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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-31
(45)【発行日】2023-06-08
(54)【発明の名称】変形解析方法及び変形解析装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/16 20060101AFI20230601BHJP
【FI】
G01B11/16 G
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2019148680
(22)【出願日】2019-08-13
(65)【公開番号】P2021032566
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】503249810
【氏名又は名称】株式会社XTIA
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100192212
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 貴明
(74)【代理人】
【識別番号】100204032
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 浩之
(72)【発明者】
【氏名】今井 一宏
(72)【発明者】
【氏名】興梠 元伸
(72)【発明者】
【氏名】上島 敦彦
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-226918(JP,A)
【文献】国際公開第2018/168757(WO,A1)
【文献】特開2000-180153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G01B 21/00-21/32
G01B 9/00-9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元(X,Y,Z)空間において測定対象物に測定光として照射されるレーザー光により上記測定対象物の表面を二次元(X ,Y)方向に走査して、上記測定対象物に照射され該測定対象物により反射された上記測定光の反射光と基準光との干渉光を検出することにより得られる干渉信号から、上記測定対象物の変形前後の上記測定光の照射位置(x,y,z)までの距離情報(z)を生成して、上記測定対象物の変形状態を解析する変形解析方法であって、
上記測定対象物の表面を走査手段により二次元(X,Y)方向に走査される上記測定光の照射位置(x,y,z)の上記三次元(X,Y,Z)空間における補正量の立体的な分布としての校正データ(Δx,Δy,Δz)を保持しておき、
上記測定光により上記測定対象物の表面を二次元(X,Y)方向に走査して得られる上記干渉信号から上記三次元(X,Y,Z) 空間における上記測定光の照射位置(x,y,z)までの距離情報(z)を算出し、上記校正データ(Δx,Δy,Δzを加算することにより校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz)を上記測定対象物の変形前後において生成し、
変形前の上記測定対象物の上記校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(Before)と変形後の上記測定対象物の上記校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(After)を用いて上記測定対象物の変形状態を解析することを特徴とする変形解析方法。
【請求項2】
三次元(X,Y,Z)空間における予め校正された座標位置(x,y,z)情報を与える校正治具に上記測定光を照射して得られる干渉信号から、上記走査手段により走査される上記三次元(X,Y,Z)空間における上記測定光の照射位置(x,y,z)の校正データ(Δx,Δy,Δz)を補正量の立体的な分布として生成して校正データ保持手段に保持しておくことを特徴とする請求項1記載の変形解析方法。
【請求項3】
上記測定対象物は加熱により変形する部材であり、
加熱前に得られる上記校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(Before) と加熱後に得られる上記校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(After)を用いて、上記測定対象物の熱変形の状態を解析することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の変形解析方法。
【請求項4】
上記測定対象物は荷重により変形する梁部材であり、
荷重の印加前に得られる上記校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(Before) と荷重の印加後に得られる上記校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(After)を用いて、上記梁部材の荷重による変形状態を解析することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の変形解析方法。
【請求項5】
上記測定対象物は頭付き軸体であり、
軸力印加前に得られる上記頭付き軸体の頭部の上記校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(Before) と軸力印加後に得られる上記校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(After)を用いて、上記頭付き軸体の軸力による頭部の変形状態を解析することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の変形解析方法。
【請求項6】
上記頭付き軸体の頭部の軸力印加前に得られる上記頭付き軸体の頭部の上記校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(Before) と軸力印加後に得られる上記校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(After)について、
上記頭部の縁に基準点を設定し、基準点を中心に所定範囲内にある画素の距離情報の平均値を基準面として該基準面から頭部の最深点までの深さΔz(Before) , Δz(After)をそれぞれ求め、次の式
【数1】
にて示される差分Δzを上記軸力印加前後の上記頭付き軸体の頭部の変形量とすることを特徴とする請求項5に記載の変形解析方法。
【請求項7】
上記頭付き軸体の頭部の軸力印加前に得られる上記頭付き軸体の頭部の上記校正された距離画像情報(x +Δx ,y +Δy ,z +Δz (Before) と軸力印加後に得られる上記校正された距離画像情報(x +Δx ,y +Δy ,z +Δz (After) について、
上記頭部の重心を求め、該重心から所定半径の円周上の各画素の距離情報の平均値を基準面として該基準面から頭部の最深点までの深さΔz(Before) , Δz(After)をそれぞれ求め、次の式
【数2】
にて示される差分Δzを上記軸力印加前後の上記頭付き軸体の頭部の変形量とすることを特徴とする請求項5に記載の変形解析方法。
【請求項8】
三次元(X,Y,Z)空間において測定対象物に照射する測定光として、レーザー光を出射する測定光発生手段と、
上記測定光により上記測定対象物の表面を二次元(X,Y)方向に走査する走査手段と、
上記走査手段により上記測定対象物の表面を走査する上記測定光の照射位置(x,y,z)の上記三次元(X,Y,Z)空間における補正量の立体的な分布としての校正データ(Δx ,Δy,Δz)を保持する校正データ保持手段と、
上記測定対象物に照射され該測定対象物により反射された上記測定光の反射光と基準光とが干渉光学系を介して干渉光として入射される光検出器により干渉信号を生成する干渉光検出手段と、
上記干渉光検出手段により得られる干渉信号から上記測定光が照射された上記測定対象物の照射位置(x,y,z)までの距離情報(z)を演算し、上記校正データ保持手段により与えられる上記校正データ(Δx ,Δy,Δzを加算することにより校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz)を生成する演算処理手段と
を備え、
上記演算処理手段により上記測定対象物の変形前後の上記測定対象物の照射位置(x,y,z)までの距離情報(z)から生成される変形前の上記測定対象物の上記校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(Before)と変形後の上記測定対象物の上記校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(After)を用いて上記測定対象物の変形状態を解析することを特徴とする変形解析装置。
【請求項9】
上記走査手段は、上記測定対象物と上記測定光の光軸とを相対的に移動させて、上記測定光により上記測定対象物の表面を走査することを特徴とする請求項8に記載の変形解析装置。
【請求項10】
上記走査手段は、上記測定光を反射する角度が変化することにより光軸を移動させる二次元の可動ミラー機構からなることを特徴とする請求項9に記載の変形解析装置。
【請求項11】
上記走査手段は、上記測定光を反射する角度が変化することにより光軸を移動させる一次元の可動ミラー機構と、該一次元の可動ミラー機構による上記光軸の移動方向と直交する方向に上記測定対象物と上記測定光の光軸とを相対的に移動させる一次元の送り機構からなることを特徴とする請求項9に記載の変形解析装置。
【請求項12】
上記走査手段は、上記測定対象物又は上記測定光の光軸を二次元方向に移動させる二次元の送り機構からなることを特徴とする請求項9に記載の変形解析装置。
【請求項13】
上記走査手段は、上記測定光発生手段から出射されたレーザー光を測定光としてテレセントリック光学系を介して上記測定対象物に照射することを特徴とする請求項9乃至請求項12の何れか1項に記載の変形解析装置。
【請求項14】
上記校正データ保持手段には、三次元(X,Y,Z)空間における予め校正された座標位置(x,y,z)情報を与える校正治具に上記測定光を照射して得られる干渉信号から、上記走査手段により走査される上記三次元(X,Y,Z)空間における上記測定光の照射位置(x,y,z)の補正量の立体的な分布としての校正データ(Δx,Δy,Δz)を生成して保持することを特徴とする請求項8乃至請求項13の何れか1項に記載の変形解析装置。
【請求項15】
上記測定対象物は加熱により変形する部材であり、
上記演算処理手段により、加熱前に得られる上記校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(Before) と加熱後に得られる上記校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(After)を用いて、上記測定対象物の熱変形の状態を解析することを特徴とする請求項8乃至請求項14の何れか1項に記載の変形解析装置。
【請求項16】
上記測定対象物は荷重により変形する梁部材であり、
