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特許7288825積層鉄心の製造装置及び積層鉄心の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-31
(45)【発行日】2023-06-08
(54)【発明の名称】積層鉄心の製造装置及び積層鉄心の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 28/02 20060101AFI20230601BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20230601BHJP
   B21D 28/24 20060101ALI20230601BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
B21D28/02 C
H02K15/02 F
H02K15/02 E
B21D28/24 D
H01F41/02 B
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019160461
(22)【出願日】2019-09-03
(65)【公開番号】P2021037528
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000144038
【氏名又は名称】株式会社三井ハイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100153969
【弁理士】
【氏名又は名称】松澤 寿昭
(72)【発明者】
【氏名】丸山 尊嗣
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-036039(JP,A)
【文献】特開平10-233477(JP,A)
【文献】特開2015-107013(JP,A)
【文献】特開2015-012667(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0069443(US,A1)
【文献】米国特許第05960533(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 28/02
H02K 15/02
B21D 28/24
H01F 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状を呈しており且つ内周縁にM個(Mは1以上の自然数)の突起が設けられた複数の打抜部材を金属板から打ち抜いて転積することにより、積層鉄心を製造する装置であって、
N個(NはMより大きい自然数)のパンチが一組とされた突起形成用のパンチユニットと、
N個の補助パンチと
前記突起形成用のパンチユニット及び前記N個の補助パンチよりも下流側に配置されており、前記突起形成用のパンチユニットによって前記金属板に形成された突起を加工しないように、前記金属板から前記複数の打抜部材の内径となる領域を打ち抜くように構成された内径抜きパンチとを備え、
前記N個の補助パンチは、前記N個の補助パンチのうちから選択された(N-M)個の補助パンチによって、前記N個のパンチのうち(N-M)個のパンチによる加工を無効化するための無効化加工を前記金属板に対して行うように構成されている、積層鉄心の製造装置。
【請求項2】
前記パンチユニットは、前記N個の補助パンチよりも下流側に配置されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
環状を呈しており且つ外周縁にM個(Mは1以上の自然数)の突起が設けられた複数の打抜部材を金属板から打ち抜いて転積することにより、積層鉄心を製造する装置であって、
N個(NはMより大きい自然数)のパンチが一組とされた突起形成用のパンチユニットと、
N個の補助パンチと、
前記突起形成用のパンチユニット及び前記N個の補助パンチよりも下流側に配置されており、前記突起形成用のパンチユニットによって前記金属板に形成された突起を加工しないように、前記金属板から前記複数の打抜部材の外径となる領域を打ち抜くように構成された外径抜きパンチとを備え、
前記N個の補助パンチは、前記N個の補助パンチのうちから選択された(N-M)個の補助パンチによって、前記N個のパンチのうち(N-M)個のパンチによる加工を無効化するための無効化加工を前記金属板に対して行うように構成されており、
前記パンチユニットは、前記N個の補助パンチよりも下流側に配置されている、積層鉄心の製造装置。
【請求項4】
前記N個の補助パンチが一組とされた補助パンチユニットをさらに備え、
前記N個の補助パンチが個々に動作可能に構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記N個の補助パンチは、
前記金属板の相対的に上流側に配置された一の補助パンチと、
前記一の補助パンチとは異なるタイミングで前記金属板を無効化加工するように前記一の補助パンチよりも下流側に配置された他の補助パンチとを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記金属板から打ち抜かれた前記複数の打抜部材を、高さ方向において前記突起が重なり合うように転積するように構成された駆動機構をさらに備える、請求項1~のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
環状を呈しており且つ内周縁にM個(Mは1以上の自然数)の突起が設けられた複数の打抜部材を金属板から打ち抜いて転積することにより、積層鉄心を製造する方法であって、
N個(NはMより大きい自然数)のパンチが一組とされた突起形成用のパンチユニットによって前記金属板を加工することと、
前記N個のパンチのうち(N-M)個のパンチによる加工を無効化するために、前記N個の補助パンチのうちから選択された(N-M)個の補助パンチによって前記金属板を無効化加工することと
前記突起形成用のパンチユニットによって前記金属板を加工すること及び前記金属板を無効化加工することの後に、前記突起形成用のパンチユニットによって前記金属板に形成された突起を加工しないように、内径抜きパンチによって、前記金属板から前記複数の打抜部材の内径となる領域を打ち抜くこととを含む、積層鉄心の製造方法。
【請求項8】
前記パンチユニットによって前記金属板を加工することは、前記(N-M)個の補助パンチによって前記金属板を無効化加工することの後に行われる、請求項に記載の方法。
【請求項9】
環状を呈しており且つ外周縁にM個(Mは1以上の自然数)の突起が設けられた複数の打抜部材を金属板から打ち抜いて転積することにより、積層鉄心を製造する方法であって、
N個(NはMより大きい自然数)のパンチが一組とされた突起形成用のパンチユニットによって前記金属板を加工することと、
前記N個のパンチのうち(N-M)個のパンチによる加工を無効化するために、前記N個の補助パンチのうちから選択された(N-M)個の補助パンチによって前記金属板を無効化加工することと、
前記突起形成用のパンチユニットによって前記金属板を加工すること及び前記金属板を無効化加工することの後に、前記突起形成用のパンチユニットによって前記金属板に形成された突起を加工しないように、外径抜きパンチによって、前記金属板から前記複数の打抜部材の外径となる領域を打ち抜くこととを含み、
前記パンチユニットによって前記金属板を加工することは、前記(N-M)個の補助パンチによって前記金属板を無効化加工することの後に行われる、積層鉄心の製造方法。
【請求項10】
前記N個の補助パンチが補助パンチユニットとして一組に束ねられており、
前記N個の補助パンチが個々に動作可能に構成されている、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記N個の補助パンチは、
前記金属板の相対的に上流側に配置された一の補助パンチと、
前記一の補助パンチとは異なるタイミングで前記金属板を無効化加工するように前記一の補助パンチよりも下流側に配置された他の補助パンチとを含む、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記金属板から打ち抜かれた前記複数の打抜部材を、高さ方向において前記突起が重なり合うように転積することをさらに含む、請求項7~11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層鉄心の製造装置及び積層鉄心の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、帯状の金属板を間欠的に送り出すことと、内径領域を金属板から打ち抜いて、キーとなる突起部が設けられた複数の軸孔を、各突起部が異なる角度を向くように形成することと、各軸孔を含む外径領域を金属板からそれぞれ打ち抜いて、複数の打抜部材を形成することと、突起部同士が重なり合うように複数の打抜部材を転積することとを含む回転子積層鉄心の製造方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-007530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の方法によれば、各突起部が異なる角度を向くように複数の軸孔を形成するために、軸孔形成用の複数のパンチが金属板の長手方向において一列に配置される。そのため、各パンチが精度よく位置合わせされていないと、複数の打抜部材が積層されたときに、回転子積層鉄心の高さ方向において突起部の位置ずれが生じうる。
