(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-31
(45)【発行日】2023-06-08
(54)【発明の名称】積層発泡シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 44/00 20060101AFI20230601BHJP
B29C 44/24 20060101ALI20230601BHJP
B32B 5/20 20060101ALI20230601BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20230601BHJP
B32B 27/22 20060101ALI20230601BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20230601BHJP
B32B 5/32 20060101ALI20230601BHJP
B29C 48/18 20190101ALI20230601BHJP
B29K 23/00 20060101ALN20230601BHJP
B29L 9/00 20060101ALN20230601BHJP
【FI】
B29C44/00 E
B29C44/24
B32B5/20
B32B27/18 D
B32B27/22
B32B27/32 E
B32B5/32
B29C48/18
B29K23:00
B29L9:00
(21)【出願番号】P 2019018039
(22)【出願日】2019-02-04
【審査請求日】2021-10-04
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】100109601
【氏名又は名称】廣澤 邦則
(72)【発明者】
【氏名】谷口隆一
(72)【発明者】
【氏名】角田博俊
(72)【発明者】
【氏名】大利隆史
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-135582(JP,A)
【文献】特開2015-180534(JP,A)
【文献】特開2007-302764(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 44/00- 44/60、 67/20
C08J 9/00- 9/42
B32B 1/00- 43/00
B65D 57/00- 59/08、 81/00- 81/17
B65D 85/30- 85/48、 85/86、 85/90
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレン系樹脂(A)と物理発泡剤とを混練してなる発泡層形成用樹脂溶融物と、ポリエチレン系樹脂(B)と高分子型帯電防止剤と揮発性可塑剤とを混練してなる樹脂層形成用樹脂溶融物とを共押出して、ポリエチレン系樹脂発泡層と、該発泡層に積層接着されたポリエチレン系樹脂層
(ただし、該ポリエチレン系樹脂層が、ポリエチレン系樹脂と、ポリスチレン、ゴム変性ポリスチレン(耐衝撃性ポリスチレン)、スチレン-αメチルスチレン共重合体、スチレン-pメチルスチレン共重合体、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-メタクリル酸エチル共重合体、スチレン-アクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル酸エチル共重合体及びスチレン-アクリロニトリル共重合体から選択されるポリスチレン系樹脂と、高分子型帯電防止剤と、スチレン系エラストマー(ただし、ゴム変性ポリスチレン(耐衝撃性ポリスチレン)を除く)とを含む混合樹脂組成物から形成されている場合を除く)とを有する積層発泡シートを製造する方法において、
該高分子型帯電防止剤が、アイオノマー樹脂であり、
該揮発性可塑剤が、沸点が120℃以下のアルコール(A)と、炭素数が3~5の飽和炭化水素及び/又はアルキル鎖の炭素数が1~3のジアルキルエーテル(B)とを含み、
該揮発性可塑剤の配合量が、該ポリエチレン系樹脂(B)と該アイオノマー樹脂との合計1kgあたり、0.1~10molであり、
該アルコール(A)の配合量が、該アイオノマー樹脂1kgあたり、1~25molであり、
該揮発性可塑剤における、該アルコール(A)と、該飽和炭化水素及び/又はジアルキルエーテル(B)とのモル比率が、5:95~95:5であることを特徴とする積層発泡シートの製造方法。
【請求項2】
前記アイオノマー樹脂が、エチレンと不飽和カルボン酸との共重合体のカリウムアイオノマーである、請求項1に記載の積層発泡シートの製造方法。
【請求項3】
前記アイオノマー樹脂の表面抵抗率が1×10
12Ω未満である、請求項1又は2に記載の積層発泡シートの製造方法。
【請求項4】
前記アイオノマー樹脂の配合割合が、前記ポリエチレン系樹脂(B)と該アイオノマー樹脂との合計100重量%に対して、1~80重量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層発泡シートの製造方法。
【請求項5】
前記アルコール(A)がエタノールを含み、該アルコール(A)中の該エタノールの割合が50重量%以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の積層発泡シートの製造方法。
【請求項6】
前記飽和炭化水素がブタンであり、前記ジアルキルエーテルがジメチルエーテルである、請求項1~5のいずれか一項に記載の積層発泡シートの製造方法。
【請求項7】
