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特許7288670医療用インプラントの安定性を測定および評価するための方法およびシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-31
(45)【発行日】2023-06-08
(54)【発明の名称】医療用インプラントの安定性を測定および評価するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   A61C 19/04 20060101AFI20230601BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20230601BHJP
   A61C 8/00 20060101ALI20230601BHJP
   A61B 17/80 20060101ALI20230601BHJP
   A61B 17/86 20060101ALI20230601BHJP
   A61F 2/32 20060101ALI20230601BHJP
   A61F 2/38 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
A61C19/04 Z ZMD
A61B5/00 101R
A61C8/00 Z
A61B17/80
A61B17/86
A61F2/32
A61F2/38
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019549418
(86)(22)【出願日】2018-03-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-28
(86)【国際出願番号】 US2018022069
(87)【国際公開番号】W WO2018165674
(87)【国際公開日】2018-09-13
【審査請求日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】62/469,854
(32)【優先日】2017-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514104933
【氏名又は名称】ユニヴァーシティ オブ ワシントン
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】シェン,アイ-イエウ
(72)【発明者】
【氏名】ソレンセン,ジョン,エー.
(72)【発明者】
【氏名】コウジャ,ナシーバ
(72)【発明者】
【氏名】タイ,ウェイ,チェ
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0259076(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0143268(US,A1)
【文献】特開平08-089517(JP,A)
【文献】特表平10-505519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 19/04
A61B 5/00
A61C 8/00
A61B 17/80
A61B 17/86
A61F 2/32
A61F 2/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用インプラントの安定性を検出するための方法であって、前記方法は、コンピュータソフトウェアにより指令されるコンピューティング装置の1つ以上のプロセッサによって自動的に実行され、前記方法は、
プローブで前記医療用インプラントに加えられた力に基づいて、振動センサーを介して前記医療用インプラントの振動を測定することと、
測定された振動に基づく自然周波数値または線形剛性係数を、前記医療用インプラントの有限要素モデルによって予測された自然周波数値または線形剛性係数と照合することにより、前記角度剛性係数を判断することと、
前記判断に基づいて、前記角度剛性係数から前記医療用インプラントの安定性を判断することであって、前記角度剛性係数は、前記医療用インプラントの中心線に垂直な軸の周りの回転の剛性に対応することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記医療用インプラントは、前記医療用インプラントの第1の表面から、前記第1の表面の反対側の第2の表面まで延出する縦軸を含み、前記医療用インプラントの中心線は、前記縦軸に平行である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記医療用インプラントの前記第2の表面は骨内に移植され、前記医療用インプラントの前記第1の表面は露出されて、前記骨に直接連結されていない、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記医療用インプラントは、歯科インプラント、骨スクリュー、プレート、股関節インプラント、および膝インプラントの1つを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記方法は、
アバットメントを前記医療用インプラントに取り外し可能に連結することであって、前記力は前記アバットメントによって受けられ、それにより、前記力は前記医療用インプラントによって間接的に受けられること
をさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、前記医療用インプラントが安定しているか否の二値指標を提供することをさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、前記医療用インプラントの前記判断された角度剛性係数に基づき前記医療用インプラントの安定性の程度の通知を提供することをさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
命令がその上に格納されている持続性コンピュータ可読媒体であって、前記命令は、コンピューティング装置の1つ以上のプロセッサによって実行される場合に、前記コンピューティング装置に、請求項1~7のいずれか1項の方法ステップを含む機能を実行させる、持続性コンピュータ可読媒体。
【請求項9】
医療用インプラントの安定性を検出するためのシステムであって、前記システムは、
前記医療用インプラントに加えられた力を、および、前記加えられた力に基づいて前記医療用インプラントの振動を測定するように構成されたプローブと、
前記プローブと通信するコンピューティング装置であって、前記コンピューティング装置は、
測定された振動に基づく自然周波数値または線形剛性係数を、前記医療用インプラントの有限要素モデルによって予測された自然周波数値または線形剛性係数と照合することにより、前記角度剛性係数を判断することと、
前記判断に基づいて、前記角度剛性係数から前記医療用インプラントの安定性を判断することであって、前記角度剛性係数は、前記医療用インプラントの中心線に垂直な軸の周りの回転の剛性に対応することと、
を行うように構成される、コンピューティング装置と、
を備える、システム。
【請求項10】
前記コンピューティング装置は、前記医療用インプラントを励起して振動させるために前記プローブによって前記医療用インプラントに加えられる駆動信号を生成するように構成され、かつ前記医療用インプラントの振動は、前記駆動信号に応答した前記医療用インプラントの前記励起された振動に基づく、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
プローブは、負荷センサーおよび振動センサーを含む、請求項9~10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
前記負荷センサーは圧電センサーであり、かつ/または前記振動センサーは光学センサーである、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記プローブは、
前記プローブの遠位端における第1の表面上のトランスデューサと、
前記プローブに物理的に連結されて、前記第1の表面から間隙を空けて向かい合う第2の表面を提供する支持構造であって、前記プローブは、前記第1の表面と第2の表面との間に前記医療用インプラントを受け入れるようにさらに成形される、支持構造と、
を備える、請求項9~12のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項14】
前記プローブは、少なくとも2つの部分を有する角度トランスデューサを含み、各部分は、約70度~約110度の間の角度で別の部分に連結されて、前記医療用インプラントが連結された部分の間に受け入れられ得るようになる、請求項9~13のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項15】
前記プローブは、前記プローブの遠位端における第1の表面上にトランスデューサを含み、前記トランスデューサは、機械力を前記医療用インプラントに印加して、前記機械力に応答した前記医療用インプラントの動きを検出し、前記医療用インプラントの振動は、前記検出された動きに基づいて判断される、請求項9~14のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項16】
前記プローブは、前記プローブの遠位端における前記プローブの第1の表面上に位置付けられた第1のトランスデューサおよび第2のトランスデューサを含み、前記コンピューティング装置は、前記医療用インプラントの振動を生成するために前記第1のトランスデューサおよび前記第2のトランスデューサを位相を異にして駆動するようにさらに構成される、請求項9~15のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項17】
前記コンピューティング装置は、請求項1~7のいずれか1項の方法ステップを含む機能を実行するように構成される、請求項9~16のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2017年3月10日に出願された米国仮特許出願第62/469,854号に対する優先権を主張し、その内容は全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本明細書で別段の指示がない限り、本節で記述する事柄は本出願におけるクレームに対する従来技術ではなく、本節に含めることによって従来技術であると認めるものではない。
【0003】
医療用インプラントは、様々な医療処置で一般的に使用される。特に一般的な1つの医療用インプラントは歯科インプラントである。歯科インプラントは、歯を置換するために広く使用されており、歯構造の信頼性、長命、および保存のために選択される処置と考えられる。設置された歯科インプラントの数は過去10年にわたって著しく成長している。米国インプラント歯科学会によれば、推定500,000の歯科インプラントが毎年設置されており、米国だけでおよそ3百万人が歯科インプラントを有している。初期固定が、歯科インプラント治療の成功における大きな要因である。初期固定は、インプラントの周囲の骨構造への機械的な連結によって作り出される。二次固定は、骨結合として知られている、規則正しい、生きている骨細胞とインプラントとの間の直接構造的、機能的および生物学的な結合である。十分な初期固定を達成することが、効果的な二次固定につながる重要な要因である。