【0005】
特許文献1の方法によれば、軸孔が一つのパンチで形成されるので、パンチは、突起部に対応する第1の部分と、軸孔の開口部に対応する第2の部分とを含む。突起部は凹凸状などの比較的複雑な形状を呈しているので、第1の部分は比較的破損しやすい傾向にある。第1の部分に破損が発生した場合、第2の部分も含めてパンチ全体の交換を要するので、メンテナンスのためのコストが嵩みうる。
【0006】
そこで、本開示は、積層鉄心を高精度且つ低コストで製造することが可能な積層鉄心の製造装置及び積層鉄心の製造方法を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
積層鉄心の製造装置の一例は、環状を呈しており且つ内周縁又は外周縁にM個(Mは1以上の自然数)の突起が設けられた複数の打抜部材を金属板から打ち抜いて転積するように構成されていてもよい。積層鉄心の製造装置の一例は、N個(NはMより大きい自然数)のパンチが一組とされた突起形成用のパンチユニットと、N個の補助パンチとを備えてもよい。N個の補助パンチは、N個の補助パンチのうちから選択された(N-M)個の補助パンチによって、N個のパンチのうち(N-M)個のパンチによる加工を無効化するための無効化加工を金属板に対して行うように構成されていてもよい。
【0008】
積層鉄心の製造方法の一例は、環状を呈しており且つ内周縁又は外周縁にM個(Mは1以上の自然数)の突起が設けられた複数の打抜部材を金属板から打ち抜いて転積することを含んでいてもよい。積層鉄心の製造方法の一例は、N個(NはMより大きい自然数)のパンチが一組とされた突起形成用のパンチユニットによって金属板を加工することと、N個のパンチのうち(N-M)個のパンチによる加工を無効化するために、N個の補助パンチのうちから選択された(N-M)個の補助パンチによって金属板を無効化加工することとをさらに含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る積層鉄心の製造装置及び積層鉄心の製造方法によれば、積層鉄心を高精度且つ低コストで製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、回転子の一例を示す分解斜視図である。
図2図2は、積層鉄心の製造装置の一例を示す概略図である。
図3図3は、プレス加工装置の一例を示す概略断面図である。
図4図4は、プレス加工装置に含まれるパンチの一例を概略的に示す上面図である。
図5図5は、回転子積層鉄心の打抜加工のレイアウトの一例を示す図である。
図6図6は、回転子積層鉄心の打抜加工のレイアウトの一例を示す図である。
図7図7は、回転子積層鉄心の打抜加工のレイアウトの一例を示す図である。
図8図8は、プレス加工装置に含まれるパンチの他の例を概略的に示す上面図である。
図9図9は、固定子積層鉄心の一例を示す斜視図である。
図10図10は、プレス加工装置に含まれるパンチの他の例を概略的に示す上面図である。
図11図11は、固定子積層鉄心の打抜加工のレイアウトの一例を示す図である。
図12図12は、固定子積層鉄心の打抜加工のレイアウトの一例を示す図である。
図13図13は、固定子積層鉄心を構成する中間体の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示に係る実施形態の一例について、図面を参照しつつより詳細に説明する。以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0012】
[回転子の構成]
まず、図1を参照して、回転子1(ロータ)の構成について説明する。回転子1と固定子(ステータ)とが組み合わせられることにより、電動機(モータ)が構成される。回転子1は、例えば、埋込磁石型(IPM)モータの一部を構成してもよいし、他の種類のモータの一部を構成してもよい。回転子1は、回転子積層鉄心2(積層鉄心)と、シャフト3とを含む。
【0013】
回転子積層鉄心2は、積層体10(積層鉄心)と、複数の永久磁石12と、複数の固化樹脂14とを含む。
【0014】
積層体10は、円筒状を呈している。積層体10の中央部には、中心軸Axに沿って延びるように積層体10を貫通する軸孔10aが設けられている。軸孔10aは、積層体10の高さ方向(上下方向)に延びている。積層体10は中心軸Ax周りに回転するので、中心軸Axは回転軸でもある。
【0015】
軸孔10aの内周面には、少なくとも一つの突条10bが設けられている。突条10bは、積層体10の上端面S1から下端面S2に至るまで、高さ方向に延びている。突条10bは、軸孔10aの内周面から中心軸Axに向けて突出している。突条10bの数は、2つであってもよい。この場合、2つの突条10bは、中心軸Axを間において対向するように配置されていてもよい。
【0016】
積層体10には、複数の磁石挿入孔16が形成されている。磁石挿入孔16は積層体10の外周縁に沿って所定間隔で並んでいる。磁石挿入孔16は、中心軸Axに沿って延びるように積層体10を貫通している。すなわち、磁石挿入孔16は高さ方向に延びている。
【0017】
積層体10は、複数の打抜部材Wが積み重ねられて構成されている。打抜部材Wは、後述する金属板MS(例えば、電磁鋼板)が所定形状に打ち抜かれた板状体であり、積層体10に対応する形状を呈している。すなわち、打抜部材Wは、全体として環状を呈しており、軸孔10aに対応する中心孔Waと、突条10bに対応する突起Wbと、磁石挿入孔16に対応する貫通孔Wcとを含んでいる。つまり、打抜部材Wの内周縁には、少なくとも一つの突起Wbが設けられている。
【0018】
積層体10は、いわゆる転積によって構成されていてもよい。「転積」とは、打抜部材W同士の角度を相対的にずらしつつ、複数の打抜部材Wを積層することをいう。転積は、主に打抜部材Wの板厚偏差を相殺して、積層体10の平面度、平行度及び直角度を高めることを目的に実施される。転積の角度は、任意の大きさに設定されていてもよい。
【0019】
積層方向において隣り合う打抜部材W同士は、カシメ部18によって締結されていてもよい。これらの打抜部材W同士は、カシメ部18に代えて、種々の公知の方法にて締結されてもよい。例えば、複数の打抜部材W同士は、接着剤又は樹脂材料を用いて互いに接合されてもよいし、溶接によって互いに接合されてもよい。
【0020】
永久磁石12は、各磁石挿入孔16内に一つずつ挿入されている。永久磁石12の形状は、特に限定されないが、例えば直方体形状を呈していてもよい。永久磁石12の種類は、モータの用途、要求される性能などに応じて決定すればよく、例えば、焼結磁石であってもよいし、ボンド磁石であってもよい。
【0021】
固化樹脂14は、永久磁石12を収容する磁石挿入孔16内に充填された溶融状態の樹脂材料(溶融樹脂)が固化したものである。固化樹脂14は、永久磁石12を磁石挿入孔16内に固定するように構成されていてもよい。固化樹脂14は、上下方向で隣り合う打抜部材W同士を接合するように構成されていてもよい。
【0022】
シャフト3は、全体として円柱状を呈している。シャフト3には、一対の凹溝3aが形成されている。凹溝3aは、シャフト3の一端から他端にかけてシャフト3の長手方向に沿って延びている。シャフト3は、軸孔10a内に挿通される。シャフト3が軸孔10aに挿通された状態で、突条10bが凹溝3aに係合する。これにより、シャフト3が回転子積層鉄心2に固定され、シャフト3と回転子積層鉄心2との間で回転力が伝達する。
【0023】
[積層鉄心の製造装置の構成]
続いて、図2を参照して、積層鉄心の製造装置100について説明する。製造装置100は、帯状の金属板MSから積層体10を製造するように構成されている。製造装置100は、図2に示されるように、アンコイラー110と、送出装置120と、プレス加工装置130と、コントローラCtr(制御部)とを備える。
【0024】
アンコイラー110は、コイル材111を回転自在に保持するように構成されている。コイル材111は、金属板MSがコイル状(渦巻状)に巻回されたものである。送出装置120は、金属板MSを上下から挟み込む一対のローラ121,122を含む。一対のローラ121,122は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて回転及び停止し、金属板MSをプレス加工装置130に向けて間欠的に順次送り出すように構成されている。
【0025】
プレス加工装置130は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて動作するように構成されている。プレス加工装置130は、例えば、送出装置120によって送り出される金属板MSを複数のパンチにより順次打ち抜き加工して、複数の打抜部材Wを形成するように構成されていてもよい。プレス加工装置130は、打ち抜き加工によって得られた複数の打抜部材Wを順次積層して積層体10を形成するように構成されていてもよい。プレス加工装置130の構成については、後述する。
