(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-31
(45)【発行日】2023-06-08
(54)【発明の名称】難燃性ゴム組成物および難燃性燃料ホース
(51)【国際特許分類】
C08L 23/34 20060101AFI20230601BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20230601BHJP
C08K 5/02 20060101ALI20230601BHJP
C08K 3/32 20060101ALI20230601BHJP
F16L 11/08 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
C08L23/34
C08K3/22
C08K5/02
C08K3/32
F16L11/08 A
(21)【出願番号】P 2019073144
(22)【出願日】2019-04-05
【審査請求日】2022-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000233619
【氏名又は名称】株式会社ニチリン
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】野村 孝明
(72)【発明者】
【氏名】井上 裕喜
【審査官】谷合 正光
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104946094(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102516617(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103275401(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103242568(CN,A)
【文献】特開平10-007838(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/34
C08K 3/22
C08K 5/02
C08K 3/32
F16L 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記a~eを含有する難燃性ゴム組成物。
a.クロロスルホン化ポリエチレン
b.平均粒子径が
0.1~0.6μmである
水酸化マグネシウム
c.
三酸化アンチモン
d.塩素化パラフィン
e.イントメッセント系難燃剤
として、ポリリン酸メラミンをクロロスルホン化ポリエチレン100重量部に対して30~45重量部
【請求項2】
請求項
1に記載の難燃性ゴム組成物からなるゴム層を有する難燃性燃料ホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性ゴム組成物および難燃性燃料ホースに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、クロロプレンゴムと、クロロスルホン化ポリエチレン等の塩素系ポリマーを含有し、さらに塩素化パラフィン、亜鉛華、酸化マグネシウムを含有するホース用ゴム組成物が記載されている。さらに、その実施例の記載によれば、クロロプレンの含有量が多くなる程、炎消失時間が短時間になる旨が記載されている。
また、特許文献2には、クロルスルホン化ポリエチレン等のゴム成分、ポリリン酸アンモニウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、加硫剤等を含有する組成物が記載され、特許文献3には、クロルスルホン化ポリエチレン等のゴム、イントメッセント系難燃剤、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウムや酸化亜鉛等の充填剤、加硫剤等を含有する組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-002175号公報
【文献】特開2013-127035号公報
【文献】特開2001-180305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記背景技術に記載のように、各種ゴム成分にイントメッセント系難燃剤や無機物質、加硫剤を配合したゴム組成物、ゴム成分としてクロロスルホン化ポリエチレン等の塩素系ポリマーとすることは公知ではある。
しかしながら、蒸気加硫されたこれらのゴム組成物が、十分な難燃性を発揮できること、さらに、イントメッセント系難燃剤を含有する場合において、成形体表面にイントメッセント系難燃剤が析出せず、良好な外観を有することを検討することはなされておらず、これらの性質を両立させることはできなかった。
そこで、本発明は、十分に高い難燃性を備えると共に、蒸気加硫によるイントメッセント系難燃剤の成形体表面からの析出を防止することができる難燃性ゴム組成物および難燃性燃料ホースを得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用した。
1.下記a~eを含有する難燃性ゴム組成物。
a.クロロスルホン化ポリエチレン
b.平均粒子径が0.6μm以下である金属水酸化物
c.金属酸化物
d.塩素化パラフィン
e.イントメッセント系難燃剤
