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特許7288730真空断熱装置と真空断熱装置の製造方法。
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  • 特許-真空断熱装置と真空断熱装置の製造方法。 図1
  • 特許-真空断熱装置と真空断熱装置の製造方法。 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-31
(45)【発行日】2023-06-08
(54)【発明の名称】真空断熱装置と真空断熱装置の製造方法。
(51)【国際特許分類】
   G12B 17/06 20060101AFI20230601BHJP
【FI】
G12B17/06
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023031962
(22)【出願日】2023-03-02
【審査請求日】2023-03-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517271935
【氏名又は名称】前田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】前田 和幸
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/056439(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/235448(WO,A1)
【文献】特開2012-180903(JP,A)
【文献】特開2018-146067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G12B 17/06
F16L 59/00-59/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が真空の密閉空間を有する二重構造物と、その二重構造物が大気圧によって変形するのを防止するための支柱から構成される真空断熱装置において、二重構造物の接合部分の一方の複数箇所に間隙を設けるとともに、もう一方の一部に突出した部分を設けて、この突出した部分をもう一方の一部に設けられた間隙に挿入して貫通させ、貫通した部分を180度折り曲げて固定することにより、接合部分に張力に耐える強度を持たせることが可能になるという構造と機能を持たせることを特徴とする真空断熱装置。
【請求項2】
内部が真空の密閉空間を有する二重構造物と、その二重構造物が大気圧によって変形するのを防止するための支柱から構成される真空断熱装置において、二重構造物の接合部分の一方の複数箇所に間隙を設けるとともに、もう一方の一部に突出した部分を設けて、この突出した部分をもう一方の一部に設けられた間隙に挿入して貫通させ、貫通した部分を180度折り曲げて固定するという方法を用いることにより、接合部分に張力に耐える強度を持たせることが可能になることを特徴とする、真空断熱装置の製造方法。
【請求項3】
内部が真空の密閉空間を有する二重構造物と、その二重構造物が大気圧によって変形するのを防止するための支柱から構成される真空断熱装置において、二重構造物の両端に挿入された支柱に定常的に加えられた反対方向の力により、二重構造物を構成する物質に定常的に張力を持たせることにより、密閉空間を有する内部が真空の二重構造物が大気圧によって変形しないという構造を有する、請求項1に記載された真空断熱装置。
【請求項4】
内部が真空の密閉空間を有する二重構造物と、その二重構造物が大気圧によって変形するのを防止するための支柱から構成される真空断熱装置において、二重構造物の両端に挿入された支柱に定常的に反対方向の力を加えるという方法を用いることにより、二重構造物を構成する物質が定常的に張力を保持していることを特徴とする、請求項2に記載された真空断熱装置の製造方法。
【請求項5】
内部が真空の密閉空間を有する二重構造物と、その二重構造物が大気圧によって変形するのを防止するための支柱から構成される真空断熱装置において、二重構造物に熱を加えて通常使用される温度よりも延びた状態にした状態で、二重構造物の内部に支柱を挿入することにより、二重構造物が定常的に使用される温度においては収縮して二重構造物を構成する物質に定常的に張力が発生し、密閉空間を有する内部が真空の二重構造物が大気圧によって変形しないという構造を有する,請求項1に記載された真空断熱装置。
【請求項6】