【0004】
インプラントの重要な指標としての歯科インプラントの安定性の健康評価は、臨床医にとって最も困難な手順の1つであることがわかっている。歯科インプラントの安定性に関して非常に多くの研究が行われてきたが、まだ、測定基準に対して利用可能な基準はない。X線写真は、インプラントの臨床評価のために最も一般的に使用される方法であるが、それらは通常2次元であり、インプラント状態の部分的表現だけを提供する。別の一般的で簡単な技法は、臨床医がインプラントを金属器具で軽くたたくだけの打診法である。鈍いゴツンという音は潜在的に欠陥があるインプラント(compromised implant)である。この技法は、極めて主観的である。
【0005】
それ故、歯科インプラントの安定性において小さな変化を検出可能な高レベルの感度を備えた非侵襲的装置に対する大きな臨床的必要性がある。インプラント安定性においてさらに小さい変化の測定を得意とする装置は、様々な方法で有用であり、骨結合の成功に向けた治癒の様々な段階における評価、重大診断および治療計画支援を含め、インプラントをいつ装填すべきかに関する判断プロセスおよび定期検査でのインプラント状態のモニタリングを容易にする。
【0006】
インプラントの安定性を評価するために使用されるいくつかの現在の非侵襲的装置は、インプラント-骨系の共振周波数の測定に基づく。第1に、これらの装置はインプラント-骨界面における剛性を測定しないが、それはインプラントの安定性を決定するものである。第2に、これらの試験は多くの場合、アバットメントまたは試験装置に連結されたインプラントで実行される。これらの連結された構成要素は、骨-インプラント系の測定された周波数に著しく影響を及ぼし得る。第3に、測定データは、材料特性の多様性、アバットメントねじとの部分の不十分な連結、または境界条件などの理由のために、散乱して不確定であり得る。そのため、上で概説した問題に対処する医療用インプラントの安定性を測定および評価する改善された方法およびシステムが望ましいであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書では、医療用インプラントの安定性を測定および評価するための方法およびシステム例が説明される。第1の態様では、医療用インプラントの安定性を検出するための方法が提供される。本方法は、(a)医療用インプラントにプローブで力を加えること、(b)加えられた力に基づいて、医療用インプラントの振動と関連付けられた応答信号を判断すること、(c)判断された応答信号を医療用インプラントのコンピュータモデルと比較すること、および(d)比較に基づいて、医療用インプラントの角度剛性係数を判断することであって、角度剛性係数は医療用インプラントの安定性を示すこと、を含む。
【0008】
第2の態様では、医療用インプラントの安定性を検出するためのシステムが提供される。本システムは、(a)医療用インプラントに加えられた力に応答して医療用インプラントの振動と関連付けられた応答信号を検出するように構成されたプローブ、および(b)プローブと通信するコンピューティング装置を含む。コンピューティン装置は(i)判断された応答信号を医療用インプラントのコンピュータモデルと比較すること、および(ii)比較に基づいて、医療用インプラントの角度剛性係数を判断することであって、角度剛性係数は医療用インプラントの安定性を示すこと、を行うように構成される。
【0009】
第3の態様では、命令がその上に格納されている持続性コンピュータ可読媒体が提供され、本命令は、コンピューティング装置の1つ以上のプロセッサによって実行される場合に、コンピューティング装置に機能を実行させる。機能は、(a)医療用インプラントに力を加えること、(b)加えられた力に基づいて、医療用インプラントの振動と関連付けられた応答信号を判断すること、(c)判断された応答信号を医療用インプラントのコンピュータモデルと比較すること、および(d)比較に基づいて、医療用インプラントの角度剛性係数を判断することであって、角度剛性係数は医療用インプラントの安定性を示すこと、を含む。
【0010】
これらならびに他の態様、利点、および代替は、必要に応じて添付の図面を参照して、以下の詳細な説明を読むことにより、当業者には明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態例に従った、システムの簡略化ブロック図である。
図2】実施形態例に従った、方法を例示する簡略化流れ図である。
図3】実施形態例に従った、線形剛性推定例のグラフである。
図4】実施形態例に従った、医療用インプラントの有限要素モデルにおいて角度剛性を予測するために加えられたモーメント例である。
図5】実施形態例に従った、医療用インプラントの自然周波数対インプラント長のグラフである。
図6】実施形態例に従った、医療用インプラントの線形剛性対インプラント長のグラフである。
図7】実施形態例に従い、抽出された線形剛性係数の変動を示している再現性結果のグラフである。
図8】実施形態例に従い、線形剛性係数と比較した剛性の有限要素解析的予測を示すグラフである。
図9】実施形態例に従い、角度剛性係数と比較した剛性の有限要素解析的予測を示すグラフである。
図10】実施形態例に従い、自然周波数と比較した剛性の有限要素解析的予測を示すグラフである。
図11】実施形態例に従い、線形剛性係数と比較した剛性の有限要素解析的予測を示すグラフである。
図12】実施形態例に従い、角度剛性係数と比較した剛性の有限要素解析的予測を示すグラフである。
図13】実施形態例に従った、歯科インプラントの簡略化モデルを例示する。
図14】実施形態例に従い、歯科インプラントを試験するためのモード解析用の実験装置である。
図15A】実施形態例に従い、ブロックに埋め込まれた歯科インプラントの3次元有限要素モデルである。
図15B】実施形態例に従った、図15Aの歯科インプラントの2次元垂直断面図である。
図16】実施形態例に従い、異なる密度のブロックに対して測定された平均Ostell ISQ(登録商標)を示すグラフである。
図17】実施形態例に従い、異なる密度のブロックに対して測定されたPeriotest(登録商標)値(PTV)を示すグラフである。
図18A】実施形態例に従い、第1の振動モードでブロックに埋め込まれた歯科インプラントの3次元有限要素モデルである。
図18B】実施形態例に従った、第2の振動モードにおける図18Aの歯科インプラントの3次元有限要素モデルである。
図18C】実施形態例に従った、第3の振動モードにおける図18Aの歯科インプラントの3次元有限要素モデルである。
図19】実施形態例に従い、歯科インプラントの振動に基づく自然周波数の有限要素解析的予測を示すグラフである。
図20】実施形態例に従った、アバットメント-歯科インプラント系の周波数応答関数を示すグラフである。
図21】実施形態例に従った、実験モード解析からの測定された自然周波数結果を示すグラフである。
図22】実施形態例に従い、医療用インプラントの振動と関連付けられた応答信号を検出するように構成されたプローブを例示する。
図23】実施形態例に従い、医療用インプラントの振動と関連付けられた応答信号を検出するように構成された別のプローブを例示する。
図24】実施形態例に従い、医療用インプラントの振動と関連付けられた応答信号を検出するように構成された別のプローブを例示する。
図25】実施形態例に従い、医療用インプラントの振動と関連付けられた応答信号を検出するように構成された別のプローブを例示する。
図26】実施形態例に従い、医療用インプラントの振動と関連付けられた応答信号を検出するように構成された別のプローブを例示する。
図27】実施形態例に従い、医療用インプラントの振動と関連付けられた応答信号を検出するように構成された別のプローブを例示する。
図28】実施形態例に従って構成されたコンピュータ可読媒体を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
方法およびシステム例が本明細書で説明される。用語「例」および「例示的な」は本明細書では、「例、事例または実例として役立つこと」を意味するために使用されることを理解すべきである。本明細書で「例」または「例示的」であるとして説明される任意の実施形態または特徴は必ずしも、他の実施形態または特徴よりも望ましいか、または好都合であると解釈すべきではない。以下の詳細な説明では、本明細書の一部を形成する、添付の図面に対する参照が行われる。図面では、文脈で別段の指示がない限り、同様の記号は典型的には、同様の構成要素を識別する。本明細書で提示する主題の範囲から逸脱することなく、他の実施形態が利用され得、他の変更が行われ得る。
【0013】
本明細書で説明する実施形態例は制限することを意図していない。本開示の態様は、本明細書で大まかに説明して図面で例示するように、様々に異なる構成で配置、置換、統合、分離、および設計でき、その全ては本明細書で明示的に企図されることが容易に理解されるであろう。
【0014】
本明細書では、測定に関して「約」は+/-5%を意味する。
【0015】
本明細書では、「医療用インプラント」は、限定されない例として、歯科インプラント、歯科クラウン、歯科修復、骨スクリュー、プレート、股関節インプラント、または膝インプラントを意味する。
【0016】
別段の指示がない限り、用語「第1の」、「第2の」などは本明細書では、単にラベルとして使用され、これらの用語が参照するアイテムに関して順序、位置、または階層的な要件を課すことを意図していない。さらに、例えば、「第2の」アイテムの参照は、例えば、「第1の」もしくはより低い番号付けされたアイテム、および/または例えば、「第3の」もしくはより高い番号付けされたアイテムの存在を要求することも除外することもない。
【0017】
本明細書での「一実施形態」または「一例」への言及は、例に関連して説明する1つ以上の特徴、構造、または特性が、少なくとも1つの実施態様に含まれることを意味する。本明細書の様々な位置における句「一実施形態」または「一例」は、同じ例に言及することもあれば、言及しないこともある。
【0018】
本明細書では、指定された機能を実行する「ように構成された」システム、機器、装置、構造、品目、要素、構成要素、またはハードウェアは、さらなる修正後に指定された機能を実行する可能性を有するだけでなく、いかなる変更も行うことなく、指定された機能を本当に実行可能である。言い換えれば、指定された機能を実行する「ように構成された」システム、機器、構造、品目、要素、構成要素、またはハードウェアは、指定された機能を実行する目的で、明確に選択され、作成され、実装され、利用され、プログラムされ、かつ/または設計される。本明細書では、「ように構成された」は、システム、機器、装置、構造、品目、要素、構成要素、またはハードウェアの既存の特性を示し、それは、システム、機器、構造、品目、要素、構成要素、またはハードウェアが、さらなる修正なしで指定された機能を実行するのを可能にする。本開示の目的のため、特定の機能を実行する「ように構成され」ていると説明されるシステム、機器、構造、品目、要素、構成要素、またはハードウェアは、追加または代替として、その機能を実行する「ように適合され」、かつ/または「ように動作する」として説明され得る。
【0019】
