の第3態様において、制御部は、第1DA変換部および第2DA変換部それぞれの複数のスイッチそれぞれの設定を制御する際に、逐次比較の少なくとも最初のステップにおいて、第1DA変換部および第2DA変換部それぞれの複数の容量素子のうちの何れかの容量素子の第1端をオープンとするよう指示する第1制御信号および第2制御信号を出力するのが好適である。
【0020】
また、制御部は、第1DA変換部および第2DA変換部それぞれの複数のスイッチそれぞれの設定を制御する際に、逐次比較のステップが進むに従って、第1DA変換部および第2DA変換部それぞれの複数の容量素子のうち第1端を第1基準電位または第2基準電位とする容量素子の容量値の総和を次第に増加させるよう指示する第1制御信号および第2制御信号を出力するのが好適である。
【発明の効果】
【0021】
本発明のAD変換器は、逐次比較の各ステップの期間を短縮することができ、高速動作が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、AD変換器1Aの構成を示す図である。
図2図2は、AD変換器1Aの第1動作例を説明する表である。
図3図3は、AD変換器1Aの第2動作例を説明する表である。
図4図4は、AD変換器1Aの第3動作例を説明する表である。
図5図5は、AD変換器1Aの第4動作例を説明する表である。
図6図6は、AD変換器1Aの第5動作例を説明する表である。
図7図7は、AD変換器1Aの第6動作例を説明する表である。
図8図8は、AD変換器1Aの第7動作例を説明する表である。
図9図9は、AD変換器1Bの構成を示す図である。
図10図10は、AD変換器1Bの各スイッチSWの回路例を示す図である。
図11図11は、AD変換器1Bの各スイッチSWの動作を説明するタイミングチャートである。
図12図12は、AD変換器1Cの構成を示す図である。
図13図13は、AD変換器1Cの第1動作例を説明する表である。図13(a)は、AD変換器1Cの第1DA変換部11の動作を示す。図13(b)は、AD変換器1Cの第2DA変換部12の動作を示す。
図14図14は、AD変換器1Cの第2動作例を説明する表である。図14(a)は、AD変換器1Cの第1DA変換部11の動作を示す。図14(b)は、AD変換器1Cの第2DA変換部12の動作を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0024】
(第1構成例)
図1は、AD変換器1Aの構成を示す図である。この図に示される第1構成例のAD変換器1Aは、DA変換部10A、比較部20および制御部30Aを備える。AD変換器1Aは、入力アナログデータAinに応じたデジタルデータを制御部30Aから出力する。
【0025】
DA変換部10Aは、N個の容量素子C~CN-1、N個のスイッチSW~SWN-1およびスイッチSWRSTを含む。N個のスイッチSW~SWN-1は、制御部30Aから出力される制御信号に基づいて設定される。各容量素子Cの第1端は、対応するスイッチSWと接続されている。各容量素子Cの第1端は、スイッチSWの設定により、高電位の第1基準電位VREFH、低電位の第2基準電位VREFLおよびオープンの何れかとされる。各容量素子Cの第2端は、共通に接続されて出力端を構成している。スイッチSWRSTは、この出力端と第2基準電位供給線との間に設けられている。DA変換部10Aは、この出力端から、N個のスイッチSW~SWN-1それぞれの設定に応じたデータCTOPを比較部20へ出力する。
【0026】
なお、Nは2以上の整数であり、nは0以上(N-1)以下の整数である。また、N個の容量素子C~CN-1のうち何れかの容量素子の第1端は一定電位とされる場合があり、その場合には、その容量素子に対応するスイッチは不要である。
【0027】
比較部20は、2つの入力端それぞれに入力されるデータを大小比較して、その比較結果を表す比較信号を制御部30Aへ出力する。第1構成例では、比較部20は、DA変換部10Aから出力されたデータCTOPを一方の入力端に入力し、入力アナログデータAinを他方の入力端に入力する。
【0028】
制御部30Aは、比較部20から出力された比較信号に基づいて、逐次比較のステップ毎に、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPと入力アナログデータAinとの差が小さくなるように制御信号を生成して、その制御信号をDA変換部10Aへ出力する。以下に、AD変換器1Aの幾つかの動作例を示す。これらの動作例のうち、逐次比較の各ステップにおいて全ての容量素子が第1基準電位VREFHまたは第2基準電位VREFLに接続される動作例が比較例であり、逐次比較の何れかのステップにおいて何れかの容量素子がオープン状態とされる動作例が実施例である。
【0029】
図2は、AD変換器1Aの第1動作例を説明する表である。第1動作例では、N=4とし、容量素子Cの容量値をCとし、容量素子Cの容量値をCとし、容量素子Cの容量値を2Cとし、容量素子Cの容量値を4Cとする。各容量素子の容量値は、単位容量値Cの倍数で示されている。この表には、逐次比較の各ステップにおける制御信号Ccodeおよび各容量素子Cの第1端の電位が示されている。「H」は、容量素子の第1端が高電位の第1基準電位VREFHに接続されることを示し、「L」は、容量素子の第1端が低電位の第2基準電位VREFLに接続されることを示す。Ccodeは、DA変換部10Aの各スイッチの設定を制御するために制御部30AからDA変換部10Aに与えられる3ビットの制御信号である。スイッチSWの設定は、Ccode[c2,c1,c0]のMSBであるc2により制御される。スイッチSWの設定は、Ccodeの第2ビットであるc1より制御される。スイッチSWの設定は、CcodeのLSBであるc0により制御される。容量素子Cは常に低電位の第2基準電位VREFLに接続されるので、スイッチSWは無くてもよい。
【0030】
初期化ステップでは、4個のスイッチSW~SWおよびスイッチSWRSTにより、4個の容量素子C~Cそれぞれの両端は、第2基準電位VREFLとされる。これにより、4個の容量素子C~Cそれぞれの電荷は初期化され、DA変換部10Aから比較部20へ出力されるデータCTOPが初期化される。初期化ステップが終了すると、スイッチSWRSTはオフ状態となる。