内部が真空の密閉空間を有する二重構造物と、その二重構造物が大気圧によって変形するのを防止するための支柱から構成される真空断熱装置において、二重構造物に熱を加えて通常使用される温度よりも延びた状態にして、二重構造物の内部に支柱を挿入するという方法を用いることにより、二重構造物が通常使用される温度においては収縮して二重構造物を構成する物質に定常的に張力が発生し、密閉空間を有する内部が真空の二重構造物が大気圧によって変形しないという特徴を有する,請求項2に記載された真空断熱装置の製造方法。
【請求項7】
内部が真空の密閉空間を有する二重構造物と、その二重構造物が大気圧によって変形するのを防止するための支柱から構成される真空断熱装置において、二重構造物の接合部分を、シール材を充填・塗布、熔接、溶着により気密が保たれた構造とすることにより、二重構造の密閉空間を構成している物質の気密が保たれた構造となることを特徴とする、請求項1に記載された真空断熱装置。
【請求項8】
内部が真空の密閉空間を有する二重構造物と、その二重構造物が大気圧によって変形するのを防止するための支柱から構成される真空断熱装置において、二重構造物の接合部分を、シール材を充填・塗布、熔接、溶着により気密を保つという方法を用いることにより、二重構造の密閉空間を構成している物質の気密が保たれた構造を有することを特徴とする、請求項2に記載された真空断熱装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内部にある高温又は低温の状態にある物質の温度が周囲への熱移動により変化することを防止するための装置と方法に関する。
【背景技術】
【0002】
容器の外周を二重構造として二重構造の内部を真空にすることにより、断熱効果が格段に向上することはよく知られている。しかし、容器を二重構造として二重構造の内部を真空にすると、容器の表面とそれを覆う構造物で構成される空間の内圧が低下するため、容器の表面を構成する物質とそれを覆う構造物に作用する圧力によって、容器の表面を構成する物質とそれを覆う構造物が変形する可能性がある。これを防止するためには二重構造にした容器の表面とそれを覆う構造物との間に新たな構造物を挿入して、これに支柱の役割を持たせることにより、容器の表面を構成する物質とそれを覆う構造物が変形するのを防止する措置がとられている。
例えば、特許文献1には「管において、断熱層を構成する二重筒の間の真空層の形状を保持するために、複数の金属ワイヤ又は金網を設置する技術」が記載されている。
また、特許文献2には「二重構造にした構造物の間に挿入してこれに支柱の役割を持たせる新たな構造物として、筒状の断面形状を持ち、内部が固体よりも熱伝導率特性に優れた空気で満たされた物質をらせん状に巻き付ける技術」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-144740号公報
【文献】特許第6807567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、容器の外周を二重構造としてその内部を真空にすることにより断熱効果が格段に向上するが、二重構造にした容器の表面を構成する物質とそれを覆う構造物が変形する可能性があるため、これを防止するために、特許文献に記載されているように、「容器の外側(真空層の内部)に断面円形の長尺物をらせん状に巻き付ける」などの新たな技術と方法が必要になるが、二重構造物の内部に支柱の役割を持たせる物質(スペーサー)を挿入することにより、支柱の役割を持たせる物質(スペーサー)が熱の流路となるため、伝熱性能が低下することになる。これを防止するために、支柱の役割を持たせる物質(スペーサー)の形状を断面円形にして二重構造物との接触面積を出来るだけ小さくするなどの方法が用いられているが、
(1)支柱の役割を持たせる物質(スペーサー)が熱の流路となり、装置の伝熱性能が低下する。
(2)支柱の役割を持たせる物質(スペーサー)に要するコストが増加する。
(3)支柱の役割を持たせる物質(スペーサー)により全体の重量が増加する。
などの理由により、支柱の役割を持たせる物質(スペーサー)が装置全体に占める割合を小さくする必要がある。
【0005】
そこで本発明は、下記の要素を備えた、これまで用いられてきた支柱の役割を持たせる物質(スペーサー)よりも伝熱性能に優れ、コストと重量が低減可能な装置と方法を提供することを目的とする。
1.内部が真空の密閉空間を有する二重構造物と、その二重構造物が大気圧によって変形するのを防止するための支柱(スペーサー)から構成される真空断熱装置において、