上記演算処理手段により、荷重の印加前に得られる上記校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(Before) と荷重の印加後に得られる上記校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(After)を用いて、上記梁部材の荷重による変形状態を解析することを特徴とする請求項8乃至請求項14の何れか1項に記載の変形解析装置。
【請求項17】
上記測定対象物は頭付き軸体であり、
上記演算処理手段により、軸力印加前に得られる上記頭付き軸体の頭部の上記校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(Before) と軸力印加後に得られる上記校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(After)を用いて、上記頭付き軸体の軸力による頭部の変形状態を解析することを特徴とする請求項8乃至請求項14の何れか1項に記載の変形解析装置。
【請求項18】
上記演算処理手段では、上記頭付き軸体の頭部の軸力印加前に得られる上記頭付き軸体の頭部の上記校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(Before) と軸力印加後に得られる上記校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(After)について、上記頭部の縁に基準点を設定し、基準点を中心に所定範囲内にある画素の距離情報の平均値を基準面として該基準面から頭部の最深点までの深さΔz(Before) , Δz(After)をそれぞれ求め、次の式
【数3】
にて示される差分Δzを上記軸力印加前後の上記頭付き軸体の頭部の変形量とすることを特徴とする請求項17に記載の変形解析装置。
【請求項19】
上記演算処理手段では、上記頭付き軸体の頭部の軸力印加前に得られる上記頭付き軸体の頭部の上記校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(Before) と軸力印加後に得られる上記校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(After)について、上記頭部の重心を求め、該重心から所定半径の円周上の各画素の距離情報の平均値を基準面として該基準面から頭部の最深点までの深さΔz(Before),Δz(After)をそれぞれ求め、次の式
【数4】
にて示される差分Δzを上記軸力印加前後の上記頭付き軸体の頭部の変形量とすることを特徴とする請求項17に記載の変形解析装置。
【請求項20】
それぞれ周期的に強度又は位相が変調され、互いに変調周期が異なる干渉性のある基準光と測定光を出射する第1及び第2の光源と、所定光路長の基準光路を通過させる上記基準光と上記測定対象物の表面に照射される測定光との干渉光を検出する基準光検出器と、所定光路長の基準光路を通過させた基準光と上記測定対象物の表面により反射された測定光の反射光との干渉光を検出する測定光検出器とを備えるレーザー距離計から出射される測定光で、上記走査手段により測定対象物の表面を上記測定面として二次元(X,Y)方向に走査して、
上記演算処理手段により、上記基準光検出器により検出された干渉信号と上記測定光検出器により検出された干渉信号の時間差から、光速と測定波長における屈折率から上記基準面までの距離と上記測定面までの距離の差を求めて、上記測定対象物の変形状態を解析することを特徴とする請求項8乃至請求項19の何れか1項に記載の変形解析装置。
【請求項21】
上記レーザー距離計は、上記基準光を出射する光コム発生器と、上記測定光を出射する光コム発生器を備える光コム距離計であることを特徴とする請求項20項記載の変形解析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物の変形状態を解析する変形解析方法及び変形解析装置に関し、特に、三次元空間(X,Y,Z)においてレーザー干渉により距離測定を行って三次元の変形状態を解析する変形解析方法及び変形解析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、レーザー三次元計測装置により得られる三次元の形状情報を用いて測定対象物の変形状態を解析する三次元変形解析装置が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
本件発明者等は、基準面に照射される基準光と測定面に照射される測定光との光コムの干渉光を基準光検出器により検出するとともに、上記基準面により反射された基準光と上記測定面により反射された測定光との光コムの干渉光を測定光検出器により検出して、上記基準光検出器と測定光検出器により得られる2つ干渉信号の時間差から、上記基準面までの距離と上記測定面までの距離の差を求めることにより、高精度で、しかも短時間に行うことの可能な距離計及び距離測定方法並びに光学的三次元形状測定機を先に提案している(例えば、特許文献3参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-66169号公報
【文献】特開2018-96707号公報
【文献】特許第5231883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
被締結物に締結されたボルトの軸力測定では、ボルトの締結前の頭部の距離画像を用いてボルトの頭部の窪み量(凹み量)を算出し、ボルトの締結後の頭部の距離画像を用いてボルトの頭部の窪み量(凹み量)を算出して、算出された締結前後の窪み量の差を算出することで、頭部の変位量を算出するようにしている。
【0006】
このようにボルトの締結後の頭部の距離画像を用いて頭部の変位量を得る場合、ボルトの締結により頭部が回転するので、締結前の頭部の距離画像と締結後の頭部の距離画像とでは頭部の向きが異なることになり、算出される頭部の変位量に誤差が発生する。
【0007】
特許文献2の開示技術では、頭部の距離画像を得るための撮像素子を締結前後の頭部の回転角度に対応するように回転させることにより、締結前後の頭部の距離画像における頭部の姿勢を同じにすることにより、誤差を少なくするようにしている。
【0008】
ボルトの締結における締結前後の頭部の回転による姿勢変化のように、力が加わる前後で測定対象物の姿勢が変化することがある。力による変形を検出するためには、物体の形状を正確に認識して同一の基準部位と注目点の相対高さ変化を求める必要がある。
【0009】
三次元計測装置を用いて三次元の変形状態を解析する場合、測定対象物に照射する測定光を二次元(X,Y)方向に走査して測定対象物による上記測定光の反射光を検出することにより得られる距離画像には、測定光の光軸の傾斜や走査手段による走査誤差などに起因する誤差が含まれることになり、3次元的に校正されていない走査手段では、高さの計測精度が高い計測器を用いても測定対象物の姿勢変の変化のために二次元(X,Y)平面内の座標誤差が高さに依存して拡大するため、注目点の高さ変化の検出を一層困難にする。この状況では、高精度で、しかも短時間に行うことの可能な光コム干渉による距離測定を行っても、変形解析の精度は二次元(X,Y)平面内の座標誤差の制約を受け、光コム干渉による測定精度とはならない。
【0010】
これらの問題を回避するには、基準部位と注目点の高さが略同一になるように、撮像素子と測定対象物の距離を微調整し、二次元(X,Y)平面内での測定対象物の角度が力の加わる前後で同一になるように撮像素子と測定対象物の相対角度の調整を行って、同一条件で注目点の高さを計測できるようにする必要がある。
【0011】
そこで、本発明の目的は、上述の如き従来の実情に鑑み、二次元(X,Y)平面内の座標誤差の制約を受けることなく、三次元空間(X,Y,Z)において光コム干渉による測定精度で距離測定を行い、変形前後の測定対象物の距離画像を得て、三次元の変形状態を精度よく解析することのできる変形解析方法及び変形解析装置を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的、本発明によって得られる具体的な利点は、以下に説明される実施の形態の説明から一層明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、三次元(X,Y,Z)空間において測定対象物に測定光として照射されるレーザー光により上記測定対象物の表面を二次元(X ,Y)方向に走査して、上記測定対象物に照射され該測定対象物により反射された上記測定光の反射光と基準光との干渉光を検出することにより得られる干渉信号から、上記測定対象物の変形前後の上記測定光の照射位置(x,y,z)までの距離情報(z)を生成して、上記測定対象物の変形状態を解析する変形解析方法であって、上記測定対象物の表面を走査手段により二次元(X,Y)方向に走査される上記測定光の照射位置(x,y,z)の上記三次元(X,Y,Z)空間における補正量の立体的な分布としての校正データ(Δx,Δy,Δz)を保持しておき、上記測定光により上記測定対象物の表面を二次元(X,Y)方向に走査して得られる上記干渉信号から上記三次元(X,Y,Z) 空間における上記測定光の照射位置(x,y,z)までの距離情報(z)を算出し、上記校正データ(Δx ,Δy,Δzを加算することにより校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz)を上記測定対象物の変形前後において生成し、変形前の上記測定対象物の上記校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(Before)と変形後の上記測定対象物の上記校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(After)を用いて上記測定対象物の変形状態を解析することを特徴とする。
【0014】
本発明に係る変形解析方法では、三次元(X,Y,Z)空間における予め校正された座標位置(x,y,z)情報を与える校正治具に上記測定光を照射して得られる干渉信号から、上記走査手段により走査される上記三次元(X,Y,Z)空間における上記測定光の照射位置(x,y,z)の校正データ(Δx ,Δy,Δz)を補正量の立体的な分布として生成して校正データ保持手段に保持しておくものとすることができる。
【0015】
また、本発明に係る変形解析方法では、上記測定対象物は加熱により変形する部材であり、加熱前に得られる上記校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(Before) と加熱後に得られる上記校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(After)を用いて、上記測定対象物の熱変形の状態を解析するものとすることができる。
【0016】
また、本発明に係る変形解析方法では、上記測定対象物は荷重により変形する梁部材であり、荷重の印加前に得られる上記校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(Before) と荷重の印加後に得られる上記校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(After)を用いて、上記梁部材の荷重による変形状態を解析するものとすることができる。
