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  • 特許-フィルタ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-31
(45)【発行日】2023-06-08
(54)【発明の名称】フィルタ
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/20 20060101AFI20230601BHJP
   B01J 20/22 20060101ALI20230601BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20230601BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20230601BHJP
   A61L 9/014 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
B01J20/20 B
B01J20/22 A
B01J20/28 Z
A61L9/01 K
A61L9/014
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018213965
(22)【出願日】2018-11-14
(65)【公開番号】P2020078787
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-10-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤木 博規
(72)【発明者】
【氏名】染谷 佳之
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-166167(JP,A)
【文献】特開2002-126511(JP,A)
【文献】特開2002-219163(JP,A)
【文献】特開2005-315618(JP,A)
【文献】特開2001-219022(JP,A)
【文献】特開平09-239214(JP,A)
【文献】特開2005-034693(JP,A)
【文献】特開2003-013390(JP,A)
【文献】特開2017-213118(JP,A)
【文献】特開2008-017983(JP,A)
【文献】特開2003-236374(JP,A)
【文献】特開平03-161050(JP,A)
【文献】特開平05-049922(JP,A)
【文献】特開2002-292287(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00- 9/22
B01J 20/00- 20/28
B01J 20/30- 20/34
B01D 53/34- 53/73
B01D 53/74- 53/85
B01D 53/92
B01D 53/96
B01D 53/02- 53/12
B01D 39/00- 41/04
C01B 32/00- 32/991
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波状シートと平面シートを組み合わせてなるフィルタであって、
前記波状シート及び前記平面シートが、活性炭繊維と、粒状または粉末状活性炭と、フィブリル化繊維とが互いに混合した状態で含有される混抄シートであり、
前記混抄シート中における活性炭繊維の質量(g/m)が5g/m以上であり、
前記混抄シート中における前記活性炭繊維の質量(g/m)と前記粒状又は粉末状活性炭の質量(g/m)との含有比率(活性炭繊維の質量/粒状又は粉末状活性炭の質量)が0.05~0.35であり、
前記混抄シートが、FMVSS302燃焼試験における燃焼距離が51mm以下である、フィルタ。
【請求項2】
波状シートと平面シートを組み合わせてなるフィルタであって、
前記波状シート及び前記平面シートが、活性炭繊維と、アルデヒド吸着材を担持していない粒状または粉末状活性炭と、フィブリル化繊維とが互いに混合した状態で含有される混抄シートであり、
前記混抄シート中における活性炭繊維の質量(g/m)が5g/m以上である、フィルタ。
【請求項3】
前記混抄シート中における活性炭繊維の質量(g/m)と前記粒状又は粉末状活性炭の質量(g/m)との含有比率(活性炭繊維の質量/粒状又は粉末状活性炭の質量)が0.05~0.35である、請求項に記載のフィルタ。
【請求項4】
前記混抄シート中における粒状又は粉末状活性炭の質量(g/m)が50g/m以上である、請求項1~のいずれか1項に記載のフィルタ。
【請求項5】
前記混抄シート中における、前記活性炭繊維の質量(g/m)、前記粒状又は粉末状活性炭の質量(g/m)及び前記フィブリル化繊維の質量(g/m)の合計100質量部に対する、前記活性炭繊維の質量(g/m)と前記粒状又は粉末状活性炭の質量(g/m)の合計質量の割合が60~85質量部である、請求項1~のいずれか1項に記載のフィルタ。
【請求項6】
前記フィブリル化繊維が非溶融性である、請求項1~のいずれか1項に記載のフィルタ。
【請求項7】
前記混抄シートが、芳香族アミン化合物、脂環式アミン化合物、複素環式アミン化合物及び脂肪族アミン化合物からなる群より選ばれる1種以上のアルデヒド吸着剤を含む、請求項1~のいずれか1項に記載のフィルタ。
【請求項8】
前記活性炭繊維の引張強度(GPa)が0.25GPa以上である、請求項1~のいずれか1項に記載のフィルタ。
【請求項9】
前記混抄シートの比表面積が400~800m/gである、請求項1~のいずれか1項に記載のフィルタ。
【請求項10】
前記混抄シートの坪量が60~120g/mである、請求項1~のいずれか1項に記載のフィルタ。
【請求項11】
前記混抄シートの厚さが0.2~0.6mmである、請求項1~10のいずれか1項に記載のフィルタ。
【請求項12】
前記混抄シートが、FMVSS302燃焼試験における燃焼距離が51mm以下である、請求項1~11のいずれか1項に記載のフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混抄シートを備えたフィルタに関し、特に、住宅内等における揮発性有機化合物の除去に好適な、活性炭を含むフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、空気浄化に関する関心が高まっており、室内等において、より悪臭の少ない環境が求められている。また、住環境における揮発性有機化合物(VOC)への対策も求められている。
【0003】
例えば、住宅においては、建材、塗料、接着剤等から発生する、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等のアルデヒド類ガスをはじめとする揮発性有機化合物や、微細な埃、浮遊細菌等の汚染物質が室内空気を汚染しており、このため、鼻、目、喉の乾燥と痛み、くしゃみ、鼻詰まり、疲労等のようなシックハウス症候群(sick building syndrome)が発生するとの報告がなされている。
【0004】