【0031】
初期化ステップの後の逐次比較の最初のステップ1では、制御部30AからDA変換部10AにCcode[1,0,0]が与えられることで、容量素子Cは第1基準電位VREFHに接続され、容量素子C,C,Cは第2基準電位VREFLに接続される。すなわち、第1基準電位VREFHに接続される容量素子の容量値の総和は4Cとなり、第2基準電位VREFLに接続される容量素子の容量値の総和は4Cとなる。このような各容量素子の接続状態のときにDA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(VREFH+VREFL)/2となる。
【0032】
ステップ1においてDA変換部10Aから出力されるデータCTOPと入力アナログデータAinとが比較部20により大小比較され、その比較結果を表す比較信号が比較部20から制御部30Aへ出力される。そして、制御部30Aにより、ステップ1の比較結果に応じて、逐次比較の次のステップ2でDA変換部10Aに与えられるCcodeが決定される。ステップ2は、ステップ1の比較結果に応じてケース1とケース2とに分かれる。データCTOPが入力アナログデータAinより小さい場合にケース1に進み、データCTOPが入力アナログデータAinより大きい場合にケース2に進む。
【0033】
逐次比較のステップ2のケース1では、制御部30AからDA変換部10AにCcode[1,1,0]が与えられることで、容量素子C,Cは第1基準電位VREFHに接続され、容量素子C,Cは第2基準電位VREFLに接続される。すなわち、第1基準電位VREFHに接続される容量素子の容量値の総和は6Cとなり、第2基準電位VREFLに接続される容量素子の容量値の総和は2Cとなる。このような各容量素子の接続状態のときにDA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(3VREFH+VREFL)/4となる。
【0034】
ステップ2のケース1においてDA変換部10Aから出力されるデータCTOPと入力アナログデータAinとが比較部20により大小比較され、その比較結果を表す比較信号が比較部20から制御部30Aへ出力される。そして、制御部30Aにより、ステップ2のケース1の比較結果に応じて、逐次比較の次のステップ3でDA変換部10Aに与えられるCcodeが決定される。ステップ2のケース1の後のステップ3は、ステップ2のケース1の比較結果に応じてケース1-1とケース1-2とに分かれる。データCTOPが入力アナログデータAinより小さい場合にケース1-1に進み、データCTOPが入力アナログデータAinより大きい場合にケース1-2に進む。
【0035】
逐次比較のステップ2のケース2では、制御部30AからDA変換部10AにCcode[0,1,0]が与えられることで、容量素子Cは第1基準電位VREFHに接続され、容量素子C,C,Cは第2基準電位VREFLに接続される。すなわち、第1基準電位VREFHに接続される容量素子の容量値の総和は2Cとなり、第2基準電位VREFLに接続される容量素子の容量値の総和は6Cとなる。このような各容量素子の接続状態のときにDA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(VREFH+3VREFL)/4となる。
【0036】
ステップ2のケース2においてDA変換部10Aから出力されるデータCTOPと入力アナログデータAinとが比較部20により大小比較され、その比較結果を表す比較信号が比較部20から制御部30Aへ出力される。そして、制御部30Aにより、ステップ2のケース2の比較結果に応じて、逐次比較の次のステップ3でDA変換部10Aに与えられるCcodeが決定される。ステップ2のケース2の後のステップ3は、ステップ2のケース2の比較結果に応じてケース2-1とケース2-2とに分かれる。データCTOPが入力アナログデータAinより小さい場合にケース2-1に進み、データCTOPが入力アナログデータAinより大きい場合にケース2-2に進む。
【0037】
ステップ3のケース1-1では、制御部30AからDA変換部10AにCcode[1,1,1]が与えられることで、容量素子C,C,Cは第1基準電位VREFHに接続され、容量素子Cは第2基準電位VREFLに接続される。すなわち、第1基準電位VREFHに接続される容量素子の容量値の総和は7Cとなり、第2基準電位VREFLに接続される容量素子の容量値の総和はCとなる。したがって、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(7VREFH+VREFL)/8となる。
【0038】
ステップ3のケース1-2では、制御部30AからDA変換部10AにCcode[1,0,1]が与えられることで、容量素子C,Cは第1基準電位VREFHに接続され、容量素子C,Cは第2基準電位VREFLに接続される。すなわち、第1基準電位VREFHに接続される容量素子の容量値の総和は5Cとなり、第2基準電位VREFLに接続される容量素子の容量値の総和は3Cとなる。したがって、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(5VREFH+3VREFL)/8となる。
【0039】
ステップ3のケース2-1では、制御部30AからDA変換部10AにCcode[0,1,1]が与えられることで、容量素子C,Cは第1基準電位VREFHに接続され、容量素子C,Cは第2基準電位VREFLに接続される。すなわち、第1基準電位VREFHに接続される容量素子の容量値の総和は3Cとなり、第2基準電位VREFLに接続される容量素子の容量値の総和は5Cとなる。したがって、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(3VREFH+5VREFL)/8となる。
【0040】
