(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-31
(45)【発行日】2023-06-08
(54)【発明の名称】蝶番構造
(51)【国際特許分類】
F16C 11/04 20060101AFI20230601BHJP
E05D 3/02 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
F16C11/04 F
E05D3/02
(21)【出願番号】P 2019143822
(22)【出願日】2019-08-05
【審査請求日】2022-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000137856
【氏名又は名称】シチズンマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢部 晃一
【審査官】倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-074970(JP,U)
【文献】実公昭35-020019(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 11/04
E05D 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに連結される2つの部材の各々に取り付ける2つの羽根板と、該2つの羽根板の各々に設けた2つの筒部に挿通して、前記2つの羽根板を回動自在に連結する連結軸とで構成される蝶番構造であって、
前記2つの羽根板に隣接して配置されて前記2つの部材の各々に取り付ける一対の保持部材と、該一対の保持部材にそれぞれ設けた軸孔に遊嵌状態で挿通する軸部材とを設け、
前記軸部材と前記一対の保持部材の前記軸孔との間に形成される隙間が、前記連結軸と前記2つの筒部との間に形成される隙間よりも大きいことを特徴とする蝶番構造。
【請求項2】
前記軸部材が、前記連結軸の延長部分で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の蝶番構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蝶番構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図6に示すように、2つの部材を開閉可能に連結して支持する蝶番の構造として、従来、2つの羽根板を回動自在に連結してなり、これら2つの羽根板のうち、一方の羽根板を一方の部材に、他方の羽根板を他方の部材に、各々ボルト等によって取り付ける構造が広く適用されている。
【0003】
そして、このような蝶番構造は、2つの羽根板を端縁で連通する挿通ピン(連結軸)を用いて回動自在に連結されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の蝶番構造は、羽根板が各部材から外れると、開閉可能に連結された両部材が分離してしまうなどの問題があった。
【0006】
本発明は、上述のような実情に鑑みてなされたものであって、各羽根板が開閉可能に連結された両部材から外れた状態となっても、連結されていた両部材が分離するのを防ぐことができる蝶番構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、互いに連結される2つの部材の各々に取り付ける2つの羽根板と、該2つの羽根板の各々に設けた2つの筒部に挿通して、前記2つの羽根板を回動自在に連結する連結軸とで構成される蝶番構造であって、前記2つの羽根板に隣接して配置されて前記2つの部材の各々に取り付ける一対の保持部材と、該一対の保持部材にそれぞれ設けた軸孔に遊嵌状態で挿通する軸部材とを設け、前記軸部材と前記一対の保持部材の前記軸孔との間に形成される隙間が、前記連結軸と前記2つの筒部との間に形成される隙間よりも大きいことにより、前述した課題を解決するものである。
【0008】
請求項2に係る発明は、本請求項1に記載された蝶番構造の構成に加えて、前記軸部材が、前記連結軸の延長部分で構成されていることにより、前述した課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る蝶番構造は、軸部材と保持部材の軸孔との間に形成される隙間が、連結軸と各羽根板の筒部との間に形成される隙間よりも大きいことにより、互いに連結される2つの部材の開閉動作に伴う両羽根板の連結軸を中心とした揺動の際、連結軸と各羽根板の筒部との間の負荷に比較して、軸部材と保持部材との間の負荷が小さいので、仮に羽根板が各部材から外れた場合でも、両保持部材が互いに連結される両部材から容易に外れることはなく、互いに連結される2つの部材とが互いに分離するのを防止することができる。
【0010】
軸部材を、連結軸の延長部分で構成することにより、軸部材と連結軸とを兼用して、軸部材の部品点数を削減してコンパクトな蝶番構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態による蝶番構造の斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態による蝶番構造の平断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態による蝶番構造の側面図および部分拡大図である。
【
図4】本発明の一実施形態による蝶番構造のボルト脱落時の斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態による蝶番構造のボルト脱落時の側面図および部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、互いに連結される2つの部材の各々に取り付ける2つの羽根板と、これら2つの羽根板の各々に設けた2つの筒部に挿通して、2つの羽根板を回動自在に連結する連結軸とで構成される蝶番構造であって、2つの羽根板に隣接して配置されて2つの部材の各々に取り付ける一対の保持部材と、この一対の保持部材にそれぞれ設けた軸孔に遊嵌状態で挿通する軸部材とを設け、軸部材と一対の保持部材の軸孔との間に形成される隙間が、連結軸と2つの筒部との間に形成される隙間よりも大きいものであれば、その具体的な実施態様は、如何なるものであっても構わない。
【0013】
以下に、本発明の一実施形態である蝶番構造100について、
図1乃至
図5に基づいて説明する。
なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0014】
図1および
図2に示すように、本発明の実施形態による蝶番構造100は、羽根板110と、連結軸120と、一対の保持部材130と、軸部材140とで構成される。