前記アイオノマー樹脂の、温度190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレイトが3g/10分以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の積層発泡シートの製造方法。
【請求項8】
前記ポリエチレン系樹脂(B)の、温度190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレイトが1~20g/10分である、請求項1~7のいずれか一項に記載の積層発泡シートの製造方法。
【請求項9】
前記積層発泡シート全体の見掛け密度が20~200kg/m
3である、請求項1~8のいずれか一項に記載の積層発泡シートの製造方法。
【請求項10】
前記積層発泡シートの全体厚みが0.05~2mmであり、該積層発泡シートの全体坪量が10~200g/m
2である、請求項1~9のいずれか一項に記載の積層発泡シートの製造方法。
【請求項11】
前記樹脂層の片面あたりの坪量が1~50g/m
2である、請求項1~10のいずれか一項に記載の積層発泡シートの製造方法。
【請求項12】
前記積層発泡シートの樹脂層表面の表面抵抗率が5×10
12Ω未満である、請求項1~11のいずれか一項に積層発泡シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明方法は、積層発泡シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン系樹脂からなる発泡シートにポリエチレン系樹脂からなる樹脂層が積層された積層発泡シートは、軽量であると共に、緩衝性に優れるため、液晶パネルに使用されるガラス板を積み重ねて輸送する際に、ガラス板間に介在させる間紙等、エレクトロニクス機器やその素材の包装分野等で広く使用されている。
このような用途においては、通常、積層発泡シートへの埃や塵等の付着を抑制するために、積層発泡シートへの帯電防止性能の付与が行われる。積層発泡シートに帯電防止性能を付与する方法としては、例えば、共押出法により積層発泡シートを製造する際に、樹脂層を形成するための樹脂溶融物に高分子型帯電防止剤を配合して共押出を行い、高分子型帯電防止剤を含有する樹脂層を形成する方法が挙げられる(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、ガラス板間紙等の用途においては、被包装物の汚染を防ぐために、被包装物への高分子型帯電防止剤に由来する低分子量成分等の移行がさらに抑制された積層発泡シートが求められている。
低分子量成分等の移行量を低減するためには、低分子量成分の含有量が少ない高分子型帯電防止剤を用いることが好ましい。低分子量成分の含有量が少ない高分子型帯電防止剤としては、アイオノマー樹脂が挙げられる。
しかしながら、共押出により、アイオノマー樹脂を含有するポリエチレン系樹脂層を形成し、ポリエチレン系樹脂発泡層に積層して、積層発泡シートを製造すると、所望される帯電防止性を安定して発現させることが難しく、良好な帯電防止性能を有する積層発泡シートを安定して製造することが困難であった。
【0005】
本発明は、前記問題を解決し、高分子型帯電防止剤としてアイオノマー樹脂を用いた場合であっても、共押出により優れた帯電防止性能が発現する積層発泡シートを安定して製造することができる、積層発泡シートの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明方法によれば、以下に示す積層発泡シートの製造方法が提供される。
[1]ポリエチレン系樹脂(A)と物理発泡剤とを混練してなる発泡層形成用樹脂溶融物と、ポリエチレン系樹脂(B)と高分子型帯電防止剤と揮発性可塑剤とを混練してなる樹脂層形成用樹脂溶融物とを共押出して、ポリエチレン系樹脂発泡層と、該発泡層に積層接着されたポリエチレン系樹脂層(ただし、該ポリエチレン系樹脂層が、ポリエチレン系樹脂と、ポリスチレン、ゴム変性ポリスチレン(耐衝撃性ポリスチレン)、スチレン-αメチルスチレン共重合体、スチレン-pメチルスチレン共重合体、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-メタクリル酸エチル共重合体、スチレン-アクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル酸エチル共重合体及びスチレン-アクリロニトリル共重合体から選択されるポリスチレン系樹脂と、高分子型帯電防止剤と、スチレン系エラストマー(ただし、ゴム変性ポリスチレン(耐衝撃性ポリスチレン)を除く)とを含む混合樹脂組成物から形成されている場合を除く)とを有する積層発泡シートを製造する方法において、
該高分子型帯電防止剤が、アイオノマー樹脂であり、
該揮発性可塑剤が、沸点が120℃以下のアルコール(A)と、炭素数が3~5の飽和炭化水素及び/又はアルキル鎖の炭素数が1~3のジアルキルエーテル(B)とを含み、
該揮発性可塑剤の配合量が、該ポリエチレン系樹脂(B)と該アイオノマー樹脂との合計1kgあたり、0.1~10molであり、
該アルコール(A)の配合量が、該アイオノマー樹脂1kgあたり、1~25molであり、
該揮発性可塑剤における、該アルコール(A)と、該飽和炭化水素及び/又はジアルキルエーテル(B)とのモル比率が、5:95~95:5であることを特徴とする積層発泡シートの製造方法。
[2]前記アイオノマー樹脂が、エチレンと不飽和カルボン酸との共重合体のカリウムアイオノマーである、前記1に記載の積層発泡シートの製造方法。
[3]前記アイオノマー樹脂の表面抵抗率が1×1012Ω未満である、前記1又は2に記載の積層発泡シートの製造方法。
[4]前記アイオノマー樹脂の配合割合が、前記ポリエチレン系樹脂(B)と該アイオノマー樹脂との合計100重量%に対して、1~80重量%である、前記1~3のいずれか一項に記載の積層発泡シートの製造方法。
