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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-31
(45)【発行日】2023-06-08
(54)【発明の名称】柔軟な外皮を有するロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/00 20060101AFI20230601BHJP
   B25J 5/00 20060101ALI20230601BHJP
   A63H 11/00 20060101ALI20230601BHJP
   A63H 3/36 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
B25J19/00 H
B25J5/00 A
A63H11/00 Z
A63H3/36 G
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020519882
(86)(22)【出願日】2019-05-15
(86)【国際出願番号】 JP2019019243
(87)【国際公開番号】W WO2019221161
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2022-04-22
(31)【優先権主張番号】P 2018093430
(32)【優先日】2018-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】515337268
【氏名又は名称】GROOVE X株式会社
(72)【発明者】
【氏名】林 要
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大二朗
(72)【発明者】
【氏名】横山 智彰
【審査官】仁木 学
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/052001(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 19/00
B25J 5/00
A63H 11/00
A63H 3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部と、
前記ベース部に支持された第1可動部と、
前記第1可動部に接触し、前記ベース部を覆うように設けられた柔軟な外皮と、
前記外皮と接触して設けられ、前記第1可動部の動作に応じた前記外皮の変位にともない前記ベース部に対する相対変位が変わる第2可動部と、
を備え
前記第1可動部の駆動軸を中心とする動作に応じて前記外皮が変位し、
前記外皮の変位にともなって前記第2可動部が動作するときの仮想の軸と、前記第1可動部の駆動軸とのずれが、前記外皮の変位が大きくなるに応じて大きくなることを特徴とするロボット。
【請求項2】
ベース部と、
前記ベース部に支持された第1可動部と、
前記第1可動部に接触し、前記ベース部を覆うように設けられた柔軟な外皮と、
前記外皮と接触して設けられ、前記第1可動部の動作に応じた前記外皮の変位にともない前記ベース部に対する相対変位が変わる第2可動部と、
を備え、
前記第2可動部を一対備え、
前記一対の第2可動部は、それぞれの駆動基端の相対位置が変わらないように拘束されていることを特徴とするロボット
【請求項3】
前記一対の第2可動部が左右の腕として環状部材に支持され、
前記環状部材が、前記ベース部の周囲をとり囲むように設けられていることを特徴とする請求項に記載のロボット。
【請求項4】
前記外皮が、前記第1可動部と前記ベース部との間に弾性変形領域を有し、
前記外皮における前記弾性変形領域に前記第2可動部が配置されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のロボット。
【請求項5】
前記外皮が、前記第1可動部と、前記ベース部における前記第1可動部とは反対側の領域に被着されていることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボディを覆う柔軟な外皮を備えたロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒューマノイドロボットやペットロボット等、人間との対話や癒しを提供する自律行動型ロボットの開発が進められている(例えば特許文献1参照)。このようなロボットとして、周囲の状況に基づいて自律的に学習することで行動を進化させ、生命を感じさせるものも出現しつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-323219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ロボットは、各部位の連結部に設けられたアクチュエータをそれぞれ駆動制御することで一つのモーションを実現するため、どうしても機械的挙動によるぎこちなさを感じさせる。
【0005】
本発明の少なくとも一つの実施形態は、より自然で生物的な挙動を実現可能なロボットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様はロボットである。このロボットは、ベース部と、ベース部に支持された第1可動部と、第1可動部に接触し、ベース部を覆うように設けられた柔軟な外皮と、外皮と接触して設けられ、第1可動部の動作に応じた外皮の変位にともないベース部に対する相対変位が変わる第2可動部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明のある態様によれば、より自然で生物的な挙動を実現可能なロボットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係るロボットの外観を表す図である。
図2】ロボットの構造を概略的に表す断面図である。
図3】車輪収納機構の構造および動作を模式的に示す図である。
図4】ロボットのハードウェア構成図である。
図5】ロボットシステムの機能ブロック図である。
図6】ロボットの構造を表す説明図である。
図7】ロボットの構造を表す説明図である。
図8】ロボットの構造を表す説明図である。
図9】ロボットの構造を表す説明図である。
図10】アームユニットの構成を表す図である。
図11】アームユニットの設置構成および動作を表す模式図である。
図12】アームユニットの設置構成および動作を表す模式図である。
図13】排水構造を表す模式図である。
図14】頭部とツノとの接続部の構造を表す説明図である。
図15】頭部の排水構造を表す説明図である。
図16】保護部材の構造を表す図である。
図17】変形例に係るアームユニットおよびその構成部品を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を表現することがある。また、以下の実施形態およびその変形例について、ほぼ同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0010】
本実施形態のロボットは、頭部の動きに応じて腕(肩)が自然に追従する。この腕の追従が、その駆動機構の制御ではなく、柔軟な外皮の弾性力が利用されることで実現される。それにより、しなやかな生物的挙動を実現できる。ロボットの姿勢は、ボディのシルエットを変える主要な骨格を動かすことと、腕などの細部を動かすことの2つの要素を組み合わせることで実現される。本実施形態では大きな動きを柔軟な外皮を利用して実現し、細部の動きをモータの制御により実現する。それにより、少ないアクチュエータで自然なモーションを実現できる。以下、このようなロボットの具体的構成について説明する。
【0011】
図1は、実施形態に係るロボット100の外観を表す図である。図1(a)は正面図であり、図1(b)は側面図である。
ロボット100は、外部環境および内部状態に基づいて行動や仕草(ジェスチャー)を決定する自律行動型のロボットである。外部環境は、カメラやサーモセンサなど各種のセンサにより認識される。内部状態はロボット100の感情を表現するさまざまなパラメータとして定量化される。ロボット100は、オーナー家庭の家屋内を行動範囲とする。以下、ロボット100に関わる人間を「ユーザ」とよぶ。
【0012】
ロボット100のボディ104は、全体的に丸みを帯びた形状を有し、ウレタンやゴム、樹脂、繊維などやわらかく弾力性のある素材により形成された外皮314を含む。ロボット100に服を着せてもよい。ロボット100の総重量は5~15キログラム程度、身長は0.5~1.2メートル程度である。適度な重さと丸み、柔らかさ、手触りのよさ、といった諸属性により、ユーザがロボット100を抱きかかえやすく、かつ、抱きかかえたくなるという効果が実現される。
