(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-31
(45)【発行日】2023-06-08
(54)【発明の名称】ヘッドチップ、液体噴射ヘッドおよび液体噴射記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20230601BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
B41J2/14 611
B41J2/14 303
B41J2/18
B41J2/14 501
(21)【出願番号】P 2018211471
(22)【出願日】2018-11-09
【審査請求日】2021-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】501167725
【氏名又は名称】エスアイアイ・プリンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀口 悟史
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-65143(JP,A)
【文献】特開2017-109457(JP,A)
【文献】特開2015-171802(JP,A)
【文献】米国特許第8091987(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体に圧力を印加するアクチュエータプレートおよび配線基板を備え、前記液体を噴射する液体噴射ヘッドであって、
前記アクチュエータプレートは、
第1面、および前記第1面と反対側を向く第2面と、
前記第1面および前記第2面の少なくとも一方に開口を有し、互いに分離して交互に配置された吐出チャネルおよび非吐出チャネルと、
前記吐出チャネルの側壁に設けられた共通電極と、
前記共通電極と電気的に分離され、前記非吐出チャネルの側壁に設けられた個別電極と、
前記第1面に設けられ、前記共通電極と前記配線基板とを電気的に接続する共通電極パッドと、
隣り合う前記非吐出チャネルの前記個別電極を電気的に接続するとともに、前記第1面に設けられた個別電極パッドと、
隣り合う前記非吐出チャネルの前記個別電極を電気的に接続するとともに、前記第1面
側から見て視認できないバイパス配線と
を含
み、
前記バイパス配線は、前記個別電極パッドと分離して設けられている
液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記バイパス配線は、前記第2面に設けられている
請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記第2面には、前記吐出チャネルおよび前記非吐出チャネルの並び方向に延在するバイパス溝が設けられ、
前記バイパス配線は前記バイパス溝内に設けられている
請求項1または請求項2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
更に、前記アクチュエータプレートに対向する封止板と、
前記吐出チャネルに連通する液体流通孔を有し、前記アクチュエータプレートを間にして前記封止板に対向して設けられたカバープレートとを有し、
前記吐出チャネルおよび前記非吐出チャネルは、前記第1面および前記第2面の両方に前記開口を有し、
前記封止板が前記吐出チャネルおよび前記非吐出チャネルの前記第1面の前記開口を塞いでいる
請求項1ないし請求項
3のうちいずれか1項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項5】
更に、前記アクチュエータプレートに交差する方向に配置され、前記吐出チャネルと連通する循環路を有する帰還プレートと、
前記アクチュエータプレートとしての第1のアクチュエータプレートおよび第2のアクチュエータプレートと、
前記カバープレートとしての第1のカバープレートおよび第2のカバープレートと、
前記封止板としての第1の封止板および第2の封止板と、
前記第1の封止板と前記第2の封止板との間に設けられた流路プレートとを備え、
前記第1のアクチュエータプレートは前記第1の封止板と前記流路プレートとの間に設けられ、
前記第2のアクチュエータプレートは前記第2の封止板と前記流路プレートとの間に設けられ、
前記第1のカバープレートは前記第1のアクチュエータプレートと前記流路プレートと
の間に設けられ、
前記第2のカバープレートは前記第2のアクチュエータプレートと前記流路プレートとの間に設けられ、
前記流路プレートは、前記第1のカバープレートの前記液体流通孔および前記第2のカバープレートの前記液体流通孔と連通する液体供給流路と、前記循環路と連通する液体排出流路とを有する
請求項
4に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項6】
請求項1ないし請求項
5のうちいずれか1項に記載の液体噴射ヘッドと、
前記液体を収容する収容部と
を備えた液体噴射記録装置。
【請求項7】
液体に圧力を印加するアクチュエータプレートを備え、前記液体を噴射するヘッドチップであって、
前記アクチュエータプレートは、
第1面、および前記第1面と反対側を向く第2面と、
前記第1面および前記第2面の少なくとも一方に開口を有し、互いに分離して交互に配置された吐出チャネルおよび非吐出チャネルと、
前記吐出チャネルの側壁に設けられた共通電極と、
前記共通電極と電気的に分離され、前記非吐出チャネルの側壁に設けられた個別電極と、
前記第1面に設けられ、前記共通電極と外部配線とを電気的に接続する共通電極パッドと、
隣り合う前記非吐出チャネルの前記個別電極を電気的に接続するとともに、前記第1面に設けられた個別電極パッドと、
隣り合う前記非吐出チャネルの前記個別電極を電気的に接続するとともに、前記第1面
側から見て視認できないバイパス配線と
を含
み、
前記バイパス配線は、前記個別電極パッドと分離して設けられている
ヘッドチップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヘッドチップ、液体噴射ヘッドおよび液体噴射記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射記録装置の1つとして、記録紙等の被記録媒体にインク(液体)を吐出(噴射)して画像や文字等の記録を行う、インクジェット方式の記録装置が提供されている(例えば、特許文献1参照)。この方式の液体噴射記録装置では、インクタンクからインクジェットヘッド(液体噴射ヘッド)へインクを供給し、このインクジェットヘッドのノズル孔から被記録媒体に対してインクを吐出することで、画像や文字等の記録が行われるようになっている。また、このようなインクジェットヘッドには、インクを吐出するヘッドチップが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなヘッドチップ等では、例えば、電位の異なる電極間での短絡の発生等を抑え、信頼性を向上させることが望まれている。よって、信頼性を向上させることが可能なヘッドチップ、液体噴射ヘッドおよび液体噴射記録装置を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施の形態に係るヘッドチップは、液体に圧力を印加するアクチュエータプレートを備え、液体を噴射するヘッドチップであって、アクチュエータプレートは、第1面、および第1面と反対側を向く第2面と、第1面および第2面の少なくとも一方に開口を有し、互いに分離して交互に配置された吐出チャネルおよび非吐出チャネルと、吐出チャネルの側壁に設けられた共通電極と、共通電極と電気的に分離され、非吐出チャネルの側壁に設けられた個別電極と、第1面に設けられ、共通電極と外部配線とを電気的に接続する共通電極パッドと、隣り合う非吐出チャネルの個別電極を電気的に接続するとともに、第1面に設けられた個別電極パッドと、隣り合う非吐出チャネルの個別電極を電気的に接続するとともに、第1面側から見て視認できないバイパス配線とを含むものである。また、このバイパス配線は、個別電極パッドと分離して設けられている。
【0006】
本開示の一実施の形態に係る液体噴射ヘッドは、液体に圧力を印加するアクチュエータプレートおよび配線基板を備え、液体を噴射する液体噴射ヘッドであって、アクチュエータプレートは、第1面、および第1面と反対側を向く第2面と、第1面および第2面の少なくとも一方に開口を有し、互いに分離して交互に配置された吐出チャネルおよび非吐出チャネルと、吐出チャネルの側壁に設けられた共通電極と、共通電極と電気的に分離され、非吐出チャネルの側壁に設けられた個別電極と、第1面に設けられ、共通電極と配線基板とを電気的に接続する共通電極パッドと、隣り合う非吐出チャネルの個別電極を電気的に接続するとともに、第1面に設けられた個別電極パッドと、隣り合う非吐出チャネルの個別電極を電気的に接続するとともに、第1面側から見て視認できないバイパス配線とを含むものである。また、このバイパス配線は、個別電極パッドと分離して設けられている。
【0007】
本開示の一実施の形態に係る液体噴射記録装置は、上記本開示の一実施の形態に係る液体噴射ヘッドと、液体を収容する収容部とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一実施の形態に係るヘッドチップ、液体噴射ヘッドおよび液体噴射記録装置によれば、信頼性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一実施の形態に係る液体噴射記録装置の概略構成例を表す模式斜視図である。
【
図2】
図1に示した液体噴射ヘッドおよびインク循環機構の概略構成例を表す模式図である。
【
図3】
図1に示した液体噴射ヘッドの分解斜視図である。
【
図4】
図1に示した液体噴射ヘッドの断面図である。
【
図5】
図1に示した液体噴射ヘッドの他の断面図である。
【
図6】
図1に示した液体噴射ヘッドにおける、吐出チャネルの延在方向と直交する断面を拡大して表す断面図である。
【
図7】
図3に示した液体噴射ヘッドチップの一部を拡大して表す部分破断斜視図である。
【
図8】