[5]前記アルコール(A)がエタノールを含み、該アルコール(A)中の該エタノールの割合が50重量%以上である、前記1~4のいずれか一項に記載の積層発泡シートの製造方法。
[6]前記飽和炭化水素がブタンであり、前記ジアルキルエーテルがジメチルエーテルである、前記1~5のいずれか一項に記載の積層発泡シートの製造方法。
[7]前記アイオノマー樹脂の、温度190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレイトが3g/10分以下である、前記1~6のいずれか一項に記載の積層発泡シートの製造方法。
[8]前記ポリエチレン系樹脂(B)の、温度190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレイトが1~20g/10分である、前記1~7のいずれか一項に記載の積層発泡シートの製造方法。
[9]前記積層発泡シート全体の見掛け密度が200kg/m3以下である、前記1~8のいずれか一項に記載の積層発泡シートの製造方法。
[10]前記積層発泡シートの全体厚みが0.05~2mmであり、該積層発泡シートの全体坪量が10~200g/m2である、前記1~9のいずれか一項に記載の積層発泡シートの製造方法。
[11]前記樹脂層の片面あたりの坪量が1~50g/m2である、前記1~10のいずれか一項に記載の積層発泡シートの製造方法。
[12]前記積層発泡シートの樹脂層表面の表面抵抗率が5×1012Ω未満である、前記1~11のいずれか一項に積層発泡シートの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の積層発泡シートの共押出による製造方法においては、帯電防止剤としてアイオノマー樹脂を用いると共に、特定のアルコール(A)と特定の飽和炭化水素及び/又は特定のジアルキルエーテル(B)とを含む揮発性可塑剤をポリエチレン系樹脂層を形成するための樹脂溶融物に圧入することにより、高分子型帯電防止剤としてアイオノマー樹脂を用いた場合であっても、優れた帯電防止性能が発現する積層発泡シートを安定して得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の積層発泡シートの製造方法について詳細に説明する。
本発明においては、ポリエチレン系樹脂(A)と物理発泡剤とを混練してなる発泡層形成用樹脂溶融物と、ポリエチレン系樹脂(B)と高分子型帯電防止剤と揮発性可塑剤とを混練してなる樹脂層形成用樹脂溶融物とを共押出することにより積層発泡シートが製造される。
具体的には、発泡層形成用押出機にポリエチレン系樹脂(A)を供給し、加熱溶融して溶融樹脂とした後、物理発泡剤を圧入し、さらに混練して発泡層形成用樹脂溶融物とする。他方、樹脂層形成用押出機に、ポリエチレン系樹脂(B)と高分子型帯電防止剤とを供給し、加熱溶融して溶融樹脂とした後、揮発性可塑剤を圧入し、さらに混練して樹脂層形成用樹脂溶融物とする。得られた該発泡層形成用樹脂溶融物と該樹脂層形成用樹脂溶融物とを共押出用ダイに導入して積層し、低圧下(通常、大気圧)に共押出する。このように、樹脂層形成用樹脂溶融物と発泡層形成用樹脂溶融物とを積層すると共に、発泡層形成用樹脂溶融物を発泡させることにより、ポリエチレン系樹脂層がポリエチレン系樹脂発泡層に積層接着された積層発泡シートが得られる。
【0009】
次に、本発明方法においてポリエチレン系樹脂発泡層(以下、発泡層ともいう。)の形成に用いられるポリエチレン系樹脂(A)について説明する。
該ポリエチレン系樹脂(A)としては、例えば、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸ブチル共重合体等やこれらの混合物が挙げられる。
これらのポリエチレン系樹脂(A)の中でも、押出発泡性に優れ、得られた積層発泡シートがより緩衝性に優れたものとなることから、低密度ポリエチレンを主成分とするポリエチレン系樹脂を用いることが好ましい。
本明細書において、「低密度ポリエチレンを主成分とする」とは、低密度ポリエチレンがポリエチレン系樹脂中に50重量%以上含有されていることをいう。また、低密度ポリエチレンとは、密度0.91g/cm3以上0.93g/cm3未満のポリエチレン系樹脂をいう。
なお、ポリエチレン系樹脂(A)は、本発明の目的及び効果を阻害しない範囲で、ポリエチレン系樹脂以外の合成樹脂やエラストマー成分等を含んでいてもよい。
【0010】
該ポリエチレン系樹脂(A)の含有量は、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、更に好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上であり、100重量%が最も好ましい。
【0011】
該ポリエチレン系樹脂(A)のメルトフローレイト(MFR)は、押出発泡性に優れることから、0.5~15g/10分(温度190℃、荷重2.16kg)であることが好ましい。
なお、本明細書におけるMFRは、JIS K 7210-1:2014(試験温度:190℃、荷重2.16kg)に基づき測定される値である。
【0012】
該ポリエチレン系樹脂(A)の融点Tmpは100~135℃であることが好ましい。前記範囲とすることで、押出発泡性に優れると共に、緩衝性に優れる発泡層を安定して形成することができる。かかる観点から、ポリエチレン系樹脂(A)の融点Tmpは100~130℃であることが好ましく、より好ましくは100~120℃であり、さらに好ましくは100~115℃である。
【0013】