【0026】
コントローラCtrは、例えば、記録媒体(図示せず)に記録されているプログラム又はオペレータからの操作入力等に基づいて、送出装置120及びプレス加工装置130を動作させるための指示信号を生成するように構成されている。コントローラCtrは、送出装置120及びプレス加工装置130に当該指示信号をそれぞれ送信するように構成されている。
【0027】
[プレス加工装置の詳細]
続いて、図3及び図4を参照して、プレス加工装置130の詳細について説明する。プレス加工装置130は、図3に示されるように、下型140と、上型150と、プレス機160とを含む。下型140は、ベース141と、ダイホルダ142と、ダイ部材D1~D6と、複数のガイドポスト143と、搬送機構144とを含む。
【0028】
ベース141は、例えば床面上に固定されており、プレス加工装置130全体の土台として機能する。ダイホルダ142は、ベース141上に支持されている。ダイホルダ142には、複数の排出孔C1~C6が形成されている。ダイホルダ142は、例えば、焼き入れ等の熱処理が施されていない鋼材(生材)で構成されていてもよい。
【0029】
複数の排出孔C1~C6は、ダイホルダ142の内部を上下方向(図3の矢印Z参照)に延びていてもよい。複数の排出孔C1~C6には、金属板MSから打ち抜かれた材料(例えば、打抜部材W、廃材等)が排出される。
【0030】
ダイ部材D1~D6は、金属板MSの搬送方向において互いに隣接するように、ダイホルダ142の上部に取り付けられている。複数のダイ部材D1~D6は、金属板MSの搬送方向において、上流側から下流側に向けてこの順に並んでいる。
【0031】
ダイ部材D1は、ダイプレートD11と、ダイD12とを含む。ダイプレートD11は、中央部に設けられた貫通孔内にダイD12を保持するように構成されている。ダイプレートD11は、例えば、焼き入れ等の熱処理が施された鋼材で構成されていてもよい。ダイD12は、例えば、炭化タングステンを含む超硬合金で構成されていてもよい。
【0032】
図3及び図4に例示されるように、ダイD12には、上下方向に貫通するダイ孔D13が形成されている。ダイ孔D13は、後述するパンチP1と共に、金属板MSを打抜加工するためのユニットを構成している。当該ユニットが金属板MSを打抜加工することにより、磁石挿入孔16に対応する貫通孔Wcが金属板MSに形成されてもよい。
【0033】
ダイ孔D13は、磁石挿入孔16に対応する形状を呈していてもよく、矩形状などを呈していてもよい。ダイ孔D13の数は、積層体10に形成される磁石挿入孔16と同数であってもよい。図4に例示されるように、複数のダイ孔D13が全体として円形状をなすように略等間隔で並んでいてもよい。
【0034】
図3に戻って、ダイ孔D13は、排出孔C1と連通している。ダイ孔D13内にパンチP1が挿抜されることにより、ダイ孔D13の輪郭に沿った形状で金属板MSが打抜加工される。金属板MSから打ち抜かれた金属片は、排出孔C1を通じてプレス加工装置130の外部に排出される。
【0035】
ダイ部材D2は、ダイプレートD21と、ダイD22とを含む。ダイプレートD21は、中央部に設けられた貫通孔内にダイD22を保持するように構成されている。ダイプレートD21及びダイD22の材質はそれぞれ、ダイプレートD11及びダイD12の材質と同じであってもよい。
【0036】
図3及び図4に例示されるように、ダイD22には、上下方向に貫通するダイ孔D23が形成されている。ダイ孔D23は、後述するパンチP2と共に、金属板MSを半抜き加工又は打抜加工するためのユニットを構成している。半抜き加工の場合、パンチP2は、金属板MSを打ち抜くに至らない程度に金属板MSをダイ孔D23に押し込み、カシメ部18に対応する凹凸を金属板MSに形成してもよい。打抜加工の場合、パンチP2は、金属板MSを打ち抜いて、カシメ部18に対応する貫通孔を金属板MSに形成してもよい。
【0037】
ダイ孔D23は、カシメ部18に対応する形状を呈していてもよく、円形状、矩形状などを呈していてもよい。ダイ孔D23の数は、積層体10に形成されるカシメ部18と同数であってもよい。図4に例示されるように、複数のダイ孔D23が全体として円形状をなすように略等間隔で並んでいてもよい。
【0038】
図3に戻って、ダイ孔D23は、排出孔C2と連通している。ダイ孔D23内にパンチP2が挿抜されることにより、ダイ孔D23の輪郭に沿った形状で金属板MSが半抜き加工又は打抜加工される。金属板MSから打ち抜かれた金属片は、排出孔C2を通じてプレス加工装置130の外部に排出される。
【0039】
ダイ部材D3は、ダイプレートD31と、ダイD32とを含む。ダイプレートD31は、中央部に設けられた貫通孔内にダイD32を保持するように構成されている。ダイプレートD31及びダイD32の材質はそれぞれ、ダイプレートD11及びダイD12の材質と同じであってもよい。
【0040】
図3及び図4に例示されるように、ダイD32には、上下方向に貫通するダイ孔D33が形成されている。ダイ孔D33は、後述するパンチP3と共に、金属板MSを打抜加工するためのユニットを構成している。当該ユニットが金属板MSを打抜加工することにより、中心孔Waの一部が金属板MSに形成されてもよい。
【0041】
ダイ孔D33は、金属板MSのうち打抜部材Wの中心孔Waとなるべき領域の内側に位置していてもよい。ダイ孔D33は、例えば環状扇形状(annular sector)を呈していてもよい。ダイ孔D33の数は、転積角度に応じて設定されていてもよい。例えば、転積角度が180°の場合にはダイ孔D33の数が2個であってもよいし、転積角度が120°の場合にはダイ孔D33の数が3個であってもよいし、転積角度が90°の場合にはダイ孔D33の数が4個であってもよいし、転積角度が60°の場合にはダイ孔D33の数が6個であってもよいし、転積角度が45°の場合にはダイ孔D33の数が8個であってもよい。図4に例示されるように、複数のダイ孔D23が全体として円形状をなすように略等間隔で並んでいてもよい。
【0042】
図3に戻って、ダイ孔D33は、排出孔C3と連通している。ダイ孔D33内にパンチP3が挿抜されることにより、ダイ孔D33の輪郭に沿った形状で金属板MSが打抜加工される。金属板MSから打ち抜かれた金属片は、排出孔C3を通じてプレス加工装置130の外部に排出される。
【0043】
ダイ部材D4は、ダイプレートD41と、ダイD42とを含む。ダイプレートD41は、中央部に設けられた貫通孔内にダイD42を保持するように構成されている。ダイプレートD41及びダイD42の材質はそれぞれ、ダイプレートD11及びダイD12の材質と同じであってもよい。
【0044】
図3及び図4に例示されるように、ダイD42には、上下方向に貫通するダイ孔D43が形成されている。ダイ孔D43は、後述するパンチP4と共に、金属板MSを打抜加工するためのユニットを構成している。当該ユニットが金属板MSを打抜加工することにより、突起Wbが金属板MSに形成されてもよい。
【0045】
ダイ孔D43は、金属板MSのうち打抜部材Wの中心孔Waとなるべき領域の内側に位置していてもよい。ダイ孔D43は、例えば、全体として環状扇形状を呈していてもよい。ダイ孔D43には、外側から内側に向けて突出する突条D43aが外周縁に設けられていてもよい。ダイ孔D43の数は、ダイ孔D33と同数であってもよい。図4に例示されるように、複数のダイ孔D23が全体として円形状をなすように略等間隔で並んでいてもよい。図4に例示されるように、ダイ部材D4が複数のダイD42を含んでおり、複数のダイD42にそれぞれダイ孔D43が一つずつ形成されていてもよい。この場合、複数のダイD42は、全体として円形状をなして並ぶように、ダイプレートD41の貫通孔内に保持されていてもよい。
【0046】
図3に戻って、ダイ孔D43は、排出孔C4と連通している。ダイ孔D43内にパンチP4が挿抜されることにより、ダイ孔D43の輪郭に沿った形状で金属板MSが打抜加工される。金属板MSから打ち抜かれた金属片は、排出孔C4を通じてプレス加工装置130の外部に排出される。
【0047】
ダイ部材D5は、ダイプレートD51と、ダイD52とを含む。ダイプレートD51は、中央部に設けられた貫通孔内にダイD52を保持するように構成されている。ダイプレートD51及びダイD52の材質はそれぞれ、ダイプレートD11及びダイD12の材質と同じであってもよい。
【0048】
図3及び図4に例示されるように、ダイD52には、上下方向に貫通するダイ孔D53が形成されている。ダイ孔D53は、後述するパンチP5と共に、金属板MSを打抜加工するためのユニットを構成している。当該ユニットが金属板MSを打抜加工することにより、中心孔Waの残部が金属板MSに形成されてもよい。
【0049】
ダイ孔D53は、例えば、全体として円形状を呈していてもよい。ダイ孔D53には、周縁から中心に向けて突出する突条D53aが当該周縁に設けられていてもよい。突条D53aの数は、ダイ孔D33,D43と同数であってもよい。図4に例示されるように、複数の突条D53aがダイ孔D53の周方向において略等間隔で並んでいてもよい。
