(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-31
(45)【発行日】2023-06-08
(54)【発明の名称】メガホンの製造方法
(51)【国際特許分類】
G10K 11/08 20060101AFI20230601BHJP
【FI】
G10K11/08
(21)【出願番号】P 2020095185
(22)【出願日】2020-06-01
【審査請求日】2022-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000108498
【氏名又は名称】タイガースポリマー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】笠原 民良
【審査官】菊地 陽一
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3155506(JP,U)
【文献】実開昭60-070894(JP,U)
【文献】実開平03-094600(JP,U)
【文献】実公昭29-004932(JP,Y1)
【文献】米国特許第08636102(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛沫捕捉体を有するメガホンの製造方法であって、
前記メガホンは、
メガホン本体を含むメガホンであって、
前記メガホン本体は、一端が小径で他端が大径に形成された筒状の拡声部を有し、
前記拡声部の内側には、拡声部の内側の空間を小径の側と大径の側とに間仕切りするように飛沫捕捉体が設けられており、
飛沫捕捉体の面積が、前記拡声部の小径側の開口面積よりも大きく、
前記拡声部には、リング状に外側に膨出する形状の保持部が形成されていて、
前記
飛沫捕捉体の周縁部が前記保持部に収容されている、
メガホンであり、
前記飛沫捕捉体は弾力性を有し変形可能であり、
前記飛沫捕捉体を、その弾力性を利用しながら変形させて、
前記飛沫捕捉体の周縁部を前記保持部に押し込んで、
前記飛沫捕捉体をメガホン本体に対し取り外し可能なように取り付ける、
メガホンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡声用に用いられるメガホンに関する。
【背景技術】
【0002】
一端が小径で多端が大径となるよう、テーパ筒状に形成されたメガホンは、集会や、災害発生時の指示、スポーツの応援や、スポーツ競技中の指示の伝達等に使用されている。メガホンにより、発声者の声を拡大し、より遠くまで音声を伝達できる。またマイクロフォンやスピーカを有しない、機械式のメガホンは、軽量で、構造も簡単であり、使い勝手が良い。
【0003】
メガホンとして、例えば、特許文献1には、少なくとも拡声筒をゴムやポリウレタン等のフォーム素材から形成したメガホンが開示されており、当該フォームメガホンによれば、振り回して自分や隣の人に当った際の痛感を低減できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
機械式のメガホンは、通常、一端から多端に向けて拡径するテーパ筒状に設けられるため、発声する使用者の唾液の飛沫等が、声とともに飛び出していきやすい。使用者が風邪やインフルエンザ等の飛沫感染を起こす病気にかかっていると、使用者がメガホンを使用することで感染が拡大してしまうおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、使用者の唾液等の飛沫の飛散を抑制可能なメガホンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者は、鋭意検討の結果、メガホンの拡声部を小径側と大径側とに間仕切りするように飛沫捕捉体を設け、さらに、飛沫捕捉体の面積が、拡声部の小径側の開口面積よりも大きくなるようにすると、上記課題が解決できることを知見し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明は、飛沫捕捉体を有するメガホンの製造方法であって、前記メガホンは、メガホン本体を含むメガホンであって、前記メガホン本体は、一端が小径で他端が大径に形成された筒