【0017】
また、本発明に係る変形解析方法では、上記測定対象物は頭付き軸体であり、軸力印加前に得られる上記頭付き軸体の頭部の上記校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(Before) と軸力印加後に得られる上記校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(After)を用いて、上記頭付き軸体の軸力による頭部の変形状態を解析するものとすることができる。
【0018】
また、本発明に係る変形解析方法では、上記頭付き軸体の頭部の軸力印加前に得られる上記頭付き軸体の頭部の上記校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(Before) と軸力印加後に得られる上記校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(After)について、上記頭部の縁に基準点を設定し、基準点を中心に所定範囲内にある画素の距離情報の平均値を基準面として該基準面から頭部の最深点までの深さΔz(Before),Δz(After)をそれぞれ求め、次の式
【数5】
にて示される差分Δzを上記軸力印加前後の上記頭付き軸体の頭部の変形量とするものとすることができる。
【0019】
さらに、本発明に係る変形解析方法では、上記頭付き軸体の頭部の軸力印加前に得られる上記頭付き軸体の頭部の上記校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(Before) と軸力印加後に得られる上記校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(After)、について、上記頭部の重心を求め、該重心から所定半径の円周上の各画素の距離情報の平均値を基準面として該基準面から頭部の最深点までの深さΔz(Before),Δz(After)をそれぞれ求め、次の式
【数6】
にて示される差分Δzを上記軸力印加前後の上記頭付き軸体の頭部の変形量とするものとすることができる。
【0020】
また、本発明は、変形解析装置であって、三次元(X,Y,Z)空間において測定対象物に照射する測定光として、レーザー光を出射する測定光発生手段と、上記測定光により上記測定対象物の表面を二次元(X,Y)方向に走査する走査手段と、上記走査手段により上記測定対象物の表面を走査する上記測定光の照射位置(x,y,z)の上記三次元(X,Y,Z)空間における補正量の立体的な分布としての校正データ(Δx,Δy,Δz)を保持する校正データ保持手段と、上記測定対象物に照射され該測定対象物により反射された上記測定光の反射光と基準光とが干渉光学系を介して干渉光として入射される光検出器により干渉信号を生成する干渉光検出手段と、上記干渉光検出手段により得られる干渉信号から上記測定光が照射された上記測定対象物の照射位置(x,y,z)までの距離情報(z)を演算し、上記校正データ保持手段により与えられる上記校正データ(Δx,Δy,Δzを加算することにより校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz)を生成する演算処理手段とを備え、上記演算処理手段により上記測定対象物の変形前後の上記測定対象物の照射位置(x,y,z)までの距離情報(z)から生成される変形前の上記測定対象物の上記校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(Before)と変形後の上記測定対象物の上記校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(After)を用いて上記測定対象物の変形状態を解析することを特徴とする
【0021】
本発明に係る変形解析装置において、上記走査手段は、上記測定対象物と上記測定光の光軸とを相対的に移動させて、上記測定光により上記測定対象物の表面を走査するものとすることができる。
【0022】
また、本発明に係る変形解析装置において、上記走査手段は、上記測定光を反射する角度が変化することにより光軸を移動させる二次元の可動ミラー機構からなるものとすることができる。
【0023】
また、本発明に係る変形解析装置において、上記走査手段は、上記測定光を反射する角度が変化することにより光軸を移動させる一次元の可動ミラー機構と、該一次元の可動ミラー機構による上記光軸の移動方向と直交する方向に上記測定対象物と上記測定光の光軸とを相対的に移動させる一次元の送り機構からなるものとすることができる。
【0024】
また、本発明に係る変形解析装置において、上記走査手段は、上記測定対象物又は上記測定光の光軸を二次元方向に移動させる二次元の送り機構からなるものとすることができる。
【0025】
また、本発明に係る変形解析装置において、上記走査手段は、上記測定光発生手段から出射されたレーザー光を測定光としてテレセントリック光学系を介して上記測定対象物に照射するものとすることができる。
【0026】
また、本発明に係る変形解析装置において、上記校正データ保持手段には、三次元(X,Y,Z)空間における予め校正された座標位置(x,y,z)情報を与える校正治具に上記測定光を照射して得られる干渉信号から、上記走査手段により走査される上記三次元(X,Y,Z)空間における上記測定光の照射位置(x,y,z)の補正量の立体的な分布としての校正データ(Δx,Δy,Δz)を生成して保持するものとすることができる。
【0027】
また、本発明に係る変形解析装置において、上記測定対象物は加熱により変形する部材であり、上記演算処理手段により、加熱前に得られる上記校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(Before) と加熱後に得られる上記校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(After)を用いて、上記測定対象物の熱変形の状態を解析するものとすることができる。
【0028】
また、本発明に係る変形解析装置において、上記測定対象物は荷重により変形する梁部材であり、上記演算処理手段により、荷重の印加前に得られる上記校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(Before) と荷重の印加後に得られる上記校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(After)を用いて、上記梁部材の荷重による変形状態を解析するものとすることができる。
【0029】
また、本発明に係る変形解析装置において、上記測定対象物は頭付き軸体であり、上記演算処理手段により、軸力印加前に得られる上記頭付き軸体の頭部の上記校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(Before) と軸力印加後に得られる上記校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(After)を用いて、上記頭付き軸体の軸力による頭部の変形状態を解析するものとすることができる。
【0030】
また、本発明に係る変形解析装置において、上記演算処理手段では、上記頭付き軸体の頭部の軸力印加前に得られる上記頭付き軸体の頭部の上記校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(Before) と軸力印加後に得られる上記校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(After)について、上記頭部の縁に基準点を設定し、基準点を中心に所定範囲内にある画素の距離情報の平均値を基準面として該基準面から頭部の最深点までの深さΔz(Before),Δz(After)をそれぞれ求め、次の式
【数7】
にて示される差分Δzを上記軸力印加前後の上記頭付き軸体の頭部の変形量とするものとすることができる。
【0031】
また、本発明に係る変形解析装置において、上記演算処理手段では、上記頭付き軸体の頭部の軸力印加前に得られる上記頭付き軸体の頭部の上記校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(Before) と軸力印加後に得られる上記校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(After)について、上記頭部の重心を求め、該重心から所定半径の円周上の各画素の距離情報の平均値を基準面として該基準面から頭部の最深点までの深さΔz(Before),Δz(After)をそれぞれ求め、次の式
【数8】
にて示される差分Δzを上記軸力印加前後の上記頭付き軸体の頭部の変形量とするものとすることができる。
【0032】
また、本発明に係る変形解析装置では、それぞれ周期的に強度又は位相が変調され、互いに変調周期が異なる干渉性のある基準光と測定光を出射する第1及び第2の光源と、所定光路長の基準光路を通過させる上記基準光と上記測定対象物の表面に照射される測定光との干渉光を検出する基準光検出器と、所定光路長の基準光路を通過させた基準光と上記測定対象物の表面により反射された測定光の反射光との干渉光を検出する測定光検出器とを備えるレーザー距離計から出射される測定光で、上記走査手段により測定対象物の表面を上記測定面として二次元(X,Y)方向に走査して、上記演算処理手段により、上記基準光検出器により検出された干渉信号と上記測定光検出器により検出された干渉信号の時間差から、光速と測定波長における屈折率から上記基準面までの距離と上記測定面までの距離の差を求めて、上記測定対象物の変形状態を解析するものとすることができる。
【0033】
さらに、上記レーザー距離計は、上記基準光を出射する光コム発生器と、上記測定光を出射する光コム発生器を備える光コム距離計であるものとすることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明では、三次元(X,Y,Z)空間において測定対象物に測定光として照射されるレーザー光により上記測定対象物の表面を二次元(X,Y)方向に走査して、上記測定対象物に照射され該測定対象物により反射された上記測定光の反射光と基準光との干渉光を検出することにより得られる干渉信号から、上記測定対象物の変形前後の上記測定光の照射位置(x,y,z)までの距離情報(z)を生成して、上記測定対象物の変形状態を解析するにあたり、測定対象物の表面を走査手段により二次元(X,Y)方向に走査される上記測定光の照射位置(x,y,z)の上記三次元(X,Y,Z)空間における校正データ(Δx,Δy,Δz)を保持しておき、上記測定光により上記測定対象物の表面を二次元(X,Y)方向に走査して得られる上記干渉信号から、上記校正データ(Δx,Δy,Δz)により校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz)を生成するので、測定対象物の表面に照射する測定光の光軸の傾きや走査手段による走査の非線形性など起因する二次元(X,Y)平面内の座標誤差を除去した距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz)により高精度に変形解析を行うことができる。