図3に示したカバープレートを拡大して表す斜視図である。
【
図9A】
図1に示した液体噴射ヘッドの製造方法の一工程を表す断面図である。
【
図10】
図1に示した液体噴射ヘッドの製造方法のうちのカバープレートを形成する一工程を表す平面図である。
【
図12】
図1に示した液体噴射ヘッドの製造方法のうちの流路プレート作製工程を表す平面図である。
【
図13】変形例1に係る液体噴射ヘッドの断面図である。
【
図14】変形例2に係る液体噴射ヘッドの断面図である。
【
図15】変形例3に係る液体噴射ヘッドの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(一対のヘッドチップの間に流路プレートが配置されると共にインク循環を行う、エッジシュート型のインクジェットヘッドの例。)
2.変形例
変形例1(一対のヘッドチップの間に流路プレートが配置されると共にインク循環を伴わない、エッジシュート型のインクジェットヘッドの例。)
変形例2(流路プレートの片側にヘッドチップを配置するようにした、インク循環を行う、エッジシュート型のインクジェットヘッドの例。)
変形例3(一対のヘッドチップの外側からインクが供給される、エッジシュート型のインクジェットヘッドの例。)
3.その他の変形例
【0011】
<1.実施の形態>
[プリンタ1の全体構成]
図1は、本開示の一実施の形態に係る液体噴射記録装置としてのプリンタ1の概略構成例を、模式的に斜視図にて表したものである。このプリンタ1は、インクを利用して、被記録媒体としての記録紙Pに対して、画像や文字等の記録(印刷)を行うインクジェットプリンタである。
【0012】
プリンタ1は、
図1に示したように、一対の搬送機構2a,2bと、インクタンク3と、インクジェットヘッド4と、供給チューブ50と、走査機構6と、インク循環機構8とを備えている。これらの各部材は、所定形状を有する筺体10内に収容されている。なお、本明細書の説明に用いられる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0013】
ここで、プリンタ1は、本開示における「液体噴射記録装置」の一具体例に対応し、インクジェットヘッド4(後述するインクジェットヘッド4Y,4M,4C,4K)は、本開示における「液体噴射ヘッド」の一具体例に対応している。
【0014】
搬送機構2a,2bはそれぞれ、
図1に示したように、記録紙Pを搬送方向d(X軸方向)に沿って搬送する機構である。これらの搬送機構2a,2bはそれぞれ、グリッドローラ21、ピンチローラ22および駆動機構(不図示)を有している。グリッドローラ21およびピンチローラ22はそれぞれ、Y軸方向(記録紙Pの幅方向)に沿って延設されている。駆動機構は、グリッドローラ21を軸周りに回転させる(Z-X面内で回転させる)機構であり、例えばモータ等によって構成されている。
【0015】
(インクタンク3)
インクタンク3は、インクを内部に収容するタンクである。このインクタンク3としては、この例では
図1に示したように、イエロー(Y),マゼンダ(M),シアン(C),ブラック(K)の4色のインクを個別に収容する、4種類のタンクが設けられている。すなわち、イエローのインクを収容するインクタンク3Yと、マゼンダのインクを収容するインクタンク3Mと、シアンのインクを収容するインクタンク3Cと、ブラックのインクを収容するインクタンク3Kとが設けられている。これらのインクタンク3Y,3M,3C,3Kは、筺体10内において、X軸方向に沿って並んで配置されている。
【0016】
なお、インクタンク3Y,3M,3C,3Kはそれぞれ、収容するインクの色以外については同一の構成であるので、以下ではインクタンク3と総称して説明する。ここで、インクタンク3は、本開示における「収容部」の一具体例に対応している。
【0017】
(インクジェットヘッド4)
インクジェットヘッド4は、後述する複数のノズル78から記録紙Pに対して液滴状のインクを噴射(吐出)して、画像や文字等の記録を行うヘッドである。このインクジェットヘッド4としても、この例では
図1に示したように、上記したインクタンク3Y,3M,3C,3Kにそれぞれ収容されている4色のインクを個別に噴射する、4種類のヘッドが設けられている。すなわち、イエローのインクを噴射するインクジェットヘッド4Yと、マゼンダのインクを噴射するインクジェットヘッド4Mと、シアンのインクを噴射するインクジェットヘッド4Cと、ブラックのインクを噴射するインクジェットヘッド4Kとが設けられている。これらのインクジェットヘッド4Y,4M,4C,4Kは、筺体10内において、Y軸方向に沿って並んで配置されている。
【0018】
なお、インクジェットヘッド4Y,4M,4C,4Kはそれぞれ、利用するインクの色以外については同一の構成であるので、以下ではインクジェットヘッド4と総称して説明する。また、このインクジェットヘッド4の詳細構成については、後述する(
図2など参照)。
【0019】
供給チューブ50は、インクタンク3内からインクジェットヘッド4内へとインクを供給するためのチューブである。
【0020】
(走査機構6)
走査機構6は、記録紙Pの幅方向(Y軸方向)に沿って、インクジェットヘッド4を走査させる機構である。この走査機構6は、
図1に示したように、Y軸方向に沿って延設された一対のガイドレール31,32と、これらのガイドレール31,32に移動可能に支持されたキャリッジ33と、このキャリッジ33をY軸方向に沿って移動させる駆動機構34と、を有している。また、駆動機構34は、ガイドレール31,32の間に配置された一対のプーリ35,36と、これらのプーリ35,36間に巻回された無端ベルト37と、プーリ35を回転駆動させる駆動モータ38と、を有している。
【0021】
プーリ35,36はそれぞれ、Y軸方向に沿って、各ガイドレール31,32における両端付近に対応する領域に配置されている。無端ベルト37には、キャリッジ33が連結されている。このキャリッジ33は、前述した4種類のインクジェットヘッド4Y,4M,4C,4Kを載置する平板状の基台33aと、この基台33aから垂直(Z軸方向)に立ち上げられた壁部33bとを有している。基台33a上には、インクジェットヘッド4Y,4M,4C,4Kが、Y軸方向に沿って並んで載置されている。
【0022】
なお、このような走査機構6と前述した搬送機構2a,2bとにより、インクジェットヘッド4と記録紙Pとを相対的に移動させる、移動機構が構成されるようになっている。
【0023】
(インク循環機構8)
図2は、インク循環機構8の概略構成例を表した模式図である。インク循環機構8は、インクタンク3とインクジェットヘッド4との間でインクを循環させる機構であり、インク供給管81およびインク排出管82により構成される循環流路83と、インク供給管81に設けられた加圧ポンプ84と、インク排出管82に設けられた吸引ポンプ85とを備える。インク供給管81およびインク排出管82は、例えば、インクジェットヘッド4を支持する走査機構6の動作に追従可能な程度に可撓性を有するフレキシブルホースにより構成されている。
【0024】
加圧ポンプ84は、インク供給管81内を加圧し、インク供給管81を通してインクジェットヘッド4にインクを送り出すものである。加圧ポンプ84の機能により、インクジェットヘッド4に対し、加圧ポンプ84とインクジェットヘッド4との間のインク供給管81内は正圧となっている。
【0025】
吸引ポンプ85は、インク排出管82内を減圧し、インク排出管82を通してインクジェットヘッド4からインクを吸引するものである。吸引ポンプ85の機能により、インクジェットヘッド4に対して、吸引ポンプ85とインクジェットヘッド4との間のインク排出管82内は負圧となっている。インクは、加圧ポンプ84および吸引ポンプ85の駆動により、インクジェットヘッド4とインクタンク3との間を、循環流路83を通して循環可能となっている。なお、インク循環機構8は上述の構成に限定されず、他の構成を有していてもよい。
【0026】
[インクジェットヘッド4の詳細構成]
次に、
図1に加えて
図3~
図8を参照して、インクジェットヘッド4の詳細構成例について説明する。
図3は、インクジェットヘッド4の詳細構成例を、斜視図で表したものである。
図4は、インクジェットヘッド4における、ヘッドチップ40Aの吐出チャネル54(後出)とヘッドチップ40Bのダミーチャネル55(後出)とを含むY-Z断面の構成例を表す断面図である。
図5は、インクジェットヘッド4における、ヘッドチップ40Aのダミーチャネル55(後出)とヘッドチップ40Bの吐出チャネル54(後出)とを含むY-Z断面の構成例を表す断面図である。
図6は、インクジェットヘッド4における、吐出チャネル54およびダミーチャネル55の延在方向(Z軸方向)と直交する断面(X-Y断面)を拡大して表す断面図である。
図7は、ヘッドチップ40の一部を拡大して表す部分破断斜視図である。
【0027】
図3~
図5に示したように、インクジェットヘッド4は、一対のヘッドチップ40A,40Bと、流路プレート41と、入口マニホールド42と、出口マニホールド(不図示)と、帰還プレート43と、ノズルプレート(噴射プレート)44と、配線基板45とを備える。インクジェットヘッド4は、吐出チャネル54の延在方向(Z軸方向)の先端部からインクを吐出する、いわゆるエッジシュートタイプのうち、インクジェットヘッド4とインクタンク3との間でインクを循環させる循環式(エッジシュート循環式)のものである。
【0028】
(ヘッドチップ40A,40B)
一対のヘッドチップ40A,40Bは互いに実質的に同一の構成を有しており、Y軸方向において流路プレート41を挟んで実質的に対称の姿勢をなすように実質的に対称の位置に設けられている。以下では、特に区別が必要のない場合は、一対のヘッドチップ40A,40Bをヘッドチップ40と総称して説明する。なお、ヘッドチップ40は本開示における「ヘッドチップ」の一具体例に対する。ヘッドチップ40は、流路プレート41に近い位置から順にカバープレート52と、アクチュエータプレート51と、封止プレート53とを備える。なお、封止プレート53は本開示における「封止板」の一具体例に対する。
【0029】
(アクチュエータプレート51)