本明細書におけるポリエチレン系樹脂(A)の融点は、JIS K7121-1987に準拠して、熱流束示差走査熱量測定により求められる値である。測定条件の詳細についてはJIS K7121-1987、3.試験片の状態調節(2)の条件(但し、冷却速度10℃/分。)により状態調整した試験片を使用して、10℃/分にて昇温することにより融解ピークを得ることとし、得られた融解ピークの頂点の温度を融点とする。但し、融解ピークが2つ以上現れる場合は、最も面積の大きな融解ピークの頂点の温度を融点とする。
【0014】
発泡層を形成するポリエチレン系樹脂(A)には、本発明の目的及び効果を阻害しない範囲で、気泡調整剤、造核剤、酸化防止剤、熱安定剤、耐候剤、紫外線吸収剤、難燃剤、抗菌剤、収縮防止剤、無機充填剤等の添加剤を添加することができる。
【0015】
次に、本発明方法においてポリエチレン系樹脂層の形成に用いられるポリエチレン系樹脂(B)及び高分子型帯電防止剤について説明する。
該樹脂層は、ポリエチレン系樹脂(B)と高分子型帯電防止剤とを含む混合樹脂からなる。ポリエチレン系樹脂(B)としては、前述したポリエチレン系樹脂(A)と同様のポリエチレン系樹脂を用いることができ、これらの中でも、柔軟性に優れることから低密度ポリエチレンを主成分とするポリエチレン系樹脂を用いることが好ましい。また、該ポリエチレン系樹脂(B)は、前記ポリエチレン系樹脂(A)と同じものを用いることが、発泡層との接着性に優れることからより好ましい。
【0016】
本発明方法において、樹脂層の形成に用いられる高分子型帯電防止剤は、アイオノマー樹脂である。該アイオノマー樹脂からなる高分子型帯電防止剤は、表面抵抗率が低く、積層発泡シートに良好な帯電防止性能を付与することができると共に、低分子量成分の含有量が少ないため、被包装物への低分子量成分の移行による、被包装物の汚染を抑制するこができる。
該アイオノマー樹脂は、エチレンと不飽和カルボン酸との共重合体の分子間を、金属イオンで分子間架橋した樹脂である。不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。また、金属イオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム等が挙げられる。
【0017】
前記のアイオノマー樹脂の中でも、積層発泡シートに良好な帯電防止性能を付与できることから、金属イオンとしてカリウムを用いた、エチレンと不飽和カルボン酸との共重合体のカリウムアイオノマーが好ましい。
【0018】
該アイオノマー樹脂の表面抵抗率は、1×1012Ω未満であることが好ましい。表面抵抗率1×1012Ω未満のアイオノマー樹脂を用いて樹脂層を形成することにより、帯電防止性能に優れる積層発泡シートを安定して得ることができる。かかる観点から該表面抵抗率は1×1011Ω以下であることがより好ましく、さらに好ましくは1×1010Ω以下であり、特に好ましくは1×109Ω以下である。
なお、アイオノマー樹脂の表面抵抗率は、後述するように、JIS K6271(2001年)の方法に準じて測定することができる。
【0019】
該アイオノマー樹脂のメルトフローレイト(MFR)は、10g/10分以下(温度190℃、荷重2.16kg)であることが好ましく、より好ましくは7g/10分以下であり、さらに好ましくは3g/10分以下(温度190℃、荷重2.16kg)である。一方、その下限は、概ね1g/10分(温度190℃、荷重2.16kg)である。
【0020】
ポリエチレン系樹脂(B)のメルトフローレイト(MFR)は、1~20g/10分(温度190℃、荷重2.16kg)であることが好ましく、より好ましくは5~15g/10分である。MFRがこの範囲内であれば、共押出により良好な樹脂層を安定して製膜することができる。
ポリエチレン系樹脂(B)のMFRは、ポリエチレン系樹脂(A)のMFRと同じか、ポリエチレン系樹脂(A)のMFRよりも高いことが好ましい。
【0021】
該ポリエチレン系樹脂(B)の融点Tmpは100~135℃であることが好ましい。該融点Tmpを前記範囲内とすることで、樹脂層と発泡層との積層状態が良好となると共に、均質な樹脂層が形成され、積層発泡シート全体にわたって良好な帯電防止性能が発現する積層発泡シートが得られやすくなる。
かかる観点から、該融点Tmpは100~130℃であることがより好ましく、100~120℃であることがさらに好ましく、100~115℃であることが特に好ましい。
【0022】
該ポリエチレン系樹脂(B)の融点Tmpと、前記アイオノマー樹脂の融点Tmiとの差(Tmp-Tmi)は5~45℃であることが好ましい。該差(Tmp-Tmi)がこの範囲内の場合には、発泡層を形成するポリエチレン系樹脂(A)として融点の低い樹脂を使用すると共に、発泡層との積層状態が良好な樹脂層を形成するために、発泡層の融点に対応した融点の低いポリエチレン系樹脂(B)を使用した場合であっても、後述する揮発性可塑剤を使用することで、アイオノマー樹脂をポリエチレン系樹脂中に良好に分散させることができる。かかる観点から、該差(Tmp-Tmi)は8~35℃であることが好ましく、10~30℃であることがより好ましく、10~25℃であることがさらに好ましい。
【0023】
本明細書におけるポリエチレン系樹脂(B)及びアイオノマー樹脂の融点は、ポリエチレン系樹脂(A)の融点と同様に測定される値であり、JIS K7121-1987に準拠して、熱流束示差走査熱量測定により求められる値である。
【0024】
該アイオノマー樹脂の具体例としては、例えば、三井・デュポンポリケミカル株式会社製「エンティラSD100」、「エンティラMK400」などが挙げられる。
【0025】