【0035】
また、光コム距離計により得られる上記干渉信号から校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz)を生成することにより、三次元空間(X,Y,Z)において光コム干渉による測定精度で距離測定を行い、高精度に変形解析を行うことができる。
【0036】
したがって、本発明によれば、二次元(X,Y)平面内の座標誤差の制約を受けることなく、三次元空間(X,Y,Z)において光コム干渉による測定精度で距離測定を行い、変形前後の測定対象物の距離画像を得て、三次元の変形状態を精度よく解析することのできる変形解析方法及び変形解析装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明を適用した変形解析装置の基本構成を示す模式図である。
図2】上記変形解析装置に備えられたレーザー距離計の基本構成を示す模式図である。
図3】上記変形解析装置に備えられたレーザースキャナの構成を模式的に示す模式斜視図である。
図4】上記レーザースキャナの変形例を模式的に示す模式斜視図である。
図5】上記変形解析装置において校正データを取得するために用いられる校正治具の構造を模式的に示す図であり、(A)は校正治具の正面図であり、(B)は校正治具の平面図である。
図6】上記校正治具における校正球により与えられる、三次元(X,Y,Z)空間における座標位置(x,y,z)の説明に供する図であり、(A)は校正球の正面図であり、(B)は校正球の平面図である。
図7】上記校正治具における校正球に適用する最小二乗球による校正の説明に供する校正球の正面図である。
図8】一次元の可動ミラー機構の校正に校正治具として用いられる校正板の構造を模式的に示す図であり、(A)は校正板の平面図、(B)は校正板の正面図、(C)は校正板の側面図である。
図9】上記変形解析装置に備えられたレーザー距離計により観測される校正板のスリットの形状を示す模式図であり、(A)は焦点位置における距離画像のスリット形状を示し、(B)は高さ位置(z)における距離画像のスリット形状を示し、(C)は2つの距離画像のスリット形状を重ねて示した模式図である。
図10】上記校正板に測定光を照射して校正データを取得する処理の説明に供する図であり、(A)は上記校正板に測定光を照射する上記レーザー距離計のヘッド部の正面図であり、(B)は上記レーザー距離計のヘッド部の側面図である。
図11】上記校正板による校正データの取得処理の手順を示すフローチャートである。
図12】上記変形解析装置により実施される本発明に係る変形解析方法の手順を示すフローチャートである。
図13】加熱により変形する部材を測定対象物として変形解析を行う例の説明に供する模式図であり、上記変形解析装置により変形解析する場合の説明に供する模式図であり、(A)は変形前の測定対象物の正面図であり、(B)は変形後の測定対象物の正面図である。
図14】荷重により変形する部材を測定対象物として変形解析を行う例の説明に供する模式図であり、上記変形解析装置により変形解析する場合の説明に供する模式図であり、(A)は変形前の測定対象物の正面図であり、(B)は変形後の測定対象物の正面図である。
図15】軸力により変形する頭付き軸体を測定対象物として変形解析を行う例の説明に供する模式図であり、(A)は変形前の軸体頭部の正面図であり、(B)は変形後の軸体頭部の正面図である。
図16】基準点を設定して頭付き軸体の変形解析を行う例の説明に供する模式図であり、(A)は変形前の頭付き軸体の状態を模式的に示す図であり、(B)は頭付き軸体の正面図である。
図17】基準点を含むxy平面を基準面として頭付き軸体の変形解析を行う例の説明に供する模式図であり、(A)は変形後の頭付き軸体の状態を模式的に示す図であり、(B)は変形後の頭付き軸体の正面図である。
図18】重心から所定半径の円周を含むxy平面を基準面として頭付き軸体の変形解析を行う例の説明に供する模式図であり、(A)は変形前の頭付き軸体の状態を模式的に示す図であり、(B)は変形前の頭付き軸体の正面図である。
図19】重心から所定半径の円周を含むxy平面を基準面として頭付き軸体の変形解析を行う例の説明に供する模式図であり、(A)は変形後の頭付き軸体の状態を模式的に示す図であり、(B)は変形後の頭付き軸体の正面図である。
図20】六角形の頭部を有するボルトの締結時の軸力による頭部の変形を解析する変形解析を行う例の説明に供する模式図であり、(A)は変形前のボルトの状態を模式的に示す図であり、(B)は変形前のボルトの正面図である。
図21】六角形の頭部を有するボルトの締結時の軸力による頭部の変形を解析する変形解析を行う例の説明に供する模式図であり、(A)は変形後のボルトの状態を模式的に示す図であり、(B)は変形後のボルトの正面図である。
図22】上記変形解析装置におけるレーザー距離計として備えられる光コム距離計の具体的な構成例を示す模式図である。
図23】上記変形解析装置に備えられる光コム距離計の他の構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、共通の構成要素については、共通の指示符号を図中に付して説明する。また、本発明は以下の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更可能であることは言うまでもない。
【0039】
本発明は、例えば図1に示すような構成の変形解析装置100に適用される。
【0040】
この変形解析装置100は、三次元(X,Y,Z)空間においてレーザー光の干渉による三次元距離計測により、測定対象物1の形状変化を解析するものであって、測定対象物1が載置される測定台10の上方に設けられたレーザー距離計20、レーザー距離計20から出射される測定光Lsにより測定対象物1の表面1aを二次元(X,Y)方向に走査する走査部30、上記レーザー距離計20の干渉光検出部25により得られるレーザー光の干渉信号Sが供給される演算処理装置40などからなる。
【0041】
図2は、この変形解析装置100に備えられたレーザー距離計20の基本構成を示す模式図である。
【0042】
レーザー距離計20は、測定対象物1に照射する測定光Lsとしてレーザー光を発生して出射する測定光発生器21と、測定対象物1の表面1aに照射した測定光Lsが該測定対象物1の表面1aにより反射された反射光Ls’の干渉光を検出してレーザー光の干渉信号Sを生成する干渉光検出部25を備える。
【0043】
干渉光検出部25は、測定光発生器21から出射されたレーザー光が入射されるビームスプリッタ22と、ビームスプリッタ22により反射されたレーザー光が基準光Lrefとして入射される基準面23と、基準面23に入射された基準光Lrefが該基準面23により反射された反射光Lref’がビームスプリッタ22を透過して入射されるとともにビームスプリッタ22を透過したレーザー光が測定光Lsとして測定対象物1の表面1aに照射され、該測定対象物1の表面1aにより反射された反射光Ls’がビームスプリッタ22により反射されて入射されると干渉光検出器24を備える。
【0044】
干渉光検出器24は、ビームスプリッタ22を介して入力される基準面23による反射光Lref’と測定対象物1の表面1aによる反射光Ls’の干渉光を検出して干渉信号Sを生成する。
【0045】
この干渉光検出器24により生成される干渉信号Sは、測定光発生器21からレーザー光が出射されて反射光Lref’、反射光Ls’として干渉光検出器24に入射されるまでに通過する各光路の光路長の差分に対応する時間差を示す位相情報を含むものとなっている。
【0046】
このレーザー距離計20では、後述するように演算処理装置40の演算処理部41において、上記干渉信号Sに含まれる時間差を示す位相情報から、上記光路長の差分として測定対象物1の表面1aまでの距離を求めることができる。すなわち、光路長の差分として与えられる測定対象物1の表面1aまでの距離は、上記時間差に真空中の光速Cをかけて屈折率ngで割ることにより算出することができる。
【0047】
図3は、この変形解析装置100の走査部30として備えられたレーザースキャナ30Aの構成を模式的に示す斜視図である。
【0048】
レーザースキャナ30Aは、2つのモータ31X、31Yと2つのミラー32X、32Yからなる2軸のガルバノミラー機構33とテレセントリックf-θレンズ35からなる。
【0049】
レーザー距離計20から出射された測定光Lsは、第1のミラー32Xにより反射されて第2のミラー32Yに入射され、第2のミラー32Yにより反射されてテレセントリックf-θレンズ35を介して測定対象物1の表面1aに照射される。
【0050】
第1のミラー32Xは、モータ31Xにより駆動されることにより、測定光Lsの反射角度が変化して、三次元(X,Y,Z)空間のX軸方向に測定光Lsの光軸を移動させる。また、第2のミラー32Yは、モータ31Yにより駆動されることにより、測定光Lsの反射角度が変化して、三次元空間(X,Y,Z)のY軸方向に測定光Lsの光軸を移動させる。
【0051】
すなわち、レーザー距離計20から出射された測定光Lsは、その光軸が二次元の可動ミラー機構である2軸のガルバノミラー機構33により二次元(X,Y)方向に移動され、テレセントリックf-θレンズ35を介してZ軸方向から測定対象物1の表面1aに照射される。
【0052】
測定対象物1の表面1aは、テレセントリックf-θレンズ35を介してZ軸方向から照射される測定光Lsにより二次元(X,Y)方向に走査される。
【0053】
すなわち、レーザースキャナ30Aは、三次元(X,Y,Z)空間において測定対象物1にレーザー光を測定光Lsとして照射して、測定対象物1の表面1aを測定光Lsすなわちレーザー光により走査する走査手段として機能する。
【0054】
テレセントリックf-θレンズ35を介してZ軸方向から測定対象物1の表面1aに照射された測定光Lsは、該測定対象物1の表面1aで反射され、その反射光Ls’がレーザースキャナ30Aに戻される。
【0055】
なお、上記2軸のガルバノミラー機構33における二つのミラー32X、32Yは、それぞれポリゴンミラーに置き換えることができる。また、テレセントリックf-θレンズ35は、該テレセントリックf-θレンズと同等の光学特性を有するテレセントリック光学系に置き換えることができる。
【0056】
この変形解析装置100では、レーザー距離計20から測定光Lsが走査部30を介して測定対象物1に向けてZ軸方向から照射され、測定対象物1の表面1aでZ軸方向に反射された反射光Ls’がレーザー距離計20の干渉光検出部25に戻り、測定対象物1の表面1aまでの距離が演算処理装置40の演算処理部41において算出される。
【0057】
なお、この変形解析装置100の走査部30は、レーザー距離計20から光レーザー光を測定光Lsとして出射するヘッド部を機械的に二次元(X,Y)方向に移動させるXYステージであってもよい。また、測定台10上にXYステージを設置して、XYステージにより測定対象物1を二次元(X,Y)方向に移動させるようにしてもよい。すなわち、XYステージにより、測定対象物1と測定光Lsの光軸とを相対的に移動させて、測定光Lsにより測定対象物1の表面1aを走査することができる。
【0058】
また、図4に示すように、一次元の可動ミラー機構33Xと機械的な送り機構を組み合わせた構成の走査部30Bにより、測定対象物1の表面1aに照射する測定光Lsを二次元(X,Y)方向に移動させるようにしてもよい。
【0059】
