(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-31
(45)【発行日】2023-06-08
(54)【発明の名称】藻類を培養するための組成物および藻類の培養方法
(51)【国際特許分類】
C12N 1/12 20060101AFI20230601BHJP
C12N 5/07 20100101ALN20230601BHJP
【FI】
C12N1/12 Z
C12N1/12 A
C12N1/12 B
C12N5/07
(21)【出願番号】P 2022549200
(86)(22)【出願日】2022-05-27
(86)【国際出願番号】 JP2022021843
(87)【国際公開番号】W WO2022250165
(87)【国際公開日】2022-12-01
【審査請求日】2022-08-15
(31)【優先権主張番号】P 2021090672
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構、ムーンショット型農林水産研究開発事業委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591173198
【氏名又は名称】学校法人東京女子医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100197169
【氏名又は名称】柴田 潤二
(72)【発明者】
【氏名】清水 達也
(72)【発明者】
【氏名】原口 裕次
【審査官】中野 あい
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/003243(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/066113(WO,A1)
【文献】特開2014-108101(JP,A)
【文献】Sci Rep, 2017 JAN 31, vol. 7, article no.41594 (pp. 1-10)
【文献】Applied microbiology and biotechnology, 2015.11.16, vol. 100, no. 3, pp. 1061-1075
【文献】Biotechnology progress, 2019.11.22, vol.36, no. 2, article no. e2941 (pp. 1-9)
【文献】Archives of microbiology, 2021.08.23, vol.203, no. 9, pp. 5525-5532
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-7/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/FSTA/
AGRICOLA/BIOTECHNO/CABA/SCISEARCH/
TOXCENTER(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物細胞の培養に用いられる培地を使用して動物細胞を培養した後の、培養後の培地を含有する組成物を培地として用いる、海産および/または広塩性の微細藻類の培養方法であって、
前記動物細胞の培養に用いられる培地にはアミノ酸が含まれるものであり、前記組成物におけるリンの濃度が0.02mM以上である、方法。
【請求項2】
前記組成物の浸透圧を、必要に応じて藻類培養用の標準培地の浸透圧と同等または±10%の範囲の浸透圧に調節して用いる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組成物に、さらに無機塩類を添加する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記無機塩類は、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、およびカルシウム塩からなる群より一つ以上選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記組成物におけるアンモニアの濃度が0.5mM以上である、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項6】
(1)請求項1
に記載の方法により培養した前記微細藻類を回収する工程、
(2)前記微細藻類を分解処理し、藻類抽出物を得る工程、及び
(3)前記藻類抽出物を含む培地を用い、動物細胞を培養する工程を含む、微細藻類及び動物細胞のリサイクル培養方法。
【請求項7】
前記工程(3)の後に、さらに、請求項1
に記載の方法を実施する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
動物細胞の培養に用いられる培地を使用して動物細胞を培養した後の、培養後の培地を含有する、海産および/または広塩性の微細藻類培養用の組成物であって、
前記動物細胞の培養に用いられる培地にはアミノ酸が含まれるものであり、前記組成物におけるリンの濃度が0.02mM以上である、組成物。
【請求項9】
前記組成物の浸透圧が、藻類培養用の標準培地の浸透圧と同等または±10%の範囲の浸透圧に調節されている、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
無機塩類がさらに添加されている、請求項8又は9に記載の組成物。
【請求項11】
前記無機塩類は、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、およびカルシウム塩からなる群より一つ以上選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物におけるアンモニアの濃度が0.5mM以上である、請求項8
又は9に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、藻類を培養するための組成物および藻類の培養方法に関する。また、本発明は、藻類及び動物細胞のリサイクル培養方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
食糧農業機関(FAO)は世界的な人口爆発のために、1999年から2050年の間に肉の需要が100%増大すると予測している。この需要により、世界的な食料不足と食料コストの上昇が懸念されている。さらに、世界的な「タンパク質危機」につながるタンパク質供給の不足も起こることが予想されている。
【0003】
畜産業は地球規模の温室効果ガスの18%を排出しており、これは運輸部門の排出量を上回っている。「培養食品」はこれらの地球規模の食品関連問題を解決する一つの方法であると考えられており、培養食品の製造は環境にやさしいと考えられている(非特許文献1、2)。簡単に言えば、培養食品とは、組成が明確な培地中で動物細胞をインビトロで培養した後に当該動物細胞に加工を加え、肉の代わりとしてタンパク質に富む食品を生産したものを意味する。培養食品の最大の利点は、栄養素製造におけるその高い効率である。例えば、培養哺乳動物細胞のタンパク質含量は約75%(乾燥重量)であり、これは動物筋肉組織のタンパク質含量(43%乾燥重量)よりも多い。培養食品の社会的な実施は、畜産業からの環境負荷を実質的に低減するものと考えられる。
【0004】
2040年の世界の培養食品マーケットは、6,000億米ドルを超えるものと試算されている。培養食品に対する高い需要は、動物細胞の大規模生産により膨大な量の培地の消費を必要とする。生産される培養食品1kgにつき、約5×1010個の細胞と50Lの培養培地が必要である(非特許文献2)。従って、培養食品の消費量が増加することにつれて、その生産量も増加するものと考えられる。結果として、培養食品生産中に発生する大量の廃棄培地は避けられない課題である。窒素およびリン含有栄養素を含有する廃棄培地は、水体の富栄養化をもたらしかねない。培養食品生産に起因する富栄養化は、家禽生産に起因する富栄養化と同等であるものと推定される。
【0005】
淡水中、海水中、またはその両方で生育する様々な微細藻類が存在する。Chlorococcum類やChlorella類などの微細藻類は、石油代替/バイオディーゼル、バイオエタノール、ファインケミカルズ、バイオ医薬品、食用ワクチン、水素の製造に使用されている(非特許文献3~9)。さらに、極めて高いCO2耐性を持つChlorococcum littoraleは、CO2の効果的な固定に使用されることが期待される(非特許文献10~12)。また、微細藻類の代謝反応により光エネルギーを電気に変換する微細藻類・微生物燃料電池の研究も積極的にされている。さらに、クロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris)を含む微細藻類は、栄養補助食品、ペットフード、および有機肥料として使用される。現在、大量のシアノバクテリアArthorospiraおよび緑色微細藻類Chlorellaが、健康食品の製造のために培養されている(乾燥重量:それぞれ3,000tおよび2,000t)。微細藻類培養のためには、窒素およびリン含有化合物を含む無機塩を含有する大量の培地が必要である。報告によれば、C. vulgarisを含む微細藻類は、家庭、農業、および工業廃水によって引き起こされる水体の富栄養化を予防することができる(非特許文献13~15)。
【0006】
排水の一つに、腹膜透析を行うことで発生する透析排水が知られている。腹膜透析は、慢性腎不全の患者が、家庭や職場で透析液交換することによって患者自身の手で処置することのできる簡便で拘束の少ない利点の多い治療方法である。腹膜透析の際に出る透析排水は大量であり、その廃棄処理が課題となっていたところ、それらをユーグレナ藻類の培養に用いる方法について報告されている(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Tuomisto, H. L. & de Mattos, M. J. Environmental impacts of cultured meat production. Environ. Sci. Technol. 45, 6117-6123 (2011).
【文献】Post, M.J. An alternative animal protein source: cultured beef. Ann. N Y Acad. Sci. 1328, 29-33 (2014).
【文献】Ho, S.H. et al. Bioethanol production using carbohydrate-rich microalgae biomass as feedstock. Bioresour. Technol. 135, 191-198 (2013).
【文献】Harun, R. et al. Algal biomass conversion to bioethanol - a step-by-step assessment. Biotechnol. J. 9, 73-86 (2014).