2.前記b.金属水酸化物が、水酸化マグネシウムであり、前記c.金属酸化物が、三酸化アンチモンであり、
前記e.イントメッセント系難燃剤が、ポリリン酸メラミンである上記1に記載の難燃性ゴム組成物。
3.上記1または2に記載の難燃性ゴム組成物からなるゴム層を有する難燃性燃料ホース。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、十分に高い難燃性を備えるゴム組成物を得ることができ、特に、船舶用燃料ホースとするために必要な難燃性に関する要件であるSAE J1527に適合させることができる。
それに加えて、加水分解性のイントメッセント系難燃剤は、蒸気加硫には不向きであるが、本発明のゴム組成物は、蒸気加硫によっても、イントメッセント系難燃剤の成形体表面からの析出を防止することができて、十分に加硫させることができるという効果を奏する。
さらに、船舶用燃料ホースとしての十分な特性を備えたホースを得ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の難燃性燃料ホースの一例の構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、下記a~eを含有する難燃性ゴム組成物である。
a.クロロスルホン化ポリエチレン
b.平均粒子径が0.6μm以下である金属水酸化物
c.金属酸化物
d.塩素化パラフィン
e.イントメッセント系難燃剤
以下に、本発明の好適な実施形態について、詳細に説明する。
【0009】
[a.クロロスルホン化ポリエチレン]
本発明の難燃性ゴム組成物におけるa.クロロスルホン化ポリエチレン(以下、場合により「CSM」とする。)としては、特に限定されず、従来公知の直鎖状または分岐状のCSMであり、プロピレン、その他のオレフィンを含有するクロロスルホン化エチレンコポリマーを含む。CSMを用いることにより、本発明の組成物は、耐油性、耐熱性等に優れるものとなる。
CSMの100℃におけるムーニー粘度は、20~100Mであるのが好ましく、30~80Mであるのがより好ましい。ムーニー粘度が、この範囲であると、ゴム組成物として押出性および混合加工性に優れる。
【0010】
CSMの塩素含有量は、20~50質量%であるのが好ましく、25~40質量%であるのがより好ましい。塩素含有量が、この範囲であると、耐油性と低温特性とのバランスに優れる。
CSMは、例えば、直鎖状または分岐状のポリエチレン(または、プロピレン、その他のオレフィンとのエチレンコポリマー)を塩化スルホニルまたは二酸化硫黄および塩素と反応させることにより製造される。
本発明においては、市販のCSMを用いることもできる。例えば、デュポンパフォーマンスエラストマー社製のハイパロン(登録商標)が、好適に用いられる。
【0011】
[b.平均粒子径が0.6μm以下である金属水酸化物]
本発明にて用いられる、平均粒子径が0.6μm以下である金属水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ドロマイト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ジルコニウム等である。ただし、ハイドロタルサイトは、本発明中の金属水酸化物とはしない。
これらの金属水酸化物の中で、水和物含有量が多いことから、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムから選ばれた少なくとも一つ、さらに、水酸化マグネシウムであることが好ましい。水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムは、BET比表面積は3.0~20m2/gであることが好ましい。
このような金属水酸化物は平均粒子径が、0.6μm以下であることが必要であり、平均粒子径が0.6μmを超えると、難燃性の点において、良好な性質を得ることができない。
このような金属水酸化物、特に、水酸化マグネシウムを採用すること、さらに、平均粒子径を0.6μmとすることにより、難燃性ゴム組成物を蒸気加硫しても、イントメッセント系難燃剤が、難燃性ゴム組成物からなる成形体表面からの析出を防止することができる。
なお、金属水酸化物の平均粒子径とは、中位径と頻度との累積が50%になる粒子径D50のことであり、一般的には、メジアン径と呼ばれている値である。
【0012】
本発明にて用いられる平均粒子径が0.6μm以下である金属水酸化物の配合割合は、a.クロロスルホン化ポリエチレン100重量部に対して、20~100重量部であることが好ましく、より好ましくは、30~60重量部である。さらに好ましくは、35~50重量部である。
20重量部未満であると、十分な難燃性を得ることができない可能性があり、100重量部を超えると、ゴム組成物の機械的特性が悪化する可能性がある。
これらの金属水酸化物は、その表面をチタン化合物の加水分解物、シリコーン化合物粒子(オルガノポリシロキサン)、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、高級脂肪酸エステルやアニオン系界面活性剤、リン酸エステル類、脂肪酸と多価アルコールとのエステル、各種カップリング剤で表面処理することによって、機械的特性のさらなる向上を図ることが可能である。金属水酸化物100重量部に対し、表面処理剤が0.01~3重量%の範囲が好ましく、より好ましくは0.05~2重量%の範囲である。