2.二重構造物の内側の両端(両側)に密着して設置され、相対位置が固定された(変形しない)2つの支柱(スペーサー)の外側から外側までの距離(最大幅)が、2つの支柱(スペーサー)に接している二重構造物の常温・常圧下における内側から内側までの距離(最大幅)よりも長い状態で挿入することにし、二重構造物が延びた(張力を保有する)状態を保持している構造とする
3.これにより、内部が真空の密閉空間を有する二重構造物と、その二重構造物が大気圧によって変形するのを防止するための支柱(スペーサー)から構成される真空断熱装置は、内部が真空の密閉空間を有する二重構造物と二重構造物の両端(両側)に設置された支柱(スペーサー)のみの構成となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
容器を二重構造として二重構造の内部を真空にすると、容器の表面とそれを覆う構造物で構成される空間の内圧が低下するため、容器の表面を構成する物質とそれを覆う構造物に作用する圧力によって、容器の表面を構成する物質とそれを覆う構造物が変形する可能性がある。これを防止するためには二重構造にした容器の表面とそれを覆う構造物との間に新たな構造物を挿入して、これに支柱の役割を持たせることにより、容器の表面を構成する物質とそれを覆う構造物が変形するのを防止する措置がとられている。
一般的に、二重構造物が大気圧によって変形するのを防止するための支柱(スペーサー)の間隔を狭くして大気圧が作用する面積を小さくすることにより、二重構造物に作用する力を弱めて変形を防止する方法が採られているが、(1)支柱の役割を持たせる物質(スペーサー)が熱の流路となり、装置の伝熱性能が低下する。(2)支柱の役割を持たせる物質(スペーサー)に要するコストが増加する。(3)支柱の役割を持たせる物質(スペーサー)により全体の重量が増加する。などの課題がある。
そこで本発明においては、トランポリン(伸縮性のある丈夫な布を張り渡しゴム・ケーブルまたは
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で固定した運動器具)の原理を応用し、二重構造物の構成要素を、伸縮性があるものの大気圧(100kPa)と同等の圧力では変形しない構造とすることにより、二重構造物の内部を真空にしても形状を維持することが可能となる。
【0007】
請求項1に記載の発明は、内部が真空の密閉空間を有する二重構造物と、その二重構造物が大気圧によって変形するのを防止するための支柱(スペーサー)から構成される真空断熱装置において、二重構造物の接合部分を、構造が簡単で容積と重量が増加せず、特殊な装置と技術も要しない、汎用性が高い構造にするために、接合部分の一方の複数箇所に間隙(縦長の小穴)を設けて、もう一方の一部をこの間隙に挿入して(貫通させて)、突出した部分を180度折り曲げて固定することにより、接合部分に引っ張り(張力)に耐える強度を持たせることが可能になるという構造と機能を持たせることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、内部が真空の密閉空間を有する二重構造物と、その二重構造物が大気圧によって変形するのを防止するための支柱(スペーサー)から構成される真空断熱装置において、二重構造物の接合部分を、構造が簡単で容積と重量が増加せず、特殊な装置と技術も要しない、汎用性が高い構造にするために、接合部分の一方に間隙(縦長の小穴)を設けて、もう一方の一部をこの間隙に挿入して(貫通させて)、突出した部分を180度折り曲げて固定するという方法を用いることにより、接合部分に引っ張り(張力)に耐える強度を持たせることが可能になることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、内部が真空の密閉空間を有する二重構造物と、その二重構造物が大気圧によって変形するのを防止するための支柱(スペーサー)から構成される真空断熱装置において、二重構造物が大気圧によって変形するのを防止するために、二重構造物に力を加えることにより2つの支柱(スペーサー)に接している二重構造物の内側から内側までの最大幅を増加させた後に、これと同じ最大幅(二重構造物の内側の両端に密着して設置された変形しない2つの支柱の外側から外側までの距離)を持つ支柱(スペーサー)を挿入して、二重構造物を構成する物質が弾性変形領域において定常的に延びた(張力を持った)状態を保持している構造とすることにより、二重構造物が大気圧力により変形しないという構造と機能を有することを