このような住環境における悪臭を除去する脱臭シートが知られている。例えば、多孔質体を含有した有機繊維材料からなり、かつ、目付が30g/m以上であるシート基材100重量部に対して、両面合わせて5.0~50重量部のトロメタミン及び1.0~15重量部のリン酸が添着されているシート、及びそのシートが備えられたフィルタが知られている(例えば、特許文献1参照。)。該シート及びフィルタは、低級脂肪族アルデヒドに対して高い吸着性能を有し、吸着容量の経時的な低下が少ないとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-127812
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されているシート及びフィルタは、トルエンの吸着性能、及び難燃性に劣る場合があることを知得した。特に難燃性に関しては、性能向上のためには水酸化アルミニウム、メラミン等の非水溶性難燃剤や含窒素リン系難燃剤等を添加する必要があり、これら難燃剤を添加させると、シート及びフィルタ中の多孔質体の質量割合や細孔容積が低下し、トルエンの吸着性能が低下してしまう。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題を解決し、トルエンの吸着性能及び難燃性能に優れるフィルタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく、本発明者が検討したところ、活性炭繊維が難燃性能を付与し得ることを知得し、これを難燃材成分として含有させることで、トルエン吸着性能と難燃性能の両立を図れることを突き止めた。すなわち、活性炭繊維を難燃材成分として含有することにより、活性炭繊維自体もトルエン吸着性能を有することから、前述したような難燃成分を含有することによるトルエン吸着性能の低下を極力抑制することができ、上記トルエン吸着性能と難燃性能の両立を図れることを知得した。
【0009】
すなわち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1.波状シートと平面シートを組み合わせてなるフィルタであって、前記波状シート及び前記平面シートが、活性炭繊維と、粒状または粉末状活性炭と、フィブリル化繊維とを含有する混抄シートであり、前記混抄シート中における活性炭繊維の質量(g/m)が5g/m以上である、フィルタ。
項2.前記混抄シート中における粒状又は粉末状活性炭の質量(g/m)が50g/m以上である、項1に記載のフィルタ。
項3.前記混抄シート中における活性炭繊維の質量(g/m)と前記粒状又は粉末状活性炭の質量(g/m)との含有比率(活性炭繊維の質量/粒状又は粉末状活性炭の質量)が0.05~0.35である、項1又は2に記載のフィルタ。
項4.前記混抄シート中における、前記活性炭繊維の質量(g/m)、前記粒状又は粉末状活性炭の質量(g/m)及び前記フィブリル化繊維の質量(g/m)の合計100質量部に対する、前記活性炭繊維の質量(g/m)と前記粒状又は粉末状活性炭の質量(g/m)の合計質量の割合が60~85質量部である、項1~3のいずれか1項に記載のフィルタ。
項5.前記フィブリル化繊維が非溶融性である、項1~4のいずれか1項に記載のフィルタ。
項6.前記混抄シートが、芳香族アミン化合物、脂環式アミン化合物、複素環式アミン化合物及び脂肪族アミン化合物からなる群より選ばれる1種以上のアルデヒド吸着剤を含む、項1~5のいずれか1項に記載のフィルタ。
項7.前記活性炭繊維の引張強度(GPa)が0.25GPa以上である、項1~6のいずれか1項に記載のフィルタ。
項8.前記混抄シートの比表面積が400~800m/gである、項1~7のいずれか1項に記載のフィルタ。
項9.前記混抄シートの坪量が60~120g/mである、項1~8のいずれか1項に記載のフィルタ。
項10.前記混抄シートの厚さが0.2~0.6mmである、項1~9のいずれか1項に記載のフィルタ。
項11.前記混抄シートが、FMVSS302燃焼試験における燃焼距離が51mm以下である、項1~10のいずれか1項に記載のフィルタ。
【発明の効果】
【0010】
本発明のフィルタによれば、波状シートと平面シートを組み合わせてなるフィルタであって、前記波状シート及び前記平面シートが、活性炭繊維と、粒状または粉末状活性炭と、フィブリル化繊維とを含有する混抄シートであり、前記混抄シート中における活性炭繊維の質量(g/m)が5g/m以上であることから、トルエン吸着性能と難燃性能との両立を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(a)は本発明のフィルタの一実施態様を示す模式的斜視図であり,(b)は、ピッチの形状(ピッチサイズ、ピッチ高さ)の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のフィルタは、波状シートと平面シートを組み合わせてなるフィルタであって、前記波状シート及び前記平面シートが、活性炭繊維と、粒状または粉末状活性炭と、フィブリル化繊維とを含有する混抄シートであり、前記混抄シート中における活性炭繊維の質量(g/m)が5g/m以上であることを特徴とする。
【0013】
<フィルタの形状及び構成>
本発明の混抄シートからなるフィルタは、波状シートと平面シートを組み合わせてなる。図1(a)は、本発明のフィルタの一実施態様を示す模式的斜視図である。図1に示すように、本発明のフィルタ1は、波状シート2と、平面シート3を組み合わせてなる。図1に示す態様においては、波状シート2と平面シート3とが積層されたユニットが複数積層されてなる。波状シート2は、平面シートを、コルゲート加工機など従来公知の加工方法を用いて製造できる。そして、波状シート2と、平面シート3を、順に接着剤を介して接合して積層し、本発明のフィルタとする。波状シート2と平面シート3との接着は、波型シート2の稜線部に沿って、該稜線部の一部又は全長にわたって、接着剤が塗布されて接着されたものとすることができる。
【0014】
波状シートと平面シートを積層する際に使用される接着剤は特に限定されず、有機系の接着剤又は無機系の接着剤が挙げられる。有機系の接着剤としては、澱粉系、アクリル系、アクリル-スチレン系、酢酸ビニル系、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂系、エポキシ系が挙げられる。無機系の接着剤としては、水ガラス、コロイダルシリカ、珪酸カルシウム、アルミナゾル、シリコーンオイル、金属アルコキシドが挙げられる。
【0015】
また、図1に示すように、本発明の混抄シートからなるフィルタ1は、上部壁5と、下部壁6とを備えることができ、必要に応じて、側部壁4も備えることができる。側部壁4、上部壁5、下部壁6としては特に制限されないが、シート状のものが使用でき、波状シート2及び平面シート3に用いるシートと同様、活性炭繊維と、粒状または粉末状活性炭と、フィブリル化繊維とを含有する混抄シートとすることが好ましい。また、側部壁4、上部壁5又は下部壁6と、波状シート2及び/又は平面状シート3との接合としては、波状シート2と平面シート3との接合と同様、接着剤による接着が挙げられる。
【0016】
フィルタ全体の質量に対する上記接着剤の含有量としては、フィルタの成型性とトルエン吸着性能とをより両立する観点から、5~30質量%が好ましく、10~25質量%がより好ましい。
【0017】