該アイオノマー樹脂の前記樹脂層を構成する混合樹脂中の配合割合は、前記ポリエチレン系樹脂(B)と該アイオノマー樹脂との合計100重量%に対して、1~80重量%であることが好ましい。前記範囲とすることで、柔軟性に優れると共に、所望される帯電防止性を安定して発現できる積層発泡シートとすることができる。
かかる観点から、該配合量の下限は、5重量%がより好ましく、さらに好ましくは8重量%である。また、該配合量の上限は、60重量%が好ましく、より好ましくは50重量%であり、さらに好ましくは30重量%であり、特に好ましくは20重量%である。
【0026】
次に、樹脂層を形成するために用いられる揮発性可塑剤について説明する。
本発明において、樹脂層形成用樹脂溶融物を形成するために、溶融した前記混合樹脂に圧入され、ポリエチレン系樹脂(B)及び高分子型帯電防止剤と共に混練される揮発性可塑剤は、沸点が120℃以下のアルコール(A)と、炭素数が3~5の飽和炭化水素及び/又はアルキル鎖の炭素数が1~3のジアルキルエーテル(B)とを含む。
【0027】
前記アイオノマー樹脂は、金属イオンとカルボン酸との結合・解離が繰り返し生じることにより、樹脂中で疑似的な架橋構造が形成される樹脂である。このようなアイオノマー樹脂は、溶融樹脂温度が高い場合には、前記結合・解離が生じて溶融粘度が低下するが、ポリエチレン系樹脂の発泡温度条件程度まで溶融樹脂温度が低くなると、前記結合・解離が生じにくくなり、溶融粘度が大きくなってしまう。そのため、アイオノマー樹脂を含有する樹脂層が発泡層に積層された積層発泡シートを共押出により製造しようとすると、共押出時における押出温度を発泡層形成用樹脂溶融物の発泡に適した温度に調整する必要があることから、アイオノマー樹脂を含む樹脂層の溶融樹脂温度が低くなり、アイオノマー樹脂の溶融粘度が増大しやすい。その結果、アイオノマー樹脂がポリエチレン系樹脂中に良好に分散しにくくなり、良好な帯電防止性能を有する積層発泡シートを安定して製造することが困難になる。特に、MFRが低いアイオノマー樹脂を使用した場合、この傾向が顕著になる。
【0028】
これに対し、本発明においては、アイオノマー樹脂に対する可塑化効果がより高いアルコール(A)が揮発性可塑剤に含まれるので、樹脂層形成用樹脂溶融物の押出温度を発泡層形成用樹脂溶融物の押出温度にあわせて低くした場合であっても、アイオノマー樹脂の溶融粘度を低く維持することができる。この効果は、MFRが低いアイオノマー樹脂を使用した場合であっても、有効に発現する。
一方、ポリエチレン系樹脂に対する可塑化効果がより高い炭化水素またはジアルキルエーテルが揮発性可塑剤に含まれるため、ポリエチレン系樹脂の溶融粘度を低く維持することができる。そのため、発泡層形成用樹脂溶融物の押出発泡温度(100~140℃)に対応して比較的低い温度に設定された樹脂層形成用樹脂溶融物の押出温度条件においても、樹脂層形成用樹脂溶融物全体の溶融粘度を低く維持することができる。その結果、厚みが均一で、アイオノマー樹脂が前記混合樹脂中に均質に分散した樹脂層が形成され、さらに、良好な帯電防止性能を発揮できる導電ネットワーク構造が樹脂層中に形成されるものと考えられる。
【0029】
前記沸点が120℃以下のアルコール(A)としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、2-ブタノール、2-メチル2-プロパノール等が挙げられる。
これらの中では、アイオノマー樹脂の溶融粘度を十分に下げることができると共に、積層発泡シート製造時に取扱いが容易であることから、エタノールを用いることが好ましく、少なくともエタノールを含むアルコールを用いることが好ましい。
【0030】
アルコール(A)にエタノールが含まれる場合、アルコール(A)中のエタノールの割合は50重量%以上であることが好ましく、より好ましくは60重量%、さらに好ましくは70重量%、特に好ましくは80重量%以上である。
【0031】
本発明において、アルコール(A)の沸点が120℃以下であれば、積層発泡シート製造後、添加したアルコールが樹脂層から速やかに逸散し、樹脂層にアルコールが残留することを効果的に防止できる。かかる観点から、アルコールの沸点は100℃以下が好ましく、90℃以下がより好ましく、85℃以下がさらに好ましい。一方、アルコールの沸点の下限は、概ね40℃であることが好ましく、より好ましくは50℃である。アルコールの沸点が前記範囲内であれば、積層発泡シートの製造時において取り扱いやすいものとなる。
【0032】
前記炭素数3~5の飽和炭化水素としては、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタンが挙げられる。これらの中でも、ポリエチレン系樹脂に対する可塑化効果が大きく、押出時の樹脂の溶融粘度を効率的に低下させることができることから、ブタン(ノルマルブタン、イソブタン)を用いることが好ましい。
【0033】
前記アルキル鎖の炭素数が1~3のジアルキルエーテルとしては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、ポリエチレン系樹脂に対する可塑化効果が大きく、押出時の樹脂の溶融粘度を効率的に低下させることができることから、ジメチルエーテルを用いることが好ましい。
【0034】
該揮発性可塑剤の配合量は、前記ポリエチレン系樹脂(B)と前記アイオノマー樹脂との合計1kgあたり、0.1~10molである。該配合量が少なすぎると、樹脂層形成用溶融樹脂を充分に可塑化できなくなり、溶融粘度が上昇する為、アイオノマー樹脂を良好に分散させることができなくなる。さらに、樹脂温度を調整することが難しくなるおそれや、該樹脂層の成膜不良、延展性不良により、良好な樹脂層が得られなくなるおそれがある。かかる観点から、該配合量の下限は、該ポリオレフィン系樹脂(B)と該アイオノマー樹脂との合計1kgあたり、0.5molであることが好ましく、より好ましくは1mol、さらに好ましくは1.5mol、特に好ましくは2molである。