ステップ3のケース2-2では、制御部30AからDA変換部10AにCcode[0,0,1]が与えられることで、容量素子Cは第1基準電位VREFHに接続され、容量素子C,C,Cは第2基準電位VREFLに接続される。すなわち、第1基準電位VREFHに接続される容量素子の容量値の総和はCとなり、第2基準電位VREFLに接続される容量素子の容量値の総和は7Cとなる。したがって、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(VREFH+7VREFL)/8となる。
【0041】
このように、逐次比較の最初のステップ1では、制御部30AからDA変換部10Aに与えられるCcodeが[1,0,0]に仮設定されて、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPと入力アナログデータAinとが大小比較され、その比較結果に基づいて、CcodeのMSBであるc2が決定される。次のステップ2では、制御部30AからDA変換部10Aに与えられるCcodeが[c2,1,0]に仮設定されて、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPと入力アナログデータAinとが大小比較され、その比較結果に基づいて、Ccodeの第2ビットであるc1が決定される。
【0042】
最後のステップ3では、制御部30AからDA変換部10Aに与えられるCcodeが[c2,c1,1]に仮設定されて、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPと入力アナログデータAinとが大小比較され、その比較結果に基づいて、CcodeのLSBであるc0が決定される。そして、ステップ3の後に最終的に得られたCcode(または、このCcodeに基づいて得られるデジタルデータ)が、入力アナログデータAinに応じたデジタルデータとして制御部30Aから出力される。
【0043】
図3は、AD変換器1Aの第2動作例を説明する表である。第2動作例では、N=5とし、容量素子Cの容量値をCとし、容量素子Cの容量値をCとし、容量素子Cの容量値を2Cとし、容量素子Cの容量値を2Cとし、容量素子Cの容量値を2Cとする。前の第1動作例では容量素子Cの容量値が4Cであったのに対して、この第2動作例では容量素子C,Cの容量値の和が4Cである。したがって、互いに並列に設けられている容量素子C,CがCcodeのc2に基づいて互いに同じ電位に設定されることで、第2動作例は第1動作例と等価なものとなる。
【0044】
図3には、初期化ステップから逐次比較のステップ1に移行する際、ステップ1から次のステップ2のケース1に移行する際、および、ステップ1から次のステップ2のケース2に移行する際、それぞれにおける基準電位供給線経由の電荷移動量(キックバック電荷移動量)も示されている。V=VREFH-VREFLとすると、初期化ステップから逐次比較のステップ1に移行する際の電荷移動量は2CVである。ステップ1から次のステップ2のケース1に移行する際の電荷移動量はCV/2である。ステップ1から次のステップ2のケース2に移行する際の電荷移動量は3CV/2である。
【0045】
図4は、AD変換器1Aの第3動作例を説明する表である。前述の第2動作例の場合と同様に、この第3動作例でも、N=5とし、容量素子Cの容量値をCとし、容量素子Cの容量値をCとし、容量素子Cの容量値を2Cとし、容量素子Cの容量値を2Cとし、容量素子Cの容量値を2Cとする。
【0046】
図4には、逐次比較の最初のステップ1の2つのケースA,Bが示されている。この図において、「z」は、容量素子の第1端が第1基準電位VREFHおよび第2基準電位VREFLの何れにも接続されておらずオープン状態(ハイインピーダンス状態)であることを示す。
【0047】
ケースAでは、容量素子C,C,Cはオープン状態とされ、容量素子Cは第1基準電位VREFHに接続され、容量素子Cは第2基準電位VREFLに接続される。すなわち、第1基準電位VREFHに接続される容量素子の容量値の総和はCとなり、第2基準電位VREFLに接続される容量素子の容量値の総和はCとなる。
【0048】
ケースBでは、容量素子Cは第1基準電位VREFHに接続され、容量素子C,Cはオープン状態とされ、容量素子C,Cは第2基準電位VREFLに接続される。すなわち、第1基準電位VREFHに接続される容量素子の容量値の総和は2Cとなり、第2基準電位VREFLに接続される容量素子の容量値の総和は2Cとなる。
【0049】
第3動作例のステップ1のケースA,Bの何れにおいても、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(VREFH+VREFL)/2となる。これは、第1動作例および第2動作例それぞれのステップ1においてDA変換部10Aから出力されるデータCTOPと同じ値である。
【0050】
しかし、第3動作例のステップ1のケースAでは、初期化ステップから逐次比較のステップ1に移行する際の電荷移動量はCV/2である。これは、第1動作例および第2動作例それぞれのステップ1に移行する際の電荷移動量の1/4である。また、第3動作例のステップ1のケースBでは、初期化ステップから逐次比較のステップ1に移行する際の電荷移動量はCVである。これは、第1動作例および第2動作例それぞれのステップ1に移行する際の電荷移動量の1/2である。
【0051】
このように、制御部30Aは、DA変換部10Aの各スイッチの設定を逐次比較のステップ毎に制御する際に、逐次比較の何れかステップにおいて、DA変換部10Aの何れかの容量素子の第1端をオープンとするよう指示する制御信号をDA変換部10Aへ出力する。このようにすることで、逐次比較の際に用いられる容量素子の容量値の総和を小さくすることができるので、キックバックを小さくすることができる。そして、逐次比較の各ステップの期間を短縮することができて、AD変換器の高速化が可能となる。
【0052】