アクチュエータプレート51は、X軸方向を長手方向とすると共にZ軸方向を短手方向とする、X-Z面に沿って広がる板状部材であり、カバープレート52と対向する表面51f1と、封止プレート53と対向する裏面51f2とを有する。表面51f1および裏面51f2は、互いに反対側を向いている。なお、「表面51f1」は本開示の「第2面」に対応する一具体例であり、「裏面51f2」は本開示の「第1面」に対応する一具体例である。
図7に示したように、裏面51f2は、端部領域R1とチャネル形成領域R2とを含んでいる。端部領域R1は封止プレート53と重なることなく外部に露出する部分であり、チャネル形成領域R2は吐出チャネル54およびダミーチャネル55が形成されると共に封止プレート53と重なり合う部分である。アクチュエータプレート51は、表面51f1と裏面51f2とを繋ぐ厚さ方向(Y軸方向)において互いに異なる分極方向を有する2枚の圧電基板51aおよび圧電基板51bを積層した、いわゆるシェブロンタイプの積層基板である(
図6参照)。それらの圧電基板51a,51bは、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電材料からなるセラミックス基板が好適に用いられる。
【0030】
アクチュエータプレート51は、厚さ方向(Y軸方向)に貫通する複数の吐出チャネル54および複数のダミーチャネル55を有している。換言すれば、複数の吐出チャネル54および複数のダミーチャネル55は、表面51f1および裏面51f2に開口を有している。この複数の吐出チャネル54および複数のダミーチャネル55は、それぞれZ軸方向へ直線状に延在している。吐出チャネル54とダミーチャネル55とは、X軸方向において互いに離間して交互に配置されている。吐出チャネル54とダミーチャネル55とは、駆動壁56によって仕切られている。このため、アクチュエータプレート51は、Z軸方向と直交する断面(X-Y断面)において、スリット状のチャネルが複数並ぶ構造となっている(
図6参照)。なお、「吐出チャネル54」および「ダミーチャネル55」は、それぞれ、本開示の「吐出チャネル」および「非吐出チャネル」に対応する一具体例であり、「駆動壁56」は、本開示の「側壁」に対応する一具体例である。
【0031】
吐出チャネル54は、インクに対して圧力を印加するための圧力室として機能する部分であり、X軸方向において対向する一対の内面541(駆動壁56)を有している。一対の内面541は、それぞれ、例えばY-Z平面に平行な平面である。吐出チャネル54の下端部は、
図7に示したようにアクチュエータプレート51の下端面511(帰還プレート43と対向する面)に至るまで延在し、帰還プレート43と対向する開口54Kを形成している。開口54Kは、インクが吐出される吐出端である。これに対し、吐出チャネル54の上端部はアクチュエータプレート51の上端面(帰還プレート43と反対側の面)512に至らずにアクチュエータプレート51内で終端している。すなわち、吐出チャネル54の上端部近傍は、下端面511と上端面512との間に位置すると共に傾斜面54bを含む閉塞端となっており、上端面512に向かうに従って深さ(Y軸方向の寸法)が徐々に減少するように形成されている。このため、傾斜面54bと裏面51f2との交差位置から吐出端である下端面511までの第1の距離L1は、傾斜面54bと表面51f1との交差位置から下端面511までの第2の距離L2よりも短い(
図4参照)。
【0032】
吐出チャネル54の内面541は、共通電極61により、表面51f1から裏面51f2に至るまで連続的に覆われている部分を含んでいる。なお、吐出チャネル54の内面541のうちの一部のみを共通電極61が覆っていてもよい。但し、その場合であっても、共通電極61は、Y軸方向において表面51f1から裏面51f2に至るまで連続的に覆っているとよい。共通電極61は、共通電極パッド62と接続されている。共通電極パッド62は、裏面51f2のうち吐出チャネル54の上端部の周辺部分の一部を覆うように形成されている。共通電極パッド62は、裏面51f2のうち、吐出チャネル54の周辺部分から端部領域R1に至るまで延在している(
図7)。この共通電極パッド62には、配線基板45が接続されている。即ち、配線基板45から、共通電極パッド62を介して共通電極61に駆動電圧が印加されるようになっている。なお、共通電極61は本開示の「共通電極」に対応する一具体例であり、共通電極パッド62は本開示の「共通電極パッド」に対応する一具体例である。
【0033】
吐出チャネル54には、インクが充填されるのに対し、ダミーチャネル55にはインクが充填されないようになっている。
図3に示したように、このダミーチャネル55の上端部は、上端面512で開口しており、ダミーチャネル55の下端部は、下端面511で開口している。
【0034】
図6に示したように、ダミーチャネル55はX軸方向において対向する一対の内面551(駆動壁56)を有している。一対の内面551は、それぞれ、例えばY-Z平面に平行な平面である。一対の内面551は、個別電極63により、表面51f1から裏面51f2に至るまで連続的に覆われている部分を含んでいる。但し、個別電極63は、ダミーチャネル55の内面551の一部のみを覆うものであってもよい。また、ダミーチャネル55における1対の駆動壁56を覆う1対の個別電極63同士は互いに絶縁されている。個別電極63は、裏面51f2の端部領域R1の一部を覆う個別電極パッド64と接続されている。なお、本実施の形態では、個別電極パッド64は、周辺部分のうち共通電極パッド62よりも上方に位置する部分をX軸方向に延在するように設けられている(
図7)。個別電極パッド64は、吐出チャネル54を間に挟んで隣り合う一対の個別電極63同士を接続している。ここで、個別電極63および個別電極パッド64は、共通電極61および共通電極パッド62と電気的に絶縁されている。この個別電極パッド64には、配線基板45が接続されている。即ち、配線基板45から、個別電極パッド64を介して一対の個別電極63に駆動電圧が印加されるようになっている。なお、個別電極63は本開示の「個別電極」に対応する一具体例であり、個別電極パッド64は本開示の「個別電極パッド」に対応する一具体例である。
【0035】
本実施の形態では、吐出チャネル54を間に挟んで隣り合う一対の個別電極63同士を接続するため、個別電極パッド64に加えて、アクチュエータプレート51にバイパス電極64Bが設けられている。このバイパス電極64Bは、個別電極パッド64と分離して設けられている。即ち、バイパス電極64Bは、個別電極パッド64と異なる位置に配置されている。詳細は後述するが、これにより、仮に、個別電極パッド64が断線した場合にも、一対の個別電極63同士が電気的に接続される。
【0036】
バイパス電極64Bは、例えば、表面51f1に設けられたバイパス溝G内に設けられている。バイパス電極64Bは、共通電極パッド62が設けられた裏面51f2に露出されない位置に設けられていればよい。例えば、バイパス溝Gを設けずに、表面51f1上にバイパス電極64Bを設けるようにしてもよい。あるいは、裏面51f2と表面51f1との間にX軸方向に延在する、トンネル状の穴を設け、この穴にバイパス電極64Bを設けるようにしてもよい。詳細は後述するが、このように裏面51f2に露出されない位置にバイパス電極64Bを設けることにより、共通電極パッド62に接続された配線基板45とバイパス電極64Bとの間の短絡の発生が抑えられる。
【0037】
バイパス電極64Bが配置されたバイパス溝Gは、表面51f1の端部領域R1に設けられ、吐出チャネル54およびダミーチャネル55の並び方向(例えば、
図7のX軸方向)に延在している。例えば、アクチュエータプレート51には、1つのバイパス溝Gが設けられ、このバイパス溝Gが、全てのダミーチャネル55に連通している。バイパス溝Gは、吐出チャネル54を間に挟んで隣り合う一対のダミーチャネル55を繋ぐように、分離して設けられていてもよい。このバイパス溝Gは、例えば、裏面51f2の個別電極パッド64に対向する位置よりも、チャネル形成領域R2に近い位置に配置されている。例えば、裏面51f2の共通電極パッド62の上端部近傍に対向する位置に、バイパス溝Gが配置されている。バイパス溝Gの深さ(Y軸方向の大きさ)は、バイパス電極64Bを収容可能な程度であればよい。
【0038】
このバイパス溝G内に設けられたバイパス電極64Bは、吐出チャネル54を間に挟んで隣り合う一対の個別電極63に接続されている。バイパス溝G内には、複数のバイパス電極64Bが、互いに分離して設けられている。バイパス電極64Bの幅(Z軸方向の大きさ)は、例えば、バイパス溝Gの幅よりも小さくなっている。バイパス電極64Bの幅は、バイパス溝Gの幅と略同じであってもよい。あるいは、バイパス電極64Bが、バイパス溝Gの底面から側面にかけて設けられていてもよい。バイパス電極64Bは、例えば、共通電極61および個別電極63の構成材料と同じ材料により構成されている。
【0039】
(カバープレート52)
カバープレート52は、X軸方向を長手方向とすると共にZ軸方向を短手方向とする、XZ面に沿って広がる板状部材である。カバープレート52は、アクチュエータプレート51の表面51f1と対向する対向面52f1を有する。
【0040】
図8は、カバープレート52を流路プレート41側から眺めた斜視図である。カバープレート52には、カバープレート52をY軸方向(厚さ方向)に貫通するとともに、吐出チャネル54に連通する液体供給路70が形成されている。液体供給路70は、本開示の「液体流通孔」に対応する一具体例である。液体供給路70は、Y軸方向の流路プレート41側に開口する共通インク室71と、共通インク室71とそれぞれ連通すると共にY軸方向のアクチュエータプレート51側に開口する複数のスリット72とを含んでいる。複数のスリット72は、複数の吐出チャネル54と対応する位置に設けられている。共通インク室71は、複数のスリット72に対し共通に設けられており、複数のスリット72を通じて各吐出チャネル54と連通している。共通インク室71は、ダミーチャネル55には連通していない。
【0041】