状の拡声部を有し、前記拡声部の内側には、拡声部の内側の空間を小径の側と大径の側とに間仕切りするように飛沫捕捉体が設けられており、飛沫捕捉体の面積が、前記拡声部の小径側の開口面積よりも大きく、前記拡声部には、リング状に外側に膨出する形状の保持部が形成されていて、前記飛沫捕捉体の周縁部が前記保持部に収容されている、メガホンであり、前記飛沫捕捉体は弾力性を有し変形可能であり、前記飛沫捕捉体を、その弾力性を利用しながら変形させて、前記飛沫捕捉体の周縁部を前記保持部に押し込んで、前記飛沫捕捉体をメガホン本体に対し取り外し可能なように取り付ける、メガホンの製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明により製造されたメガホンによれば、使用者の唾液等の飛沫の飛散を抑制できる。また、本発明のメガホンの製造方法によれば、飛沫捕捉体が取り外し可能で、飛沫捕捉体を洗浄しやすくなって、衛生上好ましいメガホンを製造し、繰り返し利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態のメガホンの構造を示す断面図である。
【
図2】第2実施形態のメガホンの構造を示す断面図である。
【
図3】第3実施形態のメガホンの構造を示す断面図である。
【
図4】第4実施形態のメガホンの構造を示す断面図である。
【
図5】第5実施形態のメガホンの構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下図面を参照しながら、野球の応援等に使用されるメガホンを例として、発明の実施形態について説明する。発明は以下に示す個別の実施形態に限定されるものではなく、その形態を変更して実施することもできる。また、メガホンの具体的用途も限定されない。
【0013】
図1には第1実施形態のメガホン1の構造を断面図で示す。メガホン1は、合成樹脂等により形成されたメガホン本体10を含む。メガホン本体を構成する材料は、合成樹脂、特に熱可塑性樹脂や、紙、金属等であってもよい。メガホン1にはメガホン本体10のほかに、ひもや装飾部材等が取り付けられていてもよい。
【0014】
メガホン本体10は、拡声部11を有する。拡声部11は、一端11aが小径で、他端11bが大径に形成された筒状である。拡声部11は円錐状であってもよいし、角錐状であってもよい。拡声部11により、メガホンの拡声効果が生じる。すなわち、小径の側で発声された音声は、拡声部11を通過し、大径の側から大きな音となって放出される。必須ではないが、メガホン本体10には、本実施形態のように、口元部12が設けられていてもよい。典型的には、口元部12は、使用者の側から拡声部11の一端11aに向けて縮径するような形状に設けられる。口元部12の形状は特に限定されない。口元部12はなくてもよい。
【0015】
拡声部11の内側には、拡声部11の内側の空間を、小径の側(一端11aの側)と大径の側(他端11bの側)とに間仕切りするように飛沫捕捉体13が設けられている。発声時に使用者の口から飛沫が生じても、飛沫は飛沫捕捉体13に捕捉され、拡声部11の大径の側(他端11bの側)に飛沫が達することが抑制される。
【0016】
飛沫捕捉体13は、例えば、通気性を有する、シート状もしくは板状の素材で構成することができる。例えば、多孔質体、特に連続気泡構造を有する樹脂発泡体(例えばウレタンフォームに代表されるフォーム材)によって、飛沫捕捉体13を構成できる。また、例えば、繊維集合体、すなわち、織布や不織布や綿によって、飛沫捕捉体13を構成できる。また、例えば、樹脂や金属で構成されたメッシュ素材を複数枚積層したものを飛沫捕捉体13としてもよい。
飛沫捕捉体13には、いわゆる抗菌性処理を施すことが好ましい。
【0017】
樹脂発泡体を構成する樹脂材料や、繊維集合体を構成する繊維材料や、メッシュを構成する材料は特に限定されない。飛沫捕捉体13が、洗浄、殺菌処理が可能なように材料の選択を行うことが好ましい。本実施形態では、連続気泡構造を有するウレタンフォーム材によって、飛沫捕捉体13を構成している。
【0018】
なお、飛沫捕捉体13は、通気性を有する素材に限定されず、薄い樹脂フィルムや紙等、音声を透過可能な素材であれば、飛沫捕捉体13として使用できる。