【0013】
ロボット100は、一対の前輪102(左前輪102a,右前輪102b)と、一つの後輪103を含む。前輪102が駆動輪であり、後輪103が従動輪である。前輪102は操舵機構を有しないが、左右輪の回転速度や回転方向が個別に制御可能とされている。後輪103はキャスターであり、ロボット100を前後左右への移動させるために回転自在となっている。後輪103はオムニホイールであってもよい。左前輪102aよりも右前輪102bの回転数を大きくすることで、ロボット100が左折したり、左回りに回転できる。右前輪102bよりも左前輪102aの回転数を大きくすることで、ロボット100が右折したり、右回りに回転できる。
【0014】
前輪102および後輪103は、後述する駆動機構(回動機構、リンク機構)によりボディ104に完全収納できる。ボディ104の下半部には左右一対のカバー312が設けられている。カバー312は、可撓性および弾性を有する樹脂材(ラバー、シリコーンゴム等)からなり、柔らかい胴体を構成するとともに前輪102を収納できる。カバー312には側面から前面にかけて開口するスリット313(開口部)が形成され、そのスリット313を介して前輪102を進出させ、外部に露出させることができる。
【0015】
走行時においても各車輪の大半はボディ104に隠れているが、各車輪がボディ104に完全収納されるとロボット100は移動不可能な状態となる。すなわち、車輪の収納動作に伴ってボディ104が降下し、床面Fに着座する。この着座状態においては、ボディ104の底部に形成された平坦な着座面108(接地底面)が床面Fに当接する。なお、車輪収納機構の構造および動作の詳細については後述する。
【0016】
ロボット100は、2つの腕部106を有する。腕部106の先端に手があるが、モノを把持する機能はない。腕部106は、後述するアクチュエータの駆動により、上げる、曲げる、手を振る、振動するなど簡単な動作が可能である。2つの腕部106は、それぞれ個別に制御可能である。
【0017】
ロボット100の頭部正面(顔)には2つの目110が設けられている。目110は、液晶素子または有機EL素子により、様々な表情で表示される。ロボット100は、スピーカーを内蔵し、簡単な音声を発することもできる。ロボット100の頭頂部にはツノ112が取り付けられる。ツノ112には全天周カメラが内蔵され、上下左右全方位を一度に撮影できる。また、ロボット100の頭部正面には、高解像度カメラが設けられる(図示せず)。
【0018】
このほか、ロボット100は、周辺温度を検出する温度センサ、複数のマイクロフォンを有するマイクロフォンアレイ、計測対象の形状を測定可能な形状測定センサ(深度センサ)、超音波センサなどさまざまなセンサを内蔵する。
【0019】
図2は、ロボット100の構造を概略的に表す断面図である。
ボディ104は、本体フレーム310、一対の腕部106、一対のカバー312および外皮314を含む。本体フレーム310は、頭部フレーム316および胴部フレーム318を含む。頭部フレーム316は、中空半球状をなし、ロボット100の頭部骨格を形成する。胴部フレーム318は、角筒形状をなし、ロボット100の胴部骨格を形成する。胴部フレーム318の下端部が、ロアプレート334に固定されている。頭部フレーム316は、接続機構330を介して胴部フレーム318に接続されている。
【0020】
胴部フレーム318は、「ベース部」として機能し、ボディ104の軸芯を構成する。胴部フレーム318は、ロアプレート334に左右一対のサイドプレート336を固定して構成され、一対の腕部106および内部機構を支持する。胴部フレーム318の内方には、バッテリー118、制御回路342および各種アクチュエータ等が収容されている。ロアプレート334の底面が着座面108を形成する。
【0021】
胴部フレーム318は、その上部にアッパープレート332を有する。アッパープレート332には、有底円筒状の支持部319が固定されている。アッパープレート332、ロアプレート334、一対のサイドプレート336および支持部319が、胴部フレーム318を構成している。支持部319の外径は、左右のサイドプレート336の間隔よりも小さい。一対の腕部106は、それぞれ「第2可動部」として機能し、環状部材340と一体に組み付けられることでアームユニット350を構成している。環状部材340は円環状をなし、その中心線上を径方向に離隔するように一対の腕部106が取り付けられている。環状部材340は、支持部319に同軸状に外挿され、一対のサイドプレート336の上端面に載置されている。アームユニット350は、胴部フレーム318により下方から支持されている。
【0022】
頭部フレーム316は、ヨー軸321、ピッチ軸322およびロール軸323を有する。頭部フレーム316のヨー軸321周りの回動(ヨーイング)により首振り動作が実現され、ピッチ軸322周りの回動(ピッチング)により頷き動作,見上げ動作および見下ろし動作が実現され、ロール軸323周りの回動(ローリング)により首を左右に傾げる動作が実現される。各軸は、接続機構330の駆動態様に応じて三次元空間における位置や角度が変化し得る。接続機構330は、リンク機構からなり、胴部フレーム318に設置された複数のモータにより駆動される。頭部フレーム316は、「第1可動部」として機能する。
【0023】
胴部フレーム318は、車輪駆動機構370を収容している。車輪駆動機構370は、前輪102および後輪103をそれぞれボディ104から出し入れする前輪駆動機構および後輪駆動機構を含む。前輪102および後輪103は、ロボット100を移動させる「移動機構」として機能する。前輪102は、その中心部にダイレクトドライブモータ(以下「DDモータ」と表記する)を有する。このため、左前輪102aと右前輪102bを個別に駆動できる。前輪102はホイールカバー105に回転可能に支持され、そのホイールカバー105が胴部フレーム318に回動可能に支持されている。
【0024】
一対のカバー312は、胴部フレーム318を左右から覆うように設けられ、ボディ104のアウトラインに丸みをもたせるよう、滑らかな曲面形状とされている。胴部フレーム318とカバー312との間に閉空間が形成され、その閉空間が前輪102の収容空間Sとなっている。後輪103は、胴部フレーム318の下部後方に設けられた収容空間に収容される。
【0025】
外皮314は、本体フレーム310および一対の腕部106を外側から覆う。外皮314は、人が弾力を感じる程度の厚みを有し、ウレタンスポンジなどの伸縮性を有する素材で形成される。これにより、ユーザがロボット100を抱きしめると、適度な柔らかさを感じ、人がペットにするように自然なスキンシップをとることができる。外皮314は、カバー312を露出させる態様で本体フレーム310に装着されている。外皮314の上端部には、開口部390が設けられる。この開口部390が、後述するガイド760とともにツノ112を挿通する。
【0026】
本体フレーム310と外皮314との間にはタッチセンサが配設される。カバー312にはタッチセンサが埋設されている。これらのタッチセンサは、いずれも静電容量センサであり、ロボット100のほぼ全域におけるタッチを検出する。なお、変形例においては、タッチセンサを外皮314に埋設してもよいし、本体フレーム310の内側に配設してもよい。
【0027】
腕部106は、第1関節352および第2関節354を有し、両関節の間に腕356、第2関節354の先に手358を有する。第1関節352は肩関節に対応し、第2関節354は手首関節に対応する。各関節にはモータが設けられ、腕356および手358をそれぞれ駆動する。腕部106を駆動するための駆動機構は、これらのモータおよびその駆動回路344(通電回路)を含む。腕部106を含むアームユニット350の詳細については後述する。
【0028】
図3は、車輪収納機構の構造および動作を模式的に示す図である。図3(a)は側面図であり、図3(b)は正面図である。図中点線は車輪が収容空間Sから進出して走行可能な状態を示し、図中実線は車輪が収容空間Sに収納された状態を示す。
【0029】
車輪駆動機構370は、前輪駆動機構374および後輪駆動機構376を含む。前輪駆動機構374は、回動軸378およびアクチュエータ379を含む。回動軸378がホイールカバー105に連結されている。本実施形態では、アクチュエータ379としてモータが採用される。アクチュエータ379の駆動によりホイールカバー105を回動させることで、前輪102を収容空間Sから外部へ進退駆動できる。