共通インク室71は、カバープレート52における流路プレート41と対向する対向面52f2に形成されている。共通インク室71は、Z軸方向において、吐出チャネル54の傾斜面54bと実質的に同じ位置に配置されている。共通インク室71は、対向面52f1側に向けて窪むと共にX軸方向に延在する溝状に形成されている。共通インク室71には、流路プレート41を通じてインクが流入するようになっている。
【0042】
複数のスリット72は、アクチュエータプレート51と対向する対向面52f1に形成されている。複数のスリット72は、Y軸方向において共通インク室71の一部とそれぞれ重なり合う位置に配置されている。複数のスリット72は、共通インク室71と複数の吐出チャネル54とに連通している。各スリット72のX軸方向の幅は、各吐出チャネル54のX軸方向の幅と実質的に同じであることが望ましい。
【0043】
なお、カバープレート52は、絶縁性を有し、かつアクチュエータプレート51を形成する材料の熱伝導率と同等以上の熱伝導率を有する材料により形成されているとよい。例えば、アクチュエータプレート51をPZTにより形成した場合、カバープレート52は、PZTまたはシリコンにより形成することが好ましい。これにより、ヘッドチップ40Aのカバープレート52の温度とヘッドチップ40Bのカバープレート52の温度との差が低減され、インクジェットヘッド4内におけるインク温度の均一化を図ることができるからである。その結果、インクの吐出速度のばらつきが低減され、印字安定性が向上する。
【0044】
(封止プレート53)
封止プレート53は、カバープレート52と同様、X軸方向を長手方向とすると共にZ軸方向を短手方向とする、XZ面に沿って広がる板状部材である。封止プレート53は、アクチュエータプレート51の下端面511およびカバープレート52の下端面521とZ軸方向において一致する下端面531と、Z軸方向において下端面531と反対側に位置する上端面532とを有している。上端面532は、Z軸方向において上端面512および上端面522の位置から後退した位置にある。封止プレート53は、アクチュエータプレート51の裏面51f2と対向する対向面53f1をさらに有する。封止プレート53は、対向面53f1がアクチュエータプレート51の裏面51f2のうちのチャネル形成領域R2と対向するように配置される。したがって、封止プレート53とカバープレート52とによって複数の吐出チャネル54および複数のダミーチャネル55が閉塞されるようになっている。封止プレート53は、開口や切り欠き、溝などを有しなくともよい。すなわち、単純な直方体でよいので、その構成材料として加工の困難な機能性材料や、高い加工精度が得にくい低価格材料を用いることもできる。すなわち、材料種の選択の自由度が向上する。
【0045】
封止プレート53は、熱伝導率の高い材料により構成されていることが好ましい。封止プレート53は、例えば、PZTまたはシリコン等により構成されている。熱伝導率の高い材料により構成された封止プレート53が、アクチュエータプレート51の裏面51f2に接着されると、駆動の際に生じるアクチュエータプレート51の熱の偏りが小さくなる。これにより、ヘッドチップ40Aのアクチュエータプレート51の温度とヘッドチップ40Bのアクチュエータプレート51の温度との差が低減され、インクジェットヘッド4内におけるインク温度の均一化を図ることができる。その結果、インクの吐出速度のばらつきが低減され、印字安定性が向上する。
【0046】
(一対のヘッドチップ40A,40Bの配置関係)
図3に示したように、一対のヘッドチップ40A,40Bは、各々の対向面52f2同士をY方向で対向させた状態で、Y軸方向に流路プレート41を挟んで配置されている。
【0047】
ヘッドチップ40Bの吐出チャネル54およびダミーチャネル55は、ヘッドチップ40Aの吐出チャネル54およびダミーチャネル55の配列ピッチに対してX軸方向に半ピッチずれて配列されている。すなわち、ヘッドチップ40Aの吐出チャネル54およびダミーチャネル55と、ヘッドチップ40Bの吐出チャネル54およびダミーチャネル55とが千鳥状に配列されている。
【0048】
このため、
図4に示したように、ヘッドチップ40Aの吐出チャネル54と、ヘッドチップ40Bのダミーチャネル55とがY軸方向で対向している。同様に、
図5に示したように、ヘッドチップ40Aのダミーチャネル55と、ヘッドチップ40Bの吐出チャネル54とがY軸方向で対向している。なお、ヘッドチップ40A,40Bにおける各々の吐出チャネル54およびダミーチャネル55のピッチは適宜変更可能である。
【0049】
(流路プレート41)
流路プレート41は、Y軸方向においてヘッドチップ40Aとヘッドチップ40Bとの間に挟持されている。流路プレート41は、同一の部材により一体に形成されているとよい。
図3に示したように、流路プレート41は、X軸方向を長手方向としY軸方向を短手方向とする矩形板状をなしている。Y軸方向から見て、流路プレート41の外形は、カバープレート52の外形と実質的に同じである。
【0050】
流路プレート41のY軸方向における主面41f1(ヘッドチップ40Aと対向する面)には、ヘッドチップ40Aにおける対向面52f2が接合されている。流路プレート41のY軸方向における主面41f2(ヘッドチップ40Bと対向する面)には、ヘッドチップ40Bにおける対向面52f2が接合されている。
【0051】
図4および
図5に示したように、流路プレート41の各主面41f1,41f2には、共通インク室71に各別に連通する入口流路74と、帰還プレート43の循環路76に各別に連通する出口流路75とが形成されている。なお、入口流路74が、本開示の「液体供給流路」の一具体例に対応し、出口流路75が、本開示の「液体排出流路」の一具体例に対応する。
【0052】
図3に示したように、出口流路75は、流路プレート41の各主面41f1,41f2からY軸方向の内側に向けて窪むとともに、流路プレート41の下端面411から上端面412へ向かうように窪んでいる。各出口流路75の一端部は、流路プレート41のX軸方向の他端面で開口している。各出口流路75は、流路プレート41のX軸方向の他端面から下方にクランク状に屈曲した後、X軸方向の一端側に向けて直線状に延びている。
図4に示したように、出口流路75のZ軸方向の幅は、入口流路74のZ軸方向の幅よりも小さいとよい。また、出口流路75のY軸方向の深さは、入口流路74のY軸方向の深さと実質的に同じである。出口流路75は、流路プレート41のX軸方向の他端面において出口マニホールド(図示せず)に接続されている。出口マニホールドは、インク排出管82(
図1参照)に接続されている。
【0053】
(入口マニホールド42)
図3に示したように、入口マニホールド42は、ヘッドチップ40A,40Bおよび流路プレート41のX軸方向の一端面に接合されている。入口マニホールド42には、一対の入口流路74に連通する供給路77が形成されている。供給路77における流路プレート41と反対側の端部はインク供給管81(
図1参照)に接続されている。
【0054】
(帰還プレート43)
帰還プレート43は、X軸方向を長手方向としY軸方向を短手方向とする矩形板状をなしている。帰還プレート43は、ヘッドチップ40A,40Bの下端面511,521,531および流路プレート41の下端面411にまとめて接合されている。すなわち、帰還プレート43は、ヘッドチップ40Aおよびヘッドチップ40Bにおける吐出チャネル54の開口54K側に配設されている。帰還プレート43は、ヘッドチップ40Aとヘッドチップ40Bとにおける吐出チャネル54の開口54Kと、ノズルプレート44の上面との間に介在するスペーサプレートである。帰還プレート43には、ヘッドチップ40A,40Bの吐出チャネル54と出口流路75との間を接続する複数の循環路76が形成されている。複数の循環路76は、第1循環路76aおよび第2循環路76bを含んでいる。複数の循環路76は、帰還プレート43をZ軸方向に貫通している。
【0055】
(ノズルプレート44)
図3に示したように、ノズルプレート44の外形は、X軸方向を長手方向としY軸方向を短手方向とする矩形板状をなしている。ノズルプレート44は、帰還プレート43の下端面に接合されている。ノズルプレート44には、ノズルプレート44をZ軸方向に貫通する複数のノズル78(噴射孔)が配列されている。複数のノズル78は、第1ノズル78aおよび第2ノズル78bを含む。複数のノズル78は、ノズルプレート44をZ軸方向に貫通している。
【0056】
図4に示したように、第1ノズル78aは、ノズルプレート44のうち、帰還プレート43の各第1循環路76aとZ軸方向で対向する部分にそれぞれ形成されている。すなわち、第1ノズル78aは、第1循環路76aと同ピッチで、X軸方向に間隔をあけて一直線上に配列されている。第1ノズル78aは、第1循環路76aにおけるY軸方向の外端部で第1循環路76a内に連通している。これにより、各第1ノズル78aは、第1循環路76aを介してヘッドチップ40Aの対応する吐出チャネル54にそれぞれ連通している。
【0057】
図5に示したように、第2ノズル78bは、ノズルプレート44のうち、帰還プレート43の各第2循環路76bとZ軸方向で対向する部分にそれぞれ形成されている。すなわち、第2ノズル78bは、第2循環路76bと同ピッチで、X軸方向に間隔をあけて一直線上に配列されている。第2ノズル78bは、第2循環路76bにおけるY軸方向の外側端部で第2循環路76b内に連通している。これにより、各第2ノズル78bは、第2循環路76bを介してヘッドチップ40Bの対応する吐出チャネル54にそれぞれ連通している。ダミーチャネル55は、第1ノズル78aおよび第2ノズル78bには連通しておらず、帰還プレート43により下方から覆われている。
【0058】
(配線基板45)
配線基板45は、共通電極パッド62,個別電極パッド64各々と駆動回路とを電気的に接続する。配線基板45には、例えば、複数の共通電極パッド62のそれぞれに接続された複数の引き出し電極と、複数の個別電極パッド64のそれぞれに接続された複数の引き出し電極とが設けられている。駆動回路は、例えば、集積回路(IC:Integrated Circuit)等により構成されている。集積回路は、配線基板45に搭載されていてもよい。なお、「配線基板45」は、本開示の「配線基板」または「外部配線」に対応する一具体例であ