キックバックは、逐次比較の最初のステップでは大きく、ステップが進むに従って小さくなっていく傾向がある。したがって、制御部30Aは、DA変換部10Aの各スイッチの設定を制御する際に、逐次比較の少なくとも最初のステップ1において、DA変換部10Aの何れかの容量素子の第1端をオープンとするよう指示する制御信号をDA変換部10Aへ出力するのが好適である。制御部30Aは、DA変換部10Aの各スイッチの設定を制御する際に、逐次比較のステップが進むに従って、DA変換部10Aの複数の容量素子のうち第1端を第1基準電位VREFHまたは第2基準電位VREFLとする容量素子の容量値の総和を次第に増加させるよう指示する制御信号をDA変換部10Aへ出力するのが好適である。また、制御部30Aは、逐次比較の最後のステップにおいて、または、最後のステップまでに、DA変換部10Aの全ての容量素子の第1端を第1基準電位VREFHまたは第2基準電位VREFLとするよう指示する制御信号をDA変換部10Aへ出力するのが好適である。
【0053】
図5は、AD変換器1Aの第4動作例を説明する表である。第4動作例では、N=8とし、8個の容量素子C~Cそれぞれの容量値をCとする。容量素子C,C,C,Cの容量値の総和は4Cであり、容量素子C,Cの容量値の総和は2Cである。したがって、互いに並列に設けられている容量素子C,C,C,CがCcodeのc2に基づいて互いに同じ電位に設定されるとともに、互いに並列に設けられている容量素子C,CがCcodeのc1に基づいて互いに同じ電位に設定されることで、第4動作例は第1動作例と等価なものとなる。
【0054】
図6は、AD変換器1Aの第5動作例を説明する表である。前述の第4動作例の場合と同様に、この第5動作例でも、N=8とし、8個の容量素子C~Cそれぞれの容量値をCとする。
【0055】
この第5動作例において、逐次比較の最初のステップ1では、制御部30AからDA変換部10AにCcode[1,0,0]が与えられることで、容量素子Cは第1基準電位VREFHに接続され、容量素子Cは第2基準電位VREFLに接続され、他の容量素子はオープン状態とされる。すなわち、第1基準電位VREFHに接続される容量素子の容量値の総和はCとなり、第2基準電位VREFLに接続される容量素子の容量値の総和はCとなる。したがって、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(VREFH+VREFL)/2となる。
【0056】
ステップ2のケース1では、制御部30AからDA変換部10AにCcode[1,1,0]が与えられることで、3個の容量素子C,C,Cは第1基準電位VREFHに接続され、1個の容量素子Cは第2基準電位VREFLに接続され、他の容量素子はオープン状態とされる。すなわち、第1基準電位VREFHに接続される容量素子の容量値の総和は3Cとなり、第2基準電位VREFLに接続される容量素子の容量値の総和はCとなる。したがって、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(3VREFH+VREFL)/4となる。
【0057】
ステップ2のケース2では、制御部30AからDA変換部10AにCcode[0,1,0]が与えられることで、1個の容量素子Cは第1基準電位VREFHに接続され、3個の容量素子C,C,Cは第2基準電位VREFLに接続され、他の容量素子はオープン状態とされる。すなわち、第1基準電位VREFHに接続される容量素子の容量値の総和はCとなり、第2基準電位VREFLに接続される容量素子の容量値の総和は3Cとなる。したがって、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(VREFH+3VREFL)/4となる。
【0058】
ステップ3のケース1-1では、制御部30AからDA変換部10AにCcode[1,1,1]が与えられることで、7個の容量素子C,C,C,C,C,C,Cは第1基準電位VREFHに接続され、1個の容量素子Cは第2基準電位VREFLに接続される。すなわち、第1基準電位VREFHに接続される容量素子の容量値の総和は7Cとなり、第2基準電位VREFLに接続される容量素子の容量値の総和はCとなる。したがって、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(7VREFH+VREFL)/8となる。
【0059】
ステップ3のケース1-2では、制御部30AからDA変換部10AにCcode[1,0,1]が与えられることで、5個の容量素子C,C,C,C,Cは第1基準電位VREFHに接続され、3個の容量素子C,C,Cは第2基準電位VREFLに接続される。すなわち、第1基準電位VREFHに接続される容量素子の容量値の総和は5Cとなり、第2基準電位VREFLに接続される容量素子の容量値の総和は3Cとなる。したがって、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(5VREFH+3VREFL)/8となる。
【0060】
ステップ3のケース2-1では、制御部30AからDA変換部10AにCcode[0,1,1]が与えられることで、3個の容量素子C,C,Cは第1基準電位VREFHに接続され、5個の容量素子C,C,C,C,Cは第2基準電位VREFLに接続される。すなわち、第1基準電位VREFHに接続される容量素子の容量値の総和は3Cとなり、第2基準電位VREFLに接続される容量素子の容量値の総和は5Cとなる。したがって、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(3VREFH+5VREFL)/8となる。
【0061】
ステップ3のケース2-2では、制御部30AからDA変換部10AにCcode[0,0,1]が与えられることで、1個の容量素子Cは第1基準電位VREFHに接続され、7個の容量素子C,C,C,C,C,C,Cは第2基準電位VREFLに接続される。すなわち、第1基準電位VREFHに接続される容量素子の容量値の総和はCとなり、第2基準電位VREFLに接続される容量素子の容量値の総和は7Cとなる。したがって、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(VREFH+7VREFL)/8となる。
【0062】