以下の説明では、開示する概念の完全な理解を提供するために、多数の特定の詳細が記載されており、開示する概念は、これらの詳細の一部または全部なしで実施され得る。他の事例では、既知の装置および/またはプロセスの詳細は、本開示を不必要に曖昧にするのを回避するために省略されている。いくつかの概念は特定の例と共に説明されているが、これらの例は制限することを意図していなことが理解されるであろう。
【0020】
A.概要
本開示の実施形態例は、医療用インプラントの動的特性を測定するための方法および装置を含む。多くの実施形態では、本装置は電気機械(EM)装置である。動的特性は、自然周波数、線形剛性、および角度剛性を含む。これらの量の高い値は、歯科インプラントなどの、医療用インプラントの安定性を示す。しかし、これらの量は、正確かつ厳密に測定するのは困難であり得る。例えば、自然周波数および線形剛性は、アバットメントの存在または測定位置に起因して、著しく変わり得る。結果として、それらは、インプラントの安定性の良い指標としては役に立たない可能性がある。同様に、角度剛性は、既存の技術で直接測定するのが困難であり得る。その上、医療用インプラントの自然周波数を測定する既存の装置は、修復/アバットメント/インプラント複合体全体の分解を必要とする。これは多くの場合、達成できないタスクである。
【0021】
これらの必要性に応じて、本開示の実施形態は、角度剛性を直接測定する装置(複数可)、および/または測定された自然周波数もしくは線形剛性からコンピュータモデルを介して角度剛性を抽出できる方法(複数可)を伴う。具体的には、本開示の実施形態は、医療用インプラントの有限要素シミュレーションと共にプローブを提供する。コンピューティング装置は、市販されている様々なインプラントの有限要素シミュレーションのデータベースを含むことができる。プローブは、医療用インプラントに力を加え、それにより、医療用インプラントの振動と関連付けられた応答信号を判断することができる。判断された応答信号は次いで、医療用インプラントの有限要素シミュレーションと比較され得る。比較に基づいて、医療用インプラントの角度剛性係数が判断され得る。角度剛性係数は、医療用インプラントの安定性を示す。具体的には、角度剛性係数に対する高い値は安定したインプラントを表し得、他方、低い角度剛性係数値は、不安定であるか、またはしっかりと固定されていないインプラントを表し得る。
【0022】
本方法の前述の例は、例示を目的として提供されており、制限と解釈すべきではないことが理解されるべきである。
【0023】
B.システム例
図1は、実施形態例に従った、システム100の簡略化ブロック図である。かかるシステム100は、患者内の医療用インプラントの安定性を検出するために医療従事者によって使用され得る。本システムは、コンピューティング装置102およびプローブ104を含む。プローブ104は、医療用インプラントまたは医療用インプラントがその中に移植されている骨の表面に機械力または変位を加えるために使用され得る。プローブ104は、例えば、1つ以上の圧電トランスデューサを用いて、プローブ104の遠位端に向かって、例えば、プローブ104の遠位端に近接して位置付けられた医療用インプラントの領域または範囲の特性を検出するために、機械力を伝達するように構成され得る。加えて、プローブ104は、例えば、1つ以上の光学または圧電センサーを用いて、さらなる処理のために機械的な動きを検出するように構成され得る。プローブ104は、医療用インプラントに加えられた力に応答して医療用インプラントの振動と関連付けられた応答信号を検出するように構成され得る。プローブ104の追加の詳細は、図22図27に関連して以下で説明される。
【0024】
プローブ104は、コンピューティング装置102に通信可能に結合され得る。実施形態例では、コンピューティング装置102は、通信リンク106(例えば、有線または無線接続)を使用して、プローブ104と通信する。プローブ104およびコンピューティング装置102は、プロセッサ、送信機、受信機、アンテナなどの、通信リンク106を有効にするためのハードウェアを含み得る。コンピューティング装置102は、データを受信して、そのデータに対応するか、またはそのデータと関連付けられた情報を表示できる任意のタイプの装置であり得る。例として無制限に、コンピューティング装置102は、携帯電話(例えば、スマートフォン)、コンピュータ(デスクトップ、ラップトップ、ノートブック、タブレット、またはハンドヘルドコンピュータなど)、携帯情報端末(PDA)、ホームオートメーション構成要素、デジタルビデオレコーダー(DVR)、デジタルテレビ、リモコン装置、ウェアラブルコンピューティング装置、または何らかの他のタイプの装置であり得る。コンピューティング装置102およびプローブ104は同じ物理ハウジング内で提供され得るか、またはコンピューティング装置102およびプローブ104は、有線もしくは無線通信リンク106を通して相互に通信する別個の構成要素であり得ることが理解されるべきである。
【0025】
図1では、通信リンク106は、無線接続として例示されているが、有線接続も使用され得る。例えば、通信リンク106は、ユニバーサルシリアルバスなどの有線シリアルバスまたはパラレルバスであり得る。有線接続は、独自の接続でもあり得る。通信リンク106は、例えば、他の可能性の中でとりわけ、BLUETOOTH無線技術、BLUETOOTH LOW ENERGY(BLE)、IEEE802.11(任意のIEEE802.11リビジョンを含む)で記述された通信プロトコル、セルラー技術(GSM、CDMA、UMTS、EV-DO、WiMAX、またはLTEなど)、またはZIGBEE技術を使用した、無線接続でもあり得る。プローブ104は、インターネットを経由してアクセス可能であり得る。
【0026】
図1に示すように、コンピューティング装置102は、通信インタフェース108、ユーザーインタフェース110、プロセッサ112、データ記憶114、駆動信号源116、およびスペクトルアナライザ118を含み得、その全てが、システムバス、ネットワーク、または他の接続機構120によって通信可能に接続され得る。
【0027】
通信インタフェース108は、アナログまたはデジタル変調を使用して、コンピューティング装置102が他の装置、アクセスネットワーク、および/または転送ネットワークと通信するのを可能にするように機能し得る。従って、通信インタフェース108は、単純従来型電話サービス(POTS)通信および/もしくはインターネットプロトコル(IP)または他のパケット化通信などの、回路交換方式および/またはパケット交換方式の通信を容易にし得る。例えば、通信インタフェース108は、無線アクセスネットワークまたはアクセスポイントとの無線通信のために配置されたチップセットおよびアンテナを含み得る。また、通信インタフェース108は、イーサネット、ユニバーサルシリアルバス(USB)、または高解像度マルチメディアインタフェース(HDMI)ポートなどの、有線インタフェースの形をとり得るか、または含み得る。通信インタフェース108はまた、WiFi、全地球測位システム(GPS)、または広域無線インタフェース(例えば、WiMAXまたは3GPPロングタームエボリューション(LTE))などの、無線インタフェースの形もとり得るか、または含み得る。しかし、他の形の物理層インタフェースおよび他のタイプの標準または独自の通信プロトコルが通信インタフェース108を通して使用され得る。さらに、通信インタフェース108は、複数の物理通信インタフェース(例えば、WiFiインタフェース、近距離無線インタフェース、および広域無線インタフェース)を含み得る。
【0028】
ユーザーインタフェース110は、例えば、ユーザーから入力を受信するため、および出力をユーザーに提供するためなど、コンピューティング装置102が人間または人間以外のユーザーとやり取りするのを可能にするように機能し得る。従って、ユーザーインタフェース110は、例えば、キーパッド、キーボード、タッチセンサー方式または存在感知パネル、コンピュータマウス、トラックボール、ジョイスティック、マイクロホンなどの、入力構成要素を含み得る。ユーザーインタフェース110は、例えば、存在感知パネルと併用され得る、ディスプレイ画面などの、1つ以上の出力構成要素も含み得る。ディスプレイ画面は、CRT、LCD、および/もしくはLED技術、光学シースルー方式ディスプレイ、光学シーアラウンド方式ディスプレイ、ビデオシースルー方式ディスプレイ、または現在既知であるか、もしくは後に開発される他の技術に基づき得る。プロセッサ112は、プローブ104からデータを受信し、そのデータをユーザーインタフェース110のディスプレイ画面上への表示のために構成し得る。ユーザーインタフェース110は、スピーカ、スピーカジャック、音声出力ポート、音声出力装置、イヤホン、および/または他の類似の装置を経由して、音声出力(複数可)を生成するようにも構成され得る。
【0029】
プロセッサ112は、1つ以上の汎用プロセッサ-例えば、マイクロプロセッサ-および/または1つ以上の専用プロセッサ-例えば、デジタル信号プロセッサ(DSP)、グラフィック処理装置(GPU)、浮動小数点ユニット(FPU)、ネットワークプロセッサ、もしくは特定用途向け集積回路(ASIC)-を含み得る。いくつかの場合、専用プロセッサは、他の可能性の中でとりわけ、画像処理、画像の位置合わせ、および画像併合が可能であり得る。データ記憶114は、例えば、磁気、光学式、フラッシュ、もしくは有機記憶などの、1つ以上の揮発性および/または不揮発性記憶構成要素を含み得、全部または一部において、プロセッサ112と統合され得る。データ記憶114は、取り外し可能および/または固定型の構成要素を含み得る。
【0030】
プロセッサ112は、本明細書で説明する様々な機能を実行するためにデータ記憶114内に格納されたプログラム命令124(例えば、コンパイルされたか、もしくはコンパイルされていないプログラム論理および/または機械コード)を実行可能であり得る。それ故、データ記憶114は、プログラム命令をその上に格納している、持続性コンピュータ可読媒体を含み得、プログラム命令は、コンピューティング装置102によって実行される際に、コンピューティング装置102に、本明細書および/または添付の図面内で開示する方法、プロセス、または機能のいずれかを実行させる。プログラム命令124がプロセッサ112によって実行されると、プロセッサ112は参照データ122を使用する結果となり得る。一例では、参照データ122は、既知の特性をもつ医療用インプラントの多数の設計ならびに骨構造および物体を保持している幾何形状に基づき得るコンピュータモデルを含み得る。具体的には、参照データ122は、市販されている複数の医療用インプラントの有限要素モデルのデータベースを含み得る。参照データ122は、複数の医療用インプラントの各々に対する自然周波数および/または線形剛性係数のテーブルを含み得、かつ参照データ122は、判断された自然周波数および/または線形剛性係数に対応する角度剛性係数のテーブルをさらに含み得る。そのため、以下のさらなる詳細で説明するように、参照データ122は、測定された応答信号(例えば、医療用インプラントの測定された自然周波数および/または線形剛性係数)を医療用インプラントの安定性の指標に変換するために使用され得る。具体的には、参照データ122は、1つ以上の自然共振周波数(または線形剛性係数)と角度剛性係数値との間の相関を提供し得る。
【0031】