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、内部が真空の密閉空間を有する二重構造物と、その二重構造物が大気圧によって変形するのを防止するための支柱(スペーサー)から構成される真空断熱装置において、二重構造物が大気圧によって変形するのを防止するために、二重構造物に力を加えることにより2つの支柱(スペーサー)に接している二重構造物の内側から内側までの最大幅を増加させた後に、これと同じ最大幅(二重構造物の内側の両端に密着して設置された変形しない2つの支柱の外側から外側までの距離)を持つ支柱(スペーサー)を挿入するという方法を用いることにより、二重構造物を構成する物質に弾性変形領域において定常的に延びた(張力を持った)状態を保持させ、大気圧力により変形しないという機能を持たせることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、内部が真空の密閉空間を有する二重構造物と、その二重構造物が大気圧によって変形するのを防止するための支柱(スペーサー)から構成される真空断熱装置において、二重構造物の両端に挿入された支柱(スペーサー)に定常的に加えられた反対方向の力により、二重構造物を構成する物質に定常的に張力を持たせることにより、密閉空間を有する内部が真空の二重構造物が大気圧によって変形しないという構造を有する。
【0012】
請求項6に記載の発明は、内部が真空の密閉空間を有する二重構造物と、その二重構造物が大気圧によって変形するのを防止するための支柱(スペーサー)から構成される真空断熱装置において、二重構造物の両端に挿入された支柱(スペーサー)に定常的に反対方向の力を加えるという方法を用いることにより、二重構造物を構成する物質が定常的に張力を保持していることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、内部が真空の密閉空間を有する二重構造物と、その二重構造物が大気圧によって変形するのを防止するための支柱(スペーサー)から構成される真空断熱装置において、二重構造物に熱を加えて通常使用される温度よりも延びた状態にした状態で、二重構造物の内部に支柱(スペーサー)を挿入することにより、二重構造物が定常的に使用される温度においては収縮して二重構造物を構成する物質に定常的に張力が発生し、密閉空間を有する内部が真空の二重構造物が大気圧によって変形しないという構造を有する。
【0014】
請求項8に記載の発明は、内部が真空の密閉空間を有する二重構造物と、その二重構造物が大気圧によって変形するのを防止するための支柱(スペーサー)から構成される真空断熱装置において、二重構造物に熱を加えて通常使用される温度よりも延びた状態にして、二重構造物の内部に支柱(スペーサー)を挿入するという方法を用いることにより、二重構造物が通常使用される温度においては収縮して二重構造物を構成する物質に定常的に張力が発生し、密閉空間を有する内部が真空の二重構造物が大気圧によって変形しないという特徴を有する。
【0015】
請求項9に記載の発明は、内部が真空の密閉空間を有する二重構造物と、その二重構造物が大気圧によって変形するのを防止するための支柱(スペーサー)から構成される真空断熱装置において、二重構造物の接合部分を、シール材を充填・塗布、熔接、溶着などにより気密が保たれた構造とすることにより、二重構造の密閉空間を構成している物質の気密が保たれた構造となることを特徴とする。
【0016】
請求項10に記載の発明は、内部が真空の密閉空間を有する二重構造物と、その二重構造物が大気圧によって変形するのを防止するための支柱(スペーサー)から構成される真空断熱装置において、二重構造物の接合部分を、シール材を充填・塗布、熔接、溶着などにより気密を保つという方法を用いることにより、二重構造の密閉空間を構成している物質の気密が保たれた構造を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明を用いることにより、容器内の物質の温度変化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明における、二重構造物の接合部分に係る基本構造の例を示したものである。
図2】本発明における、内部が真空の密閉空間を有する二重構造物と、その二重構造物が大気圧によって変形するのを防止するための支柱(スペーサー)の形態に係る具体的な構成の例を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明における、二重構造物の接合部分に係る基本構造の例を示したものである。