【0030】
後輪駆動機構376は、回動軸404およびアクチュエータ406を含む。回動軸404の中央に回転軸407が支持されている。回転軸407からは二股のアーム408が延び、その先端に車軸410が一体に設けられている。車軸410に後輪103が回転可能に支持されている。回転軸407は自軸周りに回転自在であり、後輪103の向き(進行方向)を任意に変化させる。アクチュエータ406の駆動により、後部収容空間から外部へ後輪103を進退駆動できる。
【0031】
車輪収納時には、アクチュエータ379,406が一方向に駆動される。このとき、ホイールカバー105が回動軸378を中心に回動し、前輪102が床面Fから上昇する。また、アーム408が回動軸404を中心に回動し、後輪103が床面Fから上昇する(一点鎖線矢印参照)。それにより、ボディ104が降下し、着座面108が床面Fに接地する(実線矢印参照)。これにより、ロボット100がお座りした状態が実現される。アクチュエータ379,406を反対方向に駆動することにより、各車輪を進出させ、ロボット100を立ち上がらせることができる。
【0032】
なお、後輪103の外側には尻尾を模した後部カバー107が設けられており、後輪103と連動してボディ104の後部下開口部を開閉する。すなわち、後輪103を進出させるときには後部カバー107が開動作し、後輪103を収納するときには後部カバー107が閉動作する。
【0033】
図4は、ロボット100のハードウェア構成図である。
ロボット100は、内部センサ128、通信機126、記憶装置124、プロセッサ122、駆動機構120およびバッテリー118を含む。駆動機構120は、上述した接続機構330や車輪駆動機構370を含む。プロセッサ122と記憶装置124は、制御回路342に含まれる。各ユニットは電源線130および信号線132により互いに接続される。バッテリー118は、電源線130を介して各ユニットに電力を供給する。各ユニットは信号線132により制御信号を送受する。バッテリー118は、リチウムイオン二次電池であり、ロボット100の動力源である。
【0034】
内部センサ128は、ロボット100が内蔵する各種センサの集合体である。具体的には、カメラ(全天周カメラ,高解像度カメラ)、マイクロフォンアレイ、測距センサ(赤外線センサ)、サーモセンサ、タッチセンサ、加速度センサ、ニオイセンサなどである。タッチセンサは、ボディ104の大部分の領域に対応し、静電容量の変化に基づいてユーザのタッチを検出する。ニオイセンサは、匂いの元となる分子の吸着によって電気抵抗が変化する原理を応用した既知のセンサである。
【0035】
通信機126は、後述のサーバ200や外部センサ114、ユーザの有する携帯機器など各種の外部機器を対象として無線通信を行う通信モジュールである。記憶装置124は、不揮発性メモリおよび揮発性メモリにより構成され、コンピュータプログラムや各種設定情報を記憶する。プロセッサ122は、コンピュータプログラムの実行手段である。駆動機構120は、内部機構を制御するアクチュエータである。このほかには、表示器やスピーカーなども搭載される。
【0036】
プロセッサ122は、通信機126を介してサーバ200や外部センサ114と通信しながら、ロボット100の行動選択を行う。内部センサ128により得られる様々な外部情報も行動選択に影響する。駆動機構120は、主として、車輪(前輪102)や頭部(頭部フレーム316)の動きを制御する。駆動機構120は、2つの前輪102それぞれの回転速度や回転方向を変化させることにより、ロボット100の移動方向や移動速度を変化させる。また、駆動機構120は、車輪(前輪102および後輪103)を昇降させることもできる。車輪が上昇すると、車輪はボディ104に完全に収納され、ロボット100は着座面108にて床面Fに当接し、着座状態となる。また、駆動機構120は、腕部106を制御する。
【0037】
図5は、ロボットシステム300の機能ブロック図である。
ロボットシステム300は、ロボット100、サーバ200および複数の外部センサ114を含む。ロボット100およびサーバ200の各構成要素は、CPU(Central Processing Unit)および各種コプロセッサなどの演算器、メモリやストレージといった記憶装置、それらを連結する有線または無線の通信線を含むハードウェアと、記憶装置に格納され、演算器に処理命令を供給するソフトウェアによって実現される。コンピュータプログラムは、デバイスドライバ、オペレーティングシステム、それらの上位層に位置する各種アプリケーションプログラム、また、これらのプログラムに共通機能を提供するライブラリによって構成されてもよい。以下に説明する各ブロックは、ハードウェア単位の構成ではなく、機能単位のブロックを示している。ロボット100の機能の一部はサーバ200により実現されてもよいし、サーバ200の機能の一部または全部はロボット100により実現されてもよい。
【0038】
家屋内にはあらかじめ複数の外部センサ114が設置される。サーバ200には、外部センサ114の位置座標が登録される。ロボット100の内部センサ128および複数の外部センサ114から得られる情報に基づいて、サーバ200がロボット100の基本行動を決定する。外部センサ114はロボット100の感覚器を補強するためのものであり、サーバ200はロボット100の処理能力を補強するためのものである。ロボット100の通信機126が外部センサ114と定期的に通信し、サーバ200は外部センサ114によりロボット100の位置を特定する。
【0039】
(サーバ200)
サーバ200は、通信部204、データ処理部202およびデータ格納部206を含む。通信部204は、外部センサ114およびロボット100との通信処理を担当する。データ格納部206は各種データを格納する。データ処理部202は、通信部204により取得されたデータおよびデータ格納部206に格納されるデータに基づいて各種処理を実行する。データ処理部202は、通信部204およびデータ格納部206のインタフェースとしても機能する。
【0040】
データ格納部206は、モーション格納部232、マップ格納部216および個人データ格納部218を含む。ロボット100は、複数の動作パターン(モーション)を有する。腕部106を震わせる、蛇行しながらユーザに近づく、首をかしげたままユーザを見つめる、など様々なモーションが定義される。
【0041】
モーション格納部232は、モーションの制御内容を定義する「モーションファイル」を格納する。各モーションは、モーションIDにより識別される。モーションファイルは、ロボット100のモーション格納部160にもダウンロードされる。どのモーションを実行するかは、サーバ200で決定されることもあるし、ロボット100で決定されることもある。ロボット100のモーションの多くは、複数の単位モーションを含む複合モーションとして構成される。
【0042】
マップ格納部216は、状況に応じたロボットの行動を定義した行動マップのほか、椅子やテーブルなどの障害物の配置状況を示すマップも格納する。個人データ格納部218は、ユーザの情報を格納する。具体的には、ユーザに対する親密度とユーザの身体的特徴・行動的特徴を示すマスタ情報を格納する。年齢や性別などの他の属性情報を格納してもよい。
【0043】
ロボット100は、ユーザごとに親密度という内部パラメータを有する。ロボット100が、自分を抱き上げる、声をかけてくれるなど、自分に対して好意を示す行動を認識したとき、そのユーザに対する親密度が高くなる。ロボット100に関わらないユーザや、乱暴を働くユーザ、出会う頻度が低いユーザに対する親密度は低くなる。
【0044】
データ処理部202は、位置管理部208、認識部212、動作制御部222および親密度管理部220を含む。位置管理部208は、ロボット100の位置座標を特定する。位置管理部208はユーザの位置座標もリアルタイムで追跡してもよい。
【0045】
認識部212は、外部環境を認識する。外部環境の認識には、温度や湿度に基づく天候や季節の認識、光量や温度に基づく物陰(安全地帯)の認識など多様な認識が含まれる。ロボット100の認識部150は、内部センサ128により各種の環境情報を取得し、これを一次処理した上でサーバ200の認識部212に転送する。
【0046】
認識部212は、更に、人物認識部214と応対認識部228を含む。人物認識部214は、ロボット100の内蔵カメラによる撮像画像から抽出された特徴ベクトルと、個人データ格納部218にあらかじめ登録されているユーザ(クラスタ)の特徴ベクトルと比較することにより、撮像されたユーザがどの人物に該当するかを判定する(ユーザ識別処理)。人物認識部214は、表情認識部230を含む。表情認識部230は、ユーザの表情を画像認識することにより、ユーザの感情を推定する。