このように、各ステップ・各ケースにおいて第5動作例のDA変換部10Aから出力されるデータCTOPは、前述した第1~第4の動作例の場合にDA変換部10Aから出力されるデータCTOPと同じ値となる。この第5動作例では、逐次比較のステップ1およびステップ2において、DA変換部10Aの何れかの容量素子の第1端をオープンとするよう指示する制御信号をDA変換部10Aへ出力する。このようにすることで、逐次比較の際に用いられる容量素子の容量値の総和を小さくすることができるので、キックバックを小さくすることができる。そして、逐次比較の各ステップの期間を短縮することができて、AD変換器の高速化が可能となる。
【0063】
図7は、AD変換器1Aの第6動作例を説明する表である。前述の第4および第5の各動作例の場合と同様に、この第6動作例でも、N=8とし、8個の容量素子C~Cそれぞれの容量値をCとする。ただし、前述の第4および第5の各動作例では、バイナリコードで表されたCcode[c2,c1,c0]に基づいて各容量素子の接続が決められていたが、この第6動作例では、Ccode[c2,c1,c0]をデコードして得られるサーモメータコードに基づいて各容量素子の接続が決められる。
【0064】
この第6動作例において、逐次比較の最初のステップ1では、4個の容量素子C~Cは第1基準電位VREFHに接続され、4個の容量素子C~Cは第2基準電位VREFLに接続される。したがって、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(VREFH+VREFL)/2となる。
【0065】
ステップ2のケース1では、6個の容量素子C~Cは第1基準電位VREFHに接続され、2個の容量素子C,Cは第2基準電位VREFLに接続される。したがって、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(3VREFH+VREFL)/4となる。
【0066】
ステップ2のケース2では、2個の容量素子C,Cは第1基準電位VREFHに接続され、6個の容量素子C~Cは第2基準電位VREFLに接続される。したがって、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(VREFH+3VREFL)/4となる。
【0067】
ステップ3のケース1-1では、7個の容量素子C~Cは第1基準電位VREFHに接続され、1個の容量素子Cは第2基準電位VREFLに接続される。したがって、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(7VREFH+VREFL)/8となる。
【0068】
ステップ3のケース1-2では、5個の容量素子C~Cは第1基準電位VREFHに接続され、3個の容量素子C~Cは第2基準電位VREFLに接続される。したがって、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(5VREFH+3VREFL)/8となる。
【0069】
ステップ3のケース2-1では、3個の容量素子C~Cは第1基準電位VREFHに接続され、5個の容量素子C~Cは第2基準電位VREFLに接続される。したがって、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(3VREFH+5VREFL)/8となる。
【0070】
ステップ3のケース2-2では、1個の容量素子Cは第1基準電位VREFHに接続され、7個の容量素子C~Cは第2基準電位VREFLに接続される。したがって、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(VREFH+7VREFL)/8となる。
【0071】
このように、各ステップ・各ケースにおいて第6動作例のDA変換部10Aから出力されるデータCTOPは、前述した第1~第5の動作例の場合にDA変換部10Aから出力されるデータCTOPと同じ値となる。
【0072】
図8は、AD変換器1Aの第7動作例を説明する表である。前述の第4~第6の各動作例の場合と同様に、この第7動作例でも、N=8とし、8個の容量素子C~Cそれぞれの容量値をCとする。また、前述の第6動作例の場合と同様に、この第7動作例でも、Ccode[c2,c1,c0]をデコードして得られるサーモメータコードに基づいて各容量素子の接続が決められる。
【0073】
この第7動作例において、逐次比較の最初のステップ1では、1個の容量素子Cは第1基準電位VREFHに接続され、1個の容量素子Cは第2基準電位VREFLに接続され、他の容量素子はオープン状態とされる。したがって、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(VREFH+VREFL)/2となる。
【0074】
ステップ2のケース1では、3個の容量素子C,C,Cは第1基準電位VREFHに接続され、1個の容量素子Cは第2基準電位VREFLに接続され、他の容量素子はオープン状態とされる。したがって、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(3VREFH+VREFL)/4となる。
【0075】
ステップ2のケース2では、1個の容量素子Cは第1基準電位VREFHに接続され、3個の容量素子C,C,Cは第2基準電位VREFLに接続され、他の容量素子はオープン状態とされる。したがって、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(VREFH+3VREFL)/4となる。
【0076】
ステップ3のケース1-1では、7個の容量素子C~Cは第1基準電位VREFHに接続され、1個の容量素子Cは第2基準電位VREFLに接続される。したがって、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(7VREFH+VREFL)/8となる。
【0077】
ステップ3のケース1-2では、5個の容量素子C~Cは第1基準電位VREFHに接続され、3個の容量素子C~Cは第2基準電位VREFLに接続される。したがって、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(5VREFH+3VREFL)/8となる。