使用時に、駆動信号源116は、電気的駆動信号をプローブ104の遠位端に伝達するように構成され得る。電気的駆動信号は、例えば、インパルス、単一の周波数を有する正弦波、増大する周波数の正弦波(すなわち、スイープされた正弦)、またはランダム信号などの、様々な形を取り得る。この駆動信号は、圧電トランスデューサなどの、1つ以上のトランスデューサによって機械力に変換され得る。かかる力は、その力が加えられる医療用インプラントにおいて機械的な動きを誘発し得る。その機械的な動きは1つ以上のトランスデューサによって検出され得、対応する応答信号が処理および/または解析のために、基地局に送り返され得る。別の例では、プローブ104は、振動力を医療用インプラントに加えるように構成され、応答信号は加えられた振動力に応答して医療用インプラントの動きに対応する。
【0032】
一実施形態では、応答信号はスペクトルアナライザ118に提供され、スペクトルアナライザ118は、その信号内で1つ以上の特性周波数を識別するように構成され得る。自然周波数として知られている、かかる周波数は、例えば、周波数応答関数を取得するために、駆動信号および応答信号を時間領域表現から周波数領域表現に変換することによって識別され得る。線形剛性係数も、同じ周波数応答関数を使用して識別され得る。別の実施形態では、周波数領域でインピーダンスを取得するために、インピーダンスアナライザが使用される。さらに別の実施形態では、スペクトルアナライザ118は必要ない。代わりに、駆動信号および応答信号は高調波である。応答信号と駆動信号の振幅比は、線形剛性係数および自然周波数を取得するためにモニターされる。
【0033】
識別された周波数、もしくは線形剛性係数、またはその両方は、以下のさらなる詳細で説明するように、医療用インプラントの特性を計算するために、コンピューティング装置102によってさらに解析され得る。コンピューティング装置102は、ローカルに、またはネットワーク/クラウド環境内に常駐し得、計算も同様に行う。これらの特性は、医療用インプラントの安定性を判断するための診断基準として使用できる。様々な実施形態では、任意の解析、処理、または診断の結果は、ユーザーインタフェース110のディスプレイを経由してユーザーに表示され得る。
【0034】
様々な実施形態では、コンピューティング装置102は、例えば、スペクトルアナライザ118のタイミング、入力および出力(I/O)(例えば、その入力および/または出力)と共に、駆動信号源116およびプローブ104によって印加された信号の周波数、ユーザーインタフェース110のディスプレイと関連付けられた入力または出力(I/O)および同様のものなどの、システム100の様々な態様を制御するように構成され得る。加えて、コンピューティング装置102は、以下のさらなる詳細で説明するように、係数計算および他のデータ処理機能を実行するように構成され得る。
【0035】
いくつかの実施形態では、歯科健康検出システム100は、図1に示すものよりも多くの構成要素を含み得る。しかし、例示的な実施形態を開示するためにこれらの概ね従来型の構成要素の全てが示されている必要はない。
【0036】
C.方法例
図2は、医療用インプラントの安定性を検出するための方法200を例示する簡略化流れ図である。図2のブロックは順番に示されているが、これらのブロックは、並行して、および/または本明細書で説明されているものとは異なる順番でも実行され得る。また、様々なブロックがもっと少ないブロックに統合されるか、追加のブロックに分割されるか、かつ/または所望の実施態様に基づいて除去され得る。
【0037】
さらに、本明細書で説明する方法は、例としてウェアラブルコンピューティング装置によって実行されるとして説明されるが、例示的な方法またはその一部は、本発明の範囲から逸脱することなく、別の実体または実体の組合せによって実行され得ることが理解されるべきである。
【0038】
加えて、図2の流れ図は、本実施形態の1つの考えられる実施態様の機能および操作を示す。これに関して、各ブロックは、プログラムコードのモジュール、断片、または一部を表し得、それは、プロセス内の特定の論理関数またはステップを実装するためにプロセッサによって実行可能な1つ以上の命令を含む。プログラムコードは、例えば、ディスクまたはハードドライブを含む記憶装置などの、任意のタイプのコンピュータ可読媒体上に格納され得る。コンピュータ可読媒体は、例えば、レジスタメモリ、プロセッサキャッシュおよびランダムアクセスメモリ(RAM)のようにデータを短期間格納するコンピュータ可読媒体などの、持続性コンピュータ可読記憶媒体を含み得る。コンピュータ可読媒体は、例えば、読み取り専用メモリ(ROM)、光または磁気ディスク、コンパクトディスク読み取り専用メモリ(CD-ROM)のような、二次または永続的長期記憶などの、持続性媒体も含み得る。コンピュータ可読媒体は、任意の他の揮発性または不揮発性記憶システムでもあり得る。コンピュータ可読媒体は、例えば、コンピュータ可読記憶媒体、または有形的記憶装置と考えられ得る。
【0039】
例のために、図2に示す方法200の1つ以上のステップは、図1のコンピューティング装置102などの、コンピューティング装置によって実装されるとして説明される。1つ以上のサーバーなどの、他の実体が、方法例200の1つ以上のステップを実装できることが理解されるべきである。
【0040】
ブロック202で、方法200は、医療用インプラントにプローブで力を加えることを含む。医療用インプラントは、限定されない例として、歯科インプラント、歯科クラウン、歯科修復、骨スクリュー、プレート、股関節インプラント、または膝インプラントの1つを含み得る。一例では、力を医療用インプラントに加えることは、医療用インプラントを励起して振動させる駆動信号を生成することを含む。かかる例では、応答信号は、駆動信号に応答した医療用インプラントの励起された振動に基づく。別の例では、力を医療用インプラントに加えることは、振動力を医療用インプラントに加えることを含む。かかる例では、応答信号は、振動力に応答した医療用インプラントの動きに基づく。別の例では、方法200は、アバットメントを医療用インプラントに取り外し可能に連結することをさらに含む。かかる例では、力は、その力をアバットメントに加えることにより、医療用インプラントに間接的に加えられる。
【0041】
加えられる力の振幅は、医療用インプラントの自然周波数および線形剛性係数などの、重大な物理的特性が合理的な忠実度で検出されるまで、徐々に増加され得る。力は、例えば、以下でさらに説明するような、圧電トランスデューサによって加えられ得る。複数の測定は医療用インプラントの安定性のより良い評価を提供し得るので、力は医療用インプラントに対して様々な、および/または複数の方向で加えられ得る。
【0042】
ブロック204で、方法200は、加えられた力に基づき医療用インプラントの振動と関連付けられた応答信号を判断することを含む。一例では、医療用インプラントの振動と関連付けられた応答信号は、自然周波数値を含む。別の例では、医療用インプラントの振動と関連付けられた応答信号は、線形剛性係数を含む。応答信号は、以下のさらなる詳細で説明するように、1つ以上の力センサーおよび/または振動計によって検出され得る。具体的には、1つ以上のセンサーおよび対応する応答信号によって検出される加えられた力に応答した動きは、図1に関連して説明したスペクトルアナライザ118などの、スペクトルアナライザに送信され得る。アナライザは受信した信号を処理して、加えられた力に対する周波数の範囲にわたって医療用インプラントがどのように応答するかを示す周波数応答曲線などの、周波数応答情報を提供し得る。受信した信号の多数の平均値は、正確な周波数応答曲線を取得する際に使用され得る。周波数応答曲線は、医療用インプラントの自然振動モードと関連付けられた1つ以上の周波数ピークの振幅を示し得る。また、第1の自然周波数を下回る周波数応答曲線は、線形剛性係数を抽出するために使用され得る。一般に、周波数応答曲線は、10Hz~6KHzの間の周波数に対して振幅および位相成分を含み得る。
【0043】
ブロック206で、方法200は、判断された応答信号を医療用インプラントのコンピュータモデルと比較することを含む。一例では、コンピュータモデルは、医療用インプラントの有限要素モデルである。一般に、自然周波数および線形剛性係数は、測定位置およびアバットメントまたはクラウンが存在するかどうかなどの、様々な要因に大きく依存する。従って、自然周波数および線形剛性係数は、測定されたとはいえ、医療用インプラントの安定性を真には査定しない。より厳密でロバストな量は、医療用インプラント-組織-骨系全体の角度剛性である。しかし、角度剛性は、直接測定するのが困難である。従って、測定された自然周波数および線形剛性から医療用インプラント-組織-骨系の角度剛性を抽出するために数理モデルが必要である。
【0044】
かかるコンピュータモデルは、既知の特性をもつ医療用インプラントの多数の設計ならびに骨構造および物体を保持している幾何形状に基づき得る。具体的には、コンピュータモデルは、市販されている複数の医療用インプラントの有限要素モデルのデータベースを含むことができる。具体的には、コンピュータモデルは、複数の医療用インプラントの各々に対する自然周波数および/または線形剛性係数のテーブルを含むことができ、そのデータベースは、判断された自然周波数および/または線形剛性係数に対応する角度剛性係数のテーブルをさらに含み得る。かかる例では、判断された応答信号を医療用インプラントのコンピュータモデルと比較することは、判断された自然周波数および/または線形剛性係数をコンピュータモデルのデータベース内のテーブルと比較することを含む。
【0045】
ブロック208で、方法200は、判断された応答信号のコンピュータモデルとの比較に基づいて、医療用インプラントの角度剛性係数を判断することを含み、角度剛性係数は、医療用インプラントの安定性を示す。そのため、方法200は、コンピュータモデルを使用して、測定された応答信号(例えば、自然周波数および/または線形剛性係数)を医療用インプラントの安定性の指標に変換する。具体的には、コンピュータモデルは、1つ以上の自然共振周波数(または線形剛性係数)と角度剛性係数値との間の相関を提供し得る。前述のように、コンピュータモデルは、複数の医療用インプラントの各々に対する自然周波数および/または線形剛性係数のテーブルを含むことができ、そのデータベースは、判断された自然周波数および/または線形剛性係数に対応する角度剛性係数のテーブルをさらに含み得る。かかる例では、角度剛性係数は、測定された自然周波数または線形剛性情報を有限要素モデルによって予測されたものと照合することにより、その周囲の骨または軟部組織内での医療用インプラントに対して判断され得る。
【0046】
以下でさらに詳細に説明するように、角度剛性係数は、有限要素モデルにおいて偶力(すなわち、モーメント)を形成するために、大きさにおいて同等で方向において反対の、一対の力を加えることによって判断され得る。中心線の回転が次いで計算され得る。モーメントと回転との間の比率が角度剛性係数である。
【0047】
医療用インプラントは、医療用インプラントの第1の表面から、医療用インプラントの中心線に沿って第1の表面の反対側の第2の表面まで延出する縦軸を含む。縦軸は、医療用インプラントの最も長い寸法に沿って、かつ/または平行に画定され得る。一実施形態では、医療用インプラントの第2の表面は患者の骨(例えば、医療用インプラントが歯科インプラントであれば顎骨)内に移植され、医療用インプラントの第1の表面は露出されて、骨に物理的に連結されない。医療用インプラントは、縦軸と垂直な第2の軸をさらに含む。角度剛性係数は、医療用インプラントの第2の軸に関する回転の剛性に対応し得る。