【0013】
[c.金属酸化物]
本発明にて用いられる金属酸化物としては、三酸化アンチモン、モリブデン酸亜鉛、三酸化モリブデン、スズ酸亜鉛、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マンガン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化コバルト、酸化ビスマス、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化タングステン等を挙げることができる。これらの配合量としては、クロロスルホン化ポリエチレン100質量部に対して、2.0~15.0重量部が好ましく、4.0~10.0質量部がさらに好ましく、5.0~8.0質量部がより好ましい。
【0014】
[d.塩素化パラフィン]
塩素化パラフィンとしては、炭素数が10~30のものが好ましい。
塩素化パラフィンの塩素化率としては、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、35質量%以上であることが好ましく、また、75質量%以下であることが好ましい。塩素化パラフィンの塩素化率が35質量%以上であることにより、ゴム組成物の極性がより高くなって、特に、夏場などにおいて、湿熱劣化した補強材との接着性をより向上させることができる。
また、塩素化パラフィンの塩素化率が75質量%以下であることにより、ゴム物品の使用時におけるゴム中からの析出による外観不良を抑制することができる。同様の観点から、塩素化パラフィンの塩素化率は、65質量%以上であることがより好ましく、また、73質量%以下であることがより好ましい。
なお、塩素化パラフィンの塩素化率とは、塩素化パラフィン分子における塩素原子の質量の割合であり、JIS-K7229に準拠して酸素フラスコ法によって求められる。
配合量としては、クロロスルホン化ポリエチレン100質量部に対して、5~60重量部が好ましく、10~50質量部がさらに好ましく、20~40質量部がより好ましい。
【0015】
[e.イントメッセント系難燃剤]
本発明にて用いられるイントメッセント系難燃剤とは、燃焼が始まり加熱されるとともに材料表面に泡が吹き出し、泡状の断熱膨張層ができることによって、材料表面の熱が内部に伝わらないようにするとともに、酸素の供給を遮断し熱分解と酸化反応とを抑止して、難燃化の作用をし得るものをいう。
このようなイントメッセント系難燃剤としては、反応性化合物として、例えば、リン酸アンモニウム、リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン等を使用し、任意に成分として、泡の骨格形成剤として、例えば、デキストリン等の炭化水素化合物、ペンタエリスリトール等の多官能アルコール、ポリ酢酸ビニル等の炭化水素化合物等、任意成分として、発泡剤として、例えば、分解性アンモニウム塩、ジシアンアミド、メラミン等のアミド化合物等、ビヒクルとして、例えば、水系合成エマルジョン、溶剤系のアルキド樹脂、エポキシ樹脂等を組み合わせた、公知のものを挙げることができる。なお、本発明においては、膨脹性黒鉛を使用してもよく、使用しなくてもよい。
【0016】
また、ホウ酸リンアンモニウム、ホウ酸アンモニウム、ホウ酸、リン酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、セキ燐、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、リン酸ユリア、カルシウムアルミネート水和物等を併用でき、それらを適宜組み合わせて、また、上記のイントメッセントの役割分担を担う物質(上記反応性化合物、骨格形成剤、発泡剤、および、ビヒクル)と共に使用することができる。また、ポリテトラフルオロエチレンとの併用もできる。
【0017】
このイントメッセント系難燃剤の配合量としては、クロロスルホン化ポリエチレン100重量部に対し、10~100重量部、好ましくは20~60重量部、より好ましくは25~45重量部である。
【0018】
[f.リン酸エステル化合物]
本発明にて用いられるリン酸エステルとしては、脂肪族、クロロ脂肪族または芳香族リン酸エステルの何れかを用いることができ、リン酸トリキシレニル、リン酸クレジルジフェニル(CDP)、リン酸2-エチルヘキシルジフェニル、芳香族縮合リン酸エステル、リン酸トリクレジル、リン酸トリエチル、リン酸トリブチル、リン酸トリ2エチルヘキシル等を好ましく使用することができる。
【0019】
[g.ハイドロタルサイト]
本発明にて用いてもよいハイドロタルサイトとしては、特に限定はしないが、一般的には、Mg6Al2(CO3)(OH)16・4(H2O)の組成を有するものである。好ましくは合成品で、レーザー回折法により測定した平均粒子径が1.0~5.0μmのハイドロタルサイトである。
【0020】
[併用できるゴム成分]