図1(b)は、波状シート2のピッチの形状(ピッチ幅、ピッチ高さ)の説明図である。波状シート2のピッチの形状は特に限定されないが、ピッチ幅2~10mm、ピッチ高さ1~6mmが好ましい。上記範囲とすることにより、トルエン吸着性能と、流体の圧力損失の低減と、をより両立しやすくなる。以下、波状シート2及び平面シート3を構成する混抄シートについて詳述する。
【0018】
本発明のフィルタを構成する波状シート及び前記平面シートは、活性炭繊維と、粒状または粉末状活性炭と、フィブリル化繊維とを含有する混抄シートである。
【0019】
<活性炭繊維>
本発明のフィルタに用いる混抄シートは、活性炭繊維を含有する。本発明のフィルタに用いる混抄シートにおいて、活性炭繊維は、トルエン等揮発性有機化合物の吸着成分として寄与することに加え、シートに難燃性を与える難燃材成分としても寄与する。すなわち、活性炭繊維は、活性炭が不融化処理、賦活処理された燃えにくい炭素材料であることに加え、粒状又は粉末状活性炭に比して嵩密度が相当程度低い。そして、嵩密度が低いことにより、シート内に占める体積又は面積が大きくなり、また、特に燃え易い成分であるフィブリル化繊維等と活性炭シートとして絡み合うことで、活性炭繊維の質量を5g/m以上として初めてシートに対し効果的に難燃性能を付与すると考えられる。
【0020】
活性炭繊維の種類としては、例えば、ポリアクリロニトリル系、レーヨン系、フェノール樹脂系、石炭ピッチ系、石油ピッチ系等の繊維を不融化し、所望により炭化処理した後、水蒸気、二酸化炭素を含有する雰囲気中、所定温度で所定時間保持することによって賦活することにより製造される任意の活性炭繊維を採用することができる。難燃性能をより一層向上させる観点から、これらの中でも、石炭ピッチ系、石油ピッチ系、ポリアクリロニトリル系活性炭繊維が好ましい。活性炭繊維は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。活性炭繊維における炭素原子含有量としては、フィルタに用いる混抄シートの難燃性能をさらに高める観点から、85質量%以上が好ましく、90質量%以上が好ましい。また、活性炭繊維における酸素原子含有量としては、5質量%以下が挙げられ、3質量%以下が挙げられる。このような組成とするには、炭素原子量が多く、酸素原子量が少ない原料とすることが挙げられ、例えば、石炭ピッチ、石油ピッチ又はポリアクリロニトリルを原料とすることが挙げられる。なお、上記炭素原子含有量は、株式会社ジェイ・サイエンス・ラボ社製JM-11により測定されるものであり、上記酸素原子含有量は、株式会社ジェイ・サイエンス・ラボ社製JMO-10により測定されるものである。
【0021】
活性炭繊維の強度としては特に制限されないが、0.25GPa以上が好ましく、0.28GPa以上がより好ましい。これにより、本発明のフィルタに用いる混抄シートの強度をより向上させることができる。上記強度とするには、賦活を抑えた活性炭繊維を用いることが好ましく、後述する比表面積程度となるように、賦活することが挙げられる。なお、上記活性炭繊維の強度は、JIS K 1477:2007 7.3.2に準じて測定、算出されるものである。
【0022】
活性炭繊維の比表面積としては特に制限されないが、本発明のフィルタの強度を高める観点から、500~1300m/g程度、好ましくは500~900m/g程度に賦活することが挙げられる。本発明において、比表面積は、窒素を被吸着物質として用いたBET法(1点法)により測定される値である。
【0023】
活性炭繊維の細孔分布としては特に制限されないが、分子サイズの小さい、炭素数が4以下のVOC、例えば、アセトンの吸着性能をより高める観点から、ミクロ細孔容積率が90%以上が好ましく、95%以上がより好ましい。本発明において、ミクロ細孔容積率は、QSDFT法によって算出されるものである。QSDFT法(急冷固体密度汎関数法)とは、幾何学的・化学的に不規則なミクロポーラス・メソポーラスな炭素の細孔径解析を対象とした、約0.5nm~約40nmまでの細孔径分布の計算ができる解析手法である。QSDFT法では、細孔表面の粗さと不均一性による影響が明瞭に考慮されているため、細孔径分布解析の正確さが大幅に向上した手法である。本発明においては、Quantachrome社製「AUTOSORB-1-MP」を用いて窒素吸着等温線の測定、及びQSDFT法による細孔径分布解析をおこなう。77Kの温度において測定した窒素の脱着等温線に対し、Calculation modelとしてN at 77K on carbon[slit pore,QSDFT equilibrium model]を適用して細孔径分布を計算することで、特定の細孔径範囲の細孔容積を算出することができる。そして、上記QSDFT法で測定、算出される全細孔容積と、上記QSDFT法で測定、算出される直径2nm以下の細孔容積から、以下の式によりミクロ細孔容積率を求める。
ミクロ細孔容積率(%)
=(直径2nm以下の細孔容積)/(全細孔容積)×100(%)
【0024】
活性炭繊維の平均繊維径としては、特に制限されないが、フィルタの強度を高める観点から、15~25μmが好ましく、16~20μmがより好ましく、16.5~20μmがさらに好ましい。該平均繊維径は、JIS K 1477:2007 7.3.1に準じ、反射顕微鏡を用いて測定、算出されるものである。
【0025】
本発明のフィルタに用いる混抄シートにおいて、活性炭繊維の質量は5g/m以上である。本発明者は、本発明の検討に際し、活性炭繊維が6g/mかつシート坪量が20g/m(残部ポリエステル繊維)のシートと、活性炭繊維が14g/mかつシート坪量が50g/m(残部ポリエステル繊維)のシートと、を用いて、難燃性能を比較した。当該両シートは、活性炭繊維の混用率は同等であり、比較的燃えやすいポリエステル繊維の量は後者が多いところ、後者のほうが難燃性能がより優れるものであった。これらと、後述する実施例等から、シートの難燃性能には、活性炭繊維の単位面積あたりの質量(g/m)が重要であることを知得した。そして、さらに検討を重ね、活性炭繊維の低い嵩密度によりシート内に占める活性炭繊維の体積又は面積が大きくなり、また、特に燃え易い成分であるフィブリル化繊維等と活性炭シートとして絡み合うようにしつつ、上記特定の量の活性炭繊維を含有させることが重要であることを知得したのである。活性炭繊維の質量は、より難燃性能を向上させる観点から、9g/m以上が好ましく、トルエン吸着性能と難燃性能とをより両立させる観点から、9~20g/mが好ましく、13~18g/mがより好ましい。
【0026】
本発明のフィルタに用いる混抄シートにおいて、活性炭繊維の質量(g/m)と後述する粒状又は粉末状活性炭の質量(g/m)との含有比率(活性炭繊維の質量/粒状又は粉末状活性炭の質量)が0.05~0.35が好ましい。難燃成分且つトルエン吸着成分として寄与する活性炭繊維と、トルエン吸着成分として寄与する粒状又は粉末状活性炭と、を上記特定の比率となるように配合することにより、得られるフィルタに用いる混抄シートは、トルエン吸着性能と難燃性能との両立をより図ることが可能となる。上記比率は、0.15~0.30がより好ましく、0.25~0.30がさらに好ましい。
【0027】