一方、該配合量が多過ぎると、揮発性可塑剤が樹脂と分離し、揮発性可塑剤がダイから噴き出すおそれがあると共に、樹脂層と発泡層の積層状態が悪化するおそれがある。かかる観点から、該配合量の上限は、前記ポリオレフィン系樹脂(B)と前記アイオノマー樹脂との合計1kgあたり、9molであることが好ましく、より好ましくは8mol、さらに好ましくは7molである。
【0035】
また、該揮発性可塑剤における、該アルコール(A)と、該飽和炭化水素及び/又はジアルキルエーテル(B)とのモル比率は、5:95~95:5である。該モル比率がこの範囲内であれば、ポリエチレン系樹脂(B)とアイオノマー樹脂を共に可塑化することができる。アルコール(A)のモル比率が小さすぎると、共押出時、アイオノマー樹脂が充分に可塑化せず、積層発泡シートに良好な帯電防止性能が発現しないおそれがある。 一方、アルコール(A)のモル比率が大きすぎると、共押出時、ポリエチレン系樹脂(B)が充分に可塑化せず、均質な樹脂層が形成されないおそれがある。
かかる観点に加え、アイオノマー樹脂の含有量が少ない場合において、良好な積層発泡シートを安定して製造できることから、アルコール(A)と、飽和炭化水素及び/又はジアルキルエーテル(B)とのモル比率は、6:94~80:20であることが好ましく、8:92~70:30であることがより好ましく、9:91~60:40であることがさらに好ましく、10:90~50:50であることが特に好ましい。
【0036】
該アルコール(A)の配合量は、該アイオノマー樹脂1kgあたり、1~25molであることが好ましい。この範囲の量のアルコール(A)をアイオノマー樹脂に加えることにより、アイオノマー樹脂が適度に可塑化され、共押出時の温度条件においても、アイオノマー樹脂の溶融粘度を、押出成形に適する範囲に調整しやくなる。また、得られた樹脂層においては、アイオノマー樹脂がポリエチレン系樹脂中に良好に分散し、所望される帯電防止性能が発現しやすくなる。
かかる観点から、該配合量の下限は2molであることが好ましく、より好ましくは3molであり、さらに好ましくは4molであり、特に好ましくは6molである。一方、該配合量の上限は24molであることがより好ましく、さらに好ましくは22mol、特に好ましくは20molである。
【0037】
次に、本発明の積層発泡シートの製造で採用される共押出法について説明する。
本発明の積層発泡シートの製造は、樹脂層を形成するための溶融樹脂と発泡層を形成するための溶融樹脂とを共押出用ダイ内にて合流積層して押出発泡させる共押出発泡法により行われる。
該共押出発泡方法は、発泡層の形成と、発泡層への樹脂層の積層とが共押出用ダイを用いて行われるため、生産性に優れると共に、樹脂層と発泡層との間の接着力が高い積層発泡シートを得ることができる方法である。
共押出発泡法により積層発泡シートを製造する方法には、共押出用フラットダイを用いて、発泡性樹脂溶融物をシート状に押出し、積層発泡シートとする方法や、共押出用環状ダイを用いて、発泡性樹脂溶融物を筒状に押出して筒状積層発泡体を得て、次いで該筒状積層発泡体を切り開くことで積層発泡シートとする方法等がある。これらの中では、共押出用環状ダイを用いる方法が、幅が1000mm以上の幅広の積層発泡シートを容易に製造することができるので、好ましい。
【0038】
前記環状ダイを用いて共押出法により積層発泡シートを製造する場合、まず、前記ポリエチレン系樹脂(A)と、必要に応じて添加される気泡調整剤などの添加剤とを発泡層形成用押出機に供給し、加熱溶融混練してから物理発泡剤を圧入し、さらに混練して発泡層形成用樹脂溶融物とする。他方、前記ポリエチレン系樹脂(B)と、前記高分子型帯電防止剤(アイオノマー樹脂)とを樹脂層形成用押出機に供給し、加熱溶融混練してから揮発性可塑剤を圧入し、さらに混練して樹脂層形成用樹脂溶融物とする。次に、発泡層形成用樹脂溶融物と樹脂層形成用樹脂溶融物とを共押出用環状ダイに導入する。
【0039】
なお、樹脂層形成用樹脂溶融物には、本発明の目的を阻害しない範囲において該溶融物に各種の添加剤を添加してもよい。各種の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、耐候剤、紫外線吸収剤、難燃剤、充填剤、抗菌剤等が挙げられる。その場合の添加量の合計は、添加剤の目的、効果に応じて適宜定められるが、樹脂溶融物100重量部に対して概ね10重量部以下が好ましく、5重量部以下がより好ましく、3重量部以下が特に好ましい。
【0040】
該発泡層形成用樹脂溶融物に添加される物理発泡剤としては、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素、塩化メチル、塩化エチル等の塩化炭化水素、1,1,1,2-テトラフロロエタン、1,1-ジフロロエタン等のフッ化炭化水素等の有機系物理発泡剤、窒素、二酸化炭素、空気、水等の無機系物理発泡剤が挙げられる。場合によっては、アゾジカルボンアミド等の分解型発泡剤を使用することもできる。前記した物理発泡剤は、2種以上を混合して併用することが可能である。これらのうち、特にポリエチレン樹脂との相溶性、発泡性の観点から有機系物理発泡剤が好ましく、中でもノルマルブタン、イソブタン、又はこれらの混合物を主成分とするものが好適である。
【0041】
物理発泡剤の添加量は、発泡剤の種類、目的とする見掛け密度に応じて調整する。また気泡調整剤の添加量は、目的とする気泡径に応じて調節する。例えば、発泡剤としてイソブタン35重量%とノルマルブタン65重量%とのブタン混合物を用いて前記見掛け密度範囲の積層発泡シートを得るためには、ブタン混合物の添加量は、ポリエチレン系樹脂(A)100重量部当たり概ね3~30重量部であることが好ましく、より好ましくは4~20重量部であり、さらに好ましくは6~18重量部である。