【0047】
応対認識部228は、ロボット100になされた様々な応対行為を認識し、快・不快行為に分類する。応対認識部228は、また、ロボット100の行動に対するユーザの応対行為を認識することにより、肯定・否定反応に分類する。快・不快行為は、ユーザの応対行為が、生物として心地よいものであるか不快なものであるかにより判別される。
【0048】
動作制御部222は、ロボット100の動作制御部152と協働して、ロボット100のモーションを決定する。動作制御部222は、ロボット100の移動目標地点とそのための移動ルートを作成する。動作制御部222は、複数の移動ルートを作成し、その上で、いずれかの移動ルートを選択してもよい。動作制御部222は、モーション格納部232の複数のモーションからロボット100のモーションを選択する。
【0049】
親密度管理部220は、ユーザごとの親密度を管理する。親密度は個人データ格納部218において個人データの一部として登録される。快行為を検出したとき、親密度管理部220はそのユーザに対する親密度をアップさせる。不快行為を検出したときには親密度はダウンする。また、長期間視認していないユーザの親密度は徐々に低下する。
【0050】
(ロボット100)
ロボット100は、通信部142、データ処理部136、データ格納部148、内部センサ128、および駆動機構120を含む。通信部142は、通信機126(図4参照)に該当し、外部センサ114、サーバ200および他のロボット100との通信処理を担当する。データ格納部148は各種データを格納する。データ格納部148は、記憶装置124(図4参照)に該当する。データ処理部136は、通信部142により取得されたデータおよびデータ格納部148に格納されているデータに基づいて各種処理を実行する。データ処理部136は、プロセッサ122およびプロセッサ122により実行されるコンピュータプログラムに該当する。データ処理部136は、通信部142、内部センサ128、駆動機構120およびデータ格納部148のインタフェースとしても機能する。
【0051】
データ格納部148は、ロボット100の各種モーションを定義するモーション格納部160を含む。モーション格納部160には、サーバ200のモーション格納部232から各種モーションファイルがダウンロードされる。モーションは、モーションIDによって識別される。様々なモーションを表現するために、各種アクチュエータ(駆動機構120)の動作タイミング、動作時間、動作方向などがモーションファイルにおいて時系列定義される。
【0052】
データ格納部148には、マップ格納部216および個人データ格納部218からも各種データがダウンロードされてもよい。
【0053】
データ処理部136は、認識部150および動作制御部152を含む。認識部150は、内部センサ128から得られた外部情報を解釈する。認識部150は、視覚的な認識(視覚部)、匂いの認識(嗅覚部)、音の認識(聴覚部)、触覚的な認識(触覚部)が可能である。
【0054】
認識部150は、内蔵の全天周カメラにより定期的に外界を撮像し、人やペットなどの移動物体を検出する。認識部150は、移動物体の撮像画像から特徴ベクトルを抽出する。上述したように、特徴ベクトルは、移動物体の身体的特徴と行動的特徴を示すパラメータ(特徴量)の集合である。移動物体を検出したときには、ニオイセンサや内蔵の集音マイク、温度センサ等からも身体的特徴や行動的特徴が抽出される。これらの特徴も定量化され、特徴ベクトル成分となる。
【0055】
認識部150により認識された応対行為に応じて、サーバ200の親密度管理部220はユーザに対する親密度を変化させる。原則的には、快行為を行ったユーザに対する親密度は高まり、不快行為を行ったユーザに対する親密度は低下する。
【0056】
動作制御部152は、サーバ200の動作制御部222とともにロボット100の移動方向を決める。行動マップに基づく移動をサーバ200で決定し、障害物をよけるなどの即時的移動をロボット100で決定してもよい。駆動機構120は、動作制御部152の指示にしたがって前輪102(車輪駆動機構370)を駆動することで、ロボット100を移動目標地点に向かわせる。
【0057】
動作制御部152は、サーバ200の動作制御部222と協働してロボット100のモーションを決める。一部のモーションについてはサーバ200で決定し、他のモーションについてはロボット100で決定してもよい。また、ロボット100がモーションを決定するが、ロボット100の処理負荷が高いときにはサーバ200がモーションを決定するとしてもよい。サーバ200においてベースとなるモーションを決定し、ロボット100において追加のモーションを決定してもよい。モーションの決定処理をサーバ200およびロボット100においてどのように分担するかはロボットシステム300の仕様に応じて設計すればよい。
【0058】
動作制御部152は、選択したモーションを駆動機構120に実行指示する。駆動機構120は、モーションファイルにしたがって、各アクチュエータを制御する。モーションファイルに頭部の動作や車輪の進退動作が定義されている場合、動作制御部152は、駆動機構120を駆動してその動作制御を実行する。
【0059】
動作制御部152は、親密度の高いユーザが近くにいるときには「抱っこ」をせがむ仕草として両方の腕部106をもちあげるモーションを実行することもできるし、「抱っこ」に飽きたときには左右の前輪102を収容したまま逆回転と停止を交互に繰り返すことで抱っこをいやがるモーションを表現することもできる。駆動機構120は、動作制御部152の指示にしたがって前輪102や腕部106、首(頭部フレーム316)を駆動することで、ロボット100に様々なモーションを表現させる。
【0060】
次に、ロボット100の特徴的構成および動作について説明する。
図6図9は、ロボット100の構造を表す説明図である。図6は、ロボット100から外皮314およびカバー312を取り除いた状態を表す図である。図7は、外皮314を表す図である。図8は、ボディ104の組付け方法を概略的に表す図である。図8(a)~(c)は、その組付け過程を示す。図9は、ロボット100に外皮314が装着された状態を表す図である。各図の(a)は右側面図であり、(b)は正面図であり、(c)は背面図である。なお、ロボット100の外観は、ほぼ左右対称となっている。
【0061】
図6に示すように、頭部フレーム316の前面に円形の開口部717が設けられ、顔部材712が組み付けられている。顔部材712は、開口部717と相補となる円板状をなし、その前面が顔領域を形成している。顔部材712と開口部717との隙間により、環状の嵌合凹部706が形成される。頭部フレーム316における顔部材712の下方位置に、一対の嵌合孔708が設けられている。
【0062】
頭部フレーム316の頂部にガイド760が設けられている。ガイド760は、ツノ112を支持する一方、外皮314を固定する際の位置決めとなる。ガイド760は、段付円筒状をなし、外周面に沿って環状の嵌合部761が形成されている。ガイド760は、可撓性を有する樹脂材からなり、頭部フレーム316にツノ112を組み付けた際にシール機能も発揮する。詳細については後述する。
【0063】
胴部フレーム318の後部下方には、後輪103を収容するための収容口377が設けられている。また、収容口377の左右には、一対の突起720が後方に突設されている。突起720は、その先端がやや大径の円板状とされ、ボタン態様の形状を有する。胴部フレーム318の下面には、一対の面ファスナー722が設けられている。
【0064】
胴部フレーム318の正面および背面には、保護部材570,572がそれぞれ設けられている。各保護部材は、可撓性を有する樹脂材からなり、胴部フレーム318から離れる方向に膨出し、側面視が滑らかな曲面形状を呈する。これらの保護部材570,572と一対のカバー312とが協働してボディ104のアウトラインに丸みをもたせている。保護部材570は、胴部フレーム318の前面に露出する制御回路基板等を前方から覆うようにして保護する。保護部材572は、胴部フレーム318の後面に露出する制御回路基板等を後方から覆うようにして保護する。保護部材570,572は、可撓性を高めるハニカム構造を有するが、その詳細については後述する。
【0065】