本発明のフィルタに用いる混抄シートにおいて、活性炭繊維の質量(g/m)、粒状又は粉末状活性炭の質量(g/m)及びフィブリル化繊維の質量(g/m)の合計100質量部に対する、活性炭繊維の質量(g/m)の割合としては、例えば、3~20質量部が挙げられ、トルエン吸着性能と難燃性能との両立をより一層図る観点から、10~20質量部が好ましく挙げられ、14~18質量部がより好ましく挙げられる。また、本発明のフィルタに用いる混抄シートの質量(g/m)に対する活性炭繊維の質量(g/m)の割合としては、3~25質量%が挙げられ、トルエン吸着性能と難燃性能との両立をより一層図る観点から、3~20質量%が好ましく挙げられ、8~20質量%がより好ましく挙げられ、13~18質量%がさらに好ましく挙げられる。
【0028】
<粒状又は粉末状活性炭>
本発明のフィルタに用いる混抄シートは、粒状又は粉末状活性炭を含有する。本発明のフィルタに用いる混抄シートにおいて、粒状又は粉末状活性炭活性は、トルエン等揮発性有機化合物の吸着成分として寄与する。
【0029】
粒状又は粉末状活性炭の種類としては、やしがらを原料とするやしがら活性炭、石炭を原料とする石炭系活性炭、木質を原料とする木質系活性炭、フェノール樹脂などの樹脂を原料とする樹脂系活性炭などの公知の活性炭が挙げられる。粉末状活性炭は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
粒状又は粉末状活性炭の平均粒子径としては、特に制限されないが、抄造性や炭塵脱落防止の観点から、レーザー回折/散乱式法で測定した積算体積百分率D50が10~150μmが挙げられ、10~100μmが好ましく挙げられ、10~50μmがより好ましく挙げられる。
【0031】
粒状又は粉末状活性炭の比表面積としては、例えば、500~1500m/gが挙げられ、600~1300m/gがより好ましく挙げられる。
【0032】
本発明のフィルタに用いる混抄シートにおいて、粒状又は粉末状活性炭の質量(g/m)が50g/m以上であることが好ましい。これにより、トルエン吸着性能をより一層向上させやすくなる。トルエン吸着性能と難燃性能との両立をより一層図る観点から、上記質量は、50~70g/mがより好ましく、50~60g/mがさらに好ましい。
【0033】
本発明のフィルタに用いる混抄シートにおいて、活性炭繊維の質量(g/m)、粒状又は粉末状活性炭の質量(g/m)及びフィブリル化繊維の質量(g/m)の合計100質量部に対する、粒状又は粉末状活性炭の質量(g/m)の割合としては、例えば、50~80質量部が挙げられ、トルエン吸着性能と難燃性能との両立をより一層図る観点から、55~68質量部が好ましく挙げられ、58~63質量部がより好ましく挙げられる。また、本発明のフィルタに用いる混抄シートの質量(g/m)に対する粒状又は粉末状活性の質量(g/m)の割合としては、例えば、45~75質量%が挙げられ、トルエン吸着性能と難燃性能との両立をより一層図る観点から、45~62質量%が好ましく挙げられ、50~57質量%がより好ましく挙げられる。
【0034】
<フィブリル化繊維>
本発明のフィルタに用いる混抄シートは、フィブリル化繊維を含む。本発明のフィルタに用いる混抄シートにおいて、フィブリル化繊維は、フィルタに用いる混抄シートの形態保持、及び粒状又は粉末状活性炭の保持に寄与する。
【0035】
フィブリル化繊維の種類としては、トルエン吸着性能を一層優れたものとする観点から、非溶融性のフィブリル化繊維が好ましく、例えば、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリアクリロニトリル繊維、セルロース繊維、アラミド繊維などを挙げることができ、中でも、難燃性能をより向上させる観点からは、アラミド繊維が好ましい。
【0036】
フィブリル化繊維の濾水度としては、JIS P 8121-2:2012に準じて測定される濾水度が10~200mLであることが好ましい。
【0037】
本発明のフィルタに用いる混抄シートにおいて、活性炭繊維の質量(g/m)、粒状又は粉末状活性炭の質量(g/m)及びフィブリル化繊維の質量(g/m)の合計100質量部に対する、フィブリル化繊維の質量(g/m)の割合としては、例えば、10~30質量部が挙げられ、トルエン吸着性能と難燃性能との両立をより一層図る観点から、15~30質量部が好ましく挙げられ、18~25質量部がより好ましく挙げられる。また、本発明のフィルタに用いる混抄シートの質量(g/m)に対するフィブリル化繊維の割合としては、例えば、10~30質量%が挙げられ、トルエン吸着性能と難燃性能との両立をより一層図る観点から、18~27質量%が好ましく挙げられ、18~22質量%がより好ましく挙げられる。
【0038】
<バインダー成分>
本発明のフィルタに用いる混抄シートは、必要に応じてバインダー成分を含むことができる。本発明のフィルタに用いる混抄シートにおいて、バインダー成分は、活性炭繊維、粒状又は粉末状活性炭及びフィブリル化繊維を接着固定する成分であり、該フィルタに用いる混抄シートの形態保持及び粒状又は粉末状活性炭の保持に寄与する。
【0039】
バインダー成分としては、接着性(熱融着性を含む。)を有する有機バインダー又は無機バインダーが挙げられる。形状としては、粉末状、粒状、繊維状等特に限定されない。なお、本発明において、バインダー成分は、前述したフィブリル化繊維を含まないものと定義する。
【0040】
上記有機バインダーとしては、合成樹脂が挙げられ、例えば、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、変性ポリエステル(いわゆる低軟化点ポリエステル。)、ポリオレフィン(PE、PP等。)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等の熱可塑性樹脂が挙げられる。バインダー成分を熱融着性繊維とする場合は、融点又は軟化点の異なる2成分以上のポリマーで形成された熱融着性の繊維が好ましく、高融点ポリマーを芯成分、低融点ポリマーを鞘成分とする芯鞘構造を有する繊維がシート形成時の熱処理が容易な点から特に好ましい。芯鞘構造を有する繊維としては、例えば、芯部がポリプロピレンで鞘部が変性ポリエチレンからなるポリオレフィン系繊維、芯部がポリエチレンテレフタレートで鞘部がポリオレフィンからなる繊維、芯部がポリエチレンテレフタレートで鞘部が低融点(低軟化点)ポリエステルからなるポリエステル系繊維等の複合繊維が挙げられる。
【0041】
上記無機バインダーとしては、例えば、コロイダルシリカ、水ガラス、珪酸カルシウム、アルミナゾル、シリコーンオイル、金属アルコキシド等が挙げられる。
【0042】
上記の中でも、フィルタに用いる混抄シートにおける粒状又は粉末状活性炭の発塵をより抑制するという観点から、ポリビニルアルコールが好ましい。
【0043】
本発明のフィルタに用いる混抄シートの質量(g/m)に対するバインダー成分の割合としては、例えば、3~15質量%が挙げられ、トルエン吸着性能と難燃性能との両立をより一層図る観点から、3~13質量%が好ましく挙げられ、さらに粒状又は粉末状活性炭の発塵性をより抑制する観点から8~13質量%がより好ましく挙げられる。
【0044】
<アルデヒド吸着剤>
本発明のフィルタに用いる混抄シートは、アルデヒド吸着剤を含有することができる。これにより、アルデヒド成分、例えば、アセトアルデヒドを吸着することができる。
【0045】
アルデヒド吸着剤としては、芳香族アミン化合物、脂環式アミン化合物、複素環式アミン化合物又は脂肪族アミン化合物であることが好ましい。
【0046】