【0048】
前述のように取得された角度剛性係数は、問題となっている医療用インプラントと関連付けられた安定性を判断するために使用され得る。例えば、係数の値は安定した医療用インプラントと不安定な医療用インプラントとの間で変動し得る。角度剛性係数の高い値は、安定した医療用インプラントを表し得、他方、低い角度剛性係数値は、不安定であるか、またはしっかりと固定されていない医療用インプラントを表し得る。角度剛性係数の直接指標は、ディスプレイ(図1におけるコンピューティング装置102のユーザーインタフェース100のディスプレイなど)、または何らかの他の可聴もしくは可視インジケータによって臨床医に提供され得る。一例では、角度剛性の直接指標は、1~100の間のスコアを提供し得、1は非常に不安定で100は非常に安定している。別の例では、角度剛性の直接指標は、緑、黄、または赤のインジケータをディスプレイ上に提供し得、緑は非常に安定した医療用インプラントを示し、黄は医療用インプラントの平均の安定性を示し、赤は、不安定な医療用インプラントを示す。例えば、係数が所定の閾値を上回っているかどうかに基づいて判断された、二値の良い指標または悪い指標などの、係数の間接指標も提供され得る。さらに別の例では、所与の医療用インプラントが経時的に検査され得、異なる時に判断された角度剛性係数が相互に比較され、それにより医療用インプラントが経時的に不安定になっているかを判断し得る。治癒プロセス中の健康予測などの、ビッグデータ用途を容易にするために、角度剛性係数の大規模なデータベースが収集されて比較され得る。
【0049】
D.実験例
例1
材料および方法:
【0050】
模擬顎骨:3つの異なる密度のSawbones(登録商標)(米国ワシントン州バション島)を使用した。(1)海綿骨に似ている40mmの厚いブロック(20PCF、0.32g/cc)および皮質骨を表している2mmの積層(40PCF、0.64g/cc)から構成された平均的なヒトの下顎骨密度(Ahnら,2012、Tabassumら,2010)を模倣したハイブリッドブロック(34×34×42mm)。(2)LekholmとZarbの骨質分類体系(Jeongら,2013、Lekholmら,1985)に従ったタイプI骨を表している高密度ブロック(34×34×40mm、40PCF、0.64g/cc)。(3)タイプIII~IVの骨を表している低密度ブロック(34×34×40mm、15PCF、0.24g/cc)。
【0051】
歯科インプラント:2つの異なるインプラント幅のBranemark(登録商標)Mk III(Groovy、Nobel Biocare、スイス連邦)を使用した:(a)標準プラットフォーム(RP)、4mm幅×8.5、10、11.5、13、15および18mm長、ならびに(b)ワイドプラットフォーム(WP)、5mm幅×8.5、11.5、15および18mm長。様々な長さのBranemark(登録商標)RPインプラントを、3つの異なる密度のSawbones(登録商標)ブロックの中心に置いた。インプラントは、製造業者の外科的手順書に従って設置して45N・cmまで挿入した。WPインプラントは多くの場合、低密度の骨でよく使用されるので、異なる長さのWP Branemark(登録商標)インプラントを15PCF Sawbones(登録商標)ブロック内に設置して45N・cmまでトルクをかけた。RPインプラントに対して7mm長の治療アバットメント(HA)を使用し、他方、WPインプラントに対して5mm長のHAを使用した。10N・cmトルクを使用してHAをBranemark System Torque Control(Nobel Biocare、スウェーデン王国)で固定した。
【0052】
境界条件:全ての試料をブロックの底面で固定した。Sawbones(登録商標)試料の底面は、カーペット留めを使用して鋼塊(63.5×63.5×14.5mmの寸法)に取り付けた。鋼塊は、万力でしっかりと固定した。目標は、Sawbones(登録商標)試料の底面で固定された境界条件を作り出すことであった。
【0053】
測定方法:実験モード解析(EMA)を使用してインプラントを試験した。基本的に、装置は、フォースハンマー、レーザードップラー振動計(LDV)およびスペクトルアナライザから構成された。インプラントに加えられた力をハンマーで測定し、LDVでインプラントの速度応答を測定した。測定した力および速度に基づき、スペクトルアナライザで周波数応答関数(FRF)を計算し、それからインプラント-Sawbones(登録商標)試験モデルの自然周波数を抽出した。各試料に対するインプラントアバットメント-Sawbones(登録商標)の平均線形剛性を以下のようにFRFから抽出した。
【0054】
(a)線形剛性係数:剛性は、物体の硬さである。それは、構造上に印加された負荷と、応答変位との間の関係性を記述する。剛性は、負荷の位置およびタイプならびに変位に依存する。剛性の2つの一般的な形は線形剛性および角度剛性である。
【0055】
線形剛性に関して、負荷は力Fで、構造応答は線形変位xである。加えられた力は変位に比例し、比率は線形剛性係数k、すなわち、
k=F/x (1)
である。
【0056】
線形剛性係数kは、周波数領域で推定できる。論理上、FRF(力入力および速度出力をもつ)は、周波数が第1の自然周波数よりも著しく小さい場合、線形に増加するはずである。これは基本的に、図3に示すように第1のピーク前の(すなわち、それが第1のピークに達する前の周波数範囲内)グラフの領域(平坦領域)に対応する。その上、FRFの勾配は、測定されたインプラント-骨-アバットメント組立体の線形剛性係数kの逆数である。しかし、測定された周波数応答関数は測定誤差に起因して、線形に増加する領域を真には有していな可能性があるので、これは幾分、(自然周波数と比較して)あまりロバストな測定ではない。第1のピーク前の領域は必ずしも線形ではないことを意味し、それは、線形剛性を推定するのを困難にする。また、推定された線形剛性係数kは、ハンマーが当たり、レーザーが向けられる位置によって決まり、それは試料間で変動し得る。それにもかかわらず、それは、注意深く解釈されるべき測定可能な量である。
【0057】
角度剛性係数:角度剛性に関して、負荷は、印加されたモーメントMで、構造応答は角変位θである。印加されたモーメントは角変位に比例し、比率は角度剛性係数kθ、すなわち、
kθ=M/θ (2)
である。角度剛性係数は、歯科インプラントの安定性の理想的な表現である。理論上は、アバットメントの基部にモーメントが印加される場合、モーメントはアバットメントを弾性的に変形させない。応答は完全に骨-インプラント界面剛性およびインプラントの弾性からである。角度剛性は、アバットメントの影響を完全に除去するので、歯科インプラントの安定性を定量化するための優れた方法である。かかる配置が図4に示されている。
【0058】
しかし、角度剛性係数kθは、実験的に測定するのが極めて困難である。アバットメント変形を招くことなくインプラントにトルクを印加することは達成不可能である。また、角変位も正確に測定することは困難である。従って、本明細書で説明するように、角度剛性係数kθを推定するために複合アプローチが使用される。初めに、自然周波数が実験によって直接測定される。次いで、測定された自然周波数を変換するために正確な数理モデル(例えば、FEAによって)を使用して、角度剛性係数kθを推定し得る。
【0059】
有限要素解析:Branemark(登録商標)インプラント、実験装置、および試験結果をシミュレートするために、ANSYS R-15(米国ペンシルベニア州キャノンズバーグ)を使用して3次元(3-D)有限要素モデルを作成した。Sawbones(登録商標)および製造業によって公開されたインプラントなどの各構成要素の材料特性を有限要素モデルで使用した。そのモデルは、2つのタイプのアバットメント、すなわち、7mm長の治療アバットメント(HA)および12mm長のインプレッションコーピングアバットメント(IMP)、を含む。HAは実験測定を検証するために使用し、他方、IMPは角度剛性係数kθによるインプラント安定性の定量化の検証を示すために使用した。
【0060】
モデルを作成した後、自然周波数を計算するためにモード解析をまず、実施した。次いで、線形および角度剛性係数kおよびkθを計算するために、静的解析を実行した。線形剛性係数kを計算するために、実験でインパクトハンマーが接触したノードに力を加えた。LDVで実験的に測定したノードの変位を次いでFEAによって予測した。力と変位の比率で線形剛性係数kを予測した。角度剛性係数kθを計算するために、図4に示すように、一対の同等で相反する力をアバットメントの基部で2つの隣接するノードに加えて対を形成する。アバットメントの中心線のその基部における回転は角変位であった。対と角変位との間の比率が角度剛性係数kθを与えた。
【0061】
結果:
1.標準プラットフォームインプラントに対する実験モード解析結果
HAをもつBranemark(登録商標)RPインプラントに関して、図5は、測定された第1の自然周波数対インプラント長を示す。測定された自然周波数は、高密度ブロックに対して2848~2888Hz、ハイブリッドブロックに対して2112~2176Hz、および低密度ブロックに対して1936~2036Hzであった。測定された自然周波数は、インプラント長と有意な相関関係を有していなかった。
【0062】
図6は、測定された周波数応答関数から抽出された線形剛性係数を示す。高密度ブロックに対する線形剛性係数は、高密度ブロックに対しては628.6~980.1N/mm、ハイブリッドブロックに対しては329.5~386.7N/mm、および低密度ブロックに対しては169.8~271.5N/mmであって、図6を参照されたい。
【0063】
一般に、高密度ブロックが剛性および自然周波数においてハイブリッドおよび低密度ブロックのそれよりも著しく高い場合、剛性は自然周波数と同様の傾向を有していた。低密度およびハイブリッドブロックは、より近い線形剛性係数および自然周波数を有していた。高密度ブロックの線形剛性係数はインプラント長が増大するのに伴って増加し、他方、低およびハイブリッド密度ブロックの線形剛性係数は、インプラント長に伴って有意には変動しなかった。
【0064】
推定された線形剛性係数の再現性および一貫性を評価するために、実験を繰り返した。複数のEMAからのFRF結果を使用して平均線形剛性を推定した。線形剛性係数は、一貫した自然周波数測定を有していたBranemark(登録商標)RPインプラントのFRFから推定した。結果が図7に明示されている。線形剛性係数は、特に高密度ブロックに対して大きく異なっていたが、ハイブリッドおよび低密度ブロックに対しては同じ範囲内であった。2つの重要な点を強調する必要がある。第1に、これは、線形剛性は、ハンマーでたたき、レーザーを向ける位置に依存するので、推定するのがどれほど難しいパラメータであり得るかを示しており、その位置は、どんなにそのパラメータを一定にしようとしても検査ごとに異なり得る。第2に、低剛性事例は失敗しているインプラントの状態であるので、これらを検出することは臨床的に重大である。
【0065】
2.標準プラットフォームインプラントに対する有限要素解析