図7に示すように、外皮314は、外皮本体728と弾性装着部730とを縫い合わせて構成される。外皮本体728は、伸縮性を有する基材520を布袋522に収容して構成され、全体的に手触りが良い柔軟素材からなる。布袋522は、ポリエステルなどの滑らかな手触りの布材を袋状に縫製したものであり、ロボット100に装着した際に外側になる面の内側に不繊布(不織布)が設けられる。外皮本体728は、頭部フレーム316に被せられる袋状部524と、袋状部524の左右側面から下方に延びる一対の手部526と、袋状部524の正面から下方に延びる延在部528と、袋状部524の背面から下方に延びる延在部530とを含む。外皮本体728の開口部502に沿って紐通し部740が縫製されている。この紐通し部740に挿通された紐742の両端を引っ張ることにより、開口部502を適度な大きさに絞ることができる。
【0066】
外皮本体728には、また、開口部502の下部に沿って留め具750が縫い付けられている。留め具750は、硬質の樹脂からなり、顔部材712の周縁とほぼ同じ曲率を有する長尺状の部材である。留め具750の中間部には、一対の突起752が設けられている。これらの突起752は、上記一対の嵌合孔708に嵌合可能とされている。図7(b)に示すように、留め具750は、その外径側(凸側)を開口部502に沿わせるように設けられている。
【0067】
弾性装着部730は、外皮本体728の前後の延在部528,延在部530を下方で連結している。弾性装着部730は、外皮本体728と同じように柔軟素材で形成され、外皮314の底部を構成する。また、弾性装着部730は、外皮本体728とは伸縮性が異なる柔軟素材(スポンジ等)で形成されてもよい。弾性装着部730には、収容口377と対応する位置に開口部731が設けられている。弾性装着部730の後部下方には一対の孔734が形成されている。孔734は、ボタン穴のような小幅形状を有するが、弾性装着部730が柔軟であるため、幅方向に押し広げることができる。これらの孔734に、それぞれ上記一対の突起720を挿通可能とされている。弾性装着部730の底部上面には一対の面ファスナー732が設けられ、それぞれ上記一対の面ファスナー722と装着可能とされている。
【0068】
ボディ104の組付け工程においては、図8(a)に示すように、本体フレーム310およびその内部機構等を組み立てる。前輪102およびホイールカバー105は、退避状態(収納状態)に位置させる。
【0069】
続いて、図8(b)に示すように、一対のカバー312を本体フレーム310の左右から組み付けて固定する。一対のカバー312は、本体フレーム310に対して左右対称に構成され、その前面と後面において接合される。両カバーの接合は、本実施形態では溶着又は接着によりなされるが、ねじ留めによる締結その他の固定方法を採用してもよい。車輪収納状態においては図示のように、スリット313が閉じられた状態となる。前輪102は、カバー312の内方に完全に収容される。カバー312内の収容空間Sは、前輪102と一体のホイールカバー105がちょうど一つ入る程度の大きさを有する。
【0070】
続いて、図8(c)に示すように、本体フレーム310に外皮314を取り付ける。このとき、外皮314の側部開口部(外皮本体728と弾性装着部730とに囲まれる左右開口部のいずれか一方)から頭部フレーム316を挿入する。このとき、開口部390にガイド760を挿通させつつ、外皮314を頭部フレーム316に被せる。それにより、図9(c)に示すように、開口部390がガイド760に嵌合し、外皮314の上部を頭部フレーム316に対して位置決めしつつ固定できる。
【0071】
そして、頭部フレーム316が袋状部524に収容された後、突起752を嵌合孔708に嵌合させ、留め具750を頭部フレーム316に組み付ける。このとき、図7(b)に示す状態から留め具750を開口部502の内方に向けて上下反転させつつ、開口部502周辺を捲り上げる。それにより、留め具750が布袋522に巻かれ、外部への露出しないように取り付けられる。そして、紐742を引っ張ることで開口部502を適度に絞り、その開口端縁を嵌合凹部706に嵌合させる。それにより、外皮314が頭部フレーム316にしっかりと固定されるとともに、顔部材712の顔領域をきれいに露出させることができる。
【0072】
続いて、弾性装着部730を胴部フレーム318の底面に固定する。このとき、一対の突起720をそれぞれ対応する孔734に挿通させる。突起720の孔734への挿通後、孔734は弾性力により元の小幅形状に戻ろうとする。それにより、突起720の頭部がボタン態様で孔734の周辺に引っ掛かり、胴部フレーム318からの離脱が防止される。また、一対の面ファスナー732をそれぞれ対応する面ファスナー722に取り付ける。このようにして、図9(a)~(c)に示すように、外皮314を本体フレーム310に対して適正に固定できる。
【0073】
図10は、アームユニット350の構成を表す図である。図10(a)は正面図、図10(b)は平面図、図10(c)は底面図である。
図10(a)および(b)に示すように、アームユニット350は、平面視円形状の環状部材340に一対の腕部106(左腕部106a,右腕部106b)が設けられている。左腕部106aと右腕部106bは、環状部材340の中心線に対して線対称となる位置に設けられ、両者の後方に向けて約90度ずれた位置にコネクタユニット366が配設されている。
【0074】
腕部106の駆動基端にはモータ362が設けられ、第1関節352を構成している。モータ362が環状部材340に固定されているため、一対の腕部106の駆動基端の相対位置は変わらない。腕356は、上腕部353と前腕部357とが固定ヒンジ355を介して連結されて構成される。前腕部357と手358との間にモータ364が設けられ、第2関節354を構成している。モータ362を駆動することで腕356を上下させることができ、モータ364を駆動することで手358を動かすこと(手首を曲げること)ができる。本実施形態では、固定ヒンジ355により上腕部353と前腕部357との角度、つまり腕356の曲がり具合を一定としている。変形例にお旺盛いては、例えば固定ヒンジ355に代えてモータを設けることで、腕356の曲がり具合を制御できるようにしてもよい。
【0075】
図10(b)および(c)に示すように、上腕部353,前腕部357および手358は、その横断面が台形状とされており、腕部106に外皮314が被せられたときのアウトラインに丸みをもたせることができる。このように断面台形状とすることで、断面長方形状とする場合よりも触れたときの力が分散する。すなわち、ユーザが外皮314越しに腕部を触ったときにロボットの部材が存在することを感じ難くなり、生物のような柔らかい触感を提供できる。腕部106の上面と外皮314との間には、図示略のタッチセンサが配設されている。
【0076】
環状部材340において、モータ362に対応する位置の下面には、長方形状の滑り部材346が設けられている。滑り部材346は、摩擦係数が小さい樹脂材からなる。アームユニット350は、左右一対の滑り部材346が一対のサイドプレート336の上端面にそれぞれ載置されることで、胴部フレーム318に対して摺動自在とされている。
環状部材340は、可撓性を有する樹脂材からなるものでよく、エラストマーのような弾性部材で構成されることが好ましい。それにより、ロボット100が転倒するなどして腕356がひねられたときでも、環状部材340が撓んで力を逃がすことができるので、腕356が破断しにくくなる。
【0077】
モータ362,364やタッチセンサ(図示略)から延びる配線(電源線や信号線)が、コネクタユニット366に集約されている(点線参照)。コネクタユニット366からは複数のコネクタが延出し、胴部フレーム318に設置された回路基板(制御回路基板、電源回路基板)に接続されている。
【0078】
図11および図12は、アームユニット350の設置構成および動作を表す模式図である。図11は平面図であり、図12は正面図である。各図(a)~(c)は、アームユニット350の動作過程を例示する。
【0079】
図11(a)に示すように、一対のサイドプレート336がほぼ平行に設けられ、アームユニット350が、一対の滑り部材346を介して載置される。アームユニット350は、環状部材340の中心を通る軸線La(「仮想の軸」に対応する)を中心に回動可能である。その回動に際して、滑り部材346がサイドプレート336の上端面を摺動する。一対のサイドプレート336には、アームユニット350の一方向(図中時計回り)への回動範囲を規制する第1ストッパ335と、反対方向(図中反時計周り)への回動範囲を規制する第2ストッパ337が設けられている。
【0080】