芳香族アミン化合物としては、例えば、o-、m-、p-アミノ安息香酸、p-アミノサリチル酸、m-アミノサリチル酸などの芳香族アミノ酸、スルファニル酸、アニリン、アニシジン、およびそれらのナトリウム塩、カリウム塩などの金属塩類、または硫酸塩、硝酸塩、塩酸塩などの無機塩類などが挙げられる。
【0047】
脂環式アミン化合物としては、シクロプロピルアミン、シクロブチルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミンなどが挙げられる。
【0048】
複素環式アミン化合物としては、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、オキサジン、キヌクリジン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、オキサゾール、チアゾール、4-ジメチルアミノピリジン、1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]-5-ノネン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセンなどが挙げられる。
【0049】
脂肪族アミン化合物としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、アミルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、セチルアミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチレントリアミン、アルギニン、エタノールアミン、グアジニン、ポリエチレンイミンなどが挙げられる。
【0050】
ヒドラジド化合物としては、アジピン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、カルボジヒドラジドなどが挙げられる
【0051】
上記の中でも、芳香族アミン化合物又は複素環式アミンが好ましく、p-アミノ安息香酸又はモルホリンが特に好ましい。
【0052】
本発明のフィルタに用いる混抄シートにおいて、アルデヒド吸着剤の含有形態としては特に制限されない。活性炭繊維と、粒状又は粉末状活性炭と、フィブリル化繊維と、バインダー成分と、を含む活性炭シートを予め製造し、該シートにアルデヒド吸着剤を分散させた溶液を含浸又は噴霧し、含有させる方法、又は、活性炭繊維、粒状又は粉末状活性炭、フィブリル化繊維及びバインダー成分からなる群より選ばれる1種以上の構成材料に予め、アルデヒド吸着剤を含有させ、これを用いて活性炭シートとする方法、が挙げられる。中でも、予め粒状又は粉末状活性炭にアルデヒド吸着剤を含有させて活性炭シートを得る場合、すなわち、活性炭繊維と、粒状又は粉末状活性炭と、フィブリル化繊維と、アルデヒド吸着剤と、を含有するフィルタに用いる混抄シートであって、前記粒状又は粉末状活性炭に前記アルデヒド吸着剤が担持されており、前記活性炭繊維にはアルデヒド吸着剤が担持されていない、フィルタに用いる混抄シートとすると、難燃材料として寄与する活性炭繊維に有機物であるアルデヒド吸着剤が担持されていないことから、活性炭繊維が有する難燃材料としての性能をより発揮しやすくなるので好ましい。
【0053】
アルデヒド吸着剤の含有量としては、求める性能に応じて適宜設定すればよいが、例えば、粒状又は粉末状活性炭に担持させる場合、粒状又は粉末状活性炭(担持前)100質量部に対し、1~50質量部、好ましくは5~20重量%が挙げられる。また、フィルタに用いる混抄シートにおけるアルデヒド吸着剤の含有量としては、0.1~35質量%が挙げられ、1~15質量%が挙げられる。
【0054】
<その他の成分>
本発明のフィルタに用いる混抄シートは、必要に応じて、活性炭繊維、粒状又は粉末状活性炭、フィブリル化繊維、バインダー成分、及びアルデヒド吸着剤以外のその他の成分を含むことができる。
【0055】
上記その他の成分としては、例えば、活性炭繊維を除く難燃剤が挙げられる。当該難燃剤としては、例えば、人体や環境への影響程度が小さく、また活性炭の被覆も少ない水酸化アルミニウムが好ましく挙げられる。また、本発明のフィルタに用いる混抄シートにおいて、当該難燃剤の含有量としては、例えば、3~10質量%が挙げられる。
【0056】
<本発明のフィルタに用いる混抄シートの物性>
1.混抄シートの圧力損失
本発明の空気清浄用活性炭シートは、下記方法による圧力損失が150Pa以下であることが好ましい。これにより、空気清浄用活性炭シートとして好適に使用しやすくなる。また、空気の流れ易さと、トルエン吸着性能とをより一層両立する観点から、上記圧力損失は10~80Paが好ましく、20~60Paがより好ましい。
<圧力損失の試験方法>
JIS B 9927:1999 「付属書(規定)クリーンルーム用エアフィルタろ材性能試験方法」の3.2「圧力損失試験」に準じ、前記活性炭シートを直径110mmの円形にカットしたものを測定試料とし、0.1m/sの線速度で空気を吸引したときの前記活性炭シートの上流側と下流側との静圧の差を差圧計にて測定し、測定値は一の位までを有効な数値とする。
【0057】
2.混抄シートの難燃性能
本発明のフィルタに用いる混抄シートは、活性炭繊維と、粒状又は粉末状活性炭と、フィブリル化繊維と、を含有するフィルタに用いる混抄シートであって、前記活性炭繊維の質量(g/m)と前記粒状又は粉末状活性炭の質量(g/m)との含有比率(活性炭繊維の質量/粒状又は粉末状活性炭の質量)が0.05~0.35であることから、難燃性能に優れる。本発明のフィルタに用いる混抄シートが備える難燃性能としては、FMVSS302燃焼試験における燃焼距離が51mm以下が好ましく、10mm以下がより好ましく、5mm以下がさらに好ましい。
3.混抄シートの比表面積(m/g)
本発明のフィルタに用いる混抄シートは、比表面積が400~800m/gであることが好ましく、500~650m/gであることがより好ましく、550~650m/gであることがさらに好ましい。なお、本発明において、フィルタに用いる混抄シートの比表面積は、窒素を被吸着物質として用いたBET法(1点法)により測定される値である。
【0058】
4.混抄シートの坪量(g/m)及び厚さ(mm)
本発明のフィルタに用いる混抄シートの坪量としては、60~120g/mであることが好ましく、75~105g/mであることがより好ましい。また、本発明のフィルタに用いる混抄シートの厚さとしては、0.2~0.6mmが好ましく、0.3~0.4mmがより好ましい。なお、本発明において、フィルタに用いる混抄シートの坪量は、JIS L 1913:2010 6.2に準じて求めた単位面積当たりの質量(g/m)とする。また、本発明において、フィルタに用いる混抄シートの厚さは、株式会社ミツトヨ製シネックスゲージを用いて任意の場所について3点測定した値の平均値をシートの厚さ(mm)とする。
【0059】
5.混抄シートのトルエン吸着性能