【0078】
ステップ3のケース2-1では、3個の容量素子C~Cは第1基準電位VREFHに接続され、5個の容量素子C~Cは第2基準電位VREFLに接続される。したがって、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(3VREFH+5VREFL)/8となる。
【0079】
ステップ3のケース2-2では、1個の容量素子Cは第1基準電位VREFHに接続され、7個の容量素子C~Cは第2基準電位VREFLに接続される。したがって、DA変換部10Aから出力されるデータCTOPは(VREFH+7VREFL)/8となる。
【0080】
このように、各ステップ・各ケースにおいて第7動作例のDA変換部10Aから出力されるデータCTOPは、前述した第1~第6の動作例の場合にDA変換部10Aから出力されるデータCTOPと同じ値となる。この第7動作例では、逐次比較のステップ1およびステップ2において、DA変換部10Aの何れかの容量素子の第1端をオープンとするよう指示する制御信号をDA変換部10Aへ出力する。このようにすることで、逐次比較の際に用いられる容量素子の容量値の総和を小さくすることができるので、キックバックを小さくすることができる。そして、逐次比較の各ステップの期間を短縮することができて、AD変換器の高速化が可能となる。
【0081】
(第2構成例)
図9は、AD変換器1Bの構成を示す図である。この図に示される第2構成例のAD変換器1Bは、DA変換部10B、比較部20、制御部30Bおよびスイッチ40を備える。AD変換器1Bは、入力アナログデータAinに応じたデジタルデータを制御部30Bから出力する。
【0082】
DA変換部10Bは、N個の容量素子C~CN-1およびN個のスイッチSW~SWN-1を含む。N個のスイッチSW~SWN-1は、制御部30Bから出力される制御信号に基づいて設定される。各容量素子Cの第1端は、対応するスイッチSWと接続されている。各容量素子Cの第1端は、スイッチSWの設定により、高電位の第1基準電位VREFH、低電位の第2基準電位VREFLおよびオープンの何れかとされる。各容量素子Cの第2端は、共通に接続されて出力端を構成している。DA変換部10Bは、入力アナログデータAinをN個の容量素子C~CN-1によりホールドした後、N個のスイッチSW~SWN-1それぞれの設定に応じたデータCTOPを比較部20へ出力する。
【0083】
なお、Nは2以上の整数であり、nは0以上(N-1)以下の整数である。また、N個の容量素子C~CN-1のうち何れかの容量素子の第1端は一定電位とされる場合があり、その場合には、その容量素子に対応するスイッチは不要である。
【0084】
比較部20は、2つの入力端それぞれに入力されるデータを大小比較して、その比較結果を表す比較信号を制御部30Bへ出力する。第2構成例では、比較部20は、DA変換部10Bから出力されたデータCTOPを一方の入力端に入力し、基準レベルVCMを他方の入力端に入力する。基準レベルVCMは、例えば、第1基準電位VREFHと第2基準電位VREFLとの平均値である。または、基準レベルVCMは、比較部20が最も高性能(例えば、高感度、高SN比)に動作することができる値に設定される場合もある。スイッチ40は、比較部20の2つの入力端の間に設けられている。
【0085】
制御部30Bは、比較部20から出力された比較信号に基づいて、逐次比較のステップ毎に、DA変換部10Bから出力されるデータCTOPと入力アナログデータAinとの差が小さくなるように制御信号を生成して、その制御信号をDA変換部10Bへ出力する。
【0086】
このAD変換器1Bでは、初期化ステップにおいて、スイッチ40がオン状態となってCTOPがVCMに初期化されるとともに、各スイッチSWの設定によって各容量素子Cに入力アナログデータAinがホールドされる。AD変換器1Bは、この初期化ステップの後の逐次比較の各ステップでは、前述したAD変換器1Aの場合と同じ動作が可能である。
【0087】
制御部30Bは、DA変換部10Bの各スイッチの設定を逐次比較のステップ毎に制御する際に、逐次比較の何れかステップにおいて、DA変換部10Bの何れかの容量素子の第1端をオープンとするよう指示する制御信号をDA変換部10Bへ出力する。このようにすることで、逐次比較の際に用いられる容量素子の容量値の総和を小さくすることができるので、キックバックを小さくすることができる。そして、逐次比較の各ステップの期間を短縮することができて、AD変換器の高速化が可能となる。
【0088】
制御部30Bは、DA変換部10Bの各スイッチの設定を制御する際に、逐次比較の少なくとも最初のステップ1において、DA変換部10Bの何れかの容量素子の第1端をオープンとするよう指示する制御信号をDA変換部10Bへ出力するのが好適である。制御部30Bは、DA変換部10Bの各スイッチの設定を制御する際に、逐次比較のステップが進むに従って、DA変換部10Bの複数の容量素子のうち第1端を第1基準電位VREFHまたは第2基準電位VREFLとする容量素子の容量値の総和を次第に増加させるよう指示する制御信号をDA変換部10Bへ出力するのが好適である。また、制御部30Bは、逐次比較の最後のステップにおいて、DA変換部10Bの全ての容量素子の第1端を第1基準電位VREFHまたは第2基準電位VREFLとするよう指示する制御信号をDA変換部10Bへ出力するのが好適である。
【0089】
図10は、AD変換器1Bの各スイッチSWの回路例を示す図である。各スイッチSWは、PMOSトランジスタM1、NMOSトランジスタM2、PMOSトランジスタM3およびNMOSトランジスタM4を含む。これらのMOSトランジスタは、ゲート電圧の大きさに応じてソースとドレインとの間の導通/非導通が設定されるスイッチとして動作する。
【0090】
PMOSトランジスタM1は、第1基準電位VREFHを供給する線と容量素子Cとの間に設けられている。PMOSトランジスタM1は、ゲート回路G1から出力される信号をゲートに入力して、そのゲート電圧に基づいてオン/オフの設定が制御される。
【0091】