【0042】
該発泡層形成用樹脂溶融物には、通常、気泡調整剤が添加される。気泡調整剤としては有機系のもの、無機系のもののいずれも使用することができる。無機系気泡調整剤としては、ホウ酸亜鉛、ホウ酸マグネシウム、硼砂等のホウ酸金属塩、塩化ナトリウム、水酸化アルミニウム、タルク、ゼオライト、シリカ、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム等が挙げられる。また有機系気泡調整剤としては、リン酸-2,2-メチレンビス(4,6-tert-ブチルフェニル)ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カルシウム、安息香酸アルミニウム、ステアリン酸ナトリウム等が挙げられる。またクエン酸と重炭酸ナトリウム、クエン酸のアルカリ塩と重炭酸ナトリウム等を組み合わせた重曹-クエン酸系化学発泡剤等も気泡調整剤として用いることができる。これらの気泡調整剤は2種以上を混合して用いることもできる。
【0043】
次に、本発明により得られる積層発泡シートについて説明する。
間紙として使用した際の取り扱い性を高めるために、積層発泡シートは、発泡層の両面に樹脂層が積層接着された積層発泡シートとすることが好ましい。
【0044】
該積層発泡シートの全体厚みは0.05~2mmであることが好ましい。前記範囲とすることで、ガラス板用間紙として用いる際に、ガラス板を積み重ねて輸送する際の積載効率を高めることができる。
かかる観点から、その上限は、1.5mmが好ましく、より好ましくは1.2mm、さらに好ましくは1.0mmである。一方、その下限は、より高い緩衝性を確保するために、0.1mmが好ましく、より好ましくは0.2mm、さらに好ましくは0.3mmである。
【0045】
また、積層発泡シートの見掛け密度は、軽量性、取扱い性、緩衝性のバランスに優れることから、20~200kg/m3であることが好ましく、より好ましくは30~150kg/m3、さらに好ましくは50~120kg/m3である。
また、同様の観点から、積層発泡シートの全体坪量は、10~200g/m2であることが好ましく、より好ましくは15~100g/m2、さらに好ましくは20~80g/m2である。
【0046】
帯電防止性能を発現させつつ、コスト性や軽量性を高めるために、前記樹脂層の片面あたりの坪量は、50g/m2以下であることが好ましく、より好ましくは40g/m2以下、さらに好ましくは30g/m2以下、20g/m2以下、10g/m2以下、特に好ましくは5g/m2以下である。一方、樹脂層の成膜性を高めるために、その下限は、概ね1g/m2であることが好ましく、より好ましくは1.5g/m2である。
【0047】
本明細書において積層発泡シートの厚み、樹脂層の厚みの測定は次のようにして行う。まず、積層発泡シートを押出方向に対して垂直に切断し、該切断面の厚みを顕微鏡により等間隔に幅方向(積層発泡シートの押出方向及び厚み方向と直交する方向)に10点撮影を行い、撮影した各点における積層発泡シートの厚みと樹脂層の厚みを測定する。上記測定を、無作為に選択された積層発泡シートの3か所に対して行い、得られた値をそれぞれ算術平均することで、積層発泡シートの厚み、樹脂層の厚みを求める。
【0048】
本明細書において、積層発泡シートの坪量の測定は次のように行う。まず、積層発泡シートの全幅にわたって所定寸法(例えば、長さ10cm)の試験片を切り出し、試験片の重量(g)を測定した後、試験片の面積でその重量を割り算することで積層発泡シートの坪量が求められる。
また、積層発泡シートの見掛け密度は、前記積層発泡シートの坪量(g/m2)を積層発泡シートの厚み(mm)で除し、単位換算することで求められる。
【0049】
本明細書において、樹脂層の坪量の測定は次のように行う。
樹脂層の坪量(g/m2)は、前記樹脂層の厚みに該樹脂層を構成している樹脂の密度を乗じ、単位換算を行なうことで求められる。
また、積層発泡シートの製造時における、樹脂層の吐出量X[kg/時]と、得られる積層発泡シートの幅W[m]と、単位時間あたりに押出される積層発泡シートの長さL[m/時]とを、下記(1)式に代入することにより、樹脂層全体の坪量[g/m2]を求めることもできる。なお、発泡層の両面に樹脂層が積層されている場合には、それぞれの樹脂層の吐出量の重量比から、各面の樹脂層の坪量を求めることができる。
樹脂層全体の坪量[g/m2]=〔1000X/(L×W)〕・・・(1)
【0050】
該積層発泡シートの樹脂層表面の表面抵抗率は1×1013Ω未満であることが好ましく、5×1012Ω未満であることがより好ましく、さらに好ましくは1×1012Ω以下である。かかる範囲とすることで、帯電防止性能が十分に発現された積層発泡シートとなり、埃等の付着をより抑制することができる。なお、積層発泡シートの両面が、前記表面抵抗率を有することが好ましい。
【0051】
本明細書において、表面抵抗率の測定は次のように行う。
積層発泡シートから所定寸法(例えば、縦100mm×横100mm×厚み:シート厚み)の複数の試験片を切り出し、この試験片を用いて、JIS K6271(2001年)の方法に準じて印加電圧500Vで印加してから1分後の表面抵抗値を測定し、得られた測定値の平均値から表面抵抗率を求めることができる。なお、高分子型帯電防止剤(アイオノマー樹脂)の表面抵抗率についても、JIS K6271(2001年)の方法に基づき、印加電圧500Vで印加してから1分後の表面抵抗値を測定し、得られた測定値の平均値から求めることができる。