【0050】
図3に戻って、ダイ孔D53は、排出孔C5と連通している。ダイ孔D53内にパンチP5が挿抜されることにより、ダイ孔D53の輪郭に沿った形状で金属板MSが打抜加工される。金属板MSから打ち抜かれた金属片は、排出孔C5を通じてプレス加工装置130の外部に排出される。
【0051】
ダイ部材D6は、ダイプレートD61と、ダイD62と、駆動機構D64とを含む。ダイプレートD61は、中央部に設けられた貫通孔内にダイD62を保持するように構成されている。ダイD62は、ダイプレートD61に対して、鉛直方向に沿って延びる中心軸周りに回転可能となるように保持されていてもよい。ダイプレートD61とダイD62との間にダイホルダが介在しており、ダイホルダがダイプレートD61に対して回転可能に保持されていてもよい。ダイプレートD61及びダイD62の材質はそれぞれ、ダイプレートD11及びダイD12の材質と同じであってもよい。
【0052】
図3及び図4に例示されるように、ダイD62には、上下方向に貫通するダイ孔D63が形成されている。ダイ孔D63は、後述するパンチP6と共に、金属板MSを打抜加工するためのユニットを構成している。当該ユニットが金属板MSを打抜加工することにより、金属板MSから打抜部材Wが形成されてもよい。ダイ孔D63は、例えば、全体として円形状を呈していてもよい。
【0053】
図3に戻って、ダイ孔D63は、排出孔C6と連通している。ダイ孔D63内にパンチP6が挿抜されることにより、ダイ孔D63の輪郭に沿った形状で金属板MSが打抜加工される。金属板MSから打ち抜かれた打抜部材Wは、先行して打ち抜かれた打抜部材Wに対してダイ孔D63内においてカシメ部18により相互に締結されつつ積層される。所定枚数の打抜部材Wがダイ孔D63内において積層されると、得られた積層体10が排出孔C6を通じて搬送機構144に載置される。
【0054】
駆動機構D64は、ダイD62に接続されている。駆動機構D64は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて、ダイD62の中心軸周りにダイD62を回転させる。そのため、金属板MSから打ち抜かれた打抜部材Wが、先行して打ち抜かれた打抜部材W上に積み重ねられた後に、ダイD62が所定角度回転することで、後続の打抜部材Wが先行する打抜部材Wに対して転積される。駆動機構D64は、例えば、回転モータ、歯車、タイミングベルト等の組み合わせによって構成されていてもよい。
【0055】
複数のガイドポスト143は、図3に示されるように、ダイホルダ142から上方に向けて直線状に延びている。複数のガイドポスト143は、ガイドブッシュ151a(後述する)と共に、上型150を上下方向に案内するように構成されている。なお、複数のガイドポスト143は、上型150から下方に向けて延びるように上型150に取り付けられていてもよい。
【0056】
搬送機構144は、コントローラCtrからの指示に基づいて動作し、ダイD62から落下した積層体10を後続の装置(例えば、磁石取付装置、樹脂注入装置、溶接装置、シャフト取付装置など)に送り出すように構成されている。搬送機構144は、搬送機構144の一端は排出孔C6内に位置しており、搬送機構144の他端はプレス加工装置130の外部に位置している。搬送機構144は、例えばベルトコンベアであってもよい。
【0057】
上型150は、パンチホルダ151と、ストリッパ152と、複数のパンチP1~P6と、切替装置153とを含む。パンチホルダ151は、ダイホルダ142と対向するようにダイホルダ142の上方に配置されている。パンチホルダ151は、その下面側において複数のパンチP1~P6を保持するように構成されている。
【0058】
パンチホルダ151には、複数のガイドブッシュ151aが設けられている。複数のガイドブッシュ151aはそれぞれ、複数のガイドポスト143に対応するように位置している。ガイドブッシュ151aは円筒状を呈しており、ガイドポスト143がガイドブッシュ151aの内部空間を挿通可能である。なお、ガイドポスト143が上型150に取り付けられている場合には、ガイドブッシュ151aが下型140に設けられていてもよい。
【0059】
パンチホルダ151には、複数の貫通孔151bが設けられている。貫通孔151bの内周面には、階段状の段差が形成されている。そのため、貫通孔151bの上部の径は、貫通孔151bの下部の径よりも小さく設定されている。
【0060】
ストリッパ152は、パンチP1~P6で金属板MSを打ち抜く際にパンチP1~P6に食いついた金属板MSをパンチP1~P6から取り除くように構成されている。ストリッパ152は、ダイ部材D1~D6とパンチホルダ151との間に配置されている。
【0061】
ストリッパ152は、接続部材152aを介してパンチホルダ151と接続されている。接続部材152aは、長尺状の本体部と、本体部の上端に設けられた頭部とを含む。接続部材152aの本体部は、貫通孔151bの下部に挿通されており、貫通孔151b内を上下動可能である。接続部材152aの本体部の下端は、ストリッパ152に固定されている。接続部材152aの本体部の周囲には、パンチホルダ151とストリッパ152との間に位置するように、例えば圧縮コイルばね等の付勢部材152bが取り付けられていてもよい。
【0062】
接続部材152aの頭部は、貫通孔151bの上部に配置されている。接続部材152aの頭部の外形は、上方から見たときに、接続部材152aの本体部の外形よりも大きく設定されている。そのため、接続部材152aの頭部は、貫通孔151bの上部を上下動可能であるが、貫通孔151bの段差がストッパとして機能して、貫通孔151bの下部に移動できないようになっている。そのため、ストリッパ152は、パンチホルダ151に対して相対的に上下移動可能となるように、パンチホルダ151に吊り下げ保持されている。
【0063】
ストリッパ152には、パンチP1~P6に対応する位置に貫通孔がそれぞれ設けられている。各貫通孔はそれぞれ、上下方向に延びている。各貫通孔はそれぞれ、上方から見たときに、対応するダイ孔D13~D63と連通する。各貫通孔内にはそれぞれ、パンチP1~P6の下部が挿通されている。パンチP1~P6の当該下部はそれぞれ、各貫通孔内においてスライド可能である。
【0064】
パンチP1~P6は、プレス加工装置130の上流側から下流側に向けてこの順に並ぶように配置されている。パンチP1の下端部は、ダイ孔D13に対応する形状を呈している。当該下端部は、例えば、矩形状断面を呈する柱状体であってもよい。パンチP1の数は、ダイ孔D13と同数であってもよい。図4に例示されるように、複数のパンチP1が全体として円形状をなすように略等間隔で並んでいてもよい。
【0065】
プレス加工装置130が複数のパンチP1を含む場合、当該複数のパンチP1は、磁石挿入孔16に対応する貫通孔Wcを形成するための一組のパンチユニットを構成していてもよい。すなわち、当該複数のパンチP1は、同一の打抜工程で略同時に金属板MSを打抜加工するように構成されていてもよい。
【0066】
パンチP2の下端部は、ダイ孔D23に対応する形状を呈している。当該下端部は、例えば、円形状断面又は矩形状断面を呈する柱状体であってもよい。パンチP2の数は、ダイ孔D23と同数であってもよい。図4に例示されるように、複数のパンチP2が全体として円形状をなすように略等間隔で並んでいてもよい。
【0067】
プレス加工装置130が複数のパンチP2を含む場合、当該複数のパンチP2は、カシメ部18に対応する貫通孔又は凹凸を形成するための一組のパンチユニットを構成していてもよい。すなわち、当該複数のパンチP2は、同一の打抜工程で略同時に金属板MSを半抜き加工又は打抜加工するように構成されていてもよい。当該複数のパンチP2による半抜き加工と打抜加工との切り替えは、切替装置153と同様の装置によって行われてもよい。
【0068】
パンチP3(補助パンチ)の下端部は、ダイ孔D33に対応する形状を呈している。当該下端部は、例えば、環状扇形状断面を呈する柱状体であってもよい。パンチP3の数は、ダイ孔D33と同数であってもよい。図4に例示されるように、複数のパンチP3が全体として円形状をなすように略等間隔で並んでいてもよい。パンチP3の下端部の周囲には、パンチP3の頭部とストリッパ152との間に位置するように、例えば圧縮コイルばね等の付勢部材154が取り付けられていてもよい。
【0069】
プレス加工装置130が複数のパンチP3を含む場合、当該複数のパンチP3は、中心孔Waの一部を形成するための一組のパンチユニット(補助パンチユニット)を構成していてもよい。すなわち、当該複数のパンチP3は、同一の打抜工程で略同時に金属板MSを打抜加工するように構成されていてもよい。
【0070】
パンチP4の下端部は、ダイ孔D43に対応する形状を呈している。当該下端部は、例えば、環状扇形状断面を呈する柱状体であってもよい。パンチP4の少なくとも下端部の外周面には、例えば、上下方向に延びる凹溝P4aが設けられていてもよい。パンチP4の数は、ダイ孔D43と同数であってもよい。図4に例示されるように、複数のパンチP4が全体として円形状をなすように略等間隔で並んでいてもよい。