【0059】
[インクジェットヘッド4の製造方法]
次に、インクジェットヘッド4の製造方法について説明する。本実施形態のインクジェットヘッド4の製造方法は、ヘッドチップ作製工程と、流路プレート作製工程と、プレート接合工程と、帰還プレート等接合工程と、を含む。なお、ヘッドチップ作製工程は、ヘッドチップ40Aとヘッドチップ40Bとで同様の方法により行うことが可能である。したがって、以下の説明ではヘッドチップ40Aにおけるヘッドチップ作製工程について説明する。
【0060】
(ヘッドチップ作製工程)
本実施の形態のインクジェットヘッド4の製造方法におけるヘッドチップ作製工程は、主に、アクチュエータプレート51に係る工程と、カバープレート52に係る工程とを含んでいる。これらのうち、アクチュエータプレート51に係る工程は、例えばウエハ準備工程、マスクパターン形成工程、チャネル形成工程および電極形成工程を含む。以下、
図9A~
図9Jを参照して、主にアクチュエータプレート51に係る工程を説明する。
【0061】
ウエハ準備工程では、
図9Aに示したように、厚さ方向(Y軸方向)に分極処理された2枚の圧電ウエハ51aZおよび51bZを用意し、各々の分極方向が逆向きとなるようにそれらを積層する。そののち、必要に応じて圧電ウエハ51aZに対し研削加工を行い、圧電ウエハ51aZの厚さを調整する。このときの圧電ウエハ51aZの表面が表面51f1となる。これにより、アクチュエータウエハ51Zが形成される。
【0062】
続くマスクパターン形成工程により、
図9Bに示したように、共通電極61等を形成する際にマスクとして利用するレジストパターンRP1を上述のアクチュエータウエハ51Zの表面51f1上に形成する。レジストパターンRP1は、複数の吐出チャネル54および複数のダミーチャネル55を形成すべき所定の位置に、それら複数の吐出チャネル54および複数のダミーチャネル55に対応する開口を複数有してもよい。なお、レジストパターンRP1はドライレジストにより形成してもよいし、ウェットレジストにより形成してもよい。
【0063】
続くチャネル形成工程では、図示しないダイシングブレード等により、上述のアクチュエータウエハ51Zの表面51f1から切削加工を行う。具体的には、アクチュエータウエハ51Zのうち、レジストパターンRP1により覆われていない露出部分を掘り下げることにより、複数のトレンチ54Uおよび複数のトレンチ55UがX軸方向に間隔をあけて平行をなすように、かつ交互に並ぶように形成する(
図9B参照)。なお、トレンチ54Uおよびトレンチ55Uは、それぞれ、のちに吐出チャネル54およびダミーチャネル55となる部分である。
【0064】
例えば、このチャネル形成工程と同一工程で、表面51f1にバイパス溝Gを形成することができる。例えば、レジストパターンRP1のうち、バイパス溝Gを形成すべき所定の位置に開口を設けておく。この後、ダイシングブレード等により、この開口部分を切削する。これにより、複数のトレンチ54Uおよび複数のトレンチ55Uを形成するのと、同一工程でバイパス溝G(
図9Bには図示せず)を形成することができる。
【0065】
続く第1の電極形成工程では、
図9Cに示したように、例えば蒸着法により、複数のトレンチ54Uの内面541Uと複数のトレンチ55Uの内面551UとレジストパターンRP1とを覆うように金属被膜MF1を形成する。このとき、例えば、バイパス溝G(
図9Cには図示せず)内にも金属被膜MF1を形成する。これにより、バイパス電極64Bが形成される。この第1の電極形成工程では、内面541U,551Uに対して斜め方向から金属被膜MF1の構成材料を付着させる傾斜蒸着を行うことにより、Y軸方向においてなるべく深い位置まで各トレンチ54Uの内面541Uおよび各トレンチ55Uの内面551Uを覆うとよい。なお、金属被膜MF1を形成する前段階において、各トレンチ54Uの内面541Uおよび各トレンチ55Uの内面551Uに付着したレジストなどの残渣を除去するディスカム処理を適宜行うようにしてもよい。
【0066】
続いてレジストパターンRP1を除去することによりアクチュエータウエハ51Zの表面51f1を露出させたのち、
図9Dに示したように、表面51f1に対向面52f1を重ね合わせるようにカバープレート52を接合する。その際、液体供給路70がトレンチ54Uと対向するようにカバープレート52の対向面52f1を表面51f1に接合する。ここでレジストパターンRP1を除去することにより、金属被膜MF1のうちトレンチ54Uの内面541Uおよびトレンチ55Uの内面551Uを覆う部分のみが残存する。
【0067】
次に、
図9Eに示したように、圧電ウエハ51bZを裏面(圧電ウエハ51aZと反対側の面)から研削加工を行い、圧電ウエハ51bZの厚さを調整する。その際、複数のトレンチ54Uおよび複数のトレンチ55Uを露出させ、複数の吐出チャネル54および複数のダミーチャネル55が形成する。このときの圧電ウエハ51bZの裏面が裏面51f2となる。これにより、いわゆるシェブロンタイプのアクチュエータプレート51が形成される。
【0068】
続く第2の電極形成工程では、
図9Fに示したように、例えば蒸着法により、複数の吐出チャネル54の内面および複数のダミーチャネル55の内面を覆う金属被膜MF2を形成する。このとき、金属被膜MF2が金属被膜MF1と接し、あるいは、金属被膜MF2の一部が金属被膜MF1の一部と重なり合うようにするとよい。
【0069】
次に、
図9Gに示したように、裏面51f2を覆う金属被膜MF2を除去することにより裏面51f2を露出させたのち、裏面51f2の上に選択的にレジストパターンRP2を形成する。ここで金属被膜MF2のうち裏面51f2を覆う部分を選択的に除去することにより、金属被膜MF2のうち吐出チャネル54の内面541およびダミーチャネル55の内面551を覆う部分のみが残存する。この結果、吐出チャネル54の内面541に金属被膜MF1,MF2を含む共通電極61が形成され、ダミーチャネル55の内面551に金属被膜MF1,MF2を含む個別電極63が形成される。
【0070】
そののち、
図9Hに示したように、第3の電極形成工程として、裏面51f2およびレジストパターンRP2を覆うように、例えば蒸着法により金属被膜MF3を形成する。このとき、金属被膜MF3が共通電極61および個別電極63と接し、あるいは、金属被膜MF3の一部が共通電極61および個別電極63の一部と重なり合うようにするとよい。
【0071】
次に、
図9Iに示したように、レジストパターンRP2を除去することにより、金属被膜MF3の一部が裏面51f2に残存し、共通電極パッド62および個別電極パッド64となる。
【0072】
最後に、
図9Jに示したように裏面51f2に対して封止プレート53の対向面53f1を貼り合わせることにより、アクチュエータプレート51と封止プレート53とを接合する。以上により、ヘッドチップ40Aの作製が完了する。ヘッドチップ40Bについても同様に作製可能である。
【0073】
ここで、カバープレート52に係る工程について、主に
図10および
図11を参照して説明する。
図10は、共通インク室71の形成工程を表す平面図であり、
図11は、
図10に続くスリット72の形成工程を表す断面図である。なお、
図11は、
図10に示したXI-XI切断線に沿った矢視方向の断面を表している。
【0074】
図10に示したように、共通インク室71の形成工程では、まず、用意されたカバーウエハ120に対して表面側から図示しないマスクを通してサンドブラスト等を行い、共通インク室71を形成する。続いて、
図11に示すように、スリット形成工程において、カバーウエハ120に対して裏面側から図示しないマスクを通してサンドブラスト等を行い、共通インク室71内に各別に連通するスリット72を形成する。なお、共通インク室71の形成工程およびスリット72の形成工程は、それぞれサンドブラストに限らず、ダイシング、切削等により行っても構わない。最後に、
図10に示した、X軸方向に延びる一点鎖線に沿ってカバーウエハ120を個片化する。これにより、カバープレート52が完成する。
【0075】
(流路プレート作製工程)
本実施の形態のインクジェットヘッド4の製造方法における流路プレート作製工程は、流路形成工程および個片化工程を含むものである。
【0076】
図12は、流路プレート作製工程を表す平面図である。
図12に示したように、流路形成工程では、まず流路ウエハ130に対して表面側から図示しないマスクを通してサンドブラスト等を行い、表面側の入口流路74および表面側の出口流路75をそれぞれ形成する。
【0077】
加えて、流路形成工程では、流路ウエハ130に対して裏面側から図示しないマスクを通してサンドブラスト等を行い、裏面側の入口流路74および裏面側の出口流路75を形成する。なお、流路形成工程の各工程は、サンドブラストに限らず、ダイシング、切削等により行っても構わない。
【0078】
流路形成工程に続く個片化工程では、ダイサー等を用いて出口流路75におけるX軸方向直線部の軸線(
図12に示した仮想線D)に沿って流路ウエハ130を個片化する。これにより、流路プレート41(
図3参照)が完成する。
【0079】
(各種プレート接合工程)
図3に示したように、各種プレート接合工程では、ヘッドチップ40Aのカバープレート52およびヘッドチップ40Bのカバープレート52のそれぞれと流路プレート41とを接合する。具体的に、流路プレート41の主面41f1をヘッドチップ40Aの対向面52f2に貼り付けると共に、流路プレート41の主面41f2をヘッドチップ40Bの対向面52f2に貼り付ける。これにより、プレート接合体を作製する。なお、流路ウエハ130の両面にカバーウエハ120を1枚ずつ貼り合わせてからチップ分割(個片化)を行うことにより、ヘッドチップ40Aのカバープレート52と流路プレート41とヘッドチップ40Bのカバープレート52とが順に貼り合わされたプレート接合体を作製するようにしてもよい。
【0080】
(帰還プレート等接合工程)
次いで、上述のプレート接合体に対して帰還プレート43およびノズルプレート44を接合する。そののち、共通電極パッド62,個別電極パッド64各々に対し配線基板45を実装する(