【文献】Norsker, N. H., Barbosa, M. J., Vermue, M. H. & Wijffels, R. H. Microalgal production-a close look at the economics. Biotechnol. Adv. 29, 24-27 (2011).
【文献】Rasala, B. A. et al. Production of therapeutic proteins in algae, analysis of expression of seven human proteins in the chloroplast of Chlamydomonas reinhardtii. Plant Biotechnol. J. 8, 719-733 (2010).
【文献】Gregory, J. A., Topol, A. B., Doerner, D. Z. & Mayfield, S. Alga-produced cholera toxin-Pfs25 fusion proteins as oral vaccines. Appl. Environ. Microbiol. 79, 3917-3925 (2013).
【文献】Specht, E. A. & Mayfield, S. P. Algae-based oral recombinant vaccines. Front. Microbiol. 5, 60 (2014).
【文献】Osanai, T. et al. Pleiotropic effect of sigE over-expression on cell morphology, photosynthesis and hydrogen production in Synechocystis sp. PCC 6803. Plant J. 76, 456-465 (2013).
【文献】Satoh, A., Kurano, N., Harayama, S. & Miyachi, S. Effects of chloramphenicol on photosynthesis, protein profiles and transketolase activity under extremely high CO2 concentration in an extremely-high-CO2-tolerant green microalga, Chlorococcum littorale. Plant Cell Physiol. 45, 1857-1862 (2004).
【文献】Rossi, F., Olguin, E. J., Diels, L. & De Philippis, R. Microbial fixation of CO2 in water bodies and in drylands to combat climate change, soil loss and desertification. N. Biotechnol. 32, 109-120 (2015).
【文献】Cheng, J., Zhu, Y., Zhang, Z. & Yang, W. Modification and improvement of microalgae strains for strengthening CO2 fixation from coal-fired flue gas in power plants. Bioresour. Technol. 291, 121850 (2019).
【文献】Wang, L. et al. Culture of green algae Chlorella sp. in different wastewaters from municipal wastewater treatment plant. Appl. Biochem. Biotechnol. 162, 1174-1186 (2010).
【文献】Chiu, S. Y. et al. Culture of microalgal Chlorella for biomass and lipid production using wastewater as nutrient resource. Bioresour. Technol. 184, 179-189 (2015).
【文献】Wang, J. H. et al. Microalgae-based advanced municipal wastewater treatment for reuse in water bodies. Appl. Microbiol. Biotechnol. 101, 2659-2675 (2017).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、動物細胞の廃棄培地による環境負荷と環境変化への影響のリスクを減らす、新たな方法を確立することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
様々な目的での微細藻類の使用は以前に報告されているが、動物細胞培養後の培地の処理に微細藻類を用いることは知られていない。本発明者らは、鋭意研究を行うことにより、動物細胞の培養後に排出される廃棄培地が、微細藻類の培養に用いられ得ることを発見し、本発明をするに至った。すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
【0011】
[1] 動物細胞の培養後の培地を含有する組成物を培地として用いる、藻類の培養方法。
[2] 前記動物細胞が、脊椎動物の細胞である、項目1に記載の方法。
[3] 前記動物細胞が、筋肉系又は肝臓系の細胞である、項目1または2に記載の方法。
[4] 前記藻類が、微細藻類である、項目1~3のいずれか1項に記載の方法。
[5] 前記藻類が、海産および/または広塩性の微細藻類である、項目1~4のいずれか1項に記載の方法。
[6] 前記藻類が、クロロコックム・リトラレ(Chlorococcum littorale)またはシネココッカス属である、項目1~5のいずれか1項に記載の方法。
[7] 前記組成物の浸透圧を、必要に応じて藻類培養用の標準培地の浸透圧と同等または±10%の範囲の浸透圧に調節して用いる、項目1~6のいずれか1項に記載の方法。
[8] 前記組成物に、さらに無機塩類を添加する、項目1~7のいずれか1項に記載の方法。
[9] 前記無機塩類は、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、およびカルシウム塩からなる群より一つ以上選択される、項目8に記載の方法。
[10] 前記組成物におけるアンモニアの濃度を0.5mM以上とする、項目1~9のいずれか1項に記載の方法。
[11] (1)項目1~10のいずれか1項に記載の方法により培養した前記藻類を回収する工程、
(2)前記藻類を分解処理し、藻類抽出物を得る工程、及び
(3)前記藻類抽出物を含む培地を用い、動物細胞を培養する工程を含む、藻類及び動物細胞のリサイクル培養方法。
[12] 前記工程(3)の後に、さらに、項目1~10のいずれか1項に記載の方法を実施する、項目11に記載の方法。
【0012】
[13] 動物細胞の培養後の培地を含有する藻類培養用の組成物。
[14] 前記動物細胞が、脊椎動物の細胞である、項目13に記載の組成物。
[15] 前記動物細胞が、筋肉系又は肝臓系の細胞である、項目13または14に記載の組成物。
[16] 前記組成物が、微細藻類培養用の組成物である、項目13~15のいずれか1項に記載の組成物。
[17] 前記組成物が、海産および/または広塩性の微細藻類用の組成物である、項目13~16のいずれか1項に記載の組成物。
[18] 前記組成物が、クロロコックム・リトラレ(Chlorococcum littorale)またはシネココッカス属の培養に用いられる、項目13~17のいずれか1項に記載の組成物。
[19] 前記組成物の浸透圧が、藻類培養用の標準培地の浸透圧と同等または±10%の範囲の浸透圧に調節されている、項目13~18のいずれか1項に記載の組成物。
[20] 無機塩類がさらに添加されている、項目13~19のいずれか1項に記載の組成物。
[21] 前記無機塩類は、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、およびカルシウム塩からなる群より一つ以上選択される、項目20に記載の組成物。