表面抵抗率の測定装置として、例えばタケダ理研工業(株)製、型式:TR8601等を用いることができる。
【0052】
本発明方法の積層発泡シートは、特に、液晶ディスプレー、プラズマディスプレー、エレクトロルミネッセンスディスプレー等の各種の画像表示機器用のガラスパネルに用いられるガラス基板間に挿入して使用される、ガラス基板を保護するためのガラス板用間紙として、好適に使用することができる。
【実施例1】
【0053】
以下、実施例に基づいて本発明方法を更に詳細に説明する。但し、本発明方法は実施例に限定されるものではない。
実施例、比較例で使用したポリエチレン系樹脂、アイオノマー樹脂(高分子型帯電防止剤)、気泡調整剤、並びに評価方法を以下に記載する。
【0054】
ポリエチレン系樹脂(A)及びポリエチレン系樹脂(B)
(1)略称「LDPE1」:NUC株式会社製「低密度ポリエチレン:商品名NUC8009」(密度917kg/m3、MFR9.0g/10分、融点107℃)
【0055】
アイオノマー樹脂(高分子型帯電防止剤)
(1)略称「MK400」:三井・デュポンポリケミカル株式会社製エチレン系カリウムアイオノマー樹脂「エンティラMK400」(密度970kg/m3、MFR1.5g/10分、融点93℃、表面抵抗率1.0×107Ω)
【0056】
物理発泡剤
混合ブタン(ノルマルブタン35重量%とイソブタン65重量%との混合物)
【0057】
揮発性可塑剤
(1)エタノール:関東化学株式会社製「エタノール」:商品名エタノール(99.5)鹿1級
(2)ミックスエタノール:山一化学工業株式会社製「混合アルコール」:商品名ミックスエタノールNP
(エタノール:85.5wt%、イソプロピルアルコール4.9wt%、ノルマルプロピルアルコール9.6wt%)
(3)混合ブタン(ノルマルブタン35重量%とイソブタン65重量%との混合物)
(4)ジメチルエーテル
【0058】
気泡調整剤
クエン酸と炭酸水素ナトリウムとを1:2の比率で配合した化学発泡剤
【0059】
装置
発泡層形成用の押出機として直径90mmの第一押出機と直径120mmの第二押出機2台の押出機が直列に接続されたタンデム押出機を使用し、樹脂層形成用の押出機として直径50mmの第三押出機を使用し、第二押出機の出口と第三押出機の出口が共押出用環状ダイに接続された装置を用いた。共押出用環状ダイは、ダイ中間部で樹脂層形成用樹脂溶融物が、筒状に流れる発泡層形成用樹脂溶融物の内側及び外側に合流積層される構造を有し、ダイ出口のリップの直径は94mmである。
【0060】
実施例1
ポリエチレン系樹脂(LDPE1)100重量部と、ポリエチレン系樹脂100重量部に対して、1.6重量部の前記気泡調整剤とを第一押出機の原料投入口に供給し、加熱溶融混練して約200℃に調整し、溶融樹脂とした。該溶融樹脂に物理発泡剤として、混合ブタンを12重量部圧入し、さらに混錬し、次いで第一押出機の下流側に連結された第二押出機に供給して、樹脂温度を約112℃に調整して発泡層形成用樹脂溶融物を得た。
【0061】
他方、表2に示すポリエチレン系樹脂と、表2に示すアイオノマー樹脂(高分子型帯電防止剤)とを第三押出機の原料投入口に供給し、加熱溶融混錬して約200℃に調整し、溶融樹脂混合物とした。次いで、該溶融樹脂混合物に揮発性可塑剤として表2に示す種類、量の揮発性可塑剤を圧入し、さらに混練した後、約120℃に樹脂温度を調整して樹脂層形成用樹脂溶融物を得た。
【0062】
前記表面層形成用樹脂溶融物及び前記発泡層形成用樹脂溶融物のそれぞれを表1に示す吐出量で共押出用環状ダイ中へ導入し、樹脂層形成用樹脂溶融物を、筒状に流れる発泡層形成用樹脂溶融物の内側及び外側に合流積層させて環状ダイから筒状に共押出し、筒状発泡層の内外面に樹脂層が積層された筒状積層発泡体を形成した。押出された筒状積層発泡体を直径350mmの筒状拡幅装置(マンドレル)にて拡幅すると共に、表2に示した全体坪量となるよう引き取り速度を調整しつつ、切り開くことで、発泡層の両面に樹脂層が積層されたポリエチレン系樹脂積層発泡シートを得た。
【0063】
【0064】
実施例2~8
表2に示す配合に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてポリエチレン系樹脂積層発泡シートを得た。
【0065】
比較例1、2
表2に示す配合に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリエチレン系樹脂積層発泡シートを得た。
得られた積層発泡シートは、帯電防止性能が発現しないものであった。
【0066】
実施例、比較例で得られた積層発泡シートの物性、帯電防止性を表2に示す。
【0067】
【0068】
表2中の積層発泡シートの厚み、見掛け密度、坪量、樹脂層の坪量、表面抵抗率は、前記のように測定した。
なお、樹脂層の坪量は、全体坪量をもとに、発泡層と帯電防止層との吐出量の比から求めた。
また、積層発泡シート各面の表面抵抗率は、具体的には次のように測定した。得られた積層発泡シートから試験片(縦100mm×横100mm×厚み:試験片厚み)を無作為に3片切り出した。試験片の状態調節後、測定装置としてタケダ理研工業株式会社製「TR8601」を用い、印加電圧500Vで試験片に印加を開始してから1分後の表面抵抗率を測定した。表面抵抗率測定は試験片の両面に対して行ない(各面3回)、得られた測定値の算術平均を多層発泡シート各面の表面抵抗率とした。なお、表2中、S面はマンドレルと反対側に向けて引き取られた積層発泡シートの面であり、M面はマンドレルに向けて引き取られた積層発泡シートの面である。
【0069】
表2中の帯電防止性は次の基準で評価した。
○:表面抵抗率が1×1013Ω未満である。
×:表面抵抗率が1×1013Ω以上である。