【0071】
プレス加工装置130が複数のパンチP4を含む場合、当該複数のパンチP4は、突起Wbを形成するための一組のパンチユニット(突起形成用のパンチユニット)を構成していてもよい。すなわち、当該複数のパンチP4は、同一の打抜工程で略同時に金属板MSを打抜加工するように構成されていてもよい。
【0072】
パンチP5の下端部は、ダイ孔D53に対応する形状を呈している。当該下端部は、例えば、全体として円形断面を呈する柱状体であってもよい。パンチP5の少なくとも下端部の外周面には、例えば、上下方向に延びる凹溝P5aが設けられていてもよい。凹溝P5aの数は、ダイ孔D33,D43と同数であってもよい。図4に例示されるように、複数の凹溝P5aがパンチP5の周方向において略等間隔で並んでいてもよい。
【0073】
パンチP6の下端部は、ダイ孔D63に対応する形状を呈している。当該下端部は、例えば、円形状断面を呈する柱状体であってもよい。
【0074】
切替装置153は、図3に例示されるように、パンチP3の上方で且つパンチホルダ151内に配置されていてもよい。プレス加工装置130が複数のパンチP3を含む場合には、複数のパンチP3と同数の切替装置153が個々のパンチP3に対応するようにパンチP3の上方にそれぞれ配置されていてもよい。
【0075】
切替装置153は、例えばカム機構であり、カム部材153aと、アクチュエータ153bとを含む。カム部材153aは、水平方向にスライド可能に構成されている。カム部材153aの下面側には、上方に向けて窪む凹部153cが設けられている。凹部153cは、パンチP3の頭部を収容可能に構成されている。
【0076】
アクチュエータ153bは、コントローラCtrからの指示信号に基づいて、カム部材153aを水平方向において駆動させるように構成されている。アクチュエータ153bは、例えば、パンチP3の頭部が凹部153cの外側に位置し且つカム部材153aの下面と当接する第1の位置と、パンチP3の頭部が凹部153c内に収容される第2の位置との間で、カム部材153aを移動させるように構成されていてもよい。アクチュエータ153bは、パンチホルダ151内ではなく、上型150の外側に配置されていてもよい。
【0077】
プレス機160は、上型150の上方に位置している。プレス機160のピストンは、パンチホルダ151に接続されており、コントローラCtrからの指示信号に基づいて動作する。プレス機160が動作すると、そのピストンが伸縮して、上型150が全体的に上下動する。
【0078】
カム部材153aが第1の位置にあるとき(図3参照)には、パンチP3の先端部は相対的に下方に位置する。パンチP3がこのような突出状態にある場合、プレス機160が動作して上型150が下降すると、パンチP3の先端部がダイ孔D33内に挿入されるので、金属板MSの打ち抜きが行われる。
【0079】
一方、カム部材153aが第2の位置にあるときには、付勢部材154の付勢力によりパンチP3が相対的に上方に移動して、パンチP3の頭部が凹部153c内に収容される。パンチP3がこのような引込状態にある場合、プレス機160が動作して上型150が下降すると、パンチP3の先端部が、ダイ孔D33内に挿入されず且つ金属板MSにも接触しないので、金属板MSに対して何らの加工も行われない。このように、切替装置153は、パンチP3の状態を選択的に変更可能に構成されている。
【0080】
[積層体の製造方法]
続いて、図4図7を参照して、積層体10の製造方法について説明する。以下では、6個のパンチP3と、6個のパンチP4と、6個の凹溝P5aが設けられたパンチP5と、6個の切替装置153とを含み、6個のパンチP3の状態が、対応する切替装置153によって個々に制御可能とされている製造装置100の例(図4参照)に基づいて説明する。
【0081】
金属板MSが送出装置120によって間欠的にプレス加工装置130に送り出され、金属板MSの所定部位がダイ部材D1に到達すると、プレス機160が動作して、上型150を下型140に向けて下方に押し出す。ストリッパ152が金属板MSに到達して、ストリッパ152とダイ部材D1とで金属板MSが挟持された後も、プレス機160が上型150を下方に向けて押し出す。
【0082】
このとき、ストリッパ152は移動しないが、パンチホルダ151及びパンチP1~P6は引き続き降下する。そのため、パンチP1~P6の先端部はそれぞれ、ストリッパ152の各貫通孔内を下方に移動し、さらにダイ孔D13~D63に到達する。この過程で、パンチP1が金属板MSをダイ孔D13に沿って打ち抜く。これにより、磁石挿入孔16に対応する貫通孔Wcが金属板MSに形成される。打ち抜かれた廃材は、排出孔C1から排出される。その後、プレス機160が動作して、上型150を上昇させる。
【0083】
次に、金属板MSが送出装置120によって間欠的に送り出され、金属板MSの所定部位がダイ部材D2に到達すると、上記と同様に、プレス機160によって上型150が上下動して、パンチP2による金属板MSの半抜き加工又は打抜加工が行われる。これにより、カシメ部18に対応する凹凸または貫通孔が金属板MSに形成される。打ち抜かれた廃材は、排出孔C2から排出される。
【0084】
次に、金属板MSが送出装置120によって間欠的に送り出され、金属板MSの所定部位(図5の加工部位A1を参照)がダイ部材D3に到達すると、上記と同様に、プレス機160によって上型150が上下動して、パンチP3による金属板MSの打抜加工(無効化加工)が行われる。0°及び180°の位相に位置する2つのパンチP3が引込状態となり、残余の4つのパンチP3が突出状態となるように、コントローラCtrが各切替装置153を制御している場合には、当該4つのパンチP3に対応する位置において4つの貫通孔R1が金属板MSに形成される(図5の加工部位A1における黒塗り領域を参照)。貫通孔R1は、パンチP3及びダイ孔D33に対応した形状を呈している。図5の例では、貫通孔R1は、環状扇形状を呈していてもよい。打ち抜かれた廃材は、排出孔C3から排出される。
【0085】
次に、金属板MSが送出装置120によって間欠的に送り出され、金属板MSの所定部位(図5の加工部位A2を参照)がダイ部材D4に到達すると、上記と同様に、プレス機160によって上型150が上下動して、パンチP4による金属板MSの打抜加工(突起形成加工)が行われる。一つ前の工程において4つの貫通孔R1が形成されているので、60°、120°、240°、300°の位相に位置する4つのパンチP4は、金属板MSに接触することなく、対応する貫通孔R1を通過する。一方、0°及び180°の位相に位置する2つのパンチP4は、金属板MSを打ち抜く。これにより、当該2つのパンチP4に対応する位置において2つの貫通孔R2が金属板MSに形成される(図5の加工部位A2における黒塗り領域を参照)。貫通孔R2は、パンチP4及びダイ孔D43に対応した形状を呈している。図5の例では、貫通孔R2は、全体として環状扇形状を呈しており、外周縁から内周縁に向けて突出する突起Wbが当該外周縁に設けられていてもよい。打ち抜かれた廃材は、排出孔C4から排出される。
【0086】
次に、金属板MSが送出装置120によって間欠的に送り出され、金属板MSの所定部位(図5の加工部位A3を参照)がダイ部材D5に到達すると、上記と同様に、プレス機160によって上型150が上下動して、パンチP5による金属板MSの打抜加工が行われる。このとき、パンチP5の外周面には、0°、60°、120°、180°、240°、300°の位相にそれぞれ凹溝P5aが設けられているので、0°及び180°の位相に位置する各凹溝P5aは、対応する突起Wbを通過する。すなわち、突起Wbが打ち抜かれることなく、パンチP5によって金属板MSの打抜加工(内径抜き加工)が行われる。前の工程において金属板MSに貫通孔R1,R2が形成されているので、図5の加工部位A3における黒塗り領域がパンチP5によって金属板MSから打ち抜かれる。これにより、金属板MSに中心孔Waが形成される。打ち抜かれた廃材は、排出孔C5から排出される。
【0087】
次に、金属板MSが送出装置120によって間欠的に送り出され、金属板MSの所定部位がダイ部材D6に到達すると、上記と同様に、プレス機160によって上型150が上下動して、パンチP6による金属板MSの打抜加工(外径抜き加工)が行われる。これにより、0°及び180°の位相に突起Wbが位置する打抜部材Wが形成される。打ち抜かれた打抜部材Wは、先行して打ち抜かれた打抜部材Wに対してダイ孔D63内において積層される。
【0088】
加工部位A1において、60°及び240°の位相に位置する2つのパンチP3が引込状態となり、残余の4つのパンチP3が突出状態となるように、コントローラCtrが各切替装置153を制御している場合には、当該4つのパンチP3に対応する位置において4つの貫通孔R1が金属板MSに形成される(図6の加工部位A1における黒塗り領域を参照)。この場合、後続の工程では、0°、120°、180°、300°の位相に位置する4つのパンチP4は、金属板MSに接触することなく、対応する貫通孔R1を通過する。一方、60°及び240°の位相に位置する2つのパンチP4は、金属板MSを打ち抜く。これにより、当該2つのパンチP4に対応する位置において2つの貫通孔R2が金属板MSに形成される(図6の加工部位A2における黒塗り領域を参照)。