図1(A)の右に、二重構造物の接合部分の複数箇所に間隙(縦長の小穴)を設けた例を示している。また、図1(A)の左に、二重構造物の接合部分の一部に突出した部分を設けた例を示している。
図1(B)は、図1(A)の左に示す二重構造物の接合部分の一部に設けられた突出した部分を、図1(A)の右に示す二重構造物の接合部分の複数箇所に設置された間隙(縦長の小穴)に挿入した(貫通させた)状態を示す。このような構造にすることにより、接合部分に面積を持つ重なり(密着した部分)が生じ、接合部からの漏洩を防止できるとともに、二重構造物の接合部分に、シール材を充填・塗布、熔接、溶着などの気密を保つ技術を施工する際の作業が容易となる。しかし、この状態では接合部分を左右に引っ張った場合、接合部分にシール材を充填・塗布、熔接、溶着などの気密を保つ技術を施工しても、接合部分に引っ張り力がかかると、接合面の移動や接合面の分離が生じる可能性が高い。これを防止するために、本発明では、貫通した二重構造物の接合部分の一部に設けられた突出した部分を180度折り曲げて固定するという構造とした。
図1(C)上は、二重構造物の接合部分の一部に突出した部分を、二重構造物の接合部分の複数箇所に設置された間隙(縦長の小穴)に挿入して貫通させ、貫通した二重構造物の接合部分の一部に設けられた突出した部分を180度折り曲げて固定した例を示している。また、図1(C)下は、貫通した二重構造物の接合部分の一部に設けられた突出した部分を180度折り曲げて固定した部分の拡大図を示している。図1(C)下に示すように、二重構造物の接合部分の一部に設けられた突出した部分をコの字型の形状とすることにより、接合部分に引っ張り力がかかっても、接合面の移動や接合面の分離は生じない構造となっていることが分かる。
【0020】
このように、接合部分の一方の複数箇所に間隙(縦長の小穴)を設けて、もう一方の一部をこの間隙に挿入して(貫通させて)、突出した部分を180度折り曲げて固定することにより、接合部分に引っ張り(張力)に耐える強度を持たせることが可能になるという構造と機能を持たせることができる。
【0021】
図2(A)は、内部が密閉空間を有する二重構造物と、二重構造物の両端に二重構造物が大気圧によって変形するのを防止するための支柱(スペーサー)を挿入した例を示している。この図において、2つの支柱(スペーサー)に接している二重構造物の内側から内側までの最大幅と、2つの支柱(スペーサー)の最大幅(二重構造物の内側の両端に密着して設置された変形しない2つの支柱の外側から外側までの距離)は同じである。この状態で内部が密閉空間を有する二重構造物内の圧力が低下すると(真空状態になると)、二重構造物は変形し、本発明の「内部が真空の密閉空間を有する二重構造物と、その二重構造物が大気圧によって変形するのを防止するための支柱(スペーサー)から構成される真空断熱装置」という目的を達成することができない。
【0022】
このため、通常は二重構造物の両端に設置された二重構造物が大気圧によって変形するのを防止するための支柱(スペーサー)以外の支柱(スペーサー)を二重構造物の引っ張り強度に応じて増加させることになる。具体的には、二重構造物の材料(材質)として、圧力によって変形しやすい物質を用いた場合、その強度が弱いほど中間部分に挿入する支柱の数を増加させて大気圧が作用する面積を小さくすることにより、二重構造物に作用する力を軽減させて変形を防止することになる。
しかし、(1)支柱の役割を持たせる物質(スペーサー)が熱の流路となり、装置の伝熱性能が低下する。(2)支柱の役割を持たせる物質(スペーサー)に要するコストが増加する。
(3)支柱の役割を持たせる物質(スペーサー)により全体の重量が増加する。などの理由により、支柱の役割を持たせる物質(スペーサー)が装置全体に占める割合を小さくする必要がある。
【0023】
そこで、本発明においては、二重構造物に力や熱を加えることにより2つの支柱(スペーサー)に接している二重構造物の内側から内側までの最大幅を増加させた後に、これと同じ最大幅(二重構造物の内側の両端に密着して設置された変形しない2つの支柱の外側から外側までの距離)を持つ支柱(スペーサー)を挿入して、二重構造物を構成する物質が弾性変形領域において定常的に延びた(張力を持った)状態を保持している構造とすることにより、二重構造物の表面に大気圧力が作用しても変形しないという構造と機能を持たせることとした。具体的には、
(1)二重構造物の両端に挿入された支柱(スペーサー)に定常的に反対方向の力を加えて、二重構造物を構成する物質に定常的に張力を持たせることにより、密閉空間を有する内部が真空の二重構造物が大気圧によって変形しないという構造とする。