[22] 前記組成物におけるアンモニアの濃度が0.5mM以上である、項目13~21のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明の方法によれば、再生医療またはバイオ医薬などの分野や、今後拡大するであろう培養食品の分野における動物細胞の培養工程において大量に産生され、廃棄されるしかなかった動物細胞を培養した後の廃棄培地が、藻類(例えば、微細藻類)の培養に活用することが可能となる。これにより、動物細胞培養の有効利用が図れることとともに、藻類を用いた炭酸固定にも寄与し、環境負荷を低減し得る新たな方法が提供可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】動物細胞培養培地中の因子の変動。栄養素(a:グルコース; b:グルタミン; c:ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)に含まれるグルタミンを除く全14種のアミノ酸の総量; d:ピルビン酸)、ビタミン類(e:ビタミンB1、B2、B6、葉酸の総量)、および無機塩類(f:ナトリウム; g:カリウム; h:カルシウム; i:マグネシウム; j:リン; k:アンモニア)の変動について、C2C12筋芽細胞なし(-)または有り(+)で、10%ウシ胎児血清および1%ペニシリン/ストレプトマイシンを添加したDMEMを用いて培養し、培養3日後に解析した。DMEMに含まれるグルタミンを除く14種のアミノ酸:アルギニン、シスチン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン。データは平均値±標準偏差で示す(n=4)。
【
図2】
図2は、微細藻類を培養した培地中の窒素およびリン含有化合物および無機塩の変動を示す。Chlorella vulgarisなし(-)または有り(+)、あるいはChlorococcum littoraleなし(-)または有り(+)で、3日間培養した後のChlorella vulgarisまたはChlorococcum littoraleの微細藻類標準培地中のアンモニア(a)、リン(b)、硝酸塩(c)、ナトリウム(d)、カリウム(e)、カルシウム(f)、およびマグネシウム(g)の変動を示す。データは平均値±標準偏差で示す(n=4)。ND:検出されない。
【
図3】微細藻類を培養した培地中の窒素およびリン含有化合物および無機塩の変動。C2C12筋芽細胞を3日間培養した後の廃棄培地を用いて、微細藻類なし(-)または微細藻類あり(+)で培養した場合の当該培地中のアンモニア(a)およびリン(b)、ナトリウム(c)、カリウム(d)、カルシウム(e)、およびマグネシウム(f)の変動を示す。データは平均値±標準偏差で示す(n=4)。
【
図4-1】微細藻類標準培地または動物細胞培養の廃棄培地のいずれかにおけるChlorella vulgaris(a-i)の細胞増殖。Chlorella vulgarisを、微細藻類標準培地またはC2C12筋芽細胞を3日間培養した後の廃棄培地のいずれかで7日間培養した。データは平均値±標準偏差で示す(n=4)。廃棄培地を希釈せずに(100%廃棄培地、顕微鏡写真:a-ii)使用、または廃棄培地を純水で1/10希釈して(10%廃棄培地、a-iii)使用した。スケールバー:50μm。
【
図4-2】微細藻類培地微細藻類標準培地または動物細胞培養の廃棄培地のいずれかにおけるChlorococcum littorale(b-i)の細胞増殖。Chlorococcum littoraleを、微細藻類標準培地またはC2C12筋芽細胞を3日間培養した後の廃棄培地のいずれかで7日間培養した。データは平均値±標準偏差で示す(n=4)。添加なしの廃棄培地(100%廃棄培地、b-ii)を用い、または塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウムを添加した廃棄培地(100%廃棄培地+ NaCl、MgCl
2、CaCl
2、b-iii)、または微細藻類培地微細藻類標準培地を用いた(b-iv)。スケールバー:50μm。
【
図5】
図5は、動物細胞廃棄培地を用いて藻類(シネココッカス)を培養した結果を示す。
【
図6】
図6は、動物細胞廃棄培地を用いて藻類(シネココッカス)を培養した結果(顕微鏡写真)を示す。
【
図7】
図7は、動物細胞廃棄培地を用いて培養した藻類から抽出した藻類抽出物を用いて動物細胞を培養した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、必要に応じて図面を参照にしながら説明する。実施形態の構成は例示であり、本発明の構成は、実施形態の具体的構成に限定されない。なお、本明細書で引用されている先行技術文献は、参照により本明細書に取り込まれる。
【0016】
一実施態様において、本発明は、動物細胞の培養後の培地を含有する藻類培養用の組成物を提供する。また、一実施態様において、本発明は、動物細胞の培養後の培地を含有する組成物を培地として用いる、藻類の培養方法を提供する。また、一実施態様において、本発明は藻類及び動物細胞のリサイクル培養方法を提供する。本発明によって、再生医療またはバイオ医薬などの分野や、培養食品の分野における動物細胞の培養工程において大量に産生され、廃棄されるしかなかった動物細胞を培養した後の培地が、藻類(例えば、微細藻類)の培養に活用することが可能となる。これにより、環境負荷の低減に寄与する。
【0017】
本発明に適用し得る動物細胞の培養後の培地(本明細書において、便宜的に「廃棄培地」とも記載されるが、実際に廃棄されることを意味するものではない。)としては、動物細胞の培養に通常用いられ得る培地であって、動物細胞を培養した後の培地を使用することが可能である。本発明に適用され得る、動物細胞を培養する前の動物細胞用の培地は、公知のものであれば限定されるわけではないが、例えば、イーグル培地、ダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)、DMEM:F12培地、グラスゴー最小必須培地、グレース昆虫培地、ハム培地、イスコフ改良イーグル培地、RPMI-1640培地、L-15培地、マッコイ5A培地、M199培地などであってもよく、動物細胞を培養可能な培地であれば用いることができる。
【0018】
本発明に適用し得る廃棄培地は、動物細胞の培養に用いられた廃棄培地が適用可能である。本明細書において、動物細胞とは、脊椎動物(哺乳類(「哺乳動物」ともいう。)、鳥類、両生類、爬虫類または魚類)の細胞、または無脊椎動物(例えば、ホヤ、節足動物(甲殻類(例えば、エビ、カニなど)、昆虫類など)、棘皮動物(ウニ、ナマコ、ヒトデなど)、軟体動物(例えば、貝、イカ、タコなど)など)の細胞を含む意味で用いられる。一実施態様において、動物細胞は、脊椎動物(例えば、ヒト、サル、ウシ、クジラ、クマ、シカ、ウマ、ブタ、イノシシ、ヒツジ、ウサギ、ラット、マウス、ハムスター、ヤギ、イヌまたはネコなどの哺乳動物、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、ウズラ、カモ、キジなどの鳥類、カエル、サンショウウオ、イモリなどの両生類、ワニ、トカゲ、ヘビ、カメ、スッポンなどの爬虫類、マグロ、サケ、マス、コイ、サメ、ウナギ、フグなどの魚類)の細胞、無脊椎動物(例えば、ホヤ、節足動物(甲殻類(例えば、エビ、カニなど)、昆虫類など)、棘皮動物(ウニ、ナマコ、ヒトデなど)、軟体動物(例えば、貝、イカ、タコなど)など)の細胞、あるいはそれら由来の初代細胞、株化細胞、多能性幹細胞(例えば、ES細胞、ntES細胞、Muse細胞、iPS細胞)、または組織幹細胞(例えば、間葉系幹細胞)あるいはそれらから分化誘導された細胞であってもよい。また、動物細胞の生体組織における由来は、例えば、筋肉系(例えば、筋芽細胞)、皮膚系(例えば、線維芽細胞、ケラチノサイト)、肝臓系(例えば、肝実質細胞)、腎臓系(例えば、腎細胞(例えば、HEK293))、心臓系(例えば、心筋細胞)、消化器系(例えば、口腔粘膜細胞、腸管上皮細胞、壁細胞)、造血系(例えば、造血幹細胞)、生殖組織系(例えば、卵巣細胞(例えば、CHO細胞)、精細胞、子宮上皮細胞)、粘膜系(例えば、上皮細胞)、骨組織系(例えば、骨芽細胞、軟骨細胞)などであってもよく、これら以外の組織に由来するものであってもよい。
【0019】
本発明に適用し得る廃棄培地を供給する動物細胞の培養方法は、公知の培養方法(例えば、37℃、飽和水蒸気下、5%CO2の加湿雰囲気下)に従えばよく、特に限定されない。