ロボット100は、アームユニット350を軸線Laを中心に電気的に駆動する構成を有していない。しかし、外皮314が頭部フレーム316とアームユニット350の双方に被着しているため、頭部フレーム316の動きは、外皮314を介してアームユニット350に伝達される。例えば、ロボット100が正面を向いた状態から左右に振り向くとき、頭部フレーム316は、支持部319の軸線L(「駆動軸」に対応する)を中心に回動する(ここでは、ヨー軸321と軸線Lとが一致していると仮定する)。このとき、その頭部フレーム316の回動が外皮314の弾性力によりアームユニット350に伝達される。アームユニット350は、環状部材340の軸線Laを中心に回動し、一対の腕部106は、頭部の動きに追従する。
【0081】
言い換えれば、外皮314は、頭部フレーム316と胴部フレーム318との間に弾性変形領域を有し、その弾性変形領域に一対の腕部106が配置されている。外皮314は、胴部フレーム318の一端側において頭部フレーム316に被着される一方、胴部フレーム318の他端領域にも被着される。それにより、外皮314がロボット100の頭部と臀部を包み込む形となり、弾性変形領域のテンションが維持される。このため、頭部フレーム316の動作に応じた外皮314の変位(つまり弾性変形領域の変形)に伴い、外皮314の弾性力(引張力)が腕部106に作用する。その結果、一対の腕部106は、電気的駆動を伴わないにもかかわらず、胴部フレーム318に対する相対変位が変わる。
【0082】
ところで、環状部材340が支持部319に同軸状に外挿されるものの、両者間には図示のように十分な隙間(遊び)が設けられている。このため、環状部材340の軸線Laは、支持部319の軸線Lと必ずしも一致しない。図11(a)に示すように、ロボット100が正面を向いた状態では両軸線はほぼ一致する。しかし、図11(b)に示すように、ロボット100が左右に振り向いたときには、アームユニット350の回動角度が大きくなるほど、両軸線のずれが大きくなる。
【0083】
ロボット100が大きく振り向いたとき、アームユニット350は、所定角度(本実施形態では30度)回動した時点で第1ストッパ335又は第2ストッパ337により係止される。一方、ロボット100が振り向くことで外皮314がねじられるため、その振り向き角度が大きくなるほど、外皮314のねじりに対する弾性反力も大きくなる。このため、ロボット100の振り向き角度が所定の追従上限角度以下であれば、アームユニット350は所定角度に達することなく、その弾性反力が一要因となって停止される。
【0084】
図12(a)に示すように、アームユニット350は、一対の滑り部材346の箇所でサイドプレート336に載置されているに過ぎず、軸線方向に拘束されていない。このため、図12(b)および(c)に示すように、例えばロボット100が首を左右に傾げる動作を行ったとき、頭部フレーム316の角度に応じて外皮314が一方の第1関節352を引き上げる。すなわち、外皮314の弾性力により、胴部フレーム318に対するアームユニット350のフローティング構造が実現される。このとき、頭部の角度に応じて左右の肩の高さが異なるように変化する。これは生物的挙動と合致する。なお、頭部の傾げ角度が大きくなるほど、環状部材340の軸線Laと、支持部319の軸線Lとのずれは大きくなる。
【0085】
次に、ロボットの頭部に設けられた排水構造について説明する。
図13は、排水構造を表す模式図であり、説明の便宜上、頭部フレーム316から顔部材712を除いた状態を示す。図13(a)は側断面図であり、図13(b)は正面図であり、図13(c)は背面図である。
【0086】
図13(a)および(b)に示すように、頭部フレーム316の内部には複数の制御回路基板PCが配置され、発熱の要因となっている。そこで、頭頂部に吸気口、後頭部に排気口を設け、それらをつなぐ通路に吸気ファン、排気ファンを設けることで、外気による冷却が行われる。具体的には、ガイド760の内側に環状の吸気口600が設けられ、頭部フレーム316の後方下部にスリット状の排気口602が設けられている。頭部フレーム316内の上部に隔壁603が設けられ、その上方の外気導入室604と下方の収容室605とが画定されている。収容室605に制御回路基板PC等の機能部品が収容されている。
【0087】
隔壁603の前半部に段差606が設けられ、その段差606の左右および後方が一段低くなって排水用の溝(排水溝609)を形成している。段差606の後方領域は、左右の排水溝609に向けて傾斜している。一方、段差606の上面に通気用の開口部608が設けられている。段差606の内方における開口部608の直下に吸気ファン610が配設されている。ガイド760の下端開口部(吸気口600)が、段差606から後方にずれるように位置する。このため、仮に外部からガイド760を伝って水分が侵入したとしても、開口部608には導かれず、段差606の後方に滴下される。すなわち、水分が収容室605に侵入することが防止される。
【0088】
図13(a)および(c)に示すように、頭部フレーム316の後方には、左右一対の排出口607が設けられている。排出口607は、外気導入室604に連通する。本実施形態では、排水溝609の底面が、排出口607の底面と面一の位置関係にある。頭部フレーム316内の後方下部には、排気口602と対向する位置に排気ファン612が配設されている。これにより、吸気ファン610と排気ファン612との間に通気通路が形成され、その通気通路に制御回路基板PCが位置する。
【0089】
図14は、頭部とツノ112との接続部の構造を表す説明図である。図14(a)はツノ112と頭部フレーム316との嵌合構造(ツノ112を頭部フレーム316から取り外した状態)を示す。図14(b)はフィルタの取付構造を示す。
【0090】
図14(a)に示すように、ガイド760は、円筒状のガイド本体764と、ガイド本体764の上端に設けられたアッパーフランジ766と、ガイド本体764の下端に設けられたロアフランジ768を有する。ロアフランジ768の周縁部には、嵌合凸部769が設けられている。嵌合凸部769は、ロアフランジ768の半径方向に突出し、周方向に段差を有する。頭部フレーム316には、嵌合凸部769と相補形状の嵌合凹部317が設けられている。嵌合凸部769を嵌合凹部317に嵌合させ、ガイド760を軸線周りに回転させることにより、ガイド760を頭部フレーム316に固定できる。ロアフランジ768は、頭部フレーム316の表面に密着し、その接合面においてシール機能を発揮する。
【0091】
図14(b)に示すように、ガイド本体764の内方には、円筒状の支持部770が同心状に設けられている。ガイド本体764と支持部770とは、両者間を半径方向に延びる複数の連結部777により連結されている。隣接する連結部777の間に形成される空隙により吸気口600が構成される。
【0092】
吸気口600の入口には、防塵用のフィルタ776が着脱可能に取り付けられる。フィルタ776は、中心角が約120度の扇状をなしており、そのメッシュの大きさは通気を損なわずに防塵機能を発揮できる程度に設定されている。3つのフィルタ776が環状に並設される。
【0093】
支持部770の内側には、ジョイント機構630が挿通されている。ジョイント機構630は、頭部フレーム316から延びる第1部材632と、ツノ112から延びる第2部材634とを含む。第2部材634は、第1部材632に対して近接又は離間する方向にスライドできる。ツノ112の下端部には複数の突起620が環状に配設されている。支持部770には、それらの突起620と相補形状の複数の凹部772が設けられている。第2部材634を第1部材632に近接させ、突起620を凹部772に嵌合させることにより、ツノ112を頭部フレーム316に対して固定できる。
【0094】
このようにツノ112を固定したとしても、ツノ112とガイド760との間にフィルタ776が露出するため、頭部フレーム316内へ外気を導入できる。一方、このような構成のため、外部の水分がフィルタ776を通過して頭部フレーム316内へ侵入する可能性がある。例えばユーザがテーブル上の飲料をこぼしたとき、その直下にいたロボット100にかかるような場合が想定される。このような場合にその水分がフィルタ776を介して外気導入室604に侵入したとしても、収容室605には侵入させない排水構造が設けられている。
【0095】
図15は、頭部の排水構造を表す説明図である。図15(a)はロボットが正面(水平方向)を向いた状態を示し、図15(b)はロボットが上方を見上げた状態を示す。図中の点線は空気の流れを示し、二点差線は水滴の流れを示す。
ロボット100の作動中はファン610,612が駆動され、通気による冷却が行われる。すなわち、吸気口600から外気導入室604に導入された外気は、開口部608を介して収容室605に導入され、制御回路基板PC等の発熱部品(機能部品)を冷却し、排気口602から排出される。