図4,
図5参照)。
【0081】
以上により、本実施形態のインクジェットヘッド4が完成する。
【0082】
[動作および作用・効果]
(A.プリンタ1の基本動作)
このプリンタ1では、以下のようにして、記録紙Pに対する画像や文字等の記録動作(印刷動作)が行われる。なお、初期状態として、
図1に示した4種類のインクタンク3(3Y,3M,3C,3K)にはそれぞれ、対応する色(4色)のインクが十分に封入されているものとする。また、インクタンク3内のインクがインク循環機構8を介してインクジェットヘッド4内に充填された状態となっている。より具体的には、所定量のインクが、インク供給管81および流路プレート41を介してヘッドチップ40に供給され、液体供給路70を経て吐出チャネル54内に充填された状態となっている。
【0083】
このような初期状態において、プリンタ1を作動させると、搬送機構2a,2bにおけるグリッドローラ21がそれぞれ回転することで、グリッドローラ21とピンチローラ22と間に記録紙Pが挟持されつつ搬送方向d(X軸方向)に沿って搬送される。また、このような搬送動作と同時に、駆動機構34における駆動モータ38が、プーリ35,36をそれぞれ回転させることにより無端ベルト37を動作させる。これにより、キャリッジ33がガイドレール31,32にガイドされながら、記録紙Pの幅方向(Y軸方向)に沿って往復移動する。そしてこの際に、各インクジェットヘッド4(4Y,4M,4C,4K)によって、4色のインクを記録紙Pに適宜吐出させることで、この記録紙Pに対する画像や文字等の記録動作がなされる。
【0084】
(B.インクジェットヘッド4における詳細動作)
続いて、
図1~
図8を参照して、インクジェットヘッド4における詳細動作(インクの噴射動作)について説明する。すなわち、本実施の形態のインクジェットヘッド4(エッジシュートタイプ)では、以下のようにして、せん断(シェア)モードを用いたインクの噴射動作が行われる。なお、以下の噴射動作はインクジェットヘッド4に搭載された駆動回路(図示せず)により実行される。
【0085】
本実施形態のような、エッジシュートタイプであって縦循環式のインクジェットヘッド4では、まず、
図2に示した加圧ポンプ84および吸引ポンプ85を作動させることにより、循環流路83内にインクを流通させる。この場合、インク供給管81を流通するインクは、
図3に示したす入口マニホールド42の供給路77を通り、流路プレート41の入口流路74内へ流入する。入口流路74内へ流入したインクは、共通インク室71を通過した後、スリット72を通って吐出チャネル54内に供給される。吐出チャネル54内に流入したインクは、帰還プレート43の循環路76を経由して出口流路75内で再集合したのち、出口マニホールドを通過して
図2に示したインク排出管82に排出される。インク排出管82に排出されたインクは、インクタンク3に戻されたのち、再びインク供給管81に供給される。これにより、インクジェットヘッド4とインクタンク3との間でインクが循環する。
【0086】
そして、キャリッジ33(
図1参照)によって往復移動が開始されると、配線基板45を介して共通電極61と個別電極63との間に駆動電圧を印加する。この際、例えば個別電極63を駆動電位Vddとし、共通電極61を基準電位GNDとする。共通電極61と個別電極63との間に駆動電圧を印加すると、吐出チャネル54を画成する2つ駆動壁56に厚み滑り変形が生じ、これら2つの駆動壁56がダミーチャネル55側へ突出するように変形する。すなわち、アクチュエータプレート51は、厚さ方向(Y軸方向)に分極処理された2枚の圧電基板51a,51bが積層された構造を有するので、上記の駆動電圧を印加することで、駆動壁56におけるY軸方向の中間位置を中心にしてV字状に屈曲変形する。これにより、吐出チャネル54があたかも膨らむように変形する。
【0087】
吐出チャネル54を画成する2つの駆動壁56の変形によって吐出チャネル54の容積が増大すると、共通インク室71内のインクがスリット72を通って吐出チャネル54内に誘導される。そして、吐出チャネル54の内部に誘導されたインクは、圧力波となって吐出チャネル54の内部に伝搬する。この圧力波がノズル78に到達したタイミングで、共通電極61と個別電極63との間の駆動電圧をゼロにする。そうすることにより、2つの駆動壁56の形状が復元し、一旦増大した吐出チャネル54の容積が元の容積に戻る。この動作によって吐出チャネル54の内部の圧力が増加し、吐出チャネル54内のインクが加圧される。その結果、インクをノズル78から吐出させることができる。この際、インクはノズル78を通過する際に液滴状のインク滴となって吐出される。これにより、上述したように記録紙Pに文字や画像等を記録することができる。
【0088】
なお、インクジェットヘッド4の動作方法は上述した内容に限られない。例えば、通常状態の駆動壁56が吐出チャネル54の内側に変形し、吐出チャネル54があたかも内側に凹むように構成しても構わない。この場合は、共通電極61と個別電極63との間に印加する駆動電圧を上述した電圧とは正負逆の電圧にするか、電圧の正負は変えずにアクチュエータプレート51の分極方向を逆にすることで実現可能である。また、吐出チャネル54が外側に膨らむように変形させた後で、吐出チャネル54が内側に凹むように変形させ、吐出時のインクの加圧力を高めるようにしても構わない。
【0089】
(C.作用・効果)
次に、本実施の形態のヘッドチップ40、インクジェットヘッド4およびプリンタ1における作用および効果について詳細に説明する。
【0090】
本実施の形態のヘッドチップ40では、アクチュエータプレート51に、個別電極パッド64に加えて、バイパス電極64Bが設けられており、このバイパス電極64Bが、個別電極パッド64よりもチャネル形成領域R2に近い位置に配置されている。これにより、吐出チャネル54を間にして隣り合う一対の個別電極63同士の接続を、より確実に維持することができる。以下、この作用および効果について説明する。
【0091】
アクチュエータプレート51を構成するPZT等の圧電材料は、比較的機械強度が低く、割れまたは欠け等が生じやすい。アクチュエータプレート51の上端面512および下端面511近傍には、特に、外的衝撃がかかりやすく、割れまたは欠け等が生じやすい。仮に、ヘッドチップ40の製造および流通等の段階で、アクチュエータプレート51の上端面512近傍に割れまたは欠け等が生じると、個別電極パッド64が断線し、導通不良が発生する。具体的には、吐出チャネル54を間にして隣り合う一対の個別電極63同士の電気的な接続が維持できず、一対の個別電極63同士を共通化できなくなる。したがって、歩留まりが低下するおそれがある。
【0092】
これに対し、本実施の形態のヘッドチップ40(アクチュエータプレート51)では、個別電極パッド64とは別に、吐出チャネル54を間にして隣り合う一対の個別電極63同士を電気的に接続するためのバイパス電極64Bが設けられている。また、このバイパス電極64Bは、個別電極パッド64よりもチャネル形成領域R2に近い位置に配置されている。このため、仮に、アクチュエータプレート51の上端面512近傍に割れまたは欠け等が生じ、個別電極パッド64が断線しても、吐出チャネル54を間にして隣り合う一対の個別電極63同士が電気的に接続される。具体的には、アクチュエータプレート51の割れまたは欠け等が生じた場合にも、吐出チャネル54を間にして隣り合う一対の個別電極63を共通化することができる。よって、導通不良に起因したヘッドチップ40の歩留まりの低下を抑えることができる。
【0093】
また、このバイパス電極64Bは、表面51f1に設けられたバイパス溝G内に設けられている。これにより、バイパス電極64Bと、共通電極パッド62に接続された配線基板45との間の短絡の発生を抑えることができる。以下、この作用および効果について説明する。
【0094】
例えば、バイパス電極64Bを、裏面51f2側に配置することも考えうる。この場合には、バイパス電極64Bおよび共通電極パッド62が、ともにアクチュエータプレート51の裏面51f2側に配置される。共通電極パッド62には、配線基板45が接続される。このため、配線基板45を共通電極パッド62に接続する際に、配線基板45が撓み、配線基板45とバイパス電極64Bとの間で短絡が生じるおそれがある。したがって、ヘッドチップ40の信頼性を損なうおそれがある。
【0095】
裏面51f2側に溝を設け、この溝にバイパス電極64Bを設けることも考えうるが、この場合にも裏面51f2にバイパス電極64Bが露出されるので、配線基板45とバイパス電極64Bとの間の短絡が発生し得る。また、溝の深さが小さいと、より短絡が発生しやすくなるため、深い溝の形成が必要となる。このため、アクチュエータプレート51の厚み(Y軸方向の大きさ)を小さくすることが困難となる。
【0096】
これに対し、本実施の形態のヘッドチップ40(アクチュエータプレート51)では、バイパス電極64Bが、共通電極パッド62が設けられた裏面51f2に露出されない位置に設けられているので、配線基板45を共通電極パッド62に接続する際に配線基板45が撓んでも、配線基板45とバイパス電極64Bとの間の短絡の発生を抑えることができる。よって、ヘッドチップ40の信頼性を向上させることが可能となる。
【0097】
ここでは、このようなバイパス電極64Bが表面51f1に設けられたバイパス溝G内に配置されている。バイパス溝Gを設けずに、表面51f1上にバイパス電極64Bを設けることも可能である。あるいは、裏面51f2と表面51f1との間に、X軸方向に延在するトンネル状の穴を設けることも可能である。しかし、バイパス溝G内にバイパス電極64Bを設けることにより、バイパス電極64Bがバイパス溝Gの側壁に囲まれ、保護される。したがって、例えば製造工程での不具合に起因したバイパス電極64Bの断線等の発生が抑えられる。更に、バイパス溝Gは、裏面51f2と表面51f1との間のトンネル状の穴に比べて、容易に形成することができる。
【0098】
更に、バイパス溝Gはバイパス電極64Bを収容可能であればよく、バイパス溝Gの深さを小さくすることが可能である。したがって、アクチュエータプレート51の厚みを小さくし、ヘッドチップ40を小型化することができる。