NMOSトランジスタM2は、第2基準電位VREFLを供給する線と容量素子Cとの間に設けられている。NMOSトランジスタM2は、ゲート回路G2から出力される信号に基づいてオン/オフの設定が制御される。
【0092】
PMOSトランジスタM3およびNMOSトランジスタM4は、入力アナログデータAinが入力される線と容量素子Cとの間に互いに並列的に設けられている。PMOSトランジスタM3は、信号ASWnに基づいてオン/オフの設定が制御される。NMOSトランジスタM4は、信号ASWpに基づいてオン/オフの設定が制御される。
【0093】
ゲート回路G1は、信号Cntlおよび信号ACTpを入力して、これら2つの信号の値の否定論理積の値を有する信号をPMOSトランジスタM1のゲートに与える。ゲート回路G2は、信号Cntlおよび信号ACTnを入力して、これら2つの信号の値の否定論理和の値を有する信号をNMOSトランジスタM2のゲートに与える。ゲート回路G1,G2は、DA変換部10Bに設けられるのが好適である。
【0094】
Cntlは、バイナリコードであるCcodeの何れかのビット、または、Ccodeをデコードして得られるサーモメータコードの何れかのビットである。ACTp,ACTnは互いに相補的な信号であり、一方がハイレベルであるとき他方はローレベルである。ASWp,ASWnは互いに相補的な信号であり、一方がハイレベルであるとき他方はローレベルである。
【0095】
ASWpがハイレベルであるとき、スイッチ40を閉じることに依り、各容量素子Cに入力アナログデータAinがホールドされる。ASWp およびACTpの双方がローレベルであるとき、容量素子Cはオープン状態となる。ASWp がローレベルであって、ACTpがハイレベルであるとき、容量素子Cは、Cntlの値に応じて第1基準電位VREFHまたは第2基準電位VREFLに接続される。ACT信号を複数に分けることで、図10に示す回路には修正を加えずに、一部の容量素子のみ第1基準電位VREFHまたは第2基準電位VREFLにつなぎ、残りをオープン状態にする制御を実現できる。
【0096】
図11は、AD変換器1Bの各スイッチSWの動作を説明するタイミングチャートである。この図において、RSTは、スイッチ40のオン/オフを設定する為の信号である。
【0097】
ACTpがハイレベルからローレベルに転じた後に、ASWpはローレベルからハイレベルに転じ、RSTもローレベルからハイレベルに転じる。RSTがハイレベルからローレベルに転じた後に、ASWpはハイレベルからローレベルに転じる。初期化ステップにおいて、RSTおよびASWpがハイレベルである期間に、スイッチ40がオン状態となって、CTOPがVCMに初期化され、各容量素子Cに入力アナログデータAinがホールドされる。
【0098】
逐次比較の各ステップは、ASWpがハイレベルからローレベルに転じた後に始まる。スイッチSWに対応する容量素子Cが第1基準電位VREFHまたは第2基準電位VREFLに接続されるステップでは、そのスイッチSWに与えられるACTpはハイレベルとなる。スイッチSWに対応する容量素子Cがオープン状態とされるステップでは、そのスイッチSWに与えられるACTpはローレベルのままとなる。
【0099】
なお、このようなスイッチ動作により、入力アナログデータAinが入力される線と基準電位供給線との間に貫通電流が流れることを回避することができ、また、各容量素子Cにホールドされた入力アナログデータAinがリークすることを回避することができる。
【0100】
(第3構成例)
図12は、AD変換器1Cの構成を示す図である。この図に示される第3構成例のAD変換器1Cは、第1DA変換部11、第2DA変換部12、比較部20、制御部30C、スイッチ41およびスイッチ42を備える。AD変換器1Cは、差動のアナログデータ(Ain1,Ain2)を入力し、第1入力アナログデータAin1と第2入力アナログデータAin2との差に応じたデジタルデータを制御部30Cから出力する。
【0101】
この第3構成例における第1DA変換部11および第2DA変換部12は、前述した第2構成例におけるDA変換部10Bと同じ構成を有する。第1DA変換部11は、第1入力アナログデータAin1を入力する。第2DA変換部12は、第2入力アナログデータAin2を入力する。
【0102】
第1DA変換部11のN個のスイッチSW~SWN-1は、制御部30Cから出力される第1制御信号に基づいて設定される。第1DA変換部11は、第1入力アナログデータAin1をN個の容量素子C~CN-1によりホールドした後、N個のスイッチSW~SWN-1それぞれの設定に応じた第1データCTOP1を比較部20へ出力する。
【0103】
第2DA変換部12のN個のスイッチSW~SWN-1は、制御部30Cから出力される第2制御信号に基づいて設定される。第2DA変換部12は、第2入力アナログデータAin2をN個の容量素子C~CN-1によりホールドした後、N個のスイッチSW~SWN-1それぞれの設定に応じた第2データCTOP2を比較部20へ出力する。
【0104】
なお、Nは2以上の整数であり、nは0以上(N-1)以下の整数である。また、第1DA変換部11および第2DA変換部12それぞれにおいて、N個の容量素子C~CN-1のうち何れかの容量素子の第1端は一定電位とされる場合があり、その場合には、その容量素子に対応するスイッチは不要である。
【0105】
比較部20は、2つの入力端それぞれに入力されるデータを大小比較して、その比較結果を表す比較信号を制御部30Cへ出力する。第3構成例では、比較部20は、第1DA変換部11から出力された第1データCTOP1を一方の入力端に入力し、第2DA変換部12から出力された第2データCTOP2を他方の入力端に入力する。スイッチ41は、比較部20の一方の入力端と基準レベルVCM供給線との間に設けられている。スイッチ42は、比較部20の他方の入力端と基準レベルVCM供給線との間に設けられている。基準レベルVCMは、例えば、第1基準電位VREFHと第2基準電位VREFLとの平均値である。または、基準レベルVCMは、比較部20が最も高性能(例えば、高感度、高SN比)に動作することができる値に設定される場合もある。