【0096】
このとき、仮に図15(a)に示すように外気導入室604に水分が侵入したとしても、開口部608には到らず、外気導入室604の下部に溜まる(二点鎖線参照)。その後、図15(b)に示すようにロボット100が上向くと、その水分が排水溝609を伝って後方に流れ、排出口607から排出される。この水分は、外皮314の後頭部周辺部位に吸収されて蒸発する。特に、通気により温められた空気が外皮314の後頭部周辺位置を加熱するため、その水分の蒸発が促進される。
【0097】
次に、ロボットの腹部および背部に設けられた保護部材の構造について説明する。
図16は、保護部材570の構造を表す図である。図16(a)は保護部材570をやや上方からみた斜視図であり、図16(b)は図16(a)のA部拡大正面図である。
図16(a)に示すように、腹部の保護部材570は、平面視アーチ状をなし、正面視において六角形状の孔580(開口部)が多数形成されたハニカム構造を有する。保護部材570は、例えば熱可塑性エラストマーなど、汎用プラスチックよりも柔らかい素材からなる。
【0098】
図16(b)に示すように、孔580を形成する壁面が、正面視で上下および左右に傾斜するように構成されている。より具体的には、孔580を画成する上下の壁面582が、奥方にむけて上方に傾斜している。また、左右の壁面584が右周縁に近づくほど奥方に向けて左方に傾斜し、左周縁に近づくほど奥方に向けて右方に傾斜している。このように孔形状を傾斜させることで、正面側から圧力が作用したときに壁部が倒れやすくなり、保護部材570が全体として撓み易くなっている。このように、保護部材570の素材と形状を工夫することで、ユーザが抱き上げたときに柔らかくて心地よい触感を提供できる。また、保護部材570の内側には、タッチセンサを実装した基板が配設され、ユーザのタッチを検出する。すなわち、ロボット100の胴体(腹)部分は、人が抱っこをするときに人の身体の一部と頻繁に接触する箇所であり、柔軟さが求められる。それとともに、タッチの態様も正確に検出する必要があり、再現精度の高いタッチセンサが設けられている。保護部材570により覆うことで、このタッチセンサを外側から保護できる。
【0099】
また、保護部材570をハニカム構造(多孔構造)とすることで、胴部フレーム318内から発せられる熱を逃がしつつ外皮314を温めることができる。その結果、ユーザが抱き上げたときにロボット100の温かみ(体温)を感じさせることができる。ハニカム構造とすることで、軽量化と強度確保を両立させることもできる。なお、背部の保護部材572についても同様のハニカム構造を有するが、その説明については省略する。
【0100】
以上、実施形態に基づいてロボット100について説明した。本実施形態によれば、頭部の動作に応じた外皮314の変位にともない、胴部に対する一対の腕部106の相対変位が変わる。すなわち、腕部106の追従が、その駆動機構の電気的制御ではなく、柔軟な外皮314の弾性力の利用により実現される。それにより、ロボット100の身体のねじりに合わせて肩が自然についてくるようになり、生物的挙動を実現できる。また、外皮314が弾性体であるため、ロボット100が頭部を動かしたときに適度な弾性変形が生じ、リアルな身体のひねりを表現できる。特に上記実施形態のように胴部を下肢に対してひねる構造を有しないロボットにおいて、振り向くというモーションを違和感なく見せることができる。
【0101】
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
【0102】
上記実施形態では、「ベース部」として胴部、「第1可動部」として頭部、「第2可動部」として腕部を備えるロボットを例示した。変形例においては、例えば「ベース部」を胴部下半部(腹部以下)、「第1可動部」を頭部、「第2可動部」を胴部上半部(胸部以上)とするなど、ロボットにおけるその他の部位の組み合わせを採用してもよい。
【0103】
上記実施形態では、「第1可動部」および「第2可動部」の各動作が、制御部(動作制御部152)により個別に制御されるものとした。一方、物理的構造に起因して第1可動部の変位が外皮(連結部材)を介して第2駆動部に伝達され、制御部による制御とは関わりなく第2可動部を変位させるものとした。より詳細には、複数の第2可動部を環状部材により支持することでユニット(腕ユニット)を構成した。制御部は、そのユニットにおける各第2可動部の細部の動きを制御するが、ユニット全体としての大きな動きは制御しない。ユニット全体としての大きな動きは、柔軟な外皮を利用することで実現される。変形例においては、第1可動部および第2可動部の少なくともいずれかが、制御を伴わずに駆動されるものとしてもよい。例えば、外力(外乱)を受けて慣性により動くものとしてもよい。制御部により第1可動部は制御され、第2可動部は制御されないものとしてもよい。第2可動部がアクチュエータにより駆動される部分を有しないものとしてもよい。上記実施形態のように第2可動部が腕およびその関節からなる場合、関節を駆動するモータ等を有しない部材連結構造(単なる機構)としてもよい。
【0104】
上記実施形態では、ロボットの頭部に設けられた排水構造について説明した。このような排水構造は、ロボットの通気その他の機能を確保するためにロボットの頭頂部に隙間ができるような場合、内部の電子部品の防水を確保するといった課題に対応できる。なお、例えば四足歩行させる等、ロボットが直立駆動されないような場合、その上面位置に隙間ができる構造にも同様に対応できる。例えば、動物型ロボットの尻尾の基端に隙間ができるような場合が該当する。
【0105】
このような排水構造を有するロボットは、以下のように表現することもできる。
フレームと、
前記フレームに設けられて上方に開口する第1開口部と、
前記第1開口部に干渉することなく前記フレームを覆う吸湿性を有する外皮と、
前記フレーム内を前記第1開口部に連通する第1室と、機能部品を収容する第2室とに区画する隔壁と、
前記フレームにおける前記第1開口部よりも低位置に開口し、前記第1室に連通する一方、前記外皮に覆われる第2開口部と、
を備えることを特徴とするロボット。
【0106】
ここで、「機能部品」とは、例えば電気回路部品など、防水性が必要とされる部品を意味する。第1室と第2開口部とは、排水溝を介して連通させることができる。上記実施形態において、頭部フレーム316が「フレーム」に対応し、吸気口600が「第1開口部」に対応する。また、外気導入室604が「第1室」に対応し、収容室605が「第2室」に対応し、排出口607が「第2開口部」に対応する。
【0107】
第1室に段差を有し、その段差の上部に第1室と第2室とを連通させる第3開口部を備えてもよい。ロボットの定常姿勢(ロボットが正面を向いた状態、待機状態など)において第2開口部が第3開口部よりも低位置となるようにする。上記実施形態において、開口部608が「第3開口部」に対応する。このような構成により、仮に第1開口部から水分が侵入したとしても、第1室の底部に溜まる。この水分を第2開口部を介して排出させ、外皮に吸収させることができる。
【0108】
第1室の浸水を検知する浸水検知センサを設けてもよい。浸水検知センサは、第1室の底部に溜まった水分の高さが設定高さ以上となったときに「浸水」として検知する。「設定高さ」は、段差の高さの所定割合(%)としてもよい。制御部は、浸水が検知されると、第3開口部が相対的に低くなる方向(第2開口部が相対的に高くなる方向)にフレームを傾斜させないよう、ロボットのモーションを制御する。それにより、水分が第3開口部を介して第2室へ侵入することを防止できる。このとき、積極的に第3開口部が相対的に高くなる方向(第2開口部が相対的に低くなる方向)にフレームを傾斜させるよう、ロボットのモーションを選択するのが好ましい。
【0109】
上記実施形態を例に説明すると、動作制御部222は、浸水検知センサが外気導入室604の浸水を検知すると、排出口607からの排水を促すために頭部フレーム316を後方に傾ける制御をする。浸水中は開口部608から水が浸入しないよう、頭部フレーム316を前方に傾けるモーションは実行しない(そのようなモーションの選択をキャンセルする)。動作制御部222は、浸水状態が解消されることで浸水検知センサによる浸水の検知がなくなると、頭部フレーム316を前方に傾けるモーションの選択を許可する。
【0110】
上記実施形態では、ロボットの腹部および背部に設けられた保護部材のハニカム構造(多孔構造)について説明した。このような多孔構造は、ロボットの柔らかい触感を実現する、あるいはロボットの温かみを伝達する等の課題に対応できる。ハニカム構造は、腹部や背部のみならず、そのような機能が求められるロボットの部位に適用できる。