【0099】
また、吐出チャネル54およびダミーチャネル55は、表面51f1,51f2に開口を有しているが、裏面51f2の開口は封止プレート53により塞がれている。換言すれば、アクチュエータプレート51には、表面51f1側からインクが供給されるようになっている。このインク供給側の表面51f1にバイパス溝Gを設けることにより、上述のように、吐出チャネル54およびダミーチャネル55の形成工程と、同一工程でバイパス溝Gを形成することが可能となる。よって、インク供給側の面と反対の面にバイパス溝Gを設ける場合(例えば、後述の
図15のインクジェットヘッド4C)に比べて、簡易な工程でバイパス溝Gを形成することができる。
【0100】
更に、本実施の形態のヘッドチップ40では、吐出チャネル54の内面を覆う共通電極61と導通する共通電極パッド62が、アクチュエータプレート51のうち、吐出チャネル54へインクを供給するカバープレート52と反対側の裏面51f2に設けられている。このため、共通電極61に対し電圧供給を行う外部機器を共通電極パッド62に容易に接続することができる。また、ヘッドチップ40では、インクが吐出される開口54Kを含む下端面511と対向するようにノズルプレート44が配置され、吐出チャネル54の延在方向(Z軸方向)と直交する厚さ方向(Y軸方向)にアクチュエータプレート51とカバープレート52とが積層されるようになっている。このため、ヘッドチップ40では、アクチュエータプレート51のうち、カバープレート52と反対側の裏面51f2において外部機器との接続が可能となる。この結果、アクチュエータプレート51に形成されて共通電極61と接続される共通電極パッド62の経路が単純化されるうえ、共通電極パッド62の経路長が短縮される。したがって、共通電極パッド62の断線が発生しにくい。また、共通電極パッド62の経路長が短縮されることにより共通電極パッド62の抵抗値を低減できるので、ヘッドチップ40の駆動時における発熱量を低減することができる。
【0101】
ヘッドチップ40では、共通電極61の形成方法としてめっき法を選択できるうえ、吐出チャネル54がアクチュエータプレート51をY軸方向に貫通しているので、両面蒸着プロセスも選択できる。具体的には、
図9Cに示したように表面51f1側からの蒸着により金属被膜MF1を形成したのち、
図9Fに示したように裏面51f2側からの蒸着により金属被膜MF2を形成する両面蒸着プロセスにより、共通電極61を形成することができる。したがって、ヘッドチップ40では、共通電極61の形成方法の自由度が向上する。これに対し、吐出チャネルがアクチュエータプレートを、その厚さ方向に貫通していない場合には、当然ながら両面蒸着プロセスは適用できない。なお、アクチュエータプレート51が
図6に示したように、シェブロンタイプの積層基板である場合、上述の両面蒸着プロセスにより共通電極を形成することが望ましい。しかしながら、アクチュエータプレート51がシェブロンタイプの積層基板ではない場合は、片面側からの蒸着のみ行うことにより、例えば裏面51f2側からの蒸着を行わずに表面51f1側からの蒸着のみ行うことにより共通電極61を形成することが望ましい。
【0102】
また、ヘッドチップ40では、アクチュエータプレート51とカバープレート52と封止プレート53との3つの部分のうち、封止プレート53の形状は単純化される。よって、封止プレート53を製造するにあたって高い加工精度は不要となることから、高精度の加工が困難な材料によっても封止プレート53を形成することができる。すなわち、封止プレート53の構成材料の選択の自由度が向上する。
【0103】
さらに、本実施の形態のインクジェットヘッド4では、2つのヘッドチップ40A,40Bの間に共通の流路プレート41を配置するようにしたので、インクの流路の一部を共通化できる。ところが、例えば特開2007-50687号公報に記載のインクジェットヘッドでは、インクが流れる溝を含む圧電セラミックプレート2,5の外側にインク室を含むインク室プレート7,10を配置するようにしている。すなわち、圧電セラミックプレート2に対しインク供給を行うインクの流路と、圧電セラミックプレート5に対しインク供給を行うインクの流路とが分離されている。このため、圧電セラミックプレート2,5とインク室プレート7,10との積層方向における寸法、すなわち厚さが大きくなりがちである。あるいは、例えば米国特許第8,091,987号明細書に記載のインクジェットヘッドように、互いに隣り合うように配置された一対のアクチュエータプレートの吐出端からそれぞれ吐出されたインクをそれらの外側へ排出する構造においても2系統のインク流路が必要となるので、やはり厚さが大きくなりがちである。これに対し、本実施の形態のインクジェットヘッド4は、2つのヘッドチップ40A,40Bへのインクの供給を行う流路が集約できるので、従来と比較して簡素な構造が実現され、Y軸方向の厚さが薄型化され、軽量化されたインクジェットヘッド4が実現できる。
【0104】
本実施の形態のヘッドチップ40は、ダミーチャネル55の内面に設けられた個別電極63と、裏面51f2に設けられた個別電極パッド64とをさらに備えるようにした。このため、共通電極61と個別電極63との間に駆動電圧を印加することで吐出チャネル54を画成する2つ駆動壁56に厚み滑り変形を生じさせ、吐出チャネル54にインクを導入し、共通電極61と個別電極63との間の駆動電圧をゼロにすることで駆動壁56を復元させてインクを吐出チャネル54から吐出できる。特に、アクチュエータプレート51を、厚さ方向に分極処理された2枚の圧電基板51a,51bが積層された構造を有するシェブロン基板としたので、アクチュエータプレート51をモノポール基板とした場合よりも、アクチュエータプレート51の駆動電圧を下げることができる。
【0105】
また、本実施の形態のヘッドチップ40では、吐出チャネル54の下端部はアクチュエータプレート51の下端面511に露出した開口54Kを形成しており、吐出チャネル54の上端部はアクチュエータプレート51内で終端した傾斜面54bを含む閉塞端となっている。このため、カバープレート52の液体供給路70から吐出チャネル54に供給されたインクは、閉塞端の傾斜面54bによって開口54Kに向かうように誘導される。よって、インクが吐出チャネル54の内部をスムーズに移動することができるので、安定した吐出動作が実現できる。
【0106】
<2.変形例>
続いて、上記実施の形態の変形例(変形例1~3)について説明する。なお、実施の形態における構成要素と実質的に同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0107】
[変形例1]
図13は、変形例1に係るインクジェットヘッド4Aにおける、吐出チャネル54に延在方向に沿った断面を表している。
図13は、上記実施の形態のインクジェットヘッド4を表す
図4に対応している。上記実施の形態のインクジェットヘッド4は、ヘッドチップ40とノズルプレート44との間に帰還プレート43が挿入され、インクタンク3とインクジェットヘッド4との間においてインク循環を行う構造を有している。これに対し、
図13に示した変形例1に係るインクジェットヘッド4Aは、帰還プレート43を有していない。すなわち、ヘッドチップ40A,40Bの下端面511,521,531および流路プレート41の下端面411に、ノズルプレート44が接着剤等により接合されている。また、流路プレート41には、入口流路74が設けられているものの、出口流路75は設けられていない。したがって、インクジェットヘッド4Aでは、その内部におけるインク循環が行われずに、吐出チャネル54の開口54Kから吐出されるインクがノズルプレート44へ向かい、ノズル78から吐出されるようになっている。変形例1に係るインクジェットヘッド4Aは、上記の点を除き、他は上記実施の形態のインクジェットヘッド4と実質的に同じ構成を有するので、上記実施の形態のインクジェットヘッド4と同様の効果が期待できる。
【0108】
[変形例2]
図14は、変形例2に係るインクジェットヘッド4Bにおける、吐出チャネル54に延在方向に沿った断面を表している。
図14は、上記実施の形態のインクジェットヘッド4を表す
図4に対応している。上記実施の形態のインクジェットヘッド4は、1つの流路プレート41の両側にヘッドチップ40Aおよびヘッドチップ40Bが設けられた構造を有する。これに対し、
図14に示した変形例2に係るインクジェットヘッド4Bは、1つの流路プレート41Bの片側のみにヘッドチップ40が設けられた構造を有している。変形例2に係るインクジェットヘッド4Bは、上記の点を除き、他は上記実施の形態のインクジェットヘッド4と実質的に同じ構成を有する。
【0109】
[変形例3]
図15は、変形例3に係るインクジェットヘッド4Cにおける、吐出チャネル54に延在方向に沿った断面を表している。
図15は、上記実施の形態のインクジェットヘッド4を表す
図4に対応している。上記実施の形態のインクジェットヘッド4は、アクチュエータプレート51の裏面51f2に共通電極パッド62および個別電極パッド64が設けられた構造を有する。これに対し、
図15に示した変形例3に係るインクジェットヘッド4Cは、アクチュエータプレート51の表面51f1に共通電極パッド62および個別電極パッド64が設けられた構造を有している。変形例3に係るインクジェットヘッド4Cは、上記の点を除き、他は上記実施の形態のインクジェットヘッド4と実質的に同じ構成を有する。
【0110】
一対のヘッドチップ40A,40Bは、互いの封止プレート53がY軸方向に隣接して配置されており、各々の封止プレート53およびアクチュエータプレート51を挟んで、ヘッドチップ40Aのカバープレート52とヘッドチップ40Bのカバープレート52とが対向している。
【0111】
このインクジェットヘッド4Cでは、アクチュエータプレート51のインク供給側となる表面51f1に、共通電極パッド62および個別電極パッド64が設けられ、封止プレート53との裏面51f2にバイパス溝Gおよびバイパス電極64Bが設けられている。ここでは、「表面51f1」が本開示の「第1面」に対応する一具体例であり、「裏面51f2」が本開示の「第2面」に対応する一具体例である。インクジェットヘッド4Cでは、例えば、アクチュエータプレート51の裏面51f2を形成した後(