【0019】
飛沫捕捉体13の面積は、拡声部11の小径側11aの開口面積よりも大きい。ここで、飛沫捕捉体13の面積とは、飛沫捕捉体のうち、拡声部11の小径側11aの内部空間に露出している部分の面積のことである。また、拡声部11の小径側11aの開口面積とは、拡声部11をテーパ状の筒ととらえた際の小径側の開口の面積のことであり、本実施形態では、拡声部11と口元部12が接続され、くびれた形状になっている部分の開口面積のことである。
【0020】
必須ではないが、飛沫捕捉体13の面積をS1とし、拡声部11の小径側11aの開口面積をS2として、S1がS2の2倍以上(S1≧2*S2)であることが好ましく、S1がS2の3倍以上(S1≧3*S2)であることがより好ましく、S1がS2の5倍以上(S1≧5*S2)であることが特に好ましい。飛沫捕捉体13の面積S1が、拡声部11の小径側11aの開口面積S2よりも大きくなるよう、典型的には、飛沫捕捉体13は、拡声部11の小径側11aから、大径側11bに所定距離離間して設けられる。
【0021】
また、必須ではないが、飛沫捕捉体13がメガホン本体10に対し取り外し可能に設けられていることが好ましい。本実施形態では、メガホン本体10の一部が、リング状に外側に膨出する形状に形成されて保持部11cとされており、その部分11cに飛沫捕捉体13の周縁部が収容されて、飛沫捕捉体13が取り付けられている。本実施形態のメガホン1では、ウレタンフォーム材製の飛沫捕捉体13の弾力性を利用して、飛沫捕捉体13をメガホン本体10に対し取りつけたり取り外したりできる。
【0022】
第1実施形態のメガホンは公知の技術を応用して製造することができる、メガホン本体10は、例えば、ポリエチレン樹脂のブロー成型により製造することができる。ウレタンフォームから所定の形状に切り出した飛沫捕捉体13を、弾力性を利用しながら変形させ、保持部11cに押し込んで取り付けるようにすれば、第1実施形態のメガホン1が得られる。
【0023】
上記実施形態のメガホン1の作用および効果について説明する。
メガホン1によれば、拡声部11の内側に、拡声部11の内側の空間を小径の側と大径の側とに間仕切りするように飛沫捕捉体13が設けられているので、使用者の唾液等の飛沫が大径の側に達することを防止でき、飛沫の飛散を抑制できる。
【0024】
また、上記実施形態のメガホン1では、飛沫捕捉体13の面積が、拡声部11の小径側11aの開口面積よりも大きくされているので、メガホンの拡声効果をあまり損なわずに、飛沫の飛散を抑制できる。すなわち、飛沫捕捉体13の面積が小さいと、飛沫捕捉体13の部分での音響的な抵抗が大きくなってしまい、拡声部11の拡声効果が損なわれやすいが、飛沫捕捉体13の面積を拡声部11の小径側11aの開口面積よりも大きくしてやれば、音響的な抵抗の増加を抑えることができ、メガホンの拡声効果をあまり損なわずに、飛沫の飛散を抑制できる。
【0025】
また、上記実施形態のメガホン1のように、飛沫捕捉体13がメガホン本体10に対し取り外し可能に設けられている場合には、飛沫捕捉体13を取り外して洗浄したり殺菌処理したりすることができるので、衛生的に、繰り返し利用しやすくなる。
【0026】
発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変をして実施することができる。以下に発明の他の実施形態について説明するが、以下の説明においては、上記実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様である部分についてはその詳細な説明を省略する。また、これら実施形態は、その一部を互いに組み合わせて、あるいは、その一部を置き換えて実施できる。
【0027】
図2には、第2実施形態のメガホン2を示す。本実施形態では、メガホン本体が、大径側部材21と小径側部材22に分割可能となるように組み立てられている。大径側部材21と小径側部材22の組み立ては、はめあわせやねじや係止爪などによることが好ましい。また、本実施形態のメガホン2では、大径側部材21と小径側部材22とが分割される位置に、飛沫捕捉体13が設けられている。必須ではないが、大径側部材21と小径側部材22のそれぞれにフランジが形成されていて、飛沫捕捉体13は、それらフランジに挟持されるように取り付けられる。