本発明のフィルタに用いる混抄シートは、活性炭繊維と、粒状又は粉末状活性炭と、フィブリル化繊維と、を含有する混抄シートであって、前記活性炭繊維の質量(g/m)が5g/m以上であることから、トルエン吸着性能に優れる。本発明のフィルタに用いる混抄シートが備えるトルエン吸着性能としては、40℃における平衡濃度1ppm時の平衡吸着量が2000mg/m以上が好ましく、3000mg/m以上がより好ましい。当該トルエン吸着性能は、次のようにして測定、算出されるものである。すなわち、任意面積の試料片と100ppmトルエンガス3Lを密閉容器に封入し、室温40℃の環境下において静置する。24時間経過後、容器内のガス濃度を測定し、濃度減少量から試料のガス吸着量を計算する。複数の試料面積について測定を行い、それぞれの計算結果より、濃度と吸着量の相関をグラフにプロットし、得られた関係式より、平衡濃度1ppmにおけるトルエンの平衡吸着量(mg/m)を導く。トルエンの濃度測定には、ガスクロマトグラフィーを用いる。なお、上記トルエン吸着性能の上限値は特に制限されないが、例えば、5000mg/m以下が挙げられる。
【0060】
6.混抄シートのアセトン吸着性能
本発明のフィルタに用いる混抄シートは、ミクロ細孔容積率の高い活性炭を用いることで、より一層高いアセトン吸着性能を備えることができる。本発明のフィルタに用いる混抄シートが備えるアセトン吸着性能としては、40℃における平衡濃度1ppm時の平衡吸着量が50mg/m以上が好ましく、65mg/m以上がより好ましい。当該アセトン吸着性能は、次のようにして測定、算出されるものである。すなわち、任意面積の試料片と100ppmアセトンガス3Lを密閉容器に封入し、室温40℃の環境下において静置する。24時間経過後、容器内のガス濃度を測定し、濃度減少量から試料のガス吸着量を計算する。複数の試料面積について測定を行い、それぞれの計算結果より、濃度と吸着量の相関をグラフにプロットし、得られた関係式より、任意の平衡濃度1ppmにおけるアセトンの平衡吸着量(mg/m)を導く。アセトンの濃度測定には、ガスクロマトグラフィーを用いる。なお、上記アセトン吸着性能の上限値は特に制限されないが、例えば、300mg/m以下が挙げられる。
【0061】
7.混抄シートのアルデヒド吸着性能
本発明のフィルタに用いる混抄シートは、アルデヒド吸着剤を含有させることで、アルデヒド吸着性能に優れるものとすることができる。この場合に、本発明のフィルタに用いる混抄シートが備えるアセトアルデヒド吸着性能としては、40℃における平衡濃度1ppm時の平衡吸着量が250mg/m以上が好ましく、300mg/m以上がより好ましい。当該アルデヒド吸着性能は、次のようにして測定、算出されるものである。すなわち、任意面積の試料片と100ppmアセトアルデヒドガス3Lを密閉容器に封入し、室温40℃の環境下において静置する。24時間経過後、容器内のガス濃度を測定し、濃度減少量から試料のガス吸着量を計算する。複数の試料面積について測定を行い、それぞれの計算結果より、濃度と吸着量の相関をグラフにプロットし、得られた関係式より、任意の平衡濃度1ppmにおけるアセトアルデヒドの平衡吸着量(mg/m)を導く。アセトアルデヒドの濃度測定には、ガスクロマトグラフィーを用いる。なお、上記アセトアルデヒド吸着性能の上限値は特に制限されないが、例えば、700mg/m以下が挙げられる。
【0062】
<本発明のフィルタに用いる混抄シートの製造方法>
フィルタに用いる混抄シートの製造方法としては、特に制限されないが、例えば、活性炭繊維と、粒状又は粉末状活性炭と、フィブリル化繊維との混合物を、湿式抄紙することによって製造することが挙げられる。具体的には、活性炭繊維、粒状又は粉末状活性炭、フィブリル化繊維をパルパー、ビーター、リファイナーなどの装置を用いて混合、せん断し、均一に分散したスラリーを作製し、得られたスラリーを所定の流量でワイヤー上に流し、脱水することで、任意の坪量に調整する。その後プレスパートを経てドライヤーパートでシートを乾燥し、カレンダーパートでシート表面を平滑にしてからリールで巻き取るなどの公知の技術でシートを製造することができる。シートの厚さは熱プレスローラーなどで任意の厚さに調整するなどすればよい。また、アルデヒド吸着剤を含有させる場合、その方法としては、上記スラリーに含有する方法、又は、上記シートを製造した後、例えば、噴霧や含浸などにより含有させる方法の他、活性炭繊維又は粒状若しくは粉末状活性炭に予め、アルデヒド吸着剤を含有させておくことが挙げられる。
【0063】
<本発明のフィルタの用途>
本発明のフィルタは、エアコンディショナーのフィルタ、空気清浄機の脱臭フィルタ、又はクリーンルームのケミカルフィルタなどに用いることができる。
【実施例
【0064】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。
【0065】
<混抄シートの作成>
<原材料の準備>
(1)活性炭繊維
(1-1)活性炭繊維A
粒状石炭ピッチを、溶融押出機に供給し、溶融温度320℃で溶融混合し、吐出量20g/minで紡糸することによりピッチ繊維を得た。得られたピッチ繊維を空気中常温から354℃まで1~30℃/分の割合で54分間昇温することにより不融化処理をおこない、不融化されたピッチ繊維である活性炭前駆体を得た。得られた活性炭前駆体を、HO濃度が100容量%のガスを賦活炉内に連続的に導入し、雰囲気温度875℃で30分間熱処理することにより賦活をおこない、活性炭繊維を得た。得られた活性炭繊維の強度は0.30GPa、比表面積は822m/g、平均繊維径は16.8μm、ミクロ細孔容積率(%)は96%、活性炭繊維における炭素原子含有量は90質量%、酸素原子含有量は3質量%であった。
(1-2)活性炭繊維B
粒状石炭ピッチを、溶融押出機に供給し、溶融温度320℃で溶融混合し、吐出量20g/minで紡糸することによりピッチ繊維を得た。得られたピッチ繊維を空気中常温から354℃まで1~30℃/分の割合で54分間昇温することにより不融化処理をおこない、不融化されたピッチ繊維である活性炭前駆体を得た。得られた活性炭前駆体を、HO濃度が100容量%のガスを賦活炉内に連続的に導入し、雰囲気温度875℃で40分間熱処理することにより賦活をおこない、活性炭繊維を得た。得られた活性炭繊維の強度は0.25GPa、比表面積は1277m/g、平均繊維径は16.7μm、ミクロ細孔容積率(%)は94%、活性炭繊維における炭素原子含有量は91質量%、酸素原子含有量は2質量%であった。
【0066】
(2)粒状又は粉末状活性炭
(2-1)粒状又は粉末状活性炭A
アルデヒド吸着剤としてモルホリンを担持している粉末状活性炭(大阪ガスケミカル株式会社製商品名HG17-069、平均粒子径D50=20μm、比表面積1152m/g)
(2-2)粒状又は粉末状活性炭B
アルデヒド吸着剤を担持しない粉末状活性炭(大阪ガスケミカル株式会社製商品名HG17-067、平均粒子径D50=20μm、比表面積712m/g)
【0067】
(3)フィブリル化繊維として、セルロース系パルプを使用した。
【0068】
(4)バインダー成分
(4-1)バインダー成分A:ポリビニルアルコール
(4-2)バインダー成分B:ユニチカ株式会社製商品名メルティ4080
【0069】
<参考例1>
前記準備した活性炭繊維A、粒状又は粉末状活性炭A、フィブリル化繊維及びバインダー成分Aを、表1に記載の質量比となるようにパルパーを用いて混合し、均一に分散したスラリーを作製し、得られたスラリーを所定の流量でワイヤー上に流し、脱水することで坪量を調整した。その後プレスパートを経てドライヤーパートでシートを乾燥し、カレンダーパートでシート表面を平滑にしてからリールで巻き取り、混抄シートAを得た。該混抄シートの比表面積は512m/g、坪量は101g/m、厚さは0.31mmであった。