【0020】
本明細書において、「藻類」とは、光合成により酸素を産生する生物のうち、主に地上に生息するコケ植物、シダ植物、種子植物を除いたものの総称をいう。藻類は光合成に必要な環境が整えば、酸素、栄養分(例えば、グルコース、アミノ酸)を自ら作り出すことができ、増殖することができる。
【0021】
一実施態様において、本発明を適用し得る藻類は、「微細藻類(「単細胞藻類」ともいう。)であってもよい。本明細書において、「微細藻類」とは、藻類の中でも、個体が単一の細胞からなる藻類をいい、複数の微細藻類個体が集まり、群体を形成する微細藻類も含み、淡水産または海産、あるいは、狭塩性または広塩性の微細藻類が存在する。例えば、クロロフィルaおよびbを葉緑体の主要色素とする緑藻類、クロロフィルdを主要色素とする単細胞性の藍藻類(シアノバクテリア)、クロロフィルaおよびフィコビリンタンパク質を主要色素とする単細胞性の紅藻類が微細藻類の例として挙げられる。さらに詳しく例を挙げると、緑藻類では、緑藻綱クラミドモナス目のクラミドモナス・レインハルドティ(Chlamydomonas reinhardtii)(和名:クラミドモナス)(淡水産)、ドナリエラ目のドナリエラ・サリナ(Dunaliella salina)(和名:ドナリエラ)(海産)、オオヒゲマワリ目のボルボックス・カルテリ(Volvox carteri)(和名:ボルボックス)(淡水産)、クロロコックム目のクロロコックム・リットラレ(Chlorococcum littorale)(海産)、ヨコワミドロ目のヒドロディクティオン・レティキュラツム(Hydrodictyon reticulatum)(和名:アミミドロ)(淡水産)、ペディアストラム・デュプレックス(Pediastrum duplex)(和名:クンショウモ)(淡水産)、セネデスムス・ディモルファウス(Scenedesmus dimorphus)(和名:イカダモ)(淡水産)、トレボウキシア藻綱クロレラ目のクロレラ属(Chlorella sp.)(和名:クロレラ)(例えば、クロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris)(淡水産)、クロレラ・ピレノイドサ(Chlorella pyrenoidosa)(淡水産)、クロレラ・エルプソイデア(Chlorella ellipsoidea)(淡水産)、クロレラ・レギラリス(Chlorella regularis)など)(淡水産))、ユーグレナ植物門ユーグレナ藻綱ユーグレナ目のユーグレナ・グラシリス(Euglena gracilis)およびユーグレナ プロキシマ(Euglena proxima)(和名:ミドリムシ)(淡水産)などが挙げられる。単細胞性の藍藻類では、シアノバクテリア門のアカリオクロリス・マリナ(Acaryochloris marina)(海産)、スピルリナ・サブサルサ(Spirulina subsalsa)(淡水産)、アルスロスピラ・プラテンシス(Arthrospira platensis)(淡水産)、シネココッカス属(Synechococcus sp.)(海産または淡水産)などが挙げられる。単細胞性の紅藻類では、紅藻植物門イデユコゴメ綱イデユコゴメ目のシアニジウム カルダリウム(Cyanidium caldarium)(和名:イデユコゴメ)(淡水産)または紅藻植物門イデユコゴメ綱イデユコゴメ目のガルディエリア パルティータ(Galdieria partita)(淡水産)などが挙げられる。単細胞性の車軸藻類では、緑色植物門の車軸藻網クレブソルミディウム目のスティココックス属(Stichococcus sp.)(淡水産)が挙げられる。また、単細胞性のアオサ藻網の藻類であるフィラメントス-ウルボフィテ(Filamentous-ulvophyte)が挙げられる。本発明が適用され得る藻類は、上記で挙げられた藻類の他、それらの遺伝子操作が行われた遺伝子組換え体であってもよく、上記以外の藻類であってもよい。例えば、本発明が適用し得る藻類は、淡水産もしくは海産、および/または狭塩性もしくは広塩性の微細藻類であってもよいが、好ましくは海産および/または広塩性の微細藻類であり、例えばクロロコックム・リトラレ(Chlorococcum littorale)や、シネココッカス属の藻類などに適用可能であるが、これに限定されない。
【0022】
本発明が適用し得る藻類は、天然の藻類であってもよく、公知の培養法によって増殖させた藻類であってもよい。
【0023】
一実施態様において、藻類の培養に用いる、動物細胞の培養後の培地を含有する組成物は、必要に応じて、目的とする藻類の培養に通常用いられる標準培地、例えば、淡水産藻類用の培地の場合(AF6培地、C培地、URO培地、VT培地等)、または海産藻類用培地の場合(ESM培地、f/2培地、IMR培地、MNK培地、C培地+10%海水、ダイゴIMK及びダイゴ人工海水SPの混合物等)の微細藻類標準培地の浸透圧と同等または±10%(好ましくは±5%、より好ましくは±3%)の範囲の浸透圧に調節されたものが用いられ得る。浸透圧の調節は、藻類の培養の前に公知の方法によって浸透圧を測定し、必要に応じて、例えば、目的とする藻類の培養に通常用いられる標準培地の浸透圧±10%(好ましくは±5%、より好ましくは±3%)の範囲を逸脱している場合など、調整するものであってもよい。また、藻類の培養中に浸透圧の値をモニタリングして、必要に応じて、例えば、目的とする藻類の培養に通常用いられる標準培地の浸透圧±10%(好ましくは±5%、より好ましくは±3%)の範囲を逸脱している場合など、調整するものであってもよい。これにより、藻類の増殖効果がより増強され得る。浸透圧の調整方法は、公知の方法に従えばよく、浸透圧が高い場合は、例えば、水(例えば、蒸留水、イオン交換水、滅菌水)などの低張の媒体によって希釈する、あるいは、浸透圧が低い場合は、ナトリウム塩(例えば、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムなど)、カリウム塩(例えば、塩化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、リン酸カリウムなど)、マグネシウム塩(例えば、塩化マグネシウム、酸化マグネシウムなど)、および/またはカルシウム塩(例えば、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウムなど)などを添加するなどの方法により、浸透圧を調整してもよい。例えば、目的とする培養対象としての藻類がクロロコックム・リトラレ(Chlorococcum littorale)である場合、動物細胞の廃棄培地に、塩化ナトリウム、塩化マグネシウムおよび塩化カリウムを添加することにより、得られる組成物の浸透圧を調整してもよい。
【0024】
一実施態様において、本発明で提供される組成物は、微細藻類培養用、例えば、淡水産または海産、あるいは、狭塩性または広塩性の微細藻類用の組成物が提供される。一態様において、本発明が適用され得る微細藻類としては、海産および/または広塩性の微細藻類が好ましく、例えば、クロロコックム・リトラレ(Chlorococcum littorale)や、シネココッカス属(Synechococcus sp)などが挙げられる。
【0025】
藻類の培養条件は、培養する藻類の種類に依存し、温度は5~40℃、好ましくは10~35℃、より好ましくは10~30℃にて、通常1~10日間、好ましくは3~7日間培養を行い、通気または嫌気攪拌培養、振とう培養または静置培養で行うことができる。
【0026】
一実施態様において、藻類の培養に用いられる組成物のアンモニアの濃度は、0.5mM以上であり、これにより、アンモニアを窒素源とする藻類の効率的な培養が可能となる。藻類の培養に用いられる組成物のアンモニアの濃度の上限は特に限定されないが、動物細胞の培養後の培地を含有するため、動物細胞を培養可能な濃度で提供され得る。従って、限定されるわけではないが、藻類の培養に用いられる組成物のアンモニアの濃度は、例えば、例えば0.5mM~10mM、0.5mM~5mM、0.5mM~3mMで提供され得る。アンモニアは、藻類の培養において窒素源となり得るため、培養によって消費された場合は、さらに窒素原としてアンモニアを添加してもよく、代替的に又は追加的に、硝酸塩を添加してもよい。
【0027】
本発明は、藻類及び動物細胞のリサイクル培養方法を提供し得る。当該方法は、
(1)上記の方法によりに記載の方法により培養した前記藻類を回収する工程、
