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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-31
(45)【発行日】2023-06-08
(54)【発明の名称】化粧水用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/44 20060101AFI20230601BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
A61K8/44
A61Q19/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020080994
(22)【出願日】2020-05-01
(65)【公開番号】P2021175709
(43)【公開日】2021-11-04
【審査請求日】2021-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】397021235
【氏名又は名称】株式会社サニープレイス
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(72)【発明者】
【氏名】向井 信人
(72)【発明者】
【氏名】向井 孝
【審査官】太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-040746(JP,A)
【文献】特開2011-111436(JP,A)
【文献】プラチナアミノイオン水 180mL,Amazon.co.jp,2010年08月23日,https://www.amazon.co.jp/%E3%82%B5%E3%83%8B%E3%83%BC%E3%83%97%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%82%B9-849-%E3%83%97%E3%83%A9%E3%83%81%E3%83%8A-%E3%82%A2%E3%83%9F%E3%83%8E%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%83%B3%E6%B0%B4-180ml/dp/B0040FM84M
【文献】かずのすけの化粧品評論と美容化学についてのぼやき,Amebaブログ,2013年11月25日,https://ameblo.jp/rik01194/entry-11711772472.html
【文献】いち押しアイテム HAIR OPE輝髪シリーズ,株式会社和楽公式サイト,2014年08月01日,https://waraku.jpn.com/basic/hair-ope/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00 - 8/99
A61Q 19/00 - 90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
L-システイン、L-アルギニン、L-リシン、又はL-ヒスチジンの少なくとも1種のアミノ酸と、還元性イオン水とを含有する化粧水用組成物であって、前記化粧水用組成物のpHは10.9~11.639であり、前記アミノ酸の含有量は、化粧水用組成物の全量に対して、0.01質量%~0.00001質量%の範囲であることを特徴とする化粧水用組成物。
【請求項2】
前記還元性イオン水の含有量は、化粧水用組成物の全量に対して、10質量%~90質量%の範囲であることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記アミノ酸の含有量は、化粧水用組成物の全量に対して、0.001質量%~0.00001質量%の範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記還元性イオン水の含有量は、化粧水用組成物の全量に対して、10質量%~20質量%の範囲であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
炭酸ナトリウム、炭酸ソーダ、又は炭酸水素ナトリウムからなるpH調整剤含有しないことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧水用組成物に関し、特に、抗菌剤フリーの化粧水用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧水には一般的に、中身や容器が微生物により腐敗などの変性を起こさないように、微生物の繁殖や成育を抑制する防腐・殺菌成分が配合されている。多くの防腐・殺菌成分は、配合可能成分リスト(ポジティブリスト)に記載されているので、配合規制がある。
【0003】