図9Eの工程後)、バイパス溝Gおよびバイパス電極64Bを形成すればよい。
【0112】
インクジェットヘッド4Cは、上記変形例1のインクジェットヘッド4Aで説明したのと同様に、帰還プレート43を有していなくてもよい。インクジェットヘッド4Cは、上記変形例2のインクジェットヘッド4Bで説明したのと同様に、1つのヘッドチップ40を有していてもよい。
【0113】
<3.その他の変形例>
以上、実施の形態および変形例をいくつか挙げて本開示を説明したが、本開示はこれらの実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。
【0114】
例えば、上記実施の形態等では、プリンタ、インクジェットヘッドおよびヘッドチップにおける各部材の構成例(形状、配置、個数等)を具体的に挙げて説明したが、上記実施の形態等で説明したものには限られず、他の形状や配置、個数等であってもよい。
【0115】
上記実施の形態等では、吐出チャネルの延在方向における端部である吐出端(開口54K)からインクを吐出させる、いわゆるエッジシュートタイプのインクジェットヘッドを例示して説明したが、本開示の液体噴射ヘッドはこれに限定されない。具体的には、アクチュエータプレートの厚さ方向、すなわち、吐出チャネルの深さ方向にインクが通過する、いわゆるサイドシュートタイプのインクジェットヘッドであってもよい。
【0116】
また、本開示の液体噴射ヘッドチップの形成方法は、上記実施の形態で説明した手順に限定されるものではない。例えば
図9A~
図9Eの工程ののち、次のように金属被膜MF2および金属被膜MF3を一括形成してもよい。具体的には、
図9Eに示したように、圧電ウエハ51bZを裏面からグラインダ加工を行い、複数の吐出チャネル54および複数のダミーチャネル55を露出させる。次に、
図9Gに示したレジストパターンRP2とは異なり、複数のダミーチャネル55を塞ぐことのないように、第2面51f2の上に選択的にレジストパターンを形成する。具体的には、圧電基板51bのうち吐出チャネル54およびダミーチャネル55が形成されていない部分、すなわち、最終的に駆動壁56となる部分の各々の裏面51f2の上に選択的にレジストパターンをそれぞれ形成する。そののち、複数の吐出チャネル54の内面541および複数のダミーチャネル55の内面551を覆う金属被膜MF2と、裏面51f2およびレジストパターンを覆う金属被膜MF3とを、例えば蒸着法により一括形成する。続いてレジストパターンを除去する。その結果、金属被膜MF2のうち吐出チャネル54の内面541およびダミーチャネル55の内面551を覆う部分のみが残存し、共通電極61および個別電極63が形成される。併せて、金属被膜MF3の一部が裏面51f2に残存し、共通電極パッド62および個別電極パッド64となる。
【0117】
また、上記実施の形態等では、吐出チャネルおよびダミーチャネルが、アクチュエータプレートの2つの対向面(表面51f1,51f2)に開口を有している例を説明したが、吐出チャネルおよびダミーチャネルは、アクチュエータプレートのどちらか一方の対向面に開口を有していてもよい。
【0118】
また、上記実施の形態等では、互いに異なる分極方向を有する2枚の圧電基板を積層したシェブロンタイプのアクチュエータプレートを例示したが、本開示のインクジェットヘッドは、いわゆるカンチレバータイプ(モノポールタイプ)のアクチュエータプレートを有するものであってもよい。カンチレバータイプのアクチュエータプレートは、分極方向が厚み方向に沿って一方向に設定されている1つの圧電基板により形成されている。なお、このカンチレバータイプのアクチュエータプレートでは、例えば、駆動電極が深さ方向の上半分まで斜め蒸着によって取り付けられる。このため、この駆動電極が形成されている部分のみに駆動力が及ぶことによって、駆動壁が屈曲変形する。その結果、この場合においても、駆動壁がV字状に屈曲変形するので、吐出チャネルがあたかも膨らむように変形することになる。
【0119】
さらに、上記実施の形態等では、本開示における「液体噴射記録装置」の一具体例として、プリンタ1(インクジェットプリンタ)を挙げて説明したが、この例には限られず、インクジェットプリンタ以外の他の装置にも、本開示を適用することが可能である。換言すると、本開示の「ヘッドチップ」(ヘッドチップ40A,40B)および「液体噴射ヘッド」(インクジェットヘッド4)を、インクジェットプリンタ以外の他の装置に適用するようにしてもよい。具体的には、例えば、ファクシミリやオンデマンド印刷機などの装置に、本開示の「ヘッドチップ」および「液体噴射ヘッド」を適用するようにしてもよい。
【0120】
なお、本明細書中に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。
【0121】
また、本開示は、以下のような構成を取ることも可能である。
(1)
液体に圧力を印加するアクチュエータプレートおよび配線基板を備え、前記液体を噴射する液体噴射ヘッドであって、
前記アクチュエータプレートは、
第1面、および前記第1面と反対側を向く第2面と、
前記第1面および前記第2面の少なくとも一方に開口を有し、互いに分離して交互に配置された吐出チャネルおよび非吐出チャネルと、
前記吐出チャネルの側壁に設けられた共通電極と、
前記共通電極と電気的に分離され、前記非吐出チャネルの側壁に設けられた個別電極と、
前記第1面に設けられ、前記共通電極と前記配線基板とを電気的に接続する共通電極パッドと、
隣り合う前記非吐出チャネルの前記個別電極を電気的に接続するとともに、前記第1面に露出されないバイパス配線と
を含む液体噴射ヘッド。
(2)
前記バイパス配線は、前記第2面に設けられている
前記(1)に記載の液体噴射ヘッド。
(3)
前記第2面には、前記吐出チャネルおよび前記非吐出チャネルの並び方向に延在するバイパス溝が設けられ、
前記バイパス配線は前記バイパス溝内に設けられている
前記(1)または前記(2)に記載の液体噴射ヘッド。
(4)
前記アクチュエータプレートは、更に、隣り合う前記非吐出チャネルの前記個別電極を電気的に接続するとともに前記第1面に設けられた個別電極パッドを有する
前記(1)ないし前記(3)のうちいずれか1つに記載の液体噴射ヘッド。
(5)
更に、前記アクチュエータプレートに対向する封止板と、
前記吐出チャネルに連通する液体流通孔を有し、前記アクチュエータプレートを間にして前記封止板に対向して設けられたカバープレートとを有し、
前記吐出チャネルおよび前記非吐出チャネルは、前記第1面および前記第2面の両方に前記開口を有し、
前記封止板が前記吐出チャネルおよび前記非吐出チャネルの前記第1面の前記開口を塞いでいる
前記(1)ないし前記(4)のうちいずれか1つに記載の液体噴射ヘッド。
(6)
更に、前記アクチュエータプレートに交差する方向に配置され、前記吐出チャネルと連通する循環路を有する帰還プレートと、
前記アクチュエータプレートとしての第1のアクチュエータプレートおよび第2のアクチュエータプレートと、
前記カバープレートとしての第1のカバープレートおよび第2のカバープレートと、
前記封止板としての第1の封止板および第2の封止板と、
前記第1の封止板と前記第2の封止板との間に設けられた流路プレートとを備え、
前記第1のアクチュエータプレートは前記第1の封止板と前記流路プレートとの間に設けられ、
前記第2のアクチュエータプレートは前記第2の封止板と前記流路プレートとの間に設けられ、
前記第1のカバープレートは前記第1のアクチュエータプレートと前記流路プレートとの間に設けられ、
前記第2のカバープレートは前記第2のアクチュエータプレートと前記流路プレートとの間に設けられ、
前記流路プレートは、前記第1のカバープレートの前記液体流通孔および前記第2のカバープレートの前記液体流通孔と連通する液体供給流路と、前記循環路と連通する液体排出流路とを有する
前記(5)に記載の液体噴射ヘッド。
(7)
前記(1)ないし前記(6)のうちいずれか1つに記載の液体噴射ヘッドと、
前記液体を収容する収容部と
を備えた液体噴射記録装置。
(8)
液体に圧力を印加するアクチュエータプレートを備え、前記液体を噴射するヘッドチップであって、
前記アクチュエータプレートは、
第1面、および前記第1面と反対側を向く第2面と、
前記第1面および前記第2面の少なくとも一方に開口を有し、互いに分離して交互に配置された吐出チャネルおよび非吐出チャネルと、
前記吐出チャネルの側壁に設けられた共通電極と、
前記共通電極と電気的に分離され、前記非吐出チャネルの側壁に設けられた個別電極と、
前記第1面に設けられ、前記共通電極と外部配線とを電気的に接続する共通電極パッドと、
隣り合う前記非吐出チャネルの前記個別電極を電気的に接続するとともに、前記第1面に露出されないバイパス配線と
を含むヘッドチップ。
【符号の説明】
【0122】
1…プリンタ、10…筺体、2a,2b…搬送機構、21…グリッドローラ、22…ピンチローラ、3(3Y,3M,3C,3B)…インクタンク、4(4Y,4M,4C,4K)…インクジェットヘッド、40(40A,40B)…ヘッドチップ、41…流路プレート、42…入口マニホールド、43…帰還プレート、44…ノズルプレート、45…配線基板、50…供給チューブ、51…アクチュエータプレート、51a,51b…圧電基板、51f1…対向面、511…下端面、512…上端面、52…カバープレート、封止プレート53と、54…吐出チャネル、54K…開口、55…ダミーチャネル、6…走査機構、31,32…ガイドレール、33…キャリッジ、33a…基台、33b…壁部、34…駆動機構、35,36…プーリ、37…無端ベルト、38…駆動モータ、61…共通電極、62…共通電極パッド、63…個別電極、64…個別電極パッド、64B…バイパス配線、70…液体供給路、71…共通インク室、72…スリット、74…入口流路、75…出口流路、76…循環路、77…供給路、78…ノズル、8…インク循環機構、81…インク供給管、82…インク排出管、83…循環流路、84…加圧ポンプ、85…吸引ポンプ、G…バイパス溝、P…記録紙、R1…端部領域、R2…チャネル形成領域、d…搬送方向。