(2)前記藻類を分解処理し、藻類抽出物を得る工程、及び
(3)前記藻類抽出物を含む動物細胞培養用培地を用い、動物細胞を培養する工程
を含み得る。
【0028】
一実施態様において、上記工程(2)は、例えば、国際公開第2021/066113号に記載の方法を参考に、それに記載の工程の一部または全部を実施することによって藻類から藻類抽出物を得てもよく、例えば、以下の工程を含んでもよい:
(2a-1)藻類を、酸加水分解処理及び/又はアルカリ加水分解処理に供する工程;及び
(2a-2)前記工程(2a-1)により得られる加水分解産物を中和し、藻類抽出物を得る工程。
【0029】
一実施態様において、藻類抽出物を得るために、酸加水分解処理のみが実施されてもよく、アルカリ加水分解処理のみが行われてもよく、酸加水分解処理及びアルカリ加水分解処理の両方が実施されてもよい。酸加水分解処理及びアルカリ加水分解処理が実施される場合、酸加水分解処理に続いてアルカリ加水分解が行われても良く、アルカリ加水分解処理に続いて酸加水分解処理が行われてもよい。酸加水分解処理とアルカリ加水分解処理の間に、中和処理が実施されてもよい。
【0030】
一実施態様において、上記の工程(2a-1)で用いられる藻類は、酸加水分解処理及び/又はアルカリ加水分解処理に供される前に、乾燥処理に供されてもよい。
【0031】
一実施態様において、上記の工程(2-1)により得られる加水分解産物を、中和する工程(工程(2-2))を実施することにより、加水分解産物が中和され、細胞の培養に用いることができる藻類抽出物が得られる。例えば、工程(2-1)において、最終的に酸加水分解が実施された場合は、塩基性物質又はその水溶液(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又はその水溶液など)を添加し、中和してもよい。例えば、工程(2-1)において、最終的にアルカリ加水分解が実施された場合は、酸性物質(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)又はその水溶液(塩酸、硫酸、トリフルオロ酢酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸など)を添加し、中和してもよい。
【0032】
他の実施態様において、上記の(2)前記藻類を分解処理し、藻類抽出物を得る工程は、(2b)前記藻類を超音波によって分解処理し、藻類抽出物を得る工程
であってもよい。超音波によって分解処理する方法は、公知の方法を用いればよく、例えば、Prabakaranらの文献(P. Prabakaran, A.D. Ravindran, A comparative study on effective cell disruption methods for lipid extraction from microalgae. Letters in Applied Microbiology, 53(2) 150-154 (2011))に記載の方法を参考に実施することが可能である。例えば、公知の超音波破砕装置(例えば、Bioruptor UCD-200TM(コスモバイオ、日本))を用い、200W、10分間、氷上において藻類を破砕することによって藻類抽出物を得ることも可能である。
【0033】
上記の(2)の工程は、(2b)と上記の(2a-1)及び(2a-2)との組み合わせであってもよい。
【0034】
一実施態様において、上記の工程(2)は、加圧下で実施されてもよい。本明細書において、「加圧下」とは、大気圧、すなわち1気圧よりも高い気圧条件をいい、例えば、1.1気圧以上、1.5気圧以上、1.8気圧以上、又は2気圧以上で実施されてもよい。例えば、1.1~300気圧、1.5~200気圧、1.8~100気圧、2~50気圧、例えば2~20気圧であってもよい。加圧条件は、任意の装置や方法によって実施されてもよく、例えば、オートクレーブを用いることによって加圧条件を実現することができる。
【実施例】
【0035】
以下に、本発明を実施例に基づいて更に詳しく説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0036】
<実施例1>
1.材料と方法
1-1.動物の筋芽細胞の培養
C2C12マウス筋芽細胞(ATCC(登録商標)CRL-1772(商標))を、10%ウシ胎児血清(FBS、Thermo Fisher Scientific、MA、USA)および1%ペニシリン/ストレプトマイシン(PS、Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)を補充したDMEM(Sigma-Aldrich、StLouis,MO、USA)中、37℃で、5% CO
2を含む加湿大気中で培養した
37。2×10
5個のC2C12細胞を100mm培養皿(Greiner Bio-One、Kremsmunster、Austria)に播種した後、一晩培養し、使用済み培地を10mlの新鮮な培地と交換した。3日間の培養後、細胞を含む/含まない培地を回収した。遠心分離(1,700×g、5分)後、採取した培養上清(廃棄培地)中の各因子をさらなる分析のために外部委託した(SRL、東京、日本)(表1)。
【表1】
【0037】
1-2.微細藻類の培養
淡水緑藻植物 C. vulgaris(NIES-2170、国立環境研究所、茨城、日本)および海水緑藻植物 C. littorale(NBRC 102761、製品評価技術基盤機構、東京、日本)を、それぞれC培地(国立環境研究所、茨城、日本)(参考:「https://mcc.nies.go.jp/medium/ja/c.pdf」;Ichimura, T. 1971 Sexual cell division and conjugation-papilla formation in sexual reproduction of Closterium strigosum. In Proceedings of the Seventh International Seaweed Symposium, University of Tokyo Press, Tokyo, p. 208-214.)またはダイゴIMK培地(製造:日本製薬(東京、日本);販売:富士フイルム和光純薬(大阪、日本))およびダイゴ人工海水SP(製造:日本製薬(東京、日本);販売:富士フイルム和光純薬(大阪、日本))の混合物中で連続光(光合成光子束密度、PPFD: 12±1μmol/m2/s、n=5)36,38下で、培養した。PPFDは、量子光度計(オガワ精機株式会社、東京、日本)を用いて測定した。2×108 C. vulgarisまたは10×18 C. littorale細胞を100mm培養皿(Greiner Bio-One)に播種した後、細胞を、30℃の連続光下、5% CO2を含む加湿大気中で、連続光下で3日間培養した(PPFD:15±1μmol/m2/s、n=6)39。培養のために、各微細藻類標準培地またはC2C12細胞を3日間培養した後の廃棄培地を、微細藻類を伴う/伴わない培養の3日後のもので、分析に供した。微細藻類標準培地とは、目的とする藻類の培養に通常用いられる培地のことである。例えば、上記の場合C培地、ダイゴIMK培地及びダイゴ人工海水SPの混合物が該当する。遠心分離(1,700×g、5分)により培地を回収し、培養上清中の各因子を分析した(表1)。硝酸塩は、硝酸塩計(LAQUAtwin、アズワン株式会社、大阪、日本)を用いて検出した。
【0038】
なお、C. vulgarisの微細藻類標準培地としてC培地を用いた。また、C. littoraleの微細藻類標準培地として上記で用いたダイゴIMK培地及びダイゴ人工海水SPの混合物は、ダイゴ人工海水SP(富士フイルム和光純薬(大阪、日本)、製品コード:395-01343)36 gと、ダイゴIMK培地(富士フイルム和光純薬(大阪、日本)、製品コード:392-01331)252 mgをミリQ水 1Lに溶解し、オートクレーブすることによって調製した。
【0039】
筋芽細胞/微細藻類なしで培養した後の値を、筋芽細胞/微細藻類で培養した後の値で割ることによって、因子の消費(%)を計算した。動物細胞培養後の廃棄培地の浸透圧を低下または上昇させるために、純水(Merck Millipore、Burlington、MA、USA)または塩化ナトリウム(富士フイルム和光純薬株式会社、大阪、日本)、塩化マグネシウム(FUJIFILM Wako Pure Chemical)、および塩化カルシウム(富士フイルム和光純薬株式会社、大阪、日本)をそれぞれ使用した。