【0028】
第2実施形態のメガホン2においても、飛沫捕捉体13により飛沫の飛散を抑制できる。また、大径側部材21と小径側部材22とに分解することにより、飛沫捕捉体13を取り外すことができ、飛沫捕捉体13を取り外して洗浄したり殺菌処理したりすることができるので、衛生的に、繰り返し利用しやすくなる。
【0029】
また、第2実施形態のメガホン2のように、メガホン本体が、前記飛沫捕捉体が設けられた位置で分割可能となるように組み立てられていると、メガホンを分割して持ち運ぶことができ、持ち運びしやすくなる。特に、本実施形態のように、飛沫捕捉体13が拡声部の略中央部に設けられていると、分割した大径側部材21と小径側部材22を共に短くできて、特に持ち運びしやすくなる。持ち運び性を特に高める観点からは、分割した際に、大径側部材21の内部空間に、小径側部材22の一部、好ましくは全体を収容できるように、大径側部材21と小径側部材22を形成することが好ましい。
【0030】
図3には、第3実施形態のメガホン3を示す。本実施形態では、メガホン本体が、大径側部材31と小径側部材32に分割可能となるように組み立てられている。大径側部材31と小径側部材32が接続される部位に、飛沫捕捉体33が設けられている。また、本実施形態では、飛沫捕捉体33がポリプロピレン繊維製の不織布で構成されていて、飛沫捕捉体33の周縁部が小径側部材32に溶着されている。
【0031】
第3実施形態のメガホン3であっても、飛沫の飛散を抑制でき、分解したメガホンの飛沫捕捉体33の洗浄や殺菌がしやすい。また、飛沫捕捉体33が小径側部材32に固定(溶着)されているので、飛沫捕捉体33を紛失することがない。
【0032】
図4には、第4実施形態のメガホン4を示す。第4実施形態のメガホン4では、大径側部材41と小径側部材42が接合され一体化されて、メガホン本体が構成されている。本実施形態では、大径側部材41と小径側部材42が溶着一体化されている。そして、飛沫捕捉体43の周縁部が、大径側部材41と小径側部材42が互いに溶着される部分に挟み込まれるように一体化されている。このような構造であっても、飛沫の飛散を抑制できる。
【0033】
また、第4実施形態のメガホン4では、平板状の飛沫捕捉体43が、メガホン本体の中心線mに対して傾いている。かかる構成により、飛沫捕捉体43の面積を大きくとることができ、メガホンの拡声効果をより損なわずに、飛沫の飛散を抑制できる。
【0034】
図5には、第5実施形態のメガホン5を示す。第5実施形態のメガホン5では、メガホン本体50には、飛沫捕捉体13を収容可能なようにリング状に外側に膨出する形状に形成された保持部53が設けられており、保持部53よりも大径端の側の大径部51と、保持部53よりも小径端の側の小径部52とともに、拡声部となっている。本実施形態のメガホン5では、大径部51がじゃばら状に形成されていて、大径部51を拡声部の軸方向に圧縮変形させることができる。また、本実施形態では、小径部52もじゃばら状に形成されている。
【0035】
本実施形態のように、飛沫捕捉体13よりも大径の側でメガホン本体が折りたたみ可能なじゃばら状に形成されていると、大径部51を折りたたんだ状態で飛沫捕捉体13の取り外しや取り付けを行うことができ、便利である。また、大径部51がじゃばら状に形成されていると、運搬時に小型化することができて、運搬しやすくなる。大径部51と小径部52がともにじゃばら状に形成されていると、特に運搬しやすくなる。
【0036】
上記実施形態のメガホンは、集会や、室内/室外における呼びかけ、災害発生時の指示、スポーツの応援や、スポーツ競技中の指示の伝達等に使用できる。また、メガホンの用途はこれらに限定されず、発声を拡大して伝達する用途全般に応用できる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
上記メガホンは使用でき、発話者の発声を拡大して伝達できて産業上の利用価値が高い。
【符号の説明】
【0038】
1 メガホン
10 メガホン本体
11 拡声部
11a 小径側端部
11b 大径側端部
11c 保持部
12 口元部
13 飛沫捕捉体