(a)自然周波数:FEAによって予測された自然周波数が比較のために図5に示されている。3本の実線は、ハイブリッド、高密度、および低密度ブロックに対する自然周波数のFEA予測を表す。一般に、予測された自然周波数は、測定された自然周波数と10%以内で良く合致する。高密度ブロックは、低密度およびハイブリッドブロックよりも良好な合致を示した。その上、FEA予測およびEMA測定は同じ傾向を示した。例えば、自然周波数はインプラント長に対する相関関係は示さなかった。また、ハイブリッドブロックおよび低密度ブロックの自然周波数は略同じであった。
【0066】
従って、自然周波数におけるFEA予測とEMA測定との間の近い合致は、有限要素モデルが非常に正確であることを示す。FEA予測およびEMA測定は、図5に示すように、Sawbones(登録商標)の材料特性の差異およびインプラント-Sawbones(登録商標)界面における接触条件などの実験における変動要素に起因して、同じではなかったことに留意されたい。
【0067】
(b)線形剛性:FEAによって予測された線形剛性係数が同様に比較のために図8に示されている。留意すべきいくつかの事柄がある。第1に、FEA予測はEMA結果と同じ傾向を有している。具体的には、高密度ブロックの線形剛性係数は、インプラント長が増大するにつれて増加する傾向がある。それに対して、低密度およびハイブリッドブロックの線形剛性係数は、図6に示すように、相互に近く、インプラント長に関して有意には変動していない。FEA予測は、EMA測定において観察されたこれらの特徴全てを捉える。第2に、予測された線形剛性係数は測定されたものよりも高い。低密度のSawbones(登録商標)に関して、予測された線形剛性係数と測定された線形剛性係数は近い。高密度のSawbones(登録商標)に関して、予測された線形剛性係数と測定された線形剛性係数との間の差は、大きいが、同じ桁である。
【0068】
上で説明したように、線形剛性は、EMAによって測定された自然周波数よりもロバストでない量であることが分かっている。それは試験条件(例えば、ハンマーがたたく位置)の影響を非常に受けやすく、自然周波数測定と比較してはるかに小さい信号対雑音比を有する。従って、FEA予測およびEMA測定からの線形剛性の数値が良く合致すると予期することは現実的ではない。それにもかかわらず、図6における比較は、2つの明るい兆候を示している。第1に、FEA結果は傾向を予測する。それは、この場合もやはり、有限要素モデルが正確であることを示す。第2に、予測された線形剛性係数と測定された線形剛性係数との間の最大差は約100%である(例えば、高密度ブロック内の8.5mmインプラントに対して1300対620N/mm)。剛性を測定するためにインパクトハンマーを使用する限りにおいて、その差はそれほど悪くない。
【0069】
有限要素モデルは、線形剛性係数はアバットメントの幾何形状に非常に大きく依存しているので、それらはインプラントの安定性を定義するための良い指標ではないことも証明する。図8は、HAおよびIMPアバットメントでの線形剛性係数のFEA予測を比較する。HAからIMPアバットメントに変更しても、インプラント長に関して線形剛性係数の傾向は変わらない。しかし、IMPアバットメントでの線形剛性係数は、図8に示すように、著しく低い。これは、IMPアバットメントの弾性が線形剛性に影響を及ぼしていることを示す。従って、線形剛性は、インプラント-骨界面剛性またはインプラントの安定性の代表的な評価基準ではない。
【0070】
(c)角度剛性:FEAモデルは、角度剛性係数を計算するのを可能にする。図9は、HAおよびIMPアバットメントを用いてFEAによって予測された角度剛性係数を比較する。歯科インプラントの歯頸部、またはハイブリッドブロック内にBranemark(登録商標)RPのあるアバットメント(HAおよびIMP)の基部でモーメントが印加される場合、角度剛性係数は、両方のアバットメントをもつインプラントに対して、1.5%未満の最小限の差で非常に似ていることに気が付く。これは、アバットメントの基部または先端領域における角度剛性係数がアバットメントの長さとどのように無関係であるかを示して、歯科インプラントの安定性をさらに正確に表すことができる。角度剛性係数は、図9に示すように、インプラント長が増大するにつれて有意に増加する傾向がある。
【0071】
3.ワイドプラットフォームインプラントの安定性
上で展開したEMAおよびFEA手順は、WPインプラントに適用してそれらの安定性を判断することができる。その上、安定性は、評価のためにRPインプラントのそれと比較できる。WPインプラントは低密度ブロックにおいてのみ測定されることに留意されたい。従って、比較は、同様に低密度ブロックにおいてRPインプラントと行われる。
【0072】
(a)実験モード解析。EMAによって測定された第1の自然周波数は、図10に示すように、1984~2072Hzであった。自然周波数は、低密度ブロック内のRPインプラントに対するものと同じ範囲であった。従って、幅を変えても、自然周波数において有意な変化を生じない。それに対して、線形剛性係数は、346.7~429.6N/mmまで変動し、それは、図11に示すように、低密度ブロック内のRPインプラントから抽出されたものより著しく高い。これで、自然周波数はインプラントの安定性を代表するものではないことは明らかである。
【0073】
(b)有限要素解析。低密度ブロック内にHAをもつBranemark(登録商標)WPインプラントについてFEAを実施する。FEAによって予測された自然周波数が比較のために図10に示されている。予測された自然周波数は測定されたものと良く合致する。WPおよびRPインプラントに対してFEAによって予測された線形剛性係数が比較のために図11に示されている。予測された剛性は、大きさにおいてだけでなく傾向においても測定された剛性と良く合致することに留意されたい。例えば、WPに対して予測された剛性はRPのものよりも高い。
【0074】
図12に示すように、低密度ブロック内のBranemark(登録商標)WPおよびRPインプラントに対して角度剛性係数を予測した。また、HAおよびIMPアバットメントをもつモデルから取得した両方の角度剛性係数が図12に示されている。いくつかの所見がある。第1に、HAおよびIMPアバットメントからの角度剛性係数は略同一であり、この場合もやはり角度剛性係数は、インプラントの安定性を表すためのロバストな量であることをもたらす。第2に、WPインプラントはRPインプラントよりも著しく大きな角度剛性係数を有する傾向がある。最後に、角度剛性係数は、WPおよびRPインプラントの両方に対して、インプラント長が増大するにつれて増加する。
【0075】
例2
材料および方法:
【0076】
模擬顎骨:Sawbones(登録商標)(米国ワシントン州バション島)は、異なる密度で提供されて、ヒトの骨の物理的特性と±10%の精度で似るように形成する合成ポリウレタン試験ブロックである。3つの異なるSawbones(登録商標)密度、すなわち、ハイブリッドブロック、高密度ブロック、および低密度ブロック、を使用した。ハイブリッドブロック(34×34×42mmの寸法)は、平均的なヒトの下顎骨密度を模倣するために使用した。それらは海綿骨に似ている40mmの厚いブロック(20PCF、0.32g/cc)および皮質骨に似ている2mmの積層(40PCF、0.64g/cc)から構成される。高密度ブロック(34×34×40mm、40PCF、0.64g/cc)は、LekholmとZarbの骨質分類体系に従ったタイプI骨に似せるため使用した。低密度ブロック(34×34×40mm、15PCF、0.24g/cc)は、タイプIII~IVの骨に似せるために使用した。
【0077】
歯科インプラント:長さが7、8.5、10、11.5、13、15および18mmのBranemark Mk IIIインプラント(Groovy、Nobel Biocare)を、図13に示すように、45N*cmに固定する製造業者の外科的手順書に従い、各ブロックの中心に設置した。各ブロックの下側13mmの部分を万力に固定して可能な限り固定された境界条件を提供した。万力は、可能な限り周囲環境からの振動を排除するために、免震テーブル上にねじで取り付けた。Osstell ISQ(登録商標)、Periotest(登録商標)、およびEMAを使用してインプラント-Sawbones系を試験した。Osstell ISQ(登録商標)試験に関して、Smart Peg(タイプI)を固定具(fixture)レベルにおいて指圧でインプラント上にねじで取り付けた。近遠心的(MD:mesio-distally)に測定して、平均を計算した。10N*cmトルクを使用して、アバットメントをBranemark System Torque Controlで締め付けた。Periotest(登録商標)測定に関して、インプラントのアクセスと垂直に、数ミリメートル離して置かれた装置の先端で試料を試験した。測定の各セットに対して3つの示度の平均を取り、測定の間で、アバットメントを取り除いて再度取り付けた。
【0078】
実験モード解析用の実験装置:装置は、図14に示すように、ハンマー(PCB Piezotronics Inc.米国ニューヨーク州デピュー)、レーザードップラー振動計(LDV)(Polytec Inc.米国ミシガン州デクスター)、およびスペクトルアナライザ(Stanford Research Systems、model SR785、米国カリフォルニア州サニーベール)から構成された。ハンマーでアバットメントをたたいて、歯科インプラントを振動させた。ハンマーの先端において、ロードセル(力センサー)でアバットメントに作用している力を測定した。その間、LDVは、歯科インプラントおよびそのアバットメントの振動速度を測定した。測定された力および速度データはスペクトルアナライザに供給され、そこで周波数応答関数が周波数領域で計算された。様々なパラメータ(例えば、自然周波数、粘性減衰係数、および剛性)が測定された周波数応答関数から抽出できる。
【0079】
自然周波数の抽出:測定された周波数応答関数内のピークに対応する周波数が自然周波数である。一般に、自然周波数はEMAにおける非常にロバストな量である。それらは測定するのが容易で、測定は極めて繰り返し可能である。自然周波数は剛性に依存するので、それらの値は、剛性に影響を及ぼす様々な要因、例えば、インプラントおよびSawbones(登録商標)の材料および幾何形状、Sawbones(登録商標)に関するインプラントの配向、インプラントとSawbones(登録商標)との間の界面特性、実験装置の境界条件(例えば、固定具およびどのようにSawbones(登録商標)ブロックが保持されているか)、ならびにその他(例えば、残留応力)など、に依存する。
【0080】