本発明にて用いられるクロロスルホン化ポリエチレンと共に、本発明による効果を阻害しない範囲で併用することができるゴム成分としては、アクリルゴム(ACM)、アクリル酸エチルまたは他のアクリル酸エステル類とエチレンとのゴム状共重合体(AEM)、アクリル酸エチルまたは他のアクリル酸エステル類とアクリロニトニルとのゴム状共重合体(ANM)、塩素化ポリエチレン(CPE)、エチレンとプロピレンとジエンとのゴム状共重合体(EPDM)、エチレンとプロピレンとのゴム状共重合体(EPM)、エチレンと酢酸ビニルとのゴム状共重合体(EVM)、四フッ化エチレンとプロピレンとのゴム状共重合体(FEPM)、すべての側鎖がフルオロおよびパーフルオロアルキルまたはパーフルオロアルコキシ基であるゴム状共重合体(FFKM)、フルオロおよびパーフルオロアルキルまたはパーフルオロアルコキシ基を側鎖にもつゴム状共重合体(FKM)、ポリイソブテンまたはポリイソブチレン(IM)、主鎖が完全水素化されたアクリロニトリルとブタジエンとのゴム状共重合体(HNBM)、スチレンとエチレンとブテンとのゴム状共重合体(SEBM)、スチレンとエチレンとプロピレンとのゴム状共重合体(SEPM)などを挙げることができる。
【0021】
主鎖に炭素と酸素とをもつゴムとして、エピクロロヒドリンゴム(EO)、ポリクロロメチルオキシラン(CO)、エチレンオキシドとエピクロロヒドリンとのゴム状共重合体(ECO)、エピクロロヒドリンとアリルグリシジルエーテルとのゴム状共重合体(GCO)、エチレンオキシドとエピクロロヒドリンとアリルグリシジルエーテルとのゴム状共重合体(GECO)、プロピレンオキシドとアリルグリシジルエーテルとのゴム状共重合体(GPO)などを挙げることができる。
【0022】
主鎖に不飽和炭素結合をもつゴムとして、アクリレートブタジエンゴム(ABR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素化されたアクリロニトリルとブタジエンとのゴム状共重合体(HNBR)、イソブテンとイソプレンとのゴム状共重合体(IIR)、イソプレンゴム(IR)、α-メチルスチレンとブタジエンとのゴム状共重合体(MSBR)、アクリロニトリルとブタジエンとイソプレンとのゴム状共重合体(NBIR)、アクリロニトリルとブタジエンとのゴム状共重合体(NBR)、アクリロニトリルとイソプレンとのゴム状共重合体(NIR)、天然ゴム(NR)、ノルボルネンゴム(NOR)、ビニルピリジンとブタジエンとのゴム状共重合体(PBR)、ビニルピリジンとスチレンとブタジエンとのゴム状共重合体(PSBR)、スチレンとブタジエンとのゴム状共重合体(SBR)、乳化重合で合成されたスチレンとブタジエンとのゴム状共重合体(E-SBR)、溶液重合で合成されたスチレンとブタジエンとのゴム状共重合体(S-SBR)、スチレンとイソプレンとブタジエンとのゴム状共重合体(SIBR)、臭素化されたイソブテンとイソプレンとのゴム状共重合体(BIIR)、塩素化されたイソブテンとイソプレンとのゴム状共重合体(CIIR)などを挙げることができる。ただし、クロロプレンゴムを併用しなくてもよい。
【0023】
主鎖に珪素と酸素とをもつゴムとして、ポリマー鎖にメチル置換基とフルオロ置換基とをもつシリコーンゴム(FMQ)、ポリマー鎖にメチル置換基とビニルとフルオロ置換基とをもつシリコーンゴム(FVMQ)、ポリマー鎖にメチル置換基をもつシリコーンゴム(MQ)、ポリマー鎖にメチル置換基とフェニル置換基とをもつシリコーンゴム(PMQ)、ポリマー鎖にメチル置換基とビニル置換基とフェニル置換基とをもつシリコーンゴム(PVMQ)、ポリマー鎖にメチル置換基とビニル置換基とをもつシリコーンゴム(VMQ)などを挙げることができる。
【0024】
主鎖に炭素と酸素および窒素とをもつゴムとしては、四フッ化エチレンと三フッ化ニトロソメタンとニトロソパーフルオロ酪酸とのゴム状共重合体(AFMU)、ポリエステルウレタン(AU)、ポリエーテルウレタン(EU)などが挙げられる。主鎖に硫黄と酸素および炭素をもつゴムとしては、ポリマー鎖のポリスルフィド結合の間に-CH2-CH2-O-CH2-O-CH2-CH2-基またはR基(Rは脂肪族炭化水素)のいずれかをもつゴム(OT)、ポリマー鎖のポリスルフィド結合の間に-CH2-CH2-O-CH2-O-CH2-CH2-基および通常-CH2-CH2-基(場合によっては他の脂肪族基)をもつゴム(EOT)などを挙げることができる。
【0025】
主鎖にリンと窒素とをもつゴムとしては、-P=N-鎖をもち連鎖中のリン原子に結合したフルオロアルコキシ基をもつゴム(FZ)、-P=N-鎖をもち連鎖中のリン原子に結合したアルコキシ(フェノキシおよび置換フェノキシ)をもつゴム(PZ)等を挙げることができる。
上記したこれらのゴムは、エポキシ、カルボキシ、アミノあるいは酸変性した変性ゴムでもよい。
【0026】
このうち、金属への腐食・汚染が懸念される塩素あるいは臭素を含まないACM、AEM、ANM、EPDM、EPM、EVM、FEPM、FFKM、FKM、IM、NBM、SEBM、SEPM、GPO、ABR、BR、FZ、NR、HNBR、IIR、IR、MSBR、NBIR、NBR、NIR、NOR、PBR、PSBR、SBR、E-SBR、S-SBR、SIBR、FMQ、FVMQ、MQ、PMQ、PVMQ、VMQ、AFMU、AU、EU、OT、EOT、PZ、HSBR、SEBC、CEBC、SEBSが好ましい。FMQ、FVMQ、MQ、PMQ、PVMQ、VMQについては、高温熱処理(例えば、200℃で24時間)して、接点不良の原因とされる低分子環状シロキサン(D4~D20)を完全に除去したものが好ましい。より好ましくは、ACM、AEM、ANM、EPDM、EPM、EVM、FEPM、FFKM、FKM、NBM、HNBR、NBR、IIR、NOR、AFMU、AU、EU、FZ、PZ、CEBCであり、さらに好ましくは、ACM、AEM、ANM、EPM、EPDM、FFKM、FKM、NBM、HNBR、NBR、IIR、NORである。これらは、1種または2種以上を併用してもよい。