例えば、殺菌剤を含む拭き取り用の化粧水であって、敏感肌用、ニキビ予防用、及びニキビ改善用からなる群より選ばれた用途に用いられ、下記成分(A)、下記成分(B)、下記成分(C)、下記成分(D)、及び下記成分(E)を含むことを特徴とする化粧水が知られている(特許文献1)。
成分(A):抗炎症剤
成分(B):殺菌剤
成分(C):脂肪酸エステル非イオン性界面活性剤
成分(D):保湿剤
成分(E):水
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-132623号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、上述の特許文献1を含め従来技術においては、中身や容器が微生物により腐敗などの変性を起こさないように、殺菌剤を含むものが多いのが現状である。一方で、未だにこれらの抗菌成分等は有害であるという認識を持つ消費者が多いことから、防腐・殺菌剤を配合しないことが望まれる。したがって、使用する前に、内容物や容器が微生物により腐敗などの変性を起こさないように、防腐・殺菌成分以外の手段によって、微生物の繁殖や成育を抑制することができれば望ましい。
【0006】
そこで、本発明は、抗菌力を有し、安全性を有する化粧水組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明者らは、防腐、殺菌成分を配合することなく、抗菌性を有する組成物について鋭意検討した結果、本発明を見出すに至った。
【0008】
すなわち、本発明の化粧水用組成物は、L-システイン、L-アルギニン、L-リシン、又はL-ヒスチジンの少なくとも1種のアミノ酸と、還元性イオン水とを含有する化粧水用組成物であって、前記化粧水用組成物のpHは10.9~11.639であり、前記アミノ酸の含有量は、化粧水用組成物の全量に対して、0.01質量%~0.00001質量%の範囲であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の化粧水用組成物の好ましい実施態様において、前記還元性イオン水含有量は、化粧水用組成物の全量に対して、10質量%~90質量%の範囲であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の抗菌水用組成物の好ましい実施態様において、前記アミノ酸の含有量は、化粧水用組成物の全量に対して、0.001質量%~0.00001質量%の範囲であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の化粧水用組成物の好ましい実施態様において、前記還元性イオン水の含有量は、化粧水用組成物の全量に対して、10質量%~90質量%の範囲であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の化粧水用組成物の好ましい実施態様において、炭酸ナトリウム、炭酸ソーダ、又は炭酸水素ナトリウムからなるpH調整剤含有しないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の化粧水用組成物によれば、いわゆる防腐剤や殺菌剤を配合せず、抗菌性を有する化粧水用組成物の提供が可能であるという有利な効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の化粧水用組成物は、L-システイン、L-アルギニン、L-リシン、又はL-ヒスチジンの少なくとも1種のアミノ酸を含有する化粧水用組成物であって、前記化粧水用組成物のpHは10.9以上、より好ましくは、11.5以上であることを特徴とする。これは、抗菌成分等の添加を望まない消費者に対して、いわゆる防腐・殺菌剤を配合せずに、抗菌作用を有する組成物を提供しようとするものである。本発明において、L-システイン、L-アルギニン、L-リシン、又はL-ヒスチジンの少なくとも1種のアミノ酸を含有することとしたのは、人の毛髪の約80%はアミノ酸由来のケラチンタンパク質により構成され、L-システインはその毛髪にも多く含まれるアミノ酸であること、代表的な塩基性アミノ酸としてL-アルギニン、L-リシン、L-ヒスチジンが挙げられるが、これらのアミノ酸と、抗菌力を有するアルカリ性のpH値により、防腐・殺菌成分を配合せずとも、微生物等の繁殖を抑制し得ることからである。なお、L-システイン及びその塩類は毛髪の保湿および柔軟性を保たせることが可能であり、L-アルギニン、L-リシン、L-ヒスチジン等は毛髪の損傷により毛髪から流出するため、添加することにより、アミノ酸成分を補充することも可能となる。
【0015】
このように、本発明においては、アルカリ度が極めて低いため塗布されたときに肌の中和能で瞬時に弱酸性になり、肌に刺激のない化粧水とすることができる。したがって、肌に塗布される前は、pH10.9以上~pH11.5付近なので防腐剤を配合しなくても抗菌性のある化粧水であり、肌に塗布されると瞬時に弱酸性(肌表面でpH6.0付近)になることを特徴の一つとすることができる。
【0016】