有限要素解析:図15A図15Bに示すように、実験装置および試験結果をシミュレートするために、ANSYS R-15(米国ペンシルベニア州キャノンズバーグ)を使用して3次元(3-D)有限要素モデルを作成した。そのモデルはSOLID186要素を使用して構築され、それらは、二次変位場(quadratic displacement field)を想定する高次の3D、20ノードの中実要素である。有限要素モデルは、3つの部分、すなわち、Sawbones(登録商標)ブロック、円筒状インプラント、およびインプレッションコーピングアバットメントから構成される。Sawbones(登録商標)ブロックに関して、製造業者によって提供された材料特性(例えば、密度およびヤング率)を使用して、3つの異なる密度の試験したSawbones(登録商標)ブロックをモデル化した。Sawbones(登録商標)ブロックは、等方性と仮定して、試験試料と同じサイズを有する。その上、ブロックは、実験で課された境界条件を反映するために下側の13mmに関して2つの側面で固定した。インプラントをモデル化するために、長さが7、8.5、10、11.5、13、15および18mmで、直径が4mmの一体型円筒を使用した。円筒の材料は、チタン合金TiAlVであった。さらに、円筒は、各Sawbones(登録商標)ブロックの中心に配置した。円筒状インプラントおよびSawbones(登録商標)ブロックのノードは、インプラント-Sawbones(登録商標)界面で併合されて、インプラントとSawbones(登録商標)ブロックとの間の滑りなし条件(すなわち、完全な結合)をモデル化する。インプレッションコーピングアバットメントを略正確な寸法でモデル化した。それは、滑りなし条件でインプラントに連結された。インプレッションコーピングアバットメントの材料はチタン合金であった。モデルを作成した後、シミュレートした試験試料の自然周波数およびモード形状を計算するためにモード解析を実施した。
【0081】
結果
Ostell ISQ(登録商標)測定:平均MD示度は、図16に示すように、高密度ブロックに対して75~81、ハイブリッドブロックに対して74~79.5、および低密度ブロックに対して60~67.5であった。ハイブリッドおよび高密度ブロックに対するISQ値は同じ範囲内であり、他方、低密度ブロックに対するISQ値は低い。言い換えれば、ハイブリッドブロックに対するISQ値は、低密度ブロックのそれよりも高密度ブロックの値に近い。測定されたISQ示度は、製造業者に従ったインプラントの安定性を表す。しかし、データを良く見ると、いくつかの微妙な所見が明らかになる。まず、ハイブリッドおよび高密度ブロックに関して、平均ISQ示度は、長さが13mm以下のインプラントに対して略同じである。その後ISQ示度は、インプラント長が13mmを超えると散乱し始める。低密度ブロックに関して、ISQ示度は非常に散乱している。
【0082】
Periotest(登録商標)PTV測定:Periotest(登録商標)ガイドラインによれば、PTV示度が低ければ、安定性はそれだけ高い。図17に示すように、平均PTV示度は、高密度ブロックに対して9.6~5.5、ハイブリッドブロックに対して14.95~7.7、および低密度ブロックに対して20.5~11.5であった。ハイブリッドブロックに関して、PTV示度は0.84の相関係数を有して、インプラントが長ければ安定性はそれだけ低いことを暗示した。高密度ブロックグループに関して、相関係数は-0.74で、インプラントが長ければそれだけ安定していることを暗示した。低密度グループに関して、PTV示度は-0.47の相関係数を有して、インプラント長と安定性との間にわずかな相関関係しか示さなかった。一般に、PTV示度は非常に散乱していて、測定は決定的でない。異なる密度ブロックに対する示度は偶然で、一貫したパターンに従わない。それにもかかわらず、高密度ブロックに対するPTV示度は、低密度ブロックのそれよりもはるかに低かった。Periotest(登録商標)ガイドラインによれば、これらの測定から取得された値は全て、図17に示すように、0よりも高いので、インプラントの不安定性を示す。
【0083】
有限要素解析:図18A図18Cに示すように、3つの主な振動モードが見られた。図18Aに示す、第1のモードは、アバットメント-インプラント組立体の前後方向の動きを表す。動きは、(境界条件として)部分的に固定されている2つの側面と平行な方向に生じるので、ブロックは比較的小さい歪みを経験してより小さい剛性となる。従って、このモードは最も低い自然周波数を有する。図18Bに示す、第2のモードは、アバットメント-インプラント組立体の横方向の動きを表す。第2のモードでは、動きは、部分的に固定されている2つの側面と垂直な方向に生じる。従って、ブロックは比較的大きな歪みを経験してより高い剛性およびより高い自然周波数となる。図18Cに示す、第3のモードは、Sawbones(登録商標)のねじる動きを表す。各振動モードはそれ自身の自然周波数を有する。
【0084】
第1の自然周波数の計算に基づき、2つの主な発見がある。第1に、図19に示すように、予測された自然周波数は、インプラント長とは無関係であった。第2に、予測された自然周波数は、40PCFブロックに対して最も高く、15PCFブロックに対して最も低くかった。その上、15PCFブロックと40/20PCFブロックとの間の周波数差は小さく、他方、40PCFブロックと40/20PCFブロックとの間の周波数差はもっと著しい。
【0085】
実験モード解析:EMAの結果はFEAからの予測と同じ傾向を有していた。測定された周波数応答関数内で3つの共振ピークが見られ、FEAで予測された3つの振動モードを確認した。さらに、3つの共振ピークが出現した周波数は、測定された自然周波数であった。多重自然周波数の存在は、インプラント-Sawbones系の複合動態(complex dynamics)内に現れる。
【0086】
第1のモードをより良く励起するために、アバットメントを可能な限り前から打つようにハンマーを調整した。この調整は横からの励起を最小限にして、第2のピークの振幅を縮小した。第2のモードは第1のモードに干渉せず、測定されたデータを汚染しなかったので、かかる調整は非常に望ましかった。結果として、焦点が第1のモードに置かれ、それは、最も重要なモードであった。図20に示すように、完璧な実験が実施された場合、第2のモードは全く励起されなかったので、第2のピークは明瞭に見ることができなかった。
【0087】
測定された周波数値は非常に一貫していた。一般に、第1の自然周波数の測定された値は、図21に示すように、高密度ブロックに対して2224Hz~2336Hz、ハイブリッドブロックに対して1688Hz~1720Hz、および低密度ブロックに対して1424Hz~1576Hzであった。測定された自然周波数は、FEAで予測されたように、インプラント長に関して大幅には変動しなかった。ハイブリッドブロックと低密度ブロックとの間の測定された周波数差は、ハイブリッドブロックと高密度ブロックとの間よりもずっと小さかった。低密度ブロックは15PCFであり、他方、ハイブリッドブロックの大部分は20PCFであるので、これらの結果は、道理にかなっている。ハイブリッドブロックはもっと低密度ブロックのように実施すべきであり、実験結果はその見解を支持する。
【0088】
これらの実験結果は、図19図21と比較することによって示されるように、定性的だけでなく定量的にもFEAからの予測と非常に良く合致する。Sawbones(登録商標)は物理的特性において±10%の許容誤差を有しており、それは測定された自然周波数に実質的に影響を及ぼし得ることに留意すべきである。
【0089】
E.例示的なプローブ
図1に関連して前述したように、医療用インプラントの安定性を検出するためのシステムは、(i)医療用インプラントに加えられた力に応答して医療用インプラントの振動と関連付けられた応答信号を検出するように構成されたプローブ、および(ii)プローブと通信するコンピューティング装置を含み得、コンピューティン装置は、図2に関連して前述した方法ステップの1つ以上を実行するように構成される。図22図27は、医療用インプラントに加えられる力を生成し、加えられた力に応答して医療用インプラントの振動と関連付けられた応答信号を検出するために使用され得る様々なプローブを例示する。図22図26に示す実施形態では、医療用インプラントは、患者の骨304内に設置された歯科インプラント302を含む。アバットメント306は、ねじ308によって歯科インプラント302に結合される。歯科クラウン310が次いで、アバットメント306の上に位置付けられる。本明細書で説明する方法のいずれかを使用して歯科インプラント302の安定性を判断することは、歯科インプラント302に力を直接加えること、アバットメント306に力を加えること、および/または歯科クラウン310に力を加えることを含み得る。図22図26に例示する医療用インプラントは制限することを意図せず、本明細書で説明する実施形態は、例えば、限定されない例として、歯科インプラント、歯科クラウン、歯科修復、骨スクリュー、プレート、股関節インプラント、または膝インプラントなどの、任意の医療用インプラントに適用する。
【0090】
図22は、応答信号を取得するための構成要素の第1の実施形態を示す。図示する実施形態では、構成要素は力入力源としてのハンマー312および速度出力を生成するためのレーザードップラー振動計314を含む。かかる例では、ハンマー312はプローブを含む。ハンマー312は、例えば、歯科インプラント302に結合されたアバットメント306またはアバットメント306に結合された歯科クラウン310などの、対象物体をたたくように調整されて大きさを決められて、歯科インプラント302を振動させる。ハンマー312の先端において、ロードセル316は、対象物体に作用している力を測定するための力センサーとして機能する。ロードセル316は、ハンマー312の第1の表面と、ハンマー312およびロードセル316が対象物体に接触する物体上の位置との間に配置された、圧電センサーまたは圧電ブロックであり得る。ブロックの電荷が測定されて、対象物体に作用している力の指標を提供し得る。同時に、振動計314は、対象物体の振動速度を測定し、対象物体は、この例では、歯科インプラント302、アバットメント306、および歯科クラウン310を含む。かかる振動計314は、1つのタイプの光学センサーであるが、他の光学および非光学センサーも振動を測定するために使用され得る。測定された力および速度データはスペクトルアナライザに供給され、そこで周波数応答関数が周波数領域で計算される。かかるアナライザは、図1に示すようなアナライザ118であり得る。様々なパラメータ(例えば、自然周波数、粘性減衰係数、および剛性)が測定された周波数応答関数から抽出できる。本開示に関して、図2のステップ204で説明したように、医療用インプラントの自然周波数および線形剛性が判断される。
【0091】
図23は、プローブ400の代替実施形態を例示する。かかる実施形態は、圧電セラミックブロックなどの、アクチュエータ402を備えたプローブ400を含み、アクチュエータ402は同時に、プローブ400の遠位端上の第1の表面404上に配置されて、図23に示す歯科クラウン310などの、対象物体と接触して置かれるように構成された、力トランスデューサとして機能する。圧電アクチュエータ402に電圧が印加されると、それは変形して歯科クラウン310を移動させて、歯科インプラント302を振動させる。前述のように、対象物体は、歯科インプラント302、アバットメント306、または任意の他の医療用インプラントでもあり得る。アクチュエータ402によって歯科クラウン310にかけられた力は、例えば、圧電アクチュエータ402を通過する電流によって推定され得る。プローブ400は、プローブ400に物理的に結合されて、第1の表面404から間隙を空けて向かい合った、第2の表面410を提供する支持構造408も含む。プローブ400は、第1の表面404と第2の表面410との間に歯科クラウン310を受け入れるようにさらに成形される。物体406は、図23に示す歯科インプラントなどの、医療用インプラントであり得る。
【0092】