【0040】
細胞増殖の分析のために、C. littoraleまたはC. vulgarisを35mm培養皿(Greiner Bio-One)に5×106個で播種し、微細藻類を、上記のように、5% CO2を含む加湿大気中で30℃で7日間培養した。培養には各微細藻類標準培地またはC2C12細胞を3日間培養後の廃棄培地を使用した。培養後、血球計(ワケンビーテック株式会社、京都、日本)により微細藻類濃度を測定し、マイクロピペット(エムエス機器株式会社、大阪、日本)を用いて培地量を測定した。細胞数は、細胞濃度および培地量に基づいて計算した。NIS-Elements BRソフトウェア(Nikon)を用いて顕微鏡(ECLIPSE TS2、Nikon,Tokyo、Japan)により微細藻類画像を記録した。
【0041】
1-3.統計解析
対応のないスチューデントのt検定またはpost-hoc TukeyのHSD検定による一元配置分散分析により、それぞれ2群または多群間比較を行った。
【0042】
2.結果
2-1.動物筋芽細胞培養
C2C12筋芽細胞を3日間培養した後、培地中の因子の変動を分析した。筋芽細胞はグルコース(99%)(
図1a)およびグルタミン(69%)(
図1b)を活発に消費した。しかしながら、グルタミンを除く基礎培地(ダルベッコ改変イーグル培地、DMEM)中の14アミノ酸の量は、わずか26%減少しか減少していなかった(
図1c)。さらに、培地中のピルビン酸塩(
図1d)およびビタミンB1、B2、B6および葉酸(
図1e)の量は、わずかに減少していた。さらに、培地中のナトリウム(
図1f)、カリウム(
図1g)、カルシウム(
図1h)、およびマグネシウム(
図1i)の量はほとんど変化しなかった。しかしながら、細胞は培養培地中のリンを16%消費していた(
図1j)。アンモニアは、アミノ酸、とりわけグルタミンの分解によって産生されるので
27、培養前でも培養培地中に存在した(データは示さず)。培地中のアンモニアは、細胞の培養中に増加する傾向があった(
図1k)。
【0043】
以上より、培養培地中の栄養素、ビタミン、およびリンを含む無機塩のレベルは、細胞によって消費されたグルコースおよびグルタミン、ならびに廃棄培地中に排泄されたアンモニアを除いて、ほとんど同じままであることが明らかとなった。
【0044】
2-2.微細藻類培養
微細藻類を通常の培地中で3日間培養し、培地中の因子の変動を分析した。微細藻類は、アンモニア(C. vulgaris:39%; C. littorale:100%)(
図2a)、リン(C. vulgaris:100%; C. littorale:100%)(
図2b)、硝酸塩(C. vulgaris:67%; C. littorale:17%)を積極的に消費した(
図2c)。しかし、ナトリウム(
図2d)、カリウム(
図2e)、カルシウム(
図2f)、およびマグネシウム(
図2g)の量は無視できる変化しか生じなかった。
【0045】
筋芽細胞培養の廃棄培地中で増殖させると、微細藻類はアンモニアおよびリンを活発に消費した(
図3aおよび3b)。C. littoraleはC. vulgarisよりも多くのアンモニアを摂取した(C. littorale;80%、C. vulgaris;26%)。両微細藻類はリンを消費した(C. littorale;16%、C. vulgaris;15%)。しかし、ナトリウム(
図3c)、カリウム(
図3d)、カルシウム(
図3e)のレベルはほとんど変化せず、マグネシウムのレベルはC. littoraleの場合には増加したが、C. vulgarisの場合にはほとんど変化しなかった(
図3f)。
【0046】
本発明者らはまた、微細藻類が動物細胞培養物の廃棄培地中で増殖し得るかどうかを分析した。C. vulgarisは微細藻類標準培地中で13.4倍増殖したが、7日間の培養後に廃棄培地中では1.4倍しか増殖しなかった(
図4-1)。微細藻類標準培地中の無機塩のレベルは、廃棄培地のレベルよりも有意に低かった(
図1および2)。従って、我々は廃棄培地を水で希釈してその濃度を低下させた。浸透圧モル濃度の低下は、培地の希釈に依存して変化した(表2)。C. vulgarisは希釈廃棄培地中で1.6倍しか増加しない(
図4-1)。対照的に、海水微細藻類、C. littoraleは微細藻類標準培地で6.8倍増殖したが、培養7日後に廃棄培地ではさらに2.2倍増殖した(
図4-2)。C. littoraleの培地中のナトリウム、マグネシウム、カルシウム濃度は廃棄培地(
図1、2)よりも有意に高かったため、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウムを添加して濃度を調整した。廃棄培地の最終浸透圧は、微細藻類標準培地の浸透圧にほぼ等しかった(表2)。C. littoraleの細胞増殖は、廃棄培地の塩濃度を調整することによって3.2倍に増強された(
図4-2)。
【表2】
【0047】
3.考察
報告によれば、C. vulgarisを含む淡水微細藻類は、家庭、農業、および産業廃水の処理に役立ち得る
24-26。反対に、海水微細藻類は動物細胞培養廃棄培地を効率的に処理できることが観察された(
図3、
図4-1および
図4-2)。本発明者らは2つの微細藻類間の差異が無機塩の最適濃度に関連し、微細藻類が窒素含有化合物に対して異なる優先性を示していると推定する。C. littoraleは硝酸塩よりもアンモニアを優先的に消費したが、C. vulgarisはアンモニアよりも硝酸塩を優先的に消費した(
図2aおよび2c)。アンモニア消費の違いは、おそらくC. littoraleが窒素源としてアンモニアを好むのに対し、C. vulgarisは硝酸塩を好むという事実によるものと考えられる。アンモニアは培養細胞廃棄培地中の主要な窒素源であり、C. littoraleが廃棄培地中でC. vulgarisよりも速く増殖し、またC. littoraleの増殖が通常の微細藻類標準培地よりも廃棄培地中で遅かった理由の1つの理由であるものと考えられる(
図4-2)。筋芽細胞培養後の廃棄培地および微細藻類標準培地はいずれもアンモニアおよびリンを含有していたが、微細藻類標準培地のみが硝酸塩を含有していた(
図2および3)。C. littoraleの標準培地は、アンモニアよりも有意に多くの硝酸塩を含んでいる(
図2aおよび2c)。廃棄培地中に含まれるアンモニアの量は、微細藻類の高密度かつ1週間以上の長期培養の場合には十分ではないかもしれない。培地成分の最適化および微細藻類株、例えば、汽水由来の微細藻類
28、アンモニアを好むか、または窒素
29を固定することができる微細藻類の選択が、将来の研究のトピックスである。動物細胞培養からの廃棄培地を用いることによる微細藻類の培養系の確立は、(1)微細藻類培養における淡水およびアンモニアおよびリンを含む無機塩の保存、ならびに(2)廃棄培地の処分によって引き起こされる水体の富栄養化の防止に寄与する。
【0048】
動物の筋芽細胞は、培地中に存在するグルコースおよびグルタミンを活発に消費する(
図1)。グルコースは細胞生合成とエネルギー生成の主要な炭素源であり、細胞培養
30に不可欠である。グルタミンは、ヒトプロテオーム
31中の全アミノ酸残基の約5%を構成する。さらに、グルタミンは、非必須アミノ酸ならびにプリンおよびピリミジンベース
31の生合成に密接に関連している。さらに、増殖細胞において、グルタミンは、トリカルボン酸(TCA)周期のための生合成前駆体として働く。しかし、培養液中の栄養素、ビタミン、無機塩類の量はほとんど変化しなかった(
図1)。上記の培養食品の効率の推定において、培地に含まれるグルコースおよびアミノ酸の100%が消費されたと仮定した。しかしながら、我々の研究は、約16%のグルコースおよびアミノ酸、100%のピルビン酸、および96%のビタミンが残存することを示した(
図1)。以前の研究ではウシ初代筋組織由来細胞がグルコースとアミノ酸のわずか11%しか消費していなかったが、培養3日間ではピルビン酸の43%を消費していた(データは示していない)。C2C12筋芽細胞の代謝を分析すると、グルコースとピルビン酸消費レベルが同様の傾向を示すことが観察された。簡単に述べると、細胞がグルコースを消費した後にのみ、主にピルビン酸を消費した(データは示さず)。これが、