【0089】
さらに後続の工程では、パンチP5が昇降する際に、60°及び240°の位相に位置する各凹溝P5aは、対応する突起Wbを通過する。すなわち、突起Wbが打ち抜かれることなく、パンチP5によって金属板MSの打抜加工(内径抜き加工)が行われる。前の工程において金属板MSに貫通孔R1,R2が形成されているので、図6の加工部位A3における黒塗り領域がパンチP5によって金属板MSから打ち抜かれる。これにより、金属板MSに中心孔Waが形成される。またさらに後続の工程では、パンチP6による金属板MSの打抜加工(外径抜き加工)が行われ、60°及び240°の位相に突起Wbが位置する打抜部材Wが形成される。
【0090】
加工部位A1において、120°及び300°の位相に位置する2つのパンチP3が引込状態となり、残余の4つのパンチP3が突出状態となるように、コントローラCtrが各切替装置153を制御している場合には、当該4つのパンチP3に対応する位置において4つの貫通孔R1が金属板MSに形成される(図7の加工部位A1における黒塗り領域を参照)。この場合、後続の工程では、0°、60°、180°、240°の位相に位置する4つのパンチP4は、金属板MSに接触することなく、対応する貫通孔R1を通過する。一方、120°及び300°の位相に位置する2つのパンチP4は、金属板MSを打ち抜く。これにより、当該2つのパンチP4に対応する位置において2つの貫通孔R2が金属板MSに形成される(図7の加工部位A2における黒塗り領域を参照)。
【0091】
さらに後続の工程では、パンチP5が昇降する際に、120°及び300°の位相に位置する各凹溝P5aは、対応する突起Wbを通過する。すなわち、突起Wbが打ち抜かれることなく、パンチP5によって金属板MSの打抜加工(内径抜き加工)が行われる。前の工程において金属板MSに貫通孔R1,R2が形成されているので、図7の加工部位A3における黒塗り領域がパンチP5によって金属板MSから打ち抜かれる。これにより、金属板MSに中心孔Waが形成される。またさらに後続の工程では、パンチP6による金属板MSの打抜加工(外径抜き加工)が行われ、120°及び300°の位相に突起Wbが位置する打抜部材Wが形成される。
【0092】
以上のようにして打ち抜かれた複数の打抜部材Wは、高さ方向において突起Wbが重なり合うようにダイ孔D63内において転積される。その後、所定枚数の打抜部材Wが積層されると、積層体10が完成する。
【0093】
[作用]
以上の例によれば、複数のパンチP4が一組とされたユニットによって、突起Wbを形成するための加工が金属板MSに施される。すなわち、複数のパンチP4による加工位置は、金属板MSの長手方向において1箇所(加工部位A2)に限定されている。そのため、複数のパンチP4によって形成される突起Wbの位置精度が高まるので、複数の打抜部材Wが積層されたときに、積層体10の高さ方向において突起Wbの位置ずれが生じ難くなる。また、以上の例によれば、突起Wbを形成するためのパンチP4のユニットと、内径抜き用のパンチP5とが別体である。そのため、当該ユニットのいずれかのパンチP4が破損しても、内径抜き用のパンチP5を交換する必要がなく、製造装置100のメンテナンス性が高まる。その結果、積層体10を高精度且つ低コストで製造することが可能となる。
【0094】
以上の例によれば、引込状態となるパンチP3の位置が、所定のタイミングで異なる位置に切り替えられうる。この場合、これらの打抜部材Wを転積することにより、打抜部材Wの板厚偏差が相殺され、積層体10の平面度、平行度及び直角度を高めることが可能となる。なお、所定のタイミングとは、定期的なタイミング(例えば、上記の無効化加工が1回行われるごと)であってもよいし、不定期的なタイミングであってもよい。
【0095】
以上の例によれば、複数のパンチP4が一組とされたユニットは、パンチP3よりも下流側に配置されうる。この場合、まずパンチP3による無効化加工が金属板MSに対して行われ、その後に、パンチP4による突起Wbの形成が金属板MSに対して行われる。そのため、無効化加工が既に行われた箇所(貫通孔R1)では、パンチP4が金属板MSに接触しない。したがって、複数のパンチP4により複数の突起Wbを形成した後に、所定数の突起WbをパンチP3によって無効化加工(打抜加工)する場合と比較して、カス上がりが生じ難くなると共に、金属板MSにバリが形成され難くなる。その結果、より高品質の積層体10を形成することが可能となる。
【0096】
以上の例によれば、複数のパンチP3が、一組のユニットとされると共に、対応する切替装置153によって個々に動作可能に構成されうる。この場合、複数のパンチP3による加工位置は、金属板MSの長手方向において1箇所(加工部位A1)に限定される。すなわち、複数のパンチP3を金属板MSの長手方向に沿って並べて配置する必要がなくなる。そのため、無効化加工のための工程数が削減される。したがって、積層体10の生産時間の短縮化が図られるので、生産性を高めることが可能となる。
【0097】
以上の例によれば、プレス加工装置130は、複数のパンチP4にそれぞれ対応する複数のダイD42を含んでいてもよい。この場合、ダイD42も個別化されているので、突起Wbの形成に際して所定のダイD42が破損しても、破損した当該ダイD42のみを交換すればよい。そのため、製造装置100のメンテナンス性がさらに高まり、積層体10をより低コストで製造することが可能となる。
【0098】
[変形例]
本明細書における開示はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特許請求の範囲及びその要旨を逸脱しない範囲において、以上の例に対して種々の省略、置換、変更などが行われてもよい。
【0099】
(1)製造装置100は、複数のダイ部材D3を含んでいてもよい。複数のダイ部材D3は、金属板MSの搬送方向に沿って一列に並んでいてもよい。各ダイ部材D3のダイD32には、少なくとも一つのダイ孔D33が設けられていてもよい。例えば、無効化加工のための複数のパンチP3は、ユニットとして一組にまとめられていなくてもよい。換言すれば、無効化加工のための複数のパンチP3は、金属板MSの搬送方向において相対的に上流側に配置された一のパンチP3と、当該一のパンチP3よりも下流側に配置された他のパンチP3とを含んでいてもよい。この場合、他のパンチP3は、当該一のパンチP3とは異なるタイミング(異なる加工位置)で金属板MSを無効化加工するように構成される。
【0100】
図8に示される例では、製造装置100が3つのダイ部材D3を含んでいる。上流に位置するダイ部材D3のダイD32は、0°及び180°の位相にそれぞれ位置するダイ孔D33を含んでいる。中央に位置するダイ部材D3のダイD32は、60°及び240°の位相にそれぞれ位置するダイ孔D33を含んでいる。下流に位置するダイ部材D3のダイD32は、120°及び300°の位相にそれぞれ位置するダイ孔D33を含んでいる。この場合、金属板MSは、上流のダイ部材D3及びこれに対応するパンチP3で構成された上流側加工部と、中央のダイ部材D3及びこれに対応するパンチP3で構成された中央加工部と、下流のダイ部材D3及びこれに対応するパンチP3で構成された下流側加工部とのいずれか2つの加工部によって無効化加工されるが、残余の加工部によっては無効化加工されることなく、ダイ部材D4へと搬送される。このとき、2つの加工部に対応するパンチP3は突出状態とされており、残余の加工部に対応するパンチP3は引込状態とされている。
【0101】
(2)複数のパンチP4が一組とされたユニットは、パンチP3よりも上流側に配置されてもよい。あるいは、上流側から順に、複数のパンチP3のうちの一部と、複数のパンチP4が一組とされたユニットと、複数のパンチP3のうちの残部とが並ぶように、パンチP3,P4が配置されていてもよい。
【0102】
(3)回転子積層鉄心2以外の他の積層鉄心を製造する際に、製造装置100を用いてもよい。他の積層鉄心は、図9に示されるように、環状を呈する複数の打抜部材Wが積層された固定子積層鉄心20であってもよい。固定子積層鉄心20は、円筒形状を呈している。すなわち、固定子積層鉄心20の中央部分には、中心軸Axに沿って延びる貫通孔20aが設けられている。貫通孔20a内には、回転子1が配置されうる。
【0103】
固定子積層鉄心20は、一つのヨーク部22と、複数のティース部24と、少なくとも一つの耳金部26とを含む。ヨーク部22は、円環状を呈しており、中心軸Axを囲むように延びている。複数のティース部24はそれぞれ、ヨーク部22の内周縁から中心軸Ax側に向かうようにヨーク部22の径方向に沿って延びている。複数のティース部24は、ヨーク部22の周方向において略等間隔で並んでいてもよい。
【0104】
各ティース部24には、図示しない巻線が巻回されうる。隣り合うティース部24の間には、巻線を配置するための空間であるスロット20bが画定されている。各ティース部24にはカシメ部28が設けられている。カシメ部28は、カシメ部18と同様に、積層方向において隣り合う打抜部材W同士を接合するように構成されている。
【0105】