【0027】
[カーボンブラック]
本発明にて用いてもよいカーボンブラックとしては、ハードカーボン、ソフトカーボン等の分散性、耐摩耗性向上等に使用されるカーボンブラックを挙げることができる。
【0028】
そのようなカーボンブラックの平均粒子径は50~200nmであり、より好ましくは90~130nmである。カーボンブラックの平均粒子径が50nm未満の場合、ベースとなるエラストマーとの接触する面積が増えるため、誘電正接が大きくなるので好ましくない。また、細かすぎて取り扱いも困難であるので好ましくない。また、平均粒子径が200nmより大きいカーボンブラックの場合、分散性が悪いので好ましくない。
【0029】
[加硫剤]
本発明にて用いてもよい加硫剤としては、硫黄系加硫剤、有機過酸化物加硫剤、キノイド加硫剤、樹脂加硫剤、金属酸化物加硫剤、含硫黄有機化合物加硫剤、アミン加硫剤、トリアジン系加硫剤、ポリオール加硫剤、金属石けん加硫剤、マレイミド系加硫剤、ヒドロシリル化反応用加硫剤等を適宜選択して使用することができる。
【0030】
硫黄系加硫剤としては、例えば、粉末硫黄、硫黄華、高分散性硫黄、不溶性硫黄、沈降硫黄、表面処理硫黄、コロイド硫黄、塩化硫黄、一塩化硫黄、二塩化硫黄等を挙げることができる。これらの硫黄系加硫剤は、単独で、または、2種以上を混合して使用することができる。
また、加硫・架橋剤として硫黄系加硫剤を使用する場合には、加硫促進剤を併用することもできる。
【0031】
有機過酸化物加硫剤としては、例えば、1,1-ジ第三ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、ジ第三ブチルパーオキサイド、第三ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(第三ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(第三ブチルパーオキシ)ヘキシン、1,3-ビス(第三ブチルパーオキシ-イソプロピル)ベンゼン(パーオキシP)、第三ブチルパーオキシ-イソプロピルカーボネート、アセチルシクロヘキシルスルフォニルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジアリルパーオキシジカーボネート、ジプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、ジ(メトキシイソプロピル)パーオキシジカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、第三ヘキシルパーオキシネオヘキサネート、ジ(3-メチル-3-メチロキシブチル)パーオキシジカーボネート、第三ブチルパーオキシネオデカネート、第三ヘキシルパーオキシネオデカネート、第三ブチルパーオキシネオヘキサネート、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキシド、第三ヘキシルパーキシピバレート、第三ブチルパーオキシピバレート、3,3,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、クミルパーオキシオクテート、アセチルパーオキサイド、第三ブチルパーオキシ(2-エチルヘキサネート)、ベンゾイルパーオキサイド、第三ブチルパーオキシイソブチレート、1,1-ビス(第三ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、第三ブチルパーオキシマレイックアシッド、第三ブチルパーオキシラウレート、第三ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルヘキサネート、シクロヘキサノンパーオキサイド、第三ブチルパーオキシアリルカーボネート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,2-ビス(第三ブチルパーオキシ)オクタン、第三ブチルパーオキシアセテート、2,2-ビス(第三ブチルパーオキシ)ブタン、第三ブチルパーオキシベンゾエート、ブチル-4,4-ビス(第三ブチルパーオキシ)バレレート、ジ第三ブチルジパーオキシイソフタレート、メチルエチルケトンパーオキサイド、α,α’-ビス(第三ブチルパーオキシ-mーイソプロピル)シクロヘキサン、ジイソプロピルベンゼン-ヒドロパーオキサイド、p-メンタンヒドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルヒドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、第三ブチルヒドロパーオキサイド等を挙げることができる。これらの有機過酸化物加硫剤は、単独で、または、2種以上を混合して使用することができる。
【0032】