すなわち、図4に示す走査部30Bは、モータ31Xにより駆動されるミラー32Xからなる1軸のガルバノミラー機構すなわち一次元の可動ミラー機構33Xと、この一次元の可動ミラー機構33Xにより光軸がX軸方向に移動される測定光LsをZ軸方向から測定対象物1の表面1aに照射させるテレセントリックf-θレンズ(あるいはテレセントリックf-θレンズと同等の光学特性を有するテレセントリック光学系)35’、上記一次元の可動ミラー機構33Xによる光軸の移動方向すなわちX軸方向と直交するY軸方向に測定対象物1と測定光Lsの光軸とを相対的に移動させるYステージからなる一次元の送り機構36Yとを備える。
【0060】
この図4に示す走査部30Bでは、測定台10上に一次元の送り機構36YとしてYステージが設置されている。
【0061】
そして、この変形解析装置100では、走査部30により測定対象物1の表面1aを走査する測定光Lsが該測定対象物1の表面1aで反射され、その反射光Ls’が走査部30を介してレーザー距離計20に戻されることにより、レーザー距離計20の干渉光検出部25において、基準面23による反射光Lref’と測定対象物1による反射光Ls’の干渉光を検出して干渉信号Sを生成し、演算処理装置40の演算処理部41において測定対象物1の表面1aまでの距離が算出される。
【0062】
この変形解析装置100における演算処理装置40は、上記レーザー距離計20の干渉光検出部25により得られる干渉信号Sに基づいて上記測定対象物1の変形状態を解析する演算処理部41、校正データを上記演算処理部41に与える校正データ保持部42、これらを制御する制御部43などの機能を有する。制御部43は、走査部30の動作制御も行う機能を有している。
【0063】
演算処理装置40は、制御部43により走査部30を制御して測定光Lsで上記測定対象物1の表面1aを二次元(X,Y)方向に走査すると同時に、レーザー距離計20により測定対象物1の表面1aまでの距離を計測して距離情報を取得して、演算処理部41において、測定光Lsの照射位置とその場所まで距離を複数の点について蓄積することにより非接触で測定対象物1の三次元形状を示す距離画像情報を上記測定対象物1の変形前後において生成し、変形前後の距離画像情報により測定対象物1の変形状態を解析する。
【0064】
この変形解析装置100において、校正データ保持部42には、例えば、図5の(A),(B)に示すような構造の校正治具50を用いて取得される校正データ(Δx,Δy,Δz)が保持される。
【0065】
ここで、図5の(A)は校正治具50の平面図であり、(B)は校正治具50の正面図である。
【0066】
校正治具50は、JIS/ISO規格が要求する熱膨張係数を持つ材料で作られた基板51と、基板51上に複数の鋼球を配列し、鋼球の中心座標が校正された多連の校正球52からなる。
【0067】
基板51は、格子状の交点位置すなわち二次元(X,Y)座標位置に形成された複数の円錐面53を備え、円錐面53に鋼球を接触させて保持することにより、格子状の交点位置すなわち二次元(X,Y)座標位置に校正球52を保持する。なお、円錐面53の中央部に貫通穴を設け、下面からタップ加工された鋼球にねじを通して、鋼球を円錐面53に引き込んで保持するようにしても良い。
【0068】
校正球52には、校正に際して中心座標を決定するのに十分な精度が得られる計測器の精度と比べて真球度の十分高い鋼球が用いられる。
【0069】
この校正治具50における校正球52の正面図と平面図を図6の(A)、(B)に示すように、校正球52は、その半径がrであれば、校正球52の中心から高さzの位置のxy平面では、半径s
s=√(r-z
の円周上に校正球52の表面が位置するので、真球度の十分高い半径rが既知の鋼球を校正球52とすることにより、三次元(X,Y,Z)空間における校正された座標位置(x,y,z)を与えることができる。
【0070】
この変形解析装置100では、走査部30により図5に示す校正治具50にZ軸方向から測定光Lsを照射して、校正治具50の上面を走査することにより、校正治具50の上面の三次元形状をレーザー距離計20で計測することにより得られる距離画像について、例えば、レーザー距離計20による測定結果と得られる校正治具50の表面までの距離が最短となる校正球52の頂部pの座標位置(x+Δx,y+Δy,z+Δz)を求め、半径rの校正球52により与えられる頂部pの座標位置(x,y,z)に対する誤差(Δx,Δy,Δz)を算出するとともに、中心oから高さzの位置のxy平面における半径s
s=√(r-z
の円周上にある座標位置(x,y,z)に対する誤差(Δx,Δy,Δz)を算出して校正データ(Δx,Δy,Δz)として保存することができる。
【0071】
なお、校正治具50の各校正球52は校正された接触式三次元計測器などの基準器によって表面の複数点の座標が測定され、測定データに最小二乗球を当てはめることによって中心座標o=(X,Y,Z)と半径rの真値が求められているものとする。
【0072】
ここで、レーザー距離計20から走査部30を介して校正治具50に照射する測定光Lsの射出方向がZ軸方向と一致していない場合には、レーザー距離計20により校正球52の表面までの距離が等しい測定結果が得られる校正球52の表面の座標位置(x,y,z)は、上記xy平面における半径sの円周上からずれるので、そのずれ量から測定光Lsの射出方向の変化についての校正データを得ることができる。
【0073】
また、この校正治具50では、また、測定データに最小二乗球を当てはめることによって中心座標を求めるようにして、三次元座標の校正を行うようにすることができる。
【0074】
この校正治具50における校正球52は、図7に示すように、その半径がr(>0)、中心座標がS=(X,Y,Z)である場合、表面の任意の点sの座標S
|S-S|=r
を満たす。校正治具50の各校正球52は校正された接触式三次元計測器などの基準器によって表面の複数点の座標が測定され、測定データに最小二乗球を当てはめることによって中心座標S=(X,Y,Z)と半径rの真値が求められているものとする。
【0075】
そして、この変形解析装置100では、走査部30により図5に示す校正治具50にZ軸方向から測定光Lsを照射して、校正治具50の上面を走査することにより得られる距離画像について、校正治具50の各校正球52の測定データにそれぞれ最小二乗球を当てはめて中心座標を求める。校正球52の球間距離または相対座標が校正値と一致するような補正量を求める。さらに校正治具50の設置高さを変えながら同じ測定を実施することによって補正量の立体的な分布として校正データ(Δx,Δy,Δz)を保存することができる。
【0076】
ここで、レーザー距離計20から走査部30を介して校正治具50に照射する測定光Lsの射出方向がZ軸方向と一致していない場合であっても、回転座標変換を含む型式で校正データを得ることができる。
【0077】
また、一次元の可動ミラー機構33Xの校正には、例えば、図8の(A)、(B)、(C)に示すような構造の校正板60を用いることができる。
ここで、図8の(A)は校正板60の平面図、(B)は校正板60の正面図、(C)は校正板60の側面図である。
【0078】
この校正板60は、例えば幅2mm×長さ8mmのスリット62が4mm間隔で二列に形成された厚さ2mmの平板61からなる。
【0079】
レーザー距離計20から走査部30Bを介して照射される測定光Lsで校正板60を走査すると、スリット62以外の部分では測定光Lsが反射されてレーザー距離計20に反射光Ls’が戻るが、スリット62の部分では測定光Lsが通過してしまいレーザー距離計20に反射光Ls’が戻らないので、例えば図9の(A)に示すように、レーザー距離計20により観測される校正板60の距離画像には、一次元の可動ミラー機構33XによるX軸方向の走査速度の変化はスリット間隔の変化として現れ、X軸方向の走査が直線的でない場合にはスリット62のY軸方向への位置ずれとなって現れる。図9の(A)において、●はスリット62の中心位置を示している。
【0080】
なお、ここでは、Yステージからなる一次元の送り機構36Yの校正は、別途行われているものとする。
【0081】
焦点位置での2次元的な校正を行い、レーザー距離計20により得られる校正板60の高さ情報と光強度情報から、焦点位置でのスリット62の中心座標を決定することにより、焦点位置での校正データを得ることができる。
【0082】
また、レーザー距離計20のヘッド部をZ軸方向に移動させて、高さ位置zにおいて2次元的な校正を行い、レーザー距離計20により得られる校正板60の高さ情報と光強度情報から、高さ位置zでのスリット62の中心座標を決定することにより、高さ位置zでの校正データを得ることができる。
【0083】
さらに、上記焦点位置でのスリット62の中心座標と高さ位置zでのスリット62の中心座標のずれは、一次元の可動ミラー機構33XによるX軸方向の走査における測定光Lsの光軸のZ軸に対する傾き、すなわち、測定光Lsの射出方向の変化を示しているので、そのずれ量から測定光Lsの射出方向の変化についての校正データを得ることができる。
【0084】
図10の(A),(B)は、校正板60に測定光Lsを照射して校正データを取得する処理の説明に供する図であり、(A)は校正板60に測定光を照射する変形解析装置100におけるレーザー距離計20のヘッド部20aの正面図であり、(B)はレーザー距離計20のヘッド部20aの側面図である。
【0085】
校正データの取得処理では、図10の(A),(B)に示すように、測定光Lsを校正板60に照射し、走査部30Bにより測定光Lsで校正板60をX軸方向に走査しながらY軸方向に走査して、焦点位置において、レーザー距離計20により校正板60の高さ情報と光強度情報を得て、焦点位置でのスリット62の中心座標を決定するとともに、レーザー距離計20のヘッド部20aをZ軸方向に移動した高さ位置zにおいて、レーザー距離計20により校正板60の高さ情報と光強度情報を得て、焦点位置でのスリット62の中心座標を決定して、決定された各スリット62の中心座標に基づいて、三次元の校正データを生成する。
【0086】
すなわち、この校正板60による校正データの取得処理は、図11のフローチャートに示す手順に従って行われる。
【0087】
校正データの取得処理では、先ず、第1の手順(ST1)において焦点位置での2次元的な校正を行う。
【0088】
第2の手順(ST2)では、レーザー距離計20により校正板60の高さ情報と光強度情報を得て、焦点位置でのスリット62の中心座標を決定する。
【0089】
ここで、レーザー距離計20により観測される校正板60の焦点位置における距離画像の例を示す図9の(A)おいて、●がスリット62の中心位置を示している。
【0090】
第3の手順(ST3)では、レーザー距離計20のヘッド部20aをZ軸方向に移動する。
【0091】
第4の手順(ST4)では、高さ位置zにおいてレーザー距離計20により校正板60の高さ情報と光強度情報を得て、高さ位置zでのスリット62の中心座標を決定する。
【0092】
ここで、レーザー距離計20により観測される校正板60の高さ位置zにおける距離画像の例を示す図9の(B)おいて、○がスリット62の中心位置を示している。
【0093】
そして、第5の手順(ST5)では、第2の手順(ST2)にて決定された焦点位置でのスリット62の中心座標と、第4の手順(ST4)にて決定された高さ位置zでのスリット62の中心座標とに基づいて、三次元の校正データを生成する。