耳金部26は、中心軸Axから離れるように、ヨーク部22の外周縁から径方向外側に向けて突出している。耳金部26は、高さ方向において、固定子積層鉄心20の一端面から他端面にかけて直線状に延びている。固定子積層鉄心20が複数の耳金部26を含む場合、複数の耳金部26はヨーク部22の周方向において略等間隔で並んでいてもよい。
【0106】
各耳金部26には、高さ方向に延びる貫通孔20cが設けられている。貫通孔20cは、固定子積層鉄心20を他の部材(例えば、電動機のハウジング等)に固定するためのボルトが挿通可能に構成されている。
【0107】
打抜部材Wは、固定子積層鉄心20に対応する形状を呈している。すなわち、打抜部材Wは、全体として環状を呈しており、貫通孔20aに対応する中心孔Waと、耳金部26に対応する突起Wbと、スロット20bに対応する貫通孔Wcと、貫通孔20cに対応する貫通孔Wdとを含んでいる。つまり、打抜部材Wの外周縁には、少なくとも一つの突起Wbが設けられている。
【0108】
このような固定子積層鉄心20を製造する場合、製造装置100は、図10に例示されるダイ部材D1~D6と、ダイ部材D1~D6にそれぞれ対応するパンチP1~P6とを含んでいてもよい。ダイ部材D1のダイD12には、スロット20bに対応する形状を呈する複数のダイ孔D13が設けられていてもよい。ダイ部材D2のダイD22には、カシメ部28に対応する形状を呈する複数のダイ孔D23が設けられていてもよい。ダイ部材D3のダイD32には、貫通孔20a,20cに対応する形状を呈する複数のダイ孔D33が設けられていてもよい。パンチP1~P3の下端部はそれぞれ、ダイ孔D13,D23,D33に対応する形状を呈していてもよい。
【0109】
ダイ部材D4のダイD42には、無効化加工のためのダイ孔D43が設けられていてもよい。ダイ孔D43は、金属板MSのうち打抜部材Wとなるべき領域の外側に位置していてもよい。ダイ孔D43は、例えば環状扇形状を呈していてもよい。パンチP4の下端部は、ダイ孔D43に対応する形状を呈していてもよい。
【0110】
ダイ部材D5のダイD52には、突起Wbを形成するためのダイ孔D53が設けられていてもよい。ダイ孔D53は、金属板MSのうち打抜部材Wとなるべき領域の外側に位置していてもよい。ダイ孔D43は、例えば、全体として環状扇形状を呈していてもよい。ダイ孔D53には、内側から外側に向けて突出する突条D53aが内周縁に設けられていてもよい。パンチP5の下端部は、ダイ孔D53に対応する形状を呈していてもよい。当該下端部の内周面には、例えば、上下方向に延びる凹溝P5aが設けられていてもよい。
【0111】
ダイ部材D6のダイD62には、外径抜き加工のためのダイ孔D63が設けられていてもよい。ダイ孔D63は、例えば、全体として円形状を呈していてもよい。ダイ孔D53には、周縁から外方に向けて窪む凹溝D63aが当該周縁に設けられていてもよい。凹溝D63aの数は、ダイ孔D43,D53と同数であってもよい。パンチP6の下端部は、ダイ孔D63に対応する形状を呈していてもよい。当該下端部の外周面には、例えば、上下方向に延びる突条P6aが設けられていてもよい。
【0112】
続いて、図10図12を参照して、固定子積層鉄心20の製造方法について説明する。以下では、6個のパンチP4と、6個のパンチP5と、6個の突条P6aが設けられたパンチP6と、6個の切替装置153とを含み、6個のパンチP4の状態が、対応する切替装置153によって個々に制御可能とされている製造装置100の例(図10参照)に基づいて説明する。
【0113】
金属板MSが送出装置120によって間欠的にプレス加工装置130に送り出され、金属板MSの所定部位がダイ部材D1に到達すると、プレス機160によって上型150が上下動して、パンチP1による金属板MSの打抜加工が行われる。これにより、スロット20bに対応する貫通孔Wcが金属板MSに形成される。打ち抜かれた廃材は、排出孔C1から排出される。
【0114】
次に、金属板MSが送出装置120によって間欠的に送り出され、金属板MSの所定部位がダイ部材D2に到達すると、上記と同様に、プレス機160によって上型150が上下動して、パンチP2による金属板MSの半抜き加工又は打抜加工が行われる。これにより、カシメ部28に対応する凹凸または貫通孔が金属板MSに形成される。打ち抜かれた廃材は、排出孔C2から排出される。
【0115】
次に、金属板MSが送出装置120によって間欠的に送り出され、金属板MSの所定部位(図11の加工部位B1を参照)がダイ部材D3に到達すると、上記と同様に、プレス機160によって上型150が上下動して、パンチP3による金属板MSの打抜加工が行われる。これにより、貫通孔20cに対応する貫通孔Wdが金属板MSに形成される(図11の加工部位B1における黒塗り領域を参照)。打ち抜かれた廃材は、排出孔C3から排出される。
【0116】
次に、金属板MSが送出装置120によって間欠的に送り出され、金属板MSの所定部位(図11の加工部位B2を参照)がダイ部材D4に到達すると、上記と同様に、プレス機160によって上型150が上下動して、パンチP4による金属板MSの打抜加工(無効化加工)が行われる。60°、180°、300°の位相に位置する3つのパンチP4が引込状態となり、残余の3つのパンチP4が突出状態となるように、コントローラCtrが各切替装置153を制御している場合には、後者の3つのパンチP4に対応する位置において3つの貫通孔R1が金属板MSに形成される(図11の加工部位B2における黒塗り領域を参照)。このとき、貫通孔R1と重なり合う位置に形成されている貫通孔Wdが、金属板MSから除かれる。打ち抜かれた廃材は、排出孔C4から排出される。
【0117】
次に、金属板MSが送出装置120によって間欠的に送り出され、金属板MSの所定部位(図11の加工部位B5を参照)がダイ部材D5に到達すると、上記と同様に、プレス機160によって上型150が上下動して、パンチP5による金属板MSの打抜加工(突起形成加工)が行われる。このとき、一つ前の工程において3つの貫通孔R1が形成されているので、0°、120°、240°の位相に位置する3つのパンチP5は、金属板MSに接触することなく、対応する貫通孔R1を通過する。一方、60°、180°、300°の位相に位置する3つのパンチP5は、金属板MSを打ち抜く。これにより、後者の3つのパンチP5に対応する位置において3つの貫通孔R2が金属板MSに形成される(図11の加工部位B3における黒塗り領域を参照)。打ち抜かれた廃材は、排出孔C5から排出される。
【0118】
次に、金属板MSが送出装置120によって間欠的に送り出され、金属板MSの所定部位(図11の加工部位B4を参照)がダイ部材D6に到達すると、上記と同様に、プレス機160によって上型150が上下動して、パンチP6による金属板MSの打抜加工(外径抜き加工)が行われる。このとき、パンチP6の外周面には、0°、60°、120°、180°、240°、300°の位相にそれぞれ突条P6aが設けられているので、0°、120°、240°の位相に位置する各突条P6aは、対応する貫通孔R1を通過する。一方、60°、180°、300°の位相に位置する各突条P6aは、突起Wbを含むように金属板MSを打ち抜く。これにより、60°、180°、300°の位相に突起Wbが位置する打抜部材Wが形成される。
【0119】
加工部位A1において、0°、120°、240°の位相に位置する2つのパンチP4が引込状態となり、残余の3つのパンチP4が突出状態となるように、コントローラCtrが各切替装置153を制御している場合には、後者の3つのパンチP4に対応する位置において3つの貫通孔R1が金属板MSに形成される(図12の加工部位B2における黒塗り領域を参照)。この場合、後続の工程では、60°、180°、300°の位相に位置する3つのパンチP5は、金属板MSに接触することなく、対応する貫通孔R1を通過する。一方、0°、120°、240°の位相に位置する3つのパンチP5は、金属板MSを打ち抜く。これにより、後者の3つのパンチP5に対応する位置において3つの貫通孔R2が金属板MSに形成される(図12の加工部位B3における黒塗り領域を参照)。
【0120】
さらに後続の工程では、パンチP6が昇降する際に、60°、180°、300°の位相に位置する各突条P6aは、対応する貫通孔R1を通過する。一方、0°、120°、240°の位相に位置する3つのパンチP6は、金属板MSを打ち抜く。これにより、0°、120°、240°の位相に突起Wbが位置する打抜部材Wが形成される。
【0121】
以上のようにして打ち抜かれた複数の打抜部材Wは、高さ方向において突起Wbが重なり合うようにダイ孔D63内において転積される。その後、所定枚数の打抜部材Wが積層されると、固定子積層鉄心20が完成する。
【0122】
(4)仮カシメ部を含む中間積層体を製造する際に、製造装置100を用いてもよい。その後、中間積層体から仮カシメ部が除去されることで、回転子積層鉄心となる積層体が形成されてもよいし、固定子積層鉄心となる積層体が形成されてもよい。仮カシメ部は、中間積層体の内周面に設けられていてもよいし、中間積層体の外周面に設けられていてもよい。「仮カシメ」とは、複数の打抜部材Wを一時的に一体化させるのに使用され且つ積層体を製造する過程において取り除かれるカシメを意味する。