【0070】
<参考例2>
前記準備した活性炭繊維A、粒状又は粉末状活性炭A、フィブリル化繊維及びバインダー成分Aを、表1に記載の質量比となるようにパルパーを用いて混合し、均一に分散したスラリーを作製し、得られたスラリーを所定の流量でワイヤー上に流し、脱水することで坪量を調整した。その後プレスパートを経てドライヤーパートでシートを乾燥し、カレンダーパートでシート表面を平滑にしてからリールで巻き取り、混抄シートBを得た。該混抄シートの比表面積は519m/g、坪量は101g/m、厚さは0.32mmであった。
【0071】
<参考例3>
前記準備した活性炭繊維A、粒状又は粉末状活性炭A及びB、フィブリル化繊維及びバインダー成分Aを、表1に記載の質量比となるようにパルパーを用いて混合し、均一に分散したスラリーを作製し、得られたスラリーを所定の流量でワイヤー上に流し、脱水することで坪量を調整した。その後プレスパートを経てドライヤーパートでシートを乾燥し、カレンダーパートでシート表面を平滑にしてからリールで巻き取り、混抄シートCを得た。該混抄シートの比表面積は607m/g、坪量は98g/m、厚さは0.32mmであった。
【0072】
<参考例4> 前記準備した活性炭繊維A、粒状又は粉末状活性炭A及びB、フィブリル化繊維及びバインダー成分Aを、表1に記載の質量比となるようにパルパーを用いて混合し、均一に分散したスラリーを作製し、得られたスラリーを所定の流量でワイヤー上に流し、脱水することで坪量を調整した。その後プレスパートを経てドライヤーパートでシートを乾燥し、カレンダーパートでシート表面を平滑にしてからリールで巻き取り、混抄シートDを得た。該混抄シートの比表面積は607m/g、坪量は75g/m、厚さは0.28mmであった。
【0073】
<参考例5>
前記準備した活性炭繊維A、粒状又は粉末状活性炭A、フィブリル化繊維及びバインダー成分Aを、表1に記載の質量比となるようにパルパーを用いて混合し、均一に分散したスラリーを作製し、得られたスラリーを所定の流量でワイヤー上に流し、脱水することで坪量を調整した。その後プレスパートを経てドライヤーパートでシートを乾燥し、カレンダーパートでシート表面を平滑にしてからリールで巻き取り、混抄シートEを得た。該混抄シートの比表面積は505m/g、坪量は102g/m、厚さは0.33mmであった。
【0074】
<参考例6>
前記準備した活性炭繊維A、粒状又は粉末状活性炭A、フィブリル化繊維及びバインダー成分Aを、表1に記載の質量比となるようにパルパーを用いて混合し、均一に分散したスラリーを作製し、得られたスラリーを所定の流量でワイヤー上に流し、脱水することで坪量を調整した。その後プレスパートを経てドライヤーパートでシートを乾燥し、カレンダーパートでシート表面を平滑にしてからリールで巻き取り、混抄シートFを得た。該混抄シートの比表面積は515m/g、坪量は100g/m、厚さは0.32mmであった。
【0075】
<参考例7>
前記準備した活性炭繊維A、粒状又は粉末状活性炭B、フィブリル化繊維及びバインダー成分Aを、表1に記載の質量比となるようにパルパーを用いて混合し、均一に分散したスラリーを作製し、得られたスラリーを所定の流量でワイヤー上に流し、脱水することで坪量を調整した。その後プレスパートを経てドライヤーパートでシートを乾燥し、カレンダーパートでシート表面を平滑にしてからリールで巻き取り、混抄シートGを得た。該混抄シートの比表面積は855m/g、坪量は100g/m、厚さは0.32mmであった。
【0076】
<参考例8>
前記準備した活性炭繊維A、粒状又は粉末状活性炭B、フィブリル化繊維及びバインダー成分Aを、表1に記載の質量比となるようにパルパーを用いて混合し、均一に分散したスラリーを作製し、得られたスラリーを所定の流量でワイヤー上に流し、脱水することで坪量を調整した。その後プレスパートを経てドライヤーパートでシートを乾燥し、カレンダーパートでシート表面を平滑にしてからリールで巻き取り、混抄シートHを得た。該混抄シートの比表面積は913m/g、坪量は101g/m、厚さは0.31mmであった。
【0077】
<参考例9>
前記準備した活性炭繊維B、粒状又は粉末状活性炭A、フィブリル化繊維及びバインダー成分Aを、表1に記載の質量比となるようにパルパーを用いて混合し、均一に分散したスラリーを作製し、得られたスラリーを所定の流量でワイヤー上に流し、脱水することで坪量を調整した。その後プレスパートを経てドライヤーパートでシートを乾燥し、カレンダーパートでシート表面を平滑にしてからリールで巻き取り、混抄シートIを得た。該混抄シートの比表面積は538m/g、坪量は100g/m、厚さは0.30mmであった。
【0078】
<参考例10>
前記準備した活性炭繊維B、粒状又は粉末状活性炭A、フィブリル化繊維及びバインダー成分Aを、表1に記載の質量比となるようにパルパーを用いて混合し、均一に分散したスラリーを作製し、得られたスラリーを所定の流量でワイヤー上に流し、脱水することで坪量を調整した。その後プレスパートを経てドライヤーパートでシートを乾燥し、カレンダーパートでシート表面を平滑にしてからリールで巻き取り、混抄シートJを得た。該混抄シートの比表面積は556m/g、坪量は100g/m、厚さは0.30mmであった。
【0079】
<比較参考例1>
前記準備した粒状又は粉末状活性炭A、フィブリル化繊維及びバインダー成分Aを、表1に記載の質量比となるようにパルパーを用いて混合し、均一に分散したスラリーを作製し、得られたスラリーを所定の流量でワイヤー上に流し、脱水することで坪量を調整した。その後プレスパートを経てドライヤーパートでシートを乾燥し、カレンダーパートでシート表面を平滑にしてからリールで巻き取り、比較参考例のシートKを得た。該シートの比表面積は498m/g、坪量は99g/m、厚さは0.31mmであった。
【0080】
<比較参考例2>
75質量%の濃度で硫酸を含有した硫酸水溶液とアルデヒド吸着剤であるp-アミノ安息香酸と水を、活性炭繊維B100質量部に対して硫酸が15質量部(純水を抜いた硫酸のみの質量部)、p-アミノ安息香酸が15質量部となるように、かつ、活性炭繊維Bの質量と処理液との体積との比が20g/Lとなるように調製、混合し、処理液を得た。該処理液に、前記準備した活性炭繊維B100質量部を8時間浸漬し、その後活性炭繊維を処理液から引き上げ、乾燥させ、p-アミノ安息香酸と硫酸とを含有した活性炭繊維Bを得た。
【0081】
上記得られたp-アミノ安息香酸を含有した活性炭繊維Bと、前記準備したバインダー成分Bとを、表1に記載の質量比となるように混綿し、ニードルパンチ加工を施してウェブとし、該ウェブを110℃の乾燥機内に通過させ、バインダー成分Bと活性炭繊維を熱融着させ、比較参考例のシートLを得た。該シートの比表面積は213m/g、坪量は50g/m、厚さは0.35mmであった。
【0082】
<比較参考例3>
75質量%の濃度で硫酸を含有した硫酸水溶液とアルデヒド吸着剤であるp-アミノ安息香酸と水を、活性炭繊維B100質量部に対して硫酸が15質量部(純水を抜いた硫酸のみの質量部)、p-アミノ安息香酸が15質量部となるように、かつ、活性炭繊維Bの質量と処理液との体積との比が20g/Lとなるように調製、混合し、処理液を得た。該処理液に、前記準備した活性炭繊維B100質量部を8時間浸漬し、その後活性炭繊維を処理液から引き上げ、乾燥させ、p-アミノ安息香酸と硫酸とを含有した活性炭繊維Bを得た。