【0094】
ここで、図9の(C)は、図9の(A)に示したレーザー距離計20により観測される校正板60の焦点位置における距離画像の例と、図9の(B)に示したレーザー距離計20により観測される校正板60の高さ位置zにおける距離画像の例を重ね合わせた図である。
【0095】
図9の(C)において、レーザー距離計20により観測される校正板60の画像の例における●にて示される焦点位置でのスリット62の中心位置と○にて示される高さ位置zでのスリット62の中心位置のずれは、X軸方向の走査における測定光Lsの光軸のZ軸に対する傾き、すなわち、測定光Lsの射出方向の変化を示しているので、それぞれのXY軸方向のスリット62の中心座標の変化量とZ軸方向における移動量から、測定光Lsの射出方向を三次元のベクトルとして求めることができ、この三次元のベクトルから三次元の校正データを生成することができる。
【0096】
この変形解析装置100において、演算処理装置40の演算処理部41では、上記干渉光検出部25により得られる干渉信号Sから上記測定光Lsが照射された上記測定対象物1の照射位置(x,y,z)までの距離情報(z)を演算し、上記校正データ保持部42により与えられる上記校正データ(Δx,Δy,Δz)により校正された三次元位置情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz)を生成する。
【0097】
そして、上記演算処理部41により上記測定対象物1の変形前後の上記測定対象物1の照射位置(x,y,z)までの距離情報(z)から生成される変形前の上記測定対象物1の上記校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(Before)と変形後の上記測定対象物の上記校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(After)を用いて上記測定対象物1の変形状態を解析する。
【0098】
この変形解析装置100では、図12のフローチャートに示す手順に従って、本発明に係る変形解析方法を実施する。
【0099】
すなわち、この変形解析装置100では、三次元(X,Y,Z)空間において測定対象物1に測定光Lsとして照射されるレーザー光により上記測定対象物1の表面1aを二次元(X,Y)方向に走査して、上記測定対象物1に照射され該測定対象物1により反射された上記測定光Lsの反射光Ls’と基準光との干渉光を検出することにより得られる干渉信号Sから、上記測定対象物1の変形前後の上記測定光Lsの照射位置(x,y,z)までの距離情報(z)を生成して、上記測定対象物1の変形状態を解析する解析処理を行うに当たり、上記測定対象物1の表面1aを二次元(X,Y)方向に走査する上記測定光の照射位置(x,y,z)の上記三次元(X,Y,Z)空間における校正データ(Δx,Δy,Δz)を校正データ保持部42に保持しておく(ステップST11)。
【0100】
そして、この変形解析装置100における演算処理装置40では、インストールされている測定制御プログラムにしたがって、レーザー距離計20から出射されるレーザー光を走査部30を介して測定光Lsとして測定対象物1に照射し、走査部30により測定光Lsで上記測定対象物1の表面1aを二次元(X,Y)方向に走査して、上記測定対象物1に照射され該測定対象物1により反射された上記測定光Lsの反射光Ls’と基準光との干渉光をレーザー距離計20の干渉信号検出部25で検出することにより得られる干渉信号Sから、演算処理装置40の演算処理部41により、上記測定光Lsの照射位置(x,y,z)すなわち測定対象物1の表面1aまでの距離情報(z)を得る測定処理を測定対象物1の変形前と変形後に実行する。
【0101】
すなわち、変形前の測定対象物1の表面1aを測定光Lsで二次元(X,Y)方向に走査して得られる干渉信号Sから生成される測定光Lsの照射位置(x,y,z)までの距離情報(z)を上記校正データ(Δx,Δy,Δz)により校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(Before)を演算処理部41により生成し(ステップST12)、その後に、測定対象物1を変形させて(ステップST13)、変形後の測定対象物1の表面1aを測定光Lsにより二次元(X,Y)方向に走査して得られる干渉信号Sから生成される測定光Lsの照射位置(x,y,z)までの距離情報(z)を上記校正データΔx,Δy,Δz)により校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(After)を演算処理部41により生成する(ステップST14)。
【0102】
さらに、この変形解析装置100における演算処理装置40では、インストールされている検査制御プログラムにしたがって、変形前の上記測定対象物の上記校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(Before)と変形後の上記測定対象物1の上記校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(After)を用いて上記測定対象物の変形状態を解析して、変形量が所定の閾値よりも大きい否かにより良否判定を行う(ステップST15)。
【0103】
ここで、レーザー距離計20により測定光Lsで上記測定対象物1の表面1aを二次元(X,Y)方向に走査して、演算処理装置40の演算処理部41で測定対象物1の表面1aまでの距離情報(z)を取得するとともに校正処理を行う測定制御プログラムでは、校正処理のための処理プログラムを組み込む必要があり、既存の測定制御プログラムの変更大きくなってしまうので、演算処理装置40には、測定対象物1の表面1aを測定光Lsで二次元(X,Y)方向に走査して得られる干渉信号Sから測定光Lsの照射位置(x,y,z)までの点群の距離情報(z)あるいは格子状に補完された距離情報(z)を生成して距離画像情報(x,y,z)を得る測定制御プログラムと、距離画像情報(x,y,z)から校正データ(Δx,Δy,Δz)により校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz)を生成する変換処理プログラムをインストールするようにしてもよい。
【0104】
この変形解析装置100では、例えば、加熱により変形する部材1Aを測定対象物1とし、図13の(A)に示すように、加熱前の部材1Aの表面1aを測定光Lsで二次元(X,Y)方向に走査して、演算処理装置40の演算処理部41にて得られる校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(Before)と、図13の(B)に示すように加熱後の変形した部材1Aの表面1aを測定光Lsで二次元(X,Y)方向に走査して、演算処理部41にて得られる校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(After)を演算処理装置40により生成して、加熱前の部材1Aの表面形状を示す距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(Before)と加熱後の部材1Aの表面形状を示す距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(After)との差分を検出することにより、加熱前の距離画像情報((x+Δx,y+Δy,z+Δz(Before)を基準値として加熱後の部材1Aの変形量Δz
Δz=(z+Δz(After)-(z+Δz)(Before)
を算出することができる。
【0105】
また、この変形解析装置100では、例えば、荷重により変形する梁部材1Bを測定対象物1とし、図14の(A)に示すように、荷重を印加する前の梁部材1Bの表面1aを測定光Lsで二次元(X,Y)方向に走査して、校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(Before)と、図14の(B)に示すように重量物2を載せることにより重力による荷重の印加後の変形した梁部材1Bの表面1aを測定光Lsで二次元(X,Y)方向に走査して、校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(After)を演算処理装置40の演算処理部41により生成して、荷重により変形する前の梁部材1Bの表面形状を示す距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(Before)と荷重により変形した後の梁部材1Bの表面形状を示す距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(After)との差分を検出することにより、変形前の距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz)(Before)を基準値として変形後の梁部材1Bの変形量を算出することができる。
【0106】
さらに、この変形解析装置100では、例えば、軸部1cの軸力印加により頭部1cが変形するスタッドボルト、頭付きスタッド、釘、螺子、ボルト、リベットなどの頭付き軸体1Cを測定対象物1とし、図15の(A)に示すように、軸部1cに引っ張り力を印加する前の頭付き軸体1Cの頭部1cの表面を測定光Lsで二次元(X,Y)方向に走査して、演算処理装置40の演算処理部41にて得られる校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(Before)と、図15の(B)に示すように軸部1cに引っ張り力を印加した後の変形した軸体1Cの頭部1cの表面を測定光Lsで二次元(X,Y)方向に走査して、演算処理部41にて得られる校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(After)を演算処理部41により生成して、引っ張り力により変形する前の頭付き軸体1Cの頭部1cの表面形状を示す距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(Before)と引っ張り力により変形した後の頭付き軸体1Cの頭部1cの表面形状を示す距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(After)との差分を検出することにより、変形前の距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(Before)を基準値として変形後の頭付き軸体1Cの頭部1cの変形量Δz
Δz=(z+Δz(After)-(z+Δz(Before)
を算出することができる。
【0107】
ここで、頭付き軸体1Cの頭部1cの変形解析では、頭部1cの距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(Before)、(x+Δx,y+Δy,z+Δz(After)について、例えば、図16図17に示すように、上記頭部1cの縁に基準点Pを設定し、基準点Pを中心に所定範囲内にある画素の距離情報の平均値を基準面として該基準面から頭部1cの最深点までの深さΔz(Before),Δz(After)をそれぞれ求め、その差分Δz
Δz=Δz(After)-Δz(Before)