【0123】
図13を参照して、中間積層体30の一例について説明する。中間積層体30は、固定子積層鉄心20と、固定子積層鉄心20の外周面に設けられた仮カシメ部31とを含む。中間積層体30は、複数の打抜部材Wが積層されて構成されている。打抜部材Wは、仮カシメ部31に対応する仮カシメ片41が、固定子積層鉄心20に対応する加工板50の外周縁に嵌合している状態のものである。中間積層体30の高さ方向において隣り合う打抜部材W同士は、仮カシメ片41に設けられているカシメ部42を介して締結されている。
【0124】
仮カシメ片41と加工板50との間には、切断線CLが設けられている。各切断線CLは、例えば、金属板MSを切り曲げ加工又は打ち抜き加工した後、当該加工部分をプッシュバックして、元の金属板MSに圧入することにより、形成されてもよい。金属板MSが切り曲げ加工又は打抜き加工されると、当該加工部分が塑性変形して若干延びる。そのため、当該加工部分が元の金属板MSへ圧入されると、当該加工部分と元の金属板MSとは、人手では簡単に外れない程度にしっかりと嵌まり合っている。
【0125】
(5)製造装置100は、内周縁又は外周縁にM個(Mは1以上の自然数)の突起Wbが設けられた打抜部材Wを形成する際に、用いられてもよい。この場合、製造装置100は、N個(NはMより大きい自然数)のパンチP4が一組とされたパンチユニットと、N個のパンチP3とを含んでいてもよい。当該パンチユニットは、例えば、6個のパンチP4を含んでいてもよいし、8個のパンチP4を含んでいてもよい。この場合、製造装置100は、同数のパンチP3及びパンチP4を含んでいればよい。そのため、当該パンチユニットに含まれるパンチP4の数が増えた場合でも、パンチP3の数がパンチP4の数を超えて必要となることがない。したがって、装置構成が簡素化されるので、製造装置100の製造コストを低減することが可能となる。
【0126】
[他の例]
例1.積層鉄心の製造装置(100)の一例は、環状を呈しており且つ内周縁又は外周縁にM個(Mは1以上の自然数)の突起(Wb)が設けられた複数の打抜部材(W)を金属板(MS)から打ち抜いて転積するように構成されていてもよい。積層鉄心の製造装置(100)の一例は、N個(NはMより大きい自然数)のパンチ(P4)が一組とされた突起形成用のパンチユニットと、N個の補助パンチ(P3)とを備えてもよい。N個の補助パンチ(P3)は、N個の補助パンチ(P3)のうちから選択された(N-M)個の補助パンチ(P3)によって、N個のパンチ(P4)のうち(N-M)個のパンチ(P4)による加工を無効化するための無効化加工を金属板(MS)に対して行うように構成されていてもよい。この例によれば、N個のパンチが一組とされたパンチユニットによって、突起を形成するための加工が金属板に施される。すなわち、N個のパンチによる加工位置は、金属板の長手方向において1箇所に限定されている。そのため、N個のパンチによって形成される突起の位置精度が高まるので、複数の打抜部材が積層されたときに、回転子積層鉄心の高さ方向において突起の位置ずれが生じ難くなる。また、この例によれば、突起形成用のパンチユニットと、内径抜き用又は外形抜き用のパンチとが別体である。そのため、パンチユニットのいずれかのパンチが破損しても、内径抜き用又は外形抜き用のパンチを交換する必要がなく、装置のメンテナンス性が高まる。以上の結果、積層鉄心を高精度且つ低コストで製造することが可能となる。
【0127】
例2.例1の装置(100)において、パンチユニットは、N個の補助パンチ(P3)よりも下流側に配置されていてもよい。この場合、まず(N-M)個の補助パンチによる無効化加工が金属板に対して行われ、その後に、N個のパンチによる突部の形成が金属板に対して行われる。そのため、無効化加工が既に行われた箇所では、パンチが金属板に接触しない。したがって、N個のパンチによりN個の突部を形成した後に、(N-M)個の突部を(N-M)個の補助パンチによって無効化加工(打抜加工)する場合と比較して、カス上がりが生じ難くなると共に、金属板にバリが形成され難くなる。その結果、より高品質の積層鉄心を形成することが可能となる。
【0128】
例3.例1又は例2の装置(100)において、パンチユニットは6個又は8個のパンチ(P4)を含んでいてもよい。この例によれば、装置は、パンチユニットに含まれるパンチの数と同数の補助パンチを備えていればよい。そのため、パンチユニットに含まれるパンチの数が増えた場合でも、補助パンチの数がパンチの数を超えて必要となることがない。したがって、装置構成が簡素化されるので、装置の製造コストを低減することが可能となる。
【0129】
例4.例1~例3のいずれかの装置(100)は、N個の補助パンチ(P3)が一組とされた補助パンチユニットをさらに備え、N個の補助パンチ(P3)が個々に動作可能に構成されていてもよい。この場合、N個の補助パンチが補助パンチユニットとしてひとまとまりに構成されているので、N個の補助パンチを金属板の長手方向に沿って並べて配置する必要がなくなる。そのため、無効化加工のための工程数が削減される。したがって、積層鉄心の生産時間の短縮化が図られるので、生産性を高めることが可能となる。
【0130】
例5.例1~例3のいずれかの装置(100)において、N個の補助パンチ(P3)は、金属板(MS)の相対的に上流側に配置された一の補助パンチ(P3)と、一の補助パンチ(P3)とは異なるタイミングで金属板(MS)を無効化加工するように一の補助パンチ(P3)よりも下流側に配置された他の補助パンチ(P3)とを含んでいてもよい。
【0131】
例6.例1~例5のいずれかの装置(100)において、パンチユニットは、N個のパンチ(P4)に個々に対応するN個のダイ(D42)を含んでいてもよい。この場合、ダイも個別化されているので、突起の形成に際して所定のダイが破損しても、破損した当該ダイのみを交換すればよい。そのため、装置のメンテナンス性がさらに高まり、積層鉄心をより低コストで製造することが可能となる。
【0132】
例7.例1~例6のいずれかの装置(100)は、金属板(MS)から打ち抜かれた複数の打抜部材(W)を、高さ方向において突起(Wb)が重なり合うように転積するように構成された駆動機構(D64)をさらに備えていてもよい。
【0133】
例8.積層鉄心(2,10)の製造方法の一例は、環状を呈しており且つ内周縁又は外周縁にM個(Mは1以上の自然数)の突起(Wb)が設けられた複数の打抜部材(W)を金属板(MS)から打ち抜いて転積することを含んでいてもよい。積層鉄心(2,10)の製造方法の一例は、N個(NはMより大きい自然数)のパンチ(P4)が一組とされた突起形成用のパンチユニットによって金属板(MS)を加工することと、N個のパンチ(P4)のうち(N-M)個のパンチ(P4)による加工を無効化するために、N個の補助パンチ(P3)のうちから選択された(N-M)個の補助パンチ(P3)によって金属板(MS)を無効化加工することとをさらに含んでいてもよい。この場合、例1の装置と同様の作用効果が得られる。
【0134】
例9.例8の方法において、パンチユニットによって金属板(MS)を加工することは、(N-M)個の補助パンチ(P3)によって金属板(MS)を無効化加工することの後に行われてもよい。この場合、例2の装置と同様の作用効果が得られる。
【0135】
例10.例8又は例9の方法において、パンチユニットは6個又は8個のパンチ(P4)を含んでいてもよい。この場合、例3の装置と同様の作用効果が得られる。
【0136】
例11.例8~例10のいずれかの方法において、N個の補助パンチ(P3)が補助パンチユニットとして一組に束ねられており、N個の補助パンチ(P3)が個々に動作可能に構成されていてもよい。この場合、例4の装置と同様の作用効果が得られる。
【0137】
例12.例8~例10のいずれかの方法において、N個の補助パンチ(P3)は、金属板(MS)の相対的に上流側に配置された一の補助パンチ(P3)と、一の補助パンチ(P3)とは異なるタイミングで金属板(MS)を無効化加工するように一の補助パンチ(P3)よりも下流側に配置された他の補助パンチ(P3)とを含んでいてもよい。この場合、例7の装置と同様の作用効果が得られる。
【0138】
例13.例8~例12のいずれかの方法において、パンチユニットは、N個のパンチ(P4)に個々に対応するN個のダイ(D42)を含んでいてもよい。この場合、例5の装置と同様の作用効果が得られる。
【0139】
例14.例8~例13のいずれかの方法は、金属板(MS)から打ち抜かれた複数の打抜部材(W)を、高さ方向において突起(Wb)が重なり合うように転積することをさらに含んでいてもよい。この場合、例6の装置と同様の作用効果が得られる。
【符号の説明】
【0140】
1…回転子、2…回転子積層鉄心(積層鉄心)、3…シャフト、10…積層体(積層鉄心)、10a…軸孔、10b…突条、100…製造装置、130…プレス加工装置、Ctr…コントローラ(制御部)、D42…ダイ、D64…駆動機構、MS…金属板、P3…パンチ(補助パンチ)、P4…パンチ、W…打抜部材、Wa…中心孔、Wb…突起。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13