【0106】
制御部30Cは、比較部20から出力された比較信号に基づいて、逐次比較のステップ毎に、第1データCTOP1と第2データCTOP2との差が小さくなるように第1制御信号および第2制御信号を生成して、第1制御信号を第1DA変換部11へ出力し、第2制御信号を第2DA変換部12へ出力する。
【0107】
このAD変換器1Cでは、初期化ステップにおいて、スイッチ41,42の双方がオン状態となってCTOP1,CTOP2の双方がVCMに初期化されるとともに、第1DA変換部11において各スイッチSWの設定によって各容量素子Cに第1入力アナログデータAin1がホールドされ、第2DA変換部12において各スイッチSWの設定によって各容量素子Cに第2入力アナログデータAin2がホールドされる。AD変換器1Cは、この初期化ステップの後の逐次比較の各ステップでは、例えば次のような動作をする。
【0108】
図13は、AD変換器1Cの第1動作例を説明する表である。図13(a)は、AD変換器1Cの第1DA変換部11の動作を示す。図13(b)は、AD変換器1Cの第2DA変換部12の動作を示す。この第1動作例では、N=8とし、8個の容量素子C~Cそれぞれの容量値をCとする。また、この第1動作例では、Ccode[c2,c1,c0]をデコードして得られるサーモメータコードに基づいて各容量素子の接続が決められる。制御部30Cから第2DA変換部12に与えられるCcode2は、制御部30Cから第1DA変換部11に与えられるCcode1の各ビットの極性を反転したものである。
【0109】
この第1動作例では、逐次比較の各ステップにおいて、8個の容量素子C~Cの何れも、第1基準電位VREFHまたは第2基準電位VREFLに接続される。第1DA変換部11の動作は、前述の図7で説明したAD変換器1Aの第6動作例と同様である。第2DA変換部12から出力される第2データCTOP2は、第1DA変換部11から出力される第2データCTOP1に対し2の補数となる。
【0110】
図14は、AD変換器1Cの第2動作例を説明する表である。図14(a)は、AD変換器1Cの第1DA変換部11の動作を示す。図14(b)は、AD変換器1Cの第2DA変換部12の動作を示す。前述の第1動作例の場合と同様に、この第2動作例でも、N=8とし、8個の容量素子C~Cそれぞれの容量値をCとする。また、前述の第1動作例の場合と同様に、この第2動作例でも、Ccode[c2,c1,c0]をデコードして得られるサーモメータコードに基づいて各容量素子の接続が決められる。制御部30Cから第2DA変換部12に与えられるCcode2は、制御部30Cから第1DA変換部11に与えられるCcode1の各ビットの極性を反転したものである。
【0111】
この第2動作例では、逐次比較の各ステップにおいて、8個の容量素子C~Cは、第1基準電位VREFH、第2基準電位VREFLおよびオープン状態の何れかとされる。第1DA変換部11の動作は、前述の図8で説明したAD変換器1Aの第7動作例と同様である。第2DA変換部12から出力される第2データCTOP2は、第1DA変換部11から出力される第2データCTOP1に対し2の補数となる。
【0112】
このように、制御部30Cは、第1DA変換部11および第2DA変換部12それぞれの各スイッチの設定を逐次比較のステップ毎に制御する際に、逐次比較の何れかステップにおいて、第1DA変換部11および第2DA変換部12それぞれの何れかの容量素子の第1端をオープンとするよう指示する第1制御信号および第2制御信号を出力する。このようにすることで、逐次比較の際に用いられる容量素子の容量値の総和を小さくすることができるので、キックバックを小さくすることができる。そして、逐次比較の各ステップの期間を短縮することができて、AD変換器の高速化が可能となる。
【0113】
キックバックは、逐次比較の最初のステップでは大きく、ステップが進むに従って小さくなっていく。したがって、制御部30Cは、第1DA変換部11および第2DA変換部12それぞれの各スイッチの設定を制御する際に、逐次比較の少なくとも最初のステップ1において、第1DA変換部11および第2DA変換部12それぞれの何れかの容量素子の第1端をオープンとするよう指示する第1制御信号および第2制御信号を出力するのが好適である。制御部30Cは、第1DA変換部11および第2DA変換部12それぞれの各スイッチの設定を制御する際に、逐次比較のステップが進むに従って、第1DA変換部11および第2DA変換部12それぞれの複数の容量素子のうち第1端を第1基準電位VREFHまたは第2基準電位VREFLとする容量素子の容量値の総和を次第に増加させるよう指示する第1制御信号および第2制御信号を出力するのが好適である。また、制御部30Cは、逐次比較の最後のステップにおいて、または、最後のステップまでに、第1DA変換部11および第2DA変換部12それぞれの全ての容量素子の第1端を第1基準電位VREFHまたは第2基準電位VREFLとするよう指示する第1制御信号および第2制御信号を出力するのが好適である。
【0114】
(変形例)
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。本発明の考え方は逐次比較型AD変換器全般に適用できる。例えば、逐次比較のステップの途中または最後に冗長ステップを挿入してもよい。
【0115】
上述した第2および第3の構成例のAD変換器は、DA変換部の各容量素子の第2端が比較部の入力端に接続されて、DA変換部の各容量素子の第1端に入力アナログデータAinが入力されるボトムプレートサンプリングの構成であった。AD変換器は、比較部の入力端に接続されるDA変換部の各容量素子の第2端に入力アナログデータが入力されるトッププレートサンプリングの構成であってもよい。
【符号の説明】
【0116】
1A~1C…AD変換器、10A,10B…DA変換部、11…第1DA変換部、12…第2DA変換部、20…比較部、30A~30C…制御部、40~42…スイッチ、C~CN-1…容量素子、SW~SWN-1…スイッチ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14