図1dで示されるように、ピルビン酸レベルにおいて高い偏差を示した理由であると考えられる。これらの知見はいずれも、グルコースとピルビン酸の両方を好むウシの初代筋組織由来細胞とは対照的に、C2C12筋芽細胞はピルビン酸よりもグルコースを好むことを示唆している。必須栄養素は細胞型に大きく依存するため、細胞型の代謝による培地調製は、より有効な培養食品生産システムをもたらす。さらに、グルコース、ピルビン酸塩、アミノ酸、ビタミン、および無機塩の廃棄培地中での再循環が必要である。
【0049】
筋芽細胞の廃棄培地での微細藻類培養ではナトリウム、カリウム、カルシウムの量はほとんど変化しなかったが、マグネシウムはC. littoraleの場合にはわずかに増加したが、C. vulgarisの場合には増加しなかった(
図3f)。これらのデータの違いは培養培地間のマグネシウム濃度の違いに関連していると考えられる。C. littoraleの標準培地中のマグネシウム濃度は、C. vulgarisの標準培地または動物細胞の培地中のマグネシウム濃度よりも有意に高かったため(
図1iおよび2g)、マグネシウムはC. littoraleから低度に分泌されると考えられる。
【0050】
現在、哺乳動物細胞培養培地に含まれる栄養素およびビタミンは、穀物に直接的および間接的に由来する。穀物由来の栄養素の使用は食品生産と競合し、培養食品中の極めて多量の栄養素の使用は穀物の価格の上昇につながる可能性がある。さらに、化学肥料および農薬を使用する穀物生産は大量のエネルギーおよび天然資源を消費し、環境ストレスを引き起こす。主な化学肥料であるアンモニアの製造は地球規模の年間電力供給量の1~2%、地球規模の天然ガスの3~5%を消費し、地球規模の二酸化炭素排出32,33の3%に関連している。また、もう1つの重要な化学肥料であるリンは、リン酸塩岩石に由来するものであり、その質は低下しており、その量は34限られている。ほとんどすべての農薬は石油由来である。反対に、微細藻類はほとんど残留35を伴わずに、最も効率的に栄養素を合成する。近年、C. littoraleとC. vulgarisから得た栄養素を用いて動物細胞の培養系を確立したが、これらは食品産生と競合せず、動物細胞36に必要な栄養素を効率的に合成する。したがって、動物細胞は、微細藻類によって産生された栄養素を使用して増殖することができ、微細藻類は、動物細胞培養物からの廃棄培地のリサイクルによって増殖することができる。また、C. littoraleは、火力発電所や製鉄工場から排出される二酸化炭素ガスの固定化にも効率的であると期待されている。化石燃料を燃焼させて発生する二酸化炭素を吸収して生育した微細藻類から抽出した栄養素や、動物細胞で生産された培養食品から発生する廃棄培地で動物細胞を培養するリサイクル培養システムを想定している。動物細胞と微細藻類を利用したリサイクル細胞培養システムは、持続可能なエネルギー、栄養、環境、資源を節約する溶液を確立すると考えられる。
【0051】
<実施例2>
広塩性の微細藻類として知られているシネココッカス属(Synechococcus sp.)の微細藻類(以下、「シネココッカス」という。)が、動物細胞の培養後の廃棄培地によって培養可能であるかどうかを調べた。
【0052】
シネココッカスの培養に用いて動物細胞の培養後の廃棄培地は、実施例1と同様の方法で準備した。
【0053】
細胞増殖の分析のために、シネココッカス(NIES-3758、国立環境研究所)を100mm培養皿(Greiner Bio-One)に、C培地+10%海水(C+10% Seawater、国立環境研究所)またはC2C12細胞を3日間培養した後の廃棄培地で連続光(光合成光子束密度、PPFD: 15±1μmol/m2/s、n=6)下で、7日間培養した。微細藻類を遠心操作(2300×g)で回収後、培地成分を除いた湿重量を秤量天秤(METLER TOLEDO)で測定し、7日間培養前後の藻類の増殖率を解析した。また、NIS-Elements BRソフトウェア(Nikon)を用いて顕微鏡(ECLIPSE TS2、Nikon,Tokyo、Japan)により培養後の微細藻類画像を記録した。
【0054】
その結果、シネココッカスは動物細胞の培養後の廃棄培地を用いた培養で、微細藻類標準培地を用いた場合とほぼ同程度の増殖率を示した(
図5)。
図6は培養7日後の顕微鏡観察の結果であるが、動物細胞の培養後の廃棄培地を用い培養した場合でも微細藻類標準培地を用い培養した場合でも微細藻類の培養密度および細胞の形態・様子に変化が認められないことを示している。これらの結果は広塩性の微細藻類シネココッカスは動物細胞の培養後の廃棄培地で微細藻類標準培地と同様に培養増殖できることを示している。
【0055】
<実施例3>
実施例1と同じ条件で、RL34マウス肝細胞株、及びウシ筋組織由来細胞を3日間培養し、それぞれの廃棄培地を用いて、C. littoraleを培養したところ、いずれの廃棄培地によっても培養可能であった。
【0056】
<実施例4>
動物細胞廃棄培地を用いて培養した藻類からの栄養素抽出
【0057】
動物筋細胞(C2C12細胞)の廃棄培地で7日間培養した藻類(C. littorale)を酸処理(0.5N HCl,100℃,24時間処理)で栄養素抽出を行った。酸処理後NaOH(富士フイルム和光純薬、大阪、日本)で中和処理後、遠心処理(12,500 × g、5分)上清を藻類抽出液として利用した。
【0058】
藻類抽出液と動物細胞基礎培地の各栄養成分を、以下の方法:
・グルコース解析法:Hexokinase method
・アミノ酸解析法:Liquid chromatography-mass spectrometry (LCMS)
により解析して比較を行った。
【0059】
その結果、以下のように、動物細胞の廃棄培地を用いて培養した藻類からも効率的に栄養素を抽出でき、それに含まれるグルコース及びタンパク質構成アミノ酸量は、市販の動物細胞培養用基礎培地DMEMよりも多いことが明らかとなった。
【0060】
【0061】
<実施例5>
動物細胞廃棄培地を用いて培養した藻類から抽出した栄養素(藻類抽出物)を用いた動物細胞の培養(リサイクル培養の実証)
【0062】
実施例4において抽出した藻類抽出物を用い、動物筋細胞(C2C12細胞)を培養可能か確かめた。
【0063】
以下の3つの培地:
(1)動物細胞培養用基礎培地DMEM(Sigma-Aldrich、StLouis,MO、USA)
(2)(1)の基礎培地に含まれる無機塩のみの培地(無機塩培地)
(3)(2)の無機塩培地+実施例3で得られた藻類抽出液(5%(v/v))
を用いて動物筋細胞(C2C12細胞)を2日間培養し、相対生細胞数をXTTアッセイによって測定し、比較した(
図7)。
【0064】
なお、上記(2)の無機塩培地は、以下の組成である。
(i)糖質
・グルコース:0mg/L
(ii)アミノ酸
・L-アルギニン:0mg/L
・L-シスチン:0mg/L
・L-グルタミン:0mg/L
・グリシン:0mg/L
・L-ヒスチジン:0mg/L
・L-イソロイシン:0mg/L
・L-ロイシン:0mg/L
・L-リジン:0mg/L
・L-メチオニン:0mg/L
・L-フェニルアラニン:0mg/L
・L-セリン:0mg/L
・L-トレオニン:0mg/L
・L-トリプトファン:0mg/L
・L-チロシン:0mg/L
・L-バリン:0mg/L
(iii)ビタミン
・パントテン酸:0mg/L
・塩化コリン:0mg/L
・葉酸:0mg/L
・i-イノシトール:0mg/L
・ナイアシンアミド:0mg/L
・ピリドキシン:0mg/L
・リボフラビン:0mg/L
・チアミン:0mg/L
(iv)ミネラル
・CaCl2:200mg/L
・KCl:400mg/L
・Fe(NO3)3・9H2O:0.10mg/L
・MgSO4:98mg/L
・NaCl:6400mg/L
・NaHCO3:3700mg/L
・NaH2PO4:109mg/L
・フェノールレッド:15mg/L
【0065】
その結果、動物筋細胞廃棄培地で増幅した藻類から抽出した藻類抽出物を用いて、動物筋細胞を培養可能であることが示され、藻類及び動物細胞のリサイクル培養系が確立可能であることが実証された。
【0066】
参考文献:
1. FAO. World Livestock 2011-Livestock in Food Security (FAO, 2011).
2. Tuomisto, H. L. & de Mattos, M. J. Environmental impacts of cultured meat production. Environ. Sci. Technol. 45, 6117-6123 (2011).