を軸力印加前後の上記頭付き軸体1Cの頭部1cの変形量Δzとすることができる。このように、変形前後の距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(Before)、(x+Δx,y+Δy,z+Δz(After)について、基準点Pからの深さΔz(Before),Δz(After)の差分Δzを変形量Δzとすることで、より精度の高い変形解析を行うことができる。
【0108】
図16は変形前の頭付き軸体1Cの状態を模式的に示す図であり、(A)は軸体1Cの平面図であり、(B)は頭付き軸体1Cの正面図である。
【0109】
図17は変形後の頭付き軸体1Cの状態を模式的に示す図であり、(A)は軸体1Cの平面図であり(B)は頭付き軸体1Cの正面図である。
【0110】
また、上記頭部1cの縁に沿って複数の基準点Pを含むxy平面を基準面とすることもできる。
【0111】
さらに、例えば、図18図19に示すように、頭付き軸体1Cの頭部1cの変形解析では、頭部1cの距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz(Before)、(x+Δx,y+Δy,z+Δz(After)について、上記頭部1cの重心Oを求め、該重心Oから所定半径rの円周上の各画素の距離情報の平均値を基準面として該基準面から頭部1cの最深点までの深さΔz(Before),Δz(After)をそれぞれ求め、その差分Δz
Δz=Δz(After)-Δz(Before)
を上記軸力印加前後の上記頭付き軸体1Cの頭部1cの変形量Δzとすることができる。
【0112】
図18は変形前の頭付き軸体1Cの状態を模式的に示す図であり、(A)は軸体1Cの平面図であり、(B)は頭付き軸体1Cの正面図である。
【0113】
図19は変形後の頭付き軸体1Cの状態を模式的に示す図であり、(A)は軸体1Cの平面図であり(B)は頭付き軸体1Cの正面図である。
【0114】
この変形解析装置100では、測定対象物1の表面1aを走査部30により二次元(X,Y)方向に走査される上記測定光Lsの照射位置(x,y,z)の上記三次元(X,Y,Z)空間における校正データ(Δx,Δy,Δz)を校正データ保持部42に保持しておき、走査部30により測定光Lsで測定対象物1の表面1aを二次元(X,Y)方向に走査して、レーザー距離計20により得られる干渉信号Sから、演算処理装置40の演算処理部41で測定対象物1の表面1aの照射位置(x,y,z)までの距離情報(z)を取得して、上記校正データ(Δx,Δy,Δz)により校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz)を生成するので、測定対象物1の表面1aに照射する測定光Lsの光軸の傾きや走査部30による走査の非線形性など起因する二次元(X,Y)平面内の座標誤差を除去した距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz)により高精度に変形解析を行うことができる。
【0115】
この変形解析装置100では、例えば、図20図21に示すように、六角形の頭部1dを有する六角ボルト1Dの締結時の軸力による頭部1dの変形量を解析する場合に、軸部1dに軸力を発生させて軸力を頭部1dに印加するために、頭部1dを回転させても、演算処理装置40の演算処理部41において、校正データ(Δx,Δy,Δz)により校正された距離画像情報(x+Δx,y+Δy,z+Δz)を生成することにより、測定対象物1の表面1aに照射する測定光Lsの光軸の傾きや走査部30による走査の非線形性など起因する二次元(X,Y)平面内の座標誤差が除去されるので、この変形解析装置100では、頭部1dの回転前後において、上述の如く基準面から頭部1dの最深点までの深さΔz(Before),Δz(After)をそれぞれ求め、その差分Δz
Δz=Δz(After)-Δz(Before)
を上記軸力印加前後の上記六角ボルト1Dの頭部1dの変形量Δzとして、高精度に変形解析を行うことができる。
【0116】
図20は変形前の六角ボルト1Dの状態を模式的に示す図であり、(A)は六角ボルト1Dの平面図であり、(B)は六角ボルト1Dの正面図である。
【0117】
図21は変形後の六角ボルト1Dの状態を模式的に示す図であり、(A)は六角ボルト1Dの平面図であり、(B)は六角ボルト1Dの正面図である。
【0118】
上記変形解析装置100において、上記レーザー距離計10として上記測定光Lsとして光コムを出射する光コム発生器を備える光コム距離計を採用することにより、さらに、距離を高い精度でしかも短時間に測定することができる。
【0119】
上記レーザー距離計20には、測定光Lsとして光コムを測定対象物1に照射して、その戻り光Ls’と参照光との干渉光を検出することにより、測定対象物1までの距離を測定する光コム距離計として、例えば、本件発明者等が先提案している特許文献3に記載されたものを採用することができる。
【0120】
上記変形解析装置100にレーザー距離計20として備えられる光コム距離計20Aの具体的な構成例を図22の模式図に示す。
【0121】
この光コム距離計20Aでは、例えば、基準面23に照射される基準光Lrefと測定面すなわち測定対象物1の表面1aに照射される測定光Lsとの干渉光を基準光検出器24Aにより検出するとともに、上記基準面23により反射された基準光Lref’と上記測定対象物1の表面1aにより反射された測定光Ls’との干渉光を測定光検出器24Bにより検出して、演算処理部41により、上記基準光検出器24Aにより干渉光を検出した干渉信号SM1と上記測定光検出器24Bにより干渉光を検出した干渉信号SM2の時間差から、光速と測定波長における屈折率から上記基準面23にまでの距離Lと上記測定対象物1の表面1aまでの距離Lの差を求める。
【0122】
すなわち、図22の模式図に示す光コム距離計20Aは、基準光Lrefとして光コムをパルス出射する第1の光源21Aと、測定光Lsとして光コムをパルス出射する第2の光源21Bと、上記基準光Lrefと上記測定光Lsとの干渉光を検出する基準光検出器24Aと、上記基準光Lrefが照射される基準面23と、上記測定光Lsが照射される測定面すなわち測定対象物1の表面1aと、上記基準面23により反射された基準光Lref’と上記測定対象物1の表面1aにより反射された測定光Ls’との干渉光を検出する測定光検出器24Bと、上記基準光検出器24Aにより上記干渉光を検出して得られる干渉信号SM1と上記測定光検出器24Bにより上記干渉光を検出して得られる干渉信号SM2が供給される演算処理部41を備える。
【0123】
上記第1及び第2の光源21A,21Bは、それぞれ周期的に強度又は位相が変調され、互いに変調周期が異なる干渉性のある基準光Lrefと測定光Lsをパルス出射するものであって、それぞれ周期的に強度又は位相を変調され、互いに変調周期が異なる干渉性のある基準光Lrefと測定光Lsを出射するための光周波数コムモード間隔が異なる2台の光周波数コム発生器からなる。
【0124】
上記第1及び第2の光源21A,21Bからパルス出射された基準光Lrefと測定光Lsは、半透鏡又は偏光ビームスプリッタからなる光混合素子22Aにより混合されて重ね合わされ、半透鏡からなる光分離素子22Bにより、上記基準光検出器24Aに向かう光と測定対象物1の表面1aに向かう光に分離される。
【0125】
ここでは、上記第1及び第2の光源21A,21Bからパルス出射された基準光Lrefと測定光Lsは、互いに偏光面が直交しているものとし、半透鏡からなる光混合素子22Aにより混合され、その混合光が光分離素子22Bにより反射されて偏光子22Cを介して上記基準光検出器24Aに入射されるとともに、上記光分離素子22Bを通過した混合光が偏光ビームスプリッタ22Dにより偏光に応じて基準光Lrefと測定光Lsに分離されて、上記基準光Lrefが基準面23に入射され、また、上記測定光Lsが測定対象物1の表面1aに入射されるようになっている。
【0126】
なお、ここでは、上記第1及び第2の光源21A,21Bからパルス出射された基準光Lrefと測定光Lsは、互いに偏光面が直交したものとしたが、上記光混合素子22Aとして偏光ビームスプリッタを用いて、基準光Lrefと測定光Lsの互いに偏光面が直交する成分を混合するようにしてもよい。
【0127】
さらに、上記基準面23により反射された基準光Lref’と、上記測定対象物1の表面1aにより反射された測定光Ls’は、上記偏光ビームスプリッタ22Dにより混合され、その混合光が上記光分離素子22Bにより反射されて偏光子22Eを介して上記測定光検出器24Bに入射されるようになっている。
【0128】
そして、上記基準光検出器24Aは、上記偏光子22Cを介して入射される上記基準光Lrefと測定光Lsとの混合光を受光することより、上記第1及び第2の光源21A,21Bからパルス出射された基準光Lrefと測定光Lsの干渉光を検出するようになっている。
【0129】
また、上記測定光検出器24Bは、上記偏光子22Eを介して入射される上記基準光Lref’と上記測定光Ls’の混合光を受光することにより、上記基準面23により反射された基準光Lref’と上記測定対象物1の表面1aにより反射された測定光Ls’の干渉光を検出するようになっている。
【0130】
この光コム距離計20Aでは、図22中に太線で示す上記光混合素子22Aから偏光ビームスプリッタ22Dまでの光路では、基準光Lrefと測定光Lsが干渉しないように偏光を直交させてあり、上記偏光ビームスプリッタ22Dにより上記基準光Lrefと測定光Lsを偏光に応じて分離して上記基準面23と上記測定対象物1の表面1aに入射させる。そして、上記基準面23と上記測定対象物1の表面1aで反射された上記基準光Lref’と測定光Ls’を上記偏光ビームスプリッタ22Dにより混合し、その混合光を上記光分離素子22Bにより反射して上記測定光検出器24Bに入射させ、上記基準面23により反射された基準光Lref’と上記測定対象物1の表面1aにより反射された測定光Ls’の干渉光を上記測定光検出器24Bにより検出する。
【0131】
ここで、上記光混合素子22Aから偏光ビームスプリッタ22Dまでの光路中に設けられた光分離素子22Bを介して基準光検出器24Aに導かれる混合光に含まれる基準光Lrefと測定光Lsは偏光が直交しているため、そのまま上記基準光検出器24Aに入射しても干渉信号が得られないので、偏光子22Cを挿入し、上記基準光Lrefと測定光Lsの偏光に対して斜めになるように上記偏光子22Cの向きを調整しておくことにより、上記偏光子22Cの透過成分として上記基準光Lrefと測定光Lsの成分が混合された干渉光が基準光検出器24Aに入射されるようにして、上記基準光検出器24Aにより干渉信号SM1を得るようにしている。同様に、上記光分離素子22Bを介して測定光検出器24Bに導かれる混合光に含まれる基準光Lref’と測定光Ls’は偏光が直交しているため、そのまま上記測定検出器24Bに入射しても干渉信号が得られないので、偏光子22Eを挿入し、上記基準光Lref’と測定光Ls’の偏光に対して斜めになるように上記偏光子22Eの向きを調整しておくことにより、上記偏光子22Eの透過成分として上記基準光Lref’と測定光Ls’の成分が混合された干渉光が測定光検出器24Bに入射されるようにして、上記測定検出器24Bにより干渉信号SM1を得るようにしている。なお、偏光子に替えて半波長板と偏光ビームスプリッタを用いてもよい。
【0132】