【0083】
上記得られたp-アミノ安息香酸を含有した活性炭繊維Bと、前記準備したバインダー成分Bとを、表1に記載の質量比となるように混綿し、ニードルパンチ加工を施してウェブとし、該ウェブを110℃の乾燥機内に通過させ、バインダー成分Bと活性炭繊維を熱融着させ、比較参考例のシートMを得た。該シートの比表面積は501m/g、坪量は60g/m、厚さは0.40mmであった。
【0084】
<シートの物性の測定方法>
(1)活性炭繊維の強度、比表面積、平均繊維径、ミクロ細孔容積率、炭素原子含有量(C含有量)及び酸素原子含有量(O含有量):前述した方法にて測定、算出した。
(2)粒状又は粉末状活性炭の平均粒子径D50及び比表面積:前述した方法にて測定、算出した。
(3)シートの比表面積、坪量、厚さ:前述した方法にて測定、算出した。
【0085】
(4)シートのトルエン平衡吸着量:前述した方法にて測定、算出した。2000mg/m以上を合格とした。
【0086】
(5)シートのアセトアルデヒド平衡吸着量:前述した方法にて測定、算出した。
【0087】
(6)シートのアセトン平衡吸着量:前述した方法にて測定、算出した。
【0088】
(7)シートの圧力損失:前述した方法にて測定、算出した。
【0089】
(8)難燃性能:シート試料片を200mm×50mmにカットしたものを5点ずつ準備し、それぞれ長手方向端面からライターの炎を接した。以下の基準により評価した。△以上を合格とした。
◎:5点の試料片全て、炎が接炎箇所から燃え広がらず、自己消火した。
○:5点の試料片のうち、炎が接炎箇所から燃え広がるものがあったが、全て自己消火した。
△:5点の試料片のうち、炎が接炎箇所から燃え広がり、自己消火しなかったものがあったが、少なくとも1点は、自己消火したものがあった。
×:5点の試料片全て、炎が接炎箇所から燃え広がり、自己消火しなかった。
【0090】
(9)FMVSS302燃焼試験における燃焼距離:FMVSS302燃焼試験に準じて測定した。51mm以下を合格とした。
【0091】
(10)発塵性:シート試料片に白色の粘着テープを貼りつけ、剥がした時にテープに乗り移った炭塵量を目視で確認し、程度を比較した。
+:テープに乗り移った炭塵が少し確認された程度であり、実用上優れたものであった。
++:テープに乗り移った炭塵が確認されたが実用上問題ないレベルであった。
【0092】
結果を表1に示す。
【0093】
【表1】

【0094】
(実施例1)
参考例4で得た混抄シートDを用いて、波状シート及び平面シートを作成した。波状シートは、ピッチ高さが1.4mm、ピッチ幅が4.2mmとなるように製造した。得られた波状シート及び平面シートを図1に記載のように交互に積層した。なお、波状シートと平面シートとの接着は、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂系接着剤(コニシ株式会社製商品名SP-220N)を用いた。また、上部壁及び下部壁としては、混抄シートDを用い、本発明のフィルタを製造した。なお、フィルタには側部壁は設けなかった。得られたフィルタの幅方向の長さは200mm、長さ方向の長さは10mm、高さ方向の長さは120mmであった。また、フィルタ全体の質量に対する接着剤の含有量は24質量%であった。
【0095】
(実施例2)
参考例3で得た混抄シートCを用いて、実施例1と同様の方法で、本発明のフィルタを作成した。波状シートは、ピッチ高さが5.0mm、ピッチ幅が8.7mmとなるように製造した。波状シートと平面シートとの接着は、澱粉系接着剤を用いた。また、上部壁及び下部壁としては、混抄シートCを用い、本発明のフィルタを製造した。なお、フィルタには側部壁は設けなかった。得られたフィルタの幅方向の長さは200mm、長さ方向の長さは60mm、高さ方向の長さは150mmであった。また、フィルタ全体の質量に対する接着剤の含有量は13質量%であった。
【0096】
得られたフィルタを用いて、以下の評価をおこなった。
【0097】
(フィルタの圧力損失)
フィルタを、幅方向及び高さ方向に平行な面の形状を直径100mmの円形、かつ、フィルタの長さ方向長さ10mmとなるようにカットし、試料片とした。そして、 JIS B 9927:1999 「付属書(規定)クリーンルーム用エアフィルタろ材性能試験方法」の3.2「圧力損失試験」に準じ、前記試料片を、長さ方向が通風方向となるようにして、0.1m/sの線速度で空気を吸引したときの上流側と下流側との静圧の差を差圧計にて測定し、フィルタの圧力損失(Pa)を測定した。
【0098】
(フィルタの難燃性)
フィルタを幅方向長さ100mm、長さ方向長さ10mm、高さ方向長さ100mmにカットし、幅方向側部からライターの炎を接した。以下の基準により評価した。△以上を合格とした。
〇:炎が接炎箇所から燃え広がらず、自己消火した。
△:炎が接炎箇所から燃え広がったが、自己消火した。
×:炎が接炎箇所から燃え広がり、自己消火しなかった。
【0099】
(フィルタのトルエン除去性能)
フィルタを、幅方向及び高さ方向に平行な面の形状を直径15mmの円形、かつ、フィルタの長さ方向長さ20mmとなるようにカットしたものと、幅方向及び高さ方向に平行な面の形状を直径15mmの円形、かつ、フィルタの長さ方向長さ10mmとなるようにカットしたものとを作成し、それらを長さ方向に、円形が互いにぴったり重なるように積層し、分離しないように外側から固定し、試料片とした。試料片を、内径15mmのガラスカラム内に、ガラスカラム軸方向が試料長さ方向と平行となるようにセットし、トルエンガス2.0ppmを含む温度25℃の空気を風速0.5m/sで通風した。ガラスカラムの入口、出口濃度を全炭化水素自動分析計(日本サーモ株式会社製、MODEL-51i)にて測定し、ガラスカラムの入口、出口の濃度変化から通風30秒後のトルエンガス除去率(%)を算出することにより、フィルタのトルエン除去性能を評価した。
【0100】
(フィルタのアセトアルデヒド除去性能)
フィルタを、幅方向及び高さ方向に平行な面の形状を直径15mmの円形、かつ、フィルタの長さ方向長さ20mmとなるようにカットしたものを作成し、試料片とした。試料片を、内径15mmのガラスカラム内に、ガラスカラム軸方向が試料長さ方向と平行となるようにセットし、トルエンガス10.0ppmを含む温度25℃の空気を風速0.25m/sで通風した。ガラスカラムの入口、出口濃度をガスクロマトグラフィー(株式会社ヤナコ計測製、YX2700-F)にて測定し、ガラスカラムの入口、出口の濃度変化から通風30秒後のアセトアルデヒドガス除去率(%)を算出することにより、フィルタのアセトアルデヒド除去性能を評価した。
【0101】
結果を表2に示す。
【0102】
【表2】
【0103】
参考例1~10及び実施例1、2の結果から、波状シートと平面シートを組み合わせてなるフィルタであって、前記波状シート及び前記平面シートが、活性炭繊維と、粒状または粉末状活性炭と、フィブリル化繊維とを含有する混抄シートであり、前記混抄シート中における活性炭繊維の質量(g/m)が5g/m以上とすることにより、トルエン吸着性能と難燃性能との両立を図ることが可能となることが明らかであった。


図1