また、本発明の化粧水用組成物の好ましい実施態様において、前記アミノ酸の含有量は、化粧水用組成物の全量に対して、1.0質量%~0.00001質量%の範囲、より好ましくは、0.01質量%~0.0001質量%の範囲であることを特徴とする。かかる範囲としたのは、この程度の量であれば、抗菌性を有する組成物として効果を発揮し得るからである。
【0017】
本発明において、pH値の調整は、配合するアミノ酸の種類、配合量等により適宜調整可能である。一般に、炭酸ナトリウムの他、炭酸ソーダ、炭酸水素ナトリウム等を含めpH調整剤を用いて調整することができるが、このようなpH調整剤の使用は、組成物のアルカリ度が高くなりpHを維持する力は強くなり、肌に塗布した場合は瞬時に弱酸性には戻りづらくなる傾向がある。
【0018】
したがって、かかる観点から、本発明の好ましい実施態様において、pH調整剤を含有しないことを特徴とする。
【0019】
また、本発明において、前記化粧水用組成物のpHは10.9以上であるとしたのは、このようなpH値であれば、いわゆる防腐・殺菌成分を添加しなくても、多くの好アルカリ性微生物を排除することが可能だからである。
【0020】
また、本発明の化粧水用組成物の好ましい実施態様において、さらに、還元性イオン水を含有することを特徴とする。上述のように、pH値の調整は、配合するアミノ酸の種類、配合量等により適宜調整可能であるが、配合するアミノ酸や配合量によっては、所望のpH値を達成できない虞もある。この場合には、還元性イオン水を使用することができる。還元イオン水は、電気分解され、アルカリ性を示す水とすることができる。例えば、還元イオン水としては、株式会社エー・アイ・システムプロダクトが製造販売するS-100等を挙げることができ、S-100は、、電気分解された高機能還元性イオン水で、化粧品表示名称は「水」、pH12±0.5のアルカリ性水である。
【0021】
また、本発明の化粧水用組成物の好ましい実施態様において、前記還元性イオン水の含有量は、化粧水用組成物の全量に対して、10質量%~90質量%の範囲、より好ましくは、10質量%~20質量%の範囲であることを特徴とする。
【実施例
【0022】
以下では本発明の化粧水用組成物の一例について実施例を用いて説明するが、本発明は、下記の実施例に限定して解釈されるものではない。
【0023】
実施例1
まず、アルカリ性を呈し、防腐・殺菌成分を配合しない頭髪・肌の化粧水用組成物の一例を試みた。アミノ酸の一例として、アルギニンを用いた。具体的に、精製水99.0質量%にL(+)―アルギニン(和光純薬工業(株)製)1.0%質量を配合して、アルカリ性水溶液を作成しpHを測定した。また、参照のため、精製水80.0質量%に電解還元性イオン水S-100((株)エー・アイ・システムプロダクト製)を20質量%配合し、アルカリ性水溶液を作成しpHを測定した。
【0024】
なお、pH測定には以下の機種及び電極を用いた。
pHメーターの機種:pH METER F-71((株)堀場製作所)
pHメーターの電極:#9615-10D((株)堀場製作所)
【0025】
実施例2
次に、精製水79.0質量%にS-100を20.0質量%、L-アルギニン1.0質量%を配合して、アルカリ性水溶液を作成し、実施例1と同様にpHを測定した。
【0026】
表1に、実施例1~2、参照例のpH測定値を示す。
【0027】
【表1】
【0028】
表1の結果から参照例のpH測定値が一番高いことが判明した。
【0029】
実施例3~6
表1の結果をもとに、実施例1と同様の手順に従って、種々の調整例を作成した。表2は、本発明の一実施態様における化粧水用組成物の成分例及び調整例を示す。
【0030】
【表2】
【0031】
【表3】
【0032】
実施例7
次に、アミノ酸として、L-ヒスチジンを用いて、かつ、種々の量の還元イオン水を用いて、上述の実施例の手順に従って、本発明の組成物を作成した。その結果を、表4に示す。
【0033】
【表4】
【0034】
これらの結果、pH10.9以上の組成物を作成することができ、いわゆる防腐剤、殺菌剤を含むことなく、抗菌性を有する組成物を作成するできることが判明した。また、仮に、3種類の塩基性アミノ酸を同量配合する場合には、0.001%以下が好ましいことが判明した。
【0035】
また、本発明においては、炭酸ナトリウムの他、炭酸ソーダ、炭酸水素ナトリウム等のpH調整剤を使用していないので、アルカリ度が極めて低い組成物を提供することができるので肌に塗布されたときに肌の中和能で瞬時に弱酸性になり肌を刺激しないという有利な効果を奏する。さらに、本発明の組成物を頭髪に塗布した場合にはアルカリ性の時に毛髪への浸透性を高め、塩基性アミノ酸を補うことが可能であることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明によると、防腐剤、殺菌剤を配合することなく、抗菌性を有することから、広い分野において産業上利用価値が高い。