そのため、支持構造408は、アクチュエータ402が歯科クラウン310に接触するように構成される位置の反対側の、歯科クラウン310の側面に、プローブ400を物理的に結合するように構成される。かかる支持構造408は、歯科クラウン310の上を超えて延出する第1の部分412を含み得る。支持構造408は、第1の部分412から実質的に垂直角度で延出する第2の部分414も含み得、第2の部分414は、歯科クラウン310の反対側に接触するように構成される。その上、第2の部分414は、歯科クラウン310と接触してコンプライアント面416を有し得、歯科クラウン310が圧電アクチュエータ402の力の下で動くのを可能にする。
【0093】
応答信号は、アクチュエータ402により様々な方法で歯科クラウン310に加えられた力に応答して検出され得る。一実施形態に関して、圧電アクチュエータ402は振動センサーとして機能し得る。例えば、圧電アクチュエータ402の電圧および電流は、自然周波数もしくは線形剛性係数またはその両方がそれから抽出され得るインピーダンス測定を取得するためにモニターされ得る。別の実施形態に関して、コンプライアント面416は、PVDFなどの、圧電ポリマーで作られて、センサーとして機能し得る。圧電アクチュエータ402の電流および圧電ポリマーの電荷は、自然周波数および線形剛性係数を抽出するために使用され得る。図23図27の実施形態に関して、関連付けられたコンピューティング装置102はスペクトルアナライザ118を含む必要がない可能性があることに留意されたい。これらの実施形態では、図23に示すプローブ400などの、プローブからの信号は、プロセッサ112によって受信され得、剛性係数は、コンピューティング装置102内のこの同じ要素によって直接計算され得る。
【0094】
図24は、プローブ500の別の実施形態を例示する。この実施形態では、トランスデューサ502は、圧電トランスデューサであり得、歯科クラウン310などの、対象物体の2つ以上の側面の周囲に置かれるように構成され得る。前述のように、対象物体は、歯科インプラント302、アバットメント306、または任意の他の医療用インプラントでもあり得る。駆動信号を適用すると、トランスデューサ502を振動させ得、それは次いで、歯科クラウン310、アバットメント306、および歯科インプラント302を振動させ得る。歯科クラウン310の振動は、同じトランスデューサ502によって検出されて、本明細書の別の箇所で説明するようにさらに使用可能な応答信号に変換され得る。かかるトランスデューサは、少なくとも2つの部分を有する角度トランスデューサ(angled transducer)を含み得、各部分は、歯科クラウン310が結合された部分の間に受け入れられ得るように、約70度~約110度の間の角度で別の部分に結合される。1つの特定例では、図24に示すように、トランスデューサ502は、歯科クラウン310に概ね対応して取り囲むように直角で相互に連結された3つの部分506A、506B、506Cを含む。
【0095】
図25は、プローブ600の別の実施形態を例示する。図25の実施形態は図24と似ているが、トランスデューサ602は、対象物体の1つだけの側面上に、プローブ600の遠位端において位置付けられる。図25に示す例では、対象物体は歯科クラウン310である。前述のように、対象物体は、歯科インプラント302、アバットメント306、または任意の他の医療用インプラントでもあり得る。この実施形態では、トランスデューサ602は、機械力を印加して、応答する機械的振動を歯科クラウン310から(例えば、インピーダンスを使用して)検出し、後続の処理のために振動を応答信号に変換し得る。そのため、トランスデューサ602トランスデューサは、機械力を歯科クラウン310に印加し、機械力に応答して歯科クラウン310の動きを検出し、応答信号は、検出された動きに基づいて判断される。この実施形態の変形は、プローブ600を位置付けるためにレーザー誘導システム606を組み込むことである。マーカー608が、最初に歯科クラウン310上に付けられ得る。レーザーシステム606はマーカー608を見つけ、プローブはその位置で歯科クラウン310と接触して測定のセットを取得する。本プロセスは、図2に関連して前述したコンピュータモデルによって角度剛性をより良く抽出するために使用できる、歯科クラウン310全体に対する測定を取得するために複数のマーカーに関して繰り返され得る。
【0096】
図26は、プローブ700のさらなる実施形態を例示する。この実施形態では、プローブ700は、圧電ブロックなどの、一対のトランスデューサ702A、702Bを、プローブ700の遠位先端に含む。2つのトランスデューサ702A、702Bは、角度励起(angular excitation)を生成するために、駆動信号源116によるなど、位相を異にして駆動され得る。1つの特定例では、トランスデューサ702A、702Bは、応答信号を生成するために180度位相を異にして駆動され得る。インピーダンス値が各トランスデューサ702A、702Bによって測定され得る。測定されたインピーダンスの差は、対象物体の角度剛性に比例する。図26に示す例では、対象物体は歯科クラウン310である。前述のように、対象物体は、歯科インプラント302、アバットメント306、または任意の他の医療用インプラントでもあり得る。理想的には、2つのトランスデューサ702A、702Bの中心線が歯科クラウン310の基部を通るべきであり、この条件で測定された角度剛性は最も正確な測定である。理想的な角度剛性を取得するために、図24に関連して前述したように、異なる位置で角度剛性測定を実施するために、レーザー誘導システムが使用され得る。理想的な角度剛性値は、これらの測定を理想的な位置に外挿することにより取得できる。この実施形態の変形は、図23に示すものに類似した周波数応答曲線を測定するために、1つの圧電ブロック702Aをアクチュエータとして、他方、他の圧電ブロック702Bをセンサーとして使用することである。
【0097】
図27は、2つの折れた骨802を接合する骨スクリュー800を例示する。図27に示す例は折れた歯を例示しているが、システムおよび方法例は、患者の任意の折れた骨に適用し得る。骨スクリュー800は、キャップ部804およびねじ部806を有する。キャップ部804およびねじ部806は、プレロード(preload)を提供し、折れた骨802をしっかり接合して治癒を促進する。骨スクリュー800を締めて折れた骨802を固定した後、取り外し可能なアバットメント808が、キャップ部804内部の雌ねじ810で骨スクリュー800に取り付けられる。取り外し可能なアバットメント808の目的は、測定のための作業空間を提供することである。次いでプローブ812(以前の実施形態で前述したいずれかのプローブなど)が取り外し可能なアバットメント808に対して位置付けられて、折れた骨802の内部に移植された骨スクリュー800の自然周波数および/または線形剛性係数を測定する。その間、骨スクリュー800および取り外し可能なアバットメント808を含む折れた骨802の有限要素モデルが作成される。有限要素モデルの骨特性は、測定された自然周波数および/または測定された線形剛性係数をモデルが予測するように、調整される。次いで、有限要素モデルを使用して骨スクリュー800のキャップ部804における角度剛性を計算する。計算された角度剛性は従って、骨固定の安定性を定量化する。測定後、取り外し可能なアバットメント808が除去されて、折れた骨802は、骨スクリュー800の影響下で、周囲の軟部組織による治癒に委ねられる。
【0098】
F.コンピュータ可読媒体例
図28は、実施形態例に従って構成されたコンピュータ可読媒体を示す。実施形態例では、システム例は、1つ以上のプロセッサ、1つ以上の形式のメモリ、1つ以上の入力装置/インタフェース、1つ以上の出力装置/インタフェース、および1つ以上のプロセッサによって実行される場合に、システムに、前述した、様々な関数、タスク、機能などを実行させる、機械可読命令を含み得る。
【0099】
前述のように、いくつかの実施形態では、開示する方法は、持続性コンピュータ可読記憶媒体上に機械可読形式で、または他の持続性媒体もしくは製品上に、符号化されたコンピュータプログラム命令によって実装できる。図28は、本明細書で提示する少なくともいくつかの実施形態に従って配置された、コンピューティング装置上でコンピュータプロセスを実行するためのコンピュータプログラムを含むコンピュータプログラム製品例の概念的部分図例示する略図である。
【0100】
一実施形態では、コンピュータプログラム製品例900は、信号担持媒体902を使用して提供される。信号担持媒体902は、1つ以上のプログラミング命令904を含み得、それは、1つ以上のプロセッサによって実行される場合に、図に関連して前述した機能または機能の部分を提供し得る。いくつかの例では、信号担持媒体902は、コンピュータ可読媒体906であり得、例えば、ハードディスクドライブ、コンパクトディスク(CD)、デジタルビデオディスク(DVD)、デジタルテープ、メモリなどであるが、それらに制限されない。いくつかの実施態様では、信号担持媒体902は、コンピュータ記録可能媒体908であり得、例えば、メモリ、読取り/書込み(R/W)CD、R/W DVDなどであるが、それらに制限されない。いくつかの実施態様では、信号担持媒体902は、通信媒体910であり得、例えば、デジタルおよび/またはアナログ通信媒体(例えば、光ファイバーケーブル、導波路、有線通信リンク、無線通信リンクなど)などであるが、それらに制限されない。従って、例えば、信号担持媒体902は、無線形式の通信媒体910によって伝達できる。
【0101】
1つ以上のプログラミング命令904は、例えば、コンピュータ実行可能および/または論理実装命令にできる。いくつかの例では、図1のプロセッサ112などの、コンピューティング装置は、コンピュータ可読媒体906、コンピュータ記録可能媒体908、および/または通信媒体910の1つ以上によってプロセッサ112に伝達されたプログラミング命令904に応答して、様々な操作、機能、または動作を提供するように構成される。
【0102】
持続性コンピュータ可読媒体は、複数のデータ記憶要素間で分散することもでき、それらは相互に遠く離れて配置できる。格納された命令の一部または全部を実行する装置は、図1に例示するようなプローブ104であり得る。代替として、格納された命令の一部または全部を実行する装置は、サーバーサイドのコンピューティング装置であり得る。
【0103】
G.結論
上の詳細な説明は、開示するシステム、装置、および方法の様々な特徴および機能を、添付の図を参照して記述する。図中、文脈で別段の指示がない限り、同様の記号は典型的には、同様の構成要素を識別する。詳細な説明、図、およびクレームで記述する例示的な実施形態は、制限することを意図していない。本明細書で提示する主題の範囲から逸脱することなく、他の実施形態が利用でき、他の変更を行うことができる。本開示の態様は、本明細書で大まかに説明して、図面で例示するように、多種多様な構成で配置、置換、統合、分離、および設計でき、その全部が本明細書で明示的に企図されることが容易に理解されるであろう。
【0104】
様々な態様および実施形態が本明細書で開示されているが、他の態様および実施形態が当業者には明らかであろう。本明細書で開示する様々な態様および実施形態は、例示目的であり、制限することを意図しておらず、真の範囲は以下のクレームによって示されている。
図1
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