有機過酸化物加硫剤を使用する場合には、共加硫剤を併用することもできる。共加硫剤としては、例えば、p-キノンジオキシム、p-ベンゾキノンジオキシム、p,p’-ジベンゾイルキノンジオキシム、N-メチルーN’-4-ジニトロソアニリン、N,N-m-フェニレンビスマレイミド(バルノックPM、(大内新興化学工業(株)製) 酢酸ナトリウム3水和物)、ジニトロソベンゼン、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアジンチオール、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジビニルアジペート、ビニルブチラート、ビニルステアレート、液状ポリブタジエンゴム、液状ポリイソプレンゴム、液状スチレンーブタジエンゴム、液状アクリロニトリルーブタジエンゴム、(メタ)アクリル酸マグネシウム、(メタ)アクリル酸カルシウム、(メタ)アクリル酸アルミニウム、(メタ)アクリル酸亜鉛、(メタ)アクリル酸第一錫、ヘキサメチレンジアミンカーバメート、アミルフェノールジスルフィド重合物等を挙げることができる。これらの共加硫剤は、単独で、または、2種以上を混合して使用することができる。
【0033】
キノイド加硫剤としては、例えば、p-キノンジオキシム、p,p’-ジベンゾイルキノンジオキシム、テトラクロロ-p-ベンゾキノン、ポリ-p-ジニトロベンゼン等を挙げることができる。これらのキノイド加硫剤は、単独で、または、2種以上を混合して使用することができる。樹脂加硫剤としては、例えば、アルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂、メラミン-ホルムアルデヒド縮合物、トリアジン-ホルムアルデヒド縮合物、オクチルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂、アルキルフェノール・スルフィド樹脂、ヘキサメトキシメチル・メラミン樹脂等を挙げることができる。これらの樹脂加硫剤は、単独で、または、2種以上を混合して使用することができる。金属酸化物加硫剤としては、例えば、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、一酸化鉛等を挙げることができる。これらの金属酸化物加硫剤は、単独で、または、2種以上を混合して使用することができる。
【0034】
含硫黄有機加硫剤としては、例えば、モルホリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、N,N’-ジチオ-ビス(ヘキサヒドロ-2H-アゼピノン-2)、チウラムポリスルフィド、2-(4’-モルホリノ・ジチオ)ベンゾチアゾール等を挙げることができる。これらの含硫黄有機加硫剤は、単独で、または、2種以上を混合して使用することができる。
【0035】
ポリアミン系加硫剤としては、例えば、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレン・テトラミン、テトラエチレン・ペンタミン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)カルバメート、N,N’-ジシンナミリデン-1,6-ヘキサンジアミン、アンモニウムベンゾエート等を挙げることができる。これらのポリアミン系加硫剤は、単独で、または、2種以上を混合して使用することができる。トリアジン系加硫剤としては、例えば、2,4,6-トリメルカプト-s-トリアジン、2-ジ-n-ブチルアミノ-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン等を挙げることができる。これらのトリアジン系加硫剤、単独で、または、2種以上を混合して使用することができる。
【0036】
ポリオ-ル加硫剤としては、例えば、ビスフェノ-ルA、ビスフェノ-ルAF、ハイドロキノン、ペンタエリスリトール等を挙げることができる。これらのポリオール系加硫剤は、単独で、または、2種以上を混合して使用することができる。金属石けん加硫剤としては、例えばステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム等を挙げることができる。これらの金属石けん加硫剤は、単独で、または、2種以上を混合して使用することができる。マレイミド系加硫剤としては、例えば、N,N’-m-フェニレンジマレイミド等を挙げることができる。
【0037】
ヒドロシリル化反応用加硫剤としては、一分子中に平均2個以上のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンである。該オルガノポリシロキサンの分子構造は、特に限定されないが、例えば、直鎖状、分岐状、環状、または三次元網状構造の樹脂状物のいずれでもよい。ケイ素原子に結合している有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基、ベンジル基、フェチル基等のアラルキル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が例示され、好ましくは、メチル基である。
【0038】
このようなオルガノポリシロキサンとしては、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、および、これらのオルガノポリシロキサンの2種以上の混合物を挙げることができる。
【0039】
ヒドロシリル化反応を促進させるためのヒドロシリル化反応用触媒としては、白金系触媒、ロジウム系触媒、イリジウム系触媒、パラジウム系触媒、ルテニウム系触媒等であり、好ましくは、白金系触媒である。具体的には、白金微粉末、白金黒、塩化白金酸、四塩化白金、アルコール変性塩化白金酸、白金のオレフィン錯体、白金のアルケニルシロキサン錯体、白金のカルボニル錯体、これらの白金系触媒を含むメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、シリコーン樹脂等の熱可塑性有機樹脂粉末等の白金系触媒である。