【0111】
このような多孔構造を有するロボットは、以下のように表現することもできる。
フレームと、
前記フレームの側面に設けられた保護部材と、
前記保護部材の外側から前記フレームを覆う柔軟な外皮と、
を備え、
前記保護部材は、可撓性素材からなる多孔構造を有することを特徴とするロボット。
【0112】
ここで、「多孔構造」は、上記実施形態のようにハニカム構造でもよい。その場合、ハニカム構造を形成する複数の壁部が、奥方に向けて傾斜する形状を有することが好ましい。上記実施形態では、保護部材570,572の多孔構造としてハニカム形状を例示したが、格子形状、網目形状、その他の多孔形状を採用してもよい。
【0113】
上記実施形態では、カバー312をラバーにて構成したが、保護部材570,572と同様の素材を採用してもよい。
【0114】
上記実施形態では、ロボットが「移動機構」として車輪を有する構成を例示した。変形例においては「移動機構」を脚部とし、ロボットが歩行可能な構成としてもよい。
【0115】
上記実施形態では述べなかったが、頭部フレーム316の後頭部の内側にタッチセンサを配設してもよい。その場合、頭部フレーム316の内面が球面(凹球面)であるため、タッチセンサの基板を平板状とすると、頭部フレーム316の表面とタッチセンサとの間隔が大きくなり、十分な感度が得られない可能性がある。そこで、変形例においては、タッチセンサの基板を可撓性樹脂からなるフレキシブル基板とし、頭部フレーム316の内面側に向けて凸となるように湾曲させて配置してもよい。ただし、フレキシブル基板は一方向(長手方向)に沿ってしか撓まないため、頭部フレーム316の凹球面に沿って当接させることは困難である。この基板を凹球面に強引に貼り付けようとすると、タッチセンサの電極が歪み、センサ精度を低下させるおそれがある。そこで本変形例では、頭部フレーム316の内面(凹球面)に複数のリブを突設し、配列する。それらのリブの先端面により円弧状の曲面(凹曲面)を形成して取付面とする。フレキシブル基板をこの取付面に沿って貼り付けることで、頭部フレーム316の内面側に向けた凸形状を実現できる。このようにすることで、タッチセンサを頭部フレーム316の表面に近づけて感度を維持しつつ、検出精度も維持できる。
【0116】
上記実施形態では述べなかったが、ロボットの落下を判定する落下判定部を備えてもよい。その落下判定部は、例えば加速度センサの検出値に基づいて落下を判定してもよい。走行中に落下が判定された場合、床面に衝突する前に車輪102をカバー312に収納して衝撃を吸収してもよい。また、抱っこ状態からの落下が判定された場合、床面に衝突する前に車輪102をカバー312に収納して衝撃を吸収してもよい。特に上記実施形態のように車輪支持部にショックアブソーバ(ばね等)を有しない構造において、車輪102の損傷を防止または緩和できる。
【0117】
上記実施形態では述べなかったが、アームユニットを構成する環状部材が、モータを収容する収容部を備えてもよい。また、上記実施形態では環状部材を単一の部材で構成したが、複数の部材を組み付けて環状部材を構成してもよい。環状部材は平面視円形状に限らず、例えば平面視八角形状等の平面視多角形状を有してもよい。
【0118】
図17は、変形例に係るアームユニットおよびその構成部品を表す図である。図17(a)はアームユニットの平面図である。図17(b)は、アームユニットを構成する環状部材の平面図である。図17(c)および(d)は、環状部材を構成する半環状部材を示す。図17(c)は平面図、図17(d)は正面図である。図17(e)は環状部材の分解図である。
【0119】
図17(a)に示すように、アームユニット850は、環状部材840に一対の腕部106が組み付けられて構成される。図17(b)に示すように、環状部材840は、平面視半円状の2つの半環状部材810(前側半環状部材810f,後側半環状部材810r)を前後に組み付けて構成される。前側半環状部材810fと後側半環状部材810rとは共通の構造(本変形例では同一構造)を有する。
【0120】
図17(c)および(d)にも示すように、半環状部材810は、帯状の本体812の一端に直方体形状の収容部814を一体に有する。半環状部材810は、樹脂材の射出成形等により本体812と収容部814とが一体成形されたものである。収容部814にモータ362が収容される。収容部814の上半部側面が半環状部材810の径方向外向きに開口し、腕部106の第1関節352およびモータ362の収容口816となっている。前側半環状部材810fの一端に第1収容部814aが設けられ、後側半環状部材810rの一端に第2収容部814bが設けられている。また、収容部814の下半部端面には、半環状部材810の前後方向(周方向)に延びる嵌合穴818が開口している。
【0121】
図17(e)および(b)に示すように、前側半環状部材810fと後側半環状部材810rとを前後に組み付ける。このとき、互いの本体812の他端部(収容部814とは反対側端部)を相手側の嵌合穴818に挿入する。すなわち、前側半環状部材810fと後側半環状部材810rとを互い違いに組み付け、固定することにより環状部材840が得られる。そして、第1収容部814aに収容されるモータ362には、左腕部106aが組み付けられる。第2収容部814bに収容されるモータ362には、右腕部106bが組み付けられる。環状部材840に両腕部106を組み付け、さらにコネクタユニット366を組み付けることで、アームユニット850を構成できる。収容部814の下面が、上記実施形態の「滑り部材346」として機能する。
【0122】
本変形例によれば、環状部材840に収容部814を一体成形することで、部品点数を削減するとともに耐久性を向上できる。また、環状部材340を構成する一対の半環状部材810を同一構造とすることで、部品の共通化を実現でき、製造コストを削減できる。
【0123】
あるいは、一対の腕部を環状部材等の連結部材によって一体化しない構成としてもよい。具体的には、左腕と第1収容部とを一体化した左腕ユニットと、右腕と第2収容部とを一体化した右腕ユニットとを独立に設け、それぞれの収容部を外皮に縫い付けるなどして固定してもよい。外皮の左右には袋状の腕収容部(左腕収容部,右腕収容部)がある。左腕収容部に左腕を収容するとともに、第1収容部を外皮における左腕収容部の入口近傍に固定してもよい。右腕収容部に右腕を収容するとともに、第2収容部を外皮における右腕収容部の入口近傍に固定してもよい。このような構成によっても、頭部の動作に応じた外皮の弾性変形により胴部に対する一対の腕部の相対変位が変わり、生物的挙動を実現できる。このような構成を概念化すると、以下のようになる。一対の第2可動部が第1,第2支持部材にそれぞれ支持される。第1支持部材および第2支持部材は、ベース部の周囲をとり囲むように設けられ、それぞれ外皮に支持される。なお、第2可動部が単一である場合には、支持部材も単一でよい。
【0124】
上記実施形態では述べなかったが、頭部の動作に応じた外皮の変形とともに変位した腕部(アームユニット)を、元の状態(基準位置)に復帰する方向に付勢する構造又は機構を設けてもよい。外皮は、弾性素材からなるため、頭部が振り向き動作等から復帰して正面を向くと、変形前の状態に戻ろうとする。しかし、アームユニットには変位を戻す駆動力が作用しないため、基準位置に戻る際の摺動や引っ掛かり等により、外皮の状態復帰に対して抵抗となる可能性がある。そこで、アームユニットを正面(回動角度ゼロの位置:図11(B)の太線状態参照)に向けて付勢するばね等の付勢機構を設けてもよい。それにより、外皮の状態復帰を促進できる。あるいは、外皮に形状維持のための弾性ワイヤを縫い込むなどの付勢構造を設けてもよい。すなわち、外皮又は第1可動部を基準位置に向けて付勢する弾性体等の付勢構造を設け、第1可動部の動作解除に応じて外皮および第2可動部が基準状態に復帰し易くしてもよい。
【0125】
上記実施形態では、図11に示したように、環状部材340の内径が支持部319の外径よりも大きく、環状部材340が支持部319に遊嵌されている。それにより、環状部材340の支持部319に対する回動のみならず、傾動も容易とされている。その結果、頭部の動作が外皮を介して腕部に伝達された際、その腕部が頭部に追従しやすくなっている。すなわち、第2可動部が支持される環状部材をベース部に対して遊嵌(挿通)させることにより、第1可動部をベース部に対して回動させ、また傾動させることができる。それにより、第2可動部を第1可動部に追従させ易くなる。
図1
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