3. Post, M.J. An alternative animal protein source: cultured beef. Ann. N Y Acad. Sci. 1328, 29-33 (2014).
4. Lodish, H. et al. Molecular Cell Biology, 3rd edition, Ch. 5 (W. H. Freeman and Company, 1995).
5. Spolaore, P., Joannis-Cassan, C., Duran, E. & Isambert, A. Commercial applications of microalgae. J. Biosci. Bioeng. 101, 87-96 (2006).
6. Gerhardt, C. et al. How will cultured meat and meat alternatives disrupt the agricultural and food industry? Ind. Biotechnol. 16, 2020 (2020).
7. Mattick, C. S., Landis, A. E., Allenby, B. R. & Genovese, N. J. Anticipatory life cycle analysis of in vitro biomass culture for cultured meat production in the United States. Environ. Sci. Technol. 49, 11941-11949 (2015).
8. Chisti, Y. Biodiesel from microalgae. Biotechnol. Adv. 25, 294-306 (2007).
9. Ajjawi, I. et al. Lipid production in Nannochloropsis gaditana is doubled by decreasing expression of a single transcriptional regulator. Nat. Biotechnol. 35, 647-652 (2017).
10. Ho, S.H. et al. Bioethanol production using carbohydrate-rich microalgae biomass as feedstock. Bioresour. Technol. 135, 191-198 (2013).
11. Harun, R. et al. Algal biomass conversion to bioethanol - a step-by-step assessment. Biotechnol. J. 9, 73-86 (2014).
12. Norsker, N. H., Barbosa, M. J., Vermue, M. H. & Wijffels, R. H. Microalgal production-a close look at the economics. Biotechnol. Adv. 29, 24-27 (2011).
13. Rasala, B. A. et al. Production of therapeutic proteins in algae, analysis of expression of seven human proteins in the chloroplast of Chlamydomonas reinhardtii. Plant Biotechnol. J. 8, 719-733 (2010).
14. Gregory, J. A., Topol, A. B., Doerner, D. Z. & Mayfield, S. Alga-produced cholera toxin-Pfs25 fusion proteins as oral vaccines. Appl. Environ. Microbiol. 79, 3917-3925 (2013).
15. Specht, E. A. & Mayfield, S. P. Algae-based oral recombinant vaccines. Front. Microbiol. 5, 60 (2014).
16. Osanai, T. et al. Pleiotropic effect of sigE over-expression on cell morphology, photosynthesis and hydrogen production in Synechocystis sp. PCC 6803. Plant J. 76, 456-465 (2013).
17. Satoh, A., Kurano, N., Harayama, S. & Miyachi, S. Effects of chloramphenicol on photosynthesis, protein profiles and transketolase activity under extremely high CO2 concentration in an extremely-high-CO2-tolerant green microalga, Chlorococcum littorale. Plant Cell Physiol. 45, 1857-1862 (2004).
18. Rossi, F., Olguin, E. J., Diels, L. & De Philippis, R. Microbial fixation of CO2 in water bodies and in drylands to combat climate change, soil loss and desertification. N. Biotechnol. 32, 109-120 (2015).
19. Cheng, J., Zhu, Y., Zhang, Z. & Yang, W. Modification and improvement of microalgae strains for strengthening CO2 fixation from coal-fired flue gas in power plants. Bioresour. Technol. 291, 121850 (2019).
20. Lee, D. J., Chang, J. S. & Lai, J. Y. Microalgae-microbial fuel cell: A mini review. Bioresour. Technol. 198, 891-895 (2015).
21. McCusker, S., Buff, P. R., Yu, Z. & Fascetti, A. J. Amino acid content of selected plant, algae and insect species: a search for alternative protein sources for use in pet foods. J. Nutr. Sci. 3, e39 (2014).
22. Gutierrez-Salmean, G., Fabila-Castillo, L. & Chamorro-Cevallos, G. Nutritional and toxicological aspects of Spirulina (Arthrospira). Nutr. Hosp. 32, 34-40 (2015).
23. Alori, E. T. & Babalola, O. O. Microbial inoculants for improving crop quality and human health in Africa. Front. Microbiol. 9, 2213 (2018).
24. Wang, L. et al. Culture of green algae Chlorella sp. in different wastewaters from municipal wastewater treatment plant. Appl. Biochem. Biotechnol. 162, 1174-1186 (2010).
25. Chiu, S. Y. et al. Culture of microalgal Chlorella for biomass and lipid production using wastewater as nutrient resource. Bioresour. Technol. 184, 179-189 (2015).
26. Wang, J. H. et al. Microalgae-based advanced municipal wastewater treatment for reuse in water bodies. Appl. Microbiol. Biotechnol. 101, 2659-2675 (2017).
27. Schneider, M., Marison, I. W. & von Stockar, U. The importance of ammonia in mammalian cell culture. J. Biotechnol. 46, 161-185 (1996).
28. Tanabe, Y., Hodoki, Y., Sano, T., Tada, K. & Watanabe, M. M. Adaptation of the freshwater bloom-forming cyanobacterium Microcystis aerguinosa to brackish water is driven by recent horizontal transfer of sucrose genes. Front. Microb. 9, 1150 (2018).
29. Tsujimoto, R. et al. Functional expression of an oxygen-labile nitrogenase in an oxygenic photosynthetic organism. Sci. Rep. 8, 7380 (2018).
30. Mulukutla, B. C., Yongky, A., Le, T., Mashek, D. G. & Hu, W. S. Regulation of glucose metabolism - A perspective from cell bioprocessing. Trends Biotechnol. 34, 638-651 (2016).
31. Zhang, J., Pavlova, N. N. & Thompson, C. B. Cancer cell metabolism: the essential role of the nonessential amino acid, glutamine. EMBO J. 36, 1302-1315 (2017).
32. Ye, Y. et al. A critical review on ammonium recovery from wastewater for sustainable wastewater management. Bioresour. Technol. 268, 749-758 (2018).
33. Song, Y. et al. A physical catalyst for the electrolysis of nitrogen to ammonia. Sci. Adv. 4, e1700336 (2018).
34. Tarayre, C. et al. New perspectives for the design of sustainable bioprocesses for phosphorus recovery from waste. Bioresour. Technol. 206, 264-274 (2016).
35. Singh, A. K. & Singh, M. P. Importance of algae as a potential source of biofuel. Cell Mol. Biol. 60, 106-109 (2014).
36. Okamoto, Y., Haraguchi, Y., Sawamura, N., Asahi, T. & Shimizu, T. Mammalian cell culture using nutrients extracted from microalgae. Biotechnol. Prog. 36, e2941 (2020).
37. Haraguchi, Y., et al. Fabrication of functional three-dimensional tissues by stacking cell sheets in vitro. Nat. Protoc. 7, 850-858 (2012).
38. Haraguchi, Y., et al. Thicker three-dimensional tissue from a "symbiotic recycling system" combining mammalian cells and algae. Sci. Rep. 7, 41594 (2017).
39. Haraguchi, Y. & Shimizu, T. Three-dimensional tissue fabrication system by co-culture of microalgae and animal cells for production of thicker and healthy cultured food. Biotechnol. Lett. in press. doi: 10.1007/s10529-021-03106-0.