【0040】
上記加硫剤の中でも、好ましくは、O2、NO2、H2S、Cl2、NH3のような金属腐食を起こす腐食性ガスの発生を伴わない加硫剤である有機過酸化物加硫剤、キノイド加硫剤、樹脂加硫剤、金属酸化物加硫剤、ポリオール加硫剤、金属石けん加硫剤、ヒドロシリル化反応用加硫剤であり、より好ましくは、有機過酸化物加硫剤である。
さらに、本発明の難燃性ゴム組成物による効果を毀損しない範囲において、ゴム組成物に添加することが公知の各種添加剤、例えば、各種老化防止剤、充填剤、共架橋剤、架橋促進剤、架橋助剤、軟化剤、可塑剤、安定剤、および、加工助剤等を適宜添加することが可能である。
【0041】
[芳香族第二級アミン系老化防止剤]
芳香族第二級アミン系老化防止剤としては、フェニル-α-ナフチルアミン、アルキル化ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、フェノチアジンの誘導体、ρ-(ρ-トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、N,N’-ジ-2-ナフチル-ρ-フェニレンジアミン、N,N’-ジフェニル-ρ-フェニレンジアミン、N-フェニル-N’-イソプロピル-ρ-フェニレンジアミン、N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-ρ-フェニレンジアミン、N-フェニル-N’-(1-メチルヘプチル)-ρ-フェニレンジアミン、N-フェニル-N’-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)-ρ-フェニレンジアミンといったものが、単独で、または、2種以上を併用して使用することができる。
【0042】
[ベンズイミダゾール系老化防止剤]
ベンズイミダゾール系老化防止剤を含有させることができる。
ベンズイミダゾール系老化防止剤としては、2-メルカプトベンズイミダゾール、2-メルカプトメチルベンズイミダゾール、2-メルカプトベンズイミダゾールとフェノール縮合物の混合品、2-メルカプトベンズイミダゾールの金属塩、2-メルカプトメチルベンズイミダゾールの金属塩、5-メルカプトメチルベンズイミダゾール、5-メルカプトメチルベンズイミダゾールの金属塩等が挙げられる。
【0043】
[その他老化防止剤]
その他の老化防止剤として、2,5-ジ-(t-アミル)-ヒドロキノン、2,5-ジ-t-ブチルヒドロキノン等のフェノール系老化防止剤、ジエチルジチオカルバミン酸ニッケル、ジメチルジチオカルバミン酸ニッケル、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル、ジイソブチルジチオカルバミン酸ニッケル、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅、N-エチル-N-フェニルジチオカルバミン酸銅、N-ペンタメチレンジチオカルバミン酸銅、ジベンジルジチオカルバミン酸銅等のジチオカルバミン酸塩系老化防止剤、1,3-ビス(ジメチル・アミノプロピル)-2-チオ尿素、トリブチルチオ尿素等のチオ尿素系老化防止剤、ジラウリル・チオジプロピオネート、ジステアリル・チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3’-チオジプロピオネート、ジトリデシル-3,3’-チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール-テトラキス-(β-ラウリル-チオプロピオネート)、ペンタエリスリチル-テトラキス〔3-(3.5-ジ-ターシャリブチル-4-ヒドロキシフェノール)プロピオネート〕(イルガノックス1010(チバガイギー社製))、ジラウリル・チオジプロピオネート等の有機チオ酸系老化防止剤、トリス(ノニルフェニル)フォスファイト、トリス(混合モノ-およびジ-ノニルフェニル)フォスファイト、ジフェニル・モノ(2-エチルヘキシル)フォスファイト、ジフェニル・モノトリデシル・フォスファイト等の亜リン酸系老化防止剤を、本発明による効果を阻害しない範囲にて配合することができる。
また、アミン-ケトン系老化防止剤である、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物(大内新興化学工業(株)製「ノクラック224」)も併用することができる。
【0044】
本発明の難燃性ゴム組成物の特性を失わず、本発明による効果を毀損することがない範囲において、液状ゴム、可塑剤、軟化剤、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、熱硬化性樹脂、充填剤、架橋助剤、老化防止剤、酸化防止剤、加工助剤、活性剤、紫外線吸収剤、粘着付与剤、滑剤、奪水剤、ワックス、光安定剤、内部離型剤、スコーチ防止剤、発泡剤、発泡助剤、抗菌剤、防錆剤、防黴剤、素練り促進剤、蓄熱剤、電子導電付与剤、イオン導電付与剤、蓄光剤、着色剤、応力発光剤、フェライト系軟磁性粉体,金属系軟磁性粉体、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、カーボンナノコーン、カーボンナノチューブ、カーボンナノコイル、カーボンマイクロコイル、カーボンナノウォール、カーボンナノチャプレット、フラーレン、カーボンブラック、グラファイト、グラフェン、カーボンナノフレーク、および、これらの誘導体、中空ナノシリカ等を含有することができる。