(2)二重構造物に熱を加えて通常使用される温度よりも延びた状態にした状態で、二重構造物の内部に支柱(スペーサー)を挿入することにより、二重構造物が定常的に使用される温度においては収縮して二重構造物を構成する物質に定常的に張力が発生し、密閉空間を有する内部が真空の二重構造物が大気圧によって変形しないという構造とする。
である。
【0024】
図2(B)に、二重構造物に力や熱を加えることにより2つの支柱(スペーサー)に接している二重構造物の内側から内側までの最大幅を増加させた後に、増加した最大幅(二重構造物の内側の両端に密着して設置された変形しない2つの支柱の外側から外側までの距離)を持つ支柱(スペーサー)を挿入することにより、二重構造物を構成する物質が弾性変形領域において定常的に延びた(張力を持った)状態を示す。
【0025】
一般に、物質に力を加えた場合、弾性変形領域においては応力と歪みは比例し、力を除いた場合は元の形状に復帰する。しかし弾性変形領域を超えた場合、応力と歪みが比例関係から外れるため塑性変形となる。また、予め対象となる物質に応力を作用させておくことにより、それ以内の応力が作用しても物質は変形しない。その具体例としてネジによる物質の固定が挙げられる。2つの物質をネジで固定し、さらに締め付ける(ネジの肌付き面から締め付け方向に回転させる)ことにより、ネジは回転したピッチに相当する分だけ延びた(弾性変形した)状態になり、ネジで固定された2つの物質に引っ張り力が働いても2つの物質の相対位置が変化することはない。これと同様に、二重構造を構成する物質に予め応力を加えて弾性変形領域内において大気圧力以上の引張り力(応力)を作用させておくことにより、二重構造物の表面に大気圧力が作用しても、二重構造物は変形しなくなる。
【0026】
しかし、二重構造物の表面積が大きくなるのに比例して、この表面積に作用する(大気圧力 x 表面積で示される)力が大きくなるため、二重構造物の変形を防止するためには、(1)二重構造物に作用する応力を大きくする。(2)二重構造物が大気圧によって変形するのを防止するための支柱(スペーサー)の数を増やして大気圧が作用する面積を減少させる。などの対応が必要になる。しかし「二重構造物に作用する応力を大きくする」ためには、弾性変形領域においてこれに耐える材料(材質)が必要になり、装置のコストと重量の増加を招く可能性がある。また、「二重構造物が大気圧によって変形するのを防止するための支柱(スペーサー)の数を増やして大気圧が作用する面積を減少させる」ためには、支柱(スペーサー)が熱の流路となることによる装置の伝熱性能低下や、装置のコストと重量の増加を招く可能性があるため、真空断熱装置の設置箇所や設置目的に最適の対応を行う必要がある。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明(真空断熱装置)を、容器や管の外周部に設置することにより、高温又は低温の状態にある容器や管内の物質と周囲との熱移動により、容器や管内にある物質の温度が変化することを防止することが可能となる。
【符号の説明】
【0028】
1.内部が真空の密閉空間を有する二重構造物
2.二重構造物の内側の両端に密着して設置された変形しない2つの支柱(スペーサー)
3.真空空間
4.二重構造物の内側の両端に密着して設置された変形しない2つの支柱(スペーサー)の相対位置を固定するための物質
5.二重構造物が大気圧によって変形するのを防止するための支柱(スペーサー)
6.二重構造物に張力が加わっていない状態における二重構造物の外側から外側までの最大幅
7.二重構造物に張力が加わっている状態における二重構造物の外側から外側までの最大幅





【要約】
【課題】高温又は低温の状態にある物質と周囲との熱移動により、高温又は低温の状態にある物質の温度が変化することを防止するための装置と装置の製造方法に関する。
【解決手段】内部が真空の密閉空間を有する二重構造物において、接合部分の一方の複数箇所に間隙(縦長の小穴)を設けるとともに、もう一方の一部に突出した部分を設けて、この突出した部分をもう一方の一部に設けられた間隙に挿入して(貫通させて)、貫通した部分を180度折り曲げて固定することにより、接合部分に引っ張り(張力)に耐える強度を持たせるとともに、二重構造物を構成する物質に弾性変形領域において定常的に延びた(張力を持った)状態を保持させ、大気圧力により変形しないという機能を持たせることを特徴とする、真空断熱装置と真空断熱装置の製造方法。
【選択図】図2
図1
図2