【0015】
羽根板110は、固定側筒部111aを備えた固定側羽根板110aと、可動側筒部111bを備えた可動側羽根板110bからなる。
固定側羽根板110aは、互いに連結される2つの部材の例えば固定側の固定部材FMの端縁に取り付けられ、羽根板固定用ボルトB1によって固定部材FMに締結されて固定される。
可動側羽根板110bは、互いに連結される2つの部材の例えば可動側の可動部材MMの端縁に取り付けられ、羽根板固定用ボルトB1によって可動部材MMに締結されて固定される。
固定側筒部111aと可動側筒部111bとは、相互に連通可能に設けられている。
【0016】
連結軸120は、固定側筒部111aと可動側筒部111bとに挿通され、固定側羽根板110aと可動側羽根板110bとを連結して、固定部材FMに対して可動部材MMを回動自在とする。
【0017】
保持部材130は、固定側保持部材130aと、可動側保持部材130bからなる。
固定側保持部材130aは、固定側羽根板110aを挟んで、固定側羽根板110aの両脇に隣接して取り付けられ、保持部材固定用ボルトB2によって固定部材FMに締結されて固定される。
固定側保持部材130aは、一対をなし、固定側第1保持部材130aaと固定側第2保持部材130abからなる。
可動側保持部材130bは、可動側羽根板110bを挟んで、可動側羽根板110bの両脇に隣接して取り付けられ、保持部材固定用ボルトB2によって可動部材MMに締結されて固定される。
可動側保持部材130bは、一対をなし、可動側第1保持部材130baと可動側第2保持部材130bbからなる。
【0018】
一対の保持部材130には、それぞれ軸孔131が設けられている。
軸部材140は、軸孔131に遊嵌状態で挿通されている。
本実施形態によると、軸部材140は、連結軸120の延長部分で構成されている。
但し、本実施形態とは異なり、軸部材140は、連結軸120とは異なる軸として構成されてもよい。
【0019】
図2および
図3に示すように、連結軸120と、固定側筒部111aおよび可動側筒部111bとの間には、第1隙間G1が形成されている。
第1隙間G1は、連結軸120を介して固定部材FMに対して可動部材MMを回動自在とするのを妨げない程度の僅かな空間により形成されている。
なお、上述のように、本実施形態によると、軸部材140は連結軸120の延長部分で構成されているので、
図3の部分拡大図では、連結軸120は軸部材140として示されている。
【0020】
軸部材140と、保持部材130の軸孔131との間には、第2隙間G2が形成されている。
図3では、保持部材130として、固定側第2保持部材130abおよび可動側第2保持部材130bbが示されている。
第2隙間G2は、第1隙間G1よりも大きい空間により形成されている。
【0021】
固定側羽根板110aと固定部材FMとが羽根板固定用ボルトB1によって緩みなく締結され、可動側羽根板110bと可動部材MMとが、羽根板固定用ボルトB1によって緩みなく締結された状態では、固定側羽根板110aは、固定部材FMに固定され、連結軸120を介して可動側羽根板110bと回動自在に連結され、可動側羽根板110bは、可動部材MMに固定されていることから、固定部材FMと可動部材MMとは、回動自在に連結された状態にある。
【0022】
また、この状態では、軸部材140と軸孔131の内周面とは、第2隙間G2によって互いに隔てられ、概ね非接触である。
よって、固定部材FMに対して可動部材MMを回動する際、保持部材130と軸部材140とによって回動抵抗が増すことはなく、且つ保持部材130に対する負荷は、固定側羽根板110aおよび可動側羽根板110bに対する負荷に比較して小さい。
【0023】
仮に
図4に示すように、固定側羽根板110aが固定部材FMから外れると、軸部材140は、保持部材130、すなわち固定側保持部材130aおよび可動側保持部材130bによって軸支される。
図5では、保持部材130として、固定側第2保持部材130abおよび可動側第2保持部材130bbが示されている。
上述のように、固定側保持部材130aは固定部材FMに固定され、可動側保持部材130bは可動部材MMに固定されているので、固定側羽根板110aと固定部材FMが分離した状態となっても、固定部材FMと可動部材MMとは、互いに分離することがない。
【0024】
すなわち、
図5の部分拡大図に示すように、軸部材140は、軸孔131の内周面に接触し、保持部材130によって保持される。
これにより、固定部材FMと可動部材MMとは接続された状態に保たれ、固定部材FMと可動部材MMとが互いに分離することが防止される。
【0025】
なお、本実施形態では、固定側羽根板110aと固定部材FMとが分離した場合について説明しているが、可動側羽根板110bと可動部材MMとが分離した場合、および、固定側羽根板110aと固定部材FMとが分離して且つ可動側羽根板110bと可動部材MMとが分離した場合も、同様に軸部材140と保持部材130とによって、固定部材FMと可動部材MMとは連結された状態に保たれる。
【0026】
以上のようにして得られた本実施形態の蝶番構造100は、軸部材140と保持部材130の軸孔131との間に形成される隙間G2が、連結軸120と固定側羽根板110aの固定側筒部111aおよび可動側羽根板110bの可動側筒部111bとの間に形成される隙間G1よりも大きいことにより、従来のような蝶番構造と比較すると、固定側羽根板110aが固定部材FMに、可動側羽根板110bが可動部材MMにそれぞれ固定されている状態では、軸部材140と保持部材130とによって回動抵抗を増加させることなく、固定側羽根板110aと固定部材FMとの分離、または可動側羽根板110bと可動部材MMとの分離の際に、軸部材140が保持部材130に保持されるので、固定部材FMと可動部材MMとが互いに分離することを防止することができる。
【0027】
そして、軸部材140が、連結軸120の延長部分で構成されていることにより、軸部材140の部品点数を削減することができるとともに、本実施形態の蝶番構造100をコンパクトに形成することができる。
【符号の説明】
【0028】
100・・・蝶番構造
110・・・羽根板
110a・・・固定側羽根板
110b・・・可動側羽根板
111・・・筒部
111a・・・固定側筒部
111b・・・可動側筒部
120・・・連結軸
130・・・保持部材
130a・・・固定側保持部材
130aa・・・固定側第1保持部材
130ab・・・固定側第2保持部材
130b・・・可動側保持部材
130ba・・・可動側第1保持部材
130bb・・・可動側第2保持部材
131・・・軸孔
140・・・軸部材
B1・・・羽根板固定用ボルト
B2・・・保持部材固定用ボルト
BH・・・ボルト孔
FM・・・固定部材
MM・・・可動部材
G1・・・第1隙間
G2・・・第2隙間