ただし、膨脹性黒鉛は、含有する必要がない。
【0045】
本発明の難燃性ゴム組成物は、配合される材料を、通常の2本ロール、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、インターナルミキサー等の加工機を用いて混練して得ることができる。また、得られたゴム組成物を蒸気加硫することにより、加硫されたゴム成形体とすることができる。なお、蒸気加硫の条件は、公知の条件から任意の条件を選択することができる。
本発明による加硫された成形体は、シート状物、ホース、その他のゴム成形体が形成され得る形状や構造ものでよい。また、優れた難燃性を有するという性質からみて、難燃性燃料ホース等のゴム層で、特に外面ゴム層のように、外部環境からの難燃性を必要とする用途に使用するためのものとすることもできる。
【0046】
上記の本発明による加硫された成形体の一例として、
図1にホースを示す。
図1は、1~4の4層からなるホースであり、例えば、船舶用燃料ホースである。
最内面ゴム層1は、ホースが輸送する燃料等の液体及び/又は気体が直接的に接する最内面を形成する層であり、その液体及び/又は気体の成分により選択されたゴム組成物からなる。
内面ゴム層2は、最内面ゴム層1を支持するための層であり、例えば、ホースの可撓性等を調整するために設けられる。
繊維補強層3は、ホースに耐圧強度等を付与するために、設けられる層であり、ポリエステル等の樹脂繊維やガラス繊維等の、補強用の公知の繊維から形成される。
難燃性ゴム組成物からなる外面ゴム層4は、本発明の難燃性ゴム組成物から形成される層であり、例えば、下記の実施例における燃焼試験によっても、所定の自己消火性を備え、かつ、本発明による効果も備える層である。
【0047】
次に、本発明を実施例に基づいて、さらに具体的に説明するが、本発明は、これらのみに限定されるものではない。
【0048】
下記表1の組成(値は重量部)となるように各材料を混合し、シート状に成形し蒸気加硫を行って、縦横厚さが100mm×100mm×2mmの試験片を得た。
各試験片について、
図2(a)のガスバーナーを準備し、これを
図2(b)となるように配置して、ガスバーナーの炎を当てて燃焼試験を行った。この試験において、ガスバーナーの炎を当てた後から、可燃性ガスが発生して、試験片が燃焼を開始するまでの時間、および、試験片の燃焼が停止するまでの時間(自己消火性)を測定した。なお、船舶用燃料ホースとするために必要な難燃性に関する要件であるSAE J1527に適合させるためには、本燃焼試験において、40秒以内の自己消火性が必要である。
【0049】
【0050】
CSM:クロロスルホン化ポリエチレン
TS-530(東ソー(株)製)
TS-830(東ソー(株)製)
CDP:クレジルジフェニルホスフェート
パーブチルP:α,α’-ジ(t-ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン
表中「粒子径」とあるのは「平均粒子径」のことである。
【0051】
実施例1および2によれば、燃焼試験の結果、ガスバーナーの炎6を当て始めて20秒後に、可燃性ガスの発生と共に試験片5の燃焼が開始した。その後、40秒後に試験片5の燃焼が停止した。
また、実施例1および2は、蒸気加硫後において、試験片5の表面にイントメッセント系難燃剤に由来する白色の析出物はなかった。
これに対して、比較例1~3によれば、燃焼試験の結果、ガスバーナーの炎6を当て始めて20秒後に、可燃性ガスの発生と共に試験片5の燃焼が開始した。その後、比較例1では、110秒後に試験片5の燃焼が停止し、比較例2では、80秒後に試験片5の燃焼が停止し、比較例3では、40秒後に試験片5の燃焼が停止した。また、比較例4によれば、燃焼試験の結果、燃焼しなかった。そして、比較例5によれば、燃焼試験の結果、ガスバーナーの炎6を当て始めて20秒後に、可燃性ガスの発生と共に試験片5の燃焼が開始した。その後、40秒後に試験片5の燃焼が停止した。
蒸気加硫後において、比較例1はもちろん、比較例2では、試験片5の表面にイントメッセント系難燃剤に由来する白色の析出物はなかった。比較例2では、イントメッセント系難燃剤の含有量が少なかったため、析出はしなかったが、試験片5の燃焼が停止するのに80秒という長時間を要した。
比較例3では、外観に影響を与える程のイントメッセント系難燃剤に由来する白色の析出物が少し確認できた。比較例4では、外観に大きな影響を与える程のイントメッセント系難燃剤に由来する白色の析出物が発生した。比較例5では、外観に影響を与える程のイントメッセント系難燃剤に由来する白色の析出物が少し確認できた。
これらの結果を総合すると、各実施例によれば、十分な難燃性を得ることができ、同時に、成形体表面には、イントメッセント系難燃剤に由来する白色の析出物は確認できなかった。
比較例1および2では、十分な難燃性を発揮できず、比較例3~5によれば、イントメッセント系難燃剤に由来する白色の析出物が、少なくとも無視できない程度に発生した。
【符号の説明】
【0052】
1.最内面ゴム層
2.内面ゴム層
3.繊維補強層
4.難燃性ゴム組成物からなる外面ゴム層
5.試験片
6.ガスバーナーの炎