上記基準光検出器24Aによって得られる干渉信号SM1は、キャリア周波数が上記第1及び第2の光源21A,21Bからパルス出射されたLrefと測定光Lsのキャリア光周波数の差であり、上記基準光Lrefと測定光Lsの光パルス繰り返し周波数の差の周波数で同じ干渉波形が繰り返される。
【0133】
この光コム距離計20Aにおいて、上記基準光検出器24Aの役割は、遅延時間計測の基準を生成することである。上記第1及び第2の光源21A,21Bからパルス出射された基準光Lrefと測定光Lsは、繰り返し周波数が等しくないので、光源が動作を開始した時にタイミングがずれていても、少しずつタイミングがずれていき、必ずどこかで基準光Lrefの光パルスと測定光Lsの光パルスが重なる瞬間が現れる。また、その重なる瞬間は基準光Lrefと測定光Lsの繰り返し周波数の差の繰り返し周波数で周期的に現れる。この光パルスと光パルスの重なる瞬間が、遅延時間計測の基準となる。
【0134】
また、測定光検出器24Bによって得られる干渉信号SM2は、上記基準光検出器24Aによって得られる干渉信号SM1と同じくキャリア周波数が基準光Lrefと測定光Lsのキャリア光周波数の差であり、上記基準光Lrefと測定光Lsの光パルス繰り返し周波数の差と同じ繰り返し周波数を持つ。しかし、上記測定光検出器24Bに入力される光パルスは、基準面23までの距離Lと測定対象物1の表面1aまでの距離Lの距離差の絶対値(L-L)の分だけ、光パルスのタイミングが遅れるため、光パルスと光パルスの重なる瞬間が上記基準光検出器24Aによって得られる干渉信号SM1と比較して遅れる。この遅れ時間が上記距離差の絶対値(L-L)の2倍の距離を光パルスが伝搬することによる遅延時間であり、真空中の光速Cをかけて屈折率ngで割ることにより距離が得られる。
【0135】
そこで、光コム距離計20Aにおいて、上記演算処理部41は、上記基準光検出器24Aにより上記干渉光を検出して得られる干渉信号SM1と上記測定光検出器24Bにより上記干渉光を検出して得られる干渉信号SM2の時間差から、光速と測定波長における屈折率から上記基準面23までの距離L1と上記測定対象物1の表面1aまでの距離Lの距離差の絶対値(L-L)を求める処理を行う。
【0136】
すなわち、この光コム距離計20Aでは、第1及び第2の光源21A,21Bからパルス出射されるそれぞれ周期的に強度又は位相が変調され、互いに変調周期が異なる干渉性のある基準光Lrefと測定光Lsを基準面23と測定対象物1の表面1aに照射し、上記基準面23と測定対象物1の表面1aに照射する基準光Lrefと測定光Lsとの干渉光を基準光検出器24Aにより検出するとともに、上記基準面23により反射された基準光Lref’と上記測定対象物1の表面1aにより反射された測定光Ls’との干渉光を測定光検出器24Bにより検出し、上記演算処理部41により、上記基準光検出器24Aにより干渉光を検出した干渉信号SM1と上記測定光検出器24Bにより干渉光を検出した干渉信号SM2の時間差から、光速と測定波長における屈折率から上記基準面23までの距離Lと上記測定対象物1の表面1aまでの距離Lの距離差の絶対値(L-L)を求めることにより、距離を高い精度でしかも短時間に測定することができる。
【0137】
また、上記変形解析装置100に備えられるレーザー距離計20には、例えば、図23の模式図に示すような構成の光コム距離計20Bを採用することもできる。
【0138】
この光コム距離計20Bでは、第1のレーザー光源121Aからパルス出射された測定光Lsが第1のビームスプリッタ122Aを介して基準面23に照射されるとともに、第1のレーザー光源121Aからパルス出射された測定光Lsが第1のビームスプリッタ122Aと第2のビームスプリッタ122Bを介して測定対象物1の表面1aに照射される。上記基準面23に照射された測定光Lsは、該基準面23により反射されて第1のビームスプリッタ122Aと第3のビームスプリッタ122Cを介して基準光検出器24Aに入射される。また、測定対象物1の表面1aに照射された測定光Lsは、該測定対象物1の表面1aにより反射されて第1のビームスプリッタ122Aと第4のビームスプリッタ122Dを介して測定光検出器24Bに入射される。
【0139】
また、第2のレーザー光源121Bからパルス出射された参照光Lrefは、第5のビームスプリッタ122Eを介して上記第3のビームスプリッタ122Cに入射されて、該第3のビームスプリッタ122Cにおいて上記基準面115により反射された測定光Ls’と混合されるとともに、第5のビームスプリッタ122Eと反射鏡122Fを介して上記第4のビームスプリッタ122Dに入射されて、該第4のビームスプリッタ122Dにおいて上記測定対象物1の表面1aで反射された測定光Ls’と混合されるようになっている。
【0140】
そして、この光コム距離計20Bにおいて、上記基準光検出器24Aは、上記第3のビームスプリッタ22Cにおいて混合された上記基準面23により反射された測定光Ls’と上記参照光Lrefとの干渉信号SM1を検出する。また、上記測定検出器24Bは、上記第4のビームスプリッタ122Dにおいて混合された上記測定対象物1の表面1aにより反射された測定光Ls’と上記参照光Lrefとの干渉信号SM2を検出する。
【0141】
上記第1のレーザー光源121Aから測定光Lsがパルス出射されたタイミングtと上記第2のレーザー光源121Bから参照光Lrefがパルス出射されたタイミングtが一致していれば、上記基準光検出器24Aは、次のΔTM1にて示される時間差を有す測定光Ls’と参照光Lrefとの干渉信号SM1を検出することになる。
ΔTM1=T+T+T-T
【0142】
ここで、Tは測定光Lsが通過する上記第1のレーザー光源121Aから第1のビームスプリッタ122Aまでの光路長に対応する時間であり、Tは測定光Lsが通過する上記第1のビームスプリッタ122Aから基準面23までの間を往復する光路長に対応する時間であり、Tは測定光Lsが通過する上記第1のビームスプリッタ122Aから基準光検出器24Aまでの光路長に対応する時間であり、T2は参照光Lrefが通過する上記第2のレーザー光源121Bから第3のビームスプリッタ122Cまでの光路長に対応する時間である。
【0143】
また、上記測定光検出器24Bは、次のΔTM2にて示される時間差を有す測定光Ls’と参照光Lrefとの干渉信号SM2を検出することになる。
ΔTM2=T+T+T+T-T
=T+T+T+(T+T)-(T+T+T
=T+T+T-T
【0144】
ここで、Tは測定光Lsが通過する上記第1のレーザー光源121Aから第1のビームスプリッタ122Aまでの光路長に対応する時間であり、Tは測定光Lsが通過する上記第1のビームスプリッタ122Aから第2のビームスプリッタ122Bまでの光路長に対応する時間であり、Tは測定光Lsが通過する上記第2のビームスプリッタ122Bから上記測定対象物1の表面1aまで間を往復する光路長に対応する時間であり、Tは測定光Lsが通過する上記第2のビームスプリッタ112Bから第4のビームスプリッタ122Dまでの光路長に対応する時間であり、Tは参照光Lrefが通過する上記第2のレーザー光源121Bから第4のビームスプリッタ122Dまでの光路長に対応する時間である。
【0145】
上記T7は、上記測定光Lsが通過する上記第1のビームスプリッタ122Aから基準光検出器24Aまでの光路長に対応する上記時間Tと参照光Lrefが通過する上記第5のビームスプリッタ122Eから反射鏡122Fまでの光路長に対応する時間Tとの和に等しく、
=T+T
である。
【0146】
また、上記Tは、上記参照光Lrefが通過する上記第2のレーザー光源121Bから第3のビームスプリッタ122Cまでの光路長に対応する時間Tと、上記測定光Lsが通過する上記第1のビームスプリッタ122Aから第2のレーザー光源121Bまでの光路長に対応する時間Tと、上記参照光Lrefが通過する上記第5のビームスプリッタ122Eから反射鏡122Fまでの光路長に対応する時間Tとの和に等しく、
=T+T+T
である。
【0147】
従って、上記時間差ΔTM2は、
ΔTM2=T+T+T+T-T
=T+T+T+(T+T)-(T+T+T
=T+T+T-T
である。
【0148】
そして、上記時間差ΔTM2と時間差ΔTM1の差(ΔTM2-ΔTM1)は、
ΔTM2-ΔTM1=T-T
であるから、上記基準光検出器24Bと測定光検出器に24Aより得られる2つの干渉信号SM1,SM2の時間差から、上記測定対象物1の表面1aまでの距離を計算することができる。
【0149】
なお、このレーザー距離計20Bでは、測定光Lsが通過する上記第2のビームスプリッタ122Bから上記測定対象物1の表面1aまで間を往復する光路長に対応する時間Tと測定光Lsが通過する上記第1のビームスプリッタ122Aから基準面23までの間を往復する光路長に対応する時間Tとの差分として、上記測定対象物1の表面1aまでの距離を計算するが、基準面23がなくても時間Tは測定光Lsを所定光路長の光路を通過させることで与えることができる。
【0150】
この光コム距離計20A、20Bにおいて、基準面23を備える代わりに所定光路長の基準光路を備えるようにしてもよい。また、基準光Lrefと測定光Lsが通過する光路は、空間伝搬路に限定されることなく光ファイバなどであってもよい。
【0151】
すなわち、上記光コム距離計20A、20Bは、それぞれ周期的に強度又は位相が変調され、互いに変調周期が異なる干渉性のある基準光Lrefと測定光Lsをパルス出射する第1及び第2の光源21A,21Bと、所定光路長の基準光路を通過させる上記基準光Lrefと上記測定対象物1の表面1aに照射される測定光との干渉光を検出する基準光検出器24Aと、所定光路長の基準光路を通過させた基準光と上記測定対象物1の表面1aにより反射された測定光Lsの反射光Ls’との干渉光を検出する測定光検出器24Bとを備えるものとすることができる。
【0152】
また、上記演算処理装置40の演算処理部41では、上記基準光検出器24Aにより検出された干渉信号SM1を周波数解析して多数の光周波数コムの位相情報を一括して取得するとともに、上記測定光検出器24Bにより検出された干渉信号SM2を周波数解析して多数の光周波数コムの位相情報を一括して取得し、それぞれの位相特性の周波数に対する変化率を求め、その傾きの差から上記基準面までの距離と上記測定面までの距離の差を算出することができる。
【符号の説明】
【0153】
1 測定対象物、1A 加熱により変形する部材、1B 梁部材、1C 頭付き軸体、1D 六角ボルト、1c、1d 軸部、1c、1d 頭部、10 測定台、20 レーザー距離計、20A、20B 光コム距離計、21 測定光発生器、21A、21B、121A、121B 光源、22、122A~122E ビームスプリッタ、22A 光混合素子、22B 光分離素子、22C 偏光子、22D 偏光ビームスプリッタ、23 基準面、24 干渉光検出器、24A 基準光検出器、24B 測定光検出器、25 干渉光検出部、30、30B走査部、30A レーザースキャナ、31X、31Y モータ、32X、32Y ミラー、33 2軸のガルバノミラー機構、35、35’テレセントリックf-θレンズ、36Y 一次元の送り機構、40 演算処理装置、41 演算処理部、42 校正データ保持部、43 制御部、50 校正治具、51 基板、52 校正球、53 円錐面、60 校正板、62 スリット、61